説明

列車乗車位置判定システム

【課題】 利用者からの要望に最も合致した経路及び列車を選択し、当該列車の乗車駅、乗換駅及び下車駅の駅設備とレイアウトを取得して当該列車の乗車位置(車両番号)を判定し、それらの情報を利用者に提供する。
【解決手段】 この列車乗車位置判定システム100は、利用者端末1から入力された入力データ(利用者の要望)を取得して配信する利用者管理配信部2と、経路及び候補列車を検索する経路・列車検索システム4と、データベース(DB)6に蓄積された乗車率データにより乗車率を予測する乗車率予測システム5と、各駅の駅設備レイアウトデータベース7と、運行経路及び候補列車の乗車率、利用者管理配信部2から配信された入力データ、及び駅設備レイアウトデータベース7から取得したデータに基づいて入力データに応じた条件を備えた最適列車及び乗車位置を判定する総合判定装置3と、を備えて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列車乗車位置判定システムに関し、さらに詳しくは、利用者からの各種要望に基づいて、電鉄車両等、不特定多数の乗降客が利用する列車の中から利用者の各種要望に合致した最適な条件を備えた列車と乗車位置(車両番号)を判定して利用者に報知する列車乗車位置判定システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から電鉄車両、その他、不特定多数の利用者が乗降する列車の利用者にとって、利用者自らの要望に沿った列車及び乗降する駅舎のレイアウトや設備についての情報(エレベータやエスカレータ等の設備の有無)を事前に知ることは、通勤、通学、出張等の移動過程において混雑時期を回避したり、移動距離を最短にして円滑な移動を促す上で非常に重要なことである。また、身体障害者や車椅子利用者にとっては、混雑した時間帯、運行経路の列車を事前に回避することができるばかりでなく、移動制約条件(例えば階段あるいはエスカレータ等を一人で利用できないこと。)を有する当事者にとって設備が充実した駅舎を事前に選択したり、駅員に移動制約条件を事前に連絡しておくことも可能となる。更に、交通事業者にとっても利用者の要望に沿った正確な情報を提供することは、安全性、乗車率の平準化、サービス向上等の点で有効な手段である。しかし、従来は利用者自らが駅に出向いて要望を交通事業者等に伝えて、担当者の知識や経験、その他の情報に基づいた主観的な予測を聞くしかなく、その情報、判断結果は必ずしも正確なものではなかった。しかも、身体障害者や車椅子利用者にとっては、駅に出掛けて担当者とコミュニケーションをとる行為そのものが必ずしも容易なことではなかった。
また、事前に車両の混雑度を報知する従来技術として特許文献1には、電車等の車両に設置されたセンサにより取得した車両混雑度を、インターネット通信回線を介して配信する車両混雑情報閲覧システムついて開示されている。
また特許文献2の従来例には、停車駅に設置される列車の各車両の重量を検出する手段と、前記各車両の種別を識別する手段および前記各手段から得られる情報を処理して各車両毎の混雑状況を算出する手段を有する車両混雑状況検出システムについて開示されている。
【特許文献1】特開2002−193102公報
【特許文献2】特開平5−142020号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に開示されている従来技術には、センサにより得られた車両混雑度をインターネットを介してクライアント端末により閲覧することが開示されているが、閲覧の結果、混雑している車両であることが判明した場合、次の車両についての情報を閲覧するためにその都度端末から入力する必要があり、煩わしいといった問題がある。
また特許文献2に開示されている従来技術は、検出システムにより得られた車両混雑状況に関する情報を、各車両単位の混雑度を示す情報に変換して乗客に対して表示すると共に、この情報を利用して統計的に処理することが開示されている。しかし、統計情報の具体的な利用方法については言及されていない。
以上の通り、従来技術では交通事業者側からの一方的な情報が報知されたり、一方的な情報を閲覧するのみで、利用者からの要望を反映することがなされていなかった。
本発明は、かかる課題に鑑み、利用者からの要望に最も合致した経路及び列車を選択すると共に、当該列車の乗車駅、乗換駅及び下車駅の駅設備とレイアウトを取得して当該列車の乗車位置(車両番号)を判定し、それらの情報を利用者に提供することにより利用者の利便性を高めた列車乗車位置判定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明はかかる課題を解決するために、請求項1は、利用者端末から入力された入力データを取得して配信する利用者管理配信部と、前記入力データに基づいて列車の運行経路及び候補列車を検索する経路・列車検索システムと、データベースに蓄積された乗車率データに基づいて前記候補列車の乗車率を予測する乗車率予測システムと、各駅のレイアウト及び設備情報を蓄積した駅設備レイアウトデータベースと、前記運行経路及び候補列車の乗車率、前記利用者管理配信部から配信された入力データ、及び前記駅設備レイアウトデータベースから取得したデータに基づいて前記入力データに応じた条件を備えた最適列車及び当該最適列車の最適乗車位置を判定する総合判定装置と、を備えたことを特徴とする。
本発明は利用者からの要望を利用者管理配信部により受信し、受信された要望は総合判定装置に配信される。総合判定装置ではその要望から希望する候補列車を経路・列車検索システムから検索して、候補列車の乗車率を乗車率予測システムにより予測する。それと共に、駅設備レイアウトデータベースから候補列車が停車する駅の設備とレイアウト情報を取得し、これらの情報と利用者の要望とを総合的に判断して利用者に最も適した列車とその乗車位置を判定するものである。
請求項2は、前記総合判定装置は、前記利用者管理配信部から配信された入力データに基づいて、前記経路・列車検索システムから利用可能な運行経路及び候補列車を検索した後、検索した候補列車の乗車率を前記乗車率予測システムから取得すると共に、前記駅設備レイアウトデータベースから乗車駅、乗換駅、及び下車駅のレイアウト及び設備情報データを取得し、当該候補列車の乗車率、前記利用者管理配信部から配信された入力データ、及び前記駅設備レイアウトデータベースから取得したデータに基づいて当該入力データに応じた条件を備えた最適列車及び当該最適列車の最適乗車位置を判定し、該判定結果を前記利用者管理配信部を介して当該利用者端末に送信することを特徴とする。
本発明の最も特徴的な点は、総合判定装置により、利用者の要望と候補列車から利用者に最適な列車と乗車位置を判定して提供する点である。即ち、総合判定装置は利用者端末から入力されたデータ(利用者の要望)から、候補となる経路と列車を選択するために経路・列車検索システムに必要なデータを与える。経路・列車検索システムは、そのデータに基づいて経路と列車を検索して、複数の候補となる経路と列車名を選択する。総合判定装置は、その経路と列車名に基づいて乗車率予測システムにより乗車率を予測させ、更に駅設備レイアウトデータベースから取得したデータと乗車率以外の利用者端末から入力されたデータとを総合的に判断して最適な列車と乗車位置を判定する。
【0005】
請求項3は、前記利用者端末からの入力データは、出発地名、最終目的地名、荷物の有無、移動制約条件及び到着希望時刻データのうちの少なくとも一つを含んでいることを特徴とする。
利用者は利用者端末から、出発地名、最終目的地名、荷物の有無、利用者が抱える移動制約条件(例えば、身体障害者であれば車椅子の有無、或いは視覚障害者であれば利用ホームまでの案内の必要性の有無等)、及び到着希望時刻が入力される。本発明はこれらのデータからシステムにとって必要なデータを選択して経路と候補車両を判定する材料とするものである。
請求項4は、前記総合判定装置は、各列車を利用したときの所要時間をtn、各列車の最短所要時間Tsに対する時間所要率をTn=tn/Ts、各列車の乗車率をCn、前記入力データから得られる利用者が要望する条件に対する時間重み係数及び乗車率重み係数をk1、k2としたとき、最適列車の総合判定Sを、前記k1、Tn、k2、Cnの関数S=f(k1、Tn、k2、Cn)により求めることを特徴とする。
本発明の総合判定装置は、最適列車を判定するために、各データ(入力データ、乗車率データ、所要時間等)に時間重み係数及び乗車率重み係数を加味して、定量的に判定する点が特徴である。そして総合判定Sとしてこの値が最小となる列車が最適列車とみなされる。
【0006】
請求項5は、前記総合判定装置は、前記最適列車の各車両毎の乗車率をCm、乗車駅での歩行距離をDa、下車駅での歩行距離をDb、前記入力データから得られる利用者が要望する条件に対する乗車率重み係数及び歩行距離率重み係数をk3、k4としたとき、最適車両の総合判定Pを、前記k3、Cm、k4、Da、Dbの関数P=f(k3、Cm、k4、Da、Db)により求めることを特徴とする。
本発明の総合判定装置は、最適車両を判定するために、各車両毎の乗車率、歩行距離に乗車率重み係数及び歩行距離率重み係数を加味して、定量的に判定する点が特徴である。そして総合判定Pとしてこの値が最小となる車両が最適列車の乗車位置とみなされる。尚、歩行距離率とは各車両乗降口から最寄の階段、エスカレータ、エレベータまでの距離の車両1台分の距離に対する比率である。
請求項6は、前記利用者端末は、パーソナルコンピュータ、携帯電話機または携帯情報端末であることを特徴とする。
利用者は利用者端末が固定的に設置された場所からデータを入力するとは限らない。そこで本発明では、利用者端末がパーソナルコンピュータに限らず、携帯電話機または携帯情報端末からのデータでも入力可とするものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、利用者からの要望を利用者管理配信部により受信し、受信された要望から希望する候補列車を経路・列車検索システムから検索して、候補列車の乗車率を乗車率予測システムにより予測し、更に駅設備レイアウトデータベースから候補列車が停車する駅の設備とレイアウト情報を取得し、これらの情報と利用者の要望から利用者に最も適した列車と乗車位置を判定するので、利用者は自分の希望に最も近い列車及びその列車の乗車位置(車両番号)を知ることができる。
また請求項2では、総合判定装置は利用者端末から入力されたデータ(利用者の要望)から、候補となる経路と列車を選択するために経路・列車検索システムに必要なデータを与え、経路・列車検索システムは、そのデータに基づいて経路と列車を検索して、複数の候補となる経路と列車名を選択する。総合判定装置は、その経路と列車名に基づいて乗車率予測システムにより乗車率を予測させ、更に駅設備レイアウトデータベースから取得したデータと乗車率以外の利用者端末から入力されたデータとを総合的に判断して最適な列車と乗車位置を判定するので、利用者の要望にそった列車とその乗車位置を提供できると共に、利用者からの要望をデータベース化して把握することにより、交通事業者にとって旅客サービスの向上に役立たせることができる。
また請求項3では、利用者端末からの入力データは、出発地名、最終目的地名、荷物の有無、移動制約条件及び到着希望時刻データのうちの少なくとも一つを含んでいるので、利用者の要望に対してきめ細かく且つ正確に対応することができる。
また請求項4では、総合判定Sを、k1、Tn、k2、Cnの関数S=f(k1、Tn、k2、Cn)により求めるので、各データから定量的に判定結果が計算され、各データを入力するだけで最適列車を数値として判断することができる。
また請求項5では、総合判定Pを、k3、Cm、k4、Da、Dbの関数P=f(k3、Cm、k4、Da、Db)により求めるので、各データから定量的に判定結果が計算され、各データを入力するだけで最適列車の乗車位置を数値として判断することができる。
また請求項6では、利用者端末は、パーソナルコンピュータ、携帯電話機または携帯情報端末であるので、利用者はどのような状況からでもデータ入力が可能となり利用者の利便性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
図1は本発明の実施形態に係る列車乗車位置判定システムの構成図である。本実施形態では電鉄車両を例にとり説明する。この列車乗車位置判定システム100は、利用者端末1から入力された入力データ(利用者の要望)を取得して配信する利用者管理配信部2と、入力データに基づいて経路及び候補列車を検索する経路・列車検索システム4と、データベース(DB)6に蓄積された乗車率データに基づいて候補列車の乗車率を予測する乗車率予測システム5と、各駅のレイアウト及び設備情報を蓄積した駅設備レイアウトデータベース7と、候補列車の乗車率、利用者管理配信部2から配信された入力データ、及び駅設備レイアウトデータベース7から取得したデータに基づいて入力データに応じた条件を備えた最適列車及び当該最適列車の乗車位置を判定する総合判定装置3と、を備えて構成される。尚、利用者端末1はパーソナルコンピュータ(PC)、携帯電話機または携帯情報端末の何れでも構わない。また、経路・列車検索システム4は例えば公知の「駅すぱあと:登録商標」等を使用しても良い。また乗車率予測システム5は、車両内の乗客数を計数し、計数された乗客数に基づいて車両単位の乗車率を算出し、その乗車率データをデータベース6に蓄積して、このデータベース6に蓄積された乗車率データに基づいて対象列車の乗車率を予測するものであればどのようなシステムでも構わない。
本発明は利用者からの要望を利用者管理配信部2により受信し、受信された要望は総合判定装置3に配信される。総合判定装置3ではその要望から希望する候補列車を経路・列車検索システム4から検索して、候補列車の乗車率を乗車率予測システム5により予測する。それと共に、駅設備レイアウトデータベース7から候補列車が停車する駅の設備とレイアウト情報を取得し、これらの情報と利用者の要望とを総合的に判断して利用者に最も適した列車とその乗車位置を判定するものである。
【0009】
図2は本発明の列車乗車位置判定システムの動作を説明するフローチャートである。まず車両選択を希望する利用者が、利用者端末1から要望するデータを入力する(S1)。そのデータは利用者管理配信部2により受信され、例えばメモリに一旦記憶される。そして、利用者端末1からの入力が終了すると、メモリに記憶されたデータを総合判定装置3に配信する(S2)。尚、メモリに記憶しないで入力データを適宜、総合判定装置3に配信しても良い。次に総合判定装置3は配信されたデータから経路・列車検索システム4をアクセスして該当する経路及び列車を検索する(S3)。このとき該当する経路及び列車が、最も要望に近い順に複数の候補を挙げるようにする。そして、候補に挙がった列車に対応する乗車率を検索するため、乗車率予測システム5をアクセスして候補に挙がった列車の乗車率を計算する(S4)。次に駅設備レイアウトデータベース7から乗車駅、乗り換え駅、下車駅の設備とレイアウト情報を取得する(S5)。次に列車の乗車率、乗車駅、乗り換え駅、下車駅の設備とレイアウト情報及び利用者の入力データとを総合的に判断して利用者に最適な経路及び列車とその乗車位置を判定する(判定方法は後述する)(S6)。そして判定された最適な経路及び列車データとその乗車位置を利用者管理配信部2に送信する(S7)。利用者管理配信部2では受信した最適な経路及び列車データとその乗車位置を利用者端末1に送信する(S8)。
このように本発明の最も特徴的な点は、総合判定装置3により、利用者の要望と候補列車から利用者に最適な列車と乗車位置を判定して提供する点である。即ち、総合判定装置3は利用者端末1から入力されたデータ(利用者の要望)から、候補となる経路と列車を選択するために経路・列車検索システム4に必要なデータを与える。経路・列車検索システム4は、そのデータに基づいて経路と列車を検索して、複数の候補となる経路と列車名を選択する。総合判定装置3は、その経路と列車名に基づいて乗車率予測システム5により乗車率を予測させ、更に駅設備レイアウトデータベース7から取得したデータと乗車率以外の利用者端末から入力されたデータとを総合的に判断して最適な列車と乗車位置を判定するものである。
また利用者は利用者端末1から、出発地名、最終目的地名、荷物の有無、利用者が抱える移動制約条件(例えば、身体障害者であれば車椅子の有無、或いは視覚障害者であれば利用ホームまでの案内の必要性の有無等)、及び到着希望時刻等が入力される。本発明はこれらのデータからシステムにとって必要なデータを選択して経路と候補列車を判定する材料とするものである。尚、利用者は利用者端末1が固定的に設置された場所からデータを入力するとは限らない。そこで、利用者端末1がパーソナルコンピュータに限らず、携帯電話機または携帯情報端末からのデータでも入力可とするものである。
【0010】
図3は本発明の総合判定装置3による総合判定アルゴリズムの一例を説明する図である。横軸に利用者条件10、所要時間11、乗車率12、歩行距離13、判定基準14を示す。また、縦軸には利用者条件10として、「急ぐ」、「普通」、「ゆっくり」、「子供連れ」、「車椅子利用または大きな荷物有り」が示される。この例では5項目であるが、これより多くても少なくても構わない。例えば、利用者条件10が「急ぐ」の場合、判定基準14は「どんなに混んでも最短の列車を選択。歩行距離も最短」であるので、所要時間11は「最短」、乗車率12は「無視」、歩行距離13は「最短」が判定の条件として選択される。また利用者条件10が「車椅子利用または大きな荷物有り」の場合、判定基準13は「制限内の時間で、無理なく乗車できることが絶対条件。更にエレベータ、エスカレータ近くが望ましい」であるので、所要時間11は「制限内なら無視」、乗車率12は「絶対」、歩行距離13は「エレベータ、エスカレータ近く」が判定の条件として選択される。以下、同様に利用者条件10の条件に基づいて所要時間11、乗車率12、歩行距離13、判定基準14が決定される。
図4は図3の総合判定アルゴリズムを第1ステップ(列車の選択)と第2ステップ(車両の選択)に分解したときの判定基準を示す図である。例えば、利用者条件10が「急ぐ」の場合、第1ステップ(列車の選択)は「所要時間最短の列車を選択」であり、第2ステップ(車両の選択)は「選択した列車で歩行距離最短の車両を選択」が判定の条件として選択される。また利用者条件10が「車椅子利用または大きな荷物有り」の場合、第1ステップ(列車の選択)は「制限時間内で乗車率一定以下且つエレベータ、エスカレータへの歩行距離が一定値以下の最も早い列車を選択」であり、第2ステップ(車両の選択)は「選択した列車の車両の中で最もエレベータ、エスカレータに近い車両を選択」が判定の条件として選択される。以下、同様に利用者条件10の条件に基づいて第1ステップ(列車の選択)と第2ステップ(車両の選択)が決定される。
図5は本発明の実施例として、A駅からB駅まで旅行する場合を想定した列車、車両、所要時間(tn)、時間所要率(Tn)、乗車率(Cnm)、A駅歩行距離率(Da1)(Da2)、B駅歩行距離率(Db1)(Db2)の一例である。本実施例では説明を簡略化するために、各列車は3両編成とし、A駅、B駅に停車した際の車両と駅設備(本例ではエレベータ、エスカレータとする)との位置関係を表中の図の通りとする。
図6は図4の判定基準をさらに具体的に数値化するための判定基準を表す図である。尚、表中に記載されている図7の参照符号は、図7で説明する計算値或いは判定基準を用いて計算することを表している。従って、総合判定装置3は図6の判定アルゴリズムに基づいて図7の計算式或いは判定基準により総合判定するものである。
【0011】
図7(a)は最適列車を選択するために、利用者条件10における「急ぐ」「普通」「ゆっくり」の各条件ごとの時間重み係数20、乗車率重み係数21、評価値22を表にした図である。尚、各列車を利用したときの所要時間をtn、各列車の最短時間に対する時間所要率をTn(Tn=tn/Ts:但しTsは最短時間)、各列車の最小乗車率をCn、時間重み係数20をk1、乗車率重み係数21をk2としたとき、評価値Sは、k1、Tn、k2、Cnの関数S=f(k1、Tn、k2、Cn)例えば、S=k1・Tn+k2・Cn・・・(1)、により求めることができる。
例えば、利用者条件10が「急ぐ」の場合、図3より所要時間11は「最短」であるので、時間重み係数14はk1=1.0となる。また乗車率12はこの場合「無視」であるので、乗車率重み係数21はk2=0となり、その結果、評価値Sは(1)式よりS=Tnとなる。即ち、利用者条件10が「急ぐ」の場合は、時間所要率Tnのみが判定の規準となる。
これに対して、利用者条件10が「ゆっくり」の場合、図3より所要時間11は「多少考慮」であるので、時間重み係数20はk1=0.3となる。また乗車率12はこの場合「重視」であるので、乗車率重み係数21はk2=0.7となり、その結果、評価値Sは(1)式よりS=0.3Tn+0.7Cnとなる。即ち、利用者条件10が「ゆっくり」の場合は、時間所要率Tnが30%の比率で判定の規準となり、乗車率Cnが70%の比率で判定の規準となる。
以上のとおり本発明の総合判定装置3は、各データ(入力データ、乗車率データ、所要時間等)に時間重み係数20及び乗車率重み係数21を加味して、定量的に判定する点が特徴である。そして評価値Sとしてこの値が最小となる列車が最適列車とみなされる。
【0012】
図7(b)は車両位置を選択するために、利用者条件10における「急ぐ」「普通」「ゆっくり」の各条件ごとの乗車率重み係数23、歩行距離率重み係数24、評価値25を表にした図である。尚、各列車の各車両ごとの乗車率をCm、乗車率重み係数23をk3、歩行距離率重み係数24をk4としたとき、評価値Pは、k3、Cm、k4、Da、Dbの関数P=f(k3、Cm、k4、Da、Db)例えば、P=k3・Cm+k4・(Da1+Db1)・・・(2)、により求めることができる。
例えば、利用者条件10が「急ぐ」の場合、図3より乗車率12はこの場合「無視」であるので、乗車率重み係数23はk3=0となり、歩行距離13はこの場合「最短」であるので、歩行距離率重み係数24はk4=1.0となり、その結果、評価値Pは(2)式よりP=Da1+Db1となる。即ち、利用者条件10が「急ぐ」の場合は、A駅とB駅の歩行距離が判定の規準となる。
これに対して、利用者条件10が「ゆっくり」の場合、図3より乗車率12はこの場合「重視」であるので、乗車率重み係数23はk3=1.0となり、歩行距離13はこの場合「多少考慮」であるので、歩行距離率重み係数24はk4=0となり、その結果、評価値Pは(2)式よりP=Cmとなる。即ち、利用者条件10が「ゆっくり」の場合は、各列車の各車両ごとの乗車率のみが判定の規準となる。
以上のとおり本発明の総合判定装置3は、各データ(入力データ、乗車率データ、所要時間等)に乗車率重み係数23及び歩行距離率重み係数24を加味して、定量的に判定する点が特徴である。そして評価値Pとしてこの値が最小となる車両が乗車位置とみなされる。
図7(c)は車両位置を選択するために、利用者条件が「子供連れ」の場合の第1ステップの判定基準である。即ち、乗車率Cnm<0.8である車両を持つ列車の内、最も所要時間が短く、かつ所要時間tn<Tnである列車を選択する。ただし、該当列車が存在しない場合は、tn<Tnである列車の内、最も混雑率の低い車輌を持つ列車を選択する。
【0013】
図7(d)は車両位置を選択するために、利用者条件が「子供連れ」の場合の第2ステップの判定基準である。即ち、図7(c)で選択された列車で混雑率Cnm<0.8である車輌の内、歩行距離率合計Da1+Db1が最小である車輌を選択する。ただし、図7(c)で該当列車が存在しない場合は、最も混雑率の低い車輌を選択する。
図7(e)は車両位置を選択するために、利用者条件が「車椅子利用または大きな荷物有り」の場合の第1ステップの判定基準である。即ち、混雑率Cnm<0.8で且つエレベータ/エスカレータへの歩行距離率(Da2+Db2)<2である車両を持つ列車の内、最も所要時間が短く、かつ所要時間tn<Tnである列車を選択する。ただし、該当列車が存在しない場合は、tn<Tnである列車の内、最も混雑率の低い車輌を持つ列車を選択する。
図7(f)は車両位置を選択するために、利用者条件が「車椅子利用または大きな荷物有り」の場合の第1ステップの判定基準である。即ち、図7(e)で選択された列車で混雑率Cnm<0.8である車輌の内、エスカレータ/エレベータへの歩行距離率合計Da2+Db2が最小である車輌を選択する。ただし、図7(e)で該当列車が存在しない場合は、最も混雑率の低い車輌を選択する。
【0014】
図8は図5の実施例に基づいて、各利用者条件ごとに列車と車両を判定した一例を示す図である。例えば、利用者条件が「急ぐ」の場合、第1ステップは図6から「所要時間Tnの最小である列車を選択」するために、図7(a)により計算する。このときの評価値S=Tnであるので、図5からTnが最小の値となる列車を選択すると、列車a1のTn=1.0が最小であることがわかる。その結果、判定は「列車a1」となる。次に第2ステップは図6から「選択した列車(a1)の歩行距離率(Da1+Db1)の最小である車両を選択」するために、図7(b)により計算する。このときの評価値P=Da1+Db1であるので、図5からDa1+Db1が最小の値を選択すると、1号車と2号車のDa1+Db1=3が最小であることがわかる。その結果、判定は「1号車あるいは2号車」となる。
また、利用者条件が「ゆっくり」の場合、第1ステップは図6から「乗車率の低い列車を選択」するために、図7(a)により計算する。このときの評価値S=0.3Tn+0.7Cnであるので、図5からSが最小の値となる列車選択すると、列車a2のS=0.94が最小であることがわかる。その結果、判定は「列車a2」となる。次に第2ステップは図6から「選択した列車(a2)で乗車率の低い車両を選択」するために、図7(b)により計算する。このときの評価値P=Cmであるので、図5からCmが最小の値を選択すると、2号車のCm=0.7が最小であることがわかる。その結果、判定は「2号車」となる。
以下、同様にして利用者条件10が「普通」、「子供連れ」、「車椅子利用または大きな荷物有り」についても計算され、それぞれ列車とその列車の車両位置が決定される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る列車乗車位置判定システムの構成図である。
【図2】本発明の列車乗車位置判定システムの動作を説明するフローチャートである。
【図3】本発明の総合判定装置3による総合判定アルゴリズムの一例を説明する図である。
【図4】図3の総合判定アルゴリズムを第1ステップ(列車の選択)と第2ステップ(車両の選択)に分解したときの判定基準を示す図である。
【図5】本発明の実施例として、A駅からB駅まで旅行する場合を想定した列車、車両、所要時間(tn)、時間所要率(Tn)、乗車率(Cnm)、A駅歩行距離率(Da1)(Da2)、B駅歩行距離率(Db1)(Db2)の一例を示す図である。
【図6】図4の判定基準をさらに具体的に数値化するための判定基準を表す図である。
【図7】本発明の詳細な判定基準を説明する図である。
【図8】図5の実施例に基づいて、各利用者条件ごとに列車と車両を判定した一例を示す図である。
【符号の説明】
【0016】
1 利用者端末、2 利用者管理配信部、3 総合判定装置、4 経路・列車検索システム、5 乗車率予測システム、6 データベース、7 駅設備・レイアウトデータベース、100 列車乗車位置判定システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者端末から入力された入力データを取得して配信する利用者管理配信部と、前記入力データに基づいて列車の運行経路及び候補列車を検索する経路・列車検索システムと、データベースに蓄積された乗車率データに基づいて前記候補列車の乗車率を予測する乗車率予測システムと、各駅のレイアウト及び設備情報を蓄積した駅設備レイアウトデータベースと、前記運行経路及び候補列車の乗車率、前記利用者管理配信部から配信された入力データ、及び前記駅設備レイアウトデータベースから取得したデータに基づいて前記入力データに応じた条件を備えた最適列車及び当該最適列車の最適乗車位置を判定する総合判定装置と、を備えたことを特徴とする列車乗車位置判定システム。
【請求項2】
前記総合判定装置は、前記利用者管理配信部から配信された入力データに基づいて、前記経路・列車検索システムから利用可能な運行経路及び候補列車を検索した後、検索した候補列車の乗車率を前記乗車率予測システムから取得すると共に、前記駅設備レイアウトデータベースから乗車駅、乗換駅、及び下車駅のレイアウト及び設備情報データを取得し、
当該候補列車の乗車率、前記利用者管理配信部から配信された入力データ、及び前記駅設備レイアウトデータベースから取得したデータに基づいて当該入力データに応じた条件を備えた最適列車及び当該最適列車の最適乗車位置を判定し、該判定結果を前記利用者管理配信部を介して当該利用者端末に送信することを特徴とする請求項1に記載の列車乗車位置判定システム。
【請求項3】
前記利用者端末からの入力データは、出発地名、最終目的地名、荷物の有無、移動制約条件及び到着希望時刻データのうちの少なくとも一つを含んでいることを特徴とする請求項1または2に記載の列車乗車位置判定システム。
【請求項4】
前記総合判定装置は、各列車を利用したときの所要時間をtn、各列車の最短所要時間Tsに対する時間所要率をTn=tn/Ts、各列車の乗車率をCn、前記入力データから得られる利用者が要望する条件に対する時間重み係数及び乗車率重み係数をk1、k2としたとき、最適列車の総合判定Sを、前記k1、Tn、k2、Cnの関数S=f(k1、Tn、k2、Cn)により求めることを特徴とする請求項1、2または3に記載の列車乗車位置判定システム。
【請求項5】
前記総合判定装置は、前記最適列車の各車両毎の乗車率をCm、乗車駅での歩行距離をDa、下車駅での歩行距離をDb、前記入力データから得られる利用者が要望する条件に対する乗車率重み係数及び歩行距離率重み係数をk3、k4としたとき、最適車両の総合判定Pを、前記k3、Cm、k4、Da、Dbの関数P=f(k3、Cm、k4、Da、Db)により求めることを特徴とする請求項1、2または3に記載の列車乗車位置判定システム。
【請求項6】
前記利用者端末は、パーソナルコンピュータ、携帯電話機または携帯情報端末であることを特徴とする請求項1、2または3に記載の列車乗車位置判定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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