説明

列車混雑情報サービスシステム

【課題】可動ホーム柵のゲート管理機能を利用して、車両の大幅な改造を伴うことなく、さらには次列車を待つ乗客と次々列車を待つ乗客とを区別できる列車混雑情報サービスシステムを提供する。
【解決手段】可動ホーム柵10の支障物センサ12がこの可動ホーム柵10の扉開口を通過する乗客数を計測し、この乗客数データは列車混雑情報演算装置20が混雑情報を演算するときに利用され、列車混雑情報演算装置20が当駅における降車予測データと一駅前の混雑情報とから、当駅における混雑情報を演算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄道駅のホームで列車を待つ乗客に対して次に到着する列車の混雑情報を知らせるための列車混雑情報サービスシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
都市近郊の通勤列車は乗客が多く、とくにホームの階段付近やエスカレータ付近に停車する車両は多くの乗客が乗車するので、車両内が非常に混雑することが知られている。列車の一部の車両が他の車両と比較して混雑することは、鉄道会社にとっては乗客輸送効率が低下し、乗客にとっては不快な通勤を強いられるという不具合がある。このような不具合を解消するために、次に到着する列車の各車両の混雑情報としての乗車率を表示し、乗客に混雑した車両を避けて空いた車両に乗車するように注意を促すことができる。
【0003】
従来の混雑情報の取得方法では、各車両の床下に重量計を設置し、空車状態の車両重量と乗客が乗車状態の車両重量との差から乗客重量を算出し、統計的に求めた乗客一人当たりの平均重量を使用して乗車率を算出していた(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
また、別の従来の混雑情報の取得方法では、ホームに車両単位で設置されたビデオカメラを用いてホームで列車を待っている乗客を撮影し、撮影画像から車両単位で新たに乗車する乗客数を求めていた(例えば、特許文献2を参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平10−217968号公報
【特許文献2】特開平5−254440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、各車両の床下に重量計を新たに設置することは、車両の大幅な改造を伴うという問題がある。また、都市近郊の鉄道路線では停車駅の異なる列車が次々と運行されており、ビデオカメラ画像では、次列車を待つ乗客と次々列車を待つ乗客とを区別することが困難という問題がある。
【0007】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、可動ホーム柵のゲート管理機能を利用して、車両の大幅な改造を伴うことなく、さらには次列車を待つ乗客と次々列車を待つ乗客とを区別できる列車混雑情報サービスシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明における列車混雑情報サービスシステムは、可動ホーム柵の支障物センサがこの可動ホーム柵の扉開口を通過する乗客数を計測し、この乗客数データは列車混雑情報演算装置が混雑情報を演算するときに利用され、列車混雑情報演算装置が当駅における降車予測データと一駅前の混雑情報とから、当駅における混雑情報を演算するものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、可動ホーム柵のゲート管理機能を利用して、支障物センサがこの可動ホーム柵の扉開口を通過する乗客数を計測し、この乗客数データは列車混雑情報演算装置が混雑情報を演算するときに利用されるので、車両の大幅な改造を伴うことなく、さらには次列車を待つ乗客と次々列車を待つ乗客とを区別できる列車混雑情報サービスシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の形態1における列車混雑情報サービスシステムの機器構成図である。
【図2】実施の形態1における可動ホーム柵の上面図である。
【図3】実施の形態1における案内表示装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は、この発明が適用される実施の形態1を説明するための列車混雑情報サービスシステムの機器構成図である。この列車混雑情報サービスシステムは、所定の鉄道路線の始発駅から終着駅までのすべての鉄道駅に配置されるものとする。図1に示すのは一駅あたりの機器構成であり、可動ホーム柵10、列車混雑情報演算装置20及び案内表示装置30を備える。可動ホーム柵10は、可動扉の開閉動作を制御する制御装置11、可動扉周辺の安全確保のために利用される支障物センサ12を備える。
【0012】
図2は、可動ホーム柵10の上面図である。停車中の列車40の車両ドアの開閉動作に連動するように、制御装置11は可動扉に開閉動作の指令を出力する。この際、制御装置11は支障物センサ12に可動扉の開閉情報を出力する。支障物センサ12は、制御装置11から可動扉の開情報を受け取ると乗客数の計測を開始し、制御装置11から可動扉の閉情報を受け取ると乗客数の計測を終了する。図2において点線で囲った扇形状部分は、支障物センサ12の検知領域を示す。支障物センサ12は、例えばレーザセンサであって所定時間毎にスキャンを繰り返す。支障物センサ12または支障物センサ12に接続されたセンサ補助基板には、複数のスキャンデータから乗客の動線を検知する動線検知手段を設けたので、乗客が列車に乗ろうとしているのか列車から降りようとしているのか、支障物センサ12はその乗客の動線から判断できる。
【0013】
図3は、案内表示装置30の正面図である。案内表示装置30は改札付近またはコンコースに設置され、乗客に列車の混雑情報を知らせるものである。図3では、発車時刻、行き先、のりば、混雑情報を表示した例を示すが、これに限定するものではない。発車時刻と行き先から、乗客は利用しようとする列車を特定でき、その列車の混雑情報は記号や色で表現してもよく、乗車率のような数値で表示してもよい。
【0014】
次に、列車の混雑情報の算出方法について説明する。まず、始発駅にて列車40の到着後、可動ホーム柵10の制御装置11は、車両ドアが開くのに連動して可動扉に開動作の指令を出力するとともに、支障物センサ12に可動扉の開情報を出力する。可動扉が開いたので、乗客は列車40に乗り込む。このとき、支障物センサ12は、制御装置11から可動扉の開情報を受け取っているので、可動ホーム柵10の扉開口を通過した乗客数の計測を開始する。可動ホーム柵10の扉開口を通過した乗客は、その扉開口に対向する車両ドアから列車40に乗り込むので、可動ホーム柵10のゲート管理機能を利用して、乗客がどの車両ドアから列車40に乗ったかを把握できる。
【0015】
始発駅では、列車40に乗り込む乗客ばかりであるが、まれに一旦乗ってから降りる乗客もいる。そこで、支障物センサ12は、乗客の動線から乗り込む乗客と降りる乗客とを区別できるうえ、乗り込む乗客数を加算して降りる乗客数を減算する乗客カウンタ機能を有している。支障物センサ12は、ホームに配置された全ての可動ホーム柵10に備えられており、それぞれの支障物センサ12はそれぞれの扉開口を通過した乗客数データを列車混雑情報演算装置20に送信する。列車混雑情報演算装置20は、ホームに配置された全ての可動ホーム柵10の支障物センサ12からの乗客数データを用いて、列車40の各車両の乗客数データを算出できる。
【0016】
列車40の発車時刻になると、可動ホーム柵10の制御装置11は、車両ドアが閉じるのに連動して可動扉に閉動作の指令を出力するとともに、支障物センサ12に可動扉の閉情報を出力する。支障物センサ12は、制御装置11から可動扉の閉情報を受け取っているので、可動ホーム柵10の扉開口を通過した乗客数の計測を終了する。列車40が始発駅を発車すると、始発駅の列車混雑情報演算装置20は、次の停車駅(第2駅)の列車混雑情報演算装置20に対して、始発駅における列車40の各車両の乗客数データを送信する。
【0017】
第2駅の列車混雑情報演算装置20は、この駅にて乗客が列車40に乗り込む直前の混雑具合を予測した混雑情報を演算する。このとき、第2駅の列車混雑情報演算装置20は、この駅における列車40の各車両の降車予測データと、受信したばかりの始発駅における列車40の各車両の乗客数データとを用いる。降車予測データとは、この駅で降車する乗客数の予測データであって、列車混雑情報演算装置20のデータベースにあらかじめ記憶されている。降車予測データは、過去の実績としてこの駅で降車した乗客数に基づいて作成されており、車両番号、発車時刻、曜日などと関連している。
【0018】
要するに、第2駅の列車混雑情報演算装置20は、始発駅で乗った乗客数からこの駅で降りると予測される乗客数を減算して、列車40の各車両に残留すると予測される乗客数を算出する。そして、この残留すると予測される乗客数が、例えば乗車率80%を超えるものに相当する場合は「混雑」とし、例えば乗車率50%を超え80%以下のものに相当する場合は「普通」とし、例えば乗車率50%以下のものに相当する場合は「空いている」とする。
【0019】
このようにして、第2駅の列車混雑情報演算装置20は、この駅にて乗客が列車40に乗り込む直前の混雑具合を予測した混雑情報を、車両ごとに上述した「混雑」、「普通」、「空いている」の3段階で評価し、その評価データを案内表示装置30に送信する。
【0020】
案内表示装置30は、図3に示すとおり各車両の混雑情報を表示する。表示例1の場合は、「混雑」を×、「普通」を△、「空いている」を○というように記号で表現し、表示例2の場合は、「混雑」を赤、「普通」を黄、「空いている」を緑というように色で表現している。また、乗車率をそのまま数値で表現してもよい。案内表示装置30の混雑情報を見た乗客は、各車両の混雑情報を参考にして乗車する車両を選択できる。
【0021】
列車40が第2駅に到着すると、車両ドアが開くのに連動して可動ホーム柵10の可動扉が開動作する。これに合わせて、支障物センサ12が可動ホーム柵10の扉開口を通過した乗客数の計測を開始する。まず列車40から降りる乗客が可動ホーム柵10の扉開口を通過し、続いて列車40に乗り込む乗客が可動ホーム柵10の扉開口を通過する。支障物センサ12は、乗客の動線から乗り込む乗客と降りる乗客とを区別できるうえ、乗り込む乗客数を加算して降りる乗客数を減算する乗客カウンタ機能を有している。それぞれの支障物センサ12はそれぞれの扉開口を通過した乗客数データを列車混雑情報演算装置20に送信する。
【0022】
第2駅の列車混雑情報演算装置20は、始発駅における列車40の各車両の乗客数データと、第2駅の支障物センサ12が計測した乗客数データとを用いて、第2駅における列車40の各車両の乗客数データを算出する。要するに第2駅における列車40の各車両の乗客数データとは、始発駅における列車40の各車両の乗客数から、第2駅にて列車40の各車両から降りた乗客数を減算し、第2駅にて列車40の各車両に乗り込んだ乗客数を加算したデータである。
【0023】
第2駅において列車40の発車時刻になると、車両ドアが閉じるのに連動して可動ホーム柵の可動扉が閉動作し、支障物センサ12は可動ホーム柵10の扉開口を通過した乗客数の計測を終了する。列車40が第2駅を発車すると、第2駅の列車混雑情報演算装置20は、さらに次の停車駅(第3駅)の列車混雑情報演算装置20に対して、第2駅における列車40の各車両の乗客数データを送信する。
【0024】
このような動作を始発駅から終着駅の一駅前までのすべての鉄道駅で繰り返し、その駅にて乗客が列車40に乗り込む直前の混雑具合を予測した混雑情報を、図3のように案内表示装置30に表示する。案内表示装置30の混雑情報を見た乗客は、各車両の混雑情報を参考にして乗車する車両を選択できる。なお、始発駅から終着駅に至るまで、すべての鉄道駅の列車混雑情報演算装置20は通信ネットワークでつながっている。
【0025】
また、支障物センサ12による可動ホーム柵10のゲート管理機能を利用して、乗客がどの車両ドアから列車40に乗ったかを把握できる。そのため、列車40の各車両の混雑情報を取得するのに、車両の大幅な改造を伴うことなく、さらには次列車を待つ乗客と次々列車を待つ乗客とを区別できる。
【符号の説明】
【0026】
10 可動ホーム柵、11 制御装置、12 支障物センサ、20 列車混雑情報演算装置、30 案内表示装置、40 列車。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道駅のホームで列車を待つ乗客に対して次に到着する列車の混雑情報を知らせるための列車混雑情報サービスシステムであって、
可動扉の開閉動作を制御する制御装置及び前記可動扉周辺の安全確保のために利用される支障物センサを備える可動ホーム柵と、前記鉄道駅にて前記乗客が前記列車に乗り込む直前の混雑具合を予測した混雑情報を演算する列車混雑情報演算装置と、前記列車混雑情報演算装置によって演算された前記混雑情報の評価データを表示する案内表示装置とを備え、
前記支障物センサは、前記制御装置によって前記可動扉が開動作すると前記可動ホーム柵の扉開口を通過する乗客数の計測を開始し、前記制御装置によって前記可動扉が閉動作すると前記可動ホーム柵の扉開口を通過する乗客数の計測を終了し、この乗客数データは前記列車混雑情報演算装置が前記混雑情報を演算するときに利用され、
始発駅から終着駅に至るまでそれぞれの鉄道駅の前記列車混雑情報演算装置は通信ネットワークでつながっており、前記混雑情報は前記列車混雑情報演算装置から一駅次の前記列車混雑情報演算装置に送信され、
前記列車混雑情報演算装置は、前記鉄道駅における降車予測データと一駅前の前記列車混雑情報演算装置が演算した前記一駅前の前記混雑情報とから、前記鉄道駅における前記混雑情報を演算することを特徴とする列車混雑情報サービスシステム。
【請求項2】
前記支障物センサは、乗客の動線から乗り込む乗客と降りる乗客とを区別し、乗り込む乗客数を加算して降りる乗客数を減算する乗客カウンタ機能を有することを特徴とする請求項1記載の列車混雑情報サービスシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−101640(P2012−101640A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250879(P2010−250879)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】