説明

切断ロービングを提供する為の装置及び方法、並びに、半完成状の織物製品を補強する為の設備

本発明は、特に航空や航空宇宙の分野において、エンドレス・ロービング(63)から所定長さの切断ロービング(69)を得る装置(11)及び方法並びに前記装置(11)を備えた設備(10)に関する。前記装置(11)は、ループ形状設定構造(23),ループ押し付け構造(24)及び切断構造(60)を有する。エンドレス・ロービング(63)はループ押し付け構造(23)によってループ形状設定構造に押し付けられ、所定長さの切断ロービング(69)を製造するために切断構造(60)によって切断され得るループ(67)が形成される。前記装置(11)及び前記方法は、針(15)によって拾い上げられ、半完成状の織物製品(13)の貫通孔(17)の中に繊維層に対して垂直(z)に引き込まれる所定長さの切断ロービング(69)を簡単に供給できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に航空や航空宇宙の分野において、エンドレス・ロービングから所定長さの切断されたロービングを得る為の装置及び方法、並びに、織物製品の半完成品を特にその厚さ方向に補強する為の設備に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維複合体プラスティック(FCP)積層体は、特に積層構造を有する点においてモノリシック金属と異なる。例えば、突発的に荷重が付加されると、(「層間剥離」として称される)隣接する2つの層が互いに対して引き離されることが起こり得る。そのような不具合を避けるべく、層に対して垂直な方向(以下、第3空間方向と称する)に繊維を延在させることによってFCP積層体を補強するための様々な提案がなされている。
【0003】
この点に関し言及すべき第1のアプローチは縫製方法を伴う。これについては、2面縫製方法と1面縫製方法との間の相違点を説明する必要がある。
【0004】
前記2面縫製方法は、上糸及び下糸によって区別される。針は、上糸とともにFCP積層体を貫通する。FCP積層体の下面がわでは、上糸のループが下糸によって固定される。針は引き出され、すぐ前の縫い目から予め定められた距離だけ離れた位置で再び突き刺される。この繰り返しによって連続した縫い目を作り出す。
【0005】
前記1面縫製方法は、下糸を有さない点で区別される。これらの方法は、例えば、タフティング(tufting)又はブラインドステッチを含む。
【0006】
前記縫製方法は、針が比較的太く、その為、FCP積層体内に目立った繊維の位置ズレを引き起こすという欠点を有すると考えられている。縫製方法によって組み込まれる繊維量は、針の挿入によってFCP積層体に形成される空洞に比して少ない。
【0007】
第3空間方向にFCP積層体を補強するための第2の公知のアプローチは、予め基体(matrix)が備えられ且つ特にピンで硬化された半完成品を利用する。これらのピンは、例えば引き抜き成形によって製造され、前記FCP積層体に穿孔することによって第3空間方向に沿って挿入され、前記FCP積層体中の前記基体によって固定される。
【0008】
前記2番目のアプローチに係る方法においては、前記ピンの導入がとても複雑でコストがかかることが判明している。
【0009】
それ故、出願人は、下記特許文献1において述べられている第3空間方向に半完成状の織物製品を補強するより良い方法を開発した。以下、図1から図4を参照して簡単に説明する。
【0010】
図1は、半完成状の織物製品の中へ挿入する前のフック針8を示している。半完成状の織物製品は、例えば、繊維がXY平面上に延びる繊維層とされる。図1に示すように、針8は、第3空間方向Zに対して90度より小さい角度αをなす。前記針は、それゆえに第3空間方向Zに沿った成分を有する。
【0011】
図2は、針8が針孔(めど)5をもつ先端で半完成状の織物製品を貫通した製造方法の段階を示している。半完成状の織物製品1の下方には、針8が出現する点の領域において、環状に形成されたロービング(例えば24K roving)が半完成状の織物製品の底面にきわめて接近して位置されている。ロービング3は、針孔5を用いて針8によりピックアップされる。ロービング3は、1本の太さがSであり、そのため、ループを形成されるように折り曲げられた図2のロービングはおおよそ2Sの太さを有する。
【0012】
図3において、針8はすでに半完成状の織物製品から引き抜き始められており、この引き抜きの結果、針8によって拾い上げられたロービング3は、半完成状の織物製品の底面の側から、挿入の際に針8によって形成された貫通孔2の中に引き込まれ、これにより、ロービング3を圧縮する。
【0013】
図4においては、ロービング3の全体が半完成状の織物製品1の中に引き込まれ、針8はすでにロービング3から解放されている。ロービング3は、後の工程において、前記貫通孔2及び前記貫通孔2内に配置された前記ロービング3に樹脂を染み込ませる為に、例えば、この段階で、半完成状の織物製品1の両側で平らに切断され得る。
【0014】
ロービングは、通常、例えばボビンに巻回されたエンドレス・ロービングとして供給される。ところで、図3に示され且つ半完成状の織物製品1の(Z方向に沿った)厚みに適合した長さを有する所定長さに切断されたロービング3を得るためには、所定長さに切断されたロービングをエンドレス・ロービングから分離させなければならず、さらには、半完成状の織物製品の下方で針8の針孔5に連結されなければならない。
【0015】
図2に示すロービング3を手動で供給することは、コストの面で現実的ではない。それゆえ、自動的にロービング3を供給する装置が必要となる。現在、そのような装置は市販されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】DE 102005024408 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
それゆえ、本発明の目的は、特に航空及び航空宇宙の分野において、エンドレス・ロービングから所定長さを有する切断されたロービングを提供するための装置及び方法を提供することである。本発明のさらなる目的は、半完成状の織物製品を特にはその厚み方向において補強を行うことのできる設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明によれば、前記目的は請求項1の特徴をもつ装置及び/又は請求項15の特徴を持つ方法及び/又は請求項16の特徴を持つ設備によって達成される。
【0019】
即ち、ループ形状設定構造、ループ押し付け構造及び切断構造を有する装置が提供される。前記ループ押し付け構造は、前記ループ形状設定構造回り回転可能なように備えられ、エンドレス・ロービングが前記ループ形状設定構造の周りに押し付けられてループを形成する。所定長さの切断ロービングを製造するために、前記ループは、前記切断構造によってエンドレス・ロービングから切断される。
【0020】
本発明に係る方法は、次のステップを供給する。第1に、形成されるべきループの形状は、ループ形状設定構造によって設定される。次のステップでは、前記ループ形状設定構造回り回転可能なループ押し付け構造によってエンドレス・ロービングが前記ループ形状設定構造回りに押し付けられる。次に、形成されたループは、所定長さの切断ロービングを製造するためにエンドレス・ロービングから切断される。所定長さへの切断は、切断構造によって行われる。
【0021】
本発明に係る設備は、本発明に係る前記装置と針と取上領域とを備える。前記針は、所定長さの切断ロービングを取り上げるための針孔(めど)を備えた先端部を有する。半完成状の織物製品は、前記針と前記装置との間における前記取上領域内に平面状に挿入される。前記設備の最初の作業では、針が半完成状の織物製品を貫通し、これにより、前記織物製品内に貫通孔を形成する。前記設備における次の作業では、前記針孔が前記ループ形状設定構造の取り出し領域から切断ロービングをそのおよそ中央で拾い上げ、3つ目の作業では、前記針が2つ折りにされたロービングを引き込む。
【0022】
本発明を形成する思想は、エンドレス・ロービングが或るボディの周囲に巻き付けられ、その後に切断されることで、所定長さを有する切断ロービングが簡単に製造され得ることである。そして、これを実現する装置は非常にシンプルな構成をもつ。
【0023】
ロービングがループとして供給されるということは、図2において図示されている2つ折り形状から想像できるように前記ロービングが簡単に取り上げられることを意味する。
【0024】
従属請求項は、本発明の有利な形態及び改良を含む。
【0025】
「ループ形状設定構造回り回転可能なループ押し付け構造」なる用語は、エンドレス・ロービングが前記設定構造回りに押し付けられ得る運動学的に均等な形態を包含する。従って、前記ループ押し付け構造が前記ループ形状設定構造回りに回転可能であっても良いし、若しくは、前記ループ形状設定構造が、固定された前記ループ押し付け構造内で回転可能とされても良い。
【0026】
本発明の内容に関し、「半完成状の織物製品」なる用語は、種々の繊維層、布繊維、フェルト繊維だけでなく、例えばPMI硬質フォーム又はPCVフォーム又はPUフォーム等の発泡体をも含む概念である。
【0027】
用語「ロービング」は、繊維の束、特にはガラス繊維、アラミド繊維又は炭素繊維の束を意味する。しかしながら、本明細書における用語「ロービング」には、個々の繊維及び紡績糸も含まれる。前記ロービングに樹脂基体を予め含浸させることも可能である。
【0028】
用語「ループ」とは、本願に関連する書面においては、エンドレス・ロービングの閉じた形状を意味する。このタイプの閉じた形状の例は、図9Fの平面図から理解される。本定義によれば、前記ループは、エンドレス・ロービングの一端から始まり、エンドレス・ロービングのうち前記ループ形状設定構造に押し付けられた後において、前記エンドレス・ロービングの前記一端部に平行で且つ隣接する領域で終わる(これは、図9Fにのみ当てはまり、図9Aから図9Eには当てはまらない)。閉じた形状は、所定長さの切断ロービングを製造する為の連続した工程間の速やかな移行を可能とする。
【0029】
本発明に係る装置の好ましい改良によれば、前記ループ形状設定構造は、取出側保持手段と前記取出側保持手段から離間された供給側保持手段とを有し、前記両保持手段は、エンドレス・ロービングがループを形成するために押し付けられるフレームを形成する。
【0030】
もし、エンドレス・ロービングが前記フレームの周囲で1回巻かれ、そして切断されると、これによって予め定められた長さを有する所定長さの切断ロービングが製造される。これの利点は、所定長さの切断ロービングが運動学上においてシンプルな回転運動によって製造され得るということである。
【0031】
原則として、前記フレームは、長方形のフレームが好ましいが、多角形、特に三角形又は四角形か、或いは楕円若しくは円形とされ得る。この場合、前記供給側及び前記取出側保持手段は、好ましくは前記フレームの角部を画する。
【0032】
本発明に係る装置のさらに好ましい形態によれば、前記取出側保持手段及び前記供給側保持手段は溝として形成される。
【0033】
前記取出側保持手段又は前記供給側保持手段が複数の構成要素から形成される場合には、前記複数の構成要素の各々は、例えば、適切な溝を有することができる。溝は、該溝が延びる方向に対して横の方向にループが滑ることを防止する点において適切であり、同時に、エンドレス・ロービングを用いて溝の周囲を巻き付けることは簡単である、すなわち、溝は、当該溝内にロービングを挿入する為の前記ループ押し付け構造にとってアクセス可能である。
【0034】
本発明に係る装置のさらに好ましい改良形態においては、前記ループ形状設定構造は、針を用いて所定長さの切断ロービングを取り上げる取り出し領域を有する。
【0035】
この点に関し、装置が針と共働してのみ使用されるのではなく、前記取り出し領域から糸を取り出す為に他の手段が備えられ得る点に留意すべきである。しかしながら、針によって所定長さの切断ロービングを取り出すことは、特に針がフック針の形状をなしている場合、即ち、所定長さの切断ロービングを取り上げるための適当な針孔を有している場合には、とりわけシンプルである。特に、前記取り出し領域及び前記取出側保持手段は、少なくとも一部分において、同じ手段を用いて製造される。即ち、前記取り出し領域の溝は、例えば前記取出側保持手段における溝と共用される。
【0036】
本発明に係る装置のさらに好ましい改良形態によれば、前記取り出し領域は、2つの溝として形成され、前記ループは前記2つの溝の間に配置されるリセスを通って案内される。
【0037】
この場合、前記針は、2つの溝間において前記リセスに係合し、前記ロービングは径方向に関しアクセス可能な状態で前記リセスを通り、従って、フック針によって容易に把持可能とされている。
【0038】
本発明に係る装置のさらに好ましい形態においては、前記切断構造は、前記フレームの対称軸の中心を基準にして前記取り出し領域とは反対側に配置される。
【0039】
これは、前記ロービングが例えば前記取り出し領域で前記針によってその中央で把持され、これにより、前記ロービングが全長に亘って2つ折りにされるという利点を提供する。
【0040】
本発明に係る装置のさらに好ましい改良形態においては、前記取出側保持手段及び前記供給側保持手段の間の距離が調整可能、特には、スピンドルドライブによって調整可能とされる。
【0041】
前記距離を変化させることによって、前記ループのサイズ、即ち、所定長さの切断ロービングの長さを容易に設定することができる。従って、例えば、前記ロービングの長さを、斜面によって引き起こされる半完成状の織物製品の厚みの変化に容易に適合させることができる。
【0042】
本発明に係る装置のさらに好ましい改良形態においては、前記取り出し領域を有する前記取出側保持手段は固定設置され、前記切断構造を有する前記供給側保持手段は、前記取り出し領域付きの前記取出側保持手段に対して直線的に位置調整可能とされる。
【0043】
この形態は、前記装置に対する前記針の位置を変化させることなく、前記取り出し領域の位置を固定したままで、ループのサイズ、即ち、所定長さの切断ロービングの長さを変化させることを可能とする。
【0044】
しかしながら、逆の動作も同様に想定可能である。即ち、前記切断構造を有する前記供給側保持手段を固定設置しつつ、前記取り出し領域を有する前記取出側保持手段を前記供給側保持手段に対して直線的に位置調整可能とすることも可能である。
【0045】
本発明に係る装置のさらに好ましい改良形態においては、前記ループ形状設定構造は、エンドレス・ロービングの端部を把持するためのクランプ構造、特にはノッチ又はクランプロールを有する。
【0046】
特に、前記クランプ装置は前記供給側保持手段の一部とされる。
【0047】
好ましくは、エンドレス・ロービングが前記ループ形状設定構造のフレーム回りに1+X回、例えば1+1/8回巻かれた場合に、前記エンドレス・ロービングのうち前記X回に相当する領域が前記クランプ構造によって把持され且つ前記1回に相当する領域が前記エンドレス・ロービングから切り離されるように、前記クランプ構造は前記切断構造の直ぐ近傍に配置される。
【0048】
ノッチは、必要とされる把持動作を達成する為の非常に簡単な手段である。
【0049】
本発明に係る装置のさらに好ましい改良形態においては、前記ループ押し付け構造は、前記ループ形状設定構造回りに回転可能とされたリングを有し、この場合、前記エンドレス・ロービングは前記リングの壁に形成された開口を介して前記ループ形状設定構造に供給される。
【0050】
この場合においても、運動学上の均等物が同様に含まれる。即ち、前記ループ形状設定構造を回転可能とし、前記ループ押し付け構造、特には前記リングを固定設置することも可能である。
【0051】
前記壁に形成された開口は、前記ループ形状設定構造回りにエンドレス・ロービングを案内し、エンドレス・ロービングは、前記開口を介して徐々に滑り、そして、ループ形状設定構造に送り込まれ、エンドレス・ロービングの端部は前記ループ形状設定構造に締結される。
【0052】
本発明に係る装置のさらに好ましい形態によれば、前記開口は、前記フレームの平面内に配置される。特に、前記開口は、前記保持手段を形成する溝が位置する平面内に配置される。
【0053】
本発明に係る装置のさらに好ましい改良形態によれば、前記開口は、前記リングの周方向における所定領域に延びるスロットとして形成される。斯かる構成は、図面を参照したより詳細な説明に記載するように、前記ロービングが前記フレームに対してより迅速に押し付けられることを可能とする。
【0054】
本発明に係る装置のさらに好ましい改良形態によれば、前記リングの外周面に斜面が形成され、前記斜面は、前記リングの長手方向に視た際に、前記リングにおける前記開口より上流から始まって、前記開口より下流において前記リングの端面で終焉する。
【0055】
前記斜面の目的は、エンドレス・ロービングがループの略半分を形成した時点で前記エンドレス・ロービングを前記リングの端面の上方に押し上げる為であり、従って、前記開口は前記ループ形状設定構造回りに約180度に亘って形成されている。斯かる構成は、ロービング又は一般的には固定設置されたスピンドル回りに備えられたエンドレス・ロービングが前記スピンドルに連結されたままで前記ループ設定構造回りに位置することを可能とする。
【0056】
本発明の係る装置のさらに好ましい形態においては、前記装置は軸部を有する。前記軸部は、一端に前記ループ形状設定構造が装着され且つ他端には前記軸部を前記装置と共働する設備に固定する為の手段、特には、フランジが備えられる。前記ループ押し付け構造には、前記軸部に支持されるようにベアリング部が備えられ、前記ベアリング部は、前記リングと長手方向に隣接される。
【0057】
この構成によれば、前記リングが一端側の開口で外側からアクセス可能、特には、針によってアクセス可能となり、ロービングの取り上げが可能となる。一方、ベアリング手段を有する前記ベアリング部に隣接する前記リングの他方側の開口は実質的に閉塞される。このように開発された装置は組立容易である。
【0058】
本発明に係る装置のより好ましい改良形態においては、前記リングの回転軸は、前記フレームの平面に対して略直交する。これは前記装置の簡単な形状を提供する。
【0059】
本発明に係る装置のさらに好ましい改良形態においては、前記ループ形状設定構造は回転不能に配置され、前記ループ押し付け構造は回転駆動され得るように配置される。
【0060】
このタイプの改良は、前記針が前記ループ形状設定構造に関連して移動する必要を無くし、むしろ固定状態で配置され得るように、前記装置が備えられる設備の構造を簡単化する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1は、公知方法における一工程を示している。
【図2】図2は、公知方法における他の工程を示している。
【図3】図3は、公知方法におけるさらに他の工程を示している。
【図4】図4は、公知方法におけるさらに他の工程を示している。
【図5】図5は、本発明の例示的な一実施の形態に係る装置を備えた設備の詳細を示す側面図である。
【図6】図6は、図5に示す前記装置のリングを示している。
【図7】図7は、図5におけるループ形状設定構造の平面図である。
【図8】図8は、図7における前記ループ形状設定構造の側面図である。
【図9A】図9Aは、図5に示された前記装置の一作動状態を示している。
【図9B】図9Bは、図5に示された前記装置の他の作動状態を示している。
【図9C】図9Cは、図5に示された前記装置のさらに他の作動状態を示している。
【図9D】図9Dは、図5に示された前記装置のさらに他の作動状態を示している。
【図9E】図9Eは、図5に示された前記装置のさらに他の作動状態を示している。
【図9F】図9Fは、図5に示された前記装置のさらに他の作動状態を示している。
【図10】図10は、図9Aに示された状態の斜視図である。
【図11】図11は、図9Bに示された状態の斜視図である。
【図12】図12は、図9Cに示された状態の斜視図である。
【図13】図13は、図9Eに示された状態の斜視図である。
【図14】図14は、図9Fに示された状態の直前の状態の斜視図である。
【図15】図15は、図9Fに示された状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
本発明は、例示的な実施の形態に基づき、添付図面を参照しながら下記においてより詳述される。
【0063】
各図において、特段の断りがない限り、同一の又は機能上同一の要素には同一の参照番号が付されている。
【0064】
本発明に係る設備10の構造又は本発明に係る装置11の構造について、図5から図8を参照して以下に説明する。
【0065】
本発明に係る設備10は、(破線で示されている)取上領域12を有し、本実施形態では、該取上領域12の上部に、例えば炭素繊維層13からなる半完成状の織物製品が積層される。前記取上領域は、例えばフック針15の通過領域14をもつ板状体として形成されている。
【0066】
図5に示す実施形態においては、一方側が開放された針孔(めど)16を有するフック針15が半完成品13内を押し通される。この場合、前記フック針15は、半完成品13における(参照番号22によって例示されている)繊維層が広がるX−Y平面に略直交して(すなわち、第3空間方向であるZ方向に沿って)半完成品13の中の貫通孔17を突き抜ける。
【0067】
さらに、前記設備10は、半完成品13の下方に配置された装置11を有する。
【0068】
前記装置11は、ループ押し付け構造(以下、押し付け構造と称する)24の中に配置されたループ形状設定構造(以下、設定構造と称する)23を有する。
【0069】
前記設定構造23は軸部25の端部に固着されており、前記軸部25の前記設定構造23とは反対側に位置する端部にはフランジ26が設けられている。前記フランジ26は、ねじ(図示せず)によって前記設備10の固定点27に締結される。前記押し付け構造24はベアリング部32を有しており、前記ベアリング部32は、前記軸部25周りに配置されたベアリング33,34によって前記軸部25の周りを押し付け構造24が回転可能としている。
【0070】
前記ベアリング部32は、前記設備10の前記取上領域12の方向において該ベアリング部32に固定連結されたリング36に隣接されている。
【0071】
図6に、前記装置11から分離した状態の前記リング36を示す。
【0072】
前記リング36は、好ましくは略中央に溝37を有し、前記溝37を介して(この図において詳細に示されていない)ロービングが、前記リング36の中に配置された前記設定構造23に送り込まれる。前記溝37は、好ましくは180度から340度の間の角度38に亘って前記リング36の周方向に延びている。この点に関し、前記溝37の始端に参照番号39を付し、また、前記溝37の終端に参照番号40を付す。
【0073】
前記リング36は、外側面45に、長手方向41に沿って視た際に、前記溝37の始端39の下方に位置する部位47から前記リングの端面48上の部位49まで前記リング36の周囲に延びる斜面46を有している。前記装置11が取り付けられると、前記端面48がフック針15又は織物製品の半完成品13と対向する。
【0074】
図7及び図8は、前記設定構造23の詳細図である。
【0075】
前記設定構造23は、複数の溝として形成された取出側保持手段50,51を有している。前記複数の溝の間にはリセス52が設けられており、前記リセス52によって、前記フック針15が前記針孔16を利用して前記溝間を走行するロービング(図示せず)を取り上げることが可能となっている。前記設定構造23に対して前記フック針15がロービングを取り出す位置は、本実施形態では2つの溝(保持手段50,51)間の位置であり、以下においては取り出し領域56と称し、図7及び図8にその状態を示しているように、針孔16の位置に相当する。
【0076】
前記設定構造23は、さらに、前記取出側保持手段50,51に対向する供給側保持手段53,54を有している。前記保持手段53は、同様に溝として形成されており、これに対して、前記保持手段54は、特にエラストマーで被覆された2つのロール57,58が対向する形態を成し、従って、エンドレス・ロービング又はロービングの端部を把持するクランプ構造としても同時に機能する。
【0077】
前記設定構造23の周囲に巻き付けられたエンドレス・ロービングに対し、前記保持構造50〜54は、フレーム(図9Aにおける参照番号66を参照)を定義する。ナイフ形状を有する切断構造60は、フック針15との交差点を形成する仮想フレームの対称線55上において、前記保持構造53と前記クランプ構造54との間に配置されている。前記切断構造60は、前記供給側保持手段53から前記クランプ構造54へ向けて延びるロービングを切断する。
【0078】
前記取出側保持手段50,51と前記供給側保持手段53又は前記保持手段/前記クランプ構造54との間の距離62を変化させる為に使用されるスピンドルドライブ61が、単に図式的に示されている。
【0079】
図9から15は、本発明に係る方法をより詳細に図示している。
【0080】
本発明に係る方法の最初の工程においては、前記押し付け構造24の外側、例えばスピンドル59から前記溝37を通って案内されたエンドレス・ロービング63の端部64は、特に図9A又は図10から判るように、前記装置11の前記クランプ構造54の中に、すなわち前記ロール57,58間に把持される。
【0081】
次の工程では、前記押し付け構造24は、本実施形態においては、参照番号65で示されている時計周りの方向に回転する。
【0082】
図9Bから9E及び図11から14に示すように、前記押し付け構造24の回転によって、前記溝37の始端39がエンドレス・ロービング63に係合し、前記押し付け構造24がさらに回転すると、エンドレス・ロービングは、前記設定構造23の周囲に巻きつけられる。好ましくは前記装置11と前記スピンドル59との間に配置される(詳細には図示していない)構造体によって、常時、エンドレス・ロービングが引っ張られた状態に保持される。
【0083】
図11及び12から特に判るように、斜面46は、エンドレス・ロービング63を下方から確実に支え、前記リング36の端面48上まで漸次持ち上げる。前記リング36が引き続き回転すると、エンドレス・ロービング63は、該ロービング63に作用する張力のためにスリップし、端面48を横切り、前記リング36の外壁45に沿って下方へ落下する。前記溝37は、エンドレス・ロービング63が速やかに前記供給側保持手段53,54の周囲に位置することを可能とする。図9Aから9Fに示すように、エンドレス・ロービング63は、このようにして、実質的に長方形状のフレーム66(仮想線)の周りに引張状態で巻き回される。
【0084】
形成されたループ67が図9Fに明確に示されている。ところで、所定長さの切断ロービングを得るためには、前記ループ67をエンドレス・ロービング63から切り離す必要がある。
【0085】
しかしながら、この切断は、新しく形成されるべきループに関連する端部68が一旦、前記クランプ構造54に把持されてからでないと行うことができない。この目的のために、前記端部64が前記ロール57及び58の間の後側58bで解放された状態で、前記端部68が前記ロール57及び58の間の前側58aに引き出される。同時に、前記ループ67は、新しく形成されるべきループの新しく把持された端部68の前で切断構造60によって切り離され、これにより、フレーム66の周囲長さとちょうど等倍の長さを有する(切断工程後のループ67に相当する)所定長さに切断されたロービング69を形成する。
【0086】
その後、所定長さの切断ロービング69は、フック針15の針孔(めど)16によって前記装置11から取り除かれ、貫通孔17(図5参照)の中に引き込まれる。
【0087】
前記フレーム66が対称に形成されていること並びに前記フック針15が所定長さの切断ロービング69をピックアップする前記取り出し領域56及び前記切断構造60が互いに対して反対側に配置されていることの為に、所定長さの切断ロービング69は常に中央部分において前記フック針15によって把持され、特に、前記保持構造50,51と前記保持構造53,54との間の距離62がそれぞれスピンドルドライブ61によって調整されているときでさえもそうである。
【0088】
前記設備10が前記装置11及び共働する前記フック針15を複数個、有することができることはいうまでもない。
【0089】
前記押し付け構造24を固定された前記設定構造23周りに回転させる駆動部は、明確化の為に図示を省略している。
【0090】
本書においては好ましい実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、種々の異なる方法で変形が可能である。
【0091】
本発明は、特に航空や航空宇宙の分野において、エンドレス・ロービングから所定長さの切断ロービングを供給する為の装置及び方法に関し、さらには、この種の装置を備えた設備に関する。前記装置は、ループ形状設定構造、ループ押し付け構造及び切断構造を有する。エンドレス・ロービングは、ループ押し付け構造によってループ形状設定構造の周りに押し付けられてループを形成し、所定長さに切断されたロービングを製造するために切断構造によって所定長さに切断され得る。前記装置及び前記方法は、その後に針によって拾い上げられ、織物製品の半完成品に形成された貫通孔の中に当該半完成品中の繊維層に対して垂直に引き込まれる所定長さの切断ロービングを簡単に供給することができる。
【符号の説明】
【0092】
1 半完成品
2 貫通孔
3 ロービング
8 フック針
10 設備
11 装置
12 取上領域
13 半完成品
14 通過領域
15 フック針
16 針孔
17 貫通孔
22 繊維層
23 ループ形状設定構造
24 ループ押し付け構造
25 軸部
26 フランジ
27 位置
32 ベアリング部
33 ベアリング
34 ベアリング
36 リング
37 溝
38 角度
39 始端
40 終端
41 長手方向
45 外壁
46 斜面
47 溝の始端領域
48 端面
49 溝の終端領域
50 取出側保持手段
51 取出側保持手段
52 リセス
53 供給側保持手段
54 供給側保持手段/クランプ構造
55 対称軸
56 取り出し領域
57 ロール
58 ロール
58a 前側
58b 後側
59 スピンドル
60 切断構造
61 スピンドルドライブ
62 距離
63 エンドレス・ロービング
64 エンドレス・ロービングの端部
65 回転方向
66 フレーム
67 ループ
68 エンドレス・ロービングの端部、新ループ
69 所定長さの切断ロービング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンドレス・ロービング(63)から予め設定された所定長さの切断ロービング(69)を製造するための装置(11)であって、
形成されるべきループ(67)の形状を設定するループ形状設定構造(23)と、
前記ループ形状設定構造(23)回りに回転可能で、且つ、前記エンドレス・ロービング(63)を前記ループ形状設定構造の回りに押し付けて前記ループ(67)を形成するループ押し付け構造(24)と、
前記所定長さの切断ロービングを製造するために、形成された前記ループ(67)を前記エンドレス・ロービング(63)から所定長さに切断する切断構造(60)とを備えたことを特徴とする所定長さの切断ロービング(69)の製造装置(11)。
【請求項2】
前記ループ形状設定構造(23)は、取出側保持手段(50,51)と前記取出側保持手段から離間配置された供給側保持手段(53,54)とを有し、前記両保持手段は共働して前記エンドレス・ロービング(63)が前記ループ(67)を形成するために押し付けられるフレーム(66)を形成していることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記取出側保持手段及び前記供給側保持手段(50,51)は溝として形成されていることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記ループ形状設定構造(23)は、針(15)によって所定長さの切断ロービング(69)を取り上げる為の取り出し領域(56)を有していることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記取り出し領域(56)は2つの溝として形成されており、前記ループ(67)は前記2つの溝の間に配置されるリセス(52)を介して案内されていることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記切断構造(60)は、前記フレーム(66)の対称軸(55)の中心を基準にして、前記取り出し領域(56)とは反対側に配置されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の装置。
【請求項7】
前記取出側保持手段及び前記供給側保持手段(50,51;53,54)の間の距離(62)は、例えばスピンドルドライブ(61)によって調整可能とされていることを特徴とする請求項2乃至6の何れか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記取り出し領域(56)を有する前記取出側保持手段(50,51)は固定設置され、前記切断構造(60)を有する前記供給側保持手段(53,54)は、前記取り出し領域(56)及び前記取出側保持手段(50,51)に対して直線的に位置調整可能に備えられていることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記ループ形状設定構造(23)は、前記エンドレス・ロービングの端部(64,68)を把持するためのノッチ又はロール(57,58)等のクランプ構造(54)を有していることを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記ループ押し付け構造(24)は前記ループ形状設定構造(23)回り回転可能に備えられたリング(36)を有し、前記エンドレス・ロービング(63)は前記リング(36)の壁に形成された開口(37)を介して前記ループ形状設定構造(23)へ供給可能とされていることを特徴とする請求項1乃至9の何れか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記開口(37)は、前記リング(36)の円周方向における所定領域に延びるスロットとして形成されていることを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記リングの外側面には斜面(46)が形成され、前記斜面(46)は、前記リング(36)の長手方向(41)に沿って視た際に、前記開口(37)より上流側で始まり、前記開口(37)より下流側において前記リング(36)の端面(48)で終焉していることを特徴とする請求項1乃至11の何れか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記ループ形状設定構造(23)は固定設置され、前記ループ押し付け構造(24)は回転駆動され得るように備えられていることを特徴とする請求項1乃至12の何れかに記載の装置。
【請求項14】
前記装置(11)は軸部(25)を有し、前記軸部(25)は、一端に前記ループ形状設定構造(23)が装着され且つ他端には前記軸部(25)を前記装置(11)と共働する設備(10)に固定する為のフランジ等の手段(26)が備えられており、前記ループ押し付け構造(24)には、前記軸部(25)に支持されるようにベアリング部(32)が備えられ、前記ベアリング部(32)は前記リング(36)と長手方向に隣接していることを特徴とする請求項10乃至13の何れか一項に記載の装置。
【請求項15】
エンドレス・ロービング(63)から予め設定された所定長さの切断ロービング(69)を製造するための方法であって、
ループ形状設定構造(23)によって形成されるへきループ(67)の形状を設定する工程と、
前記ループ形状設定構造(23)回り回転可能なループ押し付け構造(24)によって前記エンドレス・ロービング(63)を前記ループ形状設定構造(23)回りに押し付ける工程と、
前記所定長さの切断ロービング(69)を製造する為に切断構造(60)によって前記エンドレス・ロービング(63)から、形成されたループ(67)を所定長さに切断する工程とを含むことを特徴とするエンドレス・ロービング(63)から所定長さの切断ロービング(69)を製造する方法。
【請求項16】
半完成状の織物製品(13)の補強する為の設備(10)であって、
前記請求項1乃至15の何れか一項に記載の装置(11)と、
前記所定長さの切断ロービング(69)を取り上げるための針孔(16)を備えた先端を有する針(15)と、
前記針(15)及び前記装置(11)の間に設けられ、前記半完成状の織物製品が平面状に挿入され得る取上領域(12)とを備え、
前記設備(10)での最初の作業では、前記針(15)が前記半完成状の織物製品を貫通してそこに貫通孔(17)を形成し、前記設備(10)での次の作業では、前記針孔(16)が前記ループ形状設定構造(23)の前記取り出し領域(56)から前記所定長さの切断ロービングを中央部で拾い上げ、3つ目の作業では、前記針が、2つ折りにされたロービング(63)を前記貫通孔(17)の中に引き込むことを特徴とする半完成状の織物製品を補強する為の設備(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図9F】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2010−533800(P2010−533800A)
【公表日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516518(P2010−516518)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【国際出願番号】PCT/EP2008/059455
【国際公開番号】WO2009/013241
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(509214104)エアバス・オペレイションズ・ゲーエムベーハー (15)
【出願人】(510016380)イーエイディーエス・ドイチェランド・ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】