分離膜の製造方法

【課題】使用する洗浄液の量を抑制した効率的な膜の洗浄方法によって、透水性、分離特性、低ファウリング性に優れた分離膜を提供する。
【解決手段】分離膜の形成後に、分離膜に蒸気および/または液体を5m/s以上の流束で接触させる分離膜の製造方法であって、蒸気および/または液体に接触した後の平均粒径0.083μmのポリスチレン微粒子の阻止率が80%以上である、分離膜の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料水製造、浄水処理、廃水処理などの水処理分野、食品工業分野に好適な分離膜に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から分離膜は、飲料水製造、下廃水処理、電子工業、化学工業、機械工業におけるプロセス用水製造、食品工業、医療等の様々な分野において、有用成分の濃縮あるいは、分離・回収、造水、気体中の微粒子除去などに使われている。それぞれの用途に応じて、膜孔径と透過性能の制御と、物理的強度と化学的強度を同時に達成する必要があり、様々な技術開発や工夫がなされている。今後、さらに高温・高圧下など過酷な使用環境において使用されることが予想され、分離性能や透過性能、物理的・化学的耐久性に加え、耐熱性も同時に満たす分離膜の要求がますます高まっている。
【0003】
これらの分離膜には、様々な種類、平板状、中空糸状などの様々な形態のものがあり、精密濾過膜や限外濾過膜などの高分子分離膜の製法としては、相分離法、延伸法、エッチング法などがある。相分離法の一種である非溶媒誘起相分離法では、ポリマーと溶媒からなる製膜原液を非溶媒で凝固させる過程で相分離が起こり、多孔質構造が形成された後、形成された分離膜中の溶媒を洗浄液で洗浄して分離膜を得る方法が知られている(特許文献1参照)。また、特許文献1では、熱水等に浸漬させて溶媒等の洗浄方法が開示されている。しかしながら、一般的に大量の洗浄液が使用されるため、その洗浄液が廃液になるなどの問題がある。廃液から溶媒を回収する場合もあるが、溶媒の濃度が希薄であるため、回収効率が悪いという問題がある。
【0004】
さらに、膜面に熱水等を掛ける方法もあるが、膜内部まで洗浄しようとすると浸漬方法同様大量の洗浄液が必要となる問題点がある。
そのため、いずれの場合でも分離膜のコストアップにつながってしまう。
【0005】
また、溶媒を取り除く方法として蒸発法などがあるが、溶媒によっては沸点が高すぎて膜が融け構造が変化したり、蒸発の過程で溶媒の濃度が高くなり膜面の孔径が変化し求めている孔径が得られなくなったりするという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−135939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の技術の上述した問題点を解決し、少量の洗浄液で膜の内部まで効率的に溶媒と添加剤などの洗浄を実現することができる分離膜に好適な製造方法を提供すること主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は以下のとおり構成されるものである。
【0009】
(1)形成後の分離膜に蒸気および/または液体を5m/s以上の流束で接触させて前記分離膜に含まれる溶媒を洗浄することで、平均粒径0.083μmのポリスチレン微粒子の阻止率が80%以上である分離膜を得る工程を備える、分離膜の製造方法。
【0010】
(2)蒸気および/または液体の温度が10℃以上150℃以下であることを特徴とする(1)に記載の分離膜の製造方法。
【0011】
(3)分離膜を構成する有機樹脂が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂およびポリエーテルスルホン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする(1)または(2)に記載の分離膜の製造方法。
【0012】
(4)有機樹脂を溶媒に溶解させた製膜原液を凝固液に接触させて形成された分離膜に、分離膜に蒸気および/または液体を5m/s以上の流束で接触させることを備える分離膜の製造方法であって、
前記蒸気および/または液体は、有機樹脂を実質的に溶解せず、かつ、溶媒の蒸気および/または液体に対する溶解度が0.01g/g以上であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の分離膜の製造方法。
【0013】
(5) 分離膜の単位面積当たりの蒸気および/または液体の使用量が、1L/cm以下である、(1)〜(4)のいずれかに記載の分離膜の製造方法。
【0014】
(6)前記流束は、500m/s以下である、(1)〜(5)のいずれかに記載の分離膜の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、少量の蒸気および/または液体で分離膜の洗浄を行うことができ、透水性、分離特性、低ファウリング性に優れた分離膜の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例および比較例の結果をまとめた図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に分離膜の構成および分離膜の製造方法について詳細に説明する。
【0018】
1.分離膜
分離膜としては、分離機能を有する単一の層により構成されるものでも良いが、透水性と分離特性とを両立させる観点では、実質的に分離機能を持たない多孔性の基材と分離機能を有する多孔質層とを備えた複合分離膜であることが好ましい。ここで、本発明における多孔質層とは、電子顕微鏡で断面あるいは表面の孔が直径10nm以上の孔を有する構造である。
【0019】
多孔質層は分離機能を有するもので、なかでも、多孔質層を構成する有機樹脂としては、たとえば、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂などを例示することができる。その中でも原液粘度による製膜性や耐薬品性などの点からみてポリフッ化ビニリデン系樹脂が特に好ましい。
【0020】
2.製造方法
(A)多孔質層の形成
分離機能を有する分離膜は、例えば、ポリフッ化ビニリデン系樹脂製の複合分離膜の場合、ポリフッ化ビニリデン系樹脂及び開孔剤などを含む製膜原液を、基材の片表面若しくは両表面に接触させ、ポリフッ化ビニリデン系樹脂に対する非溶媒を含む凝固液と接触させて凝固させ多孔質層を形成することにより製造することができる。このとき、基材の表面に製膜原液を接触させる手段は、製膜原液の塗布でもよく、また、基材を製膜原液に浸漬させる方法でもよい。基材に製膜原液を塗布する場合には、基材の片面に塗布しても構わないし、両面に塗布しても構わない。基材とは別に多孔質層のみを形成した後に両層を接合する方法でもよい。
【0021】
そして、製膜原液を凝固させるにあたっては、基材上の製膜原液被膜のみを凝固液に接触させる方法でもよいし、また、製膜原液被膜を基材ごと凝固液に浸漬する方法でもよい。製膜原液被膜のみを凝固液に接触させるためには、例えば、基材上に形成された製膜原液被膜が下側に位置するようにして凝固浴表面と接触させる方法や、ガラス板、金属板などの平滑な板の上に基材を接触させて、凝固浴が基材側に回り込まないように貼り付け、製膜原液被膜を有する基材を板ごと凝固浴に浸漬する方法や口金から押出したりガラス板上にキャストしたりして成形した後、凝固浴に浸漬させる方法などがある。後者の方法では、基材を板に貼り付けてから製膜原液の被膜を形成しても構わないし、基材に製膜原液の被膜を形成してから板に貼り付けても構わない。
【0022】
そして、製膜原液には、前記したポリフッ化ビニリデン系樹脂などの有機樹脂の他に、必要に応じて開孔剤やそれらを溶解する溶媒等を添加してもよい。
【0023】
製膜原液に多孔質形成を促進する作用を持つ開孔剤を加える場合、その開孔剤は、凝固液によって抽出可能なものであればよく、凝固液への溶解性の高いものが好ましい。たとえば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリオキシアルキレン類や、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポルアクリル酸などの水溶液高分子やグリセリンを用いることもできる。
【0024】
また、本発明において、開孔剤としては、ポリオキシアルキレン構造又は、脂肪酸エステル構造又は水酸基を含有している界面活性剤を用いることができる。界面活性剤の使用により、目的とする細孔構造を得ることが容易になる。
【0025】
ポリオキシアルキレン構造としては、
−(CHCHO)−、 −(CHCH(CH)O)−、 −(CHCHCHO)−、 −(CHCHCHCHO)
などを挙げることができるが、特に親水性の観点から、
−(CHCHO)
の、ポリオキシエチレンが好ましい。
【0026】
脂肪酸エステル構造としては、長鎖脂肪族基を有する脂肪酸が挙げられる。長鎖脂肪族基としては、直鎖状、分岐状いずれでも良いが、脂肪酸としては、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリン酸、パルミチン酸などが挙げられる。また、油脂由来の脂肪酸エステル、例えば牛脂、パーム油、ヤシ油等も挙げられる。
【0027】
水酸基を有する界面活性剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、グリセリン、ソルビトール、ブドウ糖、ショ糖などを挙げることができる。
【0028】
本発明において開孔剤として用いる界面活性剤は、ポリオキシアルキレン構造、脂肪酸エステル構造、水酸基のうち2つ以上を含むものが好ましい。
【0029】
中でも、ポリオキシアルキレン構造、脂肪酸エステル構造及び水酸基の全てを含有している界面活性剤が特に好ましく用いられ、たとえば、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとして、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸ソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルとして、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコールを挙げることができる。これらの界面活性剤は、多孔質層に残存し乾燥させても透水性、阻止性が低下しないという特徴を併せ持つので好ましい。
【0030】
また、製膜原液中に、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、他の有機樹脂及び開孔剤などを溶解させるための溶媒を用いる場合、その溶媒としては、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、メチルエチルケトンなどを用いることができる。中でもポリフッ化ビニリデン系樹脂に対する溶解性の高いNMP、DMAc、DMF、DMSOを好ましく用いることができる。
【0031】
製膜原液には、その他、非溶媒を添加することもできる。非溶媒は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂や他の有機樹脂を溶解しないものであり、ポリフッ化ビニリデン系樹脂及び他の有機樹脂の凝固の速度を制御して細孔の大きさを制御するように作用する。非溶媒としては、水や、メタノール、エタノールなどのアルコール類を用いることができる。なかでも廃水処理の容易さや価格の点から水が好ましい。これらの混合であってもよい。
【0032】
本発明において溶媒とは、60℃以下の低温領域でも有機樹脂を5重量%以上溶解させることが可能な液体であり、非溶媒とは有機樹脂の融点または溶媒の沸点まで、有機樹脂を溶解も膨潤もさせない液体と定義する。
【0033】
製膜原液の組成において、ポリフッ化ビニリデン系樹脂は5重量%以上30重量%以下、開孔剤は0.1重量%以上15重量%以下、溶媒は45重量%以上94.8重量%以下、非溶媒は0.1重量%以上10重量%以下の範囲内であることが好ましい。中でも、ポリフッ化ビニリデン系樹脂は、極端に少ないと多孔質層の強度が低くなり、多すぎると透水性が低下することがあるので、8重量%以上20重量%以下の範囲がより好ましい。開孔剤は、少なすぎると透水性が低下し、多すぎると多孔質層の強度が低下することがある。また、極端に多いとポリフッ化ビニリデン系樹脂中に過剰に残存して使用中に溶出し、透過水の水質が悪化したり、透水性変動をしたりすることがある。したがって、より好ましい範囲は、0.5重量%以上10重量%以下である。さらに、溶媒は少なすぎると原液がゲル化しやすくなり、多すぎると多孔質層の強度が低下するので、より好ましくは60重量%以上90重量%以下の範囲である。また、非溶媒は、あまり多いと原液のゲル化が起こりやすくなり、極端に少ないと細孔やマクロボイドの大きさの制御が難しくなる。したがって、より好ましくは0.5重量%以上5重量%以下である。
【0034】
一方、凝固浴としては、非溶媒、または非溶媒と溶媒とを含む混合溶液を用いることができる。製膜原液にも非溶媒を用いる場合、凝固浴における非溶媒は、凝固浴の少なくとも80重量%とするのが好ましい。少なすぎるとポリフッ化ビニリデン系樹脂の凝固速度が遅くなり細孔径が大きくなったりする。より好ましくは、85重量%以上100重量%以下の範囲である。一方、製膜原液に非溶媒を用いない場合、製膜原液にも非溶媒を用いる場合よりも、凝固浴における非溶媒の含有量を少なくすることが好ましいが、少なくとも60重量%とするのが好ましい。非溶媒が多いと、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の凝固速度が速くなって多孔質層の表面は緻密となり透水性が低下することがある。より好ましくは60重量%以上99重量%以下の範囲がよい。凝固浴中の非溶媒の含有量を調整することにより、多孔質層表面の孔径やマクロボイドの大きさを制御することができる。なお、凝固浴の温度は、あまり高いと凝固速度が速すぎるようになり、逆に、あまり低いと凝固速度が遅すぎるようになるので、通常、15℃以上80℃以下の範囲で選定するのが好ましい。より好ましくは20℃以上60℃以下の範囲である。
【0035】
さらに、凝固の時間は、あまり早いと分離膜が形成できなくなり、あまり遅いと効率が悪くなるので、通常、5秒間以上ら180秒間以下の範囲で設定するのが好ましい。より好ましくは10秒以上ら60秒以下の範囲である。
【0036】
(B)洗浄
上述のように溶媒を用いて形成された分離膜には、その溶媒が含まれている。そこで、形成後の分離膜に蒸気および/または液体を接触させることで、分離膜中の溶媒を除去し、それによって分離膜中の溶媒濃度を低減させることができる。つまり、本実施形態の製造方法は、蒸気および/または液体により、分離膜を洗浄する工程を備える。
【0037】
分離膜の形成後の洗浄において、洗浄液は、非溶媒、または非溶媒と溶媒とを含む混合溶液を用いることができる。「非溶媒」としては、上述の(A)欄で説明した非溶媒が好ましく用いられ、「溶媒」としては上述の(A)欄で説明した溶媒が好ましく用いられる。具体的には、非溶媒としては水が好ましく、溶媒としては製膜原液の溶媒が好ましい。非溶媒を用いる場合、洗浄液における非溶媒は、洗浄液の少なくとも90重量%とするのが好ましい。少なすぎるとポリフッ化ビニリデン系樹脂の洗浄効率が悪くなる。より好ましくは、95重量%以上100重量%以下の範囲である。
【0038】
また、分離膜の形成後の洗浄においては、浸漬方法により溶液中で分離膜を洗浄するのが一般的であるが、大量の洗浄液が必要となる。逆に洗浄液を少なくすると、洗浄効率が低下してしまう。より少ない洗浄液を用いて、効率的に分離膜を洗浄するには、本発明のとおり、分離膜に蒸気および/または液体を5m/s以上の流束で接触させる。なお、流束の上限は、特に限定されないが、蒸気および/または液体の取扱性・安全性、分離膜の強度、洗浄液量や消費エネルギー量等を勘案して適切に決定すればよい。分離膜に蒸気および/または液体を接触させるにあたっては、洗浄液の蒸気および/または液体を分離膜の表面または分離膜の裏面、あるいは分離膜の両面から噴霧して接触させるのが好ましい。
【0039】
蒸気および/または液体を噴霧する方法は、特に限定されないが、洗浄の液体を熱媒および電熱線ヒーターにより加熱してポンプを介してスプレーノズルから噴霧させることや、あるいは、スチームを利用し飽和蒸気を噴霧させることが好ましい。
【0040】
ここで、噴霧する蒸気および/または液体の流束は、上述した通り5m/s以上が必要であるが、遅すぎると効率が悪く、速すぎると分離膜の分離層を破損させる場合などがあるため、本発明においては、5m/s以上が好ましく、500m/s以下であることが好ましく、より好ましくは5m/s以上、より好ましくは200m/s以下の範囲であり、さらには50m/s以上、また150m/s以下の範囲が好ましい。
【0041】
さらに、噴霧する蒸気および/または液体の温度は低すぎると凍ってしまい、高すぎると分離膜が変形などするおそれがあることから、通常、10℃から150℃以下の範囲で設定するのが好ましい。より好ましくは℃以下であり、より好ましくは50℃から98℃の範囲である。
【0042】
ここで、分離膜の形成後の分離膜に接触させる蒸気および/または液体の種類は、特に限定されないが、分離膜を構成する有機樹脂に対する非溶媒、または非溶媒と溶媒を含む混合溶液を用いることができる。
【0043】
ここで、分離膜を形成する有機樹脂に対する非溶媒と溶媒としては、上述した、非溶媒と溶媒から選択して使用することができる。
【0044】
分離膜に接触させる蒸気および/または液体は、有機樹脂を実質的に溶解しないことが好ましい。また、分離膜に接触させる蒸気および/または液体に対する、分離膜中の溶媒の溶解度は、0.01g/g以上が好ましい。溶解度がこの範囲であることで、分離膜中の溶媒の蒸気および/または液体への置換効率が良好であり、高い洗浄効率を得ることができる。溶解度は、より好ましくは0.05g/g以上である。ここで、溶解度とは、常温の蒸気および/または液体1gに溶ける分離膜中の溶媒の量(g)で表される。
【0045】
洗浄に用いる「非溶媒」としては、水や、メタノール、エタノールなどのアルコール類を用いることができるが、なかでも廃水処理の容易さや価格の点から特に水が好ましい。
【0046】
また、本発明の目的を逸脱しない範囲で分離膜形成後の分離膜に接触させる蒸気および/または液体に、分離膜を形成する有機樹脂に対する非溶媒以外の有機物、無機物が含まれていても構わず、洗浄力強化のために例えば界面活性剤が含まれていても良い。
【0047】
なお、洗浄に用いられる液体の量は、分離膜の面積100cmあたり1L以下であることが好ましく、500ml以下であることが好ましく、200ml以下であることが好ましい。
【0048】
また、洗浄による廃液中に含まれる分離膜から洗い出された溶媒の濃度は、10重量%以下、7.0重量%以下、5.0重量%以下、または2.0重量%以下であることが好ましい。
【0049】
蒸気および/または液体を接触させることで、その後に分離膜から絞り出された液体における溶媒の濃度を、10重量%以下、5.0重量%以下、2.0重量%以下、または1.0重量%以下にすることができる。
【0050】
このようにして得られた分離膜は、平均粒径0.083μmの微粒子(公称粒径0.032μm)の阻止率が80%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上であり、95%以上であることがさらに好ましい。この阻止率を満足することにより、下廃水処理にあたって、菌体や汚泥などがリークしにくく、かつ菌体や汚泥による目詰まりおよびろ過差圧の上昇が起きにくくなるので、寿命が極端に短くなることを回避できる。
【0051】
さらに、本発明の多孔質分離平膜は、多孔質樹脂層表面の平均孔径が0.01μm以上0.2μm以下の範囲にあり、かつ、孔径の標準偏差が0.1μm以下であることが好ましい。多孔質分離平膜がこの範囲内にあると、菌体や汚泥などがリークすることのない高い排除率と、高い透水性を両立でき、さらに目詰まりしにくく、透水性を長時間保持できる。平均孔径は、小さすぎると透水量が低下することがあるので、通常は0.02μm以上が好ましく、より好ましくは0.04μm以上である。多孔質樹脂層が多孔質基材の両面に存在する場合、少なくとも一方の多孔性樹脂層が、この条件を満たしていればよい。ここで、平均孔径および標準偏差は、倍率10,000倍の走査型電子顕微鏡観察における、9.2μm×10.4μmの範囲内で観察できる細孔すべての直径の平均およびその標準偏差を測定することにより求めることができる。
【0052】
上記の孔径分布の範囲が好ましい理由は、必ずしも明らかになっていないが、以下のように推測できる。すなわち、孔径の標準偏差が0.1μmを超えると、多孔質樹脂層表面の細孔は、広い孔径分布を持つようになる。孔径の大きい孔は、水を通しやすいので、分離膜の透水率の初期値の向上には貢献する。しかし、水が大きい孔を優先して通るために、下廃水処理を続けると、大きい孔から先に異物がつまり始める。そうなると、小さい孔ばかりが残って、有効な細孔の平均孔径が急激に低下し、結果として分離膜の透水率も急激に低下する。孔径の標準偏差が上記の範囲内であれば、このような不都合が起こりにくいと考えられる。
【0053】
本発明の分離膜の形状は、平膜でも中空糸膜でも良く、その用途によって選択される。平膜の場合は、厚みが10μm以上1mm以下、さらには30μm以上500μm以下の範囲内であることが好ましい。平膜の場合、織物、編み物、不織布などの面状の支持材にポリマーをコーティング又は一部含浸させてもよく、その場合、この面状支持材を含む厚みが上述の範囲内にあることが好ましい。
【0054】
一方、中空糸膜の場合、内径が100μm以上10mm以下、さらには150μm以上8mm以下、外径が120μm以上15mm以下、さらには200μm以上12mm以下、膜厚が20μm以上3mm以下、さらには50μm以上1mm以下の範囲になるように設計することが好ましい。中空糸膜の場合も、ポリエステル、ナイロンなどの有機繊維、ガラス繊維、金属繊維などを筒状に編んだものを支持材としてその上にポリマーをコーティングしたものや、その支持材の一部にポリマーを含浸させたものでも良い。
【0055】
また、こうして得られた分離平膜は、ナノろ過膜、限外ろ過膜、精密ろ過膜とのいずれであってもよく、分離対称物質の大きさに応じて適当な一種以上の膜を選択、組み合わせればよい。例えば、下廃水処理用としては特に限外ろ過膜、精密ろ過膜が好ましい。
【実施例】
【0056】
以下に具体的な実施例を挙げて本発明を説明するが、これら実施例により何ら限定されるものではない。なお、得られた分離膜の膜性能評価は以下の方法で行った。
【0057】
(1)透水性
分離膜の透水性の測定は、分離膜を直径50mmの円形に切り出し、円筒型のろ過ホルダーにセットし、蒸留水を25℃で、水頭高さ1mで5分間予備透過させた後、続けて透過させて透過水を3分間採水して求めた。
【0058】
(2)ポリスチレン微粒子阻止率
ポリスチレン微粒子の阻止率は、攪拌式セル(アドバンテック(株)製VHP−43K)に分離膜(直径4.3cm)をセットし、評価圧力100kPa、攪拌速度700rpmにて、蒸留水にポリスチレン微粒子(Magshere(株)製 平均粒径0.083μm、公称粒径0.032μm)を20ppmの濃度になるように分散させてなる50mlの評価原液を10mlろ過した後、透過液3mlと撹拌式セル内に残存した評価原液をサンプリングした。評価原液と透過液の波長(0.083μm:250nm)の紫外線の吸光度から、以下に示す式によって求めた。
【0059】
微粒子阻止率=〔(原液の吸光度−透過液の吸光度)/原液の吸光度〕×100
ここで、吸光度測定には分光光度計(U−3200)(日立製作所製)を用いた。
【0060】
(3)分離膜中の溶媒濃度および洗浄液中の溶媒の濃度測定
洗浄後の分離膜中の溶媒濃度および洗浄液(廃液)中の溶媒濃度(重量%)の測定は、屈折計((株)アタゴDR−A1デジタルアッベ屈折計)を使用して求めた。
【0061】
洗浄後の分離膜中の溶媒濃度は、洗浄後の分離膜を密封袋に入れて万力で液体を絞り出し、得られた液体を上記屈折計にて解析することで測定した。また、洗浄液中の溶媒濃度は、洗浄後の廃液を集めて、上記屈折計にて解析することで測定した。
【0062】
(4)洗浄用蒸気および/または液体の量の測定
表中に示す処理液(洗浄用)の「溶液量」は、次のようにして求めた。
【0063】
蒸気発生器を用いた場合、蒸気発生器の吐出口を100Lのビニール袋に差し込み、表に示すそれぞれの時間(60秒間、120秒間)で蒸気を吐出した後、ビニール袋の重量を測定し、吐出前のビニール袋の重量との差を算出することで、吐出された蒸気および/または液体の重量を測定し、さらに得られた値に基づいて25℃での液体の体積を算出した。
【0064】
スプレーを用いた場合の洗浄液の「溶液量」は、スプレーノズルのメーカーが公称する吐出量に基づいて算出した。
【0065】
また、後述する熱水浸漬による洗浄および流温水での洗浄については、洗浄に用いた水の体積を、そのまま洗浄液の溶液量とした。
【0066】
また、ウォーターバスで水を沸騰させた時の、立ち上る水蒸気および/または液体の水の量は、ウォーターバスの水面より3cm離れた位置に分離膜の膜表面が水蒸気および/または液体の水にあたるように60秒間セットし、水蒸気および/または液体の水との接触前後の分離膜の重さを差し引き、分離膜に接触した水の量、つまり処理液の「溶液量」とした。
【0067】
(5)蒸気および/または液体の流束の算出
蒸気発生器(スチームクリーナー ケルヒヤ−ジャパン(株)製 SC1002)もしくはボイラから吹き出される蒸気および/または液体の流束は、吐出量(35,000cm/min)と吐出口の径(0.3cm)から算出した。なお、ここでの吐出量はメーカーの公称値である。
【0068】
また、スプレーノズルから吹き出される洗浄液の液体の流束は、吐出口の径(0.1cm)と液体の吐出量(500cm/min)から算出した。なお、ここでの吐出量はメーカーの公称値である。
【0069】
さらに、ウォーターバスから立ち上がる水蒸気および/または液体の水の流束は、ウォーターバスで水を沸騰させ、立ち上る水蒸気および/または液体の水の流束を熱線風速計(KANOMAXANEMOMASTER MODEL 6071)を用いて、水面より3cmの位置で測定して飽和蒸気の流束を求めた。
【0070】
一方、温水洗浄時の液体の流束は、ノズルの吐出口の径(1.5cm)と温水の吐出量(6,000cm/min)から流束を算出した。なお、ここでの吐出量は、ノズルメーカーの公称値である。
【0071】
(6)洗浄溶液である蒸気および/または液体に対する有機樹脂の溶解度測定
実施例および比較例では分離膜を構成する有機樹脂としてポリフッ化ビニリデンを使用し、分離膜形成後の分離膜に接触させる蒸気および/または液体として蒸留水(和光純薬工業株式会社)を使用した。ここでポリフッ化ビニリデン樹脂の水への溶解度は、200gのポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF/呉羽化学工業株式会社製、KFT#850)を蒸留水で水洗後、ビーカーに200gの蒸留水と100gのポリフッ化ビニリデン樹脂をいれ30分間95℃煮沸させた後、煮沸液を流し出しポリフッ化ビニリデン樹脂の重量を測定したところ、ポリフッ化ビニリデン樹脂重量変化がないことから、ポリフッ化ビニリデン樹脂が水に実質的に溶解しないことを確認した。
【0072】
(7)溶媒の分離膜形成後の分離膜に接触させる蒸気および/または液体に対する溶解度測定
実施例および比較例で分離膜を構成する有機樹脂の溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミドを使用し、分離膜形成後の分離膜に接触させる蒸気および/または液体として蒸留水(和光純薬工業株式会社)を使用した。ここで、溶媒であるN,N−ジメチルホルムアミドの溶解度は、蒸留水1gに対してN,N−ジメチルホルムアミド0.1gを混ぜ合わせたところ、明らかに混和され、洗浄溶液である蒸気および/または液体の溶媒に対する溶解度が0.1g/g以上であることを確認した。
【0073】
(実施例1)
分離膜を構成する有機樹脂としてポリフッ化ビニリデン(PVDF/呉羽化学工業株式会社製、KFW#850)を用いた。また、開孔剤としてモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、非溶媒としてHOをそれぞれ用いた。これらを95℃で十分に攪拌し、次の組成を有する製膜原液を調製した。
【0074】
ポリフッ化ビニリデン(PVDF) :17.0重量%
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン : 8.0重量%
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF) :72.0重量%
O : 3.0重量%
次に、上記製膜原液を30℃に冷却した後、厚み100μmになるように、密度0.42g/cm、厚み160μmのポリエステル繊維不織布基材の平滑な面側に塗布し、塗布後、直ちに20℃の純水中に5分間浸漬させ分離膜を形成させた。分離膜の形成後の分離膜中の溶媒濃度は20.2%であり、その分離膜を10cm角にカットし、100Lのビニール袋の中にカットした分離膜と蒸気発生器のノズルの先を入れビニール袋の入り口を封止して、98℃の水蒸気を60秒間、蒸気発生器から吐出される飽和蒸気を分離膜の膜表面より3cm離れた位置から82.6m/sの流束で膜表面均一に噴霧して溶媒であるN,N−ジメチルホルムアミドおよび開孔剤であるモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンを洗い流し、分離膜を製造した。その時の分離膜中の溶媒濃度が0.67%であり、また、洗浄処理液(廃液)の溶媒濃度は1.62%で処理液の量は33mlと非常に少量であった。
【0075】
さらに、上記分離膜について、平均粒径0.083μmポリスチレン微粒子の阻止率を測定したところ、98.9%と高い値であった。また、純水透過係数は49.2×10−9/m/s/Paであった。なお、これらの結果を、他の実施例および比較例の結果とともに表1と図1に示す。
【0076】
実施例1では蒸気発生器から吐出される飽和蒸気を分離膜の膜表面より噴霧させたことにより分離膜中の溶媒濃度が低減でき処理液の量も少量で洗浄効率が良かった。
【0077】
(実施例2)
実施例1と同条件で製膜原液を調製し、ポリエステル繊維不織布基材の平滑な面側に製膜原液を塗布して、塗布後、直ちに20℃の純水中に5分間浸漬させて分離膜を形成させた。分離膜の形成後、10cm角にカットし、100Lのビニール袋の中にカットした分離膜と蒸気発生器のノズルの先を入れビニール袋の入り口を封止して、98℃の水蒸気を120秒間、蒸気発生器から吐出される飽和蒸気を分離膜の膜表面より3cm離れた位置から82.6m/sの流束で膜表面均一に噴霧して溶媒であるN,N−ジメチルホルムアミドおよび開孔剤であるモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンを洗い流し、分離膜を製造した。その時の分離膜中の溶媒濃度が0.50%であり、また、洗浄処理液の溶媒濃度は0.92%で処理液の量は58mlと少量であった。
【0078】
さらに、上記分離膜について、平均粒径0.083μmポリスチレン微粒子の阻止率を測定したところ、98.7%と高い値であった。また、純水透過係数は53.1×10−9/m/s/Paであった。なお、それらの結果を表1と図1に示す。
【0079】
実施例2は、実施例1同様に蒸気発生器から吐出される飽和蒸気を分離膜の膜表面より噴霧させたことにより分離膜中の溶媒濃度をさらに低減でき処理液の量も少量で洗浄効率が良かった。
【0080】
(実施例3)
実施例1と同条件で製膜原液を調製し、ポリエステル繊維不織布基材の平滑な面側に製膜原液を塗布して、塗布後、直ちに20℃の純水中に5分間浸漬させて分離膜を形成させた。分離膜の形成後、10cm角にカットし、100Lのビニール袋の中にカットした分離膜と蒸気発生器のノズルの先を入れビニール袋の入り口を封止して、98℃の水蒸気を120秒間、蒸気発生器から吐出される飽和蒸気を分離膜の膜表面より3cm離れた位置から150m/sの流束で膜表面均一に噴霧して溶媒であるN,N−ジメチルホルムアミドおよび開孔剤であるモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンを洗い流し、分離膜を製造した。その時の分離膜中の溶媒濃度が0.08%であり、また、洗浄処理液の溶媒濃度は0.42%で処理液の量は128mlと少量であった。
【0081】
さらに、上記分離膜について、平均粒径0.083μmのポリスチレン微粒子の阻止率を測定したところ、98.3%と高い値であった。また、純水透過係数は55.6×10−9/m/s/Paであった。なお、それらの結果を表1と図1に示す。
【0082】
実施例3では、実施例1同様に蒸気発生器から吐出される飽和蒸気を分離膜の膜表面より噴霧させたことにより分離膜中の溶媒濃度を最も低減でき処理液の量も少量で洗浄効率が良かった。
【0083】
(実施例4)
実施例1と同条件で製膜原液を調製し、ポリエステル繊維不織布基材の平滑な面側に製膜原液を塗布して、塗布後、直ちに20℃の純水中に5分間浸漬させて分離膜を形成させた。分離膜の形成後、10cm角にカットし、100Lのビニール袋の中にカットした分離膜と蒸気発生器のノズルの先を入れビニール袋の入り口を封止して、98℃の水蒸気を120秒間、蒸気発生器から吐出される飽和蒸気を分離膜の膜表面より3cm離れた位置から10m/sの流束で膜表面均一に噴霧して溶媒であるN,N−ジメチルホルムアミドおよび開孔剤であるモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンを洗い流し、分離膜を製造した。その時の分離膜中の溶媒濃度が4.42%であり、また、洗浄処理液の溶媒濃度は5.5%で処理液の量は8mlと少量であった。
【0084】
さらに、上記分離膜について、平均粒径0.083μmのポリスチレン微粒子の阻止率を測定したところ、98.9%と高い値であった。また、純水透過係数は47.8×10−9/m/s/Paであった。なお、それらの結果を表1と図1に示す。
【0085】
実施例4では、蒸気発生器から吐出される飽和蒸気を分離膜の膜表面より噴霧させたことにより分離膜中の溶媒濃度が実施例1から3に比べ若干高いが低減効果もみられ、処理液の量も少量で洗浄効率が良かった。
【0086】
(実施例5)
実施例1と同条件で製膜原液を調製し、ポリエステル繊維不織布基材の平滑な面側に製膜原液を塗布して、塗布後、直ちに20℃の純水中に5分間浸漬させて分離膜を形成させた。分離膜の形成後、10cm角にカットし、100Lのビニール袋の中にカットした分離膜とボイラースチームのノズルの先を入れビニール袋の入り口を封止して、120℃の水蒸気を60秒間、蒸気発生器から吐出される飽和蒸気を分離膜の膜表面より1cm離れた位置から150m/sの流束で膜表面均一に噴霧して溶媒であるN,N−ジメチルホルムアミドおよび開孔剤であるモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンを洗い流し、分離膜を製造した。その時の分離膜中の溶媒濃度が0.06%であり、また、洗浄処理液の溶媒濃度は0.42%で処理液の量は135mlと少量であった。
【0087】
さらに、上記分離膜について、平均粒径0.083μmのポリスチレン微粒子の阻止率を測定したところ、99.0%と高い値であった。また、純水透過係数は47.3×10−9/m/s/Paであった。なお、それらの結果を表1と図1に示す。
【0088】
実施例5では、実施例1同様に蒸気発生器から吐出される飽和蒸気を分離膜の膜表面より噴霧させたことにより分離膜中の溶媒濃度を最も低減でき処理液の量も少量で洗浄効率が良かった。
【0089】
(実施例6)
実施例1と同条件で製膜原液を調製し、ポリエステル繊維不織布基材の平滑な面側に製膜原液を塗布して、塗布後、直ちに20℃の純水中に5分間浸漬させて分離膜を形成させた。分離膜の形成後、10cm角にカットし、100Lのビニール袋の中にカットした分離膜とボイラースチームのノズルの先を入れビニール袋の入り口を封止して、150℃の水蒸気を60秒間、蒸気発生器から吐出される飽和蒸気を分離膜の膜表面より1cm離れた位置から150m/sの流束で膜表面均一に噴霧して溶媒であるN,N−ジメチルホルムアミドおよび開孔剤であるモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンを洗い流し、分離膜を製造した。その時の分離膜中の溶媒濃度が0.04%であり、また、洗浄処理液の溶媒濃度は0.41%で処理液の量は135mlと少量であった。
【0090】
さらに、上記分離膜について、平均粒径0.083μmポリスチレン微粒子の阻止率を測定したところ、98.6%と高い値であった。また、純水透過係数は42.8×10−9/m/s/Paであった。なお、それらの結果を表1と図1に示す。
【0091】
実施例6では、実施例1同様に蒸気発生器から吐出される飽和蒸気を分離膜の膜表面より噴霧させたことにより分離膜中の溶媒濃度を最も低減でき処理液の量も少量で洗浄効率が良かった。
【0092】
(実施例7)
実施例1と同条件で製膜原液を調製し、ポリエステル繊維不織布基材の平滑な面側に製膜原液を塗布して、塗布後、直ちに20℃の純水中に5分間浸漬させて分離膜を形成させた。分離膜の形成後、10cm角にカットし、100Lのビニール袋の中にカットした分離膜とスプレーノズル(YB1/8MSUP-3062 スプレーイングシステムジャパン(株)製)の先を入れビニール袋の入り口を封止して、50℃の水を60秒間、スプレーノズルから吐出される液体を分離膜の膜表面より3cm離れた位置から10m/sの流束で膜表面均一に噴霧して溶媒であるN,N−ジメチルホルムアミドおよび開孔剤であるモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンを洗い流し、分離膜を製造した。その時の分離膜中の溶媒濃度が1.92%であり、また、洗浄処理液の溶媒濃度は0.17%で処理液の量は500mlと少量であった。
【0093】
さらに、上記分離膜について、平均粒径0.083μmのポリスチレン微粒子の阻止率を測定したところ、98.6%と高い値であった。また、純水透過係数は42.8×10−9/m/s/Paであった。なお、それらの結果を表1と図1に示す。
【0094】
実施例7では、スプレーノズルから吐出される50℃の液体を分離膜の膜表面に噴霧させ洗浄させることにより、若干処理液の量が多いものの、分離膜中の溶媒濃度が低減でき洗浄効率が良かった。
【0095】
(実施例8)
分離膜を構成する有機樹脂としてポリフッ化ビニリデン(PVDF/呉羽化学工業株式会社製、KFT#1300)、また、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミドをそれぞれ用いた。これらを95℃で十分撹拌し、次の組成を有する製膜原液を調製した。
【0096】
ポリフッ化ビニリデン(PVDF) :20.0重量%
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF) :80.0重量%
次に、上記製膜原液を、中空部形成液体としてN,N−ジメチルホルムアミド/水=80/20(重量%)からなる混合溶媒を随伴させながら60℃の口金から外径1.5mm、内径0.8mmになるよう吐出し、約5cmの乾式部と通過させた後、N,N−ジメチルホルムアミド/水20/80(重量%)からなる30℃の凝固浴に浸漬させ分離膜を形成させた。
【0097】
分離膜の形成後の分離膜中の溶媒濃度は36%であり、その分離膜を長さ10cmに23本カットし、100Lのビニール袋の中にカットした分離膜と蒸気発生器のノズルの先を入れビニール袋の入り口を封止して、98℃の水を60秒間、蒸気発生器から吐出される飽和蒸気を分離膜の膜表面より3cm離れた位置から82.6m/sの流束で膜表面均一に噴霧して溶媒であるN,N−ジメチルホルムアミドを洗い流し、分離膜を製造した。その時の分離膜中の溶媒濃度が4.58%であり、また、洗浄処理液の溶媒濃度は0.52%で処理液の量は34mlであった。
【0098】
さらに上記分離膜は、外径1.42mm、内径0.81mmであり、平均粒径0.083μmのポリスチレン微粒子の阻止率を測定したところ、99.8%と高い値であった。また、純水透過係数は1.6×10−9/m/s/Paであった。なお、それらの結果を表1と図1に示す。
【0099】
実施例8では蒸気発生器から吐出される飽和蒸気を中空糸膜の分離膜の膜表面より噴霧させたことにより、溶媒濃度が高い分離膜中の溶媒濃度を少量の処理液で低減でき洗浄効率が良かった。
【0100】
(実施例9)
分離膜を構成する有機樹脂としてポリスルホン(テイジンアコモ(株)製Udel P−3500)を用いた。また、開孔剤として分子量が20,000のポリエチレングリコール(PEG)と、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、非溶媒としてHOをそれぞれ用いた。これらを95℃で十分に攪拌し、次の組成を有する製膜原液を調製した。
【0101】
ポリスルホン(PS) :15.0重量%
ポリエチレングリコール(PEG) : 5.0重量%
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF) :77.0重量%
O : 3.0重量%
次に、上記製膜原液を30℃に冷却した後、厚み100μmになるように、密度0.42g/cm、厚み160μmのポリエステル繊維不織布基材の平滑な面側に塗布し、塗布後、直ちに20℃の純水中に5分間浸漬させ分離膜を形成させた。分離膜の形成後の分離膜の膜中の溶媒濃度は21.9%であり、その分離膜を10cm角にカットし、100Lのビニール袋の中にカットした分離膜と蒸気発生器のノズルの先を入れビニール袋の入り口を封止して、98℃の水を60秒間、蒸気発生器から吐出される飽和蒸気を分離膜の膜表面より3cm離れた位置から82.6m/sの流束で膜表面均一に噴霧して溶媒であるN,N−ジメチルホルムアミドおよび開孔剤であるモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンを洗い流し、分離膜を製造した。その時の分離膜中の溶媒濃度が0.67%であり、また、洗浄処理液の溶媒濃度は0.92%で処理液の量は35mlと非常に少量であった。
【0102】
さらに、上記分離膜について、平均粒径0.083μmのポリスチレン微粒子の阻止率を測定したところ、97.1%と高い値であった。また、純水透過係数は48.7×10−9/m/s/Paであった。なお、それらの結果を表1に示す。
【0103】
実施例9では、分離膜を構成する有機樹脂としてポリスルホン樹脂を用いても、実施例1同様に蒸気発生器から吐出される飽和蒸気を分離膜の膜表面より噴霧させたことにより分離膜中の溶媒濃度がさらに低減でき処理液の量も少量で洗浄効率が非常に良かった。
【0104】
(実施例10)
分離膜を構成する有機樹脂としてポリエーテルスルホン(BASF Ultrason E6020P)を用いた。また、開孔剤として分子量が20,000のポリエチレングリコール(PEG)と、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、非溶媒としてHOをそれぞれ用いた。これらを95℃で十分に攪拌し、次の組成を有する製膜原液を調製した。
【0105】
ポリエーテルスルホン(PES) :15.0重量%
ポリエチレングリコール(PEG) : 5.0重量%
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF) :77.0重量%
O : 3.0重量%
次に、上記製膜原液を30℃に冷却した後、厚み100μmになるように、密度0.42g/cm、厚み160μmのポリエステル繊維不織布基材の平滑な面側に塗布し、塗布後、直ちに20℃の純水中に5分間浸漬させ分離膜を形成させた。分離膜の形成後の分離膜中の溶媒濃度は22.75%であり、その分離膜を10cm角にカットし、100Lのビニール袋の中にカットした分離膜と蒸気発生器のノズルの先を入れビニール袋の入り口を封止して、98℃の水を60秒間、蒸気発生器から吐出される飽和蒸気を分離膜の膜表面より3cm離れた位置から82.6m/sの流束で膜表面均一に噴霧して溶媒であるN,N−ジメチルホルムアミドおよび開孔剤であるモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンを洗い流し、分離膜を製造した。その時の分離膜中の溶媒濃度が0.67%であり、また、洗浄処理液の溶媒濃度は1.11%で処理液の量は32mlと非常に少量であった。
【0106】
さらに、上記分離膜について、平均粒径0.083μmのポリスチレン微粒子の阻止率を測定したところ、99.1%と高い値であった。また、純水透過係数は35.9×10−9/m/s/Paであった。なお、それらの結果を表1に示す。
【0107】
実施例10では、分離膜を構成する有機樹脂としてポリエーテルスルホン樹脂を用いても、実施例1同様に蒸気発生器から吐出される飽和蒸気を分離膜の膜表面より噴霧させたことにより分離膜中の溶媒濃度がさらに低減でき処理液の量も少量で洗浄効率が非常に良かった。
【0108】
(比較例1)
実施例1と同条件で製膜原液を調製し、ポリエステル繊維不織布基材の平滑な面側に製膜原液を塗布して、塗布後、直ちに20℃の純水中に5分間浸漬させて分離膜を形成させた。分離膜の形成後、10cm角にカットし、ステンレスバットに2Lの水を入れ95℃に加熱したのち分離膜を120秒間浸漬して溶媒であるN,N−ジメチルホルムアミドおよび開孔剤であるモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンを洗い流し、分離膜を製造した。その時の分離膜中の溶媒濃度が1.00%であり、また、洗浄処理液の溶媒濃度は0.03%で処理液の量は2000mlであった。
【0109】
さらに、上記分離膜について、平均粒径0.083μmのポリスチレン微粒子の阻止率を測定したところ、98.7%と高い値であった。また、純水透過係数は44.6×10−9/m/s/Paであった。なお、それらの結果を表1と図1に示す。
【0110】
比較例1では95℃の水に浸漬させて洗浄したことにより分離膜中の溶媒濃度が低減でき膜性能も良かったが、洗浄処理液が多くなり洗浄効率が悪かった。
【0111】
(比較例2)
実施例1と同条件で製膜原液を調製し、ポリエステル繊維不織布基材の平滑な面側に製膜原液を塗布して、塗布後、直ちに20℃の純水中に5分間浸漬させて分離膜を形成した。
【0112】
分離膜の形成後、10cm角にカットし、100Lのビニール袋の中にカットした分離膜とボイラースチームのノズルの先を入れビニール袋の入り口を封止して、180℃の蒸気を60秒間、蒸気発生器から吐出される飽和蒸気を分離膜の膜表面より1cm離れた位置から150m/sの流束で膜表面均一に噴霧して溶媒であるN,N−ジメチルホルムアミドおよび開孔剤であるモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンを洗い流し、分離膜を製造した。その時の分離膜中の溶媒濃度が0.08%と低く、また、洗浄処理液の処理液の量は162mlと少量であったものの、膜面が溶けた状態となった。
【0113】
さらに、上記分離膜について、平均粒径0.083μmのポリスチレン微粒子の阻止率を測定したところ、21.3%と低い値であった。また、純水透過係数は21.6×10−9/m/s/Paであった。なお、それらの結果を表1と図1に示す。
【0114】
比較例2では飽和蒸気をあてたことにより洗浄処理液の量は少量で済んだが、分離膜の表面が溶けてポリスチレン微粒子の阻止率が比較的低かった。
【0115】
(比較例3)
実施例1と同条件で製膜原液を調製し、ポリエステル繊維不織布基材の平滑な面側に製膜原液を塗布して、塗布後、直ちに20℃の純水中に5分間浸漬させて分離膜を形成させた。
【0116】
分離膜の形成後、10cm角にカットし、ウォーターバスに入れた水を沸騰させ、水面より3cmの位置に分離膜の膜表面に飽和蒸気を120秒間あて、その時の分離膜の表面の温度が95℃であり、立ち上がる飽和蒸気で溶媒であるN,N−ジメチルホルムアミドおよび開孔剤であるモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンを洗い流し、分離膜を製造した。その時の分離膜中の溶媒濃度が15.3%と高く、また、洗浄処理液の処理液の量は1.17mlと少量であったものの、溶媒濃度が16.9%と高かった。
【0117】
さらに、上記分離膜について、平均粒径0.083μmのポリスチレン微粒子の阻止率を測定したところ、97.9%と高い値であった。また、純水透過係数は36.7×10−9/m/s/Paであった。なお、それらの結果を表1と図1に示す。
【0118】
比較例3では飽和蒸気をあてたことにより洗浄処理液の量は少量で良かったが、分離膜中の溶媒濃度が高く洗浄性が悪かった。
【0119】
(比較例4)
実施例1と同条件で製膜原液を調製し、ポリエステル繊維不織布基材の平滑な面側に製膜原液を塗布して、塗布後、直ちに20℃の純水中に5分間浸漬させて分離膜を形成させた。
【0120】
分離膜の形成後、10cm角にカットし、80℃に調整した水を60秒間、流量指定マグネットポンプから吐出される水を分離膜の膜表面より3cm離れた位置から3.18m/sの流束で膜表面に均一に水を流して溶媒であるN,N−ジメチルホルムアミドおよび開孔剤であるモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンを洗い流し、分離膜を製造した。その時の分離膜中の溶媒濃度が1.25%であり、また、洗浄処理液の溶媒濃度は0.01%で処理液の量は6000mlと多かった。
【0121】
さらに、上記分離膜について、平均粒径0.083μmのポリスチレン微粒子の阻止率を測定したところ、98.8%と高い値であった。また、純水透過係数は44.3×10−9/m/s/Paであった。なお、それらの結果を表1と図1に示す。
【0122】
比較例4では80℃の水で洗浄したことにより分離膜中の溶媒濃度が低減でき膜性能も良かったが、洗浄処理液が多くなり洗浄効率が悪かった。
【0123】
(比較例5)
実施例1と同条件で製膜原液を調製し、ポリエステル繊維不織布基材の平滑な面側に製膜原液を塗布して、塗布後、直ちに20℃の純水中に5分間浸漬させて分離膜を形成させた。
【0124】
分離膜の形成後、10cm角にカットし、35℃に調整した水を60秒間、流量指定マグネットポンプから吐出される水を分離膜の膜表面より3cm離れた位置から3.18m/sの流束で膜表面に均一に水を流して溶媒であるN,N−ジメチルホルムアミドおよび開孔剤であるモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンを洗い流し、分離膜を製造した。その時の分離膜中の溶媒濃度が1.50%であり、また、洗浄処理液の溶媒濃度は0.01%で処理液の量は6000ml多かった。
【0125】
さらに、上記分離膜について、平均粒径0.083μmのポリスチレン微粒子の阻止率を測定したところ、98.6%と高い値であった。また、純水透過係数は42.2×10−9/m/s/Paであった。なお、それらの結果を表1と図1に示す。
【0126】
比較例5では35℃の水で洗浄したことにより分離膜中の溶媒濃度が低減でき膜性能も良かったが、洗浄処理液が多くなり洗浄効率が悪かった。
【0127】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
形成後の分離膜に蒸気および/または液体を5m/s以上の流束で接触させて前記分離膜に含まれる溶媒を洗浄することで、平均粒径0.083μmのポリスチレン微粒子の阻止率が80%以上である分離膜を得る工程を備える、分離膜の製造方法。
【請求項2】
蒸気および/または液体の温度が10℃以上150℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の分離膜の製造方法。
【請求項3】
分離膜を構成する有機樹脂が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂およびポリエーテルスルホン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1または2に記載の分離膜の製造方法。
【請求項4】
有機樹脂を溶媒に溶解させた製膜原液を凝固液に接触させて形成された分離膜に、分離膜に蒸気および/または液体を5m/s以上500m/s以下の流束で接触させることを備える分離膜の製造方法であって、
前記蒸気および/または液体は、前記有機樹脂を実質的に溶解せず、かつ、前記蒸気および/または液体に対する前記溶媒の溶解度が0.01g/g以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の分離膜の製造方法。
【請求項5】
分離膜の単位面積当たりの前記蒸気および/または液体の使用量が、1L/cm以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の分離膜の製造方法。
【請求項6】
前記流束が500m/s以下である請求項1〜5のいずれかに記載の分離膜の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−143749(P2012−143749A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−279466(P2011−279466)
【出願日】平成23年12月21日(2011.12.21)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】