説明

分電盤装置

【課題】家庭内の商用電源を用いて電気自動車などの大容量蓄電池へ充電する場合における不具合の解消を図る。
【解決手段】家庭内で必要とする電流消費を最優先にすることにより、PHV/EVの充電時に普段使用している電気器具の電源を切るといった不便を回避しながら、余った許容電流内での最大電流でPHV/EVへの充電を行える。これにより、必要な電化製品への電源を供給しながら、PHV/EVへの充電も最短時間で行うことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、電気自動車などの大容量蓄電池への充電器の給電制御に係り、特に商用電源から充電器に給電制御を行う分電盤装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の住宅用途の大容量充電器給電用の制御装置では、商用電源からプラグインハイブリッド車(PHV)や電気自動車(EV)などの車両蓄電池に充電器から充電する際に、ブレーカを作動させることなく充電が行われている。(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−166768公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1の技術は、ブレーカを介して供給される総電流値に基づき、ブレーカの作動が予測される場合に充電処理による充電電流を可変に調整する充電電流調整を行うことにより、ブレーカを作動させることなく充電が行われるものである。
【0005】
しかしながら、一般に家庭の電力会社との電力使用量契約は、せいぜい40〜60アンペア程度である。PHVやEVの走行駆動力を発生するモータに供給される電力を蓄える例えばリチウムイオン電池に充電する容量と時間は、100Vの場合15Aで14時間、200Vの場合10Aで7時間程度であり、充電電流は高く、充電時間は長いことになってしまう。家庭内の電流消費が高い時間帯にPHVやEVに充電するとなると、電子レンジやエアコンなどの電流消費が高い製品は使用できなくなってしまう。この時間帯のPHVやEVへの充電を避け、電流消費が低減する深夜時刻以降に充電を開始すると、必要な時間までに満充電できない、という問題があった。
【0006】
この発明の目的は、家庭内の商用電源を用いて電気自動車などの大容量蓄電池へ充電する場合における不具合を解消することのできる分電盤装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するために、この発明の分電盤装置に係る一実施形態は、家庭内で必要とする電流消費を最優先にすることにより、PHV/EVの充電時に普段使用している電気器具の電源を切るといった不便を回避しながら、余った許容電流内での最大電流でPHV/EVへの充電を行うことにより、PHV/EVへの充電時間も最短時間で充電するようにした。
【0008】
また、この発明の分電盤装置に係る他の実施形態は、使用者の電子機器の使用状態に応じて、緊急充電、充電完了時刻優先、家庭内での使用負荷に応じて家庭内給電か充電を適宜優先させ、最低限の主幹ブレーカまたは契約容量であった場合でも、その範囲内で最大限の充電と家庭内給電を行うようにした。
【発明の効果】
【0009】
この発明の実施形態によれば、家庭内で必要とする電流消費を優先しながら、PHV/EVなどの大容量蓄電池への時間内の充電が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の分電盤装置に関する第1の実施形態の概念的な説明をするための模式図である。
【図2】図1の電気的な構成図である。
【図3】この発明の作用について説明するための説明図である。
【図4】この発明の分電盤装置に関する第2の実施形態について説明するための説明図である。
【図5】この発明の分電盤装置に関する第3の実施形態について説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図1、図2は、この発明の分電盤装置に関する第1の実施形態について説明するための、図1は概念的な説明を行うための模式図、図2は回路構成図である。
【0013】
図1および図2において、使用量を監視する機能を有する分電盤100は、例えば電源ラインL1,L2および中性線Nの電路11で構成される単相3線の商用電源ACに接続される。分電盤100は、商用電源ACに直接接続される主幹ブレーカ12と、主幹ブレーカ12に接続される分岐ブレーカ131,132,133…13nを有する。主幹ブレーカ12出力側には電流センサ141、142が介挿接続される。
【0014】
分岐ブレーカ131,132,133…13nの出力は、PHV/EV用コントローラ16に供給される。コントローラ16では、商用電源ACに接続されるPHVやEVの蓄電池に効率的に充電を促す制御が行われる。また、コントローラ16は、情報端末機17の設定により、複数の運転モードに設定可能で、例えば電化製品などを使用しながら、場合によっては電化製品の使用を抑制するピークカットなどを行い、大消費電流の蓄電池への充電をストレスなく充電制御する機能を備える。
【0015】
情報端末機17は、PHV/EV63の充電に合わせて電化製品などを制御する場合に、コントローラ16の機器制御端子およびHA端子に接続されたPHV/EVや電化製品に対し、各種のモード設定や設定内容を確認できる表示器や警報音を発する機能などを備えている。
【0016】
コントローラ16の制御出力は、例えばエアコン21、照明22などの電化製品から構成される第1負荷200に、例えば炊飯器31、床暖房32などの電化製品から構成される第2負荷300に、例えば電磁調理器41、電子レンジ42などの電化製品から構成される第3負荷400にそれぞれ供給される。
【0017】
分岐ブレーカ131の出力は、電磁開閉器51、電流センサ52を介して電気給湯器53に電力を供給する。分岐ブレーカ131と電気給湯器53は第4負荷500を構成する。電流センサ52と電気給湯器53はコンセント54で接続される。電磁開閉器51は、コントローラ16からの制御信号により開閉制御される。
【0018】
また、分岐ブレーカ132の出力は、電磁開閉器61、電流センサ62を介してPHV/EV63の蓄電池に電力を供給する。分岐ブレーカ132とPHV/EV63は、第5負荷600を構成する。電流センサ62とPHV/EV63はコンセント64で接続される。電磁開閉器61は、コントローラ16からの制御信号により開閉制御される。
【0019】
なお、当然のことながら、電子レンジやエアコンなどの商用電源との接続もコンセントを介して行われるが、ここでは図示と説明は省略する。また、結線状態の図示と説明は省略したが、実際には複数の分岐ブレーカを使い、製品の電力量を勘案しながら、より細かな括りに分岐ブレーカを振り分け、特定のブレーカが作動しないように分配されている。
【0020】
次に、図3のフローチャートも参照しながら、図2の構成による第1実施形態の作用について説明する。
【0021】
先ず、コントローラ16は、主幹ブレーカ12に流れる電流を電流センサ141,142で検出し、現在の家庭内の消費電流値Iaを算出する(ステップS1)。予め記憶された電力会社との電力使用契約の許容電流値IbからステップS1で算出された消費電流値Iaを差し引いた電流値Icを算出する(ステップS2)。
【0022】
ステップS2において、求められた電流値Icが、許容電流値Ibをオーバーさせる、すなわち、その時点の消費電流値Iaが許容電流値Ibより小さいかを判断し(ステップS3)、許容電流値Ibを越えた場合は、PHV/EV用の電磁開閉器61を開け、PHV/EV63は非充電とし家庭内給電とする(ステップS4)。ステップS3において、許容電流値Ibを越えていないと判断した場合は、電磁開閉器61を閉じて許容電流値Ibから消費電流値Iaを差し引いた電流値IcでPHV/EV63に充電を行う(ステップS5)。
【0023】
このように、主幹ブレーカ12の許容電流値Ibから現在の家庭内の消費電流値Iaを差し引いた残りを、PHV/EV63の充電器への供給可能電流とする制御を行ったことにより、主幹ブレーカ12を通過する電流を、主幹ブレーカ12の許容電流値内に収め、家庭内停電を防止することが可能となる。また、許容電流値Ib内であり、PHV/EV63が充電状態にある場合は、許容電流値Ibから消費電流値Iaを差し引いた最大の電流値IcでPHV/EV63の充電が可能となる。電流値Icは情報端末機17を操作することにより、任意に選択することで充電時間の調整も可能となる。
【0024】
コントローラ16は、PHV/EV63に充電中も、電化製品などのスイッチが切られた場合に、使用されていた電化製品などの消費電流も自動的にPHV/EV63に回す制御を行うことで、より一層満充電時間の短縮化を図ることができる。
【0025】
この実施形態では、家庭内で必要とする電流消費を優先としたことにより、PHV/EVの充電時に普段使用している電化製品の電源を切るといった不便を回避しながら、許容電流値から余った分の最大の電流値でPHV/EVへの充電ができることから、PHV/EVに最短時間で充電することが可能となる。
【0026】
図4のフローチャートは、この発明の分電盤装置に関する第2の実施形態について説明するための説明図であり、図2の構成図とともに説明する。この実施形態は、充電完了時刻モードと、PHV/EV充電優先モードおよび家庭内給電優先モードを時間帯区分に設定可能とするものである。
【0027】
図4において、コントローラ16は、現在の時刻からPHV/EV充電優先か家庭内給電優先かを判断する(ステップS1)。ステップS1でPHV/EV充電優先の時刻の場合は、主幹ブレーカ12に流れる電流を電流センサ141,142で検出し、現在の家庭内の消費電流値Iaを算出する(ステップS2)。予め記憶された電力会社との電力使用契約の許容電流値IbからステップS1で算出された消費電流値Iaを差し引いた電流値Icを求め(ステップS3)、許容電流値Ib内にあるかを判断する(ステップS4)。
【0028】
ステップS4において、許容電流値Ib以内でないと判断した場合は第1段として予め定めた第2負荷300への電力の供給を停止し(ステップS5)、ステップS6に進む。ステップS6では、ステップS5において電力の供給を停止したことにより、電流値Icが必要な電流値かを判断する。ステップS6で必要とする電流値Icでないと判断した場合は、ステップS4に戻る。ステップS6で緊急充電に可能な電流値と判断した場合は、ステップS3で求められた電流値Icに基づく充電時間を演算し、情報端末機17に充電完了時刻を表示し(ステップS7)、PHV/EV63に充電を行う(ステップS8)。
【0029】
ステップS4において、許容電流値Ib以内と判断した場合は、許容電流値Ibが緊急充電に十分な電流値Icかを判断する(ステップS9)。ステップS9において十分な電流値Icと判断した場合は、ステップS7に進み充電完了時刻を表示し、PHV/EV63に充電を行う。
【0030】
ステップS9において緊急充電できる電流値Icではないと判断した場合は、第2段階として予め定めた第3負荷400への電力供給を停止し(ステップS10)、ステップS11に進む。ステップS11では、電流値Icが緊急充電に必要な電流値であると判断した場合、ステップS7において充電完了時刻を表示し、PHV/EV63に充電を行う。ステップS11で十分でないと判断した場合は、指定時刻内に充電できない旨の警報や表示などを用いて使用者に報知する(ステップS12)。
【0031】
なお、ステップS1で家庭内給電優先時刻と判断した場合のコントローラ16は、電磁開閉器61を開いてPHV/EV63への電力供給を停止し、家庭内の給電を優先する状態に設定する。
【0032】
この実施形態では、充電完了時刻を認識できるとともに、時間帯により家庭内給電とPHV/EVの充電の優先を区別したことで、家庭内給電時間帯におけるPHV/EV充電による電化製品使用不可の不都合な状態を解消することができる。
【0033】
図5のフローチャートは、この発明の分電盤装置に関する第3の実施形態について説明するための説明図であり、図5について図2とともに説明する。この実施形態は、PHV/EVの充電完了時刻設定モードと使用の電化製品などの負荷の種類により優先順位付けする優先負荷モードとの複合モードを備えたものである。
【0034】
図5において、情報端末機17が充電完了時刻モードとともに、PHV/EV充電優先モードおよび家庭内給電優先モードに設定されると(ステップS1)、コントローラ16は、主幹ブレーカ12に流れる電流を電流センサ141,142で検出し、現在の家庭内の消費電流値Iaを算出する(ステップS2)。予め記憶された電力会社との電力使用契約の許容電流値IbからステップS2で求められた消費電流値Iaを差し引いた電流値Icを求め(ステップS3)、求められた電流値IcはステップS1で設定された時刻内で充電可能かを判断する(ステップS4)。
【0035】
ステップS4において、電流値Icが許容電流値Ib以内でないと判断した場合は、第1段階として例えば第2負荷300への電力の供給を停止し(ステップS5)、ステップS6に進む。ステップS6では、ステップS5において電力の供給を停止したことにより、電流値Icが充電完了時刻内の充電が可能かの演算を行い判断する。ステップS6で充電完了時刻内とする必要な電流値Icでないと判断した場合は、ステップS4に戻る。ステップS6で、充電完了時刻内の電流値Icと判断した場合はPHV/EV63の充電を開始する(ステップS7)。
【0036】
ステップS4において、充電完了時刻内の電流値Icであると判断するとステップS8に進み、ステップS8において、電流値Icで充電完了時刻内の充電が可能かの演算を行い判断する。可能と判断した場合は、ステップS7に進みPHV/EV63の充電を開始する。
【0037】
ステップS8において充電完了時刻内の充電を完了できる電流値Icでないと判断すると、第2段階として例えば第3負荷400への電力供給を停止し(ステップS9)、ステップS10に進む。ステップS10では、ステップS9において第3負荷400への電力の供給を停止したことにより電流値Icが上昇し、上昇後の電流値Icが充電完了時刻内の充電が可能かの演算を行い判断する。ステップS10において充電完了時刻内とする必要な電流値Icであると判断した場合は、ステップS7に進みPHV/EV63の充電を開始する。ステップS10において充電完了時刻内とする必要な電流値Icでないと判断した場合は、指定の時刻内の充電は完了できない警報や表示などを用いて使用者に報知する(ステップS11)。
【0038】
なお、ステップS11において、さらに他の電化製品への電力の供給を停止する第3段階の充電時刻内に電流値Icを確保することも考えられる。ステップS11の報知には、実際に充電が完了する時間の表示や音声によるものが考えられる。また、緊急の場合は充電完了時刻の設定を通常の充電完了時間よりも短い時間に設定することにより充電時間を短くすることもできる。さらに、家庭内の給電が優先時間であっても、情報端末機の操作により充電を優先させることも可能である。
【0039】
また、負荷である電化製品などの複数種類を一括りとしたが、電化製品などの個別に優先順位を付けて、優先順位に従いPHV/EVに充電するための消費電流をこまめに調整することもできる。
【0040】
この実施形態では、使用者の電子機器の使用状態に応じて充電完了時刻優先、家庭内での使用負荷に応じて家庭内給電か充電を適宜優先させるようにした。これにより、最低限の主幹ブレーカまたは契約容量であった場合でも、その範囲内で最大限の充電と家庭内給電を行うことができる。
【0041】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0042】
100 分電盤
200 第1負荷
300 第2負荷
400 第3負荷
500 第4負荷
600 第5負荷
12 主幹ブレーカ
131,132 分岐ブレーカ
141,142 電流センサ
16 コントローラ
17 情報端末機
61 電磁開閉器
63 PHV/EV

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電源が供給される主幹ブレーカ、該主幹ブレーカから電気的に分岐して設置される複数個の分岐ブレーカを備え、前記分岐ブレーカの一個を介してPHV/EVの蓄電池に充電する分電盤装置において、
前記主幹ブレーカの許容電流値から前記主幹ブレーカを流れる消費電流値を差し引いた電流値に応じて前記PHV/EV充電用電流を制御可能としたことを特徴とする分電盤装置。
【請求項2】
商用電源が供給される主幹ブレーカ、該主幹ブレーカから電気的に分岐して設置される複数個の分岐ブレーカを備え、前記分岐ブレーカの一個を介してPHV/EVの蓄電池に充電する分電盤装置において、
前記主幹ブレーカの許容電流値から前記主幹ブレーカを流れる消費電流値を差し引いた電流値が前記許容電流範囲をオーバーさせる値であれば、前記分岐ブレーカのいずれかを介して接続される他の負荷を制限し、前記電流値を減らす制御を行うことを特徴とする分電盤装置。
【請求項3】
前記蓄電池の充電完了時刻を設定した場合は、設定時刻に充電を完了させる前記電流値を決定づける負荷を調整する制御を行うことを特徴とする請求項2記載の分電盤装置。
【請求項4】
前記電流値に基づき、前記蓄電池の充電完了時刻を表示可能としたことを特徴とする請求項2記載の分電盤装置。
【請求項5】
家庭内給電を優先するか前記PHV/EVの充電を優先するかを、時間帯により設定したことを特徴とする請求項2記載の分電盤装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−125091(P2012−125091A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275545(P2010−275545)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】