説明

刈取機

【課題】スライド着脱式チップレシーバの着脱作業において、作業性及び安全性の高いを刈取機を提供する。
【解決手段】チップレシーバ3の載置部31の下面において、立ち壁部32の側の取り付け用側壁33と立ち壁部32との間に、載置部31の下面から下方に突設する保護壁36が形成する。また、チップレシーバ3の立ち壁部32の前後方向中央部に、その上面側に向かって突設した凸部と、凸部に対応する位置の下面側(裏面側)において上面側に向かって凹設された凹部とを有する滑り止め部37が前後方向に所定間隔をおいて複数箇所形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着脱自在なチップレシーバを備えた刈取機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の刈取機として本出願人は既に下記特許文献1所載のものを提案している。即ち、チップレシーバを刃物支持部にスライドさせて装着するという構成であって、従来のネジによる取付構成に比してその着脱作業が極めて容易になるという利点を有するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−110242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の従来の構成においては、作業者はチップレシーバを把持して着脱作業を行うこととなるが、刃物支持部にチップレシーバをスライド着脱する際、チップレシーバを把持した手が刃物の刃先と接触し怪我をする危険性があった。また、チップレシーバの係合突起と刃物押さえの係合溝との間等で摩擦抵抗(摺動抵抗)が発生することになるため、スライド着脱時にチップレシーバを把持した手が滑って刃物の刃先と接触し怪我をする危険性もあった。そのため作業者は把持した手が滑らないように強く把持する必要があり作業性が良くなかった。
【0005】
本発明は、上述した課題の存在に鑑みてなされたものであって、その目的は、チップレシーバ着脱時の安全性と作業性を向上させた刈取機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る刈取機は、前後方向に伸びる刃物と、前記刃物を支持する刃物支持部と、前記刃物支持部に前方から後方に向けて着脱自在にスライド装着されるチップレシーバとを備えた刈取機であって、前記チップレシーバは、スライド装着時に作業者が把持する把持部を備えると共に、前記把持部と前記刃物との間に保護壁を備えていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る刈取機においては、前記把持部は、把持した手の滑りを防止するための滑り止め部を備えることとすることができる。
【0008】
本発明に係る刈取機は、前後方向に伸びる刃物と、前記刃物を支持する刃物支持部と、前記刃物支持部に前方から後方に向けて着脱自在にスライド装着されるチップレシーバとを備えた刈取機であって、前記チップレシーバは、スライド装着時に作業者が把持する把持部を備え、前記把持部は、把持した手の滑りを防止するための滑り止め部を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、チップレシーバのスライド着脱時の安全性が向上し、スライド着脱の作業性が良い新たな刈取機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態に係る刈取機の平面図である。
【図2】図1における断面A−Aを示す図である。
【図3】図1における断面B−Bを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図1乃至図3を用いて説明する。図1は本実施形態に係る刈取機の平面図である。図2は図1における断面A−Aを示す図である。図3は図1における断面B−Bを示す図である。なお、以下の実施形態は、請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0012】
図1に示すように、本実施形態における刈取機は、ヘッジトリマとも称されるもので、本体1に内蔵された図示しない駆動装置としてのモータによって駆動されて前後に往復運動する刃物2と、刃物2によって刈り取られた枝葉を一時的に捕集するチップレシーバ3とを備えている。
【0013】
刃物2は、本体1から前方に向けて伸びていて、図2にも示されるように、上下に対向する一対の刃体2a,2bから構成されている。各刃体2a,2bは前後方向に伸びる板状であってその両側部には側方に突出する三角状あるいは台形状の刃部が前後方向に一定間隔毎に形成されている。そして、上下一対の刃体2a,2bが交互に前後に往復運動することにより枝葉を刈り取ることができる。尚、本実施形態では上下二枚の刃体2a,2bが共に往復運動するタイプであるが、一方を固定刃、他方を可動刃としてもよい。また、図1において符号5は本体1に一体に設けられた主ハンドルで、符号6は本体1に前後に回動可能に設けられた補助ハンドルである。また、本体1の前部には、刃物2によって切断された枝葉等が後方の作業者へ向かうのを阻止するためのガード板4が取り付られている。
【0014】
刃物2は刃物支持部に前後に往復動可能に支持されている。該刃物支持部は、図2のように刃物2を上下から挟み込むようにして支持する。具体的には、刃物支持部も刃物2と同様に前後方向に伸びていてその後端部が本体1に取り付け固定されており、刃物2を上下に挟持すべく上側構成部材と下側構成部材から主に構成される。刃物2の下側に位置する下側構成部材として板状の下側支持板10が設けられ、刃物2の上側に位置する上側構成部材は三つの部材から構成され、下から順に、板状の上側支持板11と、上側支持板11の上側に重ねられた上方に開口する横断面視略コの字状の支持梁12と、支持梁12の上部開口をカバーするカバー体13からなる。
【0015】
上側支持板11と下側支持板10との間には、図2のように筒状のスペーサ14が配置され、スペーサ14によって上側支持板11と下側支持板10との間の上下の間隔が設定されている。一方、刃物2には前後方向に長い長孔15が複数形成されている。この長孔15にスペーサ14が位置することで刃物2は前後方向に往復可能となる。またスペーサ14を上下に貫通するようにして下側からボルト16が挿入されており、支持梁12の上側からナット17をボルト16に螺着させることにより、下側支持板10と上側支持板11及び支持梁12とがスペーサ14を介して上下に連結固定されている。
【0016】
支持梁12は、前後方向が押し出し方向となるように形成されたアルミ押し出し材から構成され、上側支持板11に重なり合う底板部20と、底板部20の両側縁部から上方に立ち上がる左右一対の側壁部21からなる。支持梁12の両側壁部21の外側にはそれぞれ前後方向に沿って凹溝22が形成されている。凹溝22は、チップレシーバ3を刃物支持部に前後方向に沿ってスライド装着するためのものであって、支持梁12の前端部から後端部まで形成されている。また、両側壁部21の内面上部にもそれぞれ前後方向に沿って凹溝23が形成されており、凹溝23にカバー体13のフランジ部13aが係合している。
【0017】
カバー体13は下方に開口する横断面視コの字状であって、その両側部下端にそれぞれフランジ部13aが側方に向けて突設されており、フランジ部13aが凹溝23をスライドすることで、支持梁12の前端部からカバー体13を後方に向けてスライドさせながら装着でき、逆に前方に向けてスライドさせることにより支持梁12からカバー体13を外すことができる。カバー体13を支持梁12から外すと支持梁12の上部開口が開放されてその底板部20の上面が露出することになり、その状態でナット17にアクセスすることが可能となる。
【0018】
かかる構成の刃物支持部にチップレシーバ3が着脱自在にスライド装着されている。チップレシーバ3は、例えば合成樹脂から成形等により形成され、その上面が水平な平坦面とされて枝葉を載置する載置部31と、載置部31の一方の側部から外向き斜め上方に立ち上がって枝葉を受け止める立ち壁部32と、載置部31の下面の他方の側部に形成されて刃物支持部に取り付けるための取付部とを有している。載置部31は刃物2の略全長に亘る長さを有し、立ち壁部32は載置部31の前端部と後端部にそれぞれ回り込んで載置部31を三方から囲むように形成されている。
【0019】
チップレシーバ3の取付部は、載置部31の下面から下方に突出する左右一対の取り付け用側壁33を備えている。取り付け用側壁33はチップレシーバ3の略全長に亘って形成されていて、図2のように支持梁12の側壁部21の外側に位置するように形成されている。そして、取り付け用側壁33の下端部内面には、支持梁12の側壁部21の外側に形成された凹溝22に係合する係合突起34が突設されている。係合突起34は前後方向に所定の長さを有する形状であって、且つ、前後方向即ちスライド方向に間隔をおきながら複数形成されている。本実施形態においては、一対の係合突起34は合計4箇所に形成されている。なお、チップレシーバ3は、前後方向中央部を中心として前後対称形状とされていて、刃物2に対する立ち壁部32の向きが左右逆の配置にはなるものの前後何れからもスライド装着できるようになっている。
【0020】
また、載置部31の下面には、図2において、立ち壁部32の側の取り付け用側壁33と立ち壁部32との間に載置部31の下面から下方に突設する保護壁36が形成されている。この保護壁36は、載置部31の下面側に位置する側の刃物2の刃部先端よりも立ち壁部32寄りに位置している。なお、本実施形態においては、保護壁36は載置部31の前後方向略全長に亘って形成されており、チップレシーバ3の補強としての機能も有している。
【0021】
また、チップレシーバ3の立ち壁部32の前後方向中央部には、図3に示すように、立ち壁部32の上面側に向かって突設した凸部と、凸部に対応する位置の下面側(裏面側)において上面側に向かって凹設された凹部とを有する滑り止め部37が前後方向に所定間隔をおいて複数箇所形成されている。滑り止め部37は立ち壁部32の上端部から傾斜方向に沿って下端部へ向かって形成されている。滑り止め部37が形成された領域は、チップレシーバ3を刃物支持部にスライド装着する際に作業者が把持する把持部となる。なお、本実施形態においては、滑り止め部37は6箇所形成されている。
【0022】
また、図2に示すように、取り付け用側壁33の内側には、取り付け用側壁33と所定の間隔をおいて摺動突起35が下方に向けて突設されている。この摺動突起35は支持梁12の側壁部21の上面と摺動可能に形成され、カバー体13には接触せず、カバー体13との間には所定の隙間が形成される。摺動突起35は両取り付け用側壁33の内側にそれぞれ左右対称に配置されていて、前後方向に間隔をあけながら列をなすように複数箇所形成されている。本実施形態においては、摺動突起35は一列につき合計6箇所に形成され、左右一列ずつで合計12個形成されている。
【0023】
以上のように構成された刈取機にチップレシーバ3を刃物支持部にスライド装着するには、支持梁12の前端部からチップレシーバ3を後方に向けてスライドさせていくことになる。その際、作業者はチップレシーバ3の立ち壁部32を把持して、支持梁12の前端部において、凹溝22にチップレシーバ3の係合突起34の位置を合わせて係合させ、後方に向けてスライドさせていくことになるが、その際、立ち壁部32を把持した作業者の手は、立ち壁部32から載置部31の下面へ回りこむこととなる。このため、作業者の手先は、載置部31の下面に位置している刃物2の刃部と接近することになり、作業者の手先と刃物2の刃部が接触し怪我をする危険性がある。本実施形態においては、載置部31の下面に作業者の手先と刃物2の刃部との接近を防止する保護壁36が形成されているため、作業者の手先と刃物2の刃部が接触し怪我をする危険性が低減できる。
【0024】
また、スライド装着時には、支持梁12の凹溝22とチップレシーバ3の係合突起34との間に摩擦抵抗(摺動抵抗)が発生することになる。また、支持梁12の側壁部21の上面とチップレシーバ3の摺動突起35との間にも摩擦抵抗(摺動抵抗)が発生することになる。作業者はこれらの抵抗に抗してチップレシーバ3を支持梁12にスライド装着させる必要があるため、立ち壁部32をしっかりと把持する必要があった。本実施形態においては、作業者が把持する立ち壁部32に滑り止め部37が形成されており、滑り止め部37における上面側の凸部と下面側の凹部の両方が滑り止めの機能を有するため、把持した手が滑り難い。よって、手が滑った場合に刃物2の刃部と手が接触して怪我をする危険性を低減できる。また、把持した手が滑りにくく弱い把持力でもスライド装着作業ができるため作業性が良い。
【0025】
仮に、作業者のチップレシーバ3の立ち壁部32を把持する把持力が不十分な場合や立ち壁部32が濡れていて滑り易い場合は、滑り止め部37が形成されているにもかかわらず把持した手が滑る虞があるが、たとえ手が滑ったとしても、保護壁36により手が刃物部2の刃先に接触することを回避できるため、安全にチップレシーバ3の着脱作業を行うことができる。
【0026】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態の技術的範囲に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り種々なる形態に変形することが可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 本体、2 刃物、2a 刃体、2b 刃体、3 チップレシーバ、4 ガード板、5 主ハンドル、6 補助ハンドル、10 下側支持板、11 上側支持板、12 支持梁、13 カバー体、13a フランジ部、14 スペーサ、15 長孔、16 ボルト、17 ナット、20 底板部、21 側壁部、22 凹溝、23 凹溝、31 載置部、32 立ち壁部、33 取り付け用側壁、34 係合突起、35 摺動突起、36 保護壁、37 滑り止め部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に伸びる刃物と、前記刃物を支持する刃物支持部と、前記刃物支持部に前方から後方に向けて着脱自在にスライド装着されるチップレシーバとを備えた刈取機であって、
前記チップレシーバは、スライド装着時に作業者が把持する把持部を備えると共に、前記把持部と前記刃物との間に保護壁を備えることを特徴とする刈取機。
【請求項2】
前記把持部は、把持した手の滑りを防止するための滑り止め部を備えることを特徴とする請求項1に記載の刈取機。
【請求項3】
前後方向に伸びる刃物と、前記刃物を支持する刃物支持部と、前記刃物支持部に前方から後方に向けて着脱自在にスライド装着されるチップレシーバとを備えた刈取機であって、
前記チップレシーバは、スライド装着時に作業者が把持する把持部を備え、
前記把持部は、把持した手の滑りを防止するための滑り止め部を備えることを特徴とする刈取機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−111018(P2013−111018A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260371(P2011−260371)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000006943)リョービ株式会社 (471)
【Fターム(参考)】