説明

判定方法および記録装置

【課題】管理者のスキルに依存しないキャリブレーション実行の要否判定を低コストで行う。
【解決手段】キャリブレーションの実行の要否を判定する判定方法であって、キャリブレーション実行の要否を判定する閾値を設定する設定工程と、キャリブレーションチャートが構成されたパッチ数よりも少ないパッチ数で構成され、前記キャリブレーションチャートを構成するパッチから構成された複数のパッチから成るチェックチャートを記録し、測色手段により前記チェックチャートのそれぞれのパッチを測色して測色値を取得する取得工程と、予め記憶されているチェックチャートのパッチの目標測色値と、前記取得工程で取得された測色値と、前記閾値とに基づいて、前記キャリブレーションの実行の要否を判定する判定工程を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリブレーションの実行の要否を判定する判定方法および記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、インクジェット記録装置のキャリブレーションは、色材色毎の記録濃度特性を調べる為に、キャリブレーションチャートを記録し、記録したチャートを測色し、予め設定された記録濃度特性になるように各色材色で補正パラメータを算出する。そして、算出された補正パラメータを用いて記録濃度を補正することにより、記録結果の色味を一定にして記録を行う。
【0003】
通常キャリブレーションは、記録装置の色味が変動したときに実行する必要があるため、記録媒体の色変動を視覚的に判定することでその要否を判定する。また、色材やヘッドなどの部品を交換したときや経験的に見出された装置の変動周期を元に算出したタイミングで定期実行する。
【0004】
しかしながら、視覚的に判定する方法は、色変動の判定基準が曖昧であり、管理者のスキルによって記録の精度がばらつくことがある。また、経験的に見出された装置の変動周知を元に算出する方法では、定期実行の頻度が不適切で、必要以上にキャリブレーションを実行した結果、色材や記録媒体を無駄に消費してしまうことがある。
【0005】
そこで、キャリブレーションを適用したパッチチャートを記録および測色し、その結果から現在の記録装置のキャリブレーション精度を判定することで、キャリブレーション実行の要否を判定する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような方法によりキャリブレーションを行うと、色変動の判定結果は管理者のスキルに拠らないために安定したキャリブレーションを行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−60637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した方法では、キャリブレーション補正パラメータを算出するキャリブレーションチャートを、キャリブレーションを行う都度、記録および測色して精度のチェックを行わなければならない。そうすると、精度のチェックを行うことによって、キャリブレーションを直接実行するよりも、高コストになってしまう。
【0008】
本発明は以上の点を鑑みてなされたものであり、管理者のスキルに依存しないキャリブレーション実行の要否判定を行うに際して、低コストで行うことができる判定方法および記録装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのために本発明では、記録媒体に画像を記録する記録装置のために、複数の色材のそれぞれの色材の段階的な色味の複数のパッチから構成されているキャリブレーションチャートを記録してキャリブレーションの実行の要否を判定する判定方法であって、前記キャリブレーションチャートを記録して測色するキャリブレーション実行の要否を判定する閾値を設定する設定工程と、前記キャリブレーションチャートが構成されたパッチ数よりも少ないパッチ数で構成され、前記キャリブレーションチャートを構成するパッチから構成された複数のパッチから成るチェックチャートを記録し、前記測色手段により前記チェックチャートのそれぞれのパッチを測色して測色値を取得する取得工程と、予め記憶されているチェックチャートのパッチの目標測色値と、前記取得工程で取得された測色値と、前記閾値とに基づいて、前記キャリブレーションの要否を判定する判定工程を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上の構成によれば、予め記憶されたチェックチャートを構成するパッチの目標測色値と、記録されたチェックチャートの測色値と閾値によって、キャリブレーションを行うか否かの判定を自動的に行うことができる。これにより、管理者のスキルに依存しないキャリブレーション実行の要否判定を行うに際して、低コストで行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態の色変換処理の構成を示すブロック図である。
【図2】実施形態のパッチチャートを記録および測色した結果の例を示すグラフである。
【図3】図2に示すグラフに基づき作成されたCal用LUTの例を示すグラフである。
【図4】実施形態のパッチチャートを示す図である。
【図5】実施形態の記録する為の情報と目標値の情報を示した表である。
【図6】実施形態の画像処理システムの例を示すブロック図である。
【図7】測色部632が記録装置627内に構成された状態を示す概念図である。
【図8】実施形態の設定画面の例を示す概念図である。
【図9】実施形態の要否判定を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0013】
図1は、実施形態の画像処理システム内で行われる色変換処理の構成を示すブロック図である。実施形態のインクジェット記録装置は、R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)信号を入力するRGB記録装置の機能と、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)信号を入力するCMYK記録装置の機能を有する。また、説明上画像データは各色8ビットからなり、各処理は各信号8ビットで行われるものとする。ただし、本発明の画像データおよび処理での量子化数はこの他10ビット、12ビット、16ビットでもよい。また、実施形態の記録装置は出力に使用する色材として、CMYKに加え、Cを希釈したLc(ライトシアン)、M(マゼンタ)を希釈したLm(ライトマゼンタ)を備えているが、R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)Gy(グレー)等の色材のうち1色以上の色材を加えたものや、より単純にC、M、YもしくはC、M、Y、Kのみであってもよい。
【0014】
画像信号I/F101は、入力画像データのI/F部であり、ここではRGB信号およびCMYK信号の画像データが入力される。入力された画像データは、図に示す通りデバイス非依存空間のカラーデータをデバイス依存空間に変換するカラーマッチング処理部102、103と、デバイス依存空間のカラーデータを色材色データに変換する色分解処理部104、105と、色材色データを記録装置の出力色特性に合わせて階調補正を行う階調補正処理部106によって処理が行われる。カラーマッチング処理部102、103および色分解処理部104、105はそれぞれ専用のルックアップテーブル(以下、「LUT」ともいう)をセットすることで、入力された画像データに所望の色変換を行うことができる。このルックアップテーブルは、記録媒体毎や高速記録、低速高画質記録などの記録モード毎に存在し、管理されている。また、これらの色変換処理のうち、カラーマッチング処理部102、103と色分解処理部104、105では、3D−LUTや4D−LUTを使用して色変換処理を行っている。また、階調補正処理部106では1D−LUTを使用して色変換処理を行っている。3D−LUT処理は、各色17カウント間隔の16格子からなる16x16x16=4096格子からなる3D−LUTテーブルから構成されている。なお、それぞれのLUT生成および処理は、公知の方法によって実行できるため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0015】
キャリブレーション処理部107は、装置を構成するデバイス、記録媒体、色材の個体差および経時変化による吐出量変動によって引き起こされる記録結果の色味変動を補正する。実施形態のキャリブレーション処理は、図4で後述するキャリブレーションチャートを、キャリブレーションの基準となる記録装置(以下、「基準記録装置」ともいう)で予め記録および測色して記憶設定された目標測色値と、同チャートを対象の記録装置で記録し測色した測色値との対応関係から生成したLUTで補正処理を行う。ここで、測色値はCIE L*a*b*値を用いて測色し、キャリブレーションチャート記録用のLUTは、図1に示す色分解処理部104および105の格子点の値を利用したものを使用する。また、図4で後述するチェックチャートの各インク色の諧調パッチについてもキャリブレーションチャートと同様に格子点の値を利用したLUTを使用して記録する。その後、記録したパッチ部を測色し、予め記憶設定された目標測色値と対象の記録装置の測色値との色差が最小となるように生成された1D−LUTを適用することで補正を行う。これらの補正は、各記録媒体または各記録モードで異なるパラメータが設定される。
【0016】
図2は、実施形態の画像処理システムのキャリブレーション処理用LUT(以下、「Cal−LUT」ともいう)生成用パッチチャートを記録および測色した結果の例を示すグラフである。すなわち、キャリブレーションチャートを、対象の記録装置で記録と測色をした結果の測色値(Measured)と、基準記録装置による目標測色値(Target)とをCIE L*a*b*空間上にプロットしている。なお、本グラフは、シアンインクの状態を例示している。
【0017】
L*a*b*上の基準記録装置による目標測色値の軌跡を示した曲線201と、a*b*平面への投影した軌跡を示した曲線202が図示されている。また、L*a*b*上には対象の記録装置でのキャリブレーションチャートの測色値の軌跡を示した曲線203と、a*b*平面への投影した軌跡を示した曲線204が図示されている。図に示すように、目標測色値と対象の記録装置の測色値が異なる原因は、色材であるインクのロットのバラツキ、インク吐出量の環境的変化、経時変化等のより発生する。
【0018】
実施形態では、Cyan70%(データ値は178)のCIE L*a*b*値が目標測色値と測色値とで差異があり、目標測色値のCyan70%に対して色差が一番小さいのは測色値では68%(データ値は173)であることを表している。
【0019】
図3は、図2に示すグラフに基づき作成されたCal用LUTの例を示すグラフである。このLUTを適用することにより、対象の記録装置でCyan70%(データ値は178)だった出力値が68%(データ値は173)に変換され、目標測色値のCyan70%と色差が最小の出力を行うことができる。すなわち、キャリブレーション処理では、目標測色値の測色値に最も近い測色値になるように色材色毎の画像データ値を1D−LUT処理で補正修正する。なお、実施形態ではCIE L*a*b*値を使用しているが、RGB信号別に読めるカラー濃度計による濃度値やモノクロ信号を扱う濃度計による光学濃度値を使用し、濃度差が最小の出力を行うようにしてもよい。
【0020】
実施形態のCal−LUTは、補正目的に経時変化の補正が含まれるため、一定の期間が経過すると再作成が必要になる。(以下、Cal−LUTの生成および再生成を共に「キャリブレーション実行」ともいう)。実施形態では、この再作成時期を簡便かつ低コストで判定するために、Cal−LUTの生成時に使用するキャリブレーションチャートデータの一部から作成したキャリブレーション精度チェック用(以下「Calチェック用」ともいう)チェックチャートを用いて精度情報を算出する。
【0021】
また、実施形態のキャリブレーション実行の要否判定は、以下の方法で求める。
Calチェック用のチェックチャートを測色した測色値 L*Measure、a* Measure、b* Measure
予め用意した精度目標測色値 L*Target、a* Target、b* Target
色差ΔE=((L*Target−L*Measure)2+(a* Target-a* Measure2+(b* Target-b* Measure21/2
【0022】
以上で求められた色差ΔEが、予め設定された閾値の値以上であればキャリブレーション実行の必要があると判定する。なお、判定方法はこの色差算出式、さらにはCIE L*a*b*値による色差を用いる方法に限るものではなく、別の色差式を用いたり、Calチェック用のチェックチャートの光学濃度値を測色し、その濃度差から判定したりしても良い。例えば、色材、記録媒体のロットバラツキの少なく、変動の原因が色材インクの吐出量の変動が支配的ある記録システムでは、色差ではなく明度情報であるL*値の差(予め記憶されている目標L*値と測色した測色L*値の差)を閾値と比較判定することによって求めてもよい。またこのような記録システムでは、CIE L*a*b*値を測色可能な測色器を用いなくてもよい。すなわち、RGB信号によるカラー濃度計やモノクロ信号の明度測色可能な光学濃度計により、測色濃度値と予め記憶された目標濃度値の差を予め定められた目標濃度値と比較することによって求めてもよい。
【0023】
図4は、実施形態のキャリブレーション処理用LUT生成用パッチチャートおよびキャリブレーション実行要否判定用パッチチャートを示す図である。図4(a)は、実施形態のCal−LUT生成用のキャリブレーションチャートを示しており、図4(b)は、実施形態のCalチェック用のチェックチャートを示している。なお、これらのパッチの目標測色値は、複数の記録媒体のうちそれぞれの記録媒体に対応付けられているものであってもよい。また、複数の記録モードのうちそれぞれの記録モードに対応付けられているものであってもよい。すなわち、考えられる色味の異なる要因毎にそれぞれ測色値をもっていてもよい。
【0024】
図4(a)に示すキャリブレーションチャートは、段階的な色味の複数のパッチから構成されている。すなわち、記録装置の色材色を各色16階調並べたパッチチャートになっている。各パッチに振られたC1等の符号は色材色とパッチ番号を示しており、先頭のC、M、Y、K、c、mはそれぞれ色材色のC、M、Y、K、Lc、Lmと対応している。
【0025】
図4(b)に示すチェックチャートは、図4(a)に示すキャリブレーションチャート内のC、M、Y、K、Lc、Lmそれぞれの階調パッチから、各色それぞれ2パッチ使用してCalチェック用のパッチチャートが構成されている。このため、キャリブレーションチャートが96パッチであるのに対し、チェックチャートは12パッチであり、色材と記録媒体の使用量がキャリブレーションチャートに比べて非常に少なくなっている。また、記録装置には一般的に記録可能領域内の位置による記録バラツキ(以下、単に「面内ムラ」とも称する)がある。実施形態の記録装置は、記録ヘッドを走査するためのモーターの偏心やベルトの振動および記録媒体直下に位置する部材の形状等により、主走査方向に対して面内ムラが発生しやすい傾向がある。このため、面内ムラの影響を最小限にするためには、主走査方向における位置を同一にしておくことが必要になる。そこで、実施形態のチェックチャートは、対応するキャリブレーションチャートの各パッチとヘッド主走査位置が同一になっており、両パッチチャートの対応するパッチについて面内ムラによる影響を受けないように構成されている。
【0026】
図5は、実施形態のCal−LUTの生成に使用するキャリブレーションチャートおよびチェックチャートを記録する為の情報とキャリブレーション目標値の情報を示した表である。これらの情報は、記録媒体毎または記録モード毎に用意されている。チャート画像生成の為の情報として、パッチチャートのカウント値と、対応する色材色信号の値を示している。例えば、図4に示すC1のパッチ部のカウント値は、(R,G,B)=(0,0,0)となり、C2のパッチ部のカウント値は、(R,G,B)=(0,0,17)となることを示している。これは、図1の色変換処理における色分解処理用3D−LUTの格子点位置に相当している。
【0027】
ここでは、RGB信号での例を示しているが、同じ方法によってCMYK信号処理系でも可能である。色材諧調値は、各パッチにおける色材色信号の値を示している。C1のRGB信号値が入力された場合、色材色信号値は(C,M,Y,K,Lc,Lm)=(245,0,0,0,0,0) となり、C2のパッチは、(C,M,Y,K,Lc,Lm)=(194,0,0,0,0,0)の値になることを示している。これらのチャート画像データと色材諧調値の情報に基づいて、キャリブレーションチャート記録時の色分解処理用3D−LUTが生成される。
【0028】
再び図1の色変換処理部を参照すると、カラーマッチング処理部102では、入力と出力が同じ値になるテーブルがキャリブレーションチャート記録用のルックアップテーブルとして設定されている。色分解処理部104の3D−LUTの処理パラメータでる格子点データは、各パッチのチャート画像データであるRGB値と色材諧調値であるC,M,Y,K,Lc,Lm値を対応づけたパラメータが設定されている。すなわち、C1のパッチ部の(R,G,B)=(0,0,0)のデータが画像信号I/F101を介してカラーマッチング処理部102、カラーマッチング処理部102を介して処理される。その結果、(C,M,Y,K,Lc,Lm)=(245,0,0,0,0,0)として出力される。また、C2のパッチ部の(R,G,B)=(0,0,17)のデータが画像信号I/F101を介してカラーマッチング処理部102、カラーマッチング処理部102を介して処理される。その結果、(C,M,Y,K,Lc,Lm)=(194,0,0,0,0,0)として出力される。
【0029】
また、図5の情報では、Calチェック用の情報も兼ねており、Calチェック用のチェックチャートにも使用するパッチには、その旨を表すフラグ(*印)が立っている。このフラグが立っている各色材色の目標測色値(実施形態のシアンの場合は4番および10番の目標測色値)は、キャリブレーション実行の要否判定の際にはCalチェック用の情報として使用される。測色目標値は、各パッチ記録部の測色値の目標となる値で、図3に示したように、キャリブレーション補正処理の1D−LUTによって目標測色値になるように補正される。ここでの目標測色値は、CIE L*a*b*値の例を示しているが、カラー濃度計の場合は、RGB信号の目標濃度値を、モノクロの光学濃度計の場合は、モノクロ目標濃度値の情報を記憶、管理することによって同様の効果が得られる。
【0030】
図6(a)は、実施形態の画像処理システムの例を示すブロック図である。実施形態の画像処理システムは、情報処理装置としてのパーソナルコンピュータ(PC)601に記録装置としての記録装置607、記録されたパッチチャートのCIE L*a*b*値を測色することができる測色器612が接続されている。測色器は、CIE L*a*b*値を測色値として読みだすもの以外に、RGB信号の濃度値を読みだすカラー濃度計、またはモノクロ信号の濃度値を読み出す光学濃度計であってもよい。それぞれの機器は、ネットワークや、USBまたはローカルバスなどのインターフェースを介して接続されている。
【0031】
PC601は、以下に示すように記録装置607および測色器612の制御に関して種々のソフトウェアプログラムによって処理を行うものである。記憶装置605にはシステムプログラム、アプリケーションソフトプログラム、記録動作に必要なソフトウェアプログラム、各種パラメータ、PC601上で作成された記録対象データが格納される。この記憶装置は、ハードディスクやフラッシュROMに代表されるものである。CPU603は記憶装置605に格納された、通常記録やキャリブレーション処理用LUT生成およびキャリブレーション実行の要否判定のプログラムなど記憶装置605に格納されているプログラムに従って処理を実行する。そして、作業メモリ604はその処理の際のワークエリアとして用いられる。また、CPU603にはリアルタイムクロックによるカレンダー機能も有しており、キャリブレーション実行の要否判定を定期的に実行することができる。データ入出力装置606はCDやDVDおよびUSBメモリに代表される可搬性のある記憶装置やLANカードに代表されるようなデータ通信機器で、記録対象データの入力やパッチチャート測色値の出力および基準測色値を入力する際のインターフェースとして使用される。ユーザーインターフェース(UI)となる操作部602は、上述の処理の実行に関して、作業者による入力や作業者に対する表示に関する処理を行う。作業者による入力や作業者に対する表示に関する処理は、キーボードやマウス等の入力機器やディスプレイ等の表示器を含むものである。測色器612は、記録装置607で記録されたパッチチャートのパッチ部をPC601の指示に従って測色して、その測色結果をPC601に送り、記憶装置605に格納することができる。記録装置607は、データ転送部608、記録装置制御部609、画像処理部610、記録部611からなり、PC601から送られてきた記録データを用いて記録を行う装置である。
【0032】
ここで、記録データは画像データとLUT等の画像処理パラメータ、装置駆動用のメカパラメータおよび記録装置制御データで構成される。データ転送部608は、PC601から送られてきた記録データから、画像データと画像処理パラメータを取り出して画像処理部610に送り、メカパラメータと記録装置制御データを記録装置制御部609に送る。記録装置制御部609は、データ転送部608から送られた記録装置制御データに従って記録装置607の動作を制御する。画像処理部610は、図1に示すようにデータ転送部608から送られてきた画像データと画像処理パラメータを使用して色変換や階調補正およびキャリブレーションの色変換処理を行う。その後不図示ではあるが、ハーフトーニング処理によって各色材色での記録データを生成し、その結果を記録部611に送る。記録部611は、画像処理部610から送られてきた処理結果の記録を行う。なお、記録に関しては公知の方法によって実現できるため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0033】
図6(b)は、図6(a)に示す画像処理装置のうち、測色器612が測色部632として記録装置627内に構成されるものである。なお、記録が測色を伴う物であれば、PC621から転送される記録データには測色器の制御データも含まれ、記録装置制御部629に送られ、記録装置制御部629は、記録装置627の記録制御と連動して測色器632の測色制御を行う。測色器632による測色値は、図6(a)と同様に測色結果をPC621の記憶装置625に転送し、格納管理する。
【0034】
図7は、測色部632が記録装置627内に構成された状態を示す概念図である。インクを吐出して記録媒体701上を左右に走査してパッチ画像702を形成するためのキャリッジ703の脇にセンサ704が搭載されている。
【0035】
図6(c)は、図6(b)に示す画像処理装置のうち、PC621が演算部641として記録装置648内に構成されるものである。このため、演算部641は図6(b)に示す記録装置制御部629に代わって記録装置648および測色部651の制御も行う。また、データ入出力装置646はCDやDVDおよびUSBメモリに代表される可搬性のある記憶装置やLANカードに代表されるようなデータ通信機器で行われる。データ通信機器は、文書、画像等の記録対象データや測色値補正パラメータ算出処理の実行命令を他のホストPC647から受け取る際のインターフェースとして使用される。このとき、記録対象データを可搬性のある記憶装置を介して入力し、測色値補正パラメータ算出処理や通常記録の実行命令をUI642から指定すれば、記録装置648のみで処理は完結するため、ホストPC647は必須ではない。
【0036】
図8は、実施形態のPC601上で動作するキャリブレーション実行ソフトウェアプログラムの要否判定に関する設定画面の例を示す概念図である。本設定画面は前記UI602を作業者が操作することによって表示されるものである。この設定画面には大きく分けて精度チェック設定801とスケジュール設定802に分かれている。精度チェック設定は判定処理に使用する閾値を設定し、スケジュール設定は判定処理を定期的に自動実行するか否か、また、自動実行する場合はその周期も設定する。ここでの設定値は、精度チェック情報とスケジュール管理情報として、記憶装置605に管理記憶する。実施形態における判定スケジュール管理は、この設定を元にキャリブレーション実行ソフトウェアプログラムの要否判定処理を自動実行する。さらに、スケジュール設定502にはキャリブレーション実行が必要と判定された際に、自動的にキャリブレーション処理用LUTの再生成を行うように設定するチェックボックス803を備えている。設定ボタン805を押下すると画面で設定された内容が記憶装置605の精度チェック情報とスケジュール管理情報に追記書き込まれ、キャンセルボタン804を押下するとその画面での設定内容は追記されずに画面を閉じる。スケジュール管理情報は、上記の設定内容情報のほか、キャリブレーションチェック実行およびキャリブレーション実行の履歴情報、結果情報などが記憶管理されている。
【0037】
図9は、実施形態のPC601上で動作するキャリブレーション実行ソフトウェアプログラムの要否判定を示すフローチャートである。本フローは作業者がUI602からキャリブレーション実行の要否判定を手動で実行するか、もしくは判定スケジュール管理からの自動実行の指示があった場合に動作するものである。
【0038】
まず、図4(a)に示すキャリブレーションチャートのパッチ数より少ない図4(b)で示すチェックチャートを生成する(ステップS901)。ここでは、図6の記憶装置605に格納された図5で示した情報を基に、記録媒体に対応したチャート画像データのRGB値とCalチェック用パッチを示すフラグを元に、チェックチャートの画像データを生成する。そして、生成されたチェックチャートの画像データの記録を行い、測色処理部3でCIE L*a*b*値を測色する(ステップS902)。PC601は、図5のチャート画像データのRGB値情報と色材階調値情報である色材信号の配分値を基に、キャリブレーションチャート記録用のルックアップテーブルを生成する。そして、記録装置607のデータ転送部608を介して、画像処理部710の図1で示すカラーマッチング処理部102、色分解処理部104に処理パラメータとして設定する。この時、諧調補正処理部106、キャリブレーション処理部107の1D−LUTは、入力値と出力値が同じ値になるパラメータが設定される。次に、PC601のS901で生成されたチェックチャートテータを記録装置607に転送する。記録装置607では、PC601からの制御データに基づいて、記録装置制御部709によって記録制御が行われる。チェックチャートデータはデータ転送部608を介し、画像処理部610によって色処理変換、ハーフトーニング処理が行われ、記録部611を介して記録が行われる。チェックチャートのパッチ部C4は(C,M,Y,K,Lc,Lm)=(122,0,0,0,0,0)、C10は(C,M,Y,K,Lc,Lm)=(29,0,0,0,0,0)の値のパッチが記録される。
【0039】
ここで、低濃度域のパッチ部の記録濃度はヘッドの吐出量の変動に対して敏感に変化する為に選択されたもので、以下の理由による。インク色材の吐出量の変動は、記録媒体上の色材ドット径を変動させる。そして記録媒体上の濃度に大きく起因するのは、記録媒体上に色材が乗る部分と乗らない部分の面積比である。高濃度部分では、記録媒体上でほとんどインク色材の面積で占められているため、ドット径の変動に対する面積割合の変動が少ない。一方低濃度部では、インク色材の占める面積が少ない。そのため、インク色材のドット径の変動によるインク色材部の面積割合の変動が大きくなる。そこで、インク色材の吐出変動に対する濃度変動が、高濃度域より低濃度域の方が敏感に反応することになる。上記C4、C10以外のパッチについても、図の色材階調値に記載されている値のパッチが記録される。記録終了後、同様にPC601でのソフトウェアプログラムに従い、測色器612によってパッチ部の測色が行われる。測色器612によって測色された12種のパッチ部のCIE L*a*b*値は、PC601の記憶装置605に管理記憶される。
【0040】
次に、測色、記憶された測色値と予め記憶されている図5の測色目標値からそれぞれのパッチの色差を前述した方法により算出する(ステップS903)。そして、算出された12種類のパッチの色差と図8によって設定された精度チェック設定501による閾値から、キャリブレーション実行が必要かどうかを判定する(ステップS904)。ここでは、一つでも閾値を越えるものが存在する場合は、キャリブレーション実行が必要であると判定する。この判定の結果、キャリブレーション実行の必要が無い場合はステップS907に進む。キャリブレーションチェック実行およびキャリブレーション実行での履歴情報、結果情報などを記憶装置605のスケジュール管理情報に追記記録して(ステップS907)終了する。一方、キャリブレーション実行の必要がある場合はS905に進む。実施形態では、一つでも閾値を越えるものが存在する場合の判定方法を例に示したが以下の2つの方法によってもよい。第1の方法は、色材単位で平均色差を算出し、閾値と比較判定することである。すなわちC4とC10のパッチ部の色差の平均値を算出する。同様に、M4とM10、Y4とY10、K4とK10、c4とc10、m4とm10の各平均色差を算出する。そしてこれら6種類の平均色差が一つでも閾値を越える場合は、キャリブレーション実行が必要であると判定し、超えない場合は必要がないと判定する。第2の方法は、12種類のパッチ部の色差の平均値を閾値と比較し、閾値を越える場合は、キャリブレーション実行が必要であると判定し、超えない場合は必要がないと判定する。
【0041】
図8のキャリブレーション自動実行設定803の設定値を取得し(ステップS905)、自動実行しない場合はS907に進む。キャリブレーションチェック実行およびキャリブレーション実行での履歴情報、結果情報などを記憶装置605のスケジュール管理情報に追記記録して(ステップS907)終了する。一方、自動実行する場合は、図4(a)のキャリブレーションチャートを記録、測色してキャリブレーションを実行し、キャリブレーションに必要な情報として記憶管理する(ステップS906)。キャリブレーションチェック実行およびキャリブレーション実行での履歴情報、結果情報などを記憶装置605のスケジュール管理情報に追記記録する(ステップS907)。以上説明したように、実施形態により、キャリブレーション実行の要否判定を、管理者のスキルに依存せずに低コストで行うことができる。
【符号の説明】
【0042】
104 色分解処理部
106 階調補正処理部
107 キャリブレーション処理部
610 画像処理部
612 測色器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に画像を記録する記録装置のために、複数の色材のそれぞれの色材の段階的な色味の複数のパッチから構成されているキャリブレーションチャートを記録してキャリブレーションの実行の要否を判定する判定方法であって、
前記キャリブレーションチャートを記録して測色するキャリブレーション実行の要否を判定する閾値を設定する設定工程と、
前記キャリブレーションチャートが構成されたパッチ数よりも少ないパッチ数で構成され、前記キャリブレーションチャートを構成するパッチから構成された複数のパッチから成るチェックチャートを記録し、測色手段により前記チェックチャートのそれぞれのパッチを測色して測色値を取得する取得工程と、
予め記憶されているチェックチャートのパッチの目標測色値と、前記取得工程で取得された測色値と、前記閾値とに基づいて、前記キャリブレーションの実行の要否を判定する判定工程を備えることを特徴とする判定方法。
【請求項2】
前記予め記憶されているチェックチャートのパッチの目標測色値は、複数の記録媒体のうちそれぞれの記録媒体に対応付けられていることを特徴とする請求項1に記載の判定方法。
【請求項3】
前記予め記憶されているチェックチャートのパッチの目標測色値は、複数の記録モードのうちそれぞれの記録モードに対応付けられていることを特徴とする請求項1に記載の判定方法。
【請求項4】
前記チェックチャートは前記キャリブレーションチャートの一部からなり、前記キャリブレーションチャートに対応する前記チェックチャートの測色値の代わりに、前記キャリブレーションチャートの測色値を使用して階調補正の精度情報を算出することを特徴とする請求項1に記載された判定方法。
【請求項5】
複数の色材のそれぞれの色材の段階的な色味の複数のパッチから構成されているキャリブレーションチャートを記録してキャリブレーションの実行の要否を判定する記録装置であって、
前記キャリブレーションチャートを記録して測色するキャリブレーション実行の要否を判定する閾値を設定する設定手段と、
前記キャリブレーションチャートが構成されたパッチ数よりも少ないパッチ数で構成され、前記キャリブレーションチャートを構成するパッチから構成された複数のパッチから成るチェックチャートを記録し、測色手段により前記チェックチャートのそれぞれのパッチを測色して測色値を取得する取得手段と、
予め記憶されているチェックチャートのパッチの目標測色値と、前記取得手段で取得された測色値と、前記閾値とに基づいて、前記キャリブレーションの実行の要否を判定する判定手段を備えることを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−110452(P2013−110452A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251648(P2011−251648)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】