説明

切換え可能な強磁性ナノ粒子を含む基板

10から1000nmの範囲の平均粒子径を持つ切換え可能な強磁性ナノ粒子と結合した有機基質粒子の調製方法において、使用する強磁性ナノ粒子は、最初は非強磁性であるが温度が下がると強磁性となるナノ粒子であり、最初に分散した形で非強磁性であるナノ粒子が有機基質粒子と結合し、そして基質粒子と結合したナノ粒子は温度が下がる結果として強磁性となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断基質粒子に対応する、切換え可能な強磁性ナノ粒子に結合した有機基質粒子の調製方法に関する。また、温熱治療のためのそのようなナノ粒子の使用法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の明細書において、“強磁性”の表現は、“強磁性の”及び”“磁気を帯びた”の両方の意味を持つ。
【0003】
現状、磁性粒子は、生物学的物の標識化と操作のために様々な使用が為されている。抗体と結合した磁性粒子は、例えば、患者の磁気的診断のために使用されている。ナノメータ範囲でそのような小さな粒子を調製する上での問題点は、磁性粒子が塊や集合体を形成する傾向にあることである。これが抗体の磁性粒子への均一な付着を複雑にし、粒子サイズは望まない方法で著しく増加する。
【0004】
Fe34コロイドのような磁性粒子は、例えば、温熱治療、特に癌医療に使用される。温熱治療は、体組織が45℃を越える高い温度に晒される癌治療のタイプのものである。高温は、通常、正常な組織にマイナーな副作用だけを及ぼし、癌細胞にダメージを与え殺すことが知られている。癌細胞を殺し、セル構造を破壊することで、温熱治療は、腫瘍の大きさを減ずるために使用される。明細書中では、ラジオ波により人体の中で加熱され得る、優れた適合性を持つ磁性粒子を使用することが望ましい。
【0005】
MnFeP0.35As0.65及びMnAs等のような磁気熱量特性を有する物質の活性薬理成分ための高分子担体への結合が付加的に知られている。特許文献1は、そのような結合担体粒子について記載している。その中で、磁気熱量特性を有する材料を加熱することで、活性成分が制御された方法でリリースされ得るように、活性薬理成分の関連したポリマーマトリクスのリリース特性が変更できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO 2008/044963
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、特に、バイオマーカ、バイオセンサ、温熱治療活性成分又は医薬担体材料として使用できる、切換え可能な強磁性ナノ粒子に結合する有機基質粒子の改良した調製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的は、10から1000nmの平均粒子径を持つ切換え可能な強磁性ナノ粒子に結合する有機基質粒子を調製する本発明の方法により達成される。ここで、使用する強磁性ナノ粒子は、最初強磁性ではなく温度が低い時に強磁性になるもの、最初分散した形で非強磁性ナノ粒子が有機基質粒子に結合し、そして基質粒子に結合したナノ粒子が温度を低下させた結果として強磁性となるものである。
【0009】
上記の目的は、10から1000nmの平均粒子径を持つ切換え可能な強磁性ナノ粒子に結合する有機基質粒子を含む診断基質粒子により達成される。前記基質粒子は、分析される物質の特異的結合作用を有する。
【0010】
上記の目的は、人体又は動物の温熱治療の薬剤を調製するために温度を下げた時に強磁性となる切換え可能な強磁性ナノ粒子の使用により付加的に達成される。
【0011】
上記の目的は、温度を低下させた時に強磁性となる、10から1000nmの平均粒子径を持つ切換え可能な強磁性ナノ粒子を含む、人体又は動物の温熱治療の薬剤により付加的に達成される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】材料MnFeP0.50Si0.50の磁化特性の温度依存性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に一致して、切換え可能な強磁性ナノ粒子は、バイオマーカ、バイオセンサ、温熱治療活性成分又は医薬担体材料の調製のため、最適な方法で使用され得ることが分かっている。“切換え可能な”強磁性ナノ粒子は、最初は非強磁性であるが、温度を下げると強持性になるナノ粒子を意味するものと理解される。出発材料からナノ粒子が調製された後、最初それらは非強磁性であるが、冷却されると強磁性となる。ナノ粒子は、好ましくは最初、周囲温度(22℃)で非強磁性であり、温度を室温より下げた時に強磁性となる。
【0014】
“ナノ粒子”は、平均粒子径が10から1000nm、好ましくは20から500nm、特別には50から200nmの範囲である粒子を意味するものと理解される。平均粒子径は、好ましくはレーザ光散乱法又は電子顕微鏡により測定される。それは好ましくは、質量平均粒子径である。粒子径の下限は、周囲温度又は使用温度で粒子がまだ強磁性でなければならないという事実から生じる。これは、10nmの最少粒子径の場合の典型的なケースである。
【0015】
基質粒子を調製するために、最初非強磁性のナノ粒子は、分散、典型的に例えば、水分又は水を基礎とした分散導入される。そして、分散した形で有機基質粒子に結合する。この時点ではナノ粒子は非強磁性であるので、粒子の凝集及び平均粒子径の増加は確実に防止され得る。この分散は後に、例えば、温熱治療に使用され得る。
【0016】
有用な有機基質粒子は、望む効果を与えるどんな適切な基質粒子をも含む。有機基質粒子は、強磁性ナノ粒子と結合を許すために適切なアンカーグループを有しなければならない。例えば、有機基質粒子を強磁性ナノ粒子にコート又はシェルとして塗布することは可能である。他の付着方法も可能であるし当業者に周知である。有機基質粒子は、適切な基質粒子の広い範囲から選択することができる。バイオマーカは、例えば、抗体又は生物学的又は有機合成物質であり、それは後の段階で他の物質との相互作用に入る。特定の抗体と結合した粒子が、例えば、疾患の磁気的診断に利用される。定量的な診断のため、粒子径のバラツキが最小限に抑えられた強磁性ナノ粒子を使用することが重要である。何故なら、強磁性ナノ粒子の比率が究極的にカウントされるからである。
【0017】
バイオマーカは、例えば、環境分析、水と血液、例えば、タンパク質、炭水化物、又はホルモンの分析に使用することができる。
【0018】
バイオセンサは、例えば、液体又は気体流で生物学的成分を検出するのに役立つ。この場合、物質に対して結合サイトを有する有機基質粒子は、分析され又は定量化される。測定すべき物質の認定のため、バイオセンサは、生物学的システムを統合の様々なレベルで使用する。そのような生物学的システムは、例えば、抗体、酵素、細胞小器官又は微生物である。バイオセンサの固定された生物学的システムは、検体と相互作用する。この結果、物理化学的な変化が生じる。手術中又は手術後の血液中のグルコースの測定は、グルコースオキシダーゼ酵素の適用により可能である。水及び廃水の分析におけるバイオセンサの使用の領域は、単一成分の測定のためのバイオセンサ、毒性及び変異原生の測定のためのバイオセンサ、及び生化学的酸素要求量(BOD)の測定のためのバイオセンサに分割できる。海水浴場又は廃水のバクテリア成分は、バイオセンサにより測定できる。
【0019】
真菌株が培養されているバイオリアクタのペニシリン濃度は、バイオセンサにより測定できる。ここで使用するセンサの生体成分は酵素アシラーゼである。
【0020】
有機基質粒子は、活性薬理成分を取り上げる医薬担体材料でも良い。そのような有機ポリマー基質粒子は、例えば、WO2008/044963 に述べられている。この文献の16頁16行から17頁11行を特に参照されたい。
【0021】
基質粒子に結合できる生理活性化合物は、例えば、抗原、抗体、ヌクレオチド、ゲル形成剤、酵素、細菌、酵母、菌類、ウイルス、多糖類、脂質、タンパク質、ホルモン、炭化水素及び細胞物質である。これらは、バイオセンサ材料として使用できる。更なる記述は、WO2008/044963 に、特に17頁に記載されている。
【0022】
バイオセンサ(バイオチップ)は、バイオテクノロジにおけるバイオ解析応用のためのセンサ組成に一般に使用される。例として、疾患又は生理的状態の臨床診断に広く使用される免疫学的検定法がある。バイオセンサに関して、WO2008/044963の、17頁25行から18頁17行を参照されたい。
【0023】
バイオマーカ及びバイオセンサは、特に活性な生物学的成分の定量的測定又は濃度測定に使用される。
【0024】
究極的に得られる、強磁性ナノ粒子と結合した有機基質粒子は、磁気粒子の直径の好ましくは1.1から5倍、より好ましくは1.2から2倍の平均粒子径を持つ。
【0025】
好ましくは、切換え可能な強磁性ナノ粒子は、温度22℃又はそれより高い温度で最初、非強磁性であり、22℃より低い温度まで冷却した結果として強磁性となる。
【0026】
好ましくは、切換え可能な強磁性ナノ粒子は、最初非強磁性であるナノ粒子が最初に冷却された時に、強磁性状態に遷移する臨界温度(臨界温度1)が、その後に再加熱及び冷却される温度(臨界温度2)よりも低いような効果を示す。
【0027】
臨界温度1は、最初の冷却過程においてだけ通過する。一方、臨界温度2は、引き続いて行われる加熱/冷却過程において通過する。臨界温度1は、好ましくは22℃以下、より好ましくは<0℃、特には<−15℃、特別に好ましくは<−25℃であり、臨界温度2は、22℃以上、例えば、体温±2℃である。
【0028】
切換え可能な強磁性ナノ粒子は、全ての適切なナノ粒子から選択される。切換え可能な強磁性ナノ粒子は、好ましくはMn及び付加的にFe及び/又はAsを含む。そして、好ましくはFe2P構造又はNa-Zn-13構造を有する。代替的に、それらはLa、Fe及びSiを含んでも良い。
【0029】
より好ましくは、切換え可能な強磁性ナノ粒子材料は、Fe2P構造を有するMnFe(P/As、Si/Ge)、又はCu及び/又はFeをドーパントとして有する又は有さないMnAs、又はLaFeSiHを含む。
【0030】
“P/As”及び“Si/Ge”の記載は、それぞれの場合、リン、ヒ素又はリンとヒ素、シリコン、ゲルマニウム又はシリコンとゲルマニウムがそれぞれ存在することを意味している。
【0031】
適切な構成は、WO2008/044963 に記載されている。
【0032】
切換え可能な強磁性ナノ粒子は、好ましくは、磁気熱量特性を示す。ナノ粒子は、好ましくは、ヒステリシス及び2から6k/テスラ、例えば、磁界強度略4k/テスラの断熱温度変化を示す。ヒステリシスは、好ましくは5kである。
【0033】
本発明で使用する強磁性又は熱磁性材料は、適切などんな方法によっても調製することができる。
【0034】
強磁性又は熱磁性材料は、例えば、ボールミル内で材料のための出発元素又は出発合金を固相反応させ、続いて圧力をかけ、不活性ガス雰囲気内で焼成及び熱処理を行い、続いてゆっくりと室温まで冷却することにより調製される。そのような工程は、例えば、J. Appl. Phys. 99, 2006, 08Q107 に記載されている。
【0035】
溶融紡糸法によっても調製可能である。この方法は、より均一な元素分布を作り、改良された磁気熱量効果を導き出す。Rare Metals, Vol.25 October 2006, pages 544から549 を参照のこと。そこに記載されている方法によれば、出発元素が最初にアルゴンガス雰囲気中で誘導溶融され、溶融した状態でノズルを介して回転する銅のローラに吹き付けられる。この後に、1000℃で焼成され、室温までのゆっくりした冷却が行われる。
【0036】
加えて、調製のために、WO 2004/068512 を参照のこと。
【0037】
これらの方法により得られる材料は、度々大きな熱ヒステリシスを示す。例えば、ゲルマニウム又はシリコンに置換されたFe2Pタイプの化合物では、10K又はそれ以上の広い範囲で大きな熱ヒステリシスが観測される。
【0038】
本発明で使用される材料は、少なくとも5K、より好ましくは少なくとも6.5K、好ましくは体温と42℃を越える範囲のヒステリシスを示す。
【0039】
強磁性又は熱磁性材料の調製方法は、以下の工程を含むことが好ましい。
a)固体及び/又は液相で金属ベースの材料に対応する化学量論量で化学原子及び/又は合金を反応させる工程、
b)場合により、工程a)の反応生成物を固体に変換する工程、
c)工程a)又は工程b)からの固体を焼成及び/又は熱処理する工程、
d)工程c)からの焼成及び/又は熱処理した固体を冷却する工程。
【0040】
焼成及び/又は熱処理後に金属ベースの材料が素早く又はゆっくりと重イオン度まで冷却されると、熱ヒステリシスが確立され、大きな磁気熱量効果が達成される。
【0041】
工程a)において、後の強磁性又は熱磁性材料に存在する元素及び/又は合金は、固体又は液相の強磁性又は熱磁性材材料に対応する化学量論量で反応される。
【0042】
工程a)の反応は、密閉容器内又は押出機内で元素及び/又は合金の加熱、又はボールミル中で固相反応と結合して行うのが好ましい。特に好ましくは、固相反応、特にボールミル内で行うことである。そのような反応は原理的に周知である。上述の文献を参照されたい。後の段階で、強磁性又は熱磁性材料に存在する個々の要素の粉末、又は2つかそれ以上の個々の要素の合金の粉末は、適切な質量比で、粉末で混合される。もし必要ならば、混合物は、微粉末混合物を得るために付加的に挽いても良い。この粉末混合物は、ボールミルで加熱され、更なる粉砕と良好な混合、そして粉末混合物での固相反応へと導く。代替的に、個々の要素は選択された化学量論量で粉末として混合されそして溶融される。
【0043】
密閉容器内での組み合わされた加熱は、揮発性要素の固定と化学量論量の制御を可能にする。具体的に、リンを使用する場合、リンは開放されたシステムでは簡単に揮発する。
【0044】
反応には、固体の焼成及び/又は加熱処理が続いている。それにより、一つ又はそれ以上の工程が備えられる。例えば、工程a)で得られる固体は、焼成及び/又は加熱処理の前に加圧され得る。これにより、後のアプリケーションで熱磁性材料の高密度が実現できるように材料の密度が高められ得る。加圧はそれ自体周知であるし、加圧補助装置を用いても、又は用いなくても実行することができる。加圧のために適切なモールドを使用することが可能である。加圧により、所望の3次元構造の成形体を得ることは既に可能である。加圧には、工程c)の焼成及び/又は熱処理、工程d)の冷却又は水に入れて冷やすことが続いて行われる。
【0045】
ナノ粒子を調製するために、研削が引き続き行われる
【0046】
代替的にボールミルから得られる固体を溶融紡糸工程に送っても良い。溶融紡糸工程それ自体は周知であるし、例えば、Rare Metals, Vol.25, October 2006, pages 544から549、及びWO 2004/068512 に記載されている。
【0047】
溶融紡糸工程は、続く焼成及び加熱処理が短くできるので、高い工程速度を達成する。特に工業的規模で、強磁性又は熱磁性材料の調製を、より経済的に行うことが可能である。噴霧乾燥も、とりわけ所望の粒子径が簡単に確立できるので、高い処理速度につながる。
【0048】
十分に高いヒステリシス値を得るために、冷却はあまり速すぎてはいけない。
【0049】
代替的に、工程b)で噴霧冷却を実行しても良い。ここで、工程a)からの構成物は噴霧タワーに噴霧される。噴霧タワーは、例えば、付加的に冷却される。噴霧タワー内では、103から105K/s、特には略104K/sの冷却速度がしばしば達成される。噴霧冷却は、単分散粒子を得るために、電界中で行われる。
【0050】
固体の焼成及び/又は加熱処理は工程c)で、焼成のために好ましくは最初500から1600℃の範囲で、そして加熱処理のために低い温度で行われる。これらの数値は特に粉末に当てはまる。
【0051】
焼成は、好ましくは1から50時間、より好ましくは2から20時間、特別には5から15時間、実行される。加熱処理は、好ましくは10から100時間、より好ましくは10から60時間、特別には30から50時間、実行される。厳密な時間は、材料に合わせて実際の要求に応じて調整される。
【0052】
溶融紡糸工程を使用する場合、焼成又は加熱処理の期間は、著しく短くすることができる。例えば、5分から5時間、好ましくは10分から1時間である。焼成に10時間及び加熱処理に50時間といった通常の値に比べると、これは主要な時間の優位性を結果として生じる。
【0053】
焼成/加熱処理は、材料が更に圧縮されるように、粒界の部分溶融を結果として生じる。
【0054】
工程b)での溶融及び急速な又はゆっくりとした冷却は、工程c)の期間をかなり減ずる。これは、強磁性又は熱磁性材料の連続調製を可能にする。
【0055】
本発明の特に好ましい調製方法のシーケンスは、
a)ボールミルで強磁性又は熱磁性材料に対応する量子化学論的な化学要素及び/又は合金の固相反応工程、
b)工程a)で得られる材料の溶融紡糸又はシェーピング工程、
c)工程b)で得られる固体を、430から1200℃、好ましくは800から1000℃の範囲の温度で、20秒又は1分から5時間、好ましくは30分から2時間、加熱処理する工程、
d)工程c)で得られる加熱処理をした固体を、水で冷やす又は冷却する工程
である。
【0056】
代替的に、工程c)で、結果として得られるリボンを砕いて粉末にすることも可能である。
【0057】
強磁性ナノ粒子の粒径は、好ましくは、前述したようにレーザ光散乱法により測定される。
【0058】
本発明に一致して、温度が低い時に強磁性となる切換え可能な強磁性ナノ粒子は、人体又は動物の温熱治療の薬剤を調整するために使用される。これらのナノ粒子は、好ましくは磁気熱量特性を有する。温熱治療は、最初に詳しく述べたように、特に癌治療に役立つ。
【0059】
本発明は、人体又は動物の温熱治療の薬剤にも関係する。それは、温度が下げられた時に、前述のように強磁性になる切換え可能な強磁性ナノ粒子を含む。
【0060】
粒子は、冷却の過程で強磁性になることが好ましい。特に、癌治療の場合には、ナノ粒子は37から42℃の範囲の温度で強磁性にならなければならない。本発明の一つの実施の形態では、それよりも高温で、又は最大温度42℃で、それらは強磁性を失う。結果として、オーバヒーティングの過程でヒステリシスはスイッチオフとなり、物質は強磁性特性を簡単に排泄され得る。
【0061】
この熱的スイッチオフは、癌が破壊される温度よりも高い温度で起きるべきである。
【0062】
全ての応用に関して、強磁性ナノ粒子は周囲温度(22℃)又は使用温度で強磁性であることが特に重要である。
【0063】
使用する好ましい材料は、MnFe(P,Si)であり、それは調製した後、室温(22℃)で非磁性であるという予測できない特性を示す。特別な臨界温度から数度、簡単に冷却された後だけ、それは室温及び室温よりも高い温度で強磁性である。対応する特性を図1に示す。この図は、MnFeP0.50Si0.50の磁化特性の温度依存性を示す。曲線(1)は、新しい効果、すなわち最初の冷却過程の挙動について示す。曲線(2)は、続く加熱過程での挙動を示し、曲線(3)は、続く冷却過程での挙動を示す。強磁性材料のヒステリシスは、それは5Kよりも著しく大きいが、非常に容易に人目を引く。
【0064】
出発段階で非磁性特性は、磁性バイオマーカはこれまでよりもかなり簡単に調製できるように、抗体の付着をかなり簡単にすることができる。試験管内の応用に関しては、生体適合性は重要ではない。そして、適切な有機基質粒子への結合が可能である。生体内での使用の場合、有機基質粒子の人体又は動物への最大の適合性が保証されねばならない。低体温癌治療加えて、本発明の粒子はNMRの造影剤としても使用できる。
【0065】
温熱治療の場合、図に示した材料は、一旦T2以上に加熱されると、もはや強磁性ではなくなり、簡単な方法で排泄できるという付加的な利点もある。
【0066】
本発明は、以下の実施例により詳細に示される。
【0067】
(実施例1)
MnFePGeの圧縮された試料を含む石英アンプルを、粉末を焼成するため1100℃で10時間、保持した。この焼成に続いて、均質化を図るため、続いて650℃で60時間の加熱処理が行われた。そして、炉の中で室温までゆっくりと冷却した。XRDパターンは、全ての試料がFe2Pタイプ構造に結晶化していることを示した。以下の組成物が得られた。
【0068】
得られた組成物は、Mn1.1Fe0.90.81Ge0.19、Mn1.1Fe0.90.78Ge0.22、Mn1.1Fe0.90.75Ge0.25及びMn1.2Fe0.80.81Ge0.19である。熱ヒステリシスとして観測された値は、これらの試料の各々について10Kよりも大きい。更に急速な冷却はヒステリシスを減ずる。
【0069】
熱ヒステリシスは、0.5テスラの磁界で測定した。
【0070】
キュリー温度は、熱ヒステリシスの値と同様に、Mn/Feの比及びGeの濃度を変えることで調節できる。
【0071】
キュリー温度及び熱ヒステリシスは、Mn/Feの比を増加させると低下する。結果として、MnFePGe化合物は、低磁界で比較的大きなMCE値を示す。
【0072】
(実施例2)
実施例1で述べたように、材料MnFeP0.50Si0.50を調製した。磁化特性のT依存性を図1に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
10から1000nmの範囲の平均粒子径を持つ切換え可能な強磁性ナノ粒子と結合した有機基質粒子の調製方法において、
使用する前記強磁性ナノ粒子は、最初は非強磁性であるが温度が下がると強磁性となるナノ粒子であり、
最初に分散した形で非強磁性であるナノ粒子が前記有機基質粒子と結合し、そして前記基質粒子と結合したナノ粒子は温度が下がる結果として強磁性となることを特徴とする調製方法。
【請求項2】
前記切換え可能な強磁性ナノ粒子は、最初に22℃以上の温度で非強磁性であり、22℃よりも低い温度に冷却した結果として強磁性になることを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
前記切換え可能な強磁性ナノ粒子は、最初に非強磁性ナノ粒子が最初に冷却される時、強磁性状態に遷移する臨界温度(臨界温度1)は続く再加熱及び冷却温度(臨界温度2)よりも低い、新しい効果を示すことを特徴とする請求項1又は2の何れか1項に記載の調製方法。
【請求項4】
前記臨界温度1は、22℃より低く、前記臨界温度2は22℃より高いことを特徴とする請求項3に記載の調製方法。
【請求項5】
前記切換え可能な強磁性ナノ粒子と結合する前記基質粒子は、バイオマーカ、バイオセンサ、温熱療法の有効成分又は医薬担体材料であることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の調製方法。
【請求項6】
前記切換え可能な強磁性ナノ粒子は、Mn及び付加的にFe及び/又はAsを含み、好ましくはFe2P又はNa−Zn−13構造を持ち、又はLa、Fe及びSiを含むことを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の調製方法。
【請求項7】
前記切換え可能な強磁性ナノ粒子は、Fe2P構造を持つMnFe(P/As,Si/Ge)又はドーパントとしてCu及び/又はFeを持つ又は持たないMnAs、又はLaFeSiHを含むことを特徴とする請求項6に記載の調製方法。
【請求項8】
前記切換え可能な強磁性ナノ粒子は、磁気熱量特性を示すことを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の調製方法。
【請求項9】
10から1000nmの範囲の平均粒子径を持つ切換え可能な強磁性ナノ粒子に結合した有機基質粒子を含む診断基質粒子であって、前記基質粒子は、分析される物質に対して特異的結合作用を持つことを特徴とする診断基質粒子。
【請求項10】
前記診断基質粒子は、請求項1から8の何れか1項に記載した特徴を示すことを特徴とする請求項9に記載の診断基質粒子。
【請求項11】
人体又は動物の温熱治療の薬剤を調製するための、温度が低下した時に強磁性になる切換え可能な強磁性ナノ粒子の使用法。
【請求項12】
前記切換え可能な強磁性ナノ粒子は、磁気熱量特性を有することを特徴とする請求項11に記載の使用法。
【請求項13】
癌治療用であることを特徴とする請求項11又は12の何れか1項に記載の使用法。
【請求項14】
10から1000nmの範囲の平均粒子径を持つ切換え可能な強磁性ナノ粒子を含み、温度が下げられた時に強磁性となることを特徴とする、人体又は動物の温熱治療のための薬剤。

【図1】
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【公表番号】特表2013−505569(P2013−505569A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529291(P2012−529291)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【国際出願番号】PCT/EP2010/063733
【国際公開番号】WO2011/033084
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】