説明

分離装置用コントローラ

本発明は、多孔質フィルタまたは多孔質膜を通過する多相非均質流体の正味の一方向流動を維持するように音響エネルギーおよび真空圧力を連続監視および制御するための方法および装置に関する。非均質流体は、血液、骨髄穿刺液(BMA)、脂肪組織(吸引脂肪)、尿、唾液などの生物由来物を含む、さまざまな供給源に由来するものとすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2007年3月2日に出願した英国仮出願第0704180.9号明細書、2007年11月15日に出願した英国仮出願第0722448.8号明細書、2008年2月1日に出願した英国仮出願第0801901.0号明細書、および2008年2月29日に出願した国際特許出願第PCT/GB2008/000704号において開示されているような分離装置を改良し、そのような分離装置とともに使用することができる発明に関するものである。
【0002】
本発明は、多孔質フィルタまたは多孔質膜を通過する多相非均質流体(multi−phase heterogeneous fluids)の正味の一方向流動(net unidirectional flow)を維持するように音響エネルギーおよび真空圧力を連続監視および制御するための方法および装置に関する。非均質流体は、血液、骨髄穿刺液(BMA)、脂肪組織(吸引脂肪)、尿、唾液などの生物由来物を含む、さまざまな供給源に由来するものとすることができる。
【0003】
本発明の特定の実施形態は、生体流体の薄膜を効率よく、無菌状態で取り出すための装置および/またはシステムにさらに関係する。
【背景技術】
【0004】
国際特許出願第PCT/GB2008/000704号から、フィルタの微細孔をきれいに保つ真空ポンプおよび音響定在波を使用して多孔質フィルタ上の一方向流動を維持するように適合された分離装置を製作することが知られている。フィルタの上に保持される流体体積が減少するときにはフィルタの閉塞を防ぐために音波の周波数および振幅も変化する必要があることが、本発明の出願人によって見いだされた。
【0005】
米国特許第5997490号では、高周波低ストレス刺激を骨折または治療部位に加えることによって骨折および骨粗鬆症を治療するために人体にエネルギーを印加するためのシステムを開示している。印加されるエネルギーは、骨に対し循環する変位または循環する力を加えるような働きをする。公式に従ってエネルギーを加えるフィードバック/制御システムが構成される。
【0006】
米国特許第2007/0249046号では、組織傷害の超音波治療を行い、幹細胞集団の成熟および分化を増強するためのデバイスを開示している。このデバイスは、適宜、タイマーおよびディスプレイとともにコントローラを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】英国仮出願第0704180.9号明細書
【特許文献2】英国仮出願第0722448.8号明細書
【特許文献3】英国仮出願第0801901.0号明細書
【特許文献4】国際特許出願第PCT/GB2008/000704号
【特許文献5】米国特許第5997490号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2007/0249046号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様に従って、流体試料から固形分を分離するための装置が構成され、この装置は濾過ユニット備え、濾過ユニットは、
音響エネルギー発生素子と、
このユニットを流体試料を受け入れるための前置濾過室と音波を伝えることができる流体を受け入れるための後置濾過室とに分割する少なくとも1つのフィルタと、
後置濾過室に関連付けられるように構成され、音響エネルギーを印加された後に共鳴することができる基板とを備え、
音響エネルギー発生素子は、音響エネルギー発生素子が基板の共鳴を引き起こし、次いで後置濾過室内の流体と前置濾過室内の流体試料の両方を介して音響定在波を伝える動作が可能であるように基板に関連付けられる構成をとり、
装置は、前置濾過室内の流体の重量を測定するための重量感知手段をさらに備え、
装置は、前置濾過室内の流体の測定された重量に応じて音響定在波の特性を調節するために少なくとも音響エネルギー発生素子を制御するように適合されたコントローラをさらに備える。
【0009】
流体の密度がわかるか、または決定できるため、前置濾過室内の流体の測定重量は、フィルタの片側における前置濾過室内の流体の体積の尺度として使用され得ることは理解されるであろう。
【0010】
好ましい一実施形態における重量感知手段は、後置濾過室の下、例えば、音響エネルギー発生素子の下に配置されているロードセル、好ましくは較正されたロードセルを備えることができる。
【0011】
有利には、装置は、後置濾過室から流体を取り除くための吸引手段をさらに備え、これにより、フィルタに真空圧力を印加し前置濾過室からフィルタを通り後置濾過室へ入る生体流体(多相非均質流体)の正味の一方向流動を発生する。
【0012】
吸引手段が備えられている場合、好ましくは、真空圧力を測定するための圧力センサも備えられる。圧力センサは、有利には、コントローラに結合され、コントローラは吸引手段に結合され、これにより、真空圧力のフィードバックベースの制御を行う。
【0013】
装置は、それに加えて、流体に伝えられる音響エネルギーを測定するためのモニタ、例えば、マイクロホンまたは他の音響感知デバイスを備えることができる。モニタは、有利には、コントローラに結合され、コントローラは音響エネルギー発生素子に結合され、これにより、音響定在波のフィードバックベースの制御を行う、例えば、音響定在波の波長、周波数、振幅、強度、および/またはエネルギーを制御する。
【0014】
コントローラは、流体の重量および/または体積、真空圧力、および/または音波特性を表示するように配置構成され得るディスプレイ、例えば、液晶ディスプレイまたは発光ダイオードディスプレイを装備するか、またはそれに結合され得る。
【0015】
特に好ましい実施形態において、コントローラおよびディスプレイ、吸引手段、圧力センサ、および音響エネルギーモニタのうちの少なくとも1つが、マイクロプロセッサも備えるプリント回路基板(PCB)上に組み込まれる。
【0016】
有利には、流体の体積、圧力、および/または音響エネルギーの変化は、好ましいレベルの音響エネルギーおよび圧力を伝え分離デバイスを通して生体流体を処理するように音響エネルギー発生素子および吸引手段をインテリジェントに調節するマイクロプロセッサによって登録される。
【0017】
フィルタを通る生体流体の正味の一方向流動は、吸引手段を使用する機械的吸引によって達成され得るが、この手段は真空ポンプを備えていてもよい。適切な真空圧力が印加され、流体試料中の細胞の生物学的健全性、機能性、および生存性を維持しながらフィルタを通る生体流体の所望の成分が移動可能なようにこの真空圧力が保持される。
【0018】
適切な音響エネルギー(周波数および振幅)が、音響エネルギー発生素子によって生体流体に印加され、これにより、流体試料中の細胞に対するフィルタ振動および/または撹拌が生じる。これにより、フィルタ表面上の細胞同士が接触する時間の長さが最小にされるか、または少なくとも短縮され、フィルタの微細孔が流体中の大きな細胞または粒子で目詰まりすることが防止される。フィルタの上の流体体積が減ると、流体に伝えられる音響エネルギーは、微細孔をきれいに保つように変わりうる。
【0019】
上述のように適用されるプロセスパラメータを変化させることに加えて、本発明の実施形態のコントローラは、例えば、フィルタが塞がれたり目詰まりしたりすること、前置濾過流体の体積がゼロになること、真空圧力の不測の喪失(システム内に漏れが生じていることを示す)などの所定の事象が検出された後に分離プロセスを終了するようにも構成され得る。
【0020】
濾過ユニット内の流体に音響定在波を通すと、その結果、分離プロセスにおいて連続的に、または脈動的に、流体が撹拌される。この撹拌の具体的利点としては、フィルタの詰まりおよび目詰まりを減らせることが挙げられる。
【0021】
流体試料から細胞画分を分離するためにこの装置が利用される本発明の実施形態において、ユニット内での流体の撹拌には、前置濾過室内の細胞とフィルタとの接触時間または滞留時間の長さが最小になるというさらなる利点がある。これは、細胞がフィルタの表面と接触しているか、または十分近くにある場合に、周囲流体の圧力の下で細胞が微細孔に押し通される傾向があるため、望ましいことである。微細孔へのこのような通過は、細胞の変形によって達成可能であるが、通過中に、細胞は細胞に悪影響をもたらしうる剪断応力などの望ましくないストレスに曝される可能性がある。特に、白血球の機能は、剪断応力の影響を大きく受ける可能性があることが示されている(Carterら、2003年)。したがって、注目する細胞がフィルタを通過しないように防ぐことが望ましい。この点において、このフィルタは前置濾過室内の注目する細胞を保持しながら流体および他の細胞画分を通すことができるように設計される。
【0022】
音響エネルギー発生素子は、電力信号への応答として音響エネルギー場を発生することができる構造として定義される。例えば、単純なスピーカーの場合、電力信号が定められた振幅および周波数で振動板を物理的に偏向させ、音波を発生する。他の音響素子としては、印加されるAC電圧に応答して振動エネルギーを発生する圧電変換器があり、物理的振動を音響力として流体に伝える。圧電素子の例は、セラミック基板、例えば、薄い円盤状のものもしくは他の形状のものであり、それぞれの面に金属膜電極が張り付けられており、これらの圧電薄膜は、典型的には、酸化亜鉛である。
【0023】
音響エネルギー発生素子と共鳴が可能な基板との結合には、音響素子を単独で使用するのに比べて多数の利点がある。音響素子は、素子自体の円錐形状に比べてかなり広い面積を有している基板材料に取り付けられたとき共鳴を改善するように設計されていることから、流体とは直接接触しない。このことは、小さな音響素子を使用していてもより多くのエネルギーを流体に伝えることができることを意味している。全体として、これにより、エネルギー効率とデバイスのフットプリントが大幅に改善され、大きな流体体積を処理するときには特に有益である。入手可能な好適な音響素子は、NXT Technology Limited社(香港所在)のModel No.RM−ETN0033K19C−2K01である。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態では、音響エネルギー発生素子と基板とを組み合わせることで、約300〜700Hzの範囲内の周波数を持つ音響定在波を発生する。流体体積と必要な最適周波数との間には一定の関係が存在する。したがって、有利には、本発明の具体的な実施形態において、ユーザー側で流体試料の体積を入力することができ、音響定在波の周波数が計算される。例えば、約5mlから15mlまでの範囲内の体積を持つ試料では、音響定在波の最適周波数は、約300Hzから700Hzまでの範囲内である。
【0025】
本発明の特定の実施形態では、音響エネルギー発生素子は、出力0.4W、抵抗4Ω、振幅約4.2Vから7.36Vピークツーピーク、周波数範囲約300〜700Hzの範囲のスピーカーである。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態において、基板は、フィルタに対して実質的に平行になるように配置される。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態において、基板は、濾過ユニットの基部に配置される。
【0028】
基板は、音響発生素子による刺激に対する応答として共鳴することができる好適な材料で製作され得る。例えば、これは、金属、セラミック、またはポリマーとすることができる。有利には、基板は装置内で使用される流体と接触することになる可能性があるため、基板は医療グレードの材料で作られる。これにより、有毒物質による汚染の危険性が軽減される。
【0029】
基板は、音響板、または積層されるか、もしくは接着されたサンドイッチ構造をとる複合パネルの形態の同様のものの形態をとりうる。特に好ましい一実施形態では、基板は、ポリカーボネート(または他のポリマー)コアとステンレス製とすることができる2つの外側金属層もしくは外皮を備える。外皮または外層は、非常に強いが、内部コアは、軽量で、かなり弱い。外皮または外層は、好ましくは薄く、例えば、0.1mm未満、好ましくは0.5mm未満の厚さであり、内部コアは、より厚く、好ましくは1mm、より好ましくは約0.5mmの厚さである。3つの層は、高強度接着剤、例えば、エポキシもしくはメチルメタクリレート接着剤によって相互に接着される。いくつかの実施形態では、基板は円盤形状であるが、他の実施形態では多角形、さらには円錐形状を使用することもできる。
【0030】
軽量のポリマーコア(要求される始動力を最小限に抑えるため)、剛性の高い金属外皮(無制御の振動の発生を防ぐため)、および良好な減衰(音響発生素子が停止したときの振動の継続を低減するため)を組み合わせると、非複合構造を使用したのでは得られない驚くべき有益な効果がもたらされる。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態において、音響エネルギー発生素子は、基板に対して可逆的に結合される。この結合は、当業者に利用可能なさまざまな手段により、例えば、接着剤を使用して、達成され得る。これは、音響素子が分離され、他のユニットで再利用できるため、濾過ユニットが使い捨て型として設計されている場合には特に有利である。
【0032】
フィルタの流体試料の通過は、重力によって生じる受動的移動によるものとしてよい。あるいは、流体試料は、陽圧または陰圧を加えることでフィルタを能動的に通過させることができる。フィルタを通過する流体試料の流量は、一定であるか、または可変である。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態では、音波を伝えることができる後置濾過室内に備えられた流体は、洗浄液としても働く。この実施形態では、後置濾過室から洗浄液をフィルタに押し通して前置濾過室に送る陽圧ポンプが備えられる。それと同時に、陰圧ポンプが前置濾過室から後置濾過室へ流体を引き込む。したがって、流体試料および洗浄液はフィルタを反対方向に順次通過し、流体試料の正味の移動は後置濾過室内への移動となり、分離された固形分は前置濾過室内に保持される。
【0034】
大まかに言うと、本発明の実施形態は、第1の圧力を流体に加えて流体を後置濾過室からフィルタを通して前置濾過室内へ移動するための手段および第2の圧力を流体に加えて流体を前置濾過室からフィルタを通して後置濾過室内に移動するための手段をさらに備えることができる。
【0035】
流体試料および洗浄液がフィルタを反対方向に順次通過することにより、フィルタの詰まりおよび目詰まりを防ぎ、分離プロセスの効率をさらに高める。この順次移動は、循環的であるものとすることができ、サイクルの1つのフェーズは洗浄液を使用するフィルタの高速逆洗であり、サイクルの第2のフェーズは流体試料を下方に向かってフィルタに押し通す。この循環プロセスは、粒子画分が溶液中に保持されるようにフィルタの上で流体の十分な体積をさらに保持しながら、試料体積を十分に減らすために続けられる。典型的には、試料体積は、約1/10に減少する。
【0036】
本発明の他の実施形態では、分離プロセスの実行時にフィルタそれ自体が撹拌される。この撹拌は、例えば、フィルタを可動ホルダーに関連付けることによって実行され得る。撹拌は、縦方向、または横方向、またはこれらを組み合わせた方向に行うことができる。本発明の代替の実施形態では、フィルタを回転させることができる。
【0037】
洗浄液および/または流体試料をさらに撹拌する他の手段は、回転素子(例えば、流体中のインペラーまたは挿入物)を使用すること、室の壁を回転すること、またはバッフルを備えるか、もしくは能動チップを使用する室の壁を回転することを含む。
【0038】
「流体試料」は、固形成分が分離されるべき流体である。試料は、有機体、同じもしくは異なる種からの有機体の群、生体もしくは水もしくは土壌などの環境、または食料源、または工業原料などの、任意の供給源から得ることができる。試料は、処理済みまたは未処理の試料とすることができる。試料は、気体でも液体でもよい。試料は、抽出物、例えば、土壌もしくは食品試料の液体抽出物であってよい。
【0039】
この装置は、粘性があり、フィルタの表面に薄膜またはコーティングを形成することによってフィルタを詰まらせる傾向の高い液体に対し特に適している。フィルタに洗浄液を通す逆洗、および適宜、流体試料および/またはフィルタの撹拌を行うことで、フィルタの詰まりが著しく低減し、前置濾過副室内の溶液中の粒子画分も維持される。
【0040】
試料は、被検体から採取することができる。被検体は、動物またはヒトなどの任意の有機体とすることができる。動物は、野生動物もしくは家畜などの任意の動物であってよい。家畜としては、例えば、イヌまたはネコなどのペットが挙げられる。
【0041】
試料は、血液試料、滲出液、尿試料、精液、骨髄穿刺液、脊髄液、組織からの細胞懸濁液、粘液、痰、または唾液などの生体試料とすることができる。生体試料は、動物から採取することができ、ヒトからの生体試料に限定されない。
【0042】
本明細書で使用されているような「血液試料」は、臍帯血試料、骨髄穿刺液、内部血液または末梢血を含む、処理済みまたは未処理の血液試料を指し、任意の体積をとることができ、また動物もしくはヒトなどどのような被検体からのものでもよい。好ましい被検体はヒトである。
【0043】
生体流体試料から分離すべき固形分は、少なくとも1つの細胞画分を含むことができる。細胞画分は、好ましくは、治療細胞、つまり、治療効果もしくは治療効果を有する考えられる任意の細胞を含む。
【0044】
細胞画分は、少なくとも1つの白血球を含むか、または少なくとも1つの白血球からなるものとすることができる。「白血球(white blood cell)」とは、ロイコサイト(leukocyte、白血球)、または網状赤血球または血小板ではない、動物もしくはヒトの血液中に見られる造血系細胞のことである。ロイコサイトには、ナチュラルキラー細胞(「NK細胞」)、およびBリンパ球(「B細胞」)またはTリンパ球(「T細胞」)などのリンパ球を含めることができる。ロイコサイトには、単球、マクロファージ、ならびに好塩基球、好酸球、および好中球を含む顆粒球などの、食細胞を含めることもできる。ロイコサイトに、肥満細胞を含めることもできる。
【0045】
細胞画分は、少なくとも1つの赤血球を含むか、または少なくとも1つの赤血球からなるものとすることができる。「赤血球(red blood cell)」とは、エリスロサイト(erythrocyte、赤血球)のことである。
【0046】
細胞画分は、少なくとも1つの新生細胞を含むか、または少なくとも1つの新生細胞からなるものとすることができる。「新生細胞」とは、無制限細胞増殖を行う異常細胞のことであり、新生物を誘発した刺激が取り除かれた後も成長し続ける。新生細胞は、構造組織化、および正常組織との機能調整の部分的なまたは完全な欠如を示す傾向を有し、良性である場合も、悪性である場合もある。
【0047】
細胞画分は、少なくとも1つの悪性細胞を含むか、または少なくとも1つの悪性細胞からなるものとすることができる。「悪性細胞」とは、局所的に侵襲的で破壊的である増殖、および転移の特性を持つ細胞のことである。悪性細胞の例としては、限定はしないが、血液、骨髄、腹水、尿、気管支洗浄液を含むさまざまな体液中の白血病細胞、リンパ腫細胞、充実性腫瘍の癌細胞、転移性充実性腫瘍細胞(例えば、乳癌細胞、前立腺癌細胞、肺癌細胞、結腸癌細胞)が挙げられる。
【0048】
細胞画分は、少なくとも1つの癌性細胞を含むか、または少なくとも1つの癌性細胞からなるものとすることができる。「癌性細胞」とは、無秩序な増殖を示す細胞のことであり、ほとんどの場合、限定はしないが、特徴的形態、非移動行動、細胞間相互作用、および細胞シグナリング行動、タンパク質の発現、および分泌パターンなどの、いくつかの分化特性のうちの少なくとも1つを失っている。
【0049】
細胞画分は、少なくとも1つの幹細胞を含むか、または少なくとも1つの幹細胞からなるものとすることができる。「幹細胞」は、1つまたは複数の細胞分裂周期を通して少なくとも1つの分化した細胞種類を生じさせることができる未分化細胞である。
【0050】
細胞画分は、少なくとも1つの前駆細胞を含むか、または少なくとも1つの前駆細胞からなるものとすることができる。「前駆細胞」は、1つまたは複数の細胞分裂周期を通して少なくとも1つの分化した細胞種類を生じさせることができる拘束されているが未分化の細胞である。典型的には、幹細胞は、特定の刺激または一連の刺激に応答して1つまたは複数の細胞分裂を通じて前駆細胞を生じさせ、前駆細胞は、特定の刺激または一連の刺激に応答して1つまたは複数の分化した細胞種類を生じさせる。
【0051】
骨髄(または骨髄質(medulla ossea))は、骨中空内部に見られる軟組織である。骨髄には、赤色骨髄(骨髄組織ともいう)と黄色骨髄の2種類がある。赤血球、血小板、および大半の白血球は、赤色骨髄中に発生し、一部の白血球は黄色骨髄中で成長する。
【0052】
骨髄は、造血幹細胞および間葉系幹細胞の2種類の幹細胞を含む。幹細胞は、細胞分裂を通じて自己再生する能力を保持し、広範な特殊化した細胞種類に分化することができるすべての多細胞生物に共通の初代細胞(primal cells)である。造血幹細胞は、循環系内に見られる血液細胞の3つのクラスである、白血球(ロイコサイト)、赤血球(エリスロサイト)、および血小板(トロンボサイト)を生じさせる。間葉系幹細胞は、骨髄中の中心洞の回りにずらりと並んでいることが判明しており、骨芽細胞、軟骨細胞、筋細胞、および他の多くの種類の細胞に分化する能力を有している。
【0053】
胚幹細胞は、全能性または多能性であり自己再生に対する無制限の能力を示すという点で真の幹細胞であるが、骨髄中の成熟細胞は、幹細胞のように自己再生と分化の能力を有するが、かなり制限されているので、前駆細胞と呼ぶのがより適切である。前駆細胞は、通常、多能性と言うよりはむしろ単能性または複能性である。
【0054】
伝統的に骨髄から採取される、間葉系幹細胞またはMSCは、さまざまな細胞種類に分化することができる複能性幹細胞である。MSCが分化してなることが証明されている細胞種類としては、骨芽細胞、軟骨細胞、筋細胞、含脂肪細胞、および神経細胞が挙げられる。
【0055】
骨髄密度は、患者毎に異なる可能性があり、実際異なり、骨髄に対する一様な粘性はない。患者は若ければ若いほど、密度が高く濃い随質を有することが多く、その結果空洞内の組織はより小柱状になる。この粘着性のある髄質は、分離デバイス内のフィルタを詰まらせる傾向を有する。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態では、流体試料は、骨髄穿刺液である。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態では、流体試料は、骨髄穿刺液であり、固形分は、前駆細胞である。
【0058】
本明細書で使用されているような「組織」は、すべての動物に存在する4つの基本的な種類の組織、つまり上皮、結合組織、筋肉組織、および神経組織を含む。
【0059】
結合組織の例としては、皮膚、筋肉、軟骨、骨、腱、靱帯、関節包、および脂肪組織が挙げられる。
【0060】
本明細書で使用されているような「脂肪組織」は、体内の微小血管組織の脂肪および他の源を意味することが意図されている。脂肪組織は、含脂肪細胞、周皮細胞、線維芽細胞、マクロファージ、幹細胞、および微小血管細胞を含む多数の細胞種類を含む複合組織である。そのようなものとして、脂肪組織は、体内の前駆細胞の最も都合のよい供給源の1つである。
【0061】
本明細書で使用されているような「微小血管細胞」は、内皮細胞、平滑筋細胞、および周皮細胞などの微小血管系の構造を含む細胞を意味することが意図されている。
【0062】
脂肪組織は、体内の「脂肪」貯蔵庫から収穫することができる。好適な貯蔵庫は、精巣上体、肩甲骨間脂肪体、または膝蓋下脂肪体(Hoffas脂肪体)を含む。あるいは、潜在的に都合がよいことであるが、脂肪組織は、脂肪吸引術を行った結果得られる吸引脂肪とすることができる。
【0063】
吸引脂肪は、本発明のデバイス内に直接的に導入され得るが、脂肪組織の断片は、前処理を必要とする。組織片を粉砕し、および/または酵素的に消化して、組織の細胞成分を放出する。次いで、この細胞成分を適当な担体中に懸濁し、デバイス内に導入することができる。
【0064】
上で採取された吸引脂肪および/または細胞懸濁液をさらに処理してから、デバイス内に導入し得ることが考えられる。例えば、重力沈降および/または遠心分離を用いて、間質画分(幹細胞、内皮細胞、および周皮細胞を含む)から大きな脂肪球および含脂肪細胞を分離することができる。
【0065】
生体試料が濾過される本発明のいくつかの実施形態において、濾過ユニットを吸引装置に結合し、流体が被検体から濾過ユニット内に直接移動されるようにすることができる。濾過ユニットは、滅菌環境において使用することができ、この配置構成をとることで、患者から試料を取り出してから濾過ユニット内に導入するまでの間に試料が汚染する危険性が低減される。
【0066】
本発明の代替実施形態では、固形分は、被検体に感染する可能性のある細菌、真菌、原虫、ウイルス、寄生虫、またはプリオンなどの病原因子からなるものとすることができる。
【0067】
試料は、インビトロ細胞懸濁液とすることができる。
【0068】
箔と称されることもある、フィルタは、本発明において説明されている方法で流体試料から固形分を分離するのに適している材料から製造することができる。フィルタは、天然材料または合成材料またはこれらの組み合わせから製造することができる。好適な材料としては、限定はしないが、金属、金属合金、セラミック、または高分子材料が挙げられる。例としては、ポリカーボネート(PLC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)、ニッケル、およびステンレスが挙げられる。これらの材料は、好ましくは、医療グレードの材料である。好適なトラックエッチフィルタが、it4ip社(ベルギー所在)から入手可能である。好適なニッケル箔フィルタは、Tecan Limited社(英国所在)から入手可能である。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態では、フィルタは、実質的に平面状である。すなわち、フィルタは、フィルタの直径がフィルタの高さより大きい二次元プロファイルを持つ。このようなプロファイルは、フィルタが流体試料に曝される潜在的表面積を増やし、これにより、濾過率が高まる。このプロファイルは、固形物がフィルタ内に詰まる可能性を最小限に抑える。
【0070】
フィルタの好適な厚さの例は、11、23、および50マイクロメートルである。フィルタが薄ければ薄いほど、中を通る流体の流量は高まる。
【0071】
フィルタは、同じ幾何学的形状を有する同じ直径または異なる直径の微細孔を備え得ることが考えられる。あるいは、フィルタは、異なる幾何学的形状で同じ直径を持つ微細孔を備えることができる。あるいは、それでも、フィルタは、異なる直径および異なる幾何学的形状の微細孔を備えることができる。
【0072】
好適な微細孔幾何学的形状としては、限定はしないが、横方向断面が円形、長円形、正方形、長方形、または三角形であるものが挙げられる。
【0073】
微細孔は、テーパを付けることができる。微細孔にテーパを付けることによって、真空下で細胞を容易に変形させることができる。テーパのそれぞれの端部のところの微細孔のサイズ、およびテーパの向きに応じて、サイズに基づく細胞の優先的選択を行うことができる。本発明の有利な実施形態では、テーパ付き微細孔の最も狭い先端をフィルタの上面に配置する。この配置構成により、より小さな細胞を微細孔に貫流させ、より大きな細胞をフィルタの上に留めることができる。逆に、フィルタを通して上へ向かう洗浄液の逆洗では後置濾過室内の細胞が微細孔を通して戻ることがより困難になるように思われる。微細孔の最も狭い先端部がフィルタの下面に配置されている場合、細胞は微細孔に入って変形し、最も狭い先端部を無理矢理通り抜ける傾向を有することが判明している。
【0074】
本発明の特定の実施形態において、微細孔は、約1マイクロメートルから12マイクロメートルまでの範囲の直径を有する。
【0075】
本発明の他の実施形態では、微細孔は円筒形状とすることができる。
【0076】
前駆細胞が骨髄穿刺液から分離される本発明の他の実施形態において、好適なフィルタは、PETで作られ、厚さは23マイクロメートルであり、微細孔直径は3マイクロメートルであり、微細孔密度は1cm当たり400,000微細孔である。流体を効果的に「引っ張って」フィルタに通す真空ポンプで生成される最適な陰圧は、約−0.1から−0.5psiの範囲であり、より具体的には−0.2から−0.3psiである。あるいは、陽圧を発生させて、流体をフィルタに効果的に「押し通す」ことができる。そのようなポンプで生成される最適な陽圧は、約+0.1から+0.5psiの範囲であり、より具体的には+0.2から+0.3psiである。
【0077】
濾過ユニットの設計は、流体試料に対する前置濾過室のアスペクト比が小さくなり、それにより単位体積当たりの濾過のための表面積が広くなるように修正することができる。
【0078】
本発明の他の実施形態では、濾過ユニットの前置濾過室は、ウェルプレートフォーマットとして与えられるバッチ流体試料を受け入れるために使用できる複数の室に分割される。
【0079】
濾過に続いて、分離(精製、富化、または濃縮とも呼ばれる)固形分を含む、残留流体試料を、例えば、ピペットを使用して、吸引により濾過ユニットの上室から取り出して、保管するか、または使用することができる。本発明の他の実施形態では、特に、残留流体試料が治療細胞画分を含む実施形態では、残留流体試料を、例えば、ヒドロゲルまたは骨セメントと混合することができる。これらの実施形態では、ヒドロゲルまたは骨セメントは、細胞貯蔵庫として機能する。
【0080】
本発明の第2の態様に従って、流体試料から固形分を分離する方法が提供され、前記方法は、
i)流体試料を本発明の装置内に導入するステップと、
ii)流体試料を濾過するステップと、
iii)分離された画分を前置濾過室から取り出すステップとを含む。
【0081】
本発明の第3の態様に従って、本発明の装置を使用して流体試料から治療細胞を単離または分離する方法が提供される。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態において、流体試料は、血液試料、滲出液、尿試料、精液、骨髄穿刺液、脊髄液、組織からの細胞懸濁液、粘液、痰、または唾液などの生体試料とすることができる。
【0083】
本発明のいくつかの実施形態において、治療細胞は、前駆細胞である。
【0084】
本発明の第4の態様に従って、本発明の装置を使用して骨髄穿刺液から治療細胞を単離または分離する方法が提供される。
【0085】
本発明のいくつかの実施形態において、治療細胞は、前駆細胞である。
【0086】
本発明のいくつかの実施形態におけるコントローラは、一定時間毎のシーケンスで循環回転方式により真空ポンプと逆洗ポンプのオン、オフを切り替えるようにプログラムされたプログラマブルロジックコントローラ(PLC)を備えることができる。真空ポンプは、陰圧下で流体試料を下方に引いてフィルタに通す。逆洗ポンプは、洗浄液を押し上げてフィルタに通す。
【0087】
濾過室および/またはフィルタは、使い捨てであってよい。制御ユニットは、使い捨てまたはスタンドアロンの専用ユニットとすることができる。言い換えると、装置全体(適宜コントローラを含む)が使い捨てであってよい(環境、例えば、電池の処分またはリサイクルおよび他の潜在的に有毒な成分に関係する事項を考慮した上で)。あるいは、装置は、再利用してもよいが、ただし、フィルタおよび/または濾過室のみは使用するたびに処分する。
【0088】
本発明の他の態様では、単離された治療細胞を、これを必要とする部位内に懸濁液として直接投与することができる。あるいは、これらの細胞を適切な担体材料、例えば、ゲル、ペースト、セメント、膠、骨格、薄膜、インプラント、または被覆材と組み合わせるか、または関連付けることができる。
【0089】
単離された治療細胞を、一連の医学的応用において、組織機能の修復、再生、および/または補強のためにヒトおよび/またはヒト以外の動物に使用することができると考えられる。
【0090】
医学的応用例としては、整形外科手術、神経外科手術、心臓血管外科手術、皮膚外科手術、美容整形外科手術、および歯科外科手術が挙げられる。
【0091】
本発明のいくつかの実施形態では、単離された治療細胞は、間葉系幹細胞を含むことが考えられる。これらの細胞は、骨芽細胞、軟骨細胞、筋細胞、および含脂肪細胞に分化することができる。間葉系幹細胞を含む治療画分は、軟骨修復、骨修復(骨折修復を含む)、脊椎固定術、変性椎間板治療(線維輪修復、髄核増強、椎間板増強を含む)などの、疾病または怪我の結果もたらされる、整形外科の適応症において使用することができる。
【0092】
機能的内皮前駆細胞(EPC)は、脈管形成と血管形成の中心となるものである。EPCは、成獣の骨髄単核球から成長することが証明されている。したがって、本発明のいくつかの実施形態では、単離された治療細胞は、EPCを含み、この治療画分は、末梢血管障害などの、損傷もしくは虚血組織が修復、再生、または脈管形成を必要とする適応症において使用することができると考えられる。
【0093】
したがって、i)被検体内の組織中に新しい血管を形成するための方法、ii)被検体内の組織中の血流を増大するための方法、iii)被検体内の病変組織を治療するための方法、iv)病変組織の血管形成を高めるための方法、またはv)被検体の心不全を予防するための方法が提供され、前記方法はすべて、
a)本発明による装置を使用して骨髄単核球を単離するステップと、
b)組織内に新しい血管を形成するために有効量の骨髄単核球を組織内に局所的に移植するステップとを含む。
【0094】
本発明のいくつかの実施形態では、骨髄単核球は、自己細胞である。
【0095】
骨髄単核球が移植される組織は、病変または損傷組織および修復もしくは再生を必要とする組織を含み、限定はしないが、慢性虚血において見られる組織などの貫流の悪い組織、さらには心筋組織、骨格筋組織、例えば脳卒中もしくは動静脈奇形の影響を受ける脳組織、冠状血管、腎臓、肝臓、消化管の臓器、神経系の筋萎縮を含む、萎縮の影響を受ける筋肉組織が挙げられる。
【0096】
本発明のいくつかの実施形態では、新しい血管は、毛細血管および/または側副血管である。
【0097】
本発明のいくつかの実施形態は、固形分の回収がしやすくなるように少なくとも前置濾過室を傾けるための傾斜手段をさらに備えることができる。
【0098】
傾斜手段は、以下でさらに詳しく説明されるように、分離プロセスの完了後に自動的に作動させることができる。
【0099】
平坦な表面上の生体流体の薄膜を効率的に無菌状態で回収することは、従来の方法、例えば、注射器を使用したのでは難しいことが多い。このような回収を容易にするための装置を製作することが望ましい。
【0100】
例えば、国際特許出願第PCT/GB2008/000704号から、フィルタの微細孔をきれいに保ちやすくする真空ポンプおよび音響定在波を使用して多孔質フィルタに生体流体を引き通す分離装置を製作することが知られている。分離を成功させるために、フィルタ表面は、平坦で水平になっていなければならない。分離後にフィルタの上面に残る濾取または残留物の最終的な体積は、小さく、多くの場合、フィルタの上面に付く薄膜の形態をとりうる。
【0101】
濾取または残留物を回収して例えば注射器の中に集める効率を最大にするか、または改善するためには、使用者側で、濾取または残留物がフィルタ表面の一方の縁にたまるようにフィルタ表面を傾ける必要がある。しかし、分離が所望の程度まで進行する前にフィルタ表面を傾けた場合、濾取は、そのまま、望ましくない量の濾過液または溶媒を含んでいる可能性がある。さらに、分離が完了する前にフィルタ表面を乱さないことが重要であり、そうしないと、濾取中の固形残留物がフィルタ表面上に不均一に分布し、ひいては異なる試料間の分離がばらつき望ましくない状況に至る可能性がある。
【0102】
前の態様と併用され得る、または前の態様とは独立して使用され得る、本発明の第5の態様に従って、流体試料から画分を分離するための装置が製作され、この装置は、
濾過ユニットを流体試料を受け入れるための前置濾過室と流体試料の濾液を受け入れるための後置濾過室に分割する少なくとも1つのフィルタを備える濾過ユニットと、
濾過の程度を測定し、所定の程度の濾過が行われたときに信号を発生するための電子的手段と、
水平面に関する第1の向きから水平面に関する第2の向きへフィルタを傾けるためのフィルタ傾斜手段とを備え、
フィルタ傾斜手段は、電子的手段からの信号に応答してフィルタを傾ける動作が可能である。
【0103】
特に好ましいいくつかの実施形態において、フィルタ傾斜手段は、いったん動作してしまうと、フィルタを水平面に関する第1の向きに戻して保持することができなくなる。
【0104】
生物由来物質、特にヒト由来の生体物質を処理するデバイスは、1回だけ使用する使い捨てタイプである場合が多い。この特徴および変更形態により、フィルタまたは処理表面を水平設定に戻すことが妨げられ、これにより、濾過ユニットをうっかり再利用してしまうことを防止できる。
【0105】
電子的手段は、前置濾過室内の流体の体積またはレベルおよび/または後置濾過室内の流体の体積またはレベルを測定することができる。あるいは、電子的手段は、経過した時間、または濾過室の一方または他方の流体の重量もしくは質量を測定することができる。いくつかの実施形態において、電子的手段は、前置濾過室内の流体の混濁度を測定するように構成され得る。
【0106】
有利には、フィルタ傾斜手段は、操作者からの手動による介入がなくても電子的手段からの信号に応答してフィルタを自動的に傾ける。
【0107】
いくつかの実施形態では、濾過ユニットのフィルタだけを傾け、前置濾過室および後置濾過室を一般的に固定位置に残す。
【0108】
他の実施形態では、濾過ユニットが基部またはハウジング内に取り付けられ、フィルタを含む濾過ユニット全体が、一般的には固定位置に置かれたままである基部またはハウジングに関して傾けられる。
【0109】
有利には、濾過ユニット、または少なくともフィルタは、濾過ユニット、または少なくともフィルタを第1の向きから第2の向きへ配向するための弾性手段またはバネ付けの手段を備える。次いで、弾性手段によって印加される力に対抗して濾過ユニット、または少なくともフィルタを第1の向きに保持するための保持手段も備える。弾性手段は、つる巻きバネもしくは板バネとすることができる少なくとも1つの圧縮バネを備えることができるか、または圧縮されると、反対の向きの弾性力を発生する弾力性のあるポリマー、プラスチック、またはゴム製のコンポーネントを備えることができる。あるいは、またはそれに加えて、弾性手段は、濾過ユニット、もしくは少なくともフィルタを第1の向きから第2の向きにするように構成されている少なくとも1つの引張バネまたはコンポーネントを備えることができる。
【0110】
フィルタ傾斜手段の一部を形成する、保持手段は、所望の程度の濾過が行われることを指示する電子的手段からの信号に応答して、濾過ユニット、または少なくともフィルタを解放するように構成される。次いで、濾過ユニット、または少なくともフィルタは、弾性手段によって第1の向きから第2の向きへ移される。
【0111】
第1の向きでは、フィルタは、好ましくは、前置濾過室に面する表面が重力の作用方向に関して実質的に水平になるように配置される。
【0112】
第2の向きでは、フィルタは、好ましくは、前置濾過室に面する表面が、水平に関して、一般的に90°未満の角度、典型的には45°未満の角度、およびいくつかの実施形態では、30°未満の角度または10°未満の角度またはさらには5°未満の角度に傾けられるように配置される。
【0113】
フィルタ表面を傾けることによって、前置濾過室内の濾取または残留物をフィルタ表面の下縁にたまるようにすると、例えば、注射器を使って取り出しやすくなる。
【0114】
濾過ユニットは、備えられている場合には基部またはハウジング内にちょうつがいによる連結で取り付けられる。あるいは、フィルタは、濾過ユニット内にちょうつがいによる連結で取り付けることができる。ちょうつがいを使用することで、フィルタおよび/または濾過ユニットは第1の向きと第2の向きとの間を移動することができる。
【0115】
有利には、傾斜手段は、電子的手段による作動の後に濾過ユニット、または少なくともフィルタを第2の(傾斜)向きにロックするように構成される。これは、フィルタまたは濾過ユニットの再利用を防ぎやすくする。
【0116】
保持手段は、プリント回路基板(PCB)上に備えることができる、抵抗器もしくは他の電子コンポーネントと一体であるか、または関連付けることができる適切な天然もしくは合成材料のより糸(thread)またはフィラメントを備えることができる。導電性であるか、または電気絶縁性とすることができる、より糸またはフィラメントは、濾過ユニット、または少なくともフィルタの一部に一方の端部のところで取り付けられ、また第1の向きから第2の向きに移動するときにフィルタが移動する際に基準となる基部またはハウジングもしくは他の何らかのコンポーネントの一部に他方の端部のところで取り付けられる。より糸は、例えば、弾性手段によって印加される力に対抗して濾過ユニットを基部またはハウジング内の適所に保持することによって、フィルタを第1の向きに保持するように配置される。例えば、所定の体積分の濾過液もしくは濾取が回収されたとロードセルまたは同様のものが判定したときに電子的手段が信号を発生する場合、この信号は、より糸を断絶させ、それにより、フィルタが第2の向きに移動するようにするために使用される。
【0117】
より糸またはフィラメントが導電性である場合、この信号によって、より糸またはフィラメント中を電流が流れて、発熱し、次いで断絶する(ヒューズ線のようにして)。
【0118】
特に好ましい一実施形態では、保持手段は、導電性フィラメントを組み込んだ可溶性抵抗器を備える。
【0119】
より糸またはフィラメントを断絶するための他の配置も構成することができる。
【0120】
あるいは、フィルタ傾斜手段は、サーボモータなどの電気モータ、および/または作動機械または電気機械ネジを備えることができる。
【0121】
他の実施形態では、油圧作動または空気圧作動機構、例えば、圧縮空気ピストンを備えることができる。
【0122】
あるいは、電磁石を備えて、濾過ユニット、または少なくともフィルタを第1の向きに保持することができ、信号によって、電磁石をオフにし、濾過ユニット、または少なくともフィルタを解放し、第2の向きへ移動することができる。
【0123】
さらに他の実施形態では、電界アクチュエータを使用することができる。
【0124】
いくつかの実施形態では、カウンターバランスウエイトを使用して、濾過ユニット、または少なくともフィルタを第1の向きから第2の向きへ移動することができる。
【0125】
ポップアップ/傾斜を制御しつつより効果的に行えるように、複数の弾性手段またはアクチュエータスプリングを使用することができる。
【0126】
傾斜作用を遅くしたり、または円滑にしたりするために、ベアリングおよび/またはダンパーを追加することもできる。
【0127】
さらに他の実施形態では、装置は、基部またはハウジングを含み、濾過ユニットおよびフィルタを含む基部またはハウジング全体が、基部またはハウジングが配置される(一般的には水平の)表面に関して傾けられる。これらの実施形態では、フィルタ傾斜手段は、基部またはハウジングは表面上に平坦に置かれる第1の位置から基部またはハウジングがその表面に関して傾けられている第2の位置へ移動可能なアーム、脚、足、レバー、または他の部材などの少なくとも1つの移動可能素子を備えることができる。
【0128】
少なくとも1つの移動可能素子は、好ましくは、その素子を第1の位置から所定の量だけ移動した後に第2の位置にロックするためのロック手段を備えることができる。
【0129】
前の態様と併用され得る、または前の態様とは独立して使用され得る、本発明の第6の態様に従って、流体試料から画分を分離するための装置が製作され、この装置は、
濾過ユニットを、流体試料を受け入れるための前置濾過室と流体試料の濾液を受け入れるための後置濾過室に分割する少なくとも1つのフィルタを備える濾過ユニットと、
水平面に関する第1の向きから水平面に関する第2の向きへフィルタを傾けるためのフィルタ傾斜手段とを備える。
【0130】
この態様による実施形態において、フィルタ傾斜手段は、濾過が要求された程度まで進んだと判定されたときに装置の使用者によって手動操作可能なものとすることができる。言い換えると、これらの実施形態におけるフィルタ傾斜手段は、必ずしも電子的手段によって自動作動するわけではない。
【0131】
特に好ましいいくつかの実施形態において、フィルタ傾斜手段は、いったん動作してしまうと、フィルタを水平面に関する第1の向きに戻して保持することができなくなる。
【0132】
いくつかの実施形態では、濾過ユニットのフィルタだけを傾け、前置濾過室および後置濾過室を一般的に固定位置に残す。
【0133】
他の実施形態では、濾過ユニットが基部またはハウジング内に取り付けられ、フィルタを含む濾過ユニット全体が、一般的には固定位置に置かれたままである基部またはハウジングに関して傾けられる。
【0134】
第1の向きでは、フィルタは、好ましくは、前置濾過室に面する表面が重力の作用方向に関して実質的に水平になるように配置される。
【0135】
第2の向きでは、フィルタは、好ましくは、前置濾過室に面する表面が、水平に関して、一般的に90°未満の角度、典型的には45°未満の角度、およびいくつかの実施形態では、30°未満の角度または10°未満の角度またはさらには5°未満の角度に傾けられるように配置される。
【0136】
フィルタ表面を傾けることによって、前置濾過室内の濾取または残留物をフィルタ表面の下縁にたまるようにすると、例えば、注射器を使って取り出しやすくなる。
【0137】
濾過ユニットは、備えられている場合には基部またはハウジング内にちょうつがいによる連結で取り付けられる。あるいは、フィルタは、濾過ユニット内にちょうつがいによる連結で取り付けることができる。ちょうつがいを使用することで、フィルタおよび/または濾過ユニットは第1の向きと第2の向きとの間を移動することができる。
【0138】
有利には、傾斜手段は、係合したときに濾過ユニット、または少なくともフィルタを第2の(傾斜)向きにロックするように構成される。これは、フィルタまたは濾過ユニットの再利用を防ぎやすくする。
【0139】
さらに他の実施形態では、装置は、基部またはハウジングを含み、濾過ユニットおよびフィルタを含む基部またはハウジング全体が、基部またはハウジングが配置される(一般的には水平の)表面に関して傾けられる。これらの実施形態では、フィルタ傾斜手段は、基部またはハウジングは表面上に平坦に置かれる第1の位置から基部またはハウジングがその表面に関して傾けられている第2の位置へ移動可能なアーム、脚、足、レバー、または他の部材などの少なくとも1つの移動可能素子を備えることができる。
【0140】
少なくとも1つの移動可能素子は、好ましくは、その素子を第1の位置から所定の量だけ移動した後に第2の位置にロックするためのロック手段を備えることができる。
【0141】
いくつかの実施形態では、移動可能素子は、第1の位置にあるときに基部またはハウジング内に陥凹し、第2の位置にあるときに基部またはハウジングから、好ましくは基部またはハウジングの底部から突き出る。
【0142】
移動可能素子は、基部またはハウジングに、例えば、基部またはハウジングの対向する縁部分のところに、またはその近くにちょうつがいによる連結で取り付けられたアームを備えることができる。あるいは、移動可能素子は、基部またはハウジング内に摺動自在に取り付けられうる。いくつかの実施形態では、移動可能素子は、第1の位置から第2の位置の方へ押しやれるように、ただし、適切な解放手段が使用者によって作動されるまで第1の位置に保持されるようにバネ仕掛けである。
【0143】
移動可能素子は、基部またはハウジングをそれが配設される表面に関して傾けられるように、例えば、180°または他の何らかの角度まで回転できる、少なくとも1つの回転可能な足またはブロック、例えば、くさび形の足またはブロックの形態をとることができる。あるいは、回転可能な足またはブロックは、足またはブロックを回転することで基部またはハウジングの底部から伸長するように基部またはハウジング内にネジで取り付けることができる。
【0144】
代替として、またはそれに加えて、少なくとも1つの摺動自在な足またはブロックを基部またはハウジング上に設けることができる。
【0145】
本発明の実施形態は、音響振動を用いてフィルタの詰まりを防ぐ国際特許出願第PCT/GB2008/000704号において説明されているような分離システムと組み合わせて使用することができるが、音響振動が用いられないシステムでも使用することができる。
【0146】
本明細書の説明および請求項全体を通して、「含む」、「備える」、およびこれらの語の活用形、例えば、「含むこと」、「備えること」、「含んでいる」、「備えている」は、「限定はしないが...を含む」を意味し、他の部分要素、追加要素、構成要素、整数、またはステップを除外することを意図していない(除外しない)。
【0147】
本明細書の説明および請求項全体を通して、単数形は、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、複数形を包含する。特に、英文中で不定冠詞が使われている場合、本明細書は、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、複数形だけでなく単数形をも考えるものとして理解されるべきである。
【0148】
本発明の特定の態様、実施形態、または実例に関して説明されている特徴、整数、特性、化合物、化学部分、または化学基は、不適合でない限り、本明細書で説明されている他の態様、実施形態、または実例に適用可能であるものと理解されるべきである。
【0149】
本発明をよく理解するために、またどのように実行に移すかを示すために、例えば添付の図面を参照するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】本発明のいくつかの実施形態に組み込まれているタイプの濾過ユニットの一般的な動作原理を示す略図である。
【図2】本発明による濾過ユニットの一実施形態の写真である。
【図3】本発明による分離装置の一実施形態の写真である。
【図4】本発明による分離装置の一実施形態の略図である。
【図5】制御ユニット上のLCDユーザーインターフェイスの写真である。
【図6】コントローラおよびその接続されているコンポーネントの一般的動作原理を示す流れ図である。
【図7】真空圧力、流体体積/荷重、および音響エネルギーを制御し、監視し、調節するコントローラPCBの役割を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態における質量周波数相関を示すグラフである。
【図9】ヒトとブタの両方の骨髄穿刺液(BMA)に対する本発明の一実施形態における質量に対する音響周波数の測定され、計算された相関を示すグラフである。
【図10】本発明のいくつかの実施形態とともに使用するのに適している振動基板の分解図である。
【図11】(a)第1の構成と(b)第2の構成における自動傾斜機構を組み込んだ装置の実施形態の略図である。
【図12】傾斜角、ちょうつがいとバネとの間の距離、バネ伸長の間の関係を示す略図である。
【図13】図11および12に例示されている実施形態で使用される意志決定プロセスを示す流れ図である。
【図14】自動傾斜機構を利用する装置の一実施形態の写真である。プリロード構成で示されている。
【図15】自動傾斜機構を利用する装置の一実施形態の写真である。傾斜構成で示されている。
【図16】第1の構成と第2の構成における自動傾斜機構を組み込んだ装置の代替実施形態の略図である。
【図17】機械式傾斜機構を組み込んだ装置の一実施形態の略図である。
【図18】図17に例示されている実施形態の写真である。
【図19】機械式傾斜機構を組み込んだ装置の代替実施形態の略図である。
【図20】機械式傾斜機構を組み込んだ装置の一実施形態の略図である。
【図21】機械式傾斜機構を組み込んだ装置の代替実施形態の略図である。
【図22】機械式傾斜機構を組み込んだ装置の代替実施形態の略図である。
【図23】機械式傾斜機構を組み込んだ装置の代替実施形態の略図である。
【図24】機械式傾斜機構を組み込んだ装置の代替実施形態の略図である。
【図25】本発明の装置を使用する処理済みヒトBMAと未処理のヒトBMAとの細胞生存性比較を示す図である。
【図26】本発明の装置内の濾過の結果としてのTNCおよび相当する倍数の濃度の保持を示す図である。
【図27】9倍の体積縮小に対する処理済みのBMAと未処理のBMAとの間のCFU−fとCFU−Ob比較を示す図である。25個のヒトBMA試料から、平均CFU−fは未処理の試料については880/ccであり、処理済み試料については4190/ccであった。これらのうち、未処理と処理のそれぞれについて82%のCFU−Obおよび89%のCFU−Obであった。
【図28】Hernigouによる非癒合骨折(non−unionfracture)の研究に基づく本発明の装置からの濃縮されたBMAの臨床上の有用性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0151】
図1は、本発明のいくつかの実施形態に組み込まれているタイプの分離装置の一般的な動作原理を示す略図であり、そこでは、以下の参照符号が使用されている。
1.濾過ユニット
2.多孔質フィルタ
3.流体試料を受け入れるための上(前置濾過)室
4.流体試料
5.逆洗流体を受け入れるための下(後置濾過)室
6.後置濾過室に入れられる流体
7.共鳴基板
8.音響エネルギー発生素子
9.真空引き込み(オプション)
【0152】
多孔質フィルタ2は、濾過ユニット1を2つの室に分離し、上(前置濾過)室3内には、細胞分離を必要とする流体試料4が導入され、下(後置濾過)室5内には、音響定在波を伝えることができる流体6が導入される。音響素子8は、下室の中の底部内に配置され、音響発生素子に応答して共鳴し、2つの流体相とフィルタを通る定在波を発生して試料を撹拌する基板7に結合されている。それと同時に、真空引き込み9の循環プロセスによって、試料が下方へ移動しフィルタを通る。真空圧力、流体流量、および振動数は、コントローラ(適切なポンプおよび弁に関連付けられている)によって制御される。所望のより大きな細胞の濃縮画分は、フィルタの上に保持され、その一方で、より小さな細胞がフィルタを通過し、廃液容器(図示せず)に入る。
【0153】
本発明の特定の実施形態では、音響素子は、出力0.4W、抵抗4Ω、振幅約4.2Vから7.36Vピークツーピークの範囲、周波数範囲約300〜700Hzの範囲のスピーカーである。
【0154】
図2は、本発明の濾過ユニットの一実施形態のコンポーネントアセンブリを示す写真であり、以下の参照符号が使用されている。
10.上室
11.中室
12.下室
13.上室と中室を固定するためのクランプ
14.メンブレンフィルタ
15.上室と中室がクランプで固定されたときのフィルタへのOリングシーリング
16.中室内の上組織試料貯蔵容器
17.フィルタの下にある食塩液貯蔵容器内への投入
18.音響エネルギー発生素子
19.音響素子へのOリングシーリング
20.音響素子電気接続のための出口
【0155】
図3は、前置濾過室と後置濾過室内の流体が順次フィルタ上に移動される本発明のいくつかの実施形態に組み込まれているタイプの分離装置の写真であり、以下の参照符号が使用されている。
21.濾過ユニット(処理室)
22.制御ユニット
23.LCD:音響周波数
24.LCD:真空圧力
25.液滴カウンター
26.液滴センサケーブル
27.圧力センサ
28.信号ボリューム
29.音響周波数
30.バキュームノブ(Vacuum knob)
31.圧力センサケーブル
32.ポンプスイッチ
33.オーディオケーブル
34.食塩液管路(注射器から処理室へ)
35.廃液管路(処理室から廃液室へ)
36.廃液室
【0156】
この図は、濾過ユニット21および制御ユニット22を備える装置を示している。制御ユニット19は、真空ポンプ(Koge KPV14A−6A)(図示せず)を制御するようにプログラムすることができる。制御ユニット内に内蔵されている増幅器および信号発生器チップにより、PLCを介して音響素子(図示せず)の周波数および振幅を設定することができる。本発明の態様により、PLCはロードセル(図示せず)とともに動作し、フィルタ(図示せず)の上にある流体の体積が変化するときに印加された音響エネルギーを変化させる。
【0157】
図4は、本発明の装置の他の実施形態の概略を示す図であり、以下の参照符号が使用される。
37.濾過ユニット
38.音響エネルギー発生素子
39.ロードセル
40.音響センサ
41.インタラクティブLCDパネル−LCDユーザーインターフェイス
42.マイクロプロセッサ
43.プリント回路基板、PCB
44.真空ポンプ
45.圧力センサ
46.廃液室
【0158】
PCB 43は、音響エネルギー発生素子38および真空ポンプ44(Koge KPV14A−6A)のオン、オフを切り替えるようにプログラムされる。これは、作動真空圧力および音響エネルギーを常時監視し、最適な状態に調節するために圧力センサ45および音響センサ40(例えば、マイクロホン)とも一体化される。LCDインターフェイス41は使用者にプロセス/手順全体を案内するものであり、インタラクティブな点滅するアイコンがそれぞれのステップにおいて使用者が何をすべきかを示す。システム全体は、「電源」、例えば、電池の電力の供給を受ける。
【0159】
図5は、本発明の制御ユニット上のLCDユーザーインターフェイスの写真であり、以下の参照符号が使用される。
アイコン
47:食塩液を投入する
48:生体流体を投入する
49:必要な最終体積を投入する
50:処理中
51:必要な体積に到達した(処理が完了した)
52:設定/次へボタンを押す
53:流体体積
54:電池残量インジケータ
アクションボタン
55:設定/次へボタン
56:流体体積を調節するための上および下ボタン
【0160】
通常動作では、装置の分離室は、最初に流体が入っておらず空である。LCDインターフェイスは、「食塩液を投入する」47および「生体流体混合液を投入する」48アイコンを表示して、流体を装置に送るように使用者に指示を出すを出す。加えられる生体流体混合液の体積は、ロードセルによって登録され、LCD 53上に表示される。この後に、パネル上の「上および下ボタン」56を使用して設定することができる「必要な最終体積を投入する」49アイコンが続く。必要な最終体積が設定されると、生体流体混合液に対し処理が行われ、これは「処理進行中」50アイコンによって示される。処理進行中に、音響素子および真空ポンプがスイッチオンされる。印加される音響エネルギーおよび真空圧力は、常時監視され、処理流体体積が減ると自動的に調節される。音響エネルギーは、11Vに固定された振幅と、5V未満の増幅器信号電圧を有する。信号ボリューム範囲は2から6までであり、周波数範囲は350から650Hzであり、これにより、定在波が流体に通され、流体は一定の撹拌状態にあることが観察される。印加される真空陰圧は0.2から0.3psiまでの範囲であり、これにより、フィルタを通り廃液室に流れ込む生体流体の正味の一方向流動が維持される。所望の/入力された最終体積に到達すると、「プロセス完了」アイコン51が表示され、PCBは、マイクロプロセッサからの「停止」コマンドで永久的に無効化される。次いで、フィルタの上の処理済みの生体流体が取り出され、使用できる状態に置かれる。
【0161】
図6の流れ図は、本発明のいくつかの実施形態の制御システムに対する現在のところ好ましい動作原理を示しており、図7は、真空圧力、流体体積/荷重、および音響エネルギーを制御し、監視し、および調節するPCBの役割を示している。
【0162】
図4の分離装置は、流体の質量を測定するロードセル、および音響アクチュエータの周波数を制御するマイクロプロセッサを有する。分離室内の多孔質フィルタの上の流体質量は、20秒間隔で記録され、さらに、その時点における対応する音響周波数も記録された。
【0163】
ブタ骨髄を使用する、分離装置に対する代表的な質量周波数プロファイルが図8に示されている。測定されたデータは、以下の相関によって最もよく表される。
y=733.12×(e−0.1516)、ただし、R=0.9759とする。
【0164】
実際、一般化された相関は、マイクロプロセッサのソフトウェア内で適用され、所定の測定組み流体質量について、分離装置内の音響アクチュエータに適切な周波数が適用される。
【0165】
ヒト骨髄穿刺液とブタ骨髄穿刺液(BMA)の両方を使用する、図8の分離装置に対する他の代表的な質量周波数プロファイルが図9に示されている。測定されたデータは、以下の直線回帰によって最もよく表される。
y=−3.052x + 502.83(ヒトBMA)
y=−3.0122x + 533.35(ブタBMA)
【0166】
流体処理が進行するにつれ、フィルタの上の含まれている流体の質量が、ロードセルに結合されているLCDに登録された。同時に、音響素子の周波数が、独立のLCDディスプレイ上に登録された。これらのデータは、同じデバイスを使用して生成された。
【0167】
この回帰は、組織の種類に関係なく、周波数の同じ直線的変化が流体体積の変化に相関することを示している。データも、ヒト組織については約30Hzの周波数において一定の低減されたオフセットがあることを示唆している。
【0168】
さまざまな材料をスピーカーのコーン/振動板として使用することができるが、最も一般的なのが紙、プラスチック、および金属である。理想的な材料は、軽量で(必要な始動力を最小にするため)、剛性が高く(無制御のコーンの運動を防ぐため)、減衰性が良好(信号が停止した後も続く振動を減らすため)であるものである。実際、これら3つの基準は、既存の材料を使用したのでは同時に満たすことができない。その結果、多くのスピーカーの振動板は、ある種の複合材料で作られている。
【0169】
図10は、音響エネルギー発生素子と組み合わせてスピーカーのコーン/振動板として使用される場合に適切な音響エネルギーを生体流体中に伝えることができる複合材料で作られた基板または「共鳴板」57の分解図を示している。これは、層化/接着されたサンドイッチ構造を有する複合パネルであり、1つのポリカーボネート製のディスクコア58と特定の厚さの2つのステンレス製外皮59からなる。外皮59は極度に強く、コア58は軽量であり、かなり弱いが、適切な接着剤を使用すれば、有利な点もいくつかある。詳細は、Table I(表1)に示されている。材料のこのような組み合わせにより、共鳴板57は独自の材料剛性および性能特性が付与され、これにより、音響アクチュエータと組み合わせてスピーカーのコーン/振動板として使用される場合に、効率的な音響エネルギー伝達を通じて流体共鳴が発生し、本発明のいくつかの実施形態の細胞分離装置内で濾過を効率的に行うことができるようになる。
【0170】
【表1】

【0171】
本発明の代替実施形態の現在稼働している実施形態は、図11に概略が示されており、ちょうつがい付きの分離室60と共にPCB/マイクロプロセッサ61を備える。
【0172】
ちょうつがい付きの分離室は、後述のようにプリロード位置に保持されているポップアップ式サブアセンブリである。
【0173】
ちょうつがい付き支持プラットフォーム62は、分離室を組み込むだけでなく、分離室と多孔質フィルタ63を水平位置に保つ鋳造物である。生体流体処理が完了すると所望の傾斜角にポップアップし、したがって処理済み流体の回収効率が最大になるように設計されている。アクチュエータスプリング64は、ちょうつがい付き支持プラットフォーム62と基部66との間にサンドイッチ状に挟まるちょうつがい65の対向端部のところに配置される。これは、ちょうつがい付き分離室に均一な上昇力を与える。バネは、アセンブリがプリロード位置にあるときに圧縮下にある。
【0174】
可溶性フィラメント67(例えば、ポリマーフィラメントループ)は、ちょうつがい付き分離室の一端(ちょうつがいの反対側)に繋留され、ぴんと張られ、他端にあるフィラメントリテーナー68に繋留される。このアクションにより、分離室は、ポップアップ式サブアセンブリが接地されプリロードされるようにバネが圧縮された状態で固定される。フィラメントは、作動状態になったときにフィラメントを溶かす可溶性抵抗器69と直接接触し、これにより、プリロードされたサブアセンブリは処理が完了したときにポップアップすることができる。フィラメントリテーナーは、プリロード位置でフィラメントの張力を維持しながらフィラメントを枢動本体部に取り付ける方法を用いてアセンブリ内にフィラメントを保持する。基部は、フィラメントを通すための接地点およびガイドを構成する。
【0175】
指定された最終体積に到達し(つまり、処理が完了し)、分離室のロードセルによって認識されると、これは、PCB/マイクロプロセッサをトリガーし、フィラメントが接点のところで溶断するように可溶性抵抗器を活性化する。より糸が切れると圧縮バネが固定されている分離室を解放する働きをし、この分離室はその後所望の傾斜角に機械的にロックアウトする。これは、図11bに示されている。
【0176】
プリセットされた傾斜角は、(1)非圧縮状態のアクチュエータスプリングの長さと(2)ちょうつがい(枢動点)に関するバネの位置によって決定される。これは、図12で説明されており、これは以下の関係を示す。
傾斜角θ=tan−1(O/A)
ただし、
θ=傾斜角
O=弛緩したバネの長さ−圧縮されたバネの長さ
A=ちょうつがいとバネとの間の距離
【0177】
図13は、図11および12に例示されている本発明の実施形態で使用される意志決定プロセスを示す流れ図である。
【0178】
図14および15は、それぞれプリロード構成および自動傾斜構成の本発明の一実施形態を例示している。これらの図は、ディスプレイ71およびユーザーコントロール72を備える基部70、ちょうつがい付き支持プラットフォーム73、分離室74、濾取または残留物を採取するために注射器(図示せず)を取り付けることができる出口75、および投入口76、77を示している。ちょうつがい付き支持プラットフォームおよび分離室は、好ましくは、繋留手段(図示せず)を組み込んだ使い捨てユニットとして構成される。いったん繋留手段が切れて、ちょうつがい付きプラットフォームがポップアップして図15の傾斜構成になると、ちょうつがい付きプラットフォームは図14のプリロード構成に戻す形でロックすることはできず、このためユニットのうっかり再利用が防止され、これが防止されないと臨床試料および/または患者組織の間の相互汚染を引き起こすおそれがある。
【0179】
図16は、自動傾斜機構がバネ付きの枢動部の完全な力を保持する代わりに単純なトリガー機構を解放するようにフィラメントまたは繋留手段78を使用することによって再設計された代替実施形態を示している。この配置構成をとることで、繋留手段78は、ごくわずかな−小さなバネ力に打ち勝つのに十分な−張力のみの下に置かれる。例えば、小さな枢動トリガー79(例えば、リビングヒンジとともにポリプロピレンから作られる)は、小さなバネ80の張力の下に置かれ、繋留手段によって「セット」位置に保持される。プリロード位置にあるときには、枢動部(例えば、ちょうつがい付き支持プラットフォームからつるされているフック)が適所に嵌る。繋留手段が解放されると、トリガーが解放され、枢動部がポップアップする。
【0180】
図17から24は、手動操作傾斜手段を利用する装置の代替実施形態を示している。
【0181】
図17では、傾斜レバー81は、分離デバイスの基部82にちょうつがいによる連結で取り付けられる。傾斜レバー81は、スパン部分82とちょうつがいピン84を持つ一対のアーム83を備える。アームのちょうつがいピンは、基部内の相補的なちょうつがい陥凹部(図示せず)内にスナップ式に嵌るように適合される。例示されているように、基部に取り付けられたときに、傾斜レバー81を、これが基部内に実質的に陥凹している第1の位置(ステップ1)から、スパン部分が基部の底部から突き出て配設されている表面上で傾斜した向きをデバイスにとらせる第2の位置(ステップ4)に手で移動することができる。
【0182】
一対の陥凹部(図示せず)が、基部の対向側壁に設けられており、これにより、使用者の指で傾斜レバー81を容易に操作できる。その結果の傾斜角は、第2の位置にあるときのスパン部分82の幅と角度によって決まる。
【符号の説明】
【0183】
1 濾過ユニット
2 多孔質フィルタ
3 上(前置濾過)室
5 下(後置濾過)室
6 流体
7 基板
8 音響素子
9 真空引き込み
19 制御ユニット
21 濾過ユニット
22 制御ユニット
38 音響エネルギー発生素子
40 音響センサ
41 LCDインターフェイス
43 PCB
45 圧力センサ
47 「食塩液を投入する」
48 「生体流体混合液を投入する」
49 「必要な最終体積を投入する」
50 「処理進行中」
51 「プロセス完了」アイコン
53 LCD
56 「上および下ボタン」
57 「共鳴板」
58 ディスクコーン
59 ステンレス製外皮
60 分離室
61 PCB/マイクロプロセッサ
62 ちょうつがい付き支持プラットフォーム
63 多孔質フィルタ
64 アクチュエータスプリング
65 ちょうつがい
66 基部
67 可溶性フィラメント
68 フィラメントリテーナー
69 可溶性抵抗器
70 基部
71 ディスプレイ
72 ユーザーコントロール
73 ちょうつがい付き支持プラットフォーム
74 分離室
76、77 投入口
78 繋留手段
79 枢動トリガー
80 バネ
81 傾斜レバー
82 基部
82 スパン部分
83 アーム
84 ちょうつがいピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体試料から固形分を分離するための装置であって、前記装置は濾過ユニット備え、前記濾過ユニットは、
音響エネルギー発生素子と、
前記ユニットを前記流体試料を受け入れるための前置濾過室と音波を伝えることができる流体を受け入れるための後置濾過室とに分割する少なくとも1つのフィルタと、
後置濾過室に関連付けられるように構成され、音波を施した後に共鳴することができる基板とを備え、
前記音響エネルギー発生素子は、前記音響エネルギー発生素子が前記基板の共鳴を引き起こし、次いで前記基板が前記後置濾過室内の前記流体と前記前置濾過室内の前記流体試料との両方を介して音響定在波を伝える動作が可能であるように前記基板に関連付けられる構成をとり、
前記装置は、前記前置濾過室内の流体の重量を測定するための重量感知手段をさらに備え、
前記装置は、前記前置濾過室内の流体の測定された重量に応じて前記音響定在波の特性を調節するために少なくとも前記音響エネルギー発生素子を制御するように適合されたコントローラをさらに備える装置。
【請求項2】
前記重量感知手段は、ロードセルを備える請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記後置濾過室から流体を取り除くための吸引手段をさらに備え、これにより、前記フィルタに真空圧力を印加し前記前置濾過室から前記フィルタを通り前記後置濾過室へ入る流体の正味の一方向流動を発生する請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記真空圧力を測定するための圧力センサをさらに備える請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記圧力センサは前記コントローラに結合され、前記コントローラは前記吸引手段に結合され、これにより、前記真空圧力のフィードバックベースの制御を行う請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記流体に伝えられる音響エネルギーを測定するためのモニタをさらに備える請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記モニタは、マイクロホンまたは他の音響感知デバイスである請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記モニタは前記コントローラに結合され、前記コントローラは前記音響エネルギー発生素子に結合され、これにより、前記音響定在波のフィードバックベースの制御を行う請求項6または7に記載の装置。
【請求項9】
前記コントローラは、流体重量および/または体積、真空圧力および/または音波特性を表示するように配置されているディスプレイを備えるか、または前記ディスプレイに結合される請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記コントローラおよび前記ディスプレイ、前記吸引手段、前記圧力センサ、および前記音響エネルギーモニタのうちの少なくとも1つが、マイクロプロセッサも備えるプリント回路基板(PCB)上に組み込まれる請求項1から9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
流体の体積、圧力、および/または音響エネルギーの変化は、好ましいレベルの音響エネルギーおよび圧力を伝え分離デバイスを通して前記流体を処理するように前記音響エネルギー発生素子および前記吸引手段を調節する前記マイクロプロセッサによって登録される請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記コントローラは、前記フィルタが詰まったり、目詰まりしたこと、前置濾過流体の体積がゼロに達したこと、および/または真空圧力の予想外の喪失という、所定の事象を検出した後に、分離プロセスを終了するように構成される請求項1から11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記音響エネルギー発生素子は、振動板を有するスピーカーを備える請求項1から12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記音響エネルギー発生素子は、圧電変換器を備える請求項1から12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記圧電変換器は、金属薄膜電極がそれぞれの側にあるセラミック部材を備える請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記基板は、前記フィルタに実質的に平行に配置される請求項1から15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記基板は、前記濾過ユニットの前記基部に配置される請求項1から16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
前記基板は、金属、セラミック、および/またはポリマー材料から作られる請求項1から17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記基板は、層化または接着されたサンドイッチ構造を有する複合パネルを備える請求項1から18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
前記基板は、ポリマーコアおよび2つの金属外層または外皮を備える請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記コアは、ポリカーボネートであり、前記外層または外皮はステンレスである請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記基板の前記層は、接着剤で接着される請求項19から21のいずれか一項に記載の装置。
【請求項23】
前記流体試料が前記フィルタを通過するように陽圧および/または陰圧を印加するための手段をさらに備える請求項1から22のいずれか一項に記載の装置。
【請求項24】
第1の圧力を流体に加えて流体を前記後置濾過室から前記フィルタを通して前記前置濾過室内に移動するための手段、および第2の圧力を流体に加えて流体を前記前置濾過室から前記フィルタを通して前記後置濾過室内に移動するための手段をさらに備える請求項1から22のいずれか一項に記載の装置。
【請求項25】
前記第1および第2の圧力を印加するための前記手段は、交互シーケンスで動作するように構成される請求項24に記載の装置。
【請求項26】
分離プロセスにおいて前記フィルタを撹拌するための手段をさらに備える請求項1から25のいずれか一項に記載の装置。
【請求項27】
分離プロセスにおいて前記流体を撹拌するための手段をさらに備える請求項1から26のいずれか一項に記載の装置。
【請求項28】
前記フィルタは、実質的に平面状である請求項1から27のいずれか一項に記載の装置。
【請求項29】
前記フィルタは、前記フィルタの直径が前記フィルタの高さより大きい二次元プロファイルを持つ請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記フィルタは、テーパ付き微細孔を有する請求項1から29のいずれか一項に記載の装置。
【請求項31】
前記テーパ付き微細孔の最も狭い先端部は、前記前置濾過室に隣接して配置される請求項30に記載の装置。
【請求項32】
前記テーパ付き微細孔の最も狭い先端部は、前記後置濾過室に隣接して配置される請求項30に記載の装置。
【請求項33】
前記固形分の回収がしやすくなるように少なくとも前記前置濾過室を傾けるための傾斜手段をさらに備える請求項1から32のいずれか一項に記載の装置。
【請求項34】
前記傾斜手段は、分離プロセスの完了後に自動的に作動する請求項33に記載の装置。
【請求項35】
流体試料から固形分を分離する方法であって、
i)流体試料を請求項1から34のいずれか一項に記載の装置内に導入するステップと、
ii)前記流体試料を濾過するステップと、
iii)分離された画分を前記前置濾過室から取り出すステップとを含む方法。
【請求項36】
前記固形分は、治療細胞を含む請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記治療細胞は、前駆細胞である請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記流体試料は、生体試料である請求項35から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記生体試料は、血液試料、滲出液、尿試料、精液、骨髄穿刺液、脊髄液、組織からの細胞懸濁液、粘液、痰、および唾液からなる群から選択される請求項38に記載の方法。
【請求項40】
流体試料から画分を分離するための装置であって、
濾過ユニットを、前記流体試料を受け入れるための前置濾過室と前記流体試料の濾液を受け入れるための後置濾過室とに分割する少なくとも1つのフィルタを備える濾過ユニットと、
濾過の程度を測定し、所定の程度の濾過が行われたときに信号を発生するための電子的手段と、
水平面に関する第1の向きから水平面に関する第2の向きへ前記フィルタを傾けるためのフィルタ傾斜手段とを備え、
前記フィルタ傾斜手段は、前記電子的手段からの信号に応答して前記フィルタを傾ける動作が可能である装置。
【請求項41】
濾過の程度を測定し、所定の程度の濾過が行われたときに信号を発生するための電子的手段と、
前記水平面に関する第1の向きから水平面に関する第2の向きへ前記フィルタを傾けるためのフィルタ傾斜手段とを備え、
前記フィルタ傾斜手段は、前記電子的手段からの信号に応答して前記フィルタを傾ける動作が可能である請求項1から32のいずれか一項に記載の装置。
【請求項42】
前記フィルタ傾斜手段は、いったん動作してしまうと、前記フィルタを前記水平面に関する前記第1の向きに戻して保持することができなくなる請求項40または41に記載の装置。
【請求項43】
前記電子的手段は、前記前置濾過室内の流体の体積またはレベルおよび/または前記後置濾過室内の流体の体積またはレベルを測定する請求項40から42のいずれか一項に記載の装置。
【請求項44】
前記電子的手段は、経過した時間、または濾過室の一方または他方の流体の重量もしくは質量を測定する請求項40から43のいずれか一項に記載の装置。
【請求項45】
前記電子的手段は、前記前置濾過室内の前記流体の混濁度を測定する請求項40から44のいずれか一項に記載の装置。
【請求項46】
前記フィルタ傾斜手段は、操作者からの手動による介入がなくても前記電子的手段からの前記信号に応答して前記フィルタを自動的に傾ける請求項40から45のいずれか一項に記載の装置。
【請求項47】
前記濾過ユニットの前記フィルタだけを傾け、通常、前記前置濾過室および前記後置濾過室を固定位置に残す請求項40から46のいずれか一項に記載の装置。
【請求項48】
前記濾過ユニットは、基部またはハウジング内に取り付けられ、前記フィルタを含む前記濾過ユニット全体が、通常、固定位置に置かれたままである前記基部またはハウジングに関して傾けられる請求項40から46のいずれか一項に記載の装置。
【請求項49】
前記濾過ユニット、または少なくとも前記フィルタは、前記濾過ユニット、または少なくとも前記フィルタを前記第1の向きから前記第2の向きにするための弾性手段を備える請求項40から48のいずれか一項に記載の装置。
【請求項50】
前記弾性手段によって印加される力に対抗して前記濾過ユニット、または少なくとも前記フィルタを前記第1の向きに保持するための保持手段を構成する請求項49に記載の装置。
【請求項51】
前記弾性手段は、つる巻きバネもしくは板バネとすることができる少なくとも1つの圧縮バネを備えるか、または圧縮されると、反対の向きの弾性力を発生する弾力性のあるポリマー、プラスチック、またはゴム製のコンポーネントを備えることができる請求項49または50に記載の装置。
【請求項52】
前記弾性手段は、前記濾過ユニット、もしくは少なくとも前記フィルタを前記第1の向きから前記第2の向きにするように構成されている少なくとも1つの引張バネまたはコンポーネントを備える請求項49または50に記載の装置。
【請求項53】
前記保持手段は、所望の程度の濾過が行われたことを指示する電子的手段からの前記信号に応答して、前記濾過ユニット、または少なくとも前記フィルタを解放するように構成される請求項50または請求項50に従属する請求項51若しくは52に記載の装置。
【請求項54】
前記第1の向きでは、前記フィルタは、前記前置濾過室に面する表面が重力の作用方向に関して実質的に水平になるように配置される請求項40から53のいずれか一項に記載の装置。
【請求項55】
前記第2の向きでは、前記フィルタは、前記前置濾過室に面する表面が、前記水平に関して、通常90°未満の角度、典型的には45°未満の角度、およびいくつかの実施形態では、30°未満の角度または10°未満の角度またはさらには5°未満の角度に傾けられるように配置される請求項40から54のいずれか一項に記載の装置。
【請求項56】
前記濾過ユニットは、ちょうつがいによる連結で取り付けられる請求項40から55のいずれか一項に記載の装置。
【請求項57】
前記傾斜手段は、前記電子的手段による作動の後に前記濾過ユニット、または少なくとも前記フィルタを前記第2の向きにロックするように構成される請求項40から56のいずれか一項に記載の装置。
【請求項58】
前記保持手段は、抵抗器または他の電子的コンポーネントと一体化されているか、または関連付けられているより糸またはフィラメントを備える請求項50または請求項50に従属する請求項51から57のいずれか一項に記載の装置。
【請求項59】
前記より糸またはフィラメントは、前記濾過ユニット、または少なくとも前記フィルタの一部に一方の端部のところで取り付けられ、第1の向きから第2の向きに移動するときに前記フィルタが移動する際に基準となる基部またはハウジングもしくは他の何らかのコンポーネントの一部に他方の端部のところで取り付けられる請求項58に記載の装置。
【請求項60】
前記より糸またはフィラメントは導電性であり、前記信号によって、前記より糸またはフィラメント中を電流が流れて、発熱し、次いで断絶する請求項58または59に記載の装置。
【請求項61】
前記保持手段は、導電性フィラメントを組み込んだ可溶性抵抗器を備える請求項58から60のいずれか一項に記載の装置。
【請求項62】
前記フィルタ傾斜手段は、サーボモータといった電気モータ、および/または作動機械または電気機械ネジを備える請求項40から48のいずれか一項に記載の装置。
【請求項63】
前記フィルタ傾斜手段は、油圧作動または空気圧作動機構を備える請求項40から48のいずれか一項に記載の装置。
【請求項64】
電磁石が備えられ、これにより、前記濾過ユニット、または少なくとも前記フィルタを前記第1の向きに保持し、前記信号によって、前記電磁石をオフにし、前記濾過ユニット、または少なくとも前記フィルタを解放し、前記第2の向きへ移動させることができる請求項40から57のいずれか一項に記載の装置。
【請求項65】
電界アクチュエータが備えられ、これにより、前記第1の向きから前記第2の向きへの前記濾過ユニット、または少なくとも前記フィルタの移動をトリガーする請求項40から57のいずれか一項に記載の装置。
【請求項66】
カウンターバランスウエイトを使用して、前記濾過ユニット、または少なくとも前記フィルタを前記第1の向きから前記第2の向きに移動する請求項40から57のいずれか一項に記載の装置。
【請求項67】
前記装置は、基部またはハウジングを含み、前記濾過ユニットおよびフィルタを含む前記ハウジングまたは基部の全体が、前記基部またはハウジングが配置される表面に関して傾けられる請求項40から57のいずれか一項に記載の装置。
【請求項68】
前記フィルタ傾斜手段は、前記基部またはハウジングが前記表面上に平坦に置かれる第1の位置から前記基部またはハウジングが前記表面に関して傾けられている第2の位置へ移動可能な少なくとも1つの移動可能素子を備える請求項67に記載の装置。
【請求項69】
前記少なくとも1つの移動可能素子は、前記素子を前記第1の位置から所定の量だけ移動した後に前記第2の位置にロックするためのロック手段を備える請求項68に記載の装置。
【請求項70】
流体試料から画分を分離するための装置であって、
濾過ユニットを、前記流体試料を受け入れるための前置濾過室と前記流体試料の濾液を受け入れるための後置濾過室とに分割する少なくとも1つのフィルタを備える濾過ユニットと、
水平面に関する第1の向きから前記水平面に関する第2の向きへ前記フィルタを傾けるためのフィルタ傾斜手段とを備える装置。
【請求項71】
水平面に関する第1の向きから前記水平面に関する第2の向きへ前記フィルタを傾けるためのフィルタ傾斜手段をさらに備える請求項1から32のいずれか一項に記載の装置。
【請求項72】
前記フィルタ傾斜手段は、濾過が要求された程度まで進んだと判定されたときに前記装置の使用者によって手動操作可能である請求項70または71に記載の装置。
【請求項73】
前記フィルタ傾斜手段は、いったん動作してしまうと、前記フィルタを前記水平面に関する前記第1の向きに戻して保持することができなくなる請求項70から72のいずれか一項に記載の装置。
【請求項74】
前記濾過ユニットの前記フィルタだけを傾け、通常、前記前置濾過室および前記後置濾過室を固定位置に残す請求項70から73のいずれか一項に記載の装置。
【請求項75】
前記濾過ユニットは、基部またはハウジング内に取り付けられ、前記フィルタを含む前記濾過ユニット全体が、通常、固定位置に置かれたままである前記基部またはハウジングに関して傾けられる請求項70から73のいずれか一項に記載の装置。
【請求項76】
前記濾過ユニットは、ちょうつがいによる連結で取り付けられる請求項70から75のいずれか一項に記載の装置。
【請求項77】
前記フィルタは、ちょうつがいによる連結で前記濾過ユニット内に取り付けられる請求項70から75のいずれか一項に記載の装置。
【請求項78】
前記傾斜手段は、係合したときに前記濾過ユニット、または少なくとも前記フィルタを前記第2の向きにロックするように構成される請求項70から77のいずれか一項に記載の装置。
【請求項79】
前記装置は、基部またはハウジングを含み、前記濾過ユニットおよびフィルタを含む前記ハウジングまたは基部の全体が、前記基部またはハウジングが配置される表面に関して傾けられる請求項70から79のいずれか一項に記載の装置。
【請求項80】
前記フィルタ傾斜手段は、前記基部またはハウジングが前記表面上に平坦に置かれる第1の位置から前記基部またはハウジングが前記表面に関して傾けられている第2の位置へ移動可能な少なくとも1つの移動可能素子を備える請求項79に記載の装置。
【請求項81】
前記少なくとも1つの移動可能素子は、前記素子を前記第1の位置から所定の量だけ移動した後に前記第2の位置にロックするためのロック手段を備える請求項80に記載の装置。
【請求項82】
前記移動可能素子は、前記第1の位置にあるときに前記基部またはハウジング内に陥凹し、前記第2の位置にあるときに前記基部またはハウジングから突き出る請求項68、69、80、または81に記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate


【公表番号】特表2011−528980(P2011−528980A)
【公表日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−519236(P2011−519236)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【国際出願番号】PCT/GB2009/001830
【国際公開番号】WO2010/010355
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(391018787)スミス アンド ネフュー ピーエルシー (79)
【氏名又は名称原語表記】SMITH & NEPHEW PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】