説明

切削用ビット及び既設マンホール取付管渠の耐震化工法

【課題】 本発明は、コア本体の円筒体の厚さを変えないで切削される環状空隙幅をより大きくすることが出来る切削用ビット及びこれを用いた既設マンホール取付管渠の耐震化工法を提供することを可能にすることを目的としている。
【解決手段】 円筒形状のコア本体5の軸方向端面5aに該コア本体5の軸方向に突出して所定のピッチで複数設けられた第1の切削刃6と、該第1の切削刃6が設けられたコア本体5の軸方向端部の外周面5bに該コア本体5の径方向に突出して所定のピッチで複数設けられた第2の切削刃7とを有する構成であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として下水道用管渠として既設マンホールと管体との結合部分に耐震性を付加するために管体周囲に空隙を形成するための切削用ビット及びこれを用いた既設マンホール取付管渠の耐震化工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、既設マンホールの壁面を貫通して一体化された管体はモルタル等により剛接合されているため地震発生時にはその接合部分が折れ易い。そこで、本発明者らは既設マンホールの耐震化工法を特許文献1により提案している。特許文献1の切削用ビットは、円筒形状のコア本体の軸方向端部に該コア本体の軸方向に突出してダイヤモンドチップを設けた構成であり、該切削用ビットにより切削される環状空隙の幅は概ね16mmに設定されていた。そして、切削用ビットにより確保された、この環状空隙内に弾性材を充填した場合に確保出来る耐震性能は、マンホールの壁面に対する管体の屈曲角度が1°程度、マンホールと管体との水平変位が40mm程度である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−40751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、30m〜50m離間したマンホール間の管体相互が可撓性を有する接続部材によりそれぞれ連結された場合には、耐震性能は特許文献1の程度でも十分であったが、例えば、既設管の内部にライナー等を施した更生管(自立管)のようにマンホール間の管体が一体的に構成され、且つマンホールに剛接合されるような場合には、地震の発生等により地盤の液状化による地盤沈下の影響でマンホール間で一体化された管体の中央部が下に凸の湾曲状態となりその沈下量が大きくなる。この場合の耐震性能として、マンホールの壁面に対する管体の屈曲角度が5°程度、マンホールの壁面に対する管体の水平方向の移動量である抜き出し量が100mm程度が望まれている。
【0005】
そのためには、弾性材の弾性性能をより柔らかくすれば可撓性能は向上するが、弾性材が伸びると該弾性材の断面は薄肉となって破断し易く、水密性の確保も困難になる。これを解決するためには、切削される環状空隙の幅を大きくすれば良い。
【0006】
切削用ビットにより切削される環状空隙幅をより大きくするためには、ダイヤモンドチップの幅を広くする方法があるが、コア本体の円筒体の厚さを変えずにダイヤモンドチップのみを幅広にすると、ダイヤモンドチップの取り付けが強固に出来ず、コア本体からダイヤモンドチップが脱落し易く、ランニングコストが高くなる。
【0007】
一方、コア本体の円筒体の厚さを大きくすれば、ダイヤモンドチップの取り付けが強固に出来、コア本体からダイヤモンドチップが脱落することもなくなるが、コア本体の重量が増してマンホール内部への搬入/搬出作業に時間がかかり、施工性が悪くなる上、コア本体が高価になるという問題があった。
【0008】
本発明は前記課題を解決するものであり、その目的とするところは、コア本体の円筒体の厚さを変えないで切削される環状空隙幅をより大きくすることが出来る切削用ビット及びこれを用いた既設マンホール取付管渠の耐震化工法を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するための本発明に係る切削用ビットの第1の構成は、既設マンホールの壁面を貫通して一体化された管体の外周に沿って該マンホールの壁面を環状に切削する切削用ビットであって、円筒形状のコア本体の軸方向端面に該コア本体の軸方向に突出して所定のピッチで複数設けられた第1の切削刃と、前記第1の切削刃が設けられた前記コア本体の軸方向端部の外周面に該コア本体の径方向に突出して所定のピッチで複数設けられた第2の切削刃とを有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る切削用ビットの第2の構成は、前記第1の構成において、前記第1の切削刃の個数を前記第2の切削刃の個数の1.5倍以上、且つ2.5倍以下に設定したことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る既設マンホール取付管渠の耐震化工法は、既設マンホール内から該マンホールの壁面を貫通して一体化された管体の外周に沿って、前記第1、第2の構成の切削用ビットを回転させて該マンホールの壁面を環状に切削して該マンホールの壁面と前記管体とを縁切りさせ、該切削によって形成された環状空隙内に、水密性を維持しつつ弾性変形が可能な弾性シーリング材を充填することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る切削用ビットの第1の構成によれば、第1の切削刃によりコア本体の厚さに対応した幅でマンホールの壁面を環状に切削し、それに連続して第2の切削刃により更に該第2の切削刃の高さに対応した幅でマンホールの壁面を環状に切削することが出来る。これによりコア本体の円筒体の厚さを変えずに環状の切削幅を大きくすることが出来る。またコア本体から切削刃が脱落することも無く、コア本体の重量が変わらないのでマンホール内部への搬入/搬出作業が容易に出来、施工性が良い。マンホールの壁面を環状に切削することで、該マンホールの壁面と管体とを縁切りさせ、該切削によって形成された環状空隙内に、水密性を維持しつつ弾性変形が可能な弾性シーリング材を弾性性能を変えずに充填することが出来る。これにより弾性シーリング材が破断することも無く、水密性の確保も容易である。第1、第2の切削刃による切削によって環状空隙を幅広く形成することが出来、マンホール間の管体相互が一体的に剛接合されるような場合であっても、耐震性能として、マンホールの壁面に対する管体の屈曲角度が5°程度、マンホールの壁面に対する管体の水平方向の抜き出し量が100mm程度を容易に確保することが出来る。
【0013】
また、本発明に係る切削用ビットの第2の構成によれば、前記第1の切削刃の個数を前記第2の切削刃の個数の1.5倍以上、且つ2.5倍以下に設定したことで、経済的且つ効率的に所定の環状空隙を切削することが出来る。好ましくは、前記第1の切削刃の個数を前記第2の切削刃の個数の2倍に設定すれば良い。前記第1の切削刃の個数が前記第2の切削刃の個数の1.5倍よりも小さいと第2の切削刃の個数が増えて不経済となる。また、前記第1の切削刃の個数が前記第2の切削刃の個数の2.5倍よりも大きいと第2の切削刃の個数が少なく、切削能力が低下するため施工時間がかかるといった問題がある。
【0014】
また、本発明に係る既設マンホール取付管渠の耐震化工法によれば、第1、第2の切削刃による切削によって環状空隙を幅広く形成した状態で該マンホールの壁面と管体とを縁切りさせ、該環状空隙内に、水密性を維持しつつ弾性変形が可能な弾性シーリング材を充填することで、マンホールと管体とに異なる外力が作用しても環状空隙内に充填された弾性シーリング材が弾性変形して耐震性能を確保することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は本発明に係る切削用ビットの構成を示す正面図、(b)は本発明に係る切削用ビットの構成を示す側面図である。
【図2】(a)は図1(a)の部分拡大図、(b)は図1(b)の部分拡大図である。
【図3】(a)は本発明に係る切削用ビットを用いて本発明に係る既設マンホール取付管渠の耐震化工法を実施する様子を示す断面説明図、(b)は本発明に係る切削用ビットを用いて切削した環状空隙内に水密性を維持しつつ弾性変形が可能な弾性シーリング材を充填した様子を示す断面説明図である。
【図4】コア本体の径に対応して第1の切削刃と第2の切削刃とを配置する個数の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図により本発明に係る切削用ビット及びそれを用いた既設マンホール取付管渠の耐震化工法の一実施形態を具体的に説明する。
【0017】
図1〜図3において、1は既設マンホール2の壁面3を貫通して一体化された管体4の外周に沿って該マンホール2の壁面3を環状に切削する切削用ビットである。切削用ビット1は、図1及び図2に示すように、円筒形状のコア本体5と、該コア本体5の軸方向(図1(b)の左右方向)の端面(軸方向端面)5aに該コア本体5の軸方向に突出して所定のピッチで複数設けられた第1の切削刃6と、前記第1の切削刃6が設けられたコア本体5の軸方向端部の外周面5bに該コア本体5の径方向に突出して所定のピッチで複数設けられた第2の切削刃7とを有する。第1の切削刃6と、第2の切削刃7とは、人造ダイヤモンドを金属と焼結したダイヤモンドチップにより構成される。
【0018】
本実施形態では、コア本体5の端面5aに突出して設けられた第1の切削刃6は、コア本体5の径方向の長さaが16mm、コア本体5の円周方向の長さbが20mm、コア本体5の軸方向の長さcが10mmで構成されている。一方、コア本体5の端面5a近傍の外周面5bにコア本体5の径方向に突出して設けられた第2の切削刃7は、コア本体5の円周方向の長さeが20mm以外は、該管体4の呼び径に対応して異なる寸法形状で構成される。ここで、管体4の呼び径とは、概ね管体4の内径を指す。
【0019】
例えば、管体4の呼び径が250mm〜350mmの場合には、第2の切削刃7は、コア本体5の径方向の長さdが16mm、コア本体5の円周方向の長さeが20mm、コア本体5の軸方向の長さfが13mmで構成されている。また、管体4の呼び径が400mm〜700mmの場合には、第2の切削刃7は、コア本体5の径方向の長さdが13mm、コア本体5の円周方向の長さeが20mm、コア本体5の軸方向の長さfが16mmで構成されている。
【0020】
図1及び図2は管体4の呼び径が500mmの場合の一例を示し、コア本体5に設けられる第1の切削刃6の内径gは604mm、第1の切削刃6の外径hは636mm、第2の切削刃7の外径iは654mmである。また、第1の切削刃6のコア本体5の内周面よりも内部への突出長さjは2mmであり、第1の切削刃6のコア本体5の外周面5bよりも外部への突出長さkは3mmである。
【0021】
管体4の呼び径が500mmの場合、第1の切削刃6は、コア本体5の円周を34等分して34個が等間隔で配置され、第2の切削刃7は、コア本体5の円周を17等分して17個が等間隔で配置されている。即ち、図1及び図2に示すように、コア本体5の外周面5b上に等間隔で配置された第2の切削刃7の間の端面5a上に2個の第1の切削刃6が配置されている。
【0022】
同様に、図4に示すように、管体4の呼び径が250mmの場合、第1の切削刃6は、コア本体5の円周を18等分して18個が等間隔で配置され、第2の切削刃7は、コア本体5の円周を9等分して9個が等間隔で配置されている。即ち、コア本体5の外周面5b上に等間隔で配置された第2の切削刃7の間の端面5a上に2個の第1の切削刃6が配置されている。また、管体4の呼び径が300mmの場合、第1の切削刃6は、コア本体5の円周を21等分して21個が等間隔で配置され、第2の切削刃7は、コア本体5の円周を10等分して10個が等間隔で配置されている。即ち、コア本体5の外周面5b上に等間隔で配置された第2の切削刃7の間の端面5a上に2個の第1の切削刃6が配置されている。
【0023】
また、管体4の呼び径が350mmの場合、第1の切削刃6は、コア本体5の円周を24等分して24個が等間隔で配置され、第2の切削刃7は、コア本体5の円周を12等分して12個が等間隔で配置されている。即ち、コア本体5の外周面5b上に等間隔で配置された第2の切削刃7の間の端面5a上に2個の第1の切削刃6が配置されている。また、管体4の呼び径が400mmの場合、第1の切削刃6は、コア本体5の円周を28等分して28個が等間隔で配置され、第2の切削刃7は、コア本体5の円周を14等分して14個が等間隔で配置されている。即ち、コア本体5の外周面5b上に等間隔で配置された第2の切削刃7の間の端面5a上に2個の第1の切削刃6が配置されている。
【0024】
また、管体4の呼び径が450mmの場合、第1の切削刃6は、コア本体5の円周を30等分して30個が等間隔で配置され、第2の切削刃7は、コア本体5の円周を15等分して15個が等間隔で配置されている。即ち、コア本体5の外周面5b上に等間隔で配置された第2の切削刃7の間の端面5a上に2個の第1の切削刃6が配置されている。また、管体4の呼び径が600mmの場合、第1の切削刃6は、コア本体5の円周を40等分して40個が等間隔で配置され、第2の切削刃7は、コア本体5の円周を20等分して20個が等間隔で配置されている。即ち、コア本体5の外周面5b上に等間隔で配置された第2の切削刃7の間の端面5a上に2個の第1の切削刃6が配置されている。
【0025】
また、管体4の呼び径が700mmの場合、第1の切削刃6は、コア本体5の円周を45等分して45個が等間隔で配置され、第2の切削刃7は、コア本体5の円周を20等分して20個が等間隔で配置されている。即ち、コア本体5の外周面5b上に等間隔で配置された第2の切削刃7の間の端面5a上に2個の第1の切削刃6が配置されている。
【0026】
図4に示すように、第1の切削刃6の個数が第2の切削刃7の個数の1.5倍以上、且つ2.5倍以下に設定される。
【0027】
本実施形態のコア本体5は、図1に示すように5分割されたものを図示しない連結具により連結して構成された一例であるが、径の小さいコア本体5は一体的に構成される。
【0028】
図3は本発明に係る既設マンホール取付管渠の耐震化工法を適用した場合の一例を示す図である。図3(a)に示すように、既設マンホール2の蓋体を開放して該既設マンホール2内に芯出し装置11、ドライブ装置12、切削機本体13、切削用ビット1を搬入して該既設マンホール2内で図3(a)に示すように組み立てる。切削用ビット1はコア本体5の軸方向の一端部に設けられた固定板5cの固定用孔5c1にボルト止め等により切削機本体13の油圧回転駆動部が連結され、該コア本体5の回転中心軸14の一端部が芯出し装置11により芯出しされる。切削機本体13及び切削用ビット1は、油圧式のドライブ装置12により既設マンホール2内を水平方向(図3(a)の左右方向)に移動可能に支持される。
【0029】
そして、切削機本体13を回転駆動して切削用ビット1を回転させると共に、ドライブ装置12により切削機本体13及び切削用ビット1を図3(a)の右方向に移動させて既設マンホール2内から該マンホール2の壁面3を貫通して一体化された管体4の外周に沿って、該マンホール2の壁面3を第1の切削刃6と第2の切削刃7により環状に切削して該マンホール2の壁面3と管体4とを縁切りさせる。そして、図3(b)に示すように、第1の切削刃6と第2の切削刃7との切削によって形成された環状空隙8内に水密性を維持しつつ弾性変形が可能なウレタン樹脂製、シリコン樹脂製、或いは吸水材を含有する水膨張ゴム材等の弾性シーリング材9を充填する。尚、環状空隙8内のマンホール外側には、水膨張性を有したポリウレタンフォーム等のバックアップ材10が充填され、貫通穴からなる環状空隙8内に弾性シーリング材9を充填する際のバックアップを行う。図3(b)では、環状空隙8の切削幅(管体4の径方向の長さ)が25mm以上とされ、弾性シーリング材9の厚さ(管体4の軸方向の長さ)を30mm以上とした一例である。環状空隙8の切削幅が25mmの場合にはバックアップ材10の断面は30mm×30mmのものが使用される。
【0030】
上記切削用ビット1によれば、第1の切削刃6によりコア本体5の厚さに対応した幅でマンホール2の壁面3を環状に切削し、それに連続して第2の切削刃7により更に該第2の切削刃7の高さに対応した幅でマンホール2の壁面3を環状に切削することが出来る。これによりコア本体5の円筒体の厚さを変えずに環状の切削幅を大きくすることが出来る。またコア本体5から第1の切削刃6が脱落することも無く、コア本体5の重量が変わらないのでマンホール2内部への搬入/搬出作業が容易に出来、施工性が良い。
【0031】
マンホール2の壁面3を環状に切削することで、該マンホール2の壁面3と管体4とを縁切りさせ、該切削によって形成された環状空隙8内に、水密性を維持しつつ弾性変形が可能な弾性シーリング材9を弾性性能を変えずに充填することが出来る。これにより弾性シーリング材9が破断することも無く、水密性の確保も容易である。第1、第2の切削刃6,7による切削によって環状空隙8を幅広く形成することが出来、マンホール2間の管体4相互が一体的に剛接合されるような場合で地震の発生等により地盤の液状化による地盤沈下の影響でマンホール2間で一体化された管体4の中央部が下に凸の湾曲状態となりその沈下量が大きくなる場合であっても、耐震性能として、マンホール2の壁面3に対する管体4の屈曲角度が5°程度、マンホール2の壁面3に対する管体4の水平方向の抜き出し量が100mm程度のときに、外水圧が0.05MPaを確保するためには、第1の切削刃6と第2の切削刃7とにより切削される環状空隙8の幅(図1(a)に示す{第2の切削刃7の外径i}−{第1の切削刃6の内径g})が25mm以上確保出来れば十分であることが実験的に判明した。
【0032】
また、本発明に係る切削用ビット1によれば、第1の切削刃6の個数が第2の切削刃7の個数の1.5倍以上、且つ2.5倍以下に設定したことで、経済的且つ効率的に所定の環状空隙8を切削することが出来る。好ましくは、第1の切削刃6の個数が第2の切削刃7の個数の2倍である。第1の切削刃6の個数が第2の切削刃7の個数の1.5倍よりも小さいと第2の切削刃7の個数が増えて不経済となる。また、第1の切削刃6の個数が第2の切削刃7の個数の2.5倍よりも大きいと第2の切削刃7の個数が少なく、切削能力が低下するため施工時間がかかるといった問題がある。
【0033】
また、上記既設マンホール取付管渠の耐震化工法によれば、第1、第2の切削刃6,7による切削によって環状空隙8を幅広く形成した状態で該マンホール2の壁面3と管体4とを縁切りさせ、該環状空隙8内に、水密性を維持しつつ弾性変形が可能な弾性シーリング材9を充填することで、既設管からなる管体4の内部にライナー等を施した更生管(自立管)のようにマンホール2間の管体が一体的に構成されるような場合で地震の発生等により地盤の液状化による地盤沈下の影響でマンホール2間で一体化された管体4の中央部が下に凸の湾曲状態となりその沈下量が大きくなる場合であっても耐震性能としてマンホール2の壁面3に対する管体4の屈曲角度が5°程度、マンホール2の壁面3に対する管体4の水平方向の移動量である抜き出し量が100mm程度が確保出来、マンホール2と管体4とに異なる外力が作用しても環状空隙8内に充填された弾性シーリング材9が弾性変形して耐震性能を確保することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の活用例として、主として下水道用管渠として既設マンホールと管体との結合部分に耐震性を付加するために管体周囲に空隙を形成するための切削用ビット及びこれを用いた既設マンホール取付管渠の耐震化工法に適用出来る。
【符号の説明】
【0035】
1 …切削用ビット
2 …既設マンホール
3 …壁面
4 …管体
5 …コア本体
5a …端面
5b …外周面
5c …平板部
6 …第1の切削刃
7 …第2の切削刃
8 …環状空隙
9 …弾性シーリング材
10 …バックアップ材
11 …芯出し装置
12 …ドライブ装置
13 …切削機本体
14 …回転中心軸
a,d…第1、第2の切削刃のコア本体の径方向の長さ
b,e…第1、第2の切削刃のコア本体の円周方向の長さ
c,f…第1、第2の切削刃のコア本体の軸方向の長さ
g…第1の切削刃の内径
h…第1の切削刃の外径
i…第2の切削刃の外径
j…第1の切削刃のコア本体の内周面よりも内部への突出長さ
k…第1の切削刃のコア本体の外周面よりも外部への突出長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設マンホールの壁面を貫通して一体化された管体の外周に沿って該マンホールの壁面を環状に切削する切削用ビットであって、
円筒形状のコア本体の軸方向端面に該コア本体の軸方向に突出して所定のピッチで複数設けられた第1の切削刃と、
前記第1の切削刃が設けられた前記コア本体の軸方向端部の外周面に該コア本体の径方向に突出して所定のピッチで複数設けられた第2の切削刃と、
を有することを特徴とする切削用ビット。
【請求項2】
前記第1の切削刃の個数を前記第2の切削刃の個数の1.5倍以上、且つ2.5倍以下に設定したことを特徴とする請求項1に記載の切削用ビット。
【請求項3】
既設マンホール取付管渠の耐震化工法であって、
既設マンホール内から該マンホールの壁面を貫通して一体化された管体の外周に沿って、請求項1または請求項2に記載の切削用ビットを回転させて該マンホールの壁面を環状に切削して該マンホールの壁面と前記管体とを縁切りさせ、該切削によって形成された環状空隙内に、水密性を維持しつつ弾性変形が可能な弾性シーリング材を充填することを特徴とする既設マンホール取付管渠の耐震化工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−180673(P2012−180673A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43832(P2011−43832)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000220675)東京都下水道サービス株式会社 (98)
【出願人】(000229667)日本ヒューム株式会社 (70)
【出願人】(000120146)株式会社ハネックス (56)
【Fターム(参考)】