説明

切削油腐敗防止装置及び方法

【課題】 水溶性切削油剤原液を水により希釈してなり、貯留タンクに溜められた水溶性切削油の腐敗を防止する。
【解決手段】切削油腐敗防止装置100は、水溶性切削油剤原液を水により希釈してなる水溶性切削油200を溜めた貯留タンク10と、水溶性切削油200に浸るようにハイブリッドセラミック15を取り付けるセラミック取付部20と、水溶性切削油200に微細な気泡を供給する曝気装置70と、水溶性切削油200から異物を分離し、取り除く異物除去部30と、異物除去部30により水溶性切削油200から取り除かれた異物を溜める異物タンク40とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性切削油を貯留する装置及び方法に関し、特に貯留された水溶性切削油が腐敗するのを防止するための装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
切削油は、金属の切削加工の際、潤滑作用により工具と被削材の表面を潤滑するとともに、冷却作用により加工面の精度の向上と工具寿命の延長を図るための油剤である。切削油には、非水溶性切削油と水溶性切削油とがある。
【0003】
水溶性切削油は、難燃性、安価、使用容易などの利点により、広く使用されている。JISK2241に規定されており、鉱油、界面活性剤、添加剤および基剤用の水から成る。切削油の使用環境は、温度・水分・栄養源の3要素において、微生物が生育、繁殖するための好条件にあるので、多量の水を含有する水溶性切削油は、微生物の繁殖によって腐敗し易い。
【0004】
腐敗した水溶性切削油は、悪臭を発生して、工場内の作業環境を悪化させる。さらに、腐敗により水溶性切削油が濁ると、ヘドロ状物質が生成するので、ヘドロ状物質がコックやフィルタの目詰りを起こすことがある。腐敗すると、水溶性切削油の潤滑作用は、低下するので、その切削油で切削加工を行うと、切粉(きりこ)が切削工具(バイト)に付着し、切削精度が低下する。また、腐敗した水溶性切削油でワークと切削工具との接触面を潤滑しながら切削を行うと、切粉が仕上がったワーク(仕上がり品)にも付着し、取れ難く、厄介で作業能率の低下を招いていた。
【0005】
更に、潤滑作用の低い切削油で切削加工を行うと、切削工具の温度が上昇し、切削工具の切削性能が低下し、ひいては切削精度の低下をもたらす。そこで、水溶性切削油の腐敗を防止することは、産業・工業上重要な課題であり、長期に亘って腐敗し難い水溶性切削油が、特許文献1に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−45026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された水溶性切削油であっても、長期に亘ってタンクに溜められた状態であると、水溶性切削油が腐敗してしまうという問題がある。そこで、本発明は、上記事情に鑑み、水溶性切削油の腐敗を防止することができる切削油腐敗防止装置及び方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の切削油腐敗防止装置は、水溶性切削油剤原液を水により希釈してなる水溶性切削油を溜めた貯留タンクを備えた切削油腐敗防止装置において、貯留タンクに溜められた水溶性切削油に浸るようにハイブリッドセラミックを取り付けるセラミック取付部と、前記貯留タンク内の水溶性切削油に微細な気泡を供給する曝気装置と、前記貯留タンクに溜められた水溶性切削油から異物を取り除く異物除去部とを備えたことを特徴とするものである。
【0009】
本発明の切削油腐敗防止装置は、貯留タンクに水溶性切削油を給油するための給油ポンプと、前記給油ポンプから供給された水溶性切削油を通す給油路を更に備え、前記給油路は、前記セラミック取付部に接続されていることを特徴とするものであってもよい。
【0010】
前記セラミック取付部は、前記給油路から導入された水溶性切削油の流路に前記ハイブリッドセラミックを配置し、該にハイブリッドセラミックに該水溶性切削油を接触させることを特徴とするものであってもよい。
【0011】
本発明の切削油腐敗防止装置は、前記異物除去部により、前記貯留タンクに溜められた水溶性切削油から取り除かれた異物を溜める異物タンクを更に備えることを特徴とするものであってもよい。
【0012】
前記ハイブリッドセラミックは、前記水溶性切削油が表面に接触するとき、該水溶性切削油中の水成分に対し制菌性を付与するものであることを特徴とするものであってもよい。
【0013】
前記ハイブリッドセラミックは、前記水溶性切削油が表面に接触するとき、該水溶性切削油中の水成分の物性を改変することにより、該水成分に制菌性を付与するものであることを特徴とするものであってもよい。
【0014】
本発明の切削油腐敗防止方法は、水溶性切削油剤原液を水により希釈してなり、貯留タンクに溜められた水溶性切削油の腐敗を防止する切削油腐敗防止方法において、前記貯留タンクに溜められた水溶性切削油に浸るようにハイブリッドセラミックを取り付け、前記貯留タンク内の水溶性切削油に微細な気泡を供給し、前記貯留タンクに溜められた水溶性切削油における嫌気性環境の緩和並びに該水溶性切削油からの異物の除去を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の切削油腐敗防止装置および方法は、貯留タンクに溜められた水溶性切削油に浸るようにハイブリッドセラミックを取り付け、前記貯留タンク内の水溶性切削油に微細な気泡を供給し、該貯留タンクに溜められた水溶性切削油における嫌気性環境を緩和すると共に、水溶性切削油から異物を取り除き、該貯留タンクに溜められた水溶性切削油の腐敗を防止することを可能とする。
【0016】
また、本発明の切削油腐敗防止装置および方法は、工作機械で使用された水溶性切削油を前記ハイブリッドセラミックの表面に接触させながら前記貯留タンクに給油ポンプで供給し、該貯留タンクに溜められた該水溶性切削油を前記工作機械に戻すことにより、該工作機械、該給油ポンプ及び該貯留タンクでなる該水溶性切削油の循環流路に該ハイブリッドセラミックを介在させているので、該循環流路を循環する該水溶性切削油の制菌性を維持することができる。
【0017】
また、本発明の切削油腐敗防止装置および方法は、水溶性切削油に含まれる水をハイブリッドセラミックに触れさせ、該水の物性を改変させることにより、該水溶性切削油に制菌能力を付与している。
【0018】
また、本発明の切削油腐敗防止装置および方法は、水溶性切削油を溜められた貯留タンク内に、微細な気泡を発生させることにより、貯留タンクに溜められた該水溶性切削油に一定の水流を作ることで、該水溶性切削油から異物を分離することを容易にするとともに、該気泡から該水溶性切削油に酸素を供給し、嫌気性菌の増殖を抑制する環境を醸成することにより、該水溶性切削油の腐敗防止効果を相乗的に増大している。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態における切削油腐敗防止装置の縦断面図である。
【図2】本発明の実施形態における切削油を腐敗防止する手順を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1に示す切削油腐敗防止装置100は、ハイブリッドセラミック15と、セラミック取付部20と、異物除去部30と、異物タンク40と、給油ポンプ50と、給油路60と、送油路65と、曝気装置70とを備える。曝気装置70は、気泡発生用のブロワー71と、空気管72と、散気器73とを有してなる。給油路60は、セラミック取付部20に接続されている。
【0021】
貯留タンク10は、切削機(旋盤など)である工作機械に付随して備えられ、内部に水溶性切削油200が溜められている。セラミック取付部20には、貯留タンク10内の水溶性切削油200に浸るようにハイブリッドセラミック15が取り付けられている。異物除去部30は、スラッジ(sludge)、スカム(scum)等と称される異物を水溶性切削油200から分離し、取り除き、取り除いた異物を異物タンク40に排出する。異物タンク40には、異物除去部30から排出された異物が溜められる。
【0022】
ブロワー71は、外気を取り込み、空気管72を介して外気を散気器73に送出する。散気器73は、その外気を基に、微細な気泡を貯留タンク10内の水溶性切削油200に供給する。曝気装置70は、水溶性切削油200に微細な気泡を送り込むためのものであり、その構成はブロワー71、空気管72、散気器73の組合せに限るものではなく、他の空気源からの散気器への圧力を有する空気の導入方式、エダクター等を用いた方式や各種のマイクロバブル発生装置を用いた方式等であってもよい。
【0023】
水溶性切削油200は、水溶性切削油剤原液を水で希釈してなり、給油ポンプ50、給油路60及びセラミック取付部20を経由して工作機械から供給され、貯留タンク10に溜められる。水溶性切削油200を構成する水は、原水をハイブリッドセラミック15に触れさせ、物性を改変させることにより制菌能力を付与された水である。この原水は、例えば水道水、地下水や蒸留水である。
【0024】
この水溶性切削油200は、水溶性切削油剤原液を水で希釈してなるエマルジョン切削油である。本発明の実施の形態における水溶性切削油200は、例えば、原水を常温・常圧でハイブリッドセラミック15に通して、制菌性を付与されている。
【0025】
水溶性切削油200における水成分と油成分の比は、90%〜95%が水成分であり、10%〜5%が油成分という範囲にある。
【0026】
また、切削油剤原液は、例えば、油性剤、界面活性剤、極圧剤、さび止め剤等の混合物である。油性剤としては、脂肪酸塩、多価アルコールの部分エステル等がある。界面活性剤としては、ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル、ポリオキシエチレンモノアルキルフェニルエーテル、脂肪酸塩、スルホネート類等がある。極圧剤としては、ポリオキシエチレンリン酸エステル等がる。また、さび止め剤としては、アミン類、リン酸塩、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、ほう酸塩、亜硝酸塩等がある。
【0027】
貯留タンク10に溜める水溶性切削油200は、300〜600リットルであり、場合によっては、800リットル程度入れてもよい。
【0028】
セラミック取付部20は、貯留タンク10に溜められた水溶性切削油200に浸るようにハイブリッドセラミック15を収納したものである。このハイブリッドセラミック15は、本願の出願人のうちの一の出願人である都市拡業株式会社から販売されている水改質装置「ザ・バイオウォーター」の機能部材でなる。
【0029】
セラミック取付部20の入り口側は、給油路60の送出端に接続されている。また、セラミック取付部20の出口側は、短い給油路61を経て、貯留タンク10に貯留された水溶性切削油200に開口している。セラミック取付部20の筐体内には、ハイブリッドセラミック15が配置されている。セラミック取付部20はこのような構成を有するので、給油ポンプ50により、給油路60の送出端からセラミック取付部20の入り口側に供給された水溶性切削油200は、ハイブリッドセラミック15の表面に接触しながら、セラミック取付部20の筐体内を通過し、セラミック取付部20の出口および給油路61を経て、貯留タンク10に溜められた水溶性切削油200内に送出される。このとき、水溶性切削油200の水成分は、ハイブリッドセラミック15の表面に接触することにより、物性を改変され、制菌能力を付与される。このハイブリッドセラミック15は、特許文献1に記載された波長変換機能付きセラミックである。
その波長変換機能付きセラミックにより生成した制菌水の制菌効果については、特許文献1に、実施例1(段落0024及び表1)並びに実施例2(段落0025及び表2)として、データを付して、に詳しく説明されている。
また、給油ポンプ50が停止しているときは、セラミック取付部20の入り口側からは水溶性切削油200供給されないが、貯留タンク10に溜められた水溶性切削油200が、短い給油路61を経て、セラミック取付部20の出口側の開口から、セラミック取付部20の筐体内に自然に流入し、ハイブリッドセラミック15の表面に接触するので、貯留タンク10に溜められた水溶性切削油200の水成分の物性が改変され、その水成分に制菌能力が付与される。
【0030】
また、セラミック取付部20は、特開2000−107752号に記載の活性化装置であってもよい。
【0031】
異物除去部30は、スキーマー器であって、貯留タンク10内の水溶性切削油200内の異物を取り除くものである。例えば、異物除去部30は、親油性のあるベルトを小形モータでゆっくり回転させ、貯留タンク10内液面に浮いたスカムを回収してもよいし、ベルトの外周にフェルトを取り付けたものであってもよい。異物除去部30は、その上部においてベルト又はフェルトの表面を掻き取ることにより、ベルト又はフェルトに付着したスラッジ、スカム等の異物を取り除き、異物タンク40に排出する。
【0032】
異物タンク40は、異物除去部30により排出された異物を溜めるタンクである。
【0033】
給油ポンプ50は、工作機械において切削工具とワークとの接触面に供給されて汚れた水溶性切削油をその工作機械から取り込み、給油路60に水溶性切削油を送り出す。水溶性切削油は、工作機械において切削工具とワークとの接触面に供給され、両者の潤滑、冷却などの作用をする過程で、ワークに付着していた油、塗料、ゴミ等の汚れ物質を内部に取り込んでします。これ等汚れ物質は、有機物を含むので、水溶性切削油に含まれて貯留タンク10に溜められると、微生物の繁殖に好条件を提供し、時間の経過ともに、腐敗したり、凝固したりして、スラッジ、スカム等の異物となる。給油路60は、給油ポンプ50から送出される水溶性切削油をセラミック取付部20に供給する。
【0034】
散気器73は、水溶性切削油200を溜められた貯留タンク10内に、泡を発生させるものである。散気器73により貯留タンク10内に貯留された水溶性切削油200内に作られた気泡に、水溶性切削油200中のスラッジ又はスカムを付着させて、水溶性切削油200から異物を分離し易くする。このような気泡を発生させるために、ブロワー71において空気を取り込み、ブロワー71によりその空気を空気管72経由で散気器73に送り込み、散気器73から水溶性切削油200中に空気を噴出すことで、水溶性切削油200と空気を混合する。かくして、水溶性切削油200中に空気の泡が生成される。なお、図1に示す上向きの矢印は、水流の方向を示している。
このように、曝気装置70は、外気を水溶性切削油200に供給することにより、水溶性切削油200内に嫌気性菌が繁殖するのを抑制する。特に、工作機械が停止し、水溶性切削油がセラミック取付部20に供給されない期間には、貯留タンク10内の水溶性切削油200が澱み、水溶性切削油200内に嫌気性菌が繁殖し易くなるので、ブロワー71は工作機械の停止中も作動させ、嫌気性菌の繁殖を抑制する。嫌気性菌の抑制により、貯留タンク10内の水溶性切削油200の腐敗を防止し、水溶性切削油200から腐敗臭が出るのを防止できる。
【0035】
図2のフローチャートを用いて、切削油腐敗防止装置100が水溶性切削油200の腐敗を防止するまでの工程を説明する。
【0036】
まず、貯留タンク10には、工作機械で使用された、汚れた水溶性切油200を、給油ポンプ50により、給油路60、セラミック取付部20経由で貯留タンク10内取り込む。セラミック取付部20より高い水位にまで達するだけの水溶性切油200が溜められる。この状態で、セラミック取付部20は、水溶性切油200で満たされ、ハイブリッドセラミック15はその水溶性切油200に浸かっている(ST1)。給油ポンプ50は、工作機械から汚れた水溶性切削油を取り込み、貯留タンク10に一定量の水溶性切削油200を満たす。貯留タンク10に一定量の水溶性切削油200を満たされると、その一定量を超えて供給された水溶性切削油は、送油路65から工作機械に送出される。かくして、工作機械から供給された水溶性切削油は、セラミック取付部20及び貯留タンク10を経て、再び工作機械に戻される。すなわち、水溶性切削油は、工作機械、セラミック取付部20及び貯留タンク10を循環している。
給油ポンプ50で取り入れられ、給油路60を経て、セラミック取付部20に供給された水溶性切削油の液流は、ハイブリッドセラミック15に接触する。このハイブリッドセラミック15に水溶性切削油を接触させる作用により、水溶性切削油の水成分は、制菌性を付与される。貯留タンク10内の水溶性切削油200は、本切削油腐敗防止装置100を作動させ、工作機械、セラミック取付部20及び貯留タンク10を循環する過程で、次第に制菌効果を有するに至る。すなわち、本切削油腐敗防止装置100を作動させ、水溶性切削油がセラミック取付部20内を繰返し通過するようにすることにより、水溶性切削油の制菌効果は更に高まる(ST2)。
【0037】
ブロワー71は、工作機械の停止中も作動し続け、貯留タンク10内の水溶性切削油200中に外気を供給するとともに、水溶性切削油200を常時流動させることにより、水溶性切削油200内に嫌気性菌が繁殖するのを抑制する。散気器73が貯留タンク10内の水溶性切削油200中に空気の泡を発生させることにより、水溶性切削油200に一定の水流ができ、スラッジ又はスカムでなる異物が、貯留タンク10内の水溶性切削油200の泡に付着して浮上するので、水溶性切削油200から異物が分離され、異物が浮き易くなる(ST3)。
異物除去部30は、浮き上がった異物を取り除き、異物タンク40に収容する(ST4)。給油ポンプ50は、工作機械から汚れた水溶性切削油を継続して取り入れる。異物が取り除かれた貯留タンク10内の水溶性切削油200は、送油路65を経て工作機械へ戻される(ST5)。
【0038】
なお、本発明の切削油腐敗防止装置100と、切削機等の工作機械(不図示)を接続して利用することで、工作機械を稼動しながら、工作機械で利用する水溶性切削油を、その品質を維持して、循環・供給することができる。
【0039】
本発明により、このような実施形態を構成することにより、貯留タンク10に溜められた水溶性切削油200に浸るようにハイブリッドセラミック15を取り付けるセラミック取付部20と、貯留タンク内の水溶性切削油に微細な気泡を供給する曝気装置70(ブロワー71と、空気管72と、散気器73とを含んで構成される。)と、貯留タンク10に溜められた水溶性切削油200から分離された異物を取り除く異物除去部30と、汲み取られた異物を溜める異物タンク40とを備えることによって、水溶性切削油200の腐敗を防止し、水溶性切削油200から異物を除くことを可能とする。
【0040】
また、貯留タンク10に水溶性切削油を給油するための給油ポンプ50と、給油ポンプ50から給油された水溶性切削油を流す給油路60とを更に備え、給油路60とセラミック取付部20が接続されることにより、貯留された水溶性切削油200の腐敗を防止するとともに、原水を新たに活性化し、制菌水を生成することを可能とする。
【0041】
なお、工作機械、セラミック取付部20及び貯留タンク10を循環する水溶性切削油200の水成分をハイブリッドセラミック15に接触させるとき、この接触により、水溶性切削油200の水成分の物性を改変させ、その水成分に制菌能力を付与している。
【0042】
また、水溶性切削油200を溜められた貯留タンク10内に、泡を発生させる曝気装置70を備えることにより、貯留された水溶性切削油200に一定の泡の流れを作ることで、水溶性切削油200からの異物の分離を容易にする。
【0043】
以上に説明した本発明の実施の形態を採用すれば、水溶性切削油200が腐敗することによる悪臭の発生、悪臭による工場内の作業環境の悪化を防止できる。更に、上記本発明の実施の形態の採用により、腐敗した水溶性切削油200の濁によるヘドロ状物質の生成が防止されるので、ヘドロ状物質がコックやフィルタの目詰りを起こすことが無くなる。
【0044】
また、以上に説明した本発明の実施の形態を採用すれば、水溶性切削油200の腐敗による潤滑作用の低下による切削工具(バイト)への切粉の付着や、切削精度の低下および切削工具の寿命の低下も無くなる。また、本実施の形態の採用により、ワークと切削工具との接触面が円滑に潤滑されてワークが切削されるので、切粉が仕上がったワーク(仕上がり品)に付着し、取れ難く、厄介で作業能率の低下を招くといったこともなくなる。更に、本実施の形態の採用により、切削油の潤滑作用が適切に維持されて切削加工が行われるので、切削工具の温度が上昇したり、切削工具の切削性能が低下し、ひいては切削精度の低下をもたらすようなことも防止できる。その上、本実施の形態による切削油腐敗防止装置で腐敗を防いだ水溶性切削油200を用いて工作されたワークは錆び難くい。すなわち、本実施の形態による切削油腐敗防止装置には、工作機械により工作されるワークの防錆効果もある。
【符号の説明】
【0045】
10 貯留タンク
15 ハイブリッドセラミック
20 セラミック取付部
30 異物除去部
40 異物タンク
50 給油ポンプ
60,61 給油路
65 送油路
70 曝気装置
71 ブロワー
72 空気管
73 散気器
100 切削油腐敗防止装置
200 水溶性切削油

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性切削油剤原液を水により希釈してなる水溶性切削油を溜めた貯留タンクを備えた切削油腐敗防止装置において、
貯留タンクに溜められた水溶性切削油に浸るようにハイブリッドセラミックを取り付けるセラミック取付部と、
前記貯留タンク内の水溶性切削油に微細な気泡を供給する曝気装置と、
前記貯留タンクに溜められた水溶性切削油から異物を取り除く異物除去部と
を備えることを特徴とする切削油腐敗防止装置。
【請求項2】
貯留タンクに水溶性切削油を給油するための給油ポンプと、
前記給油ポンプから供給された水溶性切削油を通す給油路を更に備え、
前記給油路は、前記セラミック取付部に接続されていることを特徴とする
請求項1に記載の切削油腐敗防止装置。
【請求項3】
前記セラミック取付部は、前記給油路から導入された水溶性切削油の流路に前記ハイブリッドセラミックを配置し、該にハイブリッドセラミックに該水溶性切削油を接触させることを特徴とする請求項1又は2に記載の切削油腐敗防止装置。
【請求項4】
前記異物除去部により、前記貯留タンクに溜められた水溶性切削油から取り除かれた異物を溜める異物タンクを備えることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の切削油腐敗防止装置。
【請求項5】
前記ハイブリッドセラミックは、前記水溶性切削油が表面に接触するとき、該水溶性切削油中の水成分に対し制菌性を付与するものであることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の切削油腐敗防止装置。
【請求項6】
前記ハイブリッドセラミックは、前記水溶性切削油が表面に接触するとき、該水溶性切削油中の水成分の物性を改変することにより、該水成分に前記制菌性を付与するものであることを特徴とする請求項5に記載の切削油腐敗防止装置。
【請求項7】
水溶性切削油剤原液を水により希釈してなり、貯留タンクに溜められた水溶性切削油の腐敗を防止する切削油腐敗防止方法において、前記貯留タンクに溜められた水溶性切削油に浸るようにハイブリッドセラミックを取り付け、前記貯留タンク内の水溶性切削油に微細な気泡を供給し、前記貯留タンクに溜められた水溶性切削油における嫌気性環境の緩和並びに該水溶性切削油からの異物の除去を行うことを特徴とする切削油腐敗防止方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−230277(P2011−230277A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105751(P2010−105751)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(502370281)都市拡業株式会社 (3)
【出願人】(309017817)藤沢工機株式会社 (1)
【Fターム(参考)】