説明

切断工具

【課題】天井材や壁板などに点検口などを形成する(くり抜く)切断工具において、集塵ケースによって切り屑の飛散を抑えつつ、ベースの高さ調整による刃物の突出長(出代)の変更を容易に行えるようにする。
【解決手段】保持部材6によって、モータや駆動力の伝達機構などの駆動手段が収容された本体2からベース3を任意の間隔で保持可能として、前記のように刃物4の突出長(出代)の変更を容易に行えるようにする。一方、集塵ケース5はベース3に固着するようにし、その集塵ケース5において刃物4に駆動力を伝達する駆動アーム20が遊挿する窓55にシール部材7を嵌め込んで本体2と集塵ケース5とを気密に区画する。したがって、前記ベース3の高さ調整による刃物4の突出長の調整を可能にしても、本体2側へ切り屑が侵入することはなく、また窓55から外部への切り屑の飛散を抑えることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石膏ボードやロックウール板等から成る天井材や壁板を切断するために用いられる切断工具に関する。
【背景技術】
【0002】
前記のような天井材や壁板等において、たとえばダウンライトの収納孔や点検口を形成したりする(くり抜く)ために用いられる切断工具は、特に天井材の場合に上向きで使用されたり、切り屑が細かな粉体になる等の理由で、前記切り屑が飛び散らないような工夫が必要である。このため本件出願人は、先に特許文献1において、前記天井材や壁板等に密着するソリ型のベースに刃物が突出する長孔を形成し、前記刃物の略往復運動(楕円運動)によってその長孔から吹出した切り屑を、前記ベースに密着させた集塵ケースで受け止めるようになっている。これによって、掃除機などの集塵手段を設けたり、作業者が眼鏡やマスクを付けたりすることなく、前記切り屑の飛散を抑えた良好な作業性で前記収納孔や点検口のくり抜き作業を行えるようになっている。
【特許文献1】特開平6−155403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の従来技術では、前記ベースは、モータや駆動力の伝達機構などを内蔵する本体に固定されており、使い勝手の面で改善が望まれる。具体的には、ベースと本体との間隔、すなわち刃物の突出長(出代)を変えたりすることが望まれる。これは、前記刃物の突出長は、駆動アームに対する刃物の締付け位置を変えることでも調整可能であるが、壁裏の配線や構造物に合わせて、いちいち刃物の締付け位置を調整するのは煩雑なためである。
【0004】
本発明の目的は、切断工具に集塵ケースを設けるにあたって、利便性を向上することができる切断工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の切断工具は、駆動手段を収容する本体と、前記本体に取付けられるベースと、前記ベースに穿設された刃孔から突出し、前記本体から延びる駆動アームによって略往復動される刃物とを備える切断装置において、前記ベースを前記本体に対して任意の間隔で保持する保持部材と、有底筒状に形成されて前記ベース側が開放するとともに、前記駆動アームが遊挿する窓が形成されて前記ベースに固着される集塵ケースと、前記窓に嵌め込まれ、略中央部に形成された孔から前記駆動アームが突出し、前記本体と前記集塵ケースとを気密に区画するシール部材とを含むことを特徴とする。
【0006】
上記の構成によれば、天井材や壁板などに点検口などを形成する(くり抜く)切断工具において、前記天井材や壁板などの表面を摺動してゆくベースに切り屑を受け止める集塵ケースを設けるにあたって、該集塵ケースをベースに固着するようにし、かつその集塵ケースは有底筒状に形成されて前記ベース側が開放するとともに、本体側の側壁に窓を形成しておく。そして、前記本体内に収容されたモータなどの駆動手段で発生された駆動力が前記窓を遊挿する駆動アームによって集塵ケース内に収容される刃物に伝達されて該刃物を略往復動させるにあたって、その窓に、略中央部に形成された孔から前記駆動アームが突出するシール部材を嵌め込んで前記本体と前記集塵ケースとを気密に区画する。
【0007】
したがって、保持部材によって前記ベースを前記本体に対して任意の間隔で保持可能としても、モータや駆動力の伝達機構などの駆動手段が収容された本体側へ切り屑が侵入することはなく、また前記窓から外部へ切り屑が飛散することはなく、壁裏の配線や構造物に合わせて刃物の突出長(出代)を容易に変更することができ、利便性を向上することができる。
【0008】
また、本発明の切断工具は、前記集塵ケースが透明であることを特徴とする。
【0009】
上記の構成によれば、作業者が刃先の位置を確認することができ、くり抜き作業を正確に行うことができる。
【0010】
さらにまた、本発明の切断工具では、前記ベースは、前記刃孔を有し、前記保持部材によって前記本体に取付けられる第1の部材と、前記刃孔より大きく、かつ前記第1の部材によって閉塞可能な開口部を有し、第1の部材より大面積の第2の部材と、前記第1の部材に対して第2の部材の面方向の位置を調整可能に連結する連結部材とを備えて構成されることを特徴とする。
【0011】
上記の構成によれば、前記ベースを、2枚の板状の部材と、それらを連結するビスなどの連結部材とによって構成し、前記保持部材によって前記本体に取付けられる第1の部材を小面積に、実際に前記天井材や壁板などの表面を摺動する第2の部材を大面積に形成するとともに、前記刃物が遊挿する刃孔を第1の部材に形成し、第2の部材側には前記第1の部材によって閉塞される大きな開口部を形成しておく。
【0012】
したがって、前記刃物が前記開口部を遊挿可能な範囲で第2の部材をずらして取付けても、切り屑は前記開口部から刃孔を通って集塵ケースに入り込み、外部へ飛散することはない。これによって、安定の良い大面積のベースを使用しても、刃物をその中心からオフセットして配置することができ、壁際などでの使用可能な範囲を拡げることができる(障害物ぎりぎりまで切断することができる)。
【0013】
また、本発明の切断工具では、前記シール部材は、枠体と、その枠体に外周縁が支持され、略中央部に形成された孔から前記駆動アームが突出する弾性の板状部材とを備えて構成され、前記集塵ケースは、矩形に形成され、かつ前記窓が形成された側壁の対とは異なるもう1つの対の側壁においてその開放端部から延びる係止爪を有し、前記ベースには前記係止爪に対応する係止孔を有することを特徴とする。
【0014】
上記の構成によれば、上述のように集塵ケースをベースに固着するにあたって、矩形でベース側が開放した集塵ケースには、2つの対を成す側壁の内、前記窓が形成された、すなわち本体側の側壁は変形させることができず、このためその側壁の対とは異なるもう1つの対の変形可能な側壁に係止爪を形成し、前記ベースには、対応する係止孔を形成する。一方、シール部材も前記窓に直接貼付けるのではなく、枠体と、その枠体に外周縁が支持され、略中央部に形成された孔から前記駆動アームが突出する弾性の板状部材とを備えて構成し、こちらは駆動アーム側に取付いて、前記集塵ケースを取外す際には前記窓から外れる。
【0015】
したがって、前記係止爪を係止孔に差込むだけで集塵ケースをベースに取付けることができ、側壁を押えることで前記係止爪と係止孔との係止状態を解除することができる。これによって、前記集塵ケースをワンタッチで脱着可能になり、切り屑を容易に捨てることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の切断工具は、以上のように、天井材や壁板などに点検口などを形成する(くり抜く)切断工具において、前記天井材や壁板などの表面を摺動してゆくベースに切り屑を受け止める集塵ケースを設けるにあたって、該集塵ケースをベースに固着するようにし、かつその集塵ケースを有底筒状に形成して前記ベース側を開放させるとともに、本体側の側壁に駆動手段で発生された駆動力を伝達する駆動アームが遊挿する窓を形成し、その窓に、略中央部に形成された孔から前記駆動アームが突出するシール部材を嵌め込んで前記本体と前記集塵ケースとを気密に区画する。
【0017】
それゆえ、保持部材によって前記ベースを前記本体に対して任意の間隔で保持可能としても、モータや駆動力の伝達機構などの駆動手段が収容された本体側へ切り屑が侵入することはなく、また前記窓から外部へ切り屑が飛散することはなく、壁裏の配線や構造物に合わせて刃物の突出長(出代)を容易に変更することができ、利便性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は本発明の実施の一形態に係る切断工具1の構造を示す分解斜視図であり、図2および図3はその一部を切欠いて示す側面図であり、図4は一部を切欠いて示す背面図である。この切断工具1は、大略的に、本体2と、前記本体2に取付けられるベース3と、前記ベース3に穿設された刃孔31から突出し、前記本体2から延びる駆動アーム20によって略往復動(楕円運動)される刃物4と、前記刃物4の略往復運動(楕円運動)によって前記刃孔31から吹出した切り屑を受け止める集塵ケース5とを備えて構成され、前記ベース3が天井材や壁板などの表面を摺動してゆくことで前記刃物4が前記天井材または壁板などを切断してゆくものである。
【0019】
前記本体2は、側面視で略L字状に形成されるケーシング21内に、モータ、減速機構およびモータによる回転運動を前記略往復運動(楕円運動)に変換する駆動力変換機構などの駆動手段を収容している。これらの駆動手段の詳細は前記特許文献1に詳しく示されているので、ここではその説明を省略する。駆動手段で発生された前記略往復運動(楕円運動)は、前記駆動アーム20から出力され、該駆動アーム20に対してビス22および締付け板23によって任意の突出長(出代)に固定される刃物4が前記略往復運動(楕円運動)することになる。ケーシング21にはまた、操作釦25,26が取付けられるとともに、その前記L字の先端には、バッテリ27が着脱可能となっている。
【0020】
注目すべきは、本発明では、前記本体2に対して、前記ベース3が保持部材6によって任意の間隔で保持可能となっていることである。図2は本体2にベース3を密着させた状態を示し、図3は最も離反させた状態を示す。前記保持部材6は、前記ベース3に立設される一対の案内片61,62と、前記案内片61,62を任意の高さで前記本体2に締付けるボルト63およびナット64とを備えて構成される。これに対応して、前記本体2のケーシング21のベース3側には、前記案内片61,62が嵌り込む案内溝28に、挿通孔29が形成されている。一対の案内片61,62が前記案内溝28に嵌り込むことで、ベース3は、本体2に対して近接/離反方向にのみ変位可能となり、残余の方向にはがたつきが抑えられている。そして、案内片61,62に形成された長孔65から前記挿通孔29にボルト63が挿通され、ナット64が締付けられることで、ベース3が本体2に対して任意の間隔で保持可能となる。
【0021】
一方、前記集塵ケース5は、透明な樹脂などの材料によって有底の四角筒状に形成されて前記ベース3側が開放するとともに、本体2側の側壁51に前記駆動アーム20が遊挿する窓55が形成されており、これによって該集塵ケース5内で前記刃物4が前記略往復運動(楕円運動)可能に収容されている。該集塵ケース5において、本体2側の前記窓55が形成された側壁51は変形させることができないので、2つの対を成す側壁51,52;53,54の内、側壁51,52の対とは異なるもう1つの対の側壁53,54において、その開放端部からは係止爪57,58が延びて形成されており、これに対応して前記ベース3には係止孔33,34が穿設されている。そして、集塵ケース5の端部がベース3に密着するまで係止孔33,34に係止爪57,58を挿入することで、両者は係止状態となり、集塵ケース5がベース3に固着される。ベース3の前記天井材や壁板などに対向する表面側で、前記係止孔33,34の周囲の少なくとも係止爪57,58に対応する部分には段差が形成されており、これによって係止爪57,58を係止孔33,34に係止させた状態でも、前記係止爪57,58がベース3の表面から突出しないようになっている。
【0022】
しかしながら、上述のように集塵ケース5をベース3に固着し、ベース3を本体2に対して任意の間隔で保持可能とすると、図3のように本体2とベース3との間に隙間が空くと、前記窓55から外部へ切り屑が飛散することになる。このため本発明では、前記窓55にシール部材7を嵌め込む。シール部材7は、前記窓55の周縁部が嵌り込む溝71を有する枠体72と、その枠体72に外周縁が支持される弾性の板状部材73とを備えて構成され、前記板状部材73の略中央部に形成された孔74から前記駆動アーム20が突出することで、前記本体2と前記集塵ケース5とを気密に区画するとともに、前記外部への切り屑の飛散を抑える。
【0023】
前記板状部材73は、ゴムや高分子材料などの可撓性の材料が成型されて成り、波形の断面形状を有し、かつその波形が正面視で前記孔74から波紋が拡がるように同心状に形成されている。前記集塵ケース5の装着は、前記駆動アーム20に支持されているシール部材7の溝71に窓55を嵌め込みつつ、前記係止爪57,58を係止孔33,34に挿入することで行われる。また取外しは、側壁53,54の前記係止爪57,58に近い部分が押圧されることで、該係止爪57,58の係止状態が解除されて可能になる。
【0024】
以上のように、ベース3に切り屑を受け止める集塵ケース5を設けるにあたって、該集塵ケース5をベース3に固着するようにし、かつその集塵ケース5の本体2側の側壁51に設けられる駆動アーム20が遊挿する窓55にシール部材7を嵌め込んで前記本体2と前記集塵ケース5とを気密に区画するので、保持部材6によって前記ベース3を前記本体2に対して任意の間隔で保持可能としても、本体2側へ切り屑が侵入することはなく、また前記窓55から外部へ切り屑が飛散することはない。こうして、壁裏の配線や構造物に合わせて刃物4の突出長(出代)を容易に変更することができ、利便性を向上することができる。また、前記集塵ケース5を透明の材料で形成することで、作業者が刃先の位置を確認することができ、くり抜き作業を正確に行うことができる。
【0025】
さらにまた、シール部材7を前記窓55に直接貼付けるのではなく、枠体72と、その枠体72に外周縁が支持され、略中央部に形成された孔74から前記駆動アーム20が突出する弾性の板状部材73とを備えて構成し、こちらは駆動アーム20側に取付いて、前記集塵ケース5を取外す際には前記窓55から外れるとともに、前記集塵ケース5を係止爪57,58および係止孔33,34によってベース3に着脱自在とすることで、前記係止爪57,58を係止孔33,34に差込むだけで集塵ケース5をベース3に取付けることができ、側壁53,54を押えることで前記係止爪57,58と係止孔33,34との係止状態を解除することができ、これによって集塵ケース5をワンタッチで脱着可能になり、切り屑を容易に捨てることができる。
【0026】
上述の例では、ベース3は1枚物で構成されたけれども、図5のベース8で示すように2枚の部材81,82から成り、面方向の位置を調整可能に構成してもよい。具体的には、第1の部材81は、前記刃孔31、係止孔33,34および案内片61,62を有し、前記ベース3と略同様に構成されて前記本体2に取付けられるが、比較的小面積に形成される。一方、第2の部材82は、前記刃孔31より大きく、かつ前記第1の部材81によって閉塞可能な開口部83を有し、比較的大面積に形成される。この第2の部材82にはまた、前記第1の部材81よりも大面積の凹所84が形成されており、この凹所84に第1の部材81が嵌り込んだ状態で、連結部材であるビス85によってねじ止めされる。第2の部材82においてビス85が遊挿する孔86は、十字に形成されており、したがってこの孔86の範囲で、第2の部材82に対して第1の部材81の面方向の位置を任意に調整可能である。
【0027】
このように構成することで、前記刃物4が前記開口部83を遊挿可能な範囲で第2の部材82をずらして取付けても、切り屑は前記開口部83から刃孔31を通って集塵ケース5に入り込み、外部へ飛散することはない。これによって、安定の良い大面積のベース8を使用しても、刃物4をその中心からオフセットして配置することができ、壁際などでの使用可能な範囲を拡げることができる(障害物ぎりぎりまで切断することができる)。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の一形態に係る切断工具の構造を示す分解斜視図である。
【図2】前記切断工具の一部を切欠いて示す側面図である。
【図3】前記切断工具の一部を切欠いて示す側面図である。
【図4】前記切断工具の一部を切欠いて示す背面図である。
【図5】ベースの他の例を説明するための分解斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
1 切断工具
2 本体
20 駆動アーム
21 ケーシング
25,26 操作釦
27 バッテリ
3,8 ベース
31 刃孔
33,34 係止孔
4 刃物
5 集塵ケース
51,52;53,54 側壁
55 窓
57,58 係止爪
6 保持部材
61,62 案内片
65 長孔
7 シール部材
72 枠体
73 板状部材
81 第1の部材
82 第2の部材
83 開口部
84 凹所
85 ビス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動手段を収容する本体と、前記本体に取付けられるベースと、前記ベースに穿設された刃孔から突出し、前記本体から延びる駆動アームによって略往復動される刃物とを備える切断装置において、
前記ベースを前記本体に対して任意の間隔で保持する保持部材と、
有底筒状に形成されて前記ベース側が開放するとともに、前記駆動アームが遊挿する窓が形成されて前記ベースに固着される集塵ケースと、
前記窓に嵌め込まれ、略中央部に形成された孔から前記駆動アームが突出し、前記本体と前記集塵ケースとを気密に区画するシール部材とを含むことを特徴とする切断工具。
【請求項2】
前記集塵ケースが透明であることを特徴とする請求項1記載の切断工具。
【請求項3】
前記ベースは、
前記刃孔を有し、前記保持部材によって前記本体に取付けられる第1の部材と、
前記刃孔より大きく、かつ前記第1の部材によって閉塞可能な開口部を有し、第1の部材より大面積の第2の部材と、
前記第1の部材に対して第2の部材の面方向の位置を調整可能に連結する連結部材とを備えて構成されることを特徴とする請求項1または2記載の切断工具。
【請求項4】
前記シール部材は、枠体と、その枠体に外周縁が支持され、略中央部に形成された孔から前記駆動アームが突出する弾性の板状部材とを備えて構成され、
前記集塵ケースは、矩形に形成され、かつ前記窓が形成された側壁の対とは異なるもう1つの対の側壁においてその開放端部から延びる係止爪を有し、
前記ベースには前記係止爪に対応する係止孔を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の切断工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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