説明

分離膜の製造方法

【課題】 本発明は、従来技術の上述した問題点に鑑み、物理的耐久性や化学的耐久性を有し、不溶化処理を必要とせずに親水性と水透過性能を長期にわたって維持する分離膜とその製造方法を課題とする。
【解決手段】 ポリスルホン系高分子と、重量平均分子量が100,000以上300,000以下である高分子量ポリエチレングリコールおよび重量平均分子量が1,000以上20,000以下である低分子量ポリエチレングリコールが含まれる製膜原液を用いることを特徴とする分離膜の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリスルホン系高分子と平均分子量の相異なる2種類のポリエチレングリコールを有する製膜原液を用いて作られる親水性と水透過性能が高いポリスルホン系高分子分離膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、膜分離技術は化学工業、電子工業、医薬品工業、食品工業、排水処理、医療、造水等の分野において、蛋白質、コロイド、バクテリア、ウイルス、塩等のろ過分離の用途に広く使用されている。分離膜の素材としては一般に有機系高分子が汎用されており、例えば天然高分子としてセルロース、合成高分子としてはポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリスルホン、ポリメタクリレート等が挙げられる。中でもポリスルホンは、物理的耐久性や放射線、加熱、および酸・アルカリ等に対する化学的耐久性が高いため、工業用分離膜として幅広く利用されている。
【0003】
しかしながら、ポリスルホンは疎水性の素材であり、得られる分離膜は親水性が低く、優れた水透過性能を発現することは困難である。そこで、特許文献1に記載されているように、製膜原液中に親水化剤を添加する方法が開示されており、親水化剤によって分離膜の親水性および水透過性能を向上させている。親水化剤として、重量平均分子量が600程度のポリエチレングリコールを使用しているが、分離膜の開孔剤としての役割も果たしており、膜中に残存する親水化剤は少量で分離膜に親水性を付与する効果は小さかった。そのため、親水性を付与するためには、ある程度の量の親水化剤をブレンドする必要があるが、ポリスルホンのような分子凝集力が大きい高分子と均一なブレンドを行うことは困難であった。
【0004】
上記問題点を解決するために、例えば特許文献2および3では、分子量の異なる親水性高分子を用いた分離膜が開示されている。分子量の大きい親水性高分子を膜中に残存させることによって分離膜の親水性を高め、分子量の小さい親水性高分子を膜中から除去することで親水性と水透過性能を向上させている。しかしながら、特許文献2に開示された技術では、分離膜の親水性が未だ不十分であった。その理由としては、使用している親水性高分子の分子量が十分に高くなかったことが考えられる。
【0005】
特許文献3に開示された分離膜は、主に血液処理用を想定した分離膜であるため、繰り返し使用することを考慮しておらず、長期間にわたって親水性と水透過性能を維持することが困難であった。また、不溶化処理により疎水性高分子と親水性高分子を結合させて、親水性高分子の溶出を抑制しているが、このような処理をせずとも親水性と水透過性能を長期間維持することが課題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−285627号公報
【特許文献2】特開2006−81970号公報
【特許文献3】特開平9−70524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来技術の上述した問題点に鑑み、物理的耐久性や化学的耐久性を有し、不溶化処理を必要とせずに親水性と水透過性能を長期にわたって維持する分離膜の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は、ポリスルホン系高分子と、重量平均分子量が100,000以上300,000以下である高分子量ポリエチレングリコールおよび重量平均分子量が1,000以上20,000以下である低分子量ポリエチレングリコールが含まれる製膜原液を用いることを特徴とする分離膜の製造方法、により構成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によって、高い物理的耐久性と化学的耐久性に加え、不溶化処理を施さずとも親水性高分子の溶出を抑制することができ、長期間にわたって高い親水性と水透過性能を維持可能な分離膜が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、ポリスルホン系高分子と、重量平均分子量が100,000以上300,000以下である高分子量ポリエチレングリコールとおよび重量平均分子量が1,000以上20,000以下である低分子量ポリエチレングリコールが含まれる製膜原液を用いることを特徴とする分離膜の製造方法である。
【0011】
本発明に用いられるポリスルホン系高分子とは、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリルスルホンのことであり、これらを単独もしくは2種類以上からなる混合物として用いることができる。
【0012】
本発明で用いられるポリスルホン系高分子は市販品を使用することができる。具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ社製 “Udel(登録商標) Polysulfone P”シリーズ、BASF社製 “ULTRASON(登録商標) S”シリーズ、BASF社製 “ULTRASON(登録商標) E”シリーズ、住友化学社製 “スミカエクセル(登録商標)”シリーズ等が挙げられる。
【0013】
本発明で用いられるポリエチレングリコールは、重量平均分子量の相異なる2種類で、一方は高分子量ポリエチレングリコールであり、他方は低分子量ポリエチレングリコールである。なお、本発明におけるポリエチレングリコールとは、その重量平均分子量に関わらず、「HO−(CH−CH−O)−H」の一般式で表される化合物全般を指すものとし、ポリエチレンオキシドと呼称される化合物も、本発明のポリエチレングリコールに含むものとする。
【0014】
一般にポリエチレングリコールは開孔剤として使用されるが、ポリエチレングリコールの重量平均分子量が大きくなると、親水化剤としての効果を有するようになる。この理由の詳細は不明であるが、次の理由によると考えられる。すなわち、ポリエチレングリコールの重量平均分子量が小さいほど、ポリエチレングリコールの分散性は大きくなり、また水への溶解性が高くなるので、凝固のために製膜原液を水へ浸入させた際にポリエチレングリコールが水中へ移動しやすくなる。そうすると、ポリエチレングリコールは開孔剤として作用し、分離膜の多孔化を促す。逆に、ポリエチレングリコールの重量平均分子量が大きくなるほど分散性は小さく水への溶解性は低くなるため、膜中に残存するポリエチレングリコールは増加し、親水化剤として機能することになる。このように、ポリエチレングリコールの水への溶解性が、開孔剤または親水化剤として機能するかの指標となる。ポリエチレングリコールの水への溶解性は、化学便覧応用編第3版(日本化学会編)によると、例えば重量平均分子量が1,000ならば約70wt%(20℃)であり、6,000ならば約50wt%(20℃)である。また、重量平均分子量が100,000以上となると、水に不溶であることが化学物質安全性データシート(MSDS)に記載されている。
【0015】
本発明の場合、ポリエチレングリコールの重量平均分子量が100,000を超えると、得られた分離膜中にポリエチレングリコールが残存しやすくなる。すなわち、高分子量ポリエチレングリコールには、疎水性のポリスルホン系高分子に濡れ性を付与する効果、低分子量ポリエチレングリコールには開孔剤としての効果を有するので、この点に着目し、分離膜が高い親水性と水透過性能を長期間にわたって維持できることを可能にした。
【0016】
高分子量ポリエチレングリコールは、上述したように、疎水性のポリスルホン系高分子に濡れ性を付与する親水化剤として作用する。よって、得られる分離膜は、ポリスルホン系高分子のみから得られる分離膜よりも高い親水性を示すことができる。ポリエチレングリコールは分子量が大きくなると、末端水酸基の効果が小さくなり水に不溶性となる。さらに、重量平均分子量が大きくなるとポリエチレングリコール分子間、分子内、さらにはポリエチレングリコールとポリスルホン系高分子との分子鎖の絡み合いが増加する。このような効果によって、本発明に係る分離膜を水系で使用する場合、ポリエチレングリコールの溶出を抑制することができる。別段、不溶化させるための後処理を必要としない。このため、親水性と水透過性能を長期間にわたって維持できる分離膜を簡便に得ることが可能となる。
【0017】
上述した高分子量ポリエチレングリコールの効果は、重量平均分子量が大きくなるほど高くなるが、逆に高分子量ポリエチレングリコールの重量平均分子量が大きくなるほど、高分子量ポリエチレングリコールがポリスルホン系高分子の分子鎖内部に取り残されてしまい易い。そうすると、分離膜の親水性は高くなるものの、構造が緻密になり過ぎるために水透過性能が低下してしまう。
【0018】
このような観点から、高分子量ポリエチレングリコールの重量平均分子量は100,000以上300,000以下であることが必要であり、100,000以上200,000以下であることが好ましい。
【0019】
また、低分子量ポリエチレングリコールは主に開孔剤として作用する。低分子量ポリエチレングリコールであれば、高分子量ポリエチレングリコールとの相溶性が良好であるため、上述した高分子量ポリエチレングリコールの効果を損なうことなく、開孔剤として機能することができる。開孔剤としての低分子量ポリエチレングリコールの効果は、重量平均分子量が小さくなるほど高くなるが、逆に低分子量ポリエチレングリコールの平均分子量が小さくなると、低分子量ポリエチレングリコールが高分子量ポリエチレングリコール中に入り込んでしまう。そうすると、開孔剤として機能することが困難となり、分離膜の水透過性能が低下してしまう。
【0020】
このような観点から、低分子量ポリエチレングリコールの重量平均分子量は1,000以上20,000以下であることが必要であり、4,000以上20,000以下であることが好ましい。
【0021】
重量平均分子量が異なる2種類のポリエチレングリコールによる上述した2つの効果、すなわち、高分子量ポリエチレングリコールによって分離膜へ親水性を付与する効果と、低分子量ポリエチレングリコールによる開孔効果によって高い親水性と水透過性能を達成するためには、それぞれの重量平均分子量が上記範囲内であれば良く、本発明の効果を損なわない範囲で高分子量および低分子量ポリエチレングリコールの含有量を設定できる。
【0022】
本発明で用いられるポリエチレングリコールは市販品を使用することができ、具体例としては、和光純薬工業株式会社製ポリエチレングリコールやSIGMA−ALDRICH社製ポリエチレンオキシド、Alfa Aesar社製ポリエチレンオキシドなどが挙げられる。これらの中から、上述した重量平均分子量を有するポリエチレングリコールを適宜選択して使用する。
【0023】
ここで、本発明おけるポリエチレングリコールの重量平均分子量は、以下の測定方法により算出できる。
【0024】
ポリエチレングリコールを蒸留水に溶解させた後、東ソー株式会社製マイショリディスク(登録商標) W−13−5でポリエチレングリコール水溶液の濾過を行いサンプル液とする。この溶液を、東ソー株式会社製HPLC AK−216−001を使用して分析を行い、10種の単分散ポリエチレングリコール(重量平均分子量は、それぞれ、370,1,500、4,600、8,000、24,000、50,000、107,000、140,000、250,000、540,000である。)を基準物質にして重量平均分子量を求める。なお、カラムは東ソー株式会社製TSKgel GMPWxlを用いる。また、水とメタノールが体積比で1:1になるように調製された混合溶液に、0.1Nの硝酸リチウムが存在する溶液を移動相とし、温度40℃、流量1.0ml/min、サンプル打ち込み量0.1mlで分析を行う。
【0025】
本発明の製膜原液を用いて製造する分離膜の形状は特に限定されないが、例えば平膜の場合、次のような方法で製造される。まず、ポリスルホン系高分子、ポリスルホン系高分子を溶解する溶媒、重量平均分子量が異なる2種類のポリエチレングリコール、すなわち高分子量ポリエチレングリコールおよび低分子量ポリエチレングリコールを室温溶解または加熱溶解して製膜原液とする。得られた製膜原液を不織布基材にキャスト法で塗布した後に、ポリスルホン系高分子の非溶媒中に浸漬させる非溶媒誘起相分離を利用して分離膜を製造する。
【0026】
非溶媒誘起相分離とは、高分子溶液中に高分子の非溶媒が流入することにより、高分子溶液が高分子濃厚相と高分子希薄相とに相分離する現象である。最終的に、高分子濃厚相を分離膜の壁とし、高分子希薄相を分離膜の孔として利用することになる。一般に、常温で高分子を溶解できる良溶媒が高分子溶液の調製に使用され、高分子を溶解しない非溶媒を凝固に使用する。
【0027】
非溶媒誘起相分離におけるポリスルホン系高分子の良溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどが挙げられる。本発明の製膜原液は、ポリスルホン系高分子と、高分子量ポリエチレングリコールおよび低分子量ポリエチレングリコールを、それらを溶解する良溶媒に溶解または分散させることにより得ることができる。また、本発明においては、ポリスルホン系高分子、高分子量ポリエチレングリコール、低分子量ポリエチレングリコールと溶媒の比率は特に制限されないため、本発明の効果を損なわない範囲で適宜設計できる。
【0028】
非溶媒誘起相分離による分離膜の製造時には、上述したように、ポリスルホン系高分子の非溶媒を製膜原液に接触させて相分離を生じさせる。ここで、非溶媒に良溶媒を少量混和させて非溶媒誘起相分離を遅延させる方法や、低温の非溶媒を用いることにより非溶媒誘起相分離を遅延させる方法も分離膜に所望の細孔径や細孔数を付与するために採用されうる。
【0029】
ポリスルホン系高分子の非溶媒としては、水やメタノール、エタノールなどのアルコール類を用いることができる。特に水やエタノールが好ましく、これらの混合溶液であってもよい。
【0030】
分離膜の膜厚は、分離特性、水透過性能能、化学的強度(耐薬品性)、物理的強度、耐ファウリング性の各性能が要求される条件を満足するように自由に調整できる。しかしながら、膜厚が薄いと分離特性や物理的強度が低く、厚いと水透過性能能が低い。従って、上述した各性能のバランスや運転コストを考慮すると、膜厚は100μm以上500μm以下、より好ましくは200μm以上300μm以下が良い。
【0031】
以下に具体的実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0032】
(1)水透過性能
各分離膜(直径45mm)に、温度25℃で、蒸留水を操作圧力100kPaで供給し、全量ろ過を行った。このときの、単位時間(d)及び単位面積(m)当たりの透過水量(m)を測定し、水透過性能(m/m/d)を算出した。
【0033】
(2)接触角
分離膜の分離層表面の水に対する接触角を測定することにより、分離層表面の親水性・疎水性を定量化することが可能であり、分離層表面の水に対する接触角が小さいほど親水性であると言える。ここで分離層表面の水に対する接触角は、固体(分離層)、液体(水)、および気体(空気)を接触させたとき、三相の接触点で液体に引いた接線と固体面とのなす角のうち液体を含む側の角度を言う。接触角は、共和界面科学株式会社製の接触角計(CA−D型)を用いて、各々20回測定し、平均値を採用した。
【0034】
(3)ポリスルホン系高分子
重量平均分子量が51,000であるBASF社製Ultrason(登録商標) E6020P(ポリスルホン系高分子)を使用した。
【0035】
(4)ポリエチレングリコールA
重量平均分子量が200の和光純薬工業株式会社製ポリエチレングリコール200(ポリエチレングリコールA)を使用した。
【0036】
(5)ポリエチレングリコールB
重量平均分子量が1,000の和光純薬工業株式会社製ポリエチレングリコール1,000(ポリエチレングリコールB)を使用した。
【0037】
(6)ポリエチレングリコールC
重量平均分子量が4,000の和光純薬工業株式会社製ポリエチレングリコール4,000(ポリエチレングリコールC)を使用した。
【0038】
(7)ポリエチレングリコールD
重量平均分子量が8,000の和光純薬工業株式会社製ポリエチレングリコール8,000(ポリエチレングリコールD)を使用した。
【0039】
(8)ポリエチレングリコールE
重量平均分子量が20,000の和光純薬工業株式会社製ポリエチレングリコール20,000(ポリエチレングリコールE)を使用した。
【0040】
(9)ポリエチレングリコールF
重量平均分子量が50,000の和光純薬工業株式会社製ポリエチレングリコール50,000(ポリエチレングリコールF)を使用した。
【0041】
(10)ポリエチレングリコールG
重量平均分子量が100,000のAlfa Aesar社製ポリエチレンオキシド M.W.100,000(ポリエチレングリコールG)を使用した。
【0042】
(11)ポリエチレングリコールH
重量平均分子量が200,000のSIGMA−ALDRICH社製ポリエチレンオキシド M.W.200,000(ポリエチレングリコールH)を使用した。
【0043】
(12)ポリエチレングリコールI
重量平均分子量が300,000のAlfa Aesar社製ポリエチレンオキシド M.W.300,000(ポリエチレングリコールI)を使用した。
【0044】
(13)ポリエチレングリコールJ
重量平均分子量が500,000の和光純薬工業株式会社製ポリエチレングリコール500,000(ポリエチレングリコールJ)を使用した。
【0045】
(14)ポロビニルピロリドンA
重量平均分子量が10,000のBASF社製Luvitec(登録商標)K17(ポリビニルピロリドンA)を使用した。
【0046】
(15)ポロビニルピロリドンB
重量平均分子量が50,000のBASF社製Luvitec(登録商標)K30(ポリビニルピロリドンB)を使用した。
【0047】
(16)ポロビニルピロリドンC
重量平均分子量が360,000のBASF社製Luvitec(登録商標)K60(ポリビニルピロリドン)を使用した。
【0048】
(17)ポロビニルピロリドンD
重量平均分子量が840,000のBASF社製Luvitec(登録商標)K80(ポリビニルピロリドン)を使用した。
【0049】
(18)ポロビニルピロリドンE
重量平均分子量が1,200,000のBASF社製Luvitec(登録商標)K90(ポリビニルピロリドン)を使用した。
【0050】
(19)不織布
日本バイリーン社製ポリエチレンテレフタレート製不織布H−8010を使用した。
【0051】
<実施例1>
ポリスルホン系高分子;20重量%、ポリエチレングリコールG;3重量%、ポリエチレングリコールD;6重量%、N−メチル−2−ピロリドン;71重量%を90℃で4時間撹拌溶解して製膜原液を調製した。この製膜原液を不織布にアプリケータを用いて総厚み200μmになるように塗布し、ただちに水浴中に浸漬して凝固させ、ポリスルホン系高分子分離膜を得た。得られたポリスルホン系高分子分離膜は、クラック等の欠点が無いものであった。
【0052】
また、この分離膜の性能を評価した結果、水透過性能が0.75m/m/hr、接触角が37.5°であった。
【0053】
表1に評価の結果をまとめた。
【0054】
<実施例2>
ポリスルホン系高分子;20重量%、ポリエチレングリコールH;3重量%、ポリエチレングリコールD;6重量%、N−メチル−2−ピロリドン;71重量%を90℃で4時間撹拌溶解して製膜原液を調製した。この製膜原液を不織布にアプリケータを用いて総厚み200μmになるように塗布し、ただちに水浴中に浸漬して凝固させ、ポリスルホン系高分子分離膜を得た。得られたポリスルホン系高分子分離膜は、クラック等の欠点が無いものであった。
【0055】
また、この分離膜の性能を評価した結果、水透過性能が0.63m/m/hr、接触角が34.8°であった。
【0056】
表1に評価の結果をまとめた。
【0057】
<実施例3>
ポリスルホン系高分子;20重量%、ポリエチレングリコールI;3重量%、ポリエチレングリコールD;6重量%、N−メチル−2−ピロリドン;71重量%を90℃で4時間撹拌溶解して製膜原液を調製した。この製膜原液を不織布にアプリケータを用いて総厚み200μmになるように塗布し、ただちに水浴中に浸漬して凝固させ、ポリスルホン系高分子分離膜を得た。得られたポリスルホン系高分子分離膜は、クラック等の欠点が無いものであった。
【0058】
また、この分離膜の性能を評価した結果、水透過性能が0.54m/m/hr、接触角が31.6°であった。
【0059】
表1に評価の結果をまとめた。
【0060】
<実施例4>
ポリスルホン系高分子;20重量%、ポリエチレングリコールG;3重量%、ポリエチレングリコールB;6重量%、N−メチル−2−ピロリドン;71重量%を90℃で4時間撹拌溶解して製膜原液を調製した。この製膜原液を不織布にアプリケータを用いて総厚み200μmになるように塗布し、ただちに水浴中に浸漬して凝固させ、ポリスルホン系高分子分離膜を得た。得られたポリスルホン系高分子分離膜は、クラック等の欠点が無いものであった。
【0061】
また、この分離膜の性能を評価した結果、水透過性能が0.60m/m/hr、接触角が48.0°であった。
【0062】
表1に評価の結果をまとめた。
【0063】
<実施例5>
ポリスルホン系高分子;20重量%、ポリエチレングリコールG;3重量%、ポリエチレングリコールC;6重量%、N−メチル−2−ピロリドン;71重量%を90℃で4時間撹拌溶解して製膜原液を調製した。この製膜原液を不織布にアプリケータを用いて総厚み200μmになるように塗布し、ただちに水浴中に浸漬して凝固させ、ポリスルホン系高分子分離膜を得た。得られたポリスルホン系高分子分離膜は、クラック等の欠点が無いものであった。
【0064】
また、この分離膜の性能を評価した結果、水透過性能が0.66m/m/hr、接触角が45.0°であった。
【0065】
表1に評価の結果をまとめた。
【0066】
<実施例6>
ポリスルホン系高分子;20重量%、ポリエチレングリコールG;3重量%、ポリエチレングリコールE;6重量%、N−メチル−2−ピロリドン;71重量%を90℃で4時間撹拌溶解して製膜原液を調製した。この製膜原液を不織布にアプリケータを用いて総厚み200μmになるように塗布し、ただちに水浴中に浸漬して凝固させ、ポリスルホン系高分子分離膜を得た。得られたポリスルホン系高分子分離膜は、クラック等の欠点が無いものであった。
【0067】
また、この分離膜の性能を評価した結果、水透過性能が0.85m/m/hr、接触角が43.3°であった。
【0068】
表1に評価の結果をまとめた。
【0069】
<比較例1>
ポリスルホン系高分子;20重量%、ポリエチレングリコールF;3重量%、ポリエチレングリコールD;6重量%、N−メチル−2−ピロリドン;71重量%を90℃で4時間撹拌溶解して製膜原液を調製した。この製膜原液を不織布にアプリケータを用いて総厚み200μmになるように塗布し、ただちに水浴中に浸漬して凝固させ、ポリスルホン系高分子分離膜を得た。得られたポリスルホン系高分子分離膜は、クラック等の欠点が無いものであった。
【0070】
また、この分離膜の性能を評価した結果、水透過性能が0.43m/m/hr、接触角が49.4°であった。
【0071】
表1に評価の結果をまとめた。
【0072】
<比較例2>
ポリスルホン系高分子;20重量%、ポリエチレングリコールJ;3重量%、ポリエチレングリコールD;6重量%N−メチル−2−ピロリドン;71重量%を90℃で4時間撹拌溶解して製膜原液を調製した。この製膜原液を不織布にアプリケータを用いて総厚み200μmになるように塗布し、ただちに水浴中に浸漬して凝固させ、ポリスルホン系高分子分離膜を得た。得られたポリスルホン系高分子分離膜は、クラック等の欠点が無いものであった。
【0073】
また、この分離膜の性能を評価した結果、水透過性能が0.24m/m/hr、接触角が31.6°であった。
【0074】
表1に評価の結果をまとめた。
【0075】
<比較例3>
ポリスルホン系高分子;20重量%、ポリエチレングリコールG;3重量%、ポリエチレングリコールA;6重量%、N−メチル−2−ピロリドン;71重量%を90℃で4時間撹拌溶解して製膜原液を調製した。この製膜原液を不織布にアプリケータを用いて総厚み200μmになるように塗布し、ただちに水浴中に浸漬して凝固させ、ポリスルホン系高分子分離膜を得た。得られたポリスルホン系高分子分離膜は、クラック等の欠点が無いものであった。
【0076】
また、この分離膜の性能を評価した結果、水透過性能が0.37m/m/hr、接触角が52.9°であった。
【0077】
表1に評価の結果をまとめた。
【0078】
<比較例4>
ポリスルホン系高分子;20重量%、ポリエチレングリコールG;3重量%、ポリエチレングリコールF;6重量%、N−メチル−2−ピロリドン;71重量%を90℃で4時間撹拌溶解して製膜原液を調製した。この製膜原液を不織布にアプリケータを用いて総厚み200μmになるように塗布し、ただちに水浴中に浸漬して凝固させ、ポリスルホン系高分子分離膜を得た。得られたポリスルホン系高分子分離膜は、クラック等の欠点が無いものであった。
【0079】
また、この分離膜の性能を評価した結果、水透過性能が0.39m/m/hr、接触角が54.9°であった。
【0080】
表1に評価の結果をまとめた。
【0081】
<比較例5>
ポリスルホン系高分子;20重量%、ポリエチレングリコールG;3重量%、N−メチル−2−ピロリドン;77重量%を90℃で4時間撹拌溶解して製膜原液を調製した。この製膜原液を不織布にアプリケータを用いて総厚み200μmになるように塗布し、ただちに水浴中に浸漬して凝固させ、ポリスルホン系高分子分離膜を得た。得られたポリスルホン系高分子分離膜は、クラック等の欠点が無いものであった。
【0082】
また、この分離膜の性能を評価した結果、水透過性能が0.11m/m/hr、接触角が45.2°であった。
【0083】
表1に評価の結果をまとめた。
【0084】
<比較例6>
ポリスルホン系高分子;20重量%、ポリエチレングリコールD;6重量%、N−メチル−2−ピロリドン;74重量%を90℃で4時間撹拌溶解して製膜原液を調製した。この製膜原液を不織布にアプリケータを用いて総厚み200μmになるように塗布し、ただちに水浴中に浸漬して凝固させ、ポリスルホン系高分子分離膜を得た。得られたポリスルホン系高分子分離膜は、クラック等の欠点が無いものであった。
【0085】
また、この分離膜の性能を評価した結果、水透過性能が0.45m/m/hr、接触角が61.2°であった。
【0086】
表1に評価の結果をまとめた。
【0087】
<比較例7>
ポリスルホン系高分子;20重量%、ポリビニルピロリドンE;3重量%、ポリビニルピロリドンB;6重量%、N−メチル−2−ピロリドン;71重量%を90℃で4時間撹拌溶解して製膜原液を調製した。この製膜原液を不織布にアプリケータを用いて総厚み200μmになるように塗布し、ただちに水浴中に浸漬して凝固させ、ポリスルホン系高分子分離膜を得た。得られたポリスルホン系高分子分離膜は、クラック等の欠点が無いものであった。
【0088】
また、この分離膜の性能を評価した結果、水透過性能が0.17m/m/hr、接触角が39.8°であった。
【0089】
表1に評価の結果をまとめた。
【0090】
<比較例8>
ポリスルホン系高分子;20重量%、ポリビニルピロリドンD;3重量%、ポリビニルピロリドンB;6重量%、N−メチル−2−ピロリドン;71重量%を90℃で4時間撹拌溶解して製膜原液を調製した。この製膜原液を不織布にアプリケータを用いて総厚み200μmになるように塗布し、ただちに水浴中に浸漬して凝固させ、ポリスルホン系高分子分離膜を得た。得られたポリスルホン系高分子分離膜は、クラック等の欠点が無いものであった。
【0091】
また、この分離膜の性能を評価した結果、水透過性能が0.15m/m/hr、接触角が41.1°であった。
【0092】
表1に評価の結果をまとめた。
【0093】
<比較例9>
ポリスルホン系高分子;20重量%、ポリビニルピロリドンC;3重量%、ポリビニルピロリドンA;6重量%、N−メチル−2−ピロリドン;71重量%を90℃で4時間撹拌溶解して製膜原液を調製した。この製膜原液を不織布にアプリケータを用いて総厚み200μmになるように塗布し、ただちに水浴中に浸漬して凝固させ、ポリスルホン系高分子分離膜を得た。得られたポリスルホン系高分子分離膜は、クラック等の欠点が無いものであった。
【0094】
また、この分離膜の性能を評価した結果、水透過性能が0.14m/m/hr、接触角が42.5°であった。
【0095】
表1に評価の結果をまとめた。
<比較例10>
ポリスルホン系高分子;20重量%、N−メチル−2−ピロリドン;80重量%を90℃で4時間撹拌溶解して製膜原液を調製した。この製膜原液を不織布にアプリケータを用いて総厚み200μmになるように塗布し、ただちに水浴中に浸漬して凝固させ、ポリスルホン系高分子分離膜を得た。得られたポリスルホン系高分子分離膜は、クラック等の欠点が無いものであった。
【0096】
また、この分離膜の性能を評価した結果、水透過性能が0.03m/m/hr、接触角が69.4°であった。
【0097】
表1に評価の結果をまとめた。
【0098】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明に係る分離膜は、各種分離膜分野で好適に使用できる。飲料水製造、浄水処理、排水処理などの水処理分野、医薬品製造分野、食品工業分野、血液浄化用膜分野に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスルホン系高分子と、重量平均分子量が100,000以上300,000以下である高分子量ポリエチレングリコールおよび重量平均分子量が1,000以上20,000以下である低分子量ポリエチレングリコールが含まれる製膜原液を用いることを特徴とする分離膜の製造方法。

【公開番号】特開2011−50914(P2011−50914A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−204395(P2009−204395)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】