説明

切断工具

【課題】切断した溝内に粉塵等を残留させることなく効率良く回収でき、方向や角度あるいは起伏等の違う種々の被切断面に対応できる操作性の良い切断工具を提供する
【解決手段】本発明の切断工具は、進行方向に対して下から上向きに被切断面にカッタ刃3が作用するアッパーカットの状態で使用されるカッタ本体2と、カッタ本体2のカッタ刃3を取り付ける取付けチャック4の取付けベース14に固定状態で取り付けられる円環状の取付けブロック21と、上記取付けブロック21に対して回動及び摺動自在に取り付けられるフルカバータイプのカバー本体23と、上記カバー本体23の開放された底面に取り付けられるガイドプレート25とを具備し、上記カバー本体23の内部に、切断工具2の進行方向Y前方下部に設けた吸引口27から進行方向Y後方下部の排出口29に粉塵等Pを導く集塵経路31を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断作業時に発生する破砕片や粉塵を外部に飛散させることなく効率良く回収できる集塵カバーを備えた切断工具に関する。
【背景技術】
【0002】
舗装道路やコンクリート構造物等を切断する場合には、圧縮空気を駆動源とするエアカッタと呼ばれているハンディタイプの切断工具や電気を駆動源としてモータを回転駆動する電動カッタと呼ばれているハンディタイプの切断工具や、上記の各切断工具においてカッタ刃として砥石を取り付けたハンディタイプの切断工具等(以下、これらを総称して、切断工具という。)が使用されている。
そして、上記切断工具には、切断作業によって発生する破砕片や粉塵から作業者を守るために円板状のカッタ刃の一部を覆う飛散防止カバーが設けられている。
【0003】
また、上記飛散防止カバーの中には、下記の特許文献1、2に示すように発生した破砕片や粉塵を集塵袋や集塵機に導いて回収する集塵機能を備えた飛散防止カバーが存在する。
そして、本明細書ではこのような飛散防止カバーを特に集塵カバーと定義して上記集塵機能を有しない他の飛散防止カバーと区別する。
【0004】
ここで、特許文献1に示す集塵カバーは、円板状のカッタ刃の上半分を覆う側面視円弧状のカバーである。そして、該集塵カバーの底面と外方側の側面の中心部が大きく開口している構造の開放型の集塵カバーになっている。
また、上記集塵カバーの周胴部の前方寄りの部位には、接線方向に延びる集塵筒が一体に形成されており、集塵カバー内に浮遊している破砕片と粉塵は、上記集塵筒を通って外部に回収されるようになっている。
【0005】
一方、特許文献2に示す集塵カバーは、被切断面に作用している部位を除くカッタ刃の残りの部分をすべて覆い隠すフルカバータイプの粉塵カバーになっている。
また、上述した特許文献1に示す集塵カバーと同様、上記集塵カバーの周胴部における前方寄りの部位には、接線方向に延びる集塵筒が一体に形成されており、集塵カバー内に浮遊している破砕片と粉塵は、上記集塵筒を通って外部に回収されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭63−165311号公報
【特許文献2】特開2008−307643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に示す集塵カバーの場合には、集塵カバーの密閉性が低いため発生した破砕片や粉塵の一部は外部に飛散したり切断した溝内やその周辺に残ってしまって効率の良い集塵能力は発揮し得ない。
また、特許文献1、2に共通して集塵筒が集塵カバーの周胴部における前方寄りの部位に設けられるため、切断作業中、作業者は上記集塵筒がじゃまになって予め被切断面に記しておいた切断案内線が確認しにくくなってしまう。
【0008】
また、上記集塵筒を集塵カバーの周胴部における後方寄りの部位に配した集塵カバーも一部存在するが、カッタ刃は、従来進行方向に対して上から下向きに被切断面に刃が作用するいわゆる「アンダーカット」でほとんど使用されているため、この構造の場合切断した溝内に破砕片や粉塵の一部が残留してしまって回収できないという問題が生じる。
【0009】
また、ハンディタイプの切断工具は、舗装道路のような水平な被切断面に対して使用する他、コンクリート壁のような垂直な被切断面に対しても使用される。この場合、集塵カバーが切断工具のハウジングに完全に固定状態で取り付けられていると、集塵カバー自体が邪魔になって作業できないため、集塵カバーを取り外さなくてはならず、被切断面の起伏や凹凸にも対応できなくなってしまう。
この他、エアカッタ等のエア切断工具は、構造上切断作業時に排気音中に耳障りな高音域の異音が発生するが、該異音の音量を小さくするような工夫は、従来のエア切断工具には施されていなかった。
【0010】
本発明は、このような点に基づいてなされたものでその目的とするところは、破砕片や粉塵の外部飛散を効果的に防止し、切断した溝内に破砕片や粉塵を残留させることなく、方向や起伏等の違う種々の被切断面に対応できる操作性が良好で使い勝手に優れた快適な切断作業が実行可能な切断工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するべく本発明の請求項1による切断工具は、カッタ刃が進行方向に対して下から上向きに被切断面に作用するアッパーカットの状態で使用されるカッタ本体と、上記カッタ本体のカッタ刃を取り付ける取付けチャックの取付けベースに固定状態で取り付けられる円環状の取付けブロックと、上記取付けブロックに対してカッタ刃の取付け軸を中心に所定角度の範囲で回動自在で、切断深さ方向に所定ストローク摺動可能な状態で取り付けられるフルカバータイプのカバー本体と、上記カバー本体の開放された底面に取り付けられ、切断作業時に被切断面に摺接することで切断工具の切断姿勢を保持するガイドプレートとを具備し、上記カバー本体の内部には、切断工具の進行方向前方下部に設けた吸引口から切断工具の進行方向後方下部に設けた排出口に粉塵等を導く集塵経路がカッタ刃外方とカバー本体の周胴部内方のスペースを利用して形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項2による切断工具は、請求項1記載の切断工具において、上記カバー本体の内部に形成される吸引口には、カッタ刃がアッパーカットの状態で巻き上げた粉塵等を集めるフード状の案内部材が設けられていることを特徴とするものである。
【0013】
また、請求項3による切断工具は、請求項1または2記載の切断工具において、上記取付けブロックとカバー本体との間には、カバー本体を常時、被切断面方向に付勢する付勢手段が設けられていることを特徴とするものである。
【0014】
また、請求項4による切断工具は、請求項1〜3のいずれかに記載の切断工具において、上記カバー本体には、切断工具のカッタ刃の切断深さを設定する位置調節式のストッパ装置が設けられていることを特徴とするものである。
【0015】
また、請求項5による切断工具は、請求項1〜4のいずれかに記載の切断工具において、上記取付けブロックの外周面には、円周方向に連続するガイド溝が刻設されており、上記カバー本体の内側板には、上記ガイド溝と係合するU字形状のガイドレールが取り付けられていることを特徴とするものである。
【0016】
また、請求項6による切断工具は、請求項1〜5のいずれかに記載の切断工具において、上記カバー本体の内部に形成されている排出口には、外部に設けられる集塵機とを連絡する連絡ホース接続用のホースジョイントが取り付けられていることを特徴とするものである。
【0017】
また、請求項7による切断工具は、請求項6記載の切断工具において、上記集塵機は、エアコンプレッサから供給される圧縮空気を駆動源としたエア駆動式の集塵機であり、該集塵機に供給されるエアは、切断工具から排気される排気圧を利用していることを特徴とするものである。
【0018】
また、請求項8による切断工具は、請求項1〜7のいずれかに記載の切断工具において、上記ガイドプレートの進行方向の先端部には、被切断面に対して予め記される切断案内線を指し示す切断指標突起が設けられていることを特徴とするものである。
【0019】
そして、上記手段によって以下のような作用が得られる。まず、フルカバータイプのカバー本体を採用したから、集塵カバーの密閉性が向上して効率の良い集塵能力が発揮される。
また、カバー本体の内部に集塵経路を設けて切断工具の進行方向前方下部の吸引口から吸い取った粉塵等を切断工具の進行方向後方下部の排出口に導く構造を採用したから、切断作業中の前方の視界が良好になり、正確な被切断面の切断が可能になり、切断作業が容易になる。
【0020】
また、カバー本体を取付けブロックに対してカッタ刃の取付け軸を中心に所定角度の範囲で回動自在で、切断深さ方向に所定ストローク摺動可能な状態で取り付けたから、カバー本体を取り付けたままの状態で方向や起伏等の違う種々の被切断面に対応できるようになり、操作性が向上する。
また、ガイドプレートを設けることで集塵カバーの密閉性が一層向上し、切断工具の切断姿勢のバラ付きがなくなるから、高精度の切断溝の形成が実行される。
【0021】
また、切断工具のカッタ刃を進行方向に対して下から上向きに被切断面に刃を作用させるアッパーカットの状態で使用されるから、発生した粉塵等は、カッタ刃の回転によって切断した溝から掃き出される方向に移動するから切断溝内での粉塵等の残留が防止される。
また、カバー本体の内部に形成される吸引口に、発生した粉塵等を集塵経路に確実に導くためのフード状の案内部材を設けたから、粉塵等の吸引がロスなく確実に実行されるようになるため集塵カバーの集塵能力がより一層向上する。
【0022】
また、取付けブロックとカバー本体との間に、カバー本体を常時、被切断面方向に付勢する付勢手段を設けた場合には、上記付勢手段の付勢力によってカバー本体は、被切断面との間の隙間を挟める方向に随時移動するから、凹凸や起伏のある被切断面に対しても集塵カバーの密閉性が保たれ、良好な集塵能力が発揮される。
【0023】
また、カバー本体に切断工具のカッタ刃の切断深さを設定する位置調節式のストッパ装置を設けた場合には、切断深さの一様な正確な被切断面の切断が実行され、ストッパ装置の取付け位置を調節することで種々の切断深さの切断溝を形成できるようになる。
また、取付けブロックの外周面に円周方向に連続するガイド溝を刻設し、カバー本体の内側板に上記ガイド溝と係合する側面視U字形状のガイドレールを取り付けた場合には、上述したカバー本体の回動方向と摺動方向の動きを比較的簡単な構造で実現できるようになる。
【0024】
また、カバー本体の内部に形成されている排出口に、外部に設けられている集塵機とを連絡する連絡ホース接続用のホースジョイントを取り付けた場合には、カッタ刃の回転によって発生した粉塵等は、フルカバータイプのカバー本体によって外部への飛散が防止された状態で連絡ホースを介して集塵機内に随時回収されて行く。また、エア切断工具は、構造上切断作業時に耳障りな高音域の異音が発生するが、排出口を連絡ホースで集塵機と接続することにより外部に漏れる異音の音量を小さくし、消音効果を得ることができる。
また、上記集塵機をエア駆動式の集塵機とし、該集塵機に供給されるエアとして切断工具から排気される排気圧を利用した場合には、発電機等の別途の駆動源が不要となり、エアコンプレッサから供給されるエアの有効利用が図られる。
【0025】
また、ガイドプレートの進行方向の先端部に、被切断面に対して予め記される切断案内線を指し示す切断指標突起を設けた場合には、切断工具のカッタ刃の直進性が向上して正確な被切断面の切断が実行されるようになる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の切断工具によると、破砕片や粉塵の外部飛散を効果的に防止し、切断した溝内に破砕片や粉塵を残留させることはない。また、方向や起伏等の違う種々の被切断面に対応できるようになり、操作性が良好で使い勝手に優れた快適な切断作業が実行できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態を示す図で、切断工具を水平な被切断面に対して前方に向けて移動させる場合の切断工具の使用状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態を示す図で、切断工具を垂直な被切断面に対して水平方向左方に向けて移動させる場合の切断工具の使用状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態を示す図で、切断工具の外側板と外側支持フレームを取り外した状態を示す斜め前方からの分解斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態を示す図で、切断工具の内側板側の取付け状態を示す斜め後方からの斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態を示す図で、切断工具のカッター刃に対する非切断時の相対位置(a)と切断時の相対位置(b)を比較して示す外側板と外側支持フレームを取り外した状態の正面図である。
【図6】本発明の実施の形態を示す図で、切断工具を垂直姿勢で使用する場合の切断工具の切断工具に対する相対位置(a)と切断工具を水平姿勢で使用する場合の切断工具の切断工具に対する相対位置(b)を比較して示す背面図である。
【図7】本発明の実施の形態を示す図で、切断工具を切断工具の取り付けた状態の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図1〜図7に示す実施の形態を例にとって本発明を実施するための形態を説明する。
尚、集塵カバー1は、既存の切断工具2に付属している図示しない飛散防止カバーを取り外して付け替えることで使用することができる。具体的には、カッタ刃3を取り付けるために設けられている取付けチャック4を利用して集塵カバー1は切断工具2に対して取り付けられている。
【0029】
最初に集塵カバー1の取付け対象となる切断工具2の概要について簡単に説明する。
本発明で使用する切断工具2は、作業者Mが両手で持って操作するいわゆるハンディタイプの小型の切断工具である。該切断工具2は、エアコンプレッサから供給された圧縮空気Aを駆動源として内部に設けられる図示しない羽根車を回転させるカッタ本体5と、上記羽根車の回転中心から外方に向けて延びる羽根車と一体の取付け軸6と、該取付け軸6に取り付けられる円板状のカッタ刃3と、該カッタ刃3が上記取付け軸6と一体になって回転するように固定する上述した取付けチャック4と、上記カッタ本体5と直交するようにカッタ本体5のハウジングにブラケット7を介して取り付けられるハンドル8とを具備することによって基本的に構成されている。
【0030】
また、上記カッタ本体5の内部には、上述した羽根車にエアAを供給するための図示しない給気経路と、余剰のエアAを排気するための図示しない排気経路が形成されている。
そして、上記給気経路の上流位置となるカッタ本体5の後端部には、エアコンプレッサから延びているエアホース9と接続するための給気用のホースジョイント10が取り付けられており、上記排気経路の下流位置には、後述する集塵機13に対して、上記排気したエアAを供給するためのエアホース11接続用の別途のホースジョイント12が取り付けられている。
【0031】
このような切断工具2に対して取り付けられる集塵カバーは、上記取付けチャック4を取り付ける取付けベース14に固定状態で取り付けられる円環状の取付けブロック21と、上記取付けブロック21に対してカッタ刃3の取付け軸6を中心に所定角度θの範囲で回動自在で、切断深さD方向に所定ストロークS摺動可能な状態で取り付けられるフルカバータイプのカバー本体23と、上記カバー本体23の開放された底面に取り付けられるガイドプレート25とを具備することによって基本的に構成されている。
【0032】
そして、上記カバー本体23の内部には、上述した切断工具2の進行方向Yの前方下部に設けた吸引口27から切断工具2の進行方向Yの後方下部に設けた排出口29に破砕片や粉塵を含む粉塵等Pを導く集塵経路31がカッタ刃3の外方とカバー本体23の周胴部24内方のスペースを利用して形成されており、カバー本体23の外部に現れない上記集塵経路31が本発明の特徴的構成の一つになっている。
【0033】
また、本発明では、上記吸引口27と排出口29の配置と関係して切断工具2のカッタ刃3は、進行方向Yに対して下から上向きに被切断面15に刃が作用するいわゆるアッパーカットの状態で使用されている。
この他、本実施の形態では、上記取付けブロック21とカバー本体23との間にカバー本体23を常時、被切断面15方向に付勢する付勢手段33が設けられており、上記カバー本体23には、切断工具2のカッタ刃3の切断深さDを設定する位置調節式のストッパ装置35が設けられている。
更に、上記カバー本体23の内部に形成される吸引口27には、発生した粉塵等Pを上記集塵経路31に確実に導くための案内部材37が設けられており、これらの諸部材を具備することによって本実施の形態に係る集塵カバー1は構成されている。
【0034】
取付けブロック21は、半円環状の2つのブロック片39、40を上記取付けベース14を挟むように取り付け、ボルト41によって締結することで円環状に形成されている。 上記取付けブロック21の外周面には、円周方向に連続する2本の溝部が刻設されており、このうちの1本がカバー本体23の移動を案内するガイド溝43になっている。また、他方の1本の溝部は、付勢手段33を構成するバネ部材45を係止するための係止溝47になっている。
【0035】
カバー本体23は、内側板49と、内側支持フレーム51と、外側支持フレーム53と、外側板55とを重ね合わせ、固定ネジ56によってこれらを締結することで内部にカッタ刃3の収容スペースを備えた一体のフルカバータイプのカバー本体を形成している。
尚、内側板49と内側支持フレーム51、外側支持フレーム53と外側板55とは一体成形して、両者を固定ネジ56によって締結するようにしても良い。
内側板49は、上記取付けブロック21側に配置される部材で、半円弧状の輪郭の両端をカバー本体23の摺動方向に直線的に伸長した形状の平板部材によって構成されている。
【0036】
そして、上記内側板49の被切断面15方向の端辺部57から内側板49の中央にかけての部分がU字形状に切り欠かれており、該切り欠かれた部分に上記ガイド溝43と係合するU字形状のガイドレール59が取り付けられている。
また、上記内側板49の切り欠かれた部分の裏面側の上方には、遊転可能な状態でプーリ61が設けられており、該プーリ61と上記取付けブロック21の係止溝47との間にループ状に配設された一例として引張りコイルバネによって構成されている上述した付勢手段33の一例であるバネ部材45が張設されている。
【0037】
また、上記内側板49の切り欠かれた部分の裏面側の左右には、ストッパ装置35の構成部材である支持ブロック63、63が設けられている。
ストッパ装置35は、上記取付けブロック21の外周面の一部に当接することで集塵カバー1の摺動方向の移動ストロークSを設定するストッパ本体65と、上述した支持ブロック63、63と、上記ストッパ本体65と支持ブロック63、63との間に介在される2本の圧縮コイルバネ67、67と、上記ストッパ本体65の取付け位置を調節する場合に使用される2本の調節ネジ69、69とを備えることによって一例として構成されている。
【0038】
ストッパ本体65は、上記ガイドレール59を幅方向に跨ぐように架け渡されている角棒状のストッパブロック71と、該ストッパブロック71の両端部から上記左右の支持ブロック63、63に向けて延長形成されている丸棒状の2本のガイドロッド73、73を備えることによって構成されている。
そして、上記ストッパブロック71における上記取付けブロック21の外周面と当接する面には、円弧状に抉られた当接凹部72が形成されている。
【0039】
また、上記支持ブロック63には、上記ガイドロッド73に外嵌する嵌合穴75が貫通状態で形成されており、該嵌合穴75と直交する方向に上記調節ネジ69と螺合するネジ穴77が上記嵌合穴75に到達するように刻設されている。
また、上記圧縮コイルバネ67は、上記ガイドロッド73に挿嵌され、上記支持ブロック63と上記ストッパブロック71との間に挟まれるように配設されており、上記調節ネジ69としては、工具を使わないで操作できる蝶ボルトが一例として使用できる。
尚、ストッパ装置35は、上記取付けブロック21の外周面の一部に当接することで集塵カバー1の摺動方向の移動ストロークSを設定するストッパ本体65と、上述した支持ブロック63と、上記ストッパ本体65と支持ブロック63との間に介在される圧縮コイルバネ67と、上記ストッパ本体65の取付け位置を調節する場合に使用される調節ネジ69とを備えることによって構成しても良い。この場合には、上記の例に示したストッパ装置35の半分の構成部材で良いので、必要な部材を節約することができる。
【0040】
内側支持フレーム51は、上記内側板49と外形をほとんど一にする所定厚さの湾曲した角棒状の部材である。そして、内側支持フレーム51の内部には、内側支持フレーム51の形状に沿うように上述した集塵経路31となる半円形断面の周溝79が刻設されている。
上記周溝79の一端は、被切断面15に面する端面80に到達して吸引口27を形成しており、上記周溝79の他端は、被切断面15に面する端面80に到達する前の段階で終了している。
【0041】
また、上記周溝79の閉塞している他端に至る前の段階で切断工具2の進行方向Yの後方に向けて延びる分岐溝81が形成されており、該分岐溝81が内側支持フレーム51の外周面に到達した部位が排出口29になっている。
尚、上記分岐溝81の内周面には、雌ネジ部が刻設されており、ここに集塵機13に回収した粉塵等Pを供給する連絡ホース16接続用のホースジョイント17を雄ネジ部にて取り付けている。尚、この連絡ホース16接続用のホースジョイント17は、内側支持フレーム51と外側支持フレーム53とに半割り形状の筒状部を一体成形して、組み合わせ時に筒状部を形成し、これに筒体を嵌め込むようにしても良い。
【0042】
外側支持フレーム53は、基本的に上記内側支持フレーム51を表裏反転させた形状を有しており、上記内側支持フレーム51と組み合わせることによって半円形断面の2つの周溝79と分岐溝81が組み合わさって円形断面の集塵経路31が形成されるように構成されている。
また、上記集塵経路31の吸気口27とガイドプレート25の長孔85との間に案内部材37が設けられている。該案内部材37は、正面視直角三角形状をしており、斜辺部にカッタ刃3が進入するスリット部を有し、背面部に吸気口27側への開口部を有し、底面部にガイドプレート25の長孔85側への開口部を有するフード状の部材で、一例として内側支持フレーム51と外側支持フレーム53にねじ止めされて取り付けられている。進行方向に対して下から上向きに被切断面にカッタ刃3が作用するアッパーカットの状態で巻き上げられた粉塵等Pは案内部材37により形成される集塵室に集中的に集められ、ここから吸気口27に集中的に吸い込まれる。これにより、粉塵等Pを集塵カバー1内に飛散させることなく、また、集塵カバー1内の広い範囲から空気を吸引することなく、案内部材37内の集塵室に集めた粉塵等Pのみを集中的に吸引して効率的に排出する。
【0043】
外側板55は、上記内側板49と同様の外形形状を有する平板状の部材である。ただし外側板55には、内側板49に設けたU字形状の切欠き部は存在せず、該切欠き部に代えて外側板55の中央部に上記取付けチャック4を視認できる一例として円形の窓部83が形成されている。
ガイドプレート25は、図7に示すように切断工具2の進行方向Yに長い平板状の部材で、その中央には、カッタ刃3を非接触状態で受け入れる同じく切断工具2の進行方向Yに長い長穴85が形成されている。また、当該ガイドプレート25の進行方向Yの先端部には、被切断面15に対して予め記される切断案内線Lを指し示す一例として山状に尖った切断指標突起87が設けられている。
【0044】
次に、このようにして構成される集塵カバー1を装着した切断工具2を使用して(1)切断工具を垂直姿勢で使用する場合と、(2)切断工具を水平姿勢で使用する場合に分けて集塵カバー1と切断工具2の作動態様を作業の流れに従って説明する。
(1)切断工具を垂直姿勢で使用する場合(図1、図5参照)
例えば、舗装道路のような水平な被切断面15を切断する場合には、図1に示すように左手でハンドル8を握り、右手でカッタ本体5の後端部を保持して切断工具2を垂直姿勢にして使用する。
【0045】
この場合、吸引した粉塵等Pを図1に示すような集塵機13に集めて回収する場合には、図示のように切断工具2の排気用のホースジョイント12に排気用のエアホース11をつないで、該エアホース11の他端を集塵機13の給気用のホースジョイント18に接続しておく。
また、カバー本体23の排出口29に取り付けられているホースジョイント17に連絡ホース16をつないで、該連絡ホース16の他端を集塵機13の粉塵等Pの投入口19に接続しておく。そして、コンプレッサを起動して切断工具2を作動状態にしてカッタ刃3を回転させる。
【0046】
また、被切断面15には、予め切断案内線Lを記しておき、該切断案内線Lの開始位置となる被切断面15に対して上方から切断工具2を押し付ける。
そして、上記切断工具2の押し込み動作に伴って図5中の(a)から(b)に示すようにカッタ刃3は、被切断面15内に進入し被切断面15の切断を開始すると共に、集塵カバー1のカバー本体23は、被切断面15に接地することで上方への力を受けてバネ部材45を伸長させ、ストッパ装置35のストッパ本体65が取付けブロック21の外周面に当接した所でカッタ刃3の進入が停止される。
【0047】
この状態で作業者Mは、ガイドプレート25の先端に設けられている切断指標突起87の位置を目視で確認しながら、上述した切断案内線L上を切断指標突起87が通過するように前方に向けて切断工具2を少しずつ移動させて行く。
尚、この時カッタ刃3の回転は上述したように進行方向Yに対してアッパーカットになる方向に設定されているから、切断した溝89内には粉塵等Pはほとんど残留せず、斜め前方上部に向けて巻き上げられ、この巻き上げている所に案内部材37を設けて発生した粉塵等Pの移動方向を規制して吸引口27内に粉塵等Pが移動するように案内される。
【0048】
そして、吸引口27内に至った粉塵等Pは、集塵経路31を通って排出口29から連絡ホース16内に至り、集塵機13の投入口19から集塵機13の内部に運ばれて順次回収されて行く。
また、エアコンプレッサから供給されたエアAの一部は、排気用のホースジョイント12から排気用のエアホース11を通って集塵機13の動力として使用される。具体的には、切断工具2の排気圧を受けて集塵機13の給気用のホースジョイント18に空気が供給され、ここに設けたエゼクタの機能により集塵カバー1と集塵機13とをつなぐ連絡ホース16内が負圧状態となり、該負圧状態になることによって集塵カバー1内の粉塵等Pを回収する吸引力を得ている。
【0049】
(2)切断工具を水平姿勢で使用する場合(図2、図5及び図6参照)
例えば、コンクリート構造物の壁面のような垂直な被切断面15を水平方向に切断する場合には、図2に示すように集塵カバー1を上にして左手でハンドル8を握り、右手でカッタ本体5の後端部を保持して切断工具2を水平姿勢にして使用する。
この場合、作業者Mは、切断工具2を被切断面15に押し付けて左方に向けて切断工具2を少しずつ移動させて行くことによって被切断面15の切断を実行する。
【0050】
そして、この場合にも上記切断工具2を垂直姿勢にして使用する場合と同様、図5中の(a)から(b)に示すように集塵カバー1は、カッタ刃3の被切断面15への進入に伴ってストッパ装置35によって設定される所定ストロークSだけ後退するように相対移動する。
以下、同様に一定の切断深さDを保って、進行方向Yに対してアッパーカットになるように当該被切断面15にカッタ刃3を作用させ、切断した溝89内に粉塵等Pが残らないように掻き上げて順次、集塵経路31に粉塵等Pを導いて行く。
【0051】
尚、垂直な被切断面15を水平方向に切断するに際して切断工具2を右方に向けて切断することも可能である。この場合には、集塵カバー1が下になるように左手でカッタ本体5の後端部を保持し、右手でハンドル8を握って操作する。
また、本実施の形態では、図6(a)、(b)に示すようにカバー本体23が図1に示す切断工具2のカッタ本体5に対して直角になる姿勢と、図2に示す切断工具2のカッタ本体5に対して平行になる姿勢とを自由に選択できるように、切断工具2に取り付けたままの状態で所定の角度θ回動できる構造になっている。
【0052】
従って、作業者Mは、被切断面15の傾斜に合わせてカバー本体23の回動角度θを変えたり、上記垂直姿勢での使用と水平姿勢での使用に対応してカバー本体23の回動角度θを90°切り替えることで円滑な切断作業を実行することができる。
そして、上記のような構造を有する集塵カバー1を使用することによって粉塵等Pの外部飛散を効果的に防止し、切断した溝89内に粉塵等Pを残留させない効率的な集塵が切断工具2による切断作業と同時に実行される。
【0053】
また、集塵カバー1は、方向や角度あるいは起伏等の違う種々の被切断面15に対応できる操作性を有しており、使い勝手に優れ、快適な切断作業を可能にする。
また、カバー本体23の内部に形成されている排出口29に、外部に設けられている集塵機13とを連絡する連絡ホース16接続用のホースジョイント17を取り付けた場合には、カッタ刃3の回転によって発生した粉塵等は、フルカバータイプのカバー本体23によって外部への飛散が防止された状態で連絡ホース16を介して集塵機13内に随時回収されて行く。また、エア切断工具の場合は、構造上切断作業時に耳障りな高音域の異音が発生するが、上記のように排出口29を連絡ホース16で集塵機13と接続することにより外部に漏れる異音の音量を小さくすることができる。
更に、切断工具2の排気圧を集塵機13の動力に使用した場合には、発電機やモータ等の別途の駆動手段が不要となり、設備コストの削減にも寄与し得る。
【0054】
尚、本発明の集塵カバー1を備えた切断工具2は、上記の実施の形態のものに限定されず、その発明の要旨内での設計変更が可能である。例えば、集塵機13に供給するエアAは、切断工具2の排気圧を利用する他、エアコンプレッサから直接、供給されたエアAを分配器等で分配したものを使用することが可能である。
また、集塵カバー1の排出口29から取り出された粉塵等Pは、上述したようなエア駆動式の集塵機13に搬送して回収する他、エンジン式や電動式の集塵機に搬送して回収したり、排出口29に直接、集塵袋等を取り付けて回収することが可能である。
【0055】
また、カッタ刃3の切断深さDを設定する際の案内となる目盛りをカバー本体23等に付けたり、付勢手段33をバネ部材45に代えてエアダンパやゴム状弾性体等によって構成することが可能である。
また、カバー本体23を内側板49と内側支持フレーム51と外側支持フレーム53と外側板55とに4分割する構造に限らず、内側と外側に2分割する構造や一体構造のカバー本体23を採用することが可能である。
また、本発明の集塵カバー1は既存の切断工具2に取り付けて使用する他、当該切断工具2に付属するカバーとして当初から切断工具2に取り付けた状態で製品として市場に流通させることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の切断工具は、舗装道路やコンクリート構造物の切断作業現場等で利用でき、特に切断した溝内に粉塵等を残留させることなく効率良く回収でき、方向や角度あるいは起伏等の違う種々の被切断面に対応したい場合に利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0057】
1 集塵カバー
2 切断工具
3 カッタ刃
4 取付けチャック
5 カッタ本体
6 取付け軸
7 ブラケット
8 ハンドル
9 エアホース(給気用)
10 ホースジョイント(給気用)
11 エアホース(排気用)
12 ホースジョイント(排気用)
13 集塵機
14 取付けベース
15 被切断面
16 連絡ホース
17 ホースジョイント
18 ホースジョイント
19 投入口
21 取付けブロック
23 カバー本体
24 周胴部
25 ガイドプレート
27 吸引口
29 排出口
31 集塵経路
33 付勢手段
35 ストッパ装置
37 案内部材
39 ブロック片
40 ブロック片
41 ボルト
43 ガイド溝
45 バネ部材
47 係止溝
49 内側板
51 内側支持フレーム
53 外側支持フレーム
55 外側板
56 固定ネジ
57 端辺部
59 ガイドレール
61 プーリ
63 支持ブロック
65 ストッパ本体
67 圧縮コイルバネ
69 調節ネジ
71 ストッパブロック
72 当接凹部
73 ガイドロッド
75 嵌合穴
77 ネジ穴
79 周溝
80 端面
81 分岐溝
83 窓部
85 長穴
87 切断指標突起
89 溝
M 作業者
A 圧縮空気(エア)
θ 角度
D 切断深さ
S ストローク
Y 進行方向
P 粉塵等
L 切断案内線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カッタ刃が進行方向に対して下から上向きに被切断面に作用するアッパーカットの状態で使用されるカッタ本体と、
上記カッタ本体のカッタ刃を取り付ける取付けチャックの取付けベースに固定状態で取り付けられる円環状の取付けブロックと、
上記取付けブロックに対してカッタ刃の取付け軸を中心に所定角度の範囲で回動自在で、切断深さ方向に所定ストローク摺動可能な状態で取り付けられるフルカバータイプのカバー本体と、
上記カバー本体の開放された底面に取り付けられ、切断作業時に被切断面に摺接することで切断工具の切断姿勢を保持するガイドプレートとを具備し、
上記カバー本体の内部には、切断工具の進行方向前方下部に設けた吸引口から切断工具の進行方向後方下部に設けた排出口に粉塵等を導く集塵経路がカッタ刃外方とカバー本体の周胴部内方のスペースを利用して形成されていることを特徴とする切断工具。
【請求項2】
上記カバー本体の内部に形成される吸引口には、カッタ刃がアッパーカットの状態で巻き上げた粉塵等を集めるフード状の案内部材が設けられていることを特徴とする請求項1記載の切断工具。
【請求項3】
上記取付けブロックとカバー本体との間には、カバー本体を常時、被切断面方向に付勢する付勢手段が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の切断工具。
【請求項4】
上記カバー本体には、切断工具のカッタ刃の切断深さを設定する位置調節式のストッパ装置が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の切断工具。
【請求項5】
上記取付けブロックの外周面には、円周方向に連続するガイド溝が刻設されており、上記カバー本体の内側板には、上記ガイド溝と係合するU字形状のガイドレールが取り付けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の切断工具。
【請求項6】
上記カバー本体の内部に形成されている排出口には、外部に設けられる集塵機とを連絡する連絡ホース接続用のホースジョイントが取り付けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の切断工具。
【請求項7】
上記集塵機は、エアコンプレッサから供給される圧縮空気を駆動源としたエア駆動式の集塵機であり、該集塵機に供給されるエアは、切断工具から排気される排気圧を利用していることを特徴とする請求項6記載の切断工具。
【請求項8】
上記ガイドプレートの進行方向の先端部には、被切断面に対して予め記される切断案内線を指し示す切断指標突起が設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の切断工具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate