切断型シスチンノットタンパク質
本発明は、タンパク質化学、生物学、および医学の分野に関する。より具体的に述べると、本発明は、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーのタンパク質模倣体の設計および調製に関する。さらに、本発明は、薬物または予防剤としてのこれらのタンパク質模倣体の使用にも関する。本発明は、免疫原性組成物および/または治療用組成物に用いられることが好ましい、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーのタンパク質模倣体を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質化学、生物学、および医学の分野に関する。より具体的に述べると、本発明は、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーのタンパク質模倣体の設計および調製に関する。さらに、本発明は、薬物または予防剤としてのこれらのタンパク質模倣体の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
三次元のシスチンノット構造は、多くの細胞外分子内において見出され、多岐にわたる種間において保存されている(文献4)。それらのジスルフィド結合によりノットを形成する6つのシステインの配置により、シスチンノット構造が形成される。シスチンノット構造に典型的なコンセンサスモチーフは、X0-C1-X1-C2-X2-C3-X3-C4-X4-C5-X5-C6-X6であり、ここで、システイン2、3、5および6は、システイン2とシステイン5のジスルフィド結合、およびシステイン3とシステイン6のジスルフィド結合を介して、X2およびX3を包含するリングを形成する。システイン1とシステイン4の間の第3のジスルフィド結合がリングを貫通し、これによりノットが形成される(文献2、3)。図11は、シスチンノット構造を含むタンパク質の概略表示を表す。このシスチンノットフォールディングにより、2つの変形したベータヘアピン(ベータ1およびベータ3)ループがノットの片側から突出し、1つの(ベータ2)ヘアピンループがノットの他の側から突出する、3つの異なるドメインが形成される。ベータ1ヘアピンループは、C1とC2の間の一続きのアミノ酸により形成され、上述のコンセンサスモチーフでは「X1」と称し;ベータ2 (「X3」)ヘアピンループおよびベータ3 (「X4」)ヘアピンループは、それぞれ、C3とC4の間の一続きのアミノ酸、ならびにC4とC5の間の一続きのアミノ酸により形成される。
【0003】
増殖因子は、in vivoおよびin vitroのいずれにおいても、細胞増殖を誘導する特性を共有する、大きなポリペプチド群を表す。増殖因子間の配列類似性のレベルは低いが、それらの構造的類似性および機能的類似性に基づくサブファミリーへと分類することができる。例えば、以下の増殖因子サブファミリー:糖タンパク質ホルモンベータ(GLHB)サブファミリー、血小板由来増殖因子(PDGF)サブファミリー、形質転換増殖因子ベータ(TGFベータ)サブファミリー、神経増殖因子(NGF)サブファミリー、糖タンパク質ホルモンアルファ(GLHA)サブファミリー、CTCKサブファミリー、ノギン様タンパク質サブファミリー、コアグリンサブファミリー、ムチン様タンパク質サブファミリー、ムチン様BMPアンタゴニストサブファミリー、ムチン様ヘモレクチンサブファミリー、スリット様タンパク質サブファミリー、およびジャッグド様タンパク質サブファミリーはすべて、上記で説明したシスチンノット立体構造を示す。しかし、異なるサブファミリーは、例えば、X1、X2、X3、X4、および/またはX5でコンセンサス長が異なる。さらに、異なるサブファミリーは、機能および標的の器官がまったく異なる。例えば、GLHAサブファミリーおよびGLHBサブファミリーが、生殖に関与する生理学的過程にとって重要であるのに対し、NGFサブファミリーのメンバーは、主に神経細胞に対してそれらの機能を及ぼし、PDGFサブファミリーのメンバーは、主に内皮細胞に対してそれらの機能を及ぼす。
【0004】
シスチンノットタンパク質内では、シスチンノット形成に関与するシステインの隣に、他のシステインが存在する場合があり、これらは通常、シスチンノット内、突出するドメイン内、または例えば、二量体化時の2つのタンパク質間において、さらなるジスルフィド結合を創出するのに用いられる。
【0005】
健康状態および疾患におけるシスチンノット増殖因子については広範な研究がなされており、治療例は、例えば、癌の治療における血管内皮細胞増殖因子(VEGF; PDGFサブファミリーのサブサブファミリー)特異的抗体の使用であり、Genentech社により開発されたモノクローナル抗体であるベバシズマブ(Avastin (商標))が、結腸直腸癌の治療について、2004年に、米国食品医薬品局(FDA)により承認されており;男性用の避妊剤として、濾胞刺激ホルモン(FSH; GLHA/Bサブファミリーのメンバー)によるワクチンが開発されている。治療用のVEGF特異的モノクローナル抗体であるベバシズマブの主要な欠点は、生産コストが高く、治療に必要な量が比較的多く、場合によっては腫瘍内透過性が低く、副作用を示すことである。さらに、ベバシズマブは、数カ月間に多くの回数にわたり投与しなければならず、患者に対する負担が大きい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「Remington's Pharmaceutical Sciences」、Mace Publishing Company、Philadelphia PA、第17版、1985年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーのタンパク質模倣体を提供することであり、該タンパク質模倣体は、前記メンバーに対して免疫反応を誘導することが可能であることが好ましい。本発明の別の目的は、シスチンノットタンパク質関連状態を治療および/または予防する、代替的な手段および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、免疫原性組成物および/または治療組成物において使用されることが好ましい、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーのタンパク質模倣体を提供する。
【0009】
上記で述べた通り、シスチンノットタンパク質は、一続きの少なくとも2アミノ酸と、前記一続きのアミノ酸を接続する2つのジスルフィド結合とから構成されるリングを含む、複雑な立体構造を有する。第3のジスルフィド結合がリングを貫通することにより、ノットが形成される。シスチンノット増殖因子スーパーファミリーのすべてのメンバーは、第1のシステインと第2のシステインの間、および第4のシステインと第5のシステインの間にある一続きのアミノ酸は、一方向に突出するベータヘアピンループを形成するが、第3のシステインと第4のシステインの間に位置する別の一続きのアミノ酸は、その分子の向かい側の部位から突出する(図11)。第一の実施形態では、本発明は、モチーフX0-C1-X1-C2-X2-C3-X3-C4-X4-C5-X5-C6-X6を有する、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーのタンパク質模倣体(式中、C1〜C6は、シスチンノット構造を形成するシステイン残基であり、C1がC4に連結され、C2がC5に連結され、C3がC6に連結され; X0およびX6は、互いに独立に、0〜10アミノ酸、好ましくは、0〜5アミノ酸、より好ましくは0〜3アミノ酸、より好ましくは0〜2アミノ酸、なおより好ましくは0アミノ酸または1アミノ酸、最も好ましくは0アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X2は、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーのC2とC3の間に位置するアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する、2〜24アミノ酸残基の長さのアミノ酸配列を表し; X5は、1アミノ酸残基の長さのアミノ酸配列を表し; X1は、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーのC1とC2の間に位置するアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する、15〜50アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X3は、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーのC3とC4の間に位置するアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する、3〜36アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X4は、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーのC4とC5の間に位置するアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する、15〜50アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表す)を提供する。好ましくは、C2、C3、C5およびC6は、C2とC5の間、およびC3とC6の間の結合によりリングを形成し、C1とC4の間の第3の結合が該リングを貫通し、これによりシスチンノットが形成される。好ましい実施形態では、アミノ酸の総数が130以下であり、好ましくは110以下であり、より好ましくは100以下であり、なおより好ましくは90以下であり、最も好ましくは80以下である、本発明によるペプチド模倣体が提供される。
【0010】
好ましい実施形態では、X1、X2、X3、およびX4のそれぞれが、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーの同じメンバーのアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を表す、本発明によるタンパク質模倣体が提供される。したがって、これは、本発明が、モチーフX0-C1-X1-C2-X2-C3-X3-C4-X4-C5-X5-C6-X6を有する、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーのタンパク質模倣体(式中、C1〜C6は、シスチンノット構造を形成するシステイン残基であり、C1がC4に連結され、C2がC5に連結され、C3がC6に連結され; X0およびX6は、互いに独立に、0〜10アミノ酸、好ましくは、0〜5アミノ酸、より好ましくは0〜3アミノ酸、より好ましくは0〜2アミノ酸、より好ましくは0アミノ酸または1アミノ酸、最も好ましくは0アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X2は、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーのC2とC3の間に位置するアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する、2〜24アミノ酸残基の長さのアミノ酸配列を表し; X5は、1アミノ酸残基の長さのアミノ酸配列を表し; X1は、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーのC1とC2の間に位置するアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する、15〜50アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X3は、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーのC3とC4の間に位置するアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する、3〜36アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X4は、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーのC4とC5の間に位置するアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する、15〜50アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表す)を提供することを意味する。C2、C3、C5およびC6は、C2とC5の間、およびC3とC6の間の結合によりリングを形成し、C1とC4の間の第3の結合が該リングを貫通し、これによりシスチンノットが形成される。好ましい実施形態では、アミノ酸の総数が130以下であり、好ましくは110以下であり、より好ましくは100以下であり、なおより好ましくは90以下であり、最も好ましくは80以下である、本発明によるペプチド模倣体が提供される。
【0011】
本明細書では、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーを、上記で説明した典型的な三次元シスチンノット構造を形成する任意のタンパク質、したがって、少なくとも6つのシステインが、シスチンノットと、該ノットから突出する3つのヘアピンループを形成する任意のタンパク質であって、システイン2、3、5および6が、システイン2とシステイン5の間の結合のほか、システイン3とシステイン6の間の結合によりリングを形成し、システイン1とシステイン4の間の第3の結合が該リングを貫通し、これにより該ノットが形成される任意のタンパク質として定義する。当業者は、例えば、パターン検索と、対合アライメントとを組み合わせることにより、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバー内に存在する構造モチーフを同定することができる。当業者は、例えば、図10に示される非限定的な例により、例えば、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーに属する、既知のシスチンノットタンパク質を手がかりとしてその検索を行うことができる。
【0012】
本発明による、いわゆる「切断型シスチンノットタンパク質」が、シスチンノットタンパク質関連障害を治療または予防するのにとりわけ有用であるという見識を、本発明者らは提示する。例えば、本発明による切断型VEGFが示すホルモン活性は無視できるものであるのに対し、その免疫学的特性は優れたものであることを、本発明者らは示した。本発明による切断型VEGFのホルモン活性が無視できるものであることの利点の1つは、例えば、完全タンパク質のホルモン性副作用なしに、相当量の切断型VEGFを動物に投与しうることである。その天然タンパク質またはそのより低分子の断片と比較した切断型VEGFの別の利点は、切断型VEGFが、それ自体として免疫原性であることである。これは、切断型VEGFが、より低分子の断片との対比では、キャリアタンパク質に連結されることなしに免疫原性であるのに十分な程度に高分子であり、かつ、天然タンパク質との対比では、免疫系により非自己とみなされるのに十分な程度に「非天然」であるという事実による。非自己とは、免疫系が、タンパク質または該タンパク質の部分を自己タンパク質とはみなさず、したがって、前記タンパク質に対する免疫反応を引き起こすことを意味する。理論に拘束されずに述べると、本発明による切断型タンパク質が、「非自己」としてみなされる事実は、例えば、「潜在性ペプチド(cryptic peptides)」の概念により説明される。潜在性ペプチドとは、(自己)タンパク質の部分ではあるが、通常の条件下では免疫系に対して提示されないペプチドとして定義される。免疫系は、これらの潜在性ペプチドを「無視」する。抗原提示細胞により取り込まれたタンパク質は、プロセシングされる、すなわち、低分子のペプチド断片に切断される。通常の条件下において、所与のタンパク質のこれらの低分子ペプチド断片は、各プロセシング後において、多少とも同一である。これらは、いわゆる優性ペプチドである。所与のタンパク質がプロセシングされるたびに、例えば、免疫系へと効果的に提示されるのに十分な量で、ペプチドx、y、およびzが生成される。自己タンパク質のペプチドx、y、およびzに恒常的に曝露されている免疫系は、自己タンパク質のこれらの優性ペプチドを無視する一方で、場合によって存在する非自己タンパク質の優性ペプチドには反応する。しかし、自己タンパク質が、例えば、本発明による切断型である場合、抗原提示細胞内でのプロセシング後におけるペプチド断片は、完全天然タンパク質によるペプチド断片とは異なる。結果として、通常の形では提示されないペプチドである、いわゆる「潜在性ペプチド」が、十分な量で生成され、免疫系へと提示される。例えば、優性自己ペプチドであるx、y、およびzではなく、ペプチドx、z、およびwが生成され、免疫系へと提示される。免疫系は、従来、潜在性ペプチドwには曝露されていないので、ペプチドwを非自己とみなし、免疫反応を誘発する。理論に拘束されることなしに述べると、この現象により、天然タンパク質と比較して、本発明による切断型タンパク質の免疫原性が増強されることを説明することができる。
【0013】
本発明者らは、シスチンノット構造が、タンパク質の免疫学的特性にとって重要であることもさらに示した。天然タンパク質を免疫学的に模倣する場合に、これはとりわけあてはまる。本発明者らは、例えば、システインが保護され、シスチンノットの形成を阻害された切断型VEGFタンパク質が、治療用VEGFモノクローナル抗体であるベバシズマブにより認識されないのに対し、シスチンノットが存在する切断型VEGFは、前記抗体により認識されることを示した。VEGFについて上記で述べたことが、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーの他のメンバーにも同様にあてはまることは明らかである。例えば、FSHのタンパク質模倣体を用いる場合は、生物学的活性またはホルモン活性が無視できるものであることが好ましい一方で、該タンパク質模倣体は、抗体、好ましくは、天然タンパク質と交差反応することが可能な中和抗体を誘導しうることが好ましい。同じことは、GLHA/GLHBサブファミリーの他のメンバー、または他のサブファミリーメンバーにもあてはまる。
【0014】
本明細書では、「切断型シスチンノットタンパク質」を、天然アミノ酸配列のうちの少なくとも一部、好ましくは、シスチンノット配列のN末端および/またはC末端が欠失しているシスチンノットタンパク質として定義する。C1のN末端側のアミノ酸配列と、C6のC末端側のアミノ酸配列とが、完全に欠失していることがより好ましい。したがって、好ましい実施形態では、本発明は、モチーフC1-X1-C2-X2-C3-X3-C4-X4-C5-X5-C6を有する、本発明によるタンパク質模倣体を提供する。C2、C3、C5およびC6は、C2とC5の間、およびC3とC6の間の結合によりリングを形成し、C1とC4の間の第3の結合が該リングを貫通し、これによりシスチンノットが形成されることが好ましい。より好ましい実施形態では、生物学的活性、例えば、ホルモン性副作用が著しく低下するように、アミノ酸の総数が130以下であり、好ましくは110以下であり、より好ましくは100以下であり、なおより好ましくは90以下であり、最も好ましくは80以下である、本発明によるペプチド模倣体が提供される。
【0015】
好ましい実施形態では、X1が、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーのアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を表し、X2、X3、および/またはX4が、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーの少なくとも1つの他のメンバーのアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を表す、本発明によるタンパク質模倣体が提供される。該タンパク質模倣体は、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーの少なくとも2つの異なるメンバーの配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含有するので、これを、キメラタンパク質模倣体と称する。このような本発明によるキメラタンパク質模倣体は、そのうちの少なくとも1つが、他のループとは別のシスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーに由来するループを表すループを含むことが好ましい。好ましい実施形態では、前記ループのそれぞれが、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーの別のメンバーを表す。別の好ましい実施形態では、本発明は、モチーフC1-X1-C2-X2-C3-X3-C4-X4-C5-X5-C6を含み、前記X1、X2、X3、X4、およびX5のそれぞれが、図10の配列1〜145のうちのいずれかから選択される配列の対応する部分と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を表す、本発明によるタンパク質模倣体を提供する。最も好ましい実施形態では、前記X1、X2、X3、X4、およびX5のそれぞれは、図10の配列1〜145から選択される配列の対応する部分と同一であるアミノ酸配列を表す。
【0016】
シスチンノット増殖因子スーパーファミリーの1つのメンバーの少なくとも1つのループを、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーの別のメンバーのループにより置換し、後者のループが、置換されるループより低分子である、すなわち、含むアミノ酸がより少ないことは、とりわけ有用である。より低分子のループによる置換の1つの利点は、そのタンパク質模倣体の作製がより容易となるということである。実施例では、本発明は、例えば、29アミノ酸からなる形質転換増殖因子B2 (TGFB2)のb2ループ(「X3」により表される)を、6アミノ酸からなるVEGFのb2ループにより置換することにより、全長TGFB2タンパク質と完全に交差反応する抗体を誘導するのに用いられて奏効するタンパク質模倣体が提供されることを示す。したがって、好ましい実施形態では、本発明は、X3が、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーのアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を表し、X1、X2、および/またはX4が、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーの少なくとも1つの他のメンバーのアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を表し、好ましくは、前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーの少なくとも1つの他のメンバーが、TGFベータサブファミリーのメンバーであり、より好ましくはTGFB2である、本発明によるタンパク質模倣体を提供する。X1、X2、およびX4のそれぞれが、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーの同じメンバーの対応する部分のアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を表すのに対し、X3は、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーの別のメンバーの対応する部分のアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を表すことが好ましい。X1、X2、およびX4は、TGFベータサブ
ファミリーメンバーのアミノ酸配列、より好ましくはTGFB2のアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を表すことが好ましい。より好ましい実施形態では、キメラタンパク質模倣体は、アミノ酸配列: C1ALRPLYIDFKRDLGWKWIHEPKGYNANFC2AGAC3NDEGLEC4VSQDLEPLTILYYIGKTPKIEQLSNMIVKSC5KC6 (TGFB215〜111/Δ49〜77-VEGF62〜67)からなり、場合によって、最長で5アミノ酸の長さの隣接配列を含む。好ましい実施形態では、隣接配列は、最長で2アミノ酸の長さであり、好ましくは最長で1アミノ酸の長さである。最も好ましい実施形態では、タンパク質模倣体は隣接配列を含まない。
【0017】
TGFB2は、TGFベータサブファミリーのメンバーである。TGFB2は、多くの細胞機能を果たし、胚の発生において重要な役割を果たす、分泌タンパク質(サイトカイン)である。TGFB2はまた、神経膠芽腫由来T細胞抑制因子、G-TSF、BSC-1細胞増殖阻害剤、ポリエルジン、およびセテルミンとしても知られている。TGFB2は、インターロイキン依存性T細胞腫瘍の影響を抑制することが知られている。
【0018】
別の好ましい実施形態では、本発明は、X0がアセチルを表し、かつ/またはX6がアミドを表す、本発明によるタンパク質模倣体を提供する。より好ましい実施形態では、X0はアセチルを表し、X6はアミドを表す。N末端のアセチル化、および/またはC末端のアミド化は、複数の利点を有し、例えば、アセチル化したペプチド端およびアミド化したペプチド端は帯電せず、このため、天然のペプチドを模倣し、アミノペプチダーゼによる消化に対する安定性が増強され、シンセターゼ活性に対してペプチド端が保護される。
【0019】
別の好ましい実施形態では、本発明は、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーのタンパク質模倣体であって、C1のN末端側の0〜10位、好ましくは0〜5位、より好ましくは0〜3位、なおより好ましくは0〜2位、最も好ましくは0位または1位において、かつ、C6のC末端側の0〜10位、好ましくは0〜5位、より好ましくは0〜3位、なおより好ましくは0〜2位、より好ましくは0位または1位、最も好ましくは0位において切断されることを除き、前記メンバーと同一の配列を有するタンパク質模倣体を提供する。
【0020】
所与のメンバーの天然配列の代わりに、サブファミリーのコンセンサス配列を用いて、本発明で有用なタンパク質模倣体を設計することができる。
【0021】
シスチンノット増殖因子スーパーファミリーについては、複数のコンセンサス配列が説明されている(文献1,3)。例えば、ノギン様シスチンノットタンパク質、コアグリン様シスチンノットタンパク質、およびNGF様シスチンノットタンパク質以外のすべてのタンパク質では、X2は、X2a-G-X2b (式中、X2aは任意のアミノ酸であるか、または存在せず、Gはグリシンであり、X2bは任意のアミノ酸である)として定義されうる2つまたは3つのアミノ酸からなり。したがって、好ましい実施形態では、X2はアミノ酸配列X2a-G-X2b (式中、X2aは任意のアミノ酸であるか、または存在せず、Gはグリシンであり、X2bは任意のアミノ酸である)を有する、本発明によるタンパク質模倣体が提供される。例えば、TGFベータ、GLHB、NGF、PDGF、GLHA、およびCTCKについては、他のコンセンサス配列が知られている。各サブファミリーについて知られているコンセンサス配列を、図10に示す。別の好ましい実施形態では、以下のコンセンサス配列:
- [GSRE]C3[KRL]G[LIVT][DE]XXX[YW]XSXC4;
- P[PSR]CVXXXRC2[GSTA]GCC3;
- [LIVM]XXPXX[FY]XXXXC2XGXC3;
- C2[STAGM]G[HFYL]C3X[ST];
- [PA]VAXXC5XC6XXCXXXX[STDAI][DEY]C;
- C2XGCC3[FY]S[RQS]A[FY]PTP;または
- CC4(X)13C(X)2[GN](X)12C5XC6(X)2,4C
(式中、
C2〜C6は、シスチンノット構造の一部であるシステイン残基であり;
Xは、任意のアミノ酸を意味し;
[GSRE]は、GまたはSまたはRまたはEを意味し; [KRL]は、KまたはRまたはLを意味し; [LIVT]は、LまたはIまたはVまたはTを意味し; [DE]は、DまたはEを意味し; [YW]は、YまたはWを意味し;
[PSR]は、PまたはSまたはRを意味し; [GSTA]は、GまたはSまたはTまたはAを意味し;
[LIVM]は、LまたはIまたはVまたはMを意味し; [FY]は、FまたはYを意味し;
[STAGM]は、SまたはTまたはAまたはGまたはMを意味し; [HFYL]は、HまたはFまたはYまたはLを意味し; [ST]は、SまたはTを意味し; [PA]は、PまたはAを意味し; [STDAI]は、SまたはTまたはDまたはAまたはIを意味し;
[DEY]は、DまたはEまたはYを意味し; [GN]は、GまたはNを意味し; [RQS]は、RまたはQまたはSを意味し;
(X)13は、13アミノ酸の配列を意味し; (X)2は、2アミノ酸の配列を意味し; (X)12は、12アミノ酸の配列を意味し; (X)2,4は、2、3、または4アミノ酸の配列を意味する)
のうちの少なくとも1つを含む、本発明によるタンパク質模倣体が提供される。
【0022】
天然タンパク質と交差反応することが可能な抗体および/またはT細胞を生成させるためには、前記シスチンノットタンパク質の天然アミノ酸配列に対して示す配列同一性%がかなり高いタンパク質模倣体を用いることが好ましい。配列同一性%がかなり高いとは、前記シスチンノットタンパク質の天然アミノ酸配列に対する、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を意味する。タンパク質模倣体をワクチンとして用いて、天然シスチンノットタンパク質と交差反応性である免疫反応を誘導する場合だけでなく、タンパク質模倣体を用いて、薬物として用いられるT細胞および/または抗体を誘導する場合にも、これはとりわけあてはまる。タンパク質模倣体に対するT細胞および/または抗体は、それらが、天然シスチンノットタンパク質と交差反応することが可能な場合にとりわけ有用である。しかし、別の実施形態では、天然タンパク質に対する抗体を生成させないことがとりわけ有用である場合もあり、例えば、これは、タンパク質模倣体を、シスチンノットタンパク質のアンタゴニストとして用いる場合である。このような場合には、天然タンパク質との配列同一性がより低い、前記シスチンノットタンパク質の天然アミノ酸配列との配列同一性が、好ましくは70%〜90%、より好ましくは70%〜80%、最も好ましくは70%〜75%である、本発明によるタンパク質模倣体を設計する。アンタゴニスト特性を示すこのようなタンパク質模倣体を個体に投与しても、前記個体において、T細胞反応および/または抗体反応が誘導されないことが好ましい。アンタゴニストとして作用するために、前記タンパク質模倣体は、タンパク質機能を受容体に伝搬しないことが好ましい。
【0023】
本明細書では、「配列同一性%」を、2つの配列を整列し、必要ならば、ギャップを導入して、最大の同一性百分率を達成した後で、基準配列中の残基と同一である、候補アミノ酸配列中の残基の百分率として定義する。当技術分野では、アライメントのための方法およびコンピュータプログラムがよく知られている。候補配列が、この定義内に収まるかどうかを判定する目的で用いるかまたは適用しうるコンピュータプログラムの1つは、Genentech社により作製され、取扱説明書と共に、1991年12月10日、United States Copyright Office, Washington, D. C. 20559に出願された、「Align 2」プログラムである。
【0024】
好ましい実施形態では、前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーの対応する天然アミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、最も好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を示す、本発明によるタンパク質模倣体が提供される。別の好ましい実施形態では、本発明は、前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーが、GLHBサブファミリー、PDGFサブファミリー、TGFベータサブファミリー、NGFサブファミリー、GLHAサブファミリー、CTCKサブファミリー、ノギン様タンパク質サブファミリー、ムチン様タンパク質サブファミリー、ムチン様BMPアンタゴニストサブファミリー、ムチン様ヘモレクチンサブファミリー、スリット様タンパク質サブファミリー、およびジャッグド様タンパク質サブファミリーからなる群から選択されるメンバーである、本発明によるタンパク質模倣体を提供する。
【0025】
別の好ましい実施形態では、前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーの対応する天然アミノ酸配列と、好ましくは70%〜90%、より好ましくは70%〜80%、最も好ましくは70%〜75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を示す、本発明によるタンパク質模倣体が提供される。別の好ましい実施形態では、本発明は、前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーが、GLHBサブファミリー、PDGFサブファミリー、TGFベータサブファミリー、NGFサブファミリー、GLHAサブファミリー、CTCKサブファミリー、ノギン様タンパク質サブファミリー、ムチン様タンパク質サブファミリー、ムチン様BMPアンタゴニストサブファミリー、ムチン様ヘモレクチンサブファミリー、スリット様タンパク質サブファミリー、およびジャッグド様タンパク質サブファミリーからなる群から選択されるメンバーである、本発明によるタンパク質模倣体を提供する。
【0026】
前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーの対応する天然アミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、最も好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有する、本発明によるタンパク質模倣体であって、X1、X3、またはX4により表される前記アミノ酸配列のうちの少なくとも1つが、少なくとも部分的に欠失および/または改変されているタンパク質模倣体を設計することも有用である。これは、例えば、前記アミノ酸配列が、免疫優性ペプチドを含む場合、または前記アミノ酸配列が、機能を示さない場合、例えば、前記配列が、前記メンバーの免疫原性決定基の一部ではない場合にとりわけ有用である。このようなアミノ酸配列を欠失させると、例えば、作製過程を著しく容易にすることもでき、作製費用を著しく軽減することもでき、本発明によるタンパク質模倣体の可溶性を著しく改善することもできる。したがって、好ましい実施形態では、本発明は、X1、X3、またはX4により表される前記アミノ酸配列のうちの少なくとも1つが、少なくとも部分的に欠失および/または改変されている、本発明によるタンパク質模倣体を提供する。
【0027】
例えば、PDGFは、胚の発生、細胞の増殖、細胞の移動、および血管新生において重要な役割を果たしている。PDGFはまた、アテローム性動脈硬化、線維症、および悪性疾患など、複数の疾患にも連関している。とりわけ、PDGFサブファミリーのサブサブファミリーであるVEGFファミリーは、腫瘍の増殖および転移と関連する血管新生と連関している。したがって、好ましい実施形態では、本発明は、前記メンバーがPDGFサブファミリーメンバーであり、X2が3アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X5が1アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X1が29〜32アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X3が、6〜12アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X4が32〜41アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表す、本発明によるタンパク質模倣体を提供する。
【0028】
より好ましい実施形態では、前記メンバーがヒト血管内皮細胞増殖因子(hVEGF)であり、X0がアミノ酸配列KFMDVYQRSYを含み; X1がアミノ酸配列HPIETLVDIFQEYDPEIEYIFKPSAVPLMRを含み; X2がアミノ酸配列GGAを含み; X3がアミノ酸配列NDEGLEを含み; X4がアミノ酸配列VPTEESNITMQIMRIKPHQGQHIGEMSFLQHNKを含み; X5がアミノ酸配列Eを含み; X6がアミノ酸配列RPKKDRARQEを含む、本発明によるタンパク質模倣体が提供される。別のより好ましい実施形態では、hVEGFのX0〜X6と少なくとも70%の配列同一性を有するタンパク質模倣体であって、X0〜X6が、図10に示す各hVEGFアミノ酸配列である、タンパク質模倣体が提供される。前記タンパク質模倣体は、hVEGFのX0〜X6と、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有することが好ましい。さらに別のより好ましい実施形態では、前記メンバーがヒト血管内皮細胞増殖因子(hVEGF)であり、前記タンパク質模倣体が、アミノ酸配列C1HPIETLVDIFQEYDPEIEYIFKPSAVPLMRC2GGAC3NDEGLEC4VPTEESNITMQIMRIKPHQGQHIGEMSFLQHNKC5EC6からなり、場合によって、最長で5アミノ酸の長さの隣接配列を含む、本発明によるタンパク質模倣体が提供される。好ましい実施形態では、隣接配列は、最長で2アミノ酸の長さであり、好ましくは最長で1アミノ酸の長さである。最も好ましい実施形態では、タンパク質模倣体は隣接配列を含まない。
【0029】
胎盤増殖因子(PLGF)は、PDGFサブファミリー(サブファミリー4)のメンバーであり、特に、胚形成時の血管新生および血管形成において重要な分子である。妊娠時におけるPLGFの主要な供給源は、胎盤の栄養芽細胞である。PLGFはまた、絨毛状の栄養芽細胞を含め、他の多くの組織においても発現する。ヒトアテローム性動脈硬化病変内におけるPLGF発現は、プラークにおける炎症および血管新生性増殖と関連する。
【0030】
子癇前症を有する女性においては、PLGFおよびsFlt-1 (また、可溶性VEGF受容体1としても知られる、可溶性fms様チロシンキナーゼ1)の血清濃度が変化する。研究の示すところでは、初期発症および後期発症のいずれの子癇前症においても、これを示す女性の母体血清sFlt-1レベルは高く、母体血清PLGFレベルは低い。加えて、子癇前症を有する女性においては、妊娠で合併症を示さない女性と比較して、胎盤sFlt-1レベルが著明に上昇し、PLGFレベルが著明に低下する。これは、sFlt-1およびPLGFの胎盤内濃度が、母体の血清変化を反映することを示唆する。これは、胎盤が、妊娠時におけるsFlt-1およびPLGFの主要な供給源であるという見方と符合する。
【0031】
さらに別の好ましい実施形態では、前記メンバーがヒト胎盤増殖因子(hPLGF)であり、X0がアミノ酸配列PFQEVWGRSYを含み; X1がアミノ酸配列RALERLVDVVSEYPSEVEHMFSPSAVSLLRを含み; X2がアミノ酸配列TGAを含み; X3がアミノ酸配列GDENLHを含み; X4がアミノ酸配列VPVETANVTMQLLKIRSGDRPSYVELTFSQHVRを含み; X5がアミノ酸配列Eを含み; X6がアミノ酸配列RHSPGRQSPDを含む、本発明によるタンパク質模倣体が提供される。別のより好ましい実施形態では、PLGFのX0〜X6と少なくとも70%の配列同一性を有するタンパク質模倣体であって、X0〜X6が、図10に示す各PLGFアミノ酸配列である、タンパク質模倣体が提供される。前記タンパク質模倣体は、PLGFのX0〜X6と、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有することが好ましい。さらに別のより好ましい実施形態では、前記メンバーがヒト胎盤増殖因子(hPLGF)であり、前記タンパク質模倣体がアミノ酸配列C1RALERLVDVVSEYPSEVEHMFSPSAVSLLRC2TGAC3GDENLHC4VPVETANVTMQLLKIRSGDRPSYVELTFSQHVRC5EC6 (hPLGF34〜112)からなり、場合によって、最長で5アミノ酸の長さの隣接配列を含む、本発明によるタンパク質模倣体が提供される。好ましい実施形態では、隣接配列は、最長で2アミノ酸の長さであり、好ましくは最長で1アミノ酸の長さである。最も好ましい実施形態では、タンパク質模倣体は隣接配列を含まない。
【0032】
さらに別の好ましい実施形態では、前記メンバーがヒト血小板由来増殖因子A (hPDGF-A)であり、X0がアミノ酸配列SIEEAVPAVを含み; X1がアミノ酸配列KTRTVIYEIPRSQVDPTSANFLIWPPCVEVKRを含み; X2がアミノ酸配列TGCを含み; X3がアミノ酸配列NTSSVKを含み; X4がアミノ酸配列QPSRVHHRSVKVAKVEYVRKKPKLKEVQVRLEEHLEを含み; X5がアミノ酸配列Aを含み; X6がアミノ酸配列ATSLNPDYREを含む、本発明によるタンパク質模倣体が提供される。別のより好ましい実施形態では、hPDGF-AのX0〜X6と少なくとも70%の配列同一性を有するタンパク質模倣体であって、X0〜X6が、図10に示す各hPDGF-Aアミノ酸配列である、タンパク質模倣体が提供される。前記タンパク質模倣体は、hPDGF-AのX0〜X6と、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有することが好ましい。
【0033】
さらに別の好ましい実施形態では、前記メンバーがヒト血小板由来増殖因子C (hPDGF-C)であり、X0がアミノ酸配列LLTEEVRLYSを含み; X1がアミノ酸配列TPRNFSVSIREELKRTDTIFWPGCLLVKRを含み; X2がアミノ酸配列GGNを含み; X3がアミノ酸配列ACCLHNCNECQを含み; X4がアミノ酸配列VPSKVTKKYHEVLQLRPKTGVRGLHKSLTDVALEHHEEを含み; X5がアミノ酸配列Dを含み; X6がアミノ酸配列VCRGSTGGを含む、本発明によるタンパク質模倣体が提供される。別のより好ましい実施形態では、hPDGF-CのX0〜X6と少なくとも70%の配列同一性を有するタンパク質模倣体であって、X0〜X6が、図10に示す各hPDGF-Cアミノ酸配列である、タンパク質模倣体が提供される。前記タンパク質模倣体は、hPDGF-CのX0〜X6と、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有することが好ましい。
【0034】
さらに別の好ましい実施形態では、前記メンバーがヒト血管内皮細胞増殖因子C (hVEGF-C)であり、X0がアミノ酸配列SIDNEWRKTQを含み; X1がアミノ酸配列MPREVAIDVGKEFGVATNTFFKPPCVSVYRを含み; X2がアミノ酸配列GGCを含み; X3がアミノ酸配列PDDGLEを含み; X4がアミノ酸配列VPTGQHQVRMQILMIRYPSSQLGEMSLEEHSQを含み; X5がアミノ酸配列Eを含み; X6がアミノ酸配列RPKKKDSAVKを含む、本発明によるタンパク質模倣体が提供される。別のより好ましい実施形態では、hVEGF-CのX0〜X6と少なくとも70%の配列同一性を有するタンパク質模倣体であって、X0〜X6が、図10に示す各hVEGF-Cアミノ酸配列である、タンパク質模倣体が提供される。前記タンパク質模倣体は、hVEGF-CのX0〜X6と、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有することが好ましい。
【0035】
シスチンノット増殖因子スーパーファミリーの他のサブファミリーには、GLHAサブファミリーおよびGLHBサブファミリーが含まれる。前記サブファミリーのメンバーは、それぞれ、糖タンパク質ホルモンアルファサブユニットと、糖タンパク質ホルモンベータサブユニットとを含み、二量体化した後、黄体形成ホルモン(LH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、絨毛性ゴナドトロピン(CG)、および濾胞刺激ホルモン(FSH)を形成する。これらのホルモンはすべて、哺乳動物の生殖において役割を果たす。例えば、FSHは、セルトリ細胞(男性)または果粒膜細胞(女性)上におけるGタンパク質結合受容体に結合することにより、精巣機能または卵巣機能を果たす。とりわけ、LHが、月経周期において、排卵を刺激し、黄体を維持するのに対し、CGは、例えば、妊娠時において、黄体を維持する。TSHは、セルトリ細胞の成熟、ならびに排卵機能にとって重要である。本発明はまた、このGLHBサブファミリーのタンパク質模倣体も提供する。
【0036】
したがって、別の好ましい実施形態では、前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーはGLHBサブファミリーのメンバーであり、X2は3アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X5は1アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X1は23〜28アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X3は18〜20アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X4は30〜33アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表す。
【0037】
より好ましい実施形態では、前記メンバーがヒト濾胞刺激ホルモン(hFSH)であり、X0がアミノ酸配列NSを含み; X1がアミノ酸配列ELTNITIAIEKEECRFCISINTTWを含み; X2がアミノ酸配列AGYを含み; X3がアミノ酸配列YTRDLVYKDPARPKIQKTを含み; X4がアミノ酸配列TFKELVYETVRVPGCAHHADSLYTYPVATQを含み; X5がアミノ酸配列Hを含み; X6がアミノ酸配列KCDSDSTDCTを含む、本発明によるタンパク質模倣体が提供される。別のより好ましい実施形態では、FSHのX0〜X6と少なくとも70%の配列同一性を有するタンパク質模倣体であって、X0〜X6が、図10に示す各FSHアミノ酸配列である、タンパク質模倣体が提供される。前記タンパク質模倣体は、FSHのX0〜X6と、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有することが好ましい。
【0038】
さらに別の好ましい実施形態では、前記メンバーがヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)であり、X0がアミノ酸配列SKEPLRPRを含み; X1がアミノ酸配列RPINATLAVEKEGCPVCITVNTTIを含み; X2がアミノ酸配列AGYを含み; X3がアミノ酸配列PTMTRVLQGVLPALPQVVを含み; X4がアミノ酸配列NYRDVRFESIRLPGCPRGVNPVVSYAVALSを含み; X5がアミノ酸配列Qを含み; X6がアミノ酸配列ALCRRSTTDCを含む、本発明によるタンパク質模倣体が提供される。別のより好ましい実施形態では、hCGのX0〜X6と少なくとも70%の配列同一性を有するタンパク質模倣体であって、X0〜X6が、図10に示す各hCGアミノ酸配列である、タンパク質模倣体が提供される。前記タンパク質模倣体は、hCGのX0〜X6と、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有することが好ましい。
【0039】
さらに別の好ましい実施形態では、本発明は、前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーが糖タンパク質ホルモンアルファ(GLHA)サブファミリーメンバーであり、X2が3アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X5が1アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X1が13〜17アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X3が27アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X4が20〜21アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表す、本発明によるタンパク質模倣体を提供する。
【0040】
さらに別の好ましい実施形態では、前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーが神経増殖因子(NGF)サブファミリーメンバーであり、X2が9〜24アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X5が1アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X1が41〜44アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X3が11アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X4が27または28アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表す、本発明によるタンパク質模倣体が提供される。より好ましい実施形態では、前記メンバーがヒト神経増殖因子(hNGF)であり、X0がアミノ酸配列PIFHRGEFSVを含み; X1がアミノ酸配列DSVSVWVGDKTTATDIKGKEVMVLGEVNINNSVFKQYFFETKを含み; X2がアミノ酸配列RDPNPVDSGを含み; X3がアミノ酸配列RGIDSKHWNSYを含み; X4がアミノ酸配列TTTHTFVKALTMDGKQAAWRFIRIDTAを含み; X5がアミノ酸配列Vを含み; X6がアミノ酸配列VLSRKAVRRAを含む、本発明によるタンパク質模倣体が提供される。別のより好ましい実施形態では、hNGFのX0〜X6と少なくとも70%の配列同一性を有するタンパク質模倣体であって、X0〜X6が、図10に示す各hNGFアミノ酸配列である、タンパク質模倣体が提供される。前記タンパク質模倣体は、hNGFのX0〜X6と、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有することが好ましい。
【0041】
NGFサブファミリーメンバーは、交換神経ニューロンおよび感覚ニューロンの存続および維持において役割を果たし、アルツハイマー病と関連する。NGFは、ニューロンの修復、再生、および保護において役割を果たし、したがって、本発明によるNGFサブファミリーメンバーのタンパク質模倣体は、神経変性障害の治療または予防にとりわけ有用である。
【0042】
シスチンノット増殖因子スーパーファミリーのさらに別のサブファミリーは、TGFベータサブファミリーである。TGFベータは、大半の細胞において、増殖、細胞分化、および他の機能を制御する。TGFベータは、免疫、癌、心疾患、結合組織の遺伝性疾患であるマルファン症候群において役割を果たす。
【0043】
したがって、別の好ましい実施形態では、本発明は、前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーが形質転換増殖因子ベータ(TGFベータ)サブファミリーメンバーであり、X2が3アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X5が1アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X1が23〜41アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X3が18〜36アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X4が27〜34アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表す、本発明によるタンパク質模倣体を提供する。
【0044】
より好ましい実施形態では、前記メンバーがヒト形質転換増殖因子ベータ2 (hTGFベータ2)であり、X0がアミノ酸配列AYCFRNVQDNを含み; X1がアミノ酸配列CLRPLYIDFKRDLGWKWIHEPKGYNANFを含み; X2がアミノ酸配列AGAを含み; X3がアミノ酸配列PYLWSSDTQHSRVLSLYNTINPEASASPCを含み; X4がアミノ酸配列VSQDLEPLTILYYIGKTPKIEQLSNMIVKSを含み; X5がアミノ酸配列Kを含み; X6がアミノ酸配列Sを含む、本発明によるタンパク質模倣体が提供される。別のより好ましい実施形態では、hTGFベータ2のX0〜X6と少なくとも70%の配列同一性を有するタンパク質模倣体であって、X0〜X6が、図10に示す各hTGFベータ2アミノ酸配列である、タンパク質模倣体が提供される。前記タンパク質模倣体は、hTGFベータ2のX0〜X6と、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有することが好ましい。
【0045】
機能的に多様なモジュラータンパク質は、それらのC末端におけるシステインに富む領域内において、約90アミノ酸の保存的ドメインを共有し、これは、シスチンノットファミリーと構造的に関連することが提起されており、したがって、これを、C末端シスチンノット(CTCK)と称する。C末端シスチンノットファミリーメンバーは、とりわけ、ホメオスタシスの維持に関与する多機能性タンパク質である、フォンヴィレブランド因子(vWF);ムチン; CCNファミリーメンバー(cef-10/cyr61/CTFG/fisp-12/novタンパク質ファミリー)(文献5);正中線神経膠経路および交連軸索経路の発生に必須である、ショウジョウバエ(Drosophila)属スリットタンパク質;神経外胚葉性細胞間相互作用と、神経細胞の分化および増殖を調節する経路とに関与しうる、ノリー病タンパク質(NDP);自己防御機構に関与する体液性レクチンである、カイコ蛾ヘモシチンである。本発明による教示はまた、このCTCKファミリーも包含する。
【0046】
したがって、別の好ましい実施形態では、本発明は、前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーがCTCKサブファミリーメンバーであり、X2が2〜3アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X5が1アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X1が22〜35アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X3が4〜28アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X4が29〜41アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表す、本発明によるタンパク質模倣体を提供する。
【0047】
スクレロスチン(またはSOST)もまた、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーのCTCKサブファミリーメンバーである。SOST遺伝子の産物であるスクレロスチンは、元来、非古典的な骨形成タンパク質(BMP)アンタゴニストであると考えられていた。より近年において、スクレロスチンは、LRP5/6受容体に結合し、Wntシグナル伝達経路を阻害するものとして同定されている。これらの状況下におけるWntの活性化は、骨形成に対してアンタゴニスト性である。より近年では、スクレロスチンによる、BMP誘導性骨形成のアンタゴニズムが、Wntシグナル伝達は介するが、BMPシグナル伝達は介さないことが明らかとなっている。実施例のうちの1つにおいてSOST67〜144の合成が成功したことを援用すると、C71 (ループ1; X1)とC125 (ループ3; X4)の間にさらなるSS架橋を有する切断型シスチンノットタンパク質/ペプチドが、さらなるジスルフィド結合の存在下において、適正にフォールディングされたシスチンノット構造を完全な形で形成することが裏付けられる。
【0048】
より好ましい実施形態では、前記メンバーがスクレロスチンであり、X0がアミノ酸配列FETKDVSEYSを含み; X1がアミノ酸配列RELHFTRYVTDGPCRSAKPVTELVを含み; X2がアミノ酸配列SGQを含み; X3がアミノ酸配列GPARLLPNAIGRGKWWRPSGPDFRを含み; X4がアミノ酸配列IPDRYRAQRVQLLCPGGEAPRARKVRLVASを含み; X5がアミノ酸配列Kを含み; X6がアミノ酸配列KRLTRFHNQSを含む、本発明によるタンパク質模倣体が提供される。別のより好ましい実施形態では、スクレロスチンのX0〜X6と少なくとも70%の配列同一性を有するタンパク質模倣体であって、X0〜X6が、図10に示す各スクレロスチンアミノ酸配列である、タンパク質模倣体が提供される。前記タンパク質模倣体は、スクレロスチンのX0〜X6と、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有することが好ましい。さらに別のより好ましい実施形態では、前記メンバーがスクレロスチンであり、前記タンパク質模倣体がアミノ酸配列GGGC1RELHFTRYVTDGPCRSAKPVTELVC2SGQC3GPARLLPNAIGRGKWWRPSGPDFRC4IPDRYRAQRVQLLCPGGEAPRARKVRLVASC5KC6からなり、場合によって、最長で5アミノ酸の長さの隣接配列を含む、本発明によるタンパク質模倣体が提供される。好ましい実施形態では、隣接配列は、最長で2アミノ酸の長さであり、好ましくは最長で1アミノ酸の長さである。最も好ましい実施形態では、タンパク質模倣体は隣接配列を含まない。
【0049】
ノギン様タンパク質サブファミリーメンバーは、例えば、TGFベータファミリーのリガンドに結合し、それらが対応する受容体に結合することを防止することにより、TGFベータシグナル伝達を阻害することが知られている。ノギンは、BMP4を阻害することにより、ニューロンの誘導において重要な役割を果たす。したがって、ノギン様タンパク質サブファミリーメンバーのタンパク質模倣体は、TGFベータ活性および/またはBMP4活性を調節するのにとりわけ有用である。
【0050】
したがって、別の好ましい実施形態では、本発明は、前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーがノギン様タンパク質サブファミリーメンバーであり、X2が4〜6アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X5が1アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X1が22アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X3が7〜9アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X4が35〜98アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表す、本発明によるタンパク質模倣体を提供する。
【0051】
コアグリン様タンパク質サブファミリーメンバーのタンパク質模倣体は、例えば、凝固障害を治療するのにとりわけ有用である。例えば、B型血友病のための、遺伝子治療に基づくコアグリンBの補助療法を伴う臨床試験が開始されている。しかし、本明細書に記載のコアグリン様タンパク質サブファミリーメンバーのタンパク質模倣体は、例えば、コアグリンBを阻害して血液凝固を低下させ、これにより血栓症を防止するのに適する。
【0052】
したがって、別の好ましい実施形態では、本発明は、前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーがコアグリン様タンパク質サブファミリーメンバーであり、X2が7アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X5が1アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X1が38アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X3が5アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X4が29アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表す、本発明によるタンパク質模倣体を提供する。
【0053】
ジャッグド様タンパク質サブファミリーメンバーは、例えば、受容体のノッチファミリーのリガンドである。ノッチシグナル伝達経路は、胚のパターン形成時において極めて重要な役割を果たし、多くの保存的な細胞決定イベントを制御し、細胞運命を制御する根本的機構を規定する。ノッチシグナル伝達経路は、各種の組織における細胞系列の決定に関与している。ノッチシグナル伝達経路は、造血作用、血管発生および血管新生、筋形成、ニューロン形成、腎臓、眼、耳、および歯などの発生における体節形成において役割を果たす。ジャッグド様メンバーに基づくタンパク質模倣体は、上述の生物学的過程を制御するのにとりわけ有用である。
【0054】
したがって、別の好ましい実施形態では、本発明は、前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーがジャッグド様タンパク質サブファミリーメンバーであり、X2が3アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X5が1アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X1が32アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X3が25アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X4が26アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表す、本発明によるタンパク質模倣体を提供する。
【0055】
上記で述べた通り、図10は、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーの複数のサブファミリーに属する切断型タンパク質の非限定的な例を示す。例えば、二量体形成を防止するためには、シスチンノット形成に必要な保存的システイン1〜6のうちの1つではない少なくとも1つのシステインにおいて、わずかな突然変異、例えば、変化を導入することがとりわけ有用である。したがって、好ましい実施形態では、前記X1が、図10のX1として同定される配列のうちのいずれか1つと、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を表し;かつ/または前記X3が、図10のX3として同定される配列のうちのいずれか1つと、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を表し;かつ/または前記X4が、図10のX4として同定される配列のうちのいずれか1つと、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を表し; X1、X3、およびX4が、図10の単一のアミノ酸配列から選択される、本発明によるタンパク質模倣体が提供される。より好ましい実施形態では、X1、X2、X3、X4、およびX6により表される配列のうちのいずれかにおける少なくとも1つのシステインは、別のアミノ酸、好ましくはアラニンにより置換される。別の好ましい実施形態では、X1は、図10のX1として同定される配列のうちのいずれか1つと同一であるアミノ酸配列を表し;かつ/またはX3は、図10のX3として同定される配列のうちのいずれか1つと同一であるアミノ酸配列を表し;かつ/またはX4は、図10のX4として同定される配列のうちのいずれか1つと同一であるアミノ酸配列を表し; X1、X3、およびX4は、図10の単一のアミノ酸配列から選択される。
【0056】
別の好ましい実施形態では、前記X2が、図10のX2として同定される配列のうちのいずれかと、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を表し;かつ/またはX5が、図10のX5として同定される配列のうちのいずれかと同一のアミノ酸配列を表し; X2およびX5が、図10の単一のアミノ酸配列から選択される、本発明によるタンパク質模倣体が提供される。より好ましい実施形態では、X1、X2、X3、X4、およびX6により表される配列のうちのいずれかにおける少なくとも1つのシステインは、別のアミノ酸、好ましくはアラニンにより置換される。別のより好ましい実施形態では、X2は、図10のX2として同定される配列と同一であるアミノ酸配列を表し; X2およびX5は、図10の単一のアミノ酸配列から選択される。
【0057】
別の好ましい実施形態では、本発明は、モチーフC1-X1-C2-X2-C3-X3-C4-X4-C5-X5-C6を含む、本発明によるタンパク質模倣体であって、前記配列が、図10の配列1〜145から選択される配列と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するタンパク質模倣体を提供する。より好ましい実施形態では、前記タンパク質模倣体配列は、図10の配列1〜145から選択される配列と同一である。このようなタンパク質模倣体は、天然タンパク質の一部と同一であるため、交差反応性の抗体反応、好ましくは中和抗体反応を導入するのにとりわけ有用である。
【0058】
好ましい実施形態では、前記C1が、ジスルフィド結合を介してC4と連結され;かつ/またはC2が、ジスルフィド結合を介してC5と連結され;かつ/またはC3が、ジスルフィド結合を介してC6と連結される、本発明によるタンパク質模倣体が提供される。より好ましい実施形態では、C1が、ジスルフィド結合を介してC4と連結され; C2が、ジスルフィド結合を介してC5と連結され;かつC3が、ジスルフィド結合を介してC6と連結される。
【0059】
今や、本発明は、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーのタンパク質模倣体を提供するが、本発明によるタンパク質模倣体は、免疫反応を導入するのにとりわけ有用であり、前記免疫反応は、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーに対して交差反応性であることが好ましいという見識も、本発明は提示する。
【0060】
「交差反応性」とは、生成される抗体が、その抗体がそれに対するものであるタンパク質模倣体に特異的に結合するだけでなく、前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーのうちの少なくとも1つにも特異的に結合することを意味する。したがって、一実施形態では、本発明によるタンパク質模倣体を含む免疫原性組成物が提供される。前記免疫原性組成物は、治療的に許容される担体、アジュバント、希釈剤、および/または賦形剤をさらに含むことが好ましい。本明細書では、「免疫原性組成物」を、その広い意味において定義し、動物において免疫反応を誘導および/または刺激することが可能な投与可能な形態にある、任意の種類の生物学的作用物質を指す。好ましい一実施形態では、本発明による免疫原性組成物は、本発明によるタンパク質模倣体と、薬学的に許容されるアジュバントとを少なくとも含む。
【0061】
別の好ましい実施形態では、前記タンパク質模倣体が、免疫原性担体、好ましくは、ジフテリア毒素(DT)および/またはスカシガイヘモシアニン(KLH)に連結される、本発明による免疫原性組成物が提供される。
【0062】
本発明はさらに、本発明によるタンパク質模倣体と、薬学的に許容される担体、希釈剤および/または賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。適切な担体、希釈剤、賦形剤などは、医薬製剤の技術分野で一般的に知られており、当業者により容易に見出され、かつ適用されうる(例えば、参考文献には、「Remington's Pharmaceutical Sciences」、Mace Publishing Company、Philadelphia PA、第17版、1985年が含まれる)。
【0063】
既に上記で述べた通り、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーは、神経系の疾患、造血発生の疾患、凝固障害、癌、血管新生などを含めた、多くの疾患と関連する。したがって、一実施形態では、本発明は、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーと関連する障害を治療および/または予防するための薬物および/または予防剤を調製するための、本発明によるタンパク質模倣体の使用を提供する。
【0064】
したがって、本発明は、免疫原性組成物中におけるタンパク質模倣体の使用を提供する。本発明によるタンパク質模倣体を含むこのような免疫原性組成物は、動物、好ましくはヒトにおいて免疫反応を誘導するのに適する。好ましい実施形態では、本発明のタンパク質模倣体を用いて、好ましくは天然タンパク質と交差反応しうる抗体を誘導する。前記抗体は、中和抗体である、すなわち、天然シスチンノットタンパク質が、前記中和抗体に結合した後では、該天然シスチンノットタンパク質の機能および/または活性が、低下するか、阻害されるか、または少なくとも抑制されることがなおより好ましい。例えば、本発明によるタンパク質模倣体を含むワクチンを、それを必要とする個体へと投与することにより、前記個体において前記抗体を誘導することが可能である。また、本発明の免疫原性組成物を、非ヒト動物へと投与することにより、前記動物において前記抗体を誘導し、前記動物から得られた抗体を用いて薬物を製造することも可能である。しかし、また、本発明によるタンパク質模倣体を用いて、天然シスチンノットタンパク質の機能および/または活性を直接的にアンタゴナイズすることも可能である。例えば、これは、タンパク質模倣体が、受容体には結合するが、該受容体のシグナル伝達経路を活性化しないか、または完全には活性化しない場合に達成することができる。一実施形態では、本発明は、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーに対する部分的または完全なアンタゴニストとしての、本発明によるタンパク質模倣体、または本発明によるタンパク質模倣体を含む免疫原性化合物の使用を提供する。
【0065】
今や、本発明によるタンパク質模倣体が、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーに対するアンタゴニストおよび/もしくはアゴニストとして有用であるか、またはシスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーに対して免疫反応を惹起するのに適するという見識が本発明によりもたらされているところで、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーと関連する障害を治療または予防する方法であって、治療有効量の、本発明によるタンパク質模倣体を、前記障害に罹患するか、またはこれに罹患する危険性を示す対象に投与するステップを含む方法が提供される。
【0066】
シスチンノット増殖因子スーパーファミリーのうちの1つのサブファミリーは、PDGFサブファミリーのサブファミリーである、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)サブファミリーである。VEGFは、内皮細胞における同種受容体であるチロシンキナーゼファミリーを介して作用し、血管形成を刺激する。したがって、VEGFのタンパク質模倣体、および/またはVEGFに特異的な抗体は、血管形成と関連する障害を治療するのにとりわけ有用である。このような障害のうちの1つは、急速かつ重篤な失明を引き起こす、加齢黄斑変性(AMD)である。失明は、黄斑下における脈絡膜新血管形成の発生による。したがって、VEGFの阻害は、AMDの治療および/または予防にとりわけ有用である。血管形成と関連する別の疾患の例は、癌である。腫瘍は、増殖するために新血管形成を必要とする。急速に増殖する組織は、酸素および栄養物の持続的な供給を必要とし、したがって、新血管形成の有効な阻害は、癌治療の有望な戦略の1つであると考えられる。これは、例えば、VEGFを阻害することにより達成される。前述の通り、モノクローナル抗体であるAvastin (商標) (ベバシズマブ、Genentech社製)は、標準的な化学療法と共に用いる場合における結腸直腸癌の治療について、2004年に、米国食品医薬品局(FDA)により承認された。2006年において、FDAは、ベバシズマブを、標準的な第1選択の組合せ療法と組み合わせた肺癌の治療について承認した。
【0067】
生産費用が高額であり、治療に必要とされる量が比較的大量であり、場合によって、腫瘍内への透過性が低く、投与が頻繁であるなど、ベバシズマブの欠点は、本発明のタンパク質模倣体または免疫原性組成物を用いると軽減される。例えば、免疫反応を誘導するためには、本発明のタンパク質模倣体を含む免疫原性組成物を、対象1例当たり数mg、好ましくは0.1〜10mgの用量で投与する。適正な防御反応を誘導するためには、このような投与を、一般に、2または3回にわたり反復する。
【0068】
したがって、一実施形態では、本発明は、腫瘍関連疾患および/または加齢黄斑変性(AMD)を治療および/または予防するための薬物および/または予防剤を調製するための、本発明によるタンパク質模倣体の使用であって、前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーがVEGFサブファミリーまたはTGFベータサブファミリーのメンバーである使用を提供する。
【0069】
また、シスチンノット増殖因子サブファミリーの別のサブファミリーであるTGFベータも、癌と関連する。正常細胞において、そのシグナル伝達経路を介して作用するTGFベータは、G1期で細胞周期を停止させて、増殖を停止させるか、分化を誘導するか、またはアポトーシスを促進する。細胞が癌細胞へと形質転換されると、TGFベータシグナル伝達経路の一部が突然変異し、TGFベータは、もはや細胞を制御しなくなる。これらの癌細胞は増殖する。周囲の間質細胞(線維芽細胞)もまた増殖する。いずれの細胞も、TGFベータの生成を増大させる。このTGFベータは、周囲の間質細胞、免疫細胞、内皮細胞、および平滑筋細胞に作用する。TGFベータは、免疫抑制および血管新生を引き起こし、これにより、癌がより浸潤性となる。TGFベータはまた、正常時には、炎症(免疫)反応により癌を攻撃するエフェクターT細胞を、炎症反応を停止させる調節性(サプレッサー) T細胞へと転換もする。したがって、例えば、前記メンバーが、TGFベータサブファミリーに属する、本発明によるアンタゴニスト性のタンパク質模倣体および/もしくは本発明の抗体、または本発明によるその機能的部分および/もしくは機能的同等物によりTGFベータを阻害することは、癌を治療するのにとりわけ有用である。
【0070】
したがって、好ましい実施形態では、前記障害が腫瘍関連疾患および/または加齢黄斑変性(AMD)を含み、前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーがVEGFサブファミリーまたはTGFベータサブファミリーのメンバーである、本発明による方法が提供される。より好ましい実施形態では、前記腫瘍関連疾患は、結腸直腸癌または非小細胞肺癌(NSCLC)である。
【0071】
別の好ましい実施形態では、前記障害が、結合組織障害、好ましくはマルファン症候群を含む、本発明による方法が提供される。マルファン症候群は、フィブリリン1と称する結合タンパク質をコードする、FBN1と称する遺伝子により遺伝する。FBN1遺伝子は、対をなしている。FBN1遺伝子は優性遺伝子であるため、両親のうちの一方からであっても、変異体のFBN1遺伝子を受け継ぐと、マルファン症候群に罹患する。細胞外の組織に対する構造的支持体を形成する結合タンパク質であることに加えて、フィブリリン1は、別のタンパク質であるTGFベータにも結合する。TGFベータは、炎症を引き起こしうる。今日の研究者の考えでは、肺、心弁、および大動脈におけるTGFベータの炎症作用により、該組織が脆弱化し、マルファン症候群の症状が引き起こされる。したがって、TGFベータのタンパク質模倣体は、マルファン症候群を治療するのにとりわけ有用である。
【0072】
これに対し、新血管形成(血管再生)は、下肢の動脈硬化性閉塞、狭心症/心筋梗塞、または脳梗塞が含まれるがこれらに限定されない虚血性疾患を治療するために、副行循環を発生させることにより、虚血性組織を救護するのにとりわけ有用である。したがって、別の好ましい実施形態では、前記障害が、虚血性障害を含み、好ましくは前記虚血性障害が、下肢の動脈硬化性閉塞、狭心症、心筋梗塞、および脳梗塞からなる群から選択され、前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーが、VEGFサブファミリーメンバーである。
【0073】
上述の通り、NGFサブファミリーメンバーは、交換神経ニューロンおよび感覚ニューロンの存続および維持にとって極めて重要であり、アルツハイマー病と関連している。NGFは、ニューロンの修復、再生、および保護において役割を果たし、したがって、本発明によるNGFサブファミリーメンバーのタンパク質模倣体は、神経変性障害を治療するのにとりわけ有用である。他の可能な適用は、本発明によるNGFサブファミリーメンバーのタンパク質模倣体を用いて、例えば、NGF特異的抗体を誘導することにより、慢性疼痛および/または神経変性疼痛を軽減および/または治療することである。さらに、NGFは、乳癌細胞増殖の強力な刺激因子であることが知られているので、このようなNGFに特異的な抗体は、乳癌を治療するのにとりわけ有用であると考えられる。
【0074】
したがって、別の好ましい実施形態では、前記障害が、神経変性障害、好ましくはアルツハイマー病、疼痛障害、好ましくは慢性および/または神経障害性の疼痛障害、ならびに癌、好ましくは乳癌からなる群から選択される障害を含む、本発明による方法が提供される。より好ましい実施形態では、前記メンバーがNGFサブファミリーに属する方法が提供される。
【0075】
さらに、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーに対する抗体を作製する方法であって、本発明によるタンパク質模倣体および/または本発明による免疫原性組成物を、非ヒト動物に投与するステップと、前記動物により生成される、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーに対する抗体を得るステップとを含む方法が提供される。また、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーに対して特異的である抗体、または抗体の機能的部分もしくは機能的同等物を作製するex vivoでの方法における、本発明によるタンパク質模倣体の使用も提供される。当業者は、B細胞ハイブリドーマ法、抗体ファージディスプレイ法など、ex vivoにおいて抗体を作製する異なる方法を認識している。
【0076】
本明細書では、抗体の機能的部分を、必ずしも量においてではないが、種類において、前記抗体と同じ少なくとも1つの特性を有する部分として定義する。前記機能的部分は、必ずしも同程度ではないが、前記抗体と同じ抗原に結合することが可能であることが好ましい。抗体の機能的部分は、単一ドメイン抗体、単鎖抗体、Fab断片、またはF(ab')2断片を含むことが好ましい。抗体の機能的同等物とは、結果として得られる化合物の少なくとも1つの特性(好ましくは抗原結合特性)が、必ずしも量においてではないが、種類において本質的に同じであるように改変された抗体として定義される。同等物は、多数の方法により、例えば、全体的な機能性が、大幅には損なわれない可能性が高いように、一般には同様の特性(サイズ、疎水性など)を有する別の残基によりアミノ酸残基を置換する、保存的アミノ酸置換によりもたらされる。
【0077】
シスチンノット増殖因子スーパーファミリーのサブファミリーである糖タンパク質ホルモンサブファミリー(GLH)は、ホルモン:黄体形成ホルモン(LH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、ならびに絨毛性ゴナドトロピン(CG)および濾胞刺激ホルモン(FSH)を含む。これらのホルモンはすべて、アルファサブユニットおよびベータサブユニット(それぞれ、GLHAおよびGLHB)を含み、哺乳動物の生殖において役割を果たす。例えば、FSHは、セルトリ細胞(男性)または果粒膜細胞(女性)上におけるGタンパク質結合受容体に結合することにより、精巣機能または卵巣機能を刺激する。とりわけ、LHが、月経周期において、排卵を刺激し、黄体を維持するのに対し、CGは、例えば、妊娠時において、黄体を維持する。TSHは、セルトリ細胞の成熟、ならびに排卵機能にとって重要である。
【0078】
したがって、好ましい実施形態では、本発明によるシスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーの存在と関連する障害を治療または予防する方法であって、前記障害が生殖障害である方法が提供される。生殖障害を治療する以外に、本発明によるタンパク質模倣体および/もしくは抗体、またはその機能的部分もしくは同等物はまた、生殖を防止する、すなわち、妊娠を防止するのにもとりわけ有用である。女性または男性におけるGLH、例えば、FSH、CG、LH、もしくはTSHを阻害することにより、または前記GLHの受容体結合および/もしくはシグナル伝達を阻害することにより、卵巣または精巣の機能が撹乱され、妊娠の可能性が低下する。したがって、本発明は、女性個体における妊娠を防止し、かつ/または妊娠の可能性を低下させる方法であって、前記女性または前記女性の性的パートナーに、有効量の、本発明によるタンパク質模倣体、本発明による免疫原性組成物、および/または本発明による方法により得ることが可能な抗体、または前記抗体の機能的部分もしくは機能的同等物を投与するステップを含み、前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーがGLHAサブファミリーまたはGLHBサブファミリーのメンバーである方法を提供する。
【0079】
男性および/または女性の避妊剤として使用される、本発明によるタンパク質模倣体、本発明による免疫原性組成物、および/または本発明による方法により得ることが可能な抗体、または前記抗体の機能的部分もしくは機能的同等物がさらに提供される。
【0080】
さらに、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーに対する抗体に結合し、かつ/またはこれを中和する方法であって、治療有効量の、本発明によるタンパク質模倣体を、前記抗体を含む対象に投与するステップを含む方法が提供される。タンパク質模倣体が前記抗体に結合すると、その活性が低下する。シスチンノットタンパク質のメンバーに特異的な抗体は、治療プロトコールで用いられる。その一例は、転移性癌を治療するのに用いられる、VEGFに特異的なAvastin (商標)である。投与された抗体は、数日間、また最長で数週間の半減期を有する。例えば、このような抗体が過剰投与されるか、またはこのような抗体の作用がもはや望ましくない場合は、本発明のタンパク質模倣体が、前記抗体に結合し、かつ/またはこれを中和することにより、前記抗体の作用を中和するのにとりわけ有用である。本発明によるタンパク質模倣体それ自体の生体活性は存在しないかまたはより低度であり、したがって、抗体が最初に投与された条件には干渉しないため、該タンパク質模倣体は、とりわけ有用である。例えば、VEGFに対する抗体を施されている患者を、生体活性であるVEGFにより治療して、該抗体を中和することは、当然ながら望ましくない。生体活性であるVEGFを、存在する抗体に対して過剰に投与するならば、その生物学的作用が波及し、それまでに施された抗体治療を損なうことになるであろう。本発明を限定するわけではない例示的な例は、VEGFに対するモノクローナル抗体、好ましくはAvastin (商標)に結合し、かつ/またはこれを中和するのに用いうる、VEGFのタンパク質模倣体の使用である。Avastin (商標)は、例えば、転移性癌を治療するのに投与される、VEGFに対する市販のモノクローナル抗体である。しかし、Avastin (商標)により治療すると、創傷治癒が遅くなるかまたは不完全となりうる(例えば、手術による切開が、治癒困難であるかまたは開口状態にとどまる場合)。場合によって、この事象は、致死性の結果をもたらすこともあった。したがって、手術後少なくとも28日間は、かつ、手術による創傷が完全に治癒するまでは、Avastin (商標)療法を開始しないことが推奨される。当然ながら、Avastin (商標)療法の間は、手術を回避すべきである。しかし、Avast
in (商標)療法を施される患者に対して手術を実施することが必要な場合もある。このような場合、切断型VEGF、好ましくはVEGF26〜104を投与して、VEGFそれ自体の作用に類似する生物学的作用をそれほど高度に誘導することなく、循環する抗VEGF抗体を中和することが好ましい。切断型VEGFを投与し、抗VEGF抗体を中和した短期間の後には、Avastin (商標)療法中の手術後に通常観察される上記の重篤な副作用なしに、患者に手術を施すことができる。
【0081】
したがって、好ましい実施形態では、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーに対する抗体に結合し、かつ/またはこれを中和する方法であって、治療有効量の、本発明によるタンパク質模倣体を、前記抗体を含む対象に投与するステップを含み、前記抗体が、Avastin (商標)であり、前記タンパク質模倣体がVEGF26〜104である方法が提供される。
【0082】
シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーに対する抗体を中和する薬物を製造するための、本発明によるタンパク質模倣体の使用がさらに提供される。好ましい実施形態では、上記で説明した通り、前記抗体が、Avastin (商標)であり、前記タンパク質模倣体がVEGF26〜104である。
【0083】
TGFベータサブファミリーに属する、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーの別のメンバーは、SOST遺伝子の分泌タンパク質産物であり、培養された骨芽細胞に対する骨細胞由来の阻害剤である、スクレロスチンである。スクレロスチンが欠損すると、骨形成の増大に起因して、良質の骨量が実質的に増大することを特徴とする、2つの密接に関連するまれな硬化性障害である、硬結性骨化症およびファンブッヘム病がもたらされる。これに対し、骨の密度および質が低下し、骨格の脆弱化をもたらし、特に、脊椎、手首、腰部、骨盤、上腕部の骨折の危険性を増大させる障害である骨粗鬆症は、おそらく、骨形成を阻害するスクレロスチンが過剰に生成されることにより引き起こされる。したがって、スクレロスチンのアゴニスト性もしくはアンタゴニスト性のタンパク質模倣体、および/またはスクレロスチンに特異的な抗体は、骨障害を治療するのにとりわけ有用である。したがって、好ましい実施形態では、前記障害が、骨調節の撹乱と関連する障害を含む、本発明による方法が提供される。より好ましい実施形態では、前記障害は、骨粗鬆症または硬結性骨化症を含む。
【0084】
本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の特定の態様を明確化することのためだけに用いられる、以下の実施例において、本発明をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】A)完全な還元形態(MW計算値=9569.1; MW実験値=9566.4)、ならびにB)酸化的フォールディング後(MW計算値=9563.1; MW実験値=9560.7)におけるhumVEGF25〜107 (Boc)についてのエレクトロスプレーイオン化質量スペクトル(ESI/MS)を示す図である。フォールディング条件は、上記で説明した通りである。
【図2】A)多様な濃度(125μM〜2pM)のoxid-humVEGF26〜104 (■)、humVEGF1〜165 (▲)、ならびにhumVEGFのβ5ターン-ベータ6ループだけに及ぶ骨格環化ペプチド(humVEGF74〜98)(×)についてのELISA法における、表面固定化humVEGF1〜165 (1μg/mL;グルタルアルデヒド(GDA)結合)に対するAvastin (商標)結合の阻害を示す図である。B)多様な濃度(5μM〜12.8pM)のhumVEGF1〜165 (▲)、手順1により合成されたoxid-humVEGF26〜104 (グレーの四角)、または手順2により合成されたoxid-humVEGF26〜104 (白色の四角)についてのELISA法における、表面固定化humVEGF1〜165 (1μg/mL;グルタルアルデヒド結合)に対するAvastin (商標)結合の阻害を示す図である。
【図3】希釈率1/50および1/100における、非精製ラット抗oxid-humVEGF26〜104免疫血清(I) 50.49および50.67によるBaF3/細胞増殖アッセイに由来する第1の中和データを示す図である。mAbであるAvastin (商標) (抗humVEGF1〜165)を陽性対照として用い、前免疫(PI)血清(50.49および50.67)を陰性対照として用いた。humVEGF1〜165=0.6ng/mLで観察される増殖レベルを、デフォルトで100%に設定し、血清中における増殖レベルを、デフォルトに対する%として表した。前免疫血清は、初回の免疫化の直前に採取した。免疫血清は、初回の免疫化の6週間後に採取した。グレー:増殖%<50;黒色:増殖%50〜100。
【図4】希釈率1/50および1/3200の非精製抗oxid-humVEGF26〜104ラット血清A) 50.49およびB) 50.67によるBaF3/細胞増殖アッセイに由来する中和データを示す図である。さらなる詳細については、図3を参照されたい。
【図5】希釈率1/50および1/3200のprotG精製抗oxid-humVEGF26〜104ラット血清A) 50.49およびB) 50.67によるBaF3/細胞増殖アッセイに由来する中和データを示す図である。さらなる詳細については、図3を参照されたい。
【図6】非精製マウス抗oxid-humVEGF26〜104免疫血清(I) 59.01〜59.05 (04は死亡)によるBaF3/細胞増殖アッセイに由来する中和データを示す図である。mAbであるAvastin (商標) (抗humVEGF1〜165)および抗oxid-humVEGF26〜104ラット血清50.67を陽性対照として用い、前免疫(PI)血清を陰性対照として用いた。humVEGF1〜165=1.2ng/mLで観察される増殖レベルを、デフォルトで100%に設定し、血清中における増殖レベルを、デフォルトに対する%として表した。PI:初回の免疫化の直前に採取した血清。I:初回の免疫化の6週間後に採取した血清。
【図7】希釈率1/5および1/25における、非精製ラット免疫血清50.49および50.67による、表面固定化humVEGF1〜165に対するAvastin (商標)結合の阻害を示す図である。ペプチド血清31.1 (濾胞刺激ホルモンのβ3ループの配列であるhumFSH56〜79に由来する二重拘束CLIPS/SSペプチドに対して誘発された;血清は、細胞ベースのアッセイにおいて、FSHに対する高度の中和活性を示す)、ならびに血清45.09 (VEGFのβ5ターン-ベータ6ループの配列であるVEGFの70〜102に由来する骨格環化ペプチドに対して誘発された;血清は、BaF3細胞増殖アッセイにおいて、humVEGF1〜165に対する中和活性を示す)を陰性対照として用いた。阻害実験に最高の感度を確保するため、Avastin (商標)の最小濃度(約10ng/mL)を用いた(OD450nm≒0.4)。
【図8】humVEGF1〜165の存在下および不在下における、多様な濃度(0.01〜20ng/mL)のhumVEGF26〜104によるBaF3/細胞アッセイに由来する増殖データを示す図である。humVEGF1〜165=1.2ng/mLで観察される増殖レベルを、デフォルトで100%に設定し、他の増殖レベルを、デフォルトに対する%として表した。
【図9】増殖アッセイの概略を示す図である。
【図10】TGFベータサブファミリー、GLHベータサブファミリー、NGFサブファミリー、PDGFサブファミリー、GLHAサブファミリー、ノギン様タンパク質サブファミリー、コアグリン様タンパク質サブファミリー、およびCTCK様タンパク質サブファミリーに細分化される、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーの一部であることが知られるすべてのタンパク質について、完全タンパク質の名称、該タンパク質がそこから単離される動物種、およびアミノ酸配列を示す図である。サブファミリーごとに規定されるコンセンサス配列を、各メンバーの配列一覧の上部に提示する。
【図11】シスチンノット増殖因子スーパーファミリーの多様なメンバーの一般的構造についての概略表示である。
【図12】A)治療群1: PBS (●)、治療群2:抗oxid-humVEGF26〜104 (△)、および治療群3: Avastin (商標) (V)における、マウス1匹当たりの平均腫瘍容量(mm3)の増加を示す図である。PBS群では、腫瘍の推定容量が、(あらかじめ定めた)最大容量を超えたため、9匹中4匹のマウスを、予定日以前に安楽死させた(#)。B)実験終了時の異なる各治療群におけるマウス1匹当たりの平均総腫瘍重量(mg)を示す図である。C)実験終了時の異なる各治療群における個々のマウスの総腫瘍容量(mm3)を示す図である(PBS群におけるマウス3は、実験の開始以前に死亡した)。
【図13】red-ラットVEGF26〜104 (A/B)およびoxid-ラットVEGF26〜104 (C/D)についてのHPLC (A/C)およびエレクトロスプレーイオン化質量スペクトル(B/D)を示す図である。
【図14】A) oxid-ラットVEGF26〜104およびB) oxid-humVEGF26〜104の両方に対する抗oxid-humVEGF26〜104ラット血清1+2 (黒色の点線および破線)および抗oxid-ラットVEGF26〜104ラット血清3+4 (グレーの点線および破線)についてのELISA法における結合のプロットを示す図である。
【図15】red-hum PLGF34〜112 (A/B)およびoxid-hum PLGF34〜112 (C/D)についてのHPLC (A/C)およびエレクトロスプレーイオン化質量スペクトル(B/D)を示す図である。
【図16】天然型化学的ライゲーションを介して、断片humSOST-F1、humSOST-F2、およびhumSOST-F3からの3段階の縮合反応により、humSOST57〜144が得られることを示す図である。ステップA:チアプロリンで保護されたhumSOST-F2をhumSOST-F3へとライゲーションすることにより、保護humSOST-F2/3を生成させる。ステップB:pH4.0で、メトキシアミンによりhumSOST-F2/3を脱保護する。ステップC: pH6.5で、脱保護されたhumSOST-F2/3を、humSOST-F1へとライゲーションすることにより、humSOST57〜144を生成させる。
【図17】イオン交換クロマトグラフィー後において、完全red-humSOST57〜144を酸化的にリフォールドさせたことを示す図である。0.4Mアルギニン、1.67mMグルタチオン(還元型)、0.33mMグルタチオン(酸化型)、55mMトリス-HCl、21mM塩化ナトリウム、0.88mM塩化カリウム、pH8.0中においてペプチドをフォールドさせることにより、4℃で3.5日後において、10.2%の所望の生成物を得た。
【図18】完全red-humSOST57〜144 (A/B)、酸化的にリフォールドしたoxid-humSOST57〜144 (C/D)、オクタアセトアミドにより誘導体化したhumSOST57〜144 (E/F)についてのHPLC (A/C/E)およびエレクトロスプレーイオン化質量スペクトル(B/D/F)を示す図である。
【図19】PDLライブラリーから抗体により選択したビオチニル化oxid-humSOST57〜144についてのELISA法における結合データを示す図である。1.組換えhumSOST、2.ビオチニル化oxid-humSOST57〜144自体に対する実際の結合、3.アミノ酸-SOST57〜144、4.グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、5. CD33、そして最後に、6.ウシ血清アルブミン(BSA)に対する結合の不在により、高度に特異的な抗体結合が示される。
【図20】red-humTGFB15〜111/Δ49〜77-humVEGF62〜67 (A/B)およびoxid-humTGFB15〜111/Δ49〜77-humVEGF62〜67 (C/D)についてのHPLC (A/C)およびエレクトロスプレーイオン化質量スペクトル(B/D)を示す図である。
【図21】(A)oxid-humTGFB15〜111/Δ49〜77-humVEGF62〜67による免疫化を介して誘発された、9wpvのラット血清(1および2+前免疫血清)についてのELISA法における抗体力価を示す図である。力価は、ELISA法におけるODが、バックグラウンドシグナルの4倍に等しい-10log[濃度]として定義した。(B)表面固定化した1) humTGFB2trunc-1 (VEGFのb2ループを伴う)、2) humTGFB2trunc-2 (配列PGGSPAにより天然humTGF-B2のb2ループを置換した)、および3)humVEGFtruncに対する、9wpvのラット血清についてのELISA法における抗体の結合を示す図である。humTGFB2trunc 1:アセチル-C1ALRPLYIDFKRDLGWKWIHEP KGYNANFC2AGAC3NDEGLEC4VSQDLEPLTILYYIGKTPKIEQLSNMIVKSC5KC6-アミドhumTGFB2trunc 2:アセチル-C1ALRPLYIDFKRDLGWKWIHEPKGYNANFC2AGAC3PGGSPAC4VSQDLEPLTILYYIGKTPKIEQLSNMIVKSC5KC6-アミドVEGFtrunc:アセチル-C1HPIETLVDIFQEYPDEIEYIFKPSAVPLMRC2GGAC3NDEGLEC4VPTEESNITMQIMRIKPHQGQHIGEMSFLQHNKC5EC6-アミド
【実施例】
【0086】
(実施例1A)
切断型VEGFの各種形態の合成
切断型VEGFの3つの異なる形態を合成した。
humVEGF26〜104:
26Ac-C1HPIETLVDIFQEYPDEIEYIFKPSAVPLMRC1GGAC3NDEGLEC4VPTEESNITMQIMRIKPHQGQHIGEMSFLQHNKC5EC6#104
humVEGF25〜107:
25Ac-YC1HPIETLVDIFQEYPDEIEYIFKPSAVPLMRC2GGAC3NDEGLEC4VPTEESNITMQIMRIKPHQGQHIGEMSFLQHNKC5EC6RPK#107
humVEGF25〜109:
25Ac-YC1HPIETLVDIFQEYPDEIEYIFKPSAVPLMRC2GGSC3NDEGLEC4VPTEESNITMQIMRIKPHQGQHIGEMSFLQHNKC5EC6RPKKD#109単一文字コードによりアミノ酸を示し;「Ac」とは、N末端におけるアセチル化を指し;「#」とは、C末端におけるアミド化を指し;太字のシステイン(C1〜C6)は、シスチンノットフォールドの形成に関与するシステインを示し;太字のアラニンは、Alaにより置換された天然システインを指す。
【0087】
3つの異なる合成手順を用いた。
I.全長ペプチドの直接的合成(Fmoc反応); humVEGF26〜104だけに用いた。
II. Fmoc化学反応を用いるペプチド-チオエステル合成。humVEGF26〜104ではhumVEGF26〜67 (チオエステル)+ humVEGF68〜104 (遊離のN末端システイン)、humVEGF25〜107ではhumVEGF25〜67 (チオエステル)+ humVEGF68〜107 (遊離のN末端システイン)、ならびにhumVEGF25〜109ではhumVEGF25〜67 (チオエステル)+ humVEGF68〜109 (遊離のN末端システイン)という、ペプチド断片に対するその後の天然型化学的ライゲーション(NCL)。
III. Boc化学反応を用いるペプチド-チオエステル合成。humVEGF25〜107ではhumVEGF25〜67 (チオエステル)+ humVEGF68〜107 (遊離のN末端システイン)、ならびにhumVEGF26〜104ではhumVEGF26〜67 (チオエステル)+ humVEGF68〜104 (遊離のN末端システイン)、またはhumVEGF26〜60 (チオエステル)+ humVEGF61〜104 (遊離のN末端システイン)という、ペプチド断片に対するその後の天然型化学的ライゲーション(NCL)。
【0088】
手順I:
Fmoc反応によりペプチドを合成するための一般的手順(A):
Symphony (米国、Protein Technologies社製)合成器、Voyager (ドイツ、CEM GmbH社製)合成器、またはSyroII (ドイツ、MultiSyntech社製)合成器において4-(2',4'-ジメトキシフェニル-Fmoc-アミノメチル)-フェノキシ(Rinkアミド)樹脂(ドイツ、BACHEM社製)を用いる固相上でペプチドを合成した。N-t-Boc (KW)基、O-t-Bu (DESTY)基、N-Trt (HNQ)基、S-Trt (C)基、またはN-Pbf (R)基として側鎖官能基を保護したFmoc-アミノ酸はすべて、Biosolve社(オランダ)またはBachem GmbH社(ドイツ)から購入した。どのアミノ酸連結ステップにも、二重結合を用いる、20分間にわたる活性化時間を伴う、NMP中に5倍過剰のHBTU/HOBt/アミノ酸/DIPEA (1:1:1:2)を用いる連結プロトコールを用いた。ペプチドのアセチル化(Ac)は、室温で30分間にわたり、樹脂を、NMP/Ac2O/DIEA (10:1:0.1、v/v/v)と反応させることにより実施した。別段に示さない限り、室温で2時間にわたり、13.3% (w)フェノール、5% (v)チオアニソール、2.5% (v) 1,2-エタンジチオール、および5% (v) milliQ-H2Oを含有するTFA (40mL/樹脂ミリモル)と反応させることにより、アセチル化したペプチドを樹脂から切断した。氷冷させたEt2Oによる沈殿+沈殿した材料の乾燥凍結により、粗ペプチドが得られた。
【0089】
Symphony合成器(米国、Protein Technologies社製)上におけるこの手順(樹脂投入量: 0.88ミリモル/g)に従う1つのステップにより、humVEGF26〜104を合成した。第1の連結ステップでは、Ac-Cys(Trt)-OHおよびFmoc-Cys(Trt)-OHの4:1 (w/w)混合物を用いた。若干異なる混合物: 5% (v) TES、2.5% (v) 1,2-エタンジチオール、および2.5% (v) milliQ-H2Oを含有するTFA (40mL/樹脂ミリモル)と反応させることにより、アセチル化したペプチドを樹脂から切断した。最後に、HPLCによりペプチドを精製し、手順Gに従う酸化によりフォールドさせた。
【0090】
また、Liberty合成器(ドイツ、CEM GmbH社製)を用いて、Rinkアミド樹脂(樹脂投入量: 0.5ミリモル/g)上において、humVEGF26〜104について上記で説明した通り、この手順に従い、ペプチド断片humVEGF68〜104、humVEGF68〜107、およびhumVEGF68〜109 (NCLのための遊離N末端におけるシステイン;手順IIを参照されたい)も合成した。
【0091】
手順II:
Fmoc反応によるペプチドチオエステルの合成:
手順Iで説明した通り、Fmocによるペプチド合成の一般的手順に従い、SASRIN樹脂(樹脂投入量: 0.5ミリモル/g;ドイツ、Bachem GmbH社製)上において、ペプチド断片であるhumVEGF25〜67およびhumVEGF26〜67(遊離C末端)を合成した。DCM中1%のTFA (40mL/樹脂ミリモル)を伴う反復処理(20サイクルにわたる)により、樹脂からペプチドを切断した。混合した画分を、ピリジンにより中和し、その後、減圧下における蒸発によりDCMを除去した。最後に、過剰量のH2Oを添加した後で、遠心分離および乾燥凍結させることにより、ペプチドを沈殿させた。乾燥凍結させた粗ペプチドをDCM (2.0mM)中において溶解させ、その後、DCM中に12等量の4-アセトアミドチオフェノール(0.334mg/mL、2.0mM)、DCM中に3等量のPyBOP (1.040mg/mL、2.0mM)、およびDCM中に2.6等量のDIPEA(1容量%)を添加し、室温で6時間にわたり混合物を撹拌した。次いで、DCM中に12等量の4-アセトアミドチオフェノール(0.334mg/mL、2.0mM)を再度添加し、室温で一晩にわたり混合物を撹拌した。最後に、混合物を、約2.6等量のTFAにより中和し、減圧下における蒸発によりDCMを除去した。次いで、ペプチドチオエステルの粗断片を脱保護し、一般的な手順に従うRP-HPLCにより精製した。
【0092】
ペプチド断片の天然型化学的ライゲーション(NCL):
天然型化学的ライゲーションを介して、ペプチド断片であるhumVEGF68〜104、humVEGF68〜107、またはhumVEGF68〜109 (A)を、ペプチドチオエステル断片であるhumVEGF25〜67またはhumVEGF26〜67のいずれか(B)と縮合させる反応は、作業緩衝液(pH8.0の0.2Mリン酸緩衝液中6MのグアニジンHCl/20mM TCEP/200mM MPAA)中ほぼ等モル(1:1.2)のA溶液(10mg/mL;約2.0mM)およびB溶液(10mg/mL;約2.0mM)を混合し、室温で一晩にわたり撹拌することにより実施した。溶液(酸性!)を混合した後で、10M NaOH (NaOHのμL量は、用いられるMPAAのmg量とほぼ等しい)を添加することにより、pHを6.5に調整した。過剰量のMPAAは、洗浄ステップにおいて作業緩衝液(MPAAを含まない!!)を用いるAmicon社による濾過法により除去した。最後に、標準的な手順に従うRP/HPLCにより、還元形態における粗humVEGF26〜104、粗humVEGF25〜107、または粗humVEGF25〜109を精製した。
【0093】
red-humVEGF26〜104、red-humVEGF25〜107、およびred-humVEGF25〜109の酸化的フォールディング:
0.1mg/mLの最終濃度で1.0mMシスチン(SS形態)および8.0mMシステイン(SH形態)を含有する1MグアニジンHClを伴うかまたは伴わない、0.1Mトリス緩衝液(pH8.0)中に、完全な還元型であるred-humVEGF26〜104、red-humVEGF25〜107、またはred-humVEGF25〜109を溶解させ、室温で撹拌した。即座に、不完全または不正確なフォールドペプチドに対応する一部の幅広いピークに加えて、短い貯留時間(高い極性)の位置に鋭いピークが現れる。HPLC解析により、ピーク強度にさらなる変化が示されなかった場合(通常、約4時間後)、混合物を、調製用RP/C18カラムへと投入し、本発明者らによる標準的な手順(下記を参照されたい)に従い精製した。
【0094】
手順III:
tBoc反応によりペプチドを合成するための一般的手順:
既に説明したBoc化学反応のための、in situにおける中和/HBTU活性化手順を用いて、典型的には0.25ミリモルのスケール上における、手作業での固相ペプチド合成(SPPS)により、ペプチド断片を調製した。各合成サイクルは、過剰量のDIEAの存在下において、1〜2分間にわたり純粋TFAにより処理し、1分間にわたりDMF流により洗浄し、10〜20分間にわたり1.0ミリモルのあらかじめ活性化させたBoc-アミノ酸と連結した後で、2回目のDMF流による洗浄を行うことからなった。Nα-Bocアミノ酸(1.1ミリモル)は、過剰量のDIEA (3ミリモル)の存在下において、1.0ミリモルのHBTU (DMF中において0.5M)により、3分間にわたりあらかじめ活性化させた。Gln残基を連結させた後で、TFAを用いる脱保護の前後において、DCM流による洗浄を用いて、高温(TFA/DMF)により触媒されるピロリドンカルボン酸形成の可能性を防止した。側鎖を保護したアミノ酸は、Boc-Arg(p-トルエンスルホニル)-OH、Boc-Asn(キサンチル)-OH、Boc-Asp(O-シクロヘキシル)-OH、Boc-Cys(4-メチルベンジル)-OH、Boc-Glu(O-シクロヘキシル)-OH、Boc-His(ジニトロフェニル)-OH、Boc-Lys(2-Cl-Z)-OH、Boc-Ser(ベンジル)-OH、Boc-Thr(ベンジル)-OH、およびBoc-Tyr(2-Br-Z)-OHであった。他のアミノ酸は、側鎖を保護せずに用いた。DMF中の無水酢酸(0.1M)/ピリジン(0.1M)で2×2分間処理することにより、ペプチドのNα-アセチル化を実施した。鎖集合が完了したら、ペプチドを脱保護し、スカベンジャーとしての4% p-クレゾールと共に0℃で1時間にわたりHF無水物で処理することにより、樹脂から切断した。すべての場合において、ジニトロフェニル(Dnp)除去手順は、C末端のチオエステル基に適合しないため、イミダゾール側鎖-Dnp保護基が、His残基上に残存した。しかし、ライゲーション反応中において、Dnpはチオールにより徐々に除去され、Hisの保護基は解除された。切断後、氷冷したジエチルエーテルによりペプチド断片を沈殿させ、アセトニトリル水溶液中で溶解させ、乾燥凍結させた。
【0095】
チオエステル(-COSR)を生成させる樹脂の調製:
3ミリモルのDIEAの存在下で、1ミリモルのHBTUにより、1.1ミリモルのNα-Boc Leuを活性化させ、10分間にわたり、0.25ミリモルのMBHA樹脂へと連結した。次いで、3ミリモルのDIEAの存在下で、1ミリモルのHBTUにより、1.1ミリモルのS-トリチルメルカプトプロピオン酸を活性化させ、30分間にわたり、Leu-MBHA樹脂へと連結した。TFA中に2.5%のトリイソプロピルシランおよび2.5% H2Oで2×1分間にわたり処理することにより、トリチル保護基を除去した後で、結果として得られるトリチル-メルカプトプロピオン酸-ロイシン樹脂を、ポリペプチド鎖集合のための出発樹脂として用いることができる。標準的なペプチド連結プロトコールを用いて、所望のアミノ酸とのチオエステル結合を形成した。最終ペプチドを無水HFで処理することにより、天然型化学的ライゲーション反応に関与する、C末端活性化メルカプトプロピオン酸-ロイシン(MPAL)チオエステル(-COSR)ペプチドが得られた。
【0096】
ペプチド断片の天然型化学的ライゲーション(NCL):
以下の通りに、完全に脱保護したペプチドチオエステル断片であるhumVEGF26〜60、humVEGF26〜67、およびhumVEGF25〜67を、ペプチド断片であるhumVEGF61〜104、humVEGF68〜104、またはhumVEGF68〜107とライゲーションした: 6Mのグアニジンを含有するpH8.0の0.1Mトリス緩衝液中に10mg/mlである、約1:1モルの比率でペプチド断片を溶解させた。ベンジルメルカプタンおよびチオフェノールを2% (v/v)まで添加する結果として、pH約7 (チオールおよびTFAを添加することにより、凍結乾燥させたペプチドより低下させた)で1〜3mMの最終ペプチド濃度を得た。37℃の保温ブロック内でライゲーション反応を実施し、定期的にボルテックスして、チオール添加物を平衡化させた。反応が完了するまで、HPLCおよびESI-MSによりモニタリングした。各NCL (humVEGF26〜60+ humVEGF61〜104; humVEGF26〜67+ humVEGF68〜104)により、HPLCおよびESI-MSで同一であることが特定される還元型VEGF26〜104がもたらされた。
【0097】
red-humVEGF26〜104およびred-humVEGF25〜107の酸化的フォールディング:
0.1mg/mLの最終濃度で1.0mMシスチン(SS形態)および8.0mMシステイン(SH形態)を含有する1MグアニジンHClを伴うかまたは伴わない、0.1Mトリス緩衝液(pH8.0)中に、完全な還元型であるred-humVEGF26〜104およびred-humVEGF25〜107を溶解させ、室温で撹拌した。即座に、不完全または不正確なフォールドペプチドに対応する一部の幅広いピークに加えて、正確にフォールディングされたシスノット構造に対応する短い貯留時間(高い極性)の位置に鋭いピークが現れる。HPLC解析により、ピーク強度にさらなる変化が示されなかった場合(通常、約4時間後)、混合物を、調製用RP/C18カラムへと投入し、本発明者らによる標準的な手順(下記を参照されたい)に従い精製した。
【0098】
HPLCによる精製の一般的手順:
直線的なAB勾配を1〜2% B/分とする(溶媒Aを水中に0.05%のTFAとし、溶媒BをACN中に0.05%のTFAとする)、「DeltaPack」(内径25×100mmまたは40×210mm;粒子サイズ15μm;小孔径100Å;米国、Waters社製)または「Atlantis」(内径10×100mm;粒子サイズ5μm;米国、Waters社製)のRP-18調製用C18カラム上における逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)により、粗ペプチドを精製した。代替的に、Vydac C-18カラム(5μm、0.46×15cm)を用いるVarian Prostar社製システム上において解析的逆相HPLCを実施し、Vydac C-18カラム(10μm、1.0/2.5×25cm)を用いるWaters社製のシステム上において調製的逆相HPLCを実施した。水/0.1% TFA中におけるアセトニトリルの直線勾配を用いて、結合したペプチドを溶出させた。用いた流速は、1ml/分(解析的HPLC)および5/10ml/分(調製的HPLC)であった。
【0099】
RP-HPLC/ESI-MSによる解析:
直線的なAB勾配(5〜55% B、25% B/分)(溶媒Aを水中に0.05%のTFAとし、溶媒BをACN中に0.05%のTFAとする)を伴うRP-18調製用「BEH」カラム(内径2.1×50mm;粒子サイズ1.7mm;米国、Waters社製)を用いる「Acquity UPLC」(米国、Waters社製)上における逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)により、精製ペプチドの解析を実施した。ペプチドの一次イオン分子量は、エレクトロスプレーイオン化質量分析により決定した。
【0100】
ESI-MSによる解析:
HPLC試料に対するエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS))は、API-150シングル四重極質量分析器(Applied Biosystems社製)上で実施した。ペプチドの質量は、Analysisソフトウェアを用いて、ペプチドについて観察されたすべてのプロトン化状態に由来する、実験による質量対電荷(m/z)比から計算した。
【0101】
各ペプチドについて、以下の特徴を決定した。
【0102】
【表1】
【0103】
これらのデータおよび図1は、各種の異なる方法により、humVEGFtruncの各種形態を合成することができるが、結果は同一であることを示す。
【0104】
(実施例1B)
表面固定化oxid-humVEGF1〜165とのAvastin (商標)結合に対するoxid-humVEGF26〜104の阻害活性
結合ELISA法: ELISA法により、oxid-humVEGF26〜104およびhumVEGF1〜165に対する各種のmAb (Avastin (商標)、mAb 293、PDL抗体)の結合を決定した。したがって、室温において4時間にわたり、振とうしながら、リン酸緩衝液(0.1M、pH=5)中に0.2%のグルタルジアルデヒド100μL/ウェルでポリスチレン製96ウェルプレート(ドイツ、Greiner社製)を処理した後、リン酸緩衝液(0.1M、pH=8)で洗浄した(3×10分間)。次いで、37℃で3時間にわたり、ウェルを、リン酸緩衝液(0.1M、pH=8)中に1μg/mLのoxid-humVEGF26〜104/ humVEGF1〜165溶液100μL/ウェルでコーティングした後、室温で一晩にわたり静置した。1%Tween80による洗浄(3回にわたる)の後、第1のウェルにおける1/10の希釈率から始めて、後続のウェルで3倍ずつの希釈段階とした、ウマ血清(PBS/1%Tween80/3%NaCl中に4%)中の異なる多様な希釈率の抗体と共にプレートをインキュベートした。37℃で1時間にわたりインキュベーションを実施した後、1%Tween-80で洗浄した(3回にわたる)。次いで、25℃で1時間にわたり、プレートを、ペルオキシダーゼ標識したヤギ抗ラット血清(4%ウマ血清中における1/1000の希釈率;上記を参照されたい) 100μL/ウェルと共にインキュベートした後、1%Tween-80で洗浄した(4回にわたる)。最後に、プレートを、クエン酸/リン酸緩衝液(それぞれ0.1M、pH=4)中に0.006%のH2O2を含有する0.5μg/mLのABTS (2,2'-アジン-ジ(エチルベンズチアゾリンスルホネート))溶液と共にインキュベートした。45分後にOD450nm値を測定し、暗所内室温で静置した。
【0105】
競合的ELISA法: ELISA法における結合について説明した手順(上記を参照されたい)に主に従い、ELISA法による結合競合試験を実施した。量を減少させるoxid-humVEGF26〜104 (5μMで始め; 1/5ずつの希釈段階)およびhumVEGF1〜165 (陽性対照; 500nMで始め; 1/5ずつの希釈段階)の存在下において一定の抗体濃度(10ng/mLのAvastin (商標); 1.0〜1.5のOD450nm)で、抗体とのインキュベーションを実施した。
【0106】
図2のデータは、Avastin (商標)に対するoxid-humVEGF26〜104の結合が、アフィニティーにおいて5倍未満の差(humVEGF1〜165と比較して)であるのに対し、Avastin (商標)に対する、humVEGFのベータ3ループに由来する(環状)ペプチド模倣体の結合活性は>10000倍小さかったことを示す。これは、本発明によるこの新規の技法を用いてhumVEGF上における不連続なAvastin (商標)結合部位を再構成する上で、大きな前進がなされたことを示す。
【0107】
(実施例1C)
ラットおよびマウスにおいてVEGF中和抗体およびVEGF中和血清を作製するためのoxid-humVEGF26〜104の使用
雌ウィスターラットおよび雌Balb/Cマウスにおいて、oxid-humVEGF26〜104 (キャリアタンパク質へとコンジュゲートしていない!!)を用いる免疫化実験を実施した。
A)表面固定化したhumVEGF1〜165に対する結合(力価決定)
B)表面固定化したhumVEGF1〜165に対するAvastin (商標)結合を阻害する能力
C) BaF3細胞増殖アッセイにおけるhumVEGF1〜165についての中和活性
について抗血清を解析した。これらの試験の結果を、下記および図3〜6に示す。
【0108】
免疫化プロトコール:
ウィスターラット: 0日目に、1:1 (v/v)のPBS/CoVaccine (PBS=リン酸緩衝生理食塩液)中に375μg/mLのhumVEGF26〜104溶液400μL (筋肉内+皮下; 200μLずつ)により、雌ウィスターラットを抗humVEGF26〜104抗体で免疫化した後、2および4週間後において、追加投与(同じ量および濃度)を行った。次いで、6週間後に、ラットから採血し、抗血清を回収した。抗VEGF抗体の力価は、下記で説明する通りに決定した。
【0109】
Balb/Cマウス: 2つの異なる製剤、すなわち、CFA/IFAアジュバント(第1群: 2匹の動物)による製剤と、CoVaccineアジュバント(第2群: 3匹の動物)による製剤とを用いて、雌Balb/Cマウスにおいて、oxid-humVEGF26〜104による免疫化を実施した。0日目に、腹腔内(i.p.)における、2:3 (v/v)のPBS/CFA (PBS=リン酸緩衝生理食塩液; CFA=完全フロイントアジュバント)中に1.0mg/mLのoxid-humVEGF26〜104溶液250μLにより、第1群の動物(2匹)を免疫化した後、4週間後において、追加投与(同じ量、方法、および濃度; CFAの代わりに、不完全フロイントアジュバント(IFA))を行った。0日目に、1:1 (v/v)のPBS/CoVaccine (PBS=リン酸緩衝生理食塩液)中に1.25mg/mLのVEGF26〜104溶液210μL (筋肉内+皮下; 105μLずつ)により、第2群の動物(3匹)を免疫化した後、2および4週間後において、追加投与(同じ量、方法、および濃度)を行った。次いで、6週間後に、5匹すべてのマウスから採血し、抗血清を回収した。抗VEGF抗体の力価は、下記で説明する通りに決定した。
【0110】
ELISA法による力価の決定:
そのOD450nmが緩衝液の4×OD450nmと等しい血清希釈率を決定することにより、力価を計算した(「実施例1B: ELISA結合試験」を参照されたい)。力価により、希釈率倍数の負の10log値(1/10=1、1/100=2、1/1000=3、1/10000=4など)が定義される。
【0111】
【表2】
【0112】
Avastin (商標)を伴うラット抗血清についてのELISA競合試験:
ELISA法における結合について説明した手順(上記を参照されたい)に主に従い、ELISA法による結合競合試験を実施した。量を減少させるラット抗血清(1/5で始め;さらに1/3ずつの希釈段階)の存在下において一定のAvastin (商標)濃度(10ng/mL; 1.0〜1.5のOD450nm)で、抗体とのインキュベーションを実施した。
【0113】
BaF3細胞増殖アッセイにおける中和:
アッセイにおいて用いられる細胞は、ヒト(h) VEGF受容体2を安定的に発現する、マウスプレBリンパ球(Makinenら、2001年)である。これらの組換え細胞は、IL-3 (親細胞の存続に必要とされる天然のサイトカイン)またはhumVEGFの存在下に限り、存続/増殖する。実験を行うには、humVEGFに依存する増殖能力について調べうるように、培地からIL-3を除去しなければならない。
【0114】
Ba/F3 R2細胞は、10%のウシ胎仔血清(Perbio社製;型番CH30160.03)、2mMのL-グルタミン(Sigma社製;型番G7513)、2ng/mlのmIL-3 (Calbiochem社製;型番407631)、および500μg/mlのZeocin (Invitrogen社製;型番450430)を含有するDMEM (Gibco社製;型番31885)中において増殖させた。5%のCO2/95%の空気による雰囲気を伴う加湿式インキュベーター内、37℃で細胞を増殖させた。
【0115】
異なる濃度のhumVEGF (+humVEGF)または培地(-humVEGF)を、細胞へと直接添加する(増殖効率を調べる)か、または異なる濃度のAvastin (商標) (陽性対照)、異なる濃度のラット血清もしくはマウス血清と共に1時間にわたりプレインキュベートし、次いで、細胞へと添加(阻害実験の場合)した。2日後、WST-1 (Roche社製;型番1644807)を添加することにより、細胞の増殖を測定した。アッセイのグラフ表示については、図9を参照されたい。
【0116】
WST-1アッセイは、ミトコンドリアにおけるコハク酸デヒドロゲナーゼ活性の測定に基づく。この酵素を適正に機能させるには、この細胞器官が完全であることが必要であり、これが、培養物中に存在する増殖細胞数についての良好な指標である。テトラゾリウム塩(WST-1)は、酵素作用を介して、暗色の可溶性代謝物(ホルマザン)を生成させ、次いで、ELISAリーダーで吸光度(450nm)を測定することによりこれが定量化されるので、WST-1が基質として用いられる。アッセイで測定される吸光度がより高値であるほど、増殖度が強い。吸光度は、増殖度と正の相関を示す。実験を、3連で3回にわたり繰り返したところ、全体的に同様の結果が示された。
【0117】
得られたデータは、雌ウィスターラットおよび雌Balb/Cマウスのいずれにおいても、oxid-humVEGF26〜104 (キャリアタンパク質へとコンジュゲートしていない!!)による免疫化を介して、高レベルの抗体を生成させることに成功したことを示す。この方法で生成された抗血清は、BaF3細胞増殖アッセイにおいて、humVEGF1〜165に対する強力な中和活性(図3〜6)、ならびにhumVEGFに対するAvastin (商標)結合を阻害する能力(図7)を示す。
【0118】
(実施例1D)
oxid-humVEGF26〜104がそれ自体でBaF3細胞の増殖を誘導することはない
humVEGF1〜165の切断形態であるoxid-humVEGF26〜104がまた、BaF3細胞の増殖も誘導しうるかどうかを確認するために、本発明者らは、多様な量のoxid-humVEGF26〜104 (0.01〜20ng/mL)の存在下における細胞の増殖を測定した。oxid-humVEGF26〜104が、humVEGF1〜165自体の増殖能を増強または阻害しうるかどうかを確認するために、humVEGF1〜165=1.2ng/mLの存在下において、oxid-humVEGF26〜104の量を変化させる実験もまた実施した。
【0119】
図8に示す結果により、BaF3細胞の増殖におけるoxid-humVEGF26〜104の活性も、humVEGF1〜165の増殖能に対する影響も存在しないことが明確に示される。
【0120】
(実施例1E)
ヒトLS174T腫瘍細胞を接種されたSwiss nu/nuマウスにおける、抗humVEGF26〜104ラット抗血清による受動免疫化試験:抗humVEGF26〜104抗血清の腫瘍縮小可能性の原理に対するin vivoにおける証明
抗humVEGF26〜104抗血清の腫瘍縮小可能性を裏付けるために、試験開始時において6週齢であった30匹の雄のSwiss nu/nuマウス(Charles River社製)において、以下の免疫化実験を実施した。動物は、以下の3つの治療群に分割した。
第1群: PBS群(n=10;陰性対照群):腫瘍細胞接種後における腹腔内(i.p.) PBS注射(500μl)。
第2群: oxid-humVEGF26〜104群(n=10):腫瘍細胞接種後における、IgGで精製した抗VEGFペプチドラット抗血清のi.p.注射(500μl)。
第3群: Avastin (商標)群(n=10:陽性対照群):腫瘍細胞接種後における、抗humVEGF mAbであるAvastin (商標)のi.p.注射(500μl)。
【0121】
試験の1日目において、30匹のマウスすべてに、100μLの溶液中に懸濁させた1000万個のヒトLS174T腫瘍細胞を、皮下注射した(右脇腹)。腫瘍の取込みは、約100%であった。その後、1日目、8日目、および15日目において、マウスに、A) PBS (第1群)、B)抗oxid-humVEGF26〜104ラット抗血清(5倍濃度のラット血清;第2群)、およびC) Avastin (商標) (第3群)をi.p.注射(500μl)した。抗oxid-humVEGF26〜104ラット血清は、CoVaccineアジュバントを用いて、250マイクログラムのhumVEGF26〜104を投与(0日目、14日目、28日目、および49日目における接種; 63日目における採血)する、別個の4回にわたる実験において、総数20匹の雄ウィスターラットを免疫化することにより得た。結果として得られるラット血清を、アフィニティークロマトグラフィー(ProtGカラム)により精製し、5倍に濃縮した。これらのうちでもっとも強力な10の抗血清(BaF3アッセイにおけるin vitroの中和データに基づく;前出の実施例を参照されたい)をプールし、治療群2における10匹のマウスに接種するのに用いた。腫瘍細胞接種後の1日目から始めて、1日おきに、腫瘍の長さおよび幅を測定した。腫瘍の容量は、式(幅2×長さ)/2 (文献6)を用いて推定した。データを図12に示す。
【0122】
上記に示したデータにより、以下の結論が導かれる。
1. 抗oxid-humVEGF26〜104抗血清は、マウスにおける腫瘍の増殖を強力に縮小させる能力を有する。
2. この実験環境において、抗oxid-humVEGF26〜104抗血清による治療について観察された効果は、目視において、Avastin (商標)についての場合を顕著に上回った。
3. 抗oxid-humVEGF26〜104抗体によりヌードマウスを治療したところ、動物すべてによる受容は良好であり、したがって、毒性ではない!
【0123】
(実施例1F)
ラットにおけるoxid-ラットVEGF26〜104の免疫原性
oxid-ラットVEGF26〜104のペプチド配列:
アセチル-C1RPIETLVDIFQEYPDEIEYIFKPSAVPLMRC2AGAC3NDEALE C4VPTSESNVTMQIMRIKPHQSQHIGEMSFLQHSRC5EC6-アミド
【0124】
固相におけるラットVEGF26〜104の合成: humVEGF26〜104について説明した標準的な手順(実施例1Aを参照されたい)に従い、Rink-アミド樹脂(0.1ミリモル/gまで投入する)上における通常の固相合成により、ラットVEGF26〜104を合成した。その後の酸化的リフォールディングも、humVEGF26〜104について説明したのとまったく同じように実施した。red-ラットVEGF26〜104およびoxid-ラットVEGF26〜104のいずれも、調製的高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により精製した。いずれのペプチドも、解析的HPLCおよびエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)により特徴づけした。
【0125】
通常、タンパク質またはそれらの断片が酸化的にリフォールドされた場合に観察される、特徴的な低Rf値へのシフト(48.5% ACNから41.3% ACNへ、下記の表を参照されたい)により、red-ラットVEGF26〜104のリフォールディングの成功が裏付けられた。red-ラットVEGF26〜104が酸化的にリフォールドすると、完全なシスチンノット構造が実際に形成されていることが、低Rf値における新たなピークに特徴的な狭い形状により裏付けられる。
【0126】
酸化的なリフォールディングが生じると、ESI-MSスペクトルもまた著しい変化を受ける。何よりもまず、全体の質量が、6質量単位低下する(3つのジスルフィド結合が形成されることにより、合計6個のHが放出される)。さらに、極めて特徴的な、高m/z値へのMSシグナルのシフトも見られる。例えば、red-ラットVEGF26〜104のMSスペクトルは、M9+およびM10+の荷電分子種に最高強度のシグナルをもたらすが、これらのシグナルは消失し、はるかに低強度の、M5+におけるはるかに弱いシグナルが残存する(図13を参照されたい)。また、このシフトは、タンパク質が、それらの酸化天然構造へとフォールドするときに特徴的であり、red-ラットVEGF26〜104の酸化的リフォールディングが成功したことを示す。タンパク質またはタンパク質断片は、より縮合した構造を示すが、これはもはやそれほど多くの電荷を取り込むことができない、というのがその理由である。これに対して、還元型タンパク質による可撓性の伸長構造は、はるかに多くの電荷を保有しうる。
【0127】
【表3】
【0128】
この例は、雄ウィスターラットにおける、シスチンノットフォールド(oxid形態)が完全である、oxid-humVEGF26〜104およびoxid-ラットVEGF26〜104の両方による免疫化試験の結果について説明する。データは、oxid-ラットVEGF26〜104が、ラットにおいて抗体を生成させるのに、oxid-humVEGF26〜104と比較して同等に免疫原性であり、かつ強力であることを明確に示す。したがって、本特許において説明される切断型VEGFを用いて、例えば、この特定の場合における全長のホモ二量体VEGFタンパク質のような「自己タンパク質」に対する免疫忍容性を回避することができる。
【0129】
0日目に、CoVaccineをアジュバントとして用いる、250マイクログラムずつのoxid-ラットVEGF26〜104 (ラット2匹)またはoxid-humVEGF26〜104 (ラット2匹)により、合計4匹(2×2匹)のウィスターラットを免疫化した後、14日目、28日目、および42日目において、追加投与を行った。最終的には、56日目にラットから採血し、ラットVEGF1〜165、humVEGF1〜165、oxid-ラットVEGF26〜104、およびoxid-humVEGF26〜104に対する抗体力価について血清を解析した。抗体結合データ(の一部)を、Table 1 (表4)および図14に示す。Table 1 (表4)および図14のデータは、ラットにおいて、oxid-ラットVEGF26〜104により誘発される抗血清と、oxid-humVEGF26〜104により誘発される抗血清とに検出可能な差を示さず、これにより、ラットにおけるoxid-ラットVEGF26〜104(同種)は、oxid-humVEGF26〜104 (異種)と比較して同等に免疫原性であり、また、ホモ二量体VEGF1〜165タンパク質との交差反応性(Table 1C (表4))も示す、同等量の抗体を誘発しうることが強く示唆される。
【0130】
さらに、実験は、oxid-humVEGF26〜104を用いて、ヒトにおいて抗VEGFを誘発しうる事実、ならびに、oxid-humVEGF26〜104が、自己タンパク質に対する免疫忍容性の結果として免疫原性の欠如に見舞われることがない事実に対する、極めて強力な根拠をもたらす。
【0131】
【表4A】
【0132】
【表4B】
【0133】
(実施例1G)
humPLGF34〜112 (humPLGFtrunc)の合成
humPLGF34〜112のペプチド配列:
アセチル-C1RALERLVDVVSEYPSEVEHMFSPSAVSLLRC2TGAC3GDENL HC4VPVETANVTMQLLKIRSGDRPSYVELTFSQHVRC5EC6-アミド
X0=アセチル
Xl=RALERLVDVVSEYPSEVEHMFSPSAVSLLR (天然のCからAへの突然変異)
X2=TGA (天然のCからAへの突然変異)
X3=GDENLH
X4=VPVETANVTMQLLKIRSGDRPSYVELTFSQHVR
X5=E
X6=アミド
【0134】
固相におけるred-PLGF34〜112の合成:red- humVEGF26〜104について説明した標準的な手順(実施例1Eを参照されたい)に従い、Rink-アミド樹脂(0.1ミリモル/gまで投入する)上における通常の固相合成により、red-PLGF34〜112を合成した。その後の酸化的リフォールディングも、oxid-humVEGF26〜104について説明したのとまったく同じように実施した。red-humPLGF34〜112およびoxid-humPLGF34〜112のいずれも、調製的高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により精製した。いずれのペプチドも、解析的HPLCおよびエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)により特徴づけした。
【0135】
通常、タンパク質またはそれらの断片が酸化的にリフォールドされた場合に観察される、特徴的な低Rf値へのシフト(49% ACNから38.3% ACNへ、下記の表を参照されたい)により、red-humPLGF34〜112のリフォールディングの成功が裏付けられた。red-humPLGF34〜112が酸化的にリフォールドすると、完全なシスチンノット構造が実際に形成されていることが、低Rf値における新たなピークに特徴的な狭い形状により裏付けられる。
【0136】
酸化的なリフォールディングが生じると、ESI-MSスペクトルもまた著明な変化を被る。何よりもまず、全体の質量が、6質量単位低下する(3つのジスルフィド結合が形成されることにより、合計6個のHが放出される)。さらに、極めて特徴的な、高m/z値へのMSシグナルのシフトも見られる。例えば、red-humPLGF34〜112のMSスペクトルは、M6+〜M10+の荷電分子種に明瞭なシグナルをもたらすが、これらのシグナルは消失し、はるかに低強度の、M5+におけるはるかに弱いシグナルが残存する(図15を参照されたい)。また、このシフトは、タンパク質が、それらの酸化天然構造へとフォールドするときに特徴的であり、red-humPLGF34〜112のリフォールディングが成功したことを示す。タンパク質またはタンパク質断片は、より縮合した構造を示すが、これはもはやそれほど多くの電荷を取り込むことができない、というのがその理由である。これに対して、還元型タンパク質による可撓性の伸長構造は、はるかに多くの電荷を保有しうる。
【0137】
【表5】
【0138】
(実施例1H)
humSOST57〜144 (humSOSTtrunc)の合成
humSOST57〜144のペプチド配列:
ビオチン-GGGC1RELHFTRYVTDGPCRSAKPVTELVC2SGQC3GPARLLPNAIGRGKWWRPSGPDFRC4IPDRYRAQRVQLLCPGGEAPRARKVRLVASC5KC6#
X0=ビオチン-GGG
X1=RELHFTRYVTDGPCRSAKPVTELV
X2=SGQ
X3=GPARLLPNAIGRGKWWRPSGPDFR
X4=IPDRYRAQRVQLLCPGGEAPRARKVRLVAS
X5=K
X6=アミド
【0139】
red-humSOST57〜144の合成は、humVEGF26〜104について説明した、樹脂を投入した固相上では直接に実施することができなかった。したがって、より短い断片であるhumSOST-F1/3を合成し、その後、下記で説明する天然型化学的ライゲーション(NCL)によりライゲーションした。また、その後における完全red-humSOST57〜144の酸化的リフォールディングも、下記に説明する通りに実施した。断片humSOST-F1/3の固相による合成は、humVEGF26〜104について説明した標準的な手順に従い実施した。
【0140】
NCLによりhumSOST-F1/3を断片縮合してred-humSOST57〜144を得る(図式的概観については、図16を参照されたい)
まず、humSOST-F2と、humSOST-F3とを、NCL反応混合物(10Mの水酸化ナトリウムによりpH6.5に調整した、6Mのグアニジン、20mMのTCEP、200mMのMPAA、0.2Mのリン酸水素二ナトリウム)中において、1.2:1の比で溶解させ、室温で24時間にわたり反応させた。逆相HPLCによる精製後、チアプロリンにより保護されたhumSOST-F2/3を、収率66.5%で得た。その後、pH4.0のNCL緩衝液中0.02Mのメトキシアミンにより、60時間にわたりチアプロリンを脱保護した。次いで、pHを6.5に調整し、1.2等量のhumSOST-F1を添加し、1.5日間にわたり反応させた。RPLC/MSにより反応をモニタリングし、毎日40mMのTCEPを添加して、すべての試薬を完全に還元した。反応が完了した後、イオン交換クロマトグラフィーを用いて、その後、逆相HPLCにより粗red-humSOST57〜144を精製し、純粋なred-humSOST57〜144を24.2% (全体では16.1%)の収率で得た。
【0141】
【表6】
【0142】
red-humSOST57〜144の酸化的リフォールディングによりoxid-humSOST57〜144を得る
その後、55mMのトリス-HCl、21mMの塩化ナトリウム、0.88mMの塩化カリウム、0.48Lのアルギニン、20mMのグルタチオン-SH、および4mMのグルタチオン-SSを含有するpH8.0の緩衝液中に溶解させることにより、ペプチドred-humSOST57〜144 (2mg/ml)を天然の形でリフォールドさせた。ペプチドは時間をかけて酸化させ、4℃で3.5日後に収率10.2%のoxid-humSOST57〜144を得た(図17を参照されたい)。
【0143】
red-humSOST57〜144およびoxid-humSOST57〜144のいずれも、調製的高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により精製した。いずれの化合物も、解析的HPLCおよびエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS;下記を参照されたい)により特徴づけした。
【0144】
【表7】
【0145】
通常、タンパク質またはそれらの断片が酸化的にリフォールドされた場合に観察される、特徴的な低Rf値へのシフト(35% ACNから30% ACNへ;以下の表を参照されたい)により、humSOST57〜144のリフォールディングの成功が裏付けられた。酸化的リフォールディングが生じて、完全なシスチンノット構造が実際に形成されていることが、低Rf値における新たなピークに特徴的な狭い形状により裏付けられる。
【0146】
酸化的なリフォールディングが生じると、ESI-MSスペクトルもまた著明な変化を被る。何よりもまず、全体の質量が、8質量単位低下する(4つのジスルフィド結合が形成されることにより、合計8個のHが放出される)。さらに、極めて特徴的な、高m/z値へのMSシグナルのシフトも見られる。例えば、red-humSOST57〜144のMSスペクトルは、M8+〜M12+の荷電分子種に明瞭なシグナルをもたらすが、これらのシグナルは消失し、はるかに低強度の、M6+およびM7+におけるはるかに弱いシグナルが残存する(図18Dを参照されたい)。また、このシフトは、タンパク質が、それらの酸化天然構造へとフォールドするときに特徴的であり、red-humSOST57〜144のリフォールディングが成功したことを示す。タンパク質またはタンパク質断片は、より縮合した構造を示すが、これはもはやそれほど多くの電荷を取り込むことができない、というのがその理由である。これに対して、還元型タンパク質による可撓性の伸長構造は、はるかに多くの電荷を保有しうる。
【0147】
oxid-humSOST57〜144が、天然のシスチンノットフォールドを示すことをさらに裏付けるため、本発明者らは、oxid-humSOST57〜144を用いてファージディスプレイライブラリーから選択した3つのmAbシリーズについての結合データを示す。3つの抗oxid-humSOST57〜144抗体すべてが、
・ ELISA法において、oxid-humSOST57〜144に強力に結合すること;
・ ELISA法において、組換え全長humSOST/スクレロスチンに強力に結合すること;
・ ELISA法において、アミノ酸-humSOST57〜144にはまったく結合しないこと;
・ ELISA法において、他の3つの非類縁タンパク質にはまったく結合しないこと
が示された。
【0148】
まとめると、これらのデータは、全長humSOST/スクレロスチンの代わりにoxid-humSOST57〜144を用いて、ファージディスプレイライブラリー(PDL)から抗体を選択することができ、これにより、非類縁タンパク質と比べた、全長humSOST/スクレロスチンに対する完全な選択性および特異性が示され、したがって、oxid-humSOST57〜144は、抗体を作製および選択する目的で「容易に利用可能な」全長humSOST/スクレロスチンのタンパク質模倣体として用いうることを示す。
【0149】
(実施例1I)
humTGFB15〜111/Δ49〜77-humVEGF62〜67 (キメラhumTGFB2-humVEGFtrunc)の合成
この実施例で、本発明者らは、oxid-humTGFB15〜111の切断型タンパク質模倣体の合成において、ベータ2ループ(28アミノ酸長;一般的配列ではX3)が、humVEGFベータ2ループ(アミノ酸62〜67)で置換されたことを裏付ける。このTGFB15〜111/Δ49〜77-humVEGF62〜67の合成および(シスチンノットの)酸化的フォールディングが成功したことは、主に、異なるシスチンノットタンパク質一般の間におけるベータ2ループ配列の置換により、完全に相同なtruncペプチドについて観察される場合(他の実施例を参照されたい)と同様の、完全なシスチンノットのフォールドを形成する能力を保持するキメラペプチドがもたらされることを裏付ける例として援用される。
【0150】
humTGFB15〜111/Δ49〜77-humVEGF62〜67のペプチド配列:
アセチル-C1ALRPLYIDFKRDLGWKWIHEPKGYNANFC2AGAC3NDEGLE C4VSQDLEPLTILYYIGKTPKIEQLSNMIVKSC5KC6-アミド
X0=アセチル
X1=ALRPLYIDFKRDLGWKWIHEPKGYNANF (天然のCからAへの突然変異)
X2=AGA
X3=NDEGLE (humVEGF-Aのベータ2ループの配列;アミノ酸62〜67)
X4=VSQDLEPLTILYYIGKTPKIEQLSNMIVKS
X5=K
X6=アミド
【0151】
固相におけるred-humTGFB215〜111/Δ49〜77-humVEGF62〜67の合成: humVEGF26〜104について説明した標準的な手順(実施例1Aを参照されたい)に従い、Rink-アミド樹脂(0.1ミリモル/gまで投入する)上における通常の固相合成により、red-humTGFB215〜111/Δ49〜77-humVEGF62〜67を合成した。その後の酸化的リフォールディングも、humVEGF26〜104について説明したのとまったく同じように実施した。red-humTGFB215〜111/Δ49〜77-humVEGF62〜67およびoxid-humTGFB215〜111/Δ49〜77-humVEGF62〜67のいずれも、調製的高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により精製した。いずれのペプチドも、解析的HPLCおよびエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)により特徴づけした。
【0152】
酸化的にリフォールディングが生じると、特徴的な低Rf値へのシフト(46.8% ACNから42.0% ACNへ;下記の表を参照されたい) (他の実施例を参照されたい)により、red-humTGFB215〜111/Δ49〜77-humVEGF62〜67のリフォールディングの成功が裏付けられた。完全なシスチンノット構造が実際に形成されていることが、低Rf値における新たなピークに特徴的な狭い形状により裏付けられる。酸化的なリフォールディングが生じると、ESI-MSスペクトルもまた著明な変化を被る。何よりもまず、全体の質量が、6質量単位低下する(3つのジスルフィド結合が形成されることにより、合計6個のHが放出される)。さらに、極めて特徴的な、高m/z値へのMSシグナルのシフトも見られる。例えば、red-humTGFB15〜111/Δ49〜77-humVEGF62〜67のMSスペクトルは、M6+〜M11+の荷電分子種に明瞭シグナルをもたらすが、これらのシグナルは完全に消失し、はるかに低強度の、M5+におけるはるかに弱いシグナルが残存する(図20を参照されたい)。また、このシフトは、タンパク質が、それらの酸化天然構造へとフォールドするときに特徴的であり、humTGFB215〜111/Δ49〜77-humVEGF62〜67のリフォールディングが成功したことを示す。タンパク質またはタンパク質断片は、より縮合した構造を示すが、これはもはやそれほど多くの電荷を取り込むことができない、というのがその理由である。これに対して、red-humTGFB215〜111/Δ49〜77-humVEGF62〜67による可撓性の伸長構造は、はるかに多くの電荷を保有しうる。
【0153】
【表8】
【0154】
免疫化を介して抗TGF-B2抗体を生成させるのにoxid-humTGFB215〜111/Δ49〜77-humVEGF62〜67を用いうることを裏付けるため、本発明者らは、2匹のラットにおいて免疫化実験を実施した。各動物に、2×450マイクログラムおよび2×130マイクログラムのoxid-humTGFB215〜111/Δ49〜77-humVEGF62〜67による接種を4回にわたり(0、2、4、および7.5週間後)施した。ワクチン接種後の週数(wpv)9週間における抗血清を解析することにより、ELISA法において、免疫前血清の場合(力価≦2.1)と比較して強力な、全長TGF-B2に対する結合(力価3.8および4.1)が示され、それによりTGF-B2に特異的な抗体が免疫化時に生成されたことが示された。さらに、血清中における大半の抗体が、oxid-humTGFB215〜111/Δ49〜77-humVEGF62〜67内におけるVEGF部分(humVEGF62〜67)ではなくて、TGFB2部分を指向することも確認された。これは、humVEGF62〜67配列が、はるかに長いhumTGFB2のb2ループ(28アミノ酸)の良好な置換配列であるが、humTGF-B2特異的抗体が作製されることも、red-humTGFB215〜111/Δ49〜77-humVEGF62〜67がoxid-humTGFB215〜111/Δ49〜77-humVEGF62〜67へと酸化的にリフォールドされることも撹乱しないことを示す。
【0155】
これらのデータは、oxid-humTGFB215〜111/Δ49〜77-humVEGF62〜67を、TGF-B2の置換配列として用いて、天然タンパク質であるhumTGF-B2と完全に交差反応性である抗humTGFB2抗体を誘発しうることを裏付ける。
[参考文献]
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質化学、生物学、および医学の分野に関する。より具体的に述べると、本発明は、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーのタンパク質模倣体の設計および調製に関する。さらに、本発明は、薬物または予防剤としてのこれらのタンパク質模倣体の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
三次元のシスチンノット構造は、多くの細胞外分子内において見出され、多岐にわたる種間において保存されている(文献4)。それらのジスルフィド結合によりノットを形成する6つのシステインの配置により、シスチンノット構造が形成される。シスチンノット構造に典型的なコンセンサスモチーフは、X0-C1-X1-C2-X2-C3-X3-C4-X4-C5-X5-C6-X6であり、ここで、システイン2、3、5および6は、システイン2とシステイン5のジスルフィド結合、およびシステイン3とシステイン6のジスルフィド結合を介して、X2およびX3を包含するリングを形成する。システイン1とシステイン4の間の第3のジスルフィド結合がリングを貫通し、これによりノットが形成される(文献2、3)。図11は、シスチンノット構造を含むタンパク質の概略表示を表す。このシスチンノットフォールディングにより、2つの変形したベータヘアピン(ベータ1およびベータ3)ループがノットの片側から突出し、1つの(ベータ2)ヘアピンループがノットの他の側から突出する、3つの異なるドメインが形成される。ベータ1ヘアピンループは、C1とC2の間の一続きのアミノ酸により形成され、上述のコンセンサスモチーフでは「X1」と称し;ベータ2 (「X3」)ヘアピンループおよびベータ3 (「X4」)ヘアピンループは、それぞれ、C3とC4の間の一続きのアミノ酸、ならびにC4とC5の間の一続きのアミノ酸により形成される。
【0003】
増殖因子は、in vivoおよびin vitroのいずれにおいても、細胞増殖を誘導する特性を共有する、大きなポリペプチド群を表す。増殖因子間の配列類似性のレベルは低いが、それらの構造的類似性および機能的類似性に基づくサブファミリーへと分類することができる。例えば、以下の増殖因子サブファミリー:糖タンパク質ホルモンベータ(GLHB)サブファミリー、血小板由来増殖因子(PDGF)サブファミリー、形質転換増殖因子ベータ(TGFベータ)サブファミリー、神経増殖因子(NGF)サブファミリー、糖タンパク質ホルモンアルファ(GLHA)サブファミリー、CTCKサブファミリー、ノギン様タンパク質サブファミリー、コアグリンサブファミリー、ムチン様タンパク質サブファミリー、ムチン様BMPアンタゴニストサブファミリー、ムチン様ヘモレクチンサブファミリー、スリット様タンパク質サブファミリー、およびジャッグド様タンパク質サブファミリーはすべて、上記で説明したシスチンノット立体構造を示す。しかし、異なるサブファミリーは、例えば、X1、X2、X3、X4、および/またはX5でコンセンサス長が異なる。さらに、異なるサブファミリーは、機能および標的の器官がまったく異なる。例えば、GLHAサブファミリーおよびGLHBサブファミリーが、生殖に関与する生理学的過程にとって重要であるのに対し、NGFサブファミリーのメンバーは、主に神経細胞に対してそれらの機能を及ぼし、PDGFサブファミリーのメンバーは、主に内皮細胞に対してそれらの機能を及ぼす。
【0004】
シスチンノットタンパク質内では、シスチンノット形成に関与するシステインの隣に、他のシステインが存在する場合があり、これらは通常、シスチンノット内、突出するドメイン内、または例えば、二量体化時の2つのタンパク質間において、さらなるジスルフィド結合を創出するのに用いられる。
【0005】
健康状態および疾患におけるシスチンノット増殖因子については広範な研究がなされており、治療例は、例えば、癌の治療における血管内皮細胞増殖因子(VEGF; PDGFサブファミリーのサブサブファミリー)特異的抗体の使用であり、Genentech社により開発されたモノクローナル抗体であるベバシズマブ(Avastin (商標))が、結腸直腸癌の治療について、2004年に、米国食品医薬品局(FDA)により承認されており;男性用の避妊剤として、濾胞刺激ホルモン(FSH; GLHA/Bサブファミリーのメンバー)によるワクチンが開発されている。治療用のVEGF特異的モノクローナル抗体であるベバシズマブの主要な欠点は、生産コストが高く、治療に必要な量が比較的多く、場合によっては腫瘍内透過性が低く、副作用を示すことである。さらに、ベバシズマブは、数カ月間に多くの回数にわたり投与しなければならず、患者に対する負担が大きい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「Remington's Pharmaceutical Sciences」、Mace Publishing Company、Philadelphia PA、第17版、1985年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーのタンパク質模倣体を提供することであり、該タンパク質模倣体は、前記メンバーに対して免疫反応を誘導することが可能であることが好ましい。本発明の別の目的は、シスチンノットタンパク質関連状態を治療および/または予防する、代替的な手段および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、免疫原性組成物および/または治療組成物において使用されることが好ましい、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーのタンパク質模倣体を提供する。
【0009】
上記で述べた通り、シスチンノットタンパク質は、一続きの少なくとも2アミノ酸と、前記一続きのアミノ酸を接続する2つのジスルフィド結合とから構成されるリングを含む、複雑な立体構造を有する。第3のジスルフィド結合がリングを貫通することにより、ノットが形成される。シスチンノット増殖因子スーパーファミリーのすべてのメンバーは、第1のシステインと第2のシステインの間、および第4のシステインと第5のシステインの間にある一続きのアミノ酸は、一方向に突出するベータヘアピンループを形成するが、第3のシステインと第4のシステインの間に位置する別の一続きのアミノ酸は、その分子の向かい側の部位から突出する(図11)。第一の実施形態では、本発明は、モチーフX0-C1-X1-C2-X2-C3-X3-C4-X4-C5-X5-C6-X6を有する、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーのタンパク質模倣体(式中、C1〜C6は、シスチンノット構造を形成するシステイン残基であり、C1がC4に連結され、C2がC5に連結され、C3がC6に連結され; X0およびX6は、互いに独立に、0〜10アミノ酸、好ましくは、0〜5アミノ酸、より好ましくは0〜3アミノ酸、より好ましくは0〜2アミノ酸、なおより好ましくは0アミノ酸または1アミノ酸、最も好ましくは0アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X2は、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーのC2とC3の間に位置するアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する、2〜24アミノ酸残基の長さのアミノ酸配列を表し; X5は、1アミノ酸残基の長さのアミノ酸配列を表し; X1は、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーのC1とC2の間に位置するアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する、15〜50アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X3は、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーのC3とC4の間に位置するアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する、3〜36アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X4は、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーのC4とC5の間に位置するアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する、15〜50アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表す)を提供する。好ましくは、C2、C3、C5およびC6は、C2とC5の間、およびC3とC6の間の結合によりリングを形成し、C1とC4の間の第3の結合が該リングを貫通し、これによりシスチンノットが形成される。好ましい実施形態では、アミノ酸の総数が130以下であり、好ましくは110以下であり、より好ましくは100以下であり、なおより好ましくは90以下であり、最も好ましくは80以下である、本発明によるペプチド模倣体が提供される。
【0010】
好ましい実施形態では、X1、X2、X3、およびX4のそれぞれが、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーの同じメンバーのアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を表す、本発明によるタンパク質模倣体が提供される。したがって、これは、本発明が、モチーフX0-C1-X1-C2-X2-C3-X3-C4-X4-C5-X5-C6-X6を有する、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーのタンパク質模倣体(式中、C1〜C6は、シスチンノット構造を形成するシステイン残基であり、C1がC4に連結され、C2がC5に連結され、C3がC6に連結され; X0およびX6は、互いに独立に、0〜10アミノ酸、好ましくは、0〜5アミノ酸、より好ましくは0〜3アミノ酸、より好ましくは0〜2アミノ酸、より好ましくは0アミノ酸または1アミノ酸、最も好ましくは0アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X2は、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーのC2とC3の間に位置するアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する、2〜24アミノ酸残基の長さのアミノ酸配列を表し; X5は、1アミノ酸残基の長さのアミノ酸配列を表し; X1は、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーのC1とC2の間に位置するアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する、15〜50アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X3は、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーのC3とC4の間に位置するアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する、3〜36アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X4は、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーのC4とC5の間に位置するアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する、15〜50アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表す)を提供することを意味する。C2、C3、C5およびC6は、C2とC5の間、およびC3とC6の間の結合によりリングを形成し、C1とC4の間の第3の結合が該リングを貫通し、これによりシスチンノットが形成される。好ましい実施形態では、アミノ酸の総数が130以下であり、好ましくは110以下であり、より好ましくは100以下であり、なおより好ましくは90以下であり、最も好ましくは80以下である、本発明によるペプチド模倣体が提供される。
【0011】
本明細書では、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーを、上記で説明した典型的な三次元シスチンノット構造を形成する任意のタンパク質、したがって、少なくとも6つのシステインが、シスチンノットと、該ノットから突出する3つのヘアピンループを形成する任意のタンパク質であって、システイン2、3、5および6が、システイン2とシステイン5の間の結合のほか、システイン3とシステイン6の間の結合によりリングを形成し、システイン1とシステイン4の間の第3の結合が該リングを貫通し、これにより該ノットが形成される任意のタンパク質として定義する。当業者は、例えば、パターン検索と、対合アライメントとを組み合わせることにより、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバー内に存在する構造モチーフを同定することができる。当業者は、例えば、図10に示される非限定的な例により、例えば、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーに属する、既知のシスチンノットタンパク質を手がかりとしてその検索を行うことができる。
【0012】
本発明による、いわゆる「切断型シスチンノットタンパク質」が、シスチンノットタンパク質関連障害を治療または予防するのにとりわけ有用であるという見識を、本発明者らは提示する。例えば、本発明による切断型VEGFが示すホルモン活性は無視できるものであるのに対し、その免疫学的特性は優れたものであることを、本発明者らは示した。本発明による切断型VEGFのホルモン活性が無視できるものであることの利点の1つは、例えば、完全タンパク質のホルモン性副作用なしに、相当量の切断型VEGFを動物に投与しうることである。その天然タンパク質またはそのより低分子の断片と比較した切断型VEGFの別の利点は、切断型VEGFが、それ自体として免疫原性であることである。これは、切断型VEGFが、より低分子の断片との対比では、キャリアタンパク質に連結されることなしに免疫原性であるのに十分な程度に高分子であり、かつ、天然タンパク質との対比では、免疫系により非自己とみなされるのに十分な程度に「非天然」であるという事実による。非自己とは、免疫系が、タンパク質または該タンパク質の部分を自己タンパク質とはみなさず、したがって、前記タンパク質に対する免疫反応を引き起こすことを意味する。理論に拘束されずに述べると、本発明による切断型タンパク質が、「非自己」としてみなされる事実は、例えば、「潜在性ペプチド(cryptic peptides)」の概念により説明される。潜在性ペプチドとは、(自己)タンパク質の部分ではあるが、通常の条件下では免疫系に対して提示されないペプチドとして定義される。免疫系は、これらの潜在性ペプチドを「無視」する。抗原提示細胞により取り込まれたタンパク質は、プロセシングされる、すなわち、低分子のペプチド断片に切断される。通常の条件下において、所与のタンパク質のこれらの低分子ペプチド断片は、各プロセシング後において、多少とも同一である。これらは、いわゆる優性ペプチドである。所与のタンパク質がプロセシングされるたびに、例えば、免疫系へと効果的に提示されるのに十分な量で、ペプチドx、y、およびzが生成される。自己タンパク質のペプチドx、y、およびzに恒常的に曝露されている免疫系は、自己タンパク質のこれらの優性ペプチドを無視する一方で、場合によって存在する非自己タンパク質の優性ペプチドには反応する。しかし、自己タンパク質が、例えば、本発明による切断型である場合、抗原提示細胞内でのプロセシング後におけるペプチド断片は、完全天然タンパク質によるペプチド断片とは異なる。結果として、通常の形では提示されないペプチドである、いわゆる「潜在性ペプチド」が、十分な量で生成され、免疫系へと提示される。例えば、優性自己ペプチドであるx、y、およびzではなく、ペプチドx、z、およびwが生成され、免疫系へと提示される。免疫系は、従来、潜在性ペプチドwには曝露されていないので、ペプチドwを非自己とみなし、免疫反応を誘発する。理論に拘束されることなしに述べると、この現象により、天然タンパク質と比較して、本発明による切断型タンパク質の免疫原性が増強されることを説明することができる。
【0013】
本発明者らは、シスチンノット構造が、タンパク質の免疫学的特性にとって重要であることもさらに示した。天然タンパク質を免疫学的に模倣する場合に、これはとりわけあてはまる。本発明者らは、例えば、システインが保護され、シスチンノットの形成を阻害された切断型VEGFタンパク質が、治療用VEGFモノクローナル抗体であるベバシズマブにより認識されないのに対し、シスチンノットが存在する切断型VEGFは、前記抗体により認識されることを示した。VEGFについて上記で述べたことが、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーの他のメンバーにも同様にあてはまることは明らかである。例えば、FSHのタンパク質模倣体を用いる場合は、生物学的活性またはホルモン活性が無視できるものであることが好ましい一方で、該タンパク質模倣体は、抗体、好ましくは、天然タンパク質と交差反応することが可能な中和抗体を誘導しうることが好ましい。同じことは、GLHA/GLHBサブファミリーの他のメンバー、または他のサブファミリーメンバーにもあてはまる。
【0014】
本明細書では、「切断型シスチンノットタンパク質」を、天然アミノ酸配列のうちの少なくとも一部、好ましくは、シスチンノット配列のN末端および/またはC末端が欠失しているシスチンノットタンパク質として定義する。C1のN末端側のアミノ酸配列と、C6のC末端側のアミノ酸配列とが、完全に欠失していることがより好ましい。したがって、好ましい実施形態では、本発明は、モチーフC1-X1-C2-X2-C3-X3-C4-X4-C5-X5-C6を有する、本発明によるタンパク質模倣体を提供する。C2、C3、C5およびC6は、C2とC5の間、およびC3とC6の間の結合によりリングを形成し、C1とC4の間の第3の結合が該リングを貫通し、これによりシスチンノットが形成されることが好ましい。より好ましい実施形態では、生物学的活性、例えば、ホルモン性副作用が著しく低下するように、アミノ酸の総数が130以下であり、好ましくは110以下であり、より好ましくは100以下であり、なおより好ましくは90以下であり、最も好ましくは80以下である、本発明によるペプチド模倣体が提供される。
【0015】
好ましい実施形態では、X1が、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーのアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を表し、X2、X3、および/またはX4が、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーの少なくとも1つの他のメンバーのアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を表す、本発明によるタンパク質模倣体が提供される。該タンパク質模倣体は、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーの少なくとも2つの異なるメンバーの配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含有するので、これを、キメラタンパク質模倣体と称する。このような本発明によるキメラタンパク質模倣体は、そのうちの少なくとも1つが、他のループとは別のシスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーに由来するループを表すループを含むことが好ましい。好ましい実施形態では、前記ループのそれぞれが、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーの別のメンバーを表す。別の好ましい実施形態では、本発明は、モチーフC1-X1-C2-X2-C3-X3-C4-X4-C5-X5-C6を含み、前記X1、X2、X3、X4、およびX5のそれぞれが、図10の配列1〜145のうちのいずれかから選択される配列の対応する部分と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を表す、本発明によるタンパク質模倣体を提供する。最も好ましい実施形態では、前記X1、X2、X3、X4、およびX5のそれぞれは、図10の配列1〜145から選択される配列の対応する部分と同一であるアミノ酸配列を表す。
【0016】
シスチンノット増殖因子スーパーファミリーの1つのメンバーの少なくとも1つのループを、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーの別のメンバーのループにより置換し、後者のループが、置換されるループより低分子である、すなわち、含むアミノ酸がより少ないことは、とりわけ有用である。より低分子のループによる置換の1つの利点は、そのタンパク質模倣体の作製がより容易となるということである。実施例では、本発明は、例えば、29アミノ酸からなる形質転換増殖因子B2 (TGFB2)のb2ループ(「X3」により表される)を、6アミノ酸からなるVEGFのb2ループにより置換することにより、全長TGFB2タンパク質と完全に交差反応する抗体を誘導するのに用いられて奏効するタンパク質模倣体が提供されることを示す。したがって、好ましい実施形態では、本発明は、X3が、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーのアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を表し、X1、X2、および/またはX4が、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーの少なくとも1つの他のメンバーのアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を表し、好ましくは、前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーの少なくとも1つの他のメンバーが、TGFベータサブファミリーのメンバーであり、より好ましくはTGFB2である、本発明によるタンパク質模倣体を提供する。X1、X2、およびX4のそれぞれが、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーの同じメンバーの対応する部分のアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を表すのに対し、X3は、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーの別のメンバーの対応する部分のアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を表すことが好ましい。X1、X2、およびX4は、TGFベータサブ
ファミリーメンバーのアミノ酸配列、より好ましくはTGFB2のアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を表すことが好ましい。より好ましい実施形態では、キメラタンパク質模倣体は、アミノ酸配列: C1ALRPLYIDFKRDLGWKWIHEPKGYNANFC2AGAC3NDEGLEC4VSQDLEPLTILYYIGKTPKIEQLSNMIVKSC5KC6 (TGFB215〜111/Δ49〜77-VEGF62〜67)からなり、場合によって、最長で5アミノ酸の長さの隣接配列を含む。好ましい実施形態では、隣接配列は、最長で2アミノ酸の長さであり、好ましくは最長で1アミノ酸の長さである。最も好ましい実施形態では、タンパク質模倣体は隣接配列を含まない。
【0017】
TGFB2は、TGFベータサブファミリーのメンバーである。TGFB2は、多くの細胞機能を果たし、胚の発生において重要な役割を果たす、分泌タンパク質(サイトカイン)である。TGFB2はまた、神経膠芽腫由来T細胞抑制因子、G-TSF、BSC-1細胞増殖阻害剤、ポリエルジン、およびセテルミンとしても知られている。TGFB2は、インターロイキン依存性T細胞腫瘍の影響を抑制することが知られている。
【0018】
別の好ましい実施形態では、本発明は、X0がアセチルを表し、かつ/またはX6がアミドを表す、本発明によるタンパク質模倣体を提供する。より好ましい実施形態では、X0はアセチルを表し、X6はアミドを表す。N末端のアセチル化、および/またはC末端のアミド化は、複数の利点を有し、例えば、アセチル化したペプチド端およびアミド化したペプチド端は帯電せず、このため、天然のペプチドを模倣し、アミノペプチダーゼによる消化に対する安定性が増強され、シンセターゼ活性に対してペプチド端が保護される。
【0019】
別の好ましい実施形態では、本発明は、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーのタンパク質模倣体であって、C1のN末端側の0〜10位、好ましくは0〜5位、より好ましくは0〜3位、なおより好ましくは0〜2位、最も好ましくは0位または1位において、かつ、C6のC末端側の0〜10位、好ましくは0〜5位、より好ましくは0〜3位、なおより好ましくは0〜2位、より好ましくは0位または1位、最も好ましくは0位において切断されることを除き、前記メンバーと同一の配列を有するタンパク質模倣体を提供する。
【0020】
所与のメンバーの天然配列の代わりに、サブファミリーのコンセンサス配列を用いて、本発明で有用なタンパク質模倣体を設計することができる。
【0021】
シスチンノット増殖因子スーパーファミリーについては、複数のコンセンサス配列が説明されている(文献1,3)。例えば、ノギン様シスチンノットタンパク質、コアグリン様シスチンノットタンパク質、およびNGF様シスチンノットタンパク質以外のすべてのタンパク質では、X2は、X2a-G-X2b (式中、X2aは任意のアミノ酸であるか、または存在せず、Gはグリシンであり、X2bは任意のアミノ酸である)として定義されうる2つまたは3つのアミノ酸からなり。したがって、好ましい実施形態では、X2はアミノ酸配列X2a-G-X2b (式中、X2aは任意のアミノ酸であるか、または存在せず、Gはグリシンであり、X2bは任意のアミノ酸である)を有する、本発明によるタンパク質模倣体が提供される。例えば、TGFベータ、GLHB、NGF、PDGF、GLHA、およびCTCKについては、他のコンセンサス配列が知られている。各サブファミリーについて知られているコンセンサス配列を、図10に示す。別の好ましい実施形態では、以下のコンセンサス配列:
- [GSRE]C3[KRL]G[LIVT][DE]XXX[YW]XSXC4;
- P[PSR]CVXXXRC2[GSTA]GCC3;
- [LIVM]XXPXX[FY]XXXXC2XGXC3;
- C2[STAGM]G[HFYL]C3X[ST];
- [PA]VAXXC5XC6XXCXXXX[STDAI][DEY]C;
- C2XGCC3[FY]S[RQS]A[FY]PTP;または
- CC4(X)13C(X)2[GN](X)12C5XC6(X)2,4C
(式中、
C2〜C6は、シスチンノット構造の一部であるシステイン残基であり;
Xは、任意のアミノ酸を意味し;
[GSRE]は、GまたはSまたはRまたはEを意味し; [KRL]は、KまたはRまたはLを意味し; [LIVT]は、LまたはIまたはVまたはTを意味し; [DE]は、DまたはEを意味し; [YW]は、YまたはWを意味し;
[PSR]は、PまたはSまたはRを意味し; [GSTA]は、GまたはSまたはTまたはAを意味し;
[LIVM]は、LまたはIまたはVまたはMを意味し; [FY]は、FまたはYを意味し;
[STAGM]は、SまたはTまたはAまたはGまたはMを意味し; [HFYL]は、HまたはFまたはYまたはLを意味し; [ST]は、SまたはTを意味し; [PA]は、PまたはAを意味し; [STDAI]は、SまたはTまたはDまたはAまたはIを意味し;
[DEY]は、DまたはEまたはYを意味し; [GN]は、GまたはNを意味し; [RQS]は、RまたはQまたはSを意味し;
(X)13は、13アミノ酸の配列を意味し; (X)2は、2アミノ酸の配列を意味し; (X)12は、12アミノ酸の配列を意味し; (X)2,4は、2、3、または4アミノ酸の配列を意味する)
のうちの少なくとも1つを含む、本発明によるタンパク質模倣体が提供される。
【0022】
天然タンパク質と交差反応することが可能な抗体および/またはT細胞を生成させるためには、前記シスチンノットタンパク質の天然アミノ酸配列に対して示す配列同一性%がかなり高いタンパク質模倣体を用いることが好ましい。配列同一性%がかなり高いとは、前記シスチンノットタンパク質の天然アミノ酸配列に対する、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を意味する。タンパク質模倣体をワクチンとして用いて、天然シスチンノットタンパク質と交差反応性である免疫反応を誘導する場合だけでなく、タンパク質模倣体を用いて、薬物として用いられるT細胞および/または抗体を誘導する場合にも、これはとりわけあてはまる。タンパク質模倣体に対するT細胞および/または抗体は、それらが、天然シスチンノットタンパク質と交差反応することが可能な場合にとりわけ有用である。しかし、別の実施形態では、天然タンパク質に対する抗体を生成させないことがとりわけ有用である場合もあり、例えば、これは、タンパク質模倣体を、シスチンノットタンパク質のアンタゴニストとして用いる場合である。このような場合には、天然タンパク質との配列同一性がより低い、前記シスチンノットタンパク質の天然アミノ酸配列との配列同一性が、好ましくは70%〜90%、より好ましくは70%〜80%、最も好ましくは70%〜75%である、本発明によるタンパク質模倣体を設計する。アンタゴニスト特性を示すこのようなタンパク質模倣体を個体に投与しても、前記個体において、T細胞反応および/または抗体反応が誘導されないことが好ましい。アンタゴニストとして作用するために、前記タンパク質模倣体は、タンパク質機能を受容体に伝搬しないことが好ましい。
【0023】
本明細書では、「配列同一性%」を、2つの配列を整列し、必要ならば、ギャップを導入して、最大の同一性百分率を達成した後で、基準配列中の残基と同一である、候補アミノ酸配列中の残基の百分率として定義する。当技術分野では、アライメントのための方法およびコンピュータプログラムがよく知られている。候補配列が、この定義内に収まるかどうかを判定する目的で用いるかまたは適用しうるコンピュータプログラムの1つは、Genentech社により作製され、取扱説明書と共に、1991年12月10日、United States Copyright Office, Washington, D. C. 20559に出願された、「Align 2」プログラムである。
【0024】
好ましい実施形態では、前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーの対応する天然アミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、最も好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を示す、本発明によるタンパク質模倣体が提供される。別の好ましい実施形態では、本発明は、前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーが、GLHBサブファミリー、PDGFサブファミリー、TGFベータサブファミリー、NGFサブファミリー、GLHAサブファミリー、CTCKサブファミリー、ノギン様タンパク質サブファミリー、ムチン様タンパク質サブファミリー、ムチン様BMPアンタゴニストサブファミリー、ムチン様ヘモレクチンサブファミリー、スリット様タンパク質サブファミリー、およびジャッグド様タンパク質サブファミリーからなる群から選択されるメンバーである、本発明によるタンパク質模倣体を提供する。
【0025】
別の好ましい実施形態では、前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーの対応する天然アミノ酸配列と、好ましくは70%〜90%、より好ましくは70%〜80%、最も好ましくは70%〜75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を示す、本発明によるタンパク質模倣体が提供される。別の好ましい実施形態では、本発明は、前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーが、GLHBサブファミリー、PDGFサブファミリー、TGFベータサブファミリー、NGFサブファミリー、GLHAサブファミリー、CTCKサブファミリー、ノギン様タンパク質サブファミリー、ムチン様タンパク質サブファミリー、ムチン様BMPアンタゴニストサブファミリー、ムチン様ヘモレクチンサブファミリー、スリット様タンパク質サブファミリー、およびジャッグド様タンパク質サブファミリーからなる群から選択されるメンバーである、本発明によるタンパク質模倣体を提供する。
【0026】
前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーの対応する天然アミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、最も好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有する、本発明によるタンパク質模倣体であって、X1、X3、またはX4により表される前記アミノ酸配列のうちの少なくとも1つが、少なくとも部分的に欠失および/または改変されているタンパク質模倣体を設計することも有用である。これは、例えば、前記アミノ酸配列が、免疫優性ペプチドを含む場合、または前記アミノ酸配列が、機能を示さない場合、例えば、前記配列が、前記メンバーの免疫原性決定基の一部ではない場合にとりわけ有用である。このようなアミノ酸配列を欠失させると、例えば、作製過程を著しく容易にすることもでき、作製費用を著しく軽減することもでき、本発明によるタンパク質模倣体の可溶性を著しく改善することもできる。したがって、好ましい実施形態では、本発明は、X1、X3、またはX4により表される前記アミノ酸配列のうちの少なくとも1つが、少なくとも部分的に欠失および/または改変されている、本発明によるタンパク質模倣体を提供する。
【0027】
例えば、PDGFは、胚の発生、細胞の増殖、細胞の移動、および血管新生において重要な役割を果たしている。PDGFはまた、アテローム性動脈硬化、線維症、および悪性疾患など、複数の疾患にも連関している。とりわけ、PDGFサブファミリーのサブサブファミリーであるVEGFファミリーは、腫瘍の増殖および転移と関連する血管新生と連関している。したがって、好ましい実施形態では、本発明は、前記メンバーがPDGFサブファミリーメンバーであり、X2が3アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X5が1アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X1が29〜32アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X3が、6〜12アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X4が32〜41アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表す、本発明によるタンパク質模倣体を提供する。
【0028】
より好ましい実施形態では、前記メンバーがヒト血管内皮細胞増殖因子(hVEGF)であり、X0がアミノ酸配列KFMDVYQRSYを含み; X1がアミノ酸配列HPIETLVDIFQEYDPEIEYIFKPSAVPLMRを含み; X2がアミノ酸配列GGAを含み; X3がアミノ酸配列NDEGLEを含み; X4がアミノ酸配列VPTEESNITMQIMRIKPHQGQHIGEMSFLQHNKを含み; X5がアミノ酸配列Eを含み; X6がアミノ酸配列RPKKDRARQEを含む、本発明によるタンパク質模倣体が提供される。別のより好ましい実施形態では、hVEGFのX0〜X6と少なくとも70%の配列同一性を有するタンパク質模倣体であって、X0〜X6が、図10に示す各hVEGFアミノ酸配列である、タンパク質模倣体が提供される。前記タンパク質模倣体は、hVEGFのX0〜X6と、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有することが好ましい。さらに別のより好ましい実施形態では、前記メンバーがヒト血管内皮細胞増殖因子(hVEGF)であり、前記タンパク質模倣体が、アミノ酸配列C1HPIETLVDIFQEYDPEIEYIFKPSAVPLMRC2GGAC3NDEGLEC4VPTEESNITMQIMRIKPHQGQHIGEMSFLQHNKC5EC6からなり、場合によって、最長で5アミノ酸の長さの隣接配列を含む、本発明によるタンパク質模倣体が提供される。好ましい実施形態では、隣接配列は、最長で2アミノ酸の長さであり、好ましくは最長で1アミノ酸の長さである。最も好ましい実施形態では、タンパク質模倣体は隣接配列を含まない。
【0029】
胎盤増殖因子(PLGF)は、PDGFサブファミリー(サブファミリー4)のメンバーであり、特に、胚形成時の血管新生および血管形成において重要な分子である。妊娠時におけるPLGFの主要な供給源は、胎盤の栄養芽細胞である。PLGFはまた、絨毛状の栄養芽細胞を含め、他の多くの組織においても発現する。ヒトアテローム性動脈硬化病変内におけるPLGF発現は、プラークにおける炎症および血管新生性増殖と関連する。
【0030】
子癇前症を有する女性においては、PLGFおよびsFlt-1 (また、可溶性VEGF受容体1としても知られる、可溶性fms様チロシンキナーゼ1)の血清濃度が変化する。研究の示すところでは、初期発症および後期発症のいずれの子癇前症においても、これを示す女性の母体血清sFlt-1レベルは高く、母体血清PLGFレベルは低い。加えて、子癇前症を有する女性においては、妊娠で合併症を示さない女性と比較して、胎盤sFlt-1レベルが著明に上昇し、PLGFレベルが著明に低下する。これは、sFlt-1およびPLGFの胎盤内濃度が、母体の血清変化を反映することを示唆する。これは、胎盤が、妊娠時におけるsFlt-1およびPLGFの主要な供給源であるという見方と符合する。
【0031】
さらに別の好ましい実施形態では、前記メンバーがヒト胎盤増殖因子(hPLGF)であり、X0がアミノ酸配列PFQEVWGRSYを含み; X1がアミノ酸配列RALERLVDVVSEYPSEVEHMFSPSAVSLLRを含み; X2がアミノ酸配列TGAを含み; X3がアミノ酸配列GDENLHを含み; X4がアミノ酸配列VPVETANVTMQLLKIRSGDRPSYVELTFSQHVRを含み; X5がアミノ酸配列Eを含み; X6がアミノ酸配列RHSPGRQSPDを含む、本発明によるタンパク質模倣体が提供される。別のより好ましい実施形態では、PLGFのX0〜X6と少なくとも70%の配列同一性を有するタンパク質模倣体であって、X0〜X6が、図10に示す各PLGFアミノ酸配列である、タンパク質模倣体が提供される。前記タンパク質模倣体は、PLGFのX0〜X6と、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有することが好ましい。さらに別のより好ましい実施形態では、前記メンバーがヒト胎盤増殖因子(hPLGF)であり、前記タンパク質模倣体がアミノ酸配列C1RALERLVDVVSEYPSEVEHMFSPSAVSLLRC2TGAC3GDENLHC4VPVETANVTMQLLKIRSGDRPSYVELTFSQHVRC5EC6 (hPLGF34〜112)からなり、場合によって、最長で5アミノ酸の長さの隣接配列を含む、本発明によるタンパク質模倣体が提供される。好ましい実施形態では、隣接配列は、最長で2アミノ酸の長さであり、好ましくは最長で1アミノ酸の長さである。最も好ましい実施形態では、タンパク質模倣体は隣接配列を含まない。
【0032】
さらに別の好ましい実施形態では、前記メンバーがヒト血小板由来増殖因子A (hPDGF-A)であり、X0がアミノ酸配列SIEEAVPAVを含み; X1がアミノ酸配列KTRTVIYEIPRSQVDPTSANFLIWPPCVEVKRを含み; X2がアミノ酸配列TGCを含み; X3がアミノ酸配列NTSSVKを含み; X4がアミノ酸配列QPSRVHHRSVKVAKVEYVRKKPKLKEVQVRLEEHLEを含み; X5がアミノ酸配列Aを含み; X6がアミノ酸配列ATSLNPDYREを含む、本発明によるタンパク質模倣体が提供される。別のより好ましい実施形態では、hPDGF-AのX0〜X6と少なくとも70%の配列同一性を有するタンパク質模倣体であって、X0〜X6が、図10に示す各hPDGF-Aアミノ酸配列である、タンパク質模倣体が提供される。前記タンパク質模倣体は、hPDGF-AのX0〜X6と、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有することが好ましい。
【0033】
さらに別の好ましい実施形態では、前記メンバーがヒト血小板由来増殖因子C (hPDGF-C)であり、X0がアミノ酸配列LLTEEVRLYSを含み; X1がアミノ酸配列TPRNFSVSIREELKRTDTIFWPGCLLVKRを含み; X2がアミノ酸配列GGNを含み; X3がアミノ酸配列ACCLHNCNECQを含み; X4がアミノ酸配列VPSKVTKKYHEVLQLRPKTGVRGLHKSLTDVALEHHEEを含み; X5がアミノ酸配列Dを含み; X6がアミノ酸配列VCRGSTGGを含む、本発明によるタンパク質模倣体が提供される。別のより好ましい実施形態では、hPDGF-CのX0〜X6と少なくとも70%の配列同一性を有するタンパク質模倣体であって、X0〜X6が、図10に示す各hPDGF-Cアミノ酸配列である、タンパク質模倣体が提供される。前記タンパク質模倣体は、hPDGF-CのX0〜X6と、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有することが好ましい。
【0034】
さらに別の好ましい実施形態では、前記メンバーがヒト血管内皮細胞増殖因子C (hVEGF-C)であり、X0がアミノ酸配列SIDNEWRKTQを含み; X1がアミノ酸配列MPREVAIDVGKEFGVATNTFFKPPCVSVYRを含み; X2がアミノ酸配列GGCを含み; X3がアミノ酸配列PDDGLEを含み; X4がアミノ酸配列VPTGQHQVRMQILMIRYPSSQLGEMSLEEHSQを含み; X5がアミノ酸配列Eを含み; X6がアミノ酸配列RPKKKDSAVKを含む、本発明によるタンパク質模倣体が提供される。別のより好ましい実施形態では、hVEGF-CのX0〜X6と少なくとも70%の配列同一性を有するタンパク質模倣体であって、X0〜X6が、図10に示す各hVEGF-Cアミノ酸配列である、タンパク質模倣体が提供される。前記タンパク質模倣体は、hVEGF-CのX0〜X6と、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有することが好ましい。
【0035】
シスチンノット増殖因子スーパーファミリーの他のサブファミリーには、GLHAサブファミリーおよびGLHBサブファミリーが含まれる。前記サブファミリーのメンバーは、それぞれ、糖タンパク質ホルモンアルファサブユニットと、糖タンパク質ホルモンベータサブユニットとを含み、二量体化した後、黄体形成ホルモン(LH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、絨毛性ゴナドトロピン(CG)、および濾胞刺激ホルモン(FSH)を形成する。これらのホルモンはすべて、哺乳動物の生殖において役割を果たす。例えば、FSHは、セルトリ細胞(男性)または果粒膜細胞(女性)上におけるGタンパク質結合受容体に結合することにより、精巣機能または卵巣機能を果たす。とりわけ、LHが、月経周期において、排卵を刺激し、黄体を維持するのに対し、CGは、例えば、妊娠時において、黄体を維持する。TSHは、セルトリ細胞の成熟、ならびに排卵機能にとって重要である。本発明はまた、このGLHBサブファミリーのタンパク質模倣体も提供する。
【0036】
したがって、別の好ましい実施形態では、前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーはGLHBサブファミリーのメンバーであり、X2は3アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X5は1アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X1は23〜28アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X3は18〜20アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X4は30〜33アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表す。
【0037】
より好ましい実施形態では、前記メンバーがヒト濾胞刺激ホルモン(hFSH)であり、X0がアミノ酸配列NSを含み; X1がアミノ酸配列ELTNITIAIEKEECRFCISINTTWを含み; X2がアミノ酸配列AGYを含み; X3がアミノ酸配列YTRDLVYKDPARPKIQKTを含み; X4がアミノ酸配列TFKELVYETVRVPGCAHHADSLYTYPVATQを含み; X5がアミノ酸配列Hを含み; X6がアミノ酸配列KCDSDSTDCTを含む、本発明によるタンパク質模倣体が提供される。別のより好ましい実施形態では、FSHのX0〜X6と少なくとも70%の配列同一性を有するタンパク質模倣体であって、X0〜X6が、図10に示す各FSHアミノ酸配列である、タンパク質模倣体が提供される。前記タンパク質模倣体は、FSHのX0〜X6と、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有することが好ましい。
【0038】
さらに別の好ましい実施形態では、前記メンバーがヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)であり、X0がアミノ酸配列SKEPLRPRを含み; X1がアミノ酸配列RPINATLAVEKEGCPVCITVNTTIを含み; X2がアミノ酸配列AGYを含み; X3がアミノ酸配列PTMTRVLQGVLPALPQVVを含み; X4がアミノ酸配列NYRDVRFESIRLPGCPRGVNPVVSYAVALSを含み; X5がアミノ酸配列Qを含み; X6がアミノ酸配列ALCRRSTTDCを含む、本発明によるタンパク質模倣体が提供される。別のより好ましい実施形態では、hCGのX0〜X6と少なくとも70%の配列同一性を有するタンパク質模倣体であって、X0〜X6が、図10に示す各hCGアミノ酸配列である、タンパク質模倣体が提供される。前記タンパク質模倣体は、hCGのX0〜X6と、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有することが好ましい。
【0039】
さらに別の好ましい実施形態では、本発明は、前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーが糖タンパク質ホルモンアルファ(GLHA)サブファミリーメンバーであり、X2が3アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X5が1アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X1が13〜17アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X3が27アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X4が20〜21アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表す、本発明によるタンパク質模倣体を提供する。
【0040】
さらに別の好ましい実施形態では、前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーが神経増殖因子(NGF)サブファミリーメンバーであり、X2が9〜24アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X5が1アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X1が41〜44アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X3が11アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X4が27または28アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表す、本発明によるタンパク質模倣体が提供される。より好ましい実施形態では、前記メンバーがヒト神経増殖因子(hNGF)であり、X0がアミノ酸配列PIFHRGEFSVを含み; X1がアミノ酸配列DSVSVWVGDKTTATDIKGKEVMVLGEVNINNSVFKQYFFETKを含み; X2がアミノ酸配列RDPNPVDSGを含み; X3がアミノ酸配列RGIDSKHWNSYを含み; X4がアミノ酸配列TTTHTFVKALTMDGKQAAWRFIRIDTAを含み; X5がアミノ酸配列Vを含み; X6がアミノ酸配列VLSRKAVRRAを含む、本発明によるタンパク質模倣体が提供される。別のより好ましい実施形態では、hNGFのX0〜X6と少なくとも70%の配列同一性を有するタンパク質模倣体であって、X0〜X6が、図10に示す各hNGFアミノ酸配列である、タンパク質模倣体が提供される。前記タンパク質模倣体は、hNGFのX0〜X6と、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有することが好ましい。
【0041】
NGFサブファミリーメンバーは、交換神経ニューロンおよび感覚ニューロンの存続および維持において役割を果たし、アルツハイマー病と関連する。NGFは、ニューロンの修復、再生、および保護において役割を果たし、したがって、本発明によるNGFサブファミリーメンバーのタンパク質模倣体は、神経変性障害の治療または予防にとりわけ有用である。
【0042】
シスチンノット増殖因子スーパーファミリーのさらに別のサブファミリーは、TGFベータサブファミリーである。TGFベータは、大半の細胞において、増殖、細胞分化、および他の機能を制御する。TGFベータは、免疫、癌、心疾患、結合組織の遺伝性疾患であるマルファン症候群において役割を果たす。
【0043】
したがって、別の好ましい実施形態では、本発明は、前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーが形質転換増殖因子ベータ(TGFベータ)サブファミリーメンバーであり、X2が3アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X5が1アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X1が23〜41アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X3が18〜36アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X4が27〜34アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表す、本発明によるタンパク質模倣体を提供する。
【0044】
より好ましい実施形態では、前記メンバーがヒト形質転換増殖因子ベータ2 (hTGFベータ2)であり、X0がアミノ酸配列AYCFRNVQDNを含み; X1がアミノ酸配列CLRPLYIDFKRDLGWKWIHEPKGYNANFを含み; X2がアミノ酸配列AGAを含み; X3がアミノ酸配列PYLWSSDTQHSRVLSLYNTINPEASASPCを含み; X4がアミノ酸配列VSQDLEPLTILYYIGKTPKIEQLSNMIVKSを含み; X5がアミノ酸配列Kを含み; X6がアミノ酸配列Sを含む、本発明によるタンパク質模倣体が提供される。別のより好ましい実施形態では、hTGFベータ2のX0〜X6と少なくとも70%の配列同一性を有するタンパク質模倣体であって、X0〜X6が、図10に示す各hTGFベータ2アミノ酸配列である、タンパク質模倣体が提供される。前記タンパク質模倣体は、hTGFベータ2のX0〜X6と、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有することが好ましい。
【0045】
機能的に多様なモジュラータンパク質は、それらのC末端におけるシステインに富む領域内において、約90アミノ酸の保存的ドメインを共有し、これは、シスチンノットファミリーと構造的に関連することが提起されており、したがって、これを、C末端シスチンノット(CTCK)と称する。C末端シスチンノットファミリーメンバーは、とりわけ、ホメオスタシスの維持に関与する多機能性タンパク質である、フォンヴィレブランド因子(vWF);ムチン; CCNファミリーメンバー(cef-10/cyr61/CTFG/fisp-12/novタンパク質ファミリー)(文献5);正中線神経膠経路および交連軸索経路の発生に必須である、ショウジョウバエ(Drosophila)属スリットタンパク質;神経外胚葉性細胞間相互作用と、神経細胞の分化および増殖を調節する経路とに関与しうる、ノリー病タンパク質(NDP);自己防御機構に関与する体液性レクチンである、カイコ蛾ヘモシチンである。本発明による教示はまた、このCTCKファミリーも包含する。
【0046】
したがって、別の好ましい実施形態では、本発明は、前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーがCTCKサブファミリーメンバーであり、X2が2〜3アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X5が1アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X1が22〜35アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X3が4〜28アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X4が29〜41アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表す、本発明によるタンパク質模倣体を提供する。
【0047】
スクレロスチン(またはSOST)もまた、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーのCTCKサブファミリーメンバーである。SOST遺伝子の産物であるスクレロスチンは、元来、非古典的な骨形成タンパク質(BMP)アンタゴニストであると考えられていた。より近年において、スクレロスチンは、LRP5/6受容体に結合し、Wntシグナル伝達経路を阻害するものとして同定されている。これらの状況下におけるWntの活性化は、骨形成に対してアンタゴニスト性である。より近年では、スクレロスチンによる、BMP誘導性骨形成のアンタゴニズムが、Wntシグナル伝達は介するが、BMPシグナル伝達は介さないことが明らかとなっている。実施例のうちの1つにおいてSOST67〜144の合成が成功したことを援用すると、C71 (ループ1; X1)とC125 (ループ3; X4)の間にさらなるSS架橋を有する切断型シスチンノットタンパク質/ペプチドが、さらなるジスルフィド結合の存在下において、適正にフォールディングされたシスチンノット構造を完全な形で形成することが裏付けられる。
【0048】
より好ましい実施形態では、前記メンバーがスクレロスチンであり、X0がアミノ酸配列FETKDVSEYSを含み; X1がアミノ酸配列RELHFTRYVTDGPCRSAKPVTELVを含み; X2がアミノ酸配列SGQを含み; X3がアミノ酸配列GPARLLPNAIGRGKWWRPSGPDFRを含み; X4がアミノ酸配列IPDRYRAQRVQLLCPGGEAPRARKVRLVASを含み; X5がアミノ酸配列Kを含み; X6がアミノ酸配列KRLTRFHNQSを含む、本発明によるタンパク質模倣体が提供される。別のより好ましい実施形態では、スクレロスチンのX0〜X6と少なくとも70%の配列同一性を有するタンパク質模倣体であって、X0〜X6が、図10に示す各スクレロスチンアミノ酸配列である、タンパク質模倣体が提供される。前記タンパク質模倣体は、スクレロスチンのX0〜X6と、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有することが好ましい。さらに別のより好ましい実施形態では、前記メンバーがスクレロスチンであり、前記タンパク質模倣体がアミノ酸配列GGGC1RELHFTRYVTDGPCRSAKPVTELVC2SGQC3GPARLLPNAIGRGKWWRPSGPDFRC4IPDRYRAQRVQLLCPGGEAPRARKVRLVASC5KC6からなり、場合によって、最長で5アミノ酸の長さの隣接配列を含む、本発明によるタンパク質模倣体が提供される。好ましい実施形態では、隣接配列は、最長で2アミノ酸の長さであり、好ましくは最長で1アミノ酸の長さである。最も好ましい実施形態では、タンパク質模倣体は隣接配列を含まない。
【0049】
ノギン様タンパク質サブファミリーメンバーは、例えば、TGFベータファミリーのリガンドに結合し、それらが対応する受容体に結合することを防止することにより、TGFベータシグナル伝達を阻害することが知られている。ノギンは、BMP4を阻害することにより、ニューロンの誘導において重要な役割を果たす。したがって、ノギン様タンパク質サブファミリーメンバーのタンパク質模倣体は、TGFベータ活性および/またはBMP4活性を調節するのにとりわけ有用である。
【0050】
したがって、別の好ましい実施形態では、本発明は、前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーがノギン様タンパク質サブファミリーメンバーであり、X2が4〜6アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X5が1アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X1が22アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X3が7〜9アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X4が35〜98アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表す、本発明によるタンパク質模倣体を提供する。
【0051】
コアグリン様タンパク質サブファミリーメンバーのタンパク質模倣体は、例えば、凝固障害を治療するのにとりわけ有用である。例えば、B型血友病のための、遺伝子治療に基づくコアグリンBの補助療法を伴う臨床試験が開始されている。しかし、本明細書に記載のコアグリン様タンパク質サブファミリーメンバーのタンパク質模倣体は、例えば、コアグリンBを阻害して血液凝固を低下させ、これにより血栓症を防止するのに適する。
【0052】
したがって、別の好ましい実施形態では、本発明は、前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーがコアグリン様タンパク質サブファミリーメンバーであり、X2が7アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X5が1アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X1が38アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X3が5アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X4が29アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表す、本発明によるタンパク質模倣体を提供する。
【0053】
ジャッグド様タンパク質サブファミリーメンバーは、例えば、受容体のノッチファミリーのリガンドである。ノッチシグナル伝達経路は、胚のパターン形成時において極めて重要な役割を果たし、多くの保存的な細胞決定イベントを制御し、細胞運命を制御する根本的機構を規定する。ノッチシグナル伝達経路は、各種の組織における細胞系列の決定に関与している。ノッチシグナル伝達経路は、造血作用、血管発生および血管新生、筋形成、ニューロン形成、腎臓、眼、耳、および歯などの発生における体節形成において役割を果たす。ジャッグド様メンバーに基づくタンパク質模倣体は、上述の生物学的過程を制御するのにとりわけ有用である。
【0054】
したがって、別の好ましい実施形態では、本発明は、前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーがジャッグド様タンパク質サブファミリーメンバーであり、X2が3アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X5が1アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X1が32アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X3が25アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X4が26アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表す、本発明によるタンパク質模倣体を提供する。
【0055】
上記で述べた通り、図10は、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーの複数のサブファミリーに属する切断型タンパク質の非限定的な例を示す。例えば、二量体形成を防止するためには、シスチンノット形成に必要な保存的システイン1〜6のうちの1つではない少なくとも1つのシステインにおいて、わずかな突然変異、例えば、変化を導入することがとりわけ有用である。したがって、好ましい実施形態では、前記X1が、図10のX1として同定される配列のうちのいずれか1つと、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を表し;かつ/または前記X3が、図10のX3として同定される配列のうちのいずれか1つと、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を表し;かつ/または前記X4が、図10のX4として同定される配列のうちのいずれか1つと、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を表し; X1、X3、およびX4が、図10の単一のアミノ酸配列から選択される、本発明によるタンパク質模倣体が提供される。より好ましい実施形態では、X1、X2、X3、X4、およびX6により表される配列のうちのいずれかにおける少なくとも1つのシステインは、別のアミノ酸、好ましくはアラニンにより置換される。別の好ましい実施形態では、X1は、図10のX1として同定される配列のうちのいずれか1つと同一であるアミノ酸配列を表し;かつ/またはX3は、図10のX3として同定される配列のうちのいずれか1つと同一であるアミノ酸配列を表し;かつ/またはX4は、図10のX4として同定される配列のうちのいずれか1つと同一であるアミノ酸配列を表し; X1、X3、およびX4は、図10の単一のアミノ酸配列から選択される。
【0056】
別の好ましい実施形態では、前記X2が、図10のX2として同定される配列のうちのいずれかと、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を表し;かつ/またはX5が、図10のX5として同定される配列のうちのいずれかと同一のアミノ酸配列を表し; X2およびX5が、図10の単一のアミノ酸配列から選択される、本発明によるタンパク質模倣体が提供される。より好ましい実施形態では、X1、X2、X3、X4、およびX6により表される配列のうちのいずれかにおける少なくとも1つのシステインは、別のアミノ酸、好ましくはアラニンにより置換される。別のより好ましい実施形態では、X2は、図10のX2として同定される配列と同一であるアミノ酸配列を表し; X2およびX5は、図10の単一のアミノ酸配列から選択される。
【0057】
別の好ましい実施形態では、本発明は、モチーフC1-X1-C2-X2-C3-X3-C4-X4-C5-X5-C6を含む、本発明によるタンパク質模倣体であって、前記配列が、図10の配列1〜145から選択される配列と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するタンパク質模倣体を提供する。より好ましい実施形態では、前記タンパク質模倣体配列は、図10の配列1〜145から選択される配列と同一である。このようなタンパク質模倣体は、天然タンパク質の一部と同一であるため、交差反応性の抗体反応、好ましくは中和抗体反応を導入するのにとりわけ有用である。
【0058】
好ましい実施形態では、前記C1が、ジスルフィド結合を介してC4と連結され;かつ/またはC2が、ジスルフィド結合を介してC5と連結され;かつ/またはC3が、ジスルフィド結合を介してC6と連結される、本発明によるタンパク質模倣体が提供される。より好ましい実施形態では、C1が、ジスルフィド結合を介してC4と連結され; C2が、ジスルフィド結合を介してC5と連結され;かつC3が、ジスルフィド結合を介してC6と連結される。
【0059】
今や、本発明は、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーのタンパク質模倣体を提供するが、本発明によるタンパク質模倣体は、免疫反応を導入するのにとりわけ有用であり、前記免疫反応は、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーに対して交差反応性であることが好ましいという見識も、本発明は提示する。
【0060】
「交差反応性」とは、生成される抗体が、その抗体がそれに対するものであるタンパク質模倣体に特異的に結合するだけでなく、前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーのうちの少なくとも1つにも特異的に結合することを意味する。したがって、一実施形態では、本発明によるタンパク質模倣体を含む免疫原性組成物が提供される。前記免疫原性組成物は、治療的に許容される担体、アジュバント、希釈剤、および/または賦形剤をさらに含むことが好ましい。本明細書では、「免疫原性組成物」を、その広い意味において定義し、動物において免疫反応を誘導および/または刺激することが可能な投与可能な形態にある、任意の種類の生物学的作用物質を指す。好ましい一実施形態では、本発明による免疫原性組成物は、本発明によるタンパク質模倣体と、薬学的に許容されるアジュバントとを少なくとも含む。
【0061】
別の好ましい実施形態では、前記タンパク質模倣体が、免疫原性担体、好ましくは、ジフテリア毒素(DT)および/またはスカシガイヘモシアニン(KLH)に連結される、本発明による免疫原性組成物が提供される。
【0062】
本発明はさらに、本発明によるタンパク質模倣体と、薬学的に許容される担体、希釈剤および/または賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。適切な担体、希釈剤、賦形剤などは、医薬製剤の技術分野で一般的に知られており、当業者により容易に見出され、かつ適用されうる(例えば、参考文献には、「Remington's Pharmaceutical Sciences」、Mace Publishing Company、Philadelphia PA、第17版、1985年が含まれる)。
【0063】
既に上記で述べた通り、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーは、神経系の疾患、造血発生の疾患、凝固障害、癌、血管新生などを含めた、多くの疾患と関連する。したがって、一実施形態では、本発明は、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーと関連する障害を治療および/または予防するための薬物および/または予防剤を調製するための、本発明によるタンパク質模倣体の使用を提供する。
【0064】
したがって、本発明は、免疫原性組成物中におけるタンパク質模倣体の使用を提供する。本発明によるタンパク質模倣体を含むこのような免疫原性組成物は、動物、好ましくはヒトにおいて免疫反応を誘導するのに適する。好ましい実施形態では、本発明のタンパク質模倣体を用いて、好ましくは天然タンパク質と交差反応しうる抗体を誘導する。前記抗体は、中和抗体である、すなわち、天然シスチンノットタンパク質が、前記中和抗体に結合した後では、該天然シスチンノットタンパク質の機能および/または活性が、低下するか、阻害されるか、または少なくとも抑制されることがなおより好ましい。例えば、本発明によるタンパク質模倣体を含むワクチンを、それを必要とする個体へと投与することにより、前記個体において前記抗体を誘導することが可能である。また、本発明の免疫原性組成物を、非ヒト動物へと投与することにより、前記動物において前記抗体を誘導し、前記動物から得られた抗体を用いて薬物を製造することも可能である。しかし、また、本発明によるタンパク質模倣体を用いて、天然シスチンノットタンパク質の機能および/または活性を直接的にアンタゴナイズすることも可能である。例えば、これは、タンパク質模倣体が、受容体には結合するが、該受容体のシグナル伝達経路を活性化しないか、または完全には活性化しない場合に達成することができる。一実施形態では、本発明は、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーに対する部分的または完全なアンタゴニストとしての、本発明によるタンパク質模倣体、または本発明によるタンパク質模倣体を含む免疫原性化合物の使用を提供する。
【0065】
今や、本発明によるタンパク質模倣体が、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーに対するアンタゴニストおよび/もしくはアゴニストとして有用であるか、またはシスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーに対して免疫反応を惹起するのに適するという見識が本発明によりもたらされているところで、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーと関連する障害を治療または予防する方法であって、治療有効量の、本発明によるタンパク質模倣体を、前記障害に罹患するか、またはこれに罹患する危険性を示す対象に投与するステップを含む方法が提供される。
【0066】
シスチンノット増殖因子スーパーファミリーのうちの1つのサブファミリーは、PDGFサブファミリーのサブファミリーである、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)サブファミリーである。VEGFは、内皮細胞における同種受容体であるチロシンキナーゼファミリーを介して作用し、血管形成を刺激する。したがって、VEGFのタンパク質模倣体、および/またはVEGFに特異的な抗体は、血管形成と関連する障害を治療するのにとりわけ有用である。このような障害のうちの1つは、急速かつ重篤な失明を引き起こす、加齢黄斑変性(AMD)である。失明は、黄斑下における脈絡膜新血管形成の発生による。したがって、VEGFの阻害は、AMDの治療および/または予防にとりわけ有用である。血管形成と関連する別の疾患の例は、癌である。腫瘍は、増殖するために新血管形成を必要とする。急速に増殖する組織は、酸素および栄養物の持続的な供給を必要とし、したがって、新血管形成の有効な阻害は、癌治療の有望な戦略の1つであると考えられる。これは、例えば、VEGFを阻害することにより達成される。前述の通り、モノクローナル抗体であるAvastin (商標) (ベバシズマブ、Genentech社製)は、標準的な化学療法と共に用いる場合における結腸直腸癌の治療について、2004年に、米国食品医薬品局(FDA)により承認された。2006年において、FDAは、ベバシズマブを、標準的な第1選択の組合せ療法と組み合わせた肺癌の治療について承認した。
【0067】
生産費用が高額であり、治療に必要とされる量が比較的大量であり、場合によって、腫瘍内への透過性が低く、投与が頻繁であるなど、ベバシズマブの欠点は、本発明のタンパク質模倣体または免疫原性組成物を用いると軽減される。例えば、免疫反応を誘導するためには、本発明のタンパク質模倣体を含む免疫原性組成物を、対象1例当たり数mg、好ましくは0.1〜10mgの用量で投与する。適正な防御反応を誘導するためには、このような投与を、一般に、2または3回にわたり反復する。
【0068】
したがって、一実施形態では、本発明は、腫瘍関連疾患および/または加齢黄斑変性(AMD)を治療および/または予防するための薬物および/または予防剤を調製するための、本発明によるタンパク質模倣体の使用であって、前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーがVEGFサブファミリーまたはTGFベータサブファミリーのメンバーである使用を提供する。
【0069】
また、シスチンノット増殖因子サブファミリーの別のサブファミリーであるTGFベータも、癌と関連する。正常細胞において、そのシグナル伝達経路を介して作用するTGFベータは、G1期で細胞周期を停止させて、増殖を停止させるか、分化を誘導するか、またはアポトーシスを促進する。細胞が癌細胞へと形質転換されると、TGFベータシグナル伝達経路の一部が突然変異し、TGFベータは、もはや細胞を制御しなくなる。これらの癌細胞は増殖する。周囲の間質細胞(線維芽細胞)もまた増殖する。いずれの細胞も、TGFベータの生成を増大させる。このTGFベータは、周囲の間質細胞、免疫細胞、内皮細胞、および平滑筋細胞に作用する。TGFベータは、免疫抑制および血管新生を引き起こし、これにより、癌がより浸潤性となる。TGFベータはまた、正常時には、炎症(免疫)反応により癌を攻撃するエフェクターT細胞を、炎症反応を停止させる調節性(サプレッサー) T細胞へと転換もする。したがって、例えば、前記メンバーが、TGFベータサブファミリーに属する、本発明によるアンタゴニスト性のタンパク質模倣体および/もしくは本発明の抗体、または本発明によるその機能的部分および/もしくは機能的同等物によりTGFベータを阻害することは、癌を治療するのにとりわけ有用である。
【0070】
したがって、好ましい実施形態では、前記障害が腫瘍関連疾患および/または加齢黄斑変性(AMD)を含み、前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーがVEGFサブファミリーまたはTGFベータサブファミリーのメンバーである、本発明による方法が提供される。より好ましい実施形態では、前記腫瘍関連疾患は、結腸直腸癌または非小細胞肺癌(NSCLC)である。
【0071】
別の好ましい実施形態では、前記障害が、結合組織障害、好ましくはマルファン症候群を含む、本発明による方法が提供される。マルファン症候群は、フィブリリン1と称する結合タンパク質をコードする、FBN1と称する遺伝子により遺伝する。FBN1遺伝子は、対をなしている。FBN1遺伝子は優性遺伝子であるため、両親のうちの一方からであっても、変異体のFBN1遺伝子を受け継ぐと、マルファン症候群に罹患する。細胞外の組織に対する構造的支持体を形成する結合タンパク質であることに加えて、フィブリリン1は、別のタンパク質であるTGFベータにも結合する。TGFベータは、炎症を引き起こしうる。今日の研究者の考えでは、肺、心弁、および大動脈におけるTGFベータの炎症作用により、該組織が脆弱化し、マルファン症候群の症状が引き起こされる。したがって、TGFベータのタンパク質模倣体は、マルファン症候群を治療するのにとりわけ有用である。
【0072】
これに対し、新血管形成(血管再生)は、下肢の動脈硬化性閉塞、狭心症/心筋梗塞、または脳梗塞が含まれるがこれらに限定されない虚血性疾患を治療するために、副行循環を発生させることにより、虚血性組織を救護するのにとりわけ有用である。したがって、別の好ましい実施形態では、前記障害が、虚血性障害を含み、好ましくは前記虚血性障害が、下肢の動脈硬化性閉塞、狭心症、心筋梗塞、および脳梗塞からなる群から選択され、前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーが、VEGFサブファミリーメンバーである。
【0073】
上述の通り、NGFサブファミリーメンバーは、交換神経ニューロンおよび感覚ニューロンの存続および維持にとって極めて重要であり、アルツハイマー病と関連している。NGFは、ニューロンの修復、再生、および保護において役割を果たし、したがって、本発明によるNGFサブファミリーメンバーのタンパク質模倣体は、神経変性障害を治療するのにとりわけ有用である。他の可能な適用は、本発明によるNGFサブファミリーメンバーのタンパク質模倣体を用いて、例えば、NGF特異的抗体を誘導することにより、慢性疼痛および/または神経変性疼痛を軽減および/または治療することである。さらに、NGFは、乳癌細胞増殖の強力な刺激因子であることが知られているので、このようなNGFに特異的な抗体は、乳癌を治療するのにとりわけ有用であると考えられる。
【0074】
したがって、別の好ましい実施形態では、前記障害が、神経変性障害、好ましくはアルツハイマー病、疼痛障害、好ましくは慢性および/または神経障害性の疼痛障害、ならびに癌、好ましくは乳癌からなる群から選択される障害を含む、本発明による方法が提供される。より好ましい実施形態では、前記メンバーがNGFサブファミリーに属する方法が提供される。
【0075】
さらに、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーに対する抗体を作製する方法であって、本発明によるタンパク質模倣体および/または本発明による免疫原性組成物を、非ヒト動物に投与するステップと、前記動物により生成される、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーに対する抗体を得るステップとを含む方法が提供される。また、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーに対して特異的である抗体、または抗体の機能的部分もしくは機能的同等物を作製するex vivoでの方法における、本発明によるタンパク質模倣体の使用も提供される。当業者は、B細胞ハイブリドーマ法、抗体ファージディスプレイ法など、ex vivoにおいて抗体を作製する異なる方法を認識している。
【0076】
本明細書では、抗体の機能的部分を、必ずしも量においてではないが、種類において、前記抗体と同じ少なくとも1つの特性を有する部分として定義する。前記機能的部分は、必ずしも同程度ではないが、前記抗体と同じ抗原に結合することが可能であることが好ましい。抗体の機能的部分は、単一ドメイン抗体、単鎖抗体、Fab断片、またはF(ab')2断片を含むことが好ましい。抗体の機能的同等物とは、結果として得られる化合物の少なくとも1つの特性(好ましくは抗原結合特性)が、必ずしも量においてではないが、種類において本質的に同じであるように改変された抗体として定義される。同等物は、多数の方法により、例えば、全体的な機能性が、大幅には損なわれない可能性が高いように、一般には同様の特性(サイズ、疎水性など)を有する別の残基によりアミノ酸残基を置換する、保存的アミノ酸置換によりもたらされる。
【0077】
シスチンノット増殖因子スーパーファミリーのサブファミリーである糖タンパク質ホルモンサブファミリー(GLH)は、ホルモン:黄体形成ホルモン(LH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、ならびに絨毛性ゴナドトロピン(CG)および濾胞刺激ホルモン(FSH)を含む。これらのホルモンはすべて、アルファサブユニットおよびベータサブユニット(それぞれ、GLHAおよびGLHB)を含み、哺乳動物の生殖において役割を果たす。例えば、FSHは、セルトリ細胞(男性)または果粒膜細胞(女性)上におけるGタンパク質結合受容体に結合することにより、精巣機能または卵巣機能を刺激する。とりわけ、LHが、月経周期において、排卵を刺激し、黄体を維持するのに対し、CGは、例えば、妊娠時において、黄体を維持する。TSHは、セルトリ細胞の成熟、ならびに排卵機能にとって重要である。
【0078】
したがって、好ましい実施形態では、本発明によるシスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーの存在と関連する障害を治療または予防する方法であって、前記障害が生殖障害である方法が提供される。生殖障害を治療する以外に、本発明によるタンパク質模倣体および/もしくは抗体、またはその機能的部分もしくは同等物はまた、生殖を防止する、すなわち、妊娠を防止するのにもとりわけ有用である。女性または男性におけるGLH、例えば、FSH、CG、LH、もしくはTSHを阻害することにより、または前記GLHの受容体結合および/もしくはシグナル伝達を阻害することにより、卵巣または精巣の機能が撹乱され、妊娠の可能性が低下する。したがって、本発明は、女性個体における妊娠を防止し、かつ/または妊娠の可能性を低下させる方法であって、前記女性または前記女性の性的パートナーに、有効量の、本発明によるタンパク質模倣体、本発明による免疫原性組成物、および/または本発明による方法により得ることが可能な抗体、または前記抗体の機能的部分もしくは機能的同等物を投与するステップを含み、前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーがGLHAサブファミリーまたはGLHBサブファミリーのメンバーである方法を提供する。
【0079】
男性および/または女性の避妊剤として使用される、本発明によるタンパク質模倣体、本発明による免疫原性組成物、および/または本発明による方法により得ることが可能な抗体、または前記抗体の機能的部分もしくは機能的同等物がさらに提供される。
【0080】
さらに、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーに対する抗体に結合し、かつ/またはこれを中和する方法であって、治療有効量の、本発明によるタンパク質模倣体を、前記抗体を含む対象に投与するステップを含む方法が提供される。タンパク質模倣体が前記抗体に結合すると、その活性が低下する。シスチンノットタンパク質のメンバーに特異的な抗体は、治療プロトコールで用いられる。その一例は、転移性癌を治療するのに用いられる、VEGFに特異的なAvastin (商標)である。投与された抗体は、数日間、また最長で数週間の半減期を有する。例えば、このような抗体が過剰投与されるか、またはこのような抗体の作用がもはや望ましくない場合は、本発明のタンパク質模倣体が、前記抗体に結合し、かつ/またはこれを中和することにより、前記抗体の作用を中和するのにとりわけ有用である。本発明によるタンパク質模倣体それ自体の生体活性は存在しないかまたはより低度であり、したがって、抗体が最初に投与された条件には干渉しないため、該タンパク質模倣体は、とりわけ有用である。例えば、VEGFに対する抗体を施されている患者を、生体活性であるVEGFにより治療して、該抗体を中和することは、当然ながら望ましくない。生体活性であるVEGFを、存在する抗体に対して過剰に投与するならば、その生物学的作用が波及し、それまでに施された抗体治療を損なうことになるであろう。本発明を限定するわけではない例示的な例は、VEGFに対するモノクローナル抗体、好ましくはAvastin (商標)に結合し、かつ/またはこれを中和するのに用いうる、VEGFのタンパク質模倣体の使用である。Avastin (商標)は、例えば、転移性癌を治療するのに投与される、VEGFに対する市販のモノクローナル抗体である。しかし、Avastin (商標)により治療すると、創傷治癒が遅くなるかまたは不完全となりうる(例えば、手術による切開が、治癒困難であるかまたは開口状態にとどまる場合)。場合によって、この事象は、致死性の結果をもたらすこともあった。したがって、手術後少なくとも28日間は、かつ、手術による創傷が完全に治癒するまでは、Avastin (商標)療法を開始しないことが推奨される。当然ながら、Avastin (商標)療法の間は、手術を回避すべきである。しかし、Avast
in (商標)療法を施される患者に対して手術を実施することが必要な場合もある。このような場合、切断型VEGF、好ましくはVEGF26〜104を投与して、VEGFそれ自体の作用に類似する生物学的作用をそれほど高度に誘導することなく、循環する抗VEGF抗体を中和することが好ましい。切断型VEGFを投与し、抗VEGF抗体を中和した短期間の後には、Avastin (商標)療法中の手術後に通常観察される上記の重篤な副作用なしに、患者に手術を施すことができる。
【0081】
したがって、好ましい実施形態では、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーに対する抗体に結合し、かつ/またはこれを中和する方法であって、治療有効量の、本発明によるタンパク質模倣体を、前記抗体を含む対象に投与するステップを含み、前記抗体が、Avastin (商標)であり、前記タンパク質模倣体がVEGF26〜104である方法が提供される。
【0082】
シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーに対する抗体を中和する薬物を製造するための、本発明によるタンパク質模倣体の使用がさらに提供される。好ましい実施形態では、上記で説明した通り、前記抗体が、Avastin (商標)であり、前記タンパク質模倣体がVEGF26〜104である。
【0083】
TGFベータサブファミリーに属する、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーの別のメンバーは、SOST遺伝子の分泌タンパク質産物であり、培養された骨芽細胞に対する骨細胞由来の阻害剤である、スクレロスチンである。スクレロスチンが欠損すると、骨形成の増大に起因して、良質の骨量が実質的に増大することを特徴とする、2つの密接に関連するまれな硬化性障害である、硬結性骨化症およびファンブッヘム病がもたらされる。これに対し、骨の密度および質が低下し、骨格の脆弱化をもたらし、特に、脊椎、手首、腰部、骨盤、上腕部の骨折の危険性を増大させる障害である骨粗鬆症は、おそらく、骨形成を阻害するスクレロスチンが過剰に生成されることにより引き起こされる。したがって、スクレロスチンのアゴニスト性もしくはアンタゴニスト性のタンパク質模倣体、および/またはスクレロスチンに特異的な抗体は、骨障害を治療するのにとりわけ有用である。したがって、好ましい実施形態では、前記障害が、骨調節の撹乱と関連する障害を含む、本発明による方法が提供される。より好ましい実施形態では、前記障害は、骨粗鬆症または硬結性骨化症を含む。
【0084】
本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の特定の態様を明確化することのためだけに用いられる、以下の実施例において、本発明をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】A)完全な還元形態(MW計算値=9569.1; MW実験値=9566.4)、ならびにB)酸化的フォールディング後(MW計算値=9563.1; MW実験値=9560.7)におけるhumVEGF25〜107 (Boc)についてのエレクトロスプレーイオン化質量スペクトル(ESI/MS)を示す図である。フォールディング条件は、上記で説明した通りである。
【図2】A)多様な濃度(125μM〜2pM)のoxid-humVEGF26〜104 (■)、humVEGF1〜165 (▲)、ならびにhumVEGFのβ5ターン-ベータ6ループだけに及ぶ骨格環化ペプチド(humVEGF74〜98)(×)についてのELISA法における、表面固定化humVEGF1〜165 (1μg/mL;グルタルアルデヒド(GDA)結合)に対するAvastin (商標)結合の阻害を示す図である。B)多様な濃度(5μM〜12.8pM)のhumVEGF1〜165 (▲)、手順1により合成されたoxid-humVEGF26〜104 (グレーの四角)、または手順2により合成されたoxid-humVEGF26〜104 (白色の四角)についてのELISA法における、表面固定化humVEGF1〜165 (1μg/mL;グルタルアルデヒド結合)に対するAvastin (商標)結合の阻害を示す図である。
【図3】希釈率1/50および1/100における、非精製ラット抗oxid-humVEGF26〜104免疫血清(I) 50.49および50.67によるBaF3/細胞増殖アッセイに由来する第1の中和データを示す図である。mAbであるAvastin (商標) (抗humVEGF1〜165)を陽性対照として用い、前免疫(PI)血清(50.49および50.67)を陰性対照として用いた。humVEGF1〜165=0.6ng/mLで観察される増殖レベルを、デフォルトで100%に設定し、血清中における増殖レベルを、デフォルトに対する%として表した。前免疫血清は、初回の免疫化の直前に採取した。免疫血清は、初回の免疫化の6週間後に採取した。グレー:増殖%<50;黒色:増殖%50〜100。
【図4】希釈率1/50および1/3200の非精製抗oxid-humVEGF26〜104ラット血清A) 50.49およびB) 50.67によるBaF3/細胞増殖アッセイに由来する中和データを示す図である。さらなる詳細については、図3を参照されたい。
【図5】希釈率1/50および1/3200のprotG精製抗oxid-humVEGF26〜104ラット血清A) 50.49およびB) 50.67によるBaF3/細胞増殖アッセイに由来する中和データを示す図である。さらなる詳細については、図3を参照されたい。
【図6】非精製マウス抗oxid-humVEGF26〜104免疫血清(I) 59.01〜59.05 (04は死亡)によるBaF3/細胞増殖アッセイに由来する中和データを示す図である。mAbであるAvastin (商標) (抗humVEGF1〜165)および抗oxid-humVEGF26〜104ラット血清50.67を陽性対照として用い、前免疫(PI)血清を陰性対照として用いた。humVEGF1〜165=1.2ng/mLで観察される増殖レベルを、デフォルトで100%に設定し、血清中における増殖レベルを、デフォルトに対する%として表した。PI:初回の免疫化の直前に採取した血清。I:初回の免疫化の6週間後に採取した血清。
【図7】希釈率1/5および1/25における、非精製ラット免疫血清50.49および50.67による、表面固定化humVEGF1〜165に対するAvastin (商標)結合の阻害を示す図である。ペプチド血清31.1 (濾胞刺激ホルモンのβ3ループの配列であるhumFSH56〜79に由来する二重拘束CLIPS/SSペプチドに対して誘発された;血清は、細胞ベースのアッセイにおいて、FSHに対する高度の中和活性を示す)、ならびに血清45.09 (VEGFのβ5ターン-ベータ6ループの配列であるVEGFの70〜102に由来する骨格環化ペプチドに対して誘発された;血清は、BaF3細胞増殖アッセイにおいて、humVEGF1〜165に対する中和活性を示す)を陰性対照として用いた。阻害実験に最高の感度を確保するため、Avastin (商標)の最小濃度(約10ng/mL)を用いた(OD450nm≒0.4)。
【図8】humVEGF1〜165の存在下および不在下における、多様な濃度(0.01〜20ng/mL)のhumVEGF26〜104によるBaF3/細胞アッセイに由来する増殖データを示す図である。humVEGF1〜165=1.2ng/mLで観察される増殖レベルを、デフォルトで100%に設定し、他の増殖レベルを、デフォルトに対する%として表した。
【図9】増殖アッセイの概略を示す図である。
【図10】TGFベータサブファミリー、GLHベータサブファミリー、NGFサブファミリー、PDGFサブファミリー、GLHAサブファミリー、ノギン様タンパク質サブファミリー、コアグリン様タンパク質サブファミリー、およびCTCK様タンパク質サブファミリーに細分化される、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーの一部であることが知られるすべてのタンパク質について、完全タンパク質の名称、該タンパク質がそこから単離される動物種、およびアミノ酸配列を示す図である。サブファミリーごとに規定されるコンセンサス配列を、各メンバーの配列一覧の上部に提示する。
【図11】シスチンノット増殖因子スーパーファミリーの多様なメンバーの一般的構造についての概略表示である。
【図12】A)治療群1: PBS (●)、治療群2:抗oxid-humVEGF26〜104 (△)、および治療群3: Avastin (商標) (V)における、マウス1匹当たりの平均腫瘍容量(mm3)の増加を示す図である。PBS群では、腫瘍の推定容量が、(あらかじめ定めた)最大容量を超えたため、9匹中4匹のマウスを、予定日以前に安楽死させた(#)。B)実験終了時の異なる各治療群におけるマウス1匹当たりの平均総腫瘍重量(mg)を示す図である。C)実験終了時の異なる各治療群における個々のマウスの総腫瘍容量(mm3)を示す図である(PBS群におけるマウス3は、実験の開始以前に死亡した)。
【図13】red-ラットVEGF26〜104 (A/B)およびoxid-ラットVEGF26〜104 (C/D)についてのHPLC (A/C)およびエレクトロスプレーイオン化質量スペクトル(B/D)を示す図である。
【図14】A) oxid-ラットVEGF26〜104およびB) oxid-humVEGF26〜104の両方に対する抗oxid-humVEGF26〜104ラット血清1+2 (黒色の点線および破線)および抗oxid-ラットVEGF26〜104ラット血清3+4 (グレーの点線および破線)についてのELISA法における結合のプロットを示す図である。
【図15】red-hum PLGF34〜112 (A/B)およびoxid-hum PLGF34〜112 (C/D)についてのHPLC (A/C)およびエレクトロスプレーイオン化質量スペクトル(B/D)を示す図である。
【図16】天然型化学的ライゲーションを介して、断片humSOST-F1、humSOST-F2、およびhumSOST-F3からの3段階の縮合反応により、humSOST57〜144が得られることを示す図である。ステップA:チアプロリンで保護されたhumSOST-F2をhumSOST-F3へとライゲーションすることにより、保護humSOST-F2/3を生成させる。ステップB:pH4.0で、メトキシアミンによりhumSOST-F2/3を脱保護する。ステップC: pH6.5で、脱保護されたhumSOST-F2/3を、humSOST-F1へとライゲーションすることにより、humSOST57〜144を生成させる。
【図17】イオン交換クロマトグラフィー後において、完全red-humSOST57〜144を酸化的にリフォールドさせたことを示す図である。0.4Mアルギニン、1.67mMグルタチオン(還元型)、0.33mMグルタチオン(酸化型)、55mMトリス-HCl、21mM塩化ナトリウム、0.88mM塩化カリウム、pH8.0中においてペプチドをフォールドさせることにより、4℃で3.5日後において、10.2%の所望の生成物を得た。
【図18】完全red-humSOST57〜144 (A/B)、酸化的にリフォールドしたoxid-humSOST57〜144 (C/D)、オクタアセトアミドにより誘導体化したhumSOST57〜144 (E/F)についてのHPLC (A/C/E)およびエレクトロスプレーイオン化質量スペクトル(B/D/F)を示す図である。
【図19】PDLライブラリーから抗体により選択したビオチニル化oxid-humSOST57〜144についてのELISA法における結合データを示す図である。1.組換えhumSOST、2.ビオチニル化oxid-humSOST57〜144自体に対する実際の結合、3.アミノ酸-SOST57〜144、4.グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、5. CD33、そして最後に、6.ウシ血清アルブミン(BSA)に対する結合の不在により、高度に特異的な抗体結合が示される。
【図20】red-humTGFB15〜111/Δ49〜77-humVEGF62〜67 (A/B)およびoxid-humTGFB15〜111/Δ49〜77-humVEGF62〜67 (C/D)についてのHPLC (A/C)およびエレクトロスプレーイオン化質量スペクトル(B/D)を示す図である。
【図21】(A)oxid-humTGFB15〜111/Δ49〜77-humVEGF62〜67による免疫化を介して誘発された、9wpvのラット血清(1および2+前免疫血清)についてのELISA法における抗体力価を示す図である。力価は、ELISA法におけるODが、バックグラウンドシグナルの4倍に等しい-10log[濃度]として定義した。(B)表面固定化した1) humTGFB2trunc-1 (VEGFのb2ループを伴う)、2) humTGFB2trunc-2 (配列PGGSPAにより天然humTGF-B2のb2ループを置換した)、および3)humVEGFtruncに対する、9wpvのラット血清についてのELISA法における抗体の結合を示す図である。humTGFB2trunc 1:アセチル-C1ALRPLYIDFKRDLGWKWIHEP KGYNANFC2AGAC3NDEGLEC4VSQDLEPLTILYYIGKTPKIEQLSNMIVKSC5KC6-アミドhumTGFB2trunc 2:アセチル-C1ALRPLYIDFKRDLGWKWIHEPKGYNANFC2AGAC3PGGSPAC4VSQDLEPLTILYYIGKTPKIEQLSNMIVKSC5KC6-アミドVEGFtrunc:アセチル-C1HPIETLVDIFQEYPDEIEYIFKPSAVPLMRC2GGAC3NDEGLEC4VPTEESNITMQIMRIKPHQGQHIGEMSFLQHNKC5EC6-アミド
【実施例】
【0086】
(実施例1A)
切断型VEGFの各種形態の合成
切断型VEGFの3つの異なる形態を合成した。
humVEGF26〜104:
26Ac-C1HPIETLVDIFQEYPDEIEYIFKPSAVPLMRC1GGAC3NDEGLEC4VPTEESNITMQIMRIKPHQGQHIGEMSFLQHNKC5EC6#104
humVEGF25〜107:
25Ac-YC1HPIETLVDIFQEYPDEIEYIFKPSAVPLMRC2GGAC3NDEGLEC4VPTEESNITMQIMRIKPHQGQHIGEMSFLQHNKC5EC6RPK#107
humVEGF25〜109:
25Ac-YC1HPIETLVDIFQEYPDEIEYIFKPSAVPLMRC2GGSC3NDEGLEC4VPTEESNITMQIMRIKPHQGQHIGEMSFLQHNKC5EC6RPKKD#109単一文字コードによりアミノ酸を示し;「Ac」とは、N末端におけるアセチル化を指し;「#」とは、C末端におけるアミド化を指し;太字のシステイン(C1〜C6)は、シスチンノットフォールドの形成に関与するシステインを示し;太字のアラニンは、Alaにより置換された天然システインを指す。
【0087】
3つの異なる合成手順を用いた。
I.全長ペプチドの直接的合成(Fmoc反応); humVEGF26〜104だけに用いた。
II. Fmoc化学反応を用いるペプチド-チオエステル合成。humVEGF26〜104ではhumVEGF26〜67 (チオエステル)+ humVEGF68〜104 (遊離のN末端システイン)、humVEGF25〜107ではhumVEGF25〜67 (チオエステル)+ humVEGF68〜107 (遊離のN末端システイン)、ならびにhumVEGF25〜109ではhumVEGF25〜67 (チオエステル)+ humVEGF68〜109 (遊離のN末端システイン)という、ペプチド断片に対するその後の天然型化学的ライゲーション(NCL)。
III. Boc化学反応を用いるペプチド-チオエステル合成。humVEGF25〜107ではhumVEGF25〜67 (チオエステル)+ humVEGF68〜107 (遊離のN末端システイン)、ならびにhumVEGF26〜104ではhumVEGF26〜67 (チオエステル)+ humVEGF68〜104 (遊離のN末端システイン)、またはhumVEGF26〜60 (チオエステル)+ humVEGF61〜104 (遊離のN末端システイン)という、ペプチド断片に対するその後の天然型化学的ライゲーション(NCL)。
【0088】
手順I:
Fmoc反応によりペプチドを合成するための一般的手順(A):
Symphony (米国、Protein Technologies社製)合成器、Voyager (ドイツ、CEM GmbH社製)合成器、またはSyroII (ドイツ、MultiSyntech社製)合成器において4-(2',4'-ジメトキシフェニル-Fmoc-アミノメチル)-フェノキシ(Rinkアミド)樹脂(ドイツ、BACHEM社製)を用いる固相上でペプチドを合成した。N-t-Boc (KW)基、O-t-Bu (DESTY)基、N-Trt (HNQ)基、S-Trt (C)基、またはN-Pbf (R)基として側鎖官能基を保護したFmoc-アミノ酸はすべて、Biosolve社(オランダ)またはBachem GmbH社(ドイツ)から購入した。どのアミノ酸連結ステップにも、二重結合を用いる、20分間にわたる活性化時間を伴う、NMP中に5倍過剰のHBTU/HOBt/アミノ酸/DIPEA (1:1:1:2)を用いる連結プロトコールを用いた。ペプチドのアセチル化(Ac)は、室温で30分間にわたり、樹脂を、NMP/Ac2O/DIEA (10:1:0.1、v/v/v)と反応させることにより実施した。別段に示さない限り、室温で2時間にわたり、13.3% (w)フェノール、5% (v)チオアニソール、2.5% (v) 1,2-エタンジチオール、および5% (v) milliQ-H2Oを含有するTFA (40mL/樹脂ミリモル)と反応させることにより、アセチル化したペプチドを樹脂から切断した。氷冷させたEt2Oによる沈殿+沈殿した材料の乾燥凍結により、粗ペプチドが得られた。
【0089】
Symphony合成器(米国、Protein Technologies社製)上におけるこの手順(樹脂投入量: 0.88ミリモル/g)に従う1つのステップにより、humVEGF26〜104を合成した。第1の連結ステップでは、Ac-Cys(Trt)-OHおよびFmoc-Cys(Trt)-OHの4:1 (w/w)混合物を用いた。若干異なる混合物: 5% (v) TES、2.5% (v) 1,2-エタンジチオール、および2.5% (v) milliQ-H2Oを含有するTFA (40mL/樹脂ミリモル)と反応させることにより、アセチル化したペプチドを樹脂から切断した。最後に、HPLCによりペプチドを精製し、手順Gに従う酸化によりフォールドさせた。
【0090】
また、Liberty合成器(ドイツ、CEM GmbH社製)を用いて、Rinkアミド樹脂(樹脂投入量: 0.5ミリモル/g)上において、humVEGF26〜104について上記で説明した通り、この手順に従い、ペプチド断片humVEGF68〜104、humVEGF68〜107、およびhumVEGF68〜109 (NCLのための遊離N末端におけるシステイン;手順IIを参照されたい)も合成した。
【0091】
手順II:
Fmoc反応によるペプチドチオエステルの合成:
手順Iで説明した通り、Fmocによるペプチド合成の一般的手順に従い、SASRIN樹脂(樹脂投入量: 0.5ミリモル/g;ドイツ、Bachem GmbH社製)上において、ペプチド断片であるhumVEGF25〜67およびhumVEGF26〜67(遊離C末端)を合成した。DCM中1%のTFA (40mL/樹脂ミリモル)を伴う反復処理(20サイクルにわたる)により、樹脂からペプチドを切断した。混合した画分を、ピリジンにより中和し、その後、減圧下における蒸発によりDCMを除去した。最後に、過剰量のH2Oを添加した後で、遠心分離および乾燥凍結させることにより、ペプチドを沈殿させた。乾燥凍結させた粗ペプチドをDCM (2.0mM)中において溶解させ、その後、DCM中に12等量の4-アセトアミドチオフェノール(0.334mg/mL、2.0mM)、DCM中に3等量のPyBOP (1.040mg/mL、2.0mM)、およびDCM中に2.6等量のDIPEA(1容量%)を添加し、室温で6時間にわたり混合物を撹拌した。次いで、DCM中に12等量の4-アセトアミドチオフェノール(0.334mg/mL、2.0mM)を再度添加し、室温で一晩にわたり混合物を撹拌した。最後に、混合物を、約2.6等量のTFAにより中和し、減圧下における蒸発によりDCMを除去した。次いで、ペプチドチオエステルの粗断片を脱保護し、一般的な手順に従うRP-HPLCにより精製した。
【0092】
ペプチド断片の天然型化学的ライゲーション(NCL):
天然型化学的ライゲーションを介して、ペプチド断片であるhumVEGF68〜104、humVEGF68〜107、またはhumVEGF68〜109 (A)を、ペプチドチオエステル断片であるhumVEGF25〜67またはhumVEGF26〜67のいずれか(B)と縮合させる反応は、作業緩衝液(pH8.0の0.2Mリン酸緩衝液中6MのグアニジンHCl/20mM TCEP/200mM MPAA)中ほぼ等モル(1:1.2)のA溶液(10mg/mL;約2.0mM)およびB溶液(10mg/mL;約2.0mM)を混合し、室温で一晩にわたり撹拌することにより実施した。溶液(酸性!)を混合した後で、10M NaOH (NaOHのμL量は、用いられるMPAAのmg量とほぼ等しい)を添加することにより、pHを6.5に調整した。過剰量のMPAAは、洗浄ステップにおいて作業緩衝液(MPAAを含まない!!)を用いるAmicon社による濾過法により除去した。最後に、標準的な手順に従うRP/HPLCにより、還元形態における粗humVEGF26〜104、粗humVEGF25〜107、または粗humVEGF25〜109を精製した。
【0093】
red-humVEGF26〜104、red-humVEGF25〜107、およびred-humVEGF25〜109の酸化的フォールディング:
0.1mg/mLの最終濃度で1.0mMシスチン(SS形態)および8.0mMシステイン(SH形態)を含有する1MグアニジンHClを伴うかまたは伴わない、0.1Mトリス緩衝液(pH8.0)中に、完全な還元型であるred-humVEGF26〜104、red-humVEGF25〜107、またはred-humVEGF25〜109を溶解させ、室温で撹拌した。即座に、不完全または不正確なフォールドペプチドに対応する一部の幅広いピークに加えて、短い貯留時間(高い極性)の位置に鋭いピークが現れる。HPLC解析により、ピーク強度にさらなる変化が示されなかった場合(通常、約4時間後)、混合物を、調製用RP/C18カラムへと投入し、本発明者らによる標準的な手順(下記を参照されたい)に従い精製した。
【0094】
手順III:
tBoc反応によりペプチドを合成するための一般的手順:
既に説明したBoc化学反応のための、in situにおける中和/HBTU活性化手順を用いて、典型的には0.25ミリモルのスケール上における、手作業での固相ペプチド合成(SPPS)により、ペプチド断片を調製した。各合成サイクルは、過剰量のDIEAの存在下において、1〜2分間にわたり純粋TFAにより処理し、1分間にわたりDMF流により洗浄し、10〜20分間にわたり1.0ミリモルのあらかじめ活性化させたBoc-アミノ酸と連結した後で、2回目のDMF流による洗浄を行うことからなった。Nα-Bocアミノ酸(1.1ミリモル)は、過剰量のDIEA (3ミリモル)の存在下において、1.0ミリモルのHBTU (DMF中において0.5M)により、3分間にわたりあらかじめ活性化させた。Gln残基を連結させた後で、TFAを用いる脱保護の前後において、DCM流による洗浄を用いて、高温(TFA/DMF)により触媒されるピロリドンカルボン酸形成の可能性を防止した。側鎖を保護したアミノ酸は、Boc-Arg(p-トルエンスルホニル)-OH、Boc-Asn(キサンチル)-OH、Boc-Asp(O-シクロヘキシル)-OH、Boc-Cys(4-メチルベンジル)-OH、Boc-Glu(O-シクロヘキシル)-OH、Boc-His(ジニトロフェニル)-OH、Boc-Lys(2-Cl-Z)-OH、Boc-Ser(ベンジル)-OH、Boc-Thr(ベンジル)-OH、およびBoc-Tyr(2-Br-Z)-OHであった。他のアミノ酸は、側鎖を保護せずに用いた。DMF中の無水酢酸(0.1M)/ピリジン(0.1M)で2×2分間処理することにより、ペプチドのNα-アセチル化を実施した。鎖集合が完了したら、ペプチドを脱保護し、スカベンジャーとしての4% p-クレゾールと共に0℃で1時間にわたりHF無水物で処理することにより、樹脂から切断した。すべての場合において、ジニトロフェニル(Dnp)除去手順は、C末端のチオエステル基に適合しないため、イミダゾール側鎖-Dnp保護基が、His残基上に残存した。しかし、ライゲーション反応中において、Dnpはチオールにより徐々に除去され、Hisの保護基は解除された。切断後、氷冷したジエチルエーテルによりペプチド断片を沈殿させ、アセトニトリル水溶液中で溶解させ、乾燥凍結させた。
【0095】
チオエステル(-COSR)を生成させる樹脂の調製:
3ミリモルのDIEAの存在下で、1ミリモルのHBTUにより、1.1ミリモルのNα-Boc Leuを活性化させ、10分間にわたり、0.25ミリモルのMBHA樹脂へと連結した。次いで、3ミリモルのDIEAの存在下で、1ミリモルのHBTUにより、1.1ミリモルのS-トリチルメルカプトプロピオン酸を活性化させ、30分間にわたり、Leu-MBHA樹脂へと連結した。TFA中に2.5%のトリイソプロピルシランおよび2.5% H2Oで2×1分間にわたり処理することにより、トリチル保護基を除去した後で、結果として得られるトリチル-メルカプトプロピオン酸-ロイシン樹脂を、ポリペプチド鎖集合のための出発樹脂として用いることができる。標準的なペプチド連結プロトコールを用いて、所望のアミノ酸とのチオエステル結合を形成した。最終ペプチドを無水HFで処理することにより、天然型化学的ライゲーション反応に関与する、C末端活性化メルカプトプロピオン酸-ロイシン(MPAL)チオエステル(-COSR)ペプチドが得られた。
【0096】
ペプチド断片の天然型化学的ライゲーション(NCL):
以下の通りに、完全に脱保護したペプチドチオエステル断片であるhumVEGF26〜60、humVEGF26〜67、およびhumVEGF25〜67を、ペプチド断片であるhumVEGF61〜104、humVEGF68〜104、またはhumVEGF68〜107とライゲーションした: 6Mのグアニジンを含有するpH8.0の0.1Mトリス緩衝液中に10mg/mlである、約1:1モルの比率でペプチド断片を溶解させた。ベンジルメルカプタンおよびチオフェノールを2% (v/v)まで添加する結果として、pH約7 (チオールおよびTFAを添加することにより、凍結乾燥させたペプチドより低下させた)で1〜3mMの最終ペプチド濃度を得た。37℃の保温ブロック内でライゲーション反応を実施し、定期的にボルテックスして、チオール添加物を平衡化させた。反応が完了するまで、HPLCおよびESI-MSによりモニタリングした。各NCL (humVEGF26〜60+ humVEGF61〜104; humVEGF26〜67+ humVEGF68〜104)により、HPLCおよびESI-MSで同一であることが特定される還元型VEGF26〜104がもたらされた。
【0097】
red-humVEGF26〜104およびred-humVEGF25〜107の酸化的フォールディング:
0.1mg/mLの最終濃度で1.0mMシスチン(SS形態)および8.0mMシステイン(SH形態)を含有する1MグアニジンHClを伴うかまたは伴わない、0.1Mトリス緩衝液(pH8.0)中に、完全な還元型であるred-humVEGF26〜104およびred-humVEGF25〜107を溶解させ、室温で撹拌した。即座に、不完全または不正確なフォールドペプチドに対応する一部の幅広いピークに加えて、正確にフォールディングされたシスノット構造に対応する短い貯留時間(高い極性)の位置に鋭いピークが現れる。HPLC解析により、ピーク強度にさらなる変化が示されなかった場合(通常、約4時間後)、混合物を、調製用RP/C18カラムへと投入し、本発明者らによる標準的な手順(下記を参照されたい)に従い精製した。
【0098】
HPLCによる精製の一般的手順:
直線的なAB勾配を1〜2% B/分とする(溶媒Aを水中に0.05%のTFAとし、溶媒BをACN中に0.05%のTFAとする)、「DeltaPack」(内径25×100mmまたは40×210mm;粒子サイズ15μm;小孔径100Å;米国、Waters社製)または「Atlantis」(内径10×100mm;粒子サイズ5μm;米国、Waters社製)のRP-18調製用C18カラム上における逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)により、粗ペプチドを精製した。代替的に、Vydac C-18カラム(5μm、0.46×15cm)を用いるVarian Prostar社製システム上において解析的逆相HPLCを実施し、Vydac C-18カラム(10μm、1.0/2.5×25cm)を用いるWaters社製のシステム上において調製的逆相HPLCを実施した。水/0.1% TFA中におけるアセトニトリルの直線勾配を用いて、結合したペプチドを溶出させた。用いた流速は、1ml/分(解析的HPLC)および5/10ml/分(調製的HPLC)であった。
【0099】
RP-HPLC/ESI-MSによる解析:
直線的なAB勾配(5〜55% B、25% B/分)(溶媒Aを水中に0.05%のTFAとし、溶媒BをACN中に0.05%のTFAとする)を伴うRP-18調製用「BEH」カラム(内径2.1×50mm;粒子サイズ1.7mm;米国、Waters社製)を用いる「Acquity UPLC」(米国、Waters社製)上における逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)により、精製ペプチドの解析を実施した。ペプチドの一次イオン分子量は、エレクトロスプレーイオン化質量分析により決定した。
【0100】
ESI-MSによる解析:
HPLC試料に対するエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS))は、API-150シングル四重極質量分析器(Applied Biosystems社製)上で実施した。ペプチドの質量は、Analysisソフトウェアを用いて、ペプチドについて観察されたすべてのプロトン化状態に由来する、実験による質量対電荷(m/z)比から計算した。
【0101】
各ペプチドについて、以下の特徴を決定した。
【0102】
【表1】
【0103】
これらのデータおよび図1は、各種の異なる方法により、humVEGFtruncの各種形態を合成することができるが、結果は同一であることを示す。
【0104】
(実施例1B)
表面固定化oxid-humVEGF1〜165とのAvastin (商標)結合に対するoxid-humVEGF26〜104の阻害活性
結合ELISA法: ELISA法により、oxid-humVEGF26〜104およびhumVEGF1〜165に対する各種のmAb (Avastin (商標)、mAb 293、PDL抗体)の結合を決定した。したがって、室温において4時間にわたり、振とうしながら、リン酸緩衝液(0.1M、pH=5)中に0.2%のグルタルジアルデヒド100μL/ウェルでポリスチレン製96ウェルプレート(ドイツ、Greiner社製)を処理した後、リン酸緩衝液(0.1M、pH=8)で洗浄した(3×10分間)。次いで、37℃で3時間にわたり、ウェルを、リン酸緩衝液(0.1M、pH=8)中に1μg/mLのoxid-humVEGF26〜104/ humVEGF1〜165溶液100μL/ウェルでコーティングした後、室温で一晩にわたり静置した。1%Tween80による洗浄(3回にわたる)の後、第1のウェルにおける1/10の希釈率から始めて、後続のウェルで3倍ずつの希釈段階とした、ウマ血清(PBS/1%Tween80/3%NaCl中に4%)中の異なる多様な希釈率の抗体と共にプレートをインキュベートした。37℃で1時間にわたりインキュベーションを実施した後、1%Tween-80で洗浄した(3回にわたる)。次いで、25℃で1時間にわたり、プレートを、ペルオキシダーゼ標識したヤギ抗ラット血清(4%ウマ血清中における1/1000の希釈率;上記を参照されたい) 100μL/ウェルと共にインキュベートした後、1%Tween-80で洗浄した(4回にわたる)。最後に、プレートを、クエン酸/リン酸緩衝液(それぞれ0.1M、pH=4)中に0.006%のH2O2を含有する0.5μg/mLのABTS (2,2'-アジン-ジ(エチルベンズチアゾリンスルホネート))溶液と共にインキュベートした。45分後にOD450nm値を測定し、暗所内室温で静置した。
【0105】
競合的ELISA法: ELISA法における結合について説明した手順(上記を参照されたい)に主に従い、ELISA法による結合競合試験を実施した。量を減少させるoxid-humVEGF26〜104 (5μMで始め; 1/5ずつの希釈段階)およびhumVEGF1〜165 (陽性対照; 500nMで始め; 1/5ずつの希釈段階)の存在下において一定の抗体濃度(10ng/mLのAvastin (商標); 1.0〜1.5のOD450nm)で、抗体とのインキュベーションを実施した。
【0106】
図2のデータは、Avastin (商標)に対するoxid-humVEGF26〜104の結合が、アフィニティーにおいて5倍未満の差(humVEGF1〜165と比較して)であるのに対し、Avastin (商標)に対する、humVEGFのベータ3ループに由来する(環状)ペプチド模倣体の結合活性は>10000倍小さかったことを示す。これは、本発明によるこの新規の技法を用いてhumVEGF上における不連続なAvastin (商標)結合部位を再構成する上で、大きな前進がなされたことを示す。
【0107】
(実施例1C)
ラットおよびマウスにおいてVEGF中和抗体およびVEGF中和血清を作製するためのoxid-humVEGF26〜104の使用
雌ウィスターラットおよび雌Balb/Cマウスにおいて、oxid-humVEGF26〜104 (キャリアタンパク質へとコンジュゲートしていない!!)を用いる免疫化実験を実施した。
A)表面固定化したhumVEGF1〜165に対する結合(力価決定)
B)表面固定化したhumVEGF1〜165に対するAvastin (商標)結合を阻害する能力
C) BaF3細胞増殖アッセイにおけるhumVEGF1〜165についての中和活性
について抗血清を解析した。これらの試験の結果を、下記および図3〜6に示す。
【0108】
免疫化プロトコール:
ウィスターラット: 0日目に、1:1 (v/v)のPBS/CoVaccine (PBS=リン酸緩衝生理食塩液)中に375μg/mLのhumVEGF26〜104溶液400μL (筋肉内+皮下; 200μLずつ)により、雌ウィスターラットを抗humVEGF26〜104抗体で免疫化した後、2および4週間後において、追加投与(同じ量および濃度)を行った。次いで、6週間後に、ラットから採血し、抗血清を回収した。抗VEGF抗体の力価は、下記で説明する通りに決定した。
【0109】
Balb/Cマウス: 2つの異なる製剤、すなわち、CFA/IFAアジュバント(第1群: 2匹の動物)による製剤と、CoVaccineアジュバント(第2群: 3匹の動物)による製剤とを用いて、雌Balb/Cマウスにおいて、oxid-humVEGF26〜104による免疫化を実施した。0日目に、腹腔内(i.p.)における、2:3 (v/v)のPBS/CFA (PBS=リン酸緩衝生理食塩液; CFA=完全フロイントアジュバント)中に1.0mg/mLのoxid-humVEGF26〜104溶液250μLにより、第1群の動物(2匹)を免疫化した後、4週間後において、追加投与(同じ量、方法、および濃度; CFAの代わりに、不完全フロイントアジュバント(IFA))を行った。0日目に、1:1 (v/v)のPBS/CoVaccine (PBS=リン酸緩衝生理食塩液)中に1.25mg/mLのVEGF26〜104溶液210μL (筋肉内+皮下; 105μLずつ)により、第2群の動物(3匹)を免疫化した後、2および4週間後において、追加投与(同じ量、方法、および濃度)を行った。次いで、6週間後に、5匹すべてのマウスから採血し、抗血清を回収した。抗VEGF抗体の力価は、下記で説明する通りに決定した。
【0110】
ELISA法による力価の決定:
そのOD450nmが緩衝液の4×OD450nmと等しい血清希釈率を決定することにより、力価を計算した(「実施例1B: ELISA結合試験」を参照されたい)。力価により、希釈率倍数の負の10log値(1/10=1、1/100=2、1/1000=3、1/10000=4など)が定義される。
【0111】
【表2】
【0112】
Avastin (商標)を伴うラット抗血清についてのELISA競合試験:
ELISA法における結合について説明した手順(上記を参照されたい)に主に従い、ELISA法による結合競合試験を実施した。量を減少させるラット抗血清(1/5で始め;さらに1/3ずつの希釈段階)の存在下において一定のAvastin (商標)濃度(10ng/mL; 1.0〜1.5のOD450nm)で、抗体とのインキュベーションを実施した。
【0113】
BaF3細胞増殖アッセイにおける中和:
アッセイにおいて用いられる細胞は、ヒト(h) VEGF受容体2を安定的に発現する、マウスプレBリンパ球(Makinenら、2001年)である。これらの組換え細胞は、IL-3 (親細胞の存続に必要とされる天然のサイトカイン)またはhumVEGFの存在下に限り、存続/増殖する。実験を行うには、humVEGFに依存する増殖能力について調べうるように、培地からIL-3を除去しなければならない。
【0114】
Ba/F3 R2細胞は、10%のウシ胎仔血清(Perbio社製;型番CH30160.03)、2mMのL-グルタミン(Sigma社製;型番G7513)、2ng/mlのmIL-3 (Calbiochem社製;型番407631)、および500μg/mlのZeocin (Invitrogen社製;型番450430)を含有するDMEM (Gibco社製;型番31885)中において増殖させた。5%のCO2/95%の空気による雰囲気を伴う加湿式インキュベーター内、37℃で細胞を増殖させた。
【0115】
異なる濃度のhumVEGF (+humVEGF)または培地(-humVEGF)を、細胞へと直接添加する(増殖効率を調べる)か、または異なる濃度のAvastin (商標) (陽性対照)、異なる濃度のラット血清もしくはマウス血清と共に1時間にわたりプレインキュベートし、次いで、細胞へと添加(阻害実験の場合)した。2日後、WST-1 (Roche社製;型番1644807)を添加することにより、細胞の増殖を測定した。アッセイのグラフ表示については、図9を参照されたい。
【0116】
WST-1アッセイは、ミトコンドリアにおけるコハク酸デヒドロゲナーゼ活性の測定に基づく。この酵素を適正に機能させるには、この細胞器官が完全であることが必要であり、これが、培養物中に存在する増殖細胞数についての良好な指標である。テトラゾリウム塩(WST-1)は、酵素作用を介して、暗色の可溶性代謝物(ホルマザン)を生成させ、次いで、ELISAリーダーで吸光度(450nm)を測定することによりこれが定量化されるので、WST-1が基質として用いられる。アッセイで測定される吸光度がより高値であるほど、増殖度が強い。吸光度は、増殖度と正の相関を示す。実験を、3連で3回にわたり繰り返したところ、全体的に同様の結果が示された。
【0117】
得られたデータは、雌ウィスターラットおよび雌Balb/Cマウスのいずれにおいても、oxid-humVEGF26〜104 (キャリアタンパク質へとコンジュゲートしていない!!)による免疫化を介して、高レベルの抗体を生成させることに成功したことを示す。この方法で生成された抗血清は、BaF3細胞増殖アッセイにおいて、humVEGF1〜165に対する強力な中和活性(図3〜6)、ならびにhumVEGFに対するAvastin (商標)結合を阻害する能力(図7)を示す。
【0118】
(実施例1D)
oxid-humVEGF26〜104がそれ自体でBaF3細胞の増殖を誘導することはない
humVEGF1〜165の切断形態であるoxid-humVEGF26〜104がまた、BaF3細胞の増殖も誘導しうるかどうかを確認するために、本発明者らは、多様な量のoxid-humVEGF26〜104 (0.01〜20ng/mL)の存在下における細胞の増殖を測定した。oxid-humVEGF26〜104が、humVEGF1〜165自体の増殖能を増強または阻害しうるかどうかを確認するために、humVEGF1〜165=1.2ng/mLの存在下において、oxid-humVEGF26〜104の量を変化させる実験もまた実施した。
【0119】
図8に示す結果により、BaF3細胞の増殖におけるoxid-humVEGF26〜104の活性も、humVEGF1〜165の増殖能に対する影響も存在しないことが明確に示される。
【0120】
(実施例1E)
ヒトLS174T腫瘍細胞を接種されたSwiss nu/nuマウスにおける、抗humVEGF26〜104ラット抗血清による受動免疫化試験:抗humVEGF26〜104抗血清の腫瘍縮小可能性の原理に対するin vivoにおける証明
抗humVEGF26〜104抗血清の腫瘍縮小可能性を裏付けるために、試験開始時において6週齢であった30匹の雄のSwiss nu/nuマウス(Charles River社製)において、以下の免疫化実験を実施した。動物は、以下の3つの治療群に分割した。
第1群: PBS群(n=10;陰性対照群):腫瘍細胞接種後における腹腔内(i.p.) PBS注射(500μl)。
第2群: oxid-humVEGF26〜104群(n=10):腫瘍細胞接種後における、IgGで精製した抗VEGFペプチドラット抗血清のi.p.注射(500μl)。
第3群: Avastin (商標)群(n=10:陽性対照群):腫瘍細胞接種後における、抗humVEGF mAbであるAvastin (商標)のi.p.注射(500μl)。
【0121】
試験の1日目において、30匹のマウスすべてに、100μLの溶液中に懸濁させた1000万個のヒトLS174T腫瘍細胞を、皮下注射した(右脇腹)。腫瘍の取込みは、約100%であった。その後、1日目、8日目、および15日目において、マウスに、A) PBS (第1群)、B)抗oxid-humVEGF26〜104ラット抗血清(5倍濃度のラット血清;第2群)、およびC) Avastin (商標) (第3群)をi.p.注射(500μl)した。抗oxid-humVEGF26〜104ラット血清は、CoVaccineアジュバントを用いて、250マイクログラムのhumVEGF26〜104を投与(0日目、14日目、28日目、および49日目における接種; 63日目における採血)する、別個の4回にわたる実験において、総数20匹の雄ウィスターラットを免疫化することにより得た。結果として得られるラット血清を、アフィニティークロマトグラフィー(ProtGカラム)により精製し、5倍に濃縮した。これらのうちでもっとも強力な10の抗血清(BaF3アッセイにおけるin vitroの中和データに基づく;前出の実施例を参照されたい)をプールし、治療群2における10匹のマウスに接種するのに用いた。腫瘍細胞接種後の1日目から始めて、1日おきに、腫瘍の長さおよび幅を測定した。腫瘍の容量は、式(幅2×長さ)/2 (文献6)を用いて推定した。データを図12に示す。
【0122】
上記に示したデータにより、以下の結論が導かれる。
1. 抗oxid-humVEGF26〜104抗血清は、マウスにおける腫瘍の増殖を強力に縮小させる能力を有する。
2. この実験環境において、抗oxid-humVEGF26〜104抗血清による治療について観察された効果は、目視において、Avastin (商標)についての場合を顕著に上回った。
3. 抗oxid-humVEGF26〜104抗体によりヌードマウスを治療したところ、動物すべてによる受容は良好であり、したがって、毒性ではない!
【0123】
(実施例1F)
ラットにおけるoxid-ラットVEGF26〜104の免疫原性
oxid-ラットVEGF26〜104のペプチド配列:
アセチル-C1RPIETLVDIFQEYPDEIEYIFKPSAVPLMRC2AGAC3NDEALE C4VPTSESNVTMQIMRIKPHQSQHIGEMSFLQHSRC5EC6-アミド
【0124】
固相におけるラットVEGF26〜104の合成: humVEGF26〜104について説明した標準的な手順(実施例1Aを参照されたい)に従い、Rink-アミド樹脂(0.1ミリモル/gまで投入する)上における通常の固相合成により、ラットVEGF26〜104を合成した。その後の酸化的リフォールディングも、humVEGF26〜104について説明したのとまったく同じように実施した。red-ラットVEGF26〜104およびoxid-ラットVEGF26〜104のいずれも、調製的高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により精製した。いずれのペプチドも、解析的HPLCおよびエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)により特徴づけした。
【0125】
通常、タンパク質またはそれらの断片が酸化的にリフォールドされた場合に観察される、特徴的な低Rf値へのシフト(48.5% ACNから41.3% ACNへ、下記の表を参照されたい)により、red-ラットVEGF26〜104のリフォールディングの成功が裏付けられた。red-ラットVEGF26〜104が酸化的にリフォールドすると、完全なシスチンノット構造が実際に形成されていることが、低Rf値における新たなピークに特徴的な狭い形状により裏付けられる。
【0126】
酸化的なリフォールディングが生じると、ESI-MSスペクトルもまた著しい変化を受ける。何よりもまず、全体の質量が、6質量単位低下する(3つのジスルフィド結合が形成されることにより、合計6個のHが放出される)。さらに、極めて特徴的な、高m/z値へのMSシグナルのシフトも見られる。例えば、red-ラットVEGF26〜104のMSスペクトルは、M9+およびM10+の荷電分子種に最高強度のシグナルをもたらすが、これらのシグナルは消失し、はるかに低強度の、M5+におけるはるかに弱いシグナルが残存する(図13を参照されたい)。また、このシフトは、タンパク質が、それらの酸化天然構造へとフォールドするときに特徴的であり、red-ラットVEGF26〜104の酸化的リフォールディングが成功したことを示す。タンパク質またはタンパク質断片は、より縮合した構造を示すが、これはもはやそれほど多くの電荷を取り込むことができない、というのがその理由である。これに対して、還元型タンパク質による可撓性の伸長構造は、はるかに多くの電荷を保有しうる。
【0127】
【表3】
【0128】
この例は、雄ウィスターラットにおける、シスチンノットフォールド(oxid形態)が完全である、oxid-humVEGF26〜104およびoxid-ラットVEGF26〜104の両方による免疫化試験の結果について説明する。データは、oxid-ラットVEGF26〜104が、ラットにおいて抗体を生成させるのに、oxid-humVEGF26〜104と比較して同等に免疫原性であり、かつ強力であることを明確に示す。したがって、本特許において説明される切断型VEGFを用いて、例えば、この特定の場合における全長のホモ二量体VEGFタンパク質のような「自己タンパク質」に対する免疫忍容性を回避することができる。
【0129】
0日目に、CoVaccineをアジュバントとして用いる、250マイクログラムずつのoxid-ラットVEGF26〜104 (ラット2匹)またはoxid-humVEGF26〜104 (ラット2匹)により、合計4匹(2×2匹)のウィスターラットを免疫化した後、14日目、28日目、および42日目において、追加投与を行った。最終的には、56日目にラットから採血し、ラットVEGF1〜165、humVEGF1〜165、oxid-ラットVEGF26〜104、およびoxid-humVEGF26〜104に対する抗体力価について血清を解析した。抗体結合データ(の一部)を、Table 1 (表4)および図14に示す。Table 1 (表4)および図14のデータは、ラットにおいて、oxid-ラットVEGF26〜104により誘発される抗血清と、oxid-humVEGF26〜104により誘発される抗血清とに検出可能な差を示さず、これにより、ラットにおけるoxid-ラットVEGF26〜104(同種)は、oxid-humVEGF26〜104 (異種)と比較して同等に免疫原性であり、また、ホモ二量体VEGF1〜165タンパク質との交差反応性(Table 1C (表4))も示す、同等量の抗体を誘発しうることが強く示唆される。
【0130】
さらに、実験は、oxid-humVEGF26〜104を用いて、ヒトにおいて抗VEGFを誘発しうる事実、ならびに、oxid-humVEGF26〜104が、自己タンパク質に対する免疫忍容性の結果として免疫原性の欠如に見舞われることがない事実に対する、極めて強力な根拠をもたらす。
【0131】
【表4A】
【0132】
【表4B】
【0133】
(実施例1G)
humPLGF34〜112 (humPLGFtrunc)の合成
humPLGF34〜112のペプチド配列:
アセチル-C1RALERLVDVVSEYPSEVEHMFSPSAVSLLRC2TGAC3GDENL HC4VPVETANVTMQLLKIRSGDRPSYVELTFSQHVRC5EC6-アミド
X0=アセチル
Xl=RALERLVDVVSEYPSEVEHMFSPSAVSLLR (天然のCからAへの突然変異)
X2=TGA (天然のCからAへの突然変異)
X3=GDENLH
X4=VPVETANVTMQLLKIRSGDRPSYVELTFSQHVR
X5=E
X6=アミド
【0134】
固相におけるred-PLGF34〜112の合成:red- humVEGF26〜104について説明した標準的な手順(実施例1Eを参照されたい)に従い、Rink-アミド樹脂(0.1ミリモル/gまで投入する)上における通常の固相合成により、red-PLGF34〜112を合成した。その後の酸化的リフォールディングも、oxid-humVEGF26〜104について説明したのとまったく同じように実施した。red-humPLGF34〜112およびoxid-humPLGF34〜112のいずれも、調製的高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により精製した。いずれのペプチドも、解析的HPLCおよびエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)により特徴づけした。
【0135】
通常、タンパク質またはそれらの断片が酸化的にリフォールドされた場合に観察される、特徴的な低Rf値へのシフト(49% ACNから38.3% ACNへ、下記の表を参照されたい)により、red-humPLGF34〜112のリフォールディングの成功が裏付けられた。red-humPLGF34〜112が酸化的にリフォールドすると、完全なシスチンノット構造が実際に形成されていることが、低Rf値における新たなピークに特徴的な狭い形状により裏付けられる。
【0136】
酸化的なリフォールディングが生じると、ESI-MSスペクトルもまた著明な変化を被る。何よりもまず、全体の質量が、6質量単位低下する(3つのジスルフィド結合が形成されることにより、合計6個のHが放出される)。さらに、極めて特徴的な、高m/z値へのMSシグナルのシフトも見られる。例えば、red-humPLGF34〜112のMSスペクトルは、M6+〜M10+の荷電分子種に明瞭なシグナルをもたらすが、これらのシグナルは消失し、はるかに低強度の、M5+におけるはるかに弱いシグナルが残存する(図15を参照されたい)。また、このシフトは、タンパク質が、それらの酸化天然構造へとフォールドするときに特徴的であり、red-humPLGF34〜112のリフォールディングが成功したことを示す。タンパク質またはタンパク質断片は、より縮合した構造を示すが、これはもはやそれほど多くの電荷を取り込むことができない、というのがその理由である。これに対して、還元型タンパク質による可撓性の伸長構造は、はるかに多くの電荷を保有しうる。
【0137】
【表5】
【0138】
(実施例1H)
humSOST57〜144 (humSOSTtrunc)の合成
humSOST57〜144のペプチド配列:
ビオチン-GGGC1RELHFTRYVTDGPCRSAKPVTELVC2SGQC3GPARLLPNAIGRGKWWRPSGPDFRC4IPDRYRAQRVQLLCPGGEAPRARKVRLVASC5KC6#
X0=ビオチン-GGG
X1=RELHFTRYVTDGPCRSAKPVTELV
X2=SGQ
X3=GPARLLPNAIGRGKWWRPSGPDFR
X4=IPDRYRAQRVQLLCPGGEAPRARKVRLVAS
X5=K
X6=アミド
【0139】
red-humSOST57〜144の合成は、humVEGF26〜104について説明した、樹脂を投入した固相上では直接に実施することができなかった。したがって、より短い断片であるhumSOST-F1/3を合成し、その後、下記で説明する天然型化学的ライゲーション(NCL)によりライゲーションした。また、その後における完全red-humSOST57〜144の酸化的リフォールディングも、下記に説明する通りに実施した。断片humSOST-F1/3の固相による合成は、humVEGF26〜104について説明した標準的な手順に従い実施した。
【0140】
NCLによりhumSOST-F1/3を断片縮合してred-humSOST57〜144を得る(図式的概観については、図16を参照されたい)
まず、humSOST-F2と、humSOST-F3とを、NCL反応混合物(10Mの水酸化ナトリウムによりpH6.5に調整した、6Mのグアニジン、20mMのTCEP、200mMのMPAA、0.2Mのリン酸水素二ナトリウム)中において、1.2:1の比で溶解させ、室温で24時間にわたり反応させた。逆相HPLCによる精製後、チアプロリンにより保護されたhumSOST-F2/3を、収率66.5%で得た。その後、pH4.0のNCL緩衝液中0.02Mのメトキシアミンにより、60時間にわたりチアプロリンを脱保護した。次いで、pHを6.5に調整し、1.2等量のhumSOST-F1を添加し、1.5日間にわたり反応させた。RPLC/MSにより反応をモニタリングし、毎日40mMのTCEPを添加して、すべての試薬を完全に還元した。反応が完了した後、イオン交換クロマトグラフィーを用いて、その後、逆相HPLCにより粗red-humSOST57〜144を精製し、純粋なred-humSOST57〜144を24.2% (全体では16.1%)の収率で得た。
【0141】
【表6】
【0142】
red-humSOST57〜144の酸化的リフォールディングによりoxid-humSOST57〜144を得る
その後、55mMのトリス-HCl、21mMの塩化ナトリウム、0.88mMの塩化カリウム、0.48Lのアルギニン、20mMのグルタチオン-SH、および4mMのグルタチオン-SSを含有するpH8.0の緩衝液中に溶解させることにより、ペプチドred-humSOST57〜144 (2mg/ml)を天然の形でリフォールドさせた。ペプチドは時間をかけて酸化させ、4℃で3.5日後に収率10.2%のoxid-humSOST57〜144を得た(図17を参照されたい)。
【0143】
red-humSOST57〜144およびoxid-humSOST57〜144のいずれも、調製的高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により精製した。いずれの化合物も、解析的HPLCおよびエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS;下記を参照されたい)により特徴づけした。
【0144】
【表7】
【0145】
通常、タンパク質またはそれらの断片が酸化的にリフォールドされた場合に観察される、特徴的な低Rf値へのシフト(35% ACNから30% ACNへ;以下の表を参照されたい)により、humSOST57〜144のリフォールディングの成功が裏付けられた。酸化的リフォールディングが生じて、完全なシスチンノット構造が実際に形成されていることが、低Rf値における新たなピークに特徴的な狭い形状により裏付けられる。
【0146】
酸化的なリフォールディングが生じると、ESI-MSスペクトルもまた著明な変化を被る。何よりもまず、全体の質量が、8質量単位低下する(4つのジスルフィド結合が形成されることにより、合計8個のHが放出される)。さらに、極めて特徴的な、高m/z値へのMSシグナルのシフトも見られる。例えば、red-humSOST57〜144のMSスペクトルは、M8+〜M12+の荷電分子種に明瞭なシグナルをもたらすが、これらのシグナルは消失し、はるかに低強度の、M6+およびM7+におけるはるかに弱いシグナルが残存する(図18Dを参照されたい)。また、このシフトは、タンパク質が、それらの酸化天然構造へとフォールドするときに特徴的であり、red-humSOST57〜144のリフォールディングが成功したことを示す。タンパク質またはタンパク質断片は、より縮合した構造を示すが、これはもはやそれほど多くの電荷を取り込むことができない、というのがその理由である。これに対して、還元型タンパク質による可撓性の伸長構造は、はるかに多くの電荷を保有しうる。
【0147】
oxid-humSOST57〜144が、天然のシスチンノットフォールドを示すことをさらに裏付けるため、本発明者らは、oxid-humSOST57〜144を用いてファージディスプレイライブラリーから選択した3つのmAbシリーズについての結合データを示す。3つの抗oxid-humSOST57〜144抗体すべてが、
・ ELISA法において、oxid-humSOST57〜144に強力に結合すること;
・ ELISA法において、組換え全長humSOST/スクレロスチンに強力に結合すること;
・ ELISA法において、アミノ酸-humSOST57〜144にはまったく結合しないこと;
・ ELISA法において、他の3つの非類縁タンパク質にはまったく結合しないこと
が示された。
【0148】
まとめると、これらのデータは、全長humSOST/スクレロスチンの代わりにoxid-humSOST57〜144を用いて、ファージディスプレイライブラリー(PDL)から抗体を選択することができ、これにより、非類縁タンパク質と比べた、全長humSOST/スクレロスチンに対する完全な選択性および特異性が示され、したがって、oxid-humSOST57〜144は、抗体を作製および選択する目的で「容易に利用可能な」全長humSOST/スクレロスチンのタンパク質模倣体として用いうることを示す。
【0149】
(実施例1I)
humTGFB15〜111/Δ49〜77-humVEGF62〜67 (キメラhumTGFB2-humVEGFtrunc)の合成
この実施例で、本発明者らは、oxid-humTGFB15〜111の切断型タンパク質模倣体の合成において、ベータ2ループ(28アミノ酸長;一般的配列ではX3)が、humVEGFベータ2ループ(アミノ酸62〜67)で置換されたことを裏付ける。このTGFB15〜111/Δ49〜77-humVEGF62〜67の合成および(シスチンノットの)酸化的フォールディングが成功したことは、主に、異なるシスチンノットタンパク質一般の間におけるベータ2ループ配列の置換により、完全に相同なtruncペプチドについて観察される場合(他の実施例を参照されたい)と同様の、完全なシスチンノットのフォールドを形成する能力を保持するキメラペプチドがもたらされることを裏付ける例として援用される。
【0150】
humTGFB15〜111/Δ49〜77-humVEGF62〜67のペプチド配列:
アセチル-C1ALRPLYIDFKRDLGWKWIHEPKGYNANFC2AGAC3NDEGLE C4VSQDLEPLTILYYIGKTPKIEQLSNMIVKSC5KC6-アミド
X0=アセチル
X1=ALRPLYIDFKRDLGWKWIHEPKGYNANF (天然のCからAへの突然変異)
X2=AGA
X3=NDEGLE (humVEGF-Aのベータ2ループの配列;アミノ酸62〜67)
X4=VSQDLEPLTILYYIGKTPKIEQLSNMIVKS
X5=K
X6=アミド
【0151】
固相におけるred-humTGFB215〜111/Δ49〜77-humVEGF62〜67の合成: humVEGF26〜104について説明した標準的な手順(実施例1Aを参照されたい)に従い、Rink-アミド樹脂(0.1ミリモル/gまで投入する)上における通常の固相合成により、red-humTGFB215〜111/Δ49〜77-humVEGF62〜67を合成した。その後の酸化的リフォールディングも、humVEGF26〜104について説明したのとまったく同じように実施した。red-humTGFB215〜111/Δ49〜77-humVEGF62〜67およびoxid-humTGFB215〜111/Δ49〜77-humVEGF62〜67のいずれも、調製的高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により精製した。いずれのペプチドも、解析的HPLCおよびエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)により特徴づけした。
【0152】
酸化的にリフォールディングが生じると、特徴的な低Rf値へのシフト(46.8% ACNから42.0% ACNへ;下記の表を参照されたい) (他の実施例を参照されたい)により、red-humTGFB215〜111/Δ49〜77-humVEGF62〜67のリフォールディングの成功が裏付けられた。完全なシスチンノット構造が実際に形成されていることが、低Rf値における新たなピークに特徴的な狭い形状により裏付けられる。酸化的なリフォールディングが生じると、ESI-MSスペクトルもまた著明な変化を被る。何よりもまず、全体の質量が、6質量単位低下する(3つのジスルフィド結合が形成されることにより、合計6個のHが放出される)。さらに、極めて特徴的な、高m/z値へのMSシグナルのシフトも見られる。例えば、red-humTGFB15〜111/Δ49〜77-humVEGF62〜67のMSスペクトルは、M6+〜M11+の荷電分子種に明瞭シグナルをもたらすが、これらのシグナルは完全に消失し、はるかに低強度の、M5+におけるはるかに弱いシグナルが残存する(図20を参照されたい)。また、このシフトは、タンパク質が、それらの酸化天然構造へとフォールドするときに特徴的であり、humTGFB215〜111/Δ49〜77-humVEGF62〜67のリフォールディングが成功したことを示す。タンパク質またはタンパク質断片は、より縮合した構造を示すが、これはもはやそれほど多くの電荷を取り込むことができない、というのがその理由である。これに対して、red-humTGFB215〜111/Δ49〜77-humVEGF62〜67による可撓性の伸長構造は、はるかに多くの電荷を保有しうる。
【0153】
【表8】
【0154】
免疫化を介して抗TGF-B2抗体を生成させるのにoxid-humTGFB215〜111/Δ49〜77-humVEGF62〜67を用いうることを裏付けるため、本発明者らは、2匹のラットにおいて免疫化実験を実施した。各動物に、2×450マイクログラムおよび2×130マイクログラムのoxid-humTGFB215〜111/Δ49〜77-humVEGF62〜67による接種を4回にわたり(0、2、4、および7.5週間後)施した。ワクチン接種後の週数(wpv)9週間における抗血清を解析することにより、ELISA法において、免疫前血清の場合(力価≦2.1)と比較して強力な、全長TGF-B2に対する結合(力価3.8および4.1)が示され、それによりTGF-B2に特異的な抗体が免疫化時に生成されたことが示された。さらに、血清中における大半の抗体が、oxid-humTGFB215〜111/Δ49〜77-humVEGF62〜67内におけるVEGF部分(humVEGF62〜67)ではなくて、TGFB2部分を指向することも確認された。これは、humVEGF62〜67配列が、はるかに長いhumTGFB2のb2ループ(28アミノ酸)の良好な置換配列であるが、humTGF-B2特異的抗体が作製されることも、red-humTGFB215〜111/Δ49〜77-humVEGF62〜67がoxid-humTGFB215〜111/Δ49〜77-humVEGF62〜67へと酸化的にリフォールドされることも撹乱しないことを示す。
【0155】
これらのデータは、oxid-humTGFB215〜111/Δ49〜77-humVEGF62〜67を、TGF-B2の置換配列として用いて、天然タンパク質であるhumTGF-B2と完全に交差反応性である抗humTGFB2抗体を誘発しうることを裏付ける。
[参考文献]
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モチーフX0-C1-X1-C2-X2-C3-X3-C4-X4-C5-X5-C6-X6を有する、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーのタンパク質模倣体(式中、C1〜C6は、シスチンノット構造を形成するシステイン残基であり、C1がC4に連結され、C2がC5に連結され、C3がC6に連結され; X0およびX6は、互いに独立に、0〜10アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X2は、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーのC2とC3の間に位置するアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有する、2〜24アミノ酸残基の長さのアミノ酸配列を表し; X5は、1アミノ酸残基の長さのアミノ酸配列を表し; X1は、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーのC1とC2の間に位置するアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有する、15〜50アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X3は、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーのC3とC4の間に位置するアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有する、3〜36アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X4は、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーのC4とC5の間に位置するアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有する、15〜50アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表す)。
【請求項2】
X1、X2、X3、およびX4のそれぞれが、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーの同じメンバーのアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を表す、請求項1に記載のタンパク質模倣体。
【請求項3】
X1が、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーのアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を表し、X2、X3、および/またはX4が、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーの少なくとも1つの他のメンバーのアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を表す、請求項1に記載のタンパク質模倣体。
【請求項4】
X2がアミノ酸配列X2a-G-X2b (式中、X2aは任意のアミノ酸であるか、または存在せず、Gはグリシンであり、X2bは任意のアミノ酸である)を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のタンパク質模倣体。
【請求項5】
前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーが、糖タンパク質ホルモンベータ(GLHB)サブファミリー、血小板由来増殖因子(PDGF)サブファミリー、形質転換増殖因子ベータ(TGFベータ)サブファミリー、神経増殖因子(NGF)サブファミリー、糖タンパク質ホルモンアルファ(GLHA)サブファミリー、CTCKサブファミリー、ノギン様タンパク質サブファミリー、ムチン様タンパク質サブファミリー、ムチン様BMPアンタゴニストサブファミリー、ムチン様ヘモレクチンサブファミリー、スリット様タンパク質サブファミリー、およびジャッグド様タンパク質サブファミリーからなる群から選択されるメンバーである、請求項1から4のいずれか一項に記載のタンパク質模倣体。
【請求項6】
以下のコンセンサス配列:
- [GSRE]C3[KRL]G[LIVT][DE]XXX[YW]XSXC4;
- P[PSR]CVXXXRC2[GSTA]GCC3;
- [LIVM]XXPXX[FY]XXXXC2XGXC3;
- C2[STAGM]G[HFYL]C3X[ST];
- [PA]VAXXC5XC6XXCXXXX[STDAI][DEY]C;
- C2XGCC3[FY]S[RQS]A[FY]PTP;または
- CC4(X)13C(X)2[GN](X)12C5XC6(X)2,4C
(式中、
C2〜C6は、シスチンノット構造の一部であるシステイン残基であり;
Xは、任意のアミノ酸を意味し;
[GSRE]は、GまたはSまたはRまたはEを意味し; [KRL]は、KまたはRまたはLを意味し; [LIVT]は、LまたはIまたはVまたはTを意味し; [DE]は、DまたはEを意味し; [YW]は、YまたはWを意味し;
[PSR]は、PまたはSまたはRを意味し; [GSTA]は、GまたはSまたはTまたはAを意味し;
[LIVM]は、LまたはIまたはVまたはMを意味し; [FY]は、FまたはYを意味し;
[STAGM]は、SまたはTまたはAまたはGまたはMを意味し; [HFYL]は、HまたはFまたはYまたはLを意味し; [ST]は、SまたはTを意味し; [PA]は、PまたはAを意味し; [STDAI]は、SまたはTまたはDまたはAまたはIを意味し;
[DEY]は、DまたはEまたはYを意味し; [GN]は、GまたはNを意味し; [RQS]は、RまたはQまたはSを意味し;
(X)13は、13アミノ酸の配列を意味し; (X)2は、2アミノ酸の配列を意味し; (X)12は、12アミノ酸の配列を意味し; (X)2,4は、2、3、または4アミノ酸の配列を意味する)
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のタンパク質模倣体。
【請求項7】
前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーが血小板由来増殖因子(PDGF)サブファミリーメンバーであり、X2が3アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X5が1アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X1が29〜32アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X3が6〜12アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X4が32〜41アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表す、請求項1から6のいずれか一項に記載のタンパク質模倣体。
【請求項8】
前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーが胎盤増殖因子(PLGF)であり、前記タンパク質模倣体がアミノ酸配列
C1RALERLVDVVSEYPSEVEHMFSPSAVSLLRC2TGAC3GDENLHC4VPVETANVTMQLLKIRSGDRPSYVELTFSQHVRC5EC6 (PLGF34〜112)
からなる、請求項7に記載のタンパク質模倣体。
【請求項9】
前記メンバーがヒト血管内皮細胞増殖因子(hVEGF)であり、X0がアミノ酸配列KFMDVYQRSYを含み; X1がアミノ酸配列HPIETLVDIFQEYDPEIEYIFKPSAVPLMRを含み; X2がアミノ酸配列GGAを含み; X3がアミノ酸配列NDEGLEを含み; X4がアミノ酸配列VPTEESNITMQIMRIKPHQGQHIGEMSFLQHNKを含み; X5がアミノ酸配列Eを含み; X6がアミノ酸配列RPKKDRARQEを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のタンパク質模倣体。
【請求項10】
アミノ酸配列
C1HPIETLVDIFQEYDPEIEYIFKPSAVPLMRC2GGAC3NDEGLEC4VPTEESNITMQIMRIKPHQGQHIGEMSFLQHNKC5EC6 (VEGF26〜104)
からなる、請求項9に記載のタンパク質模倣体。
【請求項11】
前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーが糖タンパク質ホルモンベータ(GLHB)サブファミリーメンバーであり、X2が3アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X5が1アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X1が23〜28アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X3が18〜20アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X4が30〜33アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表す、請求項1から6のいずれか一項に記載のタンパク質模倣体。
【請求項12】
前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーが糖タンパク質ホルモンアルファ(GLHA)サブファミリーメンバーであり、X2が3アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X5が1アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X1が13〜17アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X3が27アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X4が20〜21アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表す、請求項1から6のいずれか一項に記載のタンパク質模倣体。
【請求項13】
前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーが神経増殖因子(NGF)サブファミリーメンバーであり、X2が9〜24アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X5が1アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X1が41〜44アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X3が11アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X4が27または28アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表す、請求項1から6のいずれか一項に記載のタンパク質模倣体。
【請求項14】
前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーが形質転換増殖因子ベータ(TGFベータ)サブファミリーメンバーであり、X2が3アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X5が1アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X1が23〜41アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X3が18〜36アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X4が27〜34アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表す、請求項1から6のいずれか一項に記載のタンパク質模倣体。
【請求項15】
アミノ酸配列
C1ALRPLYIDFKRDLGWKWIHEPKGYNANFC2AGAC3NDEGLEC4VSQDLEPLTILYYIGKTPKIEQLSNMIVKSC5KC6 (TGFB215〜111/Δ49〜77-VEGF62〜67)
からなる、請求項3に記載のタンパク質模倣体。
【請求項16】
前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーがCTCKサブファミリーメンバーであり、X2が2〜3アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X5が1アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X1が22〜35アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X3が4〜28アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X4が29〜41アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表す、請求項1から6のいずれか一項に記載のタンパク質模倣体。
【請求項17】
前記メンバーがスクレロスチンであり、前記タンパク質模倣体がアミノ酸配列
GGGC1RELHFTRYVTDGPCRSAKPVTELVC2SGQC3GPARLLPNAIGRGKWWRPSGPDFRC4IPDRYRAQRVQLLCPGGEAPRARKVRLVASC5KC6 (SOST67〜144)からなる、請求項16に記載のタンパク質模倣体。
【請求項18】
前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーがノギン様タンパク質サブファミリーメンバーであり、X2が4〜6アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X5が1アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X1が22アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X3が7〜9アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X4が35〜98アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表す、請求項1から5のいずれか一項に記載のタンパク質模倣体。
【請求項19】
前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーがコアグリン様タンパク質サブファミリーメンバーであり、X2が7アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X5が1アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X1が38アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X3が5アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X4が29アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表す、請求項1から5のいずれか一項に記載のタンパク質模倣体。
【請求項20】
前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーがジャッグド様タンパク質サブファミリーメンバーであり、X2が3アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X5が1アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X1が32アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X3が25アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X4が26アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表す、請求項1から5のいずれか一項に記載のタンパク質模倣体。
【請求項21】
配列C1-X1-C2-X2-C3-X3-C4-X4-C5-X5-C6を含み、前記配列が、図10の配列1〜145から選択される配列と少なくとも80%の配列同一性を有する、請求項1から20のいずれか一項に記載のタンパク質模倣体。
【請求項22】
請求項1から21のいずれか一項に記載のタンパク質模倣体と、薬学的に許容される担体、希釈剤および/または賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項23】
請求項1から21のいずれか一項に記載のタンパク質模倣体と、薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤および/またはアジュバントとを含む免疫原性組成物。
【請求項24】
前記タンパク質模倣体が、免疫原性担体、好ましくはジフテリア毒素(DT)および/またはスカシガイヘモシアニン(KLH)に連結される、請求項23に記載の免疫原性組成物。
【請求項25】
シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーと関連する障害を治療および/または予防するための薬物および/または予防剤を調製するための、請求項1から21のいずれか一項に記載のタンパク質模倣体の使用。
【請求項26】
腫瘍関連疾患および/または加齢黄斑変性(AMD)を治療および/または予防するための薬物および/または予防剤を調製するための、請求項1から21のいずれか一項に記載のタンパク質模倣体の使用であって、前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーがVEGFサブファミリーまたはTGFベータサブファミリーのメンバーである使用。
【請求項27】
シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーと関連する障害を治療または予防する方法であって、治療有効量の、請求項1から21のいずれか一項に記載のタンパク質模倣体を、前記障害に罹患するか、またはこれに罹患する危険性を示す対象に投与するステップを含む方法。
【請求項28】
前記障害が腫瘍関連疾患および/または加齢黄斑変性(AMD)を含み、前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーがVEGFサブファミリーまたはTGFベータサブファミリーのメンバーである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーに対する抗体を作製する方法であって、請求項1から21のいずれか一項に記載のタンパク質模倣体、および/または請求項23もしくは24に記載の免疫原性組成物を、非ヒト動物に投与するステップと、前記動物により生成される、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーに対する抗体を得るステップとを含む方法。
【請求項30】
女性個体における妊娠の可能性を低下させる方法であって、前記女性または前記女性の性的パートナーに、有効量の、請求項1から21のいずれか一項に記載のタンパク質模倣体、請求項23もしくは24に記載の免疫原性組成物、および/または請求項29に記載の方法により得ることが可能な抗体、または前記抗体の機能的部分もしくは機能的同等物を投与するステップを含み、前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーがGLHAサブファミリーまたはGLHBサブファミリーのメンバーである方法。
【請求項31】
シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーに対する抗体に結合し、かつ/またはこれを中和する方法であって、治療有効量の、請求項1から21のいずれか一項に記載のタンパク質模倣体を、前記抗体を含む対象に投与するステップを含む方法。
【請求項32】
前記抗体がAvastin (商標)であり、前記タンパク質模倣体がoxid-VEGF26〜104である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーに対する抗体を中和する薬剤を製造するための、請求項1から21のいずれか一項に記載のタンパク質模倣体の使用。
【請求項34】
前記抗体がAvastin (商標)であり、前記タンパク質模倣体がoxid-VEGF26〜104である、請求項33に記載の使用。
【請求項1】
モチーフX0-C1-X1-C2-X2-C3-X3-C4-X4-C5-X5-C6-X6を有する、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーのタンパク質模倣体(式中、C1〜C6は、シスチンノット構造を形成するシステイン残基であり、C1がC4に連結され、C2がC5に連結され、C3がC6に連結され; X0およびX6は、互いに独立に、0〜10アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X2は、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーのC2とC3の間に位置するアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有する、2〜24アミノ酸残基の長さのアミノ酸配列を表し; X5は、1アミノ酸残基の長さのアミノ酸配列を表し; X1は、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーのC1とC2の間に位置するアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有する、15〜50アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X3は、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーのC3とC4の間に位置するアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有する、3〜36アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X4は、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーのC4とC5の間に位置するアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有する、15〜50アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表す)。
【請求項2】
X1、X2、X3、およびX4のそれぞれが、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーの同じメンバーのアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を表す、請求項1に記載のタンパク質模倣体。
【請求項3】
X1が、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーのアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を表し、X2、X3、および/またはX4が、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーの少なくとも1つの他のメンバーのアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を表す、請求項1に記載のタンパク質模倣体。
【請求項4】
X2がアミノ酸配列X2a-G-X2b (式中、X2aは任意のアミノ酸であるか、または存在せず、Gはグリシンであり、X2bは任意のアミノ酸である)を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のタンパク質模倣体。
【請求項5】
前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーが、糖タンパク質ホルモンベータ(GLHB)サブファミリー、血小板由来増殖因子(PDGF)サブファミリー、形質転換増殖因子ベータ(TGFベータ)サブファミリー、神経増殖因子(NGF)サブファミリー、糖タンパク質ホルモンアルファ(GLHA)サブファミリー、CTCKサブファミリー、ノギン様タンパク質サブファミリー、ムチン様タンパク質サブファミリー、ムチン様BMPアンタゴニストサブファミリー、ムチン様ヘモレクチンサブファミリー、スリット様タンパク質サブファミリー、およびジャッグド様タンパク質サブファミリーからなる群から選択されるメンバーである、請求項1から4のいずれか一項に記載のタンパク質模倣体。
【請求項6】
以下のコンセンサス配列:
- [GSRE]C3[KRL]G[LIVT][DE]XXX[YW]XSXC4;
- P[PSR]CVXXXRC2[GSTA]GCC3;
- [LIVM]XXPXX[FY]XXXXC2XGXC3;
- C2[STAGM]G[HFYL]C3X[ST];
- [PA]VAXXC5XC6XXCXXXX[STDAI][DEY]C;
- C2XGCC3[FY]S[RQS]A[FY]PTP;または
- CC4(X)13C(X)2[GN](X)12C5XC6(X)2,4C
(式中、
C2〜C6は、シスチンノット構造の一部であるシステイン残基であり;
Xは、任意のアミノ酸を意味し;
[GSRE]は、GまたはSまたはRまたはEを意味し; [KRL]は、KまたはRまたはLを意味し; [LIVT]は、LまたはIまたはVまたはTを意味し; [DE]は、DまたはEを意味し; [YW]は、YまたはWを意味し;
[PSR]は、PまたはSまたはRを意味し; [GSTA]は、GまたはSまたはTまたはAを意味し;
[LIVM]は、LまたはIまたはVまたはMを意味し; [FY]は、FまたはYを意味し;
[STAGM]は、SまたはTまたはAまたはGまたはMを意味し; [HFYL]は、HまたはFまたはYまたはLを意味し; [ST]は、SまたはTを意味し; [PA]は、PまたはAを意味し; [STDAI]は、SまたはTまたはDまたはAまたはIを意味し;
[DEY]は、DまたはEまたはYを意味し; [GN]は、GまたはNを意味し; [RQS]は、RまたはQまたはSを意味し;
(X)13は、13アミノ酸の配列を意味し; (X)2は、2アミノ酸の配列を意味し; (X)12は、12アミノ酸の配列を意味し; (X)2,4は、2、3、または4アミノ酸の配列を意味する)
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のタンパク質模倣体。
【請求項7】
前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーが血小板由来増殖因子(PDGF)サブファミリーメンバーであり、X2が3アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X5が1アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X1が29〜32アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X3が6〜12アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X4が32〜41アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表す、請求項1から6のいずれか一項に記載のタンパク質模倣体。
【請求項8】
前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーが胎盤増殖因子(PLGF)であり、前記タンパク質模倣体がアミノ酸配列
C1RALERLVDVVSEYPSEVEHMFSPSAVSLLRC2TGAC3GDENLHC4VPVETANVTMQLLKIRSGDRPSYVELTFSQHVRC5EC6 (PLGF34〜112)
からなる、請求項7に記載のタンパク質模倣体。
【請求項9】
前記メンバーがヒト血管内皮細胞増殖因子(hVEGF)であり、X0がアミノ酸配列KFMDVYQRSYを含み; X1がアミノ酸配列HPIETLVDIFQEYDPEIEYIFKPSAVPLMRを含み; X2がアミノ酸配列GGAを含み; X3がアミノ酸配列NDEGLEを含み; X4がアミノ酸配列VPTEESNITMQIMRIKPHQGQHIGEMSFLQHNKを含み; X5がアミノ酸配列Eを含み; X6がアミノ酸配列RPKKDRARQEを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のタンパク質模倣体。
【請求項10】
アミノ酸配列
C1HPIETLVDIFQEYDPEIEYIFKPSAVPLMRC2GGAC3NDEGLEC4VPTEESNITMQIMRIKPHQGQHIGEMSFLQHNKC5EC6 (VEGF26〜104)
からなる、請求項9に記載のタンパク質模倣体。
【請求項11】
前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーが糖タンパク質ホルモンベータ(GLHB)サブファミリーメンバーであり、X2が3アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X5が1アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X1が23〜28アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X3が18〜20アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X4が30〜33アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表す、請求項1から6のいずれか一項に記載のタンパク質模倣体。
【請求項12】
前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーが糖タンパク質ホルモンアルファ(GLHA)サブファミリーメンバーであり、X2が3アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X5が1アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X1が13〜17アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X3が27アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X4が20〜21アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表す、請求項1から6のいずれか一項に記載のタンパク質模倣体。
【請求項13】
前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーが神経増殖因子(NGF)サブファミリーメンバーであり、X2が9〜24アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X5が1アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X1が41〜44アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X3が11アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X4が27または28アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表す、請求項1から6のいずれか一項に記載のタンパク質模倣体。
【請求項14】
前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーが形質転換増殖因子ベータ(TGFベータ)サブファミリーメンバーであり、X2が3アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X5が1アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X1が23〜41アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X3が18〜36アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X4が27〜34アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表す、請求項1から6のいずれか一項に記載のタンパク質模倣体。
【請求項15】
アミノ酸配列
C1ALRPLYIDFKRDLGWKWIHEPKGYNANFC2AGAC3NDEGLEC4VSQDLEPLTILYYIGKTPKIEQLSNMIVKSC5KC6 (TGFB215〜111/Δ49〜77-VEGF62〜67)
からなる、請求項3に記載のタンパク質模倣体。
【請求項16】
前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーがCTCKサブファミリーメンバーであり、X2が2〜3アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X5が1アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X1が22〜35アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X3が4〜28アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X4が29〜41アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表す、請求項1から6のいずれか一項に記載のタンパク質模倣体。
【請求項17】
前記メンバーがスクレロスチンであり、前記タンパク質模倣体がアミノ酸配列
GGGC1RELHFTRYVTDGPCRSAKPVTELVC2SGQC3GPARLLPNAIGRGKWWRPSGPDFRC4IPDRYRAQRVQLLCPGGEAPRARKVRLVASC5KC6 (SOST67〜144)からなる、請求項16に記載のタンパク質模倣体。
【請求項18】
前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーがノギン様タンパク質サブファミリーメンバーであり、X2が4〜6アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X5が1アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X1が22アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X3が7〜9アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X4が35〜98アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表す、請求項1から5のいずれか一項に記載のタンパク質模倣体。
【請求項19】
前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーがコアグリン様タンパク質サブファミリーメンバーであり、X2が7アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X5が1アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X1が38アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X3が5アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X4が29アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表す、請求項1から5のいずれか一項に記載のタンパク質模倣体。
【請求項20】
前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーがジャッグド様タンパク質サブファミリーメンバーであり、X2が3アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X5が1アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X1が32アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X3が25アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表し; X4が26アミノ酸の長さのアミノ酸配列を表す、請求項1から5のいずれか一項に記載のタンパク質模倣体。
【請求項21】
配列C1-X1-C2-X2-C3-X3-C4-X4-C5-X5-C6を含み、前記配列が、図10の配列1〜145から選択される配列と少なくとも80%の配列同一性を有する、請求項1から20のいずれか一項に記載のタンパク質模倣体。
【請求項22】
請求項1から21のいずれか一項に記載のタンパク質模倣体と、薬学的に許容される担体、希釈剤および/または賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項23】
請求項1から21のいずれか一項に記載のタンパク質模倣体と、薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤および/またはアジュバントとを含む免疫原性組成物。
【請求項24】
前記タンパク質模倣体が、免疫原性担体、好ましくはジフテリア毒素(DT)および/またはスカシガイヘモシアニン(KLH)に連結される、請求項23に記載の免疫原性組成物。
【請求項25】
シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーと関連する障害を治療および/または予防するための薬物および/または予防剤を調製するための、請求項1から21のいずれか一項に記載のタンパク質模倣体の使用。
【請求項26】
腫瘍関連疾患および/または加齢黄斑変性(AMD)を治療および/または予防するための薬物および/または予防剤を調製するための、請求項1から21のいずれか一項に記載のタンパク質模倣体の使用であって、前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーがVEGFサブファミリーまたはTGFベータサブファミリーのメンバーである使用。
【請求項27】
シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーと関連する障害を治療または予防する方法であって、治療有効量の、請求項1から21のいずれか一項に記載のタンパク質模倣体を、前記障害に罹患するか、またはこれに罹患する危険性を示す対象に投与するステップを含む方法。
【請求項28】
前記障害が腫瘍関連疾患および/または加齢黄斑変性(AMD)を含み、前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーがVEGFサブファミリーまたはTGFベータサブファミリーのメンバーである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーに対する抗体を作製する方法であって、請求項1から21のいずれか一項に記載のタンパク質模倣体、および/または請求項23もしくは24に記載の免疫原性組成物を、非ヒト動物に投与するステップと、前記動物により生成される、シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーに対する抗体を得るステップとを含む方法。
【請求項30】
女性個体における妊娠の可能性を低下させる方法であって、前記女性または前記女性の性的パートナーに、有効量の、請求項1から21のいずれか一項に記載のタンパク質模倣体、請求項23もしくは24に記載の免疫原性組成物、および/または請求項29に記載の方法により得ることが可能な抗体、または前記抗体の機能的部分もしくは機能的同等物を投与するステップを含み、前記シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーがGLHAサブファミリーまたはGLHBサブファミリーのメンバーである方法。
【請求項31】
シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーに対する抗体に結合し、かつ/またはこれを中和する方法であって、治療有効量の、請求項1から21のいずれか一項に記載のタンパク質模倣体を、前記抗体を含む対象に投与するステップを含む方法。
【請求項32】
前記抗体がAvastin (商標)であり、前記タンパク質模倣体がoxid-VEGF26〜104である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
シスチンノット増殖因子スーパーファミリーメンバーに対する抗体を中和する薬剤を製造するための、請求項1から21のいずれか一項に記載のタンパク質模倣体の使用。
【請求項34】
前記抗体がAvastin (商標)であり、前記タンパク質模倣体がoxid-VEGF26〜104である、請求項33に記載の使用。
【図1】
【図10】
【図10.1】
【図10.2】
【図10.3】
【図10.4】
【図10.5】
【図10.6】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図10】
【図10.1】
【図10.2】
【図10.3】
【図10.4】
【図10.5】
【図10.6】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
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【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公表番号】特表2012−517425(P2012−517425A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549107(P2011−549107)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【国際出願番号】PCT/NL2010/050053
【国際公開番号】WO2010/090523
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(511192090)ペプスキャン・システムズ・ベー・フェー (1)
【出願人】(511192230)ユニフェルシタイト・マーストリヒト (2)
【出願人】(511192241)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【国際出願番号】PCT/NL2010/050053
【国際公開番号】WO2010/090523
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(511192090)ペプスキャン・システムズ・ベー・フェー (1)
【出願人】(511192230)ユニフェルシタイト・マーストリヒト (2)
【出願人】(511192241)
【Fターム(参考)】
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