説明

初期膨張性セメント組成物

【課題】材齢1日における膨張率が大きい初期膨張性セメント組成物を提供すること。より詳しくは、材齢1日で脱型することができ、材齢1日で脱型する場合であっても、材齢1日における膨張率が大きく乾燥収縮によるひび割れが発生する虞が低い初期膨張性セメント組成物を提供すること。
【手段】セメントと、膨張性物質、非晶質アルミノ珪酸鉱物粉末及び石膏類を特定の割合で含有する。更に、非晶質アルミノ珪酸鉱物粉末が、カオリン鉱物を加熱し非晶質化した非晶質アルミノ珪酸鉱物であると好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、初期膨張性セメント組成物に関する。詳しくは、材齢1日における膨張率が大きい初期膨張性セメント組成物に関する。より詳しくは、材齢1日における膨張率が従来のコンクリート用膨張材を用いたセメント組成物よりも大きい初期膨張性セメント組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
セメントを含有するモルタルやコンクリート等のセメント組成物では乾燥収縮によるひび割れ防止や形状寸法の変化を防ぐため膨張性の混和材が使用されることが多い(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)。このような膨張性混和材として、コンクリート用膨張材が日本工業規格で規格化され(JIS A 6202)、この規格に準拠した製品も市販されている。このJIS A 6202において、材齢7日の膨張性(長さ変化率)が0.025%(250×10−6)以上と定められている。コンクリート用膨張材を混和したモルタルやコンクリートであっても、型枠取り外し(脱型)後は水分が失われ乾燥により収縮する。圧縮強度が5N/mm以上あれば通常の鉄筋コンクリートでは脱型することができる。温度及び用いるセメント並びにセメント組成物の配合によっては、材齢1日でこの5N/mm以上の圧縮強度となることもある。しかし、市販のコンクリート用膨張材を混和したセメント組成物では、材齢1日では膨張性が不足するために、その後の条件によっては乾燥収縮によるひび割れが発生することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−178053号公報
【特許文献2】特開2007−261845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は前記問題の解決、即ち、本発明は、材齢1日における膨張率が大きい初期膨張性セメント組成物を提供することを目的とする。より詳しくは、材齢1日で脱型することができ、材齢1日で脱型する場合であっても、材齢1日における膨張率が大きく乾燥収縮によるひび割れが発生する虞が低い初期膨張性セメント組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記課題解決のため鋭意検討した結果、セメントと、膨張性物質、非晶質アルミノ珪酸鉱物粉末及び石膏類を特定の割合で含有することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明は、以下の(1)又は(2)で表す初期膨張性セメント組成物である。
(1)セメントと、セメント100質量部に対し、膨張性物質4〜15質量部、非晶質アルミノ珪酸鉱物粉末6〜20質量部、石膏類1.6〜20質量部を含有することを特徴とする初期膨張性セメント組成物。
(2)上記非晶質アルミノ珪酸鉱物粉末が、カオリン鉱物を加熱し非晶質化した非晶質アルミノ珪酸鉱物である上記(1)の初期膨張性セメント組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、材齢1日における膨張率が大きい初期膨張性セメント組成物が得られる。また、本発明によれば、材齢1日の圧縮強度が5N/mm以上となることから材齢1日で脱型することができ、材齢1日で脱型する場合であっても、材齢1日における膨張率が大きく乾燥収縮によるひび割れが発生する虞が低い初期膨張性セメント組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の初期膨張性セメント組成物に用いるセメントは、水硬性セメントであればよく、例えば普通、早強、超早強、低熱及び中庸熱の各種ポルトランドセメント、エコセメント、並びにこれらのポルトランドセメント又はエコセメントに、フライアッシュ、高炉スラグ、シリカフューム又は石灰石微粉末等を混合した各種混合セメント、太平洋セメント社製「ジェットセメント」(商品名)や住友大阪セメント社製「ジェットセメント」(商品名)等の超速硬セメント、アルミナセメント等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を使用することができる。ワーカビリティを損ない難く可使時間が長く確保し易いことから、各種ポルトランドセメント、エコセメント及び各種混合セメントから選ばれる一種又は二種以上を使用することが好ましい。また、材齢1日の強度を高くし易いことから、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント及びエコセメントから選ばれる一種又は二種以上を使用することが更に好ましい。
【0008】
本発明の初期膨張性セメント組成物においてセメントの含有率は、骨材の有無及び粒度分布等によって大きく異なる。本発明の初期膨張性セメント組成物が骨材として細骨材のみ含有する初期膨張性モルタルの場合における、好ましいセメントの含有率は、20〜80質量%(水を含まない初期膨張性セメント組成物における含有率)とする。20質量%未満では材齢1日の圧縮強度を確保し難い。80質量%を超えると、脱型後の乾燥収縮が大きくなり易い。材齢1日の圧縮強度が高く且つ脱型後の乾燥収縮が小さいことから、更に好ましくは25〜60質量%とする。また、本発明の初期膨張性セメント組成物が、骨材として細骨材及び粗骨材を含有する初期膨張性コンクリートの場合における、好ましいセメントの含有率は、8〜50質量%(水を含まない初期膨張性セメント組成物における含有率)とする。8質量%未満では材齢1日の圧縮強度を確保し難い。50質量%を超えると、脱型後の乾燥収縮が大きくなり易い。材齢1日の圧縮強度が高く且つ脱型後の乾燥収縮が小さいことから、更に好ましくは10〜30質量%とする。
【0009】
本発明の初期膨張性セメント組成物に用いる膨張性物質は、水和生成物の結晶により膨張するものを云い、例えば、エトリンガイトの結晶生成により膨張するエトリンガイト系コンクリート用膨張材,カルシウムサルホアルミネート粉末、並びに水酸化カルシウムの結晶生成により膨張する石灰系コンクリート用膨張材,硬焼生石灰等が挙げられる。本発明に用いる膨張性物質の粉末度は、JIS R 5201−1997に規定される比表面積試験による測定したブレーン比表面積の値が、2000〜5000cm/gの範囲のものが好ましい。2000cm/g未満では、脱型後に強度増進する割合が低くなる虞があり、5000cm/g以上では膨張性を得るためにより多い量の膨張性物質が必要となる。
【0010】
本発明の初期膨張性セメント組成物において膨張性物質の含有量は、セメント100質量部に対し4〜15質量部とし、好ましくは5〜10質量部とする。4質量部未満では材齢1日における膨張率が不足する。15質量部を超えると過膨張によるひび割れが硬化体に発生する虞が高まる。
【0011】
本発明の初期膨張性セメント組成物に用いる非晶質アルミノ珪酸鉱物粉末は、SiO及びAlを主要化学成分として含有する鉱物のうち非晶質のものである。ここでいう非晶質とは、粉末X線回折装置による測定で、ピークが見られなくなることをいい、本発明に用いる非晶質アルミノ珪酸鉱物粉末は非晶質の割合が70質量%以上であればよく、好ましくは90質量%以上、より好ましくは100%即ち粉末X線回折装置による測定でピークが全く見られないものが最も好ましい。非晶質の割合が低いアルミノ珪酸鉱物粉末、即ち結晶質の割合が高いアルミノ珪酸鉱物粉末は、非晶質の割合が高いアルミノ珪酸鉱物粉末に比べて、同じ混和量における強度発現性が悪く、同じ強度を得るためにはより多くのアルミノ珪酸鉱物粉末を必要とする。本発明に用いる非晶質アルミノ珪酸鉱物粉末には、SiO及びAl以外に、TiO、Fe、CaO、MgO、KO、NaO等の微量成分が含まれていても良い。微量成分の合計が10質量%以下とすることが、硬化体の圧縮強度を高めることから好ましく、SiO及びAl以外の各微量成分が2.5%以下とすることがより好ましい。本発明に用いる非晶質アルミノ珪酸鉱物粉末は、SiO及びAlを主要化学成分として含有する結晶質のアルミノ珪酸鉱物を加熱し非晶質化した非晶質アルミノ珪酸鉱物を粉末にすることによって得られる。加熱による非晶質化の前に粉末にしても良い。ここで用いる結晶質のアルミノ珪酸鉱物は、鉱物中に結晶水や水酸基が含まれていても良い。本発明に用いる非晶質アルミノ珪酸鉱物粉末としては、カオリナイト、ハロサイト、ディッカイト等のカオリン鉱物を加熱し非晶質化した非晶質アルミノ珪酸鉱物の粉末が、化学成分が比較的安定したものを入手し易く、混和したグラウトの物性が比較的安定することから好ましい。アルミノ珪酸鉱物の非晶質化のための加熱としては、外熱キルン、内熱キルン、電気炉等による焼成、及び溶融炉を用いた溶融等が挙げられる。
【0012】
本発明の初期膨張性セメント組成物に用いる非晶質アルミノ珪酸鉱物粉末の粉末度は、JIS R 5201−1997に規定される比表面積試験による測定したブレーン比表面積の値が、15000〜45000cm/gの範囲のものが好ましい。15000cm/g未満では、材齢1日の膨張率を高めるためにより多くの非晶質アルミノ珪酸鉱物粉末を混和する必要があり、45000cm/g以上では未硬化のときのコンシステンシーが低下する。より好ましい非晶質アルミノ珪酸鉱物粉末の粉末度は、ブレーン比表面積で20000〜40000cm/gの範囲とする。
【0013】
本発明の初期膨張性セメント組成物において非晶質アルミノ珪酸鉱物粉末の含有量は、セメント100質量部に対し6〜20質量部とする。6質量部未満では材齢1日における膨張量が不足する。非晶質アルミノ珪酸鉱物粉末の含有量が20質量部を超えると、未硬化のときのコンシステンシーが得られ難くなり、コンシステンシーを確保するために水量を増加させると強度が不足する。非晶質アルミノ珪酸鉱物粉末の含有量を、セメント100質量部に対し7〜15質量部とすることが、膨張量及びコンシステンシーを得易いことからより好ましく、更に好ましくは8〜12質量部とする。
【0014】
本発明の初期膨張性セメント組成物に用いる石膏類は、無水石膏、二水石膏又は半水石膏を主成分とする粉末であれば特に限定されないが、強度増進作用の観点からII型無水石膏を主成分とするものが好ましい。石膏類は、セメント中のアルミネート相及び上記非晶質アルミノ珪酸鉱物粉末等と反応しエトリンガイト(3CaO・Al・3CaSO・32HO)を生成させ、これにより硬化体の膨張率を高くすることができる。使用する石膏類の粉末度はブレーン法による比表面積で3000cm/g以上のものが、反応活性が得られるので好ましい。より好ましくは粉末度が6000cm/g以上の石膏類が良い。粉末度の上限は特に制限されないが、粉末度を高めるコストが嵩む割にはその効果が鈍化することから概ね15000cm/g程度が適当である。
【0015】
本発明の初期膨張性セメント組成物において石膏類の含有量は、セメント100質量部に対し、1.6〜20質量部とする。1.6質量部未満では材齢1日における膨張率が不足する。20質量部を超えると、コンシステンシーが得られ難くなり、コンシステンシーを確保するために水量を増加させると強度が不足する。材齢1日における膨張率が高く且つコンシステンシーを得易いことから、石膏類の含有量をセメント100質量部に対し2〜10質量部とすることが好ましく、2.9〜5質量部とすることが更に好ましい。また、本発明の初期膨張性セメント組成物において石膏類の含有量が、上記非晶質アルミノ珪酸鉱物粉末の含有量100質量部に対し10〜200質量部であると、材齢1日における膨張率が高く且つコンシステンシーを得易いことから好ましく、更に、15〜40質量部がより好ましい。
【0016】
本発明の初期膨張性セメント組成物は、セメント、膨張性物質、非晶質アルミノ珪酸鉱物粉末及び石膏類の合計100質量部に対し、水を26〜60質量部添加する。26質量部よりも水量が少ないと、混練できない。また、60質量部を超えると、硬化後の強度が不足する。より高いコンシステンシー及び強度が得られることから、セメント、膨張性物質、非晶質アルミノ珪酸鉱物粉末及び石膏類の合計100質量部に対し、28〜50質量部の水量とする。尚、本発明において使用する水の量は、水溶液やエマルション等の液状の混和材料に含まれる水量も考慮したものとする。
【0017】
本発明の初期膨張性セメント組成物に、更に、減水剤、骨材から選ばれる1種又は2種以上を含有することが好ましい。減水剤をを含有することで、同じコンシステンシーを得るための水量を少なくでき且つ水セメント比を小さくすることができることから、強度をより高めることができ且つ乾燥収縮を抑制できる。また、骨材を含有することで、同じコンシステンシーを得るための水量を少なくできることから、乾燥収縮を抑制できる。また、本発明で用いる減水剤としては、特に限定されず、例えば、ポリカルボン酸塩系減水剤、ナフタレンスルホン酸塩系減水剤、メラミンスルホン酸塩系減水剤及びリグニンスルホン酸塩系減水剤が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。用いる減水剤としては、高性能減水剤又は高性能AE減水剤を用いると、同じコンシステンシーを得るための水量をより少なくできることから好ましい。ポリカルボン酸塩系高性能減水剤又はポリカルボン酸塩系高性能AE減水剤が、少量の含有でコンシステンシーの保持時間を長くできることから特に好ましい。本発明の初期膨張性セメント組成物における減水剤の含有量は、セメント、膨張性物質、非晶質アルミノ珪酸鉱物粉末及び石膏類の合計100質量部に対し、0.01〜3質量%とすることが好ましい。
【0018】
また、本発明の初期膨張性セメント組成物で用いる骨材としては、特に限定されず、例えば、川砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂、川砂利、陸砂利、砕石、人工骨材、スラグ骨材などを用いることができる。本発明の初期膨張性セメント組成物における骨材の含有量は、初期膨張性セメント組成物がコンクリートの場合はセメント、膨張性物質、非晶質アルミノ珪酸鉱物粉末及び石膏類の合計容積の2〜15倍の容積とすることが好ましい。また、初期膨張性セメント組成物がモルタルの場合の骨材の含有量は、セメント、膨張性物質、非晶質アルミノ珪酸鉱物粉末及び石膏類の合計容積の0.5〜6倍の容積とすることが好ましい。
【0019】
本発明の初期膨張性セメント組成物には、セメント、膨張性混和材、非晶質アルミノ珪酸鉱物粉末及び石膏類、骨材及び減水剤以外に、他の混和材料から選ばれる一種又は二種以上を本発明の効果を実質損なわない範囲で併用することができる。この混和材料としては、例えばセメント用ポリマー、防水材、防錆剤、収縮低減剤、増粘剤、保水剤、顔料、繊維、撥水剤、白華防止剤、急結剤(材)、急硬剤(材)、凝結遅延剤、消泡剤、発泡剤、高炉スラグ微粉末、石粉、シリカフューム、火山灰、空気連行剤、表面硬化剤等が挙げられる。また、本発明で使用される混和材料は、粉末状でも水溶液状でも使用可能である。
【0020】
本発明の初期膨張性セメント組成物は、V型混合機や可傾式コンクリートミキサ等の重力式ミキサ、ヘンシェル式ミキサ、リボンミキサ、パン型コンクリートミキサ、パグミル型コンクリートミキサ、重力式コンクリートミキサ、グラウトミキサ、ハンドミキサ、左官ミキサ等のミキサにより、所定量の上記各材料を混合することで製造する方が、各材料の偏在が抑えられることから好ましい。このとき用いるミキサは、連続式ミキサでもバッチ式ミキサでも良い。各材料のミキサ内への投入順序は特に限定されない。一種ずつ添加してもよく、一部又は全部を同時に添加してもよい。また、袋やポリエチレン製容器等の容器に各材料を計り取り投入する方法により、本発明の初期膨張性セメント組成物を製造することもできる。また、予め使用する材料を2以上に分け、その分けた材料の一部又は全部をそれぞれ予め混合し、混合したものと残りの材料をミキサ等を用いて混合することで、本発明の初期膨張性セメント組成物を製造することもできる。本発明の初期膨張性セメント組成物に使用する材料のうち、膨張性物質、非晶質アルミノ珪酸鉱物粉末及び石膏類、或いはこれらと更に他の混和材料を予めミキサで混合することで混和材料を製造し、この作製した混和材料と他の材料の各所定量をミキサに投入し混合することで本発明の初期膨張性セメント組成物を製造すると、各材料の計量の手間が省くことができることから好ましい。この膨張性物質、非晶質アルミノ珪酸鉱物粉末及び石膏類を含む混和材料を製造する際には、膨張性物質、非晶質アルミノ珪酸鉱物粉末及び石膏類の各材料が上記の量とすることができる割合で混合する。
【0021】
また、本発明の初期膨張性セメント組成物に含まれる各材料が全て含水率が1質量%未満の場合は、施工現場で複雑な計量操作等を必要とせずに所定量の水を計量し混練するだけですぐに使用できるように、本発明の初期膨張性セメント組成物の配合成分のすべてが予め混合され粉末状である所謂「プレミックス製品」(但し、本発明の初期膨張性セメント組成物がコンクリートの場合は粉末の中に粗骨材が混合された状態のもの)とすることもできる。本発明の初期膨張性セメント組成物がこの「プレミックス製品」の場合は、使用する混和材料は粉末状又は顆粒状のものを使用し、且つ使用する骨材は乾燥させたものを使用することが好ましい。
【実施例】
【0022】
[実施例1]
表1に示す配合割合で膨張性物質、非晶質アルミノ珪酸鉱物粉末及び石膏類を混合し膨張性混和材料(略号:EX1〜EX5)を作製した。この膨張性混和材料と、セメント、細骨材及び水をホバート社製ミキサ(N−50)を用いて混合することで膨張性セメント組成物を作製した。また、膨張性混和材料として市販のコンクリート用膨張材を用い、同様に膨張性セメント組成物を作製した。膨張性セメント組成物の作製は、何れも20±3℃、湿度80%以上の恒温室内で行った。使用した材料を以下に示した。水を除く使用材料の含水率は何れも1質量%未満であった。
<使用材料>
アルミノ珪酸鉱物粉末:市販品(BASFジャパン社製焼成カオリン、商品名「メタマックス」、粉末X線回折装置による測定でピークが全く見られない(非晶質)。SiO53.0質量%及びAl43.8質量%含有。ブレーン比表面積の値が34000cm/g)
石膏類:II型無水石膏(ブレーン比表面積7000g/cm
膨張性物質:市販の生石灰、珪石、石膏及びヘマタイトを混合した後最高温度1450℃でロータリーキルンを用いて焼成することでクリンカ(遊離生石灰量は60%)を作製した。得られたクリンカを粉砕し、ブレーン比表面積の値が、3000cm/gの粉末としたものを用いた。
セメント:普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
コンクリート用膨張材:市販品(太平洋マテリアル社製、商品名「太平洋ハイパーエクスパン(構造用)」)
細骨材:珪砂(JIS R 5201:1997附属書2「セメントの試験方法−強さの測定」5.1.3に規定される標準砂)
水:山陽小野田市上水
【0023】
【表1】

【0024】
作製した膨張性セメント組成物の品質試験として、以下に示す通り、膨張性試験及び圧縮強度試験を行った。これらの結果を表2に示した。膨張性試験の結果は、市販のコンクリート用膨張材の材齢7日の長さ変化率を100%としたときの相対値(%表示)で示した。
<品質試験方法>
・膨張性試験
JIS A 6202:1997「コンクリート用膨張材」附属書1「膨張材のモルタルによる膨張性試験方法」に準拠して行い、材齢1日及び7日の長さ変化率を求めた。
・圧縮強度試験
土木学会基準JSCE−G 505−1999「円柱供試体を用いたモルタルまたはセメントペーストの圧縮強度試験方法」に準じ、材齢1日の圧縮強度を測定した。このとき供試体は、圧縮強度試験の直前で脱型した。

【0025】
【表2】

【0026】
本発明の実施例に当たる膨張性セメント組成物(配合No.3〜5)は、何れも材齢1日の長さ変化率が市販のコンクリート用膨張材の材齢7日の長さ変化率の70%以上あり、初期に充分膨張していた。また、本発明の実施例に当たる膨張性セメント組成物(配合No.3〜5)並びに市販のコンクリート用膨張材を用いた膨張性セメント組成物(配合No.6)は、何れも、材齢7日の長さ変化率(膨張性)が250×10−6以上で、JIS A 6202の材齢7日における膨張性の規格を満たしており、過膨張によるひび割れは見られなかった。また、本発明の実施例に当たる膨張性セメント組成物は、何れも材齢1日の圧縮強度が5N/mm以上あり、材齢1日で脱型できる強度を示していた。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明によれば、材齢1日で脱型できるので、工期をより短くすることができる。本発明は、膨張性セメント組成物を用いるコンクリート工事、モルタルを使用する工事等に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントと、セメント100質量部に対し、膨張性物質4〜15質量部、非晶質アルミノ珪酸鉱物粉末6〜20質量部、石膏類1.6〜20質量部を含有することを特徴とする初期膨張性セメント組成物。
【請求項2】
上記非晶質アルミノ珪酸鉱物粉末が、カオリン鉱物を加熱し非晶質化した非晶質アルミノ珪酸鉱物である請求項1に記載の初期膨張性セメント組成物。

【公開番号】特開2012−140295(P2012−140295A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−294228(P2010−294228)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(501173461)太平洋マテリアル株式会社 (307)
【Fターム(参考)】