説明

切断装置

【課題】切断時の切り味を向上させることができると共に、切断刃と被切断物との間での相対移動を好適に行うことができる切断装置を提供する。
【解決手段】切断装置は、切断刃4と被切断物6とがなす角度を切り換える切断刃4の角度切換手段60を備える。角度切換手段60は、切断刃4の角度を、非切断時における第1角度α1と、切断時に切断刃4を第1角度α1よりも小さくなるように傾ける第2角度α2とにわたって切り換えるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め設定された切断データに基づいて切断刃と被切断物とを相対的に移動させることにより、切断刃で被切断物を所望の形状に切断する切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば紙等のシートを自動的に切断するカッティングプロッタが知られている。前記シートは、表面に粘着層を有する保持部材としての基材に貼り付けられる。そして、カッティングプロッタは、基材の両端部分を駆動機構の一対のローラにより上下方向から挟んで第1方向へ移動させると共に、切断刃を支持するカッタホルダを前記第1方向と直交する第2方向へ移動させて前記シートを切断する(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ここで、図11は、従来のカッティングプロッタに用いられている一般的なカッタ(切断刃)100とカッタホルダ101とを模式的に示している。図11に示すように、カッタ100は、棒状のカッタ軸102の下端部に螺子103で固定されている。カッタ軸102は、カッタホルダ101下端の凹部101aに装着されたベアリング104により軸線Oの回りに回動自在に保持されている。また、カッタ100の刃部100aは、最下端の刃先100bが軸線Oより距離dだけオフセットさせて設けられている。このため、カッタ100とシート105との相対移動によりカッタ100でシート105を切断する時、カッタ100の刃先100bがシート105から抵抗力(反力)を受けることで、カッタ軸102は軸線Oの回りに回動する。つまり、カッタ100の刃先100bの向きは、カッタ100とシート105とが相対移動する移動方向に応じて自動的に変更される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−205541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記カッティングプロッタで切断を行う場合、シート105の種類によってはカッタ100の刃先100bがシート105から受ける抵抗力が大きくなる。このようなカッタ100に係る負荷を小さくして切断時の切れ味を向上させるには、カッタ100の刃部100aとシート105とがなす角度αを小さく設定することが考えられる。
一方、カッタ100は、シート105の切断ラインの角部(コーナー部)を切断する際、その角部の先端を僅かにこじる(捻る)ように回動して刃先100bの向きを変えるため、刃部100aのシート105に対する角度αを大きく設定した方が好ましい。つまり、カッタ100は、刃部100aのシート105に対する角度αを小さく設定した場合と大きく設定した場合とで夫々相反する一長一短があり、これら両方の短所を同時に改善することが望ましい。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、切断時の切り味を向上させることができると共に、切断刃と被切断物との間での相対移動を好適に行うことができる切断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明の請求項1の切断装置は、予め設定された切断データに基づいて切断刃と被切断物とを相対的に移動させることにより、前記切断刃で前記被切断物を所望の形状に切断する切断装置であって、前記切断刃と前記被切断物とがなす角度を切り換える前記切断刃の角度切換手段を備え、前記角度切換手段は、前記切断刃の角度を、非切断時における第1角度と、切断時に前記切断刃を前記第1角度よりも小さくなるように傾ける第2角度とにわたって切り換えるように構成したことを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、切断時に、角度切換手段によって切断刃の角度が第1角度から第2角度に切り換わることで、切断刃の角度が小さくなる。これにより、切断刃が被切断物から受ける切断抵抗を小さくしてシャープな切り味を発揮することができる。また、非切断時つまり切断刃の相対移動が無い場合、角度切換手段によって切断刃の角度を第1角度に切り換えて大きくすることができる。よって、例えば切断ラインの角部を切断する際、その角部の頂点で切断刃の相対移動を一旦停止して第1角度に切り換えることで、切断刃の向き(切断方向)を変えやすくすることができ、ひいては切断刃の相対移動を好適に行うことができる。
【0009】
請求項2の切断装置は、請求項1の発明において、前記角度切換手段は、非切断時における前記切断刃の前記第1角度を維持する第1角度維持手段を備えることを特徴とする。
請求項3の切断装置は、請求項2の発明において、前記第1角度維持手段は、前記切断刃を前記第1角度をなす方向へ弾性付勢する弾性部材からなることを特徴とする。
【0010】
請求項4の切断装置は、請求項3の発明において、前記弾性部材は、切断時における前記切断刃の相対移動に伴い前記切断刃が前記被切断物から受ける抵抗力により、前記切断刃の角度が前記第1角度から前記第2角度に切り換わる程度の弾性力に設定されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5の切断装置は、請求項1の発明において、前記角度切換手段は、前記切断刃を前記第1角度と前記第2角度にわたって揺動可能に支持する支持軸と、前記支持軸を固定する取付部材と、前記取付部材に前記切断刃との当接が可能に設けられた一対の当接部であって、前記切断刃に当接することで前記切断刃の揺動を前記第1角度で規制する第1当接部および前記第2角度で規制する第2当接部と、前記取付部材と前記切断刃との間に設けられ、非切断時における前記切断刃を前記第1当接部に当接させる方向へ弾性付勢する弾性部材とを備え、切断時における前記切断刃の相対移動に伴い前記切断刃が前記被切断物から受ける抵抗力により前記弾性部材の弾性力に抗して前記切断刃の角度が前記第1角度から前記第2角度に切り換わることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の切断装置によれば、切断時に、角度切換手段によって切断刃の角度が第1角度から第2角度に切り換わることで、切断刃と被切断物とがなす角度が小さくなる。これにより、切断刃が被切断物から受ける切断抵抗を小さくしてシャープな切り味を発揮することができる。また、非切断時つまり切断刃の相対移動が無い場合、角度切換手段によって切断刃の角度を第1角度に切り換えて大きくすることができる。よって、例えば切断ラインの角部を切断する際、その角部の頂点で切断刃の相対移動を一旦停止して第1角度に切り換えることで、切断刃の向きを変えやすくすることができ、ひいては切断刃の相対移動を好適に行うことができる。
【0013】
請求項2の切断装置によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、第1角度維持手段によって、非切断時における切断刃の第1角度を維持する。これにより、切断刃は被切断物に対する角度を大きくした状態が維持されるため、切断動作開始時において、切断刃の刃先の先端が被切断物に圧接してスムーズに切れ込みを入れることができる。
【0014】
請求項3の切断装置によれば、請求項2に記載の発明の効果に加え、第1角度維持手段として弾性部材を用いた簡単な構成で切断刃の第1角度を維持することができる。
請求項4の切断装置によれば、請求項3に記載の発明の効果に加え、切断時における切断刃の相対移動に伴い切断刃が被切断物から受ける抵抗力により、弾性部材の弾性力に抗して切断刃の角度が第1角度から第2角度に切り換わる。従って、切断装置において、切断刃の角度を第2角度に切り換えるための手段を別途設ける必要がなく、角度切換手段の構成を極めて簡単なものとすることができる。
【0015】
請求項5の切断装置によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、切断刃を第1当接部或は第2当接部に当接させて、切断刃を非切断時の第1角度或は切断時の第2角度に傾けた姿勢を保持することができる。また、切断刃の角度の切り換えを、これら当接部を有する取付部材と、切断刃を支持する支持軸と、前記弾性部材とを用いた簡単な構成で実現することがきる。更に、請求項4と同様の弾性部材を備えたので、請求項4と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態を示すものであり、切断装置の内部構造を示す斜視図
【図2】切断装置の平面図
【図3】カッタホルダの斜視図
【図4】カッタを上昇させた状態で示すカッタホルダの断面図
【図5】カッタを下降させた切断時の状態で示すカッタホルダ近傍部の側面図
【図6】ギヤ部を拡大して示す正面図
【図7】電気的構成を示すブロック図
【図8】カッタとその取付構造を示す拡大図であって、(a)は左側面図、(b)は正面図、(c)は右側面図
【図9】(a)及び(b)は、非切断時及び切断時における被切断物と共に示す図8(b)相当図
【図10】被切断物における切断ラインの一例を示す図
【図11】カッティングプロッタで一般的に用いられるカッタホルダ先端部の拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について、図1〜図10を参照しながら説明する。
図1に示すように、切断装置1は、筐体としての本体カバー2と、本体カバー2内に配設されたプラテン3と、カッタホルダ5とを備えると共に、カッタホルダ5のカッタ4(図4参照)と被切断物6とを相対的に移動させるための第1及び第2移動手段7,8を備えている。本体カバー2は横長な矩形箱状をなしており、前面部には、プラテン3上面部に被切断物6を保持した保持シート10をセットするための横長な開口部2aが形成されている。尚、以下の説明では、切断装置1に対しユーザが位置する側を前方とし、その反対側を後方とする。そして、前後方向をY方向とし、Y方向と直交する左右方向をX方向とする。
【0018】
本体カバー2の右側には、ユーザに対して必要なメッセージ等の表示を行う表示手段としての液晶ディスプレイ(LCD)9aが設けられると共に、ユーザが各種の指示や選択、入力の操作を行うための複数の操作スイッチ9b(図7参照)が設けられている。
前記プラテン3は、前後一対の板材3a,3bからなり、上面部が水平面たるXY平面をなすように構成されている。プラテン3には、被切断物6を保持する保持シート10が載置されるようにセットされ、被切断物6の切断の際、保持シート10をプラテン3で受ける。詳しくは後述するが、保持シート10の上面には、左右両方の縁部10bを除いた部分に粘着剤が塗布された粘着層10a(図9参照)が形成されており、粘着層10aに被切断物6が貼り付けられて保持される。
【0019】
前記第1移動手段7は、プラテン3の上面側で保持シート10をY方向(第1方向)へ移動させるものである。即ち、切断装置1における左右の側壁部11a,11bには、プラテン3の板材3a,3bの間に位置させて、駆動ローラ12とピンチローラ13が設けられている。駆動ローラ12とピンチローラ13は、X方向に延びて、側壁部11a,11bに対して回動可能に支持されている。また、駆動ローラ12とピンチローラ13は、前記XY平面に対して平行で、且つ上下方向に並ぶように配置されている。下側が駆動ローラ12で、上側がピンチローラ13である。図2に示すように、右側壁部11bには、駆動ローラ12の右側に位置させて、クランク状の第1取付フレーム14が設けられている。取付フレーム14の外側には、Y軸モータ15が固定されている。
【0020】
Y軸モータ15は例えばステッピングモータからなり、回転軸15aは第1取付フレーム14を貫通しており、先端部にギヤ部16aを有する。駆動ローラ12の右端部には、ギヤ部16aと噛合するギヤ部16bが固着されており、これらギヤ部16a、16bにより第1減速ギヤ機構16が構成されている。前記ピンチローラ13は、左右の側壁部11a,11bに形成されたガイド溝17b(図1に右側の溝17bのみ図示)により上下方向へ移動可能にガイドされている。左右の側壁部11a,11bには、ガイド溝17bを外側から囲うバネ収容部18a,18bが夫々設けられている。ピンチローラ13は、バネ収容部18a,18bに収容された図示しない圧縮コイルバネにより下方へ付勢されている。ピンチローラ13には、保持シート10の左右両方の縁部10bに接触して押圧する押圧部13aが設けられている。押圧部13aは、ピンチローラ13の他の部分よりも外径が少し大きく形成されている。
【0021】
ここで、駆動ローラ12とピンチローラ13は、前記圧縮コイルバネの付勢力により、保持シート10を上下方向から押圧挟持する(図5参照)。そして、Y軸モータ15を正転駆動、或は逆転駆動させると、その回転運動が第1減速ギヤ機構16を介して駆動ローラ12に伝わることで、保持シート10を被切断物6と共に後方或いは前方へ移動させる。これら駆動ローラ12、ピンチローラ13、Y軸モータ15、第1減速ギヤ機構16、前記圧縮コイルバネ等は、第1移動手段7を構成する。
【0022】
前記第2移動手段8は、カッタホルダ5を支持するキャリッジ19を、X方向(第2方向)へ移動させるものである。詳細には、図1、図2に示すように、左右の側壁部11a,11b間には、後端部に位置させて、左右方向に延びるガイド軸20とガイドフレーム21が配設されている。ガイド軸20は、駆動ローラ12及びピンチローラ13と平行に配設されている。ガイド軸20は、プラテン3の直ぐ上側で、キャリッジ19下部(後述の貫通孔部22)を貫通している。ガイドフレーム21は、前縁部21aと後縁部21bが下方へ折り返された断面コ字状をなしている。前縁部21aはガイド軸20と平行に配設されている。ガイドフレーム21は、前縁部21aでキャリッジ19上部(後述の被ガイド体23,23)をガイドするようになっており、側壁部11a,11bの上端部で螺子21cにより固定されている。
【0023】
図2に示すように、切断装置1の後部には、右側壁部11bに第2取付フレーム24が設けられると共に、左側壁部11aに補助フレーム25が設けられている。第2取付フレーム24には、X軸モータ26及び第2減速ギヤ機構27が配設されている。X軸モータ26は、例えばステッピングモータからなり、第2取付フレーム24における前側の取付片24aの前面部に固定されている。X軸モータ26の回転軸26aは取付片24aを貫通しており、先端部に、第2減速ギヤ機構27と噛合するギヤ部26bを有する。第2減速ギヤ機構27にはプーリ28が設けられており、図2において左側の補助フレーム25にプーリ29が回転自在に取付けられている。これらプーリ28とプーリ29との間には、キャリッジ19の後端部(後述の取付部30)に連結された無端状のタイミングベルト31が掛装されている。
【0024】
ここで、X軸モータ26を正転駆動、或は逆転駆動させると、その回転運動が第2減速ギヤ機構27及びプーリ28を介してタイミングベルト31に伝わることで、キャリッジ19をカッタホルダ5ごと左方或いは右方へ移動させる。こうして、キャリッジ19とカッタホルダ5は、被切断物6の移動方向であるY方向と直交するX方向に移動する。上記のガイド軸20、ガイドフレーム21、X軸モータ26、第2減速ギヤ機構27、プーリ28,29、タイミングベルト31、キャリッジ19等は、第2移動手段8を構成する。
【0025】
前記カッタホルダ5は、キャリッジ19に対して前面側に配置され、Z方向たる上下方向(第3方向)への移動が可能に支持されている。これらキャリッジ19及びカッタホルダ5の構成について、図3〜図6も参照しながら説明する。
【0026】
図2、図3に示すように、キャリッジ19は、後面側が開放された略矩形箱状をなす。キャリッジ19の上壁部19aには、平面視にて円弧状をなすリブであって、上方へ突出する前後一対の被ガイド体23,23が一体に設けられている。被ガイド体23,23は、ガイドフレーム21の前縁部21aを挟むよう対称的に配置されている。キャリッジ19における底壁部19bの下側には、ガイド軸20に挿通される左右一対の貫通孔部22,22が下方へ張出すように形成されている。また、キャリッジ19の底壁部19bには、前記タイミングベルト31に連結される取付部30(図4、図5参照)が後方へ突出するように設けられている。こうして、キャリッジ19は、貫通孔部22,22に挿通されるガイド軸20によって左右方向へ摺動可能に支持されると共に、被ガイド体23,23で挟まれるガイドフレーム21によってガイド軸20の回りに回転しないように支持される。
【0027】
図3、図4、図5等に示すように、キャリッジ19の前壁部19cには、前方へ延出する上下一対の支持部32a,32bが一体に設けられている。キャリッジ19には、支持部32a,32bを夫々貫通する左右一対の支持軸33a,33bが上下動自在に支持されている。キャリッジ19内には、例えばステッピングモータからなるZ軸モータ34が、後方から収容されるように配置されている。Z軸モータ34の回転軸34aは(図3、図5参照)、キャリッジ19の前壁部19cを貫通しており、先端部にギヤ部35を有する。また、図4に示すように、キャリッジ19には、その前壁部19c中央からやや下寄りの部位を前後に貫通するギヤ軸37が設けられている。ギヤ軸37には、前壁部19cの前側で前記ギヤ部35に噛合するギヤ部38が回転可能に装着されると共に、ギヤ軸37前端部の止め輪(図示略)により抜け止めされている。ギヤ部38とギヤ部35で第3減速機構41を構成する(図3、図5参照)。
【0028】
ギヤ部38には、図6に示すように、渦巻き溝42が形成されている。渦巻き溝42は、第1端部42aから第2端部42bへ向って右方向に旋回するにつれ中心に近づく渦巻き状をなすカム溝である。渦巻き溝42には、詳しくは後述するが、カッタホルダ5と一体的に上下移動する係合ピン43が係合する(図4参照)。ここで、Z軸モータ34を正転駆動、或は逆転駆動させると、ギヤ部35を介してギヤ部38が回転する。ギヤ部38が回転することにより、渦巻き溝42に係合する係合ピン43が上下方向に摺動する。これに伴い、カッタホルダ5を支持軸33a,33bごと上方或いは下方へ昇降させる。この場合、カッタホルダ5は、係合ピン43が渦巻き溝42の第1端部42aに位置した上昇位置(図4、図6参照)と、係合ピン43が第2端部42bに位置した下降位置(図5、図6参照)との間で移動する。上記の渦巻き溝42を有する第3減速機構41、Z軸モータ34、係合ピン43、支持部32a,32b、支持軸33a,33b等は、カッタホルダ5を上下方向へ移動させる第3移動手段44を構成する。
【0029】
カッタホルダ5は、前記支持軸33a,33bに設けられるホルダ本体45と、カッタ4(切断刃)を有してホルダ本体45に上下動可能に保持される可動筒部46とを備えると共に、被切断物6を押圧するための押圧装置47を備えている。
即ち、図3、図4、図5等に示すように、ホルダ本体45は、上端部45aと下端部45bが後方へ折り返され全体としてコ字状をなしている。ホルダ本体45の上端部45aと下端部45bは、支持軸33a,33bの上下両端部に夫々固定された止め輪48により、支持軸33a,33bに対し移動不能に固定されている。図4、図5に示すように、支持軸33bの中間部には、前記係合ピン43が後向きに設けられた連結部材49が固着されている。こうして、ホルダ本体45、支持軸33a,33b、係合ピン43、及び連結部材49は一体的に構成され、カッタホルダ5は、前記第3移動手段44により係合ピン43に連動して上下方向へ移動する。また、支持軸33a,33bには、支持部32a上面とホルダ本体45の上端部45aとの間に、付勢部材たる圧縮コイルバネ50が夫々外装されている。圧縮コイルバネ50の付勢力により、カッタホルダ5全体がキャリッジ19側に対して上方へ弾性付勢されている。
【0030】
図3に示すように、ホルダ本体45における中間部には、可動筒部46や押圧装置47等を取付けるための取付部材51,52が螺子54a,54bにより夫々固定されている。下側の取付部材52には、可動筒部46を上下動可能に支持する筒状部52a(図4参照)が設けられている。可動筒部46は、筒状部52aの内周面に摺接する径寸法に設定され、上端部には、筒状部52aの上端で支持されるフランジ部46aが径方向外側へ張出すように形成されている。フランジ部46aの上端面にはバネ受け部46bが設けられている。図4に示すように、上側の取付部材51と可動筒部46のバネ受け部46bとの間には、圧縮コイルバネ53が配設されている。圧縮コイルバネ53は、可動筒部46(カッタ4)を下方の被切断物6側に付勢する一方、カッタ4に被切断物6側から上方への力が作用すると、当該付勢力に抗して可動筒部46の上方への移動を許容する。
【0031】
可動筒部46には、その軸線方向に延びるカッタ軸58が貫通するように配設されている。カッタ軸58は、可動筒部46よりも長尺な丸棒状をなし、その下端部にカッタ4を取り付けるための取付部材59を有する。詳しくは後述するように、カッタ4の刃部4aは被切断物6に対して傾斜しており、最下端の刃先4bがカッタ軸58の中心軸線4zから偏心した位置に形成されている(図8、図9参照)。
【0032】
図4に示すように、カッタ軸58は、可動筒部46内部の上下両端部に配設された軸受55により、上下方向の中心軸線4zつまりZ軸の回りに回動自在に保持されている。こうして、カッタ4は、被切断物6の表面たるXY平面に対して直交するZ方向から刃先4bが圧接する。また、カッタ4は、カッタホルダ5が下降位置へ移動された時に、図9(a)に示すように刃先4bが保持シート10上の被切断物6を貫通し、且つプラテン3の板材3b上面に到達しない高さに設定してある。一方、カッタ4は、カッタホルダ5が上昇位置へ移動されることに伴い、刃先4bも上方へ移動して被切断物6から離間する(図4参照)。
【0033】
前記取付部材52には、筒状部52aの下端部周縁に、3つのガイド孔部52b〜52d(図2〜図5参照)が等間隔で形成されている。そして、筒状部52aの下側には、ガイド孔部52b〜52dに挿通される3つのガイド棒56b〜56dを有する押圧部材56が配置されている。押圧部材56の下面側は、浅底な鉢(ボウル)状(或は緩やかな円形椀状)をなす押圧部本体56aとされており、周縁上部には、等間隔をなす前記ガイド棒56b〜56dが一体に設けられている。押圧部材56は、ガイド孔部52b〜52dにてガイド棒56b〜56dがガイドされることにより、上下方向への移動が可能である。押圧部本体56aの中央部には、上下方向に延びて前記刃部4aを下方へ突出させるための貫通孔56eが形成されている。押圧部本体56aの下端面は、刃部4aの周囲で被切断物6に接触する接触面56fとされている。接触面56fは、円環上をなす水平な平坦面であって、被切断物6に対して面接触する。接触面56fは、例えばテフロン(登録商標)等のフッ素樹脂で構成されることで、比較的摩擦係数が低く、被切断物6に対して滑り易くなっている。
【0034】
図3、図4、図5等に示すように、押圧部本体56aの周縁上部には、前方へ延出する接続部56gが一体に設けられている。
他方、前記取付部材52には、筒状部52aの前側であって接続部56gの上方に位置してソレノイド57用の前側取付部52eが一体に設けられている。ソレノイド57は、押圧部材56を上下動させて被切断物6を押圧するためのアクチュエータであり、押圧部材56並びに後述の制御回路71と共に押圧装置47を構成する。ソレノイド57は、前側取付部52eに下向きに取付けられており、プランジャ57aの先端部は接続部56g上面に固定されている。カッタホルダ5の下降位置でソレノイド57が駆動されると、プランジャ57aと共に押圧部材56が下方へ移動して被切断物6を所定の押圧力で押圧する(図5参照)。これに対して、ソレノイド57の非駆動時には、プランジャ57aが上方に位置して押圧部材56が被切断物6に対する押圧力を解除する。ソレノイド57の非駆動状態でカッタホルダ5が上昇位置へ移動されると(図4の2点鎖線参照)、押圧部材56が被切断物6から完全に離間する。
【0035】
図9に示すように、前記保持シート10は、被切断物6を保持するための粘着層10aを有する。被切断物6は、切断装置1にて切断する際、粘着層10aの粘着力と前記押圧装置47の押圧力とによって、保持シート10に対して移動不能に保持される。保持部材としての保持シート10は、例えば、樹脂材料からなり、平板矩形状(図1参照)に形成されている。粘着層10aは、保持シート10の上側の面つまりカッタ4との対向面に、粘着剤が塗布されることにより形成されている。粘着層10aは、例えば紙、布、樹脂フィルム等のシート状の被切断物6を剥離可能に保持する。粘着層10aの粘着力は、被切断物6を粘着層10aから剥がす際、当該被切断物6が破れることがなく且つ簡単に剥がせるよう比較的小さい値に設定されている。
【0036】
さて、本実施形態の切断装置1では、カッタ4の刃部4aと被切断物6とがなす角度を、非切断時と切断時とで切り換えるカッタ4の角度切換手段60を備える。角度切換手段60及びカッタ4の取り付け構造について、図8を参照しながら詳述する。
先ず、カッタ4は、例えば金属製の平板材からなり、その板厚方向から見て直角台形状をなす(図8(b)参照)。カッタ4の長手方向の端部には、被切断物6を切断するための刃部4aが斜めに形成されている。カッタ4は、図8(b)において左右の両側部4c、4dが平行な対辺をなしており、一方の側部4dの最下端の角は、鋭角に形成された刃部4aの刃先4bとされている。カッタ4における長手方向の中央部には、円形の挿通穴4eが形成されている。
【0037】
カッタ4の取付部材59は、カッタ軸58の下端部に固着され、下方に延びる矩形ブロック状をなしている。取付部材59の下半部には、一方の側部59d(図8(b)で右側部)を残して略逆「L」字状に切り欠くようにして段落ちした取付凹部61が形成されている。この場合、段落ちした取付凹部61の平面62は、XY平面に対して垂直な鉛直面で、カッタ軸58の略中心軸線4z上に位置するカッタ4の取付面とされている(図8(c)参照)。取付部材59には、取付面62のやや下寄りの部位を貫通する挿通穴62aが形成されている。カッタ4は、刃部4aを下側に向けて取付面62に沿わせた状態で、支持軸としてのリベット64により揺動可能に取り付けられる。この場合、リベット64は、カッタ4の挿通穴4e及び取付面62の挿通穴62aの順に通され、その先端部にかしめて広げられる係止端部64aが形成される。これにより、リベット64は、その中心軸線64bがカッタ軸58の中心軸線4zと直交するように取り付けられる。
【0038】
また、取付凹部61において前記逆「L」をなす内壁部63には、カッタ4の一方の側部4dと当接が可能な一対の当接部63a、63bが形成されている。このうち、第1当接部63aは、内壁部63において上下方向に延びる鉛直面であり、第2当接部63bは、第1当接部63aの下側に連なり、その鉛直面に対して所定角度傾いた傾斜面である。これにより、カッタ4が取付面62に沿ってリベット64の回りに回動する際、刃部4aと被切断物6とがなす角度は、カッタ4の一方の側部4dが第1当接部63aに当接する第1角度α1と(図9(a)参照)、カッタ4の一方の側部4dが第2当接部63bに当接する第2角度α2との間で切り換わる(図9(b)参照)。この場合、第2角度α2は第1角度α1よりも小さくなるように設定される(α2<α1)。
【0039】
取付部材59における他方の側部59c(図8(b)で左側部)には、カッタ4の他方の側部4cを弾性付勢する板バネ66が配置されている。板バネ66は、可撓性を有する金属板から形成された弾性部材であり、取付部材59の側部59cに沿って上下方向に延びる帯状をなす。板バネ66の上部は、ねじ止め用の穴66aが設けられた基端部であり、板バネ66の先端部は、取付凹部61に臨みカッタ4の側部4c側へ屈曲した圧接部66bを有する。
【0040】
取付部材59上部の側部59cには、ねじ穴67が形成されており、板バネ66は、穴66aに挿通されたねじ68がねじ穴67に螺挿されることにより取り付けられている。取付部材59下部の側部59cには、カッタ4の幅寸法Wよりも取付凹部61を幅狭にへこませた凹状壁部69が形成されている。これにより、常には板バネ66の圧接部66bがカッタ4の側部4cに当接して、カッタ4を、刃部4aが第1角度α1となる方向へ弾性付勢する。
【0041】
図9(a)に示すように、カッタ4の刃部4aが第1角度α1のとき、最下端の刃先4bがカッタ軸58の中心軸線4zから距離d1だけ偏心した位置にあり、且つカッタ4全体が垂直方向に延びる初期の姿勢となる。詳しくは後述するように、板バネ66は、切断時におけるカッタ4の相対移動に伴いカッタ4が被切断物6から受ける抵抗力(以下、切断抵抗力と称す)により、刃部4aの角度が第1角度α1から第2角度α2に切り換わる程度の弾性力に設定されている。刃部4aの角度が第2角度α2に切り換わることで、カッタ4全体が傾斜した姿勢となり、カッタ軸58の中心軸線4zからのオフセット量はd2となる(図9(b)参照)。また、中心軸線4zの回りに回動可能なカッタ4は、切断時に前記切断抵抗力を受けて、カッタ4の相対移動の方向つまり切断ラインを構成する線分に沿って自動的に向きを変更する。
【0042】
上記した取付部材59、板バネ66、リベット64、当接部63a、63b等は、角度切換手段60を構成する。また、板バネ66及び第1当接部63aは、カッタ4の第1角度を維持する第1角度維持手段70に相当する。本実施形態の取付部材59は、カッタ4の基端側を収容する構成にあって、その取付凹部61の内壁62,63を利用してカッタ4の揺動を規制することから、角度切換手段60の構成を極めて簡単且つコンパクトなものとすることができる。
【0043】
次に、切断装置1の制御系の構成について図7のブロック図を参照しながら説明する。
切断装置1全体の制御を司る制御回路(制御手段)71は、コンピュータ(CPU)を主体に構成されており、ROM72、RAM73、外部メモリ74が接続されている。ROM72には、切断動作を制御するための切断制御プログラムや、各種制御用データ等が記憶されている。RAM73には、各種処理に必要なデータやプログラムが一時的に記憶される。外部メモリ74には、複数種類の切断データが記憶されている。前記切断データは、切断ラインLを構成するn個の線分L1〜Lnに夫々対応する線分データを含む。
【0044】
例えば、図10に示すように、保持シート10に保持された紙等のシートである被切断物6に「三角形」の形状を切断する場合、切断データは、当該切断ラインLを構成する3個の線分L1〜L3からなる3個の線分データを有する。具体的には、線分L1〜L3は、夫々対応する始点L1S〜L3S及び終点L1E〜L3Eを有する。また、線分L1〜L3は連続的に連なり、閉じた1つの切断ラインLを構成することから、夫々の線分の始点は隣り合う線分の終点と一致し、夫々の線分の終点は隣り合う線分の始点と一致する。線分データは、対応する線分L1〜L3の始点及び終点が夫々XY座標によって示される。
【0045】
制御回路71には、各種の操作スイッチ9bの操作信号が入力されると共に、液晶ディスプレイ9aの表示を制御する。このとき、ユーザは、液晶ディスプレイ9aの表示を見ながら、各種操作スイッチ9bを操作することによって、所望する形状の切断データを選択指定する。制御回路71には、切断装置1の開口部2aからセットされた保持シート10を検出するための検出センサ等、各種検出センサ75の検出信号が入力される。また、制御回路71には、Y軸モータ15、X軸モータ26、Z軸モータ34、ソレノイド57を夫々駆動する駆動回路76,77,78,79が接続されている。制御回路71は、切断制御プログラムの実行により前記切断データに基づいて、Y軸モータ15、X軸モータ26、Z軸モータ34、ソレノイド57等の各種アクチュエータを制御し、保持シート10上の被切断物6に対する切断動作を自動で実行させる。
【0046】
上記構成の作用について説明する。尚、切断する形状は、前記の「三角形」を例とし、被切断物6としては一般的な紙を使用する。
切断装置1において被切断物6の切断開始前の状態では、カッタホルダ5が上昇位置に移動されている(図4参照)。この状態で、ユーザは、被切断物6を粘着層10aに貼り付けるようにして保持シート10に保持させる。そして、保持シート10を、切断装置1の開口部2aからセットする。そして、ユーザは、例えば外部メモリ74に記憶されている切断データの中から所望の切断データを選択すると、切断データが外部メモリ74から読み出されてRAM73のメモリに記憶される。そして、操作スイッチ9bが操作されると、制御回路71は、その操作信号に基づいて切断動作を開始する。
【0047】
切断動作にあっては、切断データに基づいてX軸モータ15及びY軸モータ26を駆動させることにより、カッタ4の刃先4bを、線分L1の始点L1SのXY座標(図10参照)へカッタ4を相対的に移動させる。次いで当該切断開始点L1S上にカッタ4を移動させた状態で、ソレノイド57を駆動させ、押圧部材56で被切断物6を押圧する。また、Z軸モータ34を駆動させて、カッタホルダ5を下降位置へ移動させ、カッタ4の刃先4bを被切断物6の切断開始点L1Sに貫通させる。この場合、カッタ4は、板バネ66の弾性力により非切断時の初期の姿勢が維持されており、図9(a)に示すように、刃部4aの被切断物6に対する角度は第1角度α1となっている。このため、カッタ4の刃先4bが被切断物6に圧接してスムーズに切れ込みを入れることができる。
【0048】
そして、各モータ15,26を駆動させることにより、線分L1の終点L1Eの座標へ向けてカッタ4と被切断物6とを相対的に移動させて切断を開始する。この切断時に、カッタ4の刃先4bは、被切断物6から切断抵抗力を受ける。この切断抵抗力によって、図9(b)に示すように、カッタ4は板バネ66の弾性力に抗して傾斜した姿勢となり、刃部4aの角度が第1角度α1から第2角度α2に切り換わる。
また、この場合、カッタ4がリベット64の中心軸線64bの回りに回動して刃先4bが僅かに上昇するため、Z軸モータ34の駆動により、その刃先4bの上昇量分(図8及び図9に距離hで示す)、カッタ4を下降させる制御を行う。これにより、刃先4bが保持シート10上の被切断物6を貫通した状態が維持され、且つ刃部4aと被切断物6とのなす角度を小さく設定した第2角度α2で切断が行われる。
【0049】
切断ラインLの線分L1に沿って図10の矢印方向に切断する際、カッタ4の刃先4bは、前述したようにカッタ軸58の中心軸線4zから距離d2だけオフセットした状態となる。そして、カッタ4の刃先4bが頂点P(終点L1E)に到達すると、その頂点Pで刃先4bの向きを変えるために切断が中断される。このとき、カッタ軸58の中心軸線4zは、図10に示す線分L1の延長線上の頂点Pから距離d2だけ離れた位置にある。このため、カッタ軸58を距離d3(d3=d2−d1)だけ逆方向に移動させる(戻す)。このとき、刃先4bを距離hだけ上昇させる。これによって、カッタ4は、板バネ66の弾性力により初期の姿勢に戻り(図9(a)参照)、刃部4aの被切断物6に対する角度は第1角度α1となる。そして、中心軸線4zは、図10に示す線分L1の延長線上の頂点Pから距離d1だけ離れた位置にある。そこで、刃先4bの向きを線分L2に沿う方向に変えるため、カッタ4を、中心軸線4zが同図の破線(円弧)に沿うように移動させる。
【0050】
このとき、図9(a)に示すように、刃先4bは、被切断物6を貫通して保持シート10に僅かに食い込んでいるため、刃先4bが切断ラインLの頂点Pの部分を僅かにこじる(捻る)ことになる。しかし、カッタ4は、刃部4aの被切断物6に対する角度は第1角度α1である初期の姿勢であるので、前記の「こじる」領域を極力小さくして刃先4bの向きを変えやすくすることができる。こうして、カッタ4は、刃先4bの向きを線分L2に沿う方向に変えた後、線分L1の切断と同様に、線分L2の切断を第1角度α1から第2角度α2に切り換えて行う。線分L3についても、線分L1、L2と同様に第2角度α2で切断を行う。
【0051】
図10の「三角形」の形状と異なり、切断ラインLの線分が曲率半径の大きい緩やかな曲線を含む場合、カッタ4の相対移動の方向に沿って刃先4bが自動的に向きを変更するため、前記の線分L1〜L3と同様、第2角度α2で切断が行われることとなる。
被切断物6の切断を終えると、ユーザは、保持シート10から被切断物6を剥がす。尚、切断時において、ソレノイド57の駆動により被切断物6を接触面56fで押圧すると共に、保持シート10における粘着層10aの粘着力で被切断物6をずれないよう保持することができる。また、切断の際、押圧部材56は被切断物6に対して相対移動するが、押圧部材56の接触面56fが低摩擦係数の材料で構成されているため、接触面56fと被切断物6との間で生じる摩擦力を極力低減させることができる。よって、当該摩擦力に起因する被切断物6のずれをも防止することができる。従って、被切断物6をより確実に保持することができ、正確な切断ラインを形成することができる。
【0052】
以上のように本実施形態の切断装置1は、カッタ4の刃部4aの角度を、非切断時における第1角度α1と、切断時に刃部4aの角度が第1角度α1よりも小さくなるようにカッタ4を傾ける第2角度α2とにわたって切り換える角度切換手段60を備える。
これによれば、切断時に、角度切換手段60によって刃部4aの角度が第1角度α1から第2角度α2に切り換わることで、刃部4aの角度が小さくなる。これにより、カッタ4が被切断物6から受ける切断抵抗を小さくしてシャープな切り味を発揮することができる。また、非切断時つまりカッタ4の相対移動が無い場合、角度切換手段60によって刃部4aの角度を第1角度α1に切り換えて大きくすることができる。よって、例えば切断ラインLの角部を切断する際、その角部の頂点Pでカッタ4の相対移動を一旦停止して第1角度α1に切り換えることで、カッタ4の向き(切断方向)を変えやすくすることができ、ひいてはカッタ4の相対移動を好適に行うことができる。
【0053】
角度切換手段60は、非切断時における刃部4aの第1角度α1を維持する第1角度維持手段70を備える。これにより、カッタ4は被切断物6に対する角度を大きくした状態が維持されるため、切断動作開始時において、切断刃の刃先の先端が被切断物に圧接してスムーズに切れ込みを入れることができる。
【0054】
第1角度維持手段70は、カッタ4を、刃部4aが第1角度α1をなす方向へ弾性付勢する弾性部材からなる。これによれば、第1角度維持手段70として弾性部材を用いた簡単な構成で刃部4aの第1角度α1を維持することができる。
前記弾性部材は、切断時におけるカッタ4の相対移動に伴いカッタ4が被切断物6から受ける切断抵抗力により、刃部4aの角度が第1角度α1から第2角度α2に切り換わる程度の弾性力に設定されている。従って、切断装置1において、刃部4aの角度を第2角度α2に切り換えるための手段を別途設ける必要がなく、角度切換手段60の構成を極めて簡単なものとすることができる。
【0055】
角度切換手段60は、カッタ4を前記の(刃部4aのなす)第1角度α1と第2角度α2にわたって揺動可能に支持する支持軸(リベット64)と、前記支持軸を固定する取付部材59と、カッタ4に当接することでカッタ4の揺動を第1角度α1で規制する第1当接部63aおよび第2角度α2で規制する第2当接部63bと、取付部材59とカッタ4との間に設けられ、非切断時におけるカッタ4を第1当接部63aに当接させる方向へ弾性付勢する弾性部材とを備える。
【0056】
この構成によれば、カッタ4を第1当接部63a或は第2当接部63bに当接させて、カッタ4を非切断時の第1角度α1或は切断時の第2角度α2に傾けた姿勢を保持することができる。また、カッタ4の角度の切り換えを、これら当接部63a、63bを有する取付部材59と、カッタ4を支持する支持軸と、前記弾性部材とを用いた簡単な構成で実現することがきる。更に、上記構成において、切断時におけるカッタ4の相対移動に伴いカッタ4が被切断物6から受ける切断抵抗力により前記弾性部材の弾性力に抗して刃部4aの角度が第1角度α1から第2角度α2に切り換わるので上記したように、より簡単な構成とすることができる。
【0057】
尚、本発明は上記しかつ図面に示す実施形態にのみ限定されるものではなく、次のように変形または拡張することができる。本発明は、上記したカッティングプロッタとしての切断装置1に限られず、切断機能を備えた各種の装置に適用できるものである。
弾性部材は板バネ66に代えて、ねじりバネとしてもよいし、弾性を有するゴム部材等を用いて構成してもよい。また、カッタ4を揺動可能に支持する支持軸は、リベット64ではなく、段付ねじにしてもよい。即ち、図示は省略するが、段付ねじは、ねじ部と頭部との間に、ねじ部より径大な軸部を有して段付き状をなす。そして、カッタ4の挿通穴4eに、段付ねじを当該軸部まで挿通して、ねじ部を取付部材59に形成した雌ねじ(図示略)に螺合させる。これにより、段付ねじは、軸部でカッタ4を揺動可能に支持する支持軸として構成される。
【符号の説明】
【0058】
1 切断装置
4 切断刃(カッタ)
6 被切断物
59 取付部材
60 角度切換手段
63a 第1当接部
63b 第2当接部
64 支持軸
66 弾性部材
70 第1角度維持手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された切断データに基づいて切断刃と被切断物とを相対的に移動させることにより、前記切断刃で前記被切断物を所望の形状に切断する切断装置であって、
前記切断刃と前記被切断物とがなす角度を切り換える前記切断刃の角度切換手段を備え、
前記角度切換手段は、前記切断刃の角度を、非切断時における第1角度と、切断時に前記切断刃を前記第1角度よりも小さくなるように傾ける第2角度とにわたって切り換えるように構成したことを特徴とする切断装置。
【請求項2】
前記角度切換手段は、非切断時における前記切断刃の前記第1角度を維持する第1角度維持手段を備えることを特徴とする請求項1記載の切断装置。
【請求項3】
前記第1角度維持手段は、前記切断刃を前記第1角度をなす方向へ弾性付勢する弾性部材からなることを特徴とする請求項2記載の切断装置。
【請求項4】
前記弾性部材は、切断時における前記切断刃の相対移動に伴い前記切断刃が前記被切断物から受ける抵抗力により、前記切断刃の角度が前記第1角度から前記第2角度に切り換わる程度の弾性力に設定されていることを特徴とする請求項3記載の切断装置。
【請求項5】
前記角度切換手段は、
前記切断刃を前記第1角度と前記第2角度にわたって揺動可能に支持する支持軸と、
前記支持軸を固定する取付部材と、
前記取付部材に前記切断刃との当接が可能に設けられた一対の当接部であって、前記切断刃に当接することで前記切断刃の揺動を前記第1角度で規制する第1当接部および前記第2角度で規制する第2当接部と、
前記取付部材と前記切断刃との間に設けられ、非切断時における前記切断刃を前記第1当接部に当接させる方向へ弾性付勢する弾性部材とを備え、
切断時における前記切断刃の相対移動に伴い前記切断刃が前記被切断物から受ける抵抗力により、前記弾性部材の弾性力に抗して前記切断刃の角度が前記第1角度から前記第2角度に切り換わることを特徴とする請求項1記載の切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−91133(P2013−91133A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235014(P2011−235014)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】