説明

分離装置

【課題】温風を吹き付けることなく、粗粒物から細粒物を分離させることができる分離装置を提供することを課題とする。
【解決手段】粗粒物に付着した細粒物を分離するための分離装置1であって、粗粒物と細粒物とを含む材料が投入される内部空間12が形成された箱状の分離処理部10と、分離処理部10を振動させる振動発生装置20と、を備え、分離処理部10の内面のうち、振動方向に対向する二つの面13a,11aには、複数の突起部14,16が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粗粒物に付着した細粒物を分離するための分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダム等の建設においてコンクリートを製造する工程では、バッチャープラントやCSG(Cemented Sand and Gravel)混合プラントなどが用いられている。
これらのプラントでは、コンクリートの品質管理上、材料の粒度分布を把握する必要がある。そこで、搬送ライン上を移動する材料を撮影し、その撮影結果に基づいて材料の粒度分布を測定することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−083868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
土砂などの材料は含水量が大きいと、粗粒物に複数の細粒物が付着して団子状に固まった状態となる。したがって、材料の撮影結果に基づいて粒度分布を測定する場合には、材料を撮影する前に、粗粒物から細粒物を分離させる必要がある。
【0005】
粗粒物から細粒物を分離させるために、材料をミキサー内で撹拌しても、ミキサー内面に衝突したときの衝撃が小さいため、粗粒物から細粒物を分離させることができない。
また、土砂の破砕装置を用いて粗粒物から細粒物を削ぎ落とした場合には、粗粒物が損傷するという問題がある。
また、細粒物の粘着力を低下させるために、材料に温風を吹き付けて乾燥させると、粗粒物から細粒物が分離したとしても、材料の品質が変化するという問題がある。
【0006】
本発明は、前記した問題を解決し、材料に温風を吹き付けなくても、粗粒物から細粒物を分離させることができる分離装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、粗粒物に付着した細粒物を分離させるための分離装置であって、前記粗粒物と前記細粒物とを含む前記材料が投入される内部空間が形成された箱状の分離処理部と、前記分離処理部を振動させる振動発生装置と、を備え、前記分離処理部の内面のうち、振動方向に対向する二つの面の少なくとも一方には、複数の突起部が設けられている。
【0008】
この構成では、分離処理部が振動すると、分離処理部内の材料に対して振動方向に加速度が付与され、材料が分離処理部の内面に衝突する。このとき、分離処理部の振幅や振動周期を調整することで、粗粒物から細粒物が分離するのに適した衝撃を材料に与えることができる。
また、分離処理部の内面に設けられた突起部が、粗粒物の窪んだ部位に付着した細粒物に突き当たることで、粗粒物の窪んだ部位から細粒物を分離させることができる。
したがって、分離装置では、材料の品質を保ちつつ、粗粒物から細粒物を確実に分離させることができる。
【0009】
前記した分離装置において、前記分離処理部の内面には、前記分離処理部が振動したときに、前記内部空間で揺動する線状部材を取り付けてもよい。
この構成では、粗粒物から細粒物が分離されたときに、複数の細粒物が塊になっている場合には、揺動する線状部材に塊状の細粒物が衝突することで、塊状の細粒物に大きな衝撃が与えられるため、塊状の細粒物を個々に分離させることができる。
なお、線状部材としては、例えば、鎖やワイヤなどを用いることができる。また、線状部材は、分離処理部が振動したときに、内部空間で大きく揺動するように、質量が大きいものが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の分離装置では、粗粒物から細粒物を分離させるのに適した衝撃を材料に与えるとともに、粗粒物の窪んだ部位に突起部が突き当たるため、材料に温風を吹き付けなくても、粗粒物から細粒物を確実に分離させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態の分離装置を示した後方から見た断面図である。
【図2】本実施形態の分離装置を示した図で、図1のA−A断面図である。
【図3】本実施形態の振動発生装置を示した平面図である。
【図4】本実施形態の分離装置を示した図で、(a)は収容部の平面図、(b)は蓋部材を下から見た図である。
【図5】本実施形態の分離処理部を振動させたときの態様を示した図である。
【図6】本実施形態の分離処理部内を示した図で、(a)は粗粒物から細粒物が分離する態様を示した図、(b)は塊状の細粒物が個々に分離する態様を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態では、コンクリートの製造工程において、搬送ラインを流れる材料の撮影結果に基づいて粒度分布を測定するために、粗粒物に付着した細粒物を、粗粒物から分離させるための分離装置について説明する。
【0013】
分離装置1は、図1に示すように、内部空間12が形成された箱状の分離処理部10と、分離処理部10を振動させる振動発生装置20と、振動発生装置20を支持しているベース部材30と、を備えている。
なお、以下の説明における前後左右方向とは、分離装置1の各部を分かり易く説明するために、便宜上設定したものであり、分離装置1の構成を限定するものではない。
【0014】
分離処理部10は、上面が開口している収容部11と、収容部11の開口部を閉塞している平板状の蓋部材13と、を備えている。この分離処理部10は、材料が投入される部位であり、後記する振動発生装置20によって振動するように構成されている。
【0015】
収容部11は、底面11aと、底面11aの前後左右の縁部に立ち上げられた側面11bと、を備えている。底面11aには複数の突起部14が突設されている。
突起部14は、円形断面の棒状の部材であり、先端部が円錐状に尖った形状となっている。図4(a)に示すように、各突起部14は前後左右に互い違い(千鳥状)に並設されている。
【0016】
内部空間12は、左右方向に幅広な直方体状の空間である。この内部空間12には、三本の線状部材15が前後方向に間隔を空けて並設されている。線状部材15は、金属製の鎖である。図1に示すように、線状部材15の左右両端部は、突起部14よりも上方の位置で、収容部11の左右の側面11b,11bに取り付けられている。また、線状部材15は、底面11a上に弛んで載置されるように長さが設定されている。
【0017】
蓋部材13は、収容部11の開口部を閉塞する長方形の平板である。本実施形態の蓋部材13は、ボルトなどの結合部材によって、収容部11の上端開口縁11cに着脱自在となっている。なお、蓋部材13を蝶番等を用いて収容部11に対して開閉自在に取り付けてもよい。
【0018】
図4(b)に示すように、蓋部材13の下面13aには、収容部11の突起部14と同様に、複数の突起部16が前後左右に互い違い(千鳥状)に並設されている。
【0019】
ベース部材30は、図1に示すように、床面(図示せず)に載置される基台であり、上面30aには振動発生装置20が取り付けられている。
【0020】
振動発生装置20は、図3に示すように、モータ21と、左右の回転駆動部22,23と、モータ21の動力を各回転駆動部22,23に伝達するローラチェーン24,25と、を備えている。
モータ21は、ベース部材30の上面30aの左右中央前側に取り付けられている。モータ21の出力軸21aは、後方に向けて突出しており、出力軸21aの先端部には駆動ギヤ21bが取り付けられている。
【0021】
左側の回転駆動部22は、ベース部材30の上面30aの左側の部位に取り付けられている。この左側の回転駆動部22は、図2に示すように、上面30aの前後両縁部に立設された軸受部22a,22aと、前後の軸受部22a,22aに回転自在に支持された回転軸22bと、回転軸22bに設けられた前後の従動ギヤ22c,22cと、回転軸22bの両端部に取り付けられた回転板22e,22eと、下端部が回転板22eに取り付けられ、上端部が収容部11の下面11dに取り付けられた前後の連結部材22f,22fと、を備えている。
【0022】
回転軸22bは、軸方向が前後に配置され、前部および後部が各軸受部22a,22aに回転自在に支持されている。また、回転軸22bの前後両端部は、各軸受部22a,22aから前方または後方に突出している。
【0023】
前後の従動ギヤ22c,22cは、図3に示すように、各軸受部22a,22aの間で、回転軸22bに同心に設けられている。
従動ギヤ22c,22cは、前後に間隔を空けて配置されている。前側の従動ギヤ22cと駆動ギヤ21bとには、環状のローラチェーン24が掛け回されている。そして、駆動ギヤ21bの回転力が、ローラチェーン24を介して、前側の従動ギヤ22cに伝達され、回転軸22bが回転するように構成されている。
【0024】
前後の回転板22e,22eは、図2に示すように、回転軸22bの両端部に同心に取り付けられた円板である。図1に示すように、回転板22eには、回転中心から偏心した位置に複数の連結孔22gが形成されている。本実施形態では、偏心量が異なる四つの連結孔22gが形成されている。
【0025】
連結部材22fは、軸方向が上下に配置された板状の部材である。連結部材22fの下端部は、回転板22eの連結孔22gに回動自在にピンジョイントされている。なお、図1に示された連結部材22fの下端部は、回転板22eの回転中心から最も外側、すなわち、回転中心に対して最も偏心量が大きい連結孔22gに連結されている。
【0026】
連結部材22fの上端部は、収容部11の下面11dに固着されている。図2に示すように、前後の連結部材22f,22fの上端部は、収容部11の下面11dにおいて左側の部位(図3参照)の前後に取り付けられている。
【0027】
右側の回転駆動部23は、図3に示すように、ベース部材30の上面30aの右側の部位に取り付けられている。右側の回転駆動部23は、左側の回転駆動部22と略同様の構成であり、前後の軸受部23a,23aと、回転軸23bと、従動ギヤ23cと、前後の回転板23e,23eと、前後の連結部材23f,23fと、を備えている。右側の回転駆動部23の各連結部材23f,23fは、収容部11の下面11dにおいて右側の部位の前後に固着されている。
【0028】
右側の回転駆動部23では、回転軸23bに一つの従動ギヤ23cが設けられている。この従動ギヤ23cと、左側の回転駆動部22の後側の従動ギヤ22cとには、環状のローラチェーン25が掛け回されている。そして、左側の回転駆動部22の回転軸22bの回転力が、ローラチェーン25を介して、右側の回転駆動部23の従動ギヤ23cに伝達され、回転軸23bが回転するように構成されている。
【0029】
また、図1に示すように、右側の回転駆動部23の回転板23eに形成された各連結孔23gは、左側の回転駆動部22の各連結孔23gと同位相に配置されている。また、右側の回転駆動部23の連結部材23fは、左側の回転駆動部22の連結部材22fが連結された連結孔22gと同位相(図1では回転中心から最も外側)の連結孔23gに連結されている。
【0030】
このように構成された振動発生装置20では、図3に示す出力軸21aの回転力が左右の回転軸22b,23bに伝達され、図5に示すように、各回転板22e,23eが回転すると、各連結部材22f,23fは、軸方向が上下に向いた状態を保ちながら、各回転板22e,23eの回転中心回りに旋回移動する。
そして、各連結部材22f,23fとともに、分離処理部10も旋回移動移する。このとき、回転軸22b,23bの軸方向に平行な左右の面を設定し、その左右の面に分離処理部10の移動軌跡を投影した場合には、分離処理部10は上下に往復動して振動していることになる。
本実施形態のように、分離処理部10が旋回移動する場合における特許請求の範囲の「振動方向」とは、前記したように、分離処理部10が旋回移動するときの回転軸方向に平行な面を設定し、その面に分離処理部10の移動軌跡を投影したときの振動方向である。
【0031】
なお、連結部材22f,23fと回転板22e,23eとの連結位置を変更することで、分離処理部10の振幅(旋回半径)および振動周期(回転速度)を調整することができる。具体的には、連結部材22f,23fの下端部を最も外側の連結孔22g,23gに連結した場合には、分離処理部10の振幅および振動周期が大きくなる。一方、連結部材22f,23fの下端部を最も内側の連結孔22g,23gに連結した場合には、分離処理部10の振幅および振動周期が小さくなる。
【0032】
次に、粗粒物に付着した細粒物を、前記した分離装置1を用いて分離させる手順について説明する。なお、粗粒物の表面には複数の細粒物が塊状に付着している。
まず、図1に示す収容部11の上部開口縁11cから蓋部材13を取り外して、粗粒物および細粒物を含む材料(図示せず)を内部空間12に投入する。その後、収容部11の上部開口縁11cに蓋部材13を取り付けて内部空間12を密閉する。
【0033】
モータ21を駆動させて分離処理部10を振動させると、図6(a)に示すように、材料100に対して振動方向に加速度が付与される。また、分離処理部10が振動すると、線状部材15は内部空間12で大きく揺動する。
【0034】
加速度が付与された材料100は、内部空間12で上下に大きく移動し、蓋部材13の下面13aまたは収容部11の底面11aに衝突する。そして、材料100が下面13aまたは底面11aに衝突したときの衝撃によって、粗粒物110から塊状の細粒物120が分離される。
また、突起部14,16が粗粒物110の窪んだ部位に付着した細粒物120に突き当たることで、窪んだ部位の細粒物120も分離される。
【0035】
なお、粗粒物110から分離した塊状の細粒物120は、粗粒物110に比べて質量が小さい。したがって、材料100に与えた加速度で塊状の細粒物120が下面13aや底面11aに衝突しても、その衝撃が小さいため、塊状の細粒物120は個々に分離されないことがある。
本実施形態の分離装置1では、図6(b)に示すように、塊状の細粒物120が内部空間12で揺動する線状部材15に衝突することで、塊状の細粒物120には下面13aまたは底面11aに衝突したときよりも大きい衝撃が与えられるため、塊状の細粒物120が個々に分離される。
【0036】
このようにして、粗粒物110から細粒物120を分離させた後に、図1に示す収容部11の上端開口縁11cから蓋部材13を取り外して、処理後の材料を内部空間12から取り出して、粒度分布の測定工程に搬出する。
なお、材料の分離処理中に、分離処理部10の振動を適宜に停止して、粗粒物と細粒物の分離状態を確認し、粗粒物から細粒物が分離するのに適した衝撃が材料に与えられるように、分離処理部10の振幅および振動周期を調整することが望ましい。
【0037】
以上のような分離装置1では、図6(a)に示すように、分離処理部10の振幅や振動周期を調整することで、粗粒物110から細粒物120が分離するのに適した衝撃を材料100に与えることができる。
また、分離処理部10の内面に設けられた突起部14,16が、粗粒物110の窪んだ部位に付着した細粒物120に突き当たることで、粗粒物110の窪んだ部位から細粒物120を分離させることができる。
したがって、分離装置1では、材料100に温風を吹き付けることなく、粗粒物110から細粒物120を確実に分離させることができる。
【0038】
また、分離装置1では、図6(b)に示すように、内部空間12で揺動する線状部材15に塊状の細粒物120が衝突することで、塊状の細粒物120に大きな衝撃が与えられるため、塊状の細粒物120を個々に分離させることができる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
本実施形態の振動発生装置20は、図5に示すように、回転板22e,23eを回転させることで、分離処理部10に振動を発生させているが、振動発生装置の構成は限定されるものではなく、例えば、上下方向に伸縮するシリンダによって分離処理部10を振動させることもできる。
【0040】
また、本実施形態の線状部材15は、図3に示すように、金属製の鎖であるが、線状部材の構成は限定されるものではなく、例えば、ワイヤを用いることができる。この場合には、線状部材を内部空間12で大きく揺動させるために、ワイヤに錘を取り付けて質量を大きくすることが望ましい。
【0041】
また、本実施形態では、図1に示すように、分離処理部10の内面のうち、上面(蓋部材13の下面13a)および下面(収容部11の底面11a)に突起部14,16を設けているが、分離収容部10の振動方向に対向する二つの面の一方のみに突起部を設けてもよい。
さらに、突起部は、分離処理部10の内面のうち、振動方向に対向する二つの面に設けられていればよい。例えば、本実施形態では、分離処理部10の旋回移動の回転軸方向に平行な上下の面を設定し、その上下の面に分離処理部10の移動軌跡を投影すると、分離処理部10は左右に往復動して振動していることになる。したがって、本実施形態では、左右の側面11b,11bに突起部を設けても同様の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 分離装置
10 分離処理部
11 収容部
11a 底面
12 内部空間
13 蓋部材
13a 下面
14 突起部(収容部)
15 線状部材
16 突起部(蓋部材)
20 振動発生装置
30 ベース部材
100 材料
110 粗粒物
120 細粒物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粗粒物に付着した細粒物を分離させるための分離装置であって、
前記粗粒物と前記細粒物とを含む前記材料が投入される内部空間が形成された箱状の分離処理部と、
前記分離処理部を振動させる振動発生装置と、を備え、
前記分離処理部の内面のうち、振動方向に対向する二つの面の少なくとも一方には、複数の突起部が設けられていることを特徴とする分離装置。
【請求項2】
前記分離処理部の内面には、前記分離処理部が振動したときに、前記内部空間で揺動する線状部材が取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−202756(P2012−202756A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66117(P2011−66117)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】