切削セグメントの緊結構造

【課題】 シールド掘進機により切削可能な切削セグメントを十分な接合強度で周方向に接合一体化できると共に、切削作業時に接合部材をスムーズに撤去可能にする切削セグメントの緊結構造を提供する。
【解決手段】 本線シールドトンネル11と分岐合流シールドトンネル12とを接合する際に、本線シールドトンネル11の接合側面部分11aに設置される切削セグメント14を、トンネルの周方向に緊結一体化する緊結構造であって、周方向に連設される切削セグメント14に沿って貫通形成されると共に、切削セグメント14を挟んだ周方向の両側に配置される一般セグメント27に跨って連続形成され、一般セグメント27の内周面に両端が開口する鋼線挿通孔50と、鋼線挿通孔50に挿通されるPC鋼線29と、PC鋼線29にプレストレスを負荷しつつ一般セグメント27の内周面においてPC鋼線29の両端を定着する定着部材30とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削セグメントの緊結構造、及び該緊結構造を用いたシールドトンネルの接合部施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、地中に先行形成された本線トンネルにランプトンネル等の分岐合流トンネルを接続する工法として、分岐合流部分の地盤を開削して立坑を設け、この立坑の内部において本線トンネルと分岐合流トンネルとを接合する工法が考えられる。また、このような開削工法は、特に都市部においては、地上での施工スペースや用地の確保等に問題がある上、周囲への環境問題も生じやすくなることから、地中において分岐合流トンネルと本線トンネルとを接合する工法として、例えば本線トンネルと分岐合流トンネルとを間隔をおいて別々に施工し、この間隔部分の上下を覆って山留部材を圧入したり、地盤改良を行ってから、当該間隔部分を掘削して両者を繋ぐ工法(例えば、特許文献1参照)や、本線トンネルの分岐部または合流部に大断面のトンネルを形成し、この大断面のトンネル内部から分岐(合流)方向に小断面のシールドトンネルを分岐合流トンネルとして掘進していく工法(例えば、特許文献2参照)等、種々の工法が提案されている。
【0003】
また、これらの分岐合流トンネルと本線トンネルとを地中で接合する従来の工法では、地中の深部において大掛かりな地盤改良や山留支保工を施す必要があるため、施工コストが増大し、工期も長くなる。これに対して、施工コストの低減や、工期の短縮を図ることを目的として、シールド掘進機によって地中に先行形成された本線トンネルの接合側面部分の外郭体を分岐合流トンネル用のシールド掘進機によって切削可能な切削セグメントによって構成し、この切削セグメントによる接合側面部分を直接切削させつつ分岐合流トンネル用のシールド掘進機を掘進させることにより、本線トンネルと分岐合流トンネルとを地中で連通させる工法も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特許第2839440号公報
【特許文献2】特開2001−355385号公報
【特許文献3】特開2004−211361号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
切削セグメントは、例えば円形断面のシールドトンネルのトンネル外郭体を構成する鋼製や鉄筋コンクリート製等の一般のセグメントと互換性を有するように、これらの一般のセグメントと同様の形状に形成され、トンネル外郭体の接合側面部分に配置されて、他のセグメントと共に一体として円形リング形状に組み立てられることになる。
【0005】
一方、切削セグメントは、接合ボルト等の鋼製の接合部材を介して他のセグメントと共に周方向に接合一体化されて円形リング状の外郭体を構成すると共に、リング状に組み立てられた外郭体は、接合ボルト等の鋼製の接合部材を介してトンネルの軸方向にさらに接合一体化されて、シールドトンネルの一次覆工が形成されることになるが、切削セグメント同士をトンネルの周方向や軸方向に接合してゆく際に鋼製の接合部材を用いると、これらの鋼製部材は切削が困難であるあるため、シールド掘進機による掘進作業に支障を来す恐れがある。
【0006】
接合ボルト等の接合部材として切削が可能な例えば合成樹脂製の接合部材を用いることも考えられるが、このような接合部材では、特にトンネルの周方向に切削セグメントを接合して行く際の接合強度が劣ることになる。所望の接合強度を備えるように切削可能な接合部材に特別な加工を施したり、別途補強部材を用いると、高価な接合構造になって不経済である。また、周方向の接合部材として鋼製の接合ボルトを用い、シールド掘進機の掘進作業の進行に伴なって、切削直前の切削セグメントから接合ボルトを順次取外しながらから切削セグメントの切削を行ってゆくことも考えられるが、周方向の複数の接合箇所から接合ボルトを各々取り外す作業に多くの手間を要することになる。
【0007】
本発明は、分岐合流シールドトンネルとの接合側面部分に設置される本線シールドトンネルの切削セグメントを十分な接合強度で周方向に接合一体化することができると共に、切削セグメントを切削するのに先立って、接合部材をスムーズに撤去しながらシールド掘進機による掘進を行うことを可能にする切削セグメントの緊結構造、及び該緊結構造を用いたシールドトンネルの接合部施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、本線シールドトンネルと分岐合流シールドトンネルとを接合する際に、分岐合流シールド掘進機によって本線シールドトンネルの外郭体を切削させるべく本線シールドトンネルの接合側面部分に設置されるシールド掘進機によって切削可能な切削セグメントを、トンネルの周方向に緊結一体化するための切削セグメントの緊結構造であって、トンネルの周方向に連設される前記切削セグメントに沿って周方向に貫通形成されると共に、該切削セグメントを挟んだ周方向の両側に配置される一般セグメントに跨って連続形成され、該一般セグメントの内周面に両端が開口する鋼線挿通孔と、該鋼線挿通孔に挿通されるPC鋼線と、該PC鋼線にプレストレスを負荷した状態で、前記鋼線挿通孔が開口する前記一般セグメントの内周面において前記PC鋼線の両端を定着する定着部材とからなる切削セグメントの緊結構造を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0009】
また、本発明は、上記切削セグメントの緊結構造を、前記本線シールドトンネルの軸方向に連設されるリング毎に、所定のピッチで少なくとも一箇所づつ設け、前記分岐合流シールド掘進機の掘進方向後方側の前記PC鋼線から順次撤去しながら、前記分岐合流シールド掘進機を掘進させて前記切削セグメントを切削する工程を含むシールドトンネルの接合部施工方法を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の切削セグメントの緊結構造、或いは該緊結構造を用いたシールドトンネルの接合部施工方法によれば、本線シールドトンネルの分岐合流シールドトンネルとの接合側面部分に設置される切削セグメントを十分な接合強度で周方向に接合一体化することができると共に、切削セグメントを切削するのに先立って、接合部材をスムーズに撤去しながらシールド掘進機による掘進を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の好ましい一実施形態に係る切削セグメントの緊結構造及びシールドトンネルの接合部施工方法は、例えば高速道路のジャンクション部において、図1に示すように、本線シールドトンネル11と分岐合流シールドトンネル12との分岐合流部10を地中に形成するべく、シールド工法による本線トンネル11に、シールド工法による分岐合流トンネル12を地中で直接接合する際に採用されたものである。本実施形態によれば、本線シールドトンネル11の標準断面は、例えば車線幅員が3.25mmの3車線の道路を設けることのできる大きさの円形断面となっており(図2参照)、分岐合流シールドトンネル12の標準断面は、例えば車線幅員が3.5mmの2車線の道路を設けることのできる大きさの略長円形断面となっている(図2参照)。
【0012】
また、本実施形態のシールドトンネルの接合部施工方法は、本線シールドトンネル11に対して、分岐合流シールド掘進機13を、分岐合流シールドトンネル12内の道路線形に応じた緩い角度で斜めに擦り付けるように接近させ、当該分岐合流シールド掘進機13のカッター板13aによって、本線シールドトンネル11のトンネル外郭体15を構成する切削セグメント14を切削させつつ、分岐合流シールドトンネル12の接合側部12aを本線シールドトンネル11の接合側面部分11aに食い込ませて設ける工程を介して(図3参照)、本線シールドトンネル11を分岐合流シールドトンネル12に接合させるものである。
【0013】
そして、本実施形態の切削セグメントの緊結構造は、本線シールドトンネル11と分岐合流シールドトンネル12とを接合する際に、分岐合流シールド掘進機13によって本線シールドトンネル11の外郭体15を切削させるべく本線シールドトンネル11の接合側面部分11aに設置されるシールド掘進機13によって切削可能な切削セグメント14を、トンネルの周方向に緊結一体化するための緊結構造であって、図2に示すように、本線シールドトンネル11の周方向に連設される切削セグメント14に沿って周方向に貫通形成されると共に、切削セグメント14を挟んだ周方向の両側に配置される一般セグメントとしての鋼製セグメント27に跨って連続形成され、この鋼製セグメント27の内周面に両端が開口する鋼線挿通孔50と、この鋼線挿通孔50に挿通されるPC鋼線29と、このPC鋼線29にプレストレスを負荷した状態で、鋼線挿通孔50が開口する鋼製セグメント27の内周面においてPC鋼線15の両端を定着する定着部材30とからなる。
【0014】
本実施形態によれば、分岐合流シールド掘進機13によって切削可能な切削セグメント14として、例えば、鉄筋の代わりにグラスファイバー、炭素繊維などの非金属の強化繊維を配設、配合したコンクリートセグメントや、鋼板部分を強化繊維が配合された合成樹脂に置き換えてコンクリートを充填した合成セグメント等を用いることができる。また切削セグメント14は、円形断面のトンネル外郭体15を構成する一般のセグメントと同様の形状を備え、互換性を有するように容易に形成することができ、円形リング形状に組み立てられるトンネル外郭体15の接合側面部分11aに配置しつつ他のセグメント27,28と共に一体として組み立てることができるようになっている。
【0015】
切削セグメント14をトンネルの軸方向及び周方向に接合一体化する継手部材としては、分岐合流シールド掘進機13によって切削可能な材質の例えば合成樹脂からなる接合ボルト等の継手部材を用いることができるが、本実施形態では、このような継手部材に代えて、あるいはこのような継手部材に加えて、切削セグメント14をトンネルの周方向に接合一体化する継手部材として、切削セグメント14を周方向に貫通するように延設配置されて切削セグメント14を緊張するPC鋼線29が用いられ、このPC鋼線29によって切削セグメント14を周方向に強固に緊結一体化している。
【0016】
すなわち、本実施形態では、接合側面部分11aに周方向に連設配置された切削セグメント14及びこれらに隣接して配置された一般セグメントとしての鋼製セグメント27に亘って、周方向に連続的にシース管等を設置することより貫通形成された鋼線挿通孔50に、例えばPC鋼より線からなるPC鋼線29を挿通し、これの両端部を鋼製セグメント27の内側面に設けた定着台51に、定着部材30を介して緊張状態で定着する。これによって、切削セグメント14は、隣接する鋼製セグメント27と共に安定した状態で周方向に強固に緊結一体化されることになる。
【0017】
ここで、PC鋼線29を鋼製セグメント27の内側面に緊張状態で定着させる定着部材30としては、例えば特開2001−173385号公報に記載のトンネル覆工用セグメントの組立方法で用いる定着体と同様のものを使用することができる。このような定着部材30は、例えば図10(a),(b)に示すように、緊張側定着体30aと固定側定着体30bとからなり、緊張側定着体30aは、PC鋼線29の一端部に機械的に圧着外嵌されたマンションスリーブ52の雄ねじに螺合するスリーブナット53、ワッシャ54、支圧板55等によって構成されている。また固定側定着体30bは、PC鋼線29のカプラとしての機能を備えるものであり、テーパー孔を有するスリーブ56、スリーブ56に内嵌しPC鋼線29の他端部を掴持するくさび57、くさび57を掴持方向に付勢するスプリング58、カプラナット59等によって構成されている。
【0018】
そして、PC鋼線29を取り付けるには、例えば鋼線挿通孔50にPC鋼線29を挿通して、これの他端部を例えば下方の定着台51に支持される固定側定着体30bにくさび57及びスプリング58を介して固定する。またマンションスリーブ52が設けられたPC鋼線29の一端部に、上方の定着台51に支持される支圧板55及びワッシャ54を装着すると共に、マンションスリーブ52にスリーブナット53を螺着する。しかる後に、トルクレンチやインパクトレンチを用いてスリーブナット53を緊締することにより、PC鋼線29にプレストレスを負荷した状態で、これの両端部を、鋼製セグメント27の内周面に配置された定着台51に各々容易に定着させることができる。また、例えばトルクレンチやインパクトレンチを用いてスリーブナット53による緊締状態を解除し、緊張側定着体30a及び固定側定着体30bを取り外した後に、鋼線挿通孔50からPC鋼線29を引く抜くことにより、PC鋼線29を容易且つスムーズに撤去できるようになっている。
【0019】
なお、本実施形態によれば、鋼線挿通孔50が開口する鋼製セグメント27の内周面に定着台51を設けて、この定着台51を介してPC鋼線29の両端を定着部材30によって定着させるようにしているが、定着台51を設ける必要は必ずしもなく、鋼製セグメント27の内周面に定着用の凹部を設けて、この凹部において、PC鋼線29の両端を定着部材30を用いて定着することもできる。また、本発明における一般セグメントは、シールド掘進機によって切削可能な構成を特に備えてない、シールド用のセグメントとして一般に用いられるセグメントの総称であって、鋼製セグメントの他、例えば鉄筋コンクリート製、鋼殻コンクリート製等のセグメントも含まれる。さらに、本実施形態では、本線シールドトンネル11のトンネル外郭体15の接合側面部分11aとは反対側の部分には、図2に示すように、後述する工程において、横方向仮設支持梁21や横方向本設支持梁25の端部を当接支持させる鉛直な内壁面19を備える、肉厚の大な補強セグメント28が組み立てられている。
【0020】
本実施形態によれば、上述の切削セグメント14を周方向に緊結一体化するPC鋼線29は、本線シールドトンネル11のトンネル軸方向に連設される各リング毎に、少なくとも一箇所づつ、例えば1.5m程度のピッチで配設される。また、後述する切削セグメント14及び貧配合固化材18を切削しつつ分岐合流シールド掘進機13を掘進させて、分岐合流部10における本線シールドトンネル11の接合側面部分11aに分岐合流シールドトンネル12の接合側部12aを摺り付ける工程(図3参照)では、定着部材30によるPC鋼線29の緊張状態を解除して、分岐合流シールド掘進機13の掘進方向後方側に配置されたPC鋼線29から当該PC鋼線29を順次スムーズに撤去しながら、分岐合流シールド掘進機13を掘進させて切削セグメントを切削することにより、PC鋼線29が切削作業の障害にならないようにする。
【0021】
そして、本実施形態のシールドトンネルの接合部施工方法は、例えば本線シールドトンネル11に分岐合流シールドトンネル12が接合される分岐合流部10を接合部として構築するための施工方法であって、分岐合流シールド掘進機13の掘進方向後方側のPC鋼線29から順次撤去しながら、分岐合流シールド掘進機13を掘進させて切削セグメント14を切削する工程を含むものであり、例えば図2〜図9に示すように、以下の工程a)〜g)からなる。
【0022】
a) 分岐合流部10における本線シールドトンネル11の接合側面部分11aのトンネル外郭体15を分岐合流シールド掘進機13によって切削可能な切削セグメント14を用いて形成する工程(図2参照)、
b) 分岐合流部10における本線シールドトンネル11の内部の切削セグメント14よりも中央側に、上下方向からの荷重を支持する本線仮設中柱17を立設配置すると共に、この本線仮設中柱17よりも切削セグメント14側に分岐合流シールド掘進機13によって切削可能な貧配合固化材18を充填固化する工程(図3参照)、
c) 切削セグメント14及び貧配合固化材18を切削しつつ分岐合流シールド掘進機13を掘進させて、分岐合流部10における本線シールドトンネル11の接合側面部分11aに分岐合流シールドトンネル12の接合側部12aを摺り付ける工程(図3参照)、
d) 分岐合流シールドトンネル12の接合側部12aのトンネル外郭体16を貫通して、本線シールドトンネル11の接合側面部分11aとは反対側の内壁面19と、分岐合流シールドトンネル12の接合側部12aとは反対側の内壁面20との間に横方向仮設支持梁21を設置すると共に、分岐合流シールドトンネル12の接合側部12aよりも中央側に上下方向からの荷重を支持する分岐合流線仮設中柱22を立設配置し、且つ本線シールドトンネル11の接合側面部分11aと分岐合流シールドトンネルの接合側部12aとの摺り付け部分の周囲の地盤に地盤改良23を施す工程(図4、図5参照)
e) 本線シールドトンネル11の接合側面部分11aの未切削の切削セグメント14及び分岐合流シールドトンネル12の接合側部12aのトンネル外郭体16を撤去する工程(図6参照)、
f) 接合側面部分11aの切削セグメント14を撤去した後の本線シールドトンネル11のトンネル外郭体15の端面15aとの当接面24a、接合側部12aのトンネル外郭体16を撤去した後の分岐合流シールドトンネル12のトンネル外郭体16の端面16aとの当接面24b、及び横方向本設支持梁25の一端面25aとの当接面24cを備える接続ピース24を、切削セグメント14を撤去して露出した接合側面部分11aの上下の地山面26を覆って各々配置すると共に、横方向仮設支持梁21と置き代えるようにして、上下の接続ピース24の当接面24cと本線シールドトンネル11の接合側面部分11aとは反対側の内壁面19との間に横方向本設支持梁25を各々架設する工程(図7、図8参照)、
g) 本線仮設中柱18及び分岐合流線仮設中柱21を撤去する工程(図9参照)。
【0023】
本実施形態の分岐合流部施工方法によれば、上記a)の分岐合流部10における本線シールドトンネル11の接合側面部分11aのトンネル外郭体15を切削セグメント14を用いて形成する工程は、上述の構成の切削セグメントの緊結構造を、本線シールドトンネル11のトンネル軸方向に連設される各リング毎に、少なくとも一箇所づつ、例えば1.5m程度のピッチで設けることによって行われる。
【0024】
上記b)の分岐合流部10における本線シールドトンネル11の内部に本線仮設中柱17を立設配置すると共に、この本線仮設中柱17よりも切削セグメント14側に貧配合固化材18を充填固化する工程では、図3に示すように、本線シールドトンネル11のトンネル内周面に設けた上下の取付け基台31に両端部を各々接合して、例えばH形鋼等からなる本線仮設中柱17を立設させた状態で取り付ける。本実施形態では、本線仮設中柱17は、トンネルの断面方向において中心線を挟んだ両側に一対配置されると共に、本線シールドトンネル11の軸方向には、例えば1.5m程度のピッチで複数間隔をおいて配置されることになる。また、接合側面部分11a側の本線仮設中柱18の接合側面部分11a側の面に支持させて、固化材充填用形枠を取り付けた後に、当該固化材充填用形枠と接合側面部分11aの内側面とによって囲まれる空間に、例えば分岐合流シールド掘進機13によって切削可能な貧配合モルタルからなる貧配合固化材18を打設し、充填固化させる。
【0025】
本線シールドトンネル11の内部に立設配置された本線仮設中柱17は、本線シールドトンネル11に負荷される土圧や水圧による縦方向の荷重を効果的に支持して、本線シールドトンネル11の接合側面部分11aが切削されて断面欠損が生じた場合でも、本線シールドトンネル11のトンネル形状を強固かつ安定的に保持することになる。また、本線仮設中柱17よりも切削セグメント14側に充填固化された貧配合固化材18もまた、本線シールドトンネル11の接合側面部分11aが切削された際のトンネル形状を強固かつ安定的に保持する機能を発揮すると共に、分岐合流シールド掘進機13によって接合側面部分11aを切削した時に生じる隙間から、土砂や地下水が本線シールドトンネル11の内部に流入するのを効果的に阻止することになる。
【0026】
上記c)の切削セグメント14及び貧配合固化材18を切削しつつ分岐合流シールド掘進機13を掘進させて、分岐合流部10における本線シールドトンネル11の接合側面部分11aに分岐合流シールドトンネル12の接合側部12aを摺り付ける工程では、図1及び図3に示すように、分岐合流シールド掘進機13として、好ましくは略長円断面形状のシールドトンネルを、長軸の長さを調整可能に形成する機構を備えるシールド掘進機を用いることができる。このような機構を備える分岐合流シールド掘進機13としては、例えば特開2001−317292号公報に記載のシールド掘進機を使用することができる。
【0027】
特開2001−317292号公報に記載のシールド掘進機は、例えば、シールド本体の前部に、公転支持体をシールド軸心周りに回転自在に配設し、この公転支持体に、シールド軸心と平行で楕円シールド軸心から所定距離偏心したカッタ自転軸を回転自在に配設し、このカッタ自転軸の前部に設けられたカッタヘッドを、正面視で頂部がルーロの三角形の頂点位置に膨出する形状とし、トンネルの通常部と拡張部とを連続掘削可能としたものである。また、通常部の掘削時に、公転支持体を所定位置で固定し、カッタ自転軸を回転駆動して円形断面のトンネルを掘削するように構成し、拡張部の掘削時に、公転支持体とカッタ自転軸とを同一方向で回転速度比が3対1となるように回転駆動することにより楕円形断面或いは略長円形断面のシールドトンネルを掘削するように構成したものである。
【0028】
分岐合流シールド掘進機13として、略長円断面形状のシールドトンネルを、長軸の長さを調整可能に形成する機構を備えるシールド掘進機を用いることにより、本線シールドトンネル11内の幹線道路に擦り付けられる分岐合流シールドトンネル12内の道路の道路線形に沿った、効率の良い分岐合流シールド掘進機13による掘進作業を行うことが可能になる。また、本実施形態によれば、分岐合流シールドトンネル12の略長円形状の断面における、上下の直線部分から本線シールドトンネル11側の曲線部分へのコーナー部分が、本線シールドトンネル11の接合側面部分11aとの交差部分に配置されるような位置関係で、本線シールドトンネル11と重なるように分岐合流シールドトンネル12が形成されている。これによって、鋼製接続ピース24を介して横方向本設支持梁25を各々架設することにより、本線シールドトンネル11と分岐合流シールドトンネル12に亘って一体となったトンネルの本体覆工35(図9参照)を設ける際に、当該本体覆工35を効率良く、より安定した状態で形成することが可能になる。
【0029】
上記d)の分岐合流シールドトンネル12の接合側部12aのトンネル外郭体16を貫通して横方向仮設支持梁21を設置すると共に、分岐合流シールドトンネル12の内部に分岐合流線仮設中柱22を立設配置し、且つ本線シールドトンネル11と分岐合流シールドトンネル12との摺り付け部分の周囲の地盤に地盤改良23を施す工程では、図4及び図5に示すように、本線シールドトンネル11或いは分岐合流シールドトンネル12の内部からの作業により、分岐合流シールドトンネル12の接合側部12aにおけるトンネル外郭体16に、上下2段に、且つトンネルの軸方向に例えば1.5m程度のピッチで、支持梁貫通穴34を、複数間隔をおいて開口形成すると共に、当該支持梁貫通穴34に対応する部分の固化材充填用形枠及び貧配合固化材18を撤去する。
【0030】
しかる後に、例えばH形鋼等からなる横方向仮設支持梁21を、溶接等によって適宜継ぎ足しながら支持梁貫通穴34に挿通すると共に、本線シールドトンネル11の内壁面19と分岐合流シールドトンネル12の内壁面20に各々設けた取付け基台32に両端部を各々接合して、これらの内壁面19,20に亘って略水平に延設するように設置する。また、分岐合流シールドトンネル12のトンネル内周面に設けた上下の取付け基台33に上下の端部を各々接合して、例えばH形鋼等からなる分岐合流線仮設中柱22を、トンネルの軸方向に例えば1.5m程度のピッチで複数間隔をおいて立設状態で取り付ける。さらに、例えば公知の凍結止水工によって、本線シールドトンネル11と分岐合流シールドトンネル12との摺り付け部分の周囲の地盤に、接合側面部分11aの未切削の切削セグメント14を覆うようにして地盤改良23を施す。
【0031】
本線シールドトンネル11の内壁面19と分岐合流シールドトンネル12の内壁面20に亘って設置された横方向仮設支持梁21は、擦り付けられて一体となった本線シールドトンネル11及び分岐合流シールドトンネル12に負荷される土圧や水圧による横方向の荷重を効果的に支持して、本線シールドトンネル11の接合側面部分11aの未切削の切削セグメント14が撤去された際にも、トンネル形状を強固かつ安定的に保持することになる。また、分岐合流シールドトンネル12の内部に立設配置された分岐合流線仮設中柱22は、分岐合流シールドトンネル12に負荷される土圧や水圧による縦方向の荷重を効果的に支持して、分岐合流シールドトンネル12の接合側部12aが撤去されて断面欠損が生じた際にも、分岐合流シールドトンネル12のトンネル形状を強固かつ安定的に保持することになる。さらに、本線シールドトンネル11と分岐合流シールドトンネル12との摺り付け部分の周囲の地盤に施された地盤改良23は、未切削の切削セグメント14を撤去して本線シールドトンネル11の接合側面部分11aの地山が露出した際に、露出した地山が崩壊したり地下水が流入するのを効果的に防止することになる。
【0032】
上記e)の本線シールドトンネル11の接合側面部分11aの未切削の切削セグメント14及び分岐合流シールドトンネル12の接合側部12aのトンネル外郭体16を撤去する工程では、図6に示すように、本線シールドトンネル11或いは分岐合流シールドトンネル12の内部からの作業によって、容易に擦り付け部分の切削セグメント14やトンネル外郭体16を撤去することができる。すなわち、例えば固化材充填用形枠及び貧配合固化材18を取り除いた後に、接合側面部分11aの未切削の切削セグメント14をハツリ取ると共に、分岐合流シールドトンネル12の接合側部12aのトンネル外郭体16を解体する。このような作業中、トンネル11,12及びこれの周囲の地盤は、本線仮設中柱17、横方向仮設支持梁21、分岐合流線仮設中柱22、地盤改良23等によって強固かつ安定した状態で補強されているので、これらの撤去作業を安全に、且つスムーズに行うことが可能になる。
【0033】
上記f)の所定の当接面24a,24b,24cを備える例えば鋼製の接続ピース24を、露出した接合側面部分11aの上下の地山面26を覆って各々配置すると共に、横方向仮設支持梁21と置き代えるようにして、接続ピース24の当接面24cと本線シールドトンネル11の接合側面部分11aとは反対側の内壁面19との間に横方向本設支持梁25を各々架設する工程では、図7及び図8に示すように、切削セグメント14を撤去した後の本線シールドトンネル11のトンネル外郭体15の端面15aとの当接面24a、接合側部12aのトンネル外郭体16を撤去した後の分岐合流シールドトンネル12のトンネル外郭体16の端面16aとの当接面24b、及び横方向本設支持梁25の一端面25aとの当接面24cを備え、且つ円弧状の地山当接面24dを有する鋼製の接続ピース24を使用する。なお、接続ピース24は、トンネル軸方向に例えば1.5m程度の長さを備えるように形成されており、分岐合流シールド掘進機13の掘進方向上流側から、例えば1.5mの施工ピッチ毎に、切削セグメント14及び接合側部12aのトンネル外郭体16を撤去し、横方向仮設支持梁21と置き換えて横方向本設支持梁25を架設する作業を、順次行ってゆくことになる。
【0034】
横方向仮設支持梁21と置き代えて横方向本設支持梁25を架設する工程では、まず接続ピース24を、地山当接面24dを地山面26に密着させ、当接面24aを本線シールドトンネル11のトンネル外郭体15の端面15aに当接させ、当接面24bを分岐合流シールドトンネル12のトンネル外郭体16の端面16aに当接させた状態で、地山面26を覆って切削セグメント14が撤去された接合側面部分11aに取り付ける。これによって、当該接続ピース24を介して本線シールドトンネル11のトンネル外郭体15と分岐合流シールドトンネル12のトンネル外郭体16とが強固に接合一体化されることになり、横方向本設支持梁25や、必要に応じて本線仮設中柱17の一部を撤去することが可能になる。本実施形態では、トンネルの断面方向の一対の本線仮設中柱17のうち、分岐合流シールドトンネル12側の本線仮設中柱17を撤去する。
【0035】
接続ピース24を取り付けると共に、横方向本設支持梁25を撤去したら、接続ピース24の当接面24cと本線シールドトンネル11の内壁面19との間に横方向本設支持梁25を架設する。本実施形態では、横方向本設支持梁25は、鋼製ピース部25bとコンクリート部25cとからなり、鋼製ピース部25bの一端面25aを接続ピース24の当接面24cとの接合面として、鋼製ピース部25bが取り付けられる。また鋼製ピース部25bの他端面と、本線シールドトンネル11の内壁面19との間には、残置された本線仮設中柱17を部分的に巻き込むようにして現場打ちコンクリートを打設することにより、コンクリート部25cが形成される。横方向本設支持梁25の一部を現場打ちコンクリートによって形成することにより、横方向本設支持梁25の現場合わせが容易になる。
【0036】
このように、摺り付け部に接続ピース24を介材させて、本線シールドトンネル11のトンネル外郭体15と、分岐合流シールドトンネル12のトンネル外郭体16と、横方向本設支持梁25とを接合一体化させることにより、周囲の地盤からの土圧や水圧をパランス良く支持することが可能な、分岐合流部10における強固かつ安定した本体覆工35が形成されることになる。
【0037】
さらに、上記g)の本線仮設中柱18及び分岐合流線仮設中柱21を撤去する工程では、図9に示すように、本体覆工35によって周囲の地盤からの荷重を強固に支持したトンネル内部での作業によって、分岐合流線仮設中柱22や、コンクリート部25cに巻き込まれた部分を除いた本線仮設中柱17が撤去され、また必要に応じて止水凍結による地盤改良23を解凍して、分岐合流部10の主要部分の施工が完了する。なお、構築された本体覆工35の内部には、さらに舗装工事や内装覆工工事等が適宜施工されることになる。
【0038】
そして、本実施形態によれば、分岐合流シールド掘進機13によって本線シールドトンネル11の外郭体15を切削させるべく本線シールドトンネル11の接合側面部分11aに設置されるシールド掘進機13によって切削可能な切削セグメント14を、トンネルの周方向に緊結一体化するための緊結構造が、トンネルの周方向に連設される切削セグメント14に沿って周方向に貫通形成されると共に、切削セグメント14を挟んだ周方向の両側に配置される一般セグメント27に跨って連続形成され、一般セグメント27の内周面に両端が開口する鋼線挿通孔50と、この鋼線挿通孔50に挿通されるPC鋼線29と、PC鋼線29にプレストレスを負荷した状態で、鋼線挿通孔50が開口する一般セグメント27の内周面においてPC鋼線29の両端を定着する定着部材30とからなるので、本線シールドトンネル11の分岐合流シールドトンネル12との接合側面部分11aに設置される切削セグメント14を、PC鋼線29を介して十分な接合強度で周方向に接合一体化することができると共に、切削セグメント14を切削するのに先立って、分岐合流シールド掘進機13の掘進方向後方側のPC鋼線29から順次スムーズに撤去しながら分岐合流シールド掘進機13による掘進を行うことができる。
【0039】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、本線シールドトンネルの接合側面部分を切削する分岐合流シールド掘進機として、長軸の長さを調整可能な略長円断面形状のシールド掘進機を用いる必要は必ずしもない。また、本線シールドトンネルは、円形断面以外の、楕円断面等を備えるシールドトンネルであっても良く、分岐合流シールドトンネルもまた、略長円断面形状以外の、円形断面や楕円断面等の断面形状を備えるシールドトンネルとすることもできる。さらに、分岐合流部を形成する本線シールドトンネルや分岐合流シールドトンネルは、道路トンネル以外の、例えば地下鉄用のトンネルや、下水道用のトンネル等であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の好ましい一実施形態に係る切削セグメントの緊結構造及びシールドトンネルの接合部施工方法を用いて形成される分岐合流部を説明する平断面図である。
【図2】本発明の好ましい一実施形態に係るシールドトンネルの接合部施工方法の工程を説明する図1のA−Aに沿った断面図である。
【図3】本発明の好ましい一実施形態に係るシールドトンネルの接合部施工方法の工程を説明する図1のB−Bに沿った断面図である。
【図4】本発明の好ましい一実施形態に係るシールドトンネルの接合部施工方法の工程を説明する図1のB−Bに沿った断面図である。
【図5】本発明の好ましい一実施形態に係るシールドトンネルの接合部施工方法の工程を説明する図1のB−Bに沿った断面図である。
【図6】本発明の好ましい一実施形態に係るシールドトンネルの接合部施工方法の工程を説明する図1のB−Bに沿った断面図である。
【図7】本発明の好ましい一実施形態に係るシールドトンネルの接合部施工方法の工程を説明する図1のB−Bに沿った断面図である。
【図8】本発明の好ましい一実施形態に係るシールドトンネルの接合部施工方法の工程を説明する図1のB−Bに沿った断面図である。
【図9】本発明の好ましい一実施形態に係るシールドトンネルの接合部施工方法の工程を説明する図1のB−Bに沿った断面図である。
【図10】(a),(b)は、一般セグメントの内周面においてPC鋼線の両端を定着する定着部材を例示する部分断面図である。
【符号の説明】
【0041】
10 分岐合流部
11 本線シールドトンネル
11a 本線シールドトンネルの接合側面部分
12 分岐合流シールドトンネル
12a 分岐合流シールドトンネルのの接合側部
13 分岐合流シールド掘進機
14 切削セグメント
15 本線シールドトンネルのトンネル外郭体
15a シールドトンネルの先端部
16 分岐合流シールドトンネルのトンネル外郭体
17 本線仮設中柱
18 貧配合固化材
19 本線シールドトンネルの接合側面部分とは反対側の内壁面
20 分岐合流シールドトンネルの接合側部とは反対側の内壁面
21 横方向仮設支持梁
22 分岐合流線仮設中柱
23 地盤改良
24 接続ピース
24a 接続ピースの本線シールドトンネルのトンネル外郭体の端面との当接面
24b 接続ピースの分岐合流シールドトンネルのトンネル外郭体の端面との当接面
24c 接続ピースの横方向本設支持梁の一端面との当接面
25 横方向本設支持梁
25a 横方向本設支持梁の一端面
25b 横方向本設支持梁の鋼製ピース部
25c 横方向本設支持梁のコンクリート部
26 接合側面部分の地山面
27 鋼製セグメント(一般セグメント)
28 補強セグメント(一般セグメント)
29 PC鋼線
30 定着部材
30a 緊張側定着体
30b 固定側定着体
35 本体覆工
50 鋼線挿通孔
51 定着台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本線シールドトンネルと分岐合流シールドトンネルとを接合する際に、分岐合流シールド掘進機によって本線シールドトンネルの外郭体を切削させるべく本線シールドトンネルの接合側面部分に設置されるシールド掘進機によって切削可能な切削セグメントを、トンネルの周方向に緊結一体化するための切削セグメントの緊結構造であって、
トンネルの周方向に連設される前記切削セグメントに沿って周方向に貫通形成されると共に、該切削セグメントを挟んだ周方向の両側に配置される一般セグメントに跨って連続形成され、該一般セグメントの内周面に両端が開口する鋼線挿通孔と、該鋼線挿通孔に挿通されるPC鋼線と、該PC鋼線にプレストレスを負荷した状態で、前記鋼線挿通孔が開口する前記一般セグメントの内周面において前記PC鋼線の両端を定着する定着部材とからなる切削セグメントの緊結構造。
【請求項2】
請求項1に記載の切削セグメントの緊結構造を、前記本線シールドトンネルの軸方向に連設されるリング毎に、所定のピッチで少なくとも一箇所づつ設け、前記分岐合流シールド掘進機の掘進方向後方側の前記PC鋼線から順次撤去しながら、前記分岐合流シールド掘進機を掘進させて前記切削セグメントを切削する工程を含むシールドトンネルの接合部施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−77636(P2007−77636A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−265263(P2005−265263)
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【Fターム(参考)】