切削タップ及びその製造方法
切削タップ(20、40)は、軸方向前端(24、44)と軸方向後端(26、46)と中心長手方向軸(Z−Z)とを有する本体(22、42)を含む。本体は軸方向前端に溝付部(30、50)を有する。溝付部は、本体の軸方向前端から延びかつ最初の完全切削ねじ山(70)で終端する面取りされた溝付部(54)を含む。面取りされた溝付部は、本体の軸方向前端から第1の距離に配置された第1の切削ねじ山(62、66、68)と、本体の軸方向前端から第2の距離に配置された第2の切削ねじ山(62、66、68)とを含む。第2の距離は第1の距離よりも長い。面取りされた溝付部は、第2の切削ねじ山によって除去される材料部分の厚さが、第1の切削ねじ山によって除去される材料部分の厚さよりも小さくなるように成形される。切削タップを製造する方法も開示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、「切削タップ及び切削タップの製造方法(Cutting Tap and Method of Making Cutting Tap)」を表題とする2006年10月18日に出願された米国特許出願第11/582,805号に関連しており、その内容全体は参照として本出願に組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
本発明は、一般に、チッピングと破砕に対する切刃の抵抗性を高める切刃形状を有する切削タップ、特に切削タップに関する。
【0003】
ねじ山を必要とする機構及び機械構成要素は、技術に長い歴史がある。具体的には、部品をアセンブリに接合するために、締結部品としてのねじ山の使用が他の全ての手段に優っている。雌ねじ及び雄ねじの両方を形成するために多くの方法が存在するが、雌ねじを形成するためにタップが好ましい手段であることが経験的に示されてきた。現在、雌ねじを形成するための2つのタッピング法が存在する。主なタッピング法は、材料を孔の壁から切削して除去して、V字状の螺旋ねじ山を形成することによる。代わりに、材料を変位させて雌ねじを形成することができる。しかし、材料の切削によるタッピングが一般に好まれている。この理由は、この方法が小さなトルクで済み、より完全なねじ山形状を形成するからである。
【0004】
雌ねじの形状及びサイズの寸法精度により、ねじ山アセンブリの精度及び適合性が調節される。さらに、タッピング速度は、雌ねじを形成するためのコストに影響を及ぼす。
【0005】
切削タップを製造するために2つの材料が使用される。高速度鋼は、その高い強度のためタップ用に広く使用されている。しかし、焼結炭化タングステンは、より高い硬度及び高温における硬度を保持する能力を含む高温安定性などの特性のため、他の切削工具を製造するための材料として高速度鋼よりも好まれている。典型的に、超硬合金から製造された切削工具は、「高速度」鋼から製造された切削工具よりも少なくとも3倍速い切削速度で使用でき、切削工具の寿命が長くなる。
【0006】
次に図9〜図11を参照すると、直線状すくい面を有する従来技術の4溝切削タップの1つの溝が示されている。一般に、切削タップは、長さLを有するタップの面取り部の連続する切刃によって雌ねじ形状を形成する。タップの主体の最初の完全ねじ山と共に、最後のねじ山形状が得られるまで、材料が孔の壁から除去される。雌ねじのこの漸次の形成は、4つの溝の各々によって除去される材料部分を重ね合わせることで図9に示されている。
【0007】
図10に示したように、従来技術の切削タップは、大径の切刃から切削タップの中心に延びる半径方向基準線に対して切削角(又はすくい角)A1で傾斜される直線状すくい面を有する。図10では、切削角A1は、すくい面の表面に沿って通過する線と半径方向基準線との間の刃先角として定義される。半径方向基準線からの傾斜が、図10に見られるように反時計回り方向にある場合、切削角A1は正角である。半径方向基準線からの傾斜が、図10に見られるように時計回り方向にある場合、切削角A1は負角である。
【0008】
切削角A1の大きさは従来技術の切削タップの刃の強度に影響を及ぼす。この点に関し、切削角A1を小さくする(すなわち、切削角A1をより負角にする)ことによって、切刃の強度を高くすることができる。しかし、切削角A1の低減により切刃の強度が高くなる一方、切削角A1の低減と共に、ねじ山をタッピング(又は切削)するために必要な切削力の大きさが大きくなる。従来技術のタップが超硬合金から製造された場合、切刃は非常にチッピングしやすくなるがこの理由は、炭化物の強度が低いからである。具体的には、面取り後の最初の完全ねじ山にほぼ等しくまたそれを含む面取り部において、最もチッピングしやすい切刃は狭い刃である。面取り後の狭い完全ねじ山もチッピングしやすくなるが、この理由は、狭い完全ねじ山が小さな刃先角を有するからである。面取り部の入口部(entry part)におけるより広い刃は、はるかにチッピングしにくいが、この理由は、より広い刃が完全ねじ山の切刃ほど狭くないからである。
【0009】
直線状すくい面を有する切削タップの切削角A1と関連する障害の上記説明は、円弧状すくい面を有する切削タップについても存在することを理解されたい。この点に関して、円弧状すくい面を有する切削タップでは、コーダルフック角(chordal hook angle)が、直線状すくい面を有する切削タップのすくい角A1に一致する。コーダルフック角は、大径から切削タップの中心までの半径方向基準線と、末端切刃から切削タップの小径までの弦(chord)との間の角度として定義される。
【0010】
図11に示したように、従来の切削タップの切刃、特に面取り後の最初の完全ねじ山にほぼ等しくまたそれを含む面取り部の狭い切刃はチッピングしやすい(図11の第3の面取りされたねじ山によって図示)。面取り部の入口部におけるより広い切刃は、チッピングしにくい(第1及び第2の面取りされたねじ山によって図示)。従来技術のタップは、タップの軸に対し面取り角A2に単一の直線によって定義された面取り部を有する。面取り部は直線状であるので、各々の面取りされた切刃によって除去される材料部分の厚さT1は、一定のままである。
【0011】
タップ、特に切刃は幾何学的に脆弱であるので、それらはチッピングしやすい。超硬合金の強度は高速度鋼よりも低いので、超硬合金から製造されたタップは、高速度鋼から製造されたタップよりもチッピングしやすい。したがって、現在、高速度鋼のタップを使用できるいくつかの用途では、超硬合金から製造されたタップを使用することができない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
要約すると、本発明の一形態によれば、軸方向前端と軸方向後端と中心長手方向軸とを有する本体を備える切削タップであって、前記本体が前記軸方向前端に溝付部を有し、前記溝付部が、前記本体の前記軸方向前端から延びかつ最初の完全切削ねじ山で終端する面取りされた溝付部を含み、前記面取りされた溝付部が、前記本体の前記軸方向前端から第1の距離に配置された第1の切削ねじ山と、前記本体の前記軸方向前端から第2の距離に配置された第2の切削ねじ山とを備え、前記第2の距離が前記第1の距離よりも長く、前記面取りされた溝付部が、前記第2の切削ねじ山によって除去される材料部分の厚さが、前記第1の切削ねじ山によって除去される材料部分の厚さよりも小さくなるように成形される切削タップが提供される。
【0013】
本発明の他の形態によれば、軸方向前端と軸方向後端と中心長手方向軸とを有する本体を備える切削タップであって、前記本体が前記軸方向前端に溝付部を有し、前記溝付部が、前記本体の前記軸方向前端から延びかつ最初の完全切削ねじ山で終端する面取りされた溝付部を含み、前記面取りされた溝付部が、前記本体の前記軸方向前端から第1の距離に配置された第1の切削ねじ山と、前記本体の前記軸方向前端から第2の距離に配置された第2の切削ねじ山とを備え、前記第2の距離が前記第1の距離よりも長く、前記第2の切削ねじ山によって除去される材料部分の厚さが、前記第1の切削ねじ山によって除去される材料部分の厚さよりも小さくなるように、前記面取りされた溝付部の周囲面が非線形である切削タップが提供される。
【0014】
本発明のさらに他の形態によれば、軸方向前端と軸方向後端と中心長手方向軸とを有する本体を備える切削タップであって、前記本体が前記軸方向前端に溝付部を有し、前記溝付部が、前記本体の前記軸方向前端から延びかつ最初の完全切削ねじ山で終端する面取りされた溝付部を含み、前記面取りされた溝付部が、前記本体の前記軸方向前端から第1の距離に配置された第1の切削ねじ山と、前記本体の前記軸方向前端から第2の距離に配置された第2の切削ねじ山とを備え、前記第2の距離が前記第1の距離よりも長く、前記第1の切削ねじ山が前記中心長手方向軸に対し第1の面取り角を形成し、前記第2の切削ねじ山が前記中心長手方向軸に対し第2の面取り角を形成し、前記第2の面取り角が前記第1の面取り角よりも小さい切削タップが提供される。
【0015】
本発明のなおさらに他の形態によれば、切削タップを製造する方法は、
ブランクを研削して、ねじ付き本体部を前記切削タップの軸方向前端に形成するステップと、
前記ねじ付き本体部に1つ以上の溝を研削して、切刃を形成するステップと、
前記ねじ付き本体部を研削して、第1の切削ねじ山と第2の切削ねじ山とを形成するステップであって、前記第1の切削ねじ山が、前記切削タップの前記軸方向前端から第1の距離にあり、前記第2の切削ねじ山が、前記切削タップの前記軸方向前端から第2の距離にあるステップと、
前記第2の切削ねじ山によって除去される材料部分の厚さが、タッピング動作中に前記第1の切削ねじ山によって除去される材料部分の厚さよりも小さくなるように、前記ねじ付き本体部の面取り部を研削するステップとを含む。
【0016】
本発明のこれらの及び他の特徴、形態、及び利点は、添付図面を参照して次の詳細な説明を読めば、より良く理解されるであろう。添付図面において、同様の番号は図面の全体にわたって同様の部分を表す。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の螺旋状溝切削タップの例示的実施形態の等角図である。
【図2】本発明の直線状溝切削タップの例示的実施形態の側面図である。
【図3】面取りされた溝付部、及び面取りされた溝付部と切削タップの一定の直径部(又は仕上げ部)との間の接合部を含む図2の切削タップの軸方向前部の形状を示した側面図である。
【図4】面取りされた溝付部の切削歯の外周が半径Rで形成される例示的実施形態を示した図3の側面図の左側(図3で見て)の拡大図である。
【図5】面取りされた溝付部が異なる面取り角を有する少なくとも2つの部分で形成される代わりの例示的実施形態を示した図3の側面図の左側(図3で見て)の拡大図である。
【図6】図4と図5の線6−6に沿った上部溝の断面図である。
【図7】図4と図5の線7−7に沿った上部溝の断面図である。
【図8】図4と図5の線8−8に沿った上部溝の断面図である。
【図9】直線状すくい面を有する従来技術の切削タップの1つの溝の断面図である。
【図10】図9の線10−10に沿った上部溝の断面図である。
【図11】図9の側面図の左側(図9で見て)の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に図1を参照すると、本発明の実施形態による螺旋状溝を有する切削タップ20が示されている。切削タップ20は、軸方向前端24と軸方向後端26とを有する細長い本体22を有する。切削タップ20は、軸方向後端26に隣接する円筒状シャンク部(ブラケット28)と、軸方向前端24に隣接する螺旋状溝付部(ブラケット30)とを有する。
【0019】
切削タップ20は、その円筒状シャンク部28で工作機械等に動作可能に接続される。螺旋状溝付部30は、軸方向前端24を起点としてそこから後部軸方向に延びる面取り領域を有する。面取り領域は、後部軸方向に延びて接合部で終端する一定の直径領域(又は仕上げ領域)と円筒状シャンク部28とを接合する。
【0020】
特定のタッピング用途について、右ねじれを有する螺旋状溝タップは、切屑を孔(右ねじ山)から引き出し、盲孔に有効である。左螺旋状溝タップは切屑をタップ(右ねじ山)の前方に導き、貫通孔に有効である。
【0021】
図2を参照すると、本発明の実施形態による直線状溝切削タップ40が示されている。直線状溝切削タップ40は、軸方向前端44と軸方向後端46とを有する細長い本体42を有する。直線状溝切削タップ40は、軸方向後端46に隣接する円筒状シャンク部(ブラケット52)と、軸方向前端44に隣接する直線状溝付部(ブラケット50)とを有する。特定の用途について、直線状溝を有するタップは、短い切屑を生じさせる鋳鉄のような材料に有効である。
【0022】
図3を参照すると、直線状溝切削タップ40の直線状溝付部50の軸方向前部が示されている。軸方向前端44を起点としてそこから後部軸方向に延びる面取りされた溝付部(ブラケット54)が存在する。面取りされた溝付部54は、図3の寸法「X」で示した予め選択された距離にわたって延びる。面取りされた溝付部54は、一定の直径の溝付部(又は仕上げ溝付部)(ブラケット56)を有する接合部で終端する。一定の直径の溝付部56は、面取りされた溝付部54との接合部を起点として、円筒状シャンク部52との接合部で終端するまで後部軸方向に延びる。
【0023】
面取りされた溝付部54は一連のV字状の切削ねじ山を有し、ここで、各々の切削ねじ山は切刃を有する。末端切削ねじ山58は、切刃59を有し、軸方向最前部の切削ねじ山である。末端切削ねじ山58は、切刃63を有する切削ねじ山62に隣接する。切削ねじ山62は、切刃67を有する切削ねじ山66に隣接する。切削ねじ山66は、切刃69を有する切削ねじ山68に隣接する。一定の直径の溝付部(又は仕上げ溝付部)56は、切削ねじ山66を起点としてそこから円筒状シャンク部52との接合部まで後部軸方向に延びることが理解されるであろう。
【0024】
末端切削ねじ山58の面取りされた切刃59は、切削ねじ山の最も強固な部分であるが、この理由は、面取りされた切刃59が、他の切削ねじ山の切刃(例えば、それぞれ切削ねじ山62と66の切刃63と67)よりも広く、それらほど狭くないからである。
【0025】
面取りされた溝付部54の各々の切刃によって除去される材料の部分(厚さ×幅)の厚さを小さくすることにより、最初の完全ねじ山70にほぼ等しいより脆弱な切刃に加えられる力を小さくすることができる。このことを達成するための1つの共通の方法は、面取りされた溝付部54の寸法「X」を長くすることである。しかし、特に孔の底部の遊びが限定され、したがって面取りされた溝付部54の寸法「X」を大きくすることができない盲孔をタッピングする場合に、多くの用途がある。タップが移動しなければならない距離を最小限に維持するために、貫通孔用のタップでも面取りされた溝付部54の寸法「X」を小さくすることが望ましい。
【0026】
本発明の原理に従って、切削タップ40は、最初の完全切削ねじ山66にほぼ等しくまたそれを含む面取りされた溝付部54の比較的狭い切刃に加えられる力を小さくすることによって、より大きな崩れ耐性を有する。一般に、本発明の原理は、最初の完全切削ねじ山66にほぼ等しい切刃によって除去される材料部分の厚さが、面取りされた溝付部54の軸方向最前部の切削ねじ山の比較的広い切刃によって除去される材料部分の厚さよりも小さくなるように、面取りされた溝付部54を成形することによって達成される。簡潔さのため、切削タップ40のみについて以下に説明するが、本発明の原理を切削タップ20にも適用できることが理解されるであろう。
【0027】
上述の本発明の原理は、異なる多くの実施形態によって達成することができる。次に図4を参照すると、本発明の原理を達成する本発明の一実施形態は、切削タップ40の面取りされた溝付部54の周囲面を非線形の曲線に形成することである。例えば、面取りされた溝付部54の周囲面は半径Rを有してもよい。曲線の形状は、最初の完全切削ねじ山66にほぼ等しい切刃67によって除去される材料部分の厚さT2が、軸方向最前部の切削ねじ山58、62のより広い切刃59、63によって除去される材料部分の厚さT3よりも小さくなるようになっている。したがって、最初の完全切削ねじ山66にほぼ等しい切刃に対する力は、小さくされ、チッピングの可能性が低減される。本発明の原理を達成するために、曲線の半径Rは曲線に沿って変更してもよい。
【0028】
図5は、同様に本発明の原理を達成する代替実施形態を示している。この実施形態では、面取りされた溝付部54は、直線(破線)によって切削タップ40の中心長手方向軸線Z−Zに対し異なる面取り角に形成された2つ以上の部分によって形成される(すなわち、面取り角は直線的である)。具体的に、最初の完全切削ねじ山66にほぼ等しい面取りされた溝付部54の最後の部分の面取り角は、面取りされた溝付部54の1つ以上の軸方向前部の1つ又は複数の面取り角よりも小さい。図5に示したように、例えば、面取りされた溝付部54は、長さL2とL3を有する2つの部分から構成され、これらの部分では、長さL2を有する最後の部分は、長さL3を有する軸方向のより前部の面取り角A4よりも小さい面取り角A3によって形成される。この構造によって、最初の完全切削ねじ山66にほぼ等しい切刃によって除去される材料部分は、面取りされた溝付部54の入口部のより広い切刃によって除去される材料部分の厚さよりも小さい。したがって、最初の完全切削ねじ山66にほぼ等しい切刃に対する力が小さくされ、これによって、チッピングの可能性が低減される。最初の完全切削ねじ山66にほぼ等しい面取りされた溝付部54の最後の部分が、軸方向のより前部の面取り角よりも小さい面取り角を有する限り、本発明が、異なる面取り角で形成された面取りされた溝付部54の部分の数によって限定されないこと、また本発明が、異なる長さ及び面取り角の2つ以上の部分で実施できることが認識されるであろう。
【0029】
図6は、面取り部54の軸方向前部の切刃58用のすくい面を示している。この場合、すくい面72は、直線状であり、正の切削角A1を提供するように配向される。切削角A1は、半径方向基準線G−G(すなわち、末端切刃59と切削タップの中心74とを通過する線)と、すくい面72に沿って位置する線H−Hとの間の刃先角である。線G−Gに対する線H−Hの傾斜方向は図6で見て反時計回り方向にあるので、切削角A1は正角である。切刃は、面取り部54の軸方向前部においてより強固であるので、正の切削角を利用でき、これにより、より容易な切削動作が可能になる。
【0030】
図7は、切削ねじ山58よりも軸方向により後部の位置に配置される切削ねじ山62のすくい面を示している。図7では、すくい面76は、移行半径R1によって定義されるような凸状の形状を示している。移行半径R1の長さは、切削タップの直径の約5%〜約100%の間で変化できる。切削角は、半径基準線と末端切刃63、すなわち凸状すくい面76の軸方向前方終端のすくい面の接線(I−I)との間の刃先角である。この場合、切削角はゼロ度であり、したがって、線I−Iのみが基準となるが、この理由は、線I−Iが半径方向基準線と同延であるからである。同様に、凸状すくい面76は軸方向後方終端78を有する。線J−Jは、凸状すくい面76の軸方向後方終端76の接線である。角度A1は線I−Iと線J−Jとの間の刃先角であり、図6に示したような切削角A1に等しい。
【0031】
面取り部の一定の直径部又は仕上げ部では、また例えば図8に示したねじ山70のような面取り部を通過したねじ山では、面取り部又は完全ねじ山の刃はより脆弱であり、チッピングしやすい。ねじ山70は軸方向のより後部のねじ山よりも脆弱であるので、切削角A2が小さくされる。ねじ山70を参照すると、半径方向基準線(M−M)と末端切刃71のすくい面の接線(K−K)との間の刃先角である切削角A2を定義する凸状すくい面80が存在する。線M−Mに対する線K−Kの傾斜は、図8で見て時計回り方向にあるので、切削角A2は負角である。切削タップのタッピング動作全体を最適化するために、負の切削角により、より脆弱なねじ山70が補償されることが理解される。同様に、凸状すくい面80は軸方向後方終端82を有する。線L−Lは、凸状すくい面80の軸方向後方終端82の接線である。角度A1は線L−Lと線M−Mとの間の刃先角であり、図6に示したような切削角A1に等しい。
【0032】
末端切刃に対して移行半径R1の中心点を移動させることにより、面取りされた溝付部54の軸方向前部における正の切削角A1から負の切削角A2への滑らかな移行が可能になる。末端切刃に対する一定の半径(R1)の中心点の半径方向内側への漸次移動によって定義されるすくい面の形状により、正の切削角A1と負の切削角A2との間にある切削角が得られる。したがって、必要な場合に面取り部の前部入口部の有効な切削角を可能にするように、及び面取り部のその後の仕上げ部及び面取り部のねじ山の軸方向後部のチッピング耐性の切刃を可能にするように、本発明による切削タップのすくい面の形状が最適化される。切削タップ40の切削動作について、切削タップ40は、タップの面取り部の連続する切刃によって雌ねじ形状を形成する。一定の直径の溝付部56の最初の完全ねじ山と共に、最後のねじ山形状が得られるまで、材料が孔の壁から除去される。雌ねじのこの漸次の形成は、4つの溝の各々によって除去される材料部分を重ね合わせることで図6に示されている。
【0033】
切削角の範囲について、角度A1が約5度の負角〜約15度の正角の範囲内にあり、角度A2が約0度〜約25度の負角の範囲内にある場合、超硬合金から製造された切削タップ40を有効に使用できる。半径R1のサイズにより、ねじ山高さの約0%〜約80%の幅の範囲にあるA1とA2との間の弦を形成することによって、切削角A1から切削角A2への移行が調節される。図8には、長さPの例示的な弦Nが示されている。
【0034】
溝の半径が、角度A1によって定義された線の接線である限り、切削タップ40のすくい面をもたらす切削タップ溝のバランスは、現在の実施に使用される任意の形状をとることができることを理解されたい。
【0035】
他の選択肢は、面取り部とそれを通過したタップ本体の両方とに沿って、タップの形状が一定のままであるように、タップを形成することである。この場合、切刃のすくい面角度は全長に沿ってA2である。切屑が切刃を起点として生じ、すくい面を横切って流れるとき、最初に、切屑は、半径R1を介してより大きな切削角A1に移行する小さな切削角A2だけ反対側に向けられる。
【0036】
切削タップの製造について、切削タップは、基体としばしば呼ばれる高速度鋼又は焼結炭化タングステンからなる円筒状ブランクから製造される。ブランクは、切削タップの仕上げ寸法よりも大きく寸法決めされる直径を有し、ある長さに切断される。
【0037】
基体を加工する際の第1のステップは、中心に対する円筒トラバース研削のような方法によって、又は中心なし送り込み研削方法によって、高精度の円筒形公差にブランクを研削することである。このステップ中、円筒状シャンクは、タップの軸方向後端で寸法決めするように研削され、ねじ付き本体部の大径がタップの軸方向前端に形成される。さらに、この工程中に又は追加の工程の結果として、円筒面、及び円筒状シャンクとネック部との間の斜面によって、任意選択のネック部を形成してもよい。その上、円筒研削によってタップの端部で任意選択の斜面を研削してもよい。一般に、シャンク径はねじ山の径にほぼ等しいが、シャンク径は、大径のタップのねじ山の径よりも小さくてもよく、あるいは小径のタップのねじ山の径よりも大きくてもよい。選択肢(An option)は、図2に示したように、タップの軸方向最後端のシャンクの一部を正方形に研削することであり得る。
【0038】
次のステップでは、切刃を設けるように面取り部と組み合わせて1つ以上の溝が研削される。溝は、右ねじ山又は左ねじ山と任意に組み合わせて、直線状であるかあるいは右螺旋状又は左螺旋状でもよい。図10に示したように、切削角A1は、非常に硬質の材料に使用するための約20度の負角から非常に延性の材料用の約20度の正角にあってもよい。
【0039】
代わりに、溝は、図6〜図8に示したように、面取り部の長さに沿ってすくい面角度を変えて形成してもよい。研削砥石の形状は、選択された切削角A1とA2とを有するすくい面を設けるように形成され、A1とA2は半径R1の接線であり、ここで、A1はA2よりも正角である。A1が、溝のバランスをもたらす半径の接線である限り、現在の技術に従って溝のバランスを形成してもよい。1つ又は2つのステップで、完全な形状を研削してもよい。例えば、2つのステップにおいて、最初に、現在の技術に従って溝を研削し、次に、後続の作業で本発明のすくい面を研削することによって溝を研削してもよい。代わりに、1回の作業で完全な形状を形成するように砥石を形成してもよい。
【0040】
次のステップでは、小径及び大径と共に、V字状のねじ山側面を螺旋上に形成するように、ねじ付き本体部が研削される。引き続き、研削によって、ねじ付きすくい面取り部の形状が形成される。V字状のねじ山側面及び大径により、タッピング中に形成される雌ねじが複製される。
【0041】
孔の入口のタッピングを可能にするように、切削面取り部が先細りで研削される。面取り部は、図4に示したような曲線で面取り部を形成するように研削してもよいか、あるいは図5に示したように、最初の完全切削ねじ山にほぼ等しい最後の部分の面取り角が第1の部分の面取り角よりも小さくなるように、タップの軸線に対し角度のある直線によって形成された2つ以上の部分を有する面取り部を形成することによって研削してもよい。いずれかの方法によって、最初の完全切削ねじ山にほぼ等しい切刃によって除去される材料部分は、面取り部の入口部で除去される材料部分の厚さよりも小さい。
【0042】
面取り部の長さは、非常に硬質の材料をタッピングする場合に盲孔を十五(15)程度の長さのねじ山ピッチにタッピングするための一つ(1)のねじ山ピッチ程度に小さくてもよい。異なる角度を各々が有する面取り部分の数(図5)は、面取り部の全長に関係し、面取り部の全長が増大するにつれて増加する。
【0043】
面取り部の研削後、有効な切刃角は、面取り部の最初の入口部を有するA1であり、面取り部のその後の仕上げ部の切削角A2に徐々に進行する。この組み合わせにより、最初の完全切削ねじ山にほぼ等しい切刃に対する力を小さくすることのみならず、すくい面角度を小さくすることにより同一の刃の強さを増大することによっても、チッピングの可能性が低減される。
【0044】
研削後、切刃及び他の鋭い角部に小さな半径を形成するように、研磨媒体又は研磨ブラシでタップを研磨してもよい。結果として得られる半径は、約0ミクロン〜約100ミクロンの間であり得る。この研磨により、上記刃の強度がさらに向上する。
【0045】
この工程の最後のステップでは、金属窒化物、金属炭化物、金属炭窒化物、金属ホウ化物及び/又は金属酸化物からなる耐磨耗性層(図示せず)でタップを選択的にコーティングしてもよく、この場合、金属は、以下のもの、すなわち、アルミニウム、シリコン、及び周期表のIVa族、Va族及びVIa族の遷移金属の1つ以上から選択される。上記の層は、単層として、又は交互層を含む複数の層で蒸着される。上記の耐摩耗性層の頂部に、低摩擦層を蒸着することもできる。
【0046】
理解できるように、本発明は、チッピングしにくい超硬合金切削タップの使用を可能にする切削タップを提供する。超硬合金切削タップを使用することにより、「高速度」鋼から製造されたタップと比較していくつかの利点が得られる。例えば、超硬合金切削タップにより、高速度鋼切削タップと比較してねじ山のサイズ及び形状に関する寸法精度が高められる。さらに、超硬合金切削タップにより、高速度鋼切削タップと比較して切削タップの有効工具寿命が延びる。その上、超硬合金切削タップにより、高速度鋼切削タップと比較して雌ねじの生産速度が上昇する。
【0047】
本明細書に引用した文献、特許及び特許出願は、参考として本出願に組み込まれている。
【0048】
本発明のある特定の実施形態に関連して、本発明について特に説明してきたが、本発明が、例示によるものでありかつ限定的でないことを理解すべきであり、また添付の特許請求の範囲は、従来技術が許容するのと同様に広く解釈されるべきである。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、「切削タップ及び切削タップの製造方法(Cutting Tap and Method of Making Cutting Tap)」を表題とする2006年10月18日に出願された米国特許出願第11/582,805号に関連しており、その内容全体は参照として本出願に組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
本発明は、一般に、チッピングと破砕に対する切刃の抵抗性を高める切刃形状を有する切削タップ、特に切削タップに関する。
【0003】
ねじ山を必要とする機構及び機械構成要素は、技術に長い歴史がある。具体的には、部品をアセンブリに接合するために、締結部品としてのねじ山の使用が他の全ての手段に優っている。雌ねじ及び雄ねじの両方を形成するために多くの方法が存在するが、雌ねじを形成するためにタップが好ましい手段であることが経験的に示されてきた。現在、雌ねじを形成するための2つのタッピング法が存在する。主なタッピング法は、材料を孔の壁から切削して除去して、V字状の螺旋ねじ山を形成することによる。代わりに、材料を変位させて雌ねじを形成することができる。しかし、材料の切削によるタッピングが一般に好まれている。この理由は、この方法が小さなトルクで済み、より完全なねじ山形状を形成するからである。
【0004】
雌ねじの形状及びサイズの寸法精度により、ねじ山アセンブリの精度及び適合性が調節される。さらに、タッピング速度は、雌ねじを形成するためのコストに影響を及ぼす。
【0005】
切削タップを製造するために2つの材料が使用される。高速度鋼は、その高い強度のためタップ用に広く使用されている。しかし、焼結炭化タングステンは、より高い硬度及び高温における硬度を保持する能力を含む高温安定性などの特性のため、他の切削工具を製造するための材料として高速度鋼よりも好まれている。典型的に、超硬合金から製造された切削工具は、「高速度」鋼から製造された切削工具よりも少なくとも3倍速い切削速度で使用でき、切削工具の寿命が長くなる。
【0006】
次に図9〜図11を参照すると、直線状すくい面を有する従来技術の4溝切削タップの1つの溝が示されている。一般に、切削タップは、長さLを有するタップの面取り部の連続する切刃によって雌ねじ形状を形成する。タップの主体の最初の完全ねじ山と共に、最後のねじ山形状が得られるまで、材料が孔の壁から除去される。雌ねじのこの漸次の形成は、4つの溝の各々によって除去される材料部分を重ね合わせることで図9に示されている。
【0007】
図10に示したように、従来技術の切削タップは、大径の切刃から切削タップの中心に延びる半径方向基準線に対して切削角(又はすくい角)A1で傾斜される直線状すくい面を有する。図10では、切削角A1は、すくい面の表面に沿って通過する線と半径方向基準線との間の刃先角として定義される。半径方向基準線からの傾斜が、図10に見られるように反時計回り方向にある場合、切削角A1は正角である。半径方向基準線からの傾斜が、図10に見られるように時計回り方向にある場合、切削角A1は負角である。
【0008】
切削角A1の大きさは従来技術の切削タップの刃の強度に影響を及ぼす。この点に関し、切削角A1を小さくする(すなわち、切削角A1をより負角にする)ことによって、切刃の強度を高くすることができる。しかし、切削角A1の低減により切刃の強度が高くなる一方、切削角A1の低減と共に、ねじ山をタッピング(又は切削)するために必要な切削力の大きさが大きくなる。従来技術のタップが超硬合金から製造された場合、切刃は非常にチッピングしやすくなるがこの理由は、炭化物の強度が低いからである。具体的には、面取り後の最初の完全ねじ山にほぼ等しくまたそれを含む面取り部において、最もチッピングしやすい切刃は狭い刃である。面取り後の狭い完全ねじ山もチッピングしやすくなるが、この理由は、狭い完全ねじ山が小さな刃先角を有するからである。面取り部の入口部(entry part)におけるより広い刃は、はるかにチッピングしにくいが、この理由は、より広い刃が完全ねじ山の切刃ほど狭くないからである。
【0009】
直線状すくい面を有する切削タップの切削角A1と関連する障害の上記説明は、円弧状すくい面を有する切削タップについても存在することを理解されたい。この点に関して、円弧状すくい面を有する切削タップでは、コーダルフック角(chordal hook angle)が、直線状すくい面を有する切削タップのすくい角A1に一致する。コーダルフック角は、大径から切削タップの中心までの半径方向基準線と、末端切刃から切削タップの小径までの弦(chord)との間の角度として定義される。
【0010】
図11に示したように、従来の切削タップの切刃、特に面取り後の最初の完全ねじ山にほぼ等しくまたそれを含む面取り部の狭い切刃はチッピングしやすい(図11の第3の面取りされたねじ山によって図示)。面取り部の入口部におけるより広い切刃は、チッピングしにくい(第1及び第2の面取りされたねじ山によって図示)。従来技術のタップは、タップの軸に対し面取り角A2に単一の直線によって定義された面取り部を有する。面取り部は直線状であるので、各々の面取りされた切刃によって除去される材料部分の厚さT1は、一定のままである。
【0011】
タップ、特に切刃は幾何学的に脆弱であるので、それらはチッピングしやすい。超硬合金の強度は高速度鋼よりも低いので、超硬合金から製造されたタップは、高速度鋼から製造されたタップよりもチッピングしやすい。したがって、現在、高速度鋼のタップを使用できるいくつかの用途では、超硬合金から製造されたタップを使用することができない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
要約すると、本発明の一形態によれば、軸方向前端と軸方向後端と中心長手方向軸とを有する本体を備える切削タップであって、前記本体が前記軸方向前端に溝付部を有し、前記溝付部が、前記本体の前記軸方向前端から延びかつ最初の完全切削ねじ山で終端する面取りされた溝付部を含み、前記面取りされた溝付部が、前記本体の前記軸方向前端から第1の距離に配置された第1の切削ねじ山と、前記本体の前記軸方向前端から第2の距離に配置された第2の切削ねじ山とを備え、前記第2の距離が前記第1の距離よりも長く、前記面取りされた溝付部が、前記第2の切削ねじ山によって除去される材料部分の厚さが、前記第1の切削ねじ山によって除去される材料部分の厚さよりも小さくなるように成形される切削タップが提供される。
【0013】
本発明の他の形態によれば、軸方向前端と軸方向後端と中心長手方向軸とを有する本体を備える切削タップであって、前記本体が前記軸方向前端に溝付部を有し、前記溝付部が、前記本体の前記軸方向前端から延びかつ最初の完全切削ねじ山で終端する面取りされた溝付部を含み、前記面取りされた溝付部が、前記本体の前記軸方向前端から第1の距離に配置された第1の切削ねじ山と、前記本体の前記軸方向前端から第2の距離に配置された第2の切削ねじ山とを備え、前記第2の距離が前記第1の距離よりも長く、前記第2の切削ねじ山によって除去される材料部分の厚さが、前記第1の切削ねじ山によって除去される材料部分の厚さよりも小さくなるように、前記面取りされた溝付部の周囲面が非線形である切削タップが提供される。
【0014】
本発明のさらに他の形態によれば、軸方向前端と軸方向後端と中心長手方向軸とを有する本体を備える切削タップであって、前記本体が前記軸方向前端に溝付部を有し、前記溝付部が、前記本体の前記軸方向前端から延びかつ最初の完全切削ねじ山で終端する面取りされた溝付部を含み、前記面取りされた溝付部が、前記本体の前記軸方向前端から第1の距離に配置された第1の切削ねじ山と、前記本体の前記軸方向前端から第2の距離に配置された第2の切削ねじ山とを備え、前記第2の距離が前記第1の距離よりも長く、前記第1の切削ねじ山が前記中心長手方向軸に対し第1の面取り角を形成し、前記第2の切削ねじ山が前記中心長手方向軸に対し第2の面取り角を形成し、前記第2の面取り角が前記第1の面取り角よりも小さい切削タップが提供される。
【0015】
本発明のなおさらに他の形態によれば、切削タップを製造する方法は、
ブランクを研削して、ねじ付き本体部を前記切削タップの軸方向前端に形成するステップと、
前記ねじ付き本体部に1つ以上の溝を研削して、切刃を形成するステップと、
前記ねじ付き本体部を研削して、第1の切削ねじ山と第2の切削ねじ山とを形成するステップであって、前記第1の切削ねじ山が、前記切削タップの前記軸方向前端から第1の距離にあり、前記第2の切削ねじ山が、前記切削タップの前記軸方向前端から第2の距離にあるステップと、
前記第2の切削ねじ山によって除去される材料部分の厚さが、タッピング動作中に前記第1の切削ねじ山によって除去される材料部分の厚さよりも小さくなるように、前記ねじ付き本体部の面取り部を研削するステップとを含む。
【0016】
本発明のこれらの及び他の特徴、形態、及び利点は、添付図面を参照して次の詳細な説明を読めば、より良く理解されるであろう。添付図面において、同様の番号は図面の全体にわたって同様の部分を表す。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の螺旋状溝切削タップの例示的実施形態の等角図である。
【図2】本発明の直線状溝切削タップの例示的実施形態の側面図である。
【図3】面取りされた溝付部、及び面取りされた溝付部と切削タップの一定の直径部(又は仕上げ部)との間の接合部を含む図2の切削タップの軸方向前部の形状を示した側面図である。
【図4】面取りされた溝付部の切削歯の外周が半径Rで形成される例示的実施形態を示した図3の側面図の左側(図3で見て)の拡大図である。
【図5】面取りされた溝付部が異なる面取り角を有する少なくとも2つの部分で形成される代わりの例示的実施形態を示した図3の側面図の左側(図3で見て)の拡大図である。
【図6】図4と図5の線6−6に沿った上部溝の断面図である。
【図7】図4と図5の線7−7に沿った上部溝の断面図である。
【図8】図4と図5の線8−8に沿った上部溝の断面図である。
【図9】直線状すくい面を有する従来技術の切削タップの1つの溝の断面図である。
【図10】図9の線10−10に沿った上部溝の断面図である。
【図11】図9の側面図の左側(図9で見て)の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に図1を参照すると、本発明の実施形態による螺旋状溝を有する切削タップ20が示されている。切削タップ20は、軸方向前端24と軸方向後端26とを有する細長い本体22を有する。切削タップ20は、軸方向後端26に隣接する円筒状シャンク部(ブラケット28)と、軸方向前端24に隣接する螺旋状溝付部(ブラケット30)とを有する。
【0019】
切削タップ20は、その円筒状シャンク部28で工作機械等に動作可能に接続される。螺旋状溝付部30は、軸方向前端24を起点としてそこから後部軸方向に延びる面取り領域を有する。面取り領域は、後部軸方向に延びて接合部で終端する一定の直径領域(又は仕上げ領域)と円筒状シャンク部28とを接合する。
【0020】
特定のタッピング用途について、右ねじれを有する螺旋状溝タップは、切屑を孔(右ねじ山)から引き出し、盲孔に有効である。左螺旋状溝タップは切屑をタップ(右ねじ山)の前方に導き、貫通孔に有効である。
【0021】
図2を参照すると、本発明の実施形態による直線状溝切削タップ40が示されている。直線状溝切削タップ40は、軸方向前端44と軸方向後端46とを有する細長い本体42を有する。直線状溝切削タップ40は、軸方向後端46に隣接する円筒状シャンク部(ブラケット52)と、軸方向前端44に隣接する直線状溝付部(ブラケット50)とを有する。特定の用途について、直線状溝を有するタップは、短い切屑を生じさせる鋳鉄のような材料に有効である。
【0022】
図3を参照すると、直線状溝切削タップ40の直線状溝付部50の軸方向前部が示されている。軸方向前端44を起点としてそこから後部軸方向に延びる面取りされた溝付部(ブラケット54)が存在する。面取りされた溝付部54は、図3の寸法「X」で示した予め選択された距離にわたって延びる。面取りされた溝付部54は、一定の直径の溝付部(又は仕上げ溝付部)(ブラケット56)を有する接合部で終端する。一定の直径の溝付部56は、面取りされた溝付部54との接合部を起点として、円筒状シャンク部52との接合部で終端するまで後部軸方向に延びる。
【0023】
面取りされた溝付部54は一連のV字状の切削ねじ山を有し、ここで、各々の切削ねじ山は切刃を有する。末端切削ねじ山58は、切刃59を有し、軸方向最前部の切削ねじ山である。末端切削ねじ山58は、切刃63を有する切削ねじ山62に隣接する。切削ねじ山62は、切刃67を有する切削ねじ山66に隣接する。切削ねじ山66は、切刃69を有する切削ねじ山68に隣接する。一定の直径の溝付部(又は仕上げ溝付部)56は、切削ねじ山66を起点としてそこから円筒状シャンク部52との接合部まで後部軸方向に延びることが理解されるであろう。
【0024】
末端切削ねじ山58の面取りされた切刃59は、切削ねじ山の最も強固な部分であるが、この理由は、面取りされた切刃59が、他の切削ねじ山の切刃(例えば、それぞれ切削ねじ山62と66の切刃63と67)よりも広く、それらほど狭くないからである。
【0025】
面取りされた溝付部54の各々の切刃によって除去される材料の部分(厚さ×幅)の厚さを小さくすることにより、最初の完全ねじ山70にほぼ等しいより脆弱な切刃に加えられる力を小さくすることができる。このことを達成するための1つの共通の方法は、面取りされた溝付部54の寸法「X」を長くすることである。しかし、特に孔の底部の遊びが限定され、したがって面取りされた溝付部54の寸法「X」を大きくすることができない盲孔をタッピングする場合に、多くの用途がある。タップが移動しなければならない距離を最小限に維持するために、貫通孔用のタップでも面取りされた溝付部54の寸法「X」を小さくすることが望ましい。
【0026】
本発明の原理に従って、切削タップ40は、最初の完全切削ねじ山66にほぼ等しくまたそれを含む面取りされた溝付部54の比較的狭い切刃に加えられる力を小さくすることによって、より大きな崩れ耐性を有する。一般に、本発明の原理は、最初の完全切削ねじ山66にほぼ等しい切刃によって除去される材料部分の厚さが、面取りされた溝付部54の軸方向最前部の切削ねじ山の比較的広い切刃によって除去される材料部分の厚さよりも小さくなるように、面取りされた溝付部54を成形することによって達成される。簡潔さのため、切削タップ40のみについて以下に説明するが、本発明の原理を切削タップ20にも適用できることが理解されるであろう。
【0027】
上述の本発明の原理は、異なる多くの実施形態によって達成することができる。次に図4を参照すると、本発明の原理を達成する本発明の一実施形態は、切削タップ40の面取りされた溝付部54の周囲面を非線形の曲線に形成することである。例えば、面取りされた溝付部54の周囲面は半径Rを有してもよい。曲線の形状は、最初の完全切削ねじ山66にほぼ等しい切刃67によって除去される材料部分の厚さT2が、軸方向最前部の切削ねじ山58、62のより広い切刃59、63によって除去される材料部分の厚さT3よりも小さくなるようになっている。したがって、最初の完全切削ねじ山66にほぼ等しい切刃に対する力は、小さくされ、チッピングの可能性が低減される。本発明の原理を達成するために、曲線の半径Rは曲線に沿って変更してもよい。
【0028】
図5は、同様に本発明の原理を達成する代替実施形態を示している。この実施形態では、面取りされた溝付部54は、直線(破線)によって切削タップ40の中心長手方向軸線Z−Zに対し異なる面取り角に形成された2つ以上の部分によって形成される(すなわち、面取り角は直線的である)。具体的に、最初の完全切削ねじ山66にほぼ等しい面取りされた溝付部54の最後の部分の面取り角は、面取りされた溝付部54の1つ以上の軸方向前部の1つ又は複数の面取り角よりも小さい。図5に示したように、例えば、面取りされた溝付部54は、長さL2とL3を有する2つの部分から構成され、これらの部分では、長さL2を有する最後の部分は、長さL3を有する軸方向のより前部の面取り角A4よりも小さい面取り角A3によって形成される。この構造によって、最初の完全切削ねじ山66にほぼ等しい切刃によって除去される材料部分は、面取りされた溝付部54の入口部のより広い切刃によって除去される材料部分の厚さよりも小さい。したがって、最初の完全切削ねじ山66にほぼ等しい切刃に対する力が小さくされ、これによって、チッピングの可能性が低減される。最初の完全切削ねじ山66にほぼ等しい面取りされた溝付部54の最後の部分が、軸方向のより前部の面取り角よりも小さい面取り角を有する限り、本発明が、異なる面取り角で形成された面取りされた溝付部54の部分の数によって限定されないこと、また本発明が、異なる長さ及び面取り角の2つ以上の部分で実施できることが認識されるであろう。
【0029】
図6は、面取り部54の軸方向前部の切刃58用のすくい面を示している。この場合、すくい面72は、直線状であり、正の切削角A1を提供するように配向される。切削角A1は、半径方向基準線G−G(すなわち、末端切刃59と切削タップの中心74とを通過する線)と、すくい面72に沿って位置する線H−Hとの間の刃先角である。線G−Gに対する線H−Hの傾斜方向は図6で見て反時計回り方向にあるので、切削角A1は正角である。切刃は、面取り部54の軸方向前部においてより強固であるので、正の切削角を利用でき、これにより、より容易な切削動作が可能になる。
【0030】
図7は、切削ねじ山58よりも軸方向により後部の位置に配置される切削ねじ山62のすくい面を示している。図7では、すくい面76は、移行半径R1によって定義されるような凸状の形状を示している。移行半径R1の長さは、切削タップの直径の約5%〜約100%の間で変化できる。切削角は、半径基準線と末端切刃63、すなわち凸状すくい面76の軸方向前方終端のすくい面の接線(I−I)との間の刃先角である。この場合、切削角はゼロ度であり、したがって、線I−Iのみが基準となるが、この理由は、線I−Iが半径方向基準線と同延であるからである。同様に、凸状すくい面76は軸方向後方終端78を有する。線J−Jは、凸状すくい面76の軸方向後方終端76の接線である。角度A1は線I−Iと線J−Jとの間の刃先角であり、図6に示したような切削角A1に等しい。
【0031】
面取り部の一定の直径部又は仕上げ部では、また例えば図8に示したねじ山70のような面取り部を通過したねじ山では、面取り部又は完全ねじ山の刃はより脆弱であり、チッピングしやすい。ねじ山70は軸方向のより後部のねじ山よりも脆弱であるので、切削角A2が小さくされる。ねじ山70を参照すると、半径方向基準線(M−M)と末端切刃71のすくい面の接線(K−K)との間の刃先角である切削角A2を定義する凸状すくい面80が存在する。線M−Mに対する線K−Kの傾斜は、図8で見て時計回り方向にあるので、切削角A2は負角である。切削タップのタッピング動作全体を最適化するために、負の切削角により、より脆弱なねじ山70が補償されることが理解される。同様に、凸状すくい面80は軸方向後方終端82を有する。線L−Lは、凸状すくい面80の軸方向後方終端82の接線である。角度A1は線L−Lと線M−Mとの間の刃先角であり、図6に示したような切削角A1に等しい。
【0032】
末端切刃に対して移行半径R1の中心点を移動させることにより、面取りされた溝付部54の軸方向前部における正の切削角A1から負の切削角A2への滑らかな移行が可能になる。末端切刃に対する一定の半径(R1)の中心点の半径方向内側への漸次移動によって定義されるすくい面の形状により、正の切削角A1と負の切削角A2との間にある切削角が得られる。したがって、必要な場合に面取り部の前部入口部の有効な切削角を可能にするように、及び面取り部のその後の仕上げ部及び面取り部のねじ山の軸方向後部のチッピング耐性の切刃を可能にするように、本発明による切削タップのすくい面の形状が最適化される。切削タップ40の切削動作について、切削タップ40は、タップの面取り部の連続する切刃によって雌ねじ形状を形成する。一定の直径の溝付部56の最初の完全ねじ山と共に、最後のねじ山形状が得られるまで、材料が孔の壁から除去される。雌ねじのこの漸次の形成は、4つの溝の各々によって除去される材料部分を重ね合わせることで図6に示されている。
【0033】
切削角の範囲について、角度A1が約5度の負角〜約15度の正角の範囲内にあり、角度A2が約0度〜約25度の負角の範囲内にある場合、超硬合金から製造された切削タップ40を有効に使用できる。半径R1のサイズにより、ねじ山高さの約0%〜約80%の幅の範囲にあるA1とA2との間の弦を形成することによって、切削角A1から切削角A2への移行が調節される。図8には、長さPの例示的な弦Nが示されている。
【0034】
溝の半径が、角度A1によって定義された線の接線である限り、切削タップ40のすくい面をもたらす切削タップ溝のバランスは、現在の実施に使用される任意の形状をとることができることを理解されたい。
【0035】
他の選択肢は、面取り部とそれを通過したタップ本体の両方とに沿って、タップの形状が一定のままであるように、タップを形成することである。この場合、切刃のすくい面角度は全長に沿ってA2である。切屑が切刃を起点として生じ、すくい面を横切って流れるとき、最初に、切屑は、半径R1を介してより大きな切削角A1に移行する小さな切削角A2だけ反対側に向けられる。
【0036】
切削タップの製造について、切削タップは、基体としばしば呼ばれる高速度鋼又は焼結炭化タングステンからなる円筒状ブランクから製造される。ブランクは、切削タップの仕上げ寸法よりも大きく寸法決めされる直径を有し、ある長さに切断される。
【0037】
基体を加工する際の第1のステップは、中心に対する円筒トラバース研削のような方法によって、又は中心なし送り込み研削方法によって、高精度の円筒形公差にブランクを研削することである。このステップ中、円筒状シャンクは、タップの軸方向後端で寸法決めするように研削され、ねじ付き本体部の大径がタップの軸方向前端に形成される。さらに、この工程中に又は追加の工程の結果として、円筒面、及び円筒状シャンクとネック部との間の斜面によって、任意選択のネック部を形成してもよい。その上、円筒研削によってタップの端部で任意選択の斜面を研削してもよい。一般に、シャンク径はねじ山の径にほぼ等しいが、シャンク径は、大径のタップのねじ山の径よりも小さくてもよく、あるいは小径のタップのねじ山の径よりも大きくてもよい。選択肢(An option)は、図2に示したように、タップの軸方向最後端のシャンクの一部を正方形に研削することであり得る。
【0038】
次のステップでは、切刃を設けるように面取り部と組み合わせて1つ以上の溝が研削される。溝は、右ねじ山又は左ねじ山と任意に組み合わせて、直線状であるかあるいは右螺旋状又は左螺旋状でもよい。図10に示したように、切削角A1は、非常に硬質の材料に使用するための約20度の負角から非常に延性の材料用の約20度の正角にあってもよい。
【0039】
代わりに、溝は、図6〜図8に示したように、面取り部の長さに沿ってすくい面角度を変えて形成してもよい。研削砥石の形状は、選択された切削角A1とA2とを有するすくい面を設けるように形成され、A1とA2は半径R1の接線であり、ここで、A1はA2よりも正角である。A1が、溝のバランスをもたらす半径の接線である限り、現在の技術に従って溝のバランスを形成してもよい。1つ又は2つのステップで、完全な形状を研削してもよい。例えば、2つのステップにおいて、最初に、現在の技術に従って溝を研削し、次に、後続の作業で本発明のすくい面を研削することによって溝を研削してもよい。代わりに、1回の作業で完全な形状を形成するように砥石を形成してもよい。
【0040】
次のステップでは、小径及び大径と共に、V字状のねじ山側面を螺旋上に形成するように、ねじ付き本体部が研削される。引き続き、研削によって、ねじ付きすくい面取り部の形状が形成される。V字状のねじ山側面及び大径により、タッピング中に形成される雌ねじが複製される。
【0041】
孔の入口のタッピングを可能にするように、切削面取り部が先細りで研削される。面取り部は、図4に示したような曲線で面取り部を形成するように研削してもよいか、あるいは図5に示したように、最初の完全切削ねじ山にほぼ等しい最後の部分の面取り角が第1の部分の面取り角よりも小さくなるように、タップの軸線に対し角度のある直線によって形成された2つ以上の部分を有する面取り部を形成することによって研削してもよい。いずれかの方法によって、最初の完全切削ねじ山にほぼ等しい切刃によって除去される材料部分は、面取り部の入口部で除去される材料部分の厚さよりも小さい。
【0042】
面取り部の長さは、非常に硬質の材料をタッピングする場合に盲孔を十五(15)程度の長さのねじ山ピッチにタッピングするための一つ(1)のねじ山ピッチ程度に小さくてもよい。異なる角度を各々が有する面取り部分の数(図5)は、面取り部の全長に関係し、面取り部の全長が増大するにつれて増加する。
【0043】
面取り部の研削後、有効な切刃角は、面取り部の最初の入口部を有するA1であり、面取り部のその後の仕上げ部の切削角A2に徐々に進行する。この組み合わせにより、最初の完全切削ねじ山にほぼ等しい切刃に対する力を小さくすることのみならず、すくい面角度を小さくすることにより同一の刃の強さを増大することによっても、チッピングの可能性が低減される。
【0044】
研削後、切刃及び他の鋭い角部に小さな半径を形成するように、研磨媒体又は研磨ブラシでタップを研磨してもよい。結果として得られる半径は、約0ミクロン〜約100ミクロンの間であり得る。この研磨により、上記刃の強度がさらに向上する。
【0045】
この工程の最後のステップでは、金属窒化物、金属炭化物、金属炭窒化物、金属ホウ化物及び/又は金属酸化物からなる耐磨耗性層(図示せず)でタップを選択的にコーティングしてもよく、この場合、金属は、以下のもの、すなわち、アルミニウム、シリコン、及び周期表のIVa族、Va族及びVIa族の遷移金属の1つ以上から選択される。上記の層は、単層として、又は交互層を含む複数の層で蒸着される。上記の耐摩耗性層の頂部に、低摩擦層を蒸着することもできる。
【0046】
理解できるように、本発明は、チッピングしにくい超硬合金切削タップの使用を可能にする切削タップを提供する。超硬合金切削タップを使用することにより、「高速度」鋼から製造されたタップと比較していくつかの利点が得られる。例えば、超硬合金切削タップにより、高速度鋼切削タップと比較してねじ山のサイズ及び形状に関する寸法精度が高められる。さらに、超硬合金切削タップにより、高速度鋼切削タップと比較して切削タップの有効工具寿命が延びる。その上、超硬合金切削タップにより、高速度鋼切削タップと比較して雌ねじの生産速度が上昇する。
【0047】
本明細書に引用した文献、特許及び特許出願は、参考として本出願に組み込まれている。
【0048】
本発明のある特定の実施形態に関連して、本発明について特に説明してきたが、本発明が、例示によるものでありかつ限定的でないことを理解すべきであり、また添付の特許請求の範囲は、従来技術が許容するのと同様に広く解釈されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向前端(24、44)と軸方向後端(26、46)と中心長手方向軸(Z−Z)とを有する本体(22、42)を備える切削タップ(20、40)であって、前記本体が前記軸方向前端に溝付部(30、50)を有し、前記溝付部が、前記本体の前記軸方向前端から延びかつ最初の完全切削ねじ山(70)で終端する面取りされた溝付部(54)を含み、前記面取りされた溝付部が、前記本体の前記軸方向前端から第1の距離に配置された第1の切削ねじ山(62、66、68)と、前記本体の前記軸方向前端から第2の距離に配置された第2の切削ねじ山(62、66、68)とを備え、前記第2の距離が前記第1の距離よりも長く、前記面取りされた溝付部が、前記第2の切削ねじ山によって除去される材料部分の厚さが、前記第1の切削ねじ山によって除去される材料部分の厚さよりも小さくなるように成形される切削タップ。
【請求項2】
前記面取りされた溝付部が少なくとも3つの切削ねじ山(62、66、68)を備え、連続する切削ねじ山から除去される前記材料部分の厚さが、前記本体の前記軸方向前端からの距離の関数として漸次小さくなる、請求項1に記載の切削タップ。
【請求項3】
前記第2の切削ねじ山によって除去される前記材料部分の厚さが、前記第1の切削ねじ山によって除去される前記材料部分の厚さよりも小さくなるように、前記面取りされた溝付部の周囲面が非線形である、請求項1に記載の切削タップ。
【請求項4】
前記第1の切削ねじ山が前記中心長手方向軸に対し第1の面取り角(A3)を形成し、前記第2の切削ねじ山が前記中心長手方向軸に対し第2の面取り角(A4)を形成し、前記第2の面取り角が前記第1の面取り角よりも小さい、請求項1に記載の切削タップ。
【請求項5】
前記第1及び第2の切削ねじ山の各々が、末端切刃(59)で終端するすくい面(72)を有し、前記すくい面が、前記末端切刃と前記中心長手方向軸との間の半径方向基準線(G−G)に対しすくい面角度(A1)に配置され、前記第2の切削ねじ山の前記すくい面角度が、前記第1の切削ねじ山の前記すくい面角度よりも負角である、請求項1に記載の切削タップ。
【請求項6】
前記面取りされた溝付部が少なくとも3つの切削ねじ山(62、66、68)を備え、連続する切削ねじ山の前記すくい面角度(A1)が、前記本体の前記軸方向前端からの距離の関数として漸次負角になる、請求項5に記載の切削タップ。
【請求項7】
前記第1及び第2の切削ねじ山の各々が、末端切刃(63、71)で終端するすくい面(76、80)を有し、前記すくい面が、中心点を有する移行半径(R1)によって定義され、前記第1の切削ねじ山の前記中心点が前記末端切刃から第1の距離に配置され、前記第2の切削ねじ山の前記中心点が前記末端切刃から第2の距離に配置され、前記第2の距離が前記第1の距離よりも長い、請求項1に記載の切削タップ。
請求項1に記載の切削タップ。
【請求項8】
軸方向前端(24、44)と軸方向後端(26、46)と中心長手方向軸(Z−Z)とを有する本体(22、42)を備える切削タップ(20、40)であって、前記本体が前記軸方向前端に溝付部(30、50)を有し、前記溝付部が、前記本体の前記軸方向前端から延びかつ最初の完全切削ねじ山(70)で終端する面取りされた溝付部(54)を含み、前記面取りされた溝付部が、前記本体の前記軸方向前端から第1の距離に配置された第1の切削ねじ山(62、66、68)と、前記本体の前記軸方向前端から第2の距離に配置された第2の切削ねじ山(62、66、68)とを備え、前記第2の距離が前記第1の距離よりも大きく、前記第2の切削ねじ山によって除去される材料部分の厚さが、前記第1の切削ねじ山によって除去される材料部分の厚さよりも小さくなるように、前記面取りされた溝付部の周囲面が非線形である切削タップ。
【請求項9】
前記面取りされた溝付部が少なくとも3つの切削ねじ山(62、66、68)を備え、連続する切削ねじ山から除去される前記材料部分の厚さが、前記本体の前記軸方向前端からの距離の関数として漸次小さくなる、請求項8に記載の切削タップ。
【請求項10】
前記第1及び第2の切削ねじ山の各々が、末端切刃(59)で終端するすくい面(72)を有し、前記すくい面が、前記末端切刃と前記中心長手方向軸との間の半径方向基準線(G−G)に対しすくい面角度(A1)に配置され、前記第2の切削ねじ山の前記すくい面角度が、前記第1の切削ねじ山の前記すくい面角度よりも負角である、請求項8に記載の切削タップ。
【請求項11】
前記面取りされた溝付部が少なくとも3つの切削ねじ山(62、66、68)を備え、連続する切削ねじ山の前記すくい面角度が、前記本体の前記軸方向前端からの距離の関数として漸次負角になる、請求項10に記載の切削タップ。
【請求項12】
前記第1及び第2の切削ねじ山の各々が、末端切刃(63、71)で終端するすくい面(76、80)を有し、前記すくい面が、中心点を有する移行半径(R1)によって定義され、前記第1の切削ねじ山の前記中心点が前記末端切刃から第1の距離に配置され、前記第2の切削ねじ山の前記中心点が前記末端切刃から第2の距離に配置され、前記第2の距離が前記第1の距離よりも長い、請求項8に記載の切削タップ。
【請求項13】
軸方向前端(24、44)と軸方向後端(26、46)と中心長手方向軸(Z−Z)とを有する本体(22、42)を備える切削タップ(20、40)であって、前記本体が前記軸方向前端に溝付部(30、50)を有し、前記溝付部が、前記本体の前記軸方向前端から延びかつ最初の完全切削ねじ山(70)で終端する面取りされた溝付部(54)を含み、前記面取りされた溝付部が、前記本体の前記軸方向前端から第1の距離に配置された第1の切削ねじ山(62、66、68)と、前記本体の前記軸方向前端から第2の距離に配置された第2の切削ねじ山(62、66、68)とを備え、前記第2の距離が前記第1の距離よりも大きく、前記第1の切削ねじ山が前記中心長手方向軸に対し第1の面取り角(A3)を形成し、前記第2の切削ねじ山が前記中心長手方向軸に対し第2の面取り角(A4)を形成し、前記第2の面取り角が前記第1の面取り角よりも小さい切削タップ。
【請求項14】
前記面取りされた溝付部が少なくとも3つの切削ねじ山(62、66、68)を備え、連続する切削ねじ山から除去される前記材料部分の厚さが、前記本体の前記軸方向前端からの距離の関数として漸次小さくなる、請求項13に記載の切削タップ。
【請求項15】
前記第1及び第2の切削ねじ山の各々が、末端切刃(59)で終端するすくい面(72)を有し、前記すくい面が、前記末端切刃と前記中心長手方向軸との間の半径方向基準線(G−G)に対しすくい面角度に配置され、前記第2の切削ねじ山の前記すくい面角度が、前記第1の切削ねじ山の前記すくい面角度よりも負角である、請求項13に記載の切削タップ。
【請求項16】
前記面取りされた溝付部が少なくとも3つの切削ねじ山(62、66、68)を備え、連続する切削ねじ山の前記すくい面角度が、前記本体の前記軸方向前端からの距離の関数として漸次負角になる、請求項15に記載の切削タップ。
【請求項17】
前記第1及び第2の切削ねじ山の各々が、末端切刃(63、71)で終端するすくい面(76、80)を有し、前記すくい面が、中心点を有する移行半径(R1)によって定義され、前記第1の切削ねじ山の前記中心点が前記末端切刃から第1の距離に配置され、前記第2の切削ねじ山の前記中心点が前記末端切刃から第2の距離に配置され、前記第2の距離が前記第1の距離よりも長い、請求項13に記載の切削タップ。
【請求項18】
切削タップを製造する方法であって、
ブランクを研削して、ねじ付き本体部を切削タップの軸方向前端に形成するステップと、
前記ねじ付き本体部に1つ以上の溝を研削して、切刃を形成するステップと、
前記ねじ付き本体部を研削して、第1の切削ねじ山と第2の切削ねじ山とを形成するステップであって、前記第1の切削ねじ山が、前記切削タップの前記軸方向前端から第1の距離にあり、前記第2の切削ねじ山が、前記切削タップの前記軸方向前端から第2の距離にあるステップと、
タッピング動作中に前記第2の切削ねじ山によって除去される材料部分の厚さが前記第1の切削ねじ山によって除去される材料部分の厚さよりも小さくなるように、前記ねじ付き本体部の面取り部を研削するステップと、
を含む方法。
【請求項19】
前記第1及び第2の切削ねじ山の周囲面が曲線にあるように、前記面取り部が非線形である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第2の切削ねじ山の面取り角が前記第1の切削ねじ山の面取り角よりも小さくなるように、前記面取り部が形成される、請求項18に記載の方法。
【請求項1】
軸方向前端(24、44)と軸方向後端(26、46)と中心長手方向軸(Z−Z)とを有する本体(22、42)を備える切削タップ(20、40)であって、前記本体が前記軸方向前端に溝付部(30、50)を有し、前記溝付部が、前記本体の前記軸方向前端から延びかつ最初の完全切削ねじ山(70)で終端する面取りされた溝付部(54)を含み、前記面取りされた溝付部が、前記本体の前記軸方向前端から第1の距離に配置された第1の切削ねじ山(62、66、68)と、前記本体の前記軸方向前端から第2の距離に配置された第2の切削ねじ山(62、66、68)とを備え、前記第2の距離が前記第1の距離よりも長く、前記面取りされた溝付部が、前記第2の切削ねじ山によって除去される材料部分の厚さが、前記第1の切削ねじ山によって除去される材料部分の厚さよりも小さくなるように成形される切削タップ。
【請求項2】
前記面取りされた溝付部が少なくとも3つの切削ねじ山(62、66、68)を備え、連続する切削ねじ山から除去される前記材料部分の厚さが、前記本体の前記軸方向前端からの距離の関数として漸次小さくなる、請求項1に記載の切削タップ。
【請求項3】
前記第2の切削ねじ山によって除去される前記材料部分の厚さが、前記第1の切削ねじ山によって除去される前記材料部分の厚さよりも小さくなるように、前記面取りされた溝付部の周囲面が非線形である、請求項1に記載の切削タップ。
【請求項4】
前記第1の切削ねじ山が前記中心長手方向軸に対し第1の面取り角(A3)を形成し、前記第2の切削ねじ山が前記中心長手方向軸に対し第2の面取り角(A4)を形成し、前記第2の面取り角が前記第1の面取り角よりも小さい、請求項1に記載の切削タップ。
【請求項5】
前記第1及び第2の切削ねじ山の各々が、末端切刃(59)で終端するすくい面(72)を有し、前記すくい面が、前記末端切刃と前記中心長手方向軸との間の半径方向基準線(G−G)に対しすくい面角度(A1)に配置され、前記第2の切削ねじ山の前記すくい面角度が、前記第1の切削ねじ山の前記すくい面角度よりも負角である、請求項1に記載の切削タップ。
【請求項6】
前記面取りされた溝付部が少なくとも3つの切削ねじ山(62、66、68)を備え、連続する切削ねじ山の前記すくい面角度(A1)が、前記本体の前記軸方向前端からの距離の関数として漸次負角になる、請求項5に記載の切削タップ。
【請求項7】
前記第1及び第2の切削ねじ山の各々が、末端切刃(63、71)で終端するすくい面(76、80)を有し、前記すくい面が、中心点を有する移行半径(R1)によって定義され、前記第1の切削ねじ山の前記中心点が前記末端切刃から第1の距離に配置され、前記第2の切削ねじ山の前記中心点が前記末端切刃から第2の距離に配置され、前記第2の距離が前記第1の距離よりも長い、請求項1に記載の切削タップ。
請求項1に記載の切削タップ。
【請求項8】
軸方向前端(24、44)と軸方向後端(26、46)と中心長手方向軸(Z−Z)とを有する本体(22、42)を備える切削タップ(20、40)であって、前記本体が前記軸方向前端に溝付部(30、50)を有し、前記溝付部が、前記本体の前記軸方向前端から延びかつ最初の完全切削ねじ山(70)で終端する面取りされた溝付部(54)を含み、前記面取りされた溝付部が、前記本体の前記軸方向前端から第1の距離に配置された第1の切削ねじ山(62、66、68)と、前記本体の前記軸方向前端から第2の距離に配置された第2の切削ねじ山(62、66、68)とを備え、前記第2の距離が前記第1の距離よりも大きく、前記第2の切削ねじ山によって除去される材料部分の厚さが、前記第1の切削ねじ山によって除去される材料部分の厚さよりも小さくなるように、前記面取りされた溝付部の周囲面が非線形である切削タップ。
【請求項9】
前記面取りされた溝付部が少なくとも3つの切削ねじ山(62、66、68)を備え、連続する切削ねじ山から除去される前記材料部分の厚さが、前記本体の前記軸方向前端からの距離の関数として漸次小さくなる、請求項8に記載の切削タップ。
【請求項10】
前記第1及び第2の切削ねじ山の各々が、末端切刃(59)で終端するすくい面(72)を有し、前記すくい面が、前記末端切刃と前記中心長手方向軸との間の半径方向基準線(G−G)に対しすくい面角度(A1)に配置され、前記第2の切削ねじ山の前記すくい面角度が、前記第1の切削ねじ山の前記すくい面角度よりも負角である、請求項8に記載の切削タップ。
【請求項11】
前記面取りされた溝付部が少なくとも3つの切削ねじ山(62、66、68)を備え、連続する切削ねじ山の前記すくい面角度が、前記本体の前記軸方向前端からの距離の関数として漸次負角になる、請求項10に記載の切削タップ。
【請求項12】
前記第1及び第2の切削ねじ山の各々が、末端切刃(63、71)で終端するすくい面(76、80)を有し、前記すくい面が、中心点を有する移行半径(R1)によって定義され、前記第1の切削ねじ山の前記中心点が前記末端切刃から第1の距離に配置され、前記第2の切削ねじ山の前記中心点が前記末端切刃から第2の距離に配置され、前記第2の距離が前記第1の距離よりも長い、請求項8に記載の切削タップ。
【請求項13】
軸方向前端(24、44)と軸方向後端(26、46)と中心長手方向軸(Z−Z)とを有する本体(22、42)を備える切削タップ(20、40)であって、前記本体が前記軸方向前端に溝付部(30、50)を有し、前記溝付部が、前記本体の前記軸方向前端から延びかつ最初の完全切削ねじ山(70)で終端する面取りされた溝付部(54)を含み、前記面取りされた溝付部が、前記本体の前記軸方向前端から第1の距離に配置された第1の切削ねじ山(62、66、68)と、前記本体の前記軸方向前端から第2の距離に配置された第2の切削ねじ山(62、66、68)とを備え、前記第2の距離が前記第1の距離よりも大きく、前記第1の切削ねじ山が前記中心長手方向軸に対し第1の面取り角(A3)を形成し、前記第2の切削ねじ山が前記中心長手方向軸に対し第2の面取り角(A4)を形成し、前記第2の面取り角が前記第1の面取り角よりも小さい切削タップ。
【請求項14】
前記面取りされた溝付部が少なくとも3つの切削ねじ山(62、66、68)を備え、連続する切削ねじ山から除去される前記材料部分の厚さが、前記本体の前記軸方向前端からの距離の関数として漸次小さくなる、請求項13に記載の切削タップ。
【請求項15】
前記第1及び第2の切削ねじ山の各々が、末端切刃(59)で終端するすくい面(72)を有し、前記すくい面が、前記末端切刃と前記中心長手方向軸との間の半径方向基準線(G−G)に対しすくい面角度に配置され、前記第2の切削ねじ山の前記すくい面角度が、前記第1の切削ねじ山の前記すくい面角度よりも負角である、請求項13に記載の切削タップ。
【請求項16】
前記面取りされた溝付部が少なくとも3つの切削ねじ山(62、66、68)を備え、連続する切削ねじ山の前記すくい面角度が、前記本体の前記軸方向前端からの距離の関数として漸次負角になる、請求項15に記載の切削タップ。
【請求項17】
前記第1及び第2の切削ねじ山の各々が、末端切刃(63、71)で終端するすくい面(76、80)を有し、前記すくい面が、中心点を有する移行半径(R1)によって定義され、前記第1の切削ねじ山の前記中心点が前記末端切刃から第1の距離に配置され、前記第2の切削ねじ山の前記中心点が前記末端切刃から第2の距離に配置され、前記第2の距離が前記第1の距離よりも長い、請求項13に記載の切削タップ。
【請求項18】
切削タップを製造する方法であって、
ブランクを研削して、ねじ付き本体部を切削タップの軸方向前端に形成するステップと、
前記ねじ付き本体部に1つ以上の溝を研削して、切刃を形成するステップと、
前記ねじ付き本体部を研削して、第1の切削ねじ山と第2の切削ねじ山とを形成するステップであって、前記第1の切削ねじ山が、前記切削タップの前記軸方向前端から第1の距離にあり、前記第2の切削ねじ山が、前記切削タップの前記軸方向前端から第2の距離にあるステップと、
タッピング動作中に前記第2の切削ねじ山によって除去される材料部分の厚さが前記第1の切削ねじ山によって除去される材料部分の厚さよりも小さくなるように、前記ねじ付き本体部の面取り部を研削するステップと、
を含む方法。
【請求項19】
前記第1及び第2の切削ねじ山の周囲面が曲線にあるように、前記面取り部が非線形である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第2の切削ねじ山の面取り角が前記第1の切削ねじ山の面取り角よりも小さくなるように、前記面取り部が形成される、請求項18に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2012−505758(P2012−505758A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531094(P2011−531094)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【国際出願番号】PCT/US2009/059524
【国際公開番号】WO2010/045054
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(399031078)ケンナメタル インコーポレイテッド (182)
【氏名又は名称原語表記】Kennametal Inc.
【住所又は居所原語表記】1600 Technology Way Latrobe PA 15650−0231, USA
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【国際出願番号】PCT/US2009/059524
【国際公開番号】WO2010/045054
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(399031078)ケンナメタル インコーポレイテッド (182)
【氏名又は名称原語表記】Kennametal Inc.
【住所又は居所原語表記】1600 Technology Way Latrobe PA 15650−0231, USA
【Fターム(参考)】
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