説明

利用加工性に優れた高耐食性防錆塗料用ペースト、高耐食性防錆塗料、該塗料を塗装した高耐食鋼および鋼構造物

【課題】 優れた耐食性・防錆性と同時に、優れた溶接性、溶断性等の利用加工性を併せ持つ高耐食性防錆塗料用ペースト、高耐食性防錆塗料及び該塗料を塗装した高耐食性鉄鋼材料、鋼構造物を提供する。
【解決手段】 分散剤を含有する有機溶媒中に、平均粒径0.05〜200μmのZn合金粒子が顔料として分散されており、該Zn合金粒子は、質量%で、Mg:0.01〜30%を含有し、かつ該表面に物理的破砕面および/または長さ0.01μm以上のき裂もしくは深さ0.01μm以上のき裂を有するものであることを特徴とする、利用加工性に優れた高耐食性防錆塗料用ペースト。前記分散剤が、飽和脂肪酸アミドおよび/または不飽和脂肪酸アミドを含み、有機溶媒に対し、質量%で、飽和脂肪酸アミドおよび不飽和脂肪酸アミドを0.01〜10%含有することを特徴とする。該ペーストを用いた塗料、該塗料を塗装した鉄鋼材料および鋼構造物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用加工性に優れた高耐食性防錆塗料用ペースト、高耐食性防錆塗料、高耐食性防錆塗料塗装鋼材および鋼構造物に関し、特に分散剤を混合させた塗料を各種鉄鋼材料表面に塗布したときに著しく優れた犠牲防食作用と溶接性、溶断性等の優れた利用加工性を併せ持つ高耐食性防錆塗料用ペースト、高耐食性防錆塗料、高耐食性防錆塗料塗装鋼材および鋼構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼材料の腐食対策として、不可避的不純物を含有するZn金属粒子を顔料とし有機材、無機材をビヒクル(液状バインダー成分)とした構成のジンクリッチペイントが多用されている。ジンクリッチペイントは主に重防食塗装の下塗りに用いられるが、その防食機構の特徴は塗膜に含まれるZn金属粒子の犠牲防食作用である。しかし、ジンクリッチペイントの塗膜の防食能は、前述のようにZn金属粒子の犠牲防食作用に強く依存することから、使用環境によっては、亜鉛の消失速度が大きく鉄鋼材料に対する保護作用が長続きしない場合がある。
【0003】
そこで、塗膜中のZn金属粒子の含有量を高めたり、膜厚を厚くしたりする等の対策がとられているが、鋼材面との密着性の低下や塗膜のヒビ割れ或いはダレなどが起こりやすくなり、塗膜の防食性能と物理的性質や施工性を両立しがたく万全とはいえない。
【0004】
このような状況にあって、従来のジンクリッチペイントの長所を保持し、更に長期にわたり犠牲防食作用を発揮する高性能ジンクリッチペイントの開発が期待され、これまでにも各種の提案がなされてきた。例えば、特許文献1から、特許文献4では、Zn金属粒子の他にZn−Mg合金粒子またはZn−Mg−Al合金粒子を含有させた有機系ジンクリッチペイントに関する発明が、また特許文献5では、Zn金属粒子の他にZn−Mg合金粒子とMn金属粒子を含有させた有機系ジンクリッチペイントに関する発明が提案された。
【0005】
このような状況の中、これらの有機系塗料の紫外線や水分、酸素などの影響を受ける複合環境では劣化し、比較的短期間でのメンテナンスが必要になる等の欠点を有しない無機系塗料の防食性能向上を目的に、これまでにいくつかの提案がなされてきた。例えば、本発明とは目的が異なるが、特許文献6では、溶接・溶断時塗装劣化の抑制を目標にZn金属粒子とMgまたはMg合金の混合物を含有する塗料組成物に関する発明が提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開昭59−052645号公報
【特許文献2】特開昭59−167249号公報
【特許文献3】特開平1−311178号公報
【特許文献4】特開2001−164194号公報
【特許文献5】特開昭59−198142号公報
【特許文献6】特開昭61−213270号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1から5は有機系塗料であり、紫外線や水分、酸素などの影響を考慮する必要のある複合環境では劣化することを考慮すると、比較的短時間でメンテナンスが必要になるという副次的な問題が残されている。また、特許文献6は溶断ヒュームが多くなること、ブローホール発生頻度が大きいという問題が生じ、溶接、溶断時の作業効率が低下する問題が残されており、更なる改善が求められていた。
【0008】
そこで、本発明は、飽和脂肪酸アミドまたは不飽和脂肪酸アミドをペースト中に混合し無機系または有機系のバインダーと組み合せることで、優れた耐食性・防錆性を発揮し、さらに優れた溶接性、溶断性等の利用加工性を併せ持つ高耐食性防錆塗料用ペースト、高耐食性防錆塗料及び該塗料を塗装することで高耐食性・防錆性が付与された鉄鋼材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、種々検討の結果、分散剤を含有する有機溶媒中に、平均粒径0.05〜200μmのZn合金粒子を顔料として分散し、かつ、前記分散剤として、飽和脂肪酸アミドおよび不飽和脂肪酸アミドの一方又は両方をペースト中の有機溶媒に対し、質量%で、0.01〜10%を含有すると、優れた耐食性、防錆性に加え、優れた利用加工性を併せ持つことを新たに見出し、本発明の基本を構築するに至った。
【0010】
さらに、前記利用加工性に優れた高耐食性防錆塗料中のZn合金粒子を詳細検討し、Zn合金粒子中に質量%で、Al:0.01〜10%、Si:0.01〜3%の1種または2種を含有することで、さらなる防錆性、利用加工性が発現することを見出した。
【0011】
さらに、飽和脂肪酸アミドまたは不飽和脂肪酸アミドの一方又は両方を分散剤として含む有機溶媒がトルエンあるいはキシレンである場合に、安定して優れた耐食性、防錆性および利用加工性を併せ持つことを見出したものである。前記したZn合金粒子を含有する高耐食性防錆塗料は、そのままでも優れた耐食性・防錆性をもたらすが、さらなる検討の結果、従来から顔料として一般的に用いられているZn金属粒子と混合し、塗料調合後、鋼板表面などの塗装に用いたものは、Zn金属粒子を単独使用し、鋼板表面などの塗装に用いたものと比較して著しく優れた耐食性・防錆性及び優れた利用加工性を併せ持つことを見出した。
【0012】
一般に塗膜厚に関し、耐食性・防錆性と、溶接性、溶断性等の利用加工性は相反する性質であり、耐食性、防錆性を向上させようと塗膜厚を増加させると、利用加工性は低下する。一方、利用加工性を向上させようと塗膜厚を低下させると耐食性、防錆性は著しく低下する。本発明では、塗膜厚2μm〜50μmの薄膜塗装において優れた耐食性、防錆性を発揮しつつ、さらに、優れた溶接性、溶断性を発揮することを見出した。
【0013】
本発明は以上の検討の結果もたらされたもので、その具体的な課題解決の手段は、以下のとおりである。
(1)分散剤として、有機溶媒に対し、質量%で、飽和脂肪酸アミドおよび不飽和脂肪酸アミドの一方又は両方を0.01〜10%含有し、かつ、当該有機溶媒中に、平均粒径0.05〜200μmのZn合金粒子が顔料として分散されており、該Zn合金粒子は、質量%で、Mg:0.01〜30%を含有し、残部Zn及び不可避的不純物からなり、かつ該Zn合金粒子表面に物理的破砕面および/または長さ0.01μm以上のき裂もしくは深さ0.01μm以上のき裂を有するものであることを特徴とする、利用加工性に優れた高耐食性防錆塗料用ペースト。
(2)前記有機溶媒がトルエンおよび/またはキシレンであることを特徴とする、前記(1)に記載の利用加工性に優れた高耐食性防錆塗料用ペースト。
(3)更に、前記Zn合金粒子が質量%で、Al:0.01〜30%、Si:0.01〜3%の1種又は2種を含有することを特徴とする前記(1)または(2)に記載の高耐食性防錆塗料用ペースト。
(4)前記Zn合金粒子が、物理的破砕面にMg固溶相およびZn−Mg金属間化合物を有することを特徴とする前記(1)〜(3)の何れかに記載の高耐食性防錆塗料用ペースト。
(5)前記Zn−Mg金属間化合物が、MgZn2、Mg2Zn11、Mg2Zn3、MgZnまたは、Mg7Zn3のうち、1種以上を含むことを特徴とする前記(4)に記載の高耐食性防錆塗料用ペースト。
(6)前記Zn合金粒子が、非球状多面体で、面数が2面以上であることを特徴とする前記(1)〜(5)の何れかに記載の高耐食性防錆塗料用ペースト。
(7)前記(1)〜(6)の何れかに記載の高耐食性防錆塗料用ペーストを用いた、高耐食性防錆塗料であって、前記Zn合金粒子を乾燥塗膜換算の質量%で、30%以上85%以下含有することを特徴とする、高耐食性防錆塗料。
(8)前記Zn合金粒子に加え、さらに平均粒径0.05〜50μmのZn及び不可避的不純物からなるZn金属粒子を分散させた高耐食性防錆塗料であって、質量%で、(前記Zn合金粒子量):(前記Zn金属粒子量)の比の値を1/xとしたとき、xが300.0以下であることを特徴とする前記(7)に記載の高耐食性防錆塗料。
(9)質量%で、前記Zn合金粒子と前記Zn金属粒子の混合粒子の合計を100%としたとき、Mgの含有量が0.01〜30%未満であることを特徴とする前記(8)に記載の高耐食性防錆塗料。
(10)前記高耐食性防錆塗料のバインダーが、無機系バインダーまたは有機系バインダーであることを特徴とする、前記(7)〜(9)の何れかに記載の高耐食性防錆塗料。
(11)鋼材面に前記(7)〜(10)の何れかに記載の高耐食性防錆塗料が塗装された鉄鋼材料であって、塗装厚みが2〜50μmであることを特徴とする高耐食性鉄鋼材料。
(12) 前記(11)に記載の高耐食性鉄鋼材料を一部又は全部に有することを特徴とする鋼構造物。
【発明の効果】
【0014】
本発明の高耐食性防錆塗料用ペースト、高耐食性防錆塗料、高耐食性防錆塗装鋼板、鋼構造物は、相反する性質となる耐食性、防錆性と溶接性、溶断性の良利用加工性の両者を併せ持つことが可能となるため、その産業上の効果は計り知れない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明における高耐食性防錆塗料用ペーストに用いられるZn合金粒子では、Mg:0.01〜30%を含有し、残部Zn及び不可避的不純物からなり、物理的破砕面および/または、長さ0.01μm以上のき裂もしくは深さ0.01μm以上のき裂を有し、平均粒径が0.05〜200μmであることを特徴とする。最大径と最小径のアスペクト比(最大径/最小径)の平均値が1〜1.5であると好ましい。
【0016】
平均粒径が0.05〜200μmで、物理的破砕面および/または長さ0.01μm以上のき裂、もしくは深さ0.01μm以上のき裂を有するZn合金粒子を作製する方法としては、ガスアトマイズ法またはミスト法により作製したZn合金粒子同士を、含水率0.8質量%以下のトルエンまたはキシレン中に添加しスラリー状としたものを、対向するジェット噴流とし、互いに衝突させる方法によって細粒化することで製造できる。また、前記ジェット噴流を固体に衝突させる方法でも製造できる。当該方法を用いることにより、最大径と最小径のアスペクト比の平均値を1〜1.5とすることもできる。
【0017】
本発明ではZn合金粒子中のMg含有量は、Mg:0.01〜30%とすることが必要である。物理的破砕面を有し、かつ平均粒径が0.05〜200μmの場合に、Mg0.01%未満でも物理的破砕面を有しない同量のMgを添加したZn合金粒子に比較して耐食性・防錆性の有意な向上は認められるが、物理的破砕面および/または、き裂との組み合わせによってもたらされると見られる著しい耐食性・防錆性の向上効果が顕著には得られない。すなわち、物理的破砕面および/または、き裂を有しMgを0.01%以上添加したZn合金粒子の相乗効果による著しい耐食性・防錆性の向上効果が本発明の基本技術である。一方Mgを30%を超えて添加すると、前記効果が飽和するばかりか、経済性および製造性を阻害することから、Mgの添加量は0.01%以上30%以下とした。より好ましい添加量の最適値は平均粒径によって変化し、一般にスプレー塗装において最適と考えられる平均粒径0.2〜30μmの場合には、下限は0.1%とし、上限は20%とすることが耐食性・防錆性の向上効果、経済性の観点から好ましい。さらに、製造安定性、経済性、耐食性を考慮すると0.2%〜15%が好ましい。なお、本発明でいう物理的破砕面とは、球状の粒子の一部が欠落した形状を指す。Zn合金粒子が物理的破砕面を有することにより、後述のように耐食性・防錆性の向上効果が顕著に得られる。
【0018】
また、本発明でいうき裂とは、粒子表面上に存在する長さ0.01μm以上もしくは表面からの深さ0.01μm以上の割れを意味する。き裂は長さ及び深さで0.01μm未満では十分な耐食性・防錆性の向上効果が得られず、0.01μm以上の長さもしくは深さを必要とする。
【0019】
Zn合金粒子の平均粒径はスプレー塗装時に於ける付着性確保のため、0.05μm以上とし、刷毛塗り時の作業安定性確保のため、200μm以下とする。塗装安定性を考慮すると0.2〜50μmが好ましい。また、塗膜密着性を考慮すると0.2〜30μmが好ましい。
【0020】
さらに本発明では、前記構成の粒子にAl:0.01〜30%、Si:0.01〜3%の1種又は2種を含有することができる。Alは物理的破砕面および/または、き裂を有する粒子に0.01%以上添加することで、さらに防錆性が向上する。Al添加量を約0.01%以上とすることで防錆性に加えて、粒子の自己腐食に対する耐食性が著しく向上するが、30%を超えて添加しても効果が飽和するばかりか、合金粒子に物理的破砕面および/または、き裂を形成することが困難となることから、その添加量は0.01〜30%とした。さらに製造安定性、耐食性の観点から0.5〜20%が好ましい。さらに、経済性を考慮すると、1.0〜10%が好ましい。Siも同様に物理的破砕面および/または、き裂を有する粒子に0.01%以上添加することでさらに防錆性が向上するがその効果は3%を超えて添加すると逆に低下する事から、その添加量は0.01〜3%とした。製造安定性、耐食性の観点から0.5〜3%が好ましい。さらに、経済性を考慮すると、1.0〜1.5%が好ましい。
【0021】
さらに本発明の物理的破砕面および/または、き裂を有するZn合金粒子では、破砕部および/または、き裂を含む粒子の表面にMg固溶相及びZn−Mg金属間化合物を有することでさらに耐食性と防錆性を向上することが可能である。Mg固溶相とZn−Mg金属間化合物を表面に露出することで耐食性と防錆性が向上する理由については不明点が多いが、これらの相のいずれか一方以上が破砕面および/または、き裂に共存することでこれらの特性向上が特に安定に得られることを見いだしており、物理的破砕面および/または、き裂に存在することで、これらの相の化学的性質がより耐食性および防錆性に好ましいものに変化することを実験的に確認している。Mg固溶相及びZn−Mg金属間化合物はX線回折法または、エネルギー分散型X線分析装置付き走査電子顕微鏡観察により、物理的破砕面またはき裂表面のMgとZnの組成比分析によって、同定することができる。
【0022】
さらに、本発明では前記金属間化合物相をMgZn2、Mg2Zn11、Mg2Zn3、MgZnまたは、Mg7Zn3のうち、1種以上を含むことで、前記の耐食性と防錆性はより一層向上させることが可能である。MgZn2、Mg2Zn11、Mg2Zn3、MgZnまたは、Mg7Zn3はX線回折法または、エネルギー分散型X線分析装置付き走査電子顕微鏡観察による物理的破砕面またはき裂表面のMgとZnの組成比分析によって、同定することができる。
【0023】
以上のように、本発明の物理的破砕面および/または、き裂を有するZn合金粒子は一面以上の物理的破砕面および/または、き裂の付与と同時に合金粒子の化学組成を制御することで耐食性および防錆性を従来になく向上することが可能であるが、さらにその破砕面を有する粒子の形状を非扁平の球状に近い、一つの閉じた稜線で囲まれる平面または曲面を1面とした、多面体(き裂は面として含まない)であって、該面数が2面以上有する形状とすることで、一層優れた耐食性と防錆性および塗装性を同時に得ることができる。耐食性や防錆性向上の観点からは、物理的破砕面数は多いほど好ましいが、その破砕面数が1面以下では、現時点で理由は不明であるが、前記効果向上の効果のばらつきが大きくなる。さらに前記した形状範囲は原料としてのZn合金粒子を規定するものであり、実際に塗料に混ぜて使用するまでに、空気中の水分等を吸収して、これらのZn合金粒子が凝集し結合した場合や、塗膜として鋼材上で硬化した場合のそれぞれの粒子が結合した場合等のZn合金粒子の形状までも規定するものではない。
【0024】
本発明の分散剤であるが、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ベヘン酸アミド等の飽和脂肪酸アミド、もしくはオレイン酸アミド、エルカ酸アミド等の不飽和脂肪酸アミドの一方又は両方を、有機溶媒に対し、0.01〜10%添加することで沈降・凝集防止効果を発揮する高耐食性防錆塗料用ペーストが得られ、このペーストを用いた塗料を鋼材に塗布すると、後述のように塗膜厚が2〜50μmと薄手であっても優れた耐食性・防錆性が達成でき、従来にない有利な効果が得られる。すなわち、この効果によって、耐食性・防錆性を犠牲にすることなしに、後述のように溶接性、溶断性等の利用加工性を付与できる。なお、分散剤として、前記飽和脂肪酸アミドまたは、不飽和脂肪酸アミド以外に、シリカ等の他の分散剤を含んでも問題ないが、飽和脂肪酸アミドおよび不飽和脂肪酸アミドの一方又は両方が、前記ペースト中の有機溶媒に対し、0.01〜10%添加することで、前記有利な効果が得られる。この理由については不明な点が残されているが、前記飽和脂肪酸アミド及び不飽和脂肪酸アミドの一方又は両方を所定量含む分散剤は網目状構造をなして、本発明で用いるZn合金粒子の沈降・凝集を防ぐかもしくは、該Zn合金粒子に個別に付着し沈降・凝集を防ぐ役割を果たすが、これら分散剤と接触することで該Zn合金粒子の活性度が向上するという、該Zn合金粒子の高耐食防錆効果を顕著に増幅させ、耐食性・防錆性が向上すると推定している。前記分散剤は、0.01%未満では、沈降・凝集防止効果及び耐食性・防錆性の向上効果は得られず、さらに10%を超えて添加すると、逆に耐食性が低下する。前記分散剤は1種の分散剤のみで使用しても2種以上を混合して使用しても沈降防止、耐食性に大きく影響しない。
【0025】
さらに、本発明の有機溶媒であるが、トルエンおよび/またはキシレンにすることで更に優れた犠牲防食効果と長期の防錆効果を得ることができる。理由については不明な点が残されているが、トルエン、キシレン中に極微量含まれる水分が塗料中に均一に分散されることによると推定している。トルエンおよび/またはキシレン以外では、ガソリン、灯油、軽油に含まれるオクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン等のアルカン炭化水素あるいは、パラフィン類のうちの1種または2種以上の混合物でも同じ効果が得られる。
【0026】
本発明における前記した破砕面および/または、き裂を有するZn合金粒子は、利用に際して塗膜中に30%以上含有することが必要である。30質量%未満では耐食性等の効果が得られるまでに到らない。上限は、特に規定するものではないが、85%を超えるとバインダー成分が少なくなり過ぎ、塗膜に欠陥が生じ易くなるため、これ以下が望ましい。なお、塗膜中のバインダー成分としては、成膜性を確保するために少なくとも15%とすることが好ましい。さらに、前記Zn合金粒子を30%以上含有していれば、それ以外の粉末粒子を添加しても良く、例えば(意匠性を目的とした)Al、ステンレス等の金属粉末や酸化チタン、酸化亜鉛等の酸化物粉末、タルク、石粉等の体質顔料を含有していても良い。
【0027】
さらに本発明における前記した破砕面および/または、き裂を有するZn合金粒子は、利用に際して平均粒径0.05〜50μmのZn金属粒子を含有し、質量%で、前記Zn合金粒子量と前記Zn金属粒子量の比の値を1/xとしたとき、xを300以下で混在させて使用することができる。ここでいうZn金属粒子とは、Znおよび不可避的不純物からなる粒子を意味し、該Zn金属粒子と前記した破砕面および/または、き裂を有するZn合金粒子を混合して塗料顔料に用いることで、従来のようにZn金属粒子を単独使用した顔料に比較して著しく優れた耐食性・防錆性をもたらすが、Zn合金粒子量:Zn金属粒子量の質量%の比の値を1/xとしたとき、xが300.0超では、耐食性・防錆性の向上に及ぼす、Zn合金粒子の効果が十分に発揮されない。したがって、x値を300.0以下とした。さらに耐食性、経済性を考慮すると、x値は1〜120が好ましい。さらに混合安定性を考慮するとx値は1〜30が好ましい。また、本発明では混合に用いるZn金属粒子の平均粒径を0.05〜50μmとする。前記した本発明における耐食性・防錆性の向上の効果は、混合するZn金属粒子の平均粒径が0.05〜300μmの範囲で認められるが、工業的に安定かつ安価に供給可能な平均粒径であることから、Zn金属粒子の平均粒径を0.05〜50μmとした。
【0028】
一方、前記した本発明の破砕面および/または、き裂を有するZn合金粒子と前記Zn金属粒子の混合効果は、おおよそ全防錆顔料中に含まれるMgの含有量でも整理することが可能で、質量%で、本発明の物理的破砕面および/または、き裂を有するZn合金粒子と前記Zn金属粒子の混合粒子の合計を100%としたとき、Mgの含有量を0.01〜30%未満として使用することができる。さらに付け加えると破砕面および/または、き裂を有するZn合金粒子とZn金属粒子の混合効果が最も顕著な範囲である0.1〜20%とすることが耐食性・防錆性の向上の効果安定性からは好ましく、加えて経済性を考慮すると0.5〜15%とすることがより好ましいが、目的に応じて適宜適用できる。
【0029】
なお、ペースト中のZn合金粒子または、Zn合金粒子およびZn金属粒子の混合粒子の割合は、いずれの場合も、取り扱いのしやすさから、質量%で当初60〜95%に調整することが多いが、これらのペーストを用いた塗料を作製するために、Zn合金粒子または、Zn合金粒子およびZn金属粒子の混合粒子を、塗料作製の度に、順次、払い出すと、最終的にはペースト中のZn合金粒子または、Zn合金粒子およびZn金属粒子の混合粒子の割合は、当然0%まで減少する。したがって、ペースト中のZn合金粒子または、Zn合金粒子およびZn金属粒子の割合の範囲については、特に指定する意義はない。
【0030】
ただし、Zn合金粒子または、Zn合金粒子およびZn金属粒子の混合粒子のペースト中の割合は、経済性の観点から、1%以上必要であり、また、当該粒子の分散の必要性から、上限は99%が望ましい。さらに、経済性または取り扱い性を重視する場合は、5%以上95%以下の範囲が望ましい。なお、ペースト中のZn合金粒子または、Zn合金粒子およびZn金属粒子の割合が0%超〜99%の範囲内で、変化しても、その変化によって、当該ペーストを用いて作製した塗料の、鋼材への耐食性・防錆性付与能力が、影響を受けることは、ほとんどない。
【0031】
次に、本発明において塗料のバインダーの種類は、特に規定するものではなく、無機系、有機系いずれのバインダー(樹脂)でも利用できる。本発明の範囲を限定するものではないが、その例を挙げると無機系では、アルカリシリケートやアルキルシリケート等が、有機系ではエポキシ系樹脂、変性エポキシ樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂等が適宜適用できる。また、硬化剤の配合タイプも、1液硬化タイプや2液硬化タイプ等の複数液による硬化タイプがその目的に応じ適宜適用できる。さらに硬化方法も、常温硬化、加熱硬化、UV硬化、電子線硬化、水中硬化等がそれぞれの目的に応じて適宜適用できる。
【0032】
本発明の高耐食性防錆塗料が対象とする鋼材および鋼構造物については特に規定はないが、本発明例の耐食性・防錆性及び利用加工性を考慮し塗膜厚さを2〜50μmと規定した。本発明の塗料を鋼材および鋼構造物の表面に塗布して耐食性や防錆性を得るためには塗装厚みを2μm以上とすることが必要である。一方、塗膜厚が50μmを越えると、塗装膜が表面にある状態で鋼材を溶接する際に、厚い塗膜がブローホールの発生原因となって、溶接部の健全性を損なうことで溶接性を劣化させ、また、溶断の際は、厚い塗膜がヒュームの発生原因となって、作業環境を悪化させることで、溶断性を劣化させる。したがって、溶接性または溶断性等の利用加工性を確保するため、塗膜厚を50μm以下とした。
【0033】
また、本発明が対象とする鉄鋼材料および鋼構造物とは、本発明の高耐食防錆塗料が厚さで2μm以上50μm以下塗装されたものであって、鋼材化学組成、形状や構造、あるいは他の防食手段が併用される表面を有するものを含み、いずれを選択したとしてもそれをもって本発明の範囲を逸脱するものではない。なお、塗装作業性を考慮すると、本発明の高耐食防錆塗料の厚さは、5〜30μmが好ましい。さらに、経済性、利用加工性の観点から、7〜20μmが好ましい。本発明の技術的範囲を規定するものではないが、塗装対象として例を列挙すると、鋳鉄、炭素鋼、特殊鋼、ステンレス鋼、耐食鋼、溶接継手等が、形状としては厚板、薄板、鋼管、棒鋼、等々およびこれらを加工して得られる形状が、構造としては、(1)自動車や船舶等の内燃機関排気系統、ボイラ排気系統、低温熱交換機、焼却炉床等の高温湿潤腐食環境、(2)橋梁、支柱、建築内外装材、屋根材、建具、厨房部材、各種手すり、ガードレール、各種フック、ルーフドレイン、鉄道車両等の大気腐食環境、(3)各種貯蔵タンク、支柱、杭、矢板等の土壌腐食環境、(4)缶容器、各種容器、低温熱交換機、浴室部材、自動車構造部材等の結露腐食環境(冷凍、湿潤、乾燥が複合する腐食環境を含む)、(5)貯水槽、給水管、給湯管、缶容器、各種容器、食器、調理機器、浴槽、プール、洗面化粧台等の水道水腐食環境、(6)各種容器、食器、調理機器等の飲料水腐食環境、(7)各種鉄筋構造物、支柱等のコンクリート腐食環境、(8)船舶、橋梁、杭、矢板、海洋構造物等の海水腐食環境等々が、さらに、他の併用できる防食手段としてはめっき、塗装、電気防食等々がある。
【実施例】
【0034】
以下に、実施例を用いて本発明を説明する。
【0035】
表1〜11のそれぞれペーストの内容の欄に示す条件で塗料用ペーストを作製した。Zn合金粒子は、表1の比較例5〜8を除き、ガスアトマイズ法により作製したZn合金粒子を、含水率0.8質量%以下のトルエンまたはキシレン中に添加しスラリー状としたものを、対向するジェット噴流とし、互いに衝突させる方法によって細粒化し製造した、表面に物理的破砕面および/または長さ0.01μm以上のき裂もしくは深さ0.01μm以上のき裂を有するZn合金粒子を、使用した。ここで、Zn合金粒子および後述のZn金属粒子の平均粒径を求めるにあたって、レーザー回折散乱法による測定方法を採用した。したがって、平均粒径は、球相当直径として評価している。表1の比較例5〜8に記載のZn合金粒子については、ガスアトマイズ法又はミスト法によって製造した。
【0036】
また、電解放射型電子銃式の走査電子顕微鏡観察で、それぞれ無作為に抽出した50〜100個のZn合金粒子の形状を観察し、それぞれの粒子表面に物理的破砕面または、長さ0.01μm以上のき裂もしくは深さ0.01μm以上のき裂を有することを確認した。一部のZn合金粒子では、表面に物理的破砕面および、長さ0.01μm以上のき裂もしくは深さ0.01μm以上のき裂を有していた。表中の「破砕面、き裂の有無」において、◎は破砕面およびまたはき裂有り、×は破砕面およびき裂なし、を意味する。
【0037】
Zn合金粒子の面数は、当該走査電子顕微鏡観察において決定した。当該観察では、それぞれの粒子の片面しか見ていないが、影になっている反対側にも、同様の形状が連続的、面対称的に存在しているものと仮定して面数を判断し、その平均値を有効数字1桁で表した。
【0038】
本発明例では、各ペーストで用いたZn合金粒子をジェット噴流として互いに衝突させて細粒化する前に、粉末X線回折法解析によって、Zn合金粒子に含まれる固溶体または、金属間化合物の種類を確認しておき、次に、前記細粒化した後に、エネルギー分散型X線分析装置付き走査電子顕微鏡観察によって、視野内で観察しやすい粒子の物理的破砕面または、長さ0.01μm以上のき裂もしくは深さ0.01μm以上のき裂表面を10箇所選んで分析し、そのMgとZnの組成比分析の結果と、前述の粉末X回折法による測定結果から、それぞれの表面の固溶体および金属間化合物の存在の有無および、金属間化合物の種類を同定した。調査した各10箇所の表面のうち、1箇所でも固溶体および金属間化合物の存在が認められれば、固溶体および金属間化合物が「有」と判断し、そうでなければ「無」とした。また、金属間化合物の種類については、X線回折で、MgZn2、Mg2Zn11、Mg2Zn3、MgZnまたは、Mg7Zn3のうち、1種以上のZn−Mg金属間化合物の存在が確認され、かつ、X線回折で確認した当該金属間化合物のうち1種以上のMgとZnの原子組成比が、エネルギー分散型X線分析装置付き走査電子顕微鏡による、物理的破砕面または、き裂表面の分析においても、1箇所でも成分誤差10%以内で確認できた場合に、前記Zn−Mg金属間化合物の存在が確認できたとみなし、「有」とし、そうでなければ「無」とした。
【0039】
表1、7〜11では、前記Zn合金粒子に加え、Zn金属粒子を混合したものを使用した。
【0040】
有機溶媒には、トルエン、キシレン、トルエンとキシレンの質量比1:1の混合物を用い、有機溶媒中に分散剤を各種濃度で添加したものを調整した。分散剤として、各表に記載のものを使用した。
【0041】
前記方法で調整した高耐食性防錆塗料用ペーストを塗料調合した。なお、塗料調合は一般的な方法で実施し、バインダーは市販のアルカリシリケートあるいはアルキルシリケート樹脂の無機系バインダー、または市販の4種類の有機系バインダーを使用した。刷毛塗装またはスプレー塗装により、鋼板に調合した塗料を塗布した。
【0042】
評価試験は腐食評価試験と利用加工性評価を実施した。
【0043】
腐食試験評価は、JIS K 5600に準拠した塩水噴霧試験(5%NaCl噴霧、35度)を実施した。塗装試験片には、サイズが150×70×3.2mmの試験片を用い、その試験片下部には、カッターでXカットを挿入した。腐食試験の評価は、試験片表面からの赤錆発生時間で評価することとし、赤錆発生時間が900時間未満で赤錆が発生した場合は、耐食性不良と評価し、表中×で表示した。また、赤錆発生時間が900以上1400時間未満の間の場合は、耐食性やや不良と評価し、表中△で表示した。また、赤錆発生時間が1400時間以上2000時間未満の間の場合は、耐食性良好と評価し、表中○で表示した。また、赤錆発生時間が2000時間以上の場合は、耐食性極めて良好と評価し、表中◎で表示した。
【0044】
また、利用加工性評価試験は、溶接時の耐ピット・ブローホール性および、溶断時の耐ヒューム性を実施した。
【0045】
耐ピット・ブローホール試験は、前記要件で塗装したt15w100−L500mm鋼板を準備し、T型溶接を実施した。溶接条件は、水平隅肉の自動炭酸ガス溶接で実施した。溶接材料は日鐵住金溶接工業(株)製のワイヤSM−1Fφ1.2mmを使用した。電流250A、電圧30V、溶接速度は800mm/min、ワイヤ突き出し25mm、ト−チ角度45°で1パス実施した。評価は溶接後の溶接金属表面の目視観察によるピット発生の有無及び、Vノッチを入れ、ハンマーで破断後の破断面のブローホール発生率で評価した。ここで、ブローホール発生率とは、破断面に対してほぼ垂直方向から、溶接金属部の視野を10倍で10視野ずつ観察し、画像解析装置で解析して求まる破断面内のブローホール面積率である。ブローホールは、その断面が、直径0.3mm以上の概略円形のものがブローホールであると認識できたので、その面積率をブローホール発生率としている。
【0046】
ピットについてもブローホールについても、溶接用試験片全長500mmのうち、両端50mmずつは評価から除外した。ピット発生有無、ブローホール発生率ともに、全長500mmの溶接用試験片を3試験片ずつ用意して求めた。
【0047】
評価基準として、溶接性では、溶接後の溶接金属表面にピットが発生した場合は×とした。また、ピット発生がなく、さらにブローホール発生率が8%以下◎、8〜10%○、10%以上を×とした。ピットが発生するまたは、ブローホール発生率が10%以上になると、溶接部として機械的健全性が保証できないからである。
【0048】
また、耐ヒューム性は、下向き自動炭酸ガス溶接、ワイヤSM−1F φ1.2mm日鐵住金溶接工業製、電流250A 電圧29V 溶接速度40cm/min、溶接時間30sec(ヒュ−ム吸引時間+30sec 計60sec)で溶接を実施し、JIS Z 3930に記載された方法で、ヒュームを捕捉し、捕捉した全ヒューム量で、ヒューム発生量とし、評価した。この方法は溶接によって発生するヒューム量を求めているが、溶接だけでなく、溶断時のヒューム発生量の少なさ、すなわち、耐ヒューム性も評価できる。溶断性として、耐ヒューム性評価は、ヒューム発生量400mg以下の場合◎、400〜450mgの場合○、450mg以上の場合は×とした。ヒューム発生量450mg以上では、作業環境が明らかに悪化し、局所排気装置が必要になるからである。
【0049】
表3、4、6、8、9、11に示す実施例では、Zn合金粒子としてAl、Siを含有する場合を示した。Al、Siを含有以外は、これらを含有しない実施例と同じ製造方法を用いている。
【0050】
表4〜6、9〜11に示す実施例では、Zn合金粒子表面のMg固溶層およびZn−Mg金属間化合物層の有無を評価するとともに、MgZn2、Mg2Zn11、Mg2Zn3、MgZnまたは、Mg7Zn3のうちいずれかひとつの有無を評価した。Mg固溶層およびZn−Mg金属間化合物層を有する実施例において、耐食性を向上させる効果が見られた。これ以外の表に示す実施例は、Mg固溶層及び金属間化合物層の有無評価を行わなかった。
【0051】
表5、6、10、11に示す実施例では、Zn合金粒子の面数の評価を行った。面数が多くなるほど、性能を向上させる傾向が見られた。これ以外の表に示す実施例においては、Zn合金粒子の面数の評価を行わなかった。
【0052】
表2〜6よりZn合金粒子は優れた耐食性・防錆性、耐ブローホール性、耐ヒューム性を示すことがわかる。さらに表7〜11においてZn合金粒子とZn金属粒子で作製された、乾燥塗膜換算の質量%で(Zn合金粒子量%):(Zn金属粒子量%)の比を1:xとした場合、xが300.0以下である場合、優れた耐食性・防錆性を示すことが分かる。
【0053】
なお、ペースト中のZn合金粒子およびZn金属粒子の合計した割合は、いずれの場合も、質量%で当初60〜95%に調整したが、これらのペーストを用いた塗料を作製するために、Zn合金粒子または、Zn合金粒子およびZn金属粒子の混合粒子を、塗料作製の度に、順次、払い出したため、最終的にはペースト中のZn合金粒子または、Zn合金粒子およびZn金属粒子の混合粒子の割合が0%超〜30%まで減少した。しかし、Zn合金粒子または、Zn合金粒子およびZn金属粒子の払い出しの度に、ペースト中のZn合金粒子または、Zn合金粒子およびZn金属粒子の割合が変化しても、その変化の度のペーストを用いて作製した塗料の、鋼材への耐食性・防錆性付与能力が、変動することは、見出されず、その影響は、無視できた。
【0054】
表1に比較例を示す。比較例1〜4はZn合金粒子のMg濃度が本発明範囲から外れ、比較例5〜8はZn合金粒子に破砕面とき裂がなく、比較例9〜12はZn合金粒子の平均粒径が本発明範囲から外れ、比較例13〜16は分散剤の含有量が本発明範囲から外れ、いずれも塗膜の品質が本発明レベルに達しなかった。比較例21はZn合金粒子に対するZn金属粒子の割合が本発明範囲を外れ、比較例22〜24は全金属粒子中のMg含有量が本発明範囲を外れ、いずれも塗膜の品質が本発明レベルに達しなかった。比較例17〜20は乾燥塗膜中の金属粒子が本発明範囲を外れ、比較例25〜28は塗膜厚みが本発明範囲を外れ、いずれも塗膜の品質が本発明レベルに達しなかった。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2−1】

【表2−2】

【表2−3】

【0057】
【表3−1】

【表3−2】

【表3−3】

【0058】
【表4−1】

【表4−2】

【表4−3】

【0059】
【表5−1】

【表5−2】

【表5−3】

【0060】
【表6−1】

【表6−2】

【0061】
【表7−1】

【表7−2】

【表7−3】

【0062】
【表8−1】

【表8−2】

【表8−3】

【0063】
【表9−1】

【表9−2】

【0064】
【表10−1】

【表10−2】

【0065】
【表11−1】

【表11−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散剤として、有機溶媒に対し、質量%で、飽和脂肪酸アミドおよび不飽和脂肪酸アミドの一方又は両方を0.01〜10%含有し、かつ、当該有機溶媒中に、平均粒径0.05〜200μmのZn合金粒子が顔料として分散されており、該Zn合金粒子は、質量%で、Mg:0.01〜30%を含有し、残部Zn及び不可避的不純物からなり、かつ該Zn合金粒子表面に物理的破砕面および/または長さ0.01μm以上のき裂もしくは深さ0.01μm以上のき裂を有するものであることを特徴とする、利用加工性に優れた高耐食性防錆塗料用ペースト。
【請求項2】
前記有機溶媒がトルエンおよび/またはキシレンであることを特徴とする、請求項1に記載の利用加工性に優れた高耐食性防錆塗料用ペースト。
【請求項3】
更に、前記Zn合金粒子が質量%で、Al:0.01〜30%、Si:0.01〜3%の1種又は2種を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の高耐食性防錆塗料用ペースト。
【請求項4】
前記Zn合金粒子が、物理的破砕面にMg固溶相およびZn−Mg金属間化合物を有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の高耐食性防錆塗料用ペースト。
【請求項5】
前記Zn−Mg金属間化合物が、MgZn2、Mg2Zn11、Mg2Zn3、MgZnまたは、Mg7Zn3のうち、1種以上を含むことを特徴とする請求項4に記載の高耐食性防錆塗料用ペースト。
【請求項6】
前記Zn合金粒子が、非球状多面体で、面数が2面以上であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の高耐食性防錆塗料用ペースト。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の高耐食性防錆塗料用ペーストを用いた、高耐食性防錆塗料であって、前記Zn合金粒子を乾燥塗膜換算の質量%で、30%以上85%以下含有することを特徴とする、高耐食性防錆塗料。
【請求項8】
前記Zn合金粒子に加え、さらに平均粒径0.05〜50μmのZn及び不可避的不純物からなるZn金属粒子を分散させた高耐食性防錆塗料であって、質量%で、(前記Zn合金粒子量):(前記Zn金属粒子量)の比の値を1/xとしたとき、xが300.0以下であることを特徴とする請求項7に記載の高耐食性防錆塗料。
【請求項9】
質量%で、前記Zn合金粒子と前記Zn金属粒子の混合粒子の合計を100%としたとき、Mgの含有量が0.01〜30%未満であることを特徴とする請求項8に記載の高耐食性防錆塗料。
【請求項10】
前記高耐食性防錆塗料のバインダーが、無機系バインダーまたは有機系バインダーであることを特徴とする、請求項7〜9の何れか1項に記載の高耐食性防錆塗料。
【請求項11】
鋼材面に請求項7〜10の何れか1項に記載の高耐食性防錆塗料が塗装された鉄鋼材料であって、塗装厚みが2〜50μmであることを特徴とする高耐食性鉄鋼材料。
【請求項12】
請求項11に記載の高耐食性鉄鋼材料を一部又は全部に有することを特徴とする鋼構造物。

【公開番号】特開2009−167246(P2009−167246A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−4392(P2008−4392)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(000159618)吉川工業株式会社 (60)
【Fターム(参考)】