説明

刈取り機

【課題】COを排出することなしに、稲麦等の刈取りから結束及び放出まで行うことができる簡便な刈取り機(バインダ)を提供する。
【解決手段】刈取り機は、茎稈を切断する刈刃と、刈刃の後方にあって、切断された茎稈を受ける受け器と、刈取り機を進行させる車輪と、受け器の壁部上で茎稈を軸芯周りで回転させる回転装置と、結束紐を供給し、茎稈の回転につれて茎稈を結束させる結束紐供給装置と、茎稈の結束後、結束紐を切断する結束紐切断装置と、結束された茎稈を機外に放出する放出装置とを備える。本発明の1つの実施の形態によれば、上記回転装置はモータを備える。この実施の形態によれば、第1のレバーを引き、これを放し、第2のレバーを引き、これを放し、かつ操作レバーを前方に押すか、又は回転ハンドルを回転させるだけで、刈取られた稲麦等に結束紐を供給し、結束紐で結束し、結束紐を切断し、結束された稲麦等を機外に放出することができる。また、本発明によれば、刈取り機に使用される各種の装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、稲や麦等を収穫するための刈取り機(バインダ)に関する。特に、簡便な刈取り機に関する。
【背景技術】
【0002】
稲麦等の刈取りは、現在でも手作業による場合が多い。特に、小規模農家の多い地域や、比較的面積の小さい圃場ではそうである。手作業による場合、作業者は、腰をかがめながら、一方の手で稲麦等を掴み、他方の手で稲麦等の株元に鎌をあて、これを強く引かなければならない。この作業は、たとえ短時間であっても身体、特に腰に大きな負担を強いるものであり、ましてや、収穫期の長時間の作業となると大変な労力を要する。また、刈取った稲麦等を一定の束数ずつ手作業で結束していかなければならない。
【0003】
一方、現在、農業の分野でも機械化が進み、稲麦等を収穫するための機械の1つとしてバインダがある。バインダは、一般にガソリンエンジンを搭載した歩行型の刈取り機であり、稲麦等の刈取りから、刈取った稲麦等の結束、結束した稲麦等の機外への放出まで行う。このようなバインダは、稲麦等の収穫期において、農家に大いなる労力の軽減と労働時間の短縮をもたらすものである。しかしながら、ガソリンエンジンを搭載したバインダは、複雑な機構、構造のために、操作、操縦が必ずしも容易でない。特に、1年のうちの収穫期にのみ使用するので、操作、操縦に馴れにくい。また、搭載するエンジンや、往復運動する刈刃や、それらを動作させるための装置類のために、重量も相当なものであり、取扱いや操作、操縦に苦労する場合も多い。そのため、圃場の灌漑用水路にバインダを嵌めてしまうこともある。また、価格の点で一般の農家にとってはなかなか手が届きにくいものである。そのような理由から、稲麦等の刈取りから結束、放出まで行うことができるより簡便な刈取り機が求められる。さらに、低炭素社会の実現に向けて、COの排出量の少ない刈取り機が求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、稲麦等の手作業による刈取り作業や結束作業から作業者を開放して作業者の労力の軽減を図ることができる刈取り機を提供することを目的とする。また、稲麦等の刈取りと、刈取った稲麦等の結束と、結束した稲麦等を機外に放出することができるより簡便な刈取り機を提供することを目的とする。また、使用時にCOを排出しない刈取り機を提供することを目的とする。さらに、上述のような刈取り機の機能を実現するのに好適な各種の装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、本発明の1つの態様によれば、刈取り機であって、茎稈を切断する刈刃と、前記刈刃の後方にあって、切断された茎稈を受ける受け器と、刈取り機を進行させる装置と、前記受け器の壁部上で茎稈を軸芯周りで回転させる回転装置と、結束紐を供給し、茎稈の回転につれて茎稈を結束させる結束紐供給装置と、茎稈の結束後、結束紐を切断する結束紐切断装置と、結束された茎稈を機外に放出する放出装置とを備える、刈取り機が提供される。
【0006】
本発明の別の態様によれば、少なくとも一方が回転刃である一対の切断刃と、前記回転刃を回転可能に刈取り機に固定するための固定具との組合せであって、前記回転刃は、円板状の本体と、前記本体の円形中心に形成された貫通孔と、前記本体の外周縁に形成された刃部とを備え、前記一対の切断刃は、前記刈取り機の進行方向に対し左右に並べられて、かつ互いに対向する側に上下に重なり合う部分を有するように、前記刈取り機に固定され、前記固定具は、前記回転刃の前記貫通孔に挿通されて前記回転刃を前記刈取り機に固定すると共に、前記一対の切断刃が前記重なり合う部分において互いに当接するように、前記回転刃を上下方向に付勢するばねを備える、組合せが提供される。
【0007】
本発明の別の態様によれば、刈取り機用の一対の固定刃であって、前記各固定刃は、上面視で、幅方向の一方の側に外方に湾曲しながら延びる刃部を有し、前記一対の固定刃は、刈取り機の進行方向に対し左右に並べられて、かつ互いに対向する側に上下に重なり合う部分を有するように、かつ前記刃部が全体として前方外方に拡開するように、前記刈取り機に固定され、前記一対の固定刃は、前記重なり合う部分の後方にて互いに結合される、一対の固定刃が提供される。
【0008】
本発明の別の態様によれば、刈取り機用の結束紐供給装置であって、一端及び他端に結束紐挿通孔を有するハウジングと、前記ハウジングの一端から結束紐供給方向に延出し、内部に結束紐を通す結束紐通路を有するニードル部と、前記ハウジング内に、前記ハウジングの結束紐供給方向に沿う軸線と直交するように、かつ固定位置にて回転可能に配置される第1の摩擦車と、前記第1の摩擦車と平行に配置され、前記第1の摩擦車に押接されることができる第2の摩擦車と、前記第1の摩擦車と共軸に、かつ前記第1の摩擦車と一体回転可能に支持されるラチェット歯車と、前記ラチェット歯車と係合可能で、前記第1の摩擦車の結束紐供給方向と反対方向の回転を阻止するラチェット爪とを備え、前記第1の摩擦車と第2の摩擦車とは、前記ハウジングの他端から挿通された結束紐をそれらの間に通して回転し、それらの回転量又は回転速度に応じて前記ニードル部を通じて結束紐を送出する、結束紐供給装置が提供される。
【0009】
本発明の別の態様によれば、刈取り機用の結束紐供給装置であって、内部に結束紐を通す結束紐通路を有し結束紐供給方向に結束紐を送出するニードル部と、結束紐が前記結束紐通路内を結束紐供給方向と反対方向に移動するのを阻止する逆戻り防止装置とを備え、前記逆戻り防止装置は、全体として円錐形をなし結束紐がその中を通過するように前記ニードル部に取付けられる複数の円錐片を備え、前記複数の円錐片は、結束紐供給方向に先細りするように延び、先端に結束紐よりも小径の先端開口を形成する、結束紐供給装置が提供される。
【0010】
本発明の別の態様によれば、上述の結束紐供給装置と、この結束紐供給装置よりも結束紐供給方向上流側に配置される結束紐ケースとの組合せであって、前記結束紐ケースは、ケース本体と、前記ケース本体に回転可能に収納される紐ロールと、前記ケース本体に外設され、前記ケース本体に形成された貫通孔を介して前記紐ロールと摺接することができ、前記紐ロールとの摺接時、前記紐ロールの回転量又は回転速度を規制して前記結束紐供給装置への結束紐の送出量又は送出速度を制御する制動具とを備える、組合せが提供される。
【0011】
本発明の別の態様によれば、刈取り機用の結束紐供給装置であって、一端及び他端に結束紐挿通孔を有するハウジングと、前記ハウジングの一端から結束紐供給方向に延出し、内部に結束紐を通す結束紐通路を有するニードル部と、結束紐が前記結束紐通路内を結束紐供給方向と反対方向に移動するのを阻止する逆戻り防止装置とを備え、前記逆戻り防止装置は、全体として円錐形をなし結束紐がその中を通過するように前記ニードル部に又は前記ハウジング内に取付けられる複数の円錐片を備え、前記複数の円錐片は、結束紐供給方向に先細りするように延び、先端に結束紐よりも小径の先端開口を形成する、結束紐供給装置が提供される。
【0012】
本発明の別の態様によれば、上述の結束紐供給装置と、この結束紐供給装置よりも結束紐供給方向上流側に配置される結束紐ケースとの組合せであって、前記結束紐ケースは、ケース本体と、前記ケース本体に回転可能に収納される紐ロールと、前記ケース本体に外設され、前記ケース本体に形成された貫通孔を介して前記紐ロールと摺接することができ、前記紐ロールとの摺接時、前記紐ロールの回転量又は回転速度を規制して前記結束紐供給装置への結束紐の送出量又は送出速度を制御する制動具とを備える、組合せが提供される。
【0013】
本発明の別の態様によれば、刈取り機用の結束紐ケースであって、横断面円形のケース本体と、前記ケース本体に回転可能に収納される紐ロールと、前記ケース本体の円形面に外設される制動具とを備え、前記制動具は、前記円形面に形成された貫通孔を介して前記紐ロールと摺接することができ、前記紐ロールとの摺接時、前記紐ロールの回転量又は回転速度を規制して結束紐の送出量又は送出速度を制御する、結束紐ケースが提供される。
【0014】
本発明の別の態様によれば、刈取り機用の放出装置であって、刈取り機の前後方向に沿う軸に取付けられ、前記軸の周りを下方に傾斜した第1の位置及び上方に傾斜した第2の位置の間で回動可能な放出アームと、前記放出アームを前記第1の位置及び前記第2の位置の間で回動させる操作装置とを備え、前記放出アームは、前記第2の位置への回動時、前記刈取り機の前後方向に軸芯を沿わせた状態で前記放出アーム上に横たわる茎稈を、前記軸の上方を通過させて、前記刈取り機の外に放出する、放出装置が提供される。
【0015】
本発明の別の態様によれば、刈取り機用の放出装置であって、刈取り機の前後方向に沿う軸に取付けられ、前記軸の周りを第1の位置及び第2の位置の間で回動可能な放出アームと、前記放出アームを常時前記第2の位置に付勢するばね装置と、前記放出アームに接続されるワイヤと、前記ワイヤを前記ばね装置のばね力に抗して牽引して、前記放出アームを前記第1の位置に回動させ、また前記ワイヤの牽引を解除して、前記放出アームを前記ばね装置の反発力により前記第2の位置に回動させる牽引装置とを備え、前記放出アームは、前記第2の位置に回動された時に、その上の茎稈を前記刈取り機の外に放出する、放出装置が提供される。
【0016】
本発明のさらに別の態様によれば、刈取り機用の放出装置であって、刈取り機の前後方向に沿う軸に取付けられ、前記軸の周りを第1の位置及び第2の位置の間で回動可能な放出アームと、前記軸に回転可能に支持され、かつ前記放出アームと一体回転可能に連結される第1の歯車又はラックと、前記第1の歯車又はラックと噛合う1つ又は複数のその他の歯車と、前記1つ又は複数のその他の歯車を回転軸を介して回転させ、それによって前記第1の歯車又はラックを回転させ、前記放出アームを前記第1の位置及び第2の位置の間で回動させる回転ハンドルとを備え、前記放出アームは、前記第1の位置又は前記第2の位置に回動された時に、その上の茎稈を前記刈取り機の外に放出する、放出装置が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、作業者は、稲麦等の手作業による、腰をかがめての刈取り作業や、結束作業から開放されることができる。また、本発明によれば、稲麦等の刈取りと、刈取った稲麦等の結束と、結束した稲麦等の機外への放出とを行うことができるより簡便な刈取り機が提供される。また、本発明によれば、使用時にCOを排出しない刈取り機が提供される。
【0018】
さらに、本発明によれば、刈取り機を構成し、または刈取り機に使用される各種の装置が提供される。
【0019】
本発明の他の目的、特徴及び利点は、以下の詳細な説明を添付図面を参照して読むことにより明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】上方やや前方から見た本発明の第1の実施の形態に係る刈取り機の全体図である。
【図2】図1に示す刈取り機の一部分解側面図である。
【図3】図1に示す回転刃の部分拡大上面図である。
【図4A】回転刃をスライダ上に固定する固定具の一例を示す図1の4A−4A線に沿う断面図である。
【図4B】回転刃をスライダ上に固定する固定具の一例を示す図1の4B−4B線に沿う断面図である。
【図5】図1に示す刈取り機本体を斜め前方から見た一部分解拡大図である。
【図6】第1の実施の形態に係る結束紐供給・切断ユニットの全体図である。
【図7A】図6に示す回転牽引具を斜め前方から見た拡大図である。
【図7B】図6に示す回転牽引具を斜め後方から見た拡大図である。
【図8】図6に示す結束紐供給・切断ユニットの使用状態を表す図である。
【図9】図6に示す結束紐供給装置のハウジングの全体図である。
【図10】図9に示すハウジングに収納される各要素を示す図である。
【0021】
【図11】第1の実施の形態に係る放出装置の全体図である。
【図12】図11に示すストッパ装置の拡大図である。
【図13】図11に示す牽引装置の一部分解拡大図である。
【図14】図13に示す牽引装置の要部を示す図である。
【図15】図14で使用されているラチェット機構を示す分解図である。
【図16】図14に示す牽引装置の要部の装着状態を示す一部切欠き図である。
【図17】第1の実施の形態による、牽引操作時における第2の歯車及びワイヤ巻取り具の逆回転を防止するためのラチェット装置を示す側面図である。
【図18】図17に示すラチェット装置の拡大図である。
【図19A】第1の実施の形態による、第1の歯車が第2の歯車から離脱(及び第2の歯車と再係合)する状態を示す概念図である。
【図19B】第1の実施の形態による、第1の歯車が第2の歯車から離脱(及び第2の歯車と再係合)する状態を示す概念図である。
【0022】
【図20】本発明の第2の実施の形態に係る刈刃装置を示す上面図である。
【図21】図20の21−21線に沿う拡大断面図である。
【図22】本発明の第3の実施の形態に係る回転装置を示す、図5と類似の図である。
【図23】本発明の第4の実施の形態に係る結束紐供給装置を示す、図9、10と類似の図である。
【図24】第4の実施の形態に係る結束紐ケースを示す図である。
【図25】図24に示す結束紐ケースの一部の拡大図である。
【図26】本発明の第5の実施の形態に係る放出装置の全体図である。
【図27】図26の放出装置で使用される歯車支持装置の分解拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、特に断らない限り、本書において「前」、「後」及び「前後方向」とは、それぞれ刈取り機の進行方向に沿う前方、後方及び前後方向をいう。また、「左」、「右」及び「左右方向」とは、上記進行方向に向かって左方、右方及び左右方向をいう。また、各図における縮尺、各図間の縮尺は必ずしも正確ではない。
【0024】
図1は、上方やや前方から見た本発明の第1の実施の形態に係る刈取り機の全体図である。図2は、図1に示す刈取り機の一部分解側面図である。
【0025】
刈取り機101は、刈刃装置111と、刈取り機本体211と、取っ手711とを備え、上記刈刃装置と、刈取り機本体と、取っ手とは、この順序で前後方向に一列に整列される。刈取り機本体211は、刈刃装置111で刈取られた茎稈を受ける受け器241と、進行装置としての車輪291、291と、受け器241内で茎稈を回転させる回転装置311と、茎稈を結束するための結束紐を供給する結束紐供給装置361(図2、6)と、茎稈の結束後結束紐を切断する結束紐切断装置511(図6)と、結束された茎稈を機外に向けて放出する放出装置561とを含む。刈取り機本体211は、さらに、受け器241を支持する支持枠213を含み、支持枠には補助輪215が取付けられると共に、結束紐ケース509が載置されている。取っ手711は、前方に延びる延長部717を有し、延長部の先端は支持枠213に角度調節可能に連結されている。作業者の身長に合わせて取っ手711の高さ位置を調節可能とするためである。刈取り機101は、作業者が歩行しながら取っ手711を押すことにより、車輪291、291が回転し、一対のスライダ209、209が圃面を滑り、それらの間に捉えた茎稈を刈刃装置111で切断し、切断された茎稈を受け器241で受ける。以下、刈取り機101の具体的な構成について説明する。
【0026】
刈刃装置111は、本実施の形態において、左右に並置された一対の切断刃、図示の例では、一対の回転刃113、113を備える。各回転刃113は、外周縁に刃部120(図3)を有し、固定具115a(115b)によってそれぞれのスライダ209上に回転可能に固定される。回転刃113、113は、互いに対向する側(左右方向中央)に互いの刃部120、120が上下に重なり合う部分を有するようにスライダ上に固定されるのが好ましい。回転刃113、113は、茎稈の切断時、茎稈に押し当てられると、内側が茎稈の株元に当たって前進を阻まれるので、それぞれの回転軸の周りを内側に回転し、茎稈を左右両側から挟み切る。
【0027】
図3は、図1に示す回転刃113の部分拡大上面図、図4Aは、一方の回転刃113をスライダ209上に固定する固定具115aの一例を示す図1の4A−4A線に沿う断面図、図4Bは、他方の回転刃をスライダ上に固定する固定具115bの一例を示す図1の4B−4B線に沿う断面図である。図3において、回転刃113は、円板状の回転刃本体117と、本体117の円形中心に設けられた貫通孔119と、本体の外周縁に形成された刃部120とを有する。刃部120には、複数の小刃部121、121・・・が形成されている。各小刃部121は、図示の例では、上面視で三角形であるが、半円形であっても、その他の形状であってもよい。各小刃部121は、図3、図4A、4Bから明らかなように、回転刃本体117の上下方向の一方の面(例えば、図4Aの下面117a)から他方の面(例えば、図4Aの上面117b)に向けて傾斜する傾斜部122を有し、この傾斜部の先端に刃123を有するのが好ましい。各小刃部121は、図3に示すように、回転刃113の回転方向前方及び後方に、上述の傾斜部122の先端に形成された刃123、123を有するのが好ましい。なお、以下では、便宜上、上記他方の面(117b)を、刃が形成された面又は刃が形成された側の面という。
【0028】
図4A、4Bを参照すると、固定具115は、回転刃113の貫通孔119に挿通されて回転刃をスライダ209上に固定する。図4Aにおいて、125はスライダ209に形成された軸孔であり、127はボルト、129はナット、131はボルト127をガイドする筒体、133は押さえ、135はワッシャである。筒体131は、ボルト127とナット129により締付けられて、スライダ209と押さえ133との間に固定される。図4Bも同様な構成である。但し、スライダ209と筒体131との間に押さえ134が付加されている。137は一対の皿ばねを上下に組合せたばねであり、図4Aにおいてはスライダ209と回転刃113との間に配置され、図4Bでは回転刃113と押さえ133との間に配置されている。したがって、図4Aでは、ばね137は回転刃113を上方に付勢し、図4Bでは、回転刃113を下方に付勢する。そのため、回転刃113、113をスライダ209、209に組付けると、ばね137、137は、回転刃113、113の左右方向中央でそれらの刃部120、120が互いに当接するようにそれぞれの回転刃を付勢する。また、回転刃113、113は、刃123、123・・・が形成された側の上記他方の面117b(図4A)、117a(図4B)が互いに対向するようにスライダ209、209に組み付けられる。
【0029】
かかる構成によれば、回転刃113、113は、それらの間の上下方向距離が常に最小に維持され、また刃123、123・・・が形成された側の面が互いに対向し隣接するので、茎稈を左右両側から有効に挟み切ることができる。しかも、各回転刃の各小刃部121には、回転刃の回転方向前方及び後方に刃123、123が形成されているので、たとえ回転刃113、113が回転しなくても、回転刃113、113を茎稈の株元に突き当てるだけで、回転方向後方の刃123、123・・・によって茎稈を切断することができる。これは、切断しようとする茎稈の本数が少ないような場合は、回転刃113、113が茎稈の周りで回転しないこともあり得るので、そのような場合に特に有利である。
【0030】
なお、本実施の形態では、左右一対の切断刃として回転刃113、113を用いているが、回転刃と回転刃以外の切断刃(例えば、図20に示すような固定刃)とを左右に並置して用いることもできる。本実施の形態では、固定具115a、115bはいずれもばね137を有しているが、一方の固定具のばねを省略し、他方の固定具のみがばねを有するようにすることもできる。その場合は、ばねを省略する側の固定具は、回転刃の高さ位置を固定してこれを支持することとなる。あるいはまた、いずれの固定具もばね137を有しない構成とすることもできる。この場合は特に、両回転刃113、113の上下方向間隔が最小となるように、回転刃113、113を固定することが好ましい。また、本実施の形態では、一対の回転刃113、113を用いているが、例えばモータにより回転駆動される単一の回転刃を用いることもできる。
【0031】
次に、図1、2及び5を参照して、刈取り機本体211について説明する。図5は、図1に示す刈取り機本体211を斜め前方から見た一部分解拡大図である。刈取り機本体の受け器241は、前後方向に長く、その中心軸線が一対の回転刃113、113の間の中心線と一致するように配置される。また、受け器241は、前方に向けて下方に傾斜しており、前端が回転刃113、113に隣接して位置決めされる。受け器241は、左右の両側部から底部にかけて内方に傾斜した壁部を有するのが好ましく、図示の例では、断面略円弧状である。内方下方に傾斜した壁部に代えて、又はこれに加えて、図5に示す茎稈回転補助具243のような傾斜手段を用いることもできる。茎稈回転補助具243については後述する。受け器の前方への傾斜角度は、図示の例では約15度であるが、これは適宜選択することができる。受け器241は、前端及び上部が開放されている。受け器は、長さの異なる茎稈を集荷できるようにするため、図示の例では、後端も開放されているが、後端は閉鎖してもよい。受け器241の左右両側部の上端には、ロッド249、249を挿通または嵌入するための筒部251、251が形成され、筒部251、251の下部は開放されている。ロッド249、249間には、受け器241の断面形状に沿うように下方に湾曲した第1の横板253aと、第2の横板253bとが架設されている。各横板253は、左右の両端部が各ロッド249の下部に形成された凹所(図示せず)に嵌入され、必要に応じてねじ止め等されて固定される。なお、受け器241は、図示の例では、1つの板から構成され、全体として1つの壁部を有しているが、これを横方向に分割し、前後方向に整列された複数の分割壁部から構成することもできる。その場合は、各横板253を、いずれかの分割壁部の下ではなく、隣接する分割壁部間に位置させることができる。したがって、その場合は、各横板253が受け器の壁部の一部を構成することとなる。ロッド249、249の前端寄りの位置からは車輪支持体255、255が下方に延び、それらの下端に車輪291、291が装着されている。293は車軸である。載置棚257を支持し、補助輪215が取付けられた支持枠213が、車輪支持体255、255とロッド249、249とに連結されて、ロッド249、249と共に受け器241を支持している。載置棚257には結束紐ケース509と蓄電池319とが載置されている。
【0032】
なお、本実施の形態では、受け器241は前方に向けて下方に傾斜しているが、必ずしも傾斜させる必要はなく、圃面と略平行とすることもできる。また、図示の例では、車輪支持体255、255(及び車輪291、291)は、ロッド249、249の先端よりも多少後方に取付けられているが、ロッドの先端に取付けても、図示の例よりもさらに後方に取付けてもよい。また、本実施の形態では、進行装置として車輪291、291を用いているが、例えば、幅広の滑走面を有し、圃面に合わせて揺動可能なスライダ装置等の適宜の進行装置を用いることもできる。
【0033】
次ぎに、図5を参照して、刈刃装置111と刈取り機本体211との連結について説明する。スライダ209、209上には回転刃113、113の後方に背付き椅子形の組立体259が設けられている。この組立体は、各スライダ209上に立設された第1の支柱261と、第1の支柱の前方の第2の支柱263とを備える。第1の支柱261は、図示の例で、第2の支柱263よりも高さが高く、前後幅が大きい。前後方向に延びる縦棒265が第1の支柱261の高さ方向の略中間と第2の支柱263の上端とを繋ぎ、横棒266が左右両側の第2の支柱263、263を繋いでいる。各第1の支柱261は、上部に軸孔(図示せず)を有し、これらの軸孔には横軸267が挿通されている。第1の支柱261と第2の支柱263は、ロッド249、249に支持される受け器241の底部と干渉しない高さを有する。
【0034】
一方、刈取り機本体211側では、車輪支持体255、255間に補強板269が架設されている。図示の例で、補強板269はロッド249、249に対し若干下方に傾斜している。図中、271は、車輪支持体255に形成され補強板269の端部が嵌着されるめくら孔である。補強板269からは左右一対の支持棒273、273が前方に延出している。各支持棒273は、長さ方向の略中間に第1の支柱261の上記図示しない軸孔と位置合わせされる軸孔275を有する。横軸267の各端部は、第1の支柱261の上記図示しない軸孔と各支持棒273の軸孔275とに挿通される。挿通された横軸267の各端部には、軸部に中空孔を有する六角ボルト277が、各支持棒273の外側から被せられ、支持棒273の軸孔275と第1の支柱261の上記図示しない軸孔とを通り抜け、予め横軸267に仮止めされていたナット279と螺合され、締付けられる。また、各支持棒273は先端寄りの個所で第2の支柱263にねじ止めされる。かかる構成により、刈刃装置111と刈取り機本体211とは互いにしっかりと連結される。また、第1の支柱261、261間に架け渡された横軸267と、第2の支柱263、263間に架け渡された横棒266とにより、2つのスライダ209、209が所定の位置関係に固定される。
【0035】
刈刃装置111で切断された茎稈は、受け器241内に集荷され、受け器内で回転装置311により回転され、それと共に結束紐で結束される。次に、この回転装置について説明する。
【0036】
図5において、回転装置311は、第1の横板253aの下面にねじ止めされるモータ315と、モータ315により回転駆動される一対の回転羽根313、313とを備える。モータ315は、第1の横板253aに沿って横向きに、すなわちその軸線が第1の横板の長さ方向に沿うように配置され、刈取り機101の内方に向けて突出するモータ軸(図示せず)を有する。モータ315のモータ軸には減速装置(図示せず)を介して回転羽根313、313が連結される。減速装置には、クラウン歯車、ウォーム歯車、かさ歯車その他の適宜の歯車が含まれる。モータ315の回転速度は、切替えられるようにするのが好ましい。その場合は、速度切替えスイッチ(図示せず)を取っ手711に付設する。モータ315は、図示しない電線を介して、電源スイッチ321(図6)と、載置台257に設置された蓄電池319と、速度切替え可能とする場合に設けられる上記図示しない速度切替えスイッチとに接続される。電源スイッチ321についてはさらに後述する。蓄電池319は、充電式であってもなくてもよいが、充電式が好ましい。また、充電式の場合、家庭用電源から充電できるのが好ましい。モータ315の電源の非限定的な例には、上記蓄電池のほかに、電力発生源となる、例えば太陽電池、燃料電池、発電機等が含まれる。
【0037】
回転羽根313、313は、第1の横板253aの前後方向両側に配置され、前後方向に延びる負荷軸314の両端に負荷軸と一体回転可能に結合される。負荷軸314は、長さ方向の略中間にて上記減速装置を介してモータ軸に連結される。回転羽根313、313は、受け器241の中心軸線に対し左右方向の一方に偏った位置(図示の例では右側)に配置するのが好ましい。受け器241の壁部には、回転羽根313、313に対応する位置に一対の切欠き327、327が形成される。各切欠き327は、上面視で横方向に長い矩形形状である。回転羽根313、313は、これらの切欠き327、327を介して一部が受け器241内に突出する。但し、受け器241が前後方向に整列した複数の分割壁部を有する場合は、上記切欠きは隣接する分割壁部間の隙間であってもよい。なお、各回転羽根313の各歯先は、図5に示すように、回転方向前方から後方にかけて丸められるのが好ましい。また、切欠き327、327の前方には、受け器241の壁部に沿って左右方向に延びるリブ247を設けるのが好ましい。
【0038】
モータ315に電源が投入されると、回転羽根313、313は、上記減速装置を介して、図示の例では右回りに、すなわち矢印Aの方向に回転する。回転羽根313、313が回転すると、回転羽根313、313の歯先が受け器241に集荷された茎稈の側面に連続的に当り、茎稈を回転羽根とは反対方向に回転させる。そのため、茎稈は、受け器の壁部上で、かつ受け器241の前後方向に軸芯を沿わせた状態で、軸芯周りに回転する。受け器241は、内方下方に傾斜した壁部を有するので、茎稈は回転羽根313、313と内方下方に傾斜した壁部との間に挟まれて回転を繰返される。その際、リブ247は、切欠き327、327の後方に位置付けられる後述の放出アーム563、563(図1、11参照)と共に、茎稈がその上で回転される受け器241の壁部上の段部を構成し、茎稈を受け器の壁部から浮かせてその回転を容易にする働きをする。また、後述の放出アーム563、563と共に、前方下方に傾斜する受け器241に集荷された茎稈が滑り落ちるのを防止する働きもする。そのため、リブ247と放出アーム563、563とは、摩擦係数の大きい材料で作るのが好ましい。
【0039】
第1の横板253aと受け器241の壁部とには、互いに対応する位置に結束紐供給孔283、285が形成され、これらの結束紐供給孔を通じて後述する結束紐供給装置361により受け器内に結束紐が供給される。(受け器241が複数の分割壁部からなる場合は、分割壁部の1つを構成することとなる第1の横板253aにのみ結束紐供給孔283を設ければ足りる。以下、同様。)そのため、回転羽根313、313による茎稈の回転時、結束紐が供給孔283、285を通じて受け器241内に供給されると、軸芯周りで回転する茎稈に結束紐が絡まり、茎稈の周りに巻回されて、茎稈を結束する。なお、結束紐供給孔283、285は、受け器241の中心軸線に対し左右方向の一方に偏った位置に配置するのが好ましい。回転羽根313、313を左右方向の一方(図示の例では右側)に偏らせる時は、これと反対方向(図示の例では左側)に偏らせるのが好ましい。
【0040】
図5中、243は、一本のワイヤからなる茎稈の回転を容易にするための回転補助具である。回転補助具243は、受け器241の内方下方に向けて円弧状に湾曲した2つの脚部287、287と、脚部287、287の一端で前後方向両側に折曲されて切欠き327に係止される折曲部288、288と、脚部287、287の他端でこれらの脚部を繋ぐと共に、断面円形のロッド249の周囲を取囲むように延び、ロッドの受け器側側部に形成された溝(図示せず)に係止される係止部289とを有する。このような回転補助具243を用いて、茎稈の回転をさらに容易にすることもできる。このような回転補助具243は、茎稈の刈取り時、受け器241に集荷される茎稈が直接回転羽根313、313に掛るのを防ぐのにも役立つであろう。なお、受け器241自体の側部を、回転羽根313、313(及び切欠き327、327)の近傍で回転補助具243のように湾曲させることもできよう。
【0041】
なお、本実施の形態では、一対の回転羽根313、313を用いているが、単一の回転羽根で茎稈を回転させることもできる。その場合は、第1の横板253aの前方の、茎稈の株元に近い方の回転羽根を残し、また回転羽根と、結束紐が供給される第1の横板253aの結束紐供給孔283、285との間の前後方向距離をできるだけ小さくした上で、回転羽根を回転させるのが好ましい。また、逆に、回転羽根313を3つ以上用いて茎稈を回転させることもできる。本実施の形態では、回転羽根313、313を図示し、説明したが、回転羽根の形状、歯数等はかかるものに限定されず、適宜好適な回転羽根を用いることができる。本実施の形態では、モータ315と回転羽根311、311とを受け器241の外側に配置し、回転羽根311、311の一部を受け器内に突出させているが、モータと回転羽根の寸法等によっては、これらを必要なハウジング等と共に受け器内に配置することもできる。本実施の形態では、モータ315の減速装置として、歯車式の減速装置を例示したが、ベルト式やチェーン式等の減速装置を用いることもできる。また、本書において、結束紐供給孔という時は、図示の例のような円形の孔に限らず、長楕円、矩形又はその他の適宜の形状の孔、または分割壁部間の隙間をも含むものとする。
【0042】
次に、図6〜10を参照して、結束紐供給装置361と結束紐切断装置511について説明する。結束紐供給装置361は、結束紐ケース509(図5)から送られてくる結束紐を受け器241内に供給する装置であり、結束紐切断装置511は、茎稈を結束紐で結束した後に結束紐を切断する装置である。本実施の形態では、結束紐供給装置361と結束紐切断装置511は、取付台371(図6)を介して結束紐供給・切断ユニット363として一体化されている。結束紐供給・切断ユニット363は、図5からも明らかなように、第1の横板253aの下面に横向きに取付けられる。具体的には、ニードル部369を備えた結束紐供給装置361が結束紐切断装置511を間に挟んでモータ315と対向するように取付けられる。なお、図6〜10の説明においては、他の図の説明と異なり、「前」及び「後」とは、それぞれ結束紐供給装置361が結束紐を供給する方向に沿う前方及び後方(刈取り機101の進行方向に向かって右方及び左方(図5参照))をいい、「左」、「右」とは、上記結束紐供給方向に向かって左方及び右方をいう。図6は、結束紐供給・切断ユニット363の全体図、図7Aは、図6に示す回転牽引具365を斜め前方から見た拡大図、図7Bは、回転牽引具365を斜め後方から見た拡大図である。図8は、結束紐供給・切断ユニット363の使用状態を表す図、図9は、結束紐供給装置361のハウジング367の全体図、図10は、ハウジング367に収納される各要素を示す図である。
【0043】
図6において、結束紐供給装置361は、箱形のハウジング367と、ハウジングの前端から前方、すなわち結束紐供給方向に突出し、かつ下方に湾曲するニードル部369とを備える。ハウジング367は、前端及び後端に結束紐挿通孔407、408(図9)を有し、ニードル部369は、結束紐が通る結束紐通路を内部に有する。ハウジング367は、後端寄りの位置で両側部に垂設された一対の軸受け片375、375(一方の軸受け片のみ破線で図示)を有し、各軸受け片375の軸孔377には支持軸(図示せず)が挿通される。ハウジング367は、この支持軸を介して、取付台表面383に立設された一対の支持板379、379の間に枢動可能に支持される。ダブルトーションばね381のコイル部(図示せず)が上記図示しない支持軸に巻回され、上方及び下方に延びる脚部(下方の脚部385のみ図示)がハウジング367の底壁と取付台表面383上にそれぞれ止着され、ハウジング367の前部及びニードル部369を常時上方に付勢している。ダブルトーションばね381のばね力に抗してハウジング367を取付台表面383側に牽引する第1のワイヤ387が、ハウジング367の底壁に結着されると共に、取付台表面383にねじ止めされた回転牽引具365を介し、かつワイヤガイド389を通じ、取っ手711(図1)に付設された第1のレバー713まで延びている。この第1のレバーを引き、また放すことにより、ハウジング367の第1のワイヤ387による牽引及び牽引解除が行われる。図示の例で、ニードル部369は、断面円形の、全体的に先細りの筒体であり、摩擦係数の小さい材料で作られ、撓み性を有することが好ましい。結束紐供給装置361は、ダブルトーションばね381により上方に付勢された第1の位置(図8に実線で示す位置)と、第1のワイヤ387により取付台表面383側に牽引された第2の位置(図8に2点鎖線で示す位置)との間を枢動可能であり、第2の位置に牽引された時に、ニードル部369の先端が、結束紐切断装置511の貫通孔513と、これと位置合わせされた第1の横板253aの結束紐供給孔283(図5)及び受け器241の結束紐供給孔285とを通じて受け器241内に進入し、結束紐を供給する。上記第1の位置は、結束紐供給装置361の待機位置である。なお、取付台表面373には、ハウジング367の後端側に、結束紐供給装置361の第2の位置から第1の位置への復帰時、ハウジング367と当接して結束紐供給装置361を停止させる図示しないストッパが設けられている。
【0044】
図7A、7Bに拡大して示すように、回転牽引具365は支持体391を備える。支持体391は、前部及び後部にねじ代を有する底板392と、底板に立設された2つの側板393、393と、これらの側板を繋ぐ上板394とを含む。支持体391の内部には、大径の第1の回転体395と、第1の回転体の側面に連設された小径の第2の回転体397とが回転可能に軸支される。第1及び第2の回転体395、397は、それぞれ断面円形であり、外周面に形成されたワイヤ溝396、398を有し、一体的に回転する。第1のワイヤ387は、ハウジング367の底壁と第1の回転体395との間に延び第1の回転体のワイヤ溝396に固定巻回される第1の部分ワイヤ387aと、第2の回転体397のワイヤ溝398に固定巻回され、そこからワイヤガイド389を通じて取っ手711の第1のレバー713まで延びる第2の部分ワイヤ387bとを有する。支持体391の上板394の上には、モータ315の電源スイッチ321が設置される。かかる構成により、第1のレバー713を引いて第2の部分ワイヤ387bにより第2の回転体397を回転させると、これと一体の第1の回転体395が回転し、第1の部分ワイヤ387aを牽引して結束紐供給装置361を第2の位置に移行させる。これにより、ニードル部369の先端が受け器241の結束紐供給孔285を介して受け器内に進入する。その際、第1の回転体395は第2の回転体397よりも大径なので、牽引距離を増大させながら結束紐供給装置361を牽引することができる。また、支持体391の上板394の上には、モータ315の電源スイッチ321が設置されているので、結束紐供給装置361の第2の位置への移行時、ハウジング367の底壁が電源スイッチ321に当接し、これを押圧して、モータ315に電源を投入する。したがって、結束紐の供給と同時にモータ315が回転し、これにより回転羽根313、313が回転して、茎稈を軸芯周りに回転させ、供給された結束紐で茎稈を結束する。なお、支持体391及びその上の電源スイッチ321は、結束紐供給装置361を第2の位置に停止させるストッパとしての役目も果たす。
【0045】
結束紐切断装置511は、取付台表面383に結束紐供給装置361と対向して配置される。結束紐切断装置511は、上面視で矩形の扁平な箱体515を備える。箱体515は、結束紐供給装置361に面する側の、一方の短辺側壁部516aと、他方の短辺側壁部516bと、一方の長辺側壁部516cと、他方の長辺側壁部516dとを含む。貫通孔513は、上記一方の短辺側壁部516a寄りの位置で箱体515を厚さ方向(上下方向)に貫通している。箱体515の内側には、両長辺側壁部516c、516dに沿って図示しないガイド溝が形成され、このガイド溝に沿って略直角台形の摺動刃517が摺動可能である。摺動刃517は、貫通孔513に面する側に刃部519を有する。刃部519は、箱体515の一方の長辺側壁部516cから他方の長辺側壁部516dに向けて、貫通孔513とは反対側に傾斜している。摺動刃517は、刃部519が貫通孔513を横切るように往復摺動可能である。箱体515の外側には、回転牽引具522が配置されている。回転牽引具522は、取付台表面383上に横設される点で上記回転牽引具365と異なるが、回転牽引具365と同様な構成と機能を有する。すなわち、一体的に回転する第1及び第2の回転体523、524を有し、第1の回転体523は第2の回転体524よりも大径であり、第1及び第2の回転体523、524はそれぞれ外周面にワイヤ溝(図示せず)を有する。摺動刃517に接続される第2のワイヤ521は、摺動刃517の貫通孔513側の基部と第1の回転体523との間に延び第1の回転体のワイヤ溝に固定巻回される第1の部分ワイヤ521aと、第2の回転体524のワイヤ溝に固定巻回され、そこからワイヤガイド525を通じて取っ手711の第2のレバー715(図1)まで延びる第2の部分ワイヤ521bとを有する。摺動刃517の貫通孔513側とは反対側の基部と箱体515の上記他方の短辺側壁部516bとの間には、摺動刃517を常時この短辺側壁部516b側に牽引する引張ばね527が接続されている。第2のレバー715を引くことにより、第2のワイヤ521と回転牽引具522とを介して摺動刃517が、引張ばね527に抗して牽引され、貫通孔513を横切り、貫通孔内に位置する結束紐を切断する。また、第2のレバー715を放すと、摺動刃517が引張ばね527に引かれて、元の位置に復帰する。なお、図中、372は、第1の横板253aの下面に取付台371を固定するためのねじである。
【0046】
図8は、第1の位置の結束紐供給装置361を実線で表し、結束紐切断装置511の貫通孔513等を介して受け器241内に進入した第2の位置の結束紐供給装置361を二点鎖線で表す。より具体的には、実線は、第2の位置で結束紐を供給した後、第1のレバー713(図1)による牽引が解除されて第1の位置に復帰した直後の結束紐供給装置361を示し、二点鎖線は、結束紐を供給するために第1のレバー713が引かれて、第1の位置から第2の位置に移行した直後の結束紐供給装置361を示す。実線で示す位置では、受け器内で結束された茎稈と、ニードル部369の先端との間には未だ結束紐が張り渡されている。この状態で、第2のレバー715を引くと、結束紐切断装置511内で摺動刃517(図6)が摺動し、貫通孔513を横切って結束紐を切断する。すると、結束紐は、結束紐切断装置511とニードル部先端との間には一定の距離があるので、その距離に応じた長さ分だけニードル部先端から垂下って延出する。このニードル部先端から延出する結束紐の部分は、次に結束紐供給装置361が第2の位置に移行した時に、受け器241内で回転する茎稈に結束紐を絡みつけるのに利用される。すなわち、第2の位置への移行時、ニードル部先端は茎稈中に突出するので、ニードル部先端から垂下った結束紐の部分は、回転羽根313、313(図5)の回転により回転する茎稈に絡みつくこととなる。その後、結束紐は、茎稈の回転につれて、次に述べるように結束紐供給装置361により一定の張力を付与されながら、ニードル部先端から繰出され、茎稈の周りに巻回され、茎稈を結束する。
【0047】
次ぎに、図9、10を参照して、結束紐供給装置361のハウジング367と、このハウジング内に収納される各要素について説明する。図9において、結束紐供給装置361のハウジング367は、半割りの上ハウジング367aと下ハウジング367bを有する。上ハウジング367aは、前板401a、後板403a、側板405a、405a及び上板406aを含み、下ハウジング367bは、前板401b、後板403b、側板405b、405b及び下板406bを含む。上下の前板401a、401bは、それぞれ半割りの結束紐挿通孔407a、407bを有し、同様に上下の後板403a、403bはそれぞれ半割りの結束紐挿通孔408a、408bを有する。これらの半割りの挿通孔は、上下ハウジング367a、367bが組合された時に、それぞれ単一の結束紐挿通孔407、408を形成する。ニードル部369は、後述のように結束紐挿通孔407を介してハウジング367に装着される。結束紐ケース509(図5)から送られてくる結束紐は、後端の結束紐挿通孔408からハウジング367内に入り、前端の結束紐挿通孔407に装着されたニードル部369の中を通り、ニードル部先端から出て行く。また、上ハウジング367aの側板405a、405aの内面には、前端寄りの位置と後端寄りの位置とに、それぞれ上板406aまで上下方向に延びる係合溝409a、409aと係合溝410a、410aとが形成されている。下ハウジング367bの側板405b、405bの内面にも、同様に、上記上ハウジング367aの各係合溝と対応する個所に、それぞれ下板406bまで上下方向に延びる係合溝409b、409bと410b、410bとが形成されている。上記各係合溝は、上下方向に延びる2つの突条により、それらの間に形成される。これらの係合溝は、ハウジング367に収納される後述の各要素を、枠体411(図10)を介してハウジング内に固定するためのものである。さらに、上ハウジング367aの各側板405aの下面と、下ハウジング367bの各側板405bの上面には、前端寄りの係合溝409a、409bの後方に、互いに対向する本係止突起413aと413bとが設けられている。各本係止突起は、図示の例で、断面略三角形の一連の突起から形成されている。これらの本係止突起の機能については後述する。図中、415は上下ハウジング367a、367bを脱着可能に組付けるための止め具であり、図示の例では計4つ(左側の2つのみ図示)取付けられている。375(左側の1つのみ図示)は、すでに説明した軸受け片である。
【0048】
ハウジング367に収納される要素には、枠体411と、第1の摩擦車431と、第2の摩擦車439と、押し具443と、押力調節具455とが含まれる。これらの要素は、結束紐供給装置361が第1の位置から第2の位置へ移行するとき等に、ニードル部先端から延出する一定長の結束紐がニードル部内に逆戻りしてしまうのを防止するためのものである。また、一定の張力を付与しながら結束紐を供給する紐ブレーキ装置としての機能を結束紐供給装置361に付加するためのものである。
【0049】
図10において、枠体411は、前枠板417と、後枠板418と、これらの枠板の間に架設される一対の側枠板419、419とを備える。前枠板及び後枠板417、418は、側枠板419、419よりも大きい高さ幅を有し、前枠板及び後枠板417、418の略中間の高さに側枠板419、419を保持する。また、前枠板及び後枠板417、418は、側枠板419、419間の左右幅よりも大きい左右幅を有する。すなわち、側枠板419、419は、前枠板及び後枠板417、418の左右両側端よりも内側に入った位置で前枠板及び後枠板間に架設される。前枠板及び後枠板417、418はそれぞれ中央に結束紐を挿通するための結束紐挿通孔423、424を有する。側枠板419、419は、後端寄りの位置に軸孔420a(左の側枠板)、420b(右の側枠板)を備える。各側枠板419には前端から後方に延びるガイドスリット426が形成されており、上記軸孔420よりも前方の部分を上下2つの延長部427a、427bに分割している。各上延長部427aの下面と各下延長部427bの上面には、互いに対向する仮係止突起428aと428bとが形成されている。各仮係止突起428a、428bは、図示の例で、ハウジング367の本係止突起413a、413bと同様三角形の一連の突起から形成され、本係止突起413a、413bと対応する位置に設けられる。各側枠板419の後端は、後枠板418の前面に固定される。各側枠板419の前端、すなわち上下延長部427a、427bの各前端は、そこに形成されたラグ422、422により、前枠板417の後面に形成されためくら孔429a、429bに脱着可能に固定される。後枠板418の前面には、左の側枠板419の外側にラチェット爪430が設けられている。
【0050】
上記側枠板419、419の間には、ガイドスリット426、426を介して、第1の摩擦車431と、第2の摩擦車439と、押し具443と、押力調節具455とが、この順序で互いに平行に配置される。第1の摩擦車431は、摩擦車本体432と、摩擦車本体の中心軸孔433に挿通される回転軸435と、回転軸の左端に一体的に結合されたラチェット歯車437とを含む。第1の摩擦車431は、まず摩擦車本体432を側枠板419、419間に置き、次いでラチェット歯車437を備えた回転軸435を、左の側枠板の軸孔420a、摩擦車本体の中心軸孔433、右の側枠板の軸孔420bの順に挿通し、中心軸孔433に形成された凹部434に回転軸435の凸部436を係合させ、最後に図示しない止め輪を右の側枠板419の外側で回転軸435の端部に固定することにより、側枠板419、419間に配置される。右の側枠板419の軸孔420aには回転軸435の凸部436を通過させるための凹部421が形成されている。上述したところからも明らかなように、摩擦車本体432は、固定位置にて回転軸435及びラチェット歯車437と一体回転可能である。第1の摩擦車431が上記所定の位置に配置されると、ラチェット歯車437は左の側枠板419の外側に位置し、ラチェット爪430と係合する。ラチェット爪430は、ラチェット歯車437と係合する方向にばね付勢されている。なお、摩擦車本体432と回転軸435とを一体回転可能に結合するためには、上記のような凹部434と凸部436との手段によらず、ピンその他の適宜の手段を用いることもできる。回転軸435とラチェット歯車437についても、適宜好適な手段を用いて一体的に結合することができる。ラチェット爪430は、常にラチェット歯車437と係合する方向に付勢されており、ラチェット歯車と協働して、第1の摩擦車431の矢印Bの方向の回転は許容するが、それと反対方向の回転を阻止する。
【0051】
第2の摩擦車439は、摩擦車本体440と、中心軸孔441に挿通され、摩擦車本体の両側面から外方に延びる回転軸442とを含む。摩擦車本体440は、回転軸442と一体回転可能であってもなくてもよいが、図示の例では、一体回転可能とされている。第2の摩擦車439は、回転軸442の左右両側部を側枠板419、419の前端側から各ガイドスリット426に挿入することにより、側枠板419、419間に配置される。第2の摩擦車439は、仮係止突起428、428を超えてガイドスリット426、426内に挿入される。第2の摩擦車439は、回転軸442の左右両側部が下延長部427b、427bの上面上を摺動可能であり、摩擦車本体440が第1の摩擦車の摩擦車本体432に対し押接されるように配置される。そのため、第2の摩擦車439は、第1の摩擦車431が矢印Bの方向に回転すると、矢印Cの方向に回転し、ラチェット爪430とラチェット歯車437との係合により第1の摩擦車431の矢印Bとは反対方向の回転が阻止されると、それと同時に矢印Cと反対方向の回転が阻止される。
【0052】
押し具443は、矩形の板体444と、板体の左右両側部から後方(第2の摩擦車439の方向)に延びる一対の蟹ばさみ形の押しアーム445、445と、板体444の中央に形成された結束紐挿通孔446と、挿通孔の左右両側に設けられたねじ孔447、447とを備える。各押しアーム445は、板体444の左右両側面の略中間の高さから外方に延びる第1の部分448と、この第1の部分の先端から後方に延びる第2の部分449と、第2の部分の先端(後端)に設けられるはさみ部450とを備える。押し具443は、押しアーム445、445の第1の部分448、448が、第2の摩擦車439と同様に、側枠板419、419の前端側からガイドスリット426、426に挿入されて、側枠板419、419間に配置される。押し具443も、仮係止突起428、428を超えてガイドスリット426、426内に挿入される。押しアーム445、445の第1の部分448、448は、下延長部427b、427bの上面上を摺動可能である。押し具443が側枠板419、419間に配置されると、側枠板419、419の外側に位置するはさみ部450、450が第2の摩擦車439の回転軸442と当接可能である。
【0053】
押力調節具455は、矩形の板体456と、板体の中央に形成された結束紐挿通孔457と、結束紐挿通孔の左右両側に形成された支持棒挿通孔458、458と、支持棒挿通孔に遊挿されるばね支持棒451、451と、板体456の左右両側面の略中間の高さから外方に延びる操作棒459、459とを備える。押力調節具455は、操作棒459、459が側枠板419、419の前端側からガイドスリット426、426に挿入されて、側枠板419、419間に配置される。各ばね支持棒451は、後端(押し具443側端部)に図示しないねじを有する。各ばね支持棒451は、板体456の前側から支持棒挿通孔458に挿通され、圧縮ばね454に挿通され、圧縮ばねを板体456と押し具443との間に挟んだ状態で、押し具443のねじ孔447に螺着される。したがって、押力調節具455が適所に位置付けられると、ばね454、454が押し具443を押し、押し具のはさみ部450、450が第2の摩擦車439を第1の摩擦車431に向けて押すこととなる。押力調節具455は、仮係止突起428、428の位置に配置される。すなわち、各操作棒459が上下の仮係止突起428a、428bの間に挟まれる位置に配置される。これにより、押力調節具455の前後方向位置が仮に固定され、圧縮ばね454、454が押し具443を介して第2の摩擦車439を第1の摩擦車431に押接させる力が仮に決定される。操作棒459、459は、長尺であり、この操作棒を操作することにより、仮係止突起428、428内で押力調節具455の前後方向位置を変更可能である。図中、452は、板体456がばね支持棒451、451から抜け落ちるのを防止するため、各ばね支持棒451の前端に取付けられたストッパである。
【0054】
ニードル部369は、基端に円形のフランジ461を有し、フランジの前面には左右一対のつめ部463、463が形成されている。また、ニードル部369の外面には、フランジ461から前方に所定の距離離れた位置に上下一対の係止凸部465、465が形成されている。一方、前枠板417の後面には、結束紐挿通孔423の左右両側に一対の凹部425、425が連設されている。また、結束紐挿通孔423の上下には、一対の切欠き467、467が連設されている。前枠板417は、後面の各めくら孔429にそれぞれの延長部427のラグ422が嵌合されて、側枠板419、419の前端に取付けられ、枠体411を完成させる。その際、ニードル部369を前枠板417に仮止めしておくと、後にニードル部をハウジング367に組付けるのに便宜である。具体的には、前枠板417の結束紐挿通孔423にニードル部369をその先端側から挿入し、係止凸部465、465が切欠き467、467を介して結束紐挿通孔423を通過するようにしておく。前枠板417を側枠板419、419の前端に取付けると、前枠板417と押力調節具455との間には、ばね支持棒451、451のストッパ452、452が位置する空間が形成される。この空間は、ニードル部369をハウジング367の前端に組付けるためにも利用することができる。結束紐は、後枠板418の結束紐挿通孔424から枠体411内に入り、第1の摩擦車431の周りを上から第2の摩擦車439の下へと通され、これらの摩擦車の間に保持される。そして、第2の摩擦車439の下から、押し具443及び押力調節具455の結束紐挿通孔446、457に通され、前枠板417に仮止めされたニードル部369に通される。
【0055】
ニードル部369を含む上記各要素を備えた枠体411をハウジング367内に固定するには、まず下ハウジング367bの係合溝409b、409bと係合溝410b、410bとに、それぞれ前枠板417と後枠板418とを嵌めこむ。前枠板417と後枠板418とを、下板406bに突当たるまで押込む。すると、前枠板417と後枠板418の上半分が下ハウジング367bから上方に突出した状態となる。次に、前枠板417の結束紐挿通孔423に仮止めされていたニードル部369の、係止凸部465、465のすぐ後の部分を、前板401bの半割りの結束紐挿通孔407b内に置きながら、円形フランジ461を前枠板417の後面に面接触させ、つめ部463、463を凹部425、425に係合させる。また、後枠板418の結束紐挿通孔424から後方に出ている結束紐を、下ハウジングの後板403bの半割りの結束紐挿通孔408b内に置く。そして、必要に応じて、押力調節具455の操作棒459、459を、枠体411の仮係止突起428、428内の所望の仮係止位置に移動させる。その後、下ハウジング367bから上方に突出している前枠板417と後枠板418の部分に、上ハウジング367aの係合溝409a、409aと係合溝410a、410aとを嵌めつけ、前枠板417と後枠板418とを上板406aと下板406bとで上下から挟み込むようにする。この時、ニードル部369も、係止凸部465、465が半割りの結束紐挿通孔407a、407bのすぐ外側に位置した状態で、上下ハウジング367a、367bの前板401a、401bによって挟み込まれ、所定の位置に係止される。したがって、ニードル部369は、前枠板417と、前板407a、407bとによって二重に固定、支持されて、ハウジング367の前端から前方に向けて延出する。その後、ハウジング367の結束紐挿通孔407よりも大径の係止リング370を、ニードル部369の先端側からニードル部に外挿し、係止リング370の内周面に形成されたL字形の溝373により、係止凸部465、465と係合させ、ニードル部の前後方向の移動を阻止する。最後に、止め具415、415・・・により上下ハウジング367a、367bをロックする。この完成したハウジング367内で、第1の摩擦車431及びその他の要素は、ハウジングの上板406a及び下板406bとの間に動作代が確保され、また側枠板419、419とハウジングの側板405、405との間にもラチェット歯車437等が位置する空間が確保されるので、動作可能である。ここで、押力調節具455の操作棒459、459は、ハウジングの側板405、405よりも外方に延び、側板に形成された本係止突起413、413によって上下から挟まれて固定され、本係止される。これにより、圧縮ばね454、454が押し具443を介して第2の摩擦車439を第1の摩擦車431に対して押付ける力が確定される。
【0056】
結束紐切断装置511(図6)により切断された後にニードル部369の先端から延出する一定長の結束紐は、結束紐供給装置361が第1の位置から第2の位置へ移行する時等に、ニードル部内に逆戻りしてしまう可能性があるが、上述の構成により、第1の摩擦車431の矢印Bとは反対方向の回転(及び第2の摩擦車439の矢印Cとは反対方向の回転)はラチェット爪430とラチェット歯車437との係合により阻止されるので、結束紐が結束紐供給方向と反対方向に引張られることはなく、常に一定長の結束紐をニードル部先端に確保することができる。また、結束紐は、受け器241内で回転する茎稈によって結束紐が引張られ、第1及び第2の摩擦車431、439がそれぞれ矢印Bの方向及び矢印Cの方向に回転することによって、結束紐供給方向に繰出される。すなわち、第1の摩擦車431及び第2の摩擦車439は、茎稈によって結束紐が引張られた分だけ回転し、結束紐は、第1の摩擦車431及び第2の摩擦車439が回転した分だけ繰出される。しかも、その際、第1及び第2の摩擦車は、圧縮ばね454、454の付勢力によって互いに押付けられ、回転速度又は回転量を規制されるので、茎稈に引張られながら繰出される結束紐に対し制動的な作用を及ぼす。そのため、一定の張力を付与しながら結束紐を供給することができる。また、第1の摩擦車431に対し第2の摩擦車439を押接させる力は、押力調節具455により調節することができるので、結束紐に付与する一定の張力を調節することもできる。したがって、最適な張力でもって結束紐を供給し、茎稈を結束することができる。さらに、上記ばね手段による押力、したがって結束紐に付与する張力は、刈取り機101を使用中の圃場においても、止め具415を外し、上ハウジング367aを外し、押力調節具455の操作棒459、459を仮係止突起428、428内で前後方向に移動させ、再び上ハウジング367aを戻し、止め具415でロックすることにより、簡単に変えることができるので、有利である。
【0057】
なお、本実施の形態では、結束紐供給装置361と結束紐切断装置511とを結束紐供給・切断ユニット363として一体化しているが、これらの装置を別々の装置として製作、使用することもできる。本実施の形態では、ダブルトーションばね381を用いて結束紐供給装置361を第1の位置に付勢しているが、これに代えて、圧縮ばね、引張ばね、板状ばね又はその他の適宜の手段を用いることもできる。本実施の形態では、結束紐供給装置361を第2の位置に牽引し、また摺動刃517を牽引するのに、それぞれ回転牽引具365、522を用いているが、これに代えて適宜好適な手段を用いて同様の目的を達成することもできる。本実施の形態では、第1の摩擦車431と平行に配置され、これに押接される摩擦車(第2の摩擦車439)の数を1つとしているが、これを2つ以上とすることもできる。その場合は、これらの摩擦車の周りに順次結束紐を通して行くことになろう。本実施の形態では、ばね手段(圧縮ばね454、454)を用いて第2の摩擦車439を第1の摩擦車431に押接させているが、ばね手段によらず、第1の摩擦車431と同様、第2の摩擦車439も固定位置にて回転可能に軸支し、常時第1の摩擦車と押接するようにすることもできる。また、第2の摩擦車439の固定位置を調節可能とし、第2の摩擦車439が異なった固定位置で、従って異なった押力で第1の摩擦車431と押接するようにすることもできる。これらの場合は、ばね手段のみならず、押し具443や押力調節具455も不要となろう。あるいは、ばね手段を用いるにしても、例えば、第1及び第2の摩擦車の回転軸435、442間に引張ばねを架け渡して、第2の摩擦車が第1の摩擦車と押接するようにすることもできる。また、本実施の形態では、枠体411を用いて第1の摩擦車等の各要素をハウジング367に収納しているが、枠体を省略し、これらの要素を直接ハウジング内に動作可能に設けることもできよう。なお、結束紐の供給時、第1のレバー713が引かれてニードル部369が未だ結束紐切断装置511の貫通孔513内にある間に、誤って第2のレバー715が引かれて摺動刃517がニードル部と衝突するのを防止するため、小径の棒を両端部にて回動可能に第1のレバーと第2のレバーとに接続し、両方のレバーの引き操作を同時には行えないようにすることもできる。
【0058】
次に、図11〜19を参照して、受け器241内で結束した茎稈を機外に放出するための放出装置について説明する。図11は、放出装置の全体図、図12は、図11に示すストッパ装置の拡大図、図13は、図11に示す牽引装置の一部分解拡大図、図14は、図13に示す牽引装置の要部を示す図、図15は、図14で使用されているラチェット機構を示す分解図、図16は、図14に示す牽引装置の要部の装着状態を示す一部切欠き図、図17は、牽引操作時における第2の歯車及びワイヤ巻取り具の逆回転を防止するためのラチェット装置を示す側面図、図18は、図17に示すラチェット装置の拡大図、図19A及び19Bは、第1の歯車が第2の歯車から離脱(及び第2の歯車と再係合)する状態を示す概念図である。なお、図11に示すように、本実施の形態においては、受け器241の左右両側にそれぞれ放出装置561が設けられるが、これらの放出装置は構成が略同一であるので、以下、特に右側(刈取り機101の進行方向に向かって右側)の放出装置561を例にとって説明する。このため、左側の放出装置については、牽引ワイヤ709や牽引装置577の図示を省略してある。
【0059】
図11において、253bは、第1の横板253aの後方に位置する第2の横板である(図1参照)。放出装置561は、一対の放出アーム563、563と、ダブルトーションばね569と、取っ手711(図1)の近傍に配置された牽引装置577とを備える。放出アーム563、563は、第2の横板253bの前後方向両側でロッド249に回転可能に支持された筒部565、565と、これらの筒部から受け器241(図1)側に、上方に湾曲しながら延びるアーム部567、567とを有する。2つの放出アーム563、563は、筒部565、565寄りの位置で連結棒568により互いに連結されている。ダブルトーションばね569は、第2の横板253bの前後方向両側でロッド249に支持されたコイル部571、571を有する。これらのコイル部からは、第1の脚部573が上方に延び、その先端の近傍で放出アーム563、563の連結棒568と一体的に結合されている。また、コイル部571、571からは、第2の脚部575が下方に延び、第2の横板253bの上面に止着されている。ダブルトーションばね569のコイル部571、571は、第2の横板253bに隣接して位置し、放出アーム563、563の筒部565、565は、それらの間の略中間にコイル部571、571(及び第2の横板253b)が位置するように配置されている。放出アーム563、563と牽引装置577との間にはワイヤ709が接続されている。具体的には、ワイヤ709は、一端が連結棒568の長さ方向の略中間に繋がれ、他端が第2の横板253bに形成されたワイヤ挿通孔254を介し、ワイヤガイド579を通じて、牽引装置577まで延びている。放出アーム563、563は、ロッド249の周りを、下方に傾斜し受け器241(図1)の断面形状に沿って延びる第1の位置(左側の放出アームの位置)と、受け器241の上方に傾斜した第2の位置(右側の放出アームの位置)との間を枢動可能である。ダブルトーションばね569は、放出アーム563、563を常時上記第2の位置に付勢する。牽引装置577は、ワイヤ709を介して放出アーム563、563を、ダブルトーションばね569のばね力に抗して第1の位置に牽引し、またワイヤ709による牽引を解除して、放出アーム563、563を、ダブルトーションばねの反発力により第2の位置に撥ね上げさせる。茎稈は、放出アーム563、563が第1の位置にある時に回転刃113、113(図1)により切断されて、受け器241内に位置する放出アームの上に集荷される。そして、放出アーム563、563は、牽引を解除されて第2の位置に撥ね上げられた時に、その上の結束された茎稈を機外に向けて放出する。
【0060】
なお、各放出アーム563は、第1の位置にある時、受け器241の断面形状に沿って横方向に延びるが、その際、受け器241の壁部に一段高い段部を形成するように延びるのが好ましい。茎稈の結束時、茎稈を受け器壁部から浮かせ、その回転、結束を容易にするためである。また、すでに述べたように、摩擦係数の大きい材料で作るのが好ましい。図11において、右側と左側の放出装置561、561とでは、ダブルトーションばね569のコイル部571、571の前後方向位置(第2の横板に隣接した前後方向位置)は異ならないが、放出アーム563、563の筒部565、565の前後方向位置は若干異ならしめてある。右側の放出アーム563、563と左側の放出アーム563、563とが互いに干渉するのを防止するためである。また、受け器241の各側部の上端には、放出アーム563、563の筒部565、565やダブルトーションばね569のコイル部571、571をロッド249に取付けるために必要な切欠きが設けられている(図1参照)。図中、579はクッションばねであり、放出アーム563、563が第1の位置に牽引された時に、ダブルトーションばね569の先端を受けるように、受け器241の壁部又は第2の横板253b上に位置付けられる。
【0061】
図12は、図11に示すストッパ装置576を拡大して示す。このようなストッパ装置を用いて、放出アーム563、563を第2の位置に停止させるのが好ましい。ストッパ装置576は、前後方向に細長い上板581と、上板から受け器241(図1)側に突出する一対の片持ち板583、583とを備える。各片持ち板583の下面には、片持ち板の長さ方向に沿って一対の支持板585、585が垂設され、これらの支持板の間にはローラ587が回転可能に軸支される。上板581の前後両端には、二股の取付け板589、589(前方の取付け板のみ図示)が垂設される。ストッパ装置576は、放出アーム563の筒部565を跨ぐようにして、ロッド249に取付けられる。具体的には、二股の取付け板589、589が筒部565の前後方向両側で、ロッド249に外嵌され、ねじ591、591・・・によりねじ止めされて、取付けられる。取付け板589、589間の距離は、筒部565の長さよりも大きく、また上板581と筒部565との間には、筒部が回転するのに必要な隙間が形成される。また、前後方向に並んだ2つのローラ585、585の外周面間の距離は、放出アーム563のアーム部567の径(より正確には、ローラの位置に対応するアーム部の部分の径)よりも若干小さく設定される。かかる構成により、放出アーム563は、ワイヤ709による牽引が解除されて第2の位置に撥ね上がる時、2つのローラ587、587に衝突し、ローラを回転させながらローラの間を通過し、そして上板581に突当たる。したがって、放出アーム563は、ローラ587、587の回転により衝撃力を吸収されながら、上板581に突当たって、第2の位置に停止することができる。そのため、放出アーム563の破損を防ぐことができ、また、放出アームの不要なリバウンドを防ぐこともできる。放出アーム563を第1の位置に復帰させる時も、放出アームはローラ587、587を回転させながらそれらの間を通過するので、ワイヤ709による牽引が困難となることはない。なお、図11では、1つのストッパ装置576のみを示してあるが、各放出アーム563ごとにストッパ装置を設けるのが好ましい。
【0062】
図13〜19において、取っ手711の近傍に配置される牽引装置577は、ハウジング595と、操作レバー615と、第1の歯車597と、第1の歯車と噛合う第2の歯車611とを備える。操作レバー615は、第1の回転軸599を挿通するための軸孔を有する左右一対の側板617、617(図14)と、これらの側板を上端で繋ぐ上板619と、上板の上面の略中央から上方に延びる断面円形の直立棒621と、直立棒の上端に螺着される球形の握り部623とを含む。一方の側板617a(図15)は、上板619と一体的に形成されているが、他方の側板617bは、上板と別体とされている。側板617aの内側側面には、側板617aの軸孔と位置合わせされた軸孔604を有する環状の爪部材603が固設されている。爪部材603の外周面からは、ばね付勢された複数(図示の例では4つ)のラチェット爪605、605・・・が突出している。第1の歯車597は、内周面に一定の間隔で形成され複数のラチェット歯601、601・・・を有する。第1の歯車597は、一方の側面が開口され、上記複数のラチェット歯にアクセス可能であるが、他方の側面は閉鎖部598で閉じられている。閉鎖部598の円形中心からは、中空の筒部607が第1の歯車597の幅方向全体に及ぶように延び、第1の歯車の軸孔608を形成している。この軸孔は閉鎖部598を貫いて形成されている。閉鎖部598と筒部607とは、第1の歯車597と一体的に形成されるのが好ましいが、筒部607を有する円形の閉鎖部598を、第1の歯車の上記他方の側面にねじ止めその他の適宜の手段により固定することもできる。筒部607は、回転軸599よりも大きい内径を有し、爪部材603の軸孔604よりも小さい外径を有する。第1の歯車597のラチェット歯601、601・・・が形成された内周面と筒部607との間には、爪部材603を収容するための空所609が形成されている。第1の歯車597は、筒部607が爪部材603の軸孔604に挿入され、爪部材603が空所609内に配置されることにより、側板617aに装着される。その後、側板617bの上端を上板619にねじ止めする。側板617bを上板619から別体としたのは、操作レバー615の製造の容易性や、第1の歯車597と爪部材603とを組合せる際の便宜等を考慮したためである。その後、両側板617a、617bの前面及び後面に横板677、677をねじ止めする。そして、側板617a、617bの軸孔と、爪部材603の軸孔604に挿入された筒部607の軸孔608とに回転軸599を挿通する。これにより、操作レバー615は第1の歯車597とラチェット機構を介して動作可能に連結される。第2の歯車611は、その回転軸613と一体回転可能に結合される。第2の歯車611と回転軸613とは、例えば、第2の歯車の内周面に形成された1つ又は複数の凹部(図示せず)と、これらの凹部に対応して回転軸613の外周面に形成された凸部とを係合させることにより、またはその他の適宜の方法で、一体回転可能とすることができる。
【0063】
上記構成により、作業者が操作レバー615を手前側(後方)に引くと、それと共に爪部材603が矢印Dの方向に回転し、ラチェット爪605、605・・・とラチェット歯601、601・・・との係合を介して、第1の歯車597を同一の方向に回転させる。そのため、第1の歯車597と噛合う第2の歯車611は、回転軸613と共に、第1の歯車とは反対方向に回転する。一方、操作レバー615を前方に押して爪部材603を矢印Eの方向に回転させると、ラチェット爪とラチェット歯との有効な係合が解除されるので、第1の歯車597は回転せず、第2の歯車611及び回転軸613も回転しない。
【0064】
操作レバー615の側板617、617は、さらに、上板619寄りの位置に貫通孔625、625を有し、これらの貫通孔にはガイド棒627(図14等)が挿通されて、側板617、617の左右方向外方に延出する。ガイド棒627は、断面視で、後述のガイド溝657(図13等)の一部を切取ったような形状を有する。具体的には、断面視で、やや上方に湾曲した上辺及び下辺と、上辺及び下辺を両端で接続するやや外方下方に湾曲した側辺とを有する(図19A、19B参照)。各貫通孔625もガイド棒627に対応する形状を有する。側板617、617の前面には、第1の歯車597の上端に対応する位置の辺りに、前方に突出する、側面視で半円形の突出部629、629が形成されている。また、第2の歯車611の回転軸613には、第2の歯車の左右両側の、上記突出部629、629に対応する位置に、第2の歯車611よりも若干小径の円環部631、631が周設されている。円環部631、631は、回転軸613(及び第2の歯車611)と一体回転可能に設けてもよく、別個に回転可能としてもよいが、本実施の形態では、別個に回転可能とされている。上記ガイド棒627と、上記突出部629、629及び円環部631、631との機能については後述する。なお、第2の歯車611は、図示の例では、第1の歯車597と回転軸同士が同じ高さとなるように配置されている(図13、16等参照)が、第1の歯車よりもやや上方に又は下方に配置してもよい。
【0065】
ハウジング595は、図13に示すように、前後方向に細長い箱体633と、箱体に冠着される全体としてアーチ形の蓋部634とを備える。箱体633は、前壁635と、後壁637と、前壁及び後壁の間に延びる第1の側壁639a、第2の側壁639b、及び第3の側壁639cと、底壁(図示せず)とを有する。第1の側壁639aと第2の側壁639bとの間には、第1室641が形成され、第2の側壁639bと第3の側壁639cとの間には、第1室よりも左右幅の小さい第2室642が形成される。蓋部634は、第1室641の上方に、蓋部のアーチ形形状に沿って前後方向に延びるスリット653を有する。第1、第2及び第3の側壁639a、639b、639cには、第1の歯車597の回転軸599を支持するための軸孔645、645、645(第1の側壁の軸穴のみ図13、16に、第3の側壁の軸孔のみ図17、18に図示)が形成されている。このことからも明らかなように、第1の歯車の回転軸599は、第1室及び第2室641、642を横切って、第1の側壁639aと第3の側壁639cとの間に延びている。各軸孔645は、2つの軸孔をつなげたようなジェリービーン形の形状であり、前方の第1の部分軸孔645aと、後方上方の第2の部分軸孔645bとを有している。また、第1、第2及び第3の側壁639a、639b、639cには、各ジェリービーン形の軸孔645の前方に、第2の歯車611の回転軸613を支持するための軸孔651(第1の側壁の軸穴のみ図13、16に、第3の側壁の軸孔のみ図17に図示)が形成されている。各軸孔651は、通常の円孔である。蓋部634のスリット653は、前端寄りの位置に形成された互いに対向する一対の突起655、655によって、これらの突起よりも後方の第1の部分スリット653aと、前方の第2の部分スリット653bとに分けられている。第1の側壁639aと第2の側壁639bとには、さらに、ジェリービーン形の軸孔645、645の上方に、操作レバー615のガイド棒627を摺動可能に支持するためのガイド溝657、657が形成されている。(第3の側壁639cには形成する必要はない。)ここで、各ガイド溝657は、第1の部分軸孔645aを中心とする円周上に位置する。各ガイド溝657は、前端にガイド棒627を回転可能に支持するための円形部659を有する。第1の部分軸孔645aと第2の部分軸孔645bとは、この円形部659を中心とする円周上に位置する。
【0066】
第1及び第2の歯車597、611は、第1室641に配置される。第1の歯車597は、通常の状態では、その回転軸599が第1、第2及び第3の側壁639a、639b、639cの第1の部分軸穴645a、645a、645aに支持されて、動作される。図中、600は、止め輪であり、第1及び第3の側壁639a、639cの外側で上記回転軸599の端部に固定される。第2の歯車611の回転軸613は、第1、第2及び第3の側壁639a、639b、639cの軸孔651、651、651に挿通支持されるが、この回転軸の一端665(図14、16)には、第3の側壁639cの外側で、ワイヤ巻取り具667(図13)が取付けられる。ワイヤ巻取り具667は、ワイヤ709を巻き取るためのものであり、上記一端665に一体回転可能に結合される。したがって、第2の歯車611と、回転軸613と、ワイヤ巻取り具667とは、常に一体的に回転する。ワイヤ巻取り具667は、第3の側壁639cにねじ止めされる巻取り具カバー669によりカバーされ、巻取り具カバーは、ワイヤ709を通すための開口671を下端に有する。第2の歯車611の回転軸613の他端には、第1の側壁639aの外側で止め輪614が固定されている。操作レバー615の直立棒621は、第1の歯車597が第1室641内に固定、支持されると、蓋部634の第1の部分スリット653aを通じてハウジング595の上方に延出する。操作レバー615のガイド棒627は、第1及び第2の側壁639a、639bに形成されたガイド溝657、657に摺動可能に支持され、止め輪628、628(第1の側壁側の止め輪のみ図示)によって抜け止めされている。図13中、675、675・・・は、蓋部634を箱体633に固定するためのねじであり、676、676・・・は、第2の側壁639bを前壁635及び後壁637に固定するためのねじである(後壁のねじは図示せず)。かかる固定手段はねじに限られず、適宜好適な固定手段を用いることができることは言うまでもない。
【0067】
牽引装置577は、さらに、第2室642に配置されるラチェット装置685(図17、18)を備える。ラチェット装置685は、後述するように、牽引装置577による牽引操作時に、第2の歯車611及びワイヤ巻取り具667(及び第1の歯車597)がワイヤ709に引張られて逆回転するのを防止するための装置である。図17、18を参照すると、第2室642では、第3の側壁639cと第2の側壁639b(図13)との間に、断面円形の横棒687が架設される。ラチェット装置685は、ラチェット歯車689と、ラチェット歯車と対向して位置する爪部材693と、支持部材703とを備える。ラチェット歯車689は、第2の歯車611の回転軸613にこれと一体回転可能に結合され、外周面に複数のラチェット歯691、691・・・を有する。爪部材693は、第1の歯車597の回転軸599に回転可能に支持された爪部材筒部695と、爪部材筒部から前方に延びる爪部697と、爪部の先端に形成されたラチェット爪699とを含む。ラチェット爪699は、ワイヤ709の牽引操作時、ラチェット歯691、691・・・のいずれかと係合可能である。爪部697には、爪部の長さ方向に沿って細長い、爪部を上下方向に貫通する貫通孔701が形成されている。支持部材703は、横棒687に回転可能に支持された支持部材筒部705と、爪部支持棒707とを有する。爪部支持棒707は、爪部697の貫通孔701に遊挿されて延び、一端は支持部材筒部705に螺着され、他端には球形のストッパ711が爪部697の反対側で固定されている。押しばね710が、支持部材筒部705と爪部697との間で、爪部支持棒707の周りに装着され、爪部697を常時下方に付勢している。爪部支持棒707は、貫通孔701内を貫通孔の長さ方向に沿って変位可能である。球形のストッパ711は、爪部697の下面と当接して爪部の下限位置を規定し、ラチェット爪699をラチェット歯車689と有効に係合させる。横棒687は、図17に、第1及び第2の側壁639a、639bに形成されるガイド溝657、657(図16)を第3の側壁639cに投影して示すように、ガイド溝657の円形部659と、第1及び第2の部分軸孔を含む軸孔645の長さ方向の略中間とを繋ぐ想像線上に配置するのが好ましい。このラチェット装置685の機能等については、さらに後述する。
【0068】
放出アーム563、563(図11)を第2の位置から第1の位置に牽引するには、操作レバー615を第1の部分スリット653a(図13)内で操作する。具体的には、図示の例において、操作レバー615を、第1の部分スリット653aの前端(突起655、655の直ぐ後)側の牽引開始位置から手前側(後方)に回動させる。操作レバー615を後方に回動させると、爪部材603(図15)は回転軸599の周りを操作レバーと共に一体的に回動するので、第1室641において、ラチェット爪605、605・・・がラチェット歯601、601・・・と係合し、第1の歯車597を同様に後方に回転させる。この時、回転軸599は、第1の部分軸孔645a、645a、645a内に位置し、操作レバー615のガイド棒627は、ガイド溝657、657内を後方に摺動する。第1の歯車597の後方への回転により、第2の歯車611は、回転軸613及びワイヤ巻取り具667と共に前方に回転し、ワイヤ巻取り具がワイヤを巻取り、放出アーム563、563を第1の位置に向けて牽引する。反対に、操作レバー615を第1の部分スリット653a内で前方に回動させると、爪部材603は、第1の部分軸孔645a、645a、645a内に位置する回転軸599の周りを操作レバーと共に前方に回動し、ガイド棒627もガイド溝657、657に沿って前方に摺動する。この時、ラチェット爪605、605・・・とラチェット歯601、601・・・との有効な係合は解除されるので、本来ラチェット爪は単にラチェット歯の上を空滑りするはずである。しかし、ダブルトーションばね569(図11)の反発力により、ワイヤ709を介して第2の歯車611及びワイヤ巻取り具667と第1の歯車597とをそれぞれ逆回転させようとする力が働くので、第1の歯車も爪部材603に追随して前方に逆回転し、放出アーム563、563を第2の位置に向けて戻しかねない。しかしながら、第2室642において、図17、18に示すラチェット装置685の爪部材693とラチェット歯車689とが協働して、第2の歯車611及びワイヤ巻取り具667の逆回転、並びに第1の歯車597の逆回転を阻止するので、ラチェット爪605、605・・・は単にラチェット歯601、601の上を空滑りし、第1の歯車を後方に回転された位置に残したまま、操作レバー615を牽引開始位置に戻すことができる。なお、放出アーム563、563を第1の位置まで牽引するために、第1の部分スリット653a内での操作レバー615の引き操作を複数回繰返すこともできるが、1回の操作で第1の位置に牽引することができるように第1及び第2の歯車597、611の歯数や歯数の比や、ワイヤ709が接続される連結棒568(図11)のロッド249からの距離等を設定するのが好ましい。操作レバー615を操作して放出アーム563、563を第1の位置に牽引したら、操作レバーを前方に回動させて、牽引開始位置に戻しておく。
【0069】
放出アーム563、563を第1の位置に牽引した後、茎稈を刈取り、受け器241内に位置する放出アーム上で茎稈を結束したら、操作レバー615をさらに前方に押し、第1の部分スリット653aから突起655、655を越えて第2の部分スリット653bに移行させる。すると、操作レバー615は、ガイド棒627がガイド溝の円形部659、659内に至り、円形部の内周面に突当たるので、停止される。この状態が図19Aに示す状態であり、操作レバー615は、突起655、655を越えた直ぐのところ(以下、「第2の部分スリット653b内の起点位置」という。)に位置する。この時、操作レバー615の前面の突出部629、629は、第2の歯車の回転軸613上の円環部631、631と当接し、これを押圧する。そして、押圧された円環部631、631は、回転軸613を押圧し、回転軸613と摩擦係合して、これの非回転状態を確保する。したがって、第2の歯車611とラチェット歯車689(図17、18)の回転も阻止される。この時、第1室641では第1の歯車597と第2の歯車611とは未だ係合した状態であり、第2室642では爪部材693とラチェット歯車689とが未だ係合した状態である。その後、操作レバー615をさらに前方に倒して、円形部659、659内に位置するガイド棒627を中心として回動させ、第2の部分スリット653bの前端を規定する蓋部634の部分に直立棒621を押し当てる。すると、第1の歯車597の回転軸599は、第1の部分軸孔645a、645a、645aから第2の部分軸孔645b、645b、645bに移行し、それに伴って、第1の歯車597が第2の歯車611から離脱し(第1室641)、爪部材693がラチェット歯車689から離脱する(第2室642)。この状態が図19Bに示す状態であり、操作レバー615は「最大傾斜位置」にある。この時、まず第1の歯車597と爪部材693とがそれぞれ第2の歯車611とラチェット歯車689とから離脱し、次いで、突出部629、629が円環部631、631から離れる。そして、突出部629、629が円環部631、631から離れると同時に、第2の歯車611、ラチェット歯車689、及びワイヤ巻取り具667が自由回転状態となり、ダブルトーションばね569(図11)の反発力により、放出アーム563、563が第2の位置に撥ね上げられ、結束された茎稈を機外に放出する。第2の歯車611とラチェット歯車689とが自由回転状態となるのは、突出部629、629が円環部631、631から離れるまで遅らされるので、突然の離脱により、自由回転する第2の歯車611及びラチェット歯車689と第1の歯車597及び爪部材693とが互いに衝突してそれらの歯先が破損するのを防止することができる。
【0070】
なお、第2室642において、横棒687(図17)は、上述のように、ガイド溝657の円形部659と、第1及び第2の部分軸孔を含む軸孔645の長さ方向の略中間とを結ぶ想像線上に位置し、また爪部支持棒707(図18)は、爪部697の貫通孔701内をその長さ方向に沿って変位可能であるので、第1の歯車の回転軸599の第1の部分軸孔645aから第2の部分軸孔645bへの移行時、その移行が妨げられることはない。
【0071】
茎稈を機外に放出した後、操作レバー615を最大傾斜位置から第2の部分スリット653b内の起点位置(図19Aの位置)まで引戻す。すると、操作レバー615は、円形部659、659内に位置するガイド棒627を中心として後方に回動し、第1の歯車の回転軸599を第2の部分軸孔645b、645b、645bから第1の部分軸孔645a、645a、645aに復帰させる。この時も、まず、操作レバー615の前面の突出部629、629が第2の歯車の回転軸613上の円環部631、631と当接し、円環部を押圧して回転軸613と摩擦係合させるので、たとえ回転軸613、したがって第2の歯車611とラチェット歯車689とが回転していたとしても、それらの回転を停止させる。そして、その後に第1の歯車597と爪部材693とをそれぞれ第2の歯車611とラチェット歯車689とに再係合させる。そのため、第1の歯車597と爪部材693とが、回転中の第2の歯車611とラチェット歯車689とに再係合されることはなく、第1の歯車、爪部材、第2の歯車、及びラチェット歯車の破損を防止することができる。これは、例えば、放出アーム563、563が第2の位置に撥ね上がっている時に誤って操作レバー615が最大傾斜位置から上記起点位置に引かれてしまったような場合に、特に有意である。操作レバー615を第2の部分スリット653b内の起点位置まで戻すと、図19Aに明らかなように、円形部659、659内に位置するガイド棒627は、ガイド溝657、657の向き又はガイド溝内の摺動路に整列されるので、操作レバー615をさらに引き、第1の部分軸孔645a、645a、645a内に位置する回転軸599を中心として回動させることにより、操作レバーを突起655、655を越えて第1の部分スリット653aに戻すことができる。そして、第1の部分スリット653a内で操作レバー615を操作することにより、放出アーム563、563の牽引を再び始めることができる。なお、上述したところからも明らかなように、操作レバー615の第1の部分スリット653a内での操作と、第1の部分スリット及び第2の部分スリット間の移動とは、第1の部分軸孔645a、645a、645a内に位置する回転軸599を回動中心として行われるが、第2の部分スリット653b内の起点位置と最大傾斜位置との間の移動は、円形部659、659内に位置するガイド棒627を回動中心として行われる。
【0072】
なお、本実施の形態では、1つの放出装置561につき2つの放出アーム563、563を用いているが、3つ以上の放出アームを連結棒568に連結することもできる。また放出アームの形状等によっては、単に1つの放出アームを、連結棒を介さずに使用することもできる。また、ダブルトーションばね569を放出アーム563としても機能させ、放出アームを省略することもできよう。本実施の形態では、ダブルトーションばね569によって、放出アーム563、563を第2の位置に撥ね上げているが、これに代えて、圧縮ばね、引張ばね、板状ばね、ガススプリング等、適宜任意のばね手段を用いることもできる。また、ばね手段に代えて、電気式、空気圧式又は液圧式等の適宜の手段を用いて、放出アーム563、563を回動させるようにすることもできる。さらに、放出アームを使用せず、受け器241自体を前後方向に沿う軸芯の周りで回動させるように構成して、茎稈を機外に放出することもできる。本実施の形態では、放出アーム563、563を第2の位置に停止させるために、2つのローラ587、587を備えたストッパ装置576を用いているが、適宜任意のストッパを使用することもできる。また、特にストッパを用いず、ワイヤ709の最大延長長さをストッパとして利用することもできよう。本実施の形態のクッションばね579(図11)は、これをゴム等に代えることもでき、また省略することもできる。本実施の形態では、第1の歯車597は24の歯数を有し、第2の歯車611は12の歯数を有するように図示されている。しかし、これらは単に便宜的なものであって、適宜好適な歯数を選択することができる。このことは、本書の全体を通じて同様である。第1及び第2の歯車の歯数の比を逆転させることもできよう。なお、噛合う歯車の歯数は、互いに素となる歯数とするのが好ましい。また、本実施の形態では、第1の歯車597及び爪部材693と第2の歯車611及びラチェット歯車689との離脱時、第1の歯車及び爪部材を第2の歯車及びラチェット歯車から離脱させているが、逆に、第2の歯車及びラチェット歯車を第1の歯車及び爪部材から離脱させるようにすることもできる。
【0073】
また、本実施の形態では、操作レバー615と第1の歯車597との間に図15に示すラチェット機構を介在させているが、これに代えて、適宜任意のラチェット機構を用いることもできる。図15のラチェット機構についても、これを改変して用いることもできる。例えば、第1の歯車597は、筒部607を省略し、閉鎖部598は単に軸孔のみを有するようにする。また、第1の歯車597の閉鎖部598とは反対側の側面に周方向に複数のねじ孔を設ける。爪部材603は、操作レバー615から切離し、単独の部品とする。爪部材603と回転軸599とを、例えばそれぞれの内周面と外周面とに形成された凹凸等により一体回転可能とする。また、操作レバー615と回転軸599とを同様に一体回転可能とする。さらに、中心に軸孔を有し外周縁に上記第1の歯車597のねじ孔に対応する複数のねじ孔を有する蓋部を用意する。そして、第1の歯車597の空所609内に爪部材603を装着し、上記第1の歯車の閉鎖部598とは反対側の側面に上記ねじ孔を介して上記蓋部をねじ止めする。次に、このように爪部材603を組込んだ第1の歯車597を、操作レバー615の側板617、617間に配置し、側板617、617の一方の側から他方の側へと回転軸599を挿通する。このような構成によっても、操作レバー615を回動させることにより、回転軸599を介して爪部材603を回動させ、第1の歯車597をラチェット回転させることができる。この場合、一方の側板617のみならず、両側板を上板619と一体的に形成することもでき、横板677、677も不要となろう。
【0074】
次に、本実施の形態による刈取り機101の動作について説明する。
刈取り機101の使用時、作業者は、まず牽引装置577(図13)の操作レバー615を第1の部分スリット653a内で操作して、放出アーム563、563(図11)を、受け器241内の壁部に沿って位置する第1の位置に牽引しておく。その後、刈取り機を進行させ、刈取ろうとする茎稈の株元に回転刃113、113を押付けこれを切断する。その際、それぞれの回転刃113、113は、内側が株元に当たって前進を阻まれるので、外側から内側に向けて回転し、茎稈を両側から挟み切る。本発明の好ましい実施の形態によれば、回転刃113、113は、少なくとも一方が上方向又は下方向にばね付勢されて両者間の上下方向距離が最小にされるので、茎稈を有効に挟み切ることができる。また、各回転刃の各小刃部121(図3)は、回転方向の前方及び後方に刃123を有するので、茎稈の株元に回転刃113、113を突当てるだけでも、回転方向後方の刃123によって茎稈を切断することができる。切断された茎稈は、回転刃113、113の後の受け器241(図1)内に又は放出アーム563、563上に、軸芯の長さ方向を受け器の前後方向に沿わせて集荷される。
【0075】
所定の束数、例えば3束又は4束の茎稈を受け器241に集荷したら、結束紐を供給し、回転羽根313、313(図5)を回転させて、集荷された茎稈を一纏めに結束する。そのためには、取っ手711(図1)に付設された第1のレバー713を引けばよい。第1のレバー713を引くと、ニードル部369を含む結束紐供給装置361(図6)が、ダブルトーションばね381のばね力に抗して、第1の位置(待機位置)から第2の位置に移動し、ニードル部が受け器241内の茎稈中に結束紐供給孔283、285(図5)を介して突出する。それと同時に、結束紐供給装置361のハウジング367の下面が、回転牽引具365(図6)の上面に設置された電源スイッチ321と接触し、これを押圧して、モータ315(図5)に電源を投入する。モータ315が回転し、回転羽根313、313が、茎稈の側面に接触しながら茎稈を転がすように回転する。すなわち、受け器241の壁部(リブ247及び放出アーム563を含む)上で茎稈を、受け器の前後方向に沿う軸芯の周りで回転させる。ニードル部369の先端からは一定長の結束紐が出ているので、茎稈が回転するにつれて、この一定長の結束紐が茎稈に絡みつく。結束紐は、その後回転する茎稈に引張られてニードル部先端から繰出され、茎稈の周りに巻回される。結束紐は、結束紐供給装置361により一定の張力を付与ながら供給されるので、茎稈を固く結束することができる。第1のレバー713を引いている間は、モータ315の電源が投入され続けるので、回転羽根313、313は回転し続け、結束紐は供給され続ける。茎稈を結束したら、第1のレバー713を放し、ダブルトーションばね381の反発力により、結束紐供給装置361を第1の位置に復帰させる。それと同時に、結束紐供給装置361のハウジング367が回転牽引具365の上面の電源スイッチ321から離れるので、モータ315の電源が切られ、回転羽根313、313は回転を停止する。この時、結束紐は、受け器241内の茎稈と、第1の位置に復帰したニードル部先端との間で張架された状態である。その後、第2のレバー715(図1)を引くと、結束紐切断装置511(図6)内で摺動刃517が貫通孔513を横切り、結束紐を切断する。結束紐が切断されると、ニードル部先端には、結束紐切断装置511とニードル部先端との間の距離に相当する長さの結束紐が残される。この一定長の結束紐は、次に結束紐を茎稈に絡みつかせるのに利用される。
【0076】
その後、牽引装置577(図13)の操作レバー615を第1の部分スリット653aから第2の部分スリット653bに移行させて、ガイド棒627をガイド溝657、657の円形部659、659に投入すると共に、突出部629、629により円環部631、631を押圧して、第2の歯車611の回転軸613を非回転状態に保持する。次いで、操作レバー615を、円形部659、659内に位置するガイド棒627の周りで最大傾斜位置まで回動させ、第1の歯車597の回転軸599を各第1の部分軸孔645aから第2の部分軸孔645bに移行させる。すると、まず最初に第1の歯車597が第2の歯車611から、また爪部材693がラチェット歯車689から離脱し、次いで突出部629、629が円環部631、631から離脱する。突出部629、629の円環部631、631からの離脱と同時に、ワイヤ709を牽引しながら巻き取っていたワイヤ巻取り具667(及び第2の歯車611及びラチェット歯車689)が自由回転状態となり、ダブルトーションばね569(図11)の反発力により放出アーム563、563が第2の位置に撥ね上がって、その上の結束された茎稈を機外に放出する。なお、牽引装置577を含む放出装置561は、刈取り機101の左右両側に設けられているので、いずれの放出装置561を使用するかによって、左右いずれの側にも茎稈を放出することができる。その後、操作レバー615を最大傾斜位置から第2の部分スリット653b内の起点位置まで引戻し、第1の歯車の回転軸599を各第2の部分軸孔645bから第1の部分軸孔645aに復帰させる。すると、第1の歯車597及び爪部材693がそれぞれ第2の歯車611及びラチェット歯車689と再係合するが、この時は、まず最初に突出部629、629が円環部631、631と当接し、これを押圧して、第2の歯車の回転軸613の非回転状態を確保する。したがって、第1の歯車597及び爪部材693は、非回転状態が確保された第2の歯車611及びラチェット歯車689と再係合されることとなる。次に、操作レバー615をさらに引いて、円形部659、659内に位置するガイド棒627の周りで回動させ、第2の部分スリット653bから第1の部分スリット653aに戻す。そして、第1の部分スリット653a内で操作レバー615を操作して、放出アーム563、563を再び受け器241内の壁部に沿って位置する第1の位置に牽引しておく。その後、次の茎稈の刈取りに向けて刈取り機101を前進させる。次に刈取られる茎稈は、受け器241内の放出アーム563、563の上に集荷されることとなる。なお、機外に放出された茎稈は、その後乾燥等に回すことができる。
【0077】
このように、本実施の形態による刈取り機101によれば、作業者は、茎稈を刈取り受け器241に集荷した後、取っ手711のところで、第1のレバー713を引き、これを放し、第2のレバー715を引き、これを放し、かつ牽引装置577の操作レバー615を前方に押すだけで、結束紐を供給し、結束紐で茎稈を結束し、結束紐を切断し、結束された茎稈を機外に放出することができる。
【0078】
次に、本発明のいくつかの別の実施の形態について、図20〜27を参照しながら説明する。これらの実施の形態は、上述の第1の実施の形態と部分的に異なる実施の形態であり、異なる部分以外の部分は第1の実施の形態と同様である。そのため、第1の実施の形態と異なる部分についてのみ説明し、第1の実施の形態と同様の部分については、第1の実施の形態と同様の参照番号を付してその説明を省略する。第1の実施の形態を含む各実施の形態の異なる部分は、それらを適宜組合せて用いることもできるものである。
【0079】
第2の実施の形態は、茎稈を刈取る刈刃装置が、回転刃に代えて固定刃を用いる点で第1の実施の形態と異なる。図20は、かかる刈刃装置を示す上面図、図21は、図20の21−21線に沿う拡大断面図である。図20において、刈刃装置715は、略直角三角形の一対の固定刃717、717を備える。各固定刃717は、底辺部719と、高さ部721と、斜辺部723であって、下端(後端)に側方に突出する略矩形の舌片724を有する斜辺部とを含む。各固定刃717の斜辺部723は外方に湾曲し、この斜辺部の少なくとも一部に、茎稈を切断するための刃部725が形成される。2つの固定刃717、717は、互いに対向する斜辺部723、723が全体として前方外方に拡開するようにスライダ209、209上に固定される。各固定刃717は、一方の面(上面又は下面)から他方の面(下面又は上面)に向けて傾斜する傾斜部を、斜辺部723の少なくとも一部に有し、この傾斜部の先端に上記刃部725が形成されるのが好ましい。具体的には、図21に示すように、例えば右側の固定刃717aは、一方の面(上面)から他方の面(下面)に向けて傾斜する傾斜部729aを有し、その先端に刃部725aが形成されており、左側の固定刃717bは、一方の面(下面)から他方の面(上面)に向けて傾斜する傾斜部729bを有し、その先端に刃部725bが形成されている。また、2つの固定刃717、717は、図20、21に明らかなように、それらの左右方向中央にて互いに重なり合う部分を有し、かつ上記他方の面同士が互いに対向し、隣接するように、スライダ209、209に固定されるのが好ましい。これにより、刃部725a、725b間の上下方向距離を小さくすることができ、茎稈を有効に切断することができる。図中、726はボス部であり、2つのボス部726、726が各固定刃717の高さ部721寄りに形成されている。各固定刃717は、これらのボス部にてスライダ209上にねじ止めされる。727は、そのためのナットである。なお、2つの固定刃717、717の一方の固定刃717(図示の例では右側の固定刃)は、必要に応じ、高さ調整用のスペーサ(図示せず)を介在させてスライダ209にねじ止めされる。2つの固定刃717、717が中央部分において互いに重なり合うことができるように、一方の固定刃に下駄をはかせるためである。728は、各固定刃717の舌片724にて、図示しないボルトと締結されて各固定刃を他方の固定刃とねじ止めするためのナットであり、かかるねじ止めにより、2つの固定刃717、717を、またこれらの固定刃を支持するスライダ209、209を、互いの位置関係により強固に保持することができる。本実施の形態による刈刃装置715によれば、茎稈の株元に固定刃717、717を押し当て、突き当てることにより、茎稈を切断することができる。
【0080】
なお、本実施の形態では、各固定刃717の刃部725は、一本の単純な曲線として図示されているが、この刃部の少なくとも一部を上面視で三角、半円等の連続する小さい複数の小刃部で構成することもできる。切断効率を高めるためである。また、本実施の形態では、2つの固定刃717、717を互いに結合するために、各固定刃717に舌片724を設け、それぞれの舌片にてねじ止めを行っているが、一方の固定刃にのみ舌片を設けてねじ止めし、あるいは両方の固定刃に舌片を設けるにしても、一方の舌片のみにてねじ止めを行うこともできる。また、溶接その他の手段で結合することもできる。さらには、2つの固定刃717、717は、例えば、互いに一部が重なり合う刃部ではなく、同一平面内に位置する刃部であって、前方外方に拡開する刃部を有する単一の固定刃として一体的に形成することもできる。
【0081】
第3の実施の形態は、茎稈を結束する際に茎稈を回転させる回転装置の点で、第1の実施の形態と異なる。具体的には、第3の実施の形態は、回転装置733が回転羽根313、313を備える点で第1の実施の形態と共通するが、回転羽根を回転させるのに車輪291、291の回転力を利用する点で、モータを利用する第1の実施の形態と異なる。すなわち、本実施の形態では、車輪291の回転力を回転羽根313、313に伝達して回転羽根を回転させている。また、車輪291の回転力を車軸293に伝達し、車軸の回転を介して回転羽根313、313に伝達している。図22は、かかる回転装置733を示す図5と類似の図である。図22において、車輪291、291は、図示しない適宜のラチェット機構を介して車軸293の端部に装着される。このラチェット機構は、車輪291の前進回転時には車軸293を同一の方向に回転させるが、後退回転時には、ラチェット歯とラチェット爪の係合が解除されて、車軸293を従動回転させないものである。この場合、2つの車輪291、291の一方の車輪のみをラチェット機構を介して車軸293に取付け、他方の車輪291は自由回転可能に取付けることもできるが、図示の例では、両方の車輪291、291をラチェット機構を介して車軸293に取付けている。凸凹の多い圃面でも、いずれか一方の車輪291が前進回転すれば、車軸293を回転させ、回転羽根313、313を回転させることができるようにするためである。
【0082】
回転羽根313、313は、第1の実施の形態と同様、好ましくは左右方向の一方(図示の例では右側)に偏った位置で、第1の横板253aの前後方向両側に配置されている。回転羽根313、313は、回転軸737の一端側に回転軸と一体的に結合され、回転軸737と共に回転する。回転軸737は、上記一端側で、第1の横板253aの下面に設置された図示しない支持装置により回転可能に支持されている。回転軸737の他端側は、車軸293の近傍まで延長されている。図示の例では、第1のかさ歯車735が、車軸293の右寄りの位置で車軸の周りに一体的に結合され、回転軸737の他端に一体的に結合された第2のかさ歯車(図示せず)と噛合っている。車輪支持体255、255間に横架された補強板741は、第1の実施の形態と異なり(図2、5参照)、ロッド249、249に対して平行であり、補強板741と同一平面内を後方に突出する支持板743を有する。支持板743の下面には、回転軸737を回転可能に支持し、上記図示しない第2のかさ歯車を第1のかさ歯車735と噛合い状態に維持する支持装置(図示せず)が設けられている。これにより、少なくとも一方の車輪291の前進回転によって車軸293が回転されると、車軸293の回転が第1及び第2のかさ歯車を介して回転羽根313、313に伝達され、回転羽根を回転させる。なお、補強板741から前方に延出する支持棒745、745は、曲折部747、747を介して下方に延び、曲折部の先で刈刃装置111に連結されている。
【0083】
かかる構成によっても、第1の実施の形態と同様、茎稈の結束時回転羽根313、313を回転させて茎稈を回転させることができる。回転羽根313、313を回転させるためには、刈取り機を前進させて、少なくとも一方の車輪291を回転させる必要があるが、車輪の大きさや、第1及び第2のかさ歯車の歯数や歯数の比等を適切に選択することにより、また、次ぎに述べるように、必要に応じて追加の歯車を利用すること等により、効率よく回転羽根を回転させることができる。本実施の形態による刈取り機によれば、人の力以外の動力を何ら使用することがないので、COを排出せず、有利である。なお、モータを使用しないことから、回転牽引具365(図6)の上面の電源スイッチ321は不要である。
【0084】
なお、本実施の形態では、車軸293の回転を回転羽根313、313に伝達するためにかさ歯車を用いているが、かさ歯車に代えて、クラウン歯車、ウォーム歯車等の他の適宜な歯車を用いることもできる。また、本実施の形態では、車軸293の回転をかさ歯車を介して直接回転羽根313、313に伝達しているが、例えば、第1の横板253aの前方に追加の横板を設け、そこに別の追加の歯車を設置し、これらの歯車を介して車軸の回転を伝達するようにすることもできる。これは、回転羽根313、313の回転速度等を調整する場合に有利である。また、本書では特に図示しないが、歯車に代えて、チェーンを用いて車輪293の回転力を回転羽根313、313に伝達することもできる。例えば、一方の車輪291の内側側面にラチェット機構を介してスプロケットを装着し、車輪の前進回転時にのみスプロケットが回転するようにする。別のスプロケットを第1の横板253aの下面に支持装置を介して取付ける。両方のスプロケット間にチェーンを架け渡す。そして、上記別のスプロケットの回転軸と回転羽根313、313の回転軸とをかさ歯車等の適宜の歯車手段によって連結する。このような方法によっても、車輪291の回転力を回転羽根313、313に伝達することができる。なお、この場合、必要な設計変更をして、車輪支持体255、255の内側に車輪291、291を配置するのが好ましいであろう。
【0085】
第4の実施の形態は、第1の実施の形態の結束紐供給装置361が有していた2つの機能、すなわち結束紐の逆戻り防止機能と、一定の張力を付与しながら結束紐を供給する紐ブレーキ装置としての機能のうち、結束紐供給装置は逆戻り防止機能のみを有し、紐ブレーキ装置としての機能は結束紐ケースが有する点で第1の実施の形態と異なる。本実施の形態では、結束紐供給装置と結束紐ケースとが、上記2つの機能を分担して有する。上述のように、結束紐供給装置のニードル部369の先端から延出する一定長の結束紐は、ニードル部内に逆戻りしてしまうと引出し作業が必要となって不都合なので、それを防止する機能を結束紐供給装置に付与することが好ましく、また一定の張力を付与しながら結束紐を供給することが好ましい。図23は、本実施の形態による結束紐供給装置を示す図9、10と類似の図、図24は本実施の形態による結束紐ケースを示す図、図25は図24の結束紐ケースの一部の拡大図である。
【0086】
図23において、結束紐供給装置751は、図9のハウジング367と類似のハウジング753を備える。ハウジング753は、上ハウジング753aの各側板754aと、下ハウジング753bの各側板754bとがそれぞれ、前方及び後方の係合溝409a及び410aと、前方及び後方の係合溝409b及び410bとに加えて、第3の係合溝755a(上ハウジング)と755b(下ハウジング)とを有する点で、ハウジング367と異なる。第3の係合溝755a、755bは、前方の係合溝409a、409b寄りに位置し、上記他の係合溝と同様、それぞれ上板406a及び下板406bまで上下方向に延びる一対の突条の間に形成される。前方の上下の係合溝409a、409b及び後方の上下の係合溝410a、410bには、それぞれ図10の前枠板417及び後枠板418に対応する前枠板757及び後枠板759が嵌め込まれ、第3の上下の係合溝755a、755bには、第3の板761が嵌め込まれる。これらの板は、第1の実施の形態と同様、上下ハウジング753a、753bが組合されることにより、ハウジング753内に固定される。また、ハウジング753は、上ハウジング753aの各側板754aと下ハウジング753bの各側板754bとがそれぞれ、本係止突起413aと413bとを有しない点でもハウジング367と異なる。また、本実施の形態では、図10に示す側枠板419、419、第1の摩擦車431、第2の摩擦車439等に相当する要素は用いられない。
【0087】
第3の板761の前面には、中央の結束紐挿通孔(図示せず)を囲むように円錐体763が取付けられる。円錐体763は、底部765と、底部から前方に突出する円錐部769とを備える。図示の例において、底部765は、上記図示しない結束紐挿通孔と略同一径の底部開口767を有する。円錐部769は、底部765寄りの位置から円錐部先端まで先細りするように延びる複数の円錐片773、773・・・を有し、隣接する円錐片間には切れ目771、771・・・が形成されている。円錐片773、773・・・は、先端にて結束紐よりも小径の先端開口775を形成する。また、円錐片は半径方向外方に弾性変位可能である。そのため、円錐部769に通された結束紐は、前方、すなわち結束紐供給方向に引かれる時は、円錐片773、773・・・が拡開するので、円錐片によって移動を妨げられることはないが、後方に引かれるときは、結束紐よりも小径の先端開口775を形成する円錐片773、773・・・の先端によって動きを阻止される。したがって、結束紐は結束紐供給方向と反対方向には移動することができなくなる。かかる構成によっても、刈取り機101の使用中に何らかの原因によって、ニードル部369の先端から延出する一定長の結束紐がニードル部内に逆戻りしてしまうのを防止することができ、常に一定長の結束紐をニードル部先端に確保することができる。図中、777、777・・・は、円錐体763の底部765から外方に突出するねじ受け片であり、779、779・・・は円錐体763を第3の板761に固定するためのねじである。なお、ハウジング753の前端に前枠板757と、前板401a、401bと、係止リング370とによってニードル部369を締結する方法は、図9、10に関連して説明したのと同様である。
【0088】
図24において、結束紐ケース781は、ケース本体783と、ケース本体に収納される紐ロール785とを備える。ケース本体783は、横断面が円形の上蓋787と、下蓋789とを含む。上蓋787の上面の円形中心には、円柱795が立設され、円柱の外周面には外ねじ797が切られている。また、上蓋787には、半径方向の所定の位置に周方向に配列された複数組(図示の例では3組)の孔が形成されている。各組の孔は、図示の例で、3つの貫通孔811a、811a・・・と、1つのめくら孔または凹み811bを含む。紐ロール785は、結束紐が巻回されるコア791と、コア791の上端及び下端近くでコア791に結合され、コアと一体的に回転する大径の上フランジ793aと下フランジ793bとを含む。紐ロール785は、例えば上蓋787の下面の円形中心及び下蓋789の上面の円形中心に設けられた凹部(図示せず)にコア791の上端及び下端が嵌合されて、ケース本体内でコア791を中心に回転可能である。結束紐ケース781は、さらに、制動具799を備える。制動具799は、円柱795の外ねじ797に対応する内ねじ(図示せず)を有する筒体801と、筒体の外周面から等間隔で外方かつ下方に延びる複数(図示の例では3つ)のアーム803、803・・・とを含む。制動具799は、筒体801が円柱795に螺合されることにより、円柱795上でねじ回転可能であり、したがって上下方向に変位可能である。各アーム803は、筒体801の外周面に一体的に固着されてもよいが、下方に向けて付勢されるように構成するのが好ましい。例えば、図示の例において、各アーム803は、筒体801の外周面に突設された複数対(図示の例では3つ)の1つの支持片807、807間に板ばね809(図25)を介して軸支され、常時下方に付勢されている。この点については、図25を参照して、次に説明する。また、各アーム803は、先端にお椀形の保持具804と、保持具内に回転可能に保持された球形の回転体805とを備える。回転体805は保持具804内に嵌め込まれて抜けが防止されている。各回転体805は、制動具799が円柱795の周りで回転されると、上蓋787の上面上を回転しながら移動し、いずれかの貫通孔811a又はめくら孔811bに着座することができる。そして、いずれかの貫通孔811aに着座した時に、その貫通孔を介して紐ロール785の上フランジ793aと摺接し、紐ロールの回転を制御する作用を及ぼす。そのため、結束紐の送出量又は送出速度を制御することができる。また、制動具799を円柱795の周りでねじ回転させることにより、制動具の高さ位置を変化させることができる。したがって、回転体805の上フランジ793aに対する押圧力を変化させながら、これと摺接させることができ、結束紐の送出量又は送出速度を調節することができる。めくら孔811bは、制動具799の休止位置であり、回転体805がここにある時は、結束紐は自由に引出されることができる。図中、813は、支持片807、807間でアーム803を支持する軸(図示せず)の止めナットである。815は結束紐の引出し口であり、817は上蓋と下蓋とをロックするための止め具である。709は結束紐である。
【0089】
図25を参照すると、板ばね809は、細長い板をR形に折り曲げたような形状を有し、平板状の基端部819及び先端部820と、それらの間を繋ぐ円い軸受け部821とを備える。軸受け部821の内側には軸孔825が形成される。板ばね809は、軸受け部821の軸孔825に図示しない軸が挿通されて支持片807、807(図24)の間に支持される。一方、アーム803の基部には、基部を上下2つの部分に分ける横スリット(図示せず)が形成されている。板ばね809の先端部820は、アーム803の基部の上記図示しない横スリットに嵌め込まれ、ねじ止めされ、基端部819は、筒体801の外面にねじ止めされる。板ばね809は、アーム803とその先端の回転体805とを常時下方に付勢する。
【0090】
上述の結束紐ケース781によれば、結束紐の供給時、各アーム803の回転体805は、貫通孔811aを介して紐ロール785の上フランジ793aと摺接し、回転する紐ロール785に制動作用を及ぼすので、回転する茎稈に引張られながら繰出される結束紐に一定の張力を付与することができる。また、この結束紐ケース781では、円柱795の周りで制動具799を回転させ、回転体805が着座する貫通孔811aを変えることにより、制動具の上下方向位置が変化し紐ロール785に対する押圧力又は制動力も変化するので、上記一定の張力を容易に調節することができる。さらに、回転体805は、貫通孔811a又はめくら孔811bに着座するので、刈取り機の使用時、結束紐ケース781が振動等により揺れ動いても、着座中の孔から離脱しにくく、安定して一定の張力を付与することができる。
【0091】
なお、本実施の形態では、結束紐供給装置751に関し、第1の実施の形態におけるのと類似のハウジング753を用い、その中に円錐体763(図23)を取付けて結束紐の逆戻りを防止しているが、ハウジングをより簡略化し、またはこれを省略して、例えばニードル部369の結束紐の通路内(例えば、ニードル部の基部)に円錐体763を装着するようにすることもできる。特に、回転羽根313、313を回転させるのにモータ315を使用しない実施の形態では、ハウジングに電源投入の役目を負わせる必要がないことからも、幅広のハウジングの簡略化又は省略が可能であろう。単に円錐体763を取付けたニードル部369にばね手段を作用させて、第1及び第2の位置間を移動させてもよい。本実施の形態では、結束紐ケース781に関し、制動具799を装着するために、上蓋787の円形中心に立設された円柱795を利用しているが、このような円柱による必要は必ずしもない。貫通孔811aを介して紐ロール785の上フランジ793aと摺接させることができれば、上蓋787の円形中心でなくとも、また上蓋787に直置きするのであってもよい。また、上フランジ793aと摺接させることができれば、必ずしも回転体805を備えたアーム803を用いる必要はなく、制動具799に設けられた単なる突出部であってもよい。本実施の形態では、上蓋787に立設される円柱795が外ねじ797を有し、制動具799の筒体801が内ねじを有しているが、外ねじを有する円柱795に代えて、内ねじを有する、例えば円筒を上蓋に立設し、制動具の筒体(又は円柱)が外ねじを有するように構成することもできる。本実施の形態では、制動具799のアーム803(及び回転体805)の数や、上蓋787に設ける孔811、811・・・の組数や、各組の孔の数を図示したが、これらを図示したものに限定する趣旨ではない。1つのアーム803(及び回転体805)と、これに対応する1つの貫通孔811aを上蓋787に設けるだけでも、紐ブレーキ装置としての機能を果たすことができる。また、制動具799の板ばね809についても、図示したような板ばねに代えて、圧縮ばね、引張ばね等適宜好適なばね手段を用いることができる。また、本実施の形態では、紐ロール785の上フランジ793aに直接回転体805を押付けているが、上フランジにリング状の補強板を設け、その補強板に回転体を摺接させるようにしてもよい。
【0092】
また、外ねじを有する円柱795と内ねじを有する筒体801とに代えて、上蓋787に立設された円柱に対し円筒を摺動嵌合可能とし、円柱に高さの異なる複数の第1の横貫通孔を形成し、筒体に1つの第2の横貫通孔を形成し、円柱の第1の横貫通孔のいずれかと円筒の第2の横貫通孔とを位置合わせし、それらに通しボルトを含む通し手段を抜脱可能に装着することによっても、制動具の支柱上の高さ位置を変化させることができる。この場合、円柱に形成する複数の第1の横貫通孔を縦一列に配列することも、円柱の周方向に斜めに配列することもできる。前者の場合には、制動具は円柱に沿って垂直に高さ位置を変えることができることとなり、したがって、上蓋787に複数の貫通孔811aを形成する必要はない。また、後者の場合には、制動具の高さ位置を変えることができると共に、周方向にも変位させることができることとなる。なお、上蓋787に立設される円柱とこれと摺動嵌合する円筒とを互いに置換えることができることは、上述の通りである。
【0093】
次に、図26、27を参照して、第1の実施の形態の放出装置(図11〜19)とは異なる放出装置を用いる第5の実施の形態について説明する。図26は、かかる本実施の形態の放出装置を示す全体図、図27は、図26の放出装置で使用される歯車支持装置の分解拡大図である。なお、第1の実施の形態と同様、刈取り機の左右両側に設けられる放出装置は構成が略同一であるので、以下、特に右側(刈取り機の進行方向に向かって右側)の放出装置を例に説明する。
【0094】
図26において、放出装置831は、放出アーム563、563を枢動させるために、ダブルトーションばね569(図11)に代えて、半割りの第1の歯車又はラック833と、第1の歯車と噛合う第2の歯車835と、第2の歯車と噛合う第3の歯車837とを備える。第1の歯車833は、ロッド249に回転可能に支持される。第1の歯車833は、半割り面に固定された矩形の板体839と、板体から突出する短棒845とを介して、放出アーム563、563を繋ぐ連結棒568と連結されている。第2の横板853bの端部は、コの字形であり、二股の突出部841、841と、これらの突出部の間に形成された矩形の切欠き843とを有する。二股の突出部841、841は、ロッド249の下部に形成された図示しない凹所に、第1の歯車833の前後方向両側で嵌合、固定され、第1の歯車を切欠き843内に位置付ける。第1の歯車833は、ロッド249の周りを切欠き843内で回転可能である。第1の歯車833が回転することにより、放出アーム563、563がロッド249の周りを回動する。第1の歯車833に固定された板体839は、切欠き843よりも大きい横幅(前後方向幅)を有し、第1の歯車833及び放出アーム563、563の回動時、第2の横板853bの上面に当接し、放出アームを第1の位置に停止させるストッパの役目を果たす。第2及び第3の歯車835、837は、支持装置847(図27)を介して第2の横板853bの下面に回転可能に支持される。支持装置847については、次に図27を参照して説明する。取っ手711(図1)の近傍には、回転ハンドル849が配置されている。第3の歯車837と回転ハンドル849とは回転軸851により連結されている。なお、若干長めの回転軸851は、その長さ方向の途中で適宜な手段により支持することもできる。例えば、第2の横板853bの後方でロッド249、249間に第3の横板(図示せず)を架設し、これに支持装置を設置して支持することができる。あるいはまた、回転軸851を2以上の回転軸で構成し、上記支持装置に、これらの回転軸を接続する2以上の歯車を含ませることもできる。図中、854は、放出アーム563、563を第2の位置で停止させるストッパ装置であり、適宜使用することができる。
【0095】
図27を参照すると、歯車支持装置847は、第2の横板853bの下面に対応して緩やかに湾曲した底板855と、底板の下面に立設された箱体857とを備える。底板855は、第2の横板853bと同様、2つの突出部859、859と、これらの突出部の間に形成された切欠き861とを備えるコの字形の一端を有する。箱体857は、第1の歯車833に面する側の側面(右側面)が開放されている。箱体857は、底板855の上記コの字形の一端側及び他端側にねじ代863a、863a及び863bを残して、底板855に立設される。箱体857の側板865、865には、第1の歯車833の側に軸孔867、867が、他方の側に軸孔869、869(一方の軸孔のみ図示)が形成されている。第2の歯車835は、軸孔867、867に挿通支持される回転軸871により箱体857内に支持され、一部が箱体の上記開放された右側面から外方に露出して、第1の歯車833と噛合う。第3の歯車837は、軸孔869、869に挿通支持される回転軸851により箱体857内に支持される。第3の歯車837と回転軸851とは、それぞれの内周面と外周面とに形成された突条838、852の係合を通じて、またはその他の適宜の手段により、一体回転可能である。歯車支持装置847は、ねじ代863a、863a、863bに形成されたねじ孔873、873・・・を介して第2の横板853bの下面に、切欠き861と切欠き843とを位置合わせして、ねじ止めされる。図中、875、875・・・は、止めナットである。
【0096】
かかる構成により、図26において、茎稈の放出時、回転ハンドル849を右回り(矢印Fの方向)に回転させると、回転軸851と、第3及び第2の歯車837、835とを介して、第1の歯車833がロッド249の周りで回転し、放出アーム563、563を第1の位置から第2の位置へと上昇させて、その上の結束された茎稈を機外に放出する。第1の歯車833に固定された板体839は、その際、茎稈のすべり板の役目を果たす。茎稈の放出後、回転ハンドル849を反対方向に回転させると、放出アーム563、563は第1の位置に復帰する。または、単に回転ハンドル849を手から放すと、放出アーム563、563は自重により第1の位置に復帰する。板体839は、上述のように、第2の横板853bの切欠き843よりも大きい横幅(前後方向幅)を有するので、放出アーム563、563の第1の位置への復帰時、突出部841、841の上面に当接して、放出アーム563、563を第1の位置で停止させる。刈取り機は、その後、次の刈取り作業へと進めることができる。
【0097】
なお、本実施の形態では、第1の歯車又はラック833に第2の歯車835と第3の歯車837とを噛合わせているが、第1の歯車833に噛合わせる歯車の数は、2つに限らず、1つであっても、または3つ以上であってもよい。また、本実施の形態では、第1、第2及び第3の歯車833、835、837の歯数や歯数の比等を図示してあるが、歯数や歯数の比等がこれらに限定されないことは、第1の実施の形態で述べたところと同様である。
【0098】
本発明の好ましい実施の形態を図示し説明したが、これらは単に例示であり、本発明の範囲を限定するものではない。本書の記載から、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく多くの変形例や改変例、付加例や置換例等が可能であるが、これらの変形例や改変例、付加例や置換例等は保護の対象に含まれるものと解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0099】
101 刈取り機
113 回転刃
115a 固定具
115b 固定具
241 受け器
247 リブ
249 ロッド
253a 第1の横板
253b 第2の横板
255 車輪支持体
269 補強板
273 支持棒
283 結束紐供給孔
285 結束紐供給孔
311 回転装置
313 回転羽根
315 モータ
319 蓄電池
321 電源スイッチ
327 切欠き
361 結束紐供給装置
363 結束紐供給・切断ユニット
367 ハウジング
369 ニードル部
509 結束紐ケース
511 結束紐切断装置
561 放出装置
563 放出アーム
595 ハウジング
597 第1の歯車
611 第2の歯車
627 ガイド棒
645a 第1の部分軸孔
645b 第2の部分軸孔
653a 第1の部分スリット
653b 第2の部分スリット
657 ガイド溝
659 円形部
667 ワイヤ巻取り具
685 ラチェット装置
711 取っ手
713 第1のレバー
715 第2のレバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取り機であって、
茎稈を切断する刈刃と、
前記刈刃の後方にあって、切断された茎稈を受ける受け器と、
刈取り機を進行させる装置と、
前記受け器の壁部上で茎稈を軸芯周りで回転させる回転装置と、
結束紐を供給し、茎稈の回転につれて茎稈を結束させる結束紐供給装置と、
茎稈の結束後、結束紐を切断する結束紐切断装置と、
結束された茎稈を機外に放出する放出装置とを備える、刈取り機。
【請求項2】
結束紐の供給時、結束紐に一定の張力を付与する紐ブレーキ装置をさらに備える、請求項1に記載の刈取り機。
【請求項3】
前記刈刃は、刈取り機の進行方向に対し左右に並置された一対の回転刃である、請求項1に記載の刈取り機。
【請求項4】
前記刈刃は、刈取り機の進行方向に対し左右に並置された一対の固定刃である、請求項1に記載の刈取り機。
【請求項5】
前記受け器は、切断された茎稈がその中に倒れ込む位置に配置される、請求項1に記載の刈取り機。
【請求項6】
前記受け器は、前端及び上部が開放されている、請求項1に記載の刈取り機。
【請求項7】
前記受け器は、前方に向けて下方に傾斜している、請求項1に記載の刈取り機。
【請求項8】
前記受け器は、側部を有し、前記側部は、内方下方に向けて傾斜した壁部を含む、請求項1に記載の刈取り機。
【請求項9】
前記受け器は、断面が実質的に円弧状である、請求項1に記載の刈取り機。
【請求項10】
前記回転装置は、刈取り機の前後方向に茎稈の軸芯を沿わせた状態で茎稈を軸芯周りで回転させる、請求項1に記載の刈取り機。
【請求項11】
前記回転装置は、茎稈の側面に作用して茎稈を軸芯周りで回転させる、請求項1に記載の刈取り機。
【請求項12】
前記回転装置は、茎稈の側面に作用する回転羽根と、前記回転羽根を回転させる装置とを備える、請求項1に記載の刈取り機。
【請求項13】
前記回転羽根を回転させる装置は、モータを備える、請求項12に記載の刈取り機。
【請求項14】
前記刈取り機を進行させる装置は、車輪を備え、前記回転羽根を回転させる装置は、前記車輪の回転力を前記回転羽根に伝達する歯車を備える、請求項12に記載の刈取り機。
【請求項15】
前記刈取り機を進行させる装置は、車輪を備え、前記回転羽根を回転させる装置は、前記車輪の回転力を前記回転羽根に伝達するチェーンを備える、請求項12に記載の刈取り機。
【請求項16】
前記回転羽根は、前記受け器の壁部に形成された切欠きを介して、または前記受け器の壁部を構成する分割壁部間の隙間を介して、一部が前記受け器内に突出する、請求項12に記載の刈取り機。
【請求項17】
前記結束紐供給装置は、一定の張力を付与しながら結束紐を供給する、請求項1に記載の刈取り機。
【請求項18】
前記結束紐供給装置の結束紐供給方向上流側に配置された結束紐ケースをさらに備え、前記結束紐ケースは、前記結束紐供給装置による結束紐の供給時、結束紐に一定の張力を付与する、請求項1に記載の刈取り機。
【請求項19】
前記結束紐供給装置は、前記結束紐切断装置により切断された結束紐の逆戻りを防止する装置を備える、請求項1に記載の刈取り機。
【請求項20】
前記結束紐供給装置は、前記受け器の壁部に設けられた結束紐供給孔を介して結束紐を供給する、請求項1に記載の刈取り機。
【請求項21】
前記結束紐供給装置は、結束紐供給先端を有し、前記結束紐供給先端は、引込み式に前記結束紐供給孔を介して前記受け器内に進入し、結束紐を供給する、請求項20に記載の刈取り機。
【請求項22】
前記回転装置は、茎稈の側面に作用する回転羽根と、前記回転羽根を回転駆動するモータとを備え、前記結束紐供給装置は、前記結束紐供給先端の前記受け器内への進入時、前記モータに電源を投入する、請求項21に記載の刈取り機。
【請求項23】
前記結束紐供給装置は、結束紐供給先端を有し、前記結束紐切断装置は、前記結束紐供給先端から延びる結束紐を前記結束紐供給先端より先で切断する、請求項1に記載の刈取り機。
【請求項24】
前記結束紐供給装置は、結束紐供給先端を有し、前記結束紐供給先端は、前記受け器の壁部に設けられた結束紐供給孔を介して引込み式に前記受け器内に進入して結束紐を供給し、前記結束紐切断装置は、前記結束紐供給先端が前記結束紐供給孔から引込んだ時に、前記結束紐供給先端から延びる結束紐を前記結束紐供給先端から離れた位置で切断する、請求項1に記載の刈取り機。
【請求項25】
前記放出装置は、結束された茎稈を刈取り機の前後方向に沿う軸線の周りで回転させて機外に放出する、請求項1に記載の刈取り機。
【請求項26】
前記軸線は、前記受け器の側部にて前記受け器を支持するロッドの軸線である、請求項25に記載の刈取り機。
【請求項27】
結束された茎稈を前記軸線の上方を移動させて機外に放出する、請求項25に記載の刈取り機。
【請求項28】
前記放出装置は、前記軸線の周りを、下方に傾斜し前記受け器の断面形状に沿って延びる第1の位置及び前記受け器の上方に傾斜した第2の位置の間で回動可能な放出アームと、前記放出アームを前記第1の位置及び前記第2の位置の間で回動させる操作装置とを備え、前記放出アームは、前記第2の位置に回動された時に、結束された茎稈を機外に放出する、請求項25に記載の刈取り機。
【請求項29】
前記放出装置は、前記軸線の周りを、下方に傾斜し前記受け器の断面形状に沿って延びる第1の位置及び前記受け器の上方に傾斜した第2の位置の間で回動可能な放出アームと、前記放出アームを前記第1の位置及び前記第2の位置の間で回動させる操作装置とを備え、前記受け器は、前記放出アームが前記第1の位置にある時に、前記放出アームの上に切断された茎稈を受ける、請求項25に記載の刈取り機。
【請求項30】
前記放出装置は、前記軸線の周りを、下方に傾斜し前記受け器の断面形状に沿って延びる第1の位置及び前記受け器の上方に傾斜した第2の位置の間で回動可能な放出アームと、前記放出アームを前記第1の位置及び前記第2の位置の間で回動させる操作装置とを備え、前記放出アームは、前記第1の位置にある時に、茎稈がその上で回転される前記受け器の壁部の一部を構成する、請求項25に記載の刈取り機。
【請求項31】
少なくとも一方が回転刃である一対の切断刃と、前記回転刃を回転可能に刈取り機に固定するための固定具との組合せであって、
前記回転刃は、円板状の本体と、前記本体の円形中心に形成された貫通孔と、前記本体の外周縁に形成された刃部とを備え、
前記一対の切断刃は、前記刈取り機の進行方向に対し左右に並べられて、かつ互いに対向する側に上下に重なり合う部分を有するように、前記刈取り機に固定され、
前記固定具は、前記回転刃の前記貫通孔に挿通されて前記回転刃を前記刈取り機に固定すると共に、前記一対の切断刃が前記重なり合う部分において互いに当接するように、前記回転刃を上下方向に付勢するばねを備える、組合せ。
【請求項32】
前記一対の切断刃の他方も回転刃である、請求項31に記載の組合せ。
【請求項33】
前記ばねは、一対の皿ばねを上下に組合せたばねである、請求項31に記載の組合せ。
【請求項34】
前記刃部は、前記本体の外周縁に形成された複数の三角形又は半円形の小刃部を備える、請求項31に記載の組合せ。
【請求項35】
刈取り機用の一対の固定刃であって、
前記各固定刃は、上面視で、幅方向の一方の側に外方に湾曲しながら延びる刃部を有し、
前記一対の固定刃は、刈取り機の進行方向に対し左右に並べられて、かつ互いに対向する側に上下に重なり合う部分を有するように、かつ前記刃部が全体として前方外方に拡開するように、前記刈取り機に固定され、
前記一対の固定刃は、前記重なり合う部分の後方にて互いに結合される、一対の固定刃。
【請求項36】
前記一対の固定刃の少なくとも一方は、前記重なり合う部分の後方に他方の固定刃の上又は下に延出する舌片を有し、前記舌片を介して前記他方の固定刃とねじ止めされる、請求項35に記載の一対の固定刃。
【請求項37】
刈取り機用の結束紐供給装置であって、
一端及び他端に結束紐挿通孔を有するハウジングと、
前記ハウジングの一端から結束紐供給方向に延出し、内部に結束紐を通す結束紐通路を有するニードル部と、
前記ハウジング内に、前記ハウジングの結束紐供給方向に沿う軸線と直交するように、かつ固定位置にて回転可能に配置される第1の摩擦車と、
前記第1の摩擦車と平行に配置され、前記第1の摩擦車に押接されることができる第2の摩擦車と、
前記第1の摩擦車と共軸に、かつ前記第1の摩擦車と一体回転可能に支持されるラチェット歯車と、
前記ラチェット歯車と係合可能で、前記第1の摩擦車の結束紐供給方向と反対方向の回転を阻止するラチェット爪とを備え、
前記第1の摩擦車と第2の摩擦車とは、前記ハウジングの他端から挿通された結束紐をそれらの間に通して回転し、それらの回転量又は回転速度に応じて前記ニードル部を通じて結束紐を送出する、結束紐供給装置。
【請求項38】
前記第2の摩擦車は、固定位置にて軸支されて常時前記第1の摩擦車に押接される、請求項37に記載の結束紐供給装置。
【請求項39】
前記第2の摩擦車は、ばね付勢されて前記第1の摩擦車に押接される、請求項37に記載の結束紐供給装置。
【請求項40】
前記第2の摩擦車を前記第1の摩擦車に押接させる押し具と、前記押し具から見て前記第2の摩擦車とは反対側に配置される押力調節具と、前記押し具と前記押力調節具との間に保持される圧縮ばねとをさらに備え、前記押し具と前記押力調節具とは前記圧縮ばねをそれらの間に保持した状態で前記軸線に沿って別個に移動可能であり、前記押し具が前記第2の摩擦車を前記第1の摩擦車に押接させた状態で、前記押力調節具を前記軸線に沿って移動させ、移動後の位置で係止することにより、前記押し具との間の距離、したがって前記圧縮ばねの圧縮度を変化させ、それによって前記押し具が前記第2の摩擦車を前記第1の摩擦車に押接させる押力を調節可能である、請求項37に記載の結束紐供給装置。
【請求項41】
刈取り機用の結束紐供給装置であって、
内部に結束紐を通す結束紐通路を有し結束紐供給方向に結束紐を送出するニードル部と、
結束紐が前記結束紐通路内を結束紐供給方向と反対方向に移動するのを阻止する逆戻り防止装置とを備え、前記逆戻り防止装置は、
全体として円錐形をなし結束紐がその中を通過するように前記ニードル部に取付けられる複数の円錐片を備え、
前記複数の円錐片は、結束紐供給方向に先細りするように延び、先端に結束紐よりも小径の先端開口を形成する、結束紐供給装置。
【請求項42】
請求項41に記載の結束紐供給装置と、前記結束紐供給装置よりも結束紐供給方向上流側に配置される結束紐ケースとの組合せであって、前記結束紐ケースは、
ケース本体と、
前記ケース本体に回転可能に収納される紐ロールと、
前記ケース本体に外設され、前記ケース本体に形成された貫通孔を介して前記紐ロールと摺接することができ、前記紐ロールとの摺接時、前記紐ロールの回転量又は回転速度を規制して前記結束紐供給装置への結束紐の送出量又は送出速度を制御する制動具とを備える、組合せ。
【請求項43】
刈取り機用の結束紐供給装置であって、
一端及び他端に結束紐挿通孔を有するハウジングと、
前記ハウジングの一端から結束紐供給方向に延出し、内部に結束紐を通す結束紐通路を有するニードル部と、
結束紐が前記結束紐通路内を結束紐供給方向と反対方向に移動するのを阻止する逆戻り防止装置とを備え、前記逆戻り防止装置は、
全体として円錐形をなし結束紐がその中を通過するように前記ニードル部に又は前記ハウジング内に取付けられる複数の円錐片を備え、
前記複数の円錐片は、結束紐供給方向に先細りするように延び、先端に結束紐よりも小径の先端開口を形成する、結束紐供給装置。
【請求項44】
請求項43に記載の結束紐供給装置と、前記結束紐供給装置よりも結束紐供給方向上流側に配置される結束紐ケースとの組合せであって、前記結束紐ケースは、
ケース本体と、
前記ケース本体に回転可能に収納される紐ロールと、
前記ケース本体に外設され、前記ケース本体に形成された貫通孔を介して前記紐ロールと摺接することができ、前記紐ロールとの摺接時、前記紐ロールの回転量又は回転速度を規制して前記結束紐供給装置への結束紐の送出量又は送出速度を制御する制動具とを備える、組合せ。
【請求項45】
刈取り機用の結束紐ケースであって、
横断面円形のケース本体と、
前記ケース本体に回転可能に収納される紐ロールと、
前記ケース本体の円形面に外設される制動具とを備え、
前記制動具は、前記円形面に形成された貫通孔を介して前記紐ロールと摺接することができ、前記紐ロールとの摺接時、前記紐ロールの回転量又は回転速度を規制して結束紐の送出量又は送出速度を制御する、結束紐ケース。
【請求項46】
前記ケース本体は、前記円形面の上面に立設された支柱を備え、前記制動具は、前記支柱に上下方向に変位可能に装着され、前記制動具の前記支柱に沿う高さ位置を変化させることにより、前記制動具が前記紐ロールと摺接する力を変化させて前記制動具を前記紐ロールと摺接させることができる、請求項45に記載の結束紐ケース。
【請求項47】
前記支柱は、外ねじ又は内ねじを有する第1の円柱又は第1の円筒であり、前記制動具は、前記外ねじ又は内ねじに対応する内ねじ又は外ねじを有する第2の円筒又は第2の円柱を備え、前記貫通孔は前記支柱を中心に配列された複数の貫通孔を含み、前記第1の円柱又は第1の円筒に前記第2の円筒又は第2の円柱を螺合させ、ねじ回転させることにより、前記制動具の前記支柱に沿う高さ位置を変化させると共に、前記複数の貫通孔のいずれかを介して前記制動具を前記紐ロールと摺接させることができる、請求項46に記載の結束紐ケース。
【請求項48】
前記制動具は、外方下方に延出する少なくとも1つのアームを備え、前記アームの先端が前記複数の貫通孔のいずれかを介して前記紐ロールと摺接する、請求項47に記載の結束紐ケース。
【請求項49】
前記少なくとも1つのアームは、先端に回転可能に保持された回転体を備え、前記回転体が前記複数の貫通孔のいずれかを介して前記紐ロールと摺接する、請求項48に記載の結束紐ケース。
【請求項50】
前記少なくとも1つのアームは、下方にばね付勢される、請求項48に記載の結束紐ケース。
【請求項51】
前記支柱は、第1の円柱又は第1の円筒であり、前記制動具は、前記第1の円柱又は第1の円筒と嵌合可能な第2の円筒又は第2の円柱を備え、前記第1の円柱又は第1の円筒は、高さを異ならしめて形成された複数の第1の横貫通孔を有し、前記第2の円筒又は第2の円柱は1つの第2の横貫通孔を有し、前記複数の第1の横貫通孔のいずれかと前記第2の横貫通孔とを位置合わせし、それらに通しボルトを含む挿通具を抜脱可能に装着することにより、前記制動具の前記支柱に沿う高さ位置を変化させることができる、請求項46に記載の結束紐ケース。
【請求項52】
刈取り機用の放出装置であって、
刈取り機の前後方向に沿う軸に取付けられ、前記軸の周りを下方に傾斜した第1の位置及び上方に傾斜した第2の位置の間で回動可能な放出アームと、
前記放出アームを前記第1の位置及び前記第2の位置の間で回動させる操作装置とを備え、
前記放出アームは、前記第2の位置への回動時、前記刈取り機の前後方向に軸芯を沿わせた状態で前記放出アーム上に横たわる茎稈を、前記軸の上方を通過させて、前記刈取り機の外に放出する、放出装置。
【請求項53】
前記軸は、前記刈取り機の側部上端に位置するロッドにより構成される、請求項52に記載の放出装置。
【請求項54】
刈取り機用の放出装置であって、
刈取り機の前後方向に沿う軸に取付けられ、前記軸の周りを第1の位置及び第2の位置の間で回動可能な放出アームと、
前記放出アームを常時前記第2の位置に付勢するばね装置と、
前記放出アームに接続されるワイヤと、
前記ワイヤを前記ばね装置のばね力に抗して牽引して、前記放出アームを前記第1の位置に回動させ、また前記ワイヤの牽引を解除して、前記放出アームを前記ばね装置の反発力により前記第2の位置に回動させる牽引装置とを備え、
前記放出アームは、前記第2の位置に回動された時に、その上の茎稈を前記刈取り機の外に放出する、放出装置。
【請求項55】
前記軸は、前記刈取り機の側部上端に位置するロッドにより構成される、請求項54に記載の放出装置。
【請求項56】
前記第2の位置への回動時、前記茎稈は前記刈取り機の前後方向に軸芯を沿わせた状態で前記放出アーム上に横たわり、前記放出アームは、前記茎稈を前記軸の上方を通過させて前記刈取り機の外に放出する、請求項54に記載の放出装置。
【請求項57】
前記牽引装置は、
第1の回転軸に支持される第1の歯車と、
前記第1の回転軸に支持され、前記第1の歯車に第1のラチェット機構を介して作用する操作レバーと、
前記第1の歯車と噛合い、第2の回転軸にこれと一体回転可能に支持される第2の歯車と、
前記第2の回転軸に一体回転可能に結合されるワイヤ巻取り具と、
前記第2の回転軸に一体回転可能に結合された第2のラチェット機構のラチェット歯車及び前記第1の回転軸に回転可能に支持された前記第2のラチェット機構のラチェット爪とを備え、
前記操作レバーは、前記ワイヤの牽引時、前記第1の回転軸を回動中心として回動されて、前記第1の歯車をラチェット回転させ、それによって前記第2の歯車及び前記ワイヤ巻取り具を前記第1の歯車と反対方向に回転させて、前記ワイヤ巻取り具をして前記ワイヤを巻き取らせ、
前記第2のラチェット機構のラチェット爪は、前記ワイヤの巻取り時、前記第2のラチェット機構のラチェット歯車と係合して前記第2の歯車及び前記ワイヤ巻取り具の逆回転を阻止し、
前記操作レバーは、前記ワイヤの巻取り後、前記第1の回転軸とは別の回動軸を回動中心として回動されて、前記第1の歯車及び前記第2の歯車と、前記第2のラチェット機構のラチェット爪及び前記第2のラチェット機構のラチェット歯車とをそれぞれ離脱させ、前記ワイヤ巻取り具を自由回転可能とする、請求項54に記載の放出装置。
【請求項58】
前記第1の歯車及び前記第2の歯車と、前記第2のラチェット機構のラチェット爪及び前記第2のラチェット機構のラチェット歯車とをそれぞれ離脱させる前に、前記第2の歯車と前記第2のラチェット機構のラチェット歯車との回転を阻止する回転阻止装置をさらに備える、請求項57に記載の放出装置。
【請求項59】
前記回転阻止装置は、前記操作レバーの前記第2の回転軸に面する側に設けられた突出部と、前記突出部に対応する位置にて前記第2の回転軸に周設され、前記離脱前に前記突出部と係合して、前記第2の回転軸の回転を阻止する円環部とを備える、請求項58に記載の放出装置。
【請求項60】
刈取り機用の放出装置であって、
刈取り機の前後方向に沿う軸に取付けられ、前記軸の周りを第1の位置及び第2の位置の間で回動可能な放出アームと、
前記軸に回転可能に支持され、かつ前記放出アームと一体回転可能に連結される第1の歯車又はラックと、
前記第1の歯車又はラックと噛合う1つ又は複数のその他の歯車と、
前記1つ又は複数のその他の歯車を回転軸を介して回転させ、それによって前記第1の歯車又はラックを回転させ、前記放出アームを前記第1の位置及び第2の位置の間で回動させる回転ハンドルとを備え、
前記放出アームは、前記第1の位置又は前記第2の位置に回動された時に、その上の茎稈を前記刈取り機の外に放出する、放出装置。
【請求項61】
前記軸は、前記刈取り機の側部上端に位置するロッドにより構成される、請求項60に記載の放出装置。
【請求項62】
前記第1の位置又は前記第2の位置への回動時、前記茎稈は前記刈取り機の前後方向に軸芯を沿わせた状態で前記放出アーム上に横たわり、前記放出アームは、前記茎稈を前記軸の上方を通過させて前記刈取り機の外に放出する、請求項60に記載の放出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2011−182799(P2011−182799A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2011−114375(P2011−114375)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(711004779)
【Fターム(参考)】