説明

列車位置検知装置

【課題】 列車の位置を検知する情報の確定タイミングを早くすることを達成する。
【解決手段】 図1に示すように、制御部8は送受信部11と演算部10内に設定されて
いる回数判定部10aと受信強度判定部10bが接続され、回数判定部10aと位置情報
確定部10cが接続され、受信強度判定部10bと切り替えスイッチ10dを介して位置
情報確定部10cが接続されている。
切り替えスイッチ10dは送受信部11から入力される“低速”の速度情報で、OFF状
態になる。その場合、地上子情報は回数判定部10aでのみ確定される。回数判定部10
aでの判定回数を第三回目の受信16cにすることで位置情報が第三回目の受信16cで
確定することで、従来よりも早い地上子情報の確定タイミングを実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列車位置検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図4は、従来の列車地位検知装置の全体構成図である。図5は、従来の列車位置検知装
置の制御ブロック図である。図6は、従来の地上子の検知範囲と位置情報確定条件の図で
ある。図を参照して、以下に一般的な車両と列車位置検知装置の仕組みについて説明する

【0003】
一般的な列車は図4に示すように、パンタグラフ1が車体2の上部に設置される。また、
車体2の底部に車上子3が取り付けられ、底部に取り付けた台車を介して車輪4が取り付
けられている。レール6の間に地上子7が取り付けられ、台車に設置されている電動機に
は速度発電機5が取り付けられる。車体2に載せられる制御部9は車上子3と速度発電機
5と接続される送受信部11と、送受信部11と接続される演算部10と、演算部10と
接続されるメモリ9と、演算部10と接続される指令出力・実行入力部12があり、その
指令出力・実行入力部12はブレーキ出力・力行出力13と接続される。
【0004】
図5に、演算部10を示した。図5に示すように、送受信部11と演算部10の受信強度
判定部10bと回数判定部10aが接続され、受信強度判定部10bと回数判定部10a
が位置情報確定部10cと接続される。位置情報確定部10cには条件判定部10eが内
蔵されている。
【0005】
車上子3は地上子7から送られる位置情報を送受信部11に入力する。速度発電機5は電
動機の回転数を検出し、速度情報としてデータを得る。その速度情報は速度発電機5から
送受信部11に入力される。送受信部11で受信された位置情報と速度情報は、演算部1
0に送られる。
【0006】
演算部10で出力される位置情報と、メモリ9が所持する運転パターンや路線情報を組み
合わせることで、指令出力・実行出力部12からブレーキ出力・力行出力13の指令が出
される。
【0007】
演算部10内で、送受信部11から位置情報と速度情報が入力される回数判定部10aと
受信強度判定部10bの動作を以下に示す。
【0008】
図6は、車上子3が地上子7を通り過ぎる際に受けとる、地上子7の検知範囲(X)と受
信強度(Y)である。図5を使用して、回数判定部10aと受信強度判定部10bの、情
報確定条件を以下に示す。
【0009】
車上子3と地上子7の送受信範囲は受信強度α14から受信強度β15の間で、凸型にな
っている。その送受信範囲において、車上子3が地上子7の上を通過する際に最初に受け
取るのが第一回目の受信16aである。次に受け取るのが第二回目の受信16bである。
次に受け取るのが第三回目の受信16cで、その次に受けるのが第四回目の受信16dで
、最後に第五回目の受信16eを受けて車上子3が地上子7を通り抜けることになる。
【0010】
回数判定部10aでは、第一回目の受信16aと第二回目の受信16bと第三回目の受信
16cと第四回目の受信16dと第五回目の受信16eを検知したことで受信情報を確定
する条件が満たされとし、位置情報確定部10cに情報が確定されたことを示すフラグ「
1」を入力する。この際に、回数判定部10aへの入力が、第一回目の受信16aまたは
、第二回目の受信16b、第三回目の受信16c、第四回目の受信16dで途絶えた場合
、情報が確定できなかったことを示すフラグ「0」が位置情報確定部10c入力される。
【0011】
受信強度判定部10bは、受信強度の傾きが負の値になってから、受信強度が受信強度β
15よりも低くなったことを検知する。この検知を受信したことにより、入力された位置
情報が確定される。受信強度判定部10bで位置情報が確定されたことで、受信強度判定
部10bは位置情報確定部10cへフラグ「1」を入力する。
【0012】
位置情報確定部10cの条件判定部10eでは、回数判定部10aと受信強度判定部10
bからの「1」がそろった場合、受け取った位置情報をもとに、位置情報確定部10cに
入力された位置情報の受信を確定する。最終的に位置情報確定部10cは、条件判定部1
0eで確定した位置情報をもとに列車の位置を確定する。
【0013】
一例として、所定の受信強度以上で情報の確定を行い、定点停止位置への停止を確実に行
っているものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2005−206102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら上記の発明において、列車が“低速”で運行している場合、回数判定部と
受信強度判定部の両方から位置情報の受信受けて確定を行うと、位置情報の確定タイミン
グは、列車が“高速”で運行している場合よりも遅くなる。特に、駅での停止を予定して
いる列車で位置情報の確定タイミングが遅くなると、停止までの残距離が短くなるため、
正確に定点停止位置に停止することが出来なくなる。
【0016】
そこで、本発明は低速領域において位置情報の確定タイミングを早めることを可能とす
る列車位置検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記を解決するために、本発明による列車位置検知装置は、車体に備えられ、地上子と情
報の送受信を行う車上子と、前記車体に取り付けられ、電動機の回転数を検知する速度検
出手段と、前記車上子が受け取った地上子情報と、前記速度検出手段で検出した速度情報
を受信する送受信部と、前記送受信部から前記速度情報と前記地上子情報を送受信し、受
信した前記速度情報により前記列車が高速で走行中か、低速で走行中かの判断に基づき、
前記列車の位置確定方法を変更し、受信した前記地上子情報より前記列車の位置の確定を
行う演算部を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、低速領域で早く正確な位置情報の確定ができるので、制御精度をより
向上させることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0020】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態の列車構成図である。パンタグラフ1が車体2の上部に設置される。
また、車体2の底部に車上子3が取り付けられ、底部に台車を介して車輪4が取り付けら
れている。レール6の間に地上子7が取り付けられ、台車に設置されている電動機には速
度発電機5が取り付けられる。車体2に載せられる制御部9は車上子3と速度発電機5と
接続される送受信部11と、送受信部11と接続される演算部10と、演算部10と接続
されるメモリ9と、演算部10と接続される指令出力・実行入力部12があり、その指令
出力・実行入力部12はブレーキ出力・力行出力13と接続される。
【0021】
車上子3は地上子7から送られる位置情報を送受信部11に入力する。速度発電機5は電
動機の回転数を検出し、速度情報としてデータを得る。その速度情報は速度発電機5から
送受信部11に入力される。送受信部11で受信された位置情報と速度情報は、演算部1
0に送られる。
【0022】
演算部10で出力される地上子情報と、メモリ9が所持する運転パターンや路線情報を組
み合わせることで、指令出力・実行出力部12からブレーキ出力・力行出力13の指令が
出される。
【0023】
図2は、本発明の第1の実施形態における列車位置検知装置の制御ブロック図である。図
2に示すように、送受信部11と演算部10内に設定されている回数判定部10aと受信
強度判定部10bが接続され、回数判定部10aと位置情報確定部10cが接続され、受
信強度判定部10bと切り替えスイッチ10dを介して条件判定部10eを内蔵する位置
情報確定部10cが接続されている。
【0024】
切り替えスイッチ10dは、速度発電機5から検出される速度情報に基づいた速度信号に
よってスイッチの開閉を操作している。“高速”の速度情報が切り替えスイッチ10dに
入力されると、切り替えスイッチ10dのスイッチが閉じる。そのことにより、位置情報
確定部10cと受信強度判定部10b間の接続をON状態にする。また、“低速”の速度情
報が切り替えスイッチ10dに入力されると、切り替えスイッチ10dのスイッチを開く
。そのことにより、位置情報確定部10cと受信強度判定部10b間の接続をOFF状態に
する。以下に演算部10内の地上子情報と速度情報の取扱い動作を説明する。
【0025】
図6は、車上子3が地上子7を通り過ぎる際に受けとる、地上子7の検知範囲(X)と受
信強度(Y)である。図5を使用して、回数判定部10aと受信強度判定部10bの、情
報確定条件を以下に示す。
【0026】
車上子3と地上子7の送受信範囲は受信強度α14(受信強度判定値)から受信強度β1
5の間で、凸型になっている。その送受信範囲において、車上子3が地上子7の上を通過
する際に最初に受け取るのが第一回目の受信16a(回数判定値)である。次に受け取る
のが第二回目の受信16bである。さらに、第三回目の受信16c、第四回目の受信16
dを受け取り、最終的に第五回目の受信16eを受けてから、車上子3が地上子7を通り
抜けることになる。
【0027】
以下に、送受信部11から切り替えスイッチ10dに“高速”の速度情報が入力され、切
り替えスイッチ10dがONになる場合について詳細な説明をする。
【0028】
回数判定部10aでは、第一回目の受信16aと第二回目の受信16bと第三回目の受信
16cと第四回目の受信16dと第5回目の受信16fを検知したことで受信情報を確定
する条件が満たされとし、位置情報確定部10cに情報が確定されたことを示す回数判定
信号がフラグ「1」として入力される。
【0029】
受信強度判定部10bは、受信強度が受信強度β15から連続して降下したことを検知す
ることで受信した地上子情報を確定する条件を持つとする。受信強度判定部は、その条件
が満たされた時、位置情報確定部10cへフラグ「1」を入力する。
【0030】
位置情報確定部10cの条件判定部10eでは、回数判定部10aと受信強度判定部10
bからの受信強度信号であるフラグ「1」がそろった場合、受け取った位置情報をもとに
、現在の列車の位置を確定する。
【0031】
次に、送受信部11から切り替えスイッチ10dに“低速”の速度情報が入力され、切り
替えスイッチ10dがOFFになる場合について詳細な説明をする。
【0032】
切り替えスイッチ10dがOFFになると、位置情報確定部10cとは回数判定部10a
のみが接続された状態になる。また、その時、回数判定部10aは、第三回目の受信16
cを検知したことで地上子情報を確定する条件が満たされとし、位置情報確定部10cに
フラグ「1」を入力する。
【0033】
位置情報確定部10cの条件判定部10eは、切り替えスイッチのOFFと、回数判定部
10aからのフラグ「1」がそろったことを条件に、地上子情報を受信する。
【0034】
最終的に位置情報確定部10cは受信した地上子情報をもとに、現在の列車の位置を確定
する。
【0035】
本実施形態の速度情報による切り替えスイッチ10dの切り替えを行わない場合について
以下に説明する。
【0036】
まず、回数判定部10aと受信強度判定部10bで地上子情報を確定する場合である。高
速領域では、地上子7と車上子3がすれ違う時間が短いため、判定タイミングにずれが生
じない。しかし、低速領域の場合、受信強度判定が十分とれるのが回数判定よりも遅いた
め、受信強度判定部10bから位置情報確定部10cに入力されるフラグ「1」を待つこ
とになる。
【0037】
以上のことから、列車の位置情報の受信を、受信強度β15と第五回目の受信16eまで
待つことなく、第三回目の受信16cで確定することが可能となるため、より早く列車の
位置検知が可能となる。
【0038】
つまり、所定の速度以下の低速領域では、より早い位置情報をすることで、制御動作時間
を確保し、制御精度を向上させることが可能となる。
【0039】
また本発明の回数判定部10aで使用される設定受信回数は、本実施形態に限定されな
い。
【0040】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、第1の実施形態と、速度発電機5の速度情報を受信強度判定部10
bに入力することが異なっている。以下にその点について詳細に述べる。
【0041】
図3は、本発明の第2の実施形態における列車位置検知装置の制御ブロック図である。
【0042】
従来例や第1の実施形態で使用される受信強度β15を第一の受信強度とし、受信強度β
15よりも高い、所定の受信強度α14を第二の受信強度とする。
【0043】
本実施形態では、送受信部11から受信強度判定部10bに速度情報が入力される。入力
された速度情報が所定の速度以上の場合、受信強度判定部10bが検知する受信強度は第
一の受信強度となる。第一の受信強度を検知した受信強度判定部10bと、所定の回数を
判定した回数判定部10aからのフラグ「1」が条件判定部10eに入力されたことによ
り、位置情報確定部10cで列車の位置情報の確定が行われる。
【0044】
入力された速度情報が所定の速度以下では、受信強度判定部10bが検知する受信強度は
第二の受信強度(>第一の受信強度)となる。第二の受信強度を検知した受信強度判定部
10bと回数判定部10aからのフラグ「1」が条件判定部10eに入力されたことによ
り、位置情報確定部10cで列車の位置情報の確定が行われる。
【0045】
本実施形態の速度情報による切り替えスイッチ10dの切り替えを行わない場合について
以下に説明する。
【0046】
回数判定部10aと第一の受信強度の受信強度判定部10bで地上子情報を確定する場合
である。
【0047】
高速領域では、地上子7と車上子3がすれ違う時間が短いため、判定タイミングにずれが
生じない。しかし、低速領域の場合、受信強度判定が十分とれるのが回数判定よりも遅い
ため、受信強度判定部10bから位置情報確定部10cに入力されるフラグ「1」を待つ
ことになる。
【0048】
以上から、地上子情報の確定タイミングを早めながら、回数判定部10aと受信強度判定
部10bの両方からの地上子情報を取得することが可能である。つまり、早い段階でより
正確な位置情報の受信を確定することできる。そのため、制御動作時間を確保し、制御精
度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】従来の車体の列車位置検知装置の全体構成図。
【図2】本発明の第1の実施形態における列車位置検知装置の制御ブロック図。
【図3】本発明の第2の実施形態における列車位置検知装置の制御ブロック図。
【図4】従来の車体の列車位置検知装置の全体構成図。
【図5】従来の列車位置検知装置の制御ブロック図。
【図6】従来の地上子の検知範囲と位置情報確定条件図。
【符号の説明】
【0050】
1 パンタグラフ
2 車体
3 車上子
4 車輪
5 速度発電機
6 レール
7 地上子
8 制御部
9 メモリ
10 演算部
10a 回数判定部
10b 受信強度判定部
10c 位置情報確定部
10d 切り替えスイッチ
10e 条件判定部
11 送受信部
12 指令出力・実行入力部
13 ブレーキ出力・力行出力
14 受信強度α
15 受信強度β
16a 第一回目の受信
16b 第二回目の受信
16c 第三回目の受信
16d 第四回目の受信
16e 第五回目の受信

【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車の位置情報を含む地上子情報を地上子から受け取り、車体に取り付けられた車上子と

前記車体に取り付けられ、電動機の回転数をもとに速度情報を検出する速度検出手段と、
前記車上子が受け取った地上子情報と、前記速度検出手段で検出した速度情報を受信する
送受信部と、
前記送受信部から前記速度情報と前記地上子情報を受信し、受信した前記速度情報により
列車が高速で走行中か、低速で走行中かを判断し、この判断に基づき、列車の位置確定方
法を選択し、前記地上子情報に基づき、列車の位置の確定を行う演算部
を備えたことを特徴とする列車位置検知装置
【請求項2】
前記演算部は、
前記送受信部を介して前記車上子が前記地上子から受け取った前記地上子情報の回数が所
定の回数以上か否かを検知する回数判定部と、
前記送受信部から受信する前記地上子情報の受信強度が所定値以上になったことを検知す
る受信強度判定部と、
前記速度情報が所定値以上の場合には、前記回数判定部で検知した回数判定値と前記受信
強度判定部で検知した受信強度判定値に基づいた前記地上子情報より列車の位置の確定を
行い、
前記速度情報が所定値未満の場合には、前記回数判定部で検知した前記回数判定値に基づ
いた前記地上子情報より 列車の位置の確定を行う位置情報確定部
を備えたことを特徴する前記請求項1記載の列車位置検知装置。
【請求項3】
前記演算部において、
前記受信強度判定部と前記位置情報確定部の間に切り替えスイッチを有し、
前記速度情報が所定値以下の場合、前記切り替えスイッチは開き、前記速度情報が所定値
未満の場合、前記切り替えスイッチは閉じることを特徴とする前記請求項2記載の列車位
置検知装置
【請求項4】
前記演算部において、
前記送受信部を介して前記車上子が前記地上子から受け取った前記地上子情報の回数が所
定の回数以上か否かを検知する回数判定部と、
前記送受信部から受信する前記地上子情報の受信強度が、
前記速度情報が所定値以上である場合に、前記送受信部から受信する前記地上子情報の受
信強度が第一の所定値以上になったことを検知し、
前記速度情報が所定値未満である場合に、前記送受信部から受信する前記地上子情報の受
信強度が第二の所定値以上になったことを検知する受信強度判定部と、
前記回数判定部から前記位置情報確定部に入力される前記地上子情報と、前記受信強度判
定部から前記位置情報確定部に入力される前記地上子情報を合わせて列車の位置の確定を
行うことを特徴とする前記請求項1記載の列車位置検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−247712(P2010−247712A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100337(P2009−100337)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】