説明

列車無線システム及び中央制御装置

【課題】 列車の無線通話装置にあって、中央指令室での操作の簡易化をはかりたい。更にメンテナンス時にあって、中央指令室の介在なしの列車間通話の点検をしたい。
【解決手段】 中央指令室10内に、ゾーン対応に、入線列車番号表示器20と、これに一体化したスイッチ21とを設ける。スイッチ21をオンすれば、その時の対となっている表示器20の列車番号の列車に自動ダイヤルするような構成とする。かくして列車番号のダイヤルをすることなく、スイッチ21のオンによる自動ダイヤルが可能となる。一方、中央制御装置4の中に、通話制御装置51、52、スイッチSW1、SW2、SW3を設けておく。スイッチSW1、2オフ、スイッチSW3オンにより通話制御装置51と52とが直接につながり、中央指令室10の介在をなくしに列車間通話を達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列車無線システム及びそれに使用する中央制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
列車のレールは、数100m〜数kmの単位にゾーン分割され、このゾーン単位に基地局がある。列車はレール上を進行するに従って、次々にゾーンの更新がなされる。新ゾーンに進入すると、この新ゾーン対応の基地局と必要な通信を行う。全基地局は、中央制御装置と通信ができ、中央制御装置が運行状況の監視及び必要な列車制御を行う。中央制御装置は、中央指令室に接続され、中央指令室からの各種の指令を受けたり、あるいは中央指令室に必要な運行データを送る。中央指令室には、指令操作パネルがあり、指令操作者がこの指令操作パネルを介して必要な指令を中央制御装置に送ると共に、中央制御装置からの必要な運行データを受け取り、適宜表示する。
【0003】
各基地局は、自己のゾーンに、列車が入線したことを自動検知し、これを中央制御装置及びこの装置を介して中央指令室に送る。かくして中央制御装置及び中央指令室は、列車の在線ゾーンを自動的に知ることができ、必要な監視や管理を行う。中央指令室と列車との間では、列車内の乗務員と指令操作者との間で通話や指令の確信の話をすることが多い。例えば、列車ダイヤの遅れの連絡、遅れの理由、信号灯の様子、その他種々の運行や列車管理上の通話などがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうした通話に際して、指令操作者側では、指令操作パネルを操作することで通話のための回線接続を行うが、パネルの操作性が悪いとの問題があった。
即ち、中央指令室には、指令操作パネルがあり、このパネルは、運行掲示板とハンドセットとゾーンスイッチとテンキーとを少なくとも備え、指令室操作員が車両を個別に呼び出す場合の操作は、
(1)、操作パネル上の運行掲示板にて、どこのゾーンに車両番号の列車がいるのかを確認する。
(2)、指令操作パネルのハンドセットを持ち上げ、該当するゾーンスイッチを押下する(ゾーンスイッチには照光式押しボタンスイッチを使用)。
(3)、指令操作パネルのテンキーより呼び出したい列車の番号を入力することにより、該当車両への呼び出しが行われる。
かかる構成及び手順を要することから、
・指令操作員が車両を呼び出す際、一連の操作が多く、作業性が悪く、
・列車番号の入力ミスの発生、
するとの問題があった。
【0005】
一方、基地局が多くなり、運行する列車の数が増加すると、列車間の乗務員相互の通話や連絡が必要となる。この場合、中央指令室の指令操作員が中継者となり、回線接続を行った上で、乗務員間の通話や連絡を行わせていた。このやり方では、指令操作者が不在の場合には、乗務員間の通話や連絡は不可能であるとの問題がある。指令操作者が不在の場合とは、夜間の食事時とか、夜間のメンテナンス時とか緊急発生時とかである。従って、乗務員の介在なしに、列車間で通話や連絡を行えることが望ましい。
【0006】
本発明の目的は、列車間の乗務員間の通話を、中央指令室の指令操作員の介在なしに可能にする列車無線システム及びそれに使用する中央制御装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ゾーン区分された線路上の列車と指令操作室との間で基地局と中央制御装置とを介して通話を行う列車無線システムであって、
上記中央制御装置内に、通話系路切換手段を設け、該切換手段は、基地局を介しての指令操作室と列車との間の通話又は指令操作室を介在させての基地局につながる列車間の通話か、指令操作室を介さないでの基地局につながる列車間の通話かの系路選択手段を持つものとした列車無線システムを開示する。
【0008】
更に本発明は、上記列車無線システムにおける中央制御装置であって、
通話系路切換手段を設け、該切換手段は、基地局を介しての指令操作室と列車との間の通話又は指令操作室を介在させての基地局につながる列車間の通話か、指令操作室を介さないでの基地局につながる列車間の通話かの系路選択手段を持つものとした中央制御装置を開示する。
【0009】
更に本発明は、上記系路選択手段は、列車無線システムのメンテナンス時に、指令操作室を介さないでの列車間の通話の系路を選択するものとした中央制御装置を開示する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、指令操作パネルの操作性の向上を達成できた。更に本発明によれば、列車間の通話を中央指令室の操作員の介在なしに、可能にできた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は本発明の指令操作パネル(指令操作装置)の構成例図である。図2は、本発明の列車番号表示付スイッチ2の構成例図である。図1に示すように、指令操作パネル100は、ハンドセット1と、ゾーン対応の数相当数(図では簡単のため4×4の16ゾーン)の列車番号表示付スイッチ2と、コンピュータシステム3(点線で示した。内蔵するためであるが、テンキーや表示器等はパネル上にある)とを少なくとも備える。スイッチ2の具体例が図2であり、4桁数字表示LED表示部20と照光式押しボタンスイッチ部21とを上下に設け一体化したものである。LED表示部20には、そのゾーンに列車6が入線した時に自動的に、列車番号(例えば4桁)を表示する仕組みとなっている。これによって、指令操作者はどの列車が、どのゾーンに入線したかを視覚によって認識できることになる。一方、ボタンスイッチ部21は、操作者の押下により、そのスイッチ部21の上側のLED表示部20で表示中の列車番号の、自動ダイヤルが可能になるような仕組みとなっている。これらの仕組みは、システムとして組み込まれて実現する。
【0012】
図3は、列車無線システム例図を示す。ゾーン対応に基地局5があり、これは、列車6と中央制御装置4との間に介在して両者の交信の中継を行う。中央指令室10と中央制御装置4との間もバスや無線にて接続されている。中央指令室10には、複数の指令操作パネル100があり、指令操作員101の操作を受ける。各ゾーン毎の管理は、対応する基地局5を介して、中央指令室10と中央制御装置4とが行い、また、必要な列車情報の取込みや各種の指令を列車6に送る。
【0013】
操作パネル100のコンピュータシステム3の処理フロー例を図4に示す。コンピュータシステムは、当然のことながら、CPU、メモリ、キーボード、マウス、表示器を持つ。図4で、先ず、運用開始(S30)となり、列車のゾーン進入があるか否かを、対応する基地局5、中央制御装置4を介して入線情報の取込みにより判断する(S31)。ゾーンの確認をとり(S32)、列車番号を確認し(S33)、入線ゾーン対応LED表示器20に列車番号を表示する(S34)。列車番号は、上記入線情報と共に送られてくるやり方、又は中央制御装置4が入力情報を受けてダイヤ管理を行った結果として中央制御装置4から送られてくるやり方のいずれかがある。
【0014】
次に、スイッチ21がオンか否かを判断する(S35)。このオンは、操作者が、列車番号の表示中のLED表示器20に一体化されている下部のスイッチ21を押下することで実現する。スイッチ21のオンにより(S36)、表示中の列車番号の列車に向けて自動ダイヤルを行う(S37)。そして、発呼・通話を行う(S38)。終話により(S39)、運用終了か否か判断し、終了であればS41に移り、終了する。
【0015】
かかる実施の形態によれば、ゾーン対応のLED表示器20には列車番号が自動的に表示され、その下部の対応するスイッチ21をオンすれば、その列車番号の列車に自動的にダイヤルインする。従来は、列車対応のテンキーを押し下げすることでダイヤルインしていたのが、スイッチのオンのみでそれを達成できることになった。
【0016】
LEDの他に、マトリックス型とか他の表示形式の列車番号表示器を採用できる。
【0017】
第2の実施の形態である、指令操作員の介在なしの列車間の乗務員の通話・連絡を可能にする無線装置を説明する。
基地局(BS)を多数持つ運用系で説明する。例えば、45個の基地局があるものとし、この45個の基地局の全ての相互間で、指令操作員の介在なしに列車間乗務員通話を可能にする例とする。
【0018】
図5は、上記第2の実施の形態の全体システム例図である。地下鉄列車の例を示し、複数電車6A、6Bがレール上に在線しているものとする。各列車6A、6Bには、乗務員が操作する車両操作パネルTCP、無線装置CREがあり、アンテナを介してゾーン対応の基地局60−1〜60−nと無線通信を行っている。尚、地下鉄のために、基地局60−1〜60−nは漏洩同軸ケーブルLCXを介してアンテナとの通信を行う。
【0019】
基地局数nは、例えば、n=45の如く多数にのぼる。基地局はゾーンに対応している。
中央制御装置4は、各種の処理や管理を行うプロセッサMPU50の他に、通話制御装置51、52、スイッチSW1〜SW3を持つ。この他にダイヤ管理のためのデータテーブルやデーベースを持つ。更に、通信以外の信号の通信を行う系路やその制御手段を持つが、図面上は省略してある。
【0020】
中央指令室10には、指令操作パネル100、その他の各種の処理、入出力、表示の各手段がある。図5では、通話のための系路及びその手段が示されている。即ち、ハンドセット1からの音声出力系路1A、基地局からの音声入力系路1B、音声戻り系路11A、音声戻りを遮断する時にオンとし、戻りを生かす時オフとなるスイッチ24、アンプ(ミキサ)23等を持つ。音声戻りとは、列車から他の列車へ音声を送る時を指す。
スイッチSW1〜SW3は、以下の2つのモードを持つ。
通常の通話モード…SW1、SW2を共にON、SW3をOFF。
例外通話モード…SW1、SW2を共にOFF、SW3をON。
通常の通話モードとは、指令操作員101と列車との間の通話を行う時、又は指令操作員を介在して列車間の通話を行う時を指す。列車間の直接通話は、列車相互の勝手な運行につながる恐れのため非常に危険を伴う。必ず指令操作員を介在させて、中央操作員の監視やら了解のもとに行わせることが列車運行管理の原則である。従って、上記スイッチSW1、2がON、SW3がOFFである通常の通話をモードでは、操作員101からの指示や指令が系路1A(MICライン)→SW1→制御装置51→対応基地に送られ、その対応する列車からの呼びが、対応基地局→制御装置52→SW2→VOICラインを介して指令室10に送られれてくる。尚、スイッチ24をOFFにしておけば、戻りの音声はなく、ONにしておけば他列車への音声送信となる。
【0021】
例外通話モードとは、列車無線装置のメンテナンス(特に中央制御装置や基地局を介して列車無線の点検)時が代表例であるが、緊急時の特別に許可されたときにも使用可能なモードである。例外通話モードではSW1、SW2が共にOFF、SW3がONとなり、指令操作員の介在なしに、制御装置52から51への系路が形成されて、列車間の直接通話を行う。
SW1、2、3のON、OFFは手動でもソフト的でも何れによっても可能である。
【0022】
尚、メンテナンス時は、メンテナンス専用のメンテナンス操作装置(メンテナンスコンソールとも呼ぶ)を中央制御装置4につなぎ、中央制御装置4、基地局60−1〜60−nの点検、並びに列車との間の無線交信の点検等を行う。また機能として、ハードウェアの点検、ソフトウェアの点検がある。更に、中央指令室10を介在させてのその働きの点検もある。こうした点検の種別や種類の中で、列車間通話の点検がある。且つ中央指令室10を介在しての列車間通話点検、中央指令室を介在しないでの列車間通話点検があり、この後者の点検時に、図5、図6の実施の態様は利用できる。その場合、図5、図6の如き構成によって、列車間通話の点検を実施できることになる。
【0023】
図6は、制御装置51、52の詳細例図である。但し、基地局総数n=45とし、これを15局ずつ3ユニットに分け、その1つのユニットが図6である。又、装置51と52との間には、図5のSW3に相当するスイッチ55が存在する。制御装置52は、インターフェース501〜515とミキサー回路521〜535とを持つ。インターフェース501〜515は基地局BS1〜BS15との接続回路、音声ミキサー回路521〜535は、自己基地局からの信号を除き(×印が、系路遮断を示す)、自己以外の他の14個の局からの信号を入力合成する。自己を排他したのは、発声音が発生源となる列車の乗務員に戻り音の共振が起こるため、即ち、音声の自己共振を防ぐためである。
更に、16個目のミキサー回路536を設けている。このミキサー回路536は、15個の全基地局からの信号を入力して全合成する。そしてその合成出力SE1は、他の2つのユニットに入力する。
【0024】
制御装置51は、音声ミキサー回路561〜575を持ち、スイッチ541〜555を介して、対応するミキサー回路521〜536の合成出力及び他ユニットのSE1対応出力SE2、SE3とを取り込み、合成する。各合成出力は、対応する基地局BS1〜BS15へと送られる。
【0025】
以上の実施の態様によれば、スイッチSW1、SW2をオフとし、スイッチSW3をオン(図5のスイッチ55をオン)とすることで、中央指令室の介在なしに、列車間の通話が可能となった。
【0026】
尚、この列車間の通話にあっては、電話回線の如く自己と相手との通話回線を形成する如き例と、そうした回線を特に形成せず同報通信的に全てに送る例と、の2つがあり得る。前者の通話回線の形式には、ダイヤルインが必要となる。こうした通話回線の形成については、図5、図6では省略してある。一方、後者では、特に通話回線の形成は必要でなく、図5、図6の構成のままで実現できる。
【0027】
図5で中央制御装置4は、機能別に基板化して、それらを積み重ね(ビルディング方式)たやり方を採用すれば、増設や機能の縮小に便利である。この場合、基板化の対象としては以下の如きものがある。
(1)、MPU、制御装置51、52及びそのBSとの間のインターフェース、指令操作パネルインターフェース、
(2)、図6の如き3とのユニット化した時の各ユニット内の制御装置51、52。
【0028】
基地局とゾーンとを一対一に対応させたが、基地局とゾーンとの関係は1:n、n:1、m:nの如き対応例もある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の指令操作パネル例図である。
【図2】本発明の列車番号表示付スイッチの構成例図である。
【図3】本発明の列車無線システムの構成例図である。
【図4】本発明の処理フロー例図である。
【図5】本発明の列車無線システムの構成例図である。
【図6】本発明の音声ミキサー回路例図である。
【符号の説明】
【0030】
1 ハンドセット
2 番号表示付スイッチ
3 コンピュータ
4 中央制御装置
5 基地局

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゾーン区分された線路上の列車と指令操作室との間で基地局と中央制御装置とを介して通話を行う列車無線システムであって、
上記中央制御装置内に、通話系路切換手段を設け、該切換手段は、基地局を介しての指令操作室と列車との間の通話又は指令操作室を介在させての基地局につながる列車間の通話か、指令操作室を介さないでの基地局につながる列車間の通話かの系路選択手段を持つものとした列車無線システム。
【請求項2】
請求項1の列車無線システムにおける中央制御装置であって、
通話系路切換手段を設け、該切換手段は、基地局を介しての指令操作室と列車との間の通話又は指令操作室を介在させての基地局につながる列車間の通話か、指令操作室を介さないでの基地局につながる列車間の通話かの系路選択手段を持つものとした中央制御装置。
【請求項3】
上記系路選択手段は、列車無線システムのメンテナンス時に、指令操作室を介さないでの列車間の通話の系路を選択するものとした請求項2の中央制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−167486(P2008−167486A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−65219(P2008−65219)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【分割の表示】特願平11−90717の分割
【原出願日】平成11年3月31日(1999.3.31)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】