説明

切断工法並びにそれに用いる切断工具案内治具及び定規

【課題】Uリブなどの金属板を効率的且つ綺麗に精度良く切断可能な往復動鋸歯をもつ切断工具を用いた切断工法並びにそれに用いる切断工具案内治具及び定規を提供する。
【解決手段】Uリブ3の切断予定箇所に施した切断用マーキングライン5に定規40を位置合わせして、該定規40により治具設置用マーキング50及び挿通孔用マーキングを施すマーキング工程と、挿通孔用マーキングを施した位置に挿通孔16を形成する穿孔工程と、治具設置用マーキング50に沿って、切断工具案内治具20を位置合わせして、切断工具案内治具20をUリブ3に取り付けるとともに、切断工具6の往復動鋸歯8が挿通孔16に挿通するように、切断工具案内治具20に切断工具6を取り付けて、切断工具案内治具20に沿って切断工具6を移動させながら、切断用マーキングライン5に沿ってUリブを切断する切断工程とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁の鋼床版のデッキプレートの下面に溶接固定したUリブなどの金属板の切断に好適に利用可能な、往復動鋸歯をもつ切断工具を用いた切断工法並びにそれに用いる切断工具案内治具及び定規に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁の鋼床版のデッキプレートと、その下面に配置されるUリブとの溶接部分には、大型車両等が通過する毎に大きな荷重が作用して、溶接部分に沿って亀裂が入ることがあるので、該亀裂の有無を定期的に点検している。そして、亀裂を発見した場合には、該亀裂が入っている部分が含まれるように、Uリブを切断除去して、同じ長さの新しいUリブを切除部分に嵌め込んで、添え板をUリブの接合部に外側から当て付けて溶接したり、Uリブに外嵌可能な1回り大きいU型の連結板をUリブの接合部に外嵌させてボルトで固定したりして補修している(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−50774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、Uリブの切断は、通常はガス切断により行なっているが、ガス切断により切断する場合には、切断面を綺麗に精度良く切断することが困難であった。具体的には、デッキプレートとUリブとの溶接部分は、平坦なデッキプレートと平行な直線状に切断できるので、ガス切断でも比較的容易に且つ綺麗に切断できるが、Uリブの側面と底面の切断は、U字状の曲面に沿った切断となるため、ガス切断では精度良く綺麗に切断することが困難であった。このため、ガス切断後にグラインダー等で切断面を綺麗に機械加工する必要があった。
また、特殊なガスを用いることにより、切断面を綺麗に切断して、グラインダー等による後加工を省略することも考えられるが、このような特殊なガスを用いた切断設備は、大型であることから、橋桁の桁内という狭いスペース内では使用困難であるという別の問題がある。
このようなことから、Uリブの切断は、狭いスペース内でも使用が可能で、しかも短時間での切断作業が可能な、一般的なガス切断で行なっているが、一般的なガス切断による場合には、ガス切断のための作業に加えて、グラインダー等による後加工が必須となり、しかもこれらの作業は橋桁の桁内という狭いスペース内での作業となることから、作業者にとって大きな負担になっていた。
【0005】
本発明の目的は、Uリブなどの金属板を効率的且つ綺麗に精度良く切断可能な往復動鋸歯をもつ切断工具を用いた切断工法並びにそれに用いる切断工具案内治具及び定規を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る第1の切断工法は、往復動鋸歯をもつ切断工具を用いて金属板を切断する切断工法であって、金属板の切断予定箇所に施した切断用マーキングラインに定規を位置合わせして、該定規により、切断工具案内治具の設置位置に治具設置用マーキングを施すとともに、前記切断工具による切断開始位置に切断工具の往復動鋸歯が挿通する挿通孔を形成するための挿通孔用マーキングを施すマーキング工程と、前記挿通孔用マーキングを施した位置に切断工具の往復動鋸歯が挿入可能な挿通孔を形成する穿孔工程と、前記治具設置用マーキングに沿って、前記切断工具案内治具を位置合わせして、前記切断工具案内治具を金属板に取り付けるとともに、前記切断工具の往復動鋸歯が前記挿通孔に挿通するように、前記切断工具案内治具に切断工具を取り付けて、前記切断工具案内治具に沿って切断工具を移動させながら、前記切断工具により切断用マーキングラインに沿って金属板を切断する切断工程とを備えたものである。
【0007】
この第1の切断工法では、セーバソーやジグソーのような往復動鋸歯をもつ切断工具により金属板を切断するので、ガス切断等と比較して切断面を格段に綺麗に精度良く切断することができ、切断面の後処理を不要乃至大幅に軽減できる。また、切断工具案内治具により切断工具を案内しながら、金属板を切断できるので、安定性よく切断工具を取り扱うことができ、切断作業の作業効率を向上できるとともに、切断工具の往復動鋸歯が折れたり破損したりすることを効果的に防止できる。更に、切断開始位置に形成した挿通孔に切断工具の往復動鋸歯を挿通させて、金属板を切断できるので、金属板の中央部をくり貫くなどの加工も可能である。また、定規により、切断工具案内治具の設置位置に治具設置用マーキングを施すとともに、前記切断工具による切断開始位置に切断工具の往復動鋸歯が挿通する挿通孔を形成するので、効率的に且つ精度良く金属板を切断することができる。なお、金属板としては、平坦な金属板や、湾曲状の金属板や、平坦部や湾曲部を一部に有する金属板に対しても本発明を適用できる。
【0008】
本発明に係る第2の切断工法は、往復動鋸歯をもつ切断工具を用いて、橋梁の鋼床版のデッキプレートの下面に溶接固定した金属板からなるUリブを切断する切断工法であって、前記Uリブの切断予定箇所に施した切断用マーキングラインに定規を位置合わせして、該定規により、Uリブの左右の側面板及び底面板に、切断工具案内治具の設置位置に治具設置用マーキングを施すとともに、Uリブの左右の側面板における切断工具による切断開始位置に、切断工具の往復動鋸歯が挿通する挿通孔を形成するための挿通孔用マーキングを施すマーキング工程と、前記挿通孔用マーキングを施した位置に切断工具の往復動鋸歯が挿入可能な挿通孔をそれぞれ形成する穿孔工程と、前記一方の側面板に施した治具設置用マーキングに沿って、前記切断工具案内治具を位置合わせして、前記切断工具案内治具を一方の側面板に取り付けるとともに、前記切断工具の往復動鋸歯が前記挿通孔に挿通するように、前記切断工具案内治具に切断工具を取り付けて、前記切断工具案内治具に沿って切断工具を移動させながら、前記切断工具により切断用マーキングラインに沿って一方の側面板を切断し、他方の側面板を一方の側面板と同様に切断工具案内治具及び切断工具を用いて切断してから、或いはその前に、前記Uリブの底面板に施した治具設置用マーキングに沿って、前記切断工具案内治具を位置合わせして、前記切断工具案内治具を底面板に取り付けるとともに、前記切断工具の往復動鋸歯が前記側面板の切断箇所に挿通するように、前記切断工具案内治具に切断工具を取り付けて、前記切断工具案内治具に沿って切断工具を移動させながら、前記切断工具により切断用マーキングラインに沿って底面板を切断する切断工程とを備えたものである。
【0009】
この第2の切断工法では、セーバソーやジグソーのような往復動鋸歯をもつ切断工具によりUリブを切断するので、ガス切断等と比較して切断面を格段に綺麗に精度良く切断することができ、切断面の後処理を不要乃至大幅に軽減できる。また、切断工具案内治具により切断工具を案内しながら、Uリブを切断できるので、安定性よく切断工具を取り扱うことができ、切断作業の作業効率を向上できるとともに、切断工具の往復動鋸歯が折れたり破損したりすることを効果的に防止できる。更に、切断開始位置に形成した挿通孔に切断工具の往復動鋸歯を挿通させて、Uリブを切断できるので、Uリブの左右の側面板を効率的に切断できる。また、定規により、切断工具案内治具の設置位置に治具設置用マーキングを施すとともに、前記切断工具による切断開始位置に切断工具の往復動鋸歯が挿通する挿通孔を形成するので、効率的に且つ精度良くUリブを切断することができる。
【0010】
ここで、前記マーキング工程において、前記定規により、前記切断工具案内治具の側方位置において金属板に、前記切断工具案内治具を固定するための固定具取付用の取付孔を形成するための取付孔用マーキングを施し、前記穿孔工程では、挿通孔用マーキングを施した位置に挿通孔を形成するとともに、取付孔用マーキングを施した位置に取付孔を形成し、前記切断工程では、取付孔を介して取り付けた固定具により前記切断工具案内治具を金属板に固定した状態で、金属板を切断することも好ましい実施の形態である。この場合には、取付孔に装着した固定具により切断工具案内治具を金属板に安定性よく強固に固定することができる。
【0011】
前記切断工具が、セーバソー又はジグソーからなることが好ましい実施の形態である。これらの切断工具は、汎用の電動工具であり、安価に採用できるので好ましい。
【0012】
本発明に係る切断工具案内治具は、前記切断工法で用いる切断工具案内治具であって、前記切断工具の往復動鋸歯が挿通する切断方向に細長いスリットを有する基台としてのベース板と、前記ベース板を金属板に対して着脱自在に固定する固定手段と、前記ベース板に対して切断工具をスリットの長手方向に沿って移動自在に案内するガイド手段とを備えたものである。
【0013】
この切断工具案内治具では、固定手段により金属板にベース板を固定するとともに、ベース板のスリットに切断工具の往復動鋸歯が挿通するように、切断工具をベース板に取付け、ガイド手段によりスリットに沿って切断工具を案内しながら、金属板を切断工具で切断することになる。このように、ガイド手段を用いて切断工具を案内するので、安定性よく切断工具を取り扱うことができ、切断作業の作業効率を向上できるとともに、切断工具の往復動鋸歯が折れたり破損したりすることを効果的に防止できる。
【0014】
前記固定手段として、着磁状態と非着磁状態とに切替可能な磁石ユニットを設けることができる。この場合には、磁石の切替え操作により、容易にベース板を金属板に対して着脱自在に取り付けることができる。
【0015】
前記固定手段として、手動式のクランプを用いることもできる。このような手動式のクランプを用いると、ベース板を強固に且つ確実に金属板に固定することができる。なお、磁石ユニットとクランプとを併用することも可能である。
【0016】
前記ベース板に対して切断工具を回動自在に取付けて、切断工具の切込み角を調整可能とすることもできる。この場合には、セーバソーのような細長い切断工具を用いる場合に好適で、切断工具の切込み角を小さくすることで、金属板に沿うように切断工具を配置することができるので、例えば橋梁の鋼床版のUリブのように隣接するUリブとの隙間が狭い場合でも、切断工具の切込み角を調整して、切断工具が隣接するUリブに接触しないようにしながら、Uリブの側面板を切断することができる。
【0017】
前記ガイド手段として、前記切断工具の本体部に着脱自在に取付けられた押え部材に固定したガイド板と、ガイド板の両側部に嵌合して、スリットの長手方向に切断工具を移動自在に案内するガイド溝とを備えたものを用いることもできる。この場合には、押え部材をガイド板とともに切断工具から取り外して、ガイド板の両側部をガイド溝に嵌合させて、ガイド板を押え部材とともに切断工具案内治具に取付けた状態で、切断工具案内治具を金属板の適正位置に固定設置し、その後、切断工具の本体部を押え部材に係合させて、切断工具を切断工具案内治具に取付けることができる。このため、切断工具全体を切断工具案内治具に取付けた状態で、切断工具案内治具を金属板に位置合わせする場合と比較して、切断工具案内治具の位置合わせ作業を効率的に行なうことができる。
【0018】
前記ガイド板に把手を設けることもできる。このように構成すると、把手を手で持って切断工具の先端部を切断方向に操作できるので、切断工具の操作性を向上できる。
【0019】
本発明に係る第1の定規は、前記切断工法で用いる定規であって、前記金属板の切断予定箇所に施した切断用マーキングラインに沿って位置合わせされる基準線を設け、前記切断工具案内治具の設置位置に沿って治具設置用マーキングを施すための治具設置用マーキングスリットを形成し、基準線の両端部に挿通孔用マーキングを施すための挿通孔用マーキング孔を形成した、透明な板状部材からなる定規本体と、前記定規本体を操作するために定規本体に固定した持ち手とを備えたものである。
【0020】
この定規では、持ち手を保持して定規を操作し、定規本体の基準線を金属板の切断用マーキングラインに沿って位置合わせしてから、治具設置用マーキングスリット及び挿通孔用マーキング孔に沿って、治具設置用マーキング及び挿通孔用マーキングを施すことになる。このような定規を用いることで、治具設置用マーキング及び挿通孔用マーキングを容易に且つ精度良く形成することができる。
【0021】
本発明に係る第2の定規は、前記切断工具案内治具を固定具で固定するようになした切断工法で用いる定規であって、前記金属板の切断予定箇所に施した切断用マーキングラインに沿って位置合わせされる基準線を設け、前記切断工具案内治具の設置位置に沿って治具設置用マーキングを施すための治具設置用マーキングスリットを形成し、基準線の両端部に挿通孔用マーキングを施すための挿通孔用マーキング孔を形成し、取付孔用マーキングを施すための取付孔用マーキング孔を形成した、透明な板状部材からなる定規本体と、前記定規本体を操作するために定規本体に固定した持ち手とを備えたものである。
【0022】
この定規では、持ち手を保持して定規を操作し、定規本体の基準線を金属板の切断用マーキングラインに沿って位置合わせしてから、治具設置用マーキングスリットと挿通孔用マーキング孔と取付孔用マーキング孔とに沿って、治具設置用マーキングと挿通孔用マーキングと取付孔用マーキング孔とを施すことになる。このような定規を用いることで、治具設置用マーキングと挿通孔用マーキングと取付孔用マーキング孔とを容易に且つ精度良く形成することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る第1の切断工法によれば、切断工具により金属板を切断するので、ガス切断等と比較して切断面を格段に綺麗に精度良く切断することができ、切断面の後処理を不要乃至大幅に軽減できる。また、切断工具案内治具により切断工具を案内しながら、金属板を切断できるので、安定性よく切断工具を取り扱うことができ、切断作業の作業効率を向上できるとともに、切断工具の往復動鋸歯が折れたり破損したりすることを効果的に防止できる。更に、切断開始位置に形成した挿通孔に切断工具の往復動鋸歯を挿通させて、金属板を切断できるので、金属板の中央部をくり貫くなどの加工も可能である。また、定規により、切断工具案内治具の設置位置に治具設置用マーキングを施すとともに、前記切断工具による切断開始位置に切断工具の往復動鋸歯が挿通する挿通孔を形成するので、効率的に且つ精度良く金属板を切断することができる。
【0024】
本発明に係る第2の切断工法によれば、切断工具によりUリブを切断するので、ガス切断等と比較して切断面を格段に綺麗に精度良く切断することができ、切断面の後処理を不要乃至大幅に軽減できる。また、切断工具案内治具により切断工具を案内しながら、Uリブを切断できるので、安定性よく切断工具を取り扱うことができ、切断作業の作業効率を向上できるとともに、切断工具の往復動鋸歯が折れたり破損したりすることを効果的に防止できる。更に、切断開始位置に形成した挿通孔に切断工具の往復動鋸歯を挿通させて、Uリブを切断できるので、Uリブの左右の側面板を効率的に切断できる。また、定規により、切断工具案内治具の設置位置に治具設置用マーキングを施すとともに、前記切断工具による切断開始位置に切断工具の往復動鋸歯が挿通する挿通孔を形成するので、効率的に且つ精度良くUリブを切断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】切断工具案内治具の斜視図
【図2】切断工具案内治具の(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図
【図3】他の構成の切断工具案内治具の斜視図
【図4】同切断工具案内治具の(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図
【図5】定規の斜視図
【図6】鋼床版の要部斜視図
【図7】(a)〜(c)は側面板の切断工法の説明図
【図8】(a)、(b)は側面板の切断工法の説明図
【図9】(a)〜(d)は底面板の切断工法の説明図
【図10】側面板の切断時における切断工具案内治具の縦断面図
【図11】側面板の切断時における(a)は切断工具案内治具の正面図、(b)は(a)のXI-XI線断面図
【図12】底面板の切断時における切断工具案内治具の縦断面図
【図13】ジグソーからなる切断工具で用いる切断工具案内治具及び該切断工具に固定されるガイド板の斜視図
【図14】同切断工具案内治具の(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図
【図15】同ジグソーからなる切断工具を用いた側面板の切断工法の説明図
【図16】同切断工具を用いた底面板の切断工法の説明図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
図6〜図9に示すように、本切断工法は、鋼床版1のデッキプレート2とUリブ3との溶接箇所に亀裂4が入ったときに、Uリブ3の該亀裂4を含む不良箇所3Aに施される切断用マーキングライン5に沿ってUリブ3の不良箇所3Aを切断する切断工法であって、切断用マーキングライン5に対応させて、定規40により必要なマーキングを施してから、切断工具案内治具20をUリブ3に位置決め設置し、この切断工具案内治具20に沿ってセーバソーからなる切断工具6を案内して、切断工具6によりUリブ3を切断するものである。
【0027】
先ず、この切断工法で用いる、切断工具6と、切断工具案内治具20と、定規40について説明する。
【0028】
切断工具6は、図10〜図12に示すように、管の切断などで広く用いられる周知のセーバソーで構成され、切断工具6の本体部7の先端部には、細長い板状の往復動鋸歯8が着脱自在に取付けられ、本体部7に内装された図示外の駆動手段により、往復動鋸歯8を前後方向に往復駆動して、往復動鋸歯8で切断対象物を切断できるように構成されている。切断工具6の本体部7の先端部には切断対象物を押える押え部材9が着脱自在に取付けられ、この押え部材9は、本体部7に着脱可能に取り付けられる取付部材10と、取付部材10の先端部に枢支ピン11を介して回動自在に取り付けた押え板12とを備え、往復動鋸歯8は押え板12に形成した長孔13を挿通して切断対象物側へ突出配置され、枢支ピン11を中心に切断工具6の切込み角を調整するとともに、押え板12で切断対象物を押さえながら、往復動鋸歯8で切断対象物を切断できるように構成されている。
【0029】
切断工具案内治具20は、図2(b)を基準に上下左右方向を定義して説明すると、図1、図2、図10〜図12に示すように、切断工具6の往復動鋸歯8が挿通する切断方向(上下方向)に細長いスリット21を有する基台としてのベース板22と、ベース板22を金属板に対して着脱自在に固定する固定手段23と、ベース板22に対して切断工具6をスリット21の長手方向に沿って移動自在に案内するガイド手段24とを備えている。
【0030】
固定手段23としては、図11に示すように、側面視C形の本体部材25と、本体部材25の開口に出没可能に螺合した締付けネジ26とを有する所謂しゃこ万力を好適に採用できるが、それ以外の手動式のクランプを採用することも可能である。この固定手段23では、図11(b)に示すように、Uリブ3の不良箇所3Aに形成した取付孔15に本体部材25の一端部を挿入して、本体部材25の一端部と締付けネジ26間にUリブ3を構成する金属板とベース板22とが配置されるようにして、締付けネジ26を締付けることで、Uリブ3を構成する金属板とベース板22とを固定手段23で挟持して、ベース板22をUリブ3に固定できるように構成されている。本実施の形態では、Uリブ3の不良箇所3Aに1対の取付孔15を形成し、1対の固定手段23により切断工具案内治具20をUリブ3に固定したが、それ以外の個数の固定手段23により固定することも可能である。
【0031】
ベース板22の幅方向(左右方向)の略中央部には上端から下端近傍部にわたって延びる上下方向に細長い長孔27が形成され、長孔27にはスリット形成部材28が組み付けられ、スリット形成部材28の幅方向の中央部には上下方向に細長いスリット21が上端を開放させて形成され、切断工具6は、その往復動鋸歯8をスリット21に挿入した状態でスリット21に沿って上下方向に移動できるように構成されている。
【0032】
ガイド手段24について説明すると、ベース板22の前面には長孔27を挟んでその両側方に上下方向に細長い左右1対のガイドレール29がベース板22の上端部から下端部にわたって設けられ、ベース板22とガイドレール29間には内側へ向けて開放したガイド溝30が形成されている。押え板12の後面側(押え面側)にはガイド板31が、両側部を押え板12から外方へ突出させて固定され、ガイド板31はその左右両側部をガイド溝30に嵌合させてベース板22に上下方向(スリット21の長手方向)にのみ移動自在に案内され、これにより切断工具6は、ガイド板31及び押え板12を介して、切断工具案内治具20に上下方向に移動自在に案内される。ガイド板31には斜め下側へ延びる把手32が設けられ、この把手32を手で把持してガイド板31を上下方向に操作できるように構成されている。なお、ガイド手段24としては、ガイド板31をスリット21の長手方向にのみ案内できるものであれば、任意の構成のものを採用することができる。
【0033】
ベース板22の前面下部には左右1対の取手33が設けられ、この取手33を手で把持して、切断工具案内治具20を所望の位置へ操作できるように構成されている。
【0034】
なお、図3、図4に示す切断工具案内治具20Aのように、固定手段23に代えて、ベース板22の後面側の4隅に、着磁状態と非着磁状態とに切替可能な磁石ユニットからなる固定手段23Aを設けることも可能である。固定手段23Aは、操作つまみ35を約90°回転させて、着磁状態と非着磁状態とに磁力作用面36を切替可能なブロック状の周知の構成のもので、例えば、外周部にN極とS極とを180°の角度を付けて着磁させた円柱状の永久磁石(図示外)を有し、操作つまみ35でこの永久磁石を90°回転操作することで、永久磁石の一方の磁極が磁力作用面36に対面する着磁状態と、両磁極が磁力作用面36から離間する非着磁状態とに切替可能に構成したものである。固定手段23Aとしては、例えばマグネットホルダ台MB−PS(カネテック社製)などを好適に採用できる。また、前記手動式のクランプからなる固定手段23と磁石ユニットからなる固定手段23Aとを併用することも可能である。この場合には、ベース板22にUリブ3の表面に沿って延びる固定部34aを有する固定板34を取付け、手動式のクランプからなる固定手段23では、固定部34aとUリブ3を構成する金属板とを固定手段23で挟持して切断工具案内治具20を固定することになる。
【0035】
定規40は、図5に示すように、透明な板状部材からなる定規本体41と、定規本体41を操作するために定規本体41に固定した持ち手42とから構成されている。
【0036】
定規本体41の幅方向の中央部には基準線43が形成され、この基準線43をUリブ3の切断予定箇所に施した切断用マーキングライン5に沿って位置合わせすることで、定規本体41をUリブ3の適正位置に位置決めできるように構成されている。
【0037】
定規本体41の左側部には治具設置用マーキングスリット44が基準線43と略平行に形成され、定規本体41をUリブ3に位置決めした状態で、治具設置用マーキングスリット44を通して、切断工具案内治具20の設置位置の左側縁に沿って治具設置用マーキング50を施せるように構成されている。なお、治具設置用マーキングスリット44は、定規本体41の強度低下を防止するため断続的に形成することが好ましいが、連続的に形成することも可能である。
【0038】
定規本体41における基準線43の上方及び下方には丸孔からなる挿通孔用マーキング孔45が、中心を基準線43の延長線上に配置させて形成され、定規本体41をUリブ3に位置決めした状態で、挿通孔用マーキング孔45を通して、切断工具6の往復動鋸歯8を挿入するための挿通孔16の形成位置を示す挿通孔用マーキング51を施せるように構成されている。なお、挿通孔用マーキング51は、円形に形成したが、任意の形状に形成することが可能で、ドリルの先端位置が明確になるように、例えば十文字状に形成することも好ましい。
【0039】
定規本体41における治具設置用マーキングスリット44の左側方には上下1対の丸孔からなる取付孔用マーキング孔46が形成され、定規本体41をUリブ3に位置決めした状態で、取付孔用マーキング孔46を通して、切断工具案内治具20をUリブ3に固定するための固定手段23の取付孔15の形成位置を示す取付孔用マーキング52を施せるように構成されている。なお、取付孔用マーキング52は、円形に形成したが、任意の形状に形成することが可能で、ドリルの先端位置が明確になるように、例えば十文字状に形成することも好ましい。
【0040】
次に、切断工具案内治具20及び定規40を用いたUリブ3の補修方法について説明する。
先ず、図6、図7(a)に示すように、鋼床版1のデッキプレート2とUリブ3との溶接箇所に亀裂4が入っている場合には、亀裂4を含む不良箇所3Aを切除するために、亀裂4から設定間隔あけた位置においてUリブ3の側面板3a及び底面板3bに切断用マーキングライン5を施す。
【0041】
次に、Uリブ3の亀裂4を含む不良箇所3Aを切断除去するため、先ず不良箇所3Aの長手方向の両端部を後述の切断工法により切断し、次に不良箇所3Aの上端縁をガス切断などにより切断して、Uリブ3の不良箇所3Aを除去する。
【0042】
次に、不良箇所3Aを除去した後の空間部に、補修部材(図示略)を嵌合させて溶接あるいはボルトなどで固定して、補修を完了することになる。
【0043】
次に、前記切断工法について詳細に説明する。この切断工法は、両側面板3aを切断するための、マーキング工程と、穿孔工程、切断工程の3つの工程と、底面板3bを切断するための、マーキング工程と、穿孔工程、切断工程の3つの工程を備えている。
【0044】
(側面マーキング工程)
先ず、側面マーキング工程において、図7(a)に示すように、定規40を用いてUリブ3の両側面板3aに、治具設置用マーキング50と挿通孔用マーキング51と取付孔用マーキング52とを施すとともに、底面板3bに治具設置用マーキング50と取付孔用マーキング52とを施す。
【0045】
具体的には、先ず、図7(b)に示すように、定規40をUリブ3の側面板3aに当て付けて、定規40の基準線43が切断用マーキングライン5上に配置されるように定規40を位置調整し、定規40の治具設置用マーキングスリット44と挿通孔用マーキング孔45と取付孔用マーキング孔46を通じてUリブ3の側面板3aに、例えば白色の塗料を塗布して、図7(c)に示すように、治具設置用マーキング50と挿通孔用マーキング51と取付孔用マーキング52とを施す。次に、定規40をUリブ3の反対側の側面板3aに当て付けて、前記と同様にして、定規40の基準線43が切断用マーキングライン5上に配置されるように定規40を位置調整し、定規40の治具設置用マーキングスリット44と挿通孔用マーキング孔45と取付孔用マーキング孔46を通じてUリブ3の反対側の側面板3aに、例えば白色の塗料を塗布して、治具設置用マーキング50と挿通孔用マーキング51と取付孔用マーキング52とを施す。
【0046】
(側面穿孔工程)
次に、側面穿孔工程において、図示外の穿孔機により、図8(a)に示すように、挿通孔用マーキング51の対応位置に切断工具6の往復動鋸歯8の挿通可能な大きさの挿通孔16を形成し、取付孔用マーキング52の対応位置に、固定手段23の本体部材25の先端部が挿通可能な大きさの取付孔15を形成する。ただし、磁石ユニットからなる固定手段23Aのみでベース板22をUリブ3に固定する場合には、取付孔15は省略することになる。
【0047】
(側面切断工程)
次に、側面切断工程において、図8(b)、図10、図11に示すように、Uリブ3の一方の側面板3aに施した治具設置用マーキング50に沿って切断工具案内治具20を取付けてから、切断工具6により切断用マーキングライン5に沿ってUリブ3を切断し、その後、Uリブ3の他方の側面板3aに施した治具設置用マーキング50に沿って切断工具案内治具20を取付けてから、切断工具6により切断用マーキングライン5に沿ってUリブ3を切断する。
【0048】
具体的には、先ず、切断工具6の本体部7から押え部材9とともにガイド板31を取り外し、図11に示すように、ガイド板31の両端部を切断工具案内治具20のガイド溝30に装着して、押え部材9及びガイド板31を切断工具案内治具20に取付ける。次に、ベース板22の側縁が側面板3aの治具設置用マーキング50に沿って配置されるように、切断工具案内治具20をUリブ3に対して位置決めした状態で、固定手段23の本体部材25の先端部をUリブ3の側面板3aに形成した取付孔15に差し込んで、1対の固定手段23で切断工具案内治具20をUリブ3の側面板3aに固定する。次に、把手32を保持して押え部材9及びガイド板31を切断工具案内治具20の上部へ移動させ、切断工具6の往復動鋸歯8が挿通孔16に挿通されるように切断工具6を位置合わせしながら、押え部材9の取付部材10に切断工具6の本体部7を嵌合係止させて、切断工具6を切断工具案内治具20に取付ける。ただし、切断工具案内治具20をUリブ3に固定した状態で、切断工具案内治具20のガイド溝30にガイド板31を嵌合できる場合には、切断工具案内治具20をUリブ3に固定してから、切断工具6を押え部材9及びガイド板31とともに切断工具案内治具20に取付けることも可能である。こうして、切断工具6を切断工具案内治具20に取付けてから、切断工具6を駆動して、切断工具6により切断用マーキングライン5に沿って側面板3aを切断しながら、ガイド溝30に沿って切断工具6を下側へ順次移動させ、側面板3aを切断する。このとき、切断当初は、切断工具6の往復動鋸歯8を最低速で往復運動させて、往復動鋸歯8が軽く作動することを確認し、問題ない場合には、徐々に往復運動の速度を高めることが好ましい。また、切断当初は往復動鋸歯8の先端部がデッキプレート2に当接しないように、短尺な往復動鋸歯8を用い、切断途中で、通常長さの往復動鋸歯8と交換して、底面板3bの一側部まで切断することになる。更に、切断工具6の手元側端部が隣接するUリブ3と接触しないように、枢支ピン11を中心に切断工具6を回動操作し、切断当初は切込み角が小さくなるように設定することになる。
【0049】
次に、切断工具6の本体部7を切断工具案内治具20から取り外し、押え部材9及びガイド板31は切断工具案内治具20に取付けた状態で、一方の側面板3aから切断工具案内治具20を取り外し、前記と同様にして、該切断工具案内治具20をUリブ3の反対側の側面板3aに治具設置用マーキング50に沿って位置きめ固定する。そして、押え部材9及びガイド板31を切断工具案内治具20の上部へ移動させた状態で、切断工具6を切断工具案内治具20に取付けて、切断工具6により切断用マーキングライン5に沿って反対側の側面板3aを切断する。ただし、複数台の切断工具案内治具20をUリブ3に位置決め設置してから、両側面板3aを順次切断することもできる。
【0050】
(底面マーキング工程)
次に、底面マーキング工程において、図9(a)、図12に示すように、定規40をUリブ3の底面板3bに当て付けて、定規40の基準線43が切断用マーキングライン5上に配置されるように定規40を位置調整し、定規40の治具設置用マーキングスリット44と取付孔用マーキング孔46を通じてUリブ3の底面板3bに、例えば白色の塗料を塗布して、図9(b)に示すように、治具設置用マーキング50と取付孔用マーキング52とを施す。
【0051】
(底面穿孔工程)
次に、底面穿孔工程において、取付孔用マーキング52の対応位置に、図9(c)に示すように、固定手段23の本体部材25の先端部が挿通可能な大きさの取付孔15を形成する。ただし、磁石ユニットからなる固定手段23Aのみでベース板22をUリブ3に固定する場合には、取付孔15は省略することになる。
【0052】
(底面切断工程)
次に、底面切断工程において、押え部材9及びガイド板31を切断工具案内治具20に取付けた状態で、図9(d)に示すように、ベース板22の側縁が底面板3bの治具設置用マーキング50に沿って配置されるように、切断工具案内治具20をUリブ3に対して位置決めし、この状態で固定手段23の本体部材25の先端部をUリブ3の底面板3bに形成した取付孔15に差し込んで、1対の固定手段23で切断工具案内治具20をUリブ3の底面板3bに固定する。次に、押え部材9及びガイド板31を切断工具案内治具20の一端部へ移動させて、切断工具6の往復動鋸歯8が側面板3aの切断によって形成された切込スリット53に挿通されるように切断工具6を位置合わせしながら、押え部材9の取付部材10に切断工具6の本体部7を嵌合係止させて、切断工具6を切断工具案内治具20に取付ける。こうして、切断工具6を切断工具案内治具20に取付けてから、切断工具6を駆動して、ガイド溝30に沿って切断工具6を切断工具案内治具20の他端側へ順次移動させながら、切断工具6により切断用マーキングライン5に沿って底面板3bを切断する。
【0053】
なお、本実施の形態では、Uリブ3の両側面板3aに必要なマーキングを行なうとともに必要な孔明けを行なってから、切断用マーキングライン5に沿って側面板3aを切断し、その後Uリブ3の底面板3bに必要なマーキングを行なうとともに必要な孔明けを行なってから、切断用マーキングライン5に沿って底面板3bを切断したが、両側面板3a及び底面板3bに必要なマーキングを行なうとともに必要な孔明けを行なってから、両側面板3a及び底面板3bを順次切断することも可能である。
【0054】
次に、セーバソーからなる切断工具6に代えて、ジグソーからなる切断工具60を用いてUリブ3を切断する場合における、切断工具案内治具20Bと、それを用いたUリブ3の切断方法について説明する。
【0055】
切断工具60は、図15、図16に示すように、金属板の切断などで広く用いられる周知のジグソーで構成され、往復動鋸歯62を下側へ向けて使用する場合を基準に上下左右を定義して説明すると、切断工具60の本体部61の前部(図15ではデッキプレート2側)には、細長い板状の往復動鋸歯62が着脱自在に取付けられ、本体部61に内装された図示外の駆動手段により、往復動鋸歯62を上下方向(図15ではUリブ3の側面板3aの厚さ方向)に往復駆動して、往復動鋸歯62で切断対象物を切断できるように構成されている。切断工具60の本体部61の下面部には切断対象物を押える押え部材63が取付けられている。往復動鋸歯62は、切断工具60を後方(図15では矢印で示す方向)へ移動させて金属板等を切断できるように、通常のジグソーとは反対側、即ち後側に鋸歯が配置されるように切断工具60に取付けられ、また往復動鋸歯62を上下方向に案内するとともに、金属板等の切断時に往復動鋸歯62に作用する荷重を受け止めるバックローラ64は、往復動鋸歯62の前側に配置されている。押え部材63には後方へ延びる連結バー65が設けられ、連結バー65の後端部には把手66が立設され、把手66を保持して切断工具60を操作できるように構成されている。押え部材63の下面側にはガイド板67が固定され、このガイド板67を切断工具案内治具20Bで案内するように構成されている。
【0056】
切断工具案内治具20Bは、前記切断工具案内治具20と基本的には同様に構成されており、同一部材には同一符号を付して、図14(b)を基準に上下左右方向を定義して説明すると、図13〜図15に示すように、切断工具60の往復動鋸歯62が挿通する切断方向(上下方向)に細長いスリット21Bを有する基台としてのベース板22Bと、ベース板22Bを金属板に対して着脱自在に固定する固定手段23と、ベース板22Bに対して切断工具60をスリット21Bの長手方向に沿って移動自在に案内するガイド手段24Bとを備えている。
【0057】
ベース板22Bの幅方向(左右方向)の略中央部には上端近傍部から下部にわたって延びる上下方向に細長い長孔27Bが形成され、ベース板22Bの後面側の幅方向の略中央部には左右1対のスリット形成部材28Bが長孔27Bに対応させて形成され、左右のスリット形成部材28B間には長孔27Bに開口する上下方向に細長いスリット21Bが形成され、切断工具60は、その往復動鋸歯62をスリット21Bに挿入した状態でスリット21Bに沿って上下方向に移動できるように構成されている。
【0058】
ガイド手段24Bについて説明すると、ベース板22Bの前面には長孔27Bを挟んでその両側方に上下方向に細長い左右1対のガイドレール29Bがベース板22Bの上端部から下端部にわたって設けられ、ベース板22Bとガイドレール29B間には内側へ向けて開放したガイド溝30Bが形成されている。押え部材63の後面側(下面側)にはガイド板67が固定され、ガイド板67の左右両側部には押え部材63から側方へ突出する上下1対の係合部67aが形成され、ガイド板67は左右の係合部67aを左右のガイド溝30Bにそれぞれ嵌合させてベース板22Bに上下方向(スリット21Bの長手方向)にのみ移動自在に案内され、これにより切断工具60は、ガイド板67及び押え部材63を介して、切断工具案内治具20Bに上下方向に移動自在に案内される。ガイドレール29Bの上部には上下1対の切欠部68が形成され、上下の切欠部68に対してガイド板67の上下の係合部67aを挿通させて、ガイド板67の係合部67aをガイド溝30Bに嵌合できるように構成されている。
【0059】
なお、前記実施の形態と同様に、ベース板22Bに左右1対の取手33を設けることも可能である。また、この切断工具案内治具20Bにおいても、前記切断工具案内治具20Aと同様に、固定手段23に代えて、ベース板22Bの後面側の4隅に、着磁状態と非着磁状態とに切替可能な磁石ユニットからなる固定手段23Aを設けることも可能である。
【0060】
この切断工具案内治具20Bを用いたUリブ3の側面板3aを切断する際には、図15に示すように、前記実施の形態と同様に、Uリブ3の一方の側面板3aに施した治具設置用マーキング50(図8参照)に沿って切断工具案内治具20Bを取付けてから、切断工具60により切断用マーキングライン5に沿ってUリブ3を切断し、その後、Uリブ3の他方の側面板3aに施した治具設置用マーキング50に沿って切断工具案内治具20Bを取付けてから、切断工具60により切断用マーキングライン5に沿ってUリブ3を切断することになる。
【0061】
具体的には、先ず、ベース板22Bの側縁が側面板3aの治具設置用マーキング50に沿って配置されるように、切断工具案内治具20BをUリブ3に対して位置決めした状態で、固定手段23の本体部材25の先端部をUリブ3の側面板3aに形成した取付孔15に差し込んで、1対の固定手段23で切断工具案内治具20BをUリブ3の側面板3aに固定する。次に、ガイドレール29Bの上下の切欠部68に対してガイド板67の上下の係合部67aを挿通させて、ガイド板67の係合部67aをガイド溝30Bに嵌合させるとともに、切断工具60の往復動鋸歯8を挿通孔16に挿通させて、切断工具60を切断工具案内治具20Bに取付ける。こうして、切断工具60を切断工具案内治具20Bに取付けてから、切断工具60を駆動して、切断工具60により切断用マーキングライン5に沿って側面板3aを切断しながら、ガイド溝30に沿って切断工具60を下側へ順次移動させ、側面板3aを切断する。
【0062】
次に、切断工具60を押え部材63及びガイド板67とともに切断工具案内治具20Bから取り外してから、一方の側面板3aから切断工具案内治具20Bを取り外し、前記と同様にして、該切断工具案内治具20BをUリブ3の反対側の側面板3aに治具設置用マーキング50に沿って位置きめ固定して、切断工具60を切断工具案内治具20Bに取付けて、切断工具60により切断用マーキングライン5に沿って反対側の側面板3aを切断する。ただし、複数台の切断工具案内治具20BをUリブ3に位置決め設置してから、両側面板3aを順次切断することもできる。
【0063】
次に、Uリブ3の底面を切断する際には、図16に示すように、ベース板22Bの側縁が底面板3bの治具設置用マーキング50(図9参照)に沿って配置されるように、切断工具案内治具20BをUリブ3に対して位置決めし、この状態で固定手段23の本体部材25の先端部をUリブ3の底面板3bに形成した取付孔15に差し込んで、1対の固定手段23で切断工具案内治具20BをUリブ3の底面板3bに固定する。次に、前記と同様にして、切断工具60を切断工具案内治具20Bに取付ける。こうして、切断工具60を切断工具案内治具20Bに取付けてから、切断工具60を駆動して、ガイド溝30に沿って切断工具60を切断工具案内治具20Bの他端側へ移動させ、切断工具60の往復動鋸歯8を側面板3aの切断によって形成された切込スリット53に挿通させて、切断工具60により切断用マーキングライン5に沿って底面板3bを切断することになる。
【0064】
このようなジグソーからなる切断工具60は、前述のセーバソーからなる切断工具6よりも短尺なので、Uリブ3が隣接配置される場合であっても、無理なくUリブ3を切断できるので好ましい。
【0065】
なお、本実施の形態では、Uリブ3の側面板3a及び底面板3bを切断する切断工法に本発明を適用した場合について説明したが、本発明の切断工法は、Uリブ3以外の平坦な金属板や、湾曲状の金属板や、平坦部や湾曲部を一部に有する金属板の切断に対しても同様に適用できる。また、切断工具としては、往復動鋸歯を備えたものであれば、ジグソーやセーバソー以外の電動工具を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 鋼床版 2 デッキプレート
3 Uリブ 3A 不良箇所
3a 側面板 3b 底面板
4 亀裂 5 切断用マーキングライン
6 切断工具 7 本体部
8 往復動鋸歯 9 押え部材
10 取付部材 11 枢支ピン
12 押え板 13 長孔
15 取付孔 16 挿通孔
20 切断工具案内治具 21 スリット
22 ベース板 23 固定手段
24 ガイド手段 25 本体部材
26 締付けネジ 27 長孔
28 スリット形成部材 29 ガイドレール
30 ガイド溝 31 ガイド板
32 把手 33 取手
20A 切断工具案内治具 23A 固定手段
34 固定板 34a 固定部
35 操作つまみ 36 磁力作用面
40 定規 41 定規本体
42 持ち手 43 基準線
44 治具設置用マーキングスリット
45 挿通孔用マーキング孔 46 取付孔用マーキング孔
50 治具設置用マーキング 51 挿通孔用マーキング
52 取付孔用マーキング 53 切込スリット
20B 切断工具案内治具 21B スリット
22B ベース板 24B ガイド手段
27B 長孔 28B スリット形成部材
29B ガイドレール 30B ガイド溝
60 切断工具 61 本体部
62 往復動鋸歯 63 押え部材
64 バックローラ 65 連結バー
66 把手 67 ガイド板
67a 係合部 68 切欠部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復動鋸歯をもつ切断工具を用いて金属板を切断する切断工法であって、
金属板の切断予定箇所に施した切断用マーキングラインに定規を位置合わせして、該定規により、切断工具案内治具の設置位置に治具設置用マーキングを施すとともに、前記切断工具による切断開始位置に切断工具の往復動鋸歯が挿通する挿通孔を形成するための挿通孔用マーキングを施すマーキング工程と、
前記挿通孔用マーキングを施した位置に切断工具の往復動鋸歯が挿入可能な挿通孔を形成する穿孔工程と、
前記治具設置用マーキングに沿って、前記切断工具案内治具を位置合わせして、前記切断工具案内治具を金属板に取り付けるとともに、前記切断工具の往復動鋸歯が前記挿通孔に挿通するように、前記切断工具案内治具に切断工具を取り付けて、前記切断工具案内治具に沿って切断工具を移動させながら、前記切断工具により切断用マーキングラインに沿って金属板を切断する切断工程と、
を備えたことを特徴とする切断工法。
【請求項2】
往復動鋸歯をもつ切断工具を用いて、橋梁の鋼床版のデッキプレートの下面に溶接固定した金属板からなるUリブを切断する切断工法であって、
前記Uリブの切断予定箇所に施した切断用マーキングラインに定規を位置合わせして、該定規により、Uリブの左右の側面板及び底面板に、切断工具案内治具の設置位置に治具設置用マーキングを施すとともに、Uリブの左右の側面板における切断工具による切断開始位置に、切断工具の往復動鋸歯が挿通する挿通孔を形成するための挿通孔用マーキングを施すマーキング工程と、
前記挿通孔用マーキングを施した位置に切断工具の往復動鋸歯が挿入可能な挿通孔をそれぞれ形成する穿孔工程と、
前記一方の側面板に施した治具設置用マーキングに沿って、前記切断工具案内治具を位置合わせして、前記切断工具案内治具を一方の側面板に取り付けるとともに、前記切断工具の往復動鋸歯が前記挿通孔に挿通するように、前記切断工具案内治具に切断工具を取り付けて、前記切断工具案内治具に沿って切断工具を移動させながら、前記切断工具により切断用マーキングラインに沿って一方の側面板を切断し、他方の側面板を一方の側面板と同様に切断工具案内治具及び切断工具を用いて切断してから、或いはその前に、前記Uリブの底面板に施した治具設置用マーキングに沿って、前記切断工具案内治具を位置合わせして、前記切断工具案内治具を底面板に取り付けるとともに、前記切断工具の往復動鋸歯が前記側面板の切断箇所に挿通するように、前記切断工具案内治具に切断工具を取り付けて、前記切断工具案内治具に沿って切断工具を移動させながら、前記切断工具により切断用マーキングラインに沿って底面板を切断する切断工程と、
を備えたことを特徴とする切断工法。
【請求項3】
前記マーキング工程において、前記定規により、前記切断工具案内治具の側方位置において金属板に、前記切断工具案内治具を固定するための固定具取付用の取付孔を形成するための取付孔用マーキングを施し、前記穿孔工程では、挿通孔用マーキングを施した位置に挿通孔を形成するとともに、取付孔用マーキングを施した位置に取付孔を形成し、前記切断工程では、取付孔を介して取り付けた固定具により前記切断工具案内治具を金属板に固定した状態で、金属板を切断する請求項1又は2記載の切断工法。
【請求項4】
前記切断工具が、セーバソー又はジグソーからなる請求項1〜3のいずれか1項記載の切断工法。
【請求項5】
前記請求項1〜4のいずれか1項に記載の切断工法で用いる切断工具案内治具であって、
前記切断工具の往復動鋸歯が挿通する切断方向に細長いスリットを有する基台としてのベース板と、
前記ベース板を金属板に対して着脱自在に固定する固定手段と、
前記ベース板に対して切断工具をスリットの長手方向に沿って移動自在に案内するガイド手段と、
を備えたことを特徴とする切断工具案内治具。
【請求項6】
前記固定手段として、着磁状態と非着磁状態とに切替可能な磁石ユニットを設けた請求項5記載の切断工具案内治具。
【請求項7】
前記固定手段として、手動式のクランプを用いた請求項5又は6記載の切断工具案内治具。
【請求項8】
前記ベース板に対して切断工具を回動自在に取付けて、切断工具の切込み角を調整可能となした請求項5〜7のいずれか1項記載の切断工具案内治具。
【請求項9】
前記ガイド手段として、前記切断工具の本体部に着脱自在に取付けられた押え部材に固定したガイド板と、ガイド板の両側部に嵌合して、スリットの長手方向に切断工具を移動自在に案内するガイド溝とを備えたものを用いた請求項5〜8のいずれか1項記載の切断工具案内治具。
【請求項10】
前記ガイド板に把手を設けた請求項9記載の切断工具案内治具。
【請求項11】
前記請求項1又は2記載の切断工法で用いる定規であって、
前記金属板の切断予定箇所に施した切断用マーキングラインに沿って位置合わせされる基準線を設け、前記切断工具案内治具の設置位置に沿って治具設置用マーキングを施すための治具設置用マーキングスリットを形成し、基準線の両端部に挿通孔用マーキングを施すための挿通孔用マーキング孔を形成した、透明な板状部材からなる定規本体と、
前記定規本体を操作するために定規本体に固定した持ち手と、
を備えた定規。
【請求項12】
前記請求項3記載の切断工法で用いる定規であって、
前記金属板の切断予定箇所に施した切断用マーキングラインに沿って位置合わせされる基準線を設け、前記切断工具案内治具の設置位置に沿って治具設置用マーキングを施すための治具設置用マーキングスリットを形成し、基準線の両端部に挿通孔用マーキングを施すための挿通孔用マーキング孔を形成し、取付孔用マーキングを施すための取付孔用マーキング孔を形成した、透明な板状部材からなる定規本体と、
前記定規本体を操作するために定規本体に固定した持ち手と、
を備えた定規。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−196172(P2011−196172A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274358(P2010−274358)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000200367)川田工業株式会社 (41)
【出願人】(398075781)ジロー株式會社 (16)
【Fターム(参考)】