説明

列車の速度検出装置および速度検出方法

【課題】 現状の速度発電機を用いて、列車速度の誤差の低減を図ることのできる列車の速度検出装置および速度検出方法を提供する。
【解決手段】 列車1に搭載され車輪3の回転に応じたパルスを発生するための速度発電機4と、速度発電機4から送られるパルスをカウントするサンプリング回路6とを備え、サンプリング回路6は、速度発電機4から送られるパルスの立ち上がりエッジ数および立ち下がりエッジ数をサンプリング時間毎にカウントし、このカウントされたサンプリング時間毎のパルス数に基づいて列車1の速度を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は列車の速度検出装置および速度検出方法に係り、特に、現状の速度発電機を用いて、列車速度の誤差の低減を図ることを可能とした列車の速度検出装置および速度検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、列車には、列車の速度検出装置が搭載されている。この速度検出装置には、例えば、列車の車軸の回転を検出してパルスを発生する速度発電機が設けられており、この速度発電機により発生されたパルス数をサンプリング回路に入力させ、単位時間当たりのパルス数をサンプリング回路によりカウントして車輪の回転速度を算出するようになっている。
【0003】
このような速度検出装置として、従来から、例えば、速度発電機から入力するパルスの単位時間当たりの数をカウントして車輪の回転速度を演算し、この演算値と車輪径設定スイッチで設定されている車輪径とに基づいて列車速度を演算し、演算した列車速度に基づいて列車の移動距離を計測するようにした技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特願2003−315354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の技術においては、速度発電機により発生するパルス数を所定のサンプリング時間毎にカウントするものであるが、一般に、速度発電機で発生するパルスの立ち上がりエッジの数をカウントすることにより、このカウントしたパルス数に基づいて列車の速度を検出するものである。そのため、サンプリング時間毎にカウントする際に、例えば、列車の速度が一定であるにもかかわらず、各サンプリング時間毎のパルスのカウント数が変動してしまうという問題を有している。その結果、パルスのカウント数が変動してしまうと、検出する列車の速度の誤差が生じてしまい、正確な速度の検出を行うことができないという問題を有している。
【0006】
このことは、例えば、速度発電機における発生パルスの周波数を高くするといった手段により改善することは可能であるが、この場合には、速度発電機の交換あるいは部品の交換などを行う必要があり、コストが高くなってしまうという問題を有している。そのため、現状の速度発電機を用いつつ、列車の速度の検出誤差を低減させる技術が望まれている。
【0007】
本発明は前記した点に鑑みてなされたものであり、現状の速度発電機を用いて、列車速度の誤差の低減を図ることのできる列車の速度検出装置および速度検出方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前記目的を達成するために、請求項1の発明に係る列車の速度検出装置は、列車に搭載され、車輪の回転に応じたパルスを発生するための速度発電機と、
前記速度発電機から送られるパルスをカウントするサンプリング回路と、を備え、
前記サンプリング回路は、前記速度発電機から送られるパルスの立ち上がりエッジ数および立ち下がりエッジ数をサンプリング時間毎にカウントし、このカウントされたサンプリング時間毎のパルス数に基づいて前記列車の速度を検出することを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記速度発電機から送られるパルスを矩形波パルスに変換して前記サンプリング回路に送る波形変換回路をさらに備えていることを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明に係る列車の速度検出方法は、列車に搭載された速度発電機から車輪の回転に応じたパルスを発生させ、サンプリング回路により前記速度発電機から送られるパルスの立ち上がりエッジ数および立ち下がりエッジ数をサンプリング時間毎にカウントし、このサンプリング時間毎のパルス数に基づいて前記列車の速度を検出することを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項3において、前記速度発電機から送られるパルスを矩形波パルスに変換し、前記サンプリング回路は、前記矩形波パルスの立ち上がりエッジ数および立ち下がりエッジ数をカウントすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、サンプリング回路のパルスカウント部により、サンプリング時間毎のパルスの立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジをカウントすることにより、列車の速度を検出するようにしているので、カウントしたパルス数の誤差を低減させることができ、その結果、カウントしたパルス数に基づく列車速度の検出誤差も低減させることができる。しかも、速度発電機は現状のまま使用することができ、サンプリング回路におけるソフトウェアを変更するだけで、対応することができ、コストも低減させることができる。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、速度発電機から送られるパルスを矩形波パルスに変換してサンプリング回路に送る波形変換回路を設けるようにしているので、サンプリング回路により、矩形波パルスの立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジを確実にカウントすることができる。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、サンプリング回路のパルスカウント部により、サンプリング時間毎のパルスの立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジをカウントすることにより、列車の速度を検出するようにしているので、カウントしたパルス数の誤差を低減させることができ、その結果、カウントしたパルス数に基づく列車速度の検出誤差も低減させることができる。しかも、速度発電機は現状のまま使用することができ、サンプリング回路におけるソフトウェアを変更するだけで、対応することができ、コストも低減させることができる。
【0015】
請求項4に係る発明によれば、速度発電機から送られるパルスを矩形波パルスに変換し、サンプリング回路により矩形波パルスの立ち上がりエッジ数および立ち下がりエッジ数をカウントするようにしているので、サンプリング回路により、矩形波パルスの立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジを確実にカウントすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る列車の速度検出装置を適用した列車の実施形態を示す概略構成図である。
【図2】本発明に係る列車の速度検出装置によるパルスカウント方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0018】
図1は、本発明に係る速度検出装置を適用した列車の実施形態を示す概略構成図であり、列車1には、レール2の上を走行するための車輪3が設けられており、この車輪3は図示しない駆動モータにより回転駆動されるように構成されている。この車輪3の車軸には、速度発電機4が設けられており、この速度発電機4は、例えば、車軸が1回転する毎、すなわち、車輪3が1回転する毎に所定数の正弦波パルスを発生するように構成されている。
【0019】
また、速度発電機4には、速度発電機4により発生した正弦波パルスを矩形波パルスに変換する波形変換回路5が接続されている。波形変換回路5には、サンプリング回路6が接続されており、サンプリング回路6には、所定のサンプリング時間の間に発生する矩形波パルスをカウントするパルスカウント部7が設けられており、サンプリング回路6には、パルスカウント部7により1つのサンプリング時間毎にカウントされた矩形波パルス数に基づいて列車1の速度を検出する速度検出部8が設けられている。
【0020】
ここで、本実施形態においては、パルスカウント部7は、矩形波パルスの立ち上がりパルスおよび立ち下がりパルスを1パルスとしてカウントするように構成されている。そして、速度検出部8には、車輪3の直径があらかじめ設定されており、速度検出部8は、各サンプリング時間毎にカウントされる矩形波パルス数に基づいて列車1の走行距離を計測するとともに、時間当たりの走行距離に基づいて列車1の速度を検出するように構成されている。
【0021】
次に、前記列車1の速度検出装置を用いた本発明に係る速度検出方法について説明する。
【0022】
まず、列車1が走行すると、車輪3が回転することにより、速度発電機4から正弦波パルスが出力される。この正弦波パルスは、波形変換回路5により矩形波パルスに変換され、サンプリング回路6に出力される。サンプリング回路6では、パルスカウント部7により、矩形波パルスの立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジをカウントするようになっている。そして、図2に示すように、パルスカウント部7により、サンプリング時間における矩形波パルスの立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジをカウントすることにより、速度検出部8により、車輪3の直径に基づいて、走行距離を計測し、時間当たりの走行距離に基づいて列車1の速度が検出される。
【0023】
この場合に、図2に示すように、従来のように、矩形波パルスの立ち上がりエッジのみをカウントした場合には、第1のサンプリング時間で3パルス、第2のサンプリング時間で3パルス、第3のサンプリング時間で3パルス、第4のサンプリング時間で2パルス、第5のサンプリング時間で3パルスとなる。すなわち、最も多いカウントパルス数である3パルスに対して、各サンプリング時間毎に1/3パルス分の誤差が生じることになる。
【0024】
これに対して、本発明のように、矩形波パルスの立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジをカウントする場合には、第1のサンプリング時間で5パルス、第2のサンプリング時間で6パルス、第3のサンプリング時間で6パルス、第4のサンプリング時間で5パルス、第5のサンプリング時間で5パルスとなる。すなわち、最も多いカウントパルス数である6パルスに対して、各サンプリング時間毎に1/6パルス分の誤差が生じることになる。そのため、本発明の速度検出方法によれば、従来の方法に比較して、カウントしたパルス数の誤差を1/2に低減させることができるものである。
【0025】
以上述べたように、本実施形態においては、サンプリング回路6のパルスカウント部7により、サンプリング時間毎のパルスの立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジをカウントすることにより、列車1の速度を検出するようにしているので、カウントしたパルス数の誤差を低減させることができ、その結果、カウントしたパルス数に基づく列車1の速度の検出誤差も低減させることができる。しかも、速度発電機4は現状のまま使用することができる。
【0026】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 列車
2 レール
3 車輪
4 速度発電機
5 波形変換回路
6 サンプリング回路
7 パルスカウント部
8 速度検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車に搭載され、車輪の回転に応じたパルスを発生するための速度発電機と、
前記速度発電機から送られるパルスをカウントするサンプリング回路と、を備え、
前記サンプリング回路は、前記速度発電機から送られるパルスの立ち上がりエッジ数および立ち下がりエッジ数をサンプリング時間毎にカウントし、このカウントされたサンプリング時間毎のパルス数に基づいて前記列車の速度を検出することを特徴とする列車の速度検出装置。
【請求項2】
前記速度発電機から送られるパルスを矩形波パルスに変換して前記サンプリング回路に送る波形変換回路をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の列車の速度検出装置。
【請求項3】
列車に搭載された速度発電機から車輪の回転に応じたパルスを発生させ、サンプリング回路により前記速度発電機から送られるパルスの立ち上がりエッジ数および立ち下がりエッジ数をサンプリング時間毎にカウントし、このサンプリング時間毎のパルス数に基づいて前記列車の速度を検出することを特徴とする列車の速度検出方法。
【請求項4】
前記速度発電機から送られるパルスを矩形波パルスに変換し、前記サンプリング回路は、前記矩形波パルスの立ち上がりエッジ数および立ち下がりエッジ数をカウントすることを特徴とする請求項3に記載の列車の速度検出方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−58059(P2012−58059A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200808(P2010−200808)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)