説明

列車制御システム

【課題】先行列車と後続列車との進入路線が異なる場合であっても、後続列車を停車させることなく、走行させることのできる列車制御システムを提供する。
【解決手段】所定の軌道1を走行する列車2に搭載された車上装置と、車上装置の情報を送受信するための車上無線機と、地上の所定位置に設けられ車上無線機と情報の送受信する沿線無線機5と、軌道1に設置され沿線無線機5に接続された地上装置8と、列車2の運行情報を地上装置8に送る運行管理装置12と、軌道1の路線を切り換える分岐器6の動作制御を行う連動装置11と、を備え、地上装置8は、車上無線機と沿線無線機5との間における無線の伝播時間に基づいて、列車2の位置を検知するとともに、運行管理装置12から列車2の進入路線情報を受け、先行列車2と後続列車2との間隔を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は列車制御システムに係り、特に、無線測距を利用して列車の位置検出を行って列車の制御を行うようにした列車制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、いわゆる無線測距方式を利用した列車制御システムは、列車に車上無線機を搭載し、その列車の走行する軌道の沿線に沿って所定の間隔をもって設置された複数の沿線無線機との間で無線ネットワークを形成し、車上無線機の車上アンテナと沿線無線機の沿線アンテナとの無線伝搬遅延(時間)を計測して列車位置を検知し、その検知された列車位置に基づいて列車制御を行うようになっている。
【0003】
そして、このような無線測距方式を利用した列車制御システムとしては、従来から、例えば、所定の軌道を走行する列車に搭載された車上無線機および地上の所定位置に設けられた地上無線機間の無線の伝播時間に基づいてその所定の軌道における列車位置を検知する無線列車位置検知手段と、列車の車軸に接続された速度発電機の出力信号に基づいて所定の軌道における列車の走行距離を算出する走行距離算出手段と、無線列車位置検知手段で検知された列車位置を所定の仮基準位置に設定する仮基準位置設定手段と、その仮基準位置設定手段で設定された仮基準位置から走行距離算出手段で算出された走行距離に基づいて所定の軌道における列車位置を検知する列車位置検知算出手段とを備えた技術が開示されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−331629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の技術に示すようないわゆる移動閉そく制御においては、先行列車との距離を検知することにより、運転間隔を短縮した制御を行うことができるものであるが、例えば、駅構内においては、駅の進入番線に応じて、分岐器の切り替えを行う必要がある。そのため、先行列車と後続列車との進入番線が異なる場合でも、
先行列車の進路が連動装置により鎖錠されている場合には、後続列車は自己の進路をとることができない。後続列車は、先行列車が分岐器を完全に通過した後に分岐器の鎖錠が解除されて、分岐器を切り替えて鎖錠した後に後続列車の進行が許可されるため、後続列車は、分岐器の切り換えが完了するまで一旦停止して待機する必要があるという問題を有している。
【0006】
本発明は前記した点に鑑みてなされたものであり、先行列車と後続列車との進入路線が異なる場合であっても、後続列車を停車させることなく、走行させることのできる列車制御システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前記目的を達成するために、請求項1の発明に係る列車制御システムは、所定の軌道を走行する列車に搭載された車上装置と、
前記車上装置の情報を送受信するための車上無線機と、
地上の所定位置に設けられ前記車上無線機と情報の送受信する沿線無線機と、
前記軌道に設置され前記沿線無線機に接続された地上装置と、
前記列車の運行情報を前記地上装置に送る運行管理装置と、
軌道の路線を切り換える分岐器の動作制御を行う連動装置と、
を備え、
前記地上装置は、前記車上無線機と前記沿線無線機との間における無線の伝播時間に基づいて、列車位置を検知するとともに、前記運行管理装置から前記列車の進入路線情報を受け、先行列車と後続列車との間隔を制御することを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記地上装置は、前記運行管理装置から送られる前記列車の進入路線情報に基づいて前記後続列車が前記先行列車と異なる進路に進入するか否かを判断し、進入路線が異なる場合には、前記先行列車が前記分岐器を通過した後、前記分岐器の切り換え動作が完了するまで、前記後続列車が停止しないで走行することができる走行速度を演算し、この演算により求めた走行速度を前記車上装置に送信することを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項2において、前記路線の前記分岐器の手前の所定の位置に接近点を設置し、
前記地上装置は、前記運行管理装置から送られる前記列車の進入路線情報に基づいて、前記後続列車が前記先行列車と異なる進路に進入するか否かを判断し、進入路線が異なる場合には、
「先行列車がてっ査区間を抜けるまでの時間」=「後続列車が接近点に到達するまでの時間」
に従って、前記後続列車の走行速度を演算し、この演算により求めた走行速度を前記車上装置に送信することを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項において、前記進入路線は、駅の進入番線であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、地上装置により、運行管理装置から列車の進入路線情報を受け、先行列車と後続列車との間隔を制御するようにしているので、先行列車と後続列車との進入路線が異なる場合であっても、後続列車を適正な間隔で走行させることが可能となる。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、地上装置により、運行管理装置から送られる列車の進入路線情報に基づいて後続列車が先行列車と異なる進路に進入するか否かを判断し、進入路線が異なる場合には、先行列車が分岐器を通過した後、分岐器の切り換え動作が完了するまで、後続列車が停止しないで走行することができる走行速度を演算し、この演算により求めた走行速度により、列車を走行制御させるようにしているので、先行列車と後続列車との進入路線が異なる場合であっても、後続列車を停車させることなく、走行させることが可能となる。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、地上装置により、運行管理装置から送られる列車の進入路線情報に基づいて、後続列車が先行列車と異なる進路に進入するか否かを判断し、進入路線が異なる場合には、先行列車がてっ査区間を抜けるまでの時間と後続列車が接近点に到達するまでの時間とが同じになるように後続列車の走行速度を演算し、この走行速度に基づいて後続列車の速度を制御するようにしているので、先行列車と後続列車との進入路線が異なる場合であっても、後続列車を停車させることなく、走行させることが可能となる。
【0014】
請求項4に係る発明によれば、進入路線を、駅の進入番線としているので、駅の構内において、先行列車と後続列車との進入路線が異なる場合であっても、後続列車を停車させることなく、走行させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る列車制御システムの実施形態における列車部分を示す概略構成図である。
【図2】本発明に係る列車制御システムの実施形態を示す概略構成図である。
【図3】本発明に係る列車制御システムの実施形態における動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明に係る列車制御システムの実施形態を示す概略構成図であり、本実施形態においては、所定の軌道1上を走行する列車2には、車上装置3が搭載されている。この車上装置3は、CPUを中心に構成された演算処理部(図示せず)を有していて、列車2の速度制御や制動制御などの各種制御を行うように構成されている。
【0018】
また、列車2には、車上装置3に接続された車上無線機4が搭載されており、列車2の軌道1上には、車上無線機4と情報の送受信を行うための複数の沿線無線機5が設置されている。また、これら沿線無線機5は、走行する列車2の車上無線機4との間で情報の送受信を行うように構成されている。
【0019】
図2は、本発明の列車制御システムが適用される軌道1の例を示したものであり、列車2が走行する軌道1は、分岐器6により、異なる軌道1に分岐されるように構成されている。本実施形態においては、異なる軌道1の先に駅7が設置されており、各軌道1には、進入経路として駅7の1番線ホームと2番線ホームとが設けられている場合を示している。そして、分岐器6の前後の所定の範囲は、列車2が分岐器6を通過する際に、他の列車2の進入を阻止するてっ査区間とされており、てっ査区間の手前には、後続列車2の停止目標となる接近点が設置されるようになっている。ここで、接近点の位置は、列車2が接近点からてっ査区間の手前まで走行する間に、分岐器6の切り替え動作および鎖錠が完了する距離に設定されている。
【0020】
また、各沿線無線機5には、地上装置8が接続されており、この地上装置8には、移動閉そく装置9および列車検知装置10が設けられている。列車検知装置10には、軌道1の切り替えを行う分岐器6の動作制御を行う連動装置11が接続されており、移動閉そく装置9には、列車2の沿線の運行管理を行う運行管理装置12が接続されている。
【0021】
そして、運行管理装置12は、列車2の番号情報やダイヤ情報を各地上装置8に送り、各地上装置8の列車検知装置10は、沿線無線機5と車上無線機4との通信を行った際の通信時間を計測することにより、沿線無線機5と列車2との距離を演算し、列車2の位置を検知するように構成されている。そして、移動閉そく装置9は、この列車検知装置10による列車2の位置情報に基づく制限速度や走行可能距離の情報を沿線無線機5および車上無線機4を介して各列車2に送信し、車上装置3は、自列車2のブレーキ性能に従って速度パターンを生成し、この速度パターンに基づいて速度制御を行うように構成されている。
【0022】
また、移動閉そく装置9は、運行管理装置12から進入番線情報を受け、後続列車2が先行列車2と異なる番線に進入するか否かを判断し、番線が異なる場合には、次の条件を満たすように後続列車2の走行速度を計算する。
「先行列車がてっ査区間を抜けるまでの時間」=「後続列車が接近点に到達するまでの時間」
そして、計算により求めた走行速度を車上装置3に送信するように構成されている。
【0023】
後続列車2は、車上装置3が受信した走行速度に基づいて、走行速度が制御された状態で、走行されるものであり、先行列車2がてっ査区間を越えて所定の番線に進入したら、連動装置11により、分岐器6を後続列車2の進入番線に切り換えて鎖錠するとともに、先行列車2によるてっ査が解除されたら、後続列車2の停止目標を通常に戻すように構成されている。
【0024】
次に、本実施形態の制御動作について説明する。
【0025】
まず、沿線無線機5と車上無線機4との間で通信を行い、この通信時間を計測することにより、各地上装置8により、沿線無線機5と列車2との距離を演算し、列車2が現在どの位置に存在しているかを検知する(ST1)。
【0026】
そして、地上装置8から沿線無線機5および車上無線機4を介して列車2位置情報に基づく制限速度や走行可能距離の情報を送信し、車上装置3は、自列車2のブレーキ性能に従って速度パターンを生成し、この速度パターンに従って列車2の走行制御を行う(ST2)。
【0027】
そして、移動閉そく装置9が運行管理装置12から進入番線情報を受け、先行列車2が接近点を通過すると、先行列車2の進入番線情報に応じて分岐器6を切り替えて鎖錠する。
【0028】
その後、後続列車2が駅7に近づいてきた場合(ST3)、移動閉そく装置9が運行管理装置12から進入番線情報を取得し(ST4)、後続列車2が先行列車2と異なる番線に進入するか否かを判断する(ST5)。そして、後続列車2の進入番線が先行列車2の進入番線と異なる場合には(ST5:YES)、先行列車2がてっ査区間を抜けるまでの時間と後続列車2が接近点に到達するまでの時間とが同じになるように、後続列車2の走行速度を演算する(ST6)。そして、演算により求めた走行速度を車上装置3に送信するように構成されている。
【0029】
そして、後続列車2は、車上装置3が受信した走行速度に基づいて、走行速度が制御された状態で走行される(ST7)。先行列車2がてっ査区間を越えたら、連動装置11により、分岐器6を後続列車2の進入番線に切り換えて鎖錠するとともに、先行列車2によるてっ査が解除されたら、後続列車2の停止目標を通常に戻す。これにより、後続列車2は、2番線に進入することができるものである。
【0030】
以上述べたように、本実施形態においては、後続列車2が駅7に近づいてきた場合、移動閉そく装置9が運行管理装置12から進入番線情報を受け、後続列車2が先行列車2と異なる番線に進入する場合に、先行列車2がてっ査区間を抜けるまでの時間と後続列車2が接近点に到達するまでの時間とが同じになるように後続列車2の走行速度を演算し、この走行速度に基づいて後続列車2の速度を制御するようにしているので、先行列車2と後続列車2との進入路線が異なる場合であっても、後続列車2を停車させることなく、走行させることが可能となる。
【0031】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 軌道
2 列車
3 車上装置
4 車上無線機
5 沿線無線機
6 分岐器
7 駅
8 地上装置
9 移動閉そく装置
10 列車検知装置
11 連動装置
12 運行管理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の軌道を走行する列車に搭載された車上装置と、
前記車上装置の情報を送受信するための車上無線機と、
地上の所定位置に設けられ前記車上無線機と情報の送受信する沿線無線機と、
前記軌道に設置され前記沿線無線機に接続された地上装置と、
前記列車の運行情報を前記地上装置に送る運行管理装置と、
軌道の路線を切り換える分岐器の動作制御を行う連動装置と、
を備え、
前記地上装置は、前記車上無線機と前記沿線無線機との間における無線の伝播時間に基づいて、列車位置を検知するとともに、前記運行管理装置から前記列車の進入路線情報を受け、先行列車と後続列車との間隔を制御することを特徴とする列車制御システム。
【請求項2】
前記地上装置は、前記運行管理装置から送られる前記列車の進入路線情報に基づいて前記後続列車が前記先行列車と異なる進路に進入するか否かを判断し、進入路線が異なる場合には、前記先行列車が前記分岐器を通過した後、前記分岐器の切り換え動作が完了するまで、前記後続列車が停止しないで走行することができる走行速度を演算し、この演算により求めた走行速度を前記車上装置に送信することを特徴とする請求項1に記載の列車制御システム。
【請求項3】
前記路線の前記分岐器の手前の所定の位置に接近点を設置し、
前記地上装置は、前記運行管理装置から送られる前記列車の進入路線情報に基づいて、前記後続列車が前記先行列車と異なる進路に進入するか否かを判断し、進入路線が異なる場合には、
「先行列車がてっ査区間を抜けるまでの時間」=「後続列車が接近点に到達するまでの時間」
に従って、前記後続列車の走行速度を演算し、この演算により求めた走行速度を前記車上装置に送信することを特徴とする請求項2に記載の列車制御システム。
【請求項4】
前記進入路線は、駅の進入番線であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の列車制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−75644(P2013−75644A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218250(P2011−218250)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】