説明

初期クロックパターン書き込み方法及び磁気ディスク装置

【課題】スピンドルモータの回転に高精度に同期したライトクロック信号に基づいてブランクディスクに初期クロックパターンを書き込むことができるようにする。
【解決手段】実施形態によれば、初期クロックパターン書き込み方法は、第1のタイミングマークを、発振器による発振周波数に応じた第1のクロック信号に基づいて、スピンドルモータによって回転させられるディスクの円周上の任意の箇所にヘッドを用いて書き込み、第1のタイミングマークがヘッドにより読み出される時間間隔を第1のタイムスタンプとして検出しながら、第1のタイムスタンプが目標とする第2のタイムスタンプに一致するように、発振器の発振周波数またはスピンドルモータの回転速度を調整し、この調整の後、初期クロックパターンを、調整された発振器の発振周波数またはスピンドルモータの回転速度に応じた第2のクロック信号に基づいてディスクに書き込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、初期クロックパターン書き込み方法及び磁気ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスク装置は、周知のように、磁気ディスクを記録媒体として備えている。以下の説明では、磁気ディスクを、単にディスクと表記する場合もある。ディスク上には、サーボデータ(サーボパターン)が記録されている。サーボデータは、ヘッドを目標位置に位置付けるために用いられる。
【0003】
近年の磁気ディスク装置は、サーボデータを、当該磁気ディスク装置自身がディスク上にライトする機能(いわゆるセルフサーボライト機能)を有している。このセルフサーボライトのためには、ブランク状態のディスク(つまり、ブランクディスクと称する)に、初期クロックパターンを書き込む必要がある。この初期クロックパターンは、セルフサーボライトのためのタイミングの基準として用いられる。
【0004】
従来技術では、初期クロックパターンをブランクディスクに書き込むために、スピンドルモータの回転に応じて生じる逆起電力(より詳細には、逆起電力に基づいて生成される逆起電力パルス)が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,668,679号明細書
【特許文献2】米国特許第7,751,144号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、スピンドルモータの回転に応じて生じる逆起電力は、ジッター成分を多く含む。このため、逆起電力に基づいて生成される逆起電力パルスは、スピンドルモータの回転に高精度に同期しているとは限らない。
【0007】
本発明の目的は、スピンドルモータの回転に高精度に同期したライトクロック信号に基づいてブランクディスクに初期クロックパターンを書き込むことができる初期クロックパターン書き込み方法及び磁気ディスク装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によれば、磁気ディスク装置において、セルフサーボライトのための初期クロックパターンをスピンドルモータによって回転させられているディスクに書き込む初期クロックパターン書き込み方法が提供される。前記初期クロックパターン書き込み方法は、第1のタイミングマークを、発振器による発振周波数に応じた第1のクロック信号に基づいて、前記ディスクの円周上の任意の箇所にヘッドを用いて書き込み、前記第1のタイミングマークが前記ヘッドにより読み出される時間間隔を第1のタイムスタンプとして検出しながら、前記第1のタイムスタンプが目標とする第2のタイムスタンプに一致するように、前記発振器の発振周波数または前記スピンドルモータの回転速度を調整し、前記調整の後、前記初期クロックパターンを、前記調整された前記発振器の発振周波数または前記スピンドルモータの回転速度に応じた第2のクロック信号に基づいて前記ディスクに書き込む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係る磁気ディスク装置の典型的な構成を示すブロック図。
【図2】図1に示されるディスクエンクロージャの典型的な構成を示す平面図。
【図3】図1に示されるリードチャネル(RDC)の典型的な構成を示すブロック図。
【図4】図3に示されるPLLユニットの典型的な構成を示すブロック図。
【図5】同実施形態における初期クロックパターン書き込みの手順を示すフローチャートの一部を示す図。
【図6】同実施形態における初期クロックパターン書き込みの手順を示すフローチャートの残りを示す図。
【図7】同実施形態における初期クロックパターン書き込みを説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態につき図面を参照して説明する。
図1は実施形態に係る磁気ディスク装置の典型的な構成を示すブロック図である。
【0011】
図1に示す磁気ディスク装置(以下、HDDと称する)は、ディスクエンクロージャ11と、サーボコンボドライバ(以下、SVCと称する)12と、リードチャネル(以下、RDCと称する)13と、ホストコントローラ14と、サーボコントローラ15とを備えている。
【0012】
図2は、ディスクエンクロージャ11の典型的な構成を示す平面図である。
図2において、ディスクエンクロージャ11は、ヘッドディスクアセンブリ部(以下、HDA部と称する)110を備えている。HDA部110は、ディスク(磁気ディスク)111と、ヘッド(磁気ヘッド)112と、スピンドルモータ(以下、SPMと称する)113と、アクチュエータ114と、ボイスコイルモータ(以下、VCMと称する)115と、ランプ116と、プリアンプ117とを備えている。
【0013】
ディスク111は磁気記録媒体である。ディスク11の例えば一方の面は、データが磁気記録される記録面をなしている。ディスク111はSPM113に取り付けられており、当該SPM113によって所定の回転速度で回転させられる。SPM113は、図1に示されるSVC12と接続されている。
【0014】
ヘッド112はディスク111の記録面に対応して配置される。ヘッド112は、ライト素子112W及びリード素子112R(図7参照)を備えている。ヘッド112(ライト素子112W/リード素子112R)は、ディスク111へ/からのデータの書き込み/読み出しに用いられる。本実施形態では、説明の簡略化のために、単一枚のディスク111を備えたHDDを想定している。しかし、複数枚のディスクが積層配置されたHDDであっても構わない。また本実施形態では、ディスク111の一方の面が記録面をなしている。しかし、ディスク111の両面がいずれも記録面をなし、両記録面にそれぞれ対応してヘッドが配置されても構わない。
【0015】
アクチュエータ114はアーム(アクチュエータアーム)1141を備えている。ヘッド112は、アクチュエータ114のアーム1141から延出したサスペンション1142の先端(より詳細には、サスペンション1142の先端に備えられたヘッドスライダ)に取り付けられている。このような、ヘッド112を備えたサスペンション1142の構造は、ヘッドジンバルアセンブリ(以下、HGAと称する)と呼ばれる。つまりヘッド112は、HGAの形でアーム1141に取り付けられている。
【0016】
アクチュエータ114はまた、支持フレーム1143及び枢軸1144を備えている。支持フレーム1143は、アーム1141とは反対方向に延出している。支持フレーム1143は、例えばV字形状を有しており、ディスク111に近い側のフレーム端1143a及びディスク111から遠い側のフレーム端1143bを備えている。
【0017】
アクチュエータ114は、枢軸1144の回りで回動(揺動)自在に支持されている。これにより、アクチュエータ114のアーム1141に取り付けられたHGAは、ディスク11上の任意の半径位置及びランプ116へ、ディスク11の半径方向に移動可能となっている。
【0018】
VCM115は、アクチュエータ114の駆動源である。つまりアクチュエータ114は、VCM115により駆動される。アクチュエータ114の支持フレーム1143には、VCM115の一部を構成するコイル(VCMコイル)が固定されている。VCM115は、図1に示されるSVC12と接続されている。
【0019】
ランプ116は、ディスク111の外周側の、当該ディスク111から外れた位置に配置されている。更に具体的に述べるならば、ランプ116は、ディスク111の外周に近接し、且つアクチュエータ114のHGA(より詳細には、HGAの先端のリフトタブ)の移動経路上のディスク111から外れた位置に配置される。、
HGAは、図1に示すHDDの例えば非動作時に、ヘッド112をディスク111上から退避するために、ランプ116に移動される。このディスク111上からランプ116への移動は、アンロード(またはヘッドアンロード)と呼ばれる。また、HDDの例えば動作時には、HGAはランプ116からディスク111上に移動される。このランプ116からディスク111上への移動は、ロード(またはヘッドロード)と呼ばれる。
【0020】
ディスクエンクロージャ11の所定位置には、アウターストッパ118a及びインナーストッパ118bが取り付けられている。アウターストッパ118aは、HGA(ヘッド112)がランプ116に退避された際に、アクチュエータ114の支持フレーム1143のフレーム端1143aが当接する位置に取り付けられている。インナーストッパ118bは、ヘッド112がディスク111上の内周に移動された際に、アクチュエータ114の支持フレーム1143のフレーム端1143bが当接する位置に取り付けられている。アウターストッパ118a及びインナーストッパ118bは、例えば弾性部材で構成されている。
【0021】
プリアンプ117は、FPCと呼ばれるフレキシブルプリント配線板に実装されている。プリアンプ117は、FPCを介してヘッド112と接続されている。プリアンプ117は、ヘッド112により読み出された信号(つまりリード信号)を増幅する。プリアンプ117はまた、後述するRDC13から送出されるライト信号をライト電流に変換する。ライト電流はヘッド112に送出される。
【0022】
再び図1を参照すると、SVC12、RDC13、ホストコントローラ14及びサーボコントローラ15は、プリント板ユニット(printed circuit board assembly:PCA)に搭載される。PCAは、ディスクエンクロージャ11の背面に実装されているため、図2には示されていない。
【0023】
SVC12は、VCMドライバとSPMドライバとを組み合わせて構成されたモータドライバであり、例えば単一チップのICである。SVC12は、図2に示されるSPM113及びVCM115と接続されている。SVC12は、サーボコントローラ15からの制御信号に応じて、SPM113及びVCM115にそれぞれSPM電流(またはSPM電圧)及びVCM電流(またはVCM電圧)を供給(または印加)する。SPM113及びVCM115は、それぞれ、サーボコントローラ15から供給されるSPM電流及びVCM電流に応じて駆動される。SVC12は、VCM115の逆起電力(Back Electromotive Force:BEMF)を検出するBEMF検出器(図示せず)を備えている。VCM115のBEMFは、周知のように、VCM115が駆動されることによって発生する。SVC12は、検出されたVCM115のBEMFを表すデータ(VCM BEMFデータ)をサーボコントローラ15に送出する。
【0024】
RDC13は、リード/ライトチャネルとも呼ばれ、リード/ライトに関連する信号処理を行う。即ちRDC13は、プリアンプ117によって増幅されたリード信号をデジタルデータに変換し、このデジタルデータからデータパスを経てリードデータを復号する。復号されたリードデータは、図示せぬディスクコントローラを介してホストコントローラ14に送出される。RDC13はまた、プリアンプ117によって増幅されたリード信号から、サーボデータに含まれているヘッド位置信号を復調する。サーボデータは、図1に示すHDD(より詳細には、HDD内のサーボコントローラ15)の持つセルフサーボライト機能によって、ディスク111に書かれる。RDC13は更に、ディスクコントローラから送出されるライトデータを符号化し、この符号化されたライトデータ(ライト信号)をプリアンプ117に送出する。
【0025】
ホストコントローラ14は、ホストと当該ホストコントローラ14との間で外部インターフェースを介して信号を授受する。具体的には、ホストコントローラ14は、ホストから外部インターフェースを介して転送されるコマンド(ライトコマンド、リードコマンド等)を受信する。ホストは、図1に示すHDDを、自身の記憶装置として利用する。
【0026】
ホストコントローラ14はまた、受信されたコマンドに応じて、或いは自律的に、ロード命令、アンロード命令等をサーボコントローラ15に発行する。ホストコントローラ14は更に、ホストと当該ホストコントローラ14との間のデータ(ユーザデータ)の転送を制御する。なお、図1では簡略化のために、ディスクコントローラを含む構成、つまりユーザデータに関する構成は省略されている。
【0027】
サーボコントローラ15は、上述したようにセルフサーボライト機能を有する。また、サーボコントローラ15は、ヘッド112をディスク111上の目標位置に位置付けるヘッド位置決め制御機能も有する。サーボコントローラ15は、MPU、メモリ及び入出力回路を備えている。メモリには、MPUによって実行される制御プログラムが例えば予め格納されている。MPUは、この制御プログラムを読み取って実行することにより、セルフサーボライト機能、ヘッド位置決め制御機能等を実現する。メモリには、MPUによる処理に用いられる各種の定数も格納されている。SVC12からのVCM BEMFデータ、RDC13からのヘッド位置信号、ホストコントローラ14からのロード命令或いはアンロード命令等は、サーボコントローラ15内の入出力回路を介してMPUに取り込まれて、当該MPUによって処理される。
【0028】
ディスク111は、初期状態では、上述のサーボデータも書かれていないブランク状態にある。本実施形態では、このブランク状態のディスク(以下、ブランクディスクと称する)111に、セルフサーボライトのための初期クロックパターンがサーボコントローラ15の制御により書かれる。
【0029】
以下、本実施形態において、ブランクディスク111に初期クロックパターンを書き込む方法の概要について説明する。なお、初期クロックパターンは、実際には、ライトデータから生成されるライト信号に対応するライト電流に応じて、ヘッド112によって書かれる。しかし、以下の説明では、特別な場合を除き、簡略化のために、サーボコントローラ15が初期クロックパターン(更にはタイミングマーク)を書くものとする。
【0030】
サーボコントローラ15は、主としてRDC13及びヘッド112を利用して、以下のように初期クロックパターンをブランクディスク111に書き込む。なお本実施形態では、初期クロックパターンの書き込みが完了するまでのディスク111を、便宜的にブランクディスク111と呼ぶ。
【0031】
(1)サーボコントローラ15は、ブランクディスク111の1周の任意の1箇所に所定のタイミングマーク(第1のタイミングマーク)を書き込む。RDC13は、ブランクディスク111に書かれたタイミングマークをインデックスマークとして、このインデックスマーク(タイミングマーク)が検出される時間間隔(以下、タイムスタンプと称する)をカウント(計測)する。このタイムスタンプはSPM113の回転周期に対応し、当該SPM113の回転に同期している。タイムスタンプのカウントには、RDC13内の後述する数値制御発振器(NCO)1331から出力されるクロック信号(以下、回復クロック信号と称する)が用いられる。
【0032】
サーボコントローラ15は、このタイムスタンプをカウントした値(タイムスタンプデータ)が目標とする値に一致するように、NCO1331の発振周波数を調整する。NCO1331は、調整された発振周波数に基づいて回復クロック信号及びライトクロック信号を出力する。
【0033】
(2)サーボコントローラ15は、NCO1331(RDC13)から出力されるライトクロック信号に基づいて、ブランクディスク111の1周に渡って、所定のタイミングマーク(第2のタイミングマーク)を所定数だけ所定間隔で書き込む。
【0034】
(3)サーボコントローラ15は、ブランクディスク111の1周に渡って書かれた所定数のタイミングマークの繰り返し性ランアウトを、RDC13を利用して測定する。繰り返し性ランアウトは、ディスク(ここではブランクディスク111)の回転に同期して現れる。
【0035】
(4)サーボコントローラ15は、測定された繰り返し性ランアウトを、後述するPLLの制御量から差し引くことにより、補正されたPLL操作量を算出する。サーボコントローラ15は、補正されたPLL操作量を制御データとしてNCO1331に与えてPLLを駆動することにより、繰り返し性ランアウトが抑制されたライトクロック信号を当該PLL(NCO1331)によって生成させる。サーボコントローラ15は、生成されたライトクロック信号に基づいて、ブランクディスク111に初期クロックパターンを書き込む。
【0036】
次に、ブランクディスク111に初期クロックパターンを書き込む方法の詳細について説明する。
まず、初期クロックパターン書き込みに関係するRDC13の構成について、図3及び図4を参照して説明する。
【0037】
図3は、RDC13の典型的な構成を示すブロック図である。
RDC13は、タイミングマーク復調器(以下、単に復調器と称する)131と、ライトシーケンサ132と、位相ロックループユニット(以下、PLLユニットと称する)133とを備えている。
【0038】
復調器131は、プリアンプ117からRDC13に送出されたリード信号からタイミングマークを復調する。復調器131は、タイミングマークが復調されたこと、つまりタイミングマークが検出されたことを示すタイミングマーク検出(Timing Mark Found)信号を出力する。
【0039】
ライトシーケンサ132は、サーボコントローラ15から送出される、タイミングマークのようなライトデータを、PLLユニット133から出力されるライトクロック信号に応じてライト信号に変換する。PLLユニット133は、復調器131から出力されるタイミングマーク検出信号に基づいて、上記タイムスタンプを検出する。PLLユニット133はまた、サーボコントローラ15によって与えられる制御データ(NCO制御データ)をPLL操作量としてライトクロック信号を生成する。このNCO制御データは、PLLユニット133によって検出されたタイムスタンプを表すタイムスタンプデータに基づいて、サーボコントローラ15によって与えられる。
【0040】
図4は、PLLユニット133の典型的な構成を示すブロック図である。
PLLユニット133は、NCO1331及びタイムスタンプ発生器1332とを備えている。NCO1331は、サーボコントローラ15によって与えられる、当該NCO1331を制御するためのNCO制御データをPLL操作量として、対応する周波数で発振する。NCO1331は、この発振周波数に基づいて、ライトクロック信号及び回復クロック信号を生成する。本実施形態において、回復クロック信号は、発振周波数のクロック信号(つまり、基本クロック信号)を分周することにより生成され、ライトクロック信号は回復クロック信号を分周することにより生成される。しかし、回復クロック信号の周波数が、基本クロック信号のそれに等しくても構わない。また、ライトクロック信号の周波数が、回復クロック信号のそれに等しくても構わない。
【0041】
タイムスタンプ発生器1332は、復調器131から出力されるタイミングマーク検出信号に基づいて、上記タイムスタンプを検出する。タイムスタンプ発生器1332は、検出されたタイムスタンプ(つまりタイミングマークが検出された時間間隔)を表すタイムスタンプデータを生成する。このタイムスタンプデータは、サーボコントローラ15に送出される。
【0042】
次に、ブランクディスク111に初期クロックパターンを書き込む方法の詳細な手順について、図5乃至図7を参照して説明する。図5及び図6は、初期クロックパターン書き込みの手順を示すフローチャート、図7は初期クロックパターン書き込みを説明するための図である。図7において、矢印の方向はブランクディスク111の半径方向であり、矢印に直交する方向がブランクディスク111の円周方向である。矢印の左方向及び右方向は、それぞれ、後述するインナー方向及びアウター方向である。
【0043】
(処理1)
サーボコントローラ15は、ブランクディスク111が搭載されたHDDのSPM113を、SVC12を介して起動する。このときヘッド112(より詳細には、ヘッド112が取り付けられたHGAのリフトタブ)は、ランプ116に退避されているものとする。この場合、サーボコントローラ15は、SVC12を介してVCM115を駆動することにより、ヘッド112をランプ116からブランクディスク111の内周部に移動させる。ここではサーボコントローラ15は、ヘッド112の移動速度を制御しながら、ヘッド112をブランクディスク111の内周部に移動(ロード)する。この制御を速度制御と呼ぶ。ブランクディスク111には、サーボデータが書かれていない。このためサーボコントローラ15は、ヘッド112をブランクディスク111の内周部に移動させる際の速度制御に、サーボデータに代えて、SVC12内のBEMF検出器によって検出されるVCM115のBEMFを表すVCM BEMFデータを用いる。その理由は、VCM BEMFデータは、周知のように、ヘッド112の移動速度に対応するためである。
【0044】
サーボコントローラ15は、上述の速度制御により移動されるヘッド112が、ブランクディスク111の内周に到達するのを待つ。ヘッド112が、ブランクディスク111の内周に到達したかは、例えば、ヘッド112の移動速度と時間とに基づいて、当該ヘッド112の移動距離を算出することにより判定可能である。
【0045】
サーボコントローラ15は、ヘッド112がブランクディスク111の内周に到達した時点のVCM電流の値をメモリ(図示せず)に格納する。このVCM電流を、ヘッド112をブランクディスク111の内周に位置付けるためのVCM電流Ivcminnerと表記する。
【0046】
次にサーボコントローラ15は、予め定められた第1の電流増分ΔI1を、上記Ivcminnerに加算することにより、第1のVCM電流値(Ivcminner+ΔI1)を算出する。第1の電流増分ΔI1は、ヘッド112がブランクディスク111の中心に向かう方向(以下、インナー方向と称する)にVCM115を作用させる極性を持つ。なお、ヘッド112がブランクディスク111の外周に向かう方向を、アウター方向と称する。算出された第1のVCM電流値は、ブランクディスク111の内周に位置付けられているヘッド112が取り付けられたアクチュエータ114(より詳細には、アクチュエータ114の支持フレーム1143のフレーム端1143b)を、インナーストッパ118bに押し当てるのに必要なVCM電流を示す。
【0047】
そこでサーボコントローラ15は、第1のVCM電流値の示す第1のVCM電流を、SVC12を介してVCM115に供給する。するとVCM115は、アクチュエータ114をインナーストッパ118bに押し当てる。つまりサーボコントローラ15は、SVC12を介してVCM115を制御することによって、アクチュエータ114をインナーストッパ118bに押し当てる(ステップ501)。このステップ501によって、アクチュエータ114がインナーストッパ118bに押し当てられている状態を、第1の状態と称する。インナーストッパ118bは、弾性部材により構成されている。このため、アクチュエータ114がインナーストッパ118bに押し当てられると、インナーストッパ118bはたわむ。つまりインナーストッパ118bには、図7(a)に示すたわみ(以下、ストッパたわみと称する)72が発生する。このストッパたわみ72に相当する距離だけ、ヘッド112はインナー方向に移動する。
【0048】
(処理2)
サーボコントローラ15は、上記第1の状態で、ヘッド112のライト素子112Wに対向するブランクディスク111の円周上の任意の箇所に、図7(a)に示すように、1個の第1のタイミングマーク71が当該ライト素子112Wによって書かれるように制御する(ステップ502)。この書き込みは、サーボコントローラ15がRDC13(より詳細には、RDC13のライトシーケンサ132)に対して、第1のタイミングマーク71に対応するライトデータを与えることにより制御される。
【0049】
RDC13のライトシーケンサ132は、サーボコントローラ15によって与えられるライトデータを、PLLユニット133のNCO1331から出力される予め定められた周波数のライトクロック信号に応じてライト信号に変換する。予め定められた周波数は、ブランクディスク111がSPM113によって所定の回転速度で回転する場合に、ブランクディスク111の1周を所定の数のクロックで時間的に分割できるように設定されている。しかし、ブランクディスク111の実際の回転速度と、ライトクロック信号とは必ずしも同期していない。そこで、ブランクディスク111の実際の回転速度にライトクロック信号が同期するように、以下に述べるように、ライトクロック信号の周波数を決定するためのNCO1331の発振周波数が調整される。
【0050】
ライトシーケンサ132によって変換されたライト信号は、プリアンプ117に送出される。プリアンプ117は、このライト信号をライト電流に変換し、このライト電流をヘッド112のライト素子112Wに供給する。ライト素子112Wは、プリアンプ117によって供給されたライト電流に対応するライト磁界を発生する。これにより、ライト素子112Wに対向するブランクディスク111上の位置に、ライト磁界に対応した磁化パターンが、第1のタイミングマーク71として記録される。
【0051】
(処理3)
本実施形態において、ライト素子112W及びリード素子112Rの位置は、例えば図7(a)に示すように、ブランクディスク111の半径方向にずれている。このため、ライト素子112Wによってブランクディスク111に書かれた第1のタイミングマーク71を、リード素子112Rによって読み出すためには、ヘッド112を、上記第1の状態における位置から上記ずれに相当する距離だけ移動する必要がある。本実施形態において、リード素子112Rの位置は、ライト素子112Wに対して、アウター方向にずれている。この場合、ヘッド112をインナー方向に移動させるために、ストッパたわみ72を第1の状態よりも大きくする必要がある。
【0052】
そこでサーボコントローラ15は、リード素子112Rが第1のタイミングマーク71を読むことができる状態(以下、第2の状態と称する)となるまで、VCM電流を第2の電流増分ΔI2ずつ段階的に増加させながら、アクチュエータ114をインナーストッパ118bに押し付ける(ステップ503)。つまりサーボコントローラ15は、第1の状態(つまり図7(a)に示す状態)にあるヘッド112をインナー方向に微小距離だけ段階的に移動する動作、いわゆるマイクロジョグ動作を、第2の状態となるまで行う。このマイクロジョグ動作の詳細は次の通りである。なお、第2の電流増分ΔI2が、第1の電流増分ΔI1に等しくても、或いは第1の電流増分ΔI1と異なっていても構わない。
【0053】
まずサーボコントローラ15は、第1のVCM電流に第2の電流増分ΔI2が加えられた第2のVCM電流を、SVC12を介してVCM115に供給する。するとVCM115は、アクチュエータ114をインナーストッパ118bに更に押し当てる。つまりサーボコントローラ15は、第2のVCM電流によりVCM115を駆動することにより、アクチュエータ114をインナーストッパ118bに強く押し付ける。これにより、ストッパたわみ72は、図7(a)に示す状態よりも増大する。この結果、ヘッド112がインナー方向に微小距離だけ移動される。
【0054】
しかし、この状態では、ヘッド112のリード素子112Rは、ステップ502で第1のタイミングマーク71が書かれた箇所を含むブランクディスク111の円周上に到達していないものとする。つまり、第1のタイミングマーク71は、リード素子112Rによって読み出せないものとする。この場合、その時点のVCM電流(ここでは、第2のVCM電流)に更に第2の電流増分ΔI2が加算される。このようにステップ503では、VCM電流が、第2のVCM電流から開始され、図7(b)に示すように、リード素子112Rが第1のタイミングマーク71を読むことができる状態(第2の状態)になるまで、第2の電流増分ΔI2ずつ段階的に増加される。
【0055】
図7(b)に示す状態で、第1のタイミングマーク71がリード素子112Rによって読み出されると、RDC13の復調器131は、第1のタイミングマーク71が検出されたことを示すタイミングマーク検出信号を出力する。サーボコントローラ15は、このタイミングマーク検出信号を受信すると、ヘッド112が第2の状態となったことを確認する。するとサーボコントローラ15は、ステップ503(マイクロジョグ動作)を終了する。このようにサーボコントローラ15は、RDC13からタイミングマーク検出が報告されるまで、ヘッド112を段階的にインナー方向に移動する。
【0056】
(処理4)
RDC13の復調器131から出力されるタイミングマーク検出信号は、サーボコントローラ15だけでなく、RDC13のPLLユニット133にも入力される。タイミングマーク検出信号は、復調器131によってタイミングマーク(ここでは、第1のタイミングマーク71)が復調(つまり検出)される都度第1の論理状態から第2の論理状態に遷移し、所定時間後に第1の論理状態に復帰する2値信号である。つまりタイミングマーク検出信号は、タイミングマークの検出に対応するパルスの列から構成される。
【0057】
PLLユニット133のタイムスタンプ発生器1332は、復調器131によってタイミングマークが検出される時間間隔(タイミングマーク間隔)TTMFIを、タイミングマーク検出信号に基づいてタイムスタンプTTMFIとして計測する(ステップ504)。ここでは、タイミングマークは、ブランクディスク111の1周の任意の箇所に書かれた第1のタイミングマーク71である。このため、ステップ504で計測されるタイムスタンプTTMFIは、第1のタイミングマーク71がリード素子112Rによって読み出された(復調器131によって検出された)第1の時点から、ブランクディスク111の次の回転で第1のタイミングマーク71が再び読み出される(再び検出される)第2の時点までの時間間隔を表す。このタイムスタンプTTMFIは、以下に述べるように、NCO1331から出力される回復クロック信号に基づいてタイミングマーク間隔におけるクロック数をカウントすることにより計測される。
【0058】
タイムスタンプ発生器1332は、モジュロカウンタ及びラッチから構成される。モジュロカウンタは、NCO1331からの回復クロック信号に基づいて動作し、当該回復クロック信号のクロックの数をカウントする。ラッチは、タイミングマーク検出信号に応じて動作し、当該タイミングマーク検出信号が第2の論理状態に遷移した時点(つまり、タイミングマークが検出された時点)のモジュロカウンタの値を保持する。モジュロカウンタは予め設定されたカウント値(設定値)でゼロに戻るカウンタであり、カウント値が設定値を法とする剰余系を構成する。このような構成のタイムスタンプ発生器1332によって、タイムスタンプTTMFIが計測される。タイムスタンプ発生器1332(RDC13)は、計測されたタイムスタンプTTMFIを表すタイムスタンプデータを、サーボコントローラ15に送出する。
【0059】
(処理5)
サーボコントローラ15は、RDC13からタイムスタンプデータを受信すると、当該タイムスタンプデータの示す計測されたタイムスタンプTTMFIを目標とする時間間隔(以下、目標タイムスタンプと称する)TTGTと比較する。そしてサーボコントローラ15は、計測されたタイムスタンプ(第1のタイムスタンプ)TTMFIが目標タイムスタンプ(第2のタイムスタンプ)TTGTに一致するかを判定する(ステップ505)。ここでは、タイムスタンプTTMFIの測定精度の範囲内、または所定の誤差の範囲内で、TTMFIがTTGTに一致するかが判定されるものとする。
【0060】
(処理6)
もし、ステップ505の判定が「No」であるならば、サーボコントローラ15は、RDC13のPLLユニット133が有するNCO1331の発振周波数を、タイムスタンプTTMFIの目標タイムスタンプTTGTからのずれが解消されるように調整する(ステップ506)。このようなNCO1331の発振周波数の調整は、サーボコントローラ15からNCO1331にNCO制御データを与えることにより行われる。
【0061】
(処理7)
サーボコントローラ15によるNCO1331の発振周波数の調整によって、タイムスタンプTTMFIが、目標タイムスタンプTTGTに一致したものとする(ステップ505のYes)。するとサーボコントローラ15は、図7(c)に示すように、初期パターン73がライト素子112Wによりブランクディスク111の1周に渡って書かれるように制御する(ステップ507)。初期パターン73は、第2のタイミングマークを所定間隔で所定数含む。所定数の第2のタイミングマークが連続していても或いは連続していなくても構わない。
【0062】
初期パターン73の書き込みのために、調整済みのNCO1331によって出力されるライトクロック信号(つまり、調整済みライトクロック信号と称する)がRDC13のライトシーケンサ132に与えられる。サーボコントローラ15は、初期パターン73を構成する第2のタイミングマークの列をライトデータとして、ライトシーケンサ132に与える。ライトシーケンサ132は、このライトデータを、調整済みライトクロック信号に応じてライト信号に変換する。これにより、調整済みライトクロック信号に同期した初期パターン73が、ブランクディスク111の1周に渡って書かれる。つまり、調整済みライトクロック信号に同期した所定数の第2のタイミングマークが所定間隔で、ブランクディスク111の1周に渡って書かれる。
【0063】
前述したように、ライト素子112W及びリード素子112Rの位置は、ブランクディスク111の半径方向にずれている。このため、ステップ502で書かれた第1のタイミングマーク71が存在するブランクディスク111上の半径位置と、ステップ505で書かれた第2のタイミングマーク群を含む初期パターン73が存在するブランクディスク111上の半径位置とは異なる。つまり、2種のタイミングマークは、ブランクディスク111上の半径位置が異なるため、区別可能である。なお、ライト素子112W及びリード素子112Rの位置が、ブランクディスク111の半径方向にずれていないならば、例えばステップ507が実行される前に、ヘッド112をブランクディスク111の半径方向に移動すればよい。
【0064】
(処理8)
サーボコントローラ15は、図7(d)に示すように、リード素子112Rが初期パターン73を読み出せる位置まで、マイクロジョグ動作により、ヘッド112を更にインナー方向に移動させる(ステップ601)。このステップ601は、上記ステップ503と同様に実行される。ここでは、ステップ503と比較して、アクチュエータ114がインナーストッパ118bに、より強く押し付けられる。つまりストッパたわみ72は、図7(b)及び(c)に示す状態よりも増大する。
【0065】
(処理9)
初期パターン73を読み出せる位置までヘッド112が移動されると、当該初期パターン73に含まれている所定数の第2のタイミングマークが、ブランクディスク111が1回転する期間に、ヘッド112のリード素子112Rによって順次読み出される。RDC13の復調器131は、リード素子112Rによって順次読み出される所定数の第2のタイミングマークをリード信号から復調し、第2のタイミングマークの検出に対応するタイミングマーク検出信号を出力する。
【0066】
RDC13のPLLユニット133が有するタイムスタンプ発生器1332は、前述したように、復調器131によってタイミングマークが検出される時間間隔を、当該復調器131からのタイミングマーク検出信号に基づいてタイムスタンプとして計測する。但し、復調器131によって検出されるタイミングマークは、ブランクディスク111の1周に渡って書かれた初期パターン73に含まれている所定数の第2のタイミングマークである。したがって、ここでは、隣接する第2のタイミングマークが検出される時間間隔が、タイムスタンプ(第3のタイムスタンプ)として計測される。
【0067】
タイムスタンプ発生器1332は、タイミングマーク検出信号によってタイミングマーク(第2のタイミングマーク)の検出が示される都度、対応するタイムスタンプを計測する。タイムスタンプ発生器1332は、計測されたタイムスタンプを示すタイムスタンプデータを発生し、当該タイムスタンプデータをサーボコントローラ15に送出する。
【0068】
サーボコントローラ15は、タイムスタンプ発生器1332によって送出されたタイムスタンプデータを入力としてPLLを駆動することにより、当該PLLの繰り返し追従誤差を検出する(ステップ602)。このPLLの繰り返し追従誤差の検出の詳細は次の通りである。
【0069】
まずサーボコントローラ15は、タイムスタンプデータに基づいて、タイムスタンプ発生器1332によって検出されたタイムスタンプ(第3のタイムスタンプ)の目標タイムスタンプ(第4のタイムスタンプ)に対する位相誤差を算出する。次にサーボコントローラ15は、算出された位相誤差を入力として、PLLを構成するためのフィルタ演算を当該算出された位相誤差に適用する。このフィルタ演算により、サーボコントローラ15はPLL操作量を算出する。
【0070】
サーボコントローラ15は、算出されたPLL操作量をNCO制御データとして、RDC13のPLLユニット133が有するNCO1331に送出する。NCO1331は、サーボコントローラ15によって与えられるNCO制御データをPLL操作量として動作する。これにより、制御量として位相誤差が用いられ、PLL操作量としてNCO制御データが用いられるPLL系が構成される。
【0071】
次にサーボコントローラ15は、上述にように構成されたPLL系の繰り返し性追従誤差を求める。繰り返し性追従誤差は、前述のPLLの制御量を、ブランクディスク111の回転角に対応したタイミングマーク検出ごとに、当該ブランクディスク111の複数周回に渡って平均することによって算出される。制御誤差は、回転角位置に依存する再現性のある繰り返し成分と、回転角位置に依存しないランダムな成分とに分離できる。ランダムな成分は、ディスク111や回路(プリント板ユニットに搭載された回路)などが発生するノイズによって引き起こされる。繰り返し成分は、タイミングマークを書き込んだ時点でのディスク111とライト素子112Wとの位置関係のずれ、及びディスク111の回転に対するライトクロック信号のずれによって引き起こされたディスク111上での記録位置のずれ、所謂ミスレジストレーションを原因として発生する。この繰り返し成分(つまり繰り返し性ランアウト)は、以下に述べるステップ603及び604の実行により補正できる。
【0072】
(処理10)
サーボコントローラ15は、PLLの繰り返し性追従誤差を検出すると、当該繰り返し性追従誤差にPLLの感度関数の逆関数(1/感度関数)を乗じることにより、繰り返し性ランアウトを推定する(ステップ603)。PLLの感度関数の逆関数は、PLLの感度関数を実測して、周波数ごとにその逆数を取ることで得られる。
【0073】
(処理11)
次にサーボコントローラ15は、取得された繰り返し性ランアウトを補正値として用いて、補正されたPLL操作量を取得し、この補正されたPLL操作量をNCO制御データとしてNCO1331に与えることで、PLL(つまり、補正または再構成されたPLL)を駆動する(ステップ604)。補正されたPLL操作量は、次のように取得される。
【0074】
まず、繰り返し性ランアウトは、ブランクディスク111の回転角に対応した当該ブランクディスク111上に書き込まれたタイミングマークごとの、当該ブランクディスク111の周方向に関する理想位置からのずれに相当する。そこでサーボコントローラ15は、PLLを駆動する際にPLL補償器として機能する。サーボコントローラ15は、対応した回転角の繰り返し性ランアウトを補正値として用いて、当該繰り返し性ランアウトを、検出された位相誤差から差し引く。サーボコントローラ15は、検出された位相誤差から対応した回転角の繰り返し性ランアウトが差し引かれたデータを、補正されたPLL操作量として取得する。サーボコントローラ15は、この取得されたPLL操作量を、上述のようにNCO制御データとしてNCO1331に与えることで、PLLを駆動する。これにより、PLLに繰り返し性ランアウトが入力されるのを阻止でき、繰り返し性ランアウトの影響を受けないライトクロック信号、つまりディスク111の回転に同期した規則正しいライトクロック信号を生成することができる。
【0075】
(処理12)
次に、サーボコントローラ15は、PLL(NCO1331)によって生成されるライトクロック信号に基づいてライトシーケンサ132を駆動することにより、図7(e)に示すように、目標とする初期クロックパターン74が、ライト素子112Wによりブランクディスク111の例えば1周に渡って書かれるように制御する(ステップ605)。このとき、ヘッド112は、初期パターン73に含まれている第2のタイミングマークが当該ヘッド112のリード素子112Rによって読み出せる位置にある。
【0076】
ステップ605でブランクディスク111に書かれた初期クロックパターン74は、ステップ604で補正されたPLL(NCO1331)によって生成されたライトクロック信号に同期している。このため、初期クロックパターン74からは、当初ブランクディスク111に書かれた初期パターン73とは異なり、繰り返し性ランアウトに起因する不均等さは排除されている。
【0077】
本実施形態によれば、ブランクディスク111の1周に1個書かれた第1のタイミングマーク71を読み出すことによって検出される時間間隔(タイムスタンプ)TTMFIが、目標タイムスタンプTTGTに一致するように、ライトクロック信号の周波数が調整される。これにより、ブランクディスク111の回転に高精度に同期したライトクロック信号を生成することができる。しかも、このようなライトクロック信号を、SPM113の逆起電力を利用することなく生成できる。よって、初期クロックパターン74をブランクディスク111に書き込むのに、SPM113の逆起電力に対応する逆起電力パルスを発生してPLLに入力する回路が不要となり、部品コストを削減できる。
【0078】
また、本実施形態によれば、ブランクディスク111の1周に所定間隔で書き込まれたタイミングマークが検出される時間間隔(第3のタイムスタンプ)に基づいて繰り返し性ランアウトが取得される。そして、この取得された繰り返し性ランアウトの影響を排除したライトクロック信号でブランクディスク111に初期クロックパターンが書き込まれる。よって本実施形態によれば、初期クロックパターンの精度、特に繰り返し性ランアウトに関する精度が格段に向上する。
【0079】
また本実施形態では、オープンループでパターン書き込みを試行する要素、つまりパターン書き込みの結果が偶然に左右されるような要素を含まない。よって本実施形態によれば、所要時間以内で必要な初期クロックパターンをブランクディスク111に書き込むことができる。
【0080】
なお、ライト素子112Wとリード素子112Rとの間の位置関係が上記実施形態と逆の場合にも、上記実施形態と同様に、初期クロックパターン74をブランクディスク111に高精度に書くことができる。この場合、例えば、ヘッド112が図7(d)に示す位置にある状態で、第1のタイミングマーク71をブランクディスク111に書き、ヘッド112が図7(a)に示す位置にある状態で、初期クロックパターン74をブランクディスク111に書くとよい。つまり、ストッパたわみ72を利用したヘッド112の移動の方向を、上記実施形態と逆にするとよい。
【0081】
上記実施形態では、ステップ504乃至506のループで周波数が調整されたライトクロック信号に基づいて、ブランクディスク111の1周に渡って、第2のタイミングマークを所定間隔で所定数含む初期パターン73が書かれる(ステップ507)。しかし、ステップ507とステップ601乃至604を省略し、ステップ504乃至506のループで周波数が調整されたライトクロック信号に基づいて、初期クロックパターン74が書かれる構成としても構わない。この場合、繰り返し性ランアウトの影響は排除されないものの、ブランクディスク111の回転に高精度に同期したライトクロック信号に基づいて、初期クロックパターン74を書くことができる。
【0082】
また、上記実施形態では、ブランクディスク111の回転とライトクロック信号とを同期化するのに、ライトクロック信号の周波数が調整される。しかし、ライトクロック信号の周波数を調整する代わりに、ブランクディスク111の回転速度、つまりSPM113の回転速度を調整しても構わない。
【0083】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、スピンドルモータの回転に高精度に同期したライトクロック信号に基づいてブランクディスクに初期クロックパターンを書き込むことができる初期クロックパターン書き込み方法及び磁気ディスク装置を提供することができる。
【0084】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0085】
11…ディスクエンクロージャ、12…サーボコンボドライバ(SVC)、13…リードチャネル(RDC)、14…ホストコントローラ、15…サーボコントローラ、71…第1のタイミングマーク、72…ストッパたわみ、73…初期パターン、74…初期クロックパターン、111…ディスク(ブランクディスク)、112…ヘッド、112W…ライト素子、112R…リード素子、113…スピンドルモータ(SPM)、114…アクチュエータ、115…ボイスコイルモータ(VCM)、117…プリアンプ、118a…アウターストッパ、118b…インナーストッパ、131…復調器、132…ライトシーケンサ、133…PLLユニット、1331…数値制御発振器(NCO)、1332…タイムスタンプ発生器、1143…支持フレーム、1143a,1143b…フレーム端。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ディスク装置において、セルフサーボライトのための初期クロックパターンをスピンドルモータによって回転させられているディスクに書き込む初期クロックパターン書き込み方法であって、
第1のタイミングマークを、発振器による発振周波数に応じた第1のクロック信号に基づいて、前記ディスクの円周上の任意の箇所にヘッドを用いて書き込み、
前記第1のタイミングマークが前記ヘッドにより読み出される時間間隔を第1のタイムスタンプとして検出しながら、前記第1のタイムスタンプが目標とする第2のタイムスタンプに一致するように、前記発振器の発振周波数または前記スピンドルモータの回転速度を調整し、
前記調整の後、前記初期クロックパターンを、前記調整された前記発振器の発振周波数または前記スピンドルモータの回転速度に応じた第2のクロック信号に基づいて前記ディスクに書き込む
初期クロックパターン書き込み方法。
【請求項2】
前記調整の後、複数の第2のタイミングマークを所定間隔で含む初期パターンを、前記第2のクロック信号に基づいて前記ディスクの1周に渡って書き込み、
前記複数の第2のタイミングマークが前記ヘッドにより順次読み出される時間間隔を第3のタイムスタンプとして検出し、
前記第3のタイムスタンプの目標とする第4のタイムスタンプに対する位相誤差に基づいて前記複数の第2のタイミングマークの繰り返し性ランアウトを取得し、
前記取得された繰り返し性ランアウトを前記位相誤差から差し引くことにより、前記発振器を制御するための補正された制御データを取得して、当該補正された制御データを前記発振器に与える
請求項1記載の初期クロックパターン書き込み方法。
【請求項3】
前記位相誤差に基づいて繰り返し性ランアウトを取得することは、
前記位相誤差を入力とする、前記発振器を含むPLLを駆動することにより、前記PLLの繰り返し性追従誤差を検出し、
前記繰り返し性追従誤差に基づいて前記繰り返し性ランアウトを取得する
請求項2記載の初期クロックパターン書き込み方法。
【請求項4】
前記繰り返し性ランアウトは、前記繰り返し性追従誤差に前記PLLの感度関数の逆関数を乗じることにより取得される請求項3記載の初期クロックパターン書き込み方法。
【請求項5】
前記位相誤差は、前記PLLの制御量として用いられ、
前記補正された制御データには、前記繰り返し性ランアウトを前記位相誤差から差し引くことにより算出される、前記PLLの補正されたPLL操作量が用いられる
請求項4記載の初期クロックパターン書き込み方法。
【請求項6】
ボイスコイルモータを駆動することにより前記ヘッドを支持するアクチュエータをインナーストッパに押し当て、
前記第1のタイミングマークは、前記アクチュエータが前記インナーストッパに押し当てられている状態で書かれる
請求項1記載の初期クロックパターン書き込み方法。
【請求項7】
前記アクチュエータが前記インナーストッパに押し当てられている状態で、前記ボイスコイルモータに供給される電流または前記ボイスコイルモータに印加される電圧を変えて前記インナーストッパのたわみを変化させることにより、前記ヘッドを移動させ、
前記初期クロックパターンは、前記ヘッドの移動後に書かれる
請求項6記載の初期クロックパターン書き込み方法。
【請求項8】
スピンドルモータによって回転させられるディスクと、
前記ディスクにヘッドによってデータを書き込むためのクロック信号であって、発振器による発振周波数に応じた第1のクロック信号を生成する信号生成手段と、
前記ディスクから前記ヘッドによって第1のタイミングマークが読み出される時間間隔を第1のタイムスタンプとして検出し、当該検出した第1のタイムスタンプに対応するタイムスタンプデータを発生するタイムスタンプ発生器と、
前記タイムスタンプデータに基づいて、セルフサーボライトのための初期クロックパターンの前記ディスクへの書き込みを制御するコントローラとを具備し、
前記コントローラは、
前記第1のタイミングマークを、前記第1のクロック信号に基づいて、前記ディスクの円周上の任意の箇所に前記ヘッドを用いて書き込み、
前記タイムスタンプ発生器によって発生される前記タイムスタンプデータに基づいて、前記第1のタイムスタンプが目標とする第2のタイムスタンプに一致するように、前記発振器の発振周波数または前記スピンドルモータの回転速度を調整し、
前記調整の後、前記初期クロックパターンを、前記調整された前記発振器の発振周波数または前記スピンドルモータの回転速度に応じた第2のクロック信号に基づいて前記ディスクに書き込む
磁気ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−160228(P2012−160228A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18961(P2011−18961)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】