説明

初乳からのペプチドの精製

本発明は、初乳からのペプチドの精製に関する。本方法は、ペプチド・リッチなアルコール相および沈殿を形成させるために混合物にメタノールまたはエタノールなどのアルコールを添加することを含む。ペプチド・リッチなアルコール相は、その後回収されて、さらなる分画に供される。本発明は、特に初乳からのコロストリニンの精製に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、初乳からのペプチドの精製に関する。本発明は、特に初乳からのコロストリニンの精製に関する。
【背景技術】
【0002】
初乳、またははじめてしぼった乳は、濃厚な黄色を帯びた液体であり、哺乳類のメス親の乳房で出産後の数日間生成される。これは、分娩後の最初のミルクであり、高濃度の免疫グロブリン(IgG,IgMとIgA)および非特異的なタンパク質を含む。これは、出産4〜5日後に、成熟した母乳にとって代わる。成熟した母乳と比較すると、初乳は糖と鉄分が低く、脂質、タンパク質、鉱物塩、および免疫グロブリンに富んでいる。また、初乳は、顆粒細胞および間質性細胞,好中球/マクロファージ、並びにリンパ球などの種々の浮遊細胞を含む。
【0003】
初乳に存在するタンパク質の中で、カゼインは、最も一般的であり、全ての哺乳類で同様に凝集体(ミセル)を形成することが既知である。多くのタンパク質およびペプチドは、弱い疎水性およびイオン性の力によって、これらの凝集体に結合される。結果として生じるタンパク質のミセルのネットワークは、脂質、炭水化物、およびペプチドなどの異なる性質の多くの小分子量化合物をトラップする能力を有し、独特の均一溶液を形成する。ミセルは、これらのミクロ分子を初乳の全体にわたって比較的一様に分配させるのを補助し、更にこれらが不必要な凝集体を形成するのも防止する。
【0004】
種々の生物活性を有するミルク由来の多くのペプチドが報告されている。いくつかのペプチドは、天然に存在しており、一部は、親乳タンパク質の酵素的なタンパク質分解を介して放出することができる。カゼインミセルに結合する天然に存在するペプチドは、特に興味がもたれる。カゼインタンパク質、カルシウム、およびホスフェートの他に、ミセルは、シトラート、微量イオン、リパーゼ、およびプラスミン酵素も含み、種々のペプチドが、これらの構造に入り込んでいる。従って、多くのミルク由来成分の下流の精製プロセシングは、最近、酪農業のための最も意欲をかきたてる試みとなっている。
【0005】
一般に、ミルクの下流のプロセシングは、キモシンを添加してカゼインを凝固させ凝乳を得ることによって開始し、次いでこれを液体、乳漿から分離して、その後にこれらをプロセスし、成熟させて、種々のチーズを作製することができる。キモシンは、カッパ‐カゼイン分子を破壊してカゼインミセル全体の崩壊を引き起こす。その結果、ミルクの多くの可溶性画分の成分は、沈殿に入り込むこととなり、無視される。特に、コロストリニンなどの高い疎水性インデックスを有する小分子ペプチドがなくなる可能性がある。
【0006】
コロストリニンを得るための本来の精製プロトコルは(Janusz et al.)、pH依存的なカゼイン沈澱、続いてイオン交換、アフィニティーおよび分子ふるいを含む種々のクロマトグラフィーと硫酸アンモニウム沈殿を組み合わせた工程からなる。この方法は、再現的であるが、工業的応用のためのスケールアップが面倒で、かつ困難である。次いで、膜分離を利用する多くのプロトコルは、ミルクおよび初乳から低分子量のペプチドを回収のために開発されたが、これらは全て、欠点を有していた。
【0007】
酪農業においてミルク成分を分離するための1つの標準的なプロトコルでは、タンジェンタル・フロー濾過(Tangential flow filtration)が使用される。たとえば、Kutzko et al.によるPurification of Biologically Active Peptides from Milkの表題のUS Patent 6,268,487には、タンジェンタル・フロー濾過によるミルク成分の分離のための方法が開示されている。
【0008】
また、Roger et al.,によって、Process for Obtaining ana-Lactalbumin Enriched Product from Whey, and Uses Thereofの表題のUS Patent 4,485,040には、6.3〜7の間(たとえば、6.6)のpHで、30℃〜60℃間の温度において、5,000以上(たとえば、50,000)のカットオフを有する膜でミルク成分を分離するために、限外濾過の使用が提唱されている。
【0009】
また、限外濾過の使用は、Process for Obtaining Transfer Factor from Colostrum, Transfer Factor so Obtained and Use Thereofの表題のUS Patent4,816, 563 Wilson et al.,にも記載されている。実際に、ミルクまたは初乳の濾過は、今日の酪農業において標準的な方法である。Wilson et al.,は、初乳からトランスファー因子を調整するための薬剤の使用を記載している。適切な薬剤は、アルコール、ケトン、およびポリエチレングリコールを含むことが述べられている。しかし、初乳からのコロストリニンの回収の記載はない。
【0010】
US Patent 5,216,129は、タンパク質中に濃縮された乳漿製品からカッパー-カゼイン-グリコマクロペプチド(glycomacropeptide)を得る方法を開示する。本方法は、溶液の量に基づいて、5%〜25%の濃度でのエタノールの使用を含む。乳漿産物は、コロストリニンではない。
【0011】
UK Patent 1, 438,008は、アルコールを使用してカエル皮膚から 特異的なオクタペプチドを抽出するための方法を開示する。
【0012】
JP520062796は、なかでも、アルコールを使用してRibia akane Nakaiの根から環状ペプチドを抽出する方法を開示する。
【0013】
J Pharm Pharmaceut Sci, Vol 5,2002. MEC Lutsiak et al,"Analysis of peptide and lipopeptide content in liposomes", p 279-284では、ペプチドをリポソームから抽出するための方法が開示されている。
【0014】
Journal of Antibiotics, Vol XL, 1987, E Meyers et al,"Xylocandin : a new complex of antifungal peptides1. Taxonomy, isolation and biological activity", p1515-1519では、ペプチドを細菌シュードモナスP・セパシア(pseudomonas cepacia)から抽出する方法が開示されている。
【0015】
Acta Endocrinologica, vol 111, 1986, WFBlum et al, "Isolation and partial characterisation of six somatomedin-like peptides from human plasma Cohn fraction IV", p271-284では、ヒト血漿を使用したエタノールからソマトメジン様のペプチドの抽出が開示されている。
【0016】
J Dairy Research, vol 54,1987, DS Horne, "Ethanol stability of Casein micelles-a hypothesis concerning the role of calcium phosphate", p 389-395では、カゼインミセル構造およびカルシウム放出についての仮定的同化作用が開示されている。
【0017】
Ir. J. Fd. Sci. Technol., vol 9, 1985, MM Hewedi et al, "Recovery of milk protein by ethanol precipitation", p11-13では、エタノールを使用してミルクタンパク質を沈殿させる方法が開示されている。
【0018】
コロストリニンは、コロストリニン(colostrinine)としても知られ、プロリンリッチなポリペプチドまたはPRPであり、1974年にヒツジの初乳からの最初に単離された(Janusz etal, FEBS Lett., 49, 276-279)。
【0019】
コロストリニンの特定の治療での使用は、特にアルツハイマー病の治療において、W098/14473に記載されており、その内容は参照により本明細書に援用される。この特許出願では、コロストリニンの物理的特徴が、いつでも決定可能ものとして記載されていた。物理的特徴は、適切であったものの、コロストリニンの理解は、本出願が出願されてから先へ進んだ。WO98/14473も、コロストリニンを生の初乳から抽出するための方法を記載しており、これは「ヤーヌシュ」方法と称されることが多い。この方法は、現在コロストリニンを初乳から抽出する主要な方法である。産業的なスケールアップして得ることが困難であり、本方法による収率が低いという不利な点を有する。
【0020】
WO00/75173(その内容は、参照により本明細書に援用される)は、コロストリニンにおいて見いだされる多くのペプチドを記載している。W002/46211(その内容は、参照により本明細書に援用される)は、コロストリニンに見いだされる多くのその他のペプチドを記載している。
【0021】
コロストリニンの中でかなりの関心がもたれるものは、初乳だけから単離することができ、成熟ミルクでは単離できない種々のポリペプチドの存在である。分娩後の数日の間の乳腺分泌中のコロストリニンの濃度は、デリバリー後3日が終わると急激に減少する。いくつかのコロストリニン・ペプチドのこのような短い寿命は、乳児の免疫系の初期発生および環境ショックに対する新生児の保護におけるこれらの重要な役割を示す。
【0022】
コロストリニンは、2つの形態;遊離型および凝集型(結合型)で存在することがごく最近発見された。コロストリニンの遊離型は、出生後直ちに現れる酸化的なストレスから生まれたばかりの哺乳類を保護するために必要とされると考えられる。結合型または凝集型は、出生後に長期間この機能を維持するように設計されている。加えて、コロストリニンの結合型は、種々の器官および系の発達および/または保護に関与していると考えられる。これは、酸化的ストレス問題が鎮静して、遊離型のコロストリニン濃度が減少し始めるときに生じる。コロストリニンの結合型は、遊離型が排出されるときに、体液中にゆっくり放出されて生理機能を調整する。このモデルは、分娩後の初乳由来の特異的なコロストリニン・ペプチドの段階的な消失についての研究の支援となることが分かる。
【0023】
コロストリニン複合体は、現在、少なくとも5つのペプチドのサブグループからなると考えられており;それぞれのサブグループは、それ自体が特徴的な疎水性パターンを有する。これらのペプチドは、特別に配置された無極性の、極性の、芳香族の、正および負に荷電したアミノ酸が存在するために、凝集体を形成する傾向を有することを証拠が示唆する。さらにまた、ペプチドのアミノ酸組成およびこれらの疎水性の特性は、この凝集能をさらに示唆する。
【0024】
現在利用できる情報から、本発明者らは、コロストリニン・ペプチドは、これらがこれらの天然の形態で存在するときに最高の生物活性を有することを見いだした。これらが精製されと、これらは互いに相互作用し始めて、明らかに弱い生物活性の非共有結合的に結合した複合体を形成する。コロストリニンは、アネキシン、β-カゼイン、仮定上のβ-カゼイン相同体、および現在のGenBankデータベースのいずれの特異的なタンパク質にも相同性がないその他ものもなどの前駆体タンパク質から誘導される、62以上の別々のペプチドの混合物であると思われている。
【発明の開示】
【0025】
本発明の目的は、高分子量物質を含む液体からペプチドを抽出し、および回収するための新たな方法を開発することである。コロストリニンが生物学的に活性でかつ実質的に純粋である形態で、高収率でこれを産生することができるように、生の初乳からコロストリニンを精製する方法を開発することは、本発明の特定の目的である。本精製法では、遊離型および結合型または凝集型の大部分のコロストリニン・ペプチドを得るはずである。精製されたコロストリニンは、混入物および自己凝集体がなく、単位重量あたりに、活性成分を有すると考えられる。本発明のさらなる目的は、特異的な生物活性によって特徴づけられるペプチドのばらつきのないセットを提供するであろう精製プロトコルを開発することである。
【0026】
本発明は、単純な抽出法を使用して初乳からコロストリニンを高純度で抽出することができるという予想外の発見に基づく。
【0027】
本発明の1つの側面によれば、哺乳類の初乳からペプチドを回収するための方法であって、前記方法は:初乳をアルコールと混合してアルコール相(アルコール相には、アルコールおよび回収される少なくともいくつかのペプチドを含む)および沈殿を形成させることと;前記沈殿からアルコール相を分離すること;およびアルコール相を回収することを含む方法が提供される。
【0028】
本発明は、特に初乳からコロストリニンの精製に適用することができ、以下の明細書では、主にこの特異的な適用に向けられる。
【0029】
アルコールは、初乳と混合したときに、コロストリニン・ペプチドを含むアルコール相を形成することができ、および不必要なより高分子量の物質を沈殿させることができるいずれのアルコールであってもよい。
【0030】
アルコールは、直鎖状でもよく、または分枝であってもよく、1つまたは複数のヒドロキシル基を含んでいてもよく;1つのヒドロキシル基が好ましい。好ましくは、アルコールは、1〜5炭素原子、より好ましくは1〜4炭素原子、最も好ましくは1〜3炭素原子を含む。本発明者らは、メタノールまたはエタノールによって最高の結果が得られることを見いだした。
【0031】
アルコールは、望ましくは濃縮形態の初乳に添加され:好ましくは、アルコールは、少なくとも80%純粋で、より好ましくは少なくとも95%純粋で、および最も好ましくは実質的に100%純粋である。
【0032】
初乳に添加されるアルコールの量は、好ましくは、総組成物の40%(v/v)〜80%(v/v)、より好ましくは50%(v/v)〜70%(v/v)、さらに好ましくは55%(v/v)〜65%(v/v)、および最も好ましくは実質的に60%(v/v)のアルコール濃度を提供するものなどである。
【0033】
生の初乳とアルコールを混合する工程(これは、「抽出」として知られる)は、好ましくは室温で10〜30分間撹拌しながら行われる。これにより、カゼインおよびその他のタンパク質を含む沈殿を形成させ、一方でコロストリニンは、アルコール相の溶液中に残ったままである。コロストリニン・ペプチドは、アルコールの溶液中に実質的に全て残ったっままであり、一方初乳のその他の成分は沈殿するという本発明の重要かつ予想外の特徴である。
【0034】
次いで、沈殿を従来の何らかの手段によって、好ましくは約15,000 gの遠心分離によってアルコール相から分離してもよく、初乳を含むアルコール相が回収される。次いで、コロストリニンは、好ましくは蒸発によってアルコールから分離して、コロストリニン・リッチな相(これは、主にコロストリニンの水溶液である)を形成させ、これが回収される。
【0035】
コロストリニン・ペプチドからアルコールを分離する工程は、蒸発または広範な限外濾過を水または緩衝液の交換と組み合わせて行うことができるが、蒸発が好ましい。蒸発は、典型的には10℃〜50℃の温度範囲で行うことができる。約30℃の温度が好ましい。蒸発または濾過は、たとえば30分〜12時間以上(たとえば、一晩)の期間にわたって行ってもよい。限外濾過も実行可能な選択肢であるが、回収は、蒸発によるほうが高い。真空中での蒸発によってアルコールを除去することが望ましいであろう。アルコールの除去後に、十分な水をコロストリニン・リッチな相に添加して、およそ初期容量の使用液の容量してもよい。
【0036】
好ましい態様において、アルコール抽出工程からの沈殿を、その後にさらなる量のアルコールで洗浄し、アルコール相を再び分離して回収する。この2回目の回収されたアルコール相は、最初の抽出の際に沈殿中に保有されたいくらかのコロストリニン・ペプチドを含むであろう。2回目に回収されたアルコール相を最初の抽出から回収したアルコール相に直接添加してもよく、またはいくらかの又は全部のアルコールを最初に除去してもよい。アルコールが除去されたあと、残遺物を直接コロストリニン・リッチな相に添加することができる。
【0037】
選択的に、残留する可溶化された画分からアルコールを除去する間に形成されたあらゆる沈殿を分離するために、アルコールの除去に続いて、さらなる遠心分離工程を行ってもよい。
【0038】
本発明の特に有利な態様において、沈澱薬が、アルコール相または好ましくは、コロストリニン・リッチな相のいずれかに添加される(好ましくは、何らかのさらなる遠心分離工程の後に)。沈澱薬の目的は、コロストリニン・ペプチドの沈澱を誘導することである。本発明者らは、硫酸アンモニウムが特に沈澱薬として適切であることを見いだしたが、同じ目的を果たすことができるその他の物質を、そのかわりに、または加えて使用することができる。最も有効な沈澱薬は、硫酸塩、リン酸塩、およびクエン酸塩などの複数の荷電した陰イオンを有する塩である。陽イオンに関する限り、一価のイオンを使用するべきであり、NH4-はK+に対して好ましく、K+はNaに対してる好ましい。典型的な沈澱薬は、ナトリウム、カリウム、および硫酸アンモニウム、リン酸塩およびクエン酸塩であるが、硫酸アンモニウム最も好ましい。沈澱薬は、その代わりにポリエチレングリコールなどの有機ポリマーであってもよい。沈澱薬による沈澱により、さらにカゼイン混入を低下させ、さらにコロストリニン・ペプチド画分を精製して、本質的にIgGのないペプチドのばらつきのないプールの形成を約2日で単離することができる。このプロセスにより、コロストリニン・ペプチドの迅速な単離が可能になる。
【0039】
沈澱薬は、望ましくは、30%(w/v)〜80%(w/v)飽和、好ましくは40%(w/v)〜60%(w/v)飽和、および最も好ましくは実質的に50%の(w/v)飽和をもたらすために適した量で添加される。飽和の割合は、液体において、硫酸アンモニウムなどの沈澱薬の飽和をいう。沈澱薬は、好ましくは飽和水溶液(すなわち、100%(w/v)飽和)として添加される。
【0040】
しかし、沈澱薬はまた、少量で結晶形態に添加し、続いてそれぞれの添加後に、たとえば約30分間局部的な飽和を回避するために活発に撹拌てもよい。全ての沈澱薬が溶解されるまでこれを続けてもよい。この技術は、数時間必要とするかもしれず、従って、より少ないほうが好ましい。
【0041】
沈澱薬の添加により、溶液からのコロストリニン・ペプチドの沈殿を生じる。添加完了するときに、混合物は、好ましくは、おそらく撹拌しながら、または好ましくは浸透しながら、典型的には30分間放置したままにされる。
【0042】
現段階で、混合物は、水性液相および沈殿を含む。液相は、その中に溶解された沈澱薬およびおそらく、アルコール抽出工程の間に沈殿しなかったいくらかのより高分子量の物質を含む。沈殿は、コロストリニン・ペプチドを含む。その後に、液相を、好ましくは約15,000 gの遠心力で遠心分離によって沈殿からを分離して、沈殿が回収される。
【0043】
回収した沈殿は、好ましくは、必要な最小限の量の水を使用して水に溶解し、続いて、典型的には、0.01M PBS(リン酸緩衝食塩水)または水中で透析する。透析工程は、過剰なイオンを除去するために行われるが、沈澱薬イオンのいくらかのイオンが残ってもよい。次いで、透析された溶液を遠心分離によって浄化し、次いで凍結乾燥してもよい。最終物質は、分離されたコロストリニン・ペプチドを含み、これを薬学的、機能性食品の、およびその他の組成物の調製に将来使用するために-20 ℃に貯蔵してもよい。これらは、従来の手段によって作製してもよい。
【0044】
最終物質が薬物の調製に使用するために適していることを確認にするために、種々の品質管理試験を行ってもよい。このような試験は、当業者に既知であるが、SDS PAGE;等電点分画電気泳動法プロフィール;アミノ酸分析;単一特異性の抗体を使用するELISA法によってコロストリニンの抗原性組成物を決定すること;インターフェロンγ(IFN-γ)などのサイトカインを誘導する能力を決定すること;腫瘍壊死因子(TNF)、および抗酸化物性質を決定することを含んでいてもよい。最終物質は、いずれの高分子量タンパク質も含むべきでない。品質管理試験により不純物の存在を示す場合、最終物質をさらに精製することを必要としてもよい。サイズ排除クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、限外濾過、および過塩素酸による分画のような、不純物を最終物質から除去することができるいくつかの方法がある。
【0045】
サイズ排除クロマトグラフィーの例は、以下の工程を含む。除去される不純物を有する物質を100mMリン酸緩衝液、pH 7.2(濃度-2.0mg/ml)に再構成する。10ミリリットルの新たに再構成された物質を、バイオゲルP30(BioRad)を詰めて同じ緩衝液で平衡化したカラム(2.5cmの直径×90cmの長さ)に加える。クロマトグラフィーは、20ml/時間の流速で一晩展開される。試料(4ml)を収集し、低分子タンパク質およびペプチド(>18K)に対応する物質の最終的なプールをSDS PAGE分布に従って作製する。
【0046】
ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーの例は、以下の工程を含む。除去される不純物を有する物質を10mMリン酸緩衝液、pH 6.5(濃度-2.0mg/ml)に再構成する。10ミリリットルの新たに再構成された物質を、バイオゲルHTP(Bio-Rad)を詰めて同じ緩衝液で平衡化したカラム(0.7cmの直径×6cmの長さ)に加える。クロマトグラフィーは、0.25ml/最小限度の流速で展開される。カラムを平衡化緩衝液で洗浄して全ての結合していない物質を除去する。その後、リン酸緩衝液(10mM〜500mM)の直線濃度勾配によって溶出を行う。試料(4ml)を収集し、低分子タンパク質およびペプチド(>18K)に対応する物質の最終的なプールをSDS PAGE分布に従って作製する。
【0047】
逆相高速液体クロマトグラフィーの例は、以下の工程を含む。除去される不純物を有する物質を0.1%の(v/v)のトリフルオロ酢酸(TFA)に濃度-2.0mg/mlで再構成する。5ミリリットルの新たに再構成された物質を、10μm Nucleosil 100C18(Knauer)を詰めて20%のアセトニトリルの0.1%のTAF溶液で平衡化したカラム(8mmの直径×150mmの長さ)に加える。クロマトグラフィーは、1.0ml/最小限度の流速で展開される。カラムを平衡化緩衝液で洗浄して全ての結合していない物質を除去する。その後、0.1%のTFAの中の100%のアセトニトリルで溶出を行う。試料(2ml)を収集し、低分子タンパク質およびペプチド(>18K)に対応する物質の最終的なプールをSDS PAGE分布に従って作製する。
【0048】
過塩素酸分画の例は、以下の工程を含む。除去される不純物を有する物質を10mMのリン酸緩衝液、pH 7.2(濃度-2.0mg/ml)で再構成する。過塩素酸(0.45M HClO4)を0.15Mの濃度に添加して、混合物を1時間室温で撹拌する。生じる沈殿を遠心分離によって除去し、精製したCLNを含む上清を1MのKOHでpH 7に合わせて一晩放置する。KClO4の結晶をフィルター濾過によって濾過し、上清を水に対して一晩透析する。本発明のもう一つの態様において、過塩素酸分画は、硫酸アンモニウム沈殿工程の代替として使用される。
【0049】
限外濾過の例は、以下の工程を含む。除去される不純物を有する物質を10mMリン酸緩衝液、pH 7.2(濃度-2.0mg/ml)で再構成する。限外濾過は、標準的な限外濾過プロトコルを使用してCentricon Plus Ultracell PL-10またはHollow fiber Amicon H1P10-20で行う。
【0050】
上記したように、本発明者らは、初乳がミセルの形態でタンパク質画分を含むことを見いだした。コロストリニンは、アルコールでの抽出の前に、種々のpHレベルで、生の初乳をミセル破壊物質で、続いてミセル回収薬で予め処理したときに、より高い収率で回収することができることが観察された。従って、本発明の有利な態様において、生の初乳は、ミセルの崩壊を誘導するミセル破壊物質で、次いで初乳中のカゼイン構造を崩壊させてより多くのコロストリニン・ペプチドを放出すると考えられているミセル回収薬で予め処理される。好ましくは、ミセル破壊物質は、Mg+にも結合するEDTA(エチレンジ-アミン-N,N,N',N'--四酢酸)または同様の特徴を有するEGTA(エチレングリコール-O,-O'-ビス(2-アミノエチル)-N,N,N',N'-四酢酸)などのカルシウム・キレート薬である。この目的は、カゼインミセル間に入り込んだペプチドの少なくともいくらか、好ましくは大部分を放出させることである。
【0051】
ミセル破壊物質は、好ましくは、溶液中に25〜250mMの濃度のミセル破壊物質を含む溶液を生じる量で添加される。混合物を撹拌し、10-30分間おいたままにする。アルコールは、ミセル溶解物質の添加直後に添加してもよく、またはより好ましい態様において、ミセル破壊物質の添加は、アルコールの添加前に、ミセル修復物質の添加が続く。ミセル修復物質は、好ましくはCaCl2などのCa2+イオンの供与源である。ミセル修復物質は、ミセル形成(カルシウム再沈着)に必須なカルシウムイオンを提供することによってミセルを再形成する能力を有する。
【0052】
好ましい態様において、初乳は、ミセル破壊物質、ミセル修復物質、またはアルコールの添加の前に、pH5.5〜8.0に、好ましくは5.5〜7.5に調整される。最も好ましくは、初乳は、実質的にpH6.5〜7.5に調整される。より好ましくは、初乳は、実質的にpH7.0〜7.5(最も好ましくは、実質的に7.4)に調整される。pH調節は、pHメーターの制御下で酸またはアルカリを添加することによって達成してもよい。
【0053】
本質的にIgGのないペプチドのばらつきのないプールは、本発明に従った方法を使用して高収率で単離することができる。同時に疎水性およびイオン性の力を中和することにより、本発明者らは、ペプチドの最適な生理的組み合わせを得ることができる。本発明に従ってメタノールでの抽出によって産生されるコロストリニン・ペプチドの収率は、通常1リットルの初乳につき約500〜600mgである。EDTAおよび塩化カルシウムでの前処理を用いて、収率は、1リットルにつき約4000-5000mgまで初乳を増大した。これは、WO98/14473に記載されたヤーヌシュ方法を使用した、1リットルの初乳あたり約200-300mgの従来技術の収率に匹敵する。
【0054】
本発明が、初乳に存在することが既知のいずれのペプチド、特に以下のペプチドの初乳からの分離に使用してもよい:
(i)WO00/75173に開示されたペプチド、すなわちLQTPQPLLQVMMEPQGD(SEQ ID 1);MPQNFYKLPQM(SEQ ID 2);VLEMKFPPPPQETVT(SEQ. ID 3);LKPFPKLKVEVFPFP(SEQ ID 4);SEQP(SEQ ID 5);DKE(SEQ ID 6);DPPPPQS(SEQ ID 7);LNF(SEQ ID 8);VLPPNVG(SEQ ID 9);KYKLQPE(SEQ ID 10);SEEMP(SEQ. ID 11);DSQPPV(SEQ ID12);FPPPK(SEQ ID 13);WMEV(SEQ ID 14);DLEMPVLPVEPFPFV(SEQ. ID 15);LFFFLPWNVLP(SEQ ID i6);MQPPPLP(SEQ ID 17);DQPPDVEKPDLQPFQVQS(SEQ ID 18);VYPFTGPIPN(SEQ ID 19);SLPQNILPL(SEQ ID 20);TQTPWVPPF(SEQ ID 21);LQPEIMGVPKETMVPK(SEQ ID 22);HKEMPFPKYPVEPFTE(SEQ ID 23);SLTLTDVEKLHLPLPLVQ(SEQ ID 24);SWMHQPP(SEQ ID 25);QPLPPTVMFP(SEQ ID 26);MHQPPQPLPPTVMFP(SEQ ID 27);PQSVLS(SEQ ID 28);LSQPKVLPVPQAVPQRDMPIQ(SEQ ID 29);AFLLYQE(SEQ ID 30);FLLYQEPVLGPVR(SEQ ID 31);
RGPFPILV(SEQ ID 32);または、
(ii)WO02/46211に開示されたペプチド、すなわちLVYPFTGPIPNSLPQNILP(SEQ. ID 34);MIVVRRLLQNEVPE(SEQ. ID 35);SLSQSKVLPV(SEQ. ID 36);LQTQTPW(SEQ. ID 37);EMPFPKY(SEQ. ID 38);PVEPFT(SEQ. ID 39);VPPFLQ(SEQ. ID 40);PMFLQ(SEQ. ID 41);EHMFV(SEQ. ID 42);TDRD(SEQ. ID 43);VQPT(SEQ. ID 44);PKVK(SEQ. ID 45);DDDE(SEQ. ID 46);TEEV(SEQ. ID 47);YQQE(SEQ. ID 48);FPPQ(SEQ. ID 49);GFGI(SEQ. ID 50);LQS(SEQ. ID 51);VVV(SEQ. ID 52);GGK(SEQ. ID 53);DMV(SEQ. ID 54);ESQ(SEQ. ID 55);GRV(SEQ. ID 56);VEE(SEQ. ID 57);IGN(SEQ. ID 58);FFQ(SEQ. ID 59);RMF(SEQ. ID 60);FPP(SEQ. ID 61);MHH(SEQ. ID 62);NTE(SEQ. ID 63)。
【0055】
(iii)W098/14473に開示されたノナペプチド、すなわちVESYVPLFP(SEQ. ID 64)。
【0056】
したがって、本発明は、SEQ.ID 1〜64によって同定される任意のペプチドを、個々に、選択された群で、または全て一緒に単離する方法に使用してもよい。
【0057】
ヒツジ、ウシ、またはヒトの初乳が最も一般的に使用されるが、本発明は、いずれの哺乳類の初乳に適用されてもよい。さらにまた、本発明は、初乳からコロストリニン・ペプチドの分離を越えたより一般的な適用も有する。本発明は、タンパク質、脂質、およびその他の生物物質を有するペプチドの混合物から小ペプチドを分離するための一般的な適用性を有すると考えられる。
【0058】
さらに、本発明に従った分離プロセスのための出発点は、哺乳類から直接得られる初乳である必要はない。初乳は、本発明に従った分離法に供される前に処理されていてもよいこと、たとえば脱脂されていてもよいことはいうまでもない。従って、本発明は、誘導体がコロストリニンをなおも含むことを条件として、初乳の誘導体に対して適用されられてもよい利点がある。
【0059】
本発明に従った方法は、有利には、脳脊髄液、唾液、血液、腹水、または尿を含むいずれの体液に適用されてもよい。本発明は、特に乳液中のペプチドを含むものの分離に適用できる。
【0060】
従って、上記した技術がタンパク質、脂質、炭水化物、および/または核酸を含む(しかし、これらに限定されない)より高分子量の成分を含む液体からのペプチドの一般的な分離に対してより広い適用されてもよいことが認識される。一般に、液体は、液体に懸濁されたか、または溶解された各々のペプチドおよびその他の成分を有する水性液体の形態である。従って、本発明の別の態側面によれば、タンパク質、脂質、炭水化物、および/または核酸などのより高分子量の物質と組み合わせて前記ペプチドを含む液体からペプチドを回収するための方法であって、前記方法は:液体をアルコールと混合してアルコール相(アルコール相には、アルコールおよび回収される少なくともいくつかのペプチドを含む)および少なくいくつかの高分子量物質を含む沈殿を形成させることと;前記沈殿からアルコール相を分離すること;およびアルコール相を回収することを含む方法が提供される。
【0061】
%組成物についての言及は、本明細書において、他に述べない限り、重量部での物質の割合をいう。
【実施例】
【0062】
本発明は、以下の実施例に関してさらに記載してある。
【0063】
精製プロトコル−それぞれの比較例について、10mlのプールされた初乳を利用した。初乳は、分娩後の異なる時間でヒツジから収集し、実験まで凍結した。以下の実施例で利用したプロトコルは、下記に示したように、pHまたはEDTAによって原材料を最初の調節することを除いて同一であった。
【0064】
実施例1−10mlのプールした生の初乳(pH〜6.5)。
【0065】
実施例2−25mmのEDTAで、続いて50mMのCaCl2(カルシウム再沈着)の添加によって調整した10mlのプールした生の初乳(pH〜6.5)。
【0066】
実施例3-pH 7.4に調製した10mlのプールした初乳。
【0067】
実施例4-25mMのEDTAで、続いて50mMのCaCl2(カルシウム再沈着)によってpH 7.4に調整した10mlのプールした初乳。
【0068】
同じ供与源のプールした生の初乳(10mlの一定分量)を使用して、メタノールの添加前に、特異的なpHまたはEDTA/CaCl2処理に1時間の最初の物質を調整した。100%のメタノールを、それぞれの初乳試料に対して60%の終濃度まで添加した。混合物を室温で30分間撹拌し、次いで15,000 gで遠心した。上清を除去して、乾燥器中で上清の体積が約8.0mlに減少されるまでアルコールを、上清から蒸発させた(これは、約30〜60分を要した)。同量の飽和硫酸アンモニウム(100%)を上清に添加し、終濃度50%の硫酸アンモニウムを得た。次いで、上清/硫酸アンモニウム混合物を4℃で一晩穏やかに振盪し、コロストリニン・ペプチドを沈殿させた。標品を15,000 gで遠心して、コロストリニン・ペプチドを含むペレットを形成させた。ペレットを蒸留水に溶解し、0.01MのPBS(リン酸緩衝食塩水)に対して一晩透析した。この方法によって調製されるコロストリニン・ペプチドは、種々の試験において解析すること、および-20℃に貯蔵することができる。
【0069】
タンパク質回収アッセイ法−タンパク質濃度は、凍結前に280nmで溶液の光学濃度を読み込むことによって得ることができる。タンパク質回収結果は、下記の表1に示してある。
【表1】

結果は、初乳のもとの10mlの一定分量からのタンパク質回収が、pHに非常に依存的なことを示す。これらの収率は、ヤーヌシュ方法を使用するよりも高く、これらは、より簡単かつ迅速な方法を使用して得られる。
【0070】
抗原認識アッセイ法-最終的な物質の抗原プロフィールは、配列が以前に同定されており、表2に一覧を示した9つの合成ペプチドに対して調製された抗体に基づいてELISA方法によって決定した。
【表2】

抗原クラスA、B、C、およびDは、WO00/75173において説明されている。LFは、抗菌性の性質を有するラクトフェリンの断片であり、IgG-2抗体断片は、コロストリニン純度の指標として役立つ。
【0071】
簡単には、96ウェルのELISAプレートをプロトコル1〜4に従って回収されたコロストリニン試料で被覆した(1mlの0.1Mの炭酸水素塩緩衝液(pH9. 0)につき約10マイクログラムのタンパク質)。プレートを37℃で3時間インキュベートし、カップリング緩衝液で洗浄して、ウシ血清アルブミン(BSA)の規準液でブロックした。50マイクロリットルの希釈BSA(0.75%溶液)をそれぞれのウェルにピペットでとり、最初の力価に従って希釈した50マイクロリットルの血清試料(プロテインAで精製した特異的抗原に対するウサギ抗体)をそれぞれの列のカラムAに添加した。1:2の段階希釈を作製し、プレートの下に移動した。プレートをカバーして、室温で60分間インキュベートして、PBS溶液で4回洗浄した。50マイクロリットルの量のヤギ抗ウサギIgG-西洋わさびペルオキシダーゼ結合抗体(BSAに1:1000希釈)をそれぞれのウェルへピペットでとり、室温で60分間インキュベートした。次いで、プレートをPBS洗浄溶液で4回洗浄し、50マイクロリットルの基質(2,2'-アジノ-ビス-3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸-二アンモニウム塩)をそれぞれのウェルに添加して、室温で2分間インキュベートした。比色反応は、それぞれのウェルに50マイクロリットルの1%のSDSを添加することによって停止させ、プレートをDynatechプレート・リーダーで(405nmで)読み込んだ。
【0072】
これらの実験の結果(平均力価)は、下記の表3に示してる。値は、ユニット/ml×103である。ユニットは、抗原の認識のための最終的な希釈として定義してある。最終物質を試験した個々のペプチド(A-1;A-3;B-8;B-9;C-2;C-11;D-1;LF およびIgG-2)の回収は、pH 7.4で行った抽出で最高であったことが明白である(実験3および4)。いずれの場合においても、抗原は、通常、試験される最高の希釈に認識した。
【表3】

アミノ酸解析-本発明にし違って精製したコロストリニンのアミノ酸組成では、高い含量のプロリン(〜20%)および酸性アミノ酸を確認する。表4は、以前に記載されているコロストリニンと本発明のコロストリニンの間のアミノ酸組成の高度の類似性を示す。
【0073】
表4 CLNのアミノ酸解析
【表4】

*-M. Janusz et al. ref. (FEBS LETTERS 1974, 49, 276-279)に従う
**-Janusz et al.のプロトコルを使用するにさらなる研究において得られた平均的結果に従う
***-本発明に従った方法に従う。
【0074】
生物学的アッセイ法:この新規のプロトコルに従って生成されるCLNの能力は、古典的な方法と比較して試験されており、以下の活性が同様であることを証明された:1) 4HNE-タンパク質付加物の減少;2)ROSの細胞内レベルの減少;3)4HNEを媒介したグルタチオン枯渇の阻害;および4)4HNEで誘導されるc-Jun NH2-末端キナーゼの活性化の阻害。
【0075】
SDS PAGE解析。1D 15%のポリアクリルアミドゲル電気泳動を還元条件下で行った。1%のクーマシーブルーでの染色では、本発明と古典的な方法に従って得られたCLNの類似点の間に著しい類似性があることを示す。
【0076】
図2は、SDS PAGE解析の結果を示す。試料は再水和して、タンパク含有量をアッセイし、同量のタンパク質を15%のゲルSDS PAGEに供し、続いてクーマシーブルーで染色した。図面において、STDは、分子量マーカーを表し;1は、Janusz et al.に従ったコロストリニンを表し;2は、本発明によるコロストリニンを表し;および3は、EDTA/CaCl2によって修飾した本発明に従ったコロストリニンを表す。SDS PAGE解析あたりと同様に、本発明に従って得られたコロストリニンは、参照物質(ヤーヌシュ法)と実質的に同一である。また、修飾EDTA/CaCl2でも同様の物質を提供し、高分子量タンパク質組成の増加がある。
【0077】
本発明が修飾されてもよいことはいうまでもない。たとえば、アルコール以外の抽出剤を抽出のために利用してもよい。いくつかの成功は、アセトンなどのケトンによって達成された。また、以前に記載されているように、硫酸アンモニウム沈殿工程は、過塩素酸分画と置換することができる。本方法の開始点は、生の初乳または脱脂した初乳として記載されているが、初乳または部分的に精製した初乳のその他の形態を開始点として利用してもよいことはいうまでもない。たとえば、本発明が利用することができる方法は、ヤーヌシュ法などの既知の従来技術の方法によって事前に精製されたコロストリニン・ペプチドを利用すること、およびさらに精製することができよう。
【0078】
添付の図面を、ここで参照する。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】コロストリニンの抽出/精製プロトコルを要約する図である。
【図2】上記のSDSページ解析の結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類初乳、または初乳の誘導体に由来するペプチドを回収するための方法であって、前記方法は:前記初乳をアルコールと混合してアルコール相(アルコール相には、アルコールおよび回収される少なくともいくつかのペプチドを含む)および沈殿を形成させることと;前記沈殿からアルコール相を分離すること;およびアルコール相を回収することを含む方法。
【請求項2】
前記アルコールがメタノールまたはエタノールである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記回収したアルコール相から少なくともいくらかのアルコールを除去して濃縮されたペプチド相を残す工程と、前記濃縮されたペプチド相を回収する工程をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記回収されたアルコール相の、または前記濃縮されたペプチド相のいずれかに沈澱薬を溶解することをさらに含み、前記沈澱薬は、少なくともいくつかの前記ペプチドの沈澱を誘導することができる、請求項1、2、または3に記載の方法。
【請求項5】
前記沈澱薬が硫酸アンモニウムである、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記アルコールを添加する前にEDTAを前記初乳に添加することをさらに含む、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法であって、前記混合物は、前記ペプチドが結合するタンパク質ミセルを含み、前記方法は、前記アルコールを添加する前に、前記液体中のミセルの破壊を誘導することができるミセル破壊物質を前記液体に添加する工程をさらに含む方法。
【請求項8】
前記ミセル破壊物質がEDTAまたはEGTAである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記アルコールを添加する前に、CaCl2を前記混合物に添加することをさらに含む、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記アルコールを添加する前に、前記タンパク質ミセルを再び形成させるために、前記液体にミセル回復物質を添加することをさらに含む、請求項7または8に記載の方法。
【請求項11】
前記ミセル回復物質がCaCl2である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記液体が、前記アルコールを添加する前に、6.5〜7.5の範囲のpHにあらかじめ調整される、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記アルコールが、前記液体の総容積に基づいて、40〜80%(v/v)のアルコール濃度を生じるために十分な量で前記液体に添加される、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記アルコールが、前記液体の総容積に基づいて、50〜70%(v/v)のアルコール濃度を生じるために十分な量で前記液体に添加される、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記アルコールが、前記液体の総容積に基づいて、55〜65%(v/v)のアルコール濃度を生じるために十分な量で前記液体に添加される、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記初乳に添加されるアルコールが実質的に100%純粋である、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記ペプチドがコロストリニンを含む前記初乳から回収された、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記液体が1つまたは複数の治療工程に供された哺乳類初乳の誘導体である、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−527368(P2007−527368A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505939(P2006−505939)
【出願日】平成16年3月10日(2004.3.10)
【国際出願番号】PCT/GB2004/001014
【国際公開番号】WO2004/081038
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【出願人】(501467496)リージェン・セラピューティクス・ピーエルシー (1)
【Fターム(参考)】