説明

列車情報管理装置および列車情報管理方法

【課題】次の運行までの停車時間が短い場合にも次の運行の案内処理の設定を確実に行うことができる列車情報管理装置を得ること。
【解決手段】車両内での案内の表示や放送の案内処理を行う列車情報管理装置であって、列車の終着駅、始発駅および現在駅の初期値を含む設定情報と駅名データに基づいて現在駅を更新する現在駅更新部19と、設定情報と更新された現在駅とに基づいて案内処理を実行する案内実行部15と、設定情報が入力されると終着駅に停車中であるか否かを判断する判断部13、終着駅に停車中と判断した場合に入力された設定情報を案内実行部15および現在駅更新部19に設定し、終着駅に停車中でないと判断した場合には入力された設定情報を案内設定情報保持部16へ保持し、終着駅に停車中と判断すると案内設定情報保持部16に保持されている設定情報を案内実行部15および現在駅更新部19に設定する設定情報反映部14と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列車情報管理装置および列車情報管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
列車の車内では、次駅や乗り換え案内等を表示する案内表示や列車の行き先等の放送(自動放送)が実施されている。従来の列車情報管理装置では、路線ごとに駅名や駅間距離等のデータを保持しておき、列車の行き先等の情報が入力されることにより、あらかじめ作成された表示内容,放送される音声の案内情報に基づいて案内表示や自動放送を実行している。
【0003】
また、下記特許文献1では、駅名データや運行ダイヤ等のデータをIC(Integrated Circuit)カードに記録し、列車の表示制御装置がICカードからデータを読み出して、案内表示や自動放送を実行する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−213201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の技術によれば、列車の行き先等の情報が入力されることにより案内表示や自動放送を実行しているが、これらの情報の入力は、操作者が列車の運転台表示器の画面を操作する等により実施される。このため、折り返し運転時等のように直前の運行から次の運行までの時間が短い場合、情報の入力が間に合わず、案内表示や自動放送が遅延する可能性がある、という問題があった。また、折り返し運転の場合、終着駅に到着して停車中にこれらの情報を入力してから発車するとした場合、停車時間として情報を入力ができる十分な時間を確保する必要があり、停車時間を一定以上短くすることができない、という問題があった。
【0006】
また、上記特許文献1に記載の技術では、1つの運行区間について駅データや表示内容が格納されたICカードからデータを読み込こんでいるが、列車の行き先や種別等が変更される場合の動作については述べられていない。このため、列車の行き先や種別等が変更になるときには、なんらかの設定作業が必要となり、上記の従来の技術と同様の問題が生じる。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、次の運行までの停車時間が短い場合にも次の運行についての案内処理に関する設定を確実に行うことができる列車情報管理装置および列車情報管理方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、1つ以上の車両により構成される列車に搭載され、前記車両において案内の表示と放送の少なくとも一方を案内処理として実施する列車情報管理装置であって、記憶部と、前記列車の終着駅、始発駅および現在駅の初期値を含む設定情報と、停車の順序と駅名とが対応づけて格納されている駅名データと、に基づいて現在駅を更新する現在駅更新部と、前記設定情報と前記現在駅更新部により更新された現在駅とに基づいて前記案内処理を実行する案内実行部と、前記設定情報が入力されると前記列車が終着駅に停車中であるか否かを判断する判断部と、前記判断部が終着駅に停車中であると判断した場合には入力された前記設定情報を前記案内実行部および前記現在駅更新部に設定し、前記判断部が終着駅に停車中でないと判断した場合には、入力された前記設定情報を前記記憶部へ保持し、終着駅に停車中であると判断すると前記記憶部に保持されている前記設定情報を前記案内実行部および前記現在駅更新部に設定する設定情報反映部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、次の運行までの停車時間が短い場合にも次の運行についての案内処理に関する設定を確実に行うことができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、列車情報管理装置を備える列車の構成例を示す図である。
【図2】図2は、中央装置の機能構成例を示す図である。
【図3】図3は、端末装置の機能構成例を示す図である。
【図4】図4は、案内処理設定の画面の一例を示す図である。
【図5】図5は、列車情報設定の画面の一例を示す図である。
【図6】図6は、列車種別選択の画面の一例を示す図である。
【図7】図7は、始発駅選択の画面の一例を示す図である。
【図8】図8は、案内処理の設定手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明にかかる列車情報管理装置および列車情報管理方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
実施の形態.
図1は、本発明にかかる列車情報管理装置を備える列車の構成例を示す図である。図1に示される列車編成は、車両TC(Train Control)1,M2−1,M1−1,M2−2,M1−2,TC2で構成される。
【0013】
車両TC1には、情報制御中央装置(以下単に「中央装置」と称する)1が搭載され、車両M2−1,M1−1,M2−2,M1−2には、情報制御端末装置(以下単に「端末装置」と称する)2−1,2−2,2−3,2−4がそれぞれ搭載されている。車両TC2についても、車両TC1と同様の構成である。この列車の走行時には、車両TC1、車両TC2のうちいずれかが先頭車両となって走行する。
【0014】
車両TC1は、中央装置1と、中央装置1に接続された機器3−1〜3−3と、中央装置1に接続されたマスターコントローラ(マスコン:主幹制御器)3−4と、運転台表示器3−11と、を備える。機器3−1〜3−3は、例えば、空調装置,ブレーキ等であり、中央装置1は、機器3−1〜3−3を制御するための制御情報を送信するとともに、例えば定期的に機器3−1〜3−3から所定の機器情報を取得している。
【0015】
車両M2−1は、端末装置2−1と、機器3−5〜3−7と、を備える。機器3−5〜3−7は、例えば、空調装置等であり、端末装置2−1は、機器3−5〜3−7を制御するための制御情報を送信するとともに、例えば定期的に機器3−5〜3−7から所定の機器情報を取得している。
【0016】
車両M1−1は、端末装置2−2と、機器3−5,3−6,3−8と、VVVF(推進装置)3−9と、ブレーキ装置3−10と、を備える。機器3−5,3−6,3−8は、例えば、空調装置等であり、端末装置2−2は、機器3−5,3−6,3−8、VVVF3−9、ブレーキ装置3−10を制御するための制御情報を送信するとともに、例えば定期的に機器3−5,3−6,3−8、VVVF3−9、ブレーキ装置3−10から所定の機器情報を取得している。なお、以下では、単に機器と記載した場合には、機器3−1〜3−3,3−5〜3−8だけでなくマスコン3−4、VVVF3−9、ブレーキ装置3−10および運転台表示器3−11についても含むこととする。
【0017】
車両TC2は、車両TC1と同様の構成である。車両M2−2は、車両M2−1と同様の構成であり、端末装置2−3は端末装置2−1と同様の機能を有する。車両M1−2は、車両M1−1と同様の構成であり、端末装置2−4は端末装置2−2と同様の機能を有する。
【0018】
なお、図1では、中央装置および端末装置2−1〜2−4は、それぞれ自車両内の機器と接続する構成であるが、自車両内の機器だけでなく他車両内の機器と接続して他車両の機器と情報を送受信する構成としてもよい。
【0019】
本実施の形態の列車情報管理装置は、中央装置1および端末装置2−1〜2−4で構成される。なお、ここでは、車両TC1を1号車とし、車両TC1が先頭車両である例について説明する。車両TC1が先頭車両であるため、車両TC1のマスコン3−4を用いて運転操作が実施されているとする。
【0020】
なお、折り返し運転の場合、6号車の車両TC2についても、車両TC1と同様にマスコン3−4を備え、6号車が先頭車両となった場合には、車両TC2のマスコン3−4を用いる。また、折り返し運転の場合、一般には、後述の案内処理に関する設定情報の入力は、折り返し前に先頭車両となる車両TC1の運転台表示器3−11から入力されると想定されるが、車両TC2の運転台表示器3−11から設定情報が入力されてもよい。
【0021】
中央装置1,端末装置2−1〜2−4は、自身に接続されている機器との間で制御情報や機器情報の送受信を行うとともに、自身が取得した機器情報等を例えばブロードキャストにより互いに通知し合っている。
【0022】
例えば、運転台表示器3−11が操作されることにより制御情報(各機器を制御するための制御情報)が入力されると、運転台表示器3−11は中央装置1へ制御情報を送信する。運転台表示器3−11からの制御情報の送信は、例えば一定周期で実施される。中央装置1は、運転台表示器3−11から受信した制御情報の全部または一部を端末装置2−1〜2−4および他の中央装置1へ送信する。端末装置2−1〜2−4および他の中央装置1は、制御情報を受信すると、自身に接続されている機器に送信すべき情報を選択して、選択した情報を当該機器へ送信する。
【0023】
図2は、本実施の形態の中央装置1の機能構成例を示す図である。図3は、本実施の形態の端末装置2−1の機能構成例を示す図である。図2および図3では、案内処理の設定動作に関係する構成要素のみを図示しており、中央装置1および端末装置2−1は、図2および図3で図示した以外の構成要素を備えている。また、端末装置2−2〜2−4についても案内情報の設定動作に関係する構成は、端末装置2−1と同様である。
【0024】
図2に示すように、中央装置1は、設定情報取得部11と、設定情報通知部12と、判断部13と、設定情報反映部14と、案内実行部15と、案内設定情報保持部16と、案内情報保持部17と、機器情報取得部18と、現在駅更新部19と、を備えている。案内設定情報保持部16および案内情報保持部17は、記憶部を構成する。
【0025】
また、端末装置2−1は、図3に示すように、設定情報取得部11および設定情報通知部12の代わりに設定情報受信部20を備え、中央装置1と同様に判断部13と、設定情報反映部14と、案内実行部15と、案内設定情報保持部16と、案内情報保持部17と、機器情報取得部18と、現在駅更新部19と、を備える。
【0026】
機器情報取得部18は、中央装置1が接続する自車両内の機器3−1〜3−3からの情報(以下、機器情報という)を取得するとともに、他車両の端末装置2−1および中央装置1がそれぞれ取得した機器情報を受信する。また、機器情報取得部18は、中央装置1が接続する自車両内の機器3−1〜3−3から取得した機器情報のうち少なくとも一部を他車両の端末装置2−1および中央装置1へ定期的に送信する。
【0027】
機器情報取得部18は、様々な機器情報を取得するが、本実施の形態では、案内処理に用いる機器情報として、列車の速度とドア開閉状態を示すドア開閉信号とを少なくとも取得する。本実施の形態では、列車の速度を検出する速度検出部4を全車両または1つ以上の車両が備えており、機器情報取得部18は、機器情報の一部として速度検出部4から速度を取得する。速度検出部4は、機器3−1〜3−3,3−4〜3−8で示した機器のうちのいずれか1つであってもよいし、機器3−1〜3−3,3−4〜3−8で示した機器を構成する構成要素であってもよい。ドア開閉検出部5については全車両が備えていることとし、速度検出部4と同様に、機器3−1〜3−3,3−4〜3−8で示した機器のうちのいずれか1つであってもよいし、機器3−1〜3−3,3−4〜3−8で示した機器を構成する構成要素であってもよい。
【0028】
ここで、本実施の形態の列車における案内処理について説明する。本実施の形態では、各車両の中央装置1または端末装置2−1〜2−4が、次駅や乗り換え案内等を車両内の表示器(図示せず)に表示する案内表示と、行き先や次駅等を音声により放送する自動案内放送と、のうち少なくとも1つを案内処理としてそれぞれ実行する。案内処理は、次駅案内や乗り換え案内等の案内の情報を乗客に通知する処理であればよく、これらの情報を通知する手段としては表示でも放送でもその両方でも良い。
【0029】
この案内処理は、図2および図3に示した案内実行部15が実行する処理である。また、案内情報保持部17は、路線ごとに駅名情報、駅間距離、乗り換え案内等の情報(案内情報)を保持している。そして、案内実行部15は、始発駅、行き先(終着駅)、列車種別(普通、快速等)、現在駅が設定されると、保持している案内情報と列車の速度やドアの開閉状態等情報とを用いて自動的に案内表示や自動案内放送を実施する。なお、現在駅については、後述のように、現在駅更新部19が設定された現在駅を初期値として、駅に停車するごとに更新していく。
【0030】
具体的には、案内処理としては、例えば、始発駅では、列車の行き先、路線名、停車駅等あらかじめ定められた内容の自動放送を実施したり、列車内の表示器の現在駅の表示として始発駅の駅名を表示したりの処理を実施する。また、列車の速度に基づいて始発駅からの走行距離を計測し、走行距離と次の駅との駅間距離とに基づいて、次の駅までの距離が所定の距離以内となった場合に、次駅の駅名を案内する自動放送や車内表示を実行する。以降、同様に、駅に停車するごとに、直前の停車駅からの走行距離を計測し、走行距離と次の駅との駅間距離とに基づいて次駅の駅名を案内する自動放送や車内表示を実行する。
【0031】
始発駅、行き先(終着駅)、列車種別(普通、快速等)、現在駅等は、運転台表示器3−11に表示される画面を用いて、操作者が入力を行うことにより設定される。案内実行部15は、運転台表示器3−11から設定された情報を取得する。なお、運転台表示器3−11の画面を用いて、操作者が入力を行うことにより設定されるとしたが、他の入出力装置を用いてこれらの設定がなされるようにしてもよい。その場合、案内実行部15は、その入出力装置から設定された情報を取得する。
【0032】
図4は、案内処理設定の画面31の一例を示す図である。案内処理設定の画面31には、図4に示すように、現在設定されている列車情報(路線名、列車種別、始発駅および終着駅)と現在駅が表示される。そして、画面31には「列車情報設定」と表示されたボタン41と、「現在駅設定」と表示されたボタン42と、が表示されている。
【0033】
列車情報設定のボタン41が操作者により選択されると、画面は列車情報の設定画面に遷移する。図5は、列車情報設定の画面32の一例を示す図である。列車情報は、それぞれ項目ごとに、番号入力の欄に番号を入力できるようになっており、番号により各項目の入力を行うことができる。また、各項目の右に表示されている「選択画面へ」と表示されたボタン43〜45をそれぞれ選択することにより、番号入力ではなく選択による入力を行う画面に遷移する。なお、ここでは、路線名についてはあらかじめ設定されているとし、列車情報設定では設定しないこととしているが、路線名についても他の項目と同様に列車処理設定で設定するようにしてもよい。
【0034】
画面32で、ボタン43が選択された場合は、列車種別選択の画面へ遷移する。図6は、列車種別選択の画面33の一例を示す図である。画面33には、「普通」と表示されたボタン46と「快速」と表示されたボタン47が表示されている。ボタン46が選択された場合は、列車種別として「普通」が設定されたという情報が運転台表示器3−11から中央装置1へ送信され、ボタン47が選択された場合は、列車種別として「快速」が設定されたという情報が運転台表示器3−11から中央装置1へ送信される。
【0035】
画面32で、ボタン44が選択された場合は、始発駅選択の画面へ遷移する。図7は、始発駅選択の画面34の一例を示す図である。画面34には、「C」駅、「D」駅等の駅名が表示されたボタン48が表示されている。各駅名が表示されたボタン48が選択された場合は、当該ボタンに対応する駅が始発駅として設定されたという情報が運転台表示器3−11から中央装置1へ送信される。
【0036】
同様に、画面32で、ボタン45が選択された場合は、終着駅選択の画面へ遷移する。終着駅選択の画面例は図示しないが、始発駅と同様に、駅名が表示されたボタンを用いて駅名を選択する画面とする。
【0037】
また、図4で示した画面31のボタン42が選択された場合は、現在駅設定の画面へ遷移する。現在駅設定は、画面例の図示は省略するが、列車情報設定と同様に番号による入力と駅名の選択による入力との両方の画面を用いて選択可能とする。
【0038】
なお、上述した各画面の表示内容や表示位置および各設定情報の入力方法は、一例であり、上述の例に限定されない。
【0039】
そして、上述の設定がなされた後は、現在駅更新部19は、現在駅の初期値を、設定された現在駅とし、以降、始発駅と終着駅と列車種別と案内情報保持部17に保持されている駅名データに基づいて、現在駅を更新していく。なお、駅名データは各路線について停車駅の駅名が停車する順に記載されているデータとする。停車する順は、往復で逆になるため、方向ごとに駅名データを保持するようにしてもよいが、片側の走行方向で駅名データを作成しておき、逆の方向に走行する場合には、データを逆の順に参照するようにして往復で1つの駅名データを用いるようにしてもよい。また、普通、快速等の列車種別により停車駅が異なる場合、駅名データに快速で停車するか否かの情報を付加しておいてもよいし、快速の停車駅は別の駅名データとして保持するようにしてもよい。
【0040】
現在駅の更新方法は、どのような方法で実施してもよいが、例えば、ドアの開閉信号に基づいて、ドアが開閉された場合には駅に停車したと判定して順次現在駅を更新する方法や、ドアが開閉されかつ列車の速度が所定の値(例えば、時速5km)以下となった場合に、駅に停車したと判定して順次現在駅を更新する方法等が考えられる。
【0041】
そして、案内実行部15は、現在駅と案内情報保持部17に保持されている案内情報とに基づいて案内表示や自動案内放送を実行する。なお、次駅の表示や次駅の自動案内放送のために、次駅までの距離を用いる場合がある。この場合、案内実行部15は、案内情報として保持されている駅間距離と現在駅とに基づいて、次駅までの距離を把握する。そして、次駅までの距離が一定値以内となった場合に、次駅の表示や次駅の自動案内放送を実行する。
【0042】
従来は、例えば始発駅において、操作者により上述した案内処理設定の画面等を用いて、案内処理を行うための設定がなされていた。このため、終着駅に到着後に短時間の停車後に折り返し運転を行う場合等には、この設定が間に合わないこともあった。本実施の形態では、短時間停車後の折り返し運転を行う場合等にも、確実に設定が行われるよう以下に示すような手順で案内処理の設定を実施する。
【0043】
ここでは、一例として、図1に示した列車が折り返し運転を行うとし、折り返し前には、車両TC1を先頭として走行し、折り返し後には車両TC2を先頭として走行する例について説明する。なお、折り返し前に車両TC2を先頭として走行し、折り返し後には車両TC1を先頭として走行する場合には、車両TC1と車両TC2の動作を入れ替えればよい。また、折り返し運転をせず、車両TC1を先頭として走行して一旦終着駅へ到着し、再び車両TC1を先頭として次の終着駅へ走行する場合についても、案内処理に関する設定情報の入力に関する動作は、以下に述べる動作と同様である。
【0044】
図8は、本実施の形態の案内処理の設定手順の一例を示すフローチャートである。まず、中央装置1の設定情報取得部11は、運転台表示器3−11から案内処理に関する設定情報を取得したか否かに基づいて、案内処理の設定がなされたか否かを判断する(ステップS1)。案内処理の設定がなされていない場合(ステップS1 No)、ステップS1を繰り返す。
【0045】
案内処理の設定がなされた場合(ステップS1 Yes)、設定情報取得部11は、運転台表示器3−11から設定された案内設定情報(始発駅、行き先、列車種別、現在駅)を取得して案内設定情報保持部16へ記録し、設定情報通知部12が他の中央装置1および端末装置2−1〜2−4へ当該案内設定情報を通知する。判断部13が終着駅で停車中であるか否かを判断する(ステップS2)。具体的には、判断部13は、例えば、現在駅更新部19から現在駅を取得し、取得した現在駅が終着駅であり、かつ列車の速度が所定の値(例えば、時速5km)以下、かつ、編成内のドアが1箇所以上「開」である場合に、終着駅に停車中であると判断する。
【0046】
終着駅に停車中の場合(ステップS2 Yes)、設定情報反映部14は、案内設定情報保持部16が保持している案内設定情報を案内実行部15および現在駅更新部19へ反映させ、案内実行部15は、この設定情報に基づいて案内処理を実行する(ステップS4)。なお、反映させた案内設定情報は、案内設定情報保持部16から消去する。または反映させた案内設定情報を消去せずに、案内設定情報の記録時刻を管理し、ステップS4では最新の案内設定情報を読み出して反映させるようにしてもよい。
【0047】
終着駅に停車中でない場合(ステップS2 No)、案内設定情報保持部16はステップS1で記録された案内設定情報を保持したままとし(ステップS3)、ステップS2へ戻る。
【0048】
以上のように、本実施の形態では、折り返し前の走行中に、例えば図4〜図7で例示した画面を用いて操作者が案内処理の設定を行っておき、終着駅に到着するまでは、設定された案内設定情報を反映せずに保持し、終着駅に到着して停車すると保持している案内設定情報を反映して案内処理を実行することができる。
【0049】
端末装置2−1〜2−4については、上述のステップS1の判断において、運転台表示器3−11から案内設定情報を取得したか否かではなく、設定情報受信部20が中央装置1から案内設定情報を受信したか否かにより判断する。ステップS1以外は中央装置1と同様に案内処理の設定処理を実行する。
【0050】
なお、ここでは、端末装置2−1〜2−4がそれぞれ中央装置1と同様に、終着駅に到着したか否かを判断しているが、終着駅に停車中であるか否かは中央装置1のみが判断し、中央装置1が、終着駅に停車中と判断した場合に、その旨を端末装置2−1〜2−4へ通知するようにしてもよい。この場合、端末装置2−1〜2−4は、案内設定情報を受信すると保持しておき、終着駅に停車中という旨の通知を中央装置1から受信した場合に、案内設定情報を反映する。
【0051】
以上のように、本実施の形態では、列車の走行中に、案内処理の設定を受け付け、終着駅に到着するまでは設定された案内設定情報を反映せずに保持し、終着駅に到着したと判断すると保持している案内設定情報を反映して案内処理を実行するようにした。このため、停車中の列車の行き先等の設定時間を短縮することができ、折り返し運転等のように終着駅での停車時間の短い場合にも次の運行についての案内処理に関する設定を確実に行うことができる。
【符号の説明】
【0052】
1 中央装置
2−1〜2−4 端末装置
3−1〜3−3,3−5〜3−8 機器
3−4 マスコン
3−9 VVVF
3−10 ブレーキ装置
3−11 運転台表示器
4 速度検出部
5 ドア開閉検出部
11 設定情報取得部
12 設定情報通知部
13 判断部
14 設定情報反映部
15 案内実行部
16 案内設定情報保持部
17 案内情報保持部
18 機器情報取得部
19 現在駅更新部
20 設定情報受信部
31〜34 画面
41〜48 ボタン
TC1,TC2,M1−1,M1−2,M2−1,M2−2 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の車両により構成される列車に搭載され、前記車両において案内の表示と放送の少なくとも一方を案内処理として実施する列車情報管理装置であって、
記憶部と、
前記列車の終着駅、始発駅および現在駅の初期値を含む設定情報と、停車の順序と駅名とが対応づけて格納されている駅名データと、に基づいて現在駅を更新する現在駅更新部と、
前記設定情報と前記現在駅更新部により更新された現在駅とに基づいて前記案内処理を実行する案内実行部と、
前記設定情報が入力されると前記列車が終着駅に停車中であるか否かを判断する判断部と、
前記判断部が終着駅に停車中であると判断した場合には入力された前記設定情報を前記案内実行部および前記現在駅更新部に設定し、前記判断部が終着駅に停車中でないと判断した場合には、入力された前記設定情報を前記記憶部へ保持し、終着駅に停車中であると判断すると前記記憶部に保持されている前記設定情報を前記案内実行部および前記現在駅更新部に設定する設定情報反映部と、
を備えることを特徴とする列車情報管理装置。
【請求項2】
前記判断部は、前記現在駅更新部により更新された現在駅が終着駅と一致し、かつ前記列車の速度が一定値以下であり、かつ前記列車の1つ以上のドアが開状態である場合に、終着駅に停車中であると判断する、ことを特徴とする請求項1に記載の列車情報管理装置。
【請求項3】
前記一定値を時速5kmとする、ことを特徴とする請求項2に記載の列車情報管理装置。
【請求項4】
前記案内実行部は、前記現在駅更新部により更新された現在駅と予め保持している駅間距離と当該現在駅からの前記列車の走行距離とに基づいて次駅を通知する案内処理を実行する、ことを特徴とする請求項1、2または3に記載の列車情報管理装置。
【請求項5】
前記列車情報管理装置は、中央装置と端末装置とで構成され、
前記中央装置および前記端末装置は、前記記憶部、前記判断部、前記現在駅更新部および前記案内実行部をそれぞれ備え、
前記中央装置は、前記列車の先頭車両に搭載される運転台表示器から、前記運転台表示器を用いて入力された前記設定情報を取得し、取得した前記設定情報を前記端末装置へ送信する、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の列車情報管理装置。
【請求項6】
1つ以上の車両により構成される列車に搭載され、前記車両において案内の表示と放送の少なくとも一方を案内処理として実施する列車情報管理装置における列車情報管理方法であって、
前記列車の終着駅、始発駅および現在駅の初期値を含む設定情報と、停車の順序と駅名とが対応づけて格納されている駅名データと、に基づいて現在駅を更新する現在駅更新ステップと、
前記設定情報と前記現在駅更新部により更新された現在駅とに基づいて前記案内処理を実行する案内実行ステップと、
前記設定情報が入力されると前記列車が終着駅に停車中であるか否かを判断する判断ステップと、
前記判断ステップで終着駅に停車中であると判断した場合には入力された前記設定情報を前記案内実行ステップおよび前記現在駅更新ステップにおける前記設定情報として設定し、前記判断ステップで終着駅に停車中でないと判断した場合には、入力された前記設定情報を前記記憶部へ保持し、終着駅に停車中であると判断すると前記記憶部に保持されている前記設定情報を前記案内実行ステップおよび前記現在駅更新ステップにおける前記設定情報として設定する判断ステップと、
を含むことを特徴とする列車情報管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−95328(P2013−95328A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241453(P2011−241453)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】