説明

到来方向推定装置、到来方向推定方法および到来方向推定プログラム

【課題】到来方向の推定を高速かつ高精度に行うこと。
【解決手段】N個のセンサが受信した目標からの到来信号より、v〜vで表されるN個のベースバンド信号ベクトルを生成する信号ベクトル生成手段と、1≦MかつM≦(N−1)/2なる自然数Mを行の次元として優先的に定め、前記信号ベクトルの部分ベクトルv〜vN−1から、(N−M)×M次の行列Rf1、Rf2、Rb1およびRb2のうち、少なくとも1つの行列を生成するHankel行列生成手段と、前記行列Rf1、Rf2、Rb1およびRb2のうち少なくとも1つの行列を用いて行列Rを生成し、前記行列RをR=[R⊥Rによって2つの部分行列RおよびRに分割し、前記部分行列RとRとから前記到来信号の到来方向を推定する推定手段と、を具備する到来方向推定装置、方法およびプログラムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は到来方向推定装置、到来方向推定方法および到来方向推定プログラムに関し、特に複数のアンテナを用い目標からの到来信号が到来する方向を推定する到来方向推定装置、到来方向推定方法および到来方向推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数のセンサを用いた目標(信号送信源または信号反射物体)からの到来信号のDOA(Direction Of Arrival:到来方向)推定には、DBF(デジタルビームフォーミング法)、SSM(Sub Space Method:部分空間法)、ML(Maximum Likelihood Method:最尤推定法)等が用いられている。
【0003】
特許文献1には、DOA推定を高速かつ高精度に行うため、到来信号のベースバンド信号の相関ベクトルを組み合わせた空間平均共役分散行列を用いてDOAを推定する技術が開示されている。
【特許文献1】国際公開第2006/067869号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術においてもDOA推定の計算速度・ロバスト性には改善の余地がある。本件開示の到来方向推定装置、到来方向推定方法および到来方向推定プログラムは、到来方向の推定を高速かつ高精度に行うことが可能な到来方向推定装置、到来方向推定方法および到来方向推定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本到来方向推定装置は、N個のセンサが受信した目標からの到来信号よりv〜vで表されるN個のベースバンド信号ベクトルを生成する信号ベクトル生成手段と、 1≦MかつM≦(N−1)/2なる自然数Mを行の次元として優先的に定め、前記信号ベクトルの部分ベクトルv〜vN−1から(N−M)×M次の行列Rf1、Rf2、Rb1およびRb2のうち少なくとも1つの行列を生成するHankel行列生成手段と、前記行列Rf1、Rf2、Rb1およびRb2のうち少なくとも1つの行列を用いて行列Rを生成し、前記行列RをR=[R⊥Rによって2つの部分行列RおよびRに分割し、前記部分行列RとRとから前記到来信号の到来方向を推定する推定手段と、を具備し、前記行列Rf1は前記信号ベクトルの部分ベクトルv〜vN−1を構成要素とする(N−M)×M次のHankle行列であり、前記行列Rf2は前記信号ベクトルの部分ベクトルv〜vを構成要素とする(N−M)×M次のHankel行列であり、前記行列Rb1は、Rf1を前記信号ベクトルの共役複素部分ベクトルv〜vN−1を構成要素とする(N−M)×M次のHankle行列、JN−MおよびJをそれぞれN−M次およびM次反対角単位行列としたとき、Rb1=JN−Mf1であり、前記行列Rf2は前記信号ベクトルの共役複素部分ベクトルv〜vを構成要素とする(N−M)×M次のHankle行列、JN−MおよびJをそれぞれN−M次およびM次反対角単位行列としたとき、Rb2=JN−Mf2であることを特徴とする。
【0006】
また、本到来方向推定方法は、N個のセンサが受信した目標からの到来信号よりv〜vで表されるN個のベースバンド信号ベクトルを生成するステップと、1≦MかつM≦(N−1)/2なる自然数Mを行の次元として優先的に定め、前記信号ベクトルの部分ベクトルv〜vN−1から(N−M)×M次の行列Rf1、Rf2、Rb1およびRb2のうち少なくとも1つの行列を生成するステップと、前記行列Rf1、Rf2、Rb1およびRb2のうち少なくとも1つの行列を用いて行列Rを生成し、前記行列RをR=[R⊥Rによって2つの部分行列RおよびRに分割し、前記部分行列RとRとから前記到来信号の到来方向を推定するステップと、を有する方法である。さらに、本到来方向推定プログラムは、コンピュータに上記方法を実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0007】
本到来方向推定装置、到来方向推定方法および到来方向推定プログラムによれば、到来方向の推定を高速かつ高精度に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
まず、特許文献1に係る技術を用いてDOA推定を行う場合に、計算速度およびロバスト性を改善する余地が残る要因について説明する。なお、以下で、行列やベクトル後に付けた上添え字は複素共役転置を、は置換を、は各複素共役を取ることを、そして、行列の後に付けた上添え字−1は逆行列を示す。また、行列Jは反対角要素が1でその他の要素が0であるP次反対角単位行列を示し、行列IはP次単位行列である。0P×QはP×Q次のゼロ行列、0はP次正方ゼロ行列を示す。
【0009】
図1は、本発明の受信用センサ(例としてアンテナ10とする)を示す図である。図1では、N個のセンサとして、アンテナA〜AがX軸方向の直線上に等しい間隔dを隔てて配置されている。これにより、複数のアンテナ10は等間隔リニアアレーアンテナ(ULA)を構成する。アンテナ10から距離r、角度θ(Y軸の正方向を角度の0度とし、時計回りを正方向として測る)なる位置に、独立したM個の目標12(信号送信源または信号反射物体、図1では煩雑さを避ける為、1個で代表させている)が存在しているものとする。
【0010】
さて、説明を行う便宜上、具体的な装置として波長λなる高周波信号をキャリア信号とするレーダを考える。レーダは、受信用アンテナ10と空間的に隔てた位置に設置された送信用アンテナから目標に向けて探知信号を送信し、これが目標で反射される事によって生成される、所謂、エコー信号をアンテナ10で受信し、エコー信号と送信信号とをミキシングしてベースバンド信号に復調し、更に、適切な信号処理を施して各目標の位置や速度情報を推定する。よって図1の状況では、M(≦N−1)個の目標からのエコー信号x(t)がアンテナ10に到来する。なお、m=1,...,Mであり、tは時間である。
【0011】
このとき、n番目のアンテナAからの入力信号を復調して得られた信号v(t)は式1で表される。
【数1】

ただし、
【数2】

である。ここで、x(t)はベースバンド信号、n(t)は加法性ガウス雑音、λはキャリア信号である。
【0012】
信号v(t)をベースバンド信号ベクトルとして表すと式3となる
【数3】

ただし、
【数4】

【数5】

【数6】

である。x(t)とn(t)との間に相関が無いものとして、式3からv(t)の共分散行列Rvvを計算すると、式7となる。
【数7】

ここで、Rxxはベースバンド信号ベクトルx(t)の共分散行列であり、式8で表される。
【数8】

vvがDOA推定する場合の対象となる。
【0013】
ここではレーダについて考えているので、ULAで受信された信号は、同じ信号源からの送信された信号が各目標によって反射されてきものであり、コヒーレント性が高い為、N×N次行列であるRvvの階数(ランク)は1に縮退する。したがって、このままではRvvからDOAを推定することは難しい。
【0014】
そこで、Rvvの主対角線方向にL×L次部分行列(但し、L<N)をN−L+1個取り、これらの部分行列を足し合わせて平均することにより、Rvvのランクを回復する、前方空間平均法(forward spatial smoothing:fss)が用いられる。また、ULAの基準点を反転させfssと同様の操作を行う後方空間平均法(backward spatial smoothing:bss)も用いられる。通常は双方を組み合わせ、fbss(forward backward spatial smoothing)として用いられる。
【0015】
vvにfbssを適用して得られるRvvfbssと表すことにすれば、例えば、capon法によるDOA推定には、式9が用いられる。ただし、a(θ)はL次のモードベクトルであり、式4を構成するベクトル要素a(θ)と同様の構造を持つ。
【数9】

music(Multiple Signal Classification)法では、Rvvfbssを式10のように固有値分解して行列Eを求め、式11によってDOA推定を行う。
【数10】

【数11】

すなわち、式9または式11において、θをパラメータとするモードベクトルa(θ)=[1,exp(j2παsinθ)],…,exp(j2πα(L-1)sinθ)]Tを定義し、θを走査しながら式11を計算することで行列に含まれる角度情報を調べ、DOAを推定する。ただし、α=d/λである。
【0016】
通常、信号共分散行列には式7の様に雑音成分σIが不可避的に含まれるが、その影響を最小限に抑えてDOAの推定精度を向上させる為、特許文献1の技術では以下のような処理を行っている。すなわち、ULAを構成する各アンテナで受信した信号を復調して得られたベースバンド信号から相関ベクトルを計算し、擬似共分散行列を生成する。次いで、この擬似共分散行列からプロパゲータ行列を生成し、DOA推定を行う。以下にこの推定方法について詳しく説明する。
【0017】
ここでは、簡単のため、fssのみについて考える。ベースバンド信号の相関ベクトルrv1を式12のように計算する。
【数12】

これ以降、Mは、N個のアンテナで構成されたULAによって、DOAを推定する事が可能な最大の目標数を表すものとする。例えば、Mは(N−1)/2以下の最大の自然数である。
【0018】
次に、rv1の要素を並べ替えて、Rf1を式13のように生成する。
【数13】

ここで、
【数14】

であるから、Rf1はRf1=AXなる形をしている。すなわち、式15に示す行列Rは、空間平均を適用した共分散行列Rvvと同じ位相情報を含んでいる。
【数15】

【0019】
以下、N=5、M=2の場合を例に説明する。このとき行列Rは式16となる。
【数16】

次に、式17のように、行列RをM×M次部分行列Rおよび(N−2M)×M次部分行列Rとに分割する。
【数17】

部分行列RおよびRを用いて、M×(N−2M)次行列Γ=(R−1を生成する。
【0020】
行列ΓとN−2M次単位行列:IN−2Mから(N−M)×(N−2M)次プロパゲータ行列Π=[Γ⊥−IN−2Mを生成する。
【0021】
さらに、この行列Πを用いて、例えば、(N−M)×(N−M)次核行列Ωを、Ω=Π(ΠΠ)−1Πによって定義し、これとアレイモードベクトルa(θ)=[1,exp(j2παsinθ)],…,exp(j2πα(N-M-1)sinθ)]Tとを用いて、例えば、角度スペクトラムP(θ)を式18のように定義する。ただし、α=d/λである。
【数18】

そして、パラメータθを走査しながら角度スペクトラムP(θ)を計算し、そのピーク位置から到来信号の到来角度θを得ることができる。または、z=exp(j2παsin(θ))、α=d/λ、に対し、代数方程式a(1/z)Ωa(z)=0の解から到来信号の到来角度θを得ることができる。
【0022】
以上のように、特許文献1では、式15および16のように行列Rを求め、行列Rからプロパゲータ行列Πを求め、核行列Ωを求め、到来方向を算出している。
【0023】
説明を簡単にするため、以下式16に示した様に、N=5、M=2の場合を例に取る。プロパゲータ行列Πの主要部分であるΓは式19のようになる。
【数19】

DOA推定を行うためには、Γを構成するベクトルの位相成分があれば十分である。しかしながら、式19に掛かっている因子1/|vは、DOA推定に直接関与しないばかりか、計算の高速化を阻害さえする。また実際の計算に於いては、桁落ちや丸め誤差等の原因となり、高精度化を阻害する。
【0024】
そこで、本到来方向推定装置は、上記因子を含まない行列を用いてDOA推定を行うことを特徴とする。
【0025】
1≦MかつM≦(N−1)/2なる自然数Mを行の次元として優先的に定め、N−Mを列の次元とし、ベースバンド信号ベクトルv〜vの部分ベクトルv〜vN−1を構成要素として並べ、式20のようなHankel行列Rf1を生成する。
【数20】

【0026】
具体例として、N=5およびM=2の場合についてRf1を式21に示す。
【数21】

【0027】
次に、例えば、式22に示す様に行列Rを定義し、このRをM×M次部分行列Rおよび(N−2M)×M次部分行列Rに分割する。
【数22】

【0028】
上記部分行列RおよびRから、M×(N−2M)次行列Γ=(R−1を計算すると、式23のようになる。
【数23】

式23の行列には、DOA推定に用いられる位相情報が保存されている反面、式19に含まれていた余分な因子:1/|vは含まれない。
【0029】
以下、式17と同様に、行列ΓとN−2M次元単位行列IN−2Mとからプロパゲータ行列Π=[Γ⊥−IN−2Mを生成する。
【0030】
更に、この行列Πを用いて、例えば、(N−M)×(N−M)次核行列Ωを、Ω=Π(ΠΠ)−1Πによって定義し、これとアレイモードベクトルa(θ)=[1,exp(j2παsinθ)],…,exp(j2πα(N-M-1)sinθ)]Tとを用いて、例えば、角度スペクトラムP(θ)を式18のように定義する。但し、α=d/λである。
【数24】

そして、パラメータθを走査しながら角度スペクトラムP(θ)を計算し、そのピーク位置から到来信号の到来角度θを得ることができる。または、z=exp(j2παsin(θ))、α=d/λ、として、代数方程式a(1/z)Ωa(z)=0の解から到来信号の到来角度θを得ることができる。
【0031】
本到来方向推定装置によれば、行列Rf1として、式13の代わりに式21のような行列Rf1を用いる。これにより式23のΓは、式19の1/|vのような因子を含まない。よって、Γの計算、プロパゲータ行列Πの計算を高速高精度に行うことができる。以下、上記原理に基づく本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0032】
図2は実施例1に係る到来方向推定装置のブロック図である。図3は到来方向推定装置が行う処理のフローチャートである。図2および図3を参照して説明を行う。図2に於いて、到来方向推定装置100は、複数のアンテナ10(アンテナA〜A)、受信部20および到来方向推定部30を含んでいる。複数のアンテナ10は目標からの到来信号を受信する。受信部20は受信器22および信号ベクトル生成手段24を含んでいる。受信器22は、例えば、キャリア信号の周波数が76GHzである到来信号を受信し、変調方式に応じた復調を行い、適切な帯域のベースバンド信号にダウンコンバートする。そして更に、このベースバンド信号をA/D変換してデジタル信号に変換する(以下、単にベースバンド信号と記す)。信号ベクトル生成手段24は、各アンテナに対応するベースバンド信号をベクトル列として整形する。以上により、信号ベクトル生成手段24は式3のベースバンド信号ベクトルv〜vを生成する(図3のステップS10)。
【0033】
到来方向推定部30は、到来信号数予測/設定手段31、Hankel行列生成手段32および推定手段45を含んでおり、ベースバンド信号ベクトルからDOAを推定する。推定手段45は、プロパゲータ行列生成手段33、核行列生成手段34および到来方向算出手段35を含んでいる。到来方向推定部30はコンピュータのCPU(中央演算処理装置)等の演算装置、演算装置に実行させるプログラム、或いはその記憶装置上の実体である。また、受信部20と到来方向推定部30との全てが、ソフトウェア無線装置と同様の意味で、演算装置から構成されていても良い。
【0034】
到来信号数予測/設定手段31は、到来信号数Mを予測、若しくは設定して出力する(図3のステップS12)。到来信号数Mを予測する場合は、最尤法に基づくAIC(Akaike Information Criteria)、MDL(Minimum Description Length)、若しくは他の適切な指標を用いることができる。到来信号数予測/設定手段31は、到来信号数Mの予測を行わない場合は、アンテナ数Nから自動的に決定される値である[(N−1)/2]をMの値としてもよい。なお、この数式において記号[x]は、実数xに対して、x以下の最大の自然数を戻す事を意味する。
【0035】
推定手段45は、先ず、式3の信号ベクトルのSN比が事前に決定しておいた或る閾値以上かを判定し(ステップS14)、SN比が閾値より小さい場合には、例えば、相関ベクトルconj(v)×[v,…,vを算出し、これを信号ベクトルとして置き直す(ステップS16)。ここでconj(v)は、信号vの共役複素数を意味する。
【0036】
Hankal行列生成手段32は、式20のようなHankel行列Rf1を生成する(ステップS16に於いて信号ベクトルを置き換えた場合は、式16の様な構造となるが、今後は特に触れない)。プロパゲータ行列生成手段33では、行列R=[Rf1]とする(ステップS18)。
【0037】
プロパゲータ行列生成手段33は、行列Rを2つの部分行列RおよびRに分解し、前述のように行列Γ=(R−1を生成し、さらに行列Γと単位行列IN−2Mとからプロパゲータ行列Π=[Γ⊥−IN−2Mを生成する(ステップS22)。
【0038】
核行列生成手段34は、核行列Ω=Π(ΠΠ)−1Πを生成する(ステップS24)。
【0039】
到来方向算出手段35は、パラメータθを含むアレイモードベクトルa(θ)=[1,exp(j2παsinθ)],…,exp(j2πα(N-M-1)sinθ)]Tと核行列Ωとを用いて、式24のような角度スペクトラムP(θ)を生成する(ステップS26)。但し、α=d/λである。到来方向算出手段35は、θを走査しながら角度スペクトラムP(θ)を計算し、角度スペクトラムP(θ)のピーク位置から到来信号の到来角度θを計算する。または、z=exp (j2παsin(θ))、α=d/λ、として、代数方程式a(1/z)Ωa(z)=0の解から到来信号の到来角度θを計算する。到来方向算出手段35は、到来角度θを推定した到来方向として出力する(ステップS28)。
【0040】
Hankal行列生成手段32は、信号ベクトルの他の部分ベクトルv〜vを構成要素とし、式25のようなHankel行列Rf2をRf1の代わりに生成し、プロパゲータ行列生成手段33は、このRf2を用いてプロパゲータ行列Πを生成してもよい。
【数25】

【0041】
また、Hankel行列生成手段32は、共役複素部分ベクトルv〜vN−1を構成要素とするHankel行列、Rb1=JN−Mf1をRf1の代わりに生成し、プロパゲータ行列生成手段33は、このRb1を用いてプロパゲータ行列Πを生成してもよい。なお、Rf1は、Rf1の各要素について共役複素数をとった行列である。
【0042】
一例として、N=5かつM=2の場合を説明すれば、Rb1は式26のように表される。
【数26】

次に、行列Rを式27のように定義し、更に、行列RをM×M次部分行列Rおよび(N−2M)×M次部分行列Rに分割する。
【数27】

【0043】
上記部分行列RおよびRから行列Γ=(R−1を計算すると、式28のようになる。
【数28】

式28においても式23と同様に、DOA推定に用いられる位相情報が保存され、式19の1/|vのような因子は含まない。よって、Γの計算、プロパゲータ行列Πの計算を高速高精度に行うことができる。
【0044】
さらに、Hankal行列生成手段32は、共役複素部分ベクトルv〜vを用いてHankel行列Rb2=JN−Mf2をRf1の代わりに生成し、プロパゲータ行列生成手段33は、このRb2を用いてプロパゲータ行列Πを生成してもよい。なお、Rf2は、Rf2の各要素について共役複素数をとった行列である。
【0045】
プロパゲータ行列生成手段33は、(N−M)×M次のHankel行列Rf1、Rf2、Rb1、またはRb2をK個組み合わせ、(N−M)×(K×M)の行列として行列Rを構成してもよい。例えば、K=2の場合R=[Rf1⊥Rf2]、R=[Rb1⊥Rb2]、R=[Rf1⊥Rb2]、またはR=[Rf2⊥Rf2]、K=4の場合R=[Rf1⊥Rf2|Rb1⊥Rb2]とすることができる。この場合、Kの値に応じて行列RをM×(K×M)の部分行列Rおよび(N−2M)×(K×M)の部分行列Rに分割し、R=[R⊥Rとする。
【0046】
以上のように、プロパゲータ行列生成手段33は、行列Rを行列Rf1、Rf2、Rb1、およびRb2の少なくとも1つを用いて生成し、この行列Rを適切な次元の2つの部分行列R、Rに分割する。
【0047】
実施例1によれば、到来方向推定装置100は、Hankel行列生成手段32がRf1、Rf2、Rb1およびRb2のうち少なくとも1つの行列を生成する。推定手段45が、行列Rf1、Rf2、Rb1およびRb2のうち少なくとも1つの行列を用いて行列Rを生成し、行列RをR=[R⊥Rなる2つの部分行列RおよびRに分割し、部分行列RとRとを用いて前記行列Γ、Π、そしてΩを計算し、到来信号の到来方向を推定する。これにより、式19の1/|vのような因子を含まないΓ(式23)を用いる事で、Γの計算、プロパゲータ行列Πの計算を高速高精度に行うことができる。
【実施例2】
【0048】
図4は、実施例2に係る到来方向推定装置のブロック図である。図2を参照して説明を行えば、到来方向推定装置100aは、実施例1の図2と比較し、到来方向推定部30aがスケーリング行列生成手段36を含んでいる。同図の他の構成は、実施例1の図2と同じであるから説明を省略する。
【0049】
スケーリング行列生成手段36は、プロパゲータ行列生成手段33が生成した行列Rの部分行列RおよびRを用い、(N−2M)×(N−2M)次スケーリング行列Λ=R−RΓを生成する。核行列生成手段34は、プロパゲータ行列Πとスケーリング行列Λとから核行列Ω=Π(Λ)−1Πを生成する。または、Π´=Π(ΠΠ)−1/2とし、核行列をΩ=Π´(Λ)−1(Π´)によって生成してもよい。
【0050】
核行列生成手段34は、Π(Λ)−1Πの代わりにΠΠを核行列Ωとして生成してもよい。この場合、角度スペクトラムは式29となり、
【数29】

代数方程式は式30となる。
【数30】

ただし、z=exp(j2παsin(θ))、α=d/λ、に対し、
【数31】

である。
【0051】
核行列生成手段34は、核行列をΩ=Π[α(ΠΠ)+(1−α)Λ]−1Πとして生成してもよい。ここで、0≦α≦1である。このように、核行列生成手段34は、Hankel行列から導かれる複数の行列を複合させたものとして、核行列を生成してもよい。
【0052】
ここで、α≠0、1とし、ΠΠとΛとが特異点でないとして、A=ΠΠ、B=Λ、1−α=βとすると、式32となる。
【数32】

以上より上の核行列Ωは、公知の核行列Π(ΠΠ)−1ΠおよびΠ(Λ)−1Πの加重平均となる。よって、公知の核行列を単独で用いたのでは推定困難な目標についても角度推定が可能となる。
【0053】
核行列生成手段34は、核行列Ωの生成を、実施例1ではプロパゲータ行列Πから行い、また、実施例2ではプロパゲータ行列Πとスケーリング行列Λとから行う。
【0054】
到来方向算出手段35は、プロパゲータ行列Πと、D、(B−1B)、(BB)、(D−BB)、Λ(ΠΠ)等、以下に定める行列A,B,C、Dを適当に組み合わせた代用行列をスケーリング行列Λの代わりに用いて核行列Ωを生成し、上記実施例1と同様にして、角度スペクトラムまたは代数方程式から到来方向を算出してもよい。なお、A=R、B=R、C=R、D=Rである。
【0055】
例としてDを用いた角度スペクトラムを式33、代数方程式を式34に示す。
【数33】

【数34】

ただし、z=exp(j2παsin(θ))、α=d/λ、に対し、
【数35】

である。
【0056】
さらに、到来方向算出手段35は、スケーリング行列Λ、その代用行列、またはスケーリング行列Λのノルムを用いて到来方向を算出してもよい。
【0057】
図5から8は、実施例2をFMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)レーダに適用し、目標定位を実施した例である(これらの図では、距離の単位はbinである)。
【0058】
図5(a)から(d)は、目標が2つ存在する場合の角度スペクトラムを角度と距離に対し示した図である。設定した目標の距離は40m、角度は0°および3°である。図5(a)はFFT−DBF法、図5(b)はFBSS−MUSIC法、図5(c)は特許文献1の方法(比較例)、図5(d)は実施例2の方法を用いて計算した角度スペクトラムである。角度スペクトラムが仮定した2つの目標位置に集約している場合、つまり、角度スペクトラムが2つの目標付近で点状に表示されている程、高い精度で目標の到来方向が推定されていることを示している。
【0059】
図6は、図5(a)、(c)および(d)の角度スペクトラムを距離40mの位置で角度軸に平行に切り出したものを重ね描きしたものである。図5および図6より、比較例(特許文献1)および実施例2の方法は、FFT−DBF法、FBSS−MUSIC法と比較して高い精度で目標の角度推定を実現している事が分かる。
【0060】
図7および図8は、空間的に近接した位置に配置された複数の目標に対する定位性能を、5個の目標を仮定して(図中×の点)角度スペクトラムによって評価した例である。モノクロ表示で若干判別しづらいが、等高線の込み合っている箇所が角度スペクトラムのピークである。図7は特許文献1の方法を用いて計算した角度スペクトラムを示し、図8は、実施例2において、核行列をΩ=Π[α(Π)+(1−α)Λ]−1Π(α=0.5)として計算した角度スペクトラムを示している。図8は図7と比較して、×印の周辺の等高線がより込み合っており、仮定した目標付近に角度スペクトラムのピークがある。このように、核行列として複合された核行列を用いることにより、エコー信号のコヒーレンスが高く、推定が難しい多くの目標を正しく検出することができる。
【実施例3】
【0061】
実施例3は、自動車等の車両に搭載された到来方向推定装置の例である。実施例3に係る到来方向推定装置100bは、到来方向推定装置100bを含む、例えば、ミリ波レーダを搭載した自車に対して脅威のある目標の角度(到来方向)を出力する。目標としては、例えば自車の前を走行する自動車等の車両である。図9は、実施例3に係る到来方向推定装置100bのブロック図であるが、到来方向推定装置100bは、受信部20と到来方向推定部30の間に脅威度評価手段40を含んでいる。脅威度評価手段40は、距離/速度/粗到来方向推定手段37、目標選別手段38およびビーム形成手段39を含んでいる。
【0062】
図10は、実施例3に係る到来方向推定装置100bの処理を示すフローチャートである。以下、図10を参照しながら説明を行う。例えば、ミリ波信号にFM変調を掛ける為に用いられる信号の1周期分に渡り、受信アンテナ毎にエコー信号のサンプリングを行い、信号ベクトル生成手段24が対応する信号ベクトルのデータセットを抽出する(ステップS30)。即ち、アンテナ数をN、サンプリング数をQとすると、このデータはN×Q次行列(データセット)となる。距離/速度/粗到来方向推定手段37は、時間領域に沿ってQ次元ベクトルがN組並んだデータセットをそれぞれのアンテナ毎にFFT(高速フーリエ変換)処理する(ステップS32) − Q次元ベクトルのFFTをN回行い、周波数領域のデータセットに変換されたN×Q行列を得る。距離/速度/粗到来方向推定手段37は、FFTの結果として周波数領域に現れたピークに対応するbin位置(周波数インデックスの値と考えても良い)から、各目標と自車との相対距離rおよび相対速度sを推定し、更に、各目標(bin)位置に於けるN次元データベクトルを取り出して、例えばFFT−DBF(デジタルビームフォーミング)処理を行って各目標の大雑把な角度位置を把握する(ステップS34)。また、推定した相対距離、相対速度、角度位置を、各目標固有の識別情報としてペアリングする。
【0063】
目標選別手段38は、各目標の脅威度を、目標の相対距離rと相対速度sとに基づいて評価する(ステップS36)。脅威度はrが小さい程、そして、sが大きな負の値となる程(即ち、近接した位置に存在し、自車に高速で接近してくる目標程)、大きくなる。脅威度は、例えば式36の評価関数を用いる。
【数36】

ただし、
【数37】

ここで、sREF、rREFは、車両メーカーの安全基準等に従ってあらかじめ設定された所定値であるが、例えばDSRC(Dedicated Short Range Communications)等のインフラ装置からの情報を受け、交通状況に応じて動的に変更する様にしても良い。
【0064】
目標選別手段38は、最大の脅威度を有する目標の脅威度が、基準値以上か否かを判断する(ステップS38)。判定がYesの場合、目標選別手段38は、先に粗到来方向推定手段に於いて推定した目標の角度を参照して、最大脅威度を有する目標が自車レーン等、自車の動線と交差する位置を走行するか否かを判断する(ステップS40)。
【0065】
ステップS38またはS40で判定がNoとなった場合、脅威度推定手段40は、周波数軸上で定位される各目標の相対距離rおよび相対速度sのデータ(bin)を、後段の到来方向推定部30に引き渡す。到来方向推定部30は、指定された各bin位置のN次元データベクトルに対して、例えばデジタルビームフォーミング等、精度は比較的低いが、計算量の小さい通常の到来方向推定処理を適用して各目標の角度推定を行う(ステップS42)。もちろん、粗到来方向推定手段による推定値を用いても、実施例1または実施例2の方法を適用しても良い。到来方向推定部30は、各目標の識別情報である、相対距離、相対速度、および角度推定値のそれぞれを1つ前の測定期間のデータとして更新保存する(ステップS44)。更新されたデータは、次回の測定期間に於いて得られたデータに基づいて、脅威度評価手段40が各目標の脅威度を再評価する際に参照される。
【0066】
ステップS40において判定がYesとなった場合、目標選別手段38は、最大の脅威度を持つと判定された目標の相対距離rおよび相対速度sのデータ(bin)に基づいて、対応するN次元データベクトルを抽出してビーム形成手段39に引き渡す。ビーム形成手段39は、距離/速度/粗到来方向推定手段3威度を持つ目標の角度情報を参照し、当該目標が存在する方向に、ビームスペース法によるビーム形成を行う(ステップS46)。この様にして、脅威度推定手段40は、脅威度の高い目標に関するデータベクトルをビームスペースデータに変換し、後段の到来方向推定部30に引き渡す。到来方向推定部30は、詳細な角度推定が可能な実施例1または実施例2の方法で到来方向の推定を行う(ステップS48)。装置が、新たにデータ測定を開始した場合、ステップS30に戻って同様な処理を繰り返す。
【0067】
実施例3の脅威度評価手段40は、信号ベクトルを用い、目標の自車に対する脅威を示す脅威度を評価する。到来方向推定部30の推定手段45は脅威度に基づき、目標の到来方向を推定する、または推定しない。このように、実施例3においては、脅威度評価手段40を導入する事により、自車の安全に対する目標の重要性を脅威度という指標で評価し、各目標の脅威度に応じて到来方向推定部30と連携して適切な到来方向推定手法を適用する事で、装置としてのレスポンスタイムを最適化できる。
【実施例4】
【0068】
実施例4は、信号品質や目標間の相対離角といった追加指標を導入する事で、より、現実的な運用環境に適した処理を実現する装置である。図11は、実施例4に係る到来方向推定装置100cのブロック図である。同図に於いて、到来方向推定装置100cは、受信部20と到来方向推定部30との間に脅威度評価手段50を含んでおり、ハードウェアとしての基本的な構成は実施例3と殆ど同じであるから説明を省略する。
【0069】
図12は、到来方向処理装置100cの処理を示すフローチャートである。脅威度評価手段50は、信号ベクトルの抽出(ステップS50)から目標毎に相対距離と相対速度の推定(ステップS53)を行うまで、実施例3のそれと同じ処理を行う。但し、実施例3で行っていたFFT−DBFによる粗到来方向推定処理は実施しなくても良い。
【0070】
脅威度評価手段50の機能として新たに加わったステップは、脅威度の評価(ステップS56)を実施する前の、信号品質の評価(ステップS54)、一つ前の測定期間に推定された目標緒元データの参照(ステップS66)、そして、ステップS66の参照値の相対離角を基準値との比較(ステップS68)、である。
【0071】
新たに加わった処理の流れは、先ず、ステップS54で、信号ベクトルのSN比が基準値以上か否かを判断し、判定がYesの場合、ステップS56に進む。一方、判定がNoの場合、ステップS66に進み、一つ前の測定期間に推定された目標緒元データのうち到来方向のデータを参照し、ステップS68に於いて参照値の相対離角と基準値との比較を行う。そして、脅威度評価手段50は、ステップS54の判定がYesの場合、または、ステップS68の判定がNoの場合、各目標について脅威度の評価を行い(ステップS56)、最大の脅威度を有する目標の脅威度が、基準値以上か否かを判断する(ステップS58)。脅威度の評価は、実施例3のステップS36と同じ方法で行うことができる。
【0072】
脅威度評価手段50は、ステップS58の判定がYesである場合、制御を到来方向推定部30に渡し、詳細な到来方向の推定を行う(ステップS60)。一方、ステップS58の判定がNo、若しくは、ステップS68の判定がYesである場合、脅威度評価手段50は、制御を到来方向推定部30に渡し、粗い到来方向推定を行う(ステップS70)。このように、脅威度評価手段50は、信号ベクトルを用い目標の自車に対する脅威を示す脅威度を評価する。到来方向推定部30の推定手段45は脅威度に基づき、目標の到来方向の推定を粗い角度分解能で行う、または細かい角度分解能で行う。
【0073】
以下に、ステップS60で行う処理とステップS70で行う処理との違いを示す。行列Rの部分行列R、Rを用いて、R=A、R=B、R=B、D=R=Dとし、RRに逆行列の定理を適用すると、式38となり、
【数38】

これから直ちに、式39が得られる。
【数39】

【0074】
ステップS60では、核行列としてΩ=(RR−1−[(R−1⊥0M×N−2M;0N−2M×M⊥0N−2M]を用い、また、ステップS70では、核行列としてΩ=(RR−1を用いて到来方向の推定を行う。ステップS70の行列は信号部分空間成分の成分を含んでいる為、推定精度が劣る。しかしながら、ステップS70の行列を計算する途中で、(R−1の計算をしておく事は比較的容易であるから、実施例4の方法は推定精度の切り替えが簡単に実現できる。
【0075】
以上、実施例4によれば、エコー信号の品質(SN比)が基準値以上であり、かつ目標の脅威度が基準値以上である場合、ステップS60のように到来方向の詳細な推定を行う。一方、目標の脅威度が小さく詳細な位置の把握が必要が無い場合や、エコー信号のSN比が小さく時間を掛けても精度の良い推定が望めない場合、ステップS70のように到来方向の粗い推定を行う。即ち、実施例4は運用環境に応じてより適切な動作 − レスポンス重視、または精度重視 − を選択できる装置である。
【0076】
以上、本実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】図1は受信用センサを示す図である。
【図2】図2は実施例1に係る到来方向推定装置のブロック図である。
【図3】図3は実施例1に係る到来方向推定装置のフローチャートである。
【図4】図4は実施例2に係る到来方向推定装置のブロック図である。
【図5】図5(a)から図5(d)は各方法で計算された角度スペクトラムを示す図である。
【図6】図6は距離が一定のときの角度に対する角度スペクトラムを示した図である。
【図7】図7は実施例2と比較例の角度スペクトラムを示した図である。
【図8】図8は実施例2の角度スペクトラムを示した図である。
【図9】図9は実施例3に係る到来方向推定装置のブロック図である。
【図10】図10は実施例3に係る到来方向推定装置のフローチャートである。
【図11】図11は実施例4に係る到来方向推定装置のブロック図である。
【図12】図12は実施例4に係る到来方向推定装置のフローチャートである。
【符号の説明】
【0078】
10 アンテナ
12 目標
20 受信部
30 到来方向推定部
31 到来信号予想/設定手段
32 Hankel行列生成手段
33 プロパゲータ行列生成手段
34 核行列生成手段
35 到来方向算出手段
36 スケーリング行列生成手段
37 距離/速度/到来方向推定手段
38 目標選別手段
39 ビーム形成手段
45 推定手段
40、50 脅威度評価手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N個のセンサが受信した目標からの到来信号よりv〜vで表されるN個のベースバンド信号ベクトルを生成する信号ベクトル生成手段と、
1≦MかつM≦(N−1)/2なる自然数Mを行の次元として優先的に定め、前記信号ベクトルの部分ベクトルv〜vN−1から(N−M)×M次の行列Rf1、Rf2、Rb1およびRb2のうち少なくとも1つの行列を生成するHankel行列生成手段と、
前記行列Rf1、Rf2、Rb1およびRb2のうち少なくとも1つの行列を用いて行列Rを生成し、前記行列RをR=[R⊥Rによって2つの部分行列RおよびRに分割し、前記部分行列RとRとから前記到来信号の到来方向を推定する推定手段と、
を具備し、
前記行列Rf1は前記信号ベクトルの部分ベクトルv〜vN−1を構成要素とする(N−M)×M次のHankle行列であり、
前記行列Rf2は前記信号ベクトルの部分ベクトルv〜vを構成要素とする(N−M)×M次のHankel行列であり、
前記行列Rb1は、Rf1を前記信号ベクトルの共役複素部分ベクトルv〜vN−1を構成要素とする(N−M)×M次のHankle行列、JN−MおよびJをそれぞれN−M次およびM次反対角単位行列としたとき、Rb1=JN−Mf1であり、
前記行列Rf2は前記信号ベクトルの共役複素部分ベクトルv〜vを構成要素とする(N−M)×M次のHankle行列、JN−MおよびJをそれぞれN−M次およびM次反対角単位行列としたとき、Rb2=JN−Mf2であることを特徴とする到来方向推定装置。
【請求項2】
前記推定手段は、行列Γ=(R−1とし、IN−2MをN−2M次単位行列とし、プロパゲータ行列Π=[Γ⊥−IN−2Mを生成する、またはプロパゲータ行列Π´=Π(ΠΠ)−1/2を生成し、前記プロパゲータ行列ΠまたはΠ´から前記到来方向を推定することを特徴とする請求項1記載の到来方向推定装置。
【請求項3】
前記推定手段は、前記プロパゲータ行列ΠまたはΠ´を用い、核行列Ω=Π(ΠΠ)−1ΠまたはΩ=Π´(Π´Π´)−1Π´を生成し、核行列Ωから前記到来方向を推定することを特徴とする請求項2記載の到来方向推定装置。
【請求項4】
前記推定手段は、スケーリング行列Λ=R−RΓを生成し、プロパゲータ行列ΠまたはΠ´とスケーリング行列Λとから前記到来方向を推定することを特徴とする請求項2記載の到来方向推定装置。
【請求項5】
前記推定手段は、前記プロパゲータ行列ΠまたはΠ´とスケーリング行列Λとから核行列Ω=Π(Λ)−1ΠまたはΩ=Π´(Λ)−1Π´を生成し、核行列Ωから前記到来方向を推定することを特徴とする請求項4記載の到来方向推定装置。
【請求項6】
核行列生成手段は、複数の核行列を複合させ、複合した核行列から前記到来方向を推定することを特徴とする請求項3または5記載の到来方向推定装置。
【請求項7】
前記信号ベクトルを用い、前記目標の自車に対する脅威を示す脅威度を評価する脅威度評価手段を具備し、
前記推定手段は前記脅威度に基づき、前記目標の到来方向を推定する、または推定しないことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項記載の到来方向推定装置。
【請求項8】
前記信号ベクトルを用い、前記目標の自車に対する脅威を示す脅威度を評価する脅威度評価手段を具備し、
前記推定手段は前記脅威度に基づき、前記目標の到来方向の推定を粗い角度分解能で行う、または細かい角度分解能で行う、ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項記載の到来方向推定装置。
【請求項9】
N個のセンサが受信した目標からの到来信号よりv〜vで表されるN個のベースバンド信号ベクトルを生成するステップと、
1≦MかつM≦(N−1)/2なる自然数Mを行の次元として優先的に定め、前記信号ベクトルの部分ベクトルv〜vN−1から(N−M)×M次の行列Rf1、Rf2、Rb1およびRb2のうち少なくとも1つの行列を生成するステップと、
前記行列Rf1、Rf2、Rb1およびRb2のうち少なくとも1つの行列を用いて行列Rを生成し、前記行列RをR=[R⊥Rによって2つの部分行列RおよびRに分割し、前記部分行列RとRとから前記到来信号の到来方向を推定するステップと、
を有し、
前記行列Rf1は前記信号ベクトルの部分ベクトルv〜vN−1を構成要素とする(N−M)×M次のHankle行列であり、
前記行列Rf2は前記信号ベクトルの部分ベクトルv〜vを構成要素とする(N−M)×M次のHankel行列であり、
前記行列Rb1は、Rf1を前記信号ベクトルの共役複素部分ベクトルv〜vN−1を構成要素とする(N−M)×M次のHankle行列、JN−MおよびJをそれぞれN−M次およびM次反対角単位行列としたとき、Rb1=JN−Mf1であり、
前記行列Rf2は前記信号ベクトルの共役複素部分ベクトルv〜vを構成要素とする(N−M)×M次のHankle行列、JN−MおよびJをそれぞれN−M次およびM次反対角単位行列としたとき、Rb2=JN−Mf2であることを特徴とする到来方向推定方法。
【請求項10】
N個のセンサが受信した目標からの到来信号よりv〜vで表されるN個のベースバンド信号ベクトルを生成するステップと、
1≦MかつM≦(N−1)/2なる自然数Mを行の次元として優先的に定め、前記信号ベクトルの部分ベクトルv〜vN−1から(N−M)×M次の行列Rf1、Rf2、Rb1およびRb2のうち少なくとも1つの行列を生成するステップと、
前記行列Rf1、Rf2、Rb1およびRb2のうち少なくとも1つの行列を用いて行列Rを生成し、前記行列RをR=[R⊥Rによって2つの部分行列RおよびRに分割し、前記部分行列RとRとから前記到来信号の到来方向を推定するステップと、
をコンピュータに実行させ、
前記行列Rf1は前記信号ベクトルの部分ベクトルv〜vN−1を構成要素とする(N−M)×M次のHankle行列であり、
前記行列Rf2は前記信号ベクトルの部分ベクトルv〜vを構成要素とする(N−M)×M次のHankel行列であり、
前記行列Rb1は、Rf1を前記信号ベクトルの共役複素部分ベクトルv〜vN−1を構成要素とする(N−M)×M次のHankle行列、JN−MおよびJをそれぞれN−M次およびM次反対角単位行列としたとき、Rb1=JN−Mf1であり、
前記行列Rf2は前記信号ベクトルの共役複素部分ベクトルv〜vを構成要素とする(N−M)×M次のHankle行列、JN−MおよびJをそれぞれN−M次およびM次反対角単位行列としたとき、Rb2=JN−Mf2であることを特徴とする到来方向推定プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2009−243947(P2009−243947A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−88091(P2008−88091)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】