説明

切断可能な連結剤を有するコンジュゲート

標識されたコンジュゲート、例えば標識と結合した特異的結合要素の、固相、例えば磁性微粒子への非特異的結合に起因するシグナルの除去に用いられ得る方法および試薬。この方法および試薬は、標識を、分析物と特異的に結合する特異的結合要素と連結するための切断可能な連結剤の使用に関与する。切断可能な連結剤の使用は、磁性微粒子、分析物および標識されたコンジュゲートを含む複合体由来の特異的結合要素から標識を溶液中に放出させることを可能にする。標識の放出後、いかなる標識をそこに非特異的に結合させた磁性微粒子も反応混合物から取り除かれる。標識されたコンジュゲート由来の標識、例えばアクリジニウムのみが溶出ウェルに残される。標識と固相、例えば磁性粒子との間の相互作用によって非特異的に結合したコンジュゲートは固相と結合し続け、続いて、固相が溶出ウェルから取り除かれて別のウェルへと移動される際に溶出ウェルから除去され、追加的な試薬(複数可)が導入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、試薬、特にイムノアッセイを実施するための試薬に関する。
【背景技術】
【0002】
2.技術の考察
Thermo Fisher Scientific、Inc.、マサチューセッツ州ウォルサム、から市販されているKingFisher(商標)磁性粒子プロセッサは、様々な生化学的工程を行うため、コーティングされた磁性粒子を試薬の入ったウェルの間で移動させるよう設計されている。可動性磁性ロッドは、磁性粒子の捕捉、移動および放出に用いられる。KingFisher(商標)磁性粒子プロセッサは、例えば磁性粒子のパラメータ、磁性粒子の放出に関するパラメータ、インキュベーション時間、ウェル内の液体撹拌およびウェルの使用順序等、多くのプログラム可能なオプションを有する。
【0003】
KingFisher(商標)磁性粒子プロセッサは、イムノアッセイの実施に用いられてよい。イムノアッセイの一実施形態において、5個の隣接した1mLウェルを保持するプラスチックの帯が用いられてよい。ウェルはイムノアッセイに用いられる試薬を含む。磁性粒子は可動性磁石によってウェルの間を移動される。
【0004】
イムノアッセイ手順と併せて用いたKingFisher(商標)磁性粒子プロセッサは、イムノアッセイ実施のために現在利用されている機器および分析計と比べてイムノアッセイの感度を高めることができる。
【0005】
分析物検出の改善の基礎をなす一次機構は、市販のイムノアッセイ分析計で用いられている、より大容量の試料を用いることである。より大容量の試料はより多量の分析物を含む。KingFisher(商標)磁性粒子プロセッサは、このようなより大量の分析物の捕捉と、続くその定量化を可能にする。
【0006】
KingFisher(商標)磁性粒子プロセッサによって実施される工程は、分析物以外の材料のウェル内部表面への非特異的結合に起因するバックグラウンドシグナルの減少により、分析物の検出を改善する。例えば、特定の標識、例えばアクリジニウム標識を有する特定のコンジュゲートは、ウェル内部表面に結合する。反応混合物中におけるアクリジニウム標識を有するコンジュゲートの濃度が高くなるにつれ、またはコンジュゲート上におけるアクリジニウムの濃度が高くなるにつれ、より多くの非特異的に結合したコンジュゲートがウェル内部表面に結合する。
【0007】
KingFisher(商標)磁性粒子プロセッサは、誘発試薬が導入されて読み取りが行われる前に、磁性微粒子および標識されたコンジュゲートを含む複合体を別のウェルに動かすため、非特異的に結合したコンジュゲートは取り残される、すなわちウェル内部表面に結合し、したがってシグナルの読み取りに寄与しない。非特異的に結合した標識は、分析物に関連しない試料に由来するシグナル、すなわちバックグラウンドシグナルを増加させる。分析物に関連しない非特異的結合に起因するシグナルの除去は、イムノアッセイの感度を改善する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の非特異的結合の種類に加えて、第二の種類の非特異的結合が存在する。この第二の種類の非特異的結合において、標識、例えばアクリジニウム標識を含むコンジュゲートは、磁性微粒子と非特異的に結合する。この第二の種類の非特異的結合はノイズを増加させ、シグナル対ノイズ比を低下させる。図1A、1B、1C、1D、1Eおよび1Fは、イムノアッセイにおいて一方のコンジュゲートにおける特異的結合要素と標識との間に従来の連結が用いられているイムノアッセイのステップを説明する。図1A、1B、1C、1D、1Eおよび1Fにおいて、各列に5個の容器すなわちチューブを備える5列の容器すなわちチューブが存在する。所定の工程段階の操作が行われているチューブは、斜線で表される。25チューブ(5列×5チューブ/列)のアレイの下は、所定の工程段階のための所定の操作が行われる(a)第一のコンジュゲート、(b)試料および(c)第二のコンジュゲートの略図である。
【0009】
図1Aは、イムノアッセイ始点の列1におけるチューブ10a、10b、10c、10dおよび10eを示す。列2、3、4および5におけるチューブは、列1におけるチューブと同一である。磁性微粒子は、参照番号20によって表される。磁性微粒子と結合した特異的結合要素は、参照番号22によって表される。磁性微粒子20および磁性微粒子と結合した特異的結合要素22を含むコンジュゲートは、第一のコンジュゲートと称する。試料中の分析物は、参照番号24と表される。標識と結合した特異的結合要素は、参照番号26によって表される。標識そのものは、参照番号28によって表される。特異的結合要素26および標識28を含むコンジュゲートは、第二のコンジュゲートと称する。図1A、1B、1C、1D、1Eおよび1Fにおいて、第一のコンジュゲートにおける特異的結合要素22は、磁性微粒子20と共有結合する。しかし、特異的結合要素22が磁性微粒子20と共有結合している必要はない。代替的な一実施形態において、特異的結合要素22は、磁性微粒子20とファンデルワールス力によって結合していてもよい。
【0010】
図1Aに示す通り、イムノアッセイの最初に、第一のコンジュゲートがチューブ(複数可)10a内に導入され、試料がチューブ(複数可)10b内に導入され、第二のコンジュゲートがチューブ(複数可)10c内に導入される。図1Bは、チューブ(複数可)10bにおいて第一のコンジュゲートが試料と混合されていることを示す。第一のコンジュゲートの特異的結合要素22は、試料中の分析物24と結合する。図1Cは、図1Bにおけるチューブ(複数可)10b内の反応産物が、第二のコンジュゲートの入ったチューブ(複数可)10cへと移動されており、その際、第二のコンジュゲートの特異的結合要素26が、第一のコンジュゲートの特異的結合要素22と特異的に結合した分析物24と結合することを示す。図1Dにおいて、図1Cに示す反応において形成された複合体は、結合しなかった第二のコンジュゲートを除去するためにチューブ(複数可)10d内で洗浄される。図1Eは、磁性微粒子20を特異的結合要素22から解離させ、分析物24を第一の特異的結合要素22および第二の特異的結合要素26から解離させる前誘発溶液の効果を示す。これらの活動は、チューブ(複数可)10e内で行われる。図1Fにおいて、磁性微粒子20が反応混合物から除去され、シグナルが測定されて試料中の分析物24の濃度を決定することができる。図1Fに示すステップにおいて、チューブ(複数可)10eにおける標識28の非特異的結合は、非特異的に結合した標識28を試料中の分析物24の濃度の定量化に用いられる反応混合物の一部となし、これにより不正確な結果を導く。第一のコンジュゲートは、チューブ(複数可)10dへと取り除かれている。したがって、非特異的に結合した標識を反応混合物から除去するための方法を開発することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の要旨
本明細書に記載されている本発明は、コンジュゲート、例えば標識と結合した特異的結合要素の固相、例えば磁性微粒子への非特異的結合に起因するシグナルの除去に用いられ得る方法およびコンジュゲートに関与する。この方法およびコンジュゲートは、標識を、分析物と特異的に結合する特異的結合要素と連結するための切断可能な連結剤の使用に関与する。切断可能な連結剤の使用は、磁性微粒子、分析物およびコンジュゲートを含む複合体由来の特異的結合要素から標識を溶液中に放出させる。標識の放出後、いかなる標識をそこに非特異的に結合させた磁性微粒子も反応混合物から取り除かれる。コンジュゲート由来の標識、例えばアクリジニウムのみが溶出ウェル内に残される。
【0012】
標識と固相、例えば磁性粒子との間の相互作用によって非特異的に結合した任意のコンジュゲートは固相と結合し続け、続いて、追加的な試薬(複数可)、例えば誘発試薬の導入前に、固相が溶出ウェルから取り除かれて別のウェルに移動される際に溶出ウェルから除去される。
【0013】
コンジュゲートが標識と固相との相互作用によって非特異的に結合している場合、標識と特異的結合要素(例えば抗体)との間の連結の切断は、該特異的結合要素(例えば抗体)のみを放出する。特異的結合要素から放出された標識は、固相と結合し続ける。
【0014】
本明細書に記載されているイムノアッセイにおいて、磁性微粒子、分析物およびコンジュゲートを含む複合体が形成された後、切断可能な連結剤が切断し、複合体から標識が放出され、磁性微粒子が反応混合物から除去され、標識が誘発され、次にシグナルが測定される。サンドイッチイムノアッセイ形式において、イムノアッセイは、
(a)分析物を含んでいる疑いのある生物試料を提供するステップ、
(b)分析物特異的な特異的結合要素と結合した固相材料を含む第一のコンジュゲートを提供するステップ、
(c)分析物特異的な特異的結合要素、標識および切断可能な連結剤を含み、分析物特異的な特異的結合要素と標識とが切断可能な連結剤によって接続している、第二のコンジュゲートを提供するステップ、
(d)(a)生物試料、(b)第一のコンジュゲートおよび(c)第二のコンジュゲートを容器内で混合して反応混合物を生成するステップ、
(e)標識を第二のコンジュゲートから切断させるステップ、
(f)固相材料と非特異的に結合した標識を除去するステップ、
(g)標識によって発生したシグナルを測定するステップおよび
(h)試料中の分析物の濃度を決定するステップ
を含む。
【0015】
競合イムノアッセイ形式において、イムノアッセイは、
(a)分析物を含んでいる疑いのある生物試料を提供するステップ、
(b)分析物特異的な特異的結合要素と結合した固相材料を含む第一のコンジュゲートを提供するステップ、
(c)分析物、標識および切断可能な連結剤を含み、分析物と標識とが切断可能な連結剤によって接続している、第二のコンジュゲートを提供するステップ、
(d)(a)生物試料、(b)第一のコンジュゲートおよび(c)第二のコンジュゲートを容器内で混合して反応混合物を生成するステップ、
(e)標識をコンジュゲートから切断させるステップ、
(f)固相材料と非特異的に結合した標識を除去するステップ、
(g)標識によって発生したシグナルを測定するステップおよび
(h)試料中の分析物の濃度を決定するステップ
を含む。
【0016】
本発明は、競合イムノアッセイを実施するためのキットおよびサンドイッチイムノアッセイを実施するためのキットも提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1A】KingFisher(商標)磁性粒子プロセッサに利用されているインバース磁性粒子工程の手順を説明する模式図である。この図において、一方のコンジュゲートにおける特異的結合要素と標識との間の従来の連結がイムノアッセイに利用される。この図において、特異的結合要素は、微粒子と共有結合しているものとして示されている。この図には示していないが、特異的結合要素は、微粒子とファンデルワールス力によって結合していてもよい。
【図1B】KingFisher(商標)磁性粒子プロセッサに利用されているインバース磁性粒子工程の手順を説明する模式図である。この図において、一方のコンジュゲートにおける特異的結合要素と標識との間の従来の連結がイムノアッセイに利用される。この図において、特異的結合要素は、微粒子と共有結合しているものとして示されている。この図には示していないが、特異的結合要素は、微粒子とファンデルワールス力によって結合していてもよい。
【図1C】KingFisher(商標)磁性粒子プロセッサに利用されているインバース磁性粒子工程の手順を説明する模式図である。この図において、一方のコンジュゲートにおける特異的結合要素と標識との間の従来の連結がイムノアッセイに利用される。この図において、特異的結合要素は、微粒子と共有結合しているものとして示されている。この図には示していないが、特異的結合要素は、微粒子とファンデルワールス力によって結合していてもよい。
【図1D】KingFisher(商標)磁性粒子プロセッサに利用されているインバース磁性粒子工程の手順を説明する模式図である。この図において、一方のコンジュゲートにおける特異的結合要素と標識との間の従来の連結がイムノアッセイに利用される。この図において、特異的結合要素は、微粒子と共有結合しているものとして示されている。この図には示していないが、特異的結合要素は、微粒子とファンデルワールス力によって結合していてもよい。
【図1E】KingFisher(商標)磁性粒子プロセッサに利用されているインバース磁性粒子工程の手順を説明する模式図である。この図において、一方のコンジュゲートにおける特異的結合要素と標識との間の従来の連結がイムノアッセイに利用される。この図において、特異的結合要素は、微粒子と共有結合しているものとして示されている。この図には示していないが、特異的結合要素は、微粒子とファンデルワールス力によって結合していてもよい。
【図1F】KingFisher(商標)磁性粒子プロセッサに利用されているインバース磁性粒子工程の手順を説明する模式図である。この図において、一方のコンジュゲートにおける特異的結合要素と標識との間の従来の連結がイムノアッセイに利用される。この図において、特異的結合要素は、微粒子と共有結合しているものとして示されている。この図には示していないが、特異的結合要素は、微粒子とファンデルワールス力によって結合していてもよい。
【図2】KingFisher(商標)mL磁性粒子プロセッサの透視図である。
【図3】イムノアッセイの試料を調製するためのインバース磁性粒子工程の手順の実施に適したKingFisher(商標)mL磁性粒子プロセッサを説明する正面図である。
【図4】イムノアッセイの試料を調製するためのインバース磁性粒子工程の手順の実施に適したKingFisher(商標)磁性粒子プロセッサを説明する正面図である。このプロセッサは、マイクロウェルプレート毎に96個のマイクロウェルを備えるマイクロウェルプレートを利用する。
【図5】イムノアッセイの試料を調製するためのインバース磁性粒子工程の手順の実施に適したマイクロウェルプレートの上面図である。図5において、マイクロウェルプレートから2本のウェル帯が取り外されている。取り外されたウェル帯の一方は上面図の形式で示す。取り外されたウェル帯のもう一方は側面図の形式で示す。
【図6】KingFisher(商標)磁性粒子プロセッサとの使用に適したチップコームの側面図である。
【図7A】KingFisher(商標)mL磁性粒子プロセッサに利用されているインバース磁性粒子工程の手順を説明する模式図である。
【図7B】KingFisher(商標)mL磁性粒子プロセッサに利用されているインバース磁性粒子工程の手順を説明する模式図である。
【図7C】KingFisher(商標)mL磁性粒子プロセッサに利用されているインバース磁性粒子工程の手順を説明する模式図である。
【図7D】KingFisher(商標)mL磁性粒子プロセッサに利用されているインバース磁性粒子工程の手順を説明する模式図である。
【図7E】KingFisher(商標)mL磁性粒子プロセッサに利用されているインバース磁性粒子工程の手順を説明する模式図である。
【図7F】KingFisher(商標)mL磁性粒子プロセッサに利用されているインバース磁性粒子工程の手順を説明する模式図である。
【図8A】KingFisher(商標)磁性粒子プロセッサに利用されているインバース磁性粒子工程の手順を説明する模式図である。この図において、一方のコンジュゲートにおいて特異的結合要素と標識との間の切断可能な連結剤がイムノアッセイに利用されている。この図において、特異的結合要素は、微粒子と共有結合しているものとして示されている。この図には示していないが、特異的結合要素は、微粒子とファンデルワールス力によって結合していてもよい。
【図8B】KingFisher(商標)磁性粒子プロセッサに利用されているインバース磁性粒子工程の手順を説明する模式図である。この図において、一方のコンジュゲートにおいて特異的結合要素と標識との間の切断可能な連結剤がイムノアッセイに利用されている。この図において、特異的結合要素は、微粒子と共有結合しているものとして示されている。この図には示していないが、特異的結合要素は、微粒子とファンデルワールス力によって結合していてもよい。
【図8C】KingFisher(商標)磁性粒子プロセッサに利用されているインバース磁性粒子工程の手順を説明する模式図である。この図において、一方のコンジュゲートにおいて特異的結合要素と標識との間の切断可能な連結剤がイムノアッセイに利用されている。この図において、特異的結合要素は、微粒子と共有結合しているものとして示されている。この図には示していないが、特異的結合要素は、微粒子とファンデルワールス力によって結合していてもよい。
【図8D】KingFisher(商標)磁性粒子プロセッサに利用されているインバース磁性粒子工程の手順を説明する模式図である。この図において、一方のコンジュゲートにおいて特異的結合要素と標識との間の切断可能な連結剤がイムノアッセイに利用されている。この図において、特異的結合要素は、微粒子と共有結合しているものとして示されている。この図には示していないが、特異的結合要素は、微粒子とファンデルワールス力によって結合していてもよい。
【図8E】KingFisher(商標)磁性粒子プロセッサに利用されているインバース磁性粒子工程の手順を説明する模式図である。この図において、一方のコンジュゲートにおいて特異的結合要素と標識との間の切断可能な連結剤がイムノアッセイに利用されている。この図において、特異的結合要素は、微粒子と共有結合しているものとして示されている。この図には示していないが、特異的結合要素は、微粒子とファンデルワールス力によって結合していてもよい。
【図8F】KingFisher(商標)磁性粒子プロセッサに利用されているインバース磁性粒子工程の手順を説明する模式図である。この図において、一方のコンジュゲートにおいて特異的結合要素と標識との間の切断可能な連結剤がイムノアッセイに利用されている。この図において、特異的結合要素は、微粒子と共有結合しているものとして示されている。この図には示していないが、特異的結合要素は、微粒子とファンデルワールス力によって結合していてもよい。
【図8G】KingFisher(商標)磁性粒子プロセッサに利用されているインバース磁性粒子工程の手順を説明する模式図である。この図において、一方のコンジュゲートにおいて特異的結合要素と標識との間の切断可能な連結剤がイムノアッセイに利用されている。この図において、特異的結合要素は、微粒子と共有結合しているものとして示されている。この図には示していないが、特異的結合要素は、微粒子とファンデルワールス力によって結合していてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0018】
詳細な記述
本明細書において、用語「容器」は、チューブおよびウェルの両方を含むように企図されている。用語「ウェル」は、マイクロウェルおよびマイクロウェルよりも大容量のウェルを含む。KingFisher(商標)磁性粒子プロセッサは、マイクロウェルを利用する。KingFisher(商標)mL磁性粒子プロセッサは、チューブを利用する。本明細書に記載されている方法およびコンジュゲートの原理は、本明細書に記載されているイムノアッセイの実施にマイクロウェル、ウェルまたはチューブが用いられているかに関わらず同一である。
【0019】
本明細書において、「標識」、「標識群」等の表現は、特異的結合要素、例えば抗体または抗原と結合し、特異的結合要素とその相補的な結合要素との間の反応を検出可能にする群を意味する。標識の代表例として、発光を生じる酵素、放射性標識、フルオレセインおよび化学薬品が挙げられる。標識は、免疫反応物と結合することができ、目視または機器による手段によって検出可能なシグナルを発生することのできる任意の物質である。本発明における使用に適した様々な標識として、触媒、酵素、リポソーム、ならびに色素原、触媒、蛍光化合物、化学発光化合物および酵素その他等のシグナル発生物質を含むその他の小胞が挙げられる。標識としての使用に適した多くの酵素は、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第4,275,149号に開示されている。このような酵素として、フルオレセインジ(ガラクトピラノシド)、ニトロブルーテトラゾリウム、3,5’,5,5’−テトラニトロベンジジン、4−メトキシ−1−ナフトール、4−クロロ−1−ナフトール、4−メチルウンベリフェリルホスフェート、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェート、WO88100694およびEP0−254−051−A2に記載されているジオキセタン等の化学発光酵素基質ならびにそれらの誘導体およびアナログ等、酵素基質と併せて用いられる、アルカリホスファターゼやホースラディッシュペルオキシダーゼ等、グルコシダーゼ、ガラクトシダーゼ、ホスファターゼおよびペルオキシダーゼが挙げられる。好ましくは、標識は酵素であり、最も好ましくは、酵素はアルカリホスファターゼである。
【0020】
本明細書において、「検査試料」という表現、「生物試料」という表現および用語「試料」は、分析物を含んでいる疑いのある材料を意味する。検査試料は、ソースから得られたものが直接用いられてもよいし、前処理して試料の特性を改変した後のものが用いられてもよい。検査試料は、例えば、血液、唾液、眼球レンズ液、脳脊髄液、汗、尿、乳汁、腹水、滑液、腹膜水、羊水その他等の生理液等、どの生物ソースに由来してもよい。検査試料は、血液から血漿の調製、粘性の高い液体の希釈その他等、使用前に前処理されてよい。処理方法は、濾過、蒸留、抽出、濃縮、干渉成分の不活性化、試薬の添加その他に関与することができる。環境または食品アッセイを実施するため、水、食品その他等、生理液以外の他の液体試料が用いられてもよい。さらに、分析物を含んでいる疑いのある固体材料が、検査試料として用いられてよい。一部の例において、固体検査試料を改変して液体媒体を生成すること、または分析物を放出することが有利となり得る。
【0021】
本明細書において、「特異的結合要素」という表現は、特異的結合ペア、すなわちその一方の分子が化学的または物理的手段により第二の分子と特異的に結合する2個の異なる分子の要素を意味する。特異的結合ペアのこのような特異的結合要素の一例として、抗原および該抗原と特異的に結合する抗体が挙げられる。特異的結合ペアのこのような結合要素の別の一例として、第一の抗体および第一の抗体と特異的に結合する第二の抗体が挙げられる。
【0022】
本明細書において、用語「コンジュゲート」は、検出可能な部分、例えば化学発光部分と結合した特異的結合要素、例えば抗原または抗体を意味する。用語「コンジュゲート」は、固相、例えば磁性微粒子と結合した特異的結合要素、例えば抗原または抗体も意味する。
【0023】
本明細書において、「切断可能な連結剤」という表現は、特異的結合要素を標識と共有結合させる物質を意味し、この物質は、約6未満または約8を超えるpHレベルの変化によってまたは、例えばチオール、過ヨウ素酸、ヒドロキシルアミン等、化学物質による化学反応によって切断され得る。
【0024】
本明細書において、「固相」、「固相材料」その他の表現は、不溶性、またはその後の反応によって不溶性となり得る任意の材料を意味する。固相材料の代表例として、ポリマーもしくはガラスビーズ、微粒子、チューブ、シート、プレート、スライド、ウェル、テープまたは試験管等が挙げられる。
【0025】
本明細書において、用語「分析物」は、検出または測定される化合物を意味する。分析物は、少なくとも1個のエピトープまたは結合部位を有する。
【0026】
本明細書において、「モノクローナル抗体」という表現は、1種類の免疫細胞によって産生された、全て単一の親細胞のクローンであるため同一である抗体を意味する。
【0027】
本明細書において、用語「抗体の結合親和性」は、抗体上の単一の抗原結合部位とその特異的抗原エピトープとの間の相互作用の強さを意味する。親和性が高くなるにつれ、抗原と抗体との間の関連はより緊密になり、抗原が結合部位に残る可能性がより高くなる。親和性定数は、抗体および抗原の結合と解離の速度定数間の比率である。IgG抗体に対する通常の親和性は、10から10L/モルである。
【0028】
本明細書において、「正常ヒト血漿」という表現は、対象分析物または他の公知の異常もしくは疾病を含まないヒト血漿を意味する。
【0029】
本明細書において、用語「前活性化」は、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(以後、「EDAC」)およびN−ヒドロキシスルホスクシンイミド(以後、「スルホ−NHS」)を微粒子上のカルボキシル基と反応させて半安定的なNHSエステルを提供することを意味し、これは次にモノクローナル抗体上のNH基と反応して抗体と微粒子を結合する安定的なアミド結合を形成する。
【0030】
本明細書において、用語「磁性微粒子」は常磁性微粒子を意味する。常磁性微粒子は、磁場に引きつけられ、したがって1より大きい相対的な磁性透過性を有する。しかし、同様に磁場に引きつけられる強磁性体とは異なり、常磁性材料は、外部から印加された磁場なしでは全く磁化作用を持たない。
【0031】
本明細書において、物品名の後にくる記号「(複数可)」は、文脈に依存して1または複数の対象物品が企図されていることを示す。本明細書において、記号「S/N」はシグナル対ノイズ比を意味する。
【0032】
本明細書において、用語「イムノアッセイ」は、容器、例えば、試験管、ウェル、マイクロウェル内で実施される特別なクラスのアッセイまたは試験を意味し、このアッセイまたは試験は抗体と抗原との間の反応を用いて、患者が抗原に曝露されたことがあるか、または抗原に対する抗体を有するかを決定する。イムノアッセイは、不均一イムノアッセイであっても、均一イムノアッセイであってもよい。本明細書に記載されている方法は、主として不均一イムノアッセイに関係する。
【0033】
不均一イムノアッセイは、競合イムノアッセイ形式またはサンドイッチイムノアッセイ形式において行われ得る。競合イムノアッセイ形式において、固相材料は、分析物特異的な特異的結合要素と結合する。分析物、例えば抗原を含んでいる疑いのある試料は、(a)分析物特異的な特異的結合要素と結合した固相材料および(b)検出可能部分と結合した分析物を含むコンジュゲートと混合される。固相材料と結合する検出可能部分の量は、検出、測定されることができ、検査試料中に存在する分析物、例えば抗原の量と相関し得る。分析物は、抗原ではなく、抗体であってもよい。固相材料の例として、ビーズ、粒子、微粒子等が挙げられる。
【0034】
本発明は、主としてサンドイッチイムノアッセイ形式に関する。しかし、他のイムノアッセイ形式、例えば競合アッセイ形式等が用いられてもよい。サンドイッチアッセイのイムノアッセイ形式において、固相、例えば微粒子は抗体でコーティングされる。固相上の抗体は、捕捉用抗体として知られている。アッセイは、試料中の抗原を検出および測定するよう企図されている。第二の抗体は、適切な標識、例えばアクリジニウムで標識される。第二の抗体は、固相とは結合していない。第二の抗体は、検出用抗体として知られている。抗体と抗原は、次の順番で結合して複合体を形成する。すなわち、固相上の抗体−抗原−標識を有する抗体である。次に、複合体から固相が除去される。抗体−抗原−抗体サンドイッチは、標識を活性化することによる抗原の測定を可能にし、これは試料中の分析物濃度の決定に用いられてもよい。本明細書において、「サンドイッチ複合体」という表現は、抗体−抗原−抗体サンドイッチを意味する。
【0035】
サンドイッチイムノアッセイ形式の一例において、抗体を含む検査試料は、固相材料に固定化された抗原、例えばタンパク質と接触し、これによって抗原−抗体複合体を形成する。固相材料の例として、ビーズ、粒子、微粒子等が挙げられる。抗原−抗体複合体を含む固相材料は通常、例えば検出可能部分で標識された第二の抗体で処理される。続いて、第二の抗体は、固相材料に固定化された抗原と結合した試料の抗体と結合するようになる。次に、いかなる非結合材料も除去するための1回以上の洗浄ステップの後、色素原物質等、指標材料が導入され、これは検出可能部分と反応して検出可能シグナル、例えば、変色、発光を生じる。次に、検出可能シグナルの変化は、検出、測定され、検査試料中に存在する抗体の量と相関する。様々な希釈液および緩衝液もまた、微粒子、抗原、コンジュゲートおよび化学反応に関与するアッセイの他の成分の操作の最適化に必要とされることにも留意すること。さらに、例えば、第一の抗体が固相材料上に固定化されているアッセイ等、他の種類のサンドイッチアッセイが用いられてもよいことに留意すること。
【0036】
生物試料中に低濃度で存在する分析物の濃度を決定するための不均一イムノアッセイは、固相材料として微粒子を用いるサンドイッチイムノアッセイ形式において、米国特許第5,795,784号および第5,856,194号に記載されている装置を用いて実施され得る。これらの特許は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0037】
例えばHIV−1 p24抗原等、HIV抗原の場合、本明細書に記載されているイムノアッセイの実施にモノクローナル抗体が用いられることが好ましい。例えば、モノクローナル抗体120A−270および115B−151が、それぞれ固相上捕捉用抗体の成分および検出用抗体コンジュゲートとして用いられて、市販の自動イムノアッセイ分析計の使用のためのHIV−1 p24抗原の超高感度イムノアッセイを開発することができる。これらのモノクローナル抗体は、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第6,818,392号においてさらに詳細に記載されている。モノクローナル抗体は通常、その高い結合親和性(例えば、5×10リットル/モルを超える)、サンドイッチアッセイの成分間の適合性および試験した抗原の全サブタイプの検出に基づいて選択される。前述のHIV−1 p24抗原のモノクローナル抗体が、HIV−1 p24抗原およびHIV−2 p26抗原の全サブタイプの決定に用いられてよい。
【0038】
生物試料中の分析物の存在および量の決定は、競合診断アッセイによって決定され得る。小分子、競合診断アッセイは通常、利用可能な抗体部位を巡って分析物と競合することのできる、標識された成分を必要とする。標識された成分は通常、トレーサーと称する。標識された成分の例として、放射性トレーサー、蛍光トレーサー、化学発光トレーサーおよび酵素トレーサーが挙げられる。通常、標識された成分は、標識と結合した分析物または該分析物のアナログからなる。
【0039】
所定の分析物に対する特異的結合要素および標識された成分を含む特定の試薬が、所定の分析物のための高感度アッセイに有用となる確率は、用量反応曲線の知見に基づいて評価され得る。イムノアッセイの用量反応曲線は、対象分析物の濃度に応じた、対象分析物存在下における反応、対、対象分析物不在下における反応の比率のプロットである。所定のイムノアッセイの用量反応曲線は、所定の分析物に対する特異的結合要素およびトレーサーを含む各試薬に特有のものであり、分析物に対する特異的結合要素上の部位を巡るトレーサーと分析物との間の競合によって調節される。
【0040】
対象抗原のためのイムノアッセイを実施する前に、本明細書に記載されている方法は、市販の自動イムノアッセイ分析計に用いるための生物試料を調製するための処理技法を利用する。このような処理技法は、両者ともにThermo Fisher Scientific、Inc.、マサチューセッツ州ウォルサムから市販されているKingFisher(商標)mL磁性粒子プロセッサまたはKingFisher(商標)磁性粒子プロセッサを用いて実施され得る。
【0041】
ここで図2および3を参照すると、KingFisher(商標)mL磁性粒子プロセッサ110は、チューブ帯のチューブにおける磁性粒子の自動的な移動および処理に用いられ得る。続く説明において、チューブ実施形態のチューブは、濃縮技法の説明に用いられる。KingFisher(商標)mL磁性粒子プロセッサ110の原理は、(a)使い捨てチップコーム114で被覆され得る磁性ロッド112a、112b、112c、112dおよび112eならびに(b)チューブ帯116の使用に基づく。チップコーム114は、磁性ロッドを被覆するための非磁性材料からなる複数の鞘114a、114b、114c、114dおよび114eを接続する非磁性材料の帯を含む。チューブ帯116は、一列に配列された複数のチューブ116a、116b、116c、116dおよび116eである。KingFisher(商標)mL磁性粒子プロセッサ110は、吸引器および/または分注器なしで機能することができる。KingFisher(商標)mL磁性粒子プロセッサ110は、チップコーム114に適合する最大15本のチューブ帯116のために設計されている。チューブ帯(複数可)116は固定的に維持され、唯一の可動性アセンブリは、処理ヘッド118と共に、それと連動するチップコーム114ならびに磁性ロッド112a、112b、112c、112dおよび112eである。処理ヘッド118は、2個の垂直方向に移動するプラットホーム120、122を含む。一方のプラットホーム120は磁性ロッド112a、112b、112c、112dおよび112eに必要とされ、もう一方のプラットホーム122はチップコーム114に必要とされる。トレイ124は15本の別個のチューブ帯116を含み、単一試料の処理は通常、5個のチューブ116a、116b、116c、116dおよび116eを含む1本のチューブ帯116を用いる。5個のチップ114a、114b、114c、114dおよび114eを含む1本のチップコーム114は、一度に5試料の処理に用いられる。
【0042】
キーパッド(図示せず)およびディスプレイ(図示せず)を用いて磁性粒子処理を開始する前に、試料および試薬がチューブ116a、116b、116c、116dおよび116eに分注され、チップコーム(複数可)114がそれ自身の溝(複数可)に装填される。チューブ帯(複数可)116は、着脱可能なトレイ内の正確な位置に置かれ、トレイが末端位置に押し込まれる。この操作において、前蓋および上蓋は閉まっていても開いていてもよい。蓋が閉められていると、工程は環境による汚染から保護される。KingFisher(商標)mL磁性粒子プロセッサは、参照により本明細書に組み込まれているKingFisher(商標)mLユーザーマニュアル改訂番号1.0、2002年2月、カタログ番号1508260に詳細に記述されている。
【0043】
KingFisher(商標)磁性粒子プロセッサは、マイクロウェルに適した液体容量で磁性粒子を自動的に移動および処理するよう設計されている。これは、より大容量の液体を用いるKingFisher(商標)mL磁性粒子プロセッサとは対照的である。KingFisher(商標)磁性粒子プロセッサは、参照により本明細書に組み込まれているKingFisher(商標)マイクロウェルユーザーマニュアル、改訂番号1.0、1999−04−09、カタログ番号1507730に詳細に記載されている。
【0044】
ここで図4、5および6を参照すると、KingFisher(商標)磁性粒子プロセッサ210は、マイクロウェルプレートのウェルにおける磁性粒子の自動的な移動および処理に用いられ得る。KingFisher(商標)磁性粒子プロセッサ210の原理は、使い捨てチップコーム214で被覆され得る磁性ロッド212a、212b、212c、212d、212e、212f、212gおよび212hならびにウェル帯216の使用に基づく。磁性ロッド212aのみが示されている。他の磁性ロッドは磁性ロッド212aに隠れている。チップコーム214は、磁性ロッドを被覆するための、非磁性材料からなる複数の鞘を接続する非磁性材料の帯を含む。ウェル帯216は、一列に配列された複数のマイクロウェルである。KingFisher(商標)磁性粒子プロセッサ210は、吸引器および/または分注器なしで機能することができる。KingFisher(商標)磁性粒子プロセッサ210は、チップコーム214に適合する最大96マイクロウェルのために設計される。マイクロウェルは固定的に維持され、唯一の可動性アセンブリは、処理ヘッド218と共に、それと連動するチップコーム214および磁性ロッド212である。処理ヘッド218は、2個の垂直方向に移動するプラットホーム220、222を含む。一方のプラットホーム220は磁性ロッド212に必要とされ、もう一方のプラットホーム222はチップコーム214に必要とされる。トレイ224は、1枚のマイクロウェルプレートを含み、単一の試料処理は通常、8個のマイクロウェル216a、216b、216c、216d、216e、216f、216gおよび216hを含む1本のウェル帯216を用いる。12個のチップ214a、214b、214c、214d、214e、214f、214g、214h、214i、214j、214kおよび214lを含む1本のチップコーム214は、一度に12試料の処理に用いられる。
【0045】
キーパッド(図示せず)およびディスプレイ(図示せず)を用いて磁性粒子処理を開始する前に、試料および試薬がマイクロウェル216a、216b、216c、216d、216e、216f、216gおよび216hに分注され、チップコーム(複数可)214がそれ自身の溝(複数可)に装填される。ウェル帯(複数可)216は、着脱可能なトレイ内の正確な位置に置かれ、トレイが末端位置に押し込められる。操作において、前蓋および上蓋は閉まっていても開いていてもよい。蓋が閉められていると、工程は環境による汚染から保護される。
【0046】
上述のKingFisher(商標)機器のどちらが用いられているかに関わらず、用いられている操作原理は、一般にMPPと称するインバース磁性粒子処理技術である。液体をあるウェルから別のウェルに移動させるのではなく、チューブ116aから(またはマイクロウェル216aから)チューブ116bへと(またはマイクロウェル216bへと)磁性粒子が移動され、少なくとも一方のチューブ(マイクロウェル)が特異的試薬(複数可)を含んでいる。この原理は、外部磁石方法、すなわち米国特許第5,795,784号および第5,856,194号に示されている装置に用いられている分離の種類と対照的である。インバース磁性粒子処理技術によると、磁性粒子は、使い捨て型の特別に設計されたプラスチック製チップコームで被覆された磁性ロッドを用いて移動される。
【0047】
磁性粒子を用いた作業は、別個の5工程段階に分けることができる。
【0048】
粒子の捕集:このステップにおいて、磁性粒子は指定のウェルまたはチューブから捕集される。
【0049】
粒子の結合:このステップにおいて、特定のウェルまたはチューブ内で材料が試薬から磁性粒子上に捕集される。
【0050】
粒子の混合:このステップにおいて、特定のウェルまたはチューブ内で試薬および粒子(挿入されている場合)がプラスチック製チップで混合される。
【0051】
粒子の放出:このステップにおいて、捕集された材料が磁性粒子の表面から特定のウェルまたはチューブ内に放出される。
【0052】
粒子の洗浄:このステップにおいて、特定のウェルまたはチューブ内で磁性粒子が洗浄される。
【0053】
粒子の移動:このステップにおいて、あるウェルまたはチューブから別のウェルまたはチューブへと磁性粒子が移動される。
【0054】
磁性粒子の捕集において、磁性ロッドは完全にチップの内側にある。磁性ロッドは、チップコーム(複数可)と共にチューブ内で上下にゆっくりと動き、磁性粒子はチップ壁上に捕集される。磁性粒子を捕集した磁性ロッドは、チップコーム(複数可)と共にチューブ外に引き上げられ、次のチューブへと移動されてよい。磁性粒子を捕集した後、磁性ロッドはチップコーム(複数可)と共にチューブから引き上げられ、チップコーム(複数可)は試薬の入った次のチューブへと降ろされ、磁性ロッドはチップコーム(複数可)から引き上げられる。磁性粒子は、試薬中に残ったチップコーム(複数可)を、全粒子が次の反応チューブ内の物質と混合されるまで上下に数回かなり高速で動かすことによって放出される。磁性粒子の洗浄は、頻繁に行われる重要な処理ステップである。洗浄は、洗浄溶液が充填されたチューブにおける放出および捕集工程の組合せである。洗浄効率を最大限に高めるため、磁性ロッドはチップコーム(複数可)と共に、液体を持ち去る特性を最小限に抑えるよう設計されている。長期にわたる反応において磁性粒子懸濁液が均等に混合された状態を維持するため、チップコーム(複数可)は時々上下に動かされてよい。第一のチューブの容量は次のチューブの容量より大きくてよく、この構成は濃縮目的に利用される。
【0055】
図8A、8B、8C、8D、8E、8Fおよび8Gは、本明細書に記載されている方法に従った、KingFisher(商標)mL磁性粒子プロセッサにおけるチューブから磁性粒子の捕集、移動および放出に用いられているステップの順序を説明する。図8A、8B、8C、8D、8E、8Fおよび8Gにおいて、各列に5個の容器、すなわちチューブを備える5列の容器、すなわちチューブが存在する。所定の工程段階のための操作が実施されるチューブは斜線で表される。25チューブ(5列×5チューブ/列)のアレイの下は、所定の工程段階のための所定の操作が行われる(a)第一のコンジュゲート、(b)試料および(c)第二のコンジュゲートの略図である。
【0056】
図8Aは、イムノアッセイ始点の列1におけるチューブ10a、10b、10c、10dおよび10eを示す。列2、3、4および5におけるチューブは、列1におけるチューブと同一である。磁性微粒子は、参照番号20によって表される。磁性微粒子と結合した特異的結合要素は、参照番号22によって表される。磁性微粒子20および磁性微粒子と結合した特異的結合要素22を含むコンジュゲートは、第一のコンジュゲートと称する。試料中の分析物は、参照番号24で表される。標識と結合した特異的結合要素は、参照番号26によって表される。標識そのものは、参照番号28によって表される。特異的結合要素26および標識28を含むコンジュゲートは、第二のコンジュゲートと称する。図8A、8B、8C、8D、8Eおよび8Fにおいて、第一のコンジュゲートにおける特異的結合要素22は、磁性微粒子20と共有結合する。しかし、特異的結合要素22が磁性微粒子20と共有結合している必要はない。代替的な一実施形態において、特異的結合要素22は、磁性微粒子20とファンデルワールス力によって結合していてもよい。図8A、8B、8C、8D、8E、8Fおよび8Gにおいて、切断可能な連結剤は参照番号30によって表され、これは点線で図示されている。
【0057】
図8Aに示す通り、イムノアッセイの最初に、第一のコンジュゲートがチューブ(複数可)10a内に導入され、試料がチューブ(複数可)10b内に導入され、第二のコンジュゲートがチューブ(複数可)10c内に導入される。図8Bは、チューブ(複数可)10bにおいて第一のコンジュゲートが試料と混合されていることを示す。第一のコンジュゲートの特異的結合要素22は、試料中の分析物24と結合する。図8Cは、図8Bにおけるチューブ(複数可)10b内の反応産物が、第二のコンジュゲートの入ったチューブ(複数可)10cへと移動し、すると第二のコンジュゲートの特異的結合要素26は、第一のコンジュゲートの特異的結合要素22と特異的に結合した分析物24と結合することを示す。図8Dにおいて、図8Cに示されている反応において形成された複合体は、分析物24と結合していない第二のコンジュゲートを除去するためにチューブ(複数可)10d内で洗浄される。図8Eは、反応混合物が最後のチューブ(複数可)10e内に移動された後の、特異的に結合した標識28および非特異的に結合した標識28を有する微粒子20を示す。図8Fは、チューブ(複数可)10eにおいて第二のコンジュゲートの特異的結合要素26から標識28が解離される、連結剤の切断ステップの効果を示す。図8Gにおいて、磁性微粒子20は反応混合物からチューブ(複数可)10dへと取り除かれ、するとシグナルはチューブ(複数可)10e内で測定されて、試料中の分析物24の濃度を決定することができる。図8Gに示すステップにおいて、磁性微粒子20と非特異的に結合した標識28もまた、磁性微粒子20と結合し続ける。さらに、第二の特異的結合要素26および磁性微粒子20と非特異的に結合した標識28を含むいかなるコンジュゲートもまた磁性微粒子と結合し続ける。磁石は、磁性微粒子20および磁性微粒子20と非特異的に結合した標識28等、磁性微粒子20と結合した他のあらゆる物質を除去する。図8Gに示すステップにおいて、シグナルは過酸化水素を含むpH値の高い環境で測定される。
【0058】
非特異的結合に関して、標識は磁性微粒子と非特異的に結合する可能性があり、さらに特異的結合要素は磁性微粒子と非特異的に結合する可能性がある。
【0059】
磁性微粒子と非特異的に結合した化学発光標識、例えばアクリジニウムの除去は、化学発光機器プラットホーム、例えばARCHITECT(登録商標)、PRISM(登録商標)、IMX(登録商標)、AXSYM(登録商標)機器のオプションではなかった。本明細書に記載されているコンジュゲートおよび方法が開発される前には、これらの機器における誘発ステップ、読み取りステップおよび定量ステップの順序の前に、非特異的に結合した任意の化学発光標識、例えばアクリジニウムを有する固相を反応混合物から分離するために利用できるメカニズムは存在しなかった。
【0060】
切断可能な連結剤を有するコンジュゲートをKingfisher(商標)磁性粒子プロセッサまたはKingfisher(商標)mL磁性粒子プロセッサと共に用いると、捕捉された分析物と特異的に結合した標識のみがシグナルの原因となることができる。固相、例えば磁性微粒子と結合した非特異的結合標識が溶出ウェルから取り除かれ、非特異的シグナル源として除去され、これによりアッセイの感度を改善する。
【0061】
本明細書に記載されている方法は、より高濃度の標識されたコンジュゲートの使用を評価する、または標識と結合した特異的結合要素を含むコンジュゲートを調製する場合はより高比率の標識のコンジュゲートへの取り込みを評価する機会を提供する。
【0062】
より高濃度の標識されたコンジュゲートは反応速度を加速させ、より高比率の標識のコンジュゲートへの取り込みは検出システムに存在する標識の量を増加させる。これらの作用のいずれかは、特異的に結合した分析物に基づくシグナルを増加させることにより、アッセイの感度を改善することができる。より高濃度の標識されたコンジュゲート、または標識されたコンジュゲートへのより高い標識取り込み比率は、標識されたコンジュゲートの固相、例えば磁性微粒子への非特異的な結合をより多くもたらす可能性がある。しかし、このような非特異的に結合した標識は固相、例えば磁性微粒子と共に溶出反応混合物から除去されるため、非特異的に結合した標識は、非特異的に結合したコンジュゲート由来のシグナルを増加させない。
【0063】
アクリジニウムが標識として用いられる場合、アクリジニウムを早期に誘発しない、またはその化学発光特性を減少もしくはいっそ除去をもたらすようにアクリジニウムを改変する条件下で切断可能となる切断可能な連結剤が必要とされる。
【0064】
本明細書に記載されている試薬およびイムノアッセイと併せた使用に適した切断可能な連結剤が、表1に説明されている。
【0065】
【表1】

【0066】
本明細書における使用に適した切断可能な連結剤は、反応混合物のpHに対して非感受性である。
【0067】
第一のコンジュゲートおよび第二のコンジュゲートを調製するための技法は、当業者によく知られている。第一のコンジュゲートを調製するため、ポリマーコーティングされた磁性微粒子は、2つの内一方の特異的結合要素と結合されてよい。ポリマーコーティングが反応基を有する場合、磁性微粒子は、特異的結合要素と共有結合されてよい。ポリマーコーティングが反応基を持たない場合、または特異的結合要素と反応しない反応基を有する場合、磁性微粒子は、特異的結合要素とファンデルワールス力によって結合されてよい。本明細書における使用に適した第一のコンジュゲートは、商標Dynal(登録商標)に基づいてInvitrogen Corporationにより製造されてよい。
【0068】
第二のコンジュゲートを調製するため、切断可能な連結剤の一方の反応基は特異的結合要素の官能基と結合を形成し、切断可能な連結剤のもう一方の反応基は標識の官能基と結合を形成する。切断可能な連結剤と、例えば特異的結合要素および標識等の化学物質の官能基とを結合する方法を当業者に教示する参考のため、参照により本明細書に組み込まれているPierceカタログ2005/2006を参照のこと。
【0069】
本明細書における使用に適したコンジュゲートは、Invitrogen Corporationによって製造され得る。
【0070】
本明細書に記載されているコンジュゲートは、先行技術のコンジュゲートと比べていくつかの利点を有する。非特異的に結合した標識の除去によってノイズが低下し、シグナル対ノイズ比が増加する。より高濃度のコンジュゲート、例えば特異的結合要素と結合したアクリジニウムが反応混合物に添加されてよい。より高濃度の標識、例えばアクリジニウムがコンジュゲートに取り込まれてよい。
【0071】
切断工程が標識、例えばアクリジニウムに悪影響を及ぼさないよう、連結剤の選択には注意すること。過酸化水素の存在下でpH範囲が8.0を超えないよう注意すること。
【0072】
本発明の様々な修正および変更は、当業者であれば本発明の範囲および精神から逸脱することなく明らかとなり、本発明は、本明細書に説明されている例示的な実施形態に不当に限定されないことを理解するべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特異的結合要素、標識および切断可能な連結剤を含み、特異的結合要素と標識とが切断可能な連結剤によって接続している、コンジュゲート。
【請求項2】
切断可能な連結剤が標識と結合することのできる、請求項1のコンジュゲート。
【請求項3】
切断可能な連結剤が特異的結合要素と結合することのできる、請求項1のコンジュゲート。
【請求項4】
特異的結合要素が抗体である、請求項3のコンジュゲート。
【請求項5】
標識が化学発光標識である、請求項1のコンジュゲート。
【請求項6】
化学発光標識がアクリジニウムである、請求項5のコンジュゲート。
【請求項7】
切断可能な連結剤が、3,3’−ジチオビス[プロピオン酸スクシンイミジル]、3−[(2−アミノエチル)ジチオ]プロピオン酸・HCl、1,4ビス−マレイミジル−2,3−ジヒドロキシブタン、酒石酸ジスクシンイミジルおよびエチレングリコールビス[スルホスクシンイミジルスクシネート]からなる群から選択される、請求項1のコンジュゲート。
【請求項8】
イムノアッセイであって、
(a)分析物を含んでいる疑いのある生物試料を提供するステップ、
(b)分析物特異的な特異的結合要素と結合した固相材料を含む第一のコンジュゲートを提供するステップ、
(c)分析物特異的な特異的結合要素、標識および切断可能な連結剤を含み、分析物特異的な特異的結合要素と標識とが切断可能な連結剤によって接続している、第二のコンジュゲートを提供するステップ、
(d)(a)生物試料、(b)第一のコンジュゲートおよび(c)第二のコンジュゲートを容器内で混合して反応混合物を生成するステップ、
(e)標識を第二のコンジュゲートから切断するステップ、
(f)固相材料と非特異的に結合した標識を除去するステップ、
(g)標識によって発生したシグナルを測定するステップおよび
(h)試料中の分析物の濃度を決定するステップ
を含むイムノアッセイ。
【請求項9】
切断可能な連結剤が標識と結合することのできる、請求項8の方法。
【請求項10】
切断可能な連結剤が特異的結合要素と結合することのできる、請求項8の方法。
【請求項11】
第一のコンジュゲートの特異的結合要素が抗体であり、ならびに第二のコンジュゲートの特異的結合要素が抗体である、請求項10の方法。
【請求項12】
標識が化学発光標識である、請求項8の方法。
【請求項13】
化学発光標識がアクリジニウムである、請求項12の方法。
【請求項14】
切断可能な連結剤が、3,3’−ジチオビス[プロピオン酸スクシンイミジル]、3−[(2−アミノエチル)ジチオ]プロピオン酸・HCl、1,4ビス−マレイミジル−2,3−ジヒドロキシブタン、酒石酸ジスクシンイミジルおよびエチレングリコールビス[スルホスクシンイミジルスクシネート]からなる群から選択される、請求項8の方法。
【請求項15】
イムノアッセイであって、
(a)分析物を含んでいる疑いのある生物試料を提供するステップ、
(b)分析物特異的な特異的結合要素と結合した固相材料を含む第一のコンジュゲートを提供するステップ、
(c)分析物、標識および切断可能な連結剤を含む特異的結合要素を含み、分析物と標識とが切断可能な連結剤によって接続している、第二のコンジュゲートを提供するステップ、
(d)(a)生物試料、(b)第一のコンジュゲートおよび(c)第二のコンジュゲートを容器内で混合して反応混合物を生成するステップ、
(e)標識を第二のコンジュゲートから切断するステップ、
(f)固相材料と非特異的に結合した標識を除去するステップ、
(g)標識によって発生したシグナルを測定するステップおよび
(h)試料中の分析物の濃度を決定するステップ
を含むイムノアッセイ。
【請求項16】
切断可能な連結剤が標識と結合することのできる、請求項15の方法。
【請求項17】
切断可能な連結剤が特異的結合要素と結合することのできる、請求項15の方法。
【請求項18】
特異的結合要素が抗体である、請求項17の方法。
【請求項19】
標識が化学発光標識である、請求項15の方法。
【請求項20】
化学発光標識がアクリジニウムである、請求項19の方法。
【請求項21】
切断可能な連結剤が、3,3’−ジチオビス[プロピオン酸スクシンイミジル]、3−[(2−アミノエチル)ジチオ]プロピオン酸・HCl、1,4ビス−マレイミジル−2,3−ジヒドロキシブタン、酒石酸ジスクシンイミジルおよびエチレングリコールビス[スルホスクシンイミジルスクシネート]からなる群から選択される、請求項15の方法。
【請求項22】
特異的結合要素、標識および切断可能な連結剤を含み、特異的結合要素と標識とが切断可能な連結剤によって接続している、コンジュゲートを含むキット。
【請求項23】
切断可能な連結剤が標識と結合することのできる、請求項22のキット。
【請求項24】
切断可能な連結剤が特異的結合要素と結合することのできる、請求項22のキット。
【請求項25】
特異的結合要素が抗体である、請求項24のコンジュゲート。
【請求項26】
標識が化学発光標識である、請求項22のキット。
【請求項27】
化学発光標識がアクリジニウムである、請求項26のキット。
【請求項28】
切断可能な連結剤が、3,3’−ジチオビス[プロピオン酸スクシンイミジル]、3−[(2−アミノエチル)ジチオ]プロピオン酸・HCl、1,4ビス−マレイミジル−2,3−ジヒドロキシブタン、酒石酸ジスクシンイミジルおよびエチレングリコールビス[スルホスクシンイミジルスクシネート]からなる群から選択される、請求項1のキット。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図7F】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図8F】
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【図8G】
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【公表番号】特表2012−527621(P2012−527621A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511963(P2012−511963)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/035265
【国際公開番号】WO2010/135330
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】