説明

列車制御装置

【課題】レールの状態を反映して列車を制御することのできる列車制御装置を提供する。
【解決手段】列車制御装置1は、レールRの状態としてレール温度を検知する温度検知器21a,21b,・・・21nを含む状態検知装置2と、地上側に設けられ、状態検知装置2によって検知されたレールRの状態(レール温度)に基づいて列車T1の制御に用いる制御情報を作成する地上装置3(電文作成部31,地上子32a,32b)と、レールRを走行する列車T1に搭載され、地上装置3から制御情報を受信して当該列車T1の制御を行う車上装置4(車上子41,制御部42)と、を含む

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列車を制御する列車制御装置に関し、特にレールの状態を反映して列車を制御することのできる列車制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
列車制御装置として、従来からいわゆるATC(Automatic Train Control)装置やATS(Automatic Train Stop)装置が知られている。一般に、ATC装置又はATS装置は、地上側に設けられた地上装置と列車に搭載された車上装置とを含み、地上装置が先行列車との間隔や進路の開通状況に応じた許容速度情報を示すATC信号又はATS信号を送信し、車上装置が受信したATC信号又はATS信号に基づいて列車の速度制御を行うことにより、列車を許容速度以下で走行させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−11821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記ATC装置や上記ATS装置を用いる従来の列車制御装置においては、列車の走行するレールの状態が列車の制御に反映されておらず、より安全な列車の走行や列車の走行に伴うレールゆがみの抑制などの観点からは更なる改良の余地がある。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、レールの状態を反映して列車を制御することのできる列車制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面による列車制御装置は、レールの状態を検知する状態検知装置と、地上側に設けられ、前記状態検知装置によって検知されたレールの状態に基づいて列車の制御に用いる制御情報を作成する地上装置と、前記レールを走行する列車に搭載され、前記地上装置から前記制御情報を受信して当該列車の制御を行う車上装置と、を含む。
【発明の効果】
【0006】
上記列車制御装置によれば、状態検知装置がレールの状態を検知し、地上装置が前記状態検知装置によって検知されたレールの状態に基づいて列車の制御に用いる制御情報を作成し、車上装置が前記地上装置から前記制御情報を受信して当該車上装置が搭載された列車の制御を行うので、レールの状態を反映して列車を制御することができる。
【0007】
例えば、レール温度が所定温度以上となったり、レールの異常振動が発生したりした場合には、当該レールを走行する列車を徐行させたり、列車を停止させたりすることで、当該レールにおける列車のより安全な走行を確保でき、また、列車の走行に伴うレールのゆがみ等を抑制できる。さらに、レールの冷却を行うレール冷却装置を備えた列車においては、レール温度が所定温度以上となった場合にレール冷却装置を作動させることにより、レール温度が列車の運行に支障をきたす温度まで上昇しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施形態による列車制御装置の概略構成を示す図である。
【図2】第1実施形態による列車制御装置を構成する地上装置によって実行される電文作成処理のフローチャートである。
【図3】第1実施形態による列車制御装置を構成する車上装置の制御部のブロック図である。
【図4】本発明の第2実施形態による列車制御装置の概略構成を示す図である。
【図5】第2実施形態による列車制御装置を構成する車上装置の制御部のブロック図である。
【図6】第2実施形態による列車制御装置を構成する地上装置によって実行される電文作成処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による列車制御装置の概略構成を示している。図1に示すように、本実施形態による列車制御装置1は、レールRの状態を検知する状態検知装置2と、地上側に設けられた地上装置3と、レールR上を走行する列車T1に搭載された車上装置4と、を含む。
【0010】
また、レールR上を走行する列車T1には、車軸の回転速度に応じた信号を出力する速度発電機(タコジェネレータ)5と、レールRが高温となった場合に当該レールRを冷却することができるレール冷却装置6と、が設けられている。但し、必ずしも速度発電機5である必要はなく、速度発電機5に代えて、列車T1の走行速度や走行距離を確認できる他の装置等を用いることができる。レール冷却装置6は、レールRを冷却できるものであれば冷却方法等は特に制限されないが、例えば、所定量の冷却水を蓄えた水タンクと、水タンク内の冷却水を加圧供給するポンプと、ポンプによって加圧供給された冷却水をレールRに向かって噴射するノズルと、を有し、ポンプを駆動することによってレールRに対して散水する散水装置とすることができる。
【0011】
状態検知装置2は、レールRの状態としてレール温度を検知するものであり、レールRを複数の区間に分けたレール区間Ra,Rb,・・・Rn毎に設けられた温度検知器21a,21b,・・・21nを有する。各温度検知器は、各レール区間内の予め設定された所定位置(検知位置)に配置されており、レール温度に応じた信号(検知温度)を出力する。温度検知器としては、例えば赤外線を利用した非接触型の温度センサを用いることができる。但し、これに限るものではなく、レールRに直接取り付ける接触型の温度センサを用いてもよいし、レール近傍の雰囲気温度をレール温度として検知するようにしてもよい。すなわち、状態検知装置2(温度検知器)は、レールRの温度を直接又は間接的に検知できるものであればよい。
【0012】
地上装置3は、状態検知装置2によって検知されたレール温度に基づいて列車Tの制御に用いる制御情報を作成して車上装置4へと送信するものであり、列車制御用の電文を作成する電文作成部31と、レールRに沿って所定距離L毎に設置された地上子32a,32bと、を含む。
【0013】
電文作成部31は、各温度検知器の出力信号、すなわち、各温度検知器の検知温度を入力し、入力された各温度検知器の検知温度と予め設定された比較温度とに基づいて所定周期毎に電文を作成して各地上子へと出力する。具体的には、電文作成部31は、入力された各温度検知器の検知温度を予め設定された第1比較温度と比較し、その比較結果に応じて電文を作成する。第1比較温度は、列車Tに設けられたレール冷却装置6によってレールRを冷却する必要があるレール温度として予め設定されたものであり、ここでは、列車を徐行させる必要があるレール温度よりも所定温度だけ低く設定されている。
【0014】
図2は、地上装置3(電文作成部31)によって実行される電文作成処理のフローチャートである。このフローは、所定周期毎に実行される。
図2において、ステップS1では、各温度検知器の検知温度を入力する。
ステップS2では、ステップS1で入力された検知温度の中に第1比較温度以上のものがあるか否かを判断する。そして、入力された検知温度の中に第1比較温度以上のものがある場合、すなわち、第1比較温度以上のレール温度を検知した温度検知器がある場合にはステップS3に進み、入力された検知温度の全てが第1比較温度未満であれば本フローを終了する。
ステップS3では、第1比較温度以上のレール温度を検知した温度検知器を特定する。
ステップS4では、ステップS3で特定された温度検知器が設けられたレール区間を「要冷却区間」とする電文、すなわち、要冷却区間を特定する電文を作成する。例えば、温度検知器21bによって検知されたレール温度が第1比較温度以上であればレール区間Rbを「要冷却区間」とする電文を作成し、温度検知器21a及び21nによって検知されたレール温度が第1比較温度以上であればレール区間Ra及びRnを「要冷却区間」とする電文を作成する。ここで、「要冷却区間」とは、列車Tに設けられたレール冷却装置15を作動させることによってレールRの冷却を行う区間のことをいう。したがって、特定のレール区間を「要冷却区間」とする電文には、特定のレール区間をレール冷却装置6の作動区間とする内容の電文も含まれる。
【0015】
図1に戻って、地上子32a,32bは、トランスポンダ等によって構成され、例えば列車T1に搭載された車上装置4の車上子41と電磁結合することにより当該車上子41との間で情報の送受信を行う。本実施形態において、各地上子32a,32bは、自己の位置情報を記憶しており、列車T1に搭載された車上装置4の車上子41と電磁結合することにより、自己の位置情報及び電文作成部31で作成された電文を含む制御情報を当該車上子41へと送信する。
【0016】
車上装置4は、地上装置3から送信された制御情報を受信すると、受信した制御情報に基づいて列車T1の制御を行うものであり、車上子41と、制御部42と、を有する。
車上子41は、地上子31a,31bと同様、トランスポンダ等によって構成されており、地上子に接近することによって当該地上子と電磁結合して、当該地上子から制御情報(位置情報及び電文)を受信する。
制御部42は、車上子41によって受信された制御情報を入力し、この入力された制御情報に基づいて列車T1の制御、具体的には、列車T1の速度制御及び列車T1に設けられたレール冷却装置6の駆動制御を行う。
【0017】
図3は、制御部42のブロック図である。
図3に示すように、制御部42は、上記各レール区間に関する情報を含む線路情報やブレーキ性能を含む列車T1の性能情報が格納されたデータベース421と、列車T1の走行位置を演算する列車位置演算部422と、地上子から受信した電文を処理する電文処理部423と、レール冷却装置6の駆動を制御する冷却制御部424と、列車T1の速度を制御する速度制御部425と、を有する。
【0018】
列車位置演算部422は、入力された地上子の位置情報と速度発電機5の出力信号から得られる走行距離情報とに基づいて列車T1の走行位置(現在位置)を演算する。
電文処理部423は、車上子41を介して入力された電文を解析し、制御指令を作成して冷却制御部424及び速度制御部425に出力する。具体的には、「要冷却区間」とされたレール区間において、レール冷却装置6を作動させる冷却指令を冷却制御部424に出力するともに列車T1を「冷却実施速度」で走行させる速度指令を速度制御部425に出力する。ここで、「冷却実施速度」とは、レール冷却装置6によるレール冷却を効果的に行うために予め設定された列車T1の速度であり、当該レール区間における通常の走行速度よりも低く設定される。
【0019】
冷却制御部424は、電文処理部423から入力した冷却指令に基づいてレール冷却装置6を制御する。具体的には、冷却制御部437は、列車位置演算部422から列車T1の走行位置を入力するとともにデータベース421を参照し、列車T1が「要冷却区間」とされたレール区間に進入する際にレール冷却装置6を駆動させ、列車T1が当該レール区間から進出する際にレール冷却装置6を停止させる。これにより、「要冷却区間」とされたレール区間においては列車T1に設けられたレール冷却装置6によってレールRの冷却が実施される。
【0020】
速度制御部425は、電文処理部423から入力した速度指令に基づいて列車T1の速度を制御する。具体的には、速度制御部425は、列車位置演算部422から列車T1の走行位置を入力するとともにデータベース421を参照し、図示省略したブレーキ装置等を制御することにより、列車T1が「要冷却区間」とされたレール区間に進入する際の速度及び当該レール区間を通過する際の速度が冷却実施速度となるように列車T1の速度を制御する。ここで、速度制御部425は、列車位置演算部422より入力した列車T1の走行位置から「要冷却区間」とされたレール区間までの距離、及び、列車T1のブレーキ性能などから速度照査パターン(レール区間毎の列車速度制限パターン)を作成して列車T1の速度を制御するようにしてもよい。これにより、列車T1は、「要冷却区間」とされたレール区間を上記徐行実施速度で走行することになる。
【0021】
このように、本実施形態において、地上装置3は、状態検知装置2によって検知されたレール温度の中に予め設定された第1比較温度以上のものがある場合には、この第1比較温度以上のレール温度を検知した温度検知器が設けられたレール区間を「要冷却区間」とする電文を含む制御情報を作成する。車上装置4は、地上装置3から制御情報を受信すると、「要冷却区間」とされたレール区間において列車T1を冷却実施速度で走行させるとともに列車T1に設けられたレール冷却装置6を作動させる。これにより、所定温度以上に温度上昇したレールRを効果的に冷却することができるので、列車T1の通過によるレールRのゆがみの発生を防止できる。また、第1比較温度は、列車を徐行させる必要があるレール温度よりも所定温度だけ低く設定されているので、レール温度の上昇(列車を徐行させること)による列車運行への影響を抑制できる。
【0022】
また、地上装置3は、所定周期毎に列車制御用の電文を作成する電文作成部31と、レールRに沿って所定距離毎に設置された地上子32a,32bと、を有しているので、レールRの状態変化を速やかに列車制御に反映させることできる。これにより、車上装置4は、レール冷却装置6を作動させる必要のあるレール区間を、余裕を持って認識することができ、また、例えば先行する列車のレール冷却装置によってレール温度が充分に下がった場合には、レール冷却装置6の作動を中止することができる。
【0023】
ところで、上記実施形態においては、「要冷却区間」とされたレール区間において列車T1を冷却実施速度で走行させるようにしているが、かかる制御を省略し、列車T1を通常通り走行させてレール冷却装置6を作動させるようにしてもよい。
【0024】
また、上記実施形態においては、列車T1が走行するレールRを複数の区間に分けたレール区間毎に温度検知器を設けるとともにレールRに沿って所定距離L毎に地上子を設けているが、温度検知器及び地上子の設置数や設置間隔等は任意に設定することができる。
さらに、上記実施形態においては、第1比較温度以上のレール温度を検知した温度検知器が設けられたレール区間を「要冷却区間」としているが、その前後のレール区間を含めたレール区間を「要冷却区間」としてもよい。
さらにまた、上記実施形態において、地上装置3(電文作成部31)は、所定周期毎に電文を作成しているが、入力された検知温度の少なくとも一つが上記第1比較温度以上となったことを条件に「要冷却区間」を特定する電文を作成するようにしてもよい。
要するに、状態検知装置2がレールRの予め設定された検知位置でレール温度を検知し、地上装置3は、検知されたレール温度が上記第1比較温度以上であれば当該検知位置を含む所定区間を「要冷却区間」とする制御情報を作成するように構成すればよい。
【0025】
次に、本発明の第2実施形態による列車制御装置について説明する。
図4は、第2実施形態による列車制御装置10の概略構成を示しており、図5は、第2実施形態による列車制御装置10における車上装置7の制御部72のブロック図である。なお、第1実施形態による列車制御装置1と同一の構成要素については同一の符号を使用し、その説明は省略する。
【0026】
上記第1実施形態による列車制御装置1(図1参照)との相違点は、第2実施形態による列車制御装置10においては、列車T2がレール冷却装置6を備えていないこと(図4参照)、地上装置3の電文作成部31が第1比較温度とは異なる第2比較温度を用いて電文を作成すること(後述する図6参照)、及び、車上装置7の制御部72が冷却制御部424を備えていないこと(図5参照)である。以下、第2実施形態による列車制御装置10について、第1実施形態による列車制御装置1との相違点を中心に説明する。
【0027】
本実施形態による列車制御装置10は、第1実施形態による列車制御装置1が要冷却区間となるレール区間を特定し、特定されたレール区間においてレールRの冷却を行うに対して、徐行区間となるレール区間を特定し、特定されたレール区間において列車Tを徐行させるものである。
【0028】
本実施形態において、地上装置3の電文作成部31は、入力された各温度検知器の検知温度を予め設定された第2比較温度と比較し、その比較結果に応じて電文を作成する。第2比較温度は、列車T2の通過によってレールRにゆがみが発生するおそれのあるレール温度として予め設定されたものであり、上述の列車を徐行させる必要があるレール温度に相当するもの(上記第1比較温度よりも高い温度)である。
【0029】
図4は、本実施形態における電文作成部31によって実行される電文作成処理のフローチャートである。このフローは、上記第1実施形態における電文作成部31と同様、所定周期毎に実行される。
図4において、ステップS11では、各温度検知器の検知温度を入力する。
ステップS12では、ステップS11で入力された検知温度の中に第2比較温度以上のものがあるか否かを判断する。そして、入力された検知温度の中に第2比較温度以上のものがある場合、すなわち、第2比較温度以上のレール温度を検知した温度検知器がある場合にはステップS13に進み、入力された検知温度の全てが第2比較温度未満であれば本フローを終了する。
ステップS13では、第2比較温度以上のレール温度を検知した温度検知器を特定する。
ステップS14では、ステップS13で特定された温度検知器が設けられたレール区間を「徐行区間」とする電文、すなわち、徐行区間を特定する電文を作成する。例えば、温度検知器21bによって検知されたレール温度が第2比較温度以上であればレール区間Rbを「徐行区間」とする電文を作成し、温度検知器21a及び21nによって検知されたレール温度が第2比較温度以上であればレール区間Ra及びRnを「徐行区間」とする電文を作成する。ここで、「徐行区間」とは、列車T2の通過速度があらかじめ設定された徐行速度(例えば、5〜10km/h)以下に制限されるレール区間のことをいう。したがって、特定のレール区間を「徐行区間」とする電文には、特定のレール区間の制限速度を上記徐行速度に設定する内容の電文も含まれる。
【0030】
また、車上装置7において、制御部72の電文処理部423は、「徐行区間」とされたレール区間において列車Tを徐行させる徐行指令を速度制御部425に出力する。
速度制御部425は、電文処理部423から入力した速度指令に基づいて列車T2の速度を制御する。具体的には、速度制御部425は、列車位置演算部422から列車Tの走行位置を入力するとともにデータベース421を参照し、図示省略したブレーキ装置等を制御することにより、列車Tが「徐行区間」とされたレール区間に進入する際の速度及び当該レール区間を通過する際の速度が徐行速度となるように列車Tの速度を制御する。もちろん、速度制御部425は、列車位置演算部422より入力した列車Tの走行位置から「徐行区間」とされたレール区間までの距離、及び、列車Tのブレーキ性能などから速度照査パターン(レール区間毎の列車速度制限パターン)を作成して列車Tの速度を制御するようにしてもよい。これにより、「徐行区間」とされたレール区間においては列車Tの徐行運転が実施される。
【0031】
このように、本実施形態において、地上装置3は、状態検知装置2によって検知されたレール温度の中に予め設定された第2比較温度(>第1比較温度)以上のものがある場合には、この第2比較温度以上のレール温度を検知した温度検知器が設けられたレール区間を「徐行区間」とする電文を含む制御情報を作成する。車上装置7は、地上装置3から制御情報を受信すると、「徐行区間」とされたレール区間において列車T2を徐行させる。
これにより、レール温度が上昇したレール区間における列車T2の安全な走行を確保しつつ、列車T2の通過によるレールRのゆがみの発生を抑制できる。
【0032】
なお、温度検知器及び地上子の設置数や設置間隔等を任意に設定できる点、第2比較温度以上を検知した温度検知器が設けられたレール区間だけではなく、その前後のレール区間を含めたレール区間を「徐行区間」としてもよい点、及び、入力された検知温度の少なくとも一つが第2比較温度以上となったことを条件に電文作成部31が「徐行区間」を特定する電文を作成してもよい点などについては上記第1実施形態と同様である。
【0033】
ところで、上記第2実施形態において、地上装置3(電文作成部31)は、第2比較温度以上の検知温度を入力した温度検知器がある場合に、当該温度検知器が設けられたレール区間を「徐行区間」とする電文を作成しているが、これに代えて、当該温度検知器が設けられたレール区間を「運休区間」とする電文を作成するようにしてもよい。この場合、車上装置7(速度制御部425)は、「運休区間」とされたレール区間前の所定位置において列車T2を待機(停止)させるように列車T2の速度制御を行う。ここで、「運休区間」とされたレール区間前の所定位置で列車T2を待機(停止)させることには、当該レール区間の直前の駅や列車T2の現在の走行位置から走行方向で見て最も近い駅に列車Tを待機させることが含まれる。
【0034】
また、上記第2実施形態において、状態検知装置3はレールRの状態としてレール温度を検知しているが、レール温度に代えて又は加えてレールRの振動を検知するようにしてもよい。この場合、状態検知装置3は、レール区間毎に設けられた温度検知器に代えて又は加えて振動検知器を有する。振動検知器は、例えば、振動を圧電効果によって電圧に変換して出力する振動センサと、振動センサの振動信号を増幅する増幅器とで構成することができる。また、地上装置5(電文作成部51)は、列車T2が各レール区間を通過する際の各振動検知器の平常時の出力信号を記憶しておき、この記憶した各振動検知器の平常時の出力信号と実際の各振動検知器の出力信号とを比較する。そして、比較の結果、両者の差が予め設定された判定値を超える場合に、レールRの異常振動を検知したと判断し、当該振動検知器が設けられたレール区間を「徐行区間」又は「運休区間」とする電文を作成する。このようにすれば、列車T2の安全な走行をより効果的に確保することのできる列車制御装置を構成できる。
【0035】
以上、本発明の第1、第2実施形態及びその変形例について説明したが、これらを適宜組み合わせて列車制御装置を構成してもよいことはもちろんである。
例えば、電文作成部31が、入力された各温度検知器の検知温度と、第1,第2比較温度とを比較して電文を作成するようにしてもよい。この場合、入力された検知温度の中に第2比較温度以上のものがある場合には当該温度検知器が設けられたレール区間を「徐行区間」とする電文を作成し、入力された検知温度の中に第1比較温度以上かつ第2比較温度未満のものがある場合には当該温度検知器が設けられたレール区間を「要冷却区間」とする電文を作成するように電文作成部31を構成することができる。
【0036】
また、以上では、車上装置において、列車位置演算部422が、入力された地上子の位置情報と速度発電機5の出力信号から得られる走行距離情報とに基づいて列車T1の走行位置(現在位置)を演算しているが、これに限るものではなく、他の方法によって列車の走行位置(現在位置)を確認するように構成してもよい。例えば、地上側から無線によって列車の走行位置情報が伝送される場合には、車上装置の制御部(冷却制御部、速度制御部)は、列車位置演算部422によって演算される列車の走行位置に代えて、無線によって伝送される列車の走行位置を用いてレール冷却装置を制御したり、列車の速度を制御したりすることができる。
さらに、以上では、地上子と車上子とが電磁結合することによって地上装置と車上装置との間で情報の送受信が行われる、すなわち、ある地点における点伝送の形態で説明しているが、地上装置と車上装置との間で情報が送受信されればよく、例えば、受電器とレール伝送とを組み合わせた形態としたり、無線を用いた連続的な伝送を行う形態としたりしてもよいことはもちろんである。
【符号の説明】
【0037】
1…列車制御装置、2…状態検知装置、3…地上装置、4…車上装置、5…速度発電機、6…レール冷却装置、7…車上装置、21a〜n…温度検知器、31…電文作成部、32a,b…地上子、41…車上子、42…制御部、72…制御部、421…データベース、422…列車位置演算部、423…電文処理部、424…冷却制御部、425…速度制御部、R…レール、T1,T2…列車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールの状態を検知する状態検知装置と、
地上側に設けられ、前記状態検知装置によって検知されたレールの状態に基づいて列車制御に用いる制御情報を作成する地上装置と、
前記レール上を走行する列車に搭載され、前記地上装置から前記制御情報を受信して当該列車の制御を行う車上装置と、
を含む、列車制御装置。
【請求項2】
前記列車は、前記レールの冷却を行うレール冷却装置を備え、
前記状態検知装置は、予め設定された検知位置でレール温度を検知し、
前記地上装置は、前記状態検知装置によって検知されたレール温度が予め設定された第1比較温度以上である場合には、前記レールの前記第1比較温度以上のレール温度が検知された検知位置を含む第1所定区間において前記レール冷却装置を作動させるための制御情報を作成し、
前記車上装置は、前記地上装置から前記制御情報を受信すると、前記列車が前記第1所定区間を走行するときに前記レール冷却装置を作動させる、請求項1に記載の列車制御装置。
【請求項3】
前記車上装置は、前記第1所定区間において当該区間における通常の走行速度よりも低い速度で前記列車を走行させる、請求項2に記載の列車制御装置。
【請求項4】
前記状態検知装置は、予め設定された検知位置でレール温度を検知し、
前記地上装置は、前記状態検知装置によって検知されたレール温度が予め設定された第2比較温度以上である場合には、前記レールの前記第2比較温度以上のレール温度が検知された検知位置を含む第2所定区間において前記列車を徐行させるための制御情報又は前記第2所定区間前の所定位置で前記列車を待機させるための制御情報を作成し、
前記車上装置は、前記地上装置から前記制御情報を受信すると、前記第2所定区間において前記列車を徐行させ又は前記第2所定区間前の所定位置で前記列車を停止させるように前記列車の速度を制御する、請求項1〜3のいずれか一つに記載の列車制御装置。
【請求項5】
前記第2比較温度は前記第1比較温度よりも高い、請求項4に記載の列車制御装置。
【請求項6】
前記状態検知装置は、予め設定された検知位置で前記レールの振動を検知し、
前記地上装置は、前記状態検知装置によって前記レールの異常振動が検知されると、前記レールの前記異常振動が検知された検知位置を含む第3所定区間において前記列車を徐行させるための制御情報又は前記第3所定区間前の所定位置で前記列車を待機させるための制御情報を作成し、
前記車上装置は、前記地上装置から前記制御情報を受信すると、前記第3所定区間において前記列車を徐行させ又は前記第3所定区間前の所定位置で前記列車を停止させるように前記列車の速度を制御する、請求項1〜5のいずれか一つに記載の列車制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−224120(P2012−224120A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91140(P2011−91140)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】