説明

切換バルブ

【課題】リサイクル分離機能を備えた高速液体クロマトグラフにおいて、移動相の供給流路とリサイクル流路の切換えを容易に行なえる、切換バルブを提供する。
【解決手段】外部に連通する複数のオリフィスを形成したステ−タ−2を有し、前記ステ−タ−2に摺接かつ回動可能に配置され、かつ前記オリフィスに連通可能な複数のロ−タ−溝を形成したロ−タ−36を有する。前記ロ−タ−36のロ−タ−シール面をステ−タ−2に液密に付勢した切換バルブ1であり、前記ロ−タ−36をアウタ−ロ−タ−37と該ロ−タ−37の内側に配置するインナ−ロ−タ−38とで構成する。前記アウタ−ロ−タ−37とインナ−ロ−タ−38をステ−タ−2側へそれぞれ移動可能に設ける。前記アウタ−ロ−タ−37とインナ−ロ−タ−38の後方に各ロ−タ−37,38をステ−タ−2側へ付勢する付勢手段28,31を別々に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばリサイクル分離機能を備えた高速液体クロマトグラフ(以下、HPLCと呼ぶ)に好適で、簡単な構成によってロ−タ−シール面に異なる耐圧を容易に得られ、ロータ−の磨耗に応じて、その交換を合理的に行なえるとともに、高圧流体の給排を正確かつ円滑に行なえ、しかも製作の容易化と低廉化、並びに小形軽量化を図れ、また単一のバルブ操作によって、移動相の供給流路とリサイクル流路の切換えを容易に行なえる、切換バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
リサイクル分離機能を備えた液体クロマトグラフ(以下、LCと呼ぶ)のなかに、リサイクルバルブと切換バルブを備え、溶離液に試料を導入し、試料の目的成分が溶出したところで、リサイクルバルブを切換え、同時に切換バルブを切換えて、溶離液と試料をリサイクル流路に循環させ、リサイクル分離するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、前記LCは、リサイクルバルブと切換バルブを要し、部品点数が増え構成が複雑になって高価になるとともに、それらの切換えを要して、操作が煩雑になる等の問題があった。
【0004】
前記問題を解決するものとして、リサイクルバルブと切換バルブを単一の8ポ−ト切換バルブで構成し、バルブの個数を低減し、バルブの切換え操作の煩雑を解消するようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
しかし、前記LCは、8ポ−ト切換バルブにバッファ流路を接続するとともに、リサイクル流路に試料注入装置を介挿しているため、リサイクル流路のデッドボリュ−ムが増加して試料が拡散し、リサイクル分離精度に十分な結果を得られなかった。
【0006】
ところで、この種の切換バルブのなかに、外部に開口したポ−トに連通するオリフィスを形成したステ−タ−と、前記オリフィスに連通可能な複数のロ−タ−溝を形成したロ−タ−とを備え、該ロ−タ−の背部に従来の皿バネに代わってアクチュエ―タを装着し、該アクチュエ―タに流路の圧力を感知する圧力センサと増幅器の信号を入力し、前記流路の圧力によってアクチュエ―タの軸方向の寸法を変化させ、ロ−タ−とステ−タ−との摺動面に要するシール圧を発生させるようにしたものがある(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
しかし、前記アクチュエ―タの寸法変化または皿バネの付勢力は、保持板を介してロ−タ−とステ−タ−との摺動面全域に一様に作用し、前記オリフィスとロ−タ−溝にシール圧を画一的に作用させているため、ロ−タ−シ−ル面の耐圧が画一的に設定されるという問題があった。
【0008】
このような問題を解決するものとして、ロ−タ−シール面に複数のロ−タ−溝を同心円上の内外位置に設け、試料の注入量に応じて試料注入装置を切換えるようにしたものがある。(例えば、特許文献4参照)。
【0009】
しかし、前記切換バルブは、ロ−タ−シール面とステ−タ−の摺動面の全域を一様な圧力で接触させているため、外側のロ−タ−溝の耐圧を基準に内側のロ−タ−溝の耐圧が設定され、概して内側のロ−タ−溝の耐圧が最適値よりも低く設定される傾向があり、しかもロ−タ−シール面を同一部材で構成しているため、周速度の大きな外側のロ−タ−シール面が内側よりも早く磨耗し、内側は十分使用できるにも拘わらず、ロ−タ−全体を交換せざるを得なくなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第2573884号公報
【特許文献2】特開2006−138699号公報
【特許文献3】特開平1−307575号公報
【特許文献4】特開2009−276110号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はこのような問題を解決し、例えばリサイクル分離機能を備えた高速液体クロマトグラフ(以下、HPLCと呼ぶ)に好適で、簡単な構成によってロ−タ−シール面に異なる耐圧を容易に得られ、ロータ−の磨耗に応じて、その交換を合理的に行なえるとともに、高圧流体の給排を正確かつ円滑に行なえ、しかも製作の容易化と低廉化、並びに小形軽量化を図れ、また単一のバルブ操作によって、移動相の供給流路とリサイクル流路の切換えを容易に行なえる、切換バルブを提供することを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明は、外部に連通する複数のオリフィスを形成したステ−タ−と、該ステ−タ−に摺接かつ回動可能に配置され、かつ前記オリフィスに連通可能な複数のロ−タ−溝を形成したロ−タ−とを備え、該ロ−タ−のロ−タ−シール面をステ−タ−に液密に付勢した切換バルブにおいて、前記ロ−タ−をアウタ−ロ−タ−と該ロ−タ−の内側に配置するインナ−ロ−タ−とで構成し、前記アウタ−ロ−タ−とインナ−ロ−タ−をステ−タ−側へそれぞれ移動可能に設け、前記アウタ−ロ−タ−とインナ−ロ−タ−の後方に各ロ−タ−をステ−タ−側へ付勢する付勢手段を別々に配置し、簡単な構成によって、ロ−タ−シール面に異なる耐圧を容易に得られ、高圧流体の給排を円滑かつ能率良く行なえ、しかも容易かつ安価に製作し得るようにしている。
したがって、前記切換バルブをリサイクル分離機能を備えたHPLCに使用することによって、単一のバルブ操作によって、移動相の供給流路とリサイクル流路の切換えを容易に行なえ、HPLCの使用に好適にしている。
【0013】
請求項2の発明は、前記アウタ−ロ−タ−とインナ−ロ−タ−とを同期回動可能にし、ロ−タ−の所期の作動を得られるようにしている。
請求項3の発明は、前記アウタ−ロ−タ−とインナ−ロ−タ−とを同一または異質部材で構成し、同一部材で構成する場合は、例えば構成の簡潔化と製作の容易化を図れ、また異質部材で構成する場合は、周速度ないし摩耗の相違や耐圧性を基に、例えば耐摩耗性または化学的耐久性の相違する異質部材で構成することによって、合理的な設計を促すようにしている。
請求項4の発明は、前記アウタ−ロ−タ−とインナ−ロ−タ−とを別々に着脱可能に設け、それらが経年的な使用によって磨耗しシール作用が低下した際の交換を独自かつ別々に行なえるようにし、その交換を小規模で容易に行なえるとともに、従来の一体形のロ−タ−のように、ロ−タ−全体を交換する不合理を解消し得るようにしている。
請求項5の発明は、アウタ−ロ−タ−とインナ−ロ−タ−を収容するバルブハウジングの内部にバルブシャフトを回動かつ軸方向に移動可能に設け、該バルブシャフトの端部に前記インナ−ロ−タ−を装着するとともに、前記バルブシャフトの端部周面に回動シリンダを軸方向に摺動かつ係合可能に配置し、該回動シリンダの端部に前記アウタ−ロ−タ−を装着し、簡単な構成によって、アウタ−ロ−タ−とインナ−ロ−タ−の同期回動を実現可能にしている。
【0014】
請求項6の発明は、前記回動シリンダにフランジを設け、該フランジの後方に付勢手段を係合可能に配置するとともに、前記バルブシャフトの周面にフランジを設け、該フランジの後方に付勢手段を係合可能に配置し、別々の付勢手段を用いることによって、アウタ−ロ−タ−とインナ−ロ−タ−のそれぞれの付勢を独自かつ所期の通りに実現し、所期の耐圧の設定を実現可能にしている。
請求項7の発明は、前記ステ−タ−のシ−ル面に8個以上のオリフィスを形成し、ステ−タ−に形成するポ−トと、シ−ル面に形成するオリフィスの数を共に従来よりも削減し、構成の簡潔化と製作の容易化を図り、切換バルブの小形軽量化を図るとともに、HPLCの流路切換え用に応じられるようにしている。
請求項8の発明は、前記ロ−タ−のロ−タ−シール面に前記オリフィスに連通可能な4個以上のロ−タ−溝を形成し、前記シ−ル面に形成するロ−タ−溝の数を従来よりも削減し、構成の簡潔化と製作の容易化を図り、切換バルブの小形軽量化を図るとともに、HPLCの流路切換え用に応じられるようにしている。
【0015】
請求項9の発明は、前記オリフィスを大小異径に形成し、かつこれらを同心円上の内外位置に配置し、ステ−タ−のシ−ル面にオリフィスを合理的に配置し、前記シ−ル面ないしステ−タ−の小形軽量化を図るようにしている。
請求項10の発明は、前記ロ−タ−溝の溝幅を大小異幅に形成し、かつこれらを同心円上の内外位置に配置し、ロ−タ−シール面にロ−タ−溝を合理的に配置し、前記ロ−タ−シ−ル面ないしロ−タ−の小形軽量化を図るようにしている。
請求項11の発明は、前記ステ−タ−の外部に複数の導管の一端を接続し、該導管の他端を移動相の供給流路と、送液ポンプと分離カラムと検出器とを介挿し、かつ導入した試料を循環可能にしたリサイクル流路とに接続し、前記供給流路とリサイクル流路とを切換え可能にし、単一のバルブ構成によって、移動相の供給流路とリサイクル流路の切換えを容易に行なえ、HPLCの使用に好適にしている。
請求項12の発明は、前記付勢手段はバネで、皿バネやコイルバネ、板バネ等の汎用な構成によって容易かつ安価に製作し得るようにしている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明は、ロ−タ−をアウタ−ロ−タ−と該ロ−タ−の内側に配置するインナ−ロ−タ−とで構成し、前記アウタ−ロ−タ−とインナ−ロ−タ−をステ−タ−側へそれぞれ移動可能に設け、前記アウタ−ロ−タ−とインナ−ロ−タ−の後方に各ロ−タ−をステ−タ−側へ付勢する付勢手段を別々に配置したから、簡単な構成によって、ロ−タ−シール面に異なる耐圧を容易に得られ、高圧流体の供給を円滑かつ能率良く行なえるとともに、これを容易かつ安価に製作することができる。
したがって、前記切換バルブをリサイクル分離機能を備えたHPLCに使用することによって、単一のバルブ操作によって、移動相の供給流路とリサイクル流路の切換えを容易に行なえ、HPLCの使用に好適な効果がある。
【0017】
請求項2の発明は、前記アウタ−ロ−タ−とインナ−ロ−タ−とを同期回動可能にしたから、ロ−タ−の所期の作動を得られる効果がある。
請求項3の発明は、前記アウタ−ロ−タ−とインナ−ロ−タ−とを同一または異質部材で構成したから、同一部材で構成する場合は、例えば構成の簡潔化と製作の容易化を図れ、また異質部材で構成する場合は、周速度ないし摩耗の相違や耐圧性を基に、例えば耐摩耗性または化学的耐久性の相違する異質部材で構成することによって、合理的な設計を促すことができる。
請求項4の発明は、前記アウタ−ロ−タ−とインナ−ロ−タ−とを別々に着脱可能に設けたから、それらが経年的な使用によって磨耗しシール作用が低下した際の交換を独自かつ別々に行なえ、その交換を小規模で容易に行なえるとともに、従来の一体形のロ−タ−のように、ロ−タ−全体を交換する不合理を解消し得る効果がある。
請求項5の発明は、アウタ−ロ−タ−とインナ−ロ−タ−を収容するバルブハウジングの内部にバルブシャフトを回動かつ軸方向に移動可能に設け、該バルブシャフトの端部に前記インナ−ロ−タ−を装着するとともに、前記バルブシャフトの端部周面に回動シリンダを軸方向に摺動かつ係合可能に配置し、該回動シリンダの端部に前記アウタ−ロ−タ−を装着したから、簡単な構成によって、アウタ−ロ−タ−とインナ−ロ−タ−の同期回動を実現することができる。
【0018】
請求項6の発明は、前記回動シリンダにフランジを設け、該フランジの後方に付勢手段を係合可能に配置するとともに、前記バルブシャフトの周面にフランジを設け、該フランジの後方に付勢手段を係合可能に配置したから、別々の付勢手段を用いることによって、アウタ−ロ−タ−とインナ−ロ−タ−のそれぞれの付勢を独自かつ所期の通りに得られ、所期の耐圧の設定を実現することができる。
請求項7の発明は、前記ステ−タ−のシ−ル面に8個以上のオリフィスを形成したから、ステ−タに形成するポ−トと、シ−ル面に形成するオリフィスの数を共に従来よりも削減し、構成の簡潔化と製作の容易化を図り、切換バルブの小形軽量化を図るとともに、HPLCの流路切換え用に応じられる効果がある。
請求項8の発明は、前記ロ−タ−のロ−タ−シール面に前記オリフィスに連通可能な4個以上のロ−タ−溝を形成したから、前記シ−ル面に形成するロ−タ−溝の数を従来よりも削減し、構成の簡潔化と製作の容易化を図り、切換バルブの小形軽量化を図るとともに、HPLCの流路切換え用に応じられる効果がある。
請求項9の発明は、前記オリフィスを大小異径に形成し、かつこれらを同心円上の内外位置に配置したから、ステ−タ−のシ−ル面にオリフィスを合理的に配置し、前記シ−ル面ないしステ−タ−の小形軽量化を図ることができる。
【0019】
請求項10の発明は、前記ロ−タ−溝の溝幅を大小異幅に形成し、かつこれらを同心円上の内外位置に配置したから、ロ−タ−シール面にロ−タ−溝を合理的に配置し、前記ロ−タ−シ−ル面ないしロ−タ−の小形軽量化を図ることができる。
請求項11の発明は、前記ステ−タ−の外部に複数の導管の一端を接続し、該導管の他端を移動相の供給流路と、送液ポンプと分離カラムと検出器とを介挿し、かつ導入した試料を循環可能にしたリサイクル流路とに接続し、前記供給流路とリサイクル流路とを切換え可能にしたから、単一のバルブ構成によって、移動相の供給流路とリサイクル流路の切換えを容易に行なえ、HPLCの使用に好適な効果がある。
請求項12の発明は、前記付勢手段はバネで、皿バネやコイルバネ、板バネ等の汎用な構成によって容易かつ安価に製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に適用した切換バルブのバルブヘッドの外面を示す正面図である。
【図2】図1のA−A線に沿う拡大断面図である。
【図3】本発明に適用した切換バルブのロ−タ−を示す正面図で、アウタ−ロ−タ−にインナ−ロ−タ−を装着している。
【図4】本発明に適用した切換バルブのロ−タ−を分解して示す正面図で、(a)はアウタ−ロ−タ−を示し(b)はインナ−ロ−タ−を示している。
【図5】本発明の切換バルブをHPLCの流路切換え用に適用した際の通常使用時を示す説明図である。
【0021】
【図6】本発明の切換バルブをHPLCの流路切換え用に適用した際のリサイクル時を示す説明図である。
【図7】本発明の第2の実施形態の要部を示す拡大断面図である。
【図8】本発明の第3の実施形態の要部を示すロ−タ−の正面図で、アウタ−ロ−タ−にインナ−ロ−タ−を装着している。
【図9】前記第3の実施形態に適用した切換バルブのロ−タ−を分解して示す正面図で、(a)はアウタ−ロ−タ−を示し(b)はインナ−ロ−タ−を示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明をリサイクル分離機能を備えたHPLCの切換バルブに適用した図示の実施形態について説明すると、図1乃至図6において1はHPLCの移動相の供給流路と、リサイクル流路の流路切換機能とを備えた切換バルブで、該切換バルブ1は8ポ−ト以上の多ポ−トバルブが使用され、実施形態では10ポ−ト切換バルブを使用している。
【0023】
前記切換バルブ1は内部のデッドボリュ−ムを低減するため、バルブヘッドの機能を兼ね備えたステ−タ−2を有し、該ステ−タ−2の内側に平坦なシ−ル面2aを備え、該ステ−タ−2をボルト3を介して、筒状のバルブハウジング4に連結している。
前記ステ−タ−2の外部は略円錐台形状に形成され、その外面の内外位置に複数のポ−ト5,6が同心円上に配置され、該ポ−ト5,6にフィッティング7,8がねじ込まれ、該該フィッティング7,8に導管9a〜9dと、導管9b,9c,10aが接続されている。
【0024】
この場合、前記各導管のうち、後述する送液ポンプの吸引側の導管9cの内径を最大径に形成し、送液ポンプによる吸引作動を円滑かつ能率良く行なうようにし、また後述する検出器から切換バルブ1への導入側の導管9bの内径を中間径に形成し、検出器のセルに対する高圧負荷を防止して、セルの破壊を防止するようにし、更に後述する送液ポンプから切換バルブ1への吐出側の導管9cの内径を最小径に形成することが望ましい。
【0025】
前記ステ−タ−2の内部に、前記ポ−ト5,6に連通する斜状通路11,12が形成され、該通路11,12の傾斜角度は互いに相違し、外側の斜状通路11は内側配置の斜状通路12ものより鋭角に形成され、それらの内側端部がステ−タ−2のシール面2aの内外位置に開口している。
前記斜状通路11,12の内側端部に、大小異径のオリフィス13〜16、17〜22とが形成され、該オリフィス13〜16、17〜22が後述するロ−タ−溝に連通可能に配置されている。
実施形態では10個のオリフィスを形成しているが、HPLCの移動相の供給流路とリサイクル流路の流路切換用には、8個以上のオリフィスを形成すれば良い。
【0026】
前記バルブハウジング4の内部に大小異径の段付きのバルブ室4aが形成され、該バルブ室4aにバルブシャフト23が回動かつ軸方向に摺動可能に配置され、その一端がバルブハウジング4の外側に突出し、該突出部がロ−タ−駆動用モ−タ(図示略)に連係している。
前記バルブシャフト23の他端部は拡径され、その拡径部23aの周囲に回動シリンダ24が配置され、該シリンダ24の内面に複数のガイド溝25が軸方向に形成されている
前記バルブシャフト23の他端部に複数のドグ26が突設され、該ドグ26が前記ガイド溝25に摺動可能に嵌合している。
【0027】
前記回動シリンダ24の端部にフランジ27が形成され、該フランジ27とバルブ室4aの大径段部4bとの間に、後述のアウタ−ロ−タ−の付勢手段としてバネ28、実施形態では複数の皿バネと、軸受29とが配置されている。
前記バルブシャフト23の中間部にフランジ30等の凸部が突設され、該フランジ30と小径段部4cとの間に、後述のインナ−ロ−タ−の付勢手段としてバネ31、実施形態では複数の皿バネと、軸受32とが配置されている。
この場合、前記皿バネの代わりにコイルバネ、板バネを用いることも可能である。
【0028】
前記皿バネ28は皿バネ31よりも大径に形成され、この皿バネ28,31のばね強さは、対応するアウタ−ロ−タ−またはインナ−ロ−タ−の耐圧ないしシ−ル圧に応じて設定され、かつ皿バネ31のばね強さを皿バネ28よりも強く設定している。
【0029】
そして、前記皿バネ28の弾性によって、後述するアウタ−ロ−タ−をステ−タ−2側へ移動可能に付勢し、また前記皿バネ31の弾性によって、バルブシャフト23をステ−タ−2側へ移動可能に付勢し、後述するインナ−ロ−タ−をアウタ−ロ−タ−と別個にステ−タ−2側へ移動可能に付勢している。図中、33はバルブシャフト23の一端部側に配置した軸受である。
【0030】
前記フランジ27の端面は、バルブシャフト23の端面と同一面上に配置され、該フランジ27の端面に環状の保持板34が配置されている。前記保持板34の内側に円板状の保持板35がバルブシャフト23と同動可能に配置され、これら保持板34,35の他側面にロ−タ−36が配置されている。
【0031】
前記ロ−タ−36は、PEEK(登録商標)材等の合成樹脂製の環状のアウタ−ロ−タ−37と、該アウタ−ロ−タ−37と同質の合成樹脂製の円板状のインナ−ロ−タ−38とで構成され、該インナ−ロ−タ−38が前記アウタ−ロ−タ−37の通孔37bに軸方向に摺動可能に嵌合している。
この場合、アウタ−ロ−タ−37をPEEK材で構成し、インナ−ロ−タ−38をアウタ−ロ−タ−37と異質のグラファイトベスペル(登録商標)、デルリン(登録商標)材、等で構成することも可能である。
また、アウタ−ロ−タ−37を環状の円錐台形状に形成しているが、環状の円板状に形成することも可能である。
【0032】
前記アウタ−ロ−タ−37は、ピン39を介して前記保持板34とフランジ27の端面に固定され、また前記インナ−ロ−タ−38がピン40を介して、前記保持板35とバルブシャフト23の端面に固定されている。
この場合、実施形態のロ−タ−36は、回動手段としてバルブシャフト23をロ−タ−駆動用モ−タ(図示略)に連係しているが、前記モ−タの代わりに手動で回動させることも可能である。
【0033】
前記バルブシャフト23の回動力は、ドグ26を介して回動シリンダ24に伝達され、該シリンダ24の回動力がピン39および保持板34を介して、アウタ−ロ−タ−37に伝達可能にされている。
一方、バルブシャフト23の回動力は、ピン40および保持板35を介して、インナ−ロ−タ−38に伝達可能にされ、かつ前記アウタ−ロ−タ−37と同期回動可能にされている。
【0034】
前記アウタ−ロ−タ−37のロ−タ−シール面37aに、大小二つの円弧状のロ−タ−溝41,42が同心円上の内外位置に形成され、これらのロ−タ−溝41,42は図示のように略点対称位置に配置され、このうちロ−タ−溝41はロ−タ−溝42の略1/2の長さに形成され、それらの溝幅は同一に形成されている。
そして、移動相の供給と目的成分を分取する通常時は、前記ロ−タ−溝41に前記オリフィス13,14が連通可能に配置され、また前記ロ−タ−溝42に前記オリフィス15,16が連通可能に配置されている。
【0035】
前記オリフィス13に導管9aの一端が連通し、その他端が分取装置43に接続され、また前記オリフィス14に導管9bの一端が連通し、その他端が前記オリフィス18に接続され、該導管9bにセル44を有する検出器45と、分離カラム46とが介挿されている。
前記オリフィス15に導管9cの一端が連通し、その他端が前記オリフィス19に連通し、該導管9cに送液ポンプ47が介挿されている。
前記オリフィス16に導管9dの一端が連通し、その他端が溶離液48を収容した容器49に接続されている。
【0036】
前記インナ−ロ−タ−38のロ−タ−シール面38aに、同様な三つの円弧状のロ−タ−溝50〜52が同心円上に等角度位置に配置されている。
前記ロ−タ−溝50〜52の長さは前記ロ−タ−溝42の略1/4に形成され、その溝幅が前記ロ−タ−溝42の略1/2に形成されている。
このうち、前記ロ−タ−溝51は、ロ−タ−溝42の長さの略中央の放射線上に位置し、該ロ−タ−溝51を基に他のロ−タ−溝50,52を配置している。
【0037】
そして、通常時は、前記ロ−タ−溝50に前記オリフィス17,18が連通可能に配置され、また前記ロ−タ−溝51に前記オリフィス19,20が連通可能に配置され、更にロ−タ−溝52に前記オリフィス21,22が連通可能に配置されている。
前記オリフィス20に導管10aの一端が連通し、その他端が前記オリフィス22に連通し、該導管10aにプレヒートチュ−ブ53と、オ−トサンプラ−54とが介挿されている。 前記オリフィス17に導管または通路10bの一端が連通し、その他端が前記オリフィス21に連通している。
【0038】
前記プレヒ−トチュ−ブ53は、リサイクル目的成分が溶出するまで溶離液48を流入され、該溶離液48を前記チュ−ブ53に付設したヒ−タ−(図示略)によって加温可能にしている。
なお、実施形態では導管10aにオ−トサンプラ−54を配置しているが、これを分離カラム46より上流側に配置することも可能であり、また分離カラム46とプレヒ−トチュ−ブ53を、オーブン(図示略)内に配置することも可能である。
【0039】
このように構成した切換バルブは、概括するとバルブヘッドの機能を備えたステ−タ−2と、該ステ−タ−2を取付けるバルブハウジング4と、バルブハウジング4に回動かつ軸方向に移動可能に設けたバルブシャフト23と、バルブシャフト23と同期回動可能な回動シリンダ24と、回動シリンダ24と同動可能な保持板34と、前記バルブシャフト23と同動可能な保持板35と、前記保持板34と同動可能なアウタ−ロ−タ−37と、前記保持板35と同動可能なインナ−ロ−タ−37と、アウタ−ロ−タ−37とインナ−ロ−タ−37の付勢手段である皿バネ28,31と、で構成されている。
【0040】
前記ステ−タ−2を異形の円盤形に形成し、その外面に4つのポ−ト5と6つのポ−ト
6を形成し、内側に平滑なシ−ル面2aを形成し、該シ−ル面2aに前記ポ−ト5,6に連通する大小異径のオリフィス13〜16、17〜22を同心円上の内外位置にに形成する。
前記バルブハウジング4を略円筒状に形成し、その内部に段付きのバルブ室4aを形成し、その前後位置に大小異径の大径段部4bと小径段部4cを形成し、その内部にバルブシャフト23を回動かつ軸方向に移動可能に収容する。
【0041】
前記バルブシャフト23を段付きの軸状に形成し、その中間部にフランジ30を突設し、また軸端部の外周に複数のドグ26を突設し、他側端部を縮径して延設する。
前記回動シリンダ24を中空筒状に形成し、その端部にフランジ27を突設し、中空部の内面に前記ドグ26と係合可能なガイド溝25を軸方向に形成する。
前記保持板34を環状の円板状に形成し、内側の保持板35を保持板34の内側に挿入可能な円板状に形成する。
【0042】
前記ロ−タ−36をアウタ−ロ−タ−37とインナ−ロ−タ−38の同質または異質の二部材で構成する。実施形態ではこれらをPEEK(登録商標)材、またはグラファイトベスペル(登録商標)材、デルリン(登録商標)等で構成している。
また、アウタ−ロ−タ−37を環状の円錐台形状または円板状に形成し、インナ−ロ−タ−38を通孔37bに嵌合可能な円板状に形成する。
前記アウタ−ロ−タ−37のロ−タ−シール面37aに、大小二つの円弧状のロ−タ−溝41,42を同心円上のに配置し、インナ−ロ−タ−38のロ−タ−シール面38aに同様な三つの円弧状のロ−タ−溝50〜52を同心円上の等角度位置に配置する。
【0043】
前記皿バネ28,31のばね強さは、対応するアウタ−ロ−タ−37またはインナ−ロ−タ−38の耐圧ないしシ−ル圧に応じて設定され、実施形態ではアウタ−ロ−タ−37に対する皿バネ28よりも、インナ−ロ−タ−38に対する皿バネ31のばね強さを強く設定している。
【0044】
このような主要な構成部材を用いて切換バルブを組立てる場合は、例えば回動シリンダ24にバルブシャフト23の一側端部を挿入し、ガイド溝25にドグ26を係合し、バルブシャフト23の軸端部とフランジ27の端面とを同一面上に位置付ける。
この後、フランジ27の端面に保持板34を重合し、その内側に保持板35を挿入し、該保持板35をバルブシャフト23の軸端部に重合する。そして、ピン39を保持板34とフランジ27の端面に圧入し、またピン40を保持板35とバルブシャフト23の軸端面に圧入し、保持板34,35をフランジ27とバルブシャフト23の軸端面に固定する
【0045】
次に、前記保持板34の他側端面にアウタ−ロ−タ−37を重合し、該アウタ−ロ−タ−37を前記ピン39の突出部に圧入し、またアウタ−ロ−タ−37の内側にインナ−ロ−タ−38を挿入し、該インナ−ロ−タ−38を前記ピン40の突出部に圧入し、アウタ−ロ−タ−37とインナ−ロ−タ−38を保持板34,35に固定する。
このようにして、バルブシャフト23の軸端部に、ピン39,40と保持板34,35を介して、アウタ−ロ−タ−37とインナ−ロ−タ−38を組み付けたバルブシャフトアセンブリを製作する。
【0046】
前記アセンブリの製作と前後して、バルブハウジング4aの大径段部4bに軸受29と大径の皿バネ28を収容し、またバルブハウジング4の小径段部4cに軸受32と小径の皿バネ31を収容し、該軸受32,32を前記段部4b,4cに係合可能に配置する。
この後、前記バルブシャフトアセンブリをバルブ室4aに挿入し、フランジ30を皿バネ31に係合可能に位置付け、回動シリンダ24のフランジ27を皿バネ28に係合可能に位置付け、バルブシャフト23の他側端部をバルブハウジング4の外側に突出し、該突出部をロ−タ−駆動用モ−タ(図示略)に連係する。
【0047】
そして、バルブハウジング4の一側端部にステ−タ−2を接合し、そのシ−ル面2aをアウタ−ロ−タ−37とインナ−ロ−タ−38の他側端面、すなわち各ロータ−シ−ル37a,38aに接合し、ステ−タ−2の外側からボルト3をバルブハウジング4にねじ込み、該ボルト3を緊締してステ−タ−2をバルブハウジング4に接続する。
【0048】
この状況は図2および図3のようで、アウタ−ロ−タ−37のロ−タ−溝41,42にステ−タ−2のオリフィス13〜16が連通し、インナ−ロ−タ−38のロ−タ−溝50〜52にステ−タ−2のオリフィス17〜22が連通する。
この後、各ポート5,6にフィッティング7,8をねじ込み、該フィッティング7,8に導管9a〜9d、9b,9c,10aの一端を配管する。
【0049】
そして、導管9aの他端を分取装置43に接続し、導管9bの他端をオリフィス18に連通し、該導管9bに検出器45と分離カラム46を介挿する。
また、導管9cの他端をオリフィス19に連通し、該導管9cに送液ポンプ47を介挿し、導管9dの他端を容器49に接続する。更に、導管10aの他端をオリフィス22に連通し、該導管10aにプレヒ−トチュ−ブ53とオートサンプラ−54を介挿する。この状況は図5のようである。
【0050】
こうして組立てた切換バルブ1は、皿バネ31の弾性によってバルブシャフト23がステ−タ−2側に付勢され、保持板35を介してインナ−ロ−タ−38のロータ−シ−ル面38aが、ステ−タ2のシ−ル面2aに密着かつ回動可能に摺接している。
また、回動シリンダ24がドグ26と摺動可能に係合し、バルブシャフト23と同期回動可能に連結され、該回動シリンダ24が皿バネ28の弾性によってステ−タ−2側に付勢され、保持板34を介してアウタ−ロ−タ−37のロータ−シ−ル面37aを、前記ステ−タ2のシ−ル面2aに密着かつ回動可能に摺接させている。
【0051】
その際、ステ−タ−2のシ−ル面2aに対する、アウタ−ロ−タ−37のロータ−シ−ル面37aのシ−ル圧ないし耐圧は、皿バネ28の弾性によって設定され、また前記シ−ル面2aに対する、インナ−ロ−タ−38のロータ−シ−ル面38aのシ−ル圧ないし耐圧は、皿バネ31の弾性によって設定される。
このように前記ロ−タ−シ−ル面37a,38aに作用する圧力を二つの付勢手段で独自かつ別々に設定しているから、単一の付勢手段で設定する従来のものに比べて、個々の皿バネ等の付勢手段の強さを低減できるとともに、前記ロ−タ−シ−ル面37a,38aに対する耐圧を精密に設定し得る。
【0052】
したがって、前記皿バネ28,31のバネ強さを選択することによって、アウタ−ロ−タ−37とインナ−ロ−タ−38の各ロ−タ−シ−ル面37a,38aに最適のシ−ル圧ないし耐圧を独自かつ個別に、しかも自由度を以って設定し得る。
実施形態では、皿バネ31のバネ強さを皿バネ28よりも強く設定し、インナ−ロ−タ−38のロ−タ−シ−ル面38aの耐圧を33MPaとし、アウタ−ロ−タ−37のロ−タ−シ−ル面37aの耐圧を4MPaに設定している。
【0053】
それゆえ、ロ−タ−溝41,42、50〜52に導かれる流体の圧力に応じたシ−ル圧ないし耐圧を的確に設定でき、高圧または低圧の流体の給排を液漏れを生ずることなく、安全かつ円滑に行なえる。
したがって、従来のようにロ−タ−を一体に形成し、または複数の構成部材を一体的に連結し、該ロ−タ−の全域を後方から単一の付勢手段で一様かつ画一的に付勢する場合のように、ロ−タ−のシ−ル圧ないし耐圧が外側のロ−タ−溝を基準に画一的に設定され、適確な耐圧を得られない不具合を解消し得る。
【0054】
このような状況の下で、例えば駆動用モータ(図示略)によってバルブシャフト23を回動すると、その回動力は軸端部に固定した保持板35を介して、インナ−ロ−タ−38に伝達され、該インナ−ロ−タ−38がバルブシャフト23と同期回動する。
一方、バルブシャフト23の回動力は、ドグ26を介して回動シリンダ24に伝達され、該回動シリンダ24がバルブシャフト23と同期回動するとともに、フランジ27に固定した保持板34を介して、アウタ−ロ−タ−37に伝達され、該アウタ−ロ−タ−37がバルブシャフト23と同期回動する。
【0055】
そして、通常時は図5のように、送液ポンプ47から吐出された溶離液48が、導管9cに送り出されてオリフィス19へ移動し、ロ−タ−溝51から導管10aに送り出され、プレヒ−トチュ−ブ53、オートサンプラ−54を経てオリフィス22へ移動し、ロ−タ−溝52から通路10bに送り出され、ロ−タ−溝50から導管9bに送り出される。
この後、分離カラム46、検出器45を経てオリフィス14へ移動し、ロ−タ−溝41から導管9aに送り出されて分取装置43へ移動する。
【0056】
その際、試料を含む溶離液48はロ−タ−溝50〜52に導かれ、その流体圧をインナ−ロ−タ−38のロータ−シ−ル面38aに作用し、またロ−タ−溝41,42に導かれた溶離溶液48等は、その流体圧をアウタ−ロ−タ−37のロータ−シ−ル面37aに作用する。
そして、各ロ−タ−38,37を保持板34,35と、フランジ27、バルブシャフト23がそれぞれ支持し、これらを皿バネ31,28が別々に支持する。
【0057】
したがって、従来のようにロ−タ−全域が単一の付勢手段によって支持されるものに比べて、アウタ−ロ−タ−37とインナ−ロ−タ−38の各ロ−タ−シ−ル面37a,38aが、皿バネ31,28の弾性によって精密かつ確実にシールされ、液漏れを阻止する。
このため、例えば送液ポンプ47によって移動流体が脈動し、シ−ル面2aにおけるアウタ−ロ−タ−37のロ−タ−シ−ル面37aと、インナ−ロ−タ−38のロ−タ−シ−ル面38aの圧力変動が頻繁に行なわれても、各ロ−タ−シール面37a,38aのシールを精密かつ確実に行なえる。
【0058】
一方、リサイクル時は図6のように、送液ポンプ47から吐出された溶離液48等は、導管9cに送り出されてオリフィス19へ移動し、ロ−タ−溝50から導管9bに送り出され、分離カラム46と検出器45を経てオリフィス14へ移動し、ロ−タ−溝42からオリフィス15を経て導管9cに送り出され、送液ポンプ47に戻される。
【0059】
その際、溶離液48等はロ−タ−溝50に導かれ、その流体圧をインナ−ロ−タ−38のロ−タ−シ−ル面38aに作用し、またロ−タ−溝42に導かれた溶離液48等は、その流体圧をアウタ−ロ−タ−37のロ−タ−シ−ル面37aに作用する。
そして、各ロ−タ−38,37を保持板34,35と、フランジ27、バルブシャフト23がそれぞれ支持し、これらを皿バネ31,28が別々に支持する。
【0060】
したがって、従来のようにロ−タ−全域が単一の付勢手段によって支持されるものに比べて、各ロ−タ−シ−ル面37a,398aが皿バネ31,28の弾性によって確実かつ精密にシールされ、液漏れを阻止する。
このため、例えば送液ポンプ47によって移動流体が脈動し、前記シ−ル面2aにおけるロ−タ−シ−ル面37aとロ−タ−シ−ル面38aの圧力変動が頻繁に行なわれても、各ロ−タ−シ−ル面37a,38aのシールを精密かつ確実に行なえる。
【0061】
こうして切換バルブ1が経年的に使用されると、アウタ−ロ−タ−37とインナ−ロ−タ−38のロ−タ−シ−ル面37a,38aが、ステ−タ−2のシ−ル面2aに摺接して磨耗し、そのシ−ル作用が低下して交換する必要がある。
この場合、アウタ−ロ−タ−37はインナ−ロ−タ−38よりも周速度が速いため、早く磨耗してシ−ル作用が低下する傾向があり、一方、インナ−ロ−タ−38はアウタ−ロ−タ−37に比べて周速度が遅いため磨耗が遅く、十分にシ−ル機能を発揮する場合が多く、そのような場合はアウタ−ロ−タ−37だけを交換すれば良いこととなる。
【0062】
そこで、前記アウタ−ロ−タ−37を交換する場合は、ボルト3を取外し、ステ−タ2を取外してバルブハウジング4からバルブシャフトアセンブリを取出し、アウタ−ロ−タ−37だけを適宜取外して、新規なアウタ−ロ−タ−37に交換すれば良い。
したがって、従来の一体形のロ−タ−のようにロ−タ−全体を交換する不合理や面倒がなく、インナ−ロ−タ−38の交換を免れるから、小規模の交換作業で足り、この作業を容易かつ速やかに行なえる。
【0063】
次に、前記切換バルブ1を備えたHPLCによる分離について説明する。
すなわち、試料の導入時と分取時の通常時は、切換バルブ1を通常作動モ−ドに設定し、各ポ−ト5,6と各オリフィス13〜22を連通し、送液ポンプ47を駆動する。
このようにすると、容器49内の溶離液48が導管9dに導かれてオリフィス16へ移動し、ロ−タ−溝42からオリフィス15を経て導管9cに送り出され、送液ポンプ47に吸入される。
この場合、送液ポンプ47の切換バルブ1からの吸引側の導管9cの内径を、各導管中、最大径に形成すれば、送液ポンプ47による吸引作動を円滑かつ能率良く行なえる。
【0064】
この後、溶離液48は送液ポンプ47から吐出され、導管9cに送り出されてオリフィ
ス19へ移動し、ロ−タ−溝51から導管10aに送り出され、プレヒ−トチュ−ブ53に導かれて加温され、またオートサンプラ−54の移動時に試料を導入され、オリフィス22を経てロ−タ−溝52から通路10bに送り出される。
【0065】
前記試料を含む溶離液48はロ−タ−溝50から導管9bに送り出され、分離カラム46に移動して目的成分を分離され、検出器45に導かれて目的成分を検出され、オリフィス14へ移動する。この後、ロ−タ−溝41から導管9aに送り出されて分取装置43へ移動し、該分取装置43で目的成分毎に分取される。
【0066】
その際、分離カラム46は、オーブン(図示略)による加温に加え、プレヒ−トチュ−ブ53で加温した溶離液48が移動することによって、内外の温度差が無くなり、分離精度が向上する。
この場合、導管9bの内径を各導管中、中間径に形成すれば、該導管9a,9bの圧力上昇を抑制され、それらによるセル44の高圧負荷を回避し、セル44の故障を防止し得る。
【0067】
こうして試料の目的成分が溶出し、これを検出器45で確認したところで、ロ−タ−駆動用モ−タ(図示略)を駆動し、該モ−タを所定角度(約45°)回動する。
このようにすると、前記モ−タに連係するバルブシャフト23が同動し、軸端部に固定した保持板35を介してインナ−ロ−タ−38が同期回動する。
また、前記軸端部に突設したドグ26を介して回動シリンダ24が同期回動し、そのフランジ27に固定した保持板34が同動し、該保持板34に固定したアウタ−ロ−タ−37が同期回動する。
【0068】
このようにして、インナ−ロ−タ−38とアウタ−ロ−タ−37とが同期回動し、各ロ−タ−溝41,42、50〜52を同動させて、切換バルブ1ないしロ−タ−36をリサイクルモ−ドに切換える。
この状況は図6のようで、オリフィス18,19がロ−タ−溝50に連通し、オリフィス20,21がロ−タ−溝51に連通し、オリフィス22,17がロ−タ−溝49に連通する。
また、オリフィス13がロ−タ−溝41に連通し、オリフィス14〜16がロ−タ−溝42に連通する。
【0069】
すなわち、導管9bの両端がオリフィス14,18に連通し、導管9cの両端がオリフィス15,19に連通し、導管9b,9cにロ−タ−溝42,51が連通し、これらで閉ル−プのリサイクル流路を形成する。
その際、オリフィス13に連通する導管9aと、オリフィス16に連通する導管9dと、オリフィス20,22に連通する導管10aとが前記リサイクル流路から切り離され、切換バルブ1に対する溶離液48の供給と試料の導入が停止される。
【0070】
そして、前記リサイクル流路を試料を含む溶離液48が送液ポンプ47を介して循環し、試料中の目的成分が分離カラム46で分離され、これを検出器45で検出する。
【0071】
このようなリサイクル分離では、試料を含む溶離液48が最大内径の導管9cによって、送液ポンプ47によりロ−タ−溝42から円滑かつ能率良く吸引される。
この場合、送液ポンプ47の吐出側の導管9cを最小内径で、かつその長さを可及的に短くすれば、該流路のデッドボリュ−ムが低減され、試料の拡散を抑制して分離カラム46による分離精度が向上する。
しかも、検出器45の出口側の導管9bを中間径にすれば、当該部の圧力上昇を抑制してセル44に対する高圧負荷を回避し、セル44の故障を防止する。
【0072】
このように実施形態の切換バルブ1はリサイクル流路に介挿され、リサイクルバルブと、流路の切換えを単一のバルブで構成し得るから、従来のように二つのバルブを要さず、その分部品点数が低減し構成が簡潔になって、HPLCの小形軽量化を図れるとともに、これを安価に製作できる。
しかも、試料導入時や分取時の通常時と、リサイクル時は、単一の切換バルブ1を切換え操作すれば良いから、従来のように二つのバルブを切換え操作する煩雑を解消し得る。
【0073】
図7乃至図9は本発明の他の実施形態を示し、前述した構成と対応する部分に同一の符号を用いている。
このうち、図7は本発明の第2の実施形態を示し、この実施形態は前述のアウタ−ロ−タ−37と保持板34とを同一部材によって一体に構成し、またインナ−ロ−タ−38と保持板35とを同一部材によって一体に構成し、部品点数を低減し構成を簡潔にするとともに、それらを薄厚化して小形軽量化を図り、これを容易かつ安価に製作し得るようにしている。
この場合、アウタ−ロ−タ−37とインナ−ロ−タ−38とを、前述のように互いに同一または異質部材で構成することも可能である。
【0074】
図8および図9は本発明の第3の実施形態を示し、この実施形態は前述のアウタ−ロ−タ−37に大小三つの円弧状のロ−タ−溝55〜57を等角度位置に形成し、このうちロ−タ−溝55,56の長さを同一に形成し、ロ−タ−溝57の長さをロ−タ−溝55,56よりも若干長く形成している。
また、インナ−ロ−タ−38は前述の実施形態と略同様に構成され、そのロ−タ−溝50〜52の位置を、前記ロ−タ−溝55〜57に対し60°位相を相違させて配置している。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の切換バルブは、簡単な構成によってロ−タ−シール面に異なる耐圧を容易に得られ、ロータ−の磨耗に応じて、その交換を合理的に行なえるとともに、高圧流体の給排を正確かつ円滑に行なえ、しかも製作の容易化と低廉化、並びに小形軽量化を図れる。また、単一のバルブ操作によって、移動相の供給流路とリサイクル流路の切換えを容易に行なえるから、例えばリサイクル分離機能を備えたHPLCに好適である。
【符号の説明】
【0076】
1 切換バルブ
2 ステ−タ−
2a シ−ル面
4 バルブハウジング
9a〜9d 導管
10a 導管
【0077】
13〜22 オリフィス
23 バルブシャフト
24 回動シリンダ
27 フランジ
28 付勢手段(バネ)
30 フランジ
【0078】
31 付勢手段(バネ)
36 ロ−タ−
37 アウタ−ロ−タ−
37a ロ−タ−シール面
38 インナ−ロ−タ−
38a ロ−タ−シール面
41,42 ロ−タ−溝
【0079】
45 検出器
46 分離カラム
47 送液ポンプ
50〜52 ロ−タ−溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部に連通する複数のオリフィスを形成したステ−タ−と、該ステ−タ−に摺接かつ回動可能に配置され、かつ前記オリフィスに連通可能な複数のロ−タ−溝を形成したロ−タ−とを備え、該ロ−タ−のロ−タ−シール面をステ−タ−に液密に付勢した切換バルブにおいて、前記ロ−タ−をアウタ−ロ−タ−と該ロ−タ−の内側に配置するインナ−ロ−タ−とで構成し、前記アウタ−ロ−タ−とインナ−ロ−タ−をステ−タ−側へそれぞれ移動可能に設け、前記アウタ−ロ−タ−とインナ−ロ−タ−の後方に各ロ−タ−をステ−タ−側へ付勢する付勢手段を別々に配置したことを特徴とする切換バルブ。
【請求項2】
前記アウタ−ロ−タ−とインナ−ロ−タ−とを同期回動可能にした請求項1記載の切換バルブ。
【請求項3】
前記アウタ−ロ−タ−とインナ−ロ−タ−とを同一または異質部材で構成した請求項1
記載の切換バルブ。
【請求項4】
前記アウタ−ロ−タ−とインナ−ロ−タ−とを別々に着脱可能に設けた請求項1記載の切換バルブ。
【請求項5】
アウタ−ロ−タ−とインナ−ロ−タ−を収容するバルブハウジングの内部にバルブシャフトを回動かつ軸方向に移動可能に設け、該バルブシャフトの端部に前記インナ−ロ−タ−を装着するとともに、前記バルブシャフトの端部周面に回動シリンダを軸方向に摺動かつ係合可能に配置し、該回動シリンダの端部に前記アウタ−ロ−タ−を装着した請求項1乃至請求項4のうち何れか一項記載の切換バルブ。
【請求項6】
前記回動シリンダにフランジを設け、該フランジの後方に付勢手段を係合可能に配置するとともに、前記バルブシャフトの周面にフランジを設け、該フランジの後方に付勢手段を係合可能に配置した請求項5記載の切換バルブ。
【請求項7】
前記ステ−タ−のシ−ル面に8個以上のオリフィスを形成した請求項1記載の切換バルブ。
【請求項8】
前記ロ−タ−のロ−タ−シール面に前記オリフィスに連通可能な4個以上のロ−タ−溝を形成した請求項1記載の切換バルブ。
【請求項9】
前記オリフィスを大小異径に形成し、かつこれらを同心円上の内外位置に配置した請求項7記載の切換バルブ。
【請求項10】
前記ロ−タ−溝の溝幅を大小異幅に形成し、かつこれらを同心円上の内外位置に配置した請求項8記載の切換バルブ。
【請求項11】
前記ステ−タ−の外部に複数の導管の一端を接続し、該導管の他端を移動相の供給流路と、送液ポンプと分離カラムと検出器とを介挿し、かつ導入した試料を循環可能にしたリサイクル流路とに接続し、前記供給流路とリサイクル流路とを切換え可能にした請求項1記載の切換バルブ。
【請求項12】
前記付勢手段はバネである請求項1記載の切換バルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−159460(P2012−159460A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20829(P2011−20829)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(390030188)ジーエルサイエンス株式会社 (37)