説明

初代免疫細胞におけるグルココルチコイド受容体リガンドのトランス活性化及びトランス抑制の特徴づけのための方法

本発明は、初代免疫細胞における遺伝子及び/又はタンパク質発現分析による、グルココルチコイド受容体(GR)リガンドのトランス活性化及びトランス抑制活性の特徴づけのための方法、並びにその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、初代免疫細胞における遺伝子及び/又はタンパク質発現の分析による、グルココルチコイド受容体(GR)リガンドのトランス活性化及びトランス抑制の特徴づけのための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グルココルチコイドは、診療において最も頻繁に使用される医薬に含まれる。それらは、炎症及び免疫系、そして代謝に対する顕著な作用を有する。さまざまな作用が、グルココルチコイド受容体(GR)を介する異なるメカニズムにより仲介される。選択的グルココルチコイド受容体(GR)リガンドは、GRリガンドの新しいクラスを代表し、それは、遺伝子制御のGRメカニズム、遺伝子のトランス活性化及びトランス抑制、に選択的なアゴニストとして又はアンタゴニストとして影響を与える。GRリガンドのトランス活性化活性及びトランス抑制活性又はGRリガンドのアゴニスト作用及びアンタゴニスト作用の分離は可能である。この点において、GRリガンドの治療的プロフィールは選択的に影響を受けるはずである。
【0003】
トランス活性化及びトランス抑制における活性に関するGRリガンドのインビトロでの特徴づけのために、現在、いくつかの場合にはプロモーター構築物でトランスフェクトされたヒト及び動物細胞株が使用される。これらの細胞株においては、GR作用の選択的な個々の側面が調べられる。さらに、細胞の刺激はしばしば、GRリガンドの対応する活性の検出のために必要である。初代細胞中のGRリガンドの作用及び特にヒトの系に対する作用に関する細胞株でのかかるアッセイの結果から結論を下すことは、非常に限定された範囲のみにおいて可能である。
【0004】
一方、それらの分子メカニズムに関するインビボでのGRリガンドの特徴づけのためには、機能的試験が使用される。これに関する例は、炎症が誘発されるときのGRリガンドの適用、又は代謝ストレスの発生における若しくは代謝制御ホルモンの投与後のGRリガンドの作用の検出である。ヒトにおける試験では、このアプローチは大きな問題と関連するか、又は実行可能でない。一方、GR−リガンドを介する遺伝子制御は、実験条件下で、取り出された標的器官又は器官サンプルにおいて直接調べられる。一般に、このアプローチはヒトにおける試験について可能でない。
【0005】
現在のアッセイの上記の顕著な制限に基づいて、1)初代細胞におけるGRリガンドの作用の特徴づけのためのより大きな妥当性を有し、かつ、2)ヒトでの試験において、大きなストレスを生じずにGRリガンドの分子メカニズムの特徴づけに使用されることのできるアッセイの開発が望まれる。
【発明の開示】
【0006】
そのアイディアは、それを制御するとGRリガンドのトランス活性化及びトランス抑制活性を示す、初代免疫細胞中の遺伝子を定義することであった。
【0007】
この目的のために、非刺激ヒト末梢血初代免疫細胞中で、定義されたトランス活性化及びトランス抑制活性を有する選択的GRリガンドによるスクリーニングにおいて遺伝子が選択され、これは、遺伝子発現の抑制又は誘導において、迅速で、再現性があり、かつ一貫した、物質のトランス活性化又はトランス抑制活性を示す。選択的GRリガンドによる選択された遺伝子の制御は、用量/作用及び速度論の研究においてさらに特徴づけされた。動物モデルにおける速度論の研究は、インビボ条件下での遺伝子制御の再現性を確認した。
【0008】
IL-1β、IL-8、Rantes及び特にTNF-α遺伝子の発現は、非刺激初代免疫細胞中のGRリガンドのトランス抑制活性の検出に特に好適であることが証明された。グルタミンシンテターゼ及びGILZ、そして特に、CD163及びFKBP51の発現は、特にトランス活性化活性の検出に特に好適であることが証明された。
【0009】
パラメータによって、GRのトランス活性化又はトランス抑制活性に対する、選択的GRリガンド又は標準的なグルココルチコイドのアゴニスト効果及びアンタゴニスト効果の両方を、インビトロ及びまたインビボ適用の両方の後において特徴づけすることが可能であった。GRリガンドの分子メカニズムを特徴づけするためのこれらのパラメータの使用は新規である。
【0010】
GRリガンドの分子メカニズムを検出するための、非刺激初代免疫細胞における遺伝子及び/又はタンパク質発現の使用からは、以下の利益が期待されることができる:
1)初代免疫細胞は、生物体中でのGRリガンドの作用に大きく関係する非人工細胞系である。
2)非刺激初代免疫細胞におけるパラメータの検出は、パラメータを改ざんすることができかつ生物体中の状況を反映しない刺激の必要性を回避する。
3)研究は、初代免疫細胞におけるパラメータが、迅速で、用量依存的であり、再現性があり、かつ一致したやり方で、インビトロでの添加後及びインビボでの投与後の両方でGRリガンドの分子メカニズムを反映することを確認する。
4)非刺激初代ヒト免疫細胞において得られたインビトロの結果及びGRリガンドのインビボ投与後の動物試験における結果の間の非常に良好な一致は、定義されたパラメータのヒトでのインビボ試験への適用可能性を非常に高いものとする。
5)非刺激初代免疫細胞におけるパラメータの検出性も、GRリガンドで処置された生物体の血液サンプルにおけるパラメータの直接測定を可能とする。したがって、試験材料は、インビボ試験に容易にアクセス可能である。
6)パラメータは、血液採取におけるさらなるストレスを起こさずに、GRリガンドで処置された生物体の血液サンプル中で測定可能である。対応するGRリガンドの投与及び血液サンプリングのためのさらなる介入は必要ない。試験のために絶対的に必要とされる血液の体積は1ミリリッター未満である。
【0011】
7)細胞の分離などにより結果の障害がおこるように、パラメータは全血中で検出可能である。これに関しては、商業的に入手可能な検出系が利用可能である。
8)非刺激初代免疫細胞におけるパラメータの検出は、インビトロ及びインビボ実験の両方、並びにフェーズI及び臨床試験のために使用可能である。これに関して、GRリガンドの分子メカニズムについてのパラメータの一貫性は、GRリガンドの発見、開発及び臨床使用において可能である。
9)パラメータは、ヒトの試験におけるGRリガンドのインビボでの分子メカニズムの特徴づけのためのバイオマーカーとして好適である。
10)トランス抑制(IL-1β、IL-8、Rantes及び特にTHF-α炎症メディエーターの抑制)についてのパラメータは、さらに、GRリガンドの抗炎症及び免疫調節作用の特徴づけを可能とする。
11)トランス活性化及びトランス抑制活性が生物体におけるGRリガンドの作用を断固として決定するため、末梢血の非刺激初代免疫細胞中の定義された遺伝子及び/又はタンパク質発現パラメータの特徴づけは、初期の研究においてさえ、そして(フェーズI試験などの)健康なヒトにおいてさえ、インビボの分子メカニズムについての情報を得ることを助け、そしてしたがって、予想されるGRリガンドの作用/副作用プロフィールを得ることを助ける。
【0012】
特許に関する初代免疫細胞は、生きた生物体のすべての免疫細胞である。特に、血液、骨髄及び(胸腺、脾臓、リンパ節、Peyerプラークなどの)リンパ器官の免疫細胞を意味する。血液の免疫細胞が特に好ましい。
【0013】
方法の原理
方法は、初代免疫細胞における遺伝子及びGR-感受性遺伝子のタンパク質発現の分析という手段によって、(標準的なグルココルチコイドかつ選択的GRリガンドである)グルココルチコイド受容体(GR)リガンドの分子メカニズムの特徴づけを記載する。
【0014】
選択的GRリガンドは、GRリガンドの新たなクラスを表し、これは感受性遺伝子のトランス活性化又はトランス抑制という、遺伝子発現のGR介在性制御の2つのメカニズムをさまざまな程度で使用する。これらは、各メカニズムのアゴニスト、部分アゴニスト、部分アンタゴニスト及びアンタゴニストであることができる。GR介在性の抗炎症作用、免疫抑制作用及び代謝作用に対応して、選択的GRリガンドの適応症は、炎症性疾患又は代謝活性の変化を伴う状態であることができる。かかる新たなGRリガンドの発見、成功した開発及び臨床使用のための必須の要件は、関連するインビトロ及びインビボの実験並びにフェーズI及びヒトでの臨床試験におけるその分子メカニズムの特徴づけである。
【0015】
インビトロ又はインビボ実験並びにフェーズI及びヒトでの臨床試験における該方法の目的は、非刺激免疫細胞、リンパ器官及び血液中における遺伝子及び/又はタンパク質発現或いはタンパク質放出を変化させることによって、選択的GRリガンド及び標準的グルココルチコイドのトランス抑制及びトランス活性化活性を特徴づけすることである。この目的のために、50超の遺伝子からのスクリーニングにおいてパラメータが選択され、そしてより詳細に分析された。必須の選択基準は、1)選択的GRリガンドのトランス抑制又はトランス活性化活性と遺伝子制御の相関関係、2)非刺激初代免疫細胞における一貫した遺伝子制御、及び3)インビトロアッセイにおける迅速な反応並びにGRリガンドのインビボ投与後の良好かつ持続的な検出可能性である。これらの基準は、バイオマーカーとしてのパラメータの使用に必須である。
【0016】
インビトロの検出及びエクスビボの検出の両方について、前炎症性IL-1β、IL-8、Rantes及び特にTNF-αサイトカインの抑制がトランス抑制活性の特徴づけのために、並びにグルタミンシンテターゼ及びGILZの誘導及び特にCD163及びFKBP51の誘導がトランス活性化活性のために好適であることが証明された。
【0017】
他の好適なパラメータは、トランス抑制の検出のための共アクセサリー分子(co-accessory molecule)(HLA-DR、CD86)の発現、並びにトランス活性化活性の検出のためのサイトカイン受容体(IFN-γR1、TNF-R1、IL-1R1、IL-2Rα、IL-13Ra、CXCR4、GITR)及び他の遺伝子(β2-アドレノレセプター、ヘモキシゲナーゼ1、IL-2、MIF、アネキシン1、トロンボスポンディン1)の発現である。
【0018】
前述のパラメータ発現の制御の検出は、初代免疫細胞中での(定量的リアルタイムPCRなどの)mRNAの検出及び/又は(連続的フローサイトメトリー、イムノアッセイ、ウエスタンブロットなどの)タンパク質の検出のための方法によって実施されることができる。分泌タンパク質は、培養上清、血清、血漿及び他の体液中で検出可能である。検出方法は、本分野の当業者に知られており、それらはさらに、それらの実施が可能であるように技術文献中に適切に記載されている。
【0019】
標準的グルココルチコイドであるプレドニソロン並びにSchering AGの2つの選択的GRアゴニスト(SEGRA)の特徴づけに基づいて、以下に該方法の利用可能性が立証される。GRにおけるアゴニスト性又はアンタゴニスト性のトランス活性化及びトランス抑制についての通常のアッセイにおける物質の異なるメカニズムは、初代ヒト免疫細胞のインビトロアッセイ及び物質で処置されたマウスの脾臓細胞における選択された遺伝子の発現の制御と相関する。
【0020】
遺伝子及び/又はタンパク質の発現のGR-リガンド介在性制御についてのアッセイは、GRのトランス活性化又はトランス抑制メカニズムのための、物質の競争的又は非競争的なアゴニスト及びアンタゴニスト活性の検出の両方について使用可能である。後者のためには、他の追加のGRリガンドの作用のアンタゴニズムが試験される。インビボ実験においては、さらに、内因性のグルココルチコイド作用のアンタゴニズムが特徴づけされることができる。
【0021】
示される方法は、インビトロ及びインビボ実験における、そしてフェーズI及びヒトでの臨床試験のためのバイオマーカーアッセイにおけるGRリガンドの分子メカニズムの特徴づけのために好適である。
【0022】
1 内因性グルココルチコイドの制御及び作用
1.1 内因性グルココルチコイドの制御
健康な成人の副腎は、40〜80μモル(15〜30mg;8〜10mg/m2)の内因性コルチゾンを毎日産生する。血漿濃度は、遊離コルチゾールの分泌、不活性化速度及び生成によって決定され、そして明らかなサーカディアンプロフィールを示す。サーカディアンサイクル、自律神経系との相互作用、及び物理的及び情緒的ストレスとの相互作用、並びに高血糖及び全身性の炎症との反応は、視床下部−下垂体−副腎皮質(HPA)−軸による副腎コルチゾン産生の制御を介して制御される。上記の刺激によって誘導される視床下部の「コルチコトロピン放出ホルモン」(CRH)は、副腎皮質の刺激によってコルチゾン合成を増加させる、脳下垂体からの「副腎皮質刺激ホルモン」(ACTH)の産生を誘導する。ネガティブフィードバック調節の範囲内で、全身性に増加したグルココルチコイドレベルはCRH合成及びACTH放出を阻害する。
【0023】
内因性及び医原性のグルココルチコイドの体内での生物学的効果は、コルチゾン−血漿レベルのみに依存するのではない。さらに、それらは酵素系11β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(11β-HSD)の2つのアイソフォームによって調節される。11β-HSD Iは、生物学的に不活性なコルチゾンの活性コルチゾールへの変換を触媒する。反対に、11-β-HSD IIは、活性コルチゾールの不活性コルチゾンへの変換を支援する。該系は主に、肝臓に位置するが、脂肪組織などの他の組織にも存在する(Tomlinson, J. W.; Endocr. Rev. 2004, 25:831)。
【0024】
1.2 GRによるグルココルチコイドの作用のメカニズム
グルココルチコイドの作用は、グルココルチコイド受容体(GR)により仲介され/転送される。GRは、転写因子としてそれらのそれぞれのリガンドが結合した後に活性化され、特異的な標的遺伝子の発現に影響を及ぼす、コア受容体のタンパク質ファミリーに属する。細胞の細胞質中に存在するGRへのリガンドの結合は、受容体コンホメーションの変化を誘導し、これは次に、リガンドに結合したGRの細胞核中への転座を引き起こす。そこで、活性化されたGRは、標的遺伝子の発現に正又は負の影響を及ぼす。
【0025】
遺伝子発現の正の調節(トランス活性化)の場合、GRは、感受性遺伝子のプロモーター中の特異的配列(グルココルチコイド応答要素;GRE)へホモダイマーとして結合する。GRの二量体形成がトランス活性化の要件であるという事実は、インビトロ及びインビボの突然変異分析によって示唆された(Reichardt, H. M., Cell. 1998, 93:531; Heck, S., EMBO J. 1994, 13:4087)。しかしながら、より最近の知見によれば、すべてではないが、多くのGR誘導性トランス活性化が受容体の二量体形成に依存すると限定的に断言されなくてはならない(Rogatsky I, PNAS 2003, 100:13845)。
【0026】
リガンドにより活性化されたGRは、特異的な標的遺伝子の発現を阻害(トランス抑制)することもできる。負の調節の最も一般的なメカニズムは、モノマーとしての活性化されたGRをすでにDNAに結合している他の転写因子に結合させることによって行われる。この結合によって、他の転写因子の活性が抑制され、そしてしたがって標的遺伝子の発現も抑制される。遺伝子発現の負の調節の他のメカニズムにおいては、活性化されたGRの、いくつかの遺伝子のプロモーターにおいて見出されることのできる所謂負のGREへの結合が行われる。これに関連して、GRの結合によって、該遺伝子の発現の誘導に必須の他の転写因子の置換が起こる。したがって、GRのnGREへの結合が、対応する標的遺伝子の転写を妨害する。
【0027】
さらに、GRは阻害的方法で特異的な情報伝達経路中のMAPキナーゼを攻撃し、こうしてその効果を仲介することができる。
【0028】
1.3 重要なGKの作用及びメカニズム
代謝におけるGKの作用
グルコースバランス、タンパク質及び脂肪の代謝の調節などの多くの生理学的プロセスは、グルココルチコイドによって制御される。これらの生理学的プロセスの多くにおいて、グルココルチコイドは、関与するタンパク質/酵素の発現に影響を及ぼすことによって作用する(Wang, M., Nutr. Metab. (Lond). 2005, 2:3)。肝臓特異的なホスホエノールピルベートカルボキシキナーゼ(PEPCK)及びグルコース−6−ホスファターゼも、グルココルチコイドによって発現が増加される。グルコーストランスポーターGLUT4もまた誘導される(Imai, E., Mol. Cell. Biol. 1990, 10:4712; Schmoll, D., FEBS Lett. 1996, 383:63; Lin, B., DNA Cell Biol. 1998, 17:967; Grosfeld, A., Diabetologia 2002, 45:527)。
【0029】
グルココルチコイドにより促進されたチロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)(Becker et al., 1986; Jantzen et al., 1987)、グルタミンシンテターゼ又はトリプトファンオキシゲナーゼなどの発現はアミノ酸の異化を増大させ、これは飢餓状況における生物体へのエネルギー供給を保証する(Becker, P.B., Nature 1986, 324; 686; Schmid, E., Eur. J. Biochem. 1987, 165:499; Danesch, U. EMBO J. 1987, 6:625; Gaunitz, F., Biochem. Biophys. Res. Commun. 2002, 296:1026)。
【0030】
グルココルチコイドによる脂肪バランスへの介入も、脂肪バランスに関与するいくつかのタンパク質/酵素の発現の制御によって行われる。したがって、ホルモン感受性リパーゼHSL及びリポタンパク質リパーゼLPLが、グルココルチコイドによって高度に調節されることが示された(Zilberfarb, V., Diabetologia, 2001, 44:377)。エネルギーまたはリポ代謝に関与するタンパク質レプチン及びVLDLR(「超低密度リポタンパク質受容体)にも同じことがあてはまる(Slieker, L. J., J. Biol. Chem. 1996, 271, 5301; Ensler, K., Biochim. Biophys. Acta. 2002, 1581:36)。
【0031】
抗炎症及び免疫抑制作用
グルココルチコイドは、炎症シグナル伝達経路に関与することによって、抗炎症及び免疫抑制作用を達成する。これは、適応免疫系または自然免疫系の細胞の活性を阻害すること、或いは前炎症性のサイトカインにより制御される情報伝達経路の直接的破壊のいずれかによっておこる。転写抑制は、グルココルチコイドの抗炎症及び免疫抑制作用の主なメカニズムであるとされてきた。いくつかの転写因子(特に、NF-κB及びAP-1)の活性の阻害を介して、(TNF-α、GMCSF、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-12などの)多くの前炎症性サイトカイン、(IL-8、RANTES、エオタキシン、MIPなどの)ケモカイン、酵素(iNOS、COX-2)及び/又は接着分子(ICAM-1、VCAM-1)の生成が減少する(Barnes, P.J., Clin. Sci. (Lond), 1998, 94:557, Almawi, W. Y., J. Mol. Endocrinol. 2002, 28:69)。
【0032】
しかしながら、抗炎症タンパク質(リポコルチン−1、血清ロイコプロテアーゼインヒビター、ナチュラルエンドペプチダーゼ、MKP-1)の誘導も、グルココルチコイドの抗炎症作用に関与する(Barnes, P.J., Clin. Sci. (Lond), 1998, 94:557; Kassel, O., EMBO J. 2001, 20:7108)。
【0033】
グルココルチコイドの抗炎症及び免疫抑制作用への関与は、他の、MAP-キナーゼ−シグナル経路の妨害などの非ゲノム効果の原因でもある。
【0034】
1.4 グルココルチコイドの副作用
上記のグルココルチコイドの生理学的並びに抗炎症及び/又は免疫抑制作用は、(内因性の副腎皮質ホルモン過剰症又は治療のためのグルココルチコイド投与などにおける)存在するグルココルチコイドの慢性の過剰に導きうるが、糖尿病、高血圧、筋萎縮症及び/又はミオパチー、体幹の肥満、骨粗鬆症などの引き金となる高血糖の誘発などの多数の望ましくない効果にも導きうる。
【0035】
グルコース及び脂肪バランスに関与する特別な効果は、その大部分がグルココルチコイドにより誘導されるトランス活性化プロセスにより調節される。
【0036】
上記の酵素に加えて、グルタメートデヒドロゲナーゼ、グルタメートオキサラゼテートトランスアミナーゼ及びセリンデヒドラターゼなどのタンパク質異化に関与する他の酵素もグルココルチコイド投与によって誘導される(Timmerman, M., Exp. Biol. Med. (Maywood)2003, 228:100; Barouki, R., Eur. J. Biochem. 1989, 186:79; Su, Y., Arch Biochem. Biophys. 1992, 297:239)。持続的に高く制御された糖新生は、高血糖、インスリン耐性、そして結果として糖尿病を引き起こしうる。上記のように、肝臓における糖新生の主要酵素はグルココルチコイドによって誘導される。
【0037】
慢性のグルココルチコイド療法又は内因性の副腎皮質ホルモン過剰症による持続性の免疫抑制は、感染のリスクの増大に導きうる。上記のことに関与するメカニズムは、本質的に、治療効果(抗炎症及び/又は免疫抑制)に関与させられるものである。しかしながら、多くの前炎症性タンパク質の発現の阻害に加えて、GRはウイルスプロモーターの直接的な誘導による感染のリスクの増大にも関与する。
【0038】
2 選択的GRリガンドとそれらの使用のための適応症
2.1 選択的GRリガンド
(選択的GRアゴニスト−SEGRA、選択的GR調節剤−SGRM、分離した又は分化したGRリガンドなどの)選択的GRリガンドは、感受性遺伝子のトランス活性化又はトランス抑制という遺伝子発現の調節のための2つのメカニズムをさまざまに操作する新しいGRリガンドのクラスをあらわす(Schaecke, H., PNAS 2004, 101:227 & Curr. Opin. Investig. Drugs. 2004, 5:524)。この関係で、内因性グルココルチコイド及び/又は治療スタンダードであるグルココルチコイドに対して、トランス活性化又はトランス抑制において匹敵する、増加した、減少した、そして消失した作用、そしてそれらの異なる組み合わせが可能である。これらは、それぞれのメカニズムのためのアゴニスト、部分アゴニスト、部分アンタゴニスト及びアンタゴニストであることができる。感受性遺伝子及び/又はプロモーター構築物の発現に対するGRリガンドの直接的効果によってアゴニスト作用が定義される一方、アンタゴニスト作用は、他のリガンドのGRに対する効果の阻害を介して特徴づけされる。これに関して対応するサンプルアッセイが、Schering AGのPCT国際特許出願公開第WO00/32584号の化合物1及び同第WO02/10143号の化合物2の分子メカニズムの特徴づけにおいて以下にしめされる。
【0039】
トランス活性化のためには、GRのアゴニストであるリガンドが、それらが感受性遺伝子のプロモーター領域内のGREに結合することによってそれらの転写を誘導することができるような形態で結合することによって、受容体を活性化する。さらに、GRに結合することによって受容体のアンタゴニストとしてのコンホメーションを生じさせ、かつ感受性遺伝子のプロモーター活性の誘導を引き起こさないリガンドもある。かかるリガンドは、アンタゴニストと呼ばれる。リガンドの他の群は、部分アゴニスト又は部分アンタゴニストと呼ばれる。後者は部分的にのみ、アゴニスト性の又はアンタゴニスト性のGR活性を誘導する。GRリガンドのアンタゴニスト作用または部分アゴニスト作用は、細胞バックグラウンド及び感受性遺伝子の発現を調節するプロモーターの構造に基づく。
【0040】
トランス抑制のためには、GRのアゴニストであるリガンドは、リガンドにより活性化された受容体が特異的な標的遺伝子の発現を阻害することができるような形態でそれらが結合することによって、上記受容体を活性化する。これは、他の転写因子との相互作用及びその後の阻害により、又は負のGREへの結合により行われることができる。トランス抑制における部分アゴニスト、部分アンタゴニスト及びアンタゴニストは、このGRの作用を部分的にのみ仲介し、及び/又はトランス抑制において他のGRリガンドのアゴニスト作用を阻害する。
【0041】
2.2 選択的GRリガンドによる治療のためのサンプル適応症
標準的なグルココルチコイドが示されるであろうとも、選択的GRリガンドによる治療はその適応症を有する。ここで、GRに対する分離した作用は、標準的なグルココルチコイドに比べて減少した望ましくない作用の誘導に関する選択的なGRリガンドの有益性、すなわち、改善された作用/副作用プロフィール、に導く。一方、選択的GRリガンドは、現存するGRリガンドの有害効果をアンタゴナイズするために使用されることができる。さらに、望ましくない副作用をGRにおいて起こさずに、内因性のグルココルチコイドの不適切な作用を選択的に置換することは可能である。
【0042】
これらの治療原理は一緒に現れることも可能である。適用のサンプルを以下にしめす。
【0043】
抗炎症及び免疫抑制療法
グルココルチコイドは、最も一般的に使用される抗炎症剤かつ免疫抑制薬である(Franchimont, D., Ann N Y Acad Sci. 2004、1024:124)。しかしながら、いくつかの場合、それらの用途は、重い不可逆的な副作用によって制限されてきた。GRのトランス抑制活性がGRリガンドの抗炎症及び免疫抑制作用に必須である一方、(糖新生の誘導などの)重大な副作用がトランス活性化により仲介されることが示された(Schaecke, H., Pharamacol. Ther. 2002, 96:23)。
【0044】
得られたトランス抑制活性においてトランス活性化活性が低下した、選択的GRリガンドが、標準的なグルココルチコイドに比べて低下し、トランス活性化メカニズムにより本質的に仲介される副作用を誘導する、有効な抗炎症及び免疫抑制薬を作り出すことができた。
【0045】
内因性副腎皮質ホルモン過剰症の治療
いくつかの場合において、組織特異的な内因性グルココルチコイド活性の増加の病理学的重要性が、(糖尿病、体躯の肥満、メタボリックシンドローム、筋緊張亢進、動脈硬化などの)多くの病気及び症候群について検討される。これらの症候群は、有害な結果を伴う内因性グルココルチコイドの増加した代謝作用(すなわち、高血糖、高脂血症)に特徴を有する。さらに、慢性の炎症(低レベルの炎症)がしばしば見出される(Li, J.J., Medical Hypotheses 2005, 64:236; Wang, M., Nutr. Metab. (Lond). 2005, 2:3, Dandona, P., Circulation, 2005, 111:1448)。しかしながら、現在認められている標準的なグルココルチコイドによる治療は、予測される、望ましくない代謝効果の増加に基づいて示唆されていない。
【0046】
トランス活性化において(部分)アンタゴニスト作用を有する選択的GRリガンドは、異なるメカニズムを介して内因性グルココルチコイドの有害な代謝作用を低減することができた。これらは、視床下部−下垂体−副腎皮質軸の阻害を介する内因性グルココルチコイド合成の阻害及びGRにおける内因性グルココルチコイドの代謝作用の競合性及び/又は非競合性アンタゴニズムを含む。さらに、トランス抑制における選択的GRリガンドのアゴニズムは、慢性の炎症を制御することができた。
【0047】
代謝作用の欠陥をともなう状態の治療
様々な圧倒的に重篤な病気においては、グルココルチコイドのさらなる代謝作用が望まれる。これらは、腫瘍、循環器疾患又はHIV感染などの悪液質を含む。これらの状態はまた、免疫抑制にも特徴を有するが、これは標準的なグルココルチコイドによる治療によって促進されるであろう(Mulligan, K., Int J Cardiol. 2002, 85, 151; Tijerina, A.J., Dimens Crit Care Nurs. 2004, 23:237)。
【0048】
トランス活性化における明白なアゴニスト作用及びトランス抑制における(部分)アンタゴニズムを有する選択的GRリガンドは、生物体の防御状態を障害することなく、GRの所望の代謝作用を誘導することができた。内因性グルココルチコイドのトランス抑制作用のアンタゴニズムにより生じる改善された感染防御さえも考えられるであろう。
【0049】
3 初代免疫細胞における選択的GRリガンドの分子メカニズムの特徴づけ
3.1 模式的表現
上記の例は、異なるトランス活性化/トランス抑制プロフィールを有するGRリガンドが多くの適応症において使用されることができたことを示す。かかる新しいGRリガンドの発見、成功した開発及びその臨床での使用のための重要な要件は、関連するインビトロ及びインビボ実験並びにフェーズI及びヒトでの臨床試験におけるそれらの分子メカニズムの特徴づけである。末梢血の有核細胞、すなわち末梢血白血球、及びそれに由来するタンパク質は、選択的GRリガンド及び標準的グルココルチコイドによる、トランス活性化及びトランス抑制介在性遺伝子制御のモニタリングにとって特に好適である。GRリガンドの分子メカニズムの特徴づけのための他のアッセイに比べた顕著な利益は、1)グルココルチコイドのインビボ作用にふさわしい、非刺激の初代細胞の使用、及び2)ヒトでの試験におけるバイオマーカーとしての単純な適用可能性(バイオプシーなどの侵襲性の介入又は他のさらなるストレスを伴わない血中での検出)である。
【0050】
初代免疫細胞における遺伝子制御の直接的検出は、RT-PCR又は他の増幅法などによるmRNAの検出或いはmRNAの直接的検出によって実施されることができる。タンパク質の検出のためには、連続的フローサイトメトリー、イムノアッセイまたはウエスタンブロット法などが使用可能である。タンパク質の検出は、細胞上又は細胞中、細胞ライセート中、又は細胞培養の上清中、或いは血漿、血清又は他の体液中で実施されることができる。
【0051】
上記方法論の目的は、初代免疫細胞中での遺伝子及び/又はタンパク質の発現の制御に基づいてGRリガンドの分子メカニズムを特徴づけ、そして等効果の投薬に使用される該物質の考えられる作用プロフィールに対する指標を得ることである。
【0052】
好適なパラメータの定義に関しては、広いスクリーニングアプローチにおいて、標準的グルココルチコイド及び選択的GRリガンドにより仲介される、ヒト初代免疫細胞中の50超の遺伝子の制御が調べられた。選択された遺伝子は、インビトロ及びインビボの速度実験においてさらに特徴付けされた。文献の試験と異なる条件は、いくつかの場合、逆の結果を生じた。パラメータ選択のための決定的基準は、1)GRリガンドのトランス活性化又はトランス抑制特性の一致した反映、2)非刺激免疫細胞における調節の検出、及び3)インビトロアッセイにおける遺伝子発現の迅速な反応(スクリーニングのために4時間が使用された)、そしてGRリガンドのインビボ適用後の良好かつ耐久性のある検出可能性である。これらの特性は、GRリガンドによる遺伝子発現の直接的制御がおこりやすくし、そして、該パラメータをインビボ試験において使用可能とするであろう。
【0053】
標準的なGKとの比較のために、これらのパラメータについてのGRリガンドにより影響された遺伝子発現が、標準的なGKであるプレドニソロンによる治療後の遺伝子発現に対して正規化された。SEGRA物質がそれに比較して大きな分離を示し、SEGRA開発の候補に関する臨床試験の場合の比較物質を代表することができた、プレドニソロンは標準的GKである。当業者には、正規化は他のいかなるグルココルチコイドにも原則として関連することが明らかである。
【0054】
遺伝子抑制のためには、「プレドニソロン/GRリガンド」の商が正規化の目的、すなわち低い値(1未満)はGRリガンドによる相対的に弱い抑制を示す(残りの遺伝子発現においてはより高い値)、のために導かれる。遺伝子誘導のためには、「Gr-リガンド/プレドニソロン」の商が正規化の目的、すなわち1未満の値はGRリガンドによる相対的に弱い誘導を示す、のために導かれる。
【0055】
【表1】

【0056】
目的は、物質の分離の程度を、異なるトランス活性化及びトランス抑制パラメータの発現の様々な影響を反映する値によって概略的に特徴づけすることであった。
【0057】
SEGRA被験物質の分離した作用を特徴づけるために、選択された遺伝子の誘導又は抑制に基づいてトランス活性化及びトランス抑制活性の分離を示す分離因子が定義された。
【0058】
以下に、プレドニソロンに対して正規化された値からのトランス抑制及びトランス活性化パラメータの間の比が以下の式によって導かれた。
【0059】
【化1】

【0060】
この式中:
TRは、正規化されたトランス抑制パラメータ(TRプレドニソロン=1)を表し、
TAは、正規化されたトランス活性化パラメータ(TAプレドニソロン=1)を表し、
【0061】
【化2】

【0062】
【化3】

【0063】
したがって、上記比は、プレドニソロンにより正規化されたm個の異なるトランス活性化パラメータの積のm乗根でプレドニソロンにより正規化されたn個の異なるトランス抑制パラメータの積のn乗根を割ったものである。
【0064】
トランス抑制パラメータとして、共アクセサリー分子(HLA-DR、CD86)の発現を含むすべての知られたパラメータが好適である。特に好適なパラメータは、IL-1β、IL-8、Rantes、TNF−αであり、TNF-αが特に好ましい。
【0065】
トランス活性化パラメータとして、サイトカイン受容体(IFN-γR1、TNF-R1、IL-1R1、IL-2Rα、IL-13Ra、CXCR4、GITR)並びに他の遺伝子(β2−アドレノレセプター、ヘモキシゲナーゼ1、IL-2、MIF、アネキシン1、トロンボスポンディン1)の発現を含むすべての知られたパラメータが好適である。特に好適なパラメータは、グルタミンシンテターゼ及びGILZの発現であり、非常に特別に好適なのは、CD163及びFKBR51の発現である。
【0066】
これらのトランス抑制及びトランス活性化パラメータからいずれが選ばれることもでき、そして式Iの比を決定するための上記式にしたがって使用されることができる。
【0067】
TNF-α及びIL-1βは、トランス抑制を測定するために選択されることが好ましい。CD163及びFKBP51は、トランス活性化を測定するために選択されることが好ましい。
【0068】
この好ましいパラメータの組み合わせによって、トランス抑制パラメータ及びトランス活性化パラメータ間の比が、個々のパラメータの正規化後に以下の式2によって導かれる:
【0069】
【化4】

【0070】
本分野の当業者には、上記の式1又は2による比が原則として(IC50又はED50などの)派生値から導かれることもできたことは明らかである。数学的関係から、当業者には、上記比がトランス活性化及びトランス抑制値のより大きな差別化を伴う別の計算方法などの場合に1未満となるであろうことも明らかである。
【実施例】
【0071】
実験パート
以下の実験パート中で得られた遺伝子又はタンパク質発現における結果は、定量的リアルタイムRT-PCRにより、又は連続的フローサイトメトリーによって得て、そして平均値±標準偏差としてプロットする。
【0072】
mRNAの検出のためには、全RNAを各サンプル(ヒトPBMC又はヒト全血又はマウス由来の脾臓細胞)から分離し、cDNA中に転写し、そして増幅し、そしてリアルタイムTaqMan-PCR(Applied Biosystems)によって以下のように検出する。「ハウスキーピング」遺伝子HPRTの発現に比較した相対的定量を実施した。各場合において、GRリガンドについての結果のビヒクル対照の結果に対する比をプロットする。
【0073】
ヒト免疫細胞中の受容体の発現の連続的フローサイトメトリーによる検出は、対応する受容体タンパク質からの商業的に入手可能な蛍光標識モノクローナル抗体によって実施した。標識化は、全血中で実施した。赤血球をFACSキャリバー−連続的フローサイトメーター(Becton Dickinson)によって溶解したあと、連続的フローサイトメトリー分析を行った。平均蛍光活性をプロットした。
【0074】
例として試験する化合物は、以下の:PCT国際特許出願公開第WO00/32584号からの化合物1(ZK 238587)
【化5】

及びPCT国際特許出願公開第WO03/082827号からの化合物2(ZK 243185)
【化6】

である。
【0075】
3.2 トランス抑制活性のパラメータとしての遺伝子/タンパク質抑制
標準的グルココルチコイドによる発現の阻害は、免疫細胞中の多くの遺伝子について知られている(Galon, J., FASEB, J. 2002, 16:61; Hayashi, R., Eur. J. Pharmacol. 2004, 500:51)。
【0076】
非刺激初代免疫細胞についての我々の研究においては、炎症及び特異的な免疫反応において役割をはたす遺伝子/タンパク質は、トランス抑制活性の指標として好適であることが証明されている。さらに、これらのパラメータは、それらの阻害がGRリガンドの抗炎症及び免疫抑制効果を反映するという利点がある。以下の図は、定量的リアルタイムPCRによって検出した非刺激ヒト末梢単核血液細胞(PBMC)の4時間培養における、標準的グルココルチコイドであるプレドニソロンによる炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-1β、IL-8、Rantes)及び共刺激分子CD86の遺伝子制御を示す。
【0077】
【化7】

【0078】
標準的グルココルチコイドによって阻害された遺伝子(TNF-α、IL-1β、Rantes)の発現に対するプレドニソロンのインビボでの作用を、マウス脾細胞において24時間後に試験した。
【0079】
【化8】

【0080】
GRリガンドの抗炎症及び免疫抑制作用を反映する、自然発生的なタンパク質発現の減少についてのパラメータは、全血アッセイにおける連続的フローサイトメトリーによって測定される単球上でのMHCクラスII(HLA-DR)の発現である。
【0081】
【化9】

【0082】
IL-1β、IL-8(ヒトの系においてのみ利用可能である)、Rantes及び特にTNF-α、のmRNA発現は、初代非刺激免疫細胞中でのGRリガンドのトランス抑制活性のインビトロ及びエクスビボでの検出のために特に好適であることが証明された。
【0083】
3.3 トランス活性化活性のパラメータとしての遺伝子及び/又はタンパク質誘導
免疫細胞中での標準的グルココルチコイドによる遺伝子の誘導は知られている(Galon, J., FASEB, J. 2002, 16:61)。
【0084】
以下のわれわれのスクリーニングにおいて同定された遺伝子について、われわれは非刺激免疫細胞における誘導と選択的GRリガンド:サイトカイン受容体(たとえば、TNF-R1、IFN-γR1、IL-1R1、IL-2Rα、IL-13Ra、GITR、CXCR4)、CD163、FKBP51、アネキシン1、IL-2、β2−アドレノレセプター、MIF、GILZ、ヘモキシゲナーゼ1、トロンボスポンディン1及びグルタミンシンテターゼのトランス活性化特性との相関関係を検出することができた。これらのタンパク質は、いくつかの場合、本質的にGRリガンドの抗炎症及び代謝作用並びにGR作用の制御に関与する。文献の結果と反対の結果がいくつかの場合には得られ、したがって、例えば、IL-1RAの発現の誘導でなく抑制が観察された(示さない)。
【0085】
CD163、FKBP51、GILZ及びグルタミンシンテターゼの遺伝子及び/又はタンパク質発現は、インビトロ及びエクスビボでのGRリガンドのトランス活性化活性の検出に特に好適であることが証明された。
【0086】
図は、ヒトPBMCの4時間培養におけるプレドニソロンによる遺伝子の誘導を示す。
【0087】
【化10】

【0088】
GRリガンドのトランス抑制活性及びトランス活性化活性についての選択されたパラメータの以下の図は、遺伝子発現に対するプレドニソロンの用量依存的な効果を示す。
【0089】
【化11】

【0090】
選択された遺伝子の発現のインビボでの誘導が、プレドニソロンで処置されたマウスの脾細胞において検出された。
【0091】
【化12】

【0092】
連続的フローサイトメトリーによって検出された、ヒト全血培養中の単球上での受容体のタンパク質発現に対するプレドニソロンの効果の増加をプロットする。顆粒球についても同様の結果が見出された。
【0093】
【化13】

【0094】
要約すると、免疫細胞中での遺伝子発現及びタンパク質発現の研究はどちらもGRリガンドの阻害(トランス抑制)又は増大(トランス活性化)効果の特徴づけに好適である。かかる結果とトランス活性化及びトランス抑制スクリーニングアッセイの結果の相関を以下に示す。
【0095】
4 PCT国際特許出願公開第WO00/32584号及び同第WO02/10143号からの選択的GRアゴニスト(SEGRA)
以下に、スクリーニングにおけるSEGRA物質の分子メカニズムの特徴づけのためのアッセイ並びに異なるトランス活性化活性を有する2つの選ばれたSEGRA物質の結果がプロットされる。
【0096】
これらのアッセイは、細胞系における受容体アッセイ又はプロモーターアッセイに基づくGRリガンドの分子メカニズムの特徴づけのための今や一般的な方法の水準を提供する。
【0097】
4.1 GRリガンドの分子メカニズムの特徴づけ
先ず、物質は、GRへの結合そして同時にGRへの選択性を示すために受容体結合試験を受ける。
【0098】
物質のグルココルチコイド受容体(GR)及び他のステロイドホルモン受容体(ミネラルコルチコイド受容体(MR)、プロゲステロン受容体(PR)及びアンドロゲン受容体(AR))への結合を、組換え生産された受容体の助けによって試験する。この目的のために、各ステロイドホルモン受容体のコード配列を含むバキュロウイルスに感染したSF9細胞からの抽出物を使用する。対照物質[3H]−デキサメタゾンと比較すると、上記物質は、GRに対して高い〜非常に高い親和性を示す。
【0099】
SEGRA物質のトランス活性化活性を測定するために、2つの試験系を使用する。
【0100】
マウス乳癌ウイルス(MMTV)のプロモーターは、活性化されたGR(所謂GRE)への特異的結合部位を含む。このプロモーターを、レポーター遺伝子(ルシフェラーゼ)の前にクローン化し、そして該構築物を、安定なやり方でヒト細胞株HeLa(頚癌細胞)のゲノム中に組み込んだ。試験物質及び対照物質を加えることによって、MMTVプロモーターを活性化し、そして光学測定法によってその活性が検出可能なルシフェラーゼが発現される。
【0101】
第二のトランス活性化系においては、グルココルチコイドによるチロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)の誘導を測定する。TATの遺伝子がリガンドにより活性化されたGRの結合によって促進された形態で発現されるように、この遺伝子のプロモーター中にGREも位置する。この目的のために、ラット肝癌細胞(H4IIE3)を試験物質及び対照物質で24時間処理し、そして光学測定によってTAT活性を測定する。上記2つのアッセイのために、トランス活性化におけるSEGRA物質のアゴニスト作用及び他のGRリガンドによるパラメータの誘導におけるアンタゴニスト作用の検出が可能である。
【0102】
トランス抑制における活性を測定するために、コラゲナーゼプロモーターの一部を含むプロモーター系を使用する。該プロモーターはレポーター遺伝子(ルシフェラーゼ)の前に置かれ、そして生成された構築物が安定な形態でヒト細胞株HeLaのゲノム中に組み込まれる。細胞をホルボールエステルで刺激した後、このプロモーターを活性化する。SEGRA試験物質及びグルココルチコイドの投与は、ホルボールエステルにより誘導されたプロモーター活性を阻害する。検出は、ルシフェラーゼ活性の光学的測定を介して実施する。
【0103】
トランス活性化及びトランス抑制系それぞれにおけるSEGRA物質の活性は、対照物質デキサメタゾンの活性との比較して決定する。
【0104】
4.2 トランス活性化アゴニスト 化合物1
SEGRA物質である化合物1を、上記2つのトランス活性化アッセイにおけるアゴニストとして試験した。化合物1は、10±1.4nmolでMMTVプロモーターの活性を誘導し、有効性はデキサメタゾンの最大効果の73±2.8%である(n=2)。ラット肝癌細胞におけるTAT活性の誘導において、上記物質は5.7±0.6nmolでの能力及びデキサメタゾンの最大効果の86±12.7%の有効性を示す。それは、MMTVプロモーターアッセイでもTATプロモーターアッセイでもアンタゴニスト効果を有さない。
【0105】
4.3 トランス活性化−アンタゴニスト化合物2
化合物1とは対照的に、化合物2は、MMTVプロモーターに関する明らかなアンタゴニストである。該物質は、デキサメタゾンにより誘導されるMMTVプロモーター活性を85±12nmolでアンタゴナイズし、有効性はGRアンタゴニストRU 486の最大効果の119±3.6%である(n=3)。TATプロモーターにおいては、化合物2は部分アゴニストのように振る舞う。TATプロモーターの活性は、67±10nmolの化合物2によって誘導され、有効性は、デキサメタゾンの最大効果の43.5±10.6%である(n=2)。1μmolの濃度で、化合物2は、デキサメタゾンにより誘導されたTAT活性を、RU 486の最大効果の35%アンタゴナイズした。
【0106】
5 初代免疫細胞における遺伝子発現の分析による、化合物1及び化合物2のトランス活性化及びトランス抑制活性の特徴づけ
初代免疫細胞中での遺伝子発現の分析による、選択的GRリガンドのトランス活性化及びトランス抑制活性の特徴づけの応用を、例として、2つのSEGRA物質、トランス活性化におけるアゴニストである化合物1及びトランス活性化におけるアンタゴニストである化合物2、に基づいて比較して以下に示す。これらの物質の分子メカニズムは通常のアッセイにおいて先に特徴づけされている(5.2及び5.3を参照のこと)。遺伝子発現の分析を、定量的リアルタイムTaqMan-PCRによって実施した。GRリガンドについての結果のビヒクル対照についての結果に対する比(平均値±標準偏差)を示す。
【0107】
5.1 初代ヒト免疫細胞におけるインビトロの結果
SEGRA物質は、トランス抑制活性のパラメータとして、ひけをとらないヒトPBMC中でのサイトカインの発現の阻害を示す。
【0108】
【化14】

【0109】
これとは対照的に、SEGRA物質の異なるトランス活性化プロフィールは、異なる程度の遺伝子誘導に反映される。アゴニストである化合物1が明らかに遺伝子を誘導する一方、トランス活性化におけるアンタゴニストである化合物2は、低度の遺伝子の誘導又は遺伝子を誘導しない結果となった。
【0110】
【化15】

【0111】
パラメータCD163及びFKBP51については、ヒト全血培養中でのmRNA発現に対するGRリガンドの時間依存的な影響をさらに試験した。プレドニソロン及びトランス活性化におけるアゴニストである化合物1がこれらの遺伝子の発現を永久的に誘導した一方、トランス活性におけるアンタゴニストである化合物2は遺伝子発現の増加に導かなかった。
【0112】
【化16】

【0113】
さらに、トランス活性化におけるアンタゴニストが、標準的グルココルチコイドであるプレドニソロンによる遺伝子誘導を、トランス活性化作用についての選択されたパラメータについて選択的に阻止するかどうかを試験した。
【0114】
プレドニソロン及び化合物2はどちらも、ヒトPBMC培養においてトランス抑制パラメータTNF-α及びIL-1βのmRNAの発現の抑制に導く。該2つのGRリガンドの組み合わせは単一投与に類似の結果に導く。
【0115】
【化17】

【0116】
これとは対照的に、トランス活性化パラメータCD163及びFKBP51は、プレドニソロンのみによって誘導されるが、トランス活性化におけるアンタゴニストである化合物2によっては誘導されない。化合物2とプレドニソロンの同時投与は、単独投与されたプレドニソロンに比べて明らかに低いトランス活性化パラメータの誘導を引き起こした。実際に、CD163の発現はすべてのバッチにおいて化合物2によって減少した。
【0117】
これらのデータは、我々が定義した新しい試験系、すなわち非刺激初代免疫細胞、において、選択されたパラメータが選択的GRリガンドのアンタゴニスト活性の検出に好適であることを確認した。
【0118】
5.2 マウスにおけるインビボの結果
5日間にわたるSEGRA物質の投与後の副腎の重量減少は、どちらの物質も選択された用量(30mg/kg)でインビボにおいて活性であることを確認する。
【0119】
【化18】

【0120】
選択された遺伝子のインビボでの制御は、SEGRA処置したマウスの脾細胞において24時間後に特徴づけした。
【0121】
トランス抑制のパラメータとしての炎症性サイトカインの阻害は、トランス活性化におけるアンタゴニストである化合物2では、アゴニストである化合物1よりもより低く現れた。しかしながら、これらの遺伝子の発現は、ビヒクル対照にくらべるとこれら2つの物質によって顕著に阻害された。
【0122】
【化19】

【0123】
以下に、その誘導がGRリガンドのトランス活性化と相関する、選択された遺伝子のインビボでの制御についての結果が示される。
【0124】
【化20】

【0125】
トランス活性化におけるアゴニストである化合物1による処置は、FKBP51、CD163、GILZ及びグルタミンシンテターゼの脾細胞中での発現を明らかに誘導する結果となった。これとは対照的に、トランス活性化におけるアンタゴニストである化合物2は、これらの遺伝子の発現を減少させた。
【0126】
すべての選択されたパラメータについて、トランス活性化アンタゴニストによる遺伝子発現の誘導の減少だけでなく阻害さえも検出可能である。この効果が内因性のグルココルチコイドのトランス活性化活性のアンタゴニズムによって誘導されるらしい。
【0127】
要約すると、2つの選択された、Schering AGからの選択的GRアゴニスト(SEGRA)に基づいて、非刺激初代免疫細胞の試験系における定義された遺伝子及び/又はタンパク質の発現についての研究が、トランス活性化又はトランス抑制におけるインビトロ及びインビボでのそのアゴニスト又はアンタゴニスト活性に関して選択的GRリガンドの分子メカニズムを特徴づけするために好適であることを示すことが可能であった。
【0128】
5.3 式2による比の評価
異なるトランス抑制及びトランス活性化パラメータの発現の様々な影響を反映する値によって、概略的に物質の分離の程度を特徴づけすることが目的であった。
【0129】
SEGRA試験物質の分離した作用を特徴づけるために、選択された遺伝子の誘導又は抑制に基づくトランス活性化及びトランス抑制作用の分離を示す分離因子が定義された。
【0130】
トランス抑制のメカニズムに関するパラメータとして、TNF-α及びIL-1βが選ばれた。CD163及びFKBP51は、トランス活性化活性の検出に使用される。
【0131】
以下に、プレドニソロンに対して正規化された、トランス抑制及びトランス活性化パラメータ間の比が式2にしたがって導かれた。
【0132】
【化21】

【0133】
トランス活性化及びトランス抑制活性についての因子が幾何学的に平均され、そして相互の比に組み込まれた。この式によれば、プレドニソロンに匹敵するTNF-α及びIL-1βの抑制とCD163及びFKBP51の遺伝子誘導の減少は、上記比を1超の値に増加させる。上記比が高いほど、プレドニソロン(比=1)に比べてGRリガンドはより分離する。結果を以下のダイアグラムに示す。
【0134】
【化22】

【0135】
上記比は、遺伝子発現値をプレドニソロンに対して正規化した後に、トランス抑制(TNF-α及びIL-1β)及びトランス活性化(CD163及びFKBP51)についてのパラメータの幾何学的平均の商から計算した。
【0136】
要約すると、プレドニソロンとは異なる程度に分離するSEGRA試験物質の分子メカニズムを特徴付ける比は、PBMC培養における遺伝子発現値から導かれることができた。特に、TAアンタゴニストについては、(2時間の値から始まる)比の増加の良好な持続性が、経時的に観察可能である。この分離因子に基づいて、標準的なGKであるプレドニソロン及びデキサメタゾンは、それらのトランス抑制及びトランス活性化特性において常にかなり同程度である。
【0137】
5.4 インビボ試験
GRリガンドで処置されたマウスの脾細胞における速度論的遺伝子発現
インビトロの速度論的試験と同様、SEGRA試験物質の分離したインビボでの作用を可視化するために、分離因子が計算された。これらの因子は、プレドニソロン処置後の発現(様々な時点でのプレドニソロン群の平均値)に対して正規化された、トランス抑制及びトランス活性化についてのパラメータの遺伝子発現値を含む。
【0138】
遺伝子抑制についてのパラメータは、TNF-α及びLI-1βであり、遺伝子誘導のためのパラメータは、CD163及びFKBP51であった。説明のための式2に対応するトランス抑制及びトランス活性化の幾何学的平均値の商から、分離因子が計算された。
【0139】
上記の図は、プレドニソロンに比較した、SEGRA試験物質の分離に関する比の速度論を図示する。すべてのSEGRA試験物質について、最大のインビボでの分離が投与の24時間後に検出されることができた。最小の分離は、すべてのSEGRA試験物質について、6時間後に観察された。TAアゴニスト及びTA部分アゴニストについては、上記値はプレドニソロンに比べてかなり低かった。
【0140】
【化23】

【0141】
上記比は、遺伝子発現値をプレドニソロンに対して正規化した後に、トランス抑制(TNF-α及びIL-1β)及びトランス活性化(CD163及びFKBP51)についてのパラメータの幾何学的平均の商から計算した。
【0142】
要約すると、上記選択されたパラメータは、GRリガンドのトランス抑制及びトランス活性化活性、並びにTA部分アゴニスト及びTAアンタゴニストの分離した作用をインビボで表すのにも好適であることが証明された。しかしながら、全体として、マウスの脾細胞中でのインビボの分離は、ヒトPBMCにおけるインビトロ試験よりも少なく、そして一貫したものではなかった。これに関する少なくとも部分的な原因は、トランス抑制パラメータであるTNF-α及びIL-1βのインビボでの抑制におけるSEGRA試験物質の活性が低いことである。
【0143】
5.5 アンタゴニスト作用を検出するためのパラメータの使用の視覚化
先の結果は、GRリガンドの様々なアゴニズム、すなわち、トランス活性化におけるアンタゴニストであるZK243185(化合物2)によるCD163及びFKBP51の低下した又は欠失した誘導など、のみを示した。
【0144】
上記パラメータは、TA介在性の遺伝子誘導によって直接的にアンタゴニズムを生じさせるためにも使用可能であり、該誘導は、プレドニソロンなどの標準的グルココルチコイドによって初代ヒト免疫細胞において阻止されるが、TNF-α発現などのTR-介在性の阻害は障害されない。すなわち、アンタゴニズムにおける分離が必要とされる。
【0145】
【化24】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルココルチコイド受容体(GR)−感受性遺伝子の遺伝子及び/又はタンパク質発現分析による、GRリガンドのトランス活性化及びトランス抑制活性の特徴づけのための方法であって、以下のステップ:
a)初代免疫細胞のGRリガンドへの曝露、
b)トランス抑制を測定するための、少なくとも1つの前記GR−感受性遺伝子の発現の制御の検出、
c)トランス活性化を測定するための、少なくとも1つの前記GR−感受性遺伝子の発現の制御の検出、
d)知られたグルココルチコイドに対する、上記得られた値の正規化、及び
e)以下の式1:
【化1】

による、比の導出、
が実施されることを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
上記トランス活性化の特徴づけのために、IFN-γR1、TNF-R1、IL-1R1、IL-2Rα、IL-13Ra、CXCR4、GITR、β2-アドレノレセプター、ヘモキシゲナーゼ1、IL-2、MIF、アネキシン1、又はトロンボスポンディン1の発現が測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記トランス活性化活性の特徴づけのために、CD163、FKBP51、グルタミンシンテターゼ、又はGILZの誘導が測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記トランス抑制活性の特徴づけのために、HLA-DR、CD86又は前炎症性サイトカイン、IL-β、IL-8、TFN-α又はRANTESの抑制が測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
GR-感受性遺伝子の遺伝子及び/又はタンパク質発現分析による、グルココルチコイド受容体(GR)リガンドのトランス活性化及びトランス抑制活性の特徴づけのための方法であって、以下のステップ:
a)初代免疫細胞のGRリガンドへの曝露、
b)TNF‐α及びIL-1βの発現の制御の検出、
c)CD163及びFKBP51の発現の制御の検出、
d)知られたグルココルチコイドに対する、上記得られた値の正規化、及び
e)以下の式2:
【化2】

による、比の導出、
が実施される、前記方法。
【請求項6】
前記初代免疫細胞が刺激されない、請求項1〜5の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項7】
前記タンパク質の検出が細胞において、又は液体中への分泌後に実施される、請求項1〜6の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項8】
リンパ器官由来、骨髄由来又は血液由来の前記初代免疫細胞が検査される、請求項1〜7の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項9】
前記血液が生きた生物体から取り出されたものである、請求項1〜8の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項10】
前記トランス抑制及びトランス活性化パラメータのプレドニソロンに対する正規化が行われる、請求項1〜9の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項11】
GRリガンドの、競争的又は非競争的、アゴニスト性、部分アゴニスト性、部分アンタゴニスト性、又はアンタゴニスト性の活性を検出するための、請求項1〜10の少なくとも1項に記載の方法の使用。
【請求項12】
インビトロ及びインビボ実験における、並びにバイオマーカーアッセイとしての、請求項1〜10の少なくとも1項に記載の方法の使用。

【公表番号】特表2008−538903(P2008−538903A)
【公表日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−508172(P2008−508172)
【出願日】平成18年5月2日(2006.5.2)
【国際出願番号】PCT/EP2006/004409
【国際公開番号】WO2006/117242
【国際公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(300049958)バイエル・シエーリング・ファーマ アクチエンゲゼルシャフト (357)
【Fターム(参考)】