制御されたモルホロジーの薬剤粉末を含むポリマーコーティング
【課題】
不活性ポリマーと医薬又は生物学的製剤とを基材に付着させるための効率の良い方法であって、捕集プロセスは効率的であり、生じるコーティングは表面に沿い(conformal)、実質的に欠点がなく均一であり、コーティングの組成は規制することができ、医薬又は生物学的製剤のモルホロジー及び/又は2次構造は制御可能な方法の提供。
【解決手段】
ステント骨格;及び
ラパマイシン且つポリマーを含むコーティングであって、該ラパマイシンが少なくとも50%結晶状である、コーティングされた冠動脈ステント。
不活性ポリマーと医薬又は生物学的製剤とを基材に付着させるための効率の良い方法であって、捕集プロセスは効率的であり、生じるコーティングは表面に沿い(conformal)、実質的に欠点がなく均一であり、コーティングの組成は規制することができ、医薬又は生物学的製剤のモルホロジー及び/又は2次構造は制御可能な方法の提供。
【解決手段】
ステント骨格;及び
ラパマイシン且つポリマーを含むコーティングであって、該ラパマイシンが少なくとも50%結晶状である、コーティングされた冠動脈ステント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年7月15日に出願された米国特許仮出願第60/699650号、2005年12月20日に出願された米国特許仮出願第60/752338号、2006年2月7日に出願された米国特許仮出願第60/771066号、2006年2月7日に出願された米国特許仮出願第60/771725号、2006年4月26日に出願された米国特許仮出願第60/745731号、及び2006年4月26日に出願された米国特許仮出願第60/745733号の特典を主張し、これらの出願は参照を通じて全体として本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、粉末状のポリマー及び医薬又は生物学的製剤を含むコーティングを基材上に付着させるための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
基材上にコーティングして、このような基材の表面に所望の性質又は効果をもたせることは、しばしば有益である。
【0004】
例えば、治療又は予防のために、医薬又は生物学的製剤を局所的にデリバリーして体内の特定の部位を標的にするように、バイオメディカルインプラントをコーティングすることは有益である。特に関心を持たれる1つの分野は、最近OngとSerruys(Nat,Clin.Pract.Cardiovasc.Med.,(Dec 2005),Vol 2,No 12,647)により報告された薬剤溶出ステント(DES)である。通常、このような医薬又は生物学的製剤は、ポリマーと共に付着される。これらの製剤のこのような局所デリバリーにより、身体の他の部分への望ましくない作用を伴い得る全身投与の問題が避けられる、或いは、さいなまれている身体部分への投与は、全身投与によっては達成できないかもしれない高濃度の医薬又は生物学的を必要とするために、全身投与の問題が避けられる。コーティングは、医薬又は生物学的製剤の長期又は持続放出を含めて、医薬又は生物学的製剤の放出を制御し得る。さらに、バイオメディカルインプラントは、向上した生体適合性又は滑らかさのような、有益な表面特性をもたせる材料によりコーティングされ得る。
【0005】
従来、コーティングは、ディッピング法、スプレー法、気相成長(vapor deposition)、プラズマ重合、及び電着によって付着させられてきた。これらの方法は満足すべきコーティングを生じさせるために使用されてきたが、これらに付随する欠点がある。例えば、均一な厚さのコーティングを実現し、欠陥(例えば、むき出しの箇所)の発生を防ぐことは、しばしば困難である。また、多くの方法において、複数のコーティングステップがしばしば必要であり、コーティングステップの間、又は後で、通常、乾燥を必要とする。
【0006】
従来の方法の大多数の別の不都合は、一旦基材に付着された後、医薬又は生物学的製剤の多くが、製剤のモルホロジー及び/又は2次構造の制御の悪さに起因することが多い、低い生物学的利用率、短い保存寿命、in vivoでの低い安定性、或いは、制御不能な溶出速度により損なわれることである。既存のスプレーコーティング法(この方法は通常、基材上にスプレーされる医薬を含む溶液を含む)を用いると、医薬のモルホロジー制御はかなりの難題である。溶液が蒸発すると、製剤は通常アモルファス状態で残される。スプレーコーティングされた製剤の結晶性の欠如又は結晶度の低さにより、保存寿命が短くなり、薬剤の溶出は速すぎるようになり得る。生物学的製剤は通常、それらの活性のために、少なくとも部分的に、2次、3次及び/又は4次構造に頼っている。従来の溶媒に基づくスプレーコーティング法を使用すると、生物学的製剤は基材に成功裏に付着し得るが、しばしば、製剤の2次、3次及び/又は4次構造の少なくともいくらかを失うことになり、したがってまた活性をそれに応じて失うであろう。例えば、多くのタンパク質は、担体マトリックスに配合された時、処理方法の結果として活性を失う。
【0007】
従来の溶媒に基づくスプレーコーティング法には、また、基材上へのコーティング成分の捕集及び最終コーティングの一貫性に関する不十分さの障害がある。基材の寸法が小さくなるにつれて、また機械的複雑さが増すにつれて、基材の全表面を均一にコーティングすることは益々難しくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
求められているのは、不活性ポリマーと医薬又は生物学的製剤とを基材に付着させるための資本効率の良い方法であり、この方法では、捕集プロセスは効率的であり、生じるコーティングは表面に沿い(conformal)、実質的に欠点がなく均一であり、コーティングの組成は規制することができ、医薬又は生物学的製剤のモルホロジー及び/又は2次構造は制御可能である。こうして、この方法により、コーティングプロセスの間に付着される製剤の構造及びモルホロジーの維持が可能になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】超臨界溶液の急速膨張(RESS)法の装置を示す。C.Domingo et al,Journal of Supercritical Fluids 10,39−55(1997)を参照。
【図2】Solution Enhanced Dispersion of Supercritical Solutions(SEDS)法の装置を示す。
【図3】SEDSノズルデザインを示す。
【図4】個々の各成分及びスプレーコーティング混合物のFTIRスペクトルを示す。各成分に特有のピークが標識されている。
【図5】ラパマイシン、PEVA及びPBMA(約1:1:1)によりコーティングされ((a)、(b))、様々な条件下で焼結された((c)、(d))ステントを示す。ステント全表面がコーティングされている。
【図6】ラパマイシン、PEVA及びPBMAによりコーティングされたSiウェハーチップの焼結の前及び後のIRスペクトルを示す。2つのスペクトルの間には全く違いが認められない。焼結前スペクトルにおける大きな波数でのベースラインのシフトは、大きな粒径により生じる光散乱による。
【図7】本発明の方法を用いて結晶状にスプレーコーティングされたラパマイシンを示す。
【図8】真正のラパマイシンと比較して、2つのモルホロジーにスプレーされたラパマイシンのXRDスペクトルを示す。
【図9】粒径の制御を示す。
【図10】本発明でのさらなる装置を示す。
【図11】実施例9、10、11及び12において記載される、ポリエチレン−コ−酢酸ビニル(PEVA)とポリ(ブチルメタクリレート)(PMBA)の混合物の曇点等温線を示す。
【図12】実施例9において記載される、コーティング及び焼結プロセスの装置の概略図を示す。
【図13】実施例9において記載される、コーティング及び焼結プロセスの装置の詳細な画像を示す。
【図14】薬剤−ポリマーをコーティングした冠動脈ステントの付着直後(a)、40℃の高密度二酸化炭素環境におけるアニーリングの後(b)を示す。写真は実施例10に記載される実験に対応する。
【図15】バック及びサイド照明を用いて光学顕微鏡により得られた40倍の倍率の、ラパマイシン/PEVA/PBMAをコーティングしたステントの画像で、焼結の前(a)及び後(b)の外側、端部及び内側表面を示す(実施例10に記載される)。
【図16】バック及びサイド照明を用いて光学顕微鏡により得られた40倍の倍率の、ラパマイシン/PEVA/PBMAをコーティングしたステントの画像で、焼結の前(a)及び後(b)の外側及び内側表面を示す(実施例10に記載される)。
【図17】ラパマイシン/PEVA/PBMAをコーティングしたステントの、光学顕微鏡により得られた100倍の倍率の画像を示す。薬剤結晶が非常に均一なポリマーコーティング内に埋め込まれているのをはっきりと見ることができる(実施例10に記載される)。
【図18】ラパマイシン/PEVA/PBMAをコーティングしたステントの、(a)30倍の倍率、(b)250倍の倍率、(c)1000倍の倍率、及び(d)3000倍の倍率での走査電子顕微鏡写真画像を示す(実施例11に記載される)。
【図19】ラパマイシン/PEVA/PBMAをコーティングしたステントの断面の、(a)7000倍の倍率、(b)20000倍の倍率での走査電子顕微鏡画像を示す。測定した4箇所の断面の厚さ:(1)10.355μM、(2)10.412μM、(3)10.043μM及び(4)10.157μMにより、10.242μM±2%の平均厚さが得られる(やはり実施例11に記載される)。
【図20】(a)PEVAコントロール、(b)PBMAコントロール、(c)ラパマイシンコントロール、及び(d)コーティングされたラパマイシン、PEVA、PBMA混合物の示差走査熱量分析(DSC)を示す。185〜200℃のラパマイシンの結晶の融解は(c)及び(d)に示されている(実施例12に記載される)。
【図21】(a)微粉化ラパマイシン粉末(コントロール)及び(b)コーティングし焼結したラパマイシン/PEVA/PBMAステントのX線回折を示す(実施例13に記載される)。
【図22】ラパマイシン/PEVA/PBMAをコーティングしたステントの共焦点ラマン分析(すなわち、コーティング表面から金属ステントまでの深さ方向分布)を示し、(a)外周の外側でのラパマイシンの深さ方向分布、及び(b)外周の外側でのポリマーの深さ方向分布が特に示されている(実施例14に記載される)。
【図23】(a)ラパマイシンのUV−Visスペクトルと(b)277nmでの検量線、(c)PEVA/PBMAのFT−IRスペクトル、(d)1050nmでのPEVA検量線、及び(e)1285nmでのPBMAの検量線を示す。
【図24】コーティング成分の定量(平均濃度(各3ステント);4セル×8mm、パリレンコーティング付き)で、(a)ラパマイシンの定量(74±11μg)、UV−Vis法を使用;(b)PEVAの定量(1060±190μg);及び(c)PBMAの定量(1110±198μg)、FT−IR法を使用;を示す(実施例15に記載される)。
【図25】パクリタキセル−ポリマー複合体によりコーティングされた3mmのGuidant TriStar(登録商標)ステントの外側表面を示す光学顕微鏡画像を示す(実施例16に記載される)。
【図26】3mmのGuidant TriStar(登録商標)ステントをパクリタキセルPEVA/PMBA複合体によりコーティングした後のパクリタキセルの定量で、(a)エタノール中228nmでの検量線、UV−Visの標準的方法を使用、及び(b)UV−Vis法を用いた定量(148±14μg)を示す(実施例16に記載される)。
【図27】コーティング成分の定量(平均濃度(各3ステント);6セル×8mm、パリレンコーティング付き)で、(a)ラパマイシンの定量(81±3μg)、UV−Vis法を使用;(b)PEVAの定量(391±69μg);及び(c)PBMAの定量(268±64μg)、FT−IR法を使用;を示す(実施例17に記載される)。
【図28】本発明の実施形態による焼結実験において用いられた条件の図による要約を示す。
【図29】本発明の実施形態によりコーティングされたステントの溶出プロファイルを例示する。
【図30】本発明の実施形態によりコーティングされたステントの溶出プロファイルを例示する。
【図31】本発明の実施形態によりコーティングされたステントの機械的安定性を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
一態様において、本発明は、ステント骨格、及びラパマイシン−ポリマーのコーティングを備え、ラパマイシンの少なくとも一部が結晶状である、コーティングされた冠動脈ステントを提供する。
別の態様において、本発明は、ステント骨格、及びマクロライド免疫抑制薬剤(limus系薬剤)−ポリマーのコーティングを備え、この薬剤の少なくとも一部が結晶状であるコーティングされた冠動脈ステントを提供する。一実施形態において、マクロライド免疫抑制薬剤には次の1種又は複数が含まれる:ラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシエチル)ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−ベンジル−ラパマイシン、40−O−(4’−ヒドロキシメチル)ベンジル−ラパマイシン、40−O−[4’−(1,2−ジヒドロキシエチル)]ベンジル−ラパマイシン、40−O−アリル−ラパマイシン、40−O−[3’−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4(S)−イル)−プロパ−2’−エン−1’−イル]−ラパマイシン、(2’:E,4’S)−40−O−(4’,5’−ジヒドロキシペンタ−2’−エン−1’−イル)−ラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシ)エトキシカルボニルメチル−ラパマイシン、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−(6−ヒドロキシ)ヘキシル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、40−O−[(3S)−2,2−ジメチルジオキソラン−3−イル]メチル−ラパマイシン、40−O−[(2S)−2,3−ジヒドロキシプロパ−1−イル]−ラパマイシン、40−O−(2−アセトキシ)エチル−ラパマイシン、40−O−(2−ニコチノイルオキシ)エチル−ラパマイシン、40−O−[2−(N−モルホリノ)アセトキシ]エチル−ラパマイシン、40−O−(2−N−イミダゾリルアセトキシ)エチル−ラパマイシン、40−O−[2−(N−メチル−N’−ピペラジニル)アセトキシ]エチル−ラパマイシン、39−O−デスメチル−39,40−O,O−エチレン−ラパマイシン、(26R)−26−ジヒドロ−40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン、28−O−メチル−ラパマイシン、40−O−(2−アミノエチル)−ラパマイシン、40−O−(2−アセトアミノエチル)−ラパマイシン、40−O−(2−ニコチンアミドエチル)−ラパマイシン、40−O−(2−(N−メチル−イミダゾ−2’−イルカルボエトキシアミド)エチル)−ラパマイシン、40−O−(2−エトキシカルボニルアミノエチル)−ラパマイシン、40−O−(2−トリルスルホンアミドエチル)−ラパマイシン、40−O−[2−(4’,5’−ジカルボエトキシ−1’,2’,3’−トリアゾール−1’−イル)−エチル]−ラパマイシン、42−エピ−(テトラゾリル)ラパマイシン(タクロリムス)、及び42−[3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロパノエート]ラパマイシン(テムシロリムス)。
【0011】
さらに別の態様において、本発明は基材をコーティングする方法を提供し、前記コーティングは、
少なくとも1種のポリマー;及び
治療上望ましいモルホロジーにある少なくとも1種の医薬及び/又は少なくとも1種の活性生物学的製剤
を含み、
前記方法は、
乾燥粉末状の少なくとも1種の医薬及び/又は少なくとも1種の活性生物学的製剤を、第1オリフィスを通して吐出するステップ;
乾燥粉末状の少なくとも1種のポリマーを、第2オリフィスを通して吐出するステップ;
ポリマー並びに医薬及び/又は活性生物学的製剤の粒子を、前記基材上に付着させるステップ(ここで、電位が、基材と、ポリマー並びに医薬及び/又は活性生物学的製剤の粒子との間に保たれるので、前記コーティングが形成される);及び
前記医薬のモルホロジー及び/又は前記生物学的製剤の活性を実質的に変えない条件下で前記コーティングを焼結するステップ
を含む。
【0012】
さらなる態様において、本発明は基材をコーティングする方法を提供し、前記コーティングは、
少なくとも1種のポリマー;及び
治療上望ましいモルホロジーにある少なくとも1種の医薬及び/又は少なくとも1種の活性生物学的製剤
を含み、
前記方法は、
乾燥粉末状の前記少なくとも1種の医薬及び/又は少なくとも1種の活性生物学的製剤を、第1オリフィスを通して吐出するステップ;
少なくとも1種の超臨界流体溶媒及び少なくとも1種のポリマーを含む超臨界又は臨界点近傍流体溶液を生成させ、前記超臨界又は臨界点近傍流体溶液を、前記ポリマーの固体粒子を生成させるのに十分な条件下で、第2オリフィスを通して吐出するステップ;
ポリマー並びに医薬及び/又は活性生物学的製剤の粒子を前記基材上に付着させるステップ(ここで、電位が、基材と、ポリマー並びに医薬及び/又は活性生物学的製剤の粒子との間に保たれるので、前記コーティングが形成される);及び
前記医薬のモルホロジー及び/又は前記生物学的製剤の活性を実質的に変えない条件下で前記コーティングを焼結するステップ
を含む。
【0013】
本発明のさらなる態様は基材にコーティングを付着させるための方法を提供し、前記コーティングは、
少なくとも1種のポリマー;及び
乾燥粉末状で治療上望ましいモルホロジーにある少なくとも1種の医薬及び/又は少なくとも1種の活性生物学的製剤
を含み、
前記方法は、
前記少なくとも1種の医薬及び/又は少なくとも1種の活性生物学的製剤を、第1オリフィスを通して吐出するステップ;
少なくとも1種の溶媒及び少なくとも1種のポリマーを含むポリマー溶液の第1の流れを形成するステップ;
少なくとも1種の超臨界流体を含む超臨界又は臨界点近傍流体の第2の流れを形成するステップ;
前記第1及び第2の流れを接触させるステップ(ここで、前記超臨界又は臨界点近傍流体は前記ポリマーの粒子を生成させるのに十分な条件下で前記溶液の希釈剤として働く);
ポリマー並びに医薬及び/又は活性生物学的製剤の粒子を前記基材上に付着させるステップ(ここで、電位が、基材と、ポリマー並びに医薬及び/又は活性生物学的製剤の粒子との間に保たれるので、前記コーティングが形成される);及び
前記医薬のモルホロジー及び/又は前記生物学的製剤の活性を実質的に変えない条件下で前記コーティングを焼結するステップ
を含む。
【0014】
本発明のさらに別の態様は、
基材;及び
前記基材に付着された実質的に均一な厚さを有するコーティング
を備え、前記コーティングが、少なくとも1種のポリマーと、治療上望ましいモルホロジーにある少なくとも1種の医薬及び/又は活性な2次、3次又は4次構造を備える活性な少なくとも1種の生物学的製剤とを含む、コーティングされた植え込み可能なメディカルデバイスを提供する。
【0015】
一実施形態において、前記デバイスは、ステント、ジョイント、ねじ、棒、ピン、プレート、ステープル、シャント、クランプ、クリップ、縫合糸(suture)、スーチャーアンカー、電極、カテーテル、リード線(lead)、グラフト、被覆材(dressing)、ペースメーカー、ペースメーカーハウジング、カーディオバーター、カーディオバーターハウジング、除細動器、除細動器ハウジンング、プロテーゼ、耳排液管、眼科用(ophthalmic)インプラント、整形外科用デバイス、椎間板、代用骨、吻合デバイス、周辺血管ラップ(perivascular wrap)、人工肛門用バック取付けデバイス、止血バリア、血管インプラント、血管支持具、組織接着剤、組織シーラント、組織の足場材(scaffold)及び管腔内デバイスからなる群から選択される。
【0016】
本発明のさらなる態様は、ポリマー及び医薬を含むコーティングを基材に付着させるための方法を提供し、この方法は、
前記少なくとも1種の医薬を含む、超臨界又は臨界点近傍の第1流体混合物を生成させるステップ;
少なくとも1種のポリマーを含む、超臨界又は臨界点近傍の第2流体混合物を生成させるステップ;
医薬の固体粒子を生成するのに十分な条件下で第1オリフィスを通して超臨界又は臨界点近傍の第1流体混合物を吐出するステップ;
ポリマーの固体粒子を生成するのに十分な条件下で前記第1オリフィスを通して又は第2オリフィスを通して超臨界又は臨界点近傍の第2流体混合物を吐出するステップ;
固体医薬の粒子及び/又はポリマーの粒子を前記基材上に付着させるステップ(ここで、電位が、基材と、医薬及び/又はポリマーの粒子との間に保たれるので、前記コーティングが形成される);及び
前記固体医薬の粒子のモルホロジーを実質的に変えない条件下で前記コーティングを焼結するステップ
を含む。
【0017】
別の態様は、ポリマー及び医薬を含むコーティングを基材に付着させるための方法を提供し、この方法は、
第1溶媒及び少なくとも1種のポリマーを含むポリマー溶液の第1の流れを形成するステップ;
超臨界又は臨界点近傍流体混合物の第2の流れを形成するステップ;
第1及び第2の流れを接触させるステップ(ここで、前記の超臨界又は臨界点近傍流体はポリマーの粒子を生成するのに十分な条件下で前記第1溶媒の希釈剤として働く);
第2溶媒及び少なくとも1種の医薬を含む溶液の第3流れを形成するステップ;
超臨界又は臨界点近傍流体混合物の第4の流れを形成するステップ;
前記の第3及び第4の流れを接触させるステップ(ここで、前記の超臨界又は臨界点近傍流体は医薬の粒子を生成するのに十分な条件下で前記第2溶媒の希釈剤として働く);
ポリマー及び/又は医薬の粒子を前記基材上に付着させるステップ(ここで、電位が、基材と、医薬及び/又はポリマーの粒子との間に保たれるので、前記コーティングが形成される);及び
前記固体医薬粒子のモルホロジーを実質的に変えない条件下で前記コーティングを焼結するステップ
を含む。
【0018】
本発明のさらに別の態様は、ポリマー及び医薬を含むコーティングを基材に付着させるための方法を提供し、この基材は1種又は複数のポリマーにより予めコーティングされており、この方法は、
溶媒及び少なくとも1種の医薬を含む溶液の第1の流れを形成するステップ;
超臨界又は臨界点近傍流体混合物の第2の流れを形成するステップ;
前記第1及び第2の流れを接触させるステップ(ここで、前記の超臨界又は臨界点近傍流体は医薬の粒子を生成するのに十分な条件下で前記溶媒の希釈剤として働く);
医薬粒子を前記基材上に付着させるステップ(ここで、電位が、基材と医薬粒子との間に保たれるので、前記コーティングが形成される);及び
前記固体医薬粒子のモルホロジーを実質的に変えない条件下で前記コーティングを焼結するステップ
を含む。
【0019】
さらなる態様は、ポリマー及び医薬を含むコーティングを基材に付着させるための方法を提供し、この基材は1種又は複数の医薬により予めコーティングされており、この方法は、
溶媒及び少なくとも1種のポリマーを含む溶液の第1の流れを形成するステップ;
超臨界又は臨界点近傍流体混合物の第2の流れを形成するステップ;
前記第1及び第2の流れを接触させるステップ(ここで、前記の超臨界又は臨界点近傍流体はポリマーの粒子を生成するのに十分な条件下で前記溶媒の希釈剤として働く);
ポリマー粒子を前記基材上に付着させるステップ(ここで、電位が、基材とポリマー粒子との間に保たれるので、前記コーティングが形成される);及び
前記固体医薬粒子のモルホロジーを実質的に変えない条件下で前記コーティングを焼結するステップ
を含む。
【0020】
本発明のさらに別の態様は、ポリマー及び医薬を含むコーティングを基材に付着させるための方法を提供し、この方法は、
共軸円柱スプレー管に、超臨界又は臨界点近傍流体混合物である反溶媒(anti−solvent)流体混合物と、反溶媒流体混合物に可溶であるか若しくは実質的に可溶であるビヒクル中の少なくとも1種の医薬の溶液又は懸濁液とを共に導入し;反溶媒流体を少なくとも1種の医薬の前記溶液又は懸濁液に接触させて、超臨界又は臨界点近傍流体混合物、ビヒクル及び医薬を含む合流を形成するステップ;
合流を、前記管のオリフィスを通して容器にスプレーするステップ(ここで、前記ビヒクルは溶液又は懸濁液から抽出され、実質的にビヒクルを含まない医薬の粒子が、前記基材への前記医薬粒子の付着の前に生成する);
少なくとも1種のポリマーの粒子により予めコーティングされ、前記容器に配置された基材上に医薬粒子を付着させるステップ(ここで、電位が、基材とポリマー粒子との間に保たれるので、前記コーティングが形成される);及び
前記固体医薬粒子のモルホロジーを実質的に変えない条件下で前記コーティングを焼結するステップ
を含む。
【0021】
本発明のさらに別の態様は、ポリマー及び医薬を含むコーティングを基材に付着させるための方法を提供し、この方法は、
共軸円柱スプレー管に、超臨界又は臨界点近傍流体混合物である反溶媒流体混合物と、反溶媒流体混合物に可溶であるか若しくは実質的に可溶であるビヒクル中の少なくとも1種のポリマーの溶液又は懸濁液とを共に導入し;反溶媒流体を少なくとも1種のポリマーの前記溶液又は懸濁液に接触させて、超臨界又は臨界点近傍流体混合物、ビヒクル及びポリマーを含む合流を形成するステップ;
合流を、前記管のオリフィスを通して容器にスプレーするステップ(ここで、前記ビヒクルは溶液又は懸濁液から抽出され、実質的にビヒクルを含まないポリマーの粒子が、前記基材への前記ポリマー粒子の付着の前に生成する);
少なくとも1種の医薬の粒子により予めコーティングされ、前記容器に配置された基材上にポリマー粒子を付着させるステップ(ここで、電位が、基材とポリマー粒子との間に保たれるので、前記コーティングが形成される);及び
前記固体医薬粒子のモルホロジーを実質的に変えない条件下で前記コーティングを焼結するステップ
を含む。
【0022】
本発明のさらに別の態様は、ポリマー及び生物学的製剤を含むコーティングを基材に付着させるための方法を提供し、この方法は、
第1溶媒及び少なくとも1種のポリマーを含むポリマー溶液の第1の流れを形成するステップ;
超臨界又は臨界点近傍流体混合物の第2の流れを形成するステップ;
第1及び第2の流れを接触させるステップ(ここで、前記の超臨界又は臨界点近傍流体はポリマーの粒子を生成するのに十分な条件下で前記第1溶媒の希釈剤として働く);
第2溶媒及び少なくとも1種の生物学的製剤を含む溶液の第3流れを形成するステップ;
超臨界又は臨界点近傍流体混合物の第4の流れを形成するステップ;
前記の第3及び第4の流れを接触させるステップ(ここで、前記の超臨界又は臨界点近傍流体は医薬の粒子を生成するのに十分な条件下で前記第2溶媒の希釈剤として働く);
ポリマー及び/又は生物学的製剤の粒子を前記基材上に付着させるステップ(ここで、電位が、基材と、生物学的製剤及び/又はポリマーの粒子との間に保たれるので、前記コーティングが形成される);及び
前記生物学的製剤粒子の構造を実質的に変えない条件下で前記コーティングを焼結するステップ
を含む。
【0023】
さらに別の態様は、ポリマー及び医薬を含むコーティングを基材に付着させるための方法を提供し、この方法は、
溶媒及び少なくとも1種の医薬を含む溶液の第1の流れを形成するステップ;
前記流れを、前記基材及び超臨界又は臨界点近傍流体混合物を含む容器に吐出するステップ(ここで、前記の超臨界又は臨界点近傍流体は医薬の粒子を生成するのに十分な条件下で前記溶媒の希釈剤として働く);
溶媒及び少なくとも1種のポリマーを含む溶液の第2の流れを形成するステップ;
前記第2の流れを前記容器に吐出するステップ(ここで、前記の超臨界又は臨界点近傍流体はポリマーの粒子を生成するのに十分な条件下で前記溶媒の希釈剤として働く);
医薬及び/又はポリマーの粒子を前記基材に付着させるステップ(ここで、電位が、基材と、医薬及び/又はポリマーの粒子との間に保たれるので、前記コーティングが形成される);及び
前記固体医薬粒子のモルホロジーを実質的に変えない条件下で前記コーティングを焼結するステップ
を含む。
【0024】
さらに別の態様は、ポリマー及び医薬を含むコーティングを基材に付着させるための方法を提供し、この方法は、
少なくとも1種のポリマーにより予めコーティングされた基材を準備するステップ;
溶媒及び少なくとも1種の医薬を含む溶液の流れを形成するステップ;
前記流れを、前記基材及び超臨界又は臨界点近傍流体混合物を含む容器に吐出するステップ(ここで、前記の超臨界又は臨界点近傍流体は医薬の粒子を生成するのに十分な条件下で前記溶媒の希釈剤として働く);
医薬粒子を前記基材上に付着させるステップ(ここで、電位が、基材と医薬粒子との間に保たれるので、前記コーティングが形成される);及び
前記固体医薬粒子のモルホロジーを実質的に変えない条件下で前記コーティングを焼結するステップ
を含む。
【0025】
別の態様は、ポリマー及び医薬を含むコーティングを基材に付着させるための方法を提供し、この方法は、
少なくとも1種の医薬の固体粒子により予めコーティングされた基材を準備するステップ;
溶媒と少なくとも1種のポリマーを含む溶液の流れを形成するステップ;
前記流れを、前記基材及び超臨界又は臨界点近傍流体混合物を含む容器に吐出するステップ(ここで、前記超臨界又は臨界点近傍流体は、ポリマーの粒子を生成するのに十分な条件下で前記溶媒の希釈剤として働く);
前記基材上にポリマー粒子を付着させるステップ(ここで、電位が、基材とポリマー粒子との間に保たれるので、前記コーティングが形成される);及び
前記固体医薬粒子のモルホロジーを実質的に変えない条件下で前記コーティングを焼結するステップ
を含む。
【0026】
さらに別の態様は、ポリマー及び医薬を含むコーティングを基材に付着させるための方法を提供し、この方法は、
超臨界又は臨界点近傍流体混合物である反溶媒流体混合物と、反溶媒流体混合物に可溶であるか若しくは実質的に可溶であるビヒクル中の少なくとも1種の医薬の溶液又は懸濁液とを接触させて、超臨界又は臨界点近傍流体混合物、ビヒクル及び医薬を含む合流を形成するステップ;
合流を容器にスプレーするステップ(ここで、前記ビヒクルは溶液又は懸濁液から抽出され、実質的にビヒクルを含まない医薬の粒子が、少なくとも1種のポリマーの粒子により予めコーティングされた基材への前記医薬粒子の付着の前に生成する);
前記容器に配置された前記基材上に医薬粒子を付着させるステップ(ここで、電位が、基材と医薬粒子との間に保たれるので、前記コーティングが形成される);及び
前記固体医薬粒子のモルホロジーを実質的に変えない条件下で前記コーティングを焼結するステップ
を含む。
【0027】
本発明のさらなる態様は、ポリマー及び医薬を含むコーティングを基材に付着させるための方法を提供し、この方法は、
超臨界又は臨界点近傍流体混合物である反溶媒流体混合物と、反溶媒流体混合物に可溶であるか若しくは実質的に可溶であるビヒクル中の少なくとも1種の医薬の溶液又は懸濁液とを接触させて、超臨界又は臨界点近傍流体混合物、ビヒクル及び医薬を含む合流を形成するステップ;
合流を容器にスプレーするステップ(ここで、前記ビヒクルは溶液又は懸濁液から抽出され、実質的にビヒクルを含まない医薬の粒子が、少なくとも1種のポリマーの粒子により予めコーティングされた基材への前記医薬粒子の付着の前に生成し;前記反溶媒混合物、及び少なくとも1種の医薬の前記溶液又は懸濁液は、それぞれ、第1及び第2の管によって供給され;前記第1及び第2の管はある角度で配置される);
前記容器に配置された前記基材上に医薬粒子を付着させるステップ(ここで、電位が、基材とポリマー粒子との間に保たれるので、前記コーティングが形成される);及び
前記固体医薬粒子のモルホロジーを実質的に変えない条件下で前記コーティングを焼結するステップ
を含む。
【0028】
本発明のさらなる態様は、ポリマー及び少なくとも2種の医薬を含むコーティングを基材に付着させるための方法を提供し、この方法は、
超臨界又は臨界点近傍流体混合物である反溶媒流体混合物、反溶媒流体混合物に可溶であるか若しくは実質的に可溶である第1ビヒクル中の第1医薬の溶液又は懸濁液、並びに、第1ビヒクルと同じであるか又は反溶媒流体混合物に可溶であるか若しくは実質的に可溶である別のビヒクルである第2ビヒクル中の第2医薬の溶液又は懸濁液を接触させて、超臨界又は臨界点近傍流体混合物、1種のビヒクル若しくは複数のビヒクル並びに第1及び第2医薬を含む合流を形成するステップ;
合流を容器にスプレーするステップ(ここで、前記ビヒクルは溶液又は懸濁液から抽出され、実質的に1種又は複数のビヒクルを含まない第1及び第2医薬の粒子が、少なくとも1種のポリマーの粒子により予めコーティングされた基材への前記複数の医薬粒子の付着の前に生成し;前記反溶媒混合物、前記第1医薬の前記溶液又は懸濁液、並びに前記第2医薬の前記溶液又は懸濁液は、それぞれ、第1、第2及び第3の管によって供給され;前記第2及び第3の管は、前記第1の管からある角度でそれぞれ配置される);
前記容器に配置された前記基材上に複数の医薬粒子を付着させるステップ(ここで、電位が、基材とポリマー粒子との間に保たれるので、前記コーティングが形成される);及び
前記固体医薬粒子のモルホロジーを実質的に変えない条件下で前記コーティングを焼結するステップ
を含む。
【0029】
さらに別の態様は、
基材;及び
基材上に配置され、実質的に均一な厚さを有する、医薬−ポリマーのコーティング
を備え、コーティングが少なくとも1種の医薬を含み、コーティング中の1種又は複数の医薬の全てがポリマーコーティング内に実質的に均一に分散している、コーティングされた植え込み可能なメディカルデバイスを提供する。
【0030】
本明細書において挙げられている出版物及び特許の全ては、それぞれの個々の出版物又は特許出願が参照を通じて組み込まれると、明確に、また個別に言われているのと同じ程度に、参照を通じて本明細書に組み込まれる。
【0031】
本発明の新規な特徴は添付の特許請求の範囲に綿密に記載されている。本発明の特徴及び利点のより良い理解は、本発明の原理が用いられている例示的実施形態を説明する以下の詳細な記述及び添付図を参照することによって得られるであろう。
【0032】
本発明が以下に詳細に説明される。この説明は、本発明が実施され得る全ての異なるやり方、又は本発明に付加され得る全ての特徴の詳細な目録であろうとするものではない。例えば、一実施形態に関連して例示される特徴は、他の実施形態に組み入れられてもよく、特定の実施形態に関連して例示される特徴はその実施形態から除かれ得る。さらに、本明細書において提案されている様々な実施形態に対する、本発明から逸脱しない多数の変形形態及び付加が、本開示に照らして当業者には明らかであろう。したがって、以下の明細は、本発明のいくつかの特定の実施形態を例示しようとするものであり、それらの変更、組合せ及び変形形態の全てを漏れなく特定しようとするものではない。
【0033】
出願人等は、本明細書において引用されている全ての米国特許文献が参照を通じて全体として本明細書に組み込まれることを明確に意図する。
【0034】
本発明は、不活性な1種のポリマー又は複数のポリマーと1種の医薬若しくは生物学的製剤又は複数の医薬若しくは生物学的製剤との組合せを、基材の複数の部分又は全ての表面上に付着させて、予め決められた所望の厚さで、表面に沿い、実質的に欠陥がなく、均一であるコーティングを形成する費用効率の高い、効率的な方法を提供し、このコーティングの組成は調節できる。特に、本発明は、コーティングプロセスの間に付着される製剤の構造及びモルホロジーの維持ができない既存のコーティング法の問題に取り組む。本発明の一態様は、基材に粉末粒子を引き付けるために静電気による捕捉を用いる、乾燥粉末としての医薬又は生物学的製剤の付着を伴う。乾燥粉末のスプレーは当技術分野においてよく知られており、静電気により捕捉と組み合わせた乾燥粉末のスプレーは、例えば、米国特許第5470603号、米国特許第6319541号、又は米国特許第6372246号に記載されている。ポリマーのモルホロジーは、それが所望の性質(例えば、厚さ、表面に忠実に沿う性質、欠陥のないこと、均一性など)を有するコーティングをもたらす限り、重要性が低いので、ポリマーの付着は多くの標準的な手法で実施できる。ポリマーの役割は、主に、コーティングの活性成分のための不活性担体マトリックスの役割である。
【0035】
一態様において、本発明のコーティング法は、医薬又は生物学的製剤とポリマーとによりコーティングされた基材を得ること、及び医薬及び生物学的製剤の構造及びモルホロジーの良好な状態(integrity)にそれ程影響を与えない良い条件下で実施される焼結プロセスにそれらを従わせること、を含む。本発明において用いられる焼結プロセスとは、それによってマトリックスの一部又はポリマーマトリックスの全体が連続になる(例えば、連続ポリマーフィルムの生成)プロセスを表す。下で記載されるように、焼結プロセスは、完全に表面に沿う連続マトリックスを生じるように(完全焼結)、或いは、連続コーティングの部分又はドメインを生じると同時に、マトリックスにボイド(不連続部分)を生じるように、制御される。また、焼結プロセスは、何らかの相分離が異なるポリマー(例えば、ポリマーA及びB)の間で生じるように、及び/又は、別個のポリマー粒子の間で相分離を生じるように、制御される。焼結プロセスはまた、ポリマーコーティングの接着性を改善する。焼結プロセスは、圧縮ガス、圧縮液体、又は超臨界流体が、ポリマー、医薬及び生物学的製剤にとって貧溶媒(poor solvent)又はいくつかの場合には非溶媒(non−solvent)でありながら、ポリマーの連続コーティングの生成は引き起こす条件(例えば、温度及び圧力)で、圧縮ガス、圧縮液体、又は超臨界流体によりコーティングされた基材を処理することを含む。焼結プロセスは、ある条件(例えば、温和な温度)の下で、医薬及び/又は生物学的製剤の構造及びモルホロジーの良好な状態にそれ程影響を与えない良い流体(例えば、圧縮ガス、又は超臨界流体、このガス又は流体は、例えば、二酸化炭素、イソブチレン又はこれらの混合物を含み得る)を用いて実施される。いくつかの事情の下では、超臨界又は臨界点近傍流体を用いることによって、より良好な焼結結果が得られることがあるが、本発明による多くの実施形態において、圧縮ガスによる処理により所望の焼結ポリマーコーティングが得られることを記しておく。当業者には、本発明の実施において、超臨界流体、臨界点近傍流体又は圧縮ガスを選択するのに困難はないであろう。焼結条件は、焼結プロセスが完全には達成されないように調節され得る。すなわち、この焼結では完全に連続的なポリマーマトリックスは生成しない。不完全な焼結が本発明に従って実施される場合、ポリマーマトリックスのいくつかのドメインは連続であり得るが、同時に、他のドメインは、薬物がポリマーマトリックス内に包み込まれるか又は封鎖され得るボイド、キャビティ、ポア、チャネル又は裂け目を画定する。このようなポリマーマトリックスでは、ポリマーマトリックスの微視的又は巨視的なボイドが原因で、密度はポリマーのバルク密度より小さいであろう。代わりに、このようなポリマーマトリックスは、ポリマードメインの相分離を、或いは、複数のポリマーが用いられる場合には、異なる種類のポリマーの間の相分離を保有できるであろう。ほとんどの実施形態において、焼結プロセスが完全であっても不完全であっても、焼結条件は、基材へのコーティングの良好な接着を生じるように選択される。ステントでは、適切な接着特性により、一般に、使用中の操作の間のステントからのコーティングのフレーキング(flaking)又は脱離が減少するか、又は防止される。
【0036】
本発明の一態様は、乾燥粉末、RESS及びSEDSスプレー法の2つ以上の組合せである。
【0037】
本発明の別の態様は、好ましい粒径及びモルホロジーの医薬の乾燥粉末を、やはり乾燥粉末スプレーされるポリマーと同じ捕捉容器へ、スプレーすることを含み、ここで、製剤及びポリマーのスプレーは逐次的であるか又は同時である。
【0038】
本発明の別の特定の態様は、好ましい粒径で特定の活性を有する活性生物学的製剤の乾燥粉末を、やはり乾燥粉末スプレーされるポリマーと同じ捕捉容器へ、スプレーすることを含み、ここで、製剤及びポリマーのスプレーは逐次的であるか又は同時である。
【0039】
本発明のさらに別の態様は、好ましい粒径及びモルホロジーの医薬の乾燥粉末を、RESSスプレー法によって逐次的に又は同時にスプレーされるポリマーと同じ捕捉容器へ、スプレーすることを含む。
【0040】
本発明のさらに別の態様は、好ましい粒径で特定の活性を有する活性生物学的製剤の乾燥粉末を、RESSスプレー法によって逐次的に又は同時にスプレーされるポリマーと同じ捕捉容器へ、スプレーすることを含む。
【0041】
本発明のさらに別の態様は、好ましい粒径及びモルホロジーの医薬の乾燥粉末を、SEDSスプレー法によって逐次的に又は同時にスプレーされるポリマーと同じ捕捉容器へ、スプレーすることを含む。
【0042】
本発明のさらに別の態様は、好ましい粒径で特定の活性を有する活性生物学的製剤の乾燥粉末を、SEDSスプレー法によって逐次的に又は同時にスプレーされるポリマーと同じ捕捉容器へ、スプレーすることを含む。
【0043】
上の6つの方法の任意の組合せは本発明のこの態様によって想定されている。
【0044】
本発明のさらなる態様において、上の実施形態において記載されたように、医薬又は生物学的製剤及びポリマーによりコーティングされた基材が、次に、焼結プロセスに従う。焼結プロセスは、良い条件(この条件は、医薬及び生物学的製剤の構造及びモルホロジーの良好な状態に影響を及ぼさない)の下で実施され、共に付着された医薬又は生物学的製剤−ポリマーマトリックスが連続になり、基材に接着しているようになるプロセスを指している。これは、圧縮ガス、圧縮液体又は超臨界流体が、ポリマーの貧溶媒、ポリマーの弱溶媒(weak solvent)、又は、ポリマー、医薬及び生物学的製剤に対する非溶媒でありながら、連続ポリマーコーティングを形成するためにポリマー粒子を処理するのに適する作用剤である条件で、コーティングされた基材を、圧縮ガス、圧縮液体又は超臨界流体により処理することによって達成される。焼結プロセスは、ある条件(例えば、温和な温度)の下で、医薬及び生物学的製剤の構造及びモルホロジーの良好な状態に影響を与えない良い流体(例えば、超臨界二酸化炭素)を用いて実施される。医薬及び生物学的製剤の構造及びモルホロジーの良好な状態に影響を与えない他の焼結プロセスもまた、本発明により想定され得る。
【0045】
本発明のさらなる態様において、所望の溶出媒体に置かれた時に、活性物質の放出が予め決められた溶出プロファイルにより起こるようにコーティングを作り出すことが望ましい。望ましい溶出プロファイルをもたせるために、コーティングの性質は様々なやり方で変更され得る。
【0046】
ポリマーの化学組成は、活性物質の溶出を許す、又は制限するポリマーの量を増やすか、又は減らすように変えることができる。例えば、意図される溶出媒体が水を含む場合、水中で膨潤するポリマーの含量を高めると、活性物質はより速く放出されるであろう。逆に、水性媒体中で膨潤しないポリマーの含量を高めると、結果的に溶出速度はより遅くなるであろう。
【0047】
コーティングの性質はまた、交互ポリマー層によっても制御できる。異なる性質のポリマー層が順番に基材に付着される。各層に付着されるポリマーの特質を変える(例えば、異なるポリマーの層を付着させる)ことによって、コーティングの溶出プロファイルは変えられる。層の数と付着の順序により、制御された溶出プロファイルを有するコーティングの設計のさらなる手段が得られる。
【0048】
コーティングの性質はまた、ポリマーコーティングのマクロ及び/又はミクロ構造(拡散経路)の制御によっても変えることができる。これは、(複数の)コーティングプロセスを変えることによって、或いは、異なる焼結条件を用いることによって達成され得る。
【0049】
本発明は、1種の薬剤又は複数の薬剤の溶出を制御するためのいくつかの手法を提供する。例えば、一実施形態において、制御された溶出は異なるポリマー(例えば、PEVA/PBMA)の分離(segregation)によって達成される。別の実施形態において、溶出の制御は、ポリマーマトリックスの制御された不完全焼結が実現されるように焼結プロセスの間の条件を制御することによって達成され、この場合、コーティングは、付着したままのポリマー粒子の粒子状構造のいくらかを保持するであろう。不完全な焼結はコーティングにポア/ボイドを生じ、(複数の)ポリマーを通しての溶出に代わる又はそれに加えられる(複数の)ポリマーの回りの薬剤溶出を含めて、薬剤溶出のさらなる経路を与えるであろう。ポリマーマトリックスの不完全な焼結により得られるポア又はボイドの大きさは、いくつかの方法により得ることができる。例えば、焼結プロセスが実施される容器の減圧速度は、ポア径を制御するための1つの手段を提供する。コーティングのキャビティ又はポアの大きさは、添加剤としてポロゲン(porogen)を用い、続いて、例えばそのポロゲンの溶媒による処理により、ポロゲンの少なくとも一部を除去することによって制御できる。好ましくは、ポロゲンの溶媒は高密度ガス(例えば、炭素)を含む。いくつかの実施形態において、ポロゲンはSOA又は他のこのような疎水性に誘導体化された炭水化物である。ポロゲンの少なくとも一部の除去は、好ましくは、焼結プロセスの間に実施される。
【0050】
本発明のいくつかの態様において、活性物質の溶出プロファイルは、ポリマーの粒径を変えることによって制御できる。こうして、ポリマー粒子が基材に付着される方法は、所望の溶出速度をもたせるために変えられる。例えば、同じノズルを通して同時に放出されるポリマーでは、超臨界溶液からのRESSによる放出は、通常、小さなポリマー粒子を生じるであろう。圧縮ガスとの混合物からのRESSに似た放出は、通常、より大きなポリマー粒子を生成する。SEDS法を用いると、用いられる特定のSEDS条件に応じて様々なポリマー粒径を得ることができる。
【0051】
本発明のさらなる態様において、活性物質の溶出プロファイルは、ポリマー粒子の形状を変えることによって制御できる。ポリマー粒子の形状を様々にする1つのやり方は、ポリマーの初期濃度を変えることである。低い初期濃度では、ポリマーは小さな粒子として付着される。濃度が高くなると、より大きな粒子が生成する。さらに高い濃度では、生成する粒子は細長くなり、終には、高濃度で、細長い姿が繊維状になり、最終的には、連続繊維になる。
【0052】
本発明のさらに別の態様において、活性物質の溶出プロファイルは、化学的に異なるポリマーの離散的ドメインを作り出すことによって制御できる。前記のように、化学的に異なるポリマーは、異なる溶出媒体において、活性物質の溶出を許すか、又は制限する。コーティング内の離散的な巨視的ドメインにおけるこのようなポリマーの位置を変えることによって、溶出プロファイルは調節できるであろう。例えば、2種の異なるポリマーが同じノズルを通して逐次的に放出されるプロセスの間に、いずれかのポリマーの粒子が、例えば、基材上のコーティングの外側、内側又は中間により近く、それらを配置するように付着され得るであろう。別の実施形態では、2種のポリマーが、2つの異なるノズルを通して同時に、異なる付着速度で、及び/又は互い違いになる付着速度で放出されて、同様の効果を生じ得る。さらなる実施形態では、溶出性及び非溶出性のポリマーの付着が交互に行われて、変動型の放出が得られる。さらに別の実施形態では、活性物質がパルス状に放出されるように、ポリマーが付着される。薬剤の拡散に違いを生じるドメインを提供する(複数の)ポリマーの分離は、例えば、同じノズルを通してのポリマーの逐次スプレーによって、或いは、複数のノズルを用いることによって、達成される。また、前記のように、活性物質の溶出制御は、コーティングの深さ方向での異なるポリマーの層状化によって達成され得る。ドメイン、分離及び深さ方向での層状化の組合せもまた、制御された溶出特性を有するコーティングの設計のために想定されている。
【0053】
これらのプロセスのいずれかの間の活性物質の付着は、コーティングの全体を通して分布が一様となるように一定であるか、或いは、コーティング内の異なるポリマードメインにおける活性物質の量が異なっているように、活性物質のスプレー量は変えられてもよい。
【0054】
本発明のさらなる態様において、活性物質の溶出プロファイルは、コーティングの焼結条件を変えることによって制御できる。例えば、不完全な焼結は、開けたスペースを、又はポリマー粒子間の隙間のスペースにポアを生じ、これらはコーティングからの活性物質のより速い溶出を可能にするであろう。溶出制御のために焼結条件を利用する別のやり方は、焼結プロセスの間の発泡によって、乱れたコーティングを故意に作り出すことであろう。CO2又はイソブチレンを含浸させたポリマーフィルムの急速な圧力開放は、発泡したポリマーの生成を引き起こし、この発泡したポリマーは、多孔度が増大したコーティングを生成し、拡散/溶出に対して非常に「開かれている」と思われる。このように、溶出プロファイルは、ポアの密度及び大きさを制御することになる発泡条件を操作することによって制御できるであろう。
【0055】
定義
本明細書において用いられる場合、以下の用語及び句は、それらが用いられている文脈によりそうではないことが示される範囲を除いて、一般に、以下に記載される意味を有するものとする。
【0056】
本明細書では、「基材」は、ポリマー及び医薬又は生物学的製剤を含むコーティングをその上に付着させることが望ましい任意の表面を表し、ここで、コーティングプロセスは医薬のモルホロジー又は生物学的製剤の活性を実質的に変えないものとする。バイオメディカルインプラントは、本発明にとって特に関心のある基材である。しかし、本発明は、この部類の基材に限定されようとするものではない。当業者は、本明細書に記載されているコーティング方法が有益であり得る別の基材、例えば、医薬錠剤コア、アッセイ装置、又は診断キットの構成要素(例えば、試験片)を認めるであろう。
【0057】
本明細書では、「バイオメディカルインプラント」は、ヒト又は動物の対象の身体に挿入される任意のインプラントを表し、これらに限らないが、ステント(例えば、血管ステント)、電極、カテーテル、リード線、植え込み型のペースメーカー、カーディオバーター又は除細動器のハウジング、ジョイント、ねじ、棒、眼科用インプラント、大腿骨ピン、ボーンプレート(bone plate)、グラフト、吻合デバイス、周辺血管ラップ、縫合糸、ステープル、水頭症のためのシャント、透析グラフト、人工肛門用バック取付けデバイス、耳排液管、ペースメーカー並びに植え込み型のカーディオバーター及び除細動器のためのリード線、椎間板、ボーンピン(bone pin)、スーチャーアンカー、止血バリア、クランプ、ねじ、プレート、クリップ、血管インプラント、組織の接着剤及びシーラント、組織の足場材、様々なタイプの被覆材(例えば、創傷被覆材)、代用骨、管腔内デバイス、血管支持具などが含まれる。
【0058】
インプラントは適切な任意の材料から形作られていてよく、これらに限らないが、有機ポリマー(安定な又は不活性なポリマー及び生分解性ポリマーが含まれる)、金属、シリコンのような無機材料、及びこれらのコンポジット(1つの材料のコアと別の材料の1つ又は複数のコーティングを有する層状構造が含まれる)が含まれる。しかし、本発明は、導電性が低いか又は非導電性の基材を用いて静電気による捕捉を用いることを想定している。導電性材料からなる基材は静電気による捕捉を容易にする。非導電性基材が用いられる場合に、静電気による捕捉を向上させるために、基材近傍に強い電場を維持しながら、基材は処理される。
【0059】
本発明のバイオメディカルインプラントが適用又は挿入され得る対象には、ヒトの対象(男性及び女性の対象、並びに幼児、少年少女、思春期の若人、成人及び老人の対象が含まれる)、さらには獣医が扱う動物の対象(これらに限らないが、イヌ、ネコ、ウマ、モンキーなどが含まれる)の両方が含まれる。
【0060】
好ましい実施形態において、バイオメディカルインプラントは、Palmaz Shazの米国特許第4733665号に記載されているような、カテーテルと結び付いた、血管の管腔を広げ膨張させるための血管形成術バルーンによって血管内で膨張できる血管管腔内膨張性グラフト又はステント(例えば、ワイヤメッシュチューブを備える)である。
【0061】
本明細書では、「医薬」は、疾患を予防又は治療する(疾患を予防すること、すなわち、疾患の臨床症状が発生しないようにすること;疾患を抑制すること、すなわち、臨床症状の進展を阻むこと;及び/又は、疾患を和らげること、すなわち、臨床症状を軽減すること;を含めて、哺乳動物における疾患の何らかの治療を意味する)ための活性剤として使用できる様々な任意の薬剤又は医薬化合物を表す。本発明での医薬はまた、2種以上の薬剤又は医薬化合物を含むことも可能である。医薬には、これらに限らないが、以下が含まれる:抗再狭窄薬、抗糖尿病薬、鎮痛薬、抗炎症薬、抗リウマチ薬、抗低血圧薬、抗高血圧薬、精神活性剤、精神安定剤、制吐剤、筋弛緩薬、グルココルチコイド、潰瘍性大腸炎又はクローン病を治療するための製剤、抗アレルギー薬、抗生物質、抗てんかん薬、抗凝固薬、抗真菌薬、鎮咳薬、動脈硬化治療薬、利尿薬、タンパク質、ペプチド、酵素、酵素阻害薬、通風治療薬、ホルモン及びホルモン阻害薬、強心配糖体、免疫療法剤及びサイトカイン、下剤、脂質降下薬、偏頭痛治療薬、ミネラル製品、耳用の薬、抗パーキンソン剤、甲状腺治療薬、鎮痙薬、血小板擬集抑制剤、ビタミン、細胞増殖抑制剤及び転移抑制剤、植物薬、化学寮法剤及びアミノ酸。適切な活性成分の例は以下である:アカルボース、アンチゲン、ベータ−受容体遮断薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、強心配糖体、アセチルサリチル酸、ウイルス増殖抑制剤、アクラルビシン、アシクロビル、シスプラチン、アクチノマイシン、アルファ−及びベータ−交感神経様作用薬、メプラゾール(dmeprazole)、アロプリノール、アルプロスタジル、プロスタグランジン、アマンタジン、アンブロキソール、アムロジピン、メトトレキサート、S−アミノサリチル酸、アミトリプチリン、アモキシシリン、アナストロゾール、アテノロール、アザチオプリン、バルサラジド、ベクロメタゾン、ベタヒスチン、ベザフィブラート、ビカルタミド、ジアゼパム及びジアゼパム誘導体、ブデソニド、ブフェキサマク、ブプレノルフィン、メタドン、カルシウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カンデサルタン、カルバマゼピン、カプトプリル、セファロスポリン、セチリジン、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、テオフィリン及びテオフィリン誘導体、トリプシン、シメチジン、クラリスロマイシン、クラブラン酸、クリンダマイシン、クロブチノール、クロニジン、コトリモクサゾール、コデイン、カフェイン、ビタミンD及びビタミンD誘導体、コレスチラミン、クロモグリク酸、クマリン及びクマリン誘導体、システイン、シタラビン、シクロホスファミド、シクロスポリン、シプロテロン、シタバリン(cytabarine)、ダピプラゾール、デソゲストレル、デソニド、ジヒドララジン、ジルチアゼム、麦角アルカロイド、ジメンヒドリナート、ジメチルスルホキシド、ジメチコン、ドンペリドン及びドンペリドン誘導体、ドーパミン、ドキサゾシン、ドキソルビジン、ドキシラミン、ダピプラゾール、ベンゾジアゼピン類、ジクロフェナク、配糖体抗生物質、デシプラミン、エコナゾール、ACE阻害薬、エナラプリル、エフェドリン、エピネフリン、エポエチン及びエポエチン誘導体、モルフィナン類、カルシウムアンタゴニスト、イリノテカン、モダフィニル、オルリスタット、ペプチド抗体、フェニトイン、リルゾール類、リセドロネート、シルデナフィル、トピラマート、マクロライド抗菌薬、エストロゲン及びエストロゲン誘導体、プロゲストーゲン及びプロゲストーゲン誘導体、テストステロン及びテストステロン誘導体、アンドロゲン及びアンドロゲン誘導体、エテンザミド、エトフェナマート、エトフィブラート、フェノフィブラート、エトフィリン、エトポシド、ファムシクロビル、ファモチジン、フェロジピン、フェノフィブラート、フェンタニル、フェンチコナゾール、ジャイレース阻害薬、フルコナゾール、フルダラビン、フルアリジン(fluarizine)、フルオロウラシル、フルオキセチン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、フルタミド、フルバスタチン、フォリトロピン、ホルモテロール、ホスホマイシン、フロセミド、フシジン酸、ガロパミル、ガンシクロビル、ゲムフィブロジル、ゲンタマイシン、ギンコ、セントジョーンズワート、グリベンクラミド、経口抗糖尿病薬のような尿素誘導体、グルカゴン、グルコサミン及びグルコサミン誘導体、グルタチオン、グルセロール及びグリセロール誘導体、視床下部ホルモン、ゴセレリン、ジャイレース阻害薬、グアネチジン、ハロファントリン、ハロペリドール、ヘパリン及び誘導体、ヒアルロン酸、ヒドララジン、ヒドロクロロチアジド及びヒドロクロロチアジド誘導体、サリシレート、ヒドロキシジン、イダルビシン、イホスファミド、イミプラミン、インドメタシン、インドラミン、インスリン、インターフェロン、ヨウ素及びヨウ素誘導体、イソコナゾール、イソプレナリン、グルシトール及びグルシトール誘導体、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ケトプロフェン、ケトチフェン、ラシジピン、ランソプラゾール、レボドパ、レボメサドン(levomethadone)、甲状腺ホルモン、リポ酸及びリポ酸誘導体、リシノプリル、リスリド、ロフェプラミン、ロムスチン、ロペラミド、ロラタジン、マプロチリン、メベンダゾール、メベベリン、メクロジン、メフェナム酸、メフロキン、メロキシカム、メピンドロール、メプロバメート、メロペネム、メサラジン、メスキシミド、メタミゾール、メトホルミン、メトトレキサート、メチルフェニデート、メチルプレドニゾロン、メチキセン、メトクロプラミド、メトプロロール、メトロニダゾール、ミアンセリン、ミコナゾール、ミノサイクリン、ミノキシジル、ミソプロストール、マイトマイシン、ミゾラスチン、モエキシプリル、モルフィン及びモルフィン誘導体、イブニングプリムローズ、ナルブフィン、ナロキソン、チリジン、ナプロキセン、ナルコチン、ナタマイシン、ネオスチグミン、ニセルゴリン、ニセタミド(nicethamide)、ニフェジピン、ニフルミン酸、ニモジピン、ニモラゾール、ニムスチン、ニソルジピン、アドレナリン及びアデレナリン誘導体、ノルフロキサシン、ノバミンスルホン(novamine sulfone)、ノスカピン、ナイスタチン、オフロキサシン、オランザピン、オサラジン、オメプラゾール、オモコナゾール、オンダンセトロン、オキサセプロール、オキサシリン、オキシコナゾール、オキシメタゾリン、パントプラゾール、パラセタモール、パロキセチン、ペンシクロビル、経口ペニシリン、ペンタゾシン、ペンチフィリン、ペントキシフィリン、ペルフェナジン、ペチジン、植物抽出物、フェナゾン、フェニラミン、バルビツール酸誘導体、フェニルブタゾン、フェニトイン、ピモジド、ピンドロール、ピペラジン、ピラセタム、ピレンゼピン、ピリベジル、ピロキシカム、プラミペキソール、プラバスタチン、プラゾシン、プロカイン、プロマジン、プロピベリン、プロプラノロール、プロピフェナゾン、プロスタグランジン、プロチオナミド、プロキシフィリン、クエチアピン、キナプリル、キナプリラト、ラミプリル、ラニチジン、レプロテロール、レセルピン、リバビリン、リファンピシン、リスペリドン、リトナビル、ロピニロール、ロキサチジン、ロキシスロマイシン、ルスコゲニン、ルトシド及びルトシド誘導体、サバジラ、サルブタモール、サルメテロール、スコポラミン、セレギリン、セルタコナゾール、セルチンドール、セルトラリオン(sertralion)、シルケート、シルデナフィル、シンバスタチン、シトステロール、ソタロール、スパグルム酸、スパルフロキサシン、スペクチノマイシン、スピラマイシン、スピラプリル、スピロノラクトン、スタブジン、ストレプトマイシン、スクラルファート、スフェンタニル、スルバクタム、スルホンアミド、スルファサラジン、スルピリド、スルタミシリン、スルチアム、スマトリプタン、塩化スキサメトニウム、タクリン、タクロリムス、タリオロール(taliolol)、タモキシフェン、タウロリジン、タザロテン、テマゼパム、テニポシド、テノキシカム、テラゾシン、テルビナフィン、テルブタリン、テルフェナジン、テルリプレシン、テルタトロール、テトラサイクリン、テリゾリン(teryzoline)、テオブロミン、テオフィリン、ブチジン(butizine)、チアマゾール、フェノチアジン類、チオテパ、チアガビン、チアプリド、プロピオン酸誘導体、チクロピジン、チモロール、チニダゾール、チオコナゾール、チオグアニン、チオキソロン、チロプラミド、チザニジン、トラゾリン、トルブタミド、トルカポン、トルナフタート、トルペリゾン、トポテカン、トラセミド、抗エストロゲン剤、トラマドール、トラマゾリン、トランドラプリル、トラニルシプロミン、トラピジル、トラゾドン、トリアムシノロン及びトリアムシノロン誘導体、トリアムテレン、トリフルペリドール、トリフルリジン、トリメトプリム、トリミプラミン、トリペレナミン、トリプロリジン、トリホスファミド(trifosufamide)、トロマンタジン、トロメタモール、トロパルピン(tropalpin)、トロキセルチン、ツロブテロール、チラミン、チロトリシン、ウラピジル、ウルソデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、バラシクロビル、バルプロ酸、バンコマイシン、塩化ベクロニウム、バイアグラ、ベンラファキシン、ベラパミル、ビダラビン、ビガバトリン、ビロアジン(viloazine)、ビンブラスチン、ビンカミン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ビンポセチン、ビキジル、ワルファリン、ニコチン酸キサンチノール、キシパミド、ザフィルルカスト(zafirlukast)、ザルシタビン、ジドブジン、ゾルミトリプタン、ゾルピデム、ゾプリコン(zoplicone)、ゾチピン(zotipin)など。例えば、米国特許第6897205号を参照。また、米国特許第6838528号、米国特許第6497729号も参照。
【0062】
本発明に関連させて用いられる治療薬の例には、以下が含まれる:ラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシエチル)ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−ベンジル−ラパマイシン、40−O−(4’−ヒドロキシメチル)ベンジル−ラパマイシン、40−O−[4’−(1,2−ジヒドロキシエチル)]ベンジル−ラパマイシン、40−O−アリル−ラパマイシン、40−O−[3’−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4(S)−イル)−プロパ−2’−エン−1’−イル]−ラパマイシン、(2’:E,4’S)−40−O−(4’,5’−ジヒドロキシペンタ−2’−エン−1’−イル)−ラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシ)エトキシカルボニルメチル−ラパマイシン、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−(6−ヒドロキシ)ヘキシル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、40−O−[(3S)−2,2−ジメチルジオキソラン−3−イル]メチル−ラパマイシン、40−O−[(2S)−2,3−ジヒドロキシプロパ−1−イル]−ラパマイシン、40−O−(2−アセトキシ)エチル−ラパマイシン、40−O−(2−ニコチノイルオキシ)エチル−ラパマイシン、40−O−[2−(N−モルホリノ)アセトキシ]エチル−ラパマイシン、40−O−(2−N−イミダゾリルアセトキシ)エチル−ラパマイシン、40−O−[2−(N−メチル−N’−ピペラジニル)アセトキシ]エチル−ラパマイシン、39−O−デスメチル−39,40−O,O−エチレン−ラパマイシン、(26R)−26−ジヒドロ−40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン、28−O−メチル−ラパマイシン、40−O−(2−アミノエチル)−ラパマイシン、40−O−(2−アセトアミノエチル)−ラパマイシン、40−O−(2−ニコチンアミドエチル)−ラパマイシン、40−O−(2−(N−メチル−イミダゾ−2’−イルカルボエトキシアミド)エチル)−ラパマイシン、40−O−(2−エトキシカルボニルアミノエチル)−ラパマイシン、40−O−(2−トリルスルホンアミドエチル)−ラパマイシン、40−O−[2−(4’,5’−ジカルボエトキシ−1’,2’,3’−トリアゾール−1’−イル)−エチル]−ラパマイシン、42−エピ−(テトラゾリル)ラパマイシン(タクロリムス)、及び42−[3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロパノエート]ラパマイシン(テムシロリムス)。
【0063】
活性成分は、望まれる場合、薬学的に許容される塩又は誘導体(生物学的な有効性及び本発明での化合物の特性を保持し、生物学的に又は別の点で望ましくなくはない塩を意味する)の形で用いられてもよく、またキラルな活性成分の場合には、両方の光学活性異性体及びラセミ体又はジアステレオマー混合物を用いることが可能である。
【0064】
本明細書では、「安定性」は、最終的な製品の形態において、基材に付着されたポリマーコーティング中の薬剤の安定性(例えば、コーティングされたステントにおける薬剤の安定性)を表す。安定性という用語は、最終の製品形態における医薬の劣化を5%以下に限るであろう。
【0065】
本明細書では、「活性生物学的製剤」は、疾患を予防又は治療する(疾患を予防すること、すなわち、疾患の臨床症状が発生しないようにすること;疾患を抑制すること、すなわち、臨床症状の進展を阻むこと;及び/又は、疾患を和らげること、すなわち、臨床症状を軽減すること;を含めて、哺乳動物における疾患の何らかの治療を意味する)ために使用できる、元々は生物によって産出された物質を表す。本発明での活性生物学的製剤はまた、2種以上の活性生物学的製剤を、或いは、医薬、安定剤又は化学的若しくは生物学的物質(entity)と組み合わせた1種の活性生物学的製剤を含むこともあり得る。活性生物学的製剤は、元々は生物によって産出されたかもしれないが、本発明でのこれらは、合成によって調製されていても、或いは、生物学的分離と合成による修飾とを組み合わせた方法によっていてもよい。非限定的例として、核酸は、生物原料から単離された形であるか、或いは、核酸合成の当業者に知られている通常の技法によって調製され得る。さらに、核酸は天然には生じない部分を含むようにさらに修飾されていてもよい。活性生物学的製剤の非限定的例には、ペプチド、タンパク質、酵素、糖タンパク質、核酸(1本又は2本鎖のいずれかの形態にあるデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドのポリマーが含まれ、特に断らなければ、天然に産するヌクレオチドに類似の仕方で核酸とハイブリッド形成する天然のヌクレオチドの知られているアナローグが包含される)、アンチセンス核酸、脂肪酸、抗菌剤、ビタミン、ホルモン、ステロイド、脂質、多糖、炭水化物などが含まれる。活性生物学的製剤には、さらに、これらに限らないが、抗再狭窄薬、抗糖尿病薬、鎮痛薬、抗炎症薬、抗リウマチ薬、抗低血圧薬、抗高血圧薬、精神活性剤、精神安定剤、制吐剤、筋弛緩薬、グルココルチコイド、潰瘍性大腸炎又はクローン病を治療するための製剤、抗アレルギー薬、抗生物質、抗てんかん薬、抗凝固薬、抗真菌薬、鎮咳薬、動脈硬化治療薬、利尿薬、タンパク質、ペプチド、酵素、酵素阻害薬、通風治療薬、ホルモン及びホルモン阻害薬、強心配糖体、免疫療法剤及びサイトカイン、下剤、脂質降下薬、偏頭痛治療薬、ミネラル製品、耳用の薬、抗パーキンソン剤、甲状腺治療薬、鎮痙薬、血小板擬集抑制剤、ビタミン、細胞増殖抑制剤及び転移抑制剤、植物薬、化学療法剤及びアミノ酸が含まれる。好ましくは、活性生物学的製剤はペプチド、タンパク質又は酵素であり、天然のペプチド、タンパク質又は酵素の誘導体及びアナローグも含まれる。
【0066】
本明細書では、「活性」は、疾患を予防又は治療する(疾患を予防すること、すなわち、疾患の臨床症状が発生しないようにすること;疾患を抑制すること、すなわち、臨床症状の進展を阻むこと;及び/又は、疾患を和らげること、すなわち、臨床症状を軽減すること;を含めて、哺乳動物における疾患の何らかの治療を意味する)、医薬又は活性生物学的製剤の能力を表す。したがって、医薬又は活性生物学的製剤の活性は、治療上又は予防上の価値のあるものでなければならない。
【0067】
本明細書では、「2次、3次及び4次構造」は、次の様に定義される。本発明での活性生物学的製剤は、通常、いくらかの程度の2次、3次及び/又は4次構造(これらに製剤の活性は依存する)を有するであろう。例示的で非限定的な例として、タンパク質は2次、3次及び4次構造を有する。2次構造は、1次配列において互いに近いアミノ酸残基の空間配置を表す。α−へリックス及びβ−ストランドは2次構造の要素である。3次構造は、1次配列において遠く離れたアミノ酸残基の空間配置及びジスルフィド結合のパターンを表す。2つ以上ペプチド鎖を含むタンパク質は、さらなる段階の構造組織化を示す。このようなタンパク質における各ペプチド鎖はサブユニットと呼ばれる。4次構造は、サブユニットの空間配置及びサブユニットの接触の特質を表す。例えば、ヘモグロビンは2つのα鎖及び2つのβ鎖からなる。タンパク質の機能は、そのコンフォメーション又は原子の3次元配置から生じることがよく知られている(伸びたペプチド鎖は活性をもっていない)。こうして、本発明の一態様は、治療上の活性を失わないように活性生物学的製剤のコンフォメーションを保持するように注意しながら、活性生物学的製剤を扱うことである。
【0068】
本明細書では、「ポリマー」は、架橋しているか又は重合している一続きの繰返しモノマー単位を表す。本発明を実施するために適切な任意のポリマーを用いることができる。本発明でのポリマーはまた、2種、3種、4種又はそれ以上の異なるポリマーを含むことも可能である。本発明のいくつかの実施形態において、1種のみのポリマーが用いられる。いくつかの好ましい実施形態において、2種のポリマーの組合せが用いられる。ポリマーの組合せは、様々な性質を有するコーティングを得るために、様々な比率であり得る。ポリマー化学の当業者は、ポリマーコンパウンドの様々な性質に通じているであろう。本発明において使用され得るポリマーの例には、これらに限らないが、ポリカルボン酸、セルロース系ポリマー、タンパク質、ポリペプチド、ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸ポリマー類、ポリアミド、ポリビニルアルコール類、ポリエチレンオキシド類、グリコサミノグリカン、多糖、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスチレン類、コポリマー、シリコーン、ポリオルトエステル、ポリアンヒドリド、ビニルモノマーのコポリマー、ポリカルボネート類、ポリエチレン類、ポリプロピレン類、ポリ乳酸類、ポリグリコール酸類、ポリカプロラクトン類、ポリヒドロキシブチレート−バレレート類、ポリアクリルアミド、ポリエーテル、ポリウレタン分散体、ポリアクリレート、アクリルラテックス分散体、ポリアクリル酸、これらの混合物及びコポリマーが含まれる。本発明でのポリマーは、天然又は合成由来であってよく、ゼラチン、キトサン、デキストリン、シクロデキストリン、ポリ(ウレタン)、ポリ(シロキサン)又はシリコーン、ポリ(アクリレート)(例えば、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、及びポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート))、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(オレフィン)(例えば、ポリ(エチレン)、ポリ(イソプレン))、ハロゲン化ポリマー(例えば、ポリ(テトラフルオロエチレン)−並びに、Teflon(登録商標)製品として広く販売されているもののような誘導体及びコポリマー、ポリ(フッ化ビニリデン))、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アクリル酸)、ポリアクリルアミド、ポリ(エチレン−コ−酢酸ビニル)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(メタクリル酸)、などが含まれる。適切なポリマーにはまた吸収性及び/又は再吸収性のポリマーが含まれ、以下のもの、以下のものの組合せ、コポリマー及び誘導体が含まれる:ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(乳酸−コ−グルコール酸)(PLGA)ポリアンヒドリド、ポリオルトエステル、ポリ(N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)、ポリ(l−アスパルトアミド)など。
【0069】
本明細書では、「治療上望ましいモルホロジー」は、ex vivoでの保管、in vivoでの維持及び/又はin vivoでの放出についての最適な条件にあるように、基材にすでに付着された医薬の塊としての(gross)形態及び構造を表す。このような最適な条件には、これらに限らないが、増加した貯蔵寿命、増大したin vivo安定性、良好な生体適合性、良好な生物学的利用率、又は調節された放出速度が含まれ得る。通常、本発明では、医薬に望まれるモルホロジーは、結晶性若しくは半結晶性又はアモルファスであろうが、これは、多くの要因(これらに限らないが、医薬の特質、治療/予防される疾患、使用前の基材の想定される保管条件、又は任意のバイオメディカルインプラントの身体内での位置が含まれる)に依存して広く変わり得る。好ましくは、医薬の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%が、結晶性又は半結晶性の状態にある。
【0070】
本明細書では、「安定剤」は、生物学的製剤の安定性を保つ、又は増大させる任意の物質を表す。理想的には、これらの安定剤は、米国食品医薬品局(FDA)によって、一般に安全と認められる(Generally Regarded As Safe、GRAS)として分類される。安定剤の例には、これらに限らないが、輸送タンパク質(例えば、アルブミン)、ゼラチン、金属又は無機塩が含まれる。存在し得る薬学的に許容される添加剤は、さらに、関連文献に、例えば、医薬添加剤ハンドブック:商品名、化学、機能、及び製造者による6000を超える製品に対する国際指針(Handbook of Pharmaceutical Additives:An International Guide to More Than 6000 Products by Trade Name,Chemical,Function,and Manufacturer)(Michael and Irene Ash(Eds.);Gower Publishing.Ltd.;Aldershot,Hampshire,England;1995)に見出すことができる。
【0071】
本明細書では、「圧縮流体」は、標準温度及び圧力で気体である、かなりの程度の密度(例えば、>0.2g/cc)の流体を表す。本明細書では、「超臨界流体」、「臨界点近傍流体」、「超臨界点近傍流体」、「臨界流体」「高密度流体」又は「高密度ガス」は、温度が流体の臨界温度の少なくとも80%であり、圧力が流体の臨界圧力の少なくとも50%である条件下の圧縮流体を表す。
【0072】
本発明に適する、超臨界又は臨界点近傍の挙動を示す物質の例には、これらに限らないが、二酸化炭素、イソブチレン、アンモニア、水、メタノール、エタノール、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ジメチルエーテル、キセノン、六フッ化硫黄、ハロゲン化及び部分ハロゲン化物質、例えば、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン(例えば、パーフルオロメタン及びパーフルオロプロパン)、クロロホルム、トリクロロ−フルオロメタン、ジクロロ−ジフルオロメタン、ジクロロ−テトラフルオロエタン)並びにこれらの混合物が含まれる。
【0073】
本明細書では、「焼結」は、マトリックスの一部又はポリマーマトリックスの全体が連続になること(例えば、連続ポリマーフィルムの生成)を表す。下に記載されるように、焼結プロセスは、完全に表面に沿う連続マトリックスを生じるように(完全焼結)、又は、連続コーティングの部分又はドメインを生じると同時に、マトリックスにボイド(不連続部分)を生じるように、制御される。また、焼結プロセスは、何らかの相分離が、異なるポリマー(例えば、ポリマーA及びB)の間で生じるように、及び/又は、別個のポリマー粒子の間で相分離を生じるように、制御される。焼結プロセスを通して、コーティングの接着性が向上して、使用する操作の間の基材からのコーティングのフレーキング又は脱離を減らす。下に記載されるように、いくつかの実施形態において、焼結プロセスは、ポリマーマトリックスの不完全焼結を生じるように制御される。不完全焼結を含む実施形態においては、連続ドメインと、制御された条件下で放出される治療薬を封鎖するためのスペースを提供するボイド、ギャップ、キャビティ、ポア、チャネル又は裂け目とを有するポリマーマトリックスが生成される。ポリマーの特質に応じて、ポリマー粒子の大きさ及び/又は他のポリマーの性質、圧縮ガス、高密度ガス、臨界点近傍流体又は超臨界流体が用いられ得る。1つの例において、二酸化炭素が、乾燥粉末及びRESS静電コーティング法を用いて、ポリマー及び薬剤によりコーティングされた基材を処理するために用いられる。別の例において、イソブチレンが焼結プロセスにおいて用いられる。他の例において、二酸化炭素及びイソブチレンの混合物が用いられる。
【0074】
アモルファス材料がそのガラス転移温度を超える温度に加熱されるか、又は、結晶性材料が相転移温度を超える温度に加熱されると、材料を構成する分子はより動きやすく、別の面から見ると、これは、分子がより活性であるために酸化のような反応をしがちであることを意味する。しかし、アモルファス材料がそのガラス転移温度未満の温度に保たれると、その分子は実質的に固定化されているので、より反応しにくい。同様に、結晶性材料がその相転移温度未満に保たれると、その分子は実質的に固定化されているので、より反応しにくい。したがって、温和な条件(例えば、本明細書に記載されている付着及び焼結条件)で薬剤成分を処理することにより、薬剤成分の交差反応及び劣化は最少化される。本発明の方法によって最少化される反応の1つのタイプは通常の溶媒を回避できることに関連し、別の面から見れば、このことにより、アモルファス、半結晶、又は結晶の状態にあるかどうかに関係なく、フリーラジカル、残留溶媒及び自動酸化開始剤への薬剤の暴露を減らすことによって薬剤の自動酸化が最少化される。
【0075】
本明細書では、「超臨界溶液の急速膨張(Rapid Expansion of Supercritical Solutions)」すなわち「RESS」は、圧縮流体(典型的には超臨界流体)へのポリマーの溶解と、それに続く、低圧(典型的には大気圧近傍)のチャンバへの急速膨張を含む。密度の減少を伴う、小さな開口部を通しての超臨界流体溶液の急速膨張は、流体の溶解容量を低下させ、結果としてポリマー粒子の核生成及び成長が起こる。チャンバの雰囲気は、チャンバ内に絶縁性のガス「雲(cloud)」を維持することによって、電気的に中性に保たれる。基材から周囲の環境に電荷が移されることを防ぐために、二酸化炭素又は他の適当なガスが用いられる。
【0076】
本発明の方法によって向上され得る、医薬又は生物学的製剤を含むコーティングの「バルクの性質」には、例えば、接着性、平滑性、表面に沿う性質、厚さ、及び組成混合が含まれる。
【0077】
本明細書では、「Solution Enhanced Dispersion of Supercritical Solutions」又は「SEDS」は、ポリマー粒子生成のためのスプレー法を含み、ポリマー粒子は、ポリマーが溶けているビヒクル(ポリマー及び圧縮流体の両方を溶かすことができるもの)に対する希釈剤として圧縮流体(例えば、超臨界流体、好ましくは超臨界CO2)が用いられた時に、形成される。圧縮流体希釈剤とポリマー含有溶液との混合は、例えば、1つの共軸スプレーノズル内で、或いは複数のスプレーノズルの使用によって、又は混合ゾーンに一緒に入る複数の流体の流れの使用によって、ポリマー溶液を含む第1の流れと圧縮流体希釈剤を含む第2の流れとが出会うことによって達成され得る。ポリマー溶液の溶媒は1つの化合物であっても、2種以上の成分の混合物であってもよく、アルコール(ジオール、トリオールなども含まれる)、エーテル、アミン、ケトン、炭酸エステル、又はアルカン、又は炭化水素(脂肪族若しくは芳香族)であっても、これらを含んでいてもよく、或いは、化合物の混合物、例えば、アルカンの混合物、又は、1種若しくは複数のアルカンを1種若しくは複数のアルコール(例えば、0又は0.1から5%のC1からC15のアルコール(ジオール、トリオールなども含まれる))のようなさらなる化合物と組み合わせた混合物であってもよい。例えば、米国特許第6669785号を参照。溶媒は、例えば米国特許第6669785号にやはり記載されているように、界面活性剤を任意選択で含んでいてもよい。
【0078】
SEDS法の一実施形態において、共通溶媒に溶解したポリマーを含む第1の流体の流れが、圧縮流体の第2の流れと共にスプレーされる。ポリマー粒子は、第2の流れが、第1の流れのポリマー溶液の溶媒を弱める希釈剤として働くにつれて生成される。今や一緒になった流体の流れは、ポリマー粒子と共に、捕集容器へと流れる。SEDS法の別の実施形態において、共通溶媒に溶解した薬剤を含む第1の流体の流れが、圧縮流体の第2の流れと共にスプレーされる。薬剤粒子は、第2の流れが、第1の流れの薬剤溶液の溶媒を弱める希釈剤として働くにつれて生成される。今や一緒になった流体の流れは、薬剤粒子と共に、捕集容器へと流れ出る。粒径、粒径分布、及びモルホロジーの制御は、次のプロセス変数を目的に合わせることによって達成される:温度、圧力、第1の流れの溶媒組成、第1の流れの流量、第2の流れの流量、第2の流れの溶媒組成(この場合、可溶性添加剤が圧縮ガスに添加され得る)、及び捕捉容器の状態。通常、捕捉容器は、大気圧の少なくとも5から10倍(5〜10倍)である流体相を含む。
【0079】
本明細書では、「静電荷電による」又は「電位による」又は「静電気による捕捉」は、スプレーされた粒子とは異なる静電位を有する基材への、スプレーにより生成した粒子の捕集を表す。このように、基材は、出て行く粒子に対して引き付ける電位にあるので、結果的に基材への粒子の捕捉が起こる、すなわち、基材及び粒子は反対に荷電しており、捕捉容器の流体媒体を通しての基材表面への粒子の輸送は、静電気による引力により増大する。これは、粒子を荷電させ、基材を接地することによって、又は、逆に、基材を荷電させ、粒子を接地することによって、或いは他の何らかの方法によって達成することができ、これらは静電気による捕捉の当業者には容易に思い描けるであろう。
【0080】
本明細書では、「開放容器」は、外気に対して開いており、したがって外気と実質的に同じ温度及び圧力にある容器を表す。
【0081】
本明細書では、「閉鎖容器」は、外気から密封され、したがって外気とはかなり異なる温度及び圧力にあり得る容器を表す。
【実施例】
【0082】
以下の実施例は、当業者が本発明をより明瞭に理解でき、実施できるようにするために記載される。これらは、本発明の範囲の限定でなく、本発明の例示及び代表的なものであると見なされるべきである。
【0083】
(実施例1)
プロセス装置
本研究において使用されるRESS法の装置は、図1に示されている。これは、RESS装置の一般的なデザインである(C.Domingo et al,Journal of Supercritical Fluids 10,39−55(1997))を参照)。本研究において使用されるSEDS装置は図2及び10に示されている。図2は一般的なSEDS装置を示し、図10は、スプレーされた粒子を静電気により捕捉する、2ノズルデザインを用いる装置を示す。ノズルのオリフィスの大きさは粒径を制御するために用いることができる。図3は、図2及び10に示されているSEDS装置のノズルデザインを示す。図4は、代表的な医用治療薬低分子、2種のポリマー及びこれらの成分の混合物のFTIRを示す。各分子に特有のIR伸縮が同定され標識されている。図5は、様々な条件下に医薬及びポリマーによりコーティングされた植え込み可能なメディカルデバイスを示す。図6は焼結前後の3成分コーティングの赤外スペクトルを示す。このスペクトルは、焼結後のスペクトルに新しい伸縮が全く現れていないので、焼結プロセスがコーティングに悪影響を及ぼさないことを例示している。図7はスプレーされたラパマイシンの広視野(左枠)及び狭視野(右枠)画像を示す。結晶及びアモルファスラパマイシンの両方が画像に見られる。図8は、真正のラパマイシン試料、RESSによりスプレーされたラパマイシン、及びSEDSによりスプレーされたラパマイシンについて取られたXRDデータを示す。RESSによりスプレーされたラパマイシンは、XRDに回折ピークがないことによって示されるように、如何なる結晶性もない。SEDSによりスプレーされたラパマイシンは、真正の試料と同じ回折ピークを有し、2つの物質が同じであることを示している。図9は、SEDS法を用いる粒径制御を例示する。上左には、2500psiに保たれた、基材(窓の底の部分の水平線)を含む観察室(view cell)の光学写真がある。下左の画像にSEM顕微鏡写真があり、平均で約35nmの大きさの凝集した粒子を示している。図9の上右の枠は、1200psiに加圧された観察室の光学写真を示す。粒子は、画像において基材の上方の粒子の雲によって明瞭であるように、光を散乱するのに十分なだけ大きい。図9の下右の枠は、粒径がほぼ20ミクロンであることを示す。図10は、2ノズルデザイン、及びSEDSによりスプレーされた粒子の静電気による捕捉のために用いられる新規高圧電源を有するSEDSスプレー装置を示す。最低イオン化ポテンシャルを有する成分より低い電圧で運転することによって、SEDSによりスプレーされた粒子の静電捕捉は実現できる。
【0084】
(実施例2)
一般的なスプレーコーティング1
溶媒に飽和したか、又は溶媒に過飽和になった治療化合物を含む溶液を、大気圧を超えて加圧されメディカルデバイス基材を含む既知容積のチャンバへの流れを実現するのに十分な流量でスプレーする。装置の温度は、溶液又は混合物又はその個々の成分のいずれかの相図における多数の点を、液体、ガス又は超臨界CO2状態を構成する、圧力−温度、容積−圧力又は圧力−容積の空間において辿ることができるように、一定に保つか、又は、変えられる。何らかの単一相又は相の組合せのCO2が、5g/minからこの流量の何倍かまでの質量流量でチャンバを通して流れる。数秒から数分又は数時間の範囲の時間が経った後、治療化合物と選ばれた1種又は複数の溶質に適する溶媒との溶液である、溶質及び溶媒の流れは止まるが、CO2の流れはさらなる時間の間続き、この時間の間、圧力を一定に保つ。この時間の後、圧力を大気圧まで下げる。スプレーコーティングプロセスの間、5000Vを超えるが、混合物中の最もイオン化されやすい成分のイオン化ポテンシャルよりは低い電圧を加えることにより、スプレーされる粒子の電荷とは反対に基材を荷電させることによって、粒子は医用基材に引き付けられる。粒子はまた、場が標的に粒子を誘導するように用いられる電磁場を横切ってもよい。
【0085】
(実施例3)
スプレーコーティング2
治療化合物を含む、1種の溶媒と別の混和性溶媒との等部数の溶液を、その化合物が飽和しないように調製する。この溶液を、1mL/minから100mL/minの範囲の既知流量で、容積既知で大気圧を超えて加圧されたチャンバにスプレーする。装置の温度は、溶液又は混合物又はその個々の成分のいずれかの相図における多数の点を、圧力−温度、容積−圧力又は圧力−容積の空間において辿ることができるように、一定レベルに保つか、又は変えられる。CO2がチャンバを通して、既知の流量で流れる。スプレーはある時間の後に止めるが、CO2の流れは、チャンバ容積がCO2により置き換えられたか、又は如何なる残留溶媒若しくは共溶媒もチャンバから除去されるのに十分な回数置換されたことが保証されるのに十分なさらなる時間の間続き、その後、圧力を大気圧まで下げる。上の実施例におけるように、スプレー法において生成する粒子は、それらが生成するにつれて静電気により医用基材に捕集される。
【0086】
(実施例4)
スプレーコーティング3
乾燥結晶粉末状の治療化合物を、ステントに向けて、乾燥粉末コーティング法を用いてノズルを通してスプレーする。別個のノズルから、ポリマー及び共溶媒を含むCO2溶液、又はジメチルエーテルのような適切な溶媒に調製したポリマー溶液を、ステントに向けてスプレーする。CO2の流量は変えられる。ステント及び治療化合物の温度は、熱に弱い治療化合物の劣化を防ぐために室温又は室温未満に保たれるが、ポリマー溶液の温度は、超臨界溶液又は臨界点近傍溶液が存在するように、溶媒の臨界温度及び圧力より上に保たれる。粒子は、前の実施例に記載したように、生成中に、或いは、それらが乾燥粉末スプレーノズルを出て行くにつれて静電気により捕集される。
【0087】
(実施例5)
均一な表面コーティング
超臨界溶液の急速膨張(RESS)の一連の実験において、静電気による捕捉を用い、組成及び厚さを制御して動脈ステントを均一にコーティングする能力が実証された。この技法は、本明細書に記載されているスプレーコーティング及び捕集技法を用い、ラパマイシンのような治療化合物とPBMA及びPEVAのようなポリマーとの等部数混合物をスプレーすることを含む。コーティングの組成を求めるために、赤外分光法を用いて、動脈ステントと同時にコーティングしたシリコンウェハーチップのスペクトルを取った(図4)。混合物成分の各々に対する特有の吸収バンドを同定し、バンドの面積を、コーティングにおける各成分の組入れを求める計量として用いた。
【0088】
組成分析のために用いた特有のバンドは、各成分を別々にスプレーコーティングしたSiウェハーチップよって求めた。コーティングの厚さは、重量測定によって求め、材料の密度から計算した。層は完全に密であると仮定した。厚さは、スプレー時間を変えることによって調節できる。スプレーされただけの状態では、コーティングは基材への強い接着性をもっていない。コーティングした基材を焼結すると(図5参照)、コーティングの接着性は劇的に向上し、同時に、図6に示す赤外スペクトルが裏づけるように、成分は変化しないままであった。コーティングは、超臨界二酸化炭素環境中で焼結し、80℃未満の温度での温和な焼結条件を用いることができる。
【0089】
(実施例6)
結晶ラパマイシンのスプレーコーティング
ラパマイシンを結晶状にスプレーにより付着させるために、二酸化炭素に基づくいくつかのスプレーコーティング法を、ラパマイシンのモルホロジーの制御に成功しないRESSを含めて、試みた。SEDSコーティング法の1つは、図7及び8に示すように、結晶ラパマイシンをスプレーコーティングするのに成功した。ラパマイシンで飽和した10部のヘキサン及び9部のTHFの溶液を、0.5mL/minで、二酸化炭素で82barに加圧した25mLのチャンバにスプレーした。装置の温度は、液体CO2の条件を構成する25℃で一定に保つ。CO2は、加圧チャンバを通して5g/minの質量流量で流れる。5分経過した後、薬剤及びポリマーのスプレーを止めるが、CO2はさらに20分間さらに流し続け、この時間の間、一定圧力を保つ。この時間の後、圧力を大気圧に下げる。粒子は、5000Vを超えるが、混合物の最もイオン化されやすい成分のイオン化ポテンシャルより低い電圧を加えることによって粒子の電荷と反対に基材を荷電させることにより、基材に引き付けられる。
【0090】
SEM画像が図7に示すように、結晶ラパマイシンが基材に付着し、結晶の大きさはその主軸に沿って約2ミクロンで(図の右の枠)、大きな結晶凝集体が基材の表面にわたって分布している(左の枠)。
【0091】
図8に示すXRDの回折ピークは、スプレーによるラパマイシン(最も下のスペクトル)は受け取ったままのラパマイシン(中間のスペクトル)とピーク毎に符合しているので、ラパマイシンとしての結晶の同一性を裏づける。結晶ラパマイシンをスプレーする別の失敗した試みについてのXRDの結果(上側のスペクトル)は、比較の目的で含めてある。図8の一番上の軌跡データとして示されるアモルファス回折パターンはRESSによりスプレーした試料から得たものであり、また、極性溶媒だけ又は非極性溶媒だけを用いるSEDSに基づく手法を用い、結晶ラパマイシンをスプレーしようとする失敗した試みの代表的なものでもある。この一連の実験の目標は、ラパマイシンを結晶状にスプレーできる二酸化炭素による手法を例示することであった。結晶の大きさ、被覆の均一性、又は凝集を制御するために如何なる試みも行わなかった。
【0092】
(実施例7)
粒径制御
図9は、異なる圧力条件下のSEDSスプレー法についての光学及び電子顕微鏡による比較を示す。図9(a)は、CO2が1200psi、25℃で存在する観察室を撮った光学写真を示す。ノズルが、ほぼ11時の位置に、観察室の左から始まる、角度をなす直線として見える。基板は観察室の底部に水平線として見える。図9(c)は、9(a)の観察室から取り出した基板に付着した粒子の走査電子顕微鏡写真である。走査電子顕微鏡写真のスケールにより粒径がわかる。
【0093】
図9(b)は、CO2が2500psi、25℃で存在する観察室を撮った光学写真を示す。ノズルが、ほぼ11時の位置に、観察室の左から始まる、角度をなす直線として見える。基板は観察室の底部に水平線として見える。図9(d)は、9(b)の観察室から取り出した基板に付着した粒子の走査電子顕微鏡写真である。走査電子顕微鏡写真のスケールにより粒径がわかる。これらの画像は、粒径及びモルホロジーを制御できることを実際に示している。これらの2つの特徴は、溶出速度がこれら2つのパラメータによって影響され得るので、重要である。
【0094】
(実施例8)
さらなるプロセス装置
さらなる装置を図10に示す。この装置は、静電気による捕捉と共にSEDS法を用い、ラパマイシンを結晶状にスプレーするのに用いられる。この装置の独特の特徴は、デュアルノズルデザイン、及びスプレーされた粒子の静電気による捕捉を可能にする高電圧経路である。他の点では、このデザインは他のSEDS装置に似ている。デュアルノズルは、ポリマー及び薬剤のスプレーを互いに分け、このことは、別の成分と一緒にスプレーされたポリマーは、非ポリマー成分が所望のモルホロジーで粒子を生成できるかどうかに影響し得ることが示されたので、重要である。しかし、両方の成分は同じチャンバにスプレーされるので、粒子は1点で捕集できる。高電圧経路は、スプレーされた成分が所望の基材上に静電気により捕捉されることを可能にする。
【0095】
(実施例9)
イソブチレン中にポリエチレン−コ−酢酸ビニル(polyethylene−co−vinyl acetate,PEVA)及びポリブチルメタクリレート(PBMA)を含む超臨界溶液の調製
75mgのPEVA及び75mgのPBMAを、25mLの観察室に入れる。観察室を150℃に加熱する。イソブチレンを3000psigの圧力になるまで加える。これらの条件下に、透明溶液が生じた。
【0096】
(実施例10)
イソブチレン中にポリエチレン−コ−酢酸ビニル(PEVA)及びポリブチルメタクリレート(PBMA)を含む超臨界溶液の調製
150mgのPEVA及び150mgのPBMAを、25mLの観察室に入れる。観察室を150℃に加熱する。イソブチレンを4000psigの圧力になるまで加える。これらの条件下に、透明溶液が生じた。
【0097】
(実施例11)
イソブチレン及びCO2中にポリエチレン−コ−酢酸ビニル(PEVA)及びポリブチルメタクリレート(PBMA)を含む超臨界溶液の調製
75mgのPEVA及び75mgのPBMAを、25mLの観察室に入れ、観察室を150℃に加熱する。イソブチレンを4000psigの圧力になるまで加えると透明な溶液を生じる。10(v/v%)のCO2を加える。この体積パーセントのCO2の添加は、溶解したポリマーを析出させない。
【0098】
(実施例12)
イソブチレン及びCO2中にポリエチレン−コ−酢酸ビニル(PEVA)及びポリブチルメタクリレート(PBMA)を含む超臨界溶液の調製
150mgのPEVA及び150mgのPBMAを、25mLの観察室に入れ、観察室を150℃に加熱する。イソブチレンを4000psigの圧力になるまで加えると透明な溶液を生じる。10(v/v%)のCO2を加える。この体積パーセントのCO2の添加は、溶解したポリマーを析出させない。しかし、より大きな体積分率でCO2を加えると、これらの条件下では、ポリマーが析出する。
【0099】
(実施例13)
荷電した316ステンレス鋼試片への乾燥粉末ラパマイシンのコーティング
ラパマイシンコーティングの標的基材としての役目を果たす1cm×2cmのステンレス鋼金属試片を、容器に入れ、高電圧電極に結び付けた。容積が約1500cm3の容器(V)は、ラパマイシン又はポリマーを容器に選択的に導入できる2つの別個のノズルを装備していた。どちらのノズルも接地した。さらに、容器(V)は、容器をパージングに利用できる別個のポートを装備していた。1つのノズル(D)の上流に、入口及び出口として用いる3つのポートを有し、容積が約5cm3の小さな圧力容器(PV)があった。各ポートは、開閉動作のできるバルブを装備していた。入口として用いる1つのポート(ポート(1))は、乾燥粉末ラパマイシン用の添加ポートであった。やはり入口であるポート(2)は、加圧ガス、液体、又は超臨界流体をPVに供給するために用いた。出口として用いたポート(3)は、圧力容器(PV)と、標的試片を有する主容器(V)に含まれるノズル(D)とを連結するために用いた。約3ミクロンの平均粒径にミル加工した50mgの主に結晶固体状の乾燥粉末ラパマイシン(LC Laboratoriesから入手)を、ポート(1)を通して(PV)に入れ、次いでポート(1)を閉の位置に動かした。次に、二酸化炭素ガスを、20℃で、400から600psigの圧力まで、ポート(2)を通して加え、次いで、ポート(2)をガスに供給源に対して閉じた。次に、Glassman Series EL高圧電源を用いて、金属試片に40kVの電圧を加えた。次いで、ポート(3)を動かして開き、試片に電圧を加えたままで、加圧した二酸化炭素及びラパマイシン粉末が容器(V)に広がれるようにした。約60秒後に、電圧を解除し、試片を取り出した。光学顕微鏡を用いて試片を見て調べて、電圧リード線によって遮蔽された小さな部分以外の試片表面全体が、比較的一様に分布した粉末材料により覆われていることを確認した。X線回折(XRD)により、粉末材料は、金属試片に付着した状態で、大部分結晶性であることを確認した。UV−Vis及びFTIR分光法により、試片に付着した材料がラパマイシンであることを確認した。
【0100】
(実施例14)
電気を用いない、316ステンレス鋼試片への乾燥粉末ラパマイシンのコーティング
試片を実施例13に記載したものと同じやり方でコーティングした。しかし、粉末コーティング実験の全体を通して試片に電位は全く加えなかった。二酸化炭素及び粉末ラパマイシンが容器(V)に広がった後、約60秒後に、試片を取り出し、評価した。光学顕微鏡を用いて試片を分析し、試片の表面の多くに、いくらかの乾燥粉末材料が示された。しかし、薬剤による表面の被覆は実施例1よりずっと少なく、試片表面の異なる位置で被覆に、著しく多くの変動があった。粉末コーティングの全量は実施例1において結晶ラパマイシンであると認められた量の約1/3であると見積もられた。
【0101】
(実施例15)
液化ガスからの急速膨張を用いる、荷電した316ステンレス鋼試片へのポリマーコーティング
上の実施例13に記載したコーティング装置をこの実施例において用いた。この実施例では、第2ノズル(ノズル(P))を用いて、316ステンレス鋼試片をコーティングするために容器(V)に、析出したポリマー粒子を供給した。ノズル(P)に、液化ガスの膨張による熱損失を最少化するために、ヒーター及び制御装置を装備した。ノズル(P)の上流に、約25cm3の内容積の圧力容器(PV2)があった。圧力容器(PV2)は、入口、出口、熱電対、及び圧力変換器として使用される複数のポートを装備していた。さらに、(PV2)に、ヒーター及び温度制御装置を装備した。各ポートは、圧力容器(PV2)への、またそこからの材料の適切な制御を保証するための、適切なバルブ、計量バルブ、圧力調節器、又はプラグに連結した。(PV2)からの1つの出口は、定格耐圧管を通して計量バルブに連結し、次いで、定格耐圧管を容器(V)に位置するノズル(P)に連結した。実験では、75mgのポリエチレン−コ−酢酸ビニル(PEVA)(約33重量パーセントが酢酸ビニル、Aldrich Chemical Companyから入手)及び75mgのポリ(ブチルメタクリレート)(PBMA)(やはり、Aldrich Chemical Companyから入手)を、圧力容器(PV2)に入れた。ジクロロフルオロメタン(20.0グラム)を、バルブ及び入口を通して、圧力容器(PV2)に加えた。次いで、圧力容器(PV2)を40℃に加熱し、切り離された容器の内部の圧力を約40psigに高めた。ノズル(P)は120℃に加熱した。(PV2)内部の液化ガスに2種のポリマーを溶かすのに十分な時間の後、ヘリウム源タンク及び2段階圧力調節器を用いて、容器(PV2)をヘリウムにより約200psigに過剰加圧した。ヘリウム置換技術の説明については米国特許第6905555号を参照。1cm×2cmの316ステンレス鋼試片を、容器(V)に入れ、電気リード線を取り付けた。ノズル(P)は接地した。Glassman高圧電源を用いて、試片に40kVの電圧を加え、この時点で、(PV2)と圧力容器(PV)のノズル(P)との間の計量バルブを開いた。液化ガスに溶け、ヘリウムにより200psigまで過剰加圧されたポリマーを、200psigの一定圧力で、ノズル(P)を通して、約3.0cm3/minの流量で、大気圧に保たれた容器(V)に供給した。約5秒後に、計量バルブを閉じ、ポリマー−溶媒の供給を止めた。容器(V)をCO2ガスで30秒間パージして、クロロフルオロカーボンを置換した。ほぼ30秒後に、約5秒間計量バルブを再び開き、次いで、閉じた。このサイクルを約4回繰り返した。さらなる1分間の後に、試片に加えた電圧を切り、試片を圧力容器(V)から取り出した。光学顕微鏡で見て調べると、ポリマーコーティングは、試片の遮蔽されていない表面全体に一様に分布していることが明らかであった。試片の表面からのポリマー混合物の溶解と、それ続く、標準化された定量的FT−IR法を用いる定量により、試片ではPEVAとPBMAがほぼ1:1の組成であることを確認した。
【0102】
(実施例16)
結晶ラパマイシン、及びポリエチレン−コ−酢酸ビニル(PEVA)とポリ(ブチルメタクリレート)(PBMA)の1:1の混合物による金属試片のデュアルコーティング
実施例13において記載し、さらに実施例15において記載した装置を、この実施例において用いた。コーティング実験のための準備として、25mgの粉末結晶ラパマイシン(平均粒径3ミクロン)を、ポート(1)を通して(PV)に入れ、次いで、ポート(1)を閉じた。次に、(PV)を、20℃で、ポート(2)を通して二酸化炭素ガスにより400〜600psigまで加圧し、その後、ポート(2)を閉じた。次に、75mgのポリエチレン−コ−酢酸ビニル(PEVA)(酢酸ビニルは約33重量パーセント)と75mgのポリ(ブチルメタクリレート)(PBMA)とを圧力容器(PV2)に入れた。ジクロロフルオロメタン(20.0グラム)を、バルブ及び入口を通して圧力容器(PV2)に加えた。次いで、圧力容器(PV2)を40℃に加熱し、切り離された容器の内部の圧力をほぼ40psigに高めた。ノズル(P)は120℃に加熱した。2種のポリマーを液化ガスに溶かすのに十分な時間の後、ヘリウム源タンク及び2段階圧力調節器を用いて、容器をヘリウムにより約200psigに過剰加圧した。1cm×2cmの316ステンレス鋼試片を容器(V)に入れ、高圧電源リード線に連結した。ノズル(D)及び(P)の両方を接地した。始めに、試片に40kVの電圧を加え、その後、ラパマイシンを含む(PV)をノズル(D)に連結するポート(3)を開き、大気圧に保たれた容器(V)に二酸化炭素を膨張させ、ラパマイシンを噴出させた。ポート(3)を閉じて約60秒後に、容器(V)内のノズル(P)に(PV2)を連結する計量バルブを開き、容器(V)に液化ガスを膨張させて気相にし、析出したポリマー粒子を導入し、この間、容器(V)は大気圧に保った。約3cm3/minの供給速度で約5秒後に、計量バルブを閉じ、試片は電圧を加えたままにした。次いで、ポート(1)を開き、さらに25mgの粉末結晶ラパマイシンを(PV)に入れ、次に、ポート(1)を閉じた。次に、圧力容器(PV)を、ポート(2)を通して、液体二酸化炭素により400〜600psigまで加圧し、その後、ポート(2)を再び閉じた。試片を40kVの印加電圧に保ったまま、ポート(3)をノズル(D)に向けて再び開き、二酸化炭素を膨張させてガスにし、粉末結晶薬剤を容器(V)に噴出させた。その後さらに60秒後、(PV2)とノズル(P)との間の計量バルブを再び開き、容器(V)に液化溶媒を膨張させてガスにし、また容器(V)においてポリマー粒子を析出させた。前記の薬剤とその後のポリマー又はポリマーとその後の薬剤の逐次的な添加を全部で4サイクル繰り返し、その後、印加電圧を試片から取り除き、試片を容器から取り出した。次いで、試片を、光学顕微鏡を用いて調べた。試片が電気リード線によって遮蔽された場所を除いて、試片の全表面に、むらのないコーティングを見ることができた。コーティングは表面に沿っているが、不透明で、高倍率ではいくらか粒状であった。
【0103】
(実施例17)
結晶ラパマイシン、及びポリエチレン−コ−酢酸ビニル(PEVA)とポリ(ブチルメタクリレート)(PBMA)の1:1の混合物による金属試片のデュアルコーティング、その後の超臨界二酸化炭素によるアニーリング又は二酸化炭素ガスによるアニーリング
実施例16において作り出した試片を調べた後、コーティングした試片を圧力容器内に注意深く入れ、60℃の温度で、4500psigの圧力まで二酸化炭素により加圧した。このCO2による焼結プロセスは、試片上のフィルムの物理的性質を向上させるために行った。これらの条件下で、約3時間、試片を容器にとどめ、その後、超臨界CO2を圧力容器からゆっくりと排出し、試片を取り出し、光学顕微鏡の下で再び調べた。コーティングは表面に沿っていて、むらのないことが観察され、高密度二酸化炭素による処理をしない実施例16において観察し報告した不透明コーティングとは対照的に半透明であった。次いで、コーティングした試片をX線回折(XRD)により分析し、ポリマーマトリックスに結晶ラパマイシンの存在を確認した。
【0104】
(実施例18)
結晶ラパマイシン、及びポリエチレン−コ−酢酸ビニル(PEVA)とポリ(ブチルメタクリレート)(PBMA)の1:1混合物による心臓血管金属ステントのデュアルコーティング
上の実施例13、15、及び16に記載した装置をこの実施例において用いた。使用した金属ステントは、公称寸法が3mm×13mmのTristar(商標)冠動脈ステントであった。このステントを、上の実施例16に記載した試片と同じやり方でコーティングした。ステントは、薬剤の第1コーティング層の次にポリマーの薄い層がくるように交互にコーティングした。これらの2ステップ(薬剤/ポリマーのサイクルと呼ぶ)を3回繰り返し、最後に付着させたコーティング層はポリマーであった。コーティングステップが完了した後、ステントを容器(V)から取り出し、小さな圧力容器に入れ、そこでステントを、実施例16において上で記載したように、超臨界CO2に曝した。この低温アニーリングステップの後、ステントを取り出し、光学顕微鏡を用いて調べた。次いで、コーティングしたステントの断面を分析するために、高速イオン衝撃(fast ion bombarding、FIB)装置を備える走査電子顕微鏡(SEM)を用いてステントを分析した。ステントの複数箇所のSEM顕微鏡写真により、厚さが6と15ミクロンの間の共に完全に表面に沿うコーティングが示された。ラパマイシンのクリスタリットの証拠もまた、顕微鏡写真において明らかであった。
【0105】
(実施例19)
薬剤溶出特性を制御するための層状化抗再狭窄治療薬及びポリマーによる心臓血管ステントの層状コーティング
心臓血管ステントを、上の実施例17及び18に記載した方法を用いてコーティングする。ステントは、薬剤及びポリマーが複数の層に交互に存在するような仕方でコーティングする。無処ステントに最初に付着させるのは、厚さ約2ミクロンの非再吸収性ポリマーの薄い層である。第2層は抗再狭窄を示す治療薬である。この第2層に約35マイクログラムを添加する。第3層のポリマーを厚さ約2ミクロンで付加し、次に、約25マイクログラムの抗再狭窄薬からなる第4層が続く。第5層のポリマー(厚さ約1ミクロン)をステントに付加し、その後、約15マイクログラムの治療薬を含む第6層が続く。最後に、最後のポリマー層を約2ミクロンの厚さまで付加する。コーティング処理の後、上の実施例16に記載したように、二酸化炭素を用いてステントのアニーリングを行う。この実施例では、薬剤溶出ステント(DES)は、通常の溶媒に基づくコーティング法では不可能な「封鎖薬剤層状化(sequestered drug layering)」法によって、初期薬剤低「バースト(burst)」性を有すると表現される。さらに、ステント「中間層」の薬剤の高濃度のおかげで、溶出プロファイルは、長期間にわたる治療薬の持続放出を達成すると期待される。
【0106】
(実施例20)
ポリマーマトリックスと抗再狭窄治療薬及び抗血栓治療薬による心臓血管ステントの層状コーティング
心臓血管ステントを、上の実施例19に記載のようにコーティングする。この実施例では、厚さ約2ミクロンの第1ポリマー層の後、抗血栓性を示す薬剤を厚さ2ミクロン未満の層として付加する。非再吸収性ポリマーからなる第3層を、約4ミクロンの厚さまで付加する。次に、別の薬剤(抗再狭窄性を示す別の治療薬)層を付加する。この層は約100マイクログラムの抗再狭窄薬を含む。最後に、厚さ約2ミクロンのポリマー層をステントに付加する。コーティングした後、実施例16に記載したように、二酸化炭素を用いてコーティングをアニーリングするためにステントを処理する。
【0107】
(実施例22)
ラパマイシン、ポリエチレン−コ−酢酸ビニル(PEVA)及びポリブチルメタクリレート(PBMA)によるステントのコーティング
微粉化したラパマイシンを、LC Laboratoriesから購入した。PBMA(Mw=約237k)及びPEVA(酢酸ビニル含量33%)をAldrich Chemicalから購入した。2種類のステント:3mmのTriStar(登録商標)(Guidant)、及び6セル×8mmのBX Velocity(登録商標)(Cordis)を用いた。これらのステントを、3ステント/1回のコーティング実験、及び3回の実験/1組のデータを用いて、乾式静電捕捉によってコーティングし、その後、超臨界流体焼結した。コーティング装置は図12に示す。コーティングしたステントの分析は、ステントと関連するコントロール実験による試片との両方について、複数の技法によって実施した。
【0108】
この実施例では、1:1の比のPEVAとPBMAを、化学品「フレオン」の部類であることが知られている圧縮ガス溶媒であるジクロロフルオロメタン(CCl2FH)に溶かす。この特定のフレオンの物理的性質は次の通りである。
BP=8.9℃
Tc=178.33℃
Pc=751.47psig
Dc=0.526014g/cc
【0109】
溶液は、1グラムのジクロロフルオロメタン当たり、合わせたポリマー30mgを混合することによって作った。次いで、溶液を、スプレーの準備が整うまで、60℃、蒸気圧(約28psig)で保った。次に、溶液を、容器の上部に非混和性ガス(通常、ヘリウム)を加えることによって加圧した。ヘリウムを加えて、フレオン+ポリマーの溶液を700(+/−50psig)まで加圧することによって、圧縮流体を得た。次いで、このポリマー+フレオンの溶液を、容器にヘリウムを連続的に付加することによって、0.005インチの内径を有するノズルを通して押し出した。溶媒(ジクロロフルオロメタン)は、その沸点が室温よりかなり低いので、ノズル(120℃に加熱する)から出てきて、直ちに気化する。薬剤は乾式粉末スプレーコーティングによって付着させる。10〜30mgの間の薬剤を、管の小さな容積に入れ、次いで、管をCO2ガスにより400psigまで加圧する。この混合物は、0.187インチの内径を有するノズルを通して、ステントが保持されているコーティング容器に流れる。静電気による付着の間、ステントを荷電し、ノズルは接地する。図12及び13は、コーティング及び焼結プロセスに用いた装置を示す。
【0110】
(実施例23)
ラパマイシン/PEVA/PBMをコーティングしたステントの光学顕微鏡による分析
実施例22において作製したステントを、光学顕微鏡によって、バック及びサイド照明を用いて40倍で調べた。この方法は、コーティングの均一性についてのおおまかな定性的表現を得るために、また低温CO2によるアニーリングステップの有用性を一般的に実証するために用いた。図14に示す得られた写真は、40℃で高密度二酸化炭素中でのアニーリング前(a)及び後(b)の外観の違いを例示している。図15(a)(焼結前)には、外側、端部及び内側の表面の写真が示されており、これらは、ステント表面の全体に等しく付着したナノ粒子を明瞭に示しており、15(b)(焼結後)では、滑らかで光学的に透明なポリマーを示すフィルムがある。図16は、ラパマイシン/PEVA/PBMAでコーティングしたステントの40倍のさらなる画像を示し、焼結前(a)の外側及び内側の表面を示し、ステント表面の全体に等しく付着したナノ粒子をさらに例示しており、焼結後(b)は、滑らかで光学的に透明なポリマーフィルムを示している。図17は、ラパマイシン/PEVA/PBMAでコーティングしたステントの100倍の画像を示し、薬剤結晶が非常に均一なポリマーコーティング内に埋め込まれているのを明瞭に見ることができる。
【0111】
(実施例24)
ラパマイシン/PEVA/PBMをコーティングしたステントの走査電子顕微鏡による分析
実施例21において作製したステントを、走査電子顕微鏡によって調べ、得られた画像を、(a)倍率30倍、(b)倍率250倍、(c)倍率1000倍及び(d)倍率3000倍で図18に示した。明らかに、ナノ粒子が一様で表面に沿うフィルムに焼結されており、このフィルムは5ミクロン未満の表面トポロジーを有し、埋め込まれた結晶ラパマイシンの明瞭な証拠を例示している。断面(FIB)画像もまた得られ、図19(a)に倍率7000倍で、(b)に20000倍の倍率で示す。むらのない厚さの一様なコーティングが見られる。4箇所の断面の厚さを測定した。(1)10.355μM、(2)10.412μM、(3)10.043μM、及び(4)10.157μMで、10.242μMの平均厚さが得られ、相違はたった2%(±0.2μM)である。
【0112】
(実施例25)
ラパマイシン/PEVA/PBMをコーティングしたステントの示差走査熱量分析(DSC)
実施例21において作製したステントを示差走査熱量分析(DSC)により調べた。PEVAだけ、PBMAだけ及びラパマイシンだけのコントロールの分析を、それぞれ、図20(a)、(b)及び(c)に示す。ラパマイシン、PEVA及びPBMAをコーティングしたステントのDSCは、図20(d)に示す。ラパマイシン結晶の融解は185〜200℃に明瞭に見られ、ポリマーのものと識別できる。
【0113】
(実施例26)
ラパマイシン/PEVA/PBMをコーティングしたステントのX線回折(XRD)
実施例21において作製したステントをX線回折(XRD)により調べた。微粉化したラパマイシン粉末のコントロールスペクトルを図21(a)に示す。ラパマイシン、PEVA及びPBMAによりコーティングし、焼結したステントのXRDは、図21(b)に示し、ラパマイシンがコーティング及び焼結プロセスを通して結晶(約64%)のままであることを示している。
【0114】
(実施例27)
ラパマイシン/PEVA/PBMをコーティングしたステントの共焦点ラマン分析
実施例21において作製したステントを共焦点ラマン分析により調べて、コーティング表面から下の金属ステントまでの深さ方向分布(depth profiling)を得た。図22(a)は、外周の外側でのラパマイシンの深さ方向分布を示し(1620のラパマイシンのピーク)、22(b)は、外周の外側でのポリマーの深さ方向分布を示し、薬剤がポリマーでコーティングしたステントの全体にわたって分布していることを示している。最大の薬剤含量は、ポリマーコーティングの中央(空気側表面から約4μM)に見られ、この位置は、用いられるコーティング及び焼結の条件により制御できる。本発明の特定の実施形態において、薬剤はコーティングの空気側表面に近いであろう。別の実施形態において、薬剤は、金属ステントにより近いであろう。他の実施形態において、2種以上の薬剤がコーティングに付着され、1種の薬剤は空気側表面により近く、他の薬剤は金属表面により近いであろう。さらに別の実施形態において、複数の薬剤はコーティングの全体を通して共に分布しているであろう。
【0115】
(実施例28)
コーティング成分の定量のための、ラパマイシン/PEVA/PBMをコーティングしたステントのUV−Vis及びFT−IR分析
UV−VIS法を発展させ、ポリ(エチレン−コ−酢酸ビニル)(PEVA)及びポリ(ブチルメタクリレート)(PBMA)と共にステント上にコーティングしたラパマイシンの質量を定量的に求めるために用いた。ラパマイシンのUV−Visスペクトルを図23(a)に示し、ラパマイシンの検量線を、図23(b)に示すように、エタノール中、277nmのλで得た。コーティングしたステントからラパマイシンをエタノールに溶かし、薬剤の濃度及び質量を計算した。平均質量74±11μgのラパマイシンがステントに担持されていた。図24(a)の結果は、ばらつきのない薬剤コーティングを示している:ステントの間の相違(+/−)15%、実験の間の相違(+/−)12%(平均濃度(各3ステント;4セル×8mm パリレンコーティング付き)。
【0116】
FT−IR法を、ラパマイシンと共にステント上にコーティングしたPEVA及びPBMAの質量を定量的に求めるために開発し、用いた。PEVA及びPBMAのFT−IRスペクトルを図23(c)に示し、検量線は、図23(d)及び(e)に示すように、PEVAでは約1050cm−1のλで、PBMAでは約1285cm−1のλで、それぞれ、ベールの法則を用いて得た。ポリマーをコーティングしたステントから塩化メチレンに溶かし、ポリマー濃度及び質量を計算した。平均質量1060±190μgのPEVA及び1100±198μgのPBMAがステントに担持されていた。図24(b)及び(c)の結果は、ばらつきのないポリマーコーティングを示している:ステントの間の相違(+/−)18%、運転の間の相違(+/−)15%(平均濃度(各3ステント);4セル×8mm パリレンコーティング付き)。
【0117】
(実施例29)
パクリタキセル/PEVA/PMBAによるステントのコーティング
Guidantの3mmのTristar(登録商標)ステントを、本明細書に記載されている本発明の方法によって、パクリタキセル/PEVA/PMBAの複合体によりコーティングした。コーティングしたステントを光学顕微鏡によって調べ、ステントの外側表面の写真((a)焼結前、(b)焼結後)を図25に示す。図26(a)は、前記の実施例28の方法を用いてパクリタキセルのために作り出した、エタノール中、228nmのλでのUV−Vis検量線を示す。コーティングしたステントからラパマイシンをエタノールに溶かし、薬剤の濃度及び質量を計算して、図26(b)に示すように、担持されていたラパマイシンについて平均質量148±14μgを得た。
【0118】
(実施例30)
コーティング成分の定量のための、ラパマイシン/PEVA/PBMをコーティングしたステントのUV−Vis及びFT−IRによる分析
本明細書に記載されている本発明の方法によって、ラパマイシン、PEVA及びPBMAをコーティングしたステントから、実施例28に記載したUV−Vis及びFT−IR法を用いて、ラパマイシン、PEVA及びPBMAの量をそれぞれ求めた。成分の定量を図27に示す。(a)平均質量81±3μgのラパマイシンがステントに担持されていたこと、(b)平均質量391±69μgのPEVAがステントに担持されていたこと、及び(c)平均質量268±64μgのPBMAがステントに担持されていたこと、が計算される。
【0119】
(実施例31)
ラパマイシン又はパクリタキセル、ポリエチレン−コ−酢酸ビニル(PEVA)及びポリブチルメタクリレート(PBMA)によるステントのコーティング
25mLのステンレス鋼容器に、150.0±0.1mgのポリ(エチレン−コ−酢酸ビニル)(PEVA)及び150.0±0.1mgのポリ(ブチルメタクリレート)(PBMA)を入れ、この容器に20.0±0.3グラムのジクロロフルオロメタンを移す。容器内の圧力は約28psigまで上昇する。容器にジクロロフルオロメタンを移した後、容器は60℃に加熱する。次いで、容器を、圧力が700±30psigに達するまでヘリウムにより加圧する。ヘリウムはジクロロフルオロメタン−ポリマーの溶液を押し出すピストンとして働く。適切なバルブ操作によって容器を系から切り離す。15±1mLの容積を有する第2のステンレス鋼容器に、13mgの薬剤化合物(ラパマイシン又はパクリタキセル)を入れる。この容器を、二酸化炭素ガスにより400±5psigまで加圧する。この薬剤容器の温度は室温である。適切なバルブ操作によって容器を系から切り離す。ポリマーのスプレーとポリマーのスプレーの間にポリマーノズルをフラッシングできるように、第3の容器に、溶剤であるテトラヒドロフラン又はジクロロメタンを入れる。この容器もまたヘリウムにより700psigまで加圧され、適切なバルブ操作によって系から切り離される。ポリマースプレーノズルを120±2℃に加熱し、薬剤スプレーノズルは室温のままである。複数のステントをステント固定具に装着し、わに口クランプにより高圧電源に結び付ける。わに口クランプは、電気的に絶縁された経路を通してコーティングチャンバに入る。二酸化炭素ガスを、8psigで5分間、第3のガスフラッシングノズルからコーティング容器に流して、ノズルと高電位に保たれる構成部分との間のアーク発生をなくすために空気及び湿気を除去する。二酸化炭素ガスによるコーティングチャンバのフラッシングの後、高電圧発生装置により35kVの電位をステントに印加する。この電位は、ポリマー及び薬剤のそれぞれのコーティングステップの間は保持する。この電位は、ポリマースプレーノズルをテトラヒドロフラン又はジクロロメタンによりフラッシングする時は取り除く。ポリマー溶液を、ポリマー溶液の容器からコーティングチャンバに7秒間スプレーする。印加電位を切り、ポリマーノズルをコーティングチャンバから取り外し、溶媒で2分間フラッシングを行い、次いで、ヘリウムガスにより、全ての溶媒がノズルから除去されるまで約1分間、フラッシングを行う。ノズルを溶媒でフラッシングしている間、ジクロロフルオロメタンガスをフラッシングして追い出すために、コーティングチャンバを二酸化炭素ガスによりフラッシングする。ポリマースプレーノズルをコーティングチャンバの元の場所に戻し、二酸化炭素ガスによるフラッシングを止める。35kVの電位をステントに印加し、適切なバルブ操作により、薬剤化合物をコーティングチャンバに迅速にスプレーする。1分間の静置時間の後、次の7秒間のポリマースプレーを開始する。このプロセスは多数回繰り返すことができる。
【0120】
コーティングしたステントを調べるために発展させた様々な分析方法、及びこれらの方法により得た結果を下の表に要約する。
【表1】
【0121】
(実施例32)
(図29及び30)静的条件下に溶出プロファイルを得るために、溶出媒体を決定した。pH7.0のリン酸緩衝液中1%(v/v)のSDS界面活性剤を、この媒体により生成する溶出プロファイルと所望の溶出プロファイルとの比較に基づいて、溶出媒体として選んだ。実験は、溶出実験の間サーモスタットで制御し37±1℃に保った浴において、30時間にわたる溶出プロファイルを生じることが可能であるを示した(図29参照)。用いた試料は、エチレンオキシド法を用いて滅菌した。さらなる溶出実験を、溶出方法を発展させるために実施した。用いた材料は、Aldrich(ポリマー)及びLC Laboratories(ラパマイシン)により供給された。溶出プロファイルを図30に示す。別の1組のステントを分析した。この組は薬剤をコーティングした6つのステント及び2つのプラセボステントを含んでいた。この組のステントは溶出を全く示さなかった。しかし、プラセボステントは、薬剤をコーティングしたステントと同時に焼結した。分析により、このプラセボはいくらかのラパマイシンを示した。これらのステントに、薬剤が存在するのに単に溶出しないのかどうかを判断するために、ストリッピング分析を行った。薬剤は全く見出せなかった。
【0122】
(実施例33)
コーティングした例示的ステントの機械的安定性(図31)
バルーンの拡張:ステントを、「オーバーザワイヤ」移動によりバルーン拡張カテーテル上に移した。スタイレットをカテーテルの管腔に挿入した。ステントを滅菌針により持ち上げ、スタイレット上に移した。ステントをバルーンの中央に持っていき、アセンブリー全体を顕微鏡の下に置いた。縮める装置(crimping equipment)がないので、拡張及びバルーンの膨張の間にステントが急に動くことを防ぐために、バルーン上に置いた小さな血管鉗子の使用によってステントをその場所から動かないようにした。
【0123】
拡張/(ゆっくりとした拡張)
空気圧力計(ゲージ圧)を有するインデフレーター(indeflator)を用いて、バルーンを膨らませ、介入の間にバルーン/ステントが拡張されると思われるような仕方で膨張させ(急速膨張)、ステントを「手順」完了時に観察した。バルーンをある時間1気圧にした。ステント/バルーンの境界を膨張毎に顕微鏡で調べた。微粒子があれば捕らえるために、バルーン−ステントを清浄な顕微鏡スライドの上に置いた。全膨張プロセスの間、どのステントにも、微粒子/脱離/フレーキングの何れの証拠も全くなかった。管腔外側(abluminal)部分の上及び周辺の材料は、バルーンの膨張によって変形し、伸ばされていることが分かった。ステントストラットが露出しかかっていることが分かった。ストラットからストラットへと跨っているか又は飛び移っている材料のいずれも、材料への膨張の影響を考えて特に調べた。これらの実験では、ストラットに跨っている材料は、膨張の間に伸びるのでなく、破断したと思われ、そして決して本体からは離れなかった。
【0124】
過剰膨張
調査のために、ステントの各々をその公称の膨張の大きさに膨張させ、次いで、バルーンが破裂するまでステントをさらに膨張させた(多くの場合、大きさは75%増大した)。膨張する能力を与える、ステントストラットの角度をなす箇所の内側及び外側部分に特に注意を払った。公称の膨張時の角度が20〜25度の程度の偏位であり得る場合、これらの角度が45度以上である所までステントを持っていった。過度の膨張のどれも、コーティングのくずれ又はフレーキング又は脱離を全く生じなかった。
【0125】
材料は良好な接着性を示した。材料は過剰な膨張によってさえ如何なる接着性の欠如も示さなかった。バルーンの膨張の間に、ステントの曲がり/変形する主な部分において、脱離は全く見られなかった。輸送用バイアルには如何なる微粒子も明白には示されない。ある程度のストラットからストラットへの「クロストーク(cross talk)」が見られたが、それは主に環境による汚染の結果としてであった。これは、例えば、クリーンルーム及び層流フード及び/又はフィルターを通したガスの使用によってなくせるか、又は低減できる。このポリマー及び薬剤の組合せは、優れた伸びの性質を有するように思える。
【0126】
要約として、特定の実施形態において、本発明は薬剤溶出ステントのコーティング方法を提供する。(複数の)ポリマー及び(複数の)薬剤が、低温で無溶剤の制御された方法で付着される。一実施形態において、ラパマイシン、PBMA及びPEVAが、PBMA:PEVAの1:1混合物として、目標とするラパマイシン担持量で、残留溶媒を全く含まずに、約10μMの厚さで、表面に沿い、むらのないコーティングとなるように付着される。ラパマイシンは、結晶モルホロジー(+50%)で付着される。このラパマイシン/PEVA/PBMAのフィルムは、ステントが液体状態の溶媒に曝されないような方法を用いて付着され、薬剤及びポリマーの含量は、高度に制御可能で、様々な薬剤、様々な(再吸収性及び永続性)ポリマー、1つのステント上への複数の薬剤に対して容易に適合させることができ、ステント間のばらつきが非常に少ない。付着の間に、従来の液対溶媒にステントを曝さないので、フィルムの様々な深さで薬剤含量が制御できる。
【0127】
前記は本発明の例示であり、本発明を限定するとは解釈されない。本発明の実施形態が本明細書において示され説明されたが、このような実施形態は例としてのみ記載されていることが当業者には明白であろう。多くの変形形態、変更、置換が、本発明から逸脱することなく、当業者には直ちに思い浮かぶであろう。本明細書に記載された本発明の実施形態に対する様々な代替が本発明の実施において用いられ得ることが理解されるべきである。特許請求の範囲が本発明の範囲を定め、これらの特許請求の範囲内の方法及び構成並びにそれらの均等物は、本発明に包含されるものとする。
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年7月15日に出願された米国特許仮出願第60/699650号、2005年12月20日に出願された米国特許仮出願第60/752338号、2006年2月7日に出願された米国特許仮出願第60/771066号、2006年2月7日に出願された米国特許仮出願第60/771725号、2006年4月26日に出願された米国特許仮出願第60/745731号、及び2006年4月26日に出願された米国特許仮出願第60/745733号の特典を主張し、これらの出願は参照を通じて全体として本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、粉末状のポリマー及び医薬又は生物学的製剤を含むコーティングを基材上に付着させるための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
基材上にコーティングして、このような基材の表面に所望の性質又は効果をもたせることは、しばしば有益である。
【0004】
例えば、治療又は予防のために、医薬又は生物学的製剤を局所的にデリバリーして体内の特定の部位を標的にするように、バイオメディカルインプラントをコーティングすることは有益である。特に関心を持たれる1つの分野は、最近OngとSerruys(Nat,Clin.Pract.Cardiovasc.Med.,(Dec 2005),Vol 2,No 12,647)により報告された薬剤溶出ステント(DES)である。通常、このような医薬又は生物学的製剤は、ポリマーと共に付着される。これらの製剤のこのような局所デリバリーにより、身体の他の部分への望ましくない作用を伴い得る全身投与の問題が避けられる、或いは、さいなまれている身体部分への投与は、全身投与によっては達成できないかもしれない高濃度の医薬又は生物学的を必要とするために、全身投与の問題が避けられる。コーティングは、医薬又は生物学的製剤の長期又は持続放出を含めて、医薬又は生物学的製剤の放出を制御し得る。さらに、バイオメディカルインプラントは、向上した生体適合性又は滑らかさのような、有益な表面特性をもたせる材料によりコーティングされ得る。
【0005】
従来、コーティングは、ディッピング法、スプレー法、気相成長(vapor deposition)、プラズマ重合、及び電着によって付着させられてきた。これらの方法は満足すべきコーティングを生じさせるために使用されてきたが、これらに付随する欠点がある。例えば、均一な厚さのコーティングを実現し、欠陥(例えば、むき出しの箇所)の発生を防ぐことは、しばしば困難である。また、多くの方法において、複数のコーティングステップがしばしば必要であり、コーティングステップの間、又は後で、通常、乾燥を必要とする。
【0006】
従来の方法の大多数の別の不都合は、一旦基材に付着された後、医薬又は生物学的製剤の多くが、製剤のモルホロジー及び/又は2次構造の制御の悪さに起因することが多い、低い生物学的利用率、短い保存寿命、in vivoでの低い安定性、或いは、制御不能な溶出速度により損なわれることである。既存のスプレーコーティング法(この方法は通常、基材上にスプレーされる医薬を含む溶液を含む)を用いると、医薬のモルホロジー制御はかなりの難題である。溶液が蒸発すると、製剤は通常アモルファス状態で残される。スプレーコーティングされた製剤の結晶性の欠如又は結晶度の低さにより、保存寿命が短くなり、薬剤の溶出は速すぎるようになり得る。生物学的製剤は通常、それらの活性のために、少なくとも部分的に、2次、3次及び/又は4次構造に頼っている。従来の溶媒に基づくスプレーコーティング法を使用すると、生物学的製剤は基材に成功裏に付着し得るが、しばしば、製剤の2次、3次及び/又は4次構造の少なくともいくらかを失うことになり、したがってまた活性をそれに応じて失うであろう。例えば、多くのタンパク質は、担体マトリックスに配合された時、処理方法の結果として活性を失う。
【0007】
従来の溶媒に基づくスプレーコーティング法には、また、基材上へのコーティング成分の捕集及び最終コーティングの一貫性に関する不十分さの障害がある。基材の寸法が小さくなるにつれて、また機械的複雑さが増すにつれて、基材の全表面を均一にコーティングすることは益々難しくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
求められているのは、不活性ポリマーと医薬又は生物学的製剤とを基材に付着させるための資本効率の良い方法であり、この方法では、捕集プロセスは効率的であり、生じるコーティングは表面に沿い(conformal)、実質的に欠点がなく均一であり、コーティングの組成は規制することができ、医薬又は生物学的製剤のモルホロジー及び/又は2次構造は制御可能である。こうして、この方法により、コーティングプロセスの間に付着される製剤の構造及びモルホロジーの維持が可能になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】超臨界溶液の急速膨張(RESS)法の装置を示す。C.Domingo et al,Journal of Supercritical Fluids 10,39−55(1997)を参照。
【図2】Solution Enhanced Dispersion of Supercritical Solutions(SEDS)法の装置を示す。
【図3】SEDSノズルデザインを示す。
【図4】個々の各成分及びスプレーコーティング混合物のFTIRスペクトルを示す。各成分に特有のピークが標識されている。
【図5】ラパマイシン、PEVA及びPBMA(約1:1:1)によりコーティングされ((a)、(b))、様々な条件下で焼結された((c)、(d))ステントを示す。ステント全表面がコーティングされている。
【図6】ラパマイシン、PEVA及びPBMAによりコーティングされたSiウェハーチップの焼結の前及び後のIRスペクトルを示す。2つのスペクトルの間には全く違いが認められない。焼結前スペクトルにおける大きな波数でのベースラインのシフトは、大きな粒径により生じる光散乱による。
【図7】本発明の方法を用いて結晶状にスプレーコーティングされたラパマイシンを示す。
【図8】真正のラパマイシンと比較して、2つのモルホロジーにスプレーされたラパマイシンのXRDスペクトルを示す。
【図9】粒径の制御を示す。
【図10】本発明でのさらなる装置を示す。
【図11】実施例9、10、11及び12において記載される、ポリエチレン−コ−酢酸ビニル(PEVA)とポリ(ブチルメタクリレート)(PMBA)の混合物の曇点等温線を示す。
【図12】実施例9において記載される、コーティング及び焼結プロセスの装置の概略図を示す。
【図13】実施例9において記載される、コーティング及び焼結プロセスの装置の詳細な画像を示す。
【図14】薬剤−ポリマーをコーティングした冠動脈ステントの付着直後(a)、40℃の高密度二酸化炭素環境におけるアニーリングの後(b)を示す。写真は実施例10に記載される実験に対応する。
【図15】バック及びサイド照明を用いて光学顕微鏡により得られた40倍の倍率の、ラパマイシン/PEVA/PBMAをコーティングしたステントの画像で、焼結の前(a)及び後(b)の外側、端部及び内側表面を示す(実施例10に記載される)。
【図16】バック及びサイド照明を用いて光学顕微鏡により得られた40倍の倍率の、ラパマイシン/PEVA/PBMAをコーティングしたステントの画像で、焼結の前(a)及び後(b)の外側及び内側表面を示す(実施例10に記載される)。
【図17】ラパマイシン/PEVA/PBMAをコーティングしたステントの、光学顕微鏡により得られた100倍の倍率の画像を示す。薬剤結晶が非常に均一なポリマーコーティング内に埋め込まれているのをはっきりと見ることができる(実施例10に記載される)。
【図18】ラパマイシン/PEVA/PBMAをコーティングしたステントの、(a)30倍の倍率、(b)250倍の倍率、(c)1000倍の倍率、及び(d)3000倍の倍率での走査電子顕微鏡写真画像を示す(実施例11に記載される)。
【図19】ラパマイシン/PEVA/PBMAをコーティングしたステントの断面の、(a)7000倍の倍率、(b)20000倍の倍率での走査電子顕微鏡画像を示す。測定した4箇所の断面の厚さ:(1)10.355μM、(2)10.412μM、(3)10.043μM及び(4)10.157μMにより、10.242μM±2%の平均厚さが得られる(やはり実施例11に記載される)。
【図20】(a)PEVAコントロール、(b)PBMAコントロール、(c)ラパマイシンコントロール、及び(d)コーティングされたラパマイシン、PEVA、PBMA混合物の示差走査熱量分析(DSC)を示す。185〜200℃のラパマイシンの結晶の融解は(c)及び(d)に示されている(実施例12に記載される)。
【図21】(a)微粉化ラパマイシン粉末(コントロール)及び(b)コーティングし焼結したラパマイシン/PEVA/PBMAステントのX線回折を示す(実施例13に記載される)。
【図22】ラパマイシン/PEVA/PBMAをコーティングしたステントの共焦点ラマン分析(すなわち、コーティング表面から金属ステントまでの深さ方向分布)を示し、(a)外周の外側でのラパマイシンの深さ方向分布、及び(b)外周の外側でのポリマーの深さ方向分布が特に示されている(実施例14に記載される)。
【図23】(a)ラパマイシンのUV−Visスペクトルと(b)277nmでの検量線、(c)PEVA/PBMAのFT−IRスペクトル、(d)1050nmでのPEVA検量線、及び(e)1285nmでのPBMAの検量線を示す。
【図24】コーティング成分の定量(平均濃度(各3ステント);4セル×8mm、パリレンコーティング付き)で、(a)ラパマイシンの定量(74±11μg)、UV−Vis法を使用;(b)PEVAの定量(1060±190μg);及び(c)PBMAの定量(1110±198μg)、FT−IR法を使用;を示す(実施例15に記載される)。
【図25】パクリタキセル−ポリマー複合体によりコーティングされた3mmのGuidant TriStar(登録商標)ステントの外側表面を示す光学顕微鏡画像を示す(実施例16に記載される)。
【図26】3mmのGuidant TriStar(登録商標)ステントをパクリタキセルPEVA/PMBA複合体によりコーティングした後のパクリタキセルの定量で、(a)エタノール中228nmでの検量線、UV−Visの標準的方法を使用、及び(b)UV−Vis法を用いた定量(148±14μg)を示す(実施例16に記載される)。
【図27】コーティング成分の定量(平均濃度(各3ステント);6セル×8mm、パリレンコーティング付き)で、(a)ラパマイシンの定量(81±3μg)、UV−Vis法を使用;(b)PEVAの定量(391±69μg);及び(c)PBMAの定量(268±64μg)、FT−IR法を使用;を示す(実施例17に記載される)。
【図28】本発明の実施形態による焼結実験において用いられた条件の図による要約を示す。
【図29】本発明の実施形態によりコーティングされたステントの溶出プロファイルを例示する。
【図30】本発明の実施形態によりコーティングされたステントの溶出プロファイルを例示する。
【図31】本発明の実施形態によりコーティングされたステントの機械的安定性を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
一態様において、本発明は、ステント骨格、及びラパマイシン−ポリマーのコーティングを備え、ラパマイシンの少なくとも一部が結晶状である、コーティングされた冠動脈ステントを提供する。
別の態様において、本発明は、ステント骨格、及びマクロライド免疫抑制薬剤(limus系薬剤)−ポリマーのコーティングを備え、この薬剤の少なくとも一部が結晶状であるコーティングされた冠動脈ステントを提供する。一実施形態において、マクロライド免疫抑制薬剤には次の1種又は複数が含まれる:ラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシエチル)ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−ベンジル−ラパマイシン、40−O−(4’−ヒドロキシメチル)ベンジル−ラパマイシン、40−O−[4’−(1,2−ジヒドロキシエチル)]ベンジル−ラパマイシン、40−O−アリル−ラパマイシン、40−O−[3’−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4(S)−イル)−プロパ−2’−エン−1’−イル]−ラパマイシン、(2’:E,4’S)−40−O−(4’,5’−ジヒドロキシペンタ−2’−エン−1’−イル)−ラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシ)エトキシカルボニルメチル−ラパマイシン、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−(6−ヒドロキシ)ヘキシル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、40−O−[(3S)−2,2−ジメチルジオキソラン−3−イル]メチル−ラパマイシン、40−O−[(2S)−2,3−ジヒドロキシプロパ−1−イル]−ラパマイシン、40−O−(2−アセトキシ)エチル−ラパマイシン、40−O−(2−ニコチノイルオキシ)エチル−ラパマイシン、40−O−[2−(N−モルホリノ)アセトキシ]エチル−ラパマイシン、40−O−(2−N−イミダゾリルアセトキシ)エチル−ラパマイシン、40−O−[2−(N−メチル−N’−ピペラジニル)アセトキシ]エチル−ラパマイシン、39−O−デスメチル−39,40−O,O−エチレン−ラパマイシン、(26R)−26−ジヒドロ−40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン、28−O−メチル−ラパマイシン、40−O−(2−アミノエチル)−ラパマイシン、40−O−(2−アセトアミノエチル)−ラパマイシン、40−O−(2−ニコチンアミドエチル)−ラパマイシン、40−O−(2−(N−メチル−イミダゾ−2’−イルカルボエトキシアミド)エチル)−ラパマイシン、40−O−(2−エトキシカルボニルアミノエチル)−ラパマイシン、40−O−(2−トリルスルホンアミドエチル)−ラパマイシン、40−O−[2−(4’,5’−ジカルボエトキシ−1’,2’,3’−トリアゾール−1’−イル)−エチル]−ラパマイシン、42−エピ−(テトラゾリル)ラパマイシン(タクロリムス)、及び42−[3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロパノエート]ラパマイシン(テムシロリムス)。
【0011】
さらに別の態様において、本発明は基材をコーティングする方法を提供し、前記コーティングは、
少なくとも1種のポリマー;及び
治療上望ましいモルホロジーにある少なくとも1種の医薬及び/又は少なくとも1種の活性生物学的製剤
を含み、
前記方法は、
乾燥粉末状の少なくとも1種の医薬及び/又は少なくとも1種の活性生物学的製剤を、第1オリフィスを通して吐出するステップ;
乾燥粉末状の少なくとも1種のポリマーを、第2オリフィスを通して吐出するステップ;
ポリマー並びに医薬及び/又は活性生物学的製剤の粒子を、前記基材上に付着させるステップ(ここで、電位が、基材と、ポリマー並びに医薬及び/又は活性生物学的製剤の粒子との間に保たれるので、前記コーティングが形成される);及び
前記医薬のモルホロジー及び/又は前記生物学的製剤の活性を実質的に変えない条件下で前記コーティングを焼結するステップ
を含む。
【0012】
さらなる態様において、本発明は基材をコーティングする方法を提供し、前記コーティングは、
少なくとも1種のポリマー;及び
治療上望ましいモルホロジーにある少なくとも1種の医薬及び/又は少なくとも1種の活性生物学的製剤
を含み、
前記方法は、
乾燥粉末状の前記少なくとも1種の医薬及び/又は少なくとも1種の活性生物学的製剤を、第1オリフィスを通して吐出するステップ;
少なくとも1種の超臨界流体溶媒及び少なくとも1種のポリマーを含む超臨界又は臨界点近傍流体溶液を生成させ、前記超臨界又は臨界点近傍流体溶液を、前記ポリマーの固体粒子を生成させるのに十分な条件下で、第2オリフィスを通して吐出するステップ;
ポリマー並びに医薬及び/又は活性生物学的製剤の粒子を前記基材上に付着させるステップ(ここで、電位が、基材と、ポリマー並びに医薬及び/又は活性生物学的製剤の粒子との間に保たれるので、前記コーティングが形成される);及び
前記医薬のモルホロジー及び/又は前記生物学的製剤の活性を実質的に変えない条件下で前記コーティングを焼結するステップ
を含む。
【0013】
本発明のさらなる態様は基材にコーティングを付着させるための方法を提供し、前記コーティングは、
少なくとも1種のポリマー;及び
乾燥粉末状で治療上望ましいモルホロジーにある少なくとも1種の医薬及び/又は少なくとも1種の活性生物学的製剤
を含み、
前記方法は、
前記少なくとも1種の医薬及び/又は少なくとも1種の活性生物学的製剤を、第1オリフィスを通して吐出するステップ;
少なくとも1種の溶媒及び少なくとも1種のポリマーを含むポリマー溶液の第1の流れを形成するステップ;
少なくとも1種の超臨界流体を含む超臨界又は臨界点近傍流体の第2の流れを形成するステップ;
前記第1及び第2の流れを接触させるステップ(ここで、前記超臨界又は臨界点近傍流体は前記ポリマーの粒子を生成させるのに十分な条件下で前記溶液の希釈剤として働く);
ポリマー並びに医薬及び/又は活性生物学的製剤の粒子を前記基材上に付着させるステップ(ここで、電位が、基材と、ポリマー並びに医薬及び/又は活性生物学的製剤の粒子との間に保たれるので、前記コーティングが形成される);及び
前記医薬のモルホロジー及び/又は前記生物学的製剤の活性を実質的に変えない条件下で前記コーティングを焼結するステップ
を含む。
【0014】
本発明のさらに別の態様は、
基材;及び
前記基材に付着された実質的に均一な厚さを有するコーティング
を備え、前記コーティングが、少なくとも1種のポリマーと、治療上望ましいモルホロジーにある少なくとも1種の医薬及び/又は活性な2次、3次又は4次構造を備える活性な少なくとも1種の生物学的製剤とを含む、コーティングされた植え込み可能なメディカルデバイスを提供する。
【0015】
一実施形態において、前記デバイスは、ステント、ジョイント、ねじ、棒、ピン、プレート、ステープル、シャント、クランプ、クリップ、縫合糸(suture)、スーチャーアンカー、電極、カテーテル、リード線(lead)、グラフト、被覆材(dressing)、ペースメーカー、ペースメーカーハウジング、カーディオバーター、カーディオバーターハウジング、除細動器、除細動器ハウジンング、プロテーゼ、耳排液管、眼科用(ophthalmic)インプラント、整形外科用デバイス、椎間板、代用骨、吻合デバイス、周辺血管ラップ(perivascular wrap)、人工肛門用バック取付けデバイス、止血バリア、血管インプラント、血管支持具、組織接着剤、組織シーラント、組織の足場材(scaffold)及び管腔内デバイスからなる群から選択される。
【0016】
本発明のさらなる態様は、ポリマー及び医薬を含むコーティングを基材に付着させるための方法を提供し、この方法は、
前記少なくとも1種の医薬を含む、超臨界又は臨界点近傍の第1流体混合物を生成させるステップ;
少なくとも1種のポリマーを含む、超臨界又は臨界点近傍の第2流体混合物を生成させるステップ;
医薬の固体粒子を生成するのに十分な条件下で第1オリフィスを通して超臨界又は臨界点近傍の第1流体混合物を吐出するステップ;
ポリマーの固体粒子を生成するのに十分な条件下で前記第1オリフィスを通して又は第2オリフィスを通して超臨界又は臨界点近傍の第2流体混合物を吐出するステップ;
固体医薬の粒子及び/又はポリマーの粒子を前記基材上に付着させるステップ(ここで、電位が、基材と、医薬及び/又はポリマーの粒子との間に保たれるので、前記コーティングが形成される);及び
前記固体医薬の粒子のモルホロジーを実質的に変えない条件下で前記コーティングを焼結するステップ
を含む。
【0017】
別の態様は、ポリマー及び医薬を含むコーティングを基材に付着させるための方法を提供し、この方法は、
第1溶媒及び少なくとも1種のポリマーを含むポリマー溶液の第1の流れを形成するステップ;
超臨界又は臨界点近傍流体混合物の第2の流れを形成するステップ;
第1及び第2の流れを接触させるステップ(ここで、前記の超臨界又は臨界点近傍流体はポリマーの粒子を生成するのに十分な条件下で前記第1溶媒の希釈剤として働く);
第2溶媒及び少なくとも1種の医薬を含む溶液の第3流れを形成するステップ;
超臨界又は臨界点近傍流体混合物の第4の流れを形成するステップ;
前記の第3及び第4の流れを接触させるステップ(ここで、前記の超臨界又は臨界点近傍流体は医薬の粒子を生成するのに十分な条件下で前記第2溶媒の希釈剤として働く);
ポリマー及び/又は医薬の粒子を前記基材上に付着させるステップ(ここで、電位が、基材と、医薬及び/又はポリマーの粒子との間に保たれるので、前記コーティングが形成される);及び
前記固体医薬粒子のモルホロジーを実質的に変えない条件下で前記コーティングを焼結するステップ
を含む。
【0018】
本発明のさらに別の態様は、ポリマー及び医薬を含むコーティングを基材に付着させるための方法を提供し、この基材は1種又は複数のポリマーにより予めコーティングされており、この方法は、
溶媒及び少なくとも1種の医薬を含む溶液の第1の流れを形成するステップ;
超臨界又は臨界点近傍流体混合物の第2の流れを形成するステップ;
前記第1及び第2の流れを接触させるステップ(ここで、前記の超臨界又は臨界点近傍流体は医薬の粒子を生成するのに十分な条件下で前記溶媒の希釈剤として働く);
医薬粒子を前記基材上に付着させるステップ(ここで、電位が、基材と医薬粒子との間に保たれるので、前記コーティングが形成される);及び
前記固体医薬粒子のモルホロジーを実質的に変えない条件下で前記コーティングを焼結するステップ
を含む。
【0019】
さらなる態様は、ポリマー及び医薬を含むコーティングを基材に付着させるための方法を提供し、この基材は1種又は複数の医薬により予めコーティングされており、この方法は、
溶媒及び少なくとも1種のポリマーを含む溶液の第1の流れを形成するステップ;
超臨界又は臨界点近傍流体混合物の第2の流れを形成するステップ;
前記第1及び第2の流れを接触させるステップ(ここで、前記の超臨界又は臨界点近傍流体はポリマーの粒子を生成するのに十分な条件下で前記溶媒の希釈剤として働く);
ポリマー粒子を前記基材上に付着させるステップ(ここで、電位が、基材とポリマー粒子との間に保たれるので、前記コーティングが形成される);及び
前記固体医薬粒子のモルホロジーを実質的に変えない条件下で前記コーティングを焼結するステップ
を含む。
【0020】
本発明のさらに別の態様は、ポリマー及び医薬を含むコーティングを基材に付着させるための方法を提供し、この方法は、
共軸円柱スプレー管に、超臨界又は臨界点近傍流体混合物である反溶媒(anti−solvent)流体混合物と、反溶媒流体混合物に可溶であるか若しくは実質的に可溶であるビヒクル中の少なくとも1種の医薬の溶液又は懸濁液とを共に導入し;反溶媒流体を少なくとも1種の医薬の前記溶液又は懸濁液に接触させて、超臨界又は臨界点近傍流体混合物、ビヒクル及び医薬を含む合流を形成するステップ;
合流を、前記管のオリフィスを通して容器にスプレーするステップ(ここで、前記ビヒクルは溶液又は懸濁液から抽出され、実質的にビヒクルを含まない医薬の粒子が、前記基材への前記医薬粒子の付着の前に生成する);
少なくとも1種のポリマーの粒子により予めコーティングされ、前記容器に配置された基材上に医薬粒子を付着させるステップ(ここで、電位が、基材とポリマー粒子との間に保たれるので、前記コーティングが形成される);及び
前記固体医薬粒子のモルホロジーを実質的に変えない条件下で前記コーティングを焼結するステップ
を含む。
【0021】
本発明のさらに別の態様は、ポリマー及び医薬を含むコーティングを基材に付着させるための方法を提供し、この方法は、
共軸円柱スプレー管に、超臨界又は臨界点近傍流体混合物である反溶媒流体混合物と、反溶媒流体混合物に可溶であるか若しくは実質的に可溶であるビヒクル中の少なくとも1種のポリマーの溶液又は懸濁液とを共に導入し;反溶媒流体を少なくとも1種のポリマーの前記溶液又は懸濁液に接触させて、超臨界又は臨界点近傍流体混合物、ビヒクル及びポリマーを含む合流を形成するステップ;
合流を、前記管のオリフィスを通して容器にスプレーするステップ(ここで、前記ビヒクルは溶液又は懸濁液から抽出され、実質的にビヒクルを含まないポリマーの粒子が、前記基材への前記ポリマー粒子の付着の前に生成する);
少なくとも1種の医薬の粒子により予めコーティングされ、前記容器に配置された基材上にポリマー粒子を付着させるステップ(ここで、電位が、基材とポリマー粒子との間に保たれるので、前記コーティングが形成される);及び
前記固体医薬粒子のモルホロジーを実質的に変えない条件下で前記コーティングを焼結するステップ
を含む。
【0022】
本発明のさらに別の態様は、ポリマー及び生物学的製剤を含むコーティングを基材に付着させるための方法を提供し、この方法は、
第1溶媒及び少なくとも1種のポリマーを含むポリマー溶液の第1の流れを形成するステップ;
超臨界又は臨界点近傍流体混合物の第2の流れを形成するステップ;
第1及び第2の流れを接触させるステップ(ここで、前記の超臨界又は臨界点近傍流体はポリマーの粒子を生成するのに十分な条件下で前記第1溶媒の希釈剤として働く);
第2溶媒及び少なくとも1種の生物学的製剤を含む溶液の第3流れを形成するステップ;
超臨界又は臨界点近傍流体混合物の第4の流れを形成するステップ;
前記の第3及び第4の流れを接触させるステップ(ここで、前記の超臨界又は臨界点近傍流体は医薬の粒子を生成するのに十分な条件下で前記第2溶媒の希釈剤として働く);
ポリマー及び/又は生物学的製剤の粒子を前記基材上に付着させるステップ(ここで、電位が、基材と、生物学的製剤及び/又はポリマーの粒子との間に保たれるので、前記コーティングが形成される);及び
前記生物学的製剤粒子の構造を実質的に変えない条件下で前記コーティングを焼結するステップ
を含む。
【0023】
さらに別の態様は、ポリマー及び医薬を含むコーティングを基材に付着させるための方法を提供し、この方法は、
溶媒及び少なくとも1種の医薬を含む溶液の第1の流れを形成するステップ;
前記流れを、前記基材及び超臨界又は臨界点近傍流体混合物を含む容器に吐出するステップ(ここで、前記の超臨界又は臨界点近傍流体は医薬の粒子を生成するのに十分な条件下で前記溶媒の希釈剤として働く);
溶媒及び少なくとも1種のポリマーを含む溶液の第2の流れを形成するステップ;
前記第2の流れを前記容器に吐出するステップ(ここで、前記の超臨界又は臨界点近傍流体はポリマーの粒子を生成するのに十分な条件下で前記溶媒の希釈剤として働く);
医薬及び/又はポリマーの粒子を前記基材に付着させるステップ(ここで、電位が、基材と、医薬及び/又はポリマーの粒子との間に保たれるので、前記コーティングが形成される);及び
前記固体医薬粒子のモルホロジーを実質的に変えない条件下で前記コーティングを焼結するステップ
を含む。
【0024】
さらに別の態様は、ポリマー及び医薬を含むコーティングを基材に付着させるための方法を提供し、この方法は、
少なくとも1種のポリマーにより予めコーティングされた基材を準備するステップ;
溶媒及び少なくとも1種の医薬を含む溶液の流れを形成するステップ;
前記流れを、前記基材及び超臨界又は臨界点近傍流体混合物を含む容器に吐出するステップ(ここで、前記の超臨界又は臨界点近傍流体は医薬の粒子を生成するのに十分な条件下で前記溶媒の希釈剤として働く);
医薬粒子を前記基材上に付着させるステップ(ここで、電位が、基材と医薬粒子との間に保たれるので、前記コーティングが形成される);及び
前記固体医薬粒子のモルホロジーを実質的に変えない条件下で前記コーティングを焼結するステップ
を含む。
【0025】
別の態様は、ポリマー及び医薬を含むコーティングを基材に付着させるための方法を提供し、この方法は、
少なくとも1種の医薬の固体粒子により予めコーティングされた基材を準備するステップ;
溶媒と少なくとも1種のポリマーを含む溶液の流れを形成するステップ;
前記流れを、前記基材及び超臨界又は臨界点近傍流体混合物を含む容器に吐出するステップ(ここで、前記超臨界又は臨界点近傍流体は、ポリマーの粒子を生成するのに十分な条件下で前記溶媒の希釈剤として働く);
前記基材上にポリマー粒子を付着させるステップ(ここで、電位が、基材とポリマー粒子との間に保たれるので、前記コーティングが形成される);及び
前記固体医薬粒子のモルホロジーを実質的に変えない条件下で前記コーティングを焼結するステップ
を含む。
【0026】
さらに別の態様は、ポリマー及び医薬を含むコーティングを基材に付着させるための方法を提供し、この方法は、
超臨界又は臨界点近傍流体混合物である反溶媒流体混合物と、反溶媒流体混合物に可溶であるか若しくは実質的に可溶であるビヒクル中の少なくとも1種の医薬の溶液又は懸濁液とを接触させて、超臨界又は臨界点近傍流体混合物、ビヒクル及び医薬を含む合流を形成するステップ;
合流を容器にスプレーするステップ(ここで、前記ビヒクルは溶液又は懸濁液から抽出され、実質的にビヒクルを含まない医薬の粒子が、少なくとも1種のポリマーの粒子により予めコーティングされた基材への前記医薬粒子の付着の前に生成する);
前記容器に配置された前記基材上に医薬粒子を付着させるステップ(ここで、電位が、基材と医薬粒子との間に保たれるので、前記コーティングが形成される);及び
前記固体医薬粒子のモルホロジーを実質的に変えない条件下で前記コーティングを焼結するステップ
を含む。
【0027】
本発明のさらなる態様は、ポリマー及び医薬を含むコーティングを基材に付着させるための方法を提供し、この方法は、
超臨界又は臨界点近傍流体混合物である反溶媒流体混合物と、反溶媒流体混合物に可溶であるか若しくは実質的に可溶であるビヒクル中の少なくとも1種の医薬の溶液又は懸濁液とを接触させて、超臨界又は臨界点近傍流体混合物、ビヒクル及び医薬を含む合流を形成するステップ;
合流を容器にスプレーするステップ(ここで、前記ビヒクルは溶液又は懸濁液から抽出され、実質的にビヒクルを含まない医薬の粒子が、少なくとも1種のポリマーの粒子により予めコーティングされた基材への前記医薬粒子の付着の前に生成し;前記反溶媒混合物、及び少なくとも1種の医薬の前記溶液又は懸濁液は、それぞれ、第1及び第2の管によって供給され;前記第1及び第2の管はある角度で配置される);
前記容器に配置された前記基材上に医薬粒子を付着させるステップ(ここで、電位が、基材とポリマー粒子との間に保たれるので、前記コーティングが形成される);及び
前記固体医薬粒子のモルホロジーを実質的に変えない条件下で前記コーティングを焼結するステップ
を含む。
【0028】
本発明のさらなる態様は、ポリマー及び少なくとも2種の医薬を含むコーティングを基材に付着させるための方法を提供し、この方法は、
超臨界又は臨界点近傍流体混合物である反溶媒流体混合物、反溶媒流体混合物に可溶であるか若しくは実質的に可溶である第1ビヒクル中の第1医薬の溶液又は懸濁液、並びに、第1ビヒクルと同じであるか又は反溶媒流体混合物に可溶であるか若しくは実質的に可溶である別のビヒクルである第2ビヒクル中の第2医薬の溶液又は懸濁液を接触させて、超臨界又は臨界点近傍流体混合物、1種のビヒクル若しくは複数のビヒクル並びに第1及び第2医薬を含む合流を形成するステップ;
合流を容器にスプレーするステップ(ここで、前記ビヒクルは溶液又は懸濁液から抽出され、実質的に1種又は複数のビヒクルを含まない第1及び第2医薬の粒子が、少なくとも1種のポリマーの粒子により予めコーティングされた基材への前記複数の医薬粒子の付着の前に生成し;前記反溶媒混合物、前記第1医薬の前記溶液又は懸濁液、並びに前記第2医薬の前記溶液又は懸濁液は、それぞれ、第1、第2及び第3の管によって供給され;前記第2及び第3の管は、前記第1の管からある角度でそれぞれ配置される);
前記容器に配置された前記基材上に複数の医薬粒子を付着させるステップ(ここで、電位が、基材とポリマー粒子との間に保たれるので、前記コーティングが形成される);及び
前記固体医薬粒子のモルホロジーを実質的に変えない条件下で前記コーティングを焼結するステップ
を含む。
【0029】
さらに別の態様は、
基材;及び
基材上に配置され、実質的に均一な厚さを有する、医薬−ポリマーのコーティング
を備え、コーティングが少なくとも1種の医薬を含み、コーティング中の1種又は複数の医薬の全てがポリマーコーティング内に実質的に均一に分散している、コーティングされた植え込み可能なメディカルデバイスを提供する。
【0030】
本明細書において挙げられている出版物及び特許の全ては、それぞれの個々の出版物又は特許出願が参照を通じて組み込まれると、明確に、また個別に言われているのと同じ程度に、参照を通じて本明細書に組み込まれる。
【0031】
本発明の新規な特徴は添付の特許請求の範囲に綿密に記載されている。本発明の特徴及び利点のより良い理解は、本発明の原理が用いられている例示的実施形態を説明する以下の詳細な記述及び添付図を参照することによって得られるであろう。
【0032】
本発明が以下に詳細に説明される。この説明は、本発明が実施され得る全ての異なるやり方、又は本発明に付加され得る全ての特徴の詳細な目録であろうとするものではない。例えば、一実施形態に関連して例示される特徴は、他の実施形態に組み入れられてもよく、特定の実施形態に関連して例示される特徴はその実施形態から除かれ得る。さらに、本明細書において提案されている様々な実施形態に対する、本発明から逸脱しない多数の変形形態及び付加が、本開示に照らして当業者には明らかであろう。したがって、以下の明細は、本発明のいくつかの特定の実施形態を例示しようとするものであり、それらの変更、組合せ及び変形形態の全てを漏れなく特定しようとするものではない。
【0033】
出願人等は、本明細書において引用されている全ての米国特許文献が参照を通じて全体として本明細書に組み込まれることを明確に意図する。
【0034】
本発明は、不活性な1種のポリマー又は複数のポリマーと1種の医薬若しくは生物学的製剤又は複数の医薬若しくは生物学的製剤との組合せを、基材の複数の部分又は全ての表面上に付着させて、予め決められた所望の厚さで、表面に沿い、実質的に欠陥がなく、均一であるコーティングを形成する費用効率の高い、効率的な方法を提供し、このコーティングの組成は調節できる。特に、本発明は、コーティングプロセスの間に付着される製剤の構造及びモルホロジーの維持ができない既存のコーティング法の問題に取り組む。本発明の一態様は、基材に粉末粒子を引き付けるために静電気による捕捉を用いる、乾燥粉末としての医薬又は生物学的製剤の付着を伴う。乾燥粉末のスプレーは当技術分野においてよく知られており、静電気により捕捉と組み合わせた乾燥粉末のスプレーは、例えば、米国特許第5470603号、米国特許第6319541号、又は米国特許第6372246号に記載されている。ポリマーのモルホロジーは、それが所望の性質(例えば、厚さ、表面に忠実に沿う性質、欠陥のないこと、均一性など)を有するコーティングをもたらす限り、重要性が低いので、ポリマーの付着は多くの標準的な手法で実施できる。ポリマーの役割は、主に、コーティングの活性成分のための不活性担体マトリックスの役割である。
【0035】
一態様において、本発明のコーティング法は、医薬又は生物学的製剤とポリマーとによりコーティングされた基材を得ること、及び医薬及び生物学的製剤の構造及びモルホロジーの良好な状態(integrity)にそれ程影響を与えない良い条件下で実施される焼結プロセスにそれらを従わせること、を含む。本発明において用いられる焼結プロセスとは、それによってマトリックスの一部又はポリマーマトリックスの全体が連続になる(例えば、連続ポリマーフィルムの生成)プロセスを表す。下で記載されるように、焼結プロセスは、完全に表面に沿う連続マトリックスを生じるように(完全焼結)、或いは、連続コーティングの部分又はドメインを生じると同時に、マトリックスにボイド(不連続部分)を生じるように、制御される。また、焼結プロセスは、何らかの相分離が異なるポリマー(例えば、ポリマーA及びB)の間で生じるように、及び/又は、別個のポリマー粒子の間で相分離を生じるように、制御される。焼結プロセスはまた、ポリマーコーティングの接着性を改善する。焼結プロセスは、圧縮ガス、圧縮液体、又は超臨界流体が、ポリマー、医薬及び生物学的製剤にとって貧溶媒(poor solvent)又はいくつかの場合には非溶媒(non−solvent)でありながら、ポリマーの連続コーティングの生成は引き起こす条件(例えば、温度及び圧力)で、圧縮ガス、圧縮液体、又は超臨界流体によりコーティングされた基材を処理することを含む。焼結プロセスは、ある条件(例えば、温和な温度)の下で、医薬及び/又は生物学的製剤の構造及びモルホロジーの良好な状態にそれ程影響を与えない良い流体(例えば、圧縮ガス、又は超臨界流体、このガス又は流体は、例えば、二酸化炭素、イソブチレン又はこれらの混合物を含み得る)を用いて実施される。いくつかの事情の下では、超臨界又は臨界点近傍流体を用いることによって、より良好な焼結結果が得られることがあるが、本発明による多くの実施形態において、圧縮ガスによる処理により所望の焼結ポリマーコーティングが得られることを記しておく。当業者には、本発明の実施において、超臨界流体、臨界点近傍流体又は圧縮ガスを選択するのに困難はないであろう。焼結条件は、焼結プロセスが完全には達成されないように調節され得る。すなわち、この焼結では完全に連続的なポリマーマトリックスは生成しない。不完全な焼結が本発明に従って実施される場合、ポリマーマトリックスのいくつかのドメインは連続であり得るが、同時に、他のドメインは、薬物がポリマーマトリックス内に包み込まれるか又は封鎖され得るボイド、キャビティ、ポア、チャネル又は裂け目を画定する。このようなポリマーマトリックスでは、ポリマーマトリックスの微視的又は巨視的なボイドが原因で、密度はポリマーのバルク密度より小さいであろう。代わりに、このようなポリマーマトリックスは、ポリマードメインの相分離を、或いは、複数のポリマーが用いられる場合には、異なる種類のポリマーの間の相分離を保有できるであろう。ほとんどの実施形態において、焼結プロセスが完全であっても不完全であっても、焼結条件は、基材へのコーティングの良好な接着を生じるように選択される。ステントでは、適切な接着特性により、一般に、使用中の操作の間のステントからのコーティングのフレーキング(flaking)又は脱離が減少するか、又は防止される。
【0036】
本発明の一態様は、乾燥粉末、RESS及びSEDSスプレー法の2つ以上の組合せである。
【0037】
本発明の別の態様は、好ましい粒径及びモルホロジーの医薬の乾燥粉末を、やはり乾燥粉末スプレーされるポリマーと同じ捕捉容器へ、スプレーすることを含み、ここで、製剤及びポリマーのスプレーは逐次的であるか又は同時である。
【0038】
本発明の別の特定の態様は、好ましい粒径で特定の活性を有する活性生物学的製剤の乾燥粉末を、やはり乾燥粉末スプレーされるポリマーと同じ捕捉容器へ、スプレーすることを含み、ここで、製剤及びポリマーのスプレーは逐次的であるか又は同時である。
【0039】
本発明のさらに別の態様は、好ましい粒径及びモルホロジーの医薬の乾燥粉末を、RESSスプレー法によって逐次的に又は同時にスプレーされるポリマーと同じ捕捉容器へ、スプレーすることを含む。
【0040】
本発明のさらに別の態様は、好ましい粒径で特定の活性を有する活性生物学的製剤の乾燥粉末を、RESSスプレー法によって逐次的に又は同時にスプレーされるポリマーと同じ捕捉容器へ、スプレーすることを含む。
【0041】
本発明のさらに別の態様は、好ましい粒径及びモルホロジーの医薬の乾燥粉末を、SEDSスプレー法によって逐次的に又は同時にスプレーされるポリマーと同じ捕捉容器へ、スプレーすることを含む。
【0042】
本発明のさらに別の態様は、好ましい粒径で特定の活性を有する活性生物学的製剤の乾燥粉末を、SEDSスプレー法によって逐次的に又は同時にスプレーされるポリマーと同じ捕捉容器へ、スプレーすることを含む。
【0043】
上の6つの方法の任意の組合せは本発明のこの態様によって想定されている。
【0044】
本発明のさらなる態様において、上の実施形態において記載されたように、医薬又は生物学的製剤及びポリマーによりコーティングされた基材が、次に、焼結プロセスに従う。焼結プロセスは、良い条件(この条件は、医薬及び生物学的製剤の構造及びモルホロジーの良好な状態に影響を及ぼさない)の下で実施され、共に付着された医薬又は生物学的製剤−ポリマーマトリックスが連続になり、基材に接着しているようになるプロセスを指している。これは、圧縮ガス、圧縮液体又は超臨界流体が、ポリマーの貧溶媒、ポリマーの弱溶媒(weak solvent)、又は、ポリマー、医薬及び生物学的製剤に対する非溶媒でありながら、連続ポリマーコーティングを形成するためにポリマー粒子を処理するのに適する作用剤である条件で、コーティングされた基材を、圧縮ガス、圧縮液体又は超臨界流体により処理することによって達成される。焼結プロセスは、ある条件(例えば、温和な温度)の下で、医薬及び生物学的製剤の構造及びモルホロジーの良好な状態に影響を与えない良い流体(例えば、超臨界二酸化炭素)を用いて実施される。医薬及び生物学的製剤の構造及びモルホロジーの良好な状態に影響を与えない他の焼結プロセスもまた、本発明により想定され得る。
【0045】
本発明のさらなる態様において、所望の溶出媒体に置かれた時に、活性物質の放出が予め決められた溶出プロファイルにより起こるようにコーティングを作り出すことが望ましい。望ましい溶出プロファイルをもたせるために、コーティングの性質は様々なやり方で変更され得る。
【0046】
ポリマーの化学組成は、活性物質の溶出を許す、又は制限するポリマーの量を増やすか、又は減らすように変えることができる。例えば、意図される溶出媒体が水を含む場合、水中で膨潤するポリマーの含量を高めると、活性物質はより速く放出されるであろう。逆に、水性媒体中で膨潤しないポリマーの含量を高めると、結果的に溶出速度はより遅くなるであろう。
【0047】
コーティングの性質はまた、交互ポリマー層によっても制御できる。異なる性質のポリマー層が順番に基材に付着される。各層に付着されるポリマーの特質を変える(例えば、異なるポリマーの層を付着させる)ことによって、コーティングの溶出プロファイルは変えられる。層の数と付着の順序により、制御された溶出プロファイルを有するコーティングの設計のさらなる手段が得られる。
【0048】
コーティングの性質はまた、ポリマーコーティングのマクロ及び/又はミクロ構造(拡散経路)の制御によっても変えることができる。これは、(複数の)コーティングプロセスを変えることによって、或いは、異なる焼結条件を用いることによって達成され得る。
【0049】
本発明は、1種の薬剤又は複数の薬剤の溶出を制御するためのいくつかの手法を提供する。例えば、一実施形態において、制御された溶出は異なるポリマー(例えば、PEVA/PBMA)の分離(segregation)によって達成される。別の実施形態において、溶出の制御は、ポリマーマトリックスの制御された不完全焼結が実現されるように焼結プロセスの間の条件を制御することによって達成され、この場合、コーティングは、付着したままのポリマー粒子の粒子状構造のいくらかを保持するであろう。不完全な焼結はコーティングにポア/ボイドを生じ、(複数の)ポリマーを通しての溶出に代わる又はそれに加えられる(複数の)ポリマーの回りの薬剤溶出を含めて、薬剤溶出のさらなる経路を与えるであろう。ポリマーマトリックスの不完全な焼結により得られるポア又はボイドの大きさは、いくつかの方法により得ることができる。例えば、焼結プロセスが実施される容器の減圧速度は、ポア径を制御するための1つの手段を提供する。コーティングのキャビティ又はポアの大きさは、添加剤としてポロゲン(porogen)を用い、続いて、例えばそのポロゲンの溶媒による処理により、ポロゲンの少なくとも一部を除去することによって制御できる。好ましくは、ポロゲンの溶媒は高密度ガス(例えば、炭素)を含む。いくつかの実施形態において、ポロゲンはSOA又は他のこのような疎水性に誘導体化された炭水化物である。ポロゲンの少なくとも一部の除去は、好ましくは、焼結プロセスの間に実施される。
【0050】
本発明のいくつかの態様において、活性物質の溶出プロファイルは、ポリマーの粒径を変えることによって制御できる。こうして、ポリマー粒子が基材に付着される方法は、所望の溶出速度をもたせるために変えられる。例えば、同じノズルを通して同時に放出されるポリマーでは、超臨界溶液からのRESSによる放出は、通常、小さなポリマー粒子を生じるであろう。圧縮ガスとの混合物からのRESSに似た放出は、通常、より大きなポリマー粒子を生成する。SEDS法を用いると、用いられる特定のSEDS条件に応じて様々なポリマー粒径を得ることができる。
【0051】
本発明のさらなる態様において、活性物質の溶出プロファイルは、ポリマー粒子の形状を変えることによって制御できる。ポリマー粒子の形状を様々にする1つのやり方は、ポリマーの初期濃度を変えることである。低い初期濃度では、ポリマーは小さな粒子として付着される。濃度が高くなると、より大きな粒子が生成する。さらに高い濃度では、生成する粒子は細長くなり、終には、高濃度で、細長い姿が繊維状になり、最終的には、連続繊維になる。
【0052】
本発明のさらに別の態様において、活性物質の溶出プロファイルは、化学的に異なるポリマーの離散的ドメインを作り出すことによって制御できる。前記のように、化学的に異なるポリマーは、異なる溶出媒体において、活性物質の溶出を許すか、又は制限する。コーティング内の離散的な巨視的ドメインにおけるこのようなポリマーの位置を変えることによって、溶出プロファイルは調節できるであろう。例えば、2種の異なるポリマーが同じノズルを通して逐次的に放出されるプロセスの間に、いずれかのポリマーの粒子が、例えば、基材上のコーティングの外側、内側又は中間により近く、それらを配置するように付着され得るであろう。別の実施形態では、2種のポリマーが、2つの異なるノズルを通して同時に、異なる付着速度で、及び/又は互い違いになる付着速度で放出されて、同様の効果を生じ得る。さらなる実施形態では、溶出性及び非溶出性のポリマーの付着が交互に行われて、変動型の放出が得られる。さらに別の実施形態では、活性物質がパルス状に放出されるように、ポリマーが付着される。薬剤の拡散に違いを生じるドメインを提供する(複数の)ポリマーの分離は、例えば、同じノズルを通してのポリマーの逐次スプレーによって、或いは、複数のノズルを用いることによって、達成される。また、前記のように、活性物質の溶出制御は、コーティングの深さ方向での異なるポリマーの層状化によって達成され得る。ドメイン、分離及び深さ方向での層状化の組合せもまた、制御された溶出特性を有するコーティングの設計のために想定されている。
【0053】
これらのプロセスのいずれかの間の活性物質の付着は、コーティングの全体を通して分布が一様となるように一定であるか、或いは、コーティング内の異なるポリマードメインにおける活性物質の量が異なっているように、活性物質のスプレー量は変えられてもよい。
【0054】
本発明のさらなる態様において、活性物質の溶出プロファイルは、コーティングの焼結条件を変えることによって制御できる。例えば、不完全な焼結は、開けたスペースを、又はポリマー粒子間の隙間のスペースにポアを生じ、これらはコーティングからの活性物質のより速い溶出を可能にするであろう。溶出制御のために焼結条件を利用する別のやり方は、焼結プロセスの間の発泡によって、乱れたコーティングを故意に作り出すことであろう。CO2又はイソブチレンを含浸させたポリマーフィルムの急速な圧力開放は、発泡したポリマーの生成を引き起こし、この発泡したポリマーは、多孔度が増大したコーティングを生成し、拡散/溶出に対して非常に「開かれている」と思われる。このように、溶出プロファイルは、ポアの密度及び大きさを制御することになる発泡条件を操作することによって制御できるであろう。
【0055】
定義
本明細書において用いられる場合、以下の用語及び句は、それらが用いられている文脈によりそうではないことが示される範囲を除いて、一般に、以下に記載される意味を有するものとする。
【0056】
本明細書では、「基材」は、ポリマー及び医薬又は生物学的製剤を含むコーティングをその上に付着させることが望ましい任意の表面を表し、ここで、コーティングプロセスは医薬のモルホロジー又は生物学的製剤の活性を実質的に変えないものとする。バイオメディカルインプラントは、本発明にとって特に関心のある基材である。しかし、本発明は、この部類の基材に限定されようとするものではない。当業者は、本明細書に記載されているコーティング方法が有益であり得る別の基材、例えば、医薬錠剤コア、アッセイ装置、又は診断キットの構成要素(例えば、試験片)を認めるであろう。
【0057】
本明細書では、「バイオメディカルインプラント」は、ヒト又は動物の対象の身体に挿入される任意のインプラントを表し、これらに限らないが、ステント(例えば、血管ステント)、電極、カテーテル、リード線、植え込み型のペースメーカー、カーディオバーター又は除細動器のハウジング、ジョイント、ねじ、棒、眼科用インプラント、大腿骨ピン、ボーンプレート(bone plate)、グラフト、吻合デバイス、周辺血管ラップ、縫合糸、ステープル、水頭症のためのシャント、透析グラフト、人工肛門用バック取付けデバイス、耳排液管、ペースメーカー並びに植え込み型のカーディオバーター及び除細動器のためのリード線、椎間板、ボーンピン(bone pin)、スーチャーアンカー、止血バリア、クランプ、ねじ、プレート、クリップ、血管インプラント、組織の接着剤及びシーラント、組織の足場材、様々なタイプの被覆材(例えば、創傷被覆材)、代用骨、管腔内デバイス、血管支持具などが含まれる。
【0058】
インプラントは適切な任意の材料から形作られていてよく、これらに限らないが、有機ポリマー(安定な又は不活性なポリマー及び生分解性ポリマーが含まれる)、金属、シリコンのような無機材料、及びこれらのコンポジット(1つの材料のコアと別の材料の1つ又は複数のコーティングを有する層状構造が含まれる)が含まれる。しかし、本発明は、導電性が低いか又は非導電性の基材を用いて静電気による捕捉を用いることを想定している。導電性材料からなる基材は静電気による捕捉を容易にする。非導電性基材が用いられる場合に、静電気による捕捉を向上させるために、基材近傍に強い電場を維持しながら、基材は処理される。
【0059】
本発明のバイオメディカルインプラントが適用又は挿入され得る対象には、ヒトの対象(男性及び女性の対象、並びに幼児、少年少女、思春期の若人、成人及び老人の対象が含まれる)、さらには獣医が扱う動物の対象(これらに限らないが、イヌ、ネコ、ウマ、モンキーなどが含まれる)の両方が含まれる。
【0060】
好ましい実施形態において、バイオメディカルインプラントは、Palmaz Shazの米国特許第4733665号に記載されているような、カテーテルと結び付いた、血管の管腔を広げ膨張させるための血管形成術バルーンによって血管内で膨張できる血管管腔内膨張性グラフト又はステント(例えば、ワイヤメッシュチューブを備える)である。
【0061】
本明細書では、「医薬」は、疾患を予防又は治療する(疾患を予防すること、すなわち、疾患の臨床症状が発生しないようにすること;疾患を抑制すること、すなわち、臨床症状の進展を阻むこと;及び/又は、疾患を和らげること、すなわち、臨床症状を軽減すること;を含めて、哺乳動物における疾患の何らかの治療を意味する)ための活性剤として使用できる様々な任意の薬剤又は医薬化合物を表す。本発明での医薬はまた、2種以上の薬剤又は医薬化合物を含むことも可能である。医薬には、これらに限らないが、以下が含まれる:抗再狭窄薬、抗糖尿病薬、鎮痛薬、抗炎症薬、抗リウマチ薬、抗低血圧薬、抗高血圧薬、精神活性剤、精神安定剤、制吐剤、筋弛緩薬、グルココルチコイド、潰瘍性大腸炎又はクローン病を治療するための製剤、抗アレルギー薬、抗生物質、抗てんかん薬、抗凝固薬、抗真菌薬、鎮咳薬、動脈硬化治療薬、利尿薬、タンパク質、ペプチド、酵素、酵素阻害薬、通風治療薬、ホルモン及びホルモン阻害薬、強心配糖体、免疫療法剤及びサイトカイン、下剤、脂質降下薬、偏頭痛治療薬、ミネラル製品、耳用の薬、抗パーキンソン剤、甲状腺治療薬、鎮痙薬、血小板擬集抑制剤、ビタミン、細胞増殖抑制剤及び転移抑制剤、植物薬、化学寮法剤及びアミノ酸。適切な活性成分の例は以下である:アカルボース、アンチゲン、ベータ−受容体遮断薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、強心配糖体、アセチルサリチル酸、ウイルス増殖抑制剤、アクラルビシン、アシクロビル、シスプラチン、アクチノマイシン、アルファ−及びベータ−交感神経様作用薬、メプラゾール(dmeprazole)、アロプリノール、アルプロスタジル、プロスタグランジン、アマンタジン、アンブロキソール、アムロジピン、メトトレキサート、S−アミノサリチル酸、アミトリプチリン、アモキシシリン、アナストロゾール、アテノロール、アザチオプリン、バルサラジド、ベクロメタゾン、ベタヒスチン、ベザフィブラート、ビカルタミド、ジアゼパム及びジアゼパム誘導体、ブデソニド、ブフェキサマク、ブプレノルフィン、メタドン、カルシウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カンデサルタン、カルバマゼピン、カプトプリル、セファロスポリン、セチリジン、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、テオフィリン及びテオフィリン誘導体、トリプシン、シメチジン、クラリスロマイシン、クラブラン酸、クリンダマイシン、クロブチノール、クロニジン、コトリモクサゾール、コデイン、カフェイン、ビタミンD及びビタミンD誘導体、コレスチラミン、クロモグリク酸、クマリン及びクマリン誘導体、システイン、シタラビン、シクロホスファミド、シクロスポリン、シプロテロン、シタバリン(cytabarine)、ダピプラゾール、デソゲストレル、デソニド、ジヒドララジン、ジルチアゼム、麦角アルカロイド、ジメンヒドリナート、ジメチルスルホキシド、ジメチコン、ドンペリドン及びドンペリドン誘導体、ドーパミン、ドキサゾシン、ドキソルビジン、ドキシラミン、ダピプラゾール、ベンゾジアゼピン類、ジクロフェナク、配糖体抗生物質、デシプラミン、エコナゾール、ACE阻害薬、エナラプリル、エフェドリン、エピネフリン、エポエチン及びエポエチン誘導体、モルフィナン類、カルシウムアンタゴニスト、イリノテカン、モダフィニル、オルリスタット、ペプチド抗体、フェニトイン、リルゾール類、リセドロネート、シルデナフィル、トピラマート、マクロライド抗菌薬、エストロゲン及びエストロゲン誘導体、プロゲストーゲン及びプロゲストーゲン誘導体、テストステロン及びテストステロン誘導体、アンドロゲン及びアンドロゲン誘導体、エテンザミド、エトフェナマート、エトフィブラート、フェノフィブラート、エトフィリン、エトポシド、ファムシクロビル、ファモチジン、フェロジピン、フェノフィブラート、フェンタニル、フェンチコナゾール、ジャイレース阻害薬、フルコナゾール、フルダラビン、フルアリジン(fluarizine)、フルオロウラシル、フルオキセチン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、フルタミド、フルバスタチン、フォリトロピン、ホルモテロール、ホスホマイシン、フロセミド、フシジン酸、ガロパミル、ガンシクロビル、ゲムフィブロジル、ゲンタマイシン、ギンコ、セントジョーンズワート、グリベンクラミド、経口抗糖尿病薬のような尿素誘導体、グルカゴン、グルコサミン及びグルコサミン誘導体、グルタチオン、グルセロール及びグリセロール誘導体、視床下部ホルモン、ゴセレリン、ジャイレース阻害薬、グアネチジン、ハロファントリン、ハロペリドール、ヘパリン及び誘導体、ヒアルロン酸、ヒドララジン、ヒドロクロロチアジド及びヒドロクロロチアジド誘導体、サリシレート、ヒドロキシジン、イダルビシン、イホスファミド、イミプラミン、インドメタシン、インドラミン、インスリン、インターフェロン、ヨウ素及びヨウ素誘導体、イソコナゾール、イソプレナリン、グルシトール及びグルシトール誘導体、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ケトプロフェン、ケトチフェン、ラシジピン、ランソプラゾール、レボドパ、レボメサドン(levomethadone)、甲状腺ホルモン、リポ酸及びリポ酸誘導体、リシノプリル、リスリド、ロフェプラミン、ロムスチン、ロペラミド、ロラタジン、マプロチリン、メベンダゾール、メベベリン、メクロジン、メフェナム酸、メフロキン、メロキシカム、メピンドロール、メプロバメート、メロペネム、メサラジン、メスキシミド、メタミゾール、メトホルミン、メトトレキサート、メチルフェニデート、メチルプレドニゾロン、メチキセン、メトクロプラミド、メトプロロール、メトロニダゾール、ミアンセリン、ミコナゾール、ミノサイクリン、ミノキシジル、ミソプロストール、マイトマイシン、ミゾラスチン、モエキシプリル、モルフィン及びモルフィン誘導体、イブニングプリムローズ、ナルブフィン、ナロキソン、チリジン、ナプロキセン、ナルコチン、ナタマイシン、ネオスチグミン、ニセルゴリン、ニセタミド(nicethamide)、ニフェジピン、ニフルミン酸、ニモジピン、ニモラゾール、ニムスチン、ニソルジピン、アドレナリン及びアデレナリン誘導体、ノルフロキサシン、ノバミンスルホン(novamine sulfone)、ノスカピン、ナイスタチン、オフロキサシン、オランザピン、オサラジン、オメプラゾール、オモコナゾール、オンダンセトロン、オキサセプロール、オキサシリン、オキシコナゾール、オキシメタゾリン、パントプラゾール、パラセタモール、パロキセチン、ペンシクロビル、経口ペニシリン、ペンタゾシン、ペンチフィリン、ペントキシフィリン、ペルフェナジン、ペチジン、植物抽出物、フェナゾン、フェニラミン、バルビツール酸誘導体、フェニルブタゾン、フェニトイン、ピモジド、ピンドロール、ピペラジン、ピラセタム、ピレンゼピン、ピリベジル、ピロキシカム、プラミペキソール、プラバスタチン、プラゾシン、プロカイン、プロマジン、プロピベリン、プロプラノロール、プロピフェナゾン、プロスタグランジン、プロチオナミド、プロキシフィリン、クエチアピン、キナプリル、キナプリラト、ラミプリル、ラニチジン、レプロテロール、レセルピン、リバビリン、リファンピシン、リスペリドン、リトナビル、ロピニロール、ロキサチジン、ロキシスロマイシン、ルスコゲニン、ルトシド及びルトシド誘導体、サバジラ、サルブタモール、サルメテロール、スコポラミン、セレギリン、セルタコナゾール、セルチンドール、セルトラリオン(sertralion)、シルケート、シルデナフィル、シンバスタチン、シトステロール、ソタロール、スパグルム酸、スパルフロキサシン、スペクチノマイシン、スピラマイシン、スピラプリル、スピロノラクトン、スタブジン、ストレプトマイシン、スクラルファート、スフェンタニル、スルバクタム、スルホンアミド、スルファサラジン、スルピリド、スルタミシリン、スルチアム、スマトリプタン、塩化スキサメトニウム、タクリン、タクロリムス、タリオロール(taliolol)、タモキシフェン、タウロリジン、タザロテン、テマゼパム、テニポシド、テノキシカム、テラゾシン、テルビナフィン、テルブタリン、テルフェナジン、テルリプレシン、テルタトロール、テトラサイクリン、テリゾリン(teryzoline)、テオブロミン、テオフィリン、ブチジン(butizine)、チアマゾール、フェノチアジン類、チオテパ、チアガビン、チアプリド、プロピオン酸誘導体、チクロピジン、チモロール、チニダゾール、チオコナゾール、チオグアニン、チオキソロン、チロプラミド、チザニジン、トラゾリン、トルブタミド、トルカポン、トルナフタート、トルペリゾン、トポテカン、トラセミド、抗エストロゲン剤、トラマドール、トラマゾリン、トランドラプリル、トラニルシプロミン、トラピジル、トラゾドン、トリアムシノロン及びトリアムシノロン誘導体、トリアムテレン、トリフルペリドール、トリフルリジン、トリメトプリム、トリミプラミン、トリペレナミン、トリプロリジン、トリホスファミド(trifosufamide)、トロマンタジン、トロメタモール、トロパルピン(tropalpin)、トロキセルチン、ツロブテロール、チラミン、チロトリシン、ウラピジル、ウルソデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、バラシクロビル、バルプロ酸、バンコマイシン、塩化ベクロニウム、バイアグラ、ベンラファキシン、ベラパミル、ビダラビン、ビガバトリン、ビロアジン(viloazine)、ビンブラスチン、ビンカミン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ビンポセチン、ビキジル、ワルファリン、ニコチン酸キサンチノール、キシパミド、ザフィルルカスト(zafirlukast)、ザルシタビン、ジドブジン、ゾルミトリプタン、ゾルピデム、ゾプリコン(zoplicone)、ゾチピン(zotipin)など。例えば、米国特許第6897205号を参照。また、米国特許第6838528号、米国特許第6497729号も参照。
【0062】
本発明に関連させて用いられる治療薬の例には、以下が含まれる:ラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシエチル)ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−ベンジル−ラパマイシン、40−O−(4’−ヒドロキシメチル)ベンジル−ラパマイシン、40−O−[4’−(1,2−ジヒドロキシエチル)]ベンジル−ラパマイシン、40−O−アリル−ラパマイシン、40−O−[3’−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4(S)−イル)−プロパ−2’−エン−1’−イル]−ラパマイシン、(2’:E,4’S)−40−O−(4’,5’−ジヒドロキシペンタ−2’−エン−1’−イル)−ラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシ)エトキシカルボニルメチル−ラパマイシン、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−(6−ヒドロキシ)ヘキシル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、40−O−[(3S)−2,2−ジメチルジオキソラン−3−イル]メチル−ラパマイシン、40−O−[(2S)−2,3−ジヒドロキシプロパ−1−イル]−ラパマイシン、40−O−(2−アセトキシ)エチル−ラパマイシン、40−O−(2−ニコチノイルオキシ)エチル−ラパマイシン、40−O−[2−(N−モルホリノ)アセトキシ]エチル−ラパマイシン、40−O−(2−N−イミダゾリルアセトキシ)エチル−ラパマイシン、40−O−[2−(N−メチル−N’−ピペラジニル)アセトキシ]エチル−ラパマイシン、39−O−デスメチル−39,40−O,O−エチレン−ラパマイシン、(26R)−26−ジヒドロ−40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン、28−O−メチル−ラパマイシン、40−O−(2−アミノエチル)−ラパマイシン、40−O−(2−アセトアミノエチル)−ラパマイシン、40−O−(2−ニコチンアミドエチル)−ラパマイシン、40−O−(2−(N−メチル−イミダゾ−2’−イルカルボエトキシアミド)エチル)−ラパマイシン、40−O−(2−エトキシカルボニルアミノエチル)−ラパマイシン、40−O−(2−トリルスルホンアミドエチル)−ラパマイシン、40−O−[2−(4’,5’−ジカルボエトキシ−1’,2’,3’−トリアゾール−1’−イル)−エチル]−ラパマイシン、42−エピ−(テトラゾリル)ラパマイシン(タクロリムス)、及び42−[3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロパノエート]ラパマイシン(テムシロリムス)。
【0063】
活性成分は、望まれる場合、薬学的に許容される塩又は誘導体(生物学的な有効性及び本発明での化合物の特性を保持し、生物学的に又は別の点で望ましくなくはない塩を意味する)の形で用いられてもよく、またキラルな活性成分の場合には、両方の光学活性異性体及びラセミ体又はジアステレオマー混合物を用いることが可能である。
【0064】
本明細書では、「安定性」は、最終的な製品の形態において、基材に付着されたポリマーコーティング中の薬剤の安定性(例えば、コーティングされたステントにおける薬剤の安定性)を表す。安定性という用語は、最終の製品形態における医薬の劣化を5%以下に限るであろう。
【0065】
本明細書では、「活性生物学的製剤」は、疾患を予防又は治療する(疾患を予防すること、すなわち、疾患の臨床症状が発生しないようにすること;疾患を抑制すること、すなわち、臨床症状の進展を阻むこと;及び/又は、疾患を和らげること、すなわち、臨床症状を軽減すること;を含めて、哺乳動物における疾患の何らかの治療を意味する)ために使用できる、元々は生物によって産出された物質を表す。本発明での活性生物学的製剤はまた、2種以上の活性生物学的製剤を、或いは、医薬、安定剤又は化学的若しくは生物学的物質(entity)と組み合わせた1種の活性生物学的製剤を含むこともあり得る。活性生物学的製剤は、元々は生物によって産出されたかもしれないが、本発明でのこれらは、合成によって調製されていても、或いは、生物学的分離と合成による修飾とを組み合わせた方法によっていてもよい。非限定的例として、核酸は、生物原料から単離された形であるか、或いは、核酸合成の当業者に知られている通常の技法によって調製され得る。さらに、核酸は天然には生じない部分を含むようにさらに修飾されていてもよい。活性生物学的製剤の非限定的例には、ペプチド、タンパク質、酵素、糖タンパク質、核酸(1本又は2本鎖のいずれかの形態にあるデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドのポリマーが含まれ、特に断らなければ、天然に産するヌクレオチドに類似の仕方で核酸とハイブリッド形成する天然のヌクレオチドの知られているアナローグが包含される)、アンチセンス核酸、脂肪酸、抗菌剤、ビタミン、ホルモン、ステロイド、脂質、多糖、炭水化物などが含まれる。活性生物学的製剤には、さらに、これらに限らないが、抗再狭窄薬、抗糖尿病薬、鎮痛薬、抗炎症薬、抗リウマチ薬、抗低血圧薬、抗高血圧薬、精神活性剤、精神安定剤、制吐剤、筋弛緩薬、グルココルチコイド、潰瘍性大腸炎又はクローン病を治療するための製剤、抗アレルギー薬、抗生物質、抗てんかん薬、抗凝固薬、抗真菌薬、鎮咳薬、動脈硬化治療薬、利尿薬、タンパク質、ペプチド、酵素、酵素阻害薬、通風治療薬、ホルモン及びホルモン阻害薬、強心配糖体、免疫療法剤及びサイトカイン、下剤、脂質降下薬、偏頭痛治療薬、ミネラル製品、耳用の薬、抗パーキンソン剤、甲状腺治療薬、鎮痙薬、血小板擬集抑制剤、ビタミン、細胞増殖抑制剤及び転移抑制剤、植物薬、化学療法剤及びアミノ酸が含まれる。好ましくは、活性生物学的製剤はペプチド、タンパク質又は酵素であり、天然のペプチド、タンパク質又は酵素の誘導体及びアナローグも含まれる。
【0066】
本明細書では、「活性」は、疾患を予防又は治療する(疾患を予防すること、すなわち、疾患の臨床症状が発生しないようにすること;疾患を抑制すること、すなわち、臨床症状の進展を阻むこと;及び/又は、疾患を和らげること、すなわち、臨床症状を軽減すること;を含めて、哺乳動物における疾患の何らかの治療を意味する)、医薬又は活性生物学的製剤の能力を表す。したがって、医薬又は活性生物学的製剤の活性は、治療上又は予防上の価値のあるものでなければならない。
【0067】
本明細書では、「2次、3次及び4次構造」は、次の様に定義される。本発明での活性生物学的製剤は、通常、いくらかの程度の2次、3次及び/又は4次構造(これらに製剤の活性は依存する)を有するであろう。例示的で非限定的な例として、タンパク質は2次、3次及び4次構造を有する。2次構造は、1次配列において互いに近いアミノ酸残基の空間配置を表す。α−へリックス及びβ−ストランドは2次構造の要素である。3次構造は、1次配列において遠く離れたアミノ酸残基の空間配置及びジスルフィド結合のパターンを表す。2つ以上ペプチド鎖を含むタンパク質は、さらなる段階の構造組織化を示す。このようなタンパク質における各ペプチド鎖はサブユニットと呼ばれる。4次構造は、サブユニットの空間配置及びサブユニットの接触の特質を表す。例えば、ヘモグロビンは2つのα鎖及び2つのβ鎖からなる。タンパク質の機能は、そのコンフォメーション又は原子の3次元配置から生じることがよく知られている(伸びたペプチド鎖は活性をもっていない)。こうして、本発明の一態様は、治療上の活性を失わないように活性生物学的製剤のコンフォメーションを保持するように注意しながら、活性生物学的製剤を扱うことである。
【0068】
本明細書では、「ポリマー」は、架橋しているか又は重合している一続きの繰返しモノマー単位を表す。本発明を実施するために適切な任意のポリマーを用いることができる。本発明でのポリマーはまた、2種、3種、4種又はそれ以上の異なるポリマーを含むことも可能である。本発明のいくつかの実施形態において、1種のみのポリマーが用いられる。いくつかの好ましい実施形態において、2種のポリマーの組合せが用いられる。ポリマーの組合せは、様々な性質を有するコーティングを得るために、様々な比率であり得る。ポリマー化学の当業者は、ポリマーコンパウンドの様々な性質に通じているであろう。本発明において使用され得るポリマーの例には、これらに限らないが、ポリカルボン酸、セルロース系ポリマー、タンパク質、ポリペプチド、ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸ポリマー類、ポリアミド、ポリビニルアルコール類、ポリエチレンオキシド類、グリコサミノグリカン、多糖、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスチレン類、コポリマー、シリコーン、ポリオルトエステル、ポリアンヒドリド、ビニルモノマーのコポリマー、ポリカルボネート類、ポリエチレン類、ポリプロピレン類、ポリ乳酸類、ポリグリコール酸類、ポリカプロラクトン類、ポリヒドロキシブチレート−バレレート類、ポリアクリルアミド、ポリエーテル、ポリウレタン分散体、ポリアクリレート、アクリルラテックス分散体、ポリアクリル酸、これらの混合物及びコポリマーが含まれる。本発明でのポリマーは、天然又は合成由来であってよく、ゼラチン、キトサン、デキストリン、シクロデキストリン、ポリ(ウレタン)、ポリ(シロキサン)又はシリコーン、ポリ(アクリレート)(例えば、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、及びポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート))、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(オレフィン)(例えば、ポリ(エチレン)、ポリ(イソプレン))、ハロゲン化ポリマー(例えば、ポリ(テトラフルオロエチレン)−並びに、Teflon(登録商標)製品として広く販売されているもののような誘導体及びコポリマー、ポリ(フッ化ビニリデン))、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アクリル酸)、ポリアクリルアミド、ポリ(エチレン−コ−酢酸ビニル)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(メタクリル酸)、などが含まれる。適切なポリマーにはまた吸収性及び/又は再吸収性のポリマーが含まれ、以下のもの、以下のものの組合せ、コポリマー及び誘導体が含まれる:ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(乳酸−コ−グルコール酸)(PLGA)ポリアンヒドリド、ポリオルトエステル、ポリ(N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)、ポリ(l−アスパルトアミド)など。
【0069】
本明細書では、「治療上望ましいモルホロジー」は、ex vivoでの保管、in vivoでの維持及び/又はin vivoでの放出についての最適な条件にあるように、基材にすでに付着された医薬の塊としての(gross)形態及び構造を表す。このような最適な条件には、これらに限らないが、増加した貯蔵寿命、増大したin vivo安定性、良好な生体適合性、良好な生物学的利用率、又は調節された放出速度が含まれ得る。通常、本発明では、医薬に望まれるモルホロジーは、結晶性若しくは半結晶性又はアモルファスであろうが、これは、多くの要因(これらに限らないが、医薬の特質、治療/予防される疾患、使用前の基材の想定される保管条件、又は任意のバイオメディカルインプラントの身体内での位置が含まれる)に依存して広く変わり得る。好ましくは、医薬の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%が、結晶性又は半結晶性の状態にある。
【0070】
本明細書では、「安定剤」は、生物学的製剤の安定性を保つ、又は増大させる任意の物質を表す。理想的には、これらの安定剤は、米国食品医薬品局(FDA)によって、一般に安全と認められる(Generally Regarded As Safe、GRAS)として分類される。安定剤の例には、これらに限らないが、輸送タンパク質(例えば、アルブミン)、ゼラチン、金属又は無機塩が含まれる。存在し得る薬学的に許容される添加剤は、さらに、関連文献に、例えば、医薬添加剤ハンドブック:商品名、化学、機能、及び製造者による6000を超える製品に対する国際指針(Handbook of Pharmaceutical Additives:An International Guide to More Than 6000 Products by Trade Name,Chemical,Function,and Manufacturer)(Michael and Irene Ash(Eds.);Gower Publishing.Ltd.;Aldershot,Hampshire,England;1995)に見出すことができる。
【0071】
本明細書では、「圧縮流体」は、標準温度及び圧力で気体である、かなりの程度の密度(例えば、>0.2g/cc)の流体を表す。本明細書では、「超臨界流体」、「臨界点近傍流体」、「超臨界点近傍流体」、「臨界流体」「高密度流体」又は「高密度ガス」は、温度が流体の臨界温度の少なくとも80%であり、圧力が流体の臨界圧力の少なくとも50%である条件下の圧縮流体を表す。
【0072】
本発明に適する、超臨界又は臨界点近傍の挙動を示す物質の例には、これらに限らないが、二酸化炭素、イソブチレン、アンモニア、水、メタノール、エタノール、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ジメチルエーテル、キセノン、六フッ化硫黄、ハロゲン化及び部分ハロゲン化物質、例えば、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン(例えば、パーフルオロメタン及びパーフルオロプロパン)、クロロホルム、トリクロロ−フルオロメタン、ジクロロ−ジフルオロメタン、ジクロロ−テトラフルオロエタン)並びにこれらの混合物が含まれる。
【0073】
本明細書では、「焼結」は、マトリックスの一部又はポリマーマトリックスの全体が連続になること(例えば、連続ポリマーフィルムの生成)を表す。下に記載されるように、焼結プロセスは、完全に表面に沿う連続マトリックスを生じるように(完全焼結)、又は、連続コーティングの部分又はドメインを生じると同時に、マトリックスにボイド(不連続部分)を生じるように、制御される。また、焼結プロセスは、何らかの相分離が、異なるポリマー(例えば、ポリマーA及びB)の間で生じるように、及び/又は、別個のポリマー粒子の間で相分離を生じるように、制御される。焼結プロセスを通して、コーティングの接着性が向上して、使用する操作の間の基材からのコーティングのフレーキング又は脱離を減らす。下に記載されるように、いくつかの実施形態において、焼結プロセスは、ポリマーマトリックスの不完全焼結を生じるように制御される。不完全焼結を含む実施形態においては、連続ドメインと、制御された条件下で放出される治療薬を封鎖するためのスペースを提供するボイド、ギャップ、キャビティ、ポア、チャネル又は裂け目とを有するポリマーマトリックスが生成される。ポリマーの特質に応じて、ポリマー粒子の大きさ及び/又は他のポリマーの性質、圧縮ガス、高密度ガス、臨界点近傍流体又は超臨界流体が用いられ得る。1つの例において、二酸化炭素が、乾燥粉末及びRESS静電コーティング法を用いて、ポリマー及び薬剤によりコーティングされた基材を処理するために用いられる。別の例において、イソブチレンが焼結プロセスにおいて用いられる。他の例において、二酸化炭素及びイソブチレンの混合物が用いられる。
【0074】
アモルファス材料がそのガラス転移温度を超える温度に加熱されるか、又は、結晶性材料が相転移温度を超える温度に加熱されると、材料を構成する分子はより動きやすく、別の面から見ると、これは、分子がより活性であるために酸化のような反応をしがちであることを意味する。しかし、アモルファス材料がそのガラス転移温度未満の温度に保たれると、その分子は実質的に固定化されているので、より反応しにくい。同様に、結晶性材料がその相転移温度未満に保たれると、その分子は実質的に固定化されているので、より反応しにくい。したがって、温和な条件(例えば、本明細書に記載されている付着及び焼結条件)で薬剤成分を処理することにより、薬剤成分の交差反応及び劣化は最少化される。本発明の方法によって最少化される反応の1つのタイプは通常の溶媒を回避できることに関連し、別の面から見れば、このことにより、アモルファス、半結晶、又は結晶の状態にあるかどうかに関係なく、フリーラジカル、残留溶媒及び自動酸化開始剤への薬剤の暴露を減らすことによって薬剤の自動酸化が最少化される。
【0075】
本明細書では、「超臨界溶液の急速膨張(Rapid Expansion of Supercritical Solutions)」すなわち「RESS」は、圧縮流体(典型的には超臨界流体)へのポリマーの溶解と、それに続く、低圧(典型的には大気圧近傍)のチャンバへの急速膨張を含む。密度の減少を伴う、小さな開口部を通しての超臨界流体溶液の急速膨張は、流体の溶解容量を低下させ、結果としてポリマー粒子の核生成及び成長が起こる。チャンバの雰囲気は、チャンバ内に絶縁性のガス「雲(cloud)」を維持することによって、電気的に中性に保たれる。基材から周囲の環境に電荷が移されることを防ぐために、二酸化炭素又は他の適当なガスが用いられる。
【0076】
本発明の方法によって向上され得る、医薬又は生物学的製剤を含むコーティングの「バルクの性質」には、例えば、接着性、平滑性、表面に沿う性質、厚さ、及び組成混合が含まれる。
【0077】
本明細書では、「Solution Enhanced Dispersion of Supercritical Solutions」又は「SEDS」は、ポリマー粒子生成のためのスプレー法を含み、ポリマー粒子は、ポリマーが溶けているビヒクル(ポリマー及び圧縮流体の両方を溶かすことができるもの)に対する希釈剤として圧縮流体(例えば、超臨界流体、好ましくは超臨界CO2)が用いられた時に、形成される。圧縮流体希釈剤とポリマー含有溶液との混合は、例えば、1つの共軸スプレーノズル内で、或いは複数のスプレーノズルの使用によって、又は混合ゾーンに一緒に入る複数の流体の流れの使用によって、ポリマー溶液を含む第1の流れと圧縮流体希釈剤を含む第2の流れとが出会うことによって達成され得る。ポリマー溶液の溶媒は1つの化合物であっても、2種以上の成分の混合物であってもよく、アルコール(ジオール、トリオールなども含まれる)、エーテル、アミン、ケトン、炭酸エステル、又はアルカン、又は炭化水素(脂肪族若しくは芳香族)であっても、これらを含んでいてもよく、或いは、化合物の混合物、例えば、アルカンの混合物、又は、1種若しくは複数のアルカンを1種若しくは複数のアルコール(例えば、0又は0.1から5%のC1からC15のアルコール(ジオール、トリオールなども含まれる))のようなさらなる化合物と組み合わせた混合物であってもよい。例えば、米国特許第6669785号を参照。溶媒は、例えば米国特許第6669785号にやはり記載されているように、界面活性剤を任意選択で含んでいてもよい。
【0078】
SEDS法の一実施形態において、共通溶媒に溶解したポリマーを含む第1の流体の流れが、圧縮流体の第2の流れと共にスプレーされる。ポリマー粒子は、第2の流れが、第1の流れのポリマー溶液の溶媒を弱める希釈剤として働くにつれて生成される。今や一緒になった流体の流れは、ポリマー粒子と共に、捕集容器へと流れる。SEDS法の別の実施形態において、共通溶媒に溶解した薬剤を含む第1の流体の流れが、圧縮流体の第2の流れと共にスプレーされる。薬剤粒子は、第2の流れが、第1の流れの薬剤溶液の溶媒を弱める希釈剤として働くにつれて生成される。今や一緒になった流体の流れは、薬剤粒子と共に、捕集容器へと流れ出る。粒径、粒径分布、及びモルホロジーの制御は、次のプロセス変数を目的に合わせることによって達成される:温度、圧力、第1の流れの溶媒組成、第1の流れの流量、第2の流れの流量、第2の流れの溶媒組成(この場合、可溶性添加剤が圧縮ガスに添加され得る)、及び捕捉容器の状態。通常、捕捉容器は、大気圧の少なくとも5から10倍(5〜10倍)である流体相を含む。
【0079】
本明細書では、「静電荷電による」又は「電位による」又は「静電気による捕捉」は、スプレーされた粒子とは異なる静電位を有する基材への、スプレーにより生成した粒子の捕集を表す。このように、基材は、出て行く粒子に対して引き付ける電位にあるので、結果的に基材への粒子の捕捉が起こる、すなわち、基材及び粒子は反対に荷電しており、捕捉容器の流体媒体を通しての基材表面への粒子の輸送は、静電気による引力により増大する。これは、粒子を荷電させ、基材を接地することによって、又は、逆に、基材を荷電させ、粒子を接地することによって、或いは他の何らかの方法によって達成することができ、これらは静電気による捕捉の当業者には容易に思い描けるであろう。
【0080】
本明細書では、「開放容器」は、外気に対して開いており、したがって外気と実質的に同じ温度及び圧力にある容器を表す。
【0081】
本明細書では、「閉鎖容器」は、外気から密封され、したがって外気とはかなり異なる温度及び圧力にあり得る容器を表す。
【実施例】
【0082】
以下の実施例は、当業者が本発明をより明瞭に理解でき、実施できるようにするために記載される。これらは、本発明の範囲の限定でなく、本発明の例示及び代表的なものであると見なされるべきである。
【0083】
(実施例1)
プロセス装置
本研究において使用されるRESS法の装置は、図1に示されている。これは、RESS装置の一般的なデザインである(C.Domingo et al,Journal of Supercritical Fluids 10,39−55(1997))を参照)。本研究において使用されるSEDS装置は図2及び10に示されている。図2は一般的なSEDS装置を示し、図10は、スプレーされた粒子を静電気により捕捉する、2ノズルデザインを用いる装置を示す。ノズルのオリフィスの大きさは粒径を制御するために用いることができる。図3は、図2及び10に示されているSEDS装置のノズルデザインを示す。図4は、代表的な医用治療薬低分子、2種のポリマー及びこれらの成分の混合物のFTIRを示す。各分子に特有のIR伸縮が同定され標識されている。図5は、様々な条件下に医薬及びポリマーによりコーティングされた植え込み可能なメディカルデバイスを示す。図6は焼結前後の3成分コーティングの赤外スペクトルを示す。このスペクトルは、焼結後のスペクトルに新しい伸縮が全く現れていないので、焼結プロセスがコーティングに悪影響を及ぼさないことを例示している。図7はスプレーされたラパマイシンの広視野(左枠)及び狭視野(右枠)画像を示す。結晶及びアモルファスラパマイシンの両方が画像に見られる。図8は、真正のラパマイシン試料、RESSによりスプレーされたラパマイシン、及びSEDSによりスプレーされたラパマイシンについて取られたXRDデータを示す。RESSによりスプレーされたラパマイシンは、XRDに回折ピークがないことによって示されるように、如何なる結晶性もない。SEDSによりスプレーされたラパマイシンは、真正の試料と同じ回折ピークを有し、2つの物質が同じであることを示している。図9は、SEDS法を用いる粒径制御を例示する。上左には、2500psiに保たれた、基材(窓の底の部分の水平線)を含む観察室(view cell)の光学写真がある。下左の画像にSEM顕微鏡写真があり、平均で約35nmの大きさの凝集した粒子を示している。図9の上右の枠は、1200psiに加圧された観察室の光学写真を示す。粒子は、画像において基材の上方の粒子の雲によって明瞭であるように、光を散乱するのに十分なだけ大きい。図9の下右の枠は、粒径がほぼ20ミクロンであることを示す。図10は、2ノズルデザイン、及びSEDSによりスプレーされた粒子の静電気による捕捉のために用いられる新規高圧電源を有するSEDSスプレー装置を示す。最低イオン化ポテンシャルを有する成分より低い電圧で運転することによって、SEDSによりスプレーされた粒子の静電捕捉は実現できる。
【0084】
(実施例2)
一般的なスプレーコーティング1
溶媒に飽和したか、又は溶媒に過飽和になった治療化合物を含む溶液を、大気圧を超えて加圧されメディカルデバイス基材を含む既知容積のチャンバへの流れを実現するのに十分な流量でスプレーする。装置の温度は、溶液又は混合物又はその個々の成分のいずれかの相図における多数の点を、液体、ガス又は超臨界CO2状態を構成する、圧力−温度、容積−圧力又は圧力−容積の空間において辿ることができるように、一定に保つか、又は、変えられる。何らかの単一相又は相の組合せのCO2が、5g/minからこの流量の何倍かまでの質量流量でチャンバを通して流れる。数秒から数分又は数時間の範囲の時間が経った後、治療化合物と選ばれた1種又は複数の溶質に適する溶媒との溶液である、溶質及び溶媒の流れは止まるが、CO2の流れはさらなる時間の間続き、この時間の間、圧力を一定に保つ。この時間の後、圧力を大気圧まで下げる。スプレーコーティングプロセスの間、5000Vを超えるが、混合物中の最もイオン化されやすい成分のイオン化ポテンシャルよりは低い電圧を加えることにより、スプレーされる粒子の電荷とは反対に基材を荷電させることによって、粒子は医用基材に引き付けられる。粒子はまた、場が標的に粒子を誘導するように用いられる電磁場を横切ってもよい。
【0085】
(実施例3)
スプレーコーティング2
治療化合物を含む、1種の溶媒と別の混和性溶媒との等部数の溶液を、その化合物が飽和しないように調製する。この溶液を、1mL/minから100mL/minの範囲の既知流量で、容積既知で大気圧を超えて加圧されたチャンバにスプレーする。装置の温度は、溶液又は混合物又はその個々の成分のいずれかの相図における多数の点を、圧力−温度、容積−圧力又は圧力−容積の空間において辿ることができるように、一定レベルに保つか、又は変えられる。CO2がチャンバを通して、既知の流量で流れる。スプレーはある時間の後に止めるが、CO2の流れは、チャンバ容積がCO2により置き換えられたか、又は如何なる残留溶媒若しくは共溶媒もチャンバから除去されるのに十分な回数置換されたことが保証されるのに十分なさらなる時間の間続き、その後、圧力を大気圧まで下げる。上の実施例におけるように、スプレー法において生成する粒子は、それらが生成するにつれて静電気により医用基材に捕集される。
【0086】
(実施例4)
スプレーコーティング3
乾燥結晶粉末状の治療化合物を、ステントに向けて、乾燥粉末コーティング法を用いてノズルを通してスプレーする。別個のノズルから、ポリマー及び共溶媒を含むCO2溶液、又はジメチルエーテルのような適切な溶媒に調製したポリマー溶液を、ステントに向けてスプレーする。CO2の流量は変えられる。ステント及び治療化合物の温度は、熱に弱い治療化合物の劣化を防ぐために室温又は室温未満に保たれるが、ポリマー溶液の温度は、超臨界溶液又は臨界点近傍溶液が存在するように、溶媒の臨界温度及び圧力より上に保たれる。粒子は、前の実施例に記載したように、生成中に、或いは、それらが乾燥粉末スプレーノズルを出て行くにつれて静電気により捕集される。
【0087】
(実施例5)
均一な表面コーティング
超臨界溶液の急速膨張(RESS)の一連の実験において、静電気による捕捉を用い、組成及び厚さを制御して動脈ステントを均一にコーティングする能力が実証された。この技法は、本明細書に記載されているスプレーコーティング及び捕集技法を用い、ラパマイシンのような治療化合物とPBMA及びPEVAのようなポリマーとの等部数混合物をスプレーすることを含む。コーティングの組成を求めるために、赤外分光法を用いて、動脈ステントと同時にコーティングしたシリコンウェハーチップのスペクトルを取った(図4)。混合物成分の各々に対する特有の吸収バンドを同定し、バンドの面積を、コーティングにおける各成分の組入れを求める計量として用いた。
【0088】
組成分析のために用いた特有のバンドは、各成分を別々にスプレーコーティングしたSiウェハーチップよって求めた。コーティングの厚さは、重量測定によって求め、材料の密度から計算した。層は完全に密であると仮定した。厚さは、スプレー時間を変えることによって調節できる。スプレーされただけの状態では、コーティングは基材への強い接着性をもっていない。コーティングした基材を焼結すると(図5参照)、コーティングの接着性は劇的に向上し、同時に、図6に示す赤外スペクトルが裏づけるように、成分は変化しないままであった。コーティングは、超臨界二酸化炭素環境中で焼結し、80℃未満の温度での温和な焼結条件を用いることができる。
【0089】
(実施例6)
結晶ラパマイシンのスプレーコーティング
ラパマイシンを結晶状にスプレーにより付着させるために、二酸化炭素に基づくいくつかのスプレーコーティング法を、ラパマイシンのモルホロジーの制御に成功しないRESSを含めて、試みた。SEDSコーティング法の1つは、図7及び8に示すように、結晶ラパマイシンをスプレーコーティングするのに成功した。ラパマイシンで飽和した10部のヘキサン及び9部のTHFの溶液を、0.5mL/minで、二酸化炭素で82barに加圧した25mLのチャンバにスプレーした。装置の温度は、液体CO2の条件を構成する25℃で一定に保つ。CO2は、加圧チャンバを通して5g/minの質量流量で流れる。5分経過した後、薬剤及びポリマーのスプレーを止めるが、CO2はさらに20分間さらに流し続け、この時間の間、一定圧力を保つ。この時間の後、圧力を大気圧に下げる。粒子は、5000Vを超えるが、混合物の最もイオン化されやすい成分のイオン化ポテンシャルより低い電圧を加えることによって粒子の電荷と反対に基材を荷電させることにより、基材に引き付けられる。
【0090】
SEM画像が図7に示すように、結晶ラパマイシンが基材に付着し、結晶の大きさはその主軸に沿って約2ミクロンで(図の右の枠)、大きな結晶凝集体が基材の表面にわたって分布している(左の枠)。
【0091】
図8に示すXRDの回折ピークは、スプレーによるラパマイシン(最も下のスペクトル)は受け取ったままのラパマイシン(中間のスペクトル)とピーク毎に符合しているので、ラパマイシンとしての結晶の同一性を裏づける。結晶ラパマイシンをスプレーする別の失敗した試みについてのXRDの結果(上側のスペクトル)は、比較の目的で含めてある。図8の一番上の軌跡データとして示されるアモルファス回折パターンはRESSによりスプレーした試料から得たものであり、また、極性溶媒だけ又は非極性溶媒だけを用いるSEDSに基づく手法を用い、結晶ラパマイシンをスプレーしようとする失敗した試みの代表的なものでもある。この一連の実験の目標は、ラパマイシンを結晶状にスプレーできる二酸化炭素による手法を例示することであった。結晶の大きさ、被覆の均一性、又は凝集を制御するために如何なる試みも行わなかった。
【0092】
(実施例7)
粒径制御
図9は、異なる圧力条件下のSEDSスプレー法についての光学及び電子顕微鏡による比較を示す。図9(a)は、CO2が1200psi、25℃で存在する観察室を撮った光学写真を示す。ノズルが、ほぼ11時の位置に、観察室の左から始まる、角度をなす直線として見える。基板は観察室の底部に水平線として見える。図9(c)は、9(a)の観察室から取り出した基板に付着した粒子の走査電子顕微鏡写真である。走査電子顕微鏡写真のスケールにより粒径がわかる。
【0093】
図9(b)は、CO2が2500psi、25℃で存在する観察室を撮った光学写真を示す。ノズルが、ほぼ11時の位置に、観察室の左から始まる、角度をなす直線として見える。基板は観察室の底部に水平線として見える。図9(d)は、9(b)の観察室から取り出した基板に付着した粒子の走査電子顕微鏡写真である。走査電子顕微鏡写真のスケールにより粒径がわかる。これらの画像は、粒径及びモルホロジーを制御できることを実際に示している。これらの2つの特徴は、溶出速度がこれら2つのパラメータによって影響され得るので、重要である。
【0094】
(実施例8)
さらなるプロセス装置
さらなる装置を図10に示す。この装置は、静電気による捕捉と共にSEDS法を用い、ラパマイシンを結晶状にスプレーするのに用いられる。この装置の独特の特徴は、デュアルノズルデザイン、及びスプレーされた粒子の静電気による捕捉を可能にする高電圧経路である。他の点では、このデザインは他のSEDS装置に似ている。デュアルノズルは、ポリマー及び薬剤のスプレーを互いに分け、このことは、別の成分と一緒にスプレーされたポリマーは、非ポリマー成分が所望のモルホロジーで粒子を生成できるかどうかに影響し得ることが示されたので、重要である。しかし、両方の成分は同じチャンバにスプレーされるので、粒子は1点で捕集できる。高電圧経路は、スプレーされた成分が所望の基材上に静電気により捕捉されることを可能にする。
【0095】
(実施例9)
イソブチレン中にポリエチレン−コ−酢酸ビニル(polyethylene−co−vinyl acetate,PEVA)及びポリブチルメタクリレート(PBMA)を含む超臨界溶液の調製
75mgのPEVA及び75mgのPBMAを、25mLの観察室に入れる。観察室を150℃に加熱する。イソブチレンを3000psigの圧力になるまで加える。これらの条件下に、透明溶液が生じた。
【0096】
(実施例10)
イソブチレン中にポリエチレン−コ−酢酸ビニル(PEVA)及びポリブチルメタクリレート(PBMA)を含む超臨界溶液の調製
150mgのPEVA及び150mgのPBMAを、25mLの観察室に入れる。観察室を150℃に加熱する。イソブチレンを4000psigの圧力になるまで加える。これらの条件下に、透明溶液が生じた。
【0097】
(実施例11)
イソブチレン及びCO2中にポリエチレン−コ−酢酸ビニル(PEVA)及びポリブチルメタクリレート(PBMA)を含む超臨界溶液の調製
75mgのPEVA及び75mgのPBMAを、25mLの観察室に入れ、観察室を150℃に加熱する。イソブチレンを4000psigの圧力になるまで加えると透明な溶液を生じる。10(v/v%)のCO2を加える。この体積パーセントのCO2の添加は、溶解したポリマーを析出させない。
【0098】
(実施例12)
イソブチレン及びCO2中にポリエチレン−コ−酢酸ビニル(PEVA)及びポリブチルメタクリレート(PBMA)を含む超臨界溶液の調製
150mgのPEVA及び150mgのPBMAを、25mLの観察室に入れ、観察室を150℃に加熱する。イソブチレンを4000psigの圧力になるまで加えると透明な溶液を生じる。10(v/v%)のCO2を加える。この体積パーセントのCO2の添加は、溶解したポリマーを析出させない。しかし、より大きな体積分率でCO2を加えると、これらの条件下では、ポリマーが析出する。
【0099】
(実施例13)
荷電した316ステンレス鋼試片への乾燥粉末ラパマイシンのコーティング
ラパマイシンコーティングの標的基材としての役目を果たす1cm×2cmのステンレス鋼金属試片を、容器に入れ、高電圧電極に結び付けた。容積が約1500cm3の容器(V)は、ラパマイシン又はポリマーを容器に選択的に導入できる2つの別個のノズルを装備していた。どちらのノズルも接地した。さらに、容器(V)は、容器をパージングに利用できる別個のポートを装備していた。1つのノズル(D)の上流に、入口及び出口として用いる3つのポートを有し、容積が約5cm3の小さな圧力容器(PV)があった。各ポートは、開閉動作のできるバルブを装備していた。入口として用いる1つのポート(ポート(1))は、乾燥粉末ラパマイシン用の添加ポートであった。やはり入口であるポート(2)は、加圧ガス、液体、又は超臨界流体をPVに供給するために用いた。出口として用いたポート(3)は、圧力容器(PV)と、標的試片を有する主容器(V)に含まれるノズル(D)とを連結するために用いた。約3ミクロンの平均粒径にミル加工した50mgの主に結晶固体状の乾燥粉末ラパマイシン(LC Laboratoriesから入手)を、ポート(1)を通して(PV)に入れ、次いでポート(1)を閉の位置に動かした。次に、二酸化炭素ガスを、20℃で、400から600psigの圧力まで、ポート(2)を通して加え、次いで、ポート(2)をガスに供給源に対して閉じた。次に、Glassman Series EL高圧電源を用いて、金属試片に40kVの電圧を加えた。次いで、ポート(3)を動かして開き、試片に電圧を加えたままで、加圧した二酸化炭素及びラパマイシン粉末が容器(V)に広がれるようにした。約60秒後に、電圧を解除し、試片を取り出した。光学顕微鏡を用いて試片を見て調べて、電圧リード線によって遮蔽された小さな部分以外の試片表面全体が、比較的一様に分布した粉末材料により覆われていることを確認した。X線回折(XRD)により、粉末材料は、金属試片に付着した状態で、大部分結晶性であることを確認した。UV−Vis及びFTIR分光法により、試片に付着した材料がラパマイシンであることを確認した。
【0100】
(実施例14)
電気を用いない、316ステンレス鋼試片への乾燥粉末ラパマイシンのコーティング
試片を実施例13に記載したものと同じやり方でコーティングした。しかし、粉末コーティング実験の全体を通して試片に電位は全く加えなかった。二酸化炭素及び粉末ラパマイシンが容器(V)に広がった後、約60秒後に、試片を取り出し、評価した。光学顕微鏡を用いて試片を分析し、試片の表面の多くに、いくらかの乾燥粉末材料が示された。しかし、薬剤による表面の被覆は実施例1よりずっと少なく、試片表面の異なる位置で被覆に、著しく多くの変動があった。粉末コーティングの全量は実施例1において結晶ラパマイシンであると認められた量の約1/3であると見積もられた。
【0101】
(実施例15)
液化ガスからの急速膨張を用いる、荷電した316ステンレス鋼試片へのポリマーコーティング
上の実施例13に記載したコーティング装置をこの実施例において用いた。この実施例では、第2ノズル(ノズル(P))を用いて、316ステンレス鋼試片をコーティングするために容器(V)に、析出したポリマー粒子を供給した。ノズル(P)に、液化ガスの膨張による熱損失を最少化するために、ヒーター及び制御装置を装備した。ノズル(P)の上流に、約25cm3の内容積の圧力容器(PV2)があった。圧力容器(PV2)は、入口、出口、熱電対、及び圧力変換器として使用される複数のポートを装備していた。さらに、(PV2)に、ヒーター及び温度制御装置を装備した。各ポートは、圧力容器(PV2)への、またそこからの材料の適切な制御を保証するための、適切なバルブ、計量バルブ、圧力調節器、又はプラグに連結した。(PV2)からの1つの出口は、定格耐圧管を通して計量バルブに連結し、次いで、定格耐圧管を容器(V)に位置するノズル(P)に連結した。実験では、75mgのポリエチレン−コ−酢酸ビニル(PEVA)(約33重量パーセントが酢酸ビニル、Aldrich Chemical Companyから入手)及び75mgのポリ(ブチルメタクリレート)(PBMA)(やはり、Aldrich Chemical Companyから入手)を、圧力容器(PV2)に入れた。ジクロロフルオロメタン(20.0グラム)を、バルブ及び入口を通して、圧力容器(PV2)に加えた。次いで、圧力容器(PV2)を40℃に加熱し、切り離された容器の内部の圧力を約40psigに高めた。ノズル(P)は120℃に加熱した。(PV2)内部の液化ガスに2種のポリマーを溶かすのに十分な時間の後、ヘリウム源タンク及び2段階圧力調節器を用いて、容器(PV2)をヘリウムにより約200psigに過剰加圧した。ヘリウム置換技術の説明については米国特許第6905555号を参照。1cm×2cmの316ステンレス鋼試片を、容器(V)に入れ、電気リード線を取り付けた。ノズル(P)は接地した。Glassman高圧電源を用いて、試片に40kVの電圧を加え、この時点で、(PV2)と圧力容器(PV)のノズル(P)との間の計量バルブを開いた。液化ガスに溶け、ヘリウムにより200psigまで過剰加圧されたポリマーを、200psigの一定圧力で、ノズル(P)を通して、約3.0cm3/minの流量で、大気圧に保たれた容器(V)に供給した。約5秒後に、計量バルブを閉じ、ポリマー−溶媒の供給を止めた。容器(V)をCO2ガスで30秒間パージして、クロロフルオロカーボンを置換した。ほぼ30秒後に、約5秒間計量バルブを再び開き、次いで、閉じた。このサイクルを約4回繰り返した。さらなる1分間の後に、試片に加えた電圧を切り、試片を圧力容器(V)から取り出した。光学顕微鏡で見て調べると、ポリマーコーティングは、試片の遮蔽されていない表面全体に一様に分布していることが明らかであった。試片の表面からのポリマー混合物の溶解と、それ続く、標準化された定量的FT−IR法を用いる定量により、試片ではPEVAとPBMAがほぼ1:1の組成であることを確認した。
【0102】
(実施例16)
結晶ラパマイシン、及びポリエチレン−コ−酢酸ビニル(PEVA)とポリ(ブチルメタクリレート)(PBMA)の1:1の混合物による金属試片のデュアルコーティング
実施例13において記載し、さらに実施例15において記載した装置を、この実施例において用いた。コーティング実験のための準備として、25mgの粉末結晶ラパマイシン(平均粒径3ミクロン)を、ポート(1)を通して(PV)に入れ、次いで、ポート(1)を閉じた。次に、(PV)を、20℃で、ポート(2)を通して二酸化炭素ガスにより400〜600psigまで加圧し、その後、ポート(2)を閉じた。次に、75mgのポリエチレン−コ−酢酸ビニル(PEVA)(酢酸ビニルは約33重量パーセント)と75mgのポリ(ブチルメタクリレート)(PBMA)とを圧力容器(PV2)に入れた。ジクロロフルオロメタン(20.0グラム)を、バルブ及び入口を通して圧力容器(PV2)に加えた。次いで、圧力容器(PV2)を40℃に加熱し、切り離された容器の内部の圧力をほぼ40psigに高めた。ノズル(P)は120℃に加熱した。2種のポリマーを液化ガスに溶かすのに十分な時間の後、ヘリウム源タンク及び2段階圧力調節器を用いて、容器をヘリウムにより約200psigに過剰加圧した。1cm×2cmの316ステンレス鋼試片を容器(V)に入れ、高圧電源リード線に連結した。ノズル(D)及び(P)の両方を接地した。始めに、試片に40kVの電圧を加え、その後、ラパマイシンを含む(PV)をノズル(D)に連結するポート(3)を開き、大気圧に保たれた容器(V)に二酸化炭素を膨張させ、ラパマイシンを噴出させた。ポート(3)を閉じて約60秒後に、容器(V)内のノズル(P)に(PV2)を連結する計量バルブを開き、容器(V)に液化ガスを膨張させて気相にし、析出したポリマー粒子を導入し、この間、容器(V)は大気圧に保った。約3cm3/minの供給速度で約5秒後に、計量バルブを閉じ、試片は電圧を加えたままにした。次いで、ポート(1)を開き、さらに25mgの粉末結晶ラパマイシンを(PV)に入れ、次に、ポート(1)を閉じた。次に、圧力容器(PV)を、ポート(2)を通して、液体二酸化炭素により400〜600psigまで加圧し、その後、ポート(2)を再び閉じた。試片を40kVの印加電圧に保ったまま、ポート(3)をノズル(D)に向けて再び開き、二酸化炭素を膨張させてガスにし、粉末結晶薬剤を容器(V)に噴出させた。その後さらに60秒後、(PV2)とノズル(P)との間の計量バルブを再び開き、容器(V)に液化溶媒を膨張させてガスにし、また容器(V)においてポリマー粒子を析出させた。前記の薬剤とその後のポリマー又はポリマーとその後の薬剤の逐次的な添加を全部で4サイクル繰り返し、その後、印加電圧を試片から取り除き、試片を容器から取り出した。次いで、試片を、光学顕微鏡を用いて調べた。試片が電気リード線によって遮蔽された場所を除いて、試片の全表面に、むらのないコーティングを見ることができた。コーティングは表面に沿っているが、不透明で、高倍率ではいくらか粒状であった。
【0103】
(実施例17)
結晶ラパマイシン、及びポリエチレン−コ−酢酸ビニル(PEVA)とポリ(ブチルメタクリレート)(PBMA)の1:1の混合物による金属試片のデュアルコーティング、その後の超臨界二酸化炭素によるアニーリング又は二酸化炭素ガスによるアニーリング
実施例16において作り出した試片を調べた後、コーティングした試片を圧力容器内に注意深く入れ、60℃の温度で、4500psigの圧力まで二酸化炭素により加圧した。このCO2による焼結プロセスは、試片上のフィルムの物理的性質を向上させるために行った。これらの条件下で、約3時間、試片を容器にとどめ、その後、超臨界CO2を圧力容器からゆっくりと排出し、試片を取り出し、光学顕微鏡の下で再び調べた。コーティングは表面に沿っていて、むらのないことが観察され、高密度二酸化炭素による処理をしない実施例16において観察し報告した不透明コーティングとは対照的に半透明であった。次いで、コーティングした試片をX線回折(XRD)により分析し、ポリマーマトリックスに結晶ラパマイシンの存在を確認した。
【0104】
(実施例18)
結晶ラパマイシン、及びポリエチレン−コ−酢酸ビニル(PEVA)とポリ(ブチルメタクリレート)(PBMA)の1:1混合物による心臓血管金属ステントのデュアルコーティング
上の実施例13、15、及び16に記載した装置をこの実施例において用いた。使用した金属ステントは、公称寸法が3mm×13mmのTristar(商標)冠動脈ステントであった。このステントを、上の実施例16に記載した試片と同じやり方でコーティングした。ステントは、薬剤の第1コーティング層の次にポリマーの薄い層がくるように交互にコーティングした。これらの2ステップ(薬剤/ポリマーのサイクルと呼ぶ)を3回繰り返し、最後に付着させたコーティング層はポリマーであった。コーティングステップが完了した後、ステントを容器(V)から取り出し、小さな圧力容器に入れ、そこでステントを、実施例16において上で記載したように、超臨界CO2に曝した。この低温アニーリングステップの後、ステントを取り出し、光学顕微鏡を用いて調べた。次いで、コーティングしたステントの断面を分析するために、高速イオン衝撃(fast ion bombarding、FIB)装置を備える走査電子顕微鏡(SEM)を用いてステントを分析した。ステントの複数箇所のSEM顕微鏡写真により、厚さが6と15ミクロンの間の共に完全に表面に沿うコーティングが示された。ラパマイシンのクリスタリットの証拠もまた、顕微鏡写真において明らかであった。
【0105】
(実施例19)
薬剤溶出特性を制御するための層状化抗再狭窄治療薬及びポリマーによる心臓血管ステントの層状コーティング
心臓血管ステントを、上の実施例17及び18に記載した方法を用いてコーティングする。ステントは、薬剤及びポリマーが複数の層に交互に存在するような仕方でコーティングする。無処ステントに最初に付着させるのは、厚さ約2ミクロンの非再吸収性ポリマーの薄い層である。第2層は抗再狭窄を示す治療薬である。この第2層に約35マイクログラムを添加する。第3層のポリマーを厚さ約2ミクロンで付加し、次に、約25マイクログラムの抗再狭窄薬からなる第4層が続く。第5層のポリマー(厚さ約1ミクロン)をステントに付加し、その後、約15マイクログラムの治療薬を含む第6層が続く。最後に、最後のポリマー層を約2ミクロンの厚さまで付加する。コーティング処理の後、上の実施例16に記載したように、二酸化炭素を用いてステントのアニーリングを行う。この実施例では、薬剤溶出ステント(DES)は、通常の溶媒に基づくコーティング法では不可能な「封鎖薬剤層状化(sequestered drug layering)」法によって、初期薬剤低「バースト(burst)」性を有すると表現される。さらに、ステント「中間層」の薬剤の高濃度のおかげで、溶出プロファイルは、長期間にわたる治療薬の持続放出を達成すると期待される。
【0106】
(実施例20)
ポリマーマトリックスと抗再狭窄治療薬及び抗血栓治療薬による心臓血管ステントの層状コーティング
心臓血管ステントを、上の実施例19に記載のようにコーティングする。この実施例では、厚さ約2ミクロンの第1ポリマー層の後、抗血栓性を示す薬剤を厚さ2ミクロン未満の層として付加する。非再吸収性ポリマーからなる第3層を、約4ミクロンの厚さまで付加する。次に、別の薬剤(抗再狭窄性を示す別の治療薬)層を付加する。この層は約100マイクログラムの抗再狭窄薬を含む。最後に、厚さ約2ミクロンのポリマー層をステントに付加する。コーティングした後、実施例16に記載したように、二酸化炭素を用いてコーティングをアニーリングするためにステントを処理する。
【0107】
(実施例22)
ラパマイシン、ポリエチレン−コ−酢酸ビニル(PEVA)及びポリブチルメタクリレート(PBMA)によるステントのコーティング
微粉化したラパマイシンを、LC Laboratoriesから購入した。PBMA(Mw=約237k)及びPEVA(酢酸ビニル含量33%)をAldrich Chemicalから購入した。2種類のステント:3mmのTriStar(登録商標)(Guidant)、及び6セル×8mmのBX Velocity(登録商標)(Cordis)を用いた。これらのステントを、3ステント/1回のコーティング実験、及び3回の実験/1組のデータを用いて、乾式静電捕捉によってコーティングし、その後、超臨界流体焼結した。コーティング装置は図12に示す。コーティングしたステントの分析は、ステントと関連するコントロール実験による試片との両方について、複数の技法によって実施した。
【0108】
この実施例では、1:1の比のPEVAとPBMAを、化学品「フレオン」の部類であることが知られている圧縮ガス溶媒であるジクロロフルオロメタン(CCl2FH)に溶かす。この特定のフレオンの物理的性質は次の通りである。
BP=8.9℃
Tc=178.33℃
Pc=751.47psig
Dc=0.526014g/cc
【0109】
溶液は、1グラムのジクロロフルオロメタン当たり、合わせたポリマー30mgを混合することによって作った。次いで、溶液を、スプレーの準備が整うまで、60℃、蒸気圧(約28psig)で保った。次に、溶液を、容器の上部に非混和性ガス(通常、ヘリウム)を加えることによって加圧した。ヘリウムを加えて、フレオン+ポリマーの溶液を700(+/−50psig)まで加圧することによって、圧縮流体を得た。次いで、このポリマー+フレオンの溶液を、容器にヘリウムを連続的に付加することによって、0.005インチの内径を有するノズルを通して押し出した。溶媒(ジクロロフルオロメタン)は、その沸点が室温よりかなり低いので、ノズル(120℃に加熱する)から出てきて、直ちに気化する。薬剤は乾式粉末スプレーコーティングによって付着させる。10〜30mgの間の薬剤を、管の小さな容積に入れ、次いで、管をCO2ガスにより400psigまで加圧する。この混合物は、0.187インチの内径を有するノズルを通して、ステントが保持されているコーティング容器に流れる。静電気による付着の間、ステントを荷電し、ノズルは接地する。図12及び13は、コーティング及び焼結プロセスに用いた装置を示す。
【0110】
(実施例23)
ラパマイシン/PEVA/PBMをコーティングしたステントの光学顕微鏡による分析
実施例22において作製したステントを、光学顕微鏡によって、バック及びサイド照明を用いて40倍で調べた。この方法は、コーティングの均一性についてのおおまかな定性的表現を得るために、また低温CO2によるアニーリングステップの有用性を一般的に実証するために用いた。図14に示す得られた写真は、40℃で高密度二酸化炭素中でのアニーリング前(a)及び後(b)の外観の違いを例示している。図15(a)(焼結前)には、外側、端部及び内側の表面の写真が示されており、これらは、ステント表面の全体に等しく付着したナノ粒子を明瞭に示しており、15(b)(焼結後)では、滑らかで光学的に透明なポリマーを示すフィルムがある。図16は、ラパマイシン/PEVA/PBMAでコーティングしたステントの40倍のさらなる画像を示し、焼結前(a)の外側及び内側の表面を示し、ステント表面の全体に等しく付着したナノ粒子をさらに例示しており、焼結後(b)は、滑らかで光学的に透明なポリマーフィルムを示している。図17は、ラパマイシン/PEVA/PBMAでコーティングしたステントの100倍の画像を示し、薬剤結晶が非常に均一なポリマーコーティング内に埋め込まれているのを明瞭に見ることができる。
【0111】
(実施例24)
ラパマイシン/PEVA/PBMをコーティングしたステントの走査電子顕微鏡による分析
実施例21において作製したステントを、走査電子顕微鏡によって調べ、得られた画像を、(a)倍率30倍、(b)倍率250倍、(c)倍率1000倍及び(d)倍率3000倍で図18に示した。明らかに、ナノ粒子が一様で表面に沿うフィルムに焼結されており、このフィルムは5ミクロン未満の表面トポロジーを有し、埋め込まれた結晶ラパマイシンの明瞭な証拠を例示している。断面(FIB)画像もまた得られ、図19(a)に倍率7000倍で、(b)に20000倍の倍率で示す。むらのない厚さの一様なコーティングが見られる。4箇所の断面の厚さを測定した。(1)10.355μM、(2)10.412μM、(3)10.043μM、及び(4)10.157μMで、10.242μMの平均厚さが得られ、相違はたった2%(±0.2μM)である。
【0112】
(実施例25)
ラパマイシン/PEVA/PBMをコーティングしたステントの示差走査熱量分析(DSC)
実施例21において作製したステントを示差走査熱量分析(DSC)により調べた。PEVAだけ、PBMAだけ及びラパマイシンだけのコントロールの分析を、それぞれ、図20(a)、(b)及び(c)に示す。ラパマイシン、PEVA及びPBMAをコーティングしたステントのDSCは、図20(d)に示す。ラパマイシン結晶の融解は185〜200℃に明瞭に見られ、ポリマーのものと識別できる。
【0113】
(実施例26)
ラパマイシン/PEVA/PBMをコーティングしたステントのX線回折(XRD)
実施例21において作製したステントをX線回折(XRD)により調べた。微粉化したラパマイシン粉末のコントロールスペクトルを図21(a)に示す。ラパマイシン、PEVA及びPBMAによりコーティングし、焼結したステントのXRDは、図21(b)に示し、ラパマイシンがコーティング及び焼結プロセスを通して結晶(約64%)のままであることを示している。
【0114】
(実施例27)
ラパマイシン/PEVA/PBMをコーティングしたステントの共焦点ラマン分析
実施例21において作製したステントを共焦点ラマン分析により調べて、コーティング表面から下の金属ステントまでの深さ方向分布(depth profiling)を得た。図22(a)は、外周の外側でのラパマイシンの深さ方向分布を示し(1620のラパマイシンのピーク)、22(b)は、外周の外側でのポリマーの深さ方向分布を示し、薬剤がポリマーでコーティングしたステントの全体にわたって分布していることを示している。最大の薬剤含量は、ポリマーコーティングの中央(空気側表面から約4μM)に見られ、この位置は、用いられるコーティング及び焼結の条件により制御できる。本発明の特定の実施形態において、薬剤はコーティングの空気側表面に近いであろう。別の実施形態において、薬剤は、金属ステントにより近いであろう。他の実施形態において、2種以上の薬剤がコーティングに付着され、1種の薬剤は空気側表面により近く、他の薬剤は金属表面により近いであろう。さらに別の実施形態において、複数の薬剤はコーティングの全体を通して共に分布しているであろう。
【0115】
(実施例28)
コーティング成分の定量のための、ラパマイシン/PEVA/PBMをコーティングしたステントのUV−Vis及びFT−IR分析
UV−VIS法を発展させ、ポリ(エチレン−コ−酢酸ビニル)(PEVA)及びポリ(ブチルメタクリレート)(PBMA)と共にステント上にコーティングしたラパマイシンの質量を定量的に求めるために用いた。ラパマイシンのUV−Visスペクトルを図23(a)に示し、ラパマイシンの検量線を、図23(b)に示すように、エタノール中、277nmのλで得た。コーティングしたステントからラパマイシンをエタノールに溶かし、薬剤の濃度及び質量を計算した。平均質量74±11μgのラパマイシンがステントに担持されていた。図24(a)の結果は、ばらつきのない薬剤コーティングを示している:ステントの間の相違(+/−)15%、実験の間の相違(+/−)12%(平均濃度(各3ステント;4セル×8mm パリレンコーティング付き)。
【0116】
FT−IR法を、ラパマイシンと共にステント上にコーティングしたPEVA及びPBMAの質量を定量的に求めるために開発し、用いた。PEVA及びPBMAのFT−IRスペクトルを図23(c)に示し、検量線は、図23(d)及び(e)に示すように、PEVAでは約1050cm−1のλで、PBMAでは約1285cm−1のλで、それぞれ、ベールの法則を用いて得た。ポリマーをコーティングしたステントから塩化メチレンに溶かし、ポリマー濃度及び質量を計算した。平均質量1060±190μgのPEVA及び1100±198μgのPBMAがステントに担持されていた。図24(b)及び(c)の結果は、ばらつきのないポリマーコーティングを示している:ステントの間の相違(+/−)18%、運転の間の相違(+/−)15%(平均濃度(各3ステント);4セル×8mm パリレンコーティング付き)。
【0117】
(実施例29)
パクリタキセル/PEVA/PMBAによるステントのコーティング
Guidantの3mmのTristar(登録商標)ステントを、本明細書に記載されている本発明の方法によって、パクリタキセル/PEVA/PMBAの複合体によりコーティングした。コーティングしたステントを光学顕微鏡によって調べ、ステントの外側表面の写真((a)焼結前、(b)焼結後)を図25に示す。図26(a)は、前記の実施例28の方法を用いてパクリタキセルのために作り出した、エタノール中、228nmのλでのUV−Vis検量線を示す。コーティングしたステントからラパマイシンをエタノールに溶かし、薬剤の濃度及び質量を計算して、図26(b)に示すように、担持されていたラパマイシンについて平均質量148±14μgを得た。
【0118】
(実施例30)
コーティング成分の定量のための、ラパマイシン/PEVA/PBMをコーティングしたステントのUV−Vis及びFT−IRによる分析
本明細書に記載されている本発明の方法によって、ラパマイシン、PEVA及びPBMAをコーティングしたステントから、実施例28に記載したUV−Vis及びFT−IR法を用いて、ラパマイシン、PEVA及びPBMAの量をそれぞれ求めた。成分の定量を図27に示す。(a)平均質量81±3μgのラパマイシンがステントに担持されていたこと、(b)平均質量391±69μgのPEVAがステントに担持されていたこと、及び(c)平均質量268±64μgのPBMAがステントに担持されていたこと、が計算される。
【0119】
(実施例31)
ラパマイシン又はパクリタキセル、ポリエチレン−コ−酢酸ビニル(PEVA)及びポリブチルメタクリレート(PBMA)によるステントのコーティング
25mLのステンレス鋼容器に、150.0±0.1mgのポリ(エチレン−コ−酢酸ビニル)(PEVA)及び150.0±0.1mgのポリ(ブチルメタクリレート)(PBMA)を入れ、この容器に20.0±0.3グラムのジクロロフルオロメタンを移す。容器内の圧力は約28psigまで上昇する。容器にジクロロフルオロメタンを移した後、容器は60℃に加熱する。次いで、容器を、圧力が700±30psigに達するまでヘリウムにより加圧する。ヘリウムはジクロロフルオロメタン−ポリマーの溶液を押し出すピストンとして働く。適切なバルブ操作によって容器を系から切り離す。15±1mLの容積を有する第2のステンレス鋼容器に、13mgの薬剤化合物(ラパマイシン又はパクリタキセル)を入れる。この容器を、二酸化炭素ガスにより400±5psigまで加圧する。この薬剤容器の温度は室温である。適切なバルブ操作によって容器を系から切り離す。ポリマーのスプレーとポリマーのスプレーの間にポリマーノズルをフラッシングできるように、第3の容器に、溶剤であるテトラヒドロフラン又はジクロロメタンを入れる。この容器もまたヘリウムにより700psigまで加圧され、適切なバルブ操作によって系から切り離される。ポリマースプレーノズルを120±2℃に加熱し、薬剤スプレーノズルは室温のままである。複数のステントをステント固定具に装着し、わに口クランプにより高圧電源に結び付ける。わに口クランプは、電気的に絶縁された経路を通してコーティングチャンバに入る。二酸化炭素ガスを、8psigで5分間、第3のガスフラッシングノズルからコーティング容器に流して、ノズルと高電位に保たれる構成部分との間のアーク発生をなくすために空気及び湿気を除去する。二酸化炭素ガスによるコーティングチャンバのフラッシングの後、高電圧発生装置により35kVの電位をステントに印加する。この電位は、ポリマー及び薬剤のそれぞれのコーティングステップの間は保持する。この電位は、ポリマースプレーノズルをテトラヒドロフラン又はジクロロメタンによりフラッシングする時は取り除く。ポリマー溶液を、ポリマー溶液の容器からコーティングチャンバに7秒間スプレーする。印加電位を切り、ポリマーノズルをコーティングチャンバから取り外し、溶媒で2分間フラッシングを行い、次いで、ヘリウムガスにより、全ての溶媒がノズルから除去されるまで約1分間、フラッシングを行う。ノズルを溶媒でフラッシングしている間、ジクロロフルオロメタンガスをフラッシングして追い出すために、コーティングチャンバを二酸化炭素ガスによりフラッシングする。ポリマースプレーノズルをコーティングチャンバの元の場所に戻し、二酸化炭素ガスによるフラッシングを止める。35kVの電位をステントに印加し、適切なバルブ操作により、薬剤化合物をコーティングチャンバに迅速にスプレーする。1分間の静置時間の後、次の7秒間のポリマースプレーを開始する。このプロセスは多数回繰り返すことができる。
【0120】
コーティングしたステントを調べるために発展させた様々な分析方法、及びこれらの方法により得た結果を下の表に要約する。
【表1】
【0121】
(実施例32)
(図29及び30)静的条件下に溶出プロファイルを得るために、溶出媒体を決定した。pH7.0のリン酸緩衝液中1%(v/v)のSDS界面活性剤を、この媒体により生成する溶出プロファイルと所望の溶出プロファイルとの比較に基づいて、溶出媒体として選んだ。実験は、溶出実験の間サーモスタットで制御し37±1℃に保った浴において、30時間にわたる溶出プロファイルを生じることが可能であるを示した(図29参照)。用いた試料は、エチレンオキシド法を用いて滅菌した。さらなる溶出実験を、溶出方法を発展させるために実施した。用いた材料は、Aldrich(ポリマー)及びLC Laboratories(ラパマイシン)により供給された。溶出プロファイルを図30に示す。別の1組のステントを分析した。この組は薬剤をコーティングした6つのステント及び2つのプラセボステントを含んでいた。この組のステントは溶出を全く示さなかった。しかし、プラセボステントは、薬剤をコーティングしたステントと同時に焼結した。分析により、このプラセボはいくらかのラパマイシンを示した。これらのステントに、薬剤が存在するのに単に溶出しないのかどうかを判断するために、ストリッピング分析を行った。薬剤は全く見出せなかった。
【0122】
(実施例33)
コーティングした例示的ステントの機械的安定性(図31)
バルーンの拡張:ステントを、「オーバーザワイヤ」移動によりバルーン拡張カテーテル上に移した。スタイレットをカテーテルの管腔に挿入した。ステントを滅菌針により持ち上げ、スタイレット上に移した。ステントをバルーンの中央に持っていき、アセンブリー全体を顕微鏡の下に置いた。縮める装置(crimping equipment)がないので、拡張及びバルーンの膨張の間にステントが急に動くことを防ぐために、バルーン上に置いた小さな血管鉗子の使用によってステントをその場所から動かないようにした。
【0123】
拡張/(ゆっくりとした拡張)
空気圧力計(ゲージ圧)を有するインデフレーター(indeflator)を用いて、バルーンを膨らませ、介入の間にバルーン/ステントが拡張されると思われるような仕方で膨張させ(急速膨張)、ステントを「手順」完了時に観察した。バルーンをある時間1気圧にした。ステント/バルーンの境界を膨張毎に顕微鏡で調べた。微粒子があれば捕らえるために、バルーン−ステントを清浄な顕微鏡スライドの上に置いた。全膨張プロセスの間、どのステントにも、微粒子/脱離/フレーキングの何れの証拠も全くなかった。管腔外側(abluminal)部分の上及び周辺の材料は、バルーンの膨張によって変形し、伸ばされていることが分かった。ステントストラットが露出しかかっていることが分かった。ストラットからストラットへと跨っているか又は飛び移っている材料のいずれも、材料への膨張の影響を考えて特に調べた。これらの実験では、ストラットに跨っている材料は、膨張の間に伸びるのでなく、破断したと思われ、そして決して本体からは離れなかった。
【0124】
過剰膨張
調査のために、ステントの各々をその公称の膨張の大きさに膨張させ、次いで、バルーンが破裂するまでステントをさらに膨張させた(多くの場合、大きさは75%増大した)。膨張する能力を与える、ステントストラットの角度をなす箇所の内側及び外側部分に特に注意を払った。公称の膨張時の角度が20〜25度の程度の偏位であり得る場合、これらの角度が45度以上である所までステントを持っていった。過度の膨張のどれも、コーティングのくずれ又はフレーキング又は脱離を全く生じなかった。
【0125】
材料は良好な接着性を示した。材料は過剰な膨張によってさえ如何なる接着性の欠如も示さなかった。バルーンの膨張の間に、ステントの曲がり/変形する主な部分において、脱離は全く見られなかった。輸送用バイアルには如何なる微粒子も明白には示されない。ある程度のストラットからストラットへの「クロストーク(cross talk)」が見られたが、それは主に環境による汚染の結果としてであった。これは、例えば、クリーンルーム及び層流フード及び/又はフィルターを通したガスの使用によってなくせるか、又は低減できる。このポリマー及び薬剤の組合せは、優れた伸びの性質を有するように思える。
【0126】
要約として、特定の実施形態において、本発明は薬剤溶出ステントのコーティング方法を提供する。(複数の)ポリマー及び(複数の)薬剤が、低温で無溶剤の制御された方法で付着される。一実施形態において、ラパマイシン、PBMA及びPEVAが、PBMA:PEVAの1:1混合物として、目標とするラパマイシン担持量で、残留溶媒を全く含まずに、約10μMの厚さで、表面に沿い、むらのないコーティングとなるように付着される。ラパマイシンは、結晶モルホロジー(+50%)で付着される。このラパマイシン/PEVA/PBMAのフィルムは、ステントが液体状態の溶媒に曝されないような方法を用いて付着され、薬剤及びポリマーの含量は、高度に制御可能で、様々な薬剤、様々な(再吸収性及び永続性)ポリマー、1つのステント上への複数の薬剤に対して容易に適合させることができ、ステント間のばらつきが非常に少ない。付着の間に、従来の液対溶媒にステントを曝さないので、フィルムの様々な深さで薬剤含量が制御できる。
【0127】
前記は本発明の例示であり、本発明を限定するとは解釈されない。本発明の実施形態が本明細書において示され説明されたが、このような実施形態は例としてのみ記載されていることが当業者には明白であろう。多くの変形形態、変更、置換が、本発明から逸脱することなく、当業者には直ちに思い浮かぶであろう。本明細書に記載された本発明の実施形態に対する様々な代替が本発明の実施において用いられ得ることが理解されるべきである。特許請求の範囲が本発明の範囲を定め、これらの特許請求の範囲内の方法及び構成並びにそれらの均等物は、本発明に包含されるものとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステント骨格;及び
ラパマイシン且つポリマーを含むコーティングであって、該ラパマイシンが少なくとも50%結晶状である、コーティングされた冠動脈ステント。
【請求項2】
ステント骨格がパリレンC(Parylene C)のプライマー層により予めコーティングされており、コーティングがポリブチルメタクリレート(PBMA)及びポリエチレン−コ−酢酸ビニル(PEVA)を含む、請求項1に記載のコーティングされた冠動脈ステント。
【請求項3】
ステント骨格がパリレンCのプライマー層により予めコーティングされており、コーティングが1種又は複数のスチレン系(コ)ポリマーを含む、請求項1に記載のコーティングされた冠動脈ステント。
【請求項4】
ステント骨格がパリレンCのプライマー層により予めコーティングされており、コーティングが1種又は複数の再吸収性ポリマーを含む、請求項1に記載のコーティングされた冠動脈ステント。
【請求項5】
前記コーティングが実質的に均一な厚さを有し、コーティング中のラパマイシンがコーティング内に実質的に均一に分散している、請求項1に記載のコーティングされた冠動脈ステント。
【請求項6】
前記ラパマイシンが少なくとも75%結晶である、請求項1に記載のコーティングされた冠動脈ステント。
【請求項7】
前記ラパマイシンが少なくとも90%結晶である、請求項1に記載のコーティングされた冠動脈ステント。
【請求項8】
前記ポリマーが2以上のポリマーの混合物を含み、前記混合物中の各ポリマーが不連続相を含む、請求項7に記載のコーティングされた冠動脈ステント。
【請求項9】
前記混合物中の前記ポリマーにより形成される不連続相が10nmより大きい、請求項8に記載のコーティングされた冠動脈ステント。
【請求項10】
前記混合物中の前記ポリマーにより形成される不連続相が50nmより大きい、請求項8に記載のコーティングされた冠動脈ステント。
【請求項11】
前記ステントにおけるラパマイシンが少なくとも3カ月の貯蔵安定性を有する、請求項1に記載のコーティングされた冠動脈ステント。
【請求項12】
前記ステントにおけるラパマイシンが少なくとも6カ月の貯蔵安定性を有する、請求項1に記載のコーティングされた冠動脈ステント。
【請求項13】
前記ステントにおけるラパマイシンが少なくとも12カ月の貯蔵安定性を有する、請求項1に記載のコーティングされた冠動脈ステント。
【請求項14】
前記ステントが溶出プロファイルを与え、生理学的条件下で対象にコンポジットが植え込まれた後、10%から50%のラパマイシンが1週間で溶出し、25%から75%のラパマイシンが2週間で溶出し、50%から100%のラパマイシンが4週間で溶出する、請求項1に記載のコーティングされた冠動脈ステント。
【請求項15】
ステント骨格;及び
マクロライド免疫抑制薬剤(limus系薬剤)且つポリマーを含むコーティング
を備え、前記薬剤の少なくとも50%が結晶状である、コーティングされた冠動脈ステント。
【請求項16】
マクロライド免疫抑制薬剤が、ラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシエチル)ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−ベンジル−ラパマイシン、40−O−(4’−ヒドロキシメチル)ベンジル−ラパマイシン、40−O−[4’−(1,2−ジヒドロキシエチル)]ベンジル−ラパマイシン、40−O−アリル−ラパマイシン、40−O−[3’−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4(S)−イル)−プロパ−2’−エン−1’−イル]−ラパマイシン、(2’:E,4’S)−40−O−(4’,5’−ジヒドロキシペンタ−2’−エン−1’−イル)−ラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシ)エトキシカルボニルメチル−ラパマイシン、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−(6−ヒドロキシ)ヘキシル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、40−O−[(3S)−2,2−ジメチルジオキソラン−3−イル]メチル−ラパマイシン、40−O−[(2S)−2,3−ジヒドロキシプロパ−1−イル]−ラパマイシン、40−O−(2−アセトキシ)エチル−ラパマイシン、40−O−(2−ニコチノイルオキシ)エチル−ラパマイシン、40−O−[2−(N−モルホリノ)アセトキシ]エチル−ラパマイシン、40−O−(2−N−イミダゾリルアセトキシ)エチル−ラパマイシン、40−O−[2−(N−メチル−N’−ピペラジニル)アセトキシ]エチル−ラパマイシン、39−O−デスメチル−39,40−O,O−エチレン−ラパマイシン、(26R)−26−ジヒドロ−40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン、28−O−メチル−ラパマイシン、40−O−(2−アミノエチル)−ラパマイシン、40−O−(2−アセトアミノエチル)−ラパマイシン、40−O−(2−ニコチンアミドエチル)−ラパマイシン、40−O−(2−(N−メチル−イミダゾ−2’−イルカルボエトキシアミド)エチル)−ラパマイシン、40−O−(2−エトキシカルボニルアミノエチル)−ラパマイシン、40−O−(2−トリルスルホンアミドエチル)−ラパマイシン、40−O−[2−(4’,5’−ジカルボエトキシ−1’,2’,3’−トリアゾール−1’−イル)−エチル]−ラパマイシン、42−エピ−(テトラゾリル)ラパマイシン(タクロリムス)、及び42−[3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロパノエート]ラパマイシン(テムシロリムス)の1種又は複数を含む、請求項15に記載のコーティングされたステント。
【請求項1】
ステント骨格;及び
ラパマイシン且つポリマーを含むコーティングであって、該ラパマイシンが少なくとも50%結晶状である、コーティングされた冠動脈ステント。
【請求項2】
ステント骨格がパリレンC(Parylene C)のプライマー層により予めコーティングされており、コーティングがポリブチルメタクリレート(PBMA)及びポリエチレン−コ−酢酸ビニル(PEVA)を含む、請求項1に記載のコーティングされた冠動脈ステント。
【請求項3】
ステント骨格がパリレンCのプライマー層により予めコーティングされており、コーティングが1種又は複数のスチレン系(コ)ポリマーを含む、請求項1に記載のコーティングされた冠動脈ステント。
【請求項4】
ステント骨格がパリレンCのプライマー層により予めコーティングされており、コーティングが1種又は複数の再吸収性ポリマーを含む、請求項1に記載のコーティングされた冠動脈ステント。
【請求項5】
前記コーティングが実質的に均一な厚さを有し、コーティング中のラパマイシンがコーティング内に実質的に均一に分散している、請求項1に記載のコーティングされた冠動脈ステント。
【請求項6】
前記ラパマイシンが少なくとも75%結晶である、請求項1に記載のコーティングされた冠動脈ステント。
【請求項7】
前記ラパマイシンが少なくとも90%結晶である、請求項1に記載のコーティングされた冠動脈ステント。
【請求項8】
前記ポリマーが2以上のポリマーの混合物を含み、前記混合物中の各ポリマーが不連続相を含む、請求項7に記載のコーティングされた冠動脈ステント。
【請求項9】
前記混合物中の前記ポリマーにより形成される不連続相が10nmより大きい、請求項8に記載のコーティングされた冠動脈ステント。
【請求項10】
前記混合物中の前記ポリマーにより形成される不連続相が50nmより大きい、請求項8に記載のコーティングされた冠動脈ステント。
【請求項11】
前記ステントにおけるラパマイシンが少なくとも3カ月の貯蔵安定性を有する、請求項1に記載のコーティングされた冠動脈ステント。
【請求項12】
前記ステントにおけるラパマイシンが少なくとも6カ月の貯蔵安定性を有する、請求項1に記載のコーティングされた冠動脈ステント。
【請求項13】
前記ステントにおけるラパマイシンが少なくとも12カ月の貯蔵安定性を有する、請求項1に記載のコーティングされた冠動脈ステント。
【請求項14】
前記ステントが溶出プロファイルを与え、生理学的条件下で対象にコンポジットが植え込まれた後、10%から50%のラパマイシンが1週間で溶出し、25%から75%のラパマイシンが2週間で溶出し、50%から100%のラパマイシンが4週間で溶出する、請求項1に記載のコーティングされた冠動脈ステント。
【請求項15】
ステント骨格;及び
マクロライド免疫抑制薬剤(limus系薬剤)且つポリマーを含むコーティング
を備え、前記薬剤の少なくとも50%が結晶状である、コーティングされた冠動脈ステント。
【請求項16】
マクロライド免疫抑制薬剤が、ラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシエチル)ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−ベンジル−ラパマイシン、40−O−(4’−ヒドロキシメチル)ベンジル−ラパマイシン、40−O−[4’−(1,2−ジヒドロキシエチル)]ベンジル−ラパマイシン、40−O−アリル−ラパマイシン、40−O−[3’−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4(S)−イル)−プロパ−2’−エン−1’−イル]−ラパマイシン、(2’:E,4’S)−40−O−(4’,5’−ジヒドロキシペンタ−2’−エン−1’−イル)−ラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシ)エトキシカルボニルメチル−ラパマイシン、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−(6−ヒドロキシ)ヘキシル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、40−O−[(3S)−2,2−ジメチルジオキソラン−3−イル]メチル−ラパマイシン、40−O−[(2S)−2,3−ジヒドロキシプロパ−1−イル]−ラパマイシン、40−O−(2−アセトキシ)エチル−ラパマイシン、40−O−(2−ニコチノイルオキシ)エチル−ラパマイシン、40−O−[2−(N−モルホリノ)アセトキシ]エチル−ラパマイシン、40−O−(2−N−イミダゾリルアセトキシ)エチル−ラパマイシン、40−O−[2−(N−メチル−N’−ピペラジニル)アセトキシ]エチル−ラパマイシン、39−O−デスメチル−39,40−O,O−エチレン−ラパマイシン、(26R)−26−ジヒドロ−40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン、28−O−メチル−ラパマイシン、40−O−(2−アミノエチル)−ラパマイシン、40−O−(2−アセトアミノエチル)−ラパマイシン、40−O−(2−ニコチンアミドエチル)−ラパマイシン、40−O−(2−(N−メチル−イミダゾ−2’−イルカルボエトキシアミド)エチル)−ラパマイシン、40−O−(2−エトキシカルボニルアミノエチル)−ラパマイシン、40−O−(2−トリルスルホンアミドエチル)−ラパマイシン、40−O−[2−(4’,5’−ジカルボエトキシ−1’,2’,3’−トリアゾール−1’−イル)−エチル]−ラパマイシン、42−エピ−(テトラゾリル)ラパマイシン(タクロリムス)、及び42−[3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロパノエート]ラパマイシン(テムシロリムス)の1種又は複数を含む、請求項15に記載のコーティングされたステント。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
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【図15】
【図16】
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【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
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【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【公開番号】特開2013−99598(P2013−99598A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−24508(P2013−24508)
【出願日】平成25年2月12日(2013.2.12)
【分割の表示】特願2008−521633(P2008−521633)の分割
【原出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(508013641)ミセル テクノロジーズ、インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成25年2月12日(2013.2.12)
【分割の表示】特願2008−521633(P2008−521633)の分割
【原出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(508013641)ミセル テクノロジーズ、インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】
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