説明

分離装置、分離カートリッジ、および分離システム

【課題】分離対象液から分離目的物を効率良くすることができる分離装置、分離カートリッジおよび分離システムを提供する。
【解決手段】分離装置は、第1の面を有する流路を含み、第1の面上に、三日月形状の断面を有する複数の柱状部が設けられ、複数の柱状部は、流路の長手方向である行方向および流路の長手方向と垂直な方向である列方向に配列され、複数の柱状部のうち、同じ行に属する柱状部は、三日月形状が列方向に対して同じ向きに配置され、1の行に属する柱状部は、三日月形状が1の行と隣り合う行に属する柱状部の三日月形状と列方向に対して反対向きに配置され、複数の柱状部の側面に、分離目的物と特異的に結合する物質が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離装置、分離カートリッジおよび分離システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス基板等に微細流路が設けられたマイクロ流体チップを使用して、化学分析や化学合成、あるいはバイオ関連の分析等を行う方法が注目されている。マイクロ流体チップは、マイクロTotal Analytical System(マイクロTAS)や、ラボオンチップ(Lab-on-a-chip)等とも呼ばれ、従来の装置に比較して試料や試薬の必要量が少ない、反応時間が短い、廃棄物が少ない等のメリットがあり、医療診断、環境や食品のオンサイト分析、医薬品や化学品等の生産等、広い分野での利用が期待されている。試薬の量が少なくてよいことから、検査のコストを下げることが可能となり、また、試料および試薬の必要量が少ないため、反応時間も大幅に短縮されて検査の効率化を図ることができる。特に、医療診断に使用する場合には、試料となる血液等の検体の必要量を少なくすることができるため、患者の負担を軽減できるというメリットがある。
【0003】
非特許文献1には、等間隔に配置された複数の円柱状マイクロポストを有するマイクロ流路装置が記載されている。非特許文献1記載のマイクロ流路装置では、円柱状マイクロポストの側面に接着因子が固定化されており、マイクロ流路装置に血液を流すことにより、円柱状マイクロポストの側面に固定化された接着因子にがん細胞を付着させて、がん細胞を除去する。しかしながら、非特許文献1記載のマイクロ流路装置では、接着因子にがん細胞を付着させる能力は、血液の流速ならびに円柱状マイクロポストの大きさおよび間隔に大きく依存する。例えば、血液の流速が小さいと、がん細胞と接着因子との接触機会が少なくなるため、円柱状マイクロポストに付着するがん細胞の数が少ない場合があり、一方、血液の流速が大きいと、円柱状マイクロポストに付着したがん細胞が流されてしまう場合がある。また、円柱状マイクロポストの間隔が大きすぎると、がん細胞と接着因子との接触機会が少なくなるため、円柱状マイクロポストに付着するがん細胞の数が少ない場合があり、一方、円柱状マイクロポストの間隔が小さすぎると、流れる血液の抵抗が大きくなるうえ、付着したがん細胞によって流路に詰まりが生じる場合がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Sunitha Nagrath et al., “Isolation of rare circulating tumour cells in cancer patients by microchip technology”, vol450|20/27 December 2007| doi:10.1038/nature06385 LETTERS
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、分離対象液から分離目的物を効率良く分離することができる分離装置、分離カートリッジおよび分離システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る分離装置は、
第1の面を有する流路を含み、
前記第1の面上に、三日月形状の断面を有する複数の柱状部が設けられ、
前記複数の柱状部は、前記流路の長手方向である行方向および該流路の長手方向と垂直な方向である列方向に配列され、
前記複数の柱状部のうち、同じ行に属する柱状部は、前記三日月形状が前記列方向に対して同じ向きに配置され、
1の行に属する柱状部は、前記三日月形状が該1の行と隣り合う行に属する柱状部の前記三日月形状と前記列方向に対して反対向きに配置され、
前記複数の柱状部の側面に、分離目的物と特異的に結合する物質が配置されている。
【0007】
本発明において「三日月形状」とは、第1の曲線および第2の曲線を含み、かつ、第1の曲線および第2の曲線が同じ向きに極大値(極小値)を有する形状をいう。三日月形状では、例えば、第1の曲線の一方の端部と第2の曲線の一方の端部、ならびに、第1の曲線の他方の端部と第2の曲線の他方の端部がそれぞれ接しているか、または、第1の曲線の一方の端部と第2の曲線の一方の端部、ならびに、第1の曲線の他方の端部と第2の曲線の他方の端部がそれぞれ、曲線または直線を介して接続されている形状をいう。第1の曲線の一方の端部と第2の曲線の一方の端部、ならびに、第1の曲線の他方の端部と第2の曲線の他方の端部がいずれも接している場合、第1の曲線および第2の曲線は異なる曲率を有することが必要である。
【0008】
この場合、前記三日月形状は、第1の曲線と、該第1の曲線よりも大きな曲率を有する第2の曲線を含み、
前記第1の曲線の一方の端部と前記第2の曲線の一方の端部とは、第1の端部で接し、
前記第1の曲線の他方の端部と前記第2の曲線の他方の端部とは、第2の端部で接し、
1の柱状部Aの第2の端部をA
前記柱状部Aと列方向に隣り合う柱状部Bの第2の端部をB
前記柱状部Aの第2の端部Aから、前記第1の曲線の前記第2の端部Aにおける接線方向に延びる直線をL
前記柱状部Bの第2の端部Bから、前記第1の曲線の前記第2の端部Bにおける接線方向に延びる直線をL
前記第2の端部Aと前記第2の端部Bとを結ぶ線分の中点をM、
前記柱状部Aおよび前記柱状部Bと行方向に隣り合い、該柱状部Aおよび該柱状部Bを除いて前記中点Mから最も近い距離に存在する柱状部Cの第1の端部をC、および
前記第1の端部Cを通り、前記直線Lおよび前記直線Lと平行な直線をLとすると、
前記直線Lは、前記直線Lと前記直線Lとの間に存在することができる。
【0009】
また、この場合、前記直線Lと前記直線Lとの距離wと、前記直線Lと前記直線Lとの距離wの比w/wが0.8〜1.2であることができる。
【0010】
上記分離装置によれば、三日月形状の断面を有する複数の柱状部が設けられ、複数の柱状部は、流路の長手方向である行方向および流路の長手方向と垂直な方向である列方向に配列され、複数の柱状部のうち、同じ行に属する柱状部は、三日月形状が列方向に対して同じ向きに配置され、1の行に属する柱状部は、三日月形状が1の行と隣り合う行に属する柱状部の三日月形状と列方向に対して反対向きに配置され、複数の柱状部の側面に、分離目的物と特異的に結合する物質が配置されていることにより、分離目的物に働く向心力を利用して、柱状部の側面に分離目的物を効率良く付着させて分離することができる。
【0011】
本発明の第2の態様に係る分離カートリッジは、上記分離装置を含む。
【0012】
本発明の第3の態様に係る分離システムは、上記分離カートリッジが組み込まれている。
【0013】
本発明の第4の態様に係る分離装置は、
分離対象液から分離目的物を分離する分離装置であって、
前記分離対象液が流れる流路を有し、
前記流路は、
三日月形状の断面を有し、前記分離目的物と特異的に結合する物質が側面に配置された第1の柱状部と、
前記三日月形状の断面を有し、前記流路の長手方向である第1方向の位置が前記第1の柱状部と同じ位置に属し、前記第1方向と直交する第2方向の位置が前記第1の柱状部と隣り合う位置に属し、前記第1の柱状部と前記三日月形状が前記第2方向に対して同じ向きに配置され、前記物質が側面に配置された第2の柱状部と、
前記三日月形状の断面を有し、前記第1方向の位置が前記第1の柱状部と隣り合う位置に属し、前記第1の柱状部と前記三日月形状が前記第2方向に対して反対向きに配置され、前記物質が側面に配置された第3の柱状部と、
を備える。
【0014】
この場合、前記三日月形状は、第1の曲線と、該第1の曲線よりも大きな曲率を有する第2の曲線とを含み、
前記第1の曲線の一方の端部と前記第2の曲線の一方の端部とは、第1の端部で接し、
前記第1の曲線の他方の端部と前記第2の曲線の他方の端部とは、第2の端部で接し、
前記第1の柱状部が有する第2の端部をA
前記第2の柱状部が有する第2の端部をB
前記Aから、前記第1の柱状部が有する前記第1の曲線の、前記Aにおける接線方向に延びる直線をL
前記Bから、前記第2の柱状部が有する前記第1の曲線の、前記Bにおける接線方向に延びる直線をL
前記Aと前記Bとを結ぶ線分の中点をM、
前記第3の柱状部が有する第1の端部をC、および
前記Cを通り、前記直線Lおよび前記直線Lと平行な直線をLとすると、
前記直線Lは、前記直線Lと前記直線Lとの間に存在する、分離装置。
【0015】
また、この場合、前記直線Lと前記直線Lとの距離wと、前記直線Lと前記直線Lとの距離wの比w/wが0.8〜1.2であることができる。
【0016】
上記分離装置によれば、直線Lが直線Lと直線Lとの間に存在することにより、分離目的物に働く向心力を利用して、柱状部の側面に分離目的物を効率良く付着させて分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る分離装置を模式的に示す平面図。
【図2】図1に示される流路に設けられた複数の柱状部の平面パターンを模式的に示す拡大図。
【図3】図1に示される流路に設けられた柱状部を模式的に示す斜視図。
【図4】図1に示される流路を模式的に示す断面図。
【図5】図1に示される流路を用いた分離目的物の分離方法を説明する図。
【図6】図2に示される複数の柱状部の平面パターンの一変形例を示す図。
【図7】図2に示される複数の柱状部の平面パターンの別の一変形例を示す図。
【図8】図2に示される複数の柱状部の平面パターンの他の一変形例を示す図。
【図9】本発明の第2実施形態に係る分離システムを説明する図。
【図10】本発明において、柱状部断面(三日月形状)の第1の曲線の曲率半径および分離目的物の直径が所定の値である場合における分離対象液の流速と分離目的物の沈降速度との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の一実施形態にかかる分離装置、分離カートリッジおよび分離システムについて具体的に説明する。
【0019】
1.第1実施形態
1.1.分離装置の構成
図1は、本発明の一実施形態に係る分離装置100を模式的に示す平面図であり、図2は、図1に示される流路50に設けられた複数の柱状部10の平面パターンを模式的に示す拡大図であり、図3は、図1に示される流路50に設けられた柱状部10を模式的に示す斜視図であり、図4は、図1に示される流路50を模式的に示す断面図(Y−Y)にて紙面と垂直方向に切断した断面図)であり、図5は、図1に示される流路50を用いた分離目的物の分離方法を説明する図である。
【0020】
本発明の一実施形態に係る分離装置100は図1に示されるように、入口30および出口40を有する流路50を含む。分離目的物を含み得る分離対象液は入口30から導入された後、流路50内を通過した後、出口40から排出される。
【0021】
流路50は図4に示されるように、第1の基板(流路下面基板)12と、第2の基板(流路上面基板)14と、複数の柱状部10とを有する。また、流路50は、図4に示されるように、第1の基板12の内表面である第1の面12aと、第2の基板14の内表面である、第1の面12aと対向する第2の面14aとを有する。
【0022】
柱状部10は図1〜図3に示されるように、三日月形状の断面を有する。また、柱状部10は図4に示されるように、第1の基板12の第1の面12aの上に設けられており。第1の基板12と第2の基板14とに挟まれるように配置されている。すなわち、柱状部10は、上面が流路50の第2の面14aと接し、下面が流路50の第1の面12aに接している。なお、図3は、流路50のうち第2の基板14を取り除いた状態を示している。
【0023】
図1〜図3において、流路50の長手方向(分離対象液が流れる方向)を行方向とし、流路50の長手方向と垂直な方向を列方向とすると、複数の柱状部10は、行方向および列方向に沿って配列されている。また、同じ行に属する複数の柱状部10は、等間隔に配置されている。さらに、同じ行に属する複数の柱状部10は、三日月形状が前記列方向に対して同じ向きに配置されており、1の行に属する複数の柱状部10は、三日月形状が該1の行と隣り合う行に属する複数の柱状部の三日月形状と列方向に対して反対向きに配置されている。すなわち、列方向に隣り合う柱状部10同士(1の行に属する柱状部10と、該1の行に隣り合う行に属する柱状部10)は、三日月形状が行方向に対して線対称である。
【0024】
柱状部10の側面10aには、分離目的物と特異的に結合する物質が配置されている。これにより、柱状部10の側面10aに分離目的物を付着させることにより、分離目的物を分離対象液から除去することができる。分離目的物と特異的に結合する物質は、分離目的物の性質および特性に応じて適宜選択することができる。
【0025】
柱状部10の三日月形状は図2に示されるように、第1の曲線rおよび第2の曲線rを含み、第2の曲線rは第1の曲線rよりも大きな曲率を有する。また、柱状部10断面の三日月形状は、第1の端部および第2の端部を有する。すなわち、第1の曲線rの一方の端部と第2の曲線rの一方の端部とが、第1の端部で接しており、第1の曲線rの他方の端部と第2の曲線rの他方の端部とが、第2の端部で接している。
【0026】
図2において、1の柱状部Aの第2の端部をA、柱状部Aと列方向に隣り合う柱状部Bの第2の端部をB、柱状部Aの第2の端部Aから、第1の曲線の前記第2の端部Aにおける接線方向に延びる直線をL、柱状部Bの第2の端部Bから、第1の曲線の前記第2の端部Bにおける接線方向に延びる直線をL、第2の端部Aと第2の端部Bとを結ぶ線分の中点をM、柱状部Aおよび柱状部Bと行方向に隣り合い、柱状部Aおよび前記柱状部Bと行方向に隣り合い、柱状部Aおよび柱状部Bを除いて中点Mから最も近い距離に存在する柱状部Cの第1の端部をC、および第1の端部Cを通り、直線Lおよび直線Lと平行な直線をLとすると、直線Lは、直線Lと直線Lとの間に存在する。これにより、後述するように、柱状部Aの側面に付着しなかった分離目的物を、柱状部Aと行方向に隣り合う柱状部Cの側面に付着しやすくさせることができる。
【0027】
この場合、柱状部Aと柱状部Bとの間を通過した分離目的物が柱状部Cの側面により付着しやすい点で、直線Lと直線Lとの距離wと、直線Lと直線Lとの距離w2の比w/wが0.8〜1.2であるのが好ましい。図1に示される分離装置100では、w/wが1.0である。
【0028】
また、本実施形態に係る分離装置100において、第1の基板12、第2の基板14および柱状部10は分離対象液に含まれる成分にダメージを及ぼさない材質であればよく、例えば無機材料(例えば単結晶シリコン、パイレックス(登録商標)ガラス)、有機材料(例えば樹脂)からなることができる。例えば、柱状部10が無機材料からなる場合、フォトリソグラフィー法を用いたドライエッチングにより、高精度に寸法制御された柱状部10を得ることができる。また、例えば、柱状部10が樹脂からなる場合、鋳型成形によって形成することができる。
【0029】
1.2.分離目的物の分離方法
図5は、図1〜図4に示される分離装置100を用いた分離目的物の分離方法を説明する図である。本実施形態では、分離目的物ががん細胞であって、分離装置100を用いて分離対象液(細胞懸濁液)からがん細胞を分離する場合を例にとり説明する。
【0030】
本実施形態に係る分離装置100が細胞(例えばがん細胞)を分離対象液から分離するために使用する場合、分離対象液からがん細胞をその他の成分と選択的に分離することができる。なお、本明細書において「がん細胞」とは、悪性の腫瘍細胞を意味する。分離対象液は少なくとも細胞を含む液であって、がん細胞を含む可能性がある液であり、例えばがん細胞および他の細胞を含む液である。分離対象液としては、例えば血液、リンパ液、唾液、尿、涙液等の体液またはこれらを含む液が挙げられる。
【0031】
図1に示されるように、本実施形態に係る分離装置100において、分離目的物を含み得る分離対象液が入口30から導入された後、流路50内を移動する際に、柱状部10の側面に配置された、分離目的物(がん細胞)と特異的に結合する物質と分離目的物(がん細胞)が結合することにより、がん細胞が柱状部10の側面に付着する。これにより、がん細胞が除去された液が出口40から排出される。
【0032】
本実施形態に係る分離装置100によってがん細胞が除去された液は出口40から排出された後、容易に回収することができる。これにより、分離対象液が血液等の体液である場合、がん細胞が除去された後、再び生体内に戻すことが容易である。
【0033】
より具体的には、図5に示されるように、流路50の柱状部10近傍を移動する分離目的物(がん細胞)には、柱状部10の断面の三日月形状によって向心力6が働くと同時に、その反力としての摩擦力7が作用する。向心力および摩擦力はそれぞれ下記の式で表される。
【0034】
【数1】

【0035】
ここで、d:分離目的物の直径、σ:分離目的物の密度、ρ:分離対象液の密度、r:柱状部断面の第1の曲線(または第2の曲線)曲率半径,ω:角速度、η:分離対象液の粘度を示す。また、σ≠ρのとき、分離対象液中の分離目的物は速度vにて変形方向に移動するものとする。
【0036】
このとき、向心力f1と摩擦力f2にはf1=f2が成立し、その際の分離目的物の沈降速度Vは下記式で表される。
【0037】
【数2】

【0038】
よって、流路50を移動する分離対象液の特性密度、粘度が一定である条件下では、分離目的物の沈降速度Vは、分離目的物の直径dの二乗に比例する。
【0039】
図10は、本発明において、柱状部断面(三日月形状)の第1の曲線の曲率半径rおよび分離目的物の直径dが所定の値である場合における分離対象液の流速と分離目的物の沈降速度との関係を示すグラフである。このグラフでは、上述の沈降速度の式に基づいて、d:分離目的物の直径(cm)、σ:分離目的物の密度=1.07g/cm、ρ:分離対象液(血液)の密度=1.05g/cm、r:柱状部断面の第1の曲線曲率半径(cm),ω:角速度、η:分離対象液(血液)の粘度=0.035g/cm・s、v:分離目的物(がん細胞)の移動速度=1cm/sとして、分離目的物の直径dおよび柱状部断面の第1の曲線の曲率半径rを変えたときの分離目的物の沈降速度を算出した。図10の結果から、柱状部断面の第1の曲線の曲率半径rが大きいほど、分離目的物の沈降速度Vが小さく、また、分離目的物の直径dが大きいほど、沈降速度Vが大きいことが理解できる。
【0040】
図5に示されるように、流路50において方向Iから柱状部10(I)および柱状部10(II)のほぼ中央を移動するがん細胞16aは、柱状部10(I)の第1の曲面r側の側面に付着することができる。また、流路50において方向IIから柱状部10(III)の第2の曲面r側の側面近傍を移動するがん細胞16aは、柱状部10(III)の側面に付着しなかった場合でも、柱状部10(V)の第1の曲面r側の側面に付着することができる。
【0041】
また、比較的小さながん細胞16b(がん細胞16aより小さながん細胞)の場合、流路50において方向IIIから柱状部10(III)および柱状部10(IV)のほぼ中央を移動するがん細胞16bは、がん細胞16aよりも向心力が小さいために、柱状部10(III)の第1の曲面r側の側面に付着できなかった場合でも、柱状部10(VI)の第1の曲面r側の側面に付着することができる。また、流路50において方向IVから柱状部10(IV)の第2の曲面r側の側面近傍を移動するがん細胞16bは、柱状部10(IV)の側面に付着しなかった場合でも、柱状部10(VI)の第2の曲面r側の側面に付着することができる。
【0042】
本実施形態に係る分離装置100によれば、図5に示されるように、複数の柱状部10が行方向および列方向に配列され、同じ行に属する複数の柱状部10(例えば柱状部10(I)〜(IV))は、三日月形状が同じ向きに配置され、1の行に属する複数の柱状部10(例えば柱状部10(I)〜(IV))は、三日月形状が該1の行と隣り合う行に属する複数の柱状部10(例えば柱状部10(V),(VI))の三日月形状と反対向きに配置され、複数の柱状部10の側面10aに、分離目的物と特異的に結合する物質が配置されている。
【0043】
本実施形態に係る分離装置100によれば、上記構成により、行方向に隣り合う柱状部10(例えば、柱状部10(I)〜(IV)と柱状部10(V),(VI))の間には隔壁が設けられていないため、分離対象液が、列方向に隣り合う柱状部10の間(例えば柱状部10(II)と柱状部10(III)との間)を通過した後に、これに隣接した柱状部10の間(例えば柱状部10(I)と柱状部10(II)との間)を通過した分離対象液と混ざり合うミキシング効果が生じる。これにより、柱状部10の側面10aに配置された、分離目的物と特異的に結合する物質と分離目的物(がん細胞)との接触機会が著しく増加するため、柱状部10の側面10aで分離目的物(がん細胞)を効率良く捕獲することができる。
【0044】
すなわち、本実施形態に係る分離装置100によれば、複数の柱状部100の三日月形状の断面を有し、同じ行に属する複数の柱状部10は三日月形状が同じ向きに配置され、1の行に属する複数の柱状部10は、三日月形状が該1の行と隣り合う行に属する複数の柱状部10の三日月形状と反対向きに配置されていることにより、複数の柱状部100の三日月形状の断面に起因する向心力を利用して、分離目的物を柱状部10の側面10aに効率良く付着させることができる。
【0045】
なお、分離目的物ががん細胞である場合、がん細胞は通常、白血球や赤血球等の正常細胞よりも大きく、通常、25μm以上の大きさを有するため、流路50内での移動を妨げずに、がん細胞を柱状部10の側面に効率良く付着させるためには、流路50の高さ(本実施形態では、流路50の高さ=柱状部10の高さ)hは25μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましい。
【0046】
また、分離目的物ががん細胞である場合、柱状部10の側面10aには例えば、分離目的物であるがん細胞と特異的に結合する物質として、がん細胞と特異的に結合する抗体を固定化させることができる。がん細胞と特異的に結合する抗体が柱状部10の側面10aに固定化されていることにより、柱状部10の側面10aにて、がん細胞と特異的に結合する抗体とがん細胞との結合によってがん細胞を捕捉して、分離対象液からがん細胞を除去することができる。
【0047】
がん細胞と特異的に結合する抗体としては、例えば、がん細胞の表面抗原に対する抗体が挙げられる。がん細胞と特異的に結合する抗体として、がん細胞の表面抗原に対する抗体を用いる場合、がん細胞の表面抗原に対する抗体を、分離対象のがん細胞の種類に応じて選択することができる。例えば、上皮がんに共通の表面抗原に対する抗体としては、Ep−CAM抗体、N−カドヘリン抗体、ビメンチン抗体等が挙げられ、乳がん特有の表面抗原に対する抗体としては、HER2抗体等が挙げられ、大腸がん特有の表面抗原に対する抗体としては、NS19−9抗体等が挙げられ、前立腺がん特有の表面抗原に対する抗体としては、CD49、CD54,CD59抗体等が挙げられる。上記に例示された抗体を固定化させることができる。
【0048】
さらに、柱状部10の側面10aには、分離目的物であるがん細胞と特異的に結合する物質として、アポトーシス誘発因子(apoptosis-inducing factor)が固定化されていて
もよい。アポトーシス誘発因子が該表面柱状部10の側面10aに固定化されていることにより、柱状部10の側面10aにおいて、がん細胞とアポトーシス誘発因子との接触によってがん細胞を壊死へと導くことができる。
【0049】
アポトーシス誘発因子としては、がん細胞のアポトーシスを誘発させる性質を有するものであればよく、例えば、TNF−α、TNF−γ、TRAIL、Fas、リンホトキシン、非環式レチノイド、ビクニン、パラスポリン、マイトマイシン、タキソール、アディポネクチンが挙げられる。
【0050】
柱状部10の側面10aへの抗体またはアポトーシス誘発因子の固定化は、物理吸着による方法または化学結合による方法を用いることができる。化学結合による方法は、確実な固定化を達成できる点で有用である。例えば、表面が水酸基を含む材質からなる場合、抗体中のカルボキシル基を活性エステル化した後、水酸基と該活性エステル基とを反応させることにより、化学結合によって該表面に抗体を固定化させることができる。
【0051】
また、例えば、柱状部10の側面10aは酸化シリコン膜で構成されていてもよい。柱状部10の側面10aが酸化シリコン膜で構成されていることにより、柱状部10の側面10aは親水性を有するため、がん細胞と特異的に結合する抗体やアポトーシス誘発因子との親和性に優れているうえ、酸化シリコン膜に含まれる水酸基を利用して、上記抗体やアポトーシス誘発因子を該表面に結合させることができる。
【0052】
分離目的物ががん細胞である場合、分離対象となるがん細胞としては、例えば循環がん細胞(CTC)が挙げられる。このうち、体液が血液またはリンパ液である場合、本実施形態に係る分離装置100を用いて、患者から採取した血液またはリンパ液からCTCを除去した後、該血液またはリンパ液を再び患者の体内に戻すことによって、患者のがんの転移を抑えることができる。例えば、血液中からCTCを選択的に分離することにより、CTCとその他の成分(例えば、赤血球、白血球、血小板等の正常細胞、塩類、アルブミン等の血漿タンパク質、免疫グロブリン等の抗体、血液凝固因子等)とを分離することができるうえ、その他の成分に及ぼすダメージを最小限にすることができる。なお、体液は希釈されたものであってもよい。
【0053】
この場合、本実施形態に係る分離装置100を用いたCTCの除去を、放射線療法および/または化学療法と併用してもよいし、あるいは、放射線療法または化学療法の代替として用いることもできる。すなわち、本発明の一実施形態に係るがんの治療および/または予防方法は、本実施形態に係る分離装置100を用いて患者から摂取した体液からがん細胞を除去した後、該体液を患者の体内に戻す工程を含む。この場合、該体液を患者の体内に戻す工程は例えば、血液透析と同様の手法を用いることができる。
【0054】
なお、本実施形態では、分離目的物ががん細胞である場合を例にとり説明したが、本実施形態に係る分離装置100が分離対象とする分離目的物は、例えば、がん細胞以外の細胞、ウイルス、細菌、タンパク質、低分子〜高分子化合物、粒子、コロイド、例えば花粉等のアレルギー物質、毒物、有害物質、環境汚染物質であってもよい。また、本実施形態に係る分離装置100を例えば、血液透析、血液浄化、細胞分化誘導、遺伝子導入のための装置として使用することもできる。
【0055】
1.3.変形例
図6は、図2に示される複数の柱状部10の平面パターンの一変形例(変形例1)を示す図であり、図7は、図2に示される複数の柱状部10の平面パターンの別の一変形例(変形例2)を示す図であり、図8は、図2に示される複数の柱状部10の平面パターンの他の一変形例(変形例3)を示す図である。以下にしめす変形例では第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0056】
1.3.1.変形例1
図6に示される柱状部110は、図2に示される柱状部10と比較して、三日月形状の断面を構成する第1の曲線rおよび第2の曲線rの曲率が小さい。第1の曲線rおよび第2の曲線rの曲率は例えば、分離目的物の径、分離対象液の流速および粘度、流路の大きさ、隣り合う柱状部の間隔等の条件に応じて適宜決定することができる。第1の曲線rおよび第2の曲線rの曲率を調整することにより、分離目的物に働く向心力を調整することができる。
【0057】
1.3.2.変形例2
図7に示される柱状部210は、三日月形状の断面を構成する第1の曲線rの一方の端部r1aと第2の曲線rの一方の端部r2aとが曲線Xで接続され、かつ、第1の曲線rの他方の端部r1bと第2の曲線rの他方の端部r2bとが曲線Xで接続されている点で、図2に示される柱状部10と異なる。
【0058】
図7において、柱状部210Aの第1の曲線rの第2の端部Ar1bと、柱状部210Aと列方向に隣り合う柱状部210Bの第1の曲線rの第2の端部Br1bとを結ぶ線の中点をM、柱状部210Aの第1の曲線rの第2の端部Ar1bから接線方向に延びる直線をL、柱状部210Bの第1の曲線rの第2の端部Br1bから接線方向に延びる直線をL、柱状部210Aおよび柱状部210Bを除いて中点Mから最も近い位置に存在する柱状部210Cの曲線Xの頂点を通り、直線Lおよび直線Lと平行な線をLとすると、直線Lは直線Lと直線Lとの間に存在することが好ましい。ここで柱状部210Cの曲線Xの頂点とは、直線Lまたは直線Lに沿った方向において、曲線X上のもっとも先端の点である。
【0059】
図7に示される変形例2において、柱状部210Aと柱状部210Bとの間を通過した分離目的物が柱状部210Cの側面により付着しやすい点で、直線Lと直線Lとの距離wと、直線Lと直線Lとの距離w2の比w/wが0.8〜1.2であるのが好ましい。図7では、w/wが1.0である(直線Lが中点M上に位置している)。
【0060】
1.3.3.変形例3
図8に示される柱状部310は、三日月形状の断面を構成する第1の曲線rの一方の端部r1aと第2の曲線rの一方の端部r2aとが直線Lで接続され、かつ、第1の曲線rの他方の端部r1bと第2の曲線rの他方の端部r2bとが直線Lで接続されている点で、図2に示される柱状部10と異なる。
【0061】
図8において、柱状部310Aの第1の曲線rの第2の端部Ar1bと、柱状部310Aと列方向に隣り合う柱状部310Bの第2の曲線rの第2の端部Br2bとを結ぶ線の中点をM、柱状部310Aの第1の曲線rの第2の端部Ar1bから接線方向に延びる直線をL、柱状部310Bの第2の曲線rの第2の端部Br2bから接線方向に延びる直線をL、柱状部310Aおよび柱状部310Bを除いて中点Mから最も近い位置に存在する柱状部310Cの直線Lの中点Mを通り、直線Lおよび直線Lと平行な線をLとすると、直線Lは直線Lと直線Lとの間に存在することが好ましい。
【0062】
また、図8に示される変形例3において、柱状部310Aと柱状部310Bとの間を通過した分離目的物が柱状部310Cの側面により付着しやすい点で、直線Lと直線Lとの距離wと、直線Lと直線Lとの距離w2の比w/wが0.8〜1.2であるのが好ましい。図8では、w/wが1.0である(直線Lが中点M上に位置している)。
【0063】
なお、図8に示される変形例3においても、図7に示される変形例2と同様に、柱状部310の第1の曲線rの一方の端部r1aと第2の曲線rの一方の端部r2a、および/または柱状部310の第1の曲線rの他方の端部r1bと第2の曲線rの他方の端部r2bが曲線を介して接続されていてもよい。
【0064】
2.第2実施形態
図9は、本発明の一実施形態に係る分離システム(がん細胞除去システム)1000を模式的に示す図である。本実施形態においては、分離システム1000ががん細胞の除去を行う場合について説明するが、上述の第1実施形態で説明したように、本実施形態に係る分離システム1000は、がん細胞以外の分離目的物の分離を行うこともできる。
【0065】
本実施形態に係る分離システム1000は、図9に示されるように、第1実施形態に係る分離装置100と、制御部27とを含む。分離装置100は患者300から採取された体液からがん細胞を除去する。また、この分離システム1000にはさらに、患者300から採取された体液を移送するための管21と、管21内で体液を移送させるために駆動するポンプ23と、管21内における体液の圧力を監視する圧力監視装置25,26が設けられている。分離装置100と、ポンプ23と、圧力監視装置25,26とは、管21を介して接続されている。なお、本実施形態に係る分離システム1000では、1の分離装置100が設けられている例を示したが、分離装置100が複数設けられていてもよい。
【0066】
図9に示されるように、管21の両端部A,Cは患者300に取り付けられており、体液は、ポンプ23の駆動によって患者300から採取された後、端部(採液部)Aから管21を介して分離装置100へと導入され、分離装置100にて体液中のがん細胞の除去が行なわれる。がん細胞除去後の体液は、ポンプ23の駆動によって、管21を介して端部(返液部)Cから患者300の体内に戻される。例えば、本実施形態に係る分離システム1000において、血液透析と同様の手法を用いて患者300の体内から体液を採取し、かつ処理後の体液を患者300の体内に戻すことができる。また、体液が血液の場合、血液が管21内で凝固するのを防ぐために、抗凝固剤供給部24から管21内に抗凝固剤を導入してもよい。
【0067】
本実施形態に係る分離システム1000において、制御部27は、図9に示されるように、分離装置100、圧力監視装置25,26、ポンプ23、抗凝固剤供給部24と電気的にまたは光学的に接続されている。制御部27は、電気的にまたは光学的に接続された上記各部分からの情報を電気信号または光信号として受信し、かつ、上記各部分へと情報を電気信号または光信号として送信することができる。制御部27は例えば、コンピューターにインストールされたソフトウエア上で実行することができる。
【0068】
なお、分離装置100は図9に示されるように、体外循環によって用いてもよいし、あるいは、患者300の体内に埋め込んでもよい。また、分離装置100は分離カートリッジに含まれていてもよい。さらに、ポンプ23および圧力監視装置25,26としては、例えば血液透析で用いられているものを使用することができる。
【0069】
本実施形態に係る分離システム1000によれば、患者300から採取された体液から分離装置100によって分離目的物(がん細胞)を除去した後、該体液を患者300の体内に戻すことができる。また、分離装置100が分離カートリッジである場合、使用済みの分離装置(分離カートリッジ)100を取り外して容易に交換することができる。
【0070】
本発明に係る実施の形態の説明は以上である。本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び結果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0071】
6…向心力、7…摩擦力、100…分離装置、10,110,210,310…柱状部、12…流路下面基板、12a…第1の面、14…流路上面基板、14a…第2の面、16a,16b…がん細胞、21…管、23…ポンプ、24…抗凝固剤供給部、25,26…圧力監視装置、27…制御部、30…入口、40…出口、50…流路、300…被験者、1000…分離システム、A,B…第2の端部、C…第1の端部、L,L,L…直線、M…中点、r…第1の曲線部、r…第2の曲線部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面を有する流路を含み、
前記第1の面上に、三日月形状の断面を有する複数の柱状部が設けられ、
前記複数の柱状部は、前記流路の長手方向である行方向および該流路の長手方向と垂直な方向である列方向に配列され、
前記複数の柱状部のうち、同じ行に属する柱状部は、前記三日月形状が前記列方向に対して同じ向きに配置され、
1の行に属する柱状部は、前記三日月形状が該1の行と隣り合う行に属する柱状部の前記三日月形状と前記列方向に対して反対向きに配置され、
前記複数の柱状部の側面に、分離目的物と特異的に結合する物質が配置されている、分離装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記三日月形状は、第1の曲線と、該第1の曲線よりも大きな曲率を有する第2の曲線を含み、
前記第1の曲線の一方の端部と前記第2の曲線の一方の端部とは、第1の端部で接し、
前記第1の曲線の他方の端部と前記第2の曲線の他方の端部とは、第2の端部で接し、
1の柱状部Aの第2の端部をA
前記柱状部Aと列方向に隣り合う柱状部Bの第2の端部をB
前記柱状部Aの第2の端部Aから、前記第1の曲線の前記第2の端部Aにおける接線方向に延びる直線をL
前記柱状部Bの第2の端部Bから、前記第1の曲線の前記第2の端部Bにおける接線方向に延びる直線をL
前記第2の端部Aと前記第2の端部Bとを結ぶ線分の中点をM、
前記柱状部Aおよび前記柱状部Bと行方向に隣り合い、該柱状部Aおよび該柱状部Bを除いて前記中点Mから最も近い距離に存在する柱状部Cの第1の端部をC、および
前記第1の端部Cを通り、前記直線Lおよび前記直線Lと平行な直線をLとすると、
前記直線Lは、前記直線Lと前記直線Lとの間に存在する、分離装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記直線Lと前記直線Lとの距離wと、前記直線Lと前記直線Lとの距離wの比w/wが0.8〜1.2である、分離装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の分離装置を含む、分離カートリッジ。
【請求項5】
請求項4に記載の分離カートリッジが組み込まれた、分離システム。
【請求項6】
分離対象液から分離目的物を分離する分離装置であって、
前記分離対象液が流れる流路を有し、
前記流路は、
三日月形状の断面を有し、前記分離目的物と特異的に結合する物質が側面に配置された第1の柱状部と、
前記三日月形状の断面を有し、前記流路の長手方向である第1方向の位置が前記第1の柱状部と同じ位置に属し、前記第1方向と直交する第2方向の位置が前記第1の柱状部と隣り合う位置に属し、前記第1の柱状部と前記三日月形状が前記第2方向に対して同じ向きに配置され、前記物質が側面に配置された第2の柱状部と、
前記三日月形状の断面を有し、前記第1方向の位置が前記第1の柱状部と隣り合う位置に属し、前記第1の柱状部と前記三日月形状が前記第2方向に対して反対向きに配置され、前記物質が側面に配置された第3の柱状部と、
を備える、分離装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記三日月形状は、第1の曲線と、該第1の曲線よりも大きな曲率を有する第2の曲線とを含み、
前記第1の曲線の一方の端部と前記第2の曲線の一方の端部とは、第1の端部で接し、
前記第1の曲線の他方の端部と前記第2の曲線の他方の端部とは、第2の端部で接し、
前記第1の柱状部が有する第2の端部をA
前記第2の柱状部が有する第2の端部をB
前記Aから、前記第1の柱状部が有する前記第1の曲線の、前記Aにおける接線方向に延びる直線をL
前記Bから、前記第2の柱状部が有する前記第1の曲線の、前記Bにおける接線方向に延びる直線をL
前記Aと前記Bとを結ぶ線分の中点をM、
前記第3の柱状部が有する第1の端部をC、および
前記Cを通り、前記直線Lおよび前記直線Lと平行な直線をLとすると、
前記直線Lは、前記直線Lと前記直線Lとの間に存在する、分離装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記直線Lと前記直線Lとの距離wと、前記直線Lと前記直線Lとの距離wの比w/wが0.8〜1.2である、分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−72989(P2011−72989A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197493(P2010−197493)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【分割の表示】特願2009−229375(P2009−229375)の分割
【原出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】