説明

列車制御システム

【課題】制御区間内における各列車を確実に制御することができ、保安機能による停止制御などを防止して、旅客サービスの向上を図ることのできる列車制御システムを提供する。
【解決手段】地上装置6により、車上無線機と沿線無線機5との間における無線の伝播時間に基づいて、制御区分内の列車位置を検知するとともに、自己の制御区分内において、管理可能列車台数に達したか、あるいは、達する可能性があると判断した場合には、管理可能列車台数に達する制御区分に隣接する制御区分に設置された地上装置6は、当該制御区分に向かって走行する予定の列車2が駅8に停車中の場合は、制御区分の境界を通過する予定の列車2を駅8で待機させて出発させないように抑止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は列車制御システムに係り、特に、無線測距を利用して列車の位置検出を行って列車の制御を行うようにした列車制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、いわゆる無線測距方式を利用した列車制御システムは、列車に車上無線機を搭載し、その列車の走行する軌道の沿線に沿って設置された複数の沿線無線機との間で無線ネットワークを形成し、車上無線機の車上アンテナと沿線無線機の沿線アンテナとの無線伝搬遅延(時間)を計測して列車位置を検知し、その検知された列車位置に基づいて列車制御を行うようになっている。
【0003】
そして、このような無線測距方式を利用した列車制御システムとしては、従来から、例えば、所定の軌道を走行する列車に搭載された車上無線機および地上の所定位置に設けられた地上無線機間の無線の伝播時間に基づいてその所定の軌道における列車位置を検知する無線列車位置検知手段と、列車の車軸に接続された速度発電機の出力信号に基づいて所定の軌道における列車の走行距離を算出する走行距離算出手段と、無線列車位置検知手段で検知された列車位置を所定の仮基準位置に設定する仮基準位置設定手段と、その仮基準位置設定手段で設定された仮基準位置から走行距離算出手段で算出された走行距離に基づいて所定の軌道における列車位置を検知する列車位置検知算出手段とを備えた技術が開示されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−331629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の技術においては、通常、鉄道路線を複数の制御区分に分割し、各制御区間ごとに管理する沿線無線機が設定されており、これら各制御区間の沿線無線機を制御する地上装置は、その制御区間内で管理するすべての列車に対して通信時機や周波数などの通信資源を割り当てるようになっている。そして、1つの制御区間内において、通信資源を割り当てることができる列車の台数には制限があるという問題を有している。そのため、列車が管理可能列車台数を超えて制御区間に進入した場合には、当該列車に対して通信資源を割り当てることができなくなってしまい、当該列車を制御することができないことから、当該列車が保安機能により停止制御されてしまうという問題を有している。
【0006】
また、制御区分が駅間に設定されている場合、管理可能列車台数を超えないようにするためには、制御区分の手前で停車せざるを得ず、旅客サービスの低下を招くとともに、例えば、架線エアセクションに停車させてしまうと、架線の損傷を招いてしまうという問題をも有している。
【0007】
本発明は前記した点に鑑みてなされたものであり、制御区間内における各列車を確実に制御することができ、保安機能による停止制御などを防止して、旅客サービスの向上を図ることのできる列車制御システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前記目的を達成するために、請求項1の発明に係る列車制御システムは、所定の軌道を走行する列車に搭載された車上無線機と、
地上の所定位置に設けられた沿線無線機と、
前記軌道に設定された制御区分ごとに設置されるとともに、前記制御区分に属する前記沿線無線機に送受信可能に接続された地上装置と、
を備え、
前記地上装置は、前記車上無線機と前記沿線無線機との間における無線の伝播時間に基づいて、前記制御区分内の列車位置を検知するとともに、自己の制御区分内において、管理可能列車台数に達したか、あるいは、達する可能性があると判断した場合には、管理可能列車台数に達する制御区分に隣接する制御区分に設置された地上装置は、当該制御区分に向かって走行する予定の列車が駅に停車中のときは、前記制御区分の境界を通過する予定の列車を前記駅で待機させて出発させないように抑止することを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、所定の軌道を走行する列車に搭載された車上無線機と、
地上の所定位置に設けられた沿線無線機と、
前記軌道に設定された制御区分ごとに設置されるとともに、前記制御区分に属する前記沿線無線機に送受信可能に接続された地上装置と、
を備え、
前記地上装置は、前記車上無線機と前記沿線無線機との間における無線の伝播時間に基づいて、前記制御区分内の列車位置を検知するとともに、自己の制御区分内において、管理可能列車台数に達したか、あるいは、達する可能性があると判断した場合には、管理可能列車台数に達する制御区分に隣接する制御区分に設置された地上装置は、当該制御区分に向かって列車が走行中の場合は、各制御区分内における管理可能列車台数の残量を把握し、各制御区分の境界に向かって走行する列車に減速指令を与えて進行させ、当該制御区分の管理可能列車台数に空きが生じたら、当該制御区分への減速指令を解除して進行を許可することを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、所定の軌道を走行する列車に搭載された車上無線機と、
地上の所定位置に設けられた沿線無線機と、
前記軌道に設定された制御区分ごとに設置されるとともに、前記制御区分に属する前記沿線無線機に送受信可能に接続された地上装置と、
を備え、
前記地上装置は、前記車上無線機と前記沿線無線機との間における無線の伝播時間に基づいて、前記制御区分内の列車位置を検知するとともに、自己の制御区分内において、管理可能列車台数に達したか、あるいは、達する可能性があると判断した場合には、管理可能列車台数に達する制御区分に隣接する制御区分に設置された地上装置は、当該制御区分に向かって列車が走行中のときは、前記軌道上に存在する停止不可領域を避けて前記列車を停止制御させることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、所定の軌道を走行する列車に搭載された車上無線機と、
地上の所定位置に設けられた沿線無線機と、
前記軌道に設定された制御区分ごとに設置されるとともに、前記制御区分に属する前記沿線無線機に送受信可能に接続された地上装置と、
前記各地上装置と送受信可能に接続された運行管理装置と、
を備え、
前記地上装置は、前記車上無線機と前記沿線無線機との間における無線の伝播時間に基づいて、前記制御区分内の列車位置を検知し、
前記運行管理装置は、前記地上装置の制御区分内において、管理可能列車台数に達したか、あるいは、達する可能性があると判断した場合には、当該制御区分に向かって走行する予定の列車が駅に停車中のときは、前記制御区分の境界を通過する予定の列車を前記駅で待機させて出発させないように抑止することを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明は、所定の軌道を走行する列車に搭載された車上無線機と、
地上の所定位置に設けられた沿線無線機と、
前記軌道に設定された制御区分ごとに設置されるとともに、前記制御区分に属する前記沿線無線機に接続された地上装置と、
前記各地上装置と送受信可能に接続された運行管理装置と、
を備え、
前記地上装置は、前記車上無線機と前記沿線無線機との間における無線の伝播時間に基づいて、前記制御区分内の列車位置を検知し、
前記運行管理装置は、前記地上装置の制御区分内において、管理可能列車台数に達したか、あるいは、達する可能性があると判断した場合には、当該制御区分に向かって列車が走行中の場合は、各制御区分内における管理可能列車台数の残量を把握し、各制御区分の境界に向かって走行する列車に減速指令を与えて進行させ、当該制御区分の管理可能列車台数に空きが生じたら、当該制御区分への減速指令を解除して進行を許可することを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る発明は、所定の軌道を走行する列車に搭載された車上無線機と、
地上の所定位置に設けられた沿線無線機と、
前記軌道に設定された制御区分ごとに設置されるとともに、前記制御区分に属する前記沿線無線機に接続された地上装置と、
前記各地上装置と送受信可能に接続された運行管理装置と、
を備え、
前記地上装置は、前記車上無線機と前記沿線無線機との間における無線の伝播時間に基づいて、前記制御区分内の列車位置を検知し、
前記運行管理装置は、前記地上装置の制御区分内において、管理可能列車台数に達したか、あるいは、達する可能性があると判断した場合には、当該制御区分に設置された地上装置は、当該制御区分に向かって列車が走行中のときは、前記軌道上に存在する停止不可領域を避けて前記列車を停止制御させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、自己の制御区分内を走行する列車台数が、管理可能列車台数に達したか、あるいは、達する可能性がある場合に、地上装置により、管理可能列車台数に達したか、または達する可能性がある制御区分に向かって列車が走行する予定の場合に、境界を通過する予定の列車を駅で待機させて出発させないように抑止するようにしているので、制御区分内に制御不能の列車が進入することを確実に防止して、制御区分内における各列車を確実に制御することができ、保安機能による停止制御などを防止することができる。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、管理可能列車台数に達したと判断したか、あるいは、達する可能性がある場合に、地上装置により、各制御区分内における管理可能列車台数の残量を把握し、各制御区分の境界に向かって走行する列車に減速指令を与えて進行させるようにしているので、制御区分内に制御不能の列車が進入することを確実に防止して、制御区分内における各列車を確実に制御することができ、保安機能による停止制御などを防止することができる。また、減速指令により、列車を進行させるようにしているので、列車が軌道の途中で停止してしまうことがなく、旅客サービスの向上を図ることができる。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、自己の制御区分内において、管理可能列車台数に達したか、あるいは、達する可能性がある場合に、やむを得ず列車を停止制御する必要がある場合は、地上装置により、架線エアセクション、勾配区間、踏切道などの停止不可領域を避けて停止制御させるようにしているので、架線エアセクションなどの損傷を確実に防止することができる。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、自己の制御区分内を走行する列車台数が、管理可能列車台数に達したか、あるいは、達する可能性がある場合に、運行管理装置により、管理可能列車台数に達したか、または達する可能性がある制御区分に向かって列車が走行する予定の場合に、境界を通過する予定の列車を駅で待機させて出発させないように抑止するようにしているので、制御区分内に制御不能の列車が進入することを確実に防止して、制御区分内における各列車を確実に制御することができ、保安機能による停止制御などを防止することができる。
【0018】
請求項5に係る発明によれば、管理可能列車台数に達したと判断したか、あるいは、達する可能性がある場合に、運行管理装置により、各制御区分内における管理可能列車台数の残量を把握し、各制御区分の境界に向かって走行する列車に減速指令を与えて進行させるようにしているので、制御区分内に制御不能の列車が進入することを確実に防止して、制御区分内における各列車を確実に制御することができ、保安機能による停止制御などを防止することができる。また、減速指令により、列車を進行させるようにしているので、列車が軌道の途中で停止してしまうことがなく、旅客サービスの向上を図ることができる。
【0019】
請求項6に係る発明によれば、自己の制御区分内において、管理可能列車台数に達したか、あるいは、達する可能性がある場合に、やむを得ず列車を停止制御する必要がある場合は、運行管理装置により、架線エアセクション、勾配区間、踏切道などの停止不可領域を避けて停止制御させるようにしているので、架線エアセクションなどの損傷を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る列車制御システムの実施形態における列車部分を示す概略構成図である。
【図2】本発明に係る列車制御システムの実施形態を示す概略構成図である。
【図3】本発明に係る列車制御システムの実施形態における動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0022】
図1は、本発明に係る列車制御システムの実施形態を示す概略構成図であり、本実施形態においては、所定の軌道1上を走行する列車2には、車上装置3が搭載されている。この車上装置3は、CPUを中心に構成された演算処理部(図示せず)を有していて、列車2の速度制御や制動制御などの各種制御を行うように構成されている。
【0023】
また、列車2には、車上装置3に接続された車上無線機4が搭載されており、列車2の軌道1上には、車上無線機4と情報の送受信を行うための複数の沿線無線機5が設置されている。また、図2に示すように、これら沿線無線機5は、軌道1に沿って形成された複数の制御区分に区分されており、所定の制御区分に属した沿線無線機5は、当該制御区分内を走行する列車2の車上無線機4との間で情報の送受信を行うように構成されている。
【0024】
また、これら各制御区分ごとに地上装置6が設置されており、この地上装置6には、地上装置6が設置された制御区分に属する沿線無線機5がそれぞれ接続されている。各地上装置6は、互いに接続されており、各地上装置6は、各地上装置6との間で情報の送受信を行うことができるように構成されている。さらに、各地上装置6には、列車2の沿線の運行管理を行う運行管理装置7が接続されている。
【0025】
そして、運行管理装置7は、列車2の番号情報やダイヤ情報を各地上装置6に送り、各地上装置6は、沿線無線機5と車上無線機4との通信を行った際の通信時間を計測することにより、沿線無線機5と列車2との距離を演算し、該当する番号の列車2が現在制御区分のどの位置に存在しているかを検知するように構成されている。そして、地上装置6から沿線無線機5および車上無線機4を介して列車位置情報に基づく制限速度や走行可能距離の情報を送信し、車上装置3は、自列車2のブレーキ性能に従って速度パターンを生成し、走行速度が速度パターンを超過した時に速度パターン以下の速度になるようにブレーキ装置を制御して減速するように構成されている。
【0026】
ここで、地上装置6は、設置された制御区分内のすべての列車位置を検知し、各列車2に通信時機や周波数などを割り当てる。この場合に、1つの地上装置6により、管理することができる列車2の台数は、あらかじめ決められており、この管理可能列車台数を超えた場合は、超えた部分の列車2に対して通信をすることができず、この列車2の管理をすることができなくなってしまう。そのため、本実施形態においては、各地上装置6は、自己の制御区分内において、管理可能列車台数に達したか、あるいは、管理可能列車台数に達する可能性があると判断した場合には、各地上装置6に対して、その旨を送信するように構成されている。そして、各地上装置6は、管理可能列車台数に達したか、または達する可能性がある制御区分に向かって列車2が走行する予定の場合に、該当する列車2が駅8に停車中の場合は、各制御区分の境界を通過する予定の列車2を駅8で待機させて出発させないように抑止するように構成されている。
【0027】
また、自己の制御区分内において、管理可能列車台数に達したと判断したか、あるいは、管理可能列車台数に達する可能性があると判断した旨の送信があった後に、当該制御区分に向かってすでに列車2が駅8を出発した場合には、地上装置6は、各制御区分内における管理可能列車台数の残量を把握し、各制御区分の境界に向かって走行する列車2に減速指令を与えて進行させ、当該制御区分の管理可能列車台数に空きが生じたら、当該制御区分への減速指令を解除して進行を許可するように構成されている。
【0028】
さらに、自己の制御区分内において、管理可能列車台数に達したと判断したか、あるいは、管理可能列車台数に達する可能性があると判断した旨の送信があった後に、当該制御区分に向かってすでに列車2が走行しており、やむを得ず列車2を停止制御する必要がある場合は、地上装置6は、運行管理装置7のデータベースにあらかじめ定義されている架線エアセクション、勾配区間、踏切道などの停止不可領域を避けて停止制御させるように構成されている。
【0029】
次に、本実施形態の制御動作について、図3に示すフローチャートを参照して説明する。
【0030】
まず、沿線無線機5と車上無線機4との間で通信を行い、この通信時間を計測することにより、各地上装置6により、沿線無線機5と列車2との距離を演算し、列車2が現在制御区分のどの位置に存在しているかを検知する(ST1)。
【0031】
そして、地上装置6から沿線無線機5および車上無線機4を介して列車位置情報に基づく制限速度や走行可能距離の情報を送信し、車上装置3は、自列車2のブレーキ性能に従って速度パターンを生成し、この速度パターンに従って列車2の走行制御を行う。
【0032】
そして、各地上装置6は、自己の制御区分内を走行する列車台数が、管理可能列車台数に達したか、あるいは、管理可能列車台数に達する可能性があるかを判断し(ST2)、
管理可能列車台数に達したか、あるいは、達する可能性があると判断した場合には(ST2:YES)、各地上装置6に対して、その旨を送信する(ST3)。そして、各地上装置6は、管理可能列車台数に達したか、または達する可能性がある制御区分に向かって、運行管理装置7から送られる列車2の番号情報やダイヤ情報に基づいて、列車2が走行する予定の場合に、該当する列車2が駅8に停車中であるか否か判断し(ST4)、駅8に停車中の場合には(ST4:YES)、各制御区分の境界を通過する予定の列車2を駅8で待機させて出発させないように抑止する(ST5)。
【0033】
また、自己の制御区分内において、管理可能列車台数に達したと判断したか、あるいは、達する可能性があると判断した旨の送信があった後に、列車2が駅8に停車しておらず、当該制御区分に向かってすでに出発している場合には(ST4:NO)、地上装置6により、各制御区分内における管理可能列車台数の残量を把握し、各制御区分の境界に向かって走行する列車2がある場合には(ST6:YES)、管理可能列車台数を超えた制御区分の前で停止しない場合は(ST7:NO)、列車2に減速指令を与えて進行させる(ST8)。
【0034】
さらに、自己の制御区分内において、管理可能列車台数に達したと判断したか、あるいは、達する可能性があると判断した旨の送信があった後に、当該制御区分に向かってすでに列車2が走行しており、やむを得ず列車2を停止制御する必要がある場合は(ST7:YES)、地上装置6は、運行管理装置7のデータベースにあらかじめ定義されている架線エアセクション、勾配区間、踏切道を避けて停止制御させる(ST9)。
【0035】
以上述べたように、本実施形態においては、自己の制御区分内を走行する列車台数が、管理可能列車台数に達したか、あるいは、達する可能性がある場合に、地上装置6により、管理可能列車台数に達したか、または達する可能性がある制御区分に向かって列車2が走行する予定の場合に、境界を通過する予定の列車2を駅8で待機させて出発させないように抑止するようにしているので、制御区分内に制御不能の列車2が進入することを確実に防止して、制御区分内における各列車2を確実に制御することができ、保安機能による停止制御などを防止することができ、その結果、旅客サービスの向上を図ることができる。
【0036】
また、管理可能列車台数に達したと判断したか、あるいは、達する可能性がある場合に、地上装置6により、各制御区分内における管理可能列車台数の残量を把握し、各制御区分の境界に向かって走行する列車2に減速指令を与えて進行させるようにしているので、制御区分内に制御不能の列車2が進入することを確実に防止して、制御区分内における各列車2を確実に制御することができ、保安機能による停止制御などを防止することができる。また、減速指令により、列車2を進行させるようにしているので、列車2が軌道1の途中で停止してしまうことがなく、旅客サービスの向上を図ることができる。
【0037】
さらに、自己の制御区分内において、管理可能列車台数に達したか、あるいは、達する可能性がある場合に、やむを得ず列車2を停止制御する必要がある場合は、地上装置6により、架線エアセクション、勾配区間、踏切道などの停止不可領域を避けて停止制御させるようにしているので、架線エアセクションなどの損傷を確実に防止することができる。
【0038】
なお、前記実施形態においては、制御区分において管理可能列車台数に達したか、あるいは、達する可能性があると判断した場合に、地上装置6により、駅8からの出発抑止、減速制御あるいは停止不可領域以外の領域における停止制御を行うようにしたが、各地上装置6からの情報を運行管理装置7が取得し、この運行管理装置7がそれらの制御を行うようにしてもよい。
【0039】
また、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 軌道
2 列車
3 車上装置
4 車上無線機
5 沿線無線機
6 地上装置
7 運行管理装置
8 駅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の軌道を走行する列車に搭載された車上無線機と、
地上の所定位置に設けられた沿線無線機と、
前記軌道に設定された制御区分ごとに設置されるとともに、前記制御区分に属する前記沿線無線機に送受信可能に接続された地上装置と、
を備え、
前記地上装置は、前記車上無線機と前記沿線無線機との間における無線の伝播時間に基づいて、前記制御区分内の列車位置を検知するとともに、自己の制御区分内において、管理可能列車台数に達したか、あるいは、達する可能性があると判断した場合には、管理可能列車台数に達する制御区分に隣接する制御区分に設置された地上装置は、当該制御区分に向かって走行する予定の列車が駅に停車中のときは、前記制御区分の境界を通過する予定の列車を前記駅で待機させて出発させないように抑止することを特徴とする列車制御システム。
【請求項2】
所定の軌道を走行する列車に搭載された車上無線機と、
地上の所定位置に設けられた沿線無線機と、
前記軌道に設定された制御区分ごとに設置されるとともに、前記制御区分に属する前記沿線無線機に送受信可能に接続された地上装置と、
を備え、
前記地上装置は、前記車上無線機と前記沿線無線機との間における無線の伝播時間に基づいて、前記制御区分内の列車位置を検知するとともに、自己の制御区分内において、管理可能列車台数に達したか、あるいは、達する可能性があると判断した場合には、管理可能列車台数に達する制御区分に隣接する制御区分に設置された地上装置は、当該制御区分に向かって列車が走行中の場合は、各制御区分内における管理可能列車台数の残量を把握し、各制御区分の境界に向かって走行する列車に減速指令を与えて進行させ、当該制御区分の管理可能列車台数に空きが生じたら、当該制御区分への減速指令を解除して進行を許可することを特徴とする列車制御システム。
【請求項3】
所定の軌道を走行する列車に搭載された車上無線機と、
地上の所定位置に設けられた沿線無線機と、
前記軌道に設定された制御区分ごとに設置されるとともに、前記制御区分に属する前記沿線無線機に送受信可能に接続された地上装置と、
を備え、
前記地上装置は、前記車上無線機と前記沿線無線機との間における無線の伝播時間に基づいて、前記制御区分内の列車位置を検知するとともに、自己の制御区分内において、管理可能列車台数に達したか、あるいは、達する可能性があると判断した場合には、管理可能列車台数に達する制御区分に隣接する制御区分に設置された地上装置は、当該制御区分に向かって列車が走行中のときは、前記軌道上に存在する停止不可領域を避けて前記列車を停止制御させることを特徴とする列車制御システム。
【請求項4】
所定の軌道を走行する列車に搭載された車上無線機と、
地上の所定位置に設けられた沿線無線機と、
前記軌道に設定された制御区分ごとに設置されるとともに、前記制御区分に属する前記沿線無線機に送受信可能に接続された地上装置と、
前記各地上装置と送受信可能に接続された運行管理装置と、
を備え、
前記地上装置は、前記車上無線機と前記沿線無線機との間における無線の伝播時間に基づいて、前記制御区分内の列車位置を検知し、
前記運行管理装置は、前記地上装置の制御区分内において、管理可能列車台数に達したか、あるいは、達する可能性があると判断した場合には、当該制御区分に向かって走行する予定の列車が駅に停車中の場合は、前記制御区分の境界を通過する予定の列車を前記駅で待機させて出発させないように抑止することを特徴とする列車制御システム。
【請求項5】
所定の軌道を走行する列車に搭載された車上無線機と、
地上の所定位置に設けられた沿線無線機と、
前記軌道に設定された制御区分ごとに設置されるとともに、前記制御区分に属する前記沿線無線機に接続された地上装置と、
前記各地上装置と送受信可能に接続された運行管理装置と、
を備え、
前記地上装置は、前記車上無線機と前記沿線無線機との間における無線の伝播時間に基づいて、前記制御区分内の列車位置を検知し、
前記運行管理装置は、前記地上装置の制御区分内において、管理可能列車台数に達したか、あるいは、達する可能性があると判断した場合には、当該制御区分に向かって列車が走行中の場合は、各制御区分内における管理可能列車台数の残量を把握し、各制御区分の境界に向かって走行する列車に減速指令を与えて進行させ、当該制御区分の管理可能列車台数に空きが生じたら、当該制御区分への減速指令を解除して進行を許可することを特徴とする列車制御システム。
【請求項6】
所定の軌道を走行する列車に搭載された車上無線機と、
地上の所定位置に設けられた沿線無線機と、
前記軌道に設定された制御区分ごとに設置されるとともに、前記制御区分に属する前記沿線無線機に接続された地上装置と、
前記各地上装置と送受信可能に接続された運行管理装置と、
を備え、
前記地上装置は、前記車上無線機と前記沿線無線機との間における無線の伝播時間に基づいて、前記制御区分内の列車位置を検知し、
前記運行管理装置は、前記地上装置の制御区分内において、管理可能列車台数に達したか、あるいは、達する可能性があると判断した場合には、当該制御区分に設置された地上装置は、当該制御区分に向かって列車が走行中のときは、前記軌道上に存在する停止不可領域を避けて前記列車を停止制御させることを特徴とする列車制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−75643(P2013−75643A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218249(P2011−218249)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】