説明

切り離しによる機能変更手段を備えた機能性タグ

【課題】ICタグにおいて、データの改竄等を防止しセキュリティーを高める。
【解決手段】ICタグは、切り離し可能なA1、A2部分と非切り離し部分B(タグ本体)との3つの部分から構成されている。部分A1、A2、及びBは、それぞれIC1、IC2、及びIC3と、タグと外部装置とのインタフェースとしての、アンテナ1、アンテナ2、及びアンテナ3を備えている。IC1とIC2とは信号伝送用の信号線路L1により、IC2とIC3とは信号伝送用の信号線路L2により、それぞれ繋がれている。A1がタグ本体から切り離された場合に、信号線路L1も切断されるように配線され、同様に信号線路L2も、A2がタグ本体から切り離された場合、切断されるようなレイアウトで配線されている。切り離し可能部分を、A1からA2へと順番に切り離す毎に、A1又はA2の切り離しを検知してタグの機能が第1の機能から第3の機能まで順次変化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICタグに関し、特に、タグの一部に切り離しによる機能変更手段を備えたICタグに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、商品流通・在庫管理、店舗での精算処理及び盗難防止などを目的とし、紙やプラスチック等の絶縁体上に、アンテナとICチップとを備えたICタグと、ICタグと通信を行うリーダー/ライター装置とにより構成された、例えば図8に示すシステムが注目を集めている。
【0003】
かかるシステムにおいて使用される代表的なICタグの構成例としては、図8に示すように、リーダー/ライター装置250とICタグ200とを有するのが一般的である。図8に示すシステムでは、リーダー/ライター装置250とICタグ200との通信に電波を使用し、図示しないRF部と、変調/復調部と、データ記憶部と、を備えたIC20(210)とアンテナ201とで構成された非接触型のICタグ(RFICタグ)が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
図9は、一般的なICタグの構成例を示す斜視図である。図9に示すように、ICタグは、紙やプラスチック等の絶縁体基板90の上に、コイルアンテナ201とICチップ210とを積層した構造を有して構成されたRFICタグである。このような簡単な構造を有するため、上記のような種々の応用が可能である。
【0005】
【特許文献1】特開平9−62934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
商品等に貼付するものであるというタグの性質上、上記背景技術で説明したRFICタグに代表されるICタグは、小型軽量であることが求められる。この為、ICタグに搭載されるICの回路構成は、単純な構成を有することが好ましく、追加の構成を必要とするデータ改竄防止用のハードウェアやソフトウェアをICタグに搭載することは難しかった。そのため、従来のICタグは、簡単な構造であるがゆえにデータの改竄等が容易であるという問題点を有していた。
【0007】
本発明は、ICタグにおいて、データの改竄等を防止しセキュリティーを高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ICタグに切り離し可能な部分を設け、この切り離し可能部分をタグ本体から切り離すことにより、ICタグに対するデータ入力及びICタグからのデータ出力に対する制限を変化させる構成を有している。これによりデータの改竄を防止することができる。ICタグで行なう信号処理を変更或いは格納データの自動的な更新、変更等、ICタグの機能の変更を、リーダー/ライター装置を用いず、商品の流通過程において例えば人の手等により自然に変更できるようにする。ICタグの外観上の変化と、ICタグの機能変化と、を連動させることにより、現在のICタグの機能がいかなる状態にあるかに関して目視で把握できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のICタグによれば、切り離し可能部分を切り離すことで、従来の単機能型のICタグとは異なり、機械を使わないICタグの機能変更を容易に実現できるという利点がある。また、切り離し可能部分を切り離すことで、ICタグの外観を変化させ、ICタグの状態をリーダー/ライター装置を使わずに目視により把握することができる。
【0010】
さらに、タグの切り離し状態に応じて、タグの機能変更やデータの入出力を制限できるため、データの改竄に対するセキュリティを向上できる。
【0011】
また、タグの機能を複数のICに分担させることにより、規定の順番に従って切り離し可能部分を切り離した場合にのみ適切な機能変化が生るようにすることで、セキュリティを向上させることができる。さらに、本体から切り離した切り離し可能部分を、独立したICタグとして使用することができる、等の効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に図面を参照しつつ、本発明の実施の形態によるICタグ及びその関連技術について説明を行う。図1は、タグ本体からの切り離し可能部分の数nが、n=2の場合の切り離し可能部分を切り離すことにより機能が変化するICタグの一構成例を示す図である。図1に示すICタグは、切り離し可能なA1、A2部分と非切り離し部分B(タグ本体)との3つの部分から構成されている。部分A1、A2、及びBは、それぞれIC1、IC2、及びIC3と、タグと外部(タグとの間でデータのやり取りを行うリーダー/ライター装置)のインタフェースとしての、アンテナ1、アンテナ2、及びアンテナ3を備えている。
【0013】
そしてIC1(10)とIC2(20)とは、IC1(10)とIC2(20)間の信号伝送用の信号線路L1により、IC2(20)とIC3(30)とは、IC2(20)とIC3(30)間の信号伝送用の信号線路L2により、それぞれ繋がれている。A1がタグ本体から切り離された場合に、信号線路L1も切断されるように配線され、同様に信号線路L2も、A2がタグ本体から切り離された場合、切断されるようなレイアウトで配線されている。
【0014】
尚、IC1、IC2、及びIC3から、共通GNDに接続されている線路SL12、SL21はA1部分がタグ本体から切り離された場合に、線路SL23、SL32はA2部分がタグ本体から切り離された場合に、それぞれ切断されるように、A1とA2の切り離し境界線、或いはA2とBの切り離しのための境界線に跨るようにレイアウトされて配線されている。線路SL12、SL21、SL23、及びSL32は、線路切断によって発生する線路のインピーダンスの変化を検出し、A1部分、或いはA2部分の切り離し判定に用いるために設けられた切り離し判定用線路である。
【0015】
図2は、図1に示すICタグの立体構造を示す斜視図である。図2に示すように、本実施の形態によるICタグは、紙、プラスチック等の絶縁体基板90上に設けられている。絶縁体基板90の一辺に沿って共通GND線91が設けられており、この共通GND線91は、IC1、2、3を接地するとともに、線路SL12、SL21、SL23、SL32も接地する。
【0016】
図3は、IC1(10)の構成例を示すブロック図である。図3に示すように、IC1(10)は、アンテナ1からの受信信号の一部を電力に変換する電源回路11と、タグの外部インタフェースであるアンテナ1に対して信号の受信・送信を行なう送受信回路12と、エンコードされたデータを変調する変調回路13と、受信信号を復調する復調回路14と、送信データのエンコード、及び受信データのデコードを行なうエンコード/デコード回路15と、エンコード/デコード回路15、或いは信号線L1を介して送られてきたデータの処理を行なうデータ処理回路1(16)及び記憶装置1(18)と、データ処理回路1(16)及び記憶装置1(18)の動作をタグの状態に応じて制御する制御回路1(17)と、部分A1が部分A2から切り離されたか否かを、部分A1自身が判定するA1切り離し判定回路2(19)と、を有している。電源回路11は共通電源線に接続され、データ処理回路1(16)はIC1(10)とIC2(20)とを結ぶ線路L1に接続され、A1切り離し判定回路2(19)は、線路SL12と接続されている。
【0017】
図4は、IC2(20)の構成例を示す図である。図4に示すように、IC2(20)は、受信信号の一部を、電力に変換する電源回路11と、タグの外部インタフェースであるアンテナ2に対して信号の受信・送信を行なう送受信回路12と、エンコードされたデータを変調する変調回路13と、受信信号を復調する復調回路14と、データのエンコード及びデコードを行なうエンコード/デコード回路15と、データの処理を行なうデータ処理回路2(21)と、記憶装置2(23)と、データ処理回路2(21)と記憶装置2(23)との動作を、タグの状態に応じて制御する制御回路2(22)と、部分A1が部分A2から切り離されたか否かを、部分A2が判定する「A1切り離し判定回路1」(24)と、部分A2が部分Bから切り離されたか否かを、部分A2自身が判定する「A2切り離し判定回路2」(25)と、を有している。
【0018】
図5は、IC3(30)の構成例を示す機能ブロック図である。図5に示すように、IC3(30)は、受信信号の一部を、電力に変換する電源回路3(11)と、タグの外部インタフェースであるアンテナ3に対して信号の受信・送信を行なう送受信回路12と、エンコードされたデータを変調する変調回路13と、受信信号を復調する復調回路14と、データのエンコード及びデコードを行なうエンコード/デコード回路15と、データの処理を行なうデータ処理回路3(31)と、記憶装置3(33)と、データ処理回路3(31)と記憶装置3(33)との動作を、タグの状態に応じて制御する制御回路3(32)と、部分A2が部分Bから切り離されたか否かを、部分Bが判定する「A2切り離し判定回路1」34と、を有している。
【0019】
図6aは、IC2(40)のA1切り離し判定回路1(24)の構成例を示す機能ブロック図である。図6aに示すように、A1切り離し判定回路1(24)は、信号線路L1の切り離し判定回路1(40)と、線路SL21のインピーダンスの変化を検出するインピーダンス変化検出回路1(50)とから構成されている。表1aから表1dまでは切り離し判定表である。
【0020】
【表1a】

【0021】
【表1b】

【0022】
【表1c】

【0023】
【表1d】

【0024】
信号線路L1の切り離し判定回路1(40)は、IC1(10)から信号線L1を介して送られた識別用データと、照合用データ42との照合を行い、表1aに示すように信号線L1を介してIC1から送られた識別用データと照合用データ42とが一致した場合は、「0」を出力し、識別用データと照合用データ42とが一致しなかった場合は、「1」を出力する。
【0025】
同様に線路SL21のインピーダンスの変化を検出する「インピーダンス変化検出回路1」50は、線路SL21が、共通GNDに接地された状態にあるか否かを検出し、表1aに示すように、線路SL21が共通GNDに接地された状態では「0」を出力し、線路SL21が切断され開放状態となった場合には「1」を出力するように構成されている。
そして、A1切り離し判定回路1(24)は、表1aに示すように「信号線路L1の切り離し判定回路1」の出力と、「インピーダンス変化検出回路1」の出力と、の論理積を算出し、この論理積が「1」となった場合に、A1がタグから切り離されたと判定する。
【0026】
尚、信号線路L1の切り離し判定は、IC1(10)とIC2(20)とに予め記憶させておいたデータを、それぞれ識別用データと照合用データとして照合する方式を採用しても良いし、IC2(20)から信号線路L1を介して任意の照合用データをIC1(10)へ送信し、IC1(10)が受信した任意の照合用データを識別用データとして返信し、これを「信号線路L1の切り離し判定回路1」40において照合する方式を採用しても良い。
【0027】
また、前記L1切り離し判定回路1(40)の動作説明においては、「信号線路L1の切り離し判定回路1」40の出力と、「インピーダンス変化検出回路1」50の出力との論理積をAND回路54により算出し、論理積が「1」となった場合に、A1がタグから切り離されたとものと判断しているが、判定方法はこれに限定されるものではない。例えば、「信号線路L1の切り離し判定回路1」40の出力と、「インピーダンス変化検出回路1」50の出力との論理和が「1」となった場合、すなわち信号線路L1、或いは線路SL21のいずれか1つが切断された場合に、部分A1がタグ本体から切り離されたと判定する方式を採用してもよい。この場合にはAND回路54の代わりにOR回路を用いる。
【0028】
尚、図6aの線路SL21のインピーダンス変化検出装置50を例に、インピーダンス変化検出装置の動作を説明すると、以下のようになる。AND回路53においては、2つの入力が共通化されている。A1が切り離し線1で切り離される前には線路SL21が切断されておらず、AND回路53の2つの入力は、GNDの電位となっている。このため、AND回路53の2入力は“Low”となり、AND回路53の出力は“0”となる。一方、A1が切り離し線1で切り離されると線路SL21も切断されるため、AND回路53の2入力の電位は、R2×Vcc/(R1+R2)の“Hi”となり、AND回路53出力は “1”となる。このようにして、インピーダンス変化検出装置50は、A1が切り離し線1で切り離されることによる、SL21のインピーダンスの変化を検出することができる。
【0029】
A1切り離し判定回路1(24)以外の残る3つの切り離し判定回路の構成を、図6b、図6c、及び図6dに示すとともに、各切り離し判定回路の切り離し判定表を表1b、表1c、及び表1dに示す。尚、上記3つの切り離し判定回路の構成、及び動作原理は、基本的に上述したA1切り離し判定回路1と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0030】
図7a、図7b、及び図7cは、記憶装置1(18)、記憶装置2(23)、及び記憶装置3(33)の構成例を示す機能ブロック図である。
【0031】
図7aに示すように、記憶装置1(18)は、データ処理回路1(16)からの記憶領域1(64)および書き込み制御回路61、読み出し制御回路62、読み取り専用化回路63を有している。書き込み制御回路61は、制御装置1からの書き込み要求の制御データに基づいて、ICタグの持つ第1の機能の動作に基づくデータ処理回路1(16)からの書き込みデータを記憶領域1(64)に記録する。読み出し専用化回路62は、制御回路1(17)からの読み取り専用化要求の制御データに基づいて、記憶領域1(64)へデータの書き込みを妨げる。これによってデータの書き込みを行うことができなくなり、記憶領域1(64)は読み取り専用となる。読み出し制御回路62は、制御装置1(17)からの読み出し要求の制御データに基づいて、記録領域1(64)に記録されているデータをデータ処理装置3(31)へと送り出す。
【0032】
図7bは、IC2の記憶装置2の構成を示す図である。図7bに示すように、記憶装置2(23)は、記憶装置1(18)と同様に構成されており、記憶領域2(65)に対して第2の機能の動作に基づく記録の書き込み処理および読み出し処理、読み取り専用化処理を行う。
【0033】
図7cは、IC3の記憶装置3(33)の構成例を示す図である。図7cに示すように、記憶装置3(33)は、書き込み処理および読み出し処理、読み取り専用化処理については記憶装置1(18)と同様の処理を行う。但し、記憶装置3(33)は、第3の機能の動作に基づくデータを記録する記憶領域3(66)に加えて、IC1およびIC2がそれぞれ司る第1の機能および第2の機能の動作を記録するための、記憶領域1(64)および記憶領域2(65)から構成されている。
【0034】
図1に示すICタグに関して、以下のように流通過程に沿って処理を行う。1)部分A1、部分A2、及び部分Bが全て揃っている状態で、タグに製品識別コード、製造番号、製造年月日、出荷日時等のデータの入力し(記憶装置に記憶させ)、製品に添付する。2)工場出荷時点でタグから部分A1を切り離し、販売店へ出荷する。ここで、切り離された部分A1は、出荷元控えとして残す。3)販売店において、販売日時、販売店名等のデータを入力する。その上で、部分A2を切り離し、部分Bだけとなったタグの付いた製品を購入者へ渡す。この際、切り離された部分A2は、販売店控えとして残す。4)製品と共に購入者へ渡された部分Bだけのタグは、購入者控えとなる。このような商品の流通管理に本実施の形態によるタグを利用した場合タグの状態変化と、それに伴うタグの機能変化との対応関係の一例を表2に示す。
【0035】
【表2】

【0036】
尚、表2では、第1の機能を実現する制御の全てをIC1(10)が、第2の機能を実現する制御の全てをIC2(20)が、それぞれ司っている。
【0037】
すなわち、工場出荷時においては、IC1(10)は、タグ外との通信制御、IC2(20)、IC3(30)との通信、記憶装置1から3までの記憶領域1のアドレスを指定、記憶装置1から3までの記憶領域1へのデータ1の書き込み命令の送出、記憶装置1の記憶領域1へのデータ1の書き込み、読み出しを含む機能を有しており、これにより、製品識別コード、製造番号、製造年月日、出荷日時等のデータ(データ1)の入出力を行う第1の機能を発揮する。IC2(20)は、IC1、IC3との通信、IC3(30)の記憶装置3へ記憶領域1以外への書き込み禁止命令の送出、記憶装置2の記憶領域1へのデータ1の書き込みを含む機能を有している。IC3(30)は、IC1(10)、IC2(20)との通信、記憶装置3の記憶領域1へのデータ1の書き込みを含む機能を有している。
【0038】
販売店では、部分A1は切り離されており、IC2(20)は、タグ外との通信制御、IC3(30)との通信、記憶装置2と3の記憶領域2のアドレスを指定、記憶装置2の記憶領域2へのデータ2の書き込み、読み出し、記憶装置2の記憶領域1の読み出し専用化(リードオンリー)を含む機能を有しており、これにより、データ1の出力と、販売日時、販売店名等のデータ(データ2)の入出力とを含む第2の機能を発揮する。
【0039】
IC3(30)は、IC2(20)との通信、記憶装置3の記憶領域1の読み出し専用化、記憶装置3の記憶領域2へのデータ2の書き込みを行う。
【0040】
購入者(購入後)は、部分A1,A2は切り離されており、IC(30)は、A2切り離し済み、タグ外との通信制御、記憶装置3の記憶領域1と2の読み出し専用化(リードオンリー)、記憶装置3の記憶領域3に対するデータ3の書き込み、読み出し、を含む機能を有しており、データ1及びデータ2の出力と、 購入者によるメモ等の任意のデータ(データ3)の入出力とを含む第3の機能を発揮する。
【0041】
読み出し専用化を行うのは、それぞれのICタグにおいて、ある領域が切り離された後は、切り離されたタグが担っていた機能の一部(そのタグに専用の記憶領域への情報の書き込み等)ができないようにするのが好ましいからである。
【0042】
【表3】

【0043】
これに対して、表3のように第1の機能を実現する制御機能の一部をIC1(10)とIC2(20)とが、第2の機能を実現する制御機能の一部をIC2(20)とIC3(30)とが、それぞれ分担するようにしてもよい。また、第3の機能である記憶装置3の記憶領域3へのデータの書き込みを、IC2が阻害するようにしても良い。
【0044】
すなわち、工場出荷時においては、IC1(10)は、タグ外との通信制御、IC2、IC3との通信、記憶装置1から3の記憶領域1へのデータ1の書き込み命令の送出、記憶装置1の記憶領域1へのデータ1の書き込み、読み出しを行い、IC2(20)は、IC1、IC3との通信、記憶装置1から3の記憶領域1のアドレスを指定、IC3の記憶装置3へ記憶領域1以外への書き込み禁止命令の送出、記憶装置2の記憶領域1へのデータ1の書き込みを行う。表2の場合と比較すると明らかなように、IC1(10)の一部の機能(第1の機能)をIC2(20)に分担させている。
【0045】
表3のように1つの機能を実現するための機能を複数のICに分散した場合、ICを含むタグを切り離す順序を無視して切り離すと、タグが正常に動作しないため、使い物にならず、不正使用を抑制できるという効果がある。
【0046】
【表4】

【0047】
表4に図1のICタグを前記の流通管理に適用した場合の、本発明のタグの状態変化と、それに伴うタグの機能変化の対応関係、及び前記記憶装置1から3の各記憶領域に格納された情報と、各記憶領域の状態の関係を示す。表4に示すように、例えば、記憶領域1の格納データに関して、工場においては(出荷前)、製品識別コード、製造番号、製造年月日、出荷日時等のデータに関するデータの書き込み、読み出しが可能であるのに対して、販売店(工場出荷時から販売前まで)においては、製品識別コード、製造番号、製造年月日、出荷日時等のデータに関して、データの読み出しのみ可になっている。このように流通過程におけるタグの状態変化に応じて、記憶装置1から3の各記憶領域に格納された情報への書き込みが制限されるため、情報の改竄に対する耐性が向上する。
【0048】
【表5】

【0049】
表5は、図1のICタグを流通管理に適用した場合の、タグ本体から切り離された後のA1、A2のICタグとしての機能を示す。部分A1、A2は、外部インタフェースと、電源回路を独立して備えているため、表5に示すように、部分A1、A2は、ICタグとしての機能を備え、データの管理が容易となる。すなわち、切り離し後のタグ(A1)は、外との通信制御、記憶装置1の記憶領域1の読み出し専用化、記憶装置1の記憶領域1からのデータ1の読み出し、を行うことができる。切り離し後のタグ(A2)は、タグ(A2)外との通信制御、記憶装置2の記憶領域1、及び2の読み出し専用化、記憶装置2の記憶領域1及び2からのデータ1及び2の読み出しを行うことができる。切り離し後のタグ(A3)は、タグ(B)外との通信制御、記憶装置3の記憶領域1と2の読み出し専用化、記憶装置3の記憶領域3に対するデータ3の書き込み、読み出しを行うことができる。
【0050】
尚、上記実施例においては、タグと外部との情報のやり取りを、電波に代表される無線を用いて行う非接触型のタグを例にして説明したが、情報のやりとりを行う媒体は電波に限定されるものではなく、磁気を用いても良い。また、非接触型に限定されるものではなく、接触型のタグを用いてもよい。
【0051】
また、上記実施例においては、Akが切り離された場合は信号線路Lkが物理的に切断される例を挙げて説明した。しかしながら、Akが切り離されることによって、ICkとICk+1の間の電気な信号接続が切断されることが本質であり、信号線路が切断されることが本質ではない。従って、信号線路Lkの構成はタグの切り離し線を跨いでいる構成に限定されるものではなく、例えば、切り離し線を間の近傍において対向する線路パターン間を、誘導性結合或いは容量性結合を用いて、ICkとICk+1との間の電気な信号接続が行われており、タグを切り離すことでこの結合が弱まる或いはなくなるように構成しても良い。
【0052】
また、タグの切り離しにより線路を切断する代わりに、タグの部分Aと部分Bとが一部領域で重なっており、この重なりを分離することで電気的接続がなくなるように構成しても良い。この場合には、重なり部分を粘着性のテープなどを貼り付けておき、適宜、はがすことができるようにしても良い。
【0053】
以上、本実施の形態によるタグを用いると、従来の単機能型のICタグとは異なり、機械的な手段を用いないICタグの機能変更を容易に実現することができる。この際、切り離し可能な部分を切り離すことによりICタグの外観を変化させ、RFICタグの状態を、リーダー/ライター装置を使わずに目視により簡単に把握できる。
【0054】
また、タグの切り離し状態に応じて、タグの機能変更やデータの入出力を制限できるため、データの改竄に対するセキュリティを向上させることができる。さらに、タグの機能を複数のICに分担させることにより、切り離し可能部分を順番に従って切り離さない場合には適切な機能変化が生じないようにすることができ、規則に従ってタグを正規に切り離す処理をするようにさせることで、タグを用いたシステムにおけるセキュリティを向上させることができる。また、切り離しを行った後の切り離し可能部分を、独立したICタグとして使用することができる等の従来のICタグとは異なる優れた効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、タグを用いた流通システムに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】タグ本体からの切り離し可能部分の数nが、n=2の本出願発明の前提となるICタグの構成図。
【図2】図1のICタグの構造を示す斜視図。
【図3】IC1の構成例を示す機能ブロック図である。
【図4】IC2の構成例を示す機能ブロック図である。
【図5】IC3の構成例を示す機能ブロック図である。
【図6a】A1切り離し判定回路1の構成例を示す機能ブロック図である。
【図6b】A1切り離し判定回路2の構成例を示す機能ブロック図である。
【図6c】A2切り離し判定回路1の構成例を示す機能ブロック図である。
【図6d】A2切り離し判定回路2の構成例を示す機能ブロック図である。
【図7a】記憶装置1の構成例を示す機能ブロック図である。
【図7b】記憶装置2の構成例を示す機能ブロック図である。
【図7c】記憶装置3の構成例を示す機能ブロック図である。
【図8】従来のICタグを用いた管理システムの構成例を示す図である。
【図9】従来のICタグの構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0057】
A1、A2…ICタグのうち、切り離し可能な部分、B…非切り離し部分(タグ本体)、1、2、3…アンテナ、10…IC1、20…IC2、30…IC3、L1、L2…信号線路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A1からAnまでのn(nは、n≧1の自然数)箇所の切り離し可能部分と、前記A1からAnまでの切り離し可能部分以外の部分Bと、から構成され、前記切り離し可能部分Ak(kは、1≦k≦nの自然数)に、それぞれタグICkが設けられているICタグであって、
前記Bの部分に設けられるタグICn+1と、
前記ICkと前記ICk+1とを電気的に結合するとともに、前記Akが切り離された場合にその電気的な信号接続が切断される信号線路Lkと、を備え、
前記切り離し可能部分Akを、A1からAnへと順番に切り離す毎に、Akの切り離しを検知してタグの機能が第1の機能から第n+1まで順次変化するICタグ。
【請求項2】
前記ICkが、それぞれ第kの機能を有しており、
前記ICn+1が、第n+1の機能を有していることを特徴とする請求項1記載のICタグ。
【請求項3】
前記ICkと、前記ICk+1からICn+1までのうち少なくとも1つが、第kの機能を実現するための機能分担を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のICタグ。
【請求項4】
前記ICkと前記ICk+1とが、前記第kの機能を実現するための機能分担を行うことを特徴とする請求項3に記載のICタグ。
【請求項5】
少なくともICkを含むIC1からICkまでのICのいずれかが、タグ全体としての第k+1の機能の発現を抑制する機能を備えていることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載のICタグ。
【請求項6】
各切り離し可能部分Akにそれぞれ設けられる記憶装置Mkと、
前記Bの部分に設けられる記憶装置Mn+1と、を備え、
該記憶装置Mkが、前記第1から第kまでの機能に基づいて得られたデータのうちの少なくともその1つを格納する記憶領域を備えていることを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載のICタグ。
【請求項7】
前記記憶装置Mkが、第kの機能に基づいて得られたデータを格納する記憶領域を備えていることを特徴とする請求項6に記載のICタグ。
【請求項8】
前記記憶装置Mk+1が、前記第1から第kまでの機能に基づいて得られたデータを格納する領域を備えたことを特徴とする請求項6又は7に記載のICタグ。
【請求項9】
前記ICは、外部との通信を行う通信部と、該通信部の制御を行う制御部と、を有していることを特徴とする請求項1から8までのいずれか1項に記載のICタグ。
【請求項10】
前記ICk+1からICn+1は、前記Akが切り離された場合に、前記記憶装置Mk+1からMn+1の前記第kの機能で得られたデータを格納する領域を読み取り専用とする読み取り専用化回路を備えたことを特徴とする請求項6から8までのいずれか1項に記載のICタグ。
【請求項11】
タグ本体から切り離されたAk部分が、外部との通信機能を維持することで単独のICタグとして機能することを特徴とする請求項6又は7に記載のICタグ。
【請求項12】
前記Ak部分に、前記線路Lkの切断を検出するLk切断検出装置と、
前記信号線路Lkの切断の有無の検出結果を、前記Akの切り離し判定に用いるAk切り離し判定装置と、を備えていることを特徴とする請求項11に記載のICタグ。
【請求項13】
前記Ak切り離し判定装置が、Akがタグ本体から切り離されたと判定した場合に、少なくとも、記憶装置Mkの第1から第kの機能で得られたデータに割り当てられたデータ格納領域を読み取り専用とする装置を備えたことを特徴とする請求項12に記載のICタグ。
【請求項14】
前記Ak部分のLk切断検出装置が、ICk+1からの信号の有無を元に、信号線路Lkの切り離しを検出すること特徴とする請求項13に記載のICタグ。
【請求項15】
前記AkとAk+1の2つ領域に跨り、Ak部分がタグから切り離された場合に切断される線路の、インピーダンスの変化を検出するインピーダンス変化検出装置を備え、
前記Lk切断検出装置と、インピーダンス変化検出装置との検出結果に基づいて、Akの切り離しを判定するAk切り離し検出装置を有する請求項13に記載のICタグ。
【請求項16】
前記切り離し可能部分Ak+1に、
前記信号線路Lkによる信号接続の切断を検出するLk切断検出装置と、
信号線路Lkの切断の有無の検出結果を、前記Akの切り離し判定に用いるAk切り離し判定装置と、
を備え、
前記Ak+1部分のLk切断検出装置が、ICkからの信号の有無に基づいて、信号線路Lkの切り離しを判定することを特徴とする請求項1に記載のICタグ。
【請求項17】
前記Ak+1部分に、
前記AkとAk+1の2つ領域に跨り、Ak部分がタグから切り離された場合に切断される線路の、インピーダンスの変化を検出するインピーダンス変化検出装置を備え、
前記Ak切り離し判定装置は、前記Lk切断検出装置と、インピーダンス変化検出装置と、の検出結果を用いて、Akの切り離しを判定することを特徴とする請求項16記載のICタグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図6d】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−119752(P2006−119752A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−304706(P2004−304706)
【出願日】平成16年10月19日(2004.10.19)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】