説明

利き手の別に関わらず使用が出来るハサミ

【課題】左利きの人も不都合なく使用しうるハサミを提供する。
【解決手段】 柄部と刃部とを有する一対のハサミ構成部材と、これら一対のハサミ構成部材を軸支する軸部とを有し、軸部を回転中心にした開閉操作にて刃部にて被切断部材を切断するハサミであって、上記一対のハサミ構成部材の刃部が閉状態において互いに圧接状態となる様、軸部から柄部方向の柄部に突起部材を有していることから、切断作業を行なう場合に、一対の刃部が互いに摺りあうように噛み合って、右利きの人も左利きの人も不都合なく適切に紙や布等の柔らかな素材からなる被切断物を切断することができることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は左利きの人も不都合なく使用しうるハサミに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に販売されているハサミ、特に、事務用、家庭用及び子供用のハサミには図1に示す右利き用のハサミと図2に示す左利き用のハサミとがある。右利き用のハサミと左利き用のハサミとが製造販売されている理由は以下のとおりである。
【0003】
ハサミは、柄部と刃部とを有する一対のハサミ構成部材により構成され、上記一対のハサミ構成部材は、上記柄部と刃部の中間部において相互に支軸により回動可能に軸着されている。
【0004】
そして、ハサミを使用する場合には、一方のハサミ構成部材の輪状に形成された柄部の中に親指を挿通すると共に、他方のハサミ構成部材の輪状に形成された柄部の中にその他の指を挿通し、手のひらを握るような動作を行う。
【0005】
この場合、右利きの人がハサミを使用する場合、図1左図に示す様に、ハサミの幅方向を縦に使用した場合には、上記親指は、柄部を使用者の前面方向に向かって左方寄りへ押し出すような運動を行い、その他の指は柄部を右方寄りへ引き込むような運動を行うことになる。
【0006】
また、左利きの人がハサミを使用する場合、図3に示す様に、ハサミを幅方向を縦に使用した場合には、柄部を右方寄りへ押し出すような運動を行い、その他の指は柄部を左方寄りへ引き込むような運動を行うことになる。
【0007】
その結果、上記支軸より前方に配置されている刃部には、上記支軸を支点として柄部とは逆方向へ変位するベクトルが働くことから、右利きの人が使用した場合は、刃部には右方寄りへ変位させる力が作用し、その他の指を挿通した柄部と一体の刃部には左方寄りへ変位させる力が作用することになる。
【0008】
一方、左利きの人がハサミを使用する場合には、親指を挿通した柄部と一体の刃部は左方寄りへ変位し、その他の指を挿通した柄部と一体の刃部は右方寄りへ変位することになる。
【0009】
そして、紙などの被切断物を切断する場合、上記一対の刃部が離間していた場合には紙等の被切断物を効果的に切断することができないので、上記一対の刃部は互いに密着して摺り合わせられるようにして噛み合わせる必要がある。
【0010】
そこで、右利き用のハサミにあっては、上記右手でハサミを使用する際の各指の機能を前提にして、切断時に上記一対の刃部を互いに密着して摺り合うように噛み合わせるようにするため、ハサミを幅方向を縦にして使用した場合には、親指を挿通した柄部と一体の刃部は左側に配置され、その他の指を挿通した柄部と一体の刃部は右側に配置されている。
【0011】
右利き用のハサミを使用して紙等を切断する際に、親指とその他の指が上記ハサミの柄部を閉じる動作を行った場合には、左側に配置された親指が挿通されるハサミ構成部材の刃部には右方向への力が作用すると共に、右側に配置された他の指が挿通されるハサミ構成部材の刃部には左方向への力が作用することから、双方の刃部には互いに密接する方向への力が作用することから、良好に被切断部材を切断することができる。
【0012】
この場合、上記右利き用のハサミを左利きの人が使用した場合には、上記の事情から、親指を挿通した柄部と一体の刃部には左方への力が働き、その他の指を挿通した柄部と一体の刃部は右方への力が働くことになることから、上記一対の刃部には互いに離間する方向に力が働くことから双方の刃部は互いに密接しにくく、その結果、図3に示す様に紙などの被切断部材を効果的に切断することができない場合が多い。
即ち、被切断物が布や紙のように、一定の剛性を有さず、比較的柔らかな素材の場合には、上記のように双方の刃部が互いに密接していない場合には、双方の刃部の間に被切断物が滑り込んでしまい、刃部により被切断物を有効に切断することができない場合がある、という不具合が存していた。
【0013】
上記のような事情は、事務用品又は文房具として机上に備えられ、紙などを切断するために使用されるハサミや、学校教育で使用される子供用のハサミ、及び家庭用のハサミに特に顕著である。
【0014】
そこで、事務用品又は文房具として机上に備えられるハサミ、学校教材用のはさみ、及び家庭用のハサミ等にあっては、右利き用のハサミとは別個に、図2に示す様な左利きの人用のハサミが製造、販売されている。
【0015】
この左利き用のハサミは、ハサミ構成部材の支軸を介しての配置構成が右利き用のハサミとは反対となり、親指を挿通する柄部と一体の刃部が、使用者の正面方向に向かって右側に配置され、その他の指を挿通する柄部と一体の刃部が左側に配置され、左利きの使用者が使用した場合に、上記一対の刃部が互いに圧接した状態で開閉動作しうるように構成されている。
【0016】
しかしながら左利き用のハサミは一般的なものではなく、左利きの人が準備しなければ使うことが出来ない可能性が高く、又、構造が逆であるため右利き用ハサミに比べて高価であると言える。更に左利きの人は右利き用のハサミを使わなければならない環境でハサミを使い続けていたため、手に通常の使い方とは異なる力の入れ方をする癖が付いているため、左利き用のハサミを左手では上手く使えない、という場合もあった。左利き用ハサミは左利きの人専用の道具であり右利きの人が利用することは難しかった。
【0017】
そこで特許文献1及び特許文献2に示されたように、右利き及び左利きの双方の使用者が共に使用することが出来る様に、刃部の支軸部にスプリングやスプリングワッシャを装着したハサミが公知であるが、スプリング等の部品等を組み込む作業等が加わり、製造が難しく且つ使用に伴い、スプリングの耐久性・故障等も問題が生じる可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2006−181036公報
【0019】
【特許文献1】特開2005−261603公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
そこで本発明の課題は、右利き用ハサミを左手で使用しても有効に被切断物を切断することができる様にする為、スプリング等の部品を使用せずに製造しやすく故障の心配が少ないハサミを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するために、請求項1記載の本発明に係わるハサミは、柄部と刃部とを有する一対のハサミ構成部材と、これら一対のハサミ構成部材を軸支する軸部とを有し、軸部を回転中心にした開閉操作にて刃部にて被切断部材を切断するハサミであって、上記一対のハサミ構成部材の刃部が閉状態において互いに圧接状態となる様、軸部から柄部方向の柄部に突起部材を有していることを特徴とするものである。
【0022】
即ち、ハサミ構成部材の刃部が開状態では突起部材の圧接度が低いことを特徴としている。
【0023】
また、上記突起部材は、くさび構造であることを特徴としている。
【0024】
更に上記突起部材は、一方の柄部に取り付けられた事を特徴としている。
【0025】
又は、上記突起部材が、両方の柄部に取り付けられた事を特徴としている。
【0026】
請求項6記載のハサミは、子供用のハサミとして使用される。
【0027】
又、請求項7記載のハサミは家庭用のハサミとして使用される。
【発明の効果】
【0028】
請求項1記載の本発明に係わるハサミは、柄部と刃部とを有する一対のハサミ構成部材と、これら一対のハサミ構成部材を軸支する軸部とを有し、軸部を回転中心にした開閉操作にて刃部にて被切断部材を切断するハサミであって、上記一対のハサミ構成部材の刃部が閉状態において互いに圧接状態となる様、軸部から柄部方向の柄部に突起部材を有していることから、切断作業を行なう場合に、一対の刃部が互いに摺りあうように噛み合って、右利きの人も左利きの人も不都合なく適切に紙や布等の柔らかな素材からなる被切断物を切断することができる。
【0029】
従って、メーカーは特に左利き用のハサミを製造する必要がなく、又、ユーザーも左利き用のハサミを購入する必要がないことから、メーカー側の製造コスト及びユーザー側の事務経費を低減することができる。
【0030】
又、ハサミ構成部材の刃部が開状態では突起部材の圧接度が低い為、使い勝手が良いものが提供できる。
【0031】
上記突起部材はくさび構造である事から、スプリング等の可動物でなく、スプリングの耐久性という問題が発生しない。
【0032】
更に上記突起部材は、一方の柄部に取り付けたり、両方の柄部に取り付けたりする事ができ、ハサミのデザインに余裕度が与えられる。
【0033】
従って、請求項6記載のハサミは、子供用のハサミとして使用されたり、請求項7記載のハサミは家庭用のハサミとして使用される事が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】右手ハサミの構造と発生する力の方向
【図2】左手ハサミの構造と発生する力の方向
【図3】右手ハサミを左利きの人が利用した場合の力の方向
【図4】本発明の実施例に係る力の方向
【図5】本発明の実施例に係るハサミの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態について説明する。
本実施の形態に係るハサミ11は、図5に示すように、柄部12,13と刃部14,15とを有する一対のハサミ構成部材16,17と、これら一対のハサミ構成部材16,17を軸支する軸部18とを有するハサミ11であって、上記一対のハサミ構成部材16,17の刃部14,15が互いに圧接状態を維持できるように、突起部材19、20により付勢されている。また、上記突起部材19、20は、図に示すように、上記一対の刃部14,15を、刃部14,15の厚さ方向において互いに圧接させる様、突起構造となっている。
【0036】
また、上記突起部材19、20は、図に示すように、上記軸部18に対して柄部側に配置されている。
【0037】
また、図に示すように、上記突起部19,20はくさび構造であって、くさび構造は、支 軸より柄側に1mm位置に、高さ0.1mm程度に形成されている。また、上記ハサミ11は、事務用品として販売されるハサミ11であって、紙を切断しうるように形成されている。
尚、くさび構造は16、17のどちらか一方に配置されていても、又16、17の両者に配置されていても構わないが、両者に配置されている事が好ましい。
【0038】
その結果、本発明に係わるハサミは、柄部と刃部とを有する一対のハサミ構成部材と、これら一対のハサミ構成部材を軸支する軸部とを有し、軸部を回転中心にした開閉操作にて刃部にて被切断部材を切断するハサミであって、上記一対のハサミ構成部材の刃部が閉状態において互いに圧接状態となる様、軸部から柄部方向の柄部に突起部材を有していることから、切断作業を行なう場合に、図4に示す様に一対の刃部が互いに摺りあうように噛み合って、右利きの人も左利きの人も不都合なく適切に紙や布等の柔らかな素材からなる被切断物を切断することができる。
【0039】
更に、左利きの人が右利き用のはさみを使った際、切断線が見えづらいという問題点があり、家庭用、子ども用又は事務用ハサミでは、ポリカーボネートの様な透明な材質を利用することで、切断線が見える様にする事が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、柔らかな素材を切断するために使用されるハサミ、即ち、事務用品としてのハサミ、学校教育に使用される教材用のハサミ又は家庭用のハサミ等に広く適用可能である。
【実施例】
【0041】
本発明をアクリル素材にて作成し、左利きの被験者1名、右利きの被験者2名が使用し、それぞれ右手、左手にて用紙の切断を行った結果、問題なく用紙を切断できた。
【符号の説明】
【0042】
11 ハサミ
12 柄部
13 柄部
14 刃部
15 刃部
16 ハサミ構成部材
17 ハサミ構成部材
18 軸部
19 突起部材
20 突起部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柄部と刃部とを有する一対のハサミ構成部材と、これら一対のハサミ構成部材を軸支する軸部とを有し、軸部を回転中心にした開閉操作にて刃部にて被切断部材を切断するハサミにおいて、上記一対のハサミ構成部材の刃部が閉状態において互いに圧接状態となる様、軸部から柄部方向の柄部に突起部材を有していることを特徴とするハサミ。
【請求項2】
ハサミ構成部材の刃部が開状態では突起部材の圧接度が低いことを特徴とする請求項1記載のハサミ。
【請求項3】
上記突起部材は、くさび構造であることを特徴とする請求項2記載のハサミ。
【請求項4】
上記突起部材は、一方の柄部に取り付けられた事を特徴とする請求3記載のハサミ。
【請求項5】
上記突起部材は、両方の柄部に取り付けられた事を特徴とする請求3記載のハサミ。
【請求項6】
上記ハサミは、子供用のハサミであることを特徴とする請求項1,2,3及び4又は5記載のハサミ。
【請求項7】
上記ハサミは家庭用のハサミであることを特徴とする請求項1,2,3及び4又は5記載のハサミ。
【請求項8】
上記ハサミは事務用のハサミであることを特徴とする請求項1,2,3及び4又は5記載のハサミ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−161462(P2012−161462A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23842(P2011−23842)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(710013099)
【Fターム(参考)】