制御されたラジカル重合のための装置および方法
制御されたラジカル重合を実施する方法であり、この方法は、(a)少なくとも1種のモノマー;少なくとも1種のモノマー溶媒;金属に配位することができる少なくとも1種の化合物;および少なくとも1種の開始剤;の混合物を提供するステップ、(b)前記混合物をある流量で、前記容器に対して外部にある容器内に含まれた固体触媒表面上に誘導するステップであって、前記触媒は少なくとも2つの酸化状態をとることができる金属または金属化合物を含み、(c)前記反応容器の温度をモニターするステップ、(d)前記温度が選択された温度範囲外である場合、前記流量を調節するステップ、および(e)所望の転化率レベルに前記重合を進行させるステップを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、制御されたモノマーラジカル重合の方法に関する。より具体的には、本発明は、とりわけ、ポリマー生成物の転化率が増加し、多分散性が低く、末端官能性が高く、および分子量分布が単峰性であるモノマーのリビングラジカル重合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の簡単な説明)
ポリマーを製造するのに経済的で効率的な方法が常に要求されている。原子移動ラジカル重合(以下、ATRPとも呼ぶ)は、ポリマーを形成するための方法を提供する。しかしながら、この方法は利用に当たって限界があり、この方法およびこの方法によって得られた最終生成物は共に欠点を有する。ATRPは、狭い範囲の開始剤を使った狭い範囲のモノマーに関して実施されることができる。また、ATRPは、典型的には例えば、Cu(I)塩触媒のような+1(またはM+1)、または他の低酸化状態金属による触媒作用を受ける。この重合工程は遅いので、この反応を推進するために長時間高い温度を維持すると共に、高い触媒濃度を必要とする。最終生成物ポリマーとしては官能性末端が望ましいが、ATRP触媒は不安定であることが可能であり、非官能性末端基の形成を伴う停止反応を促進することができる。従って、ATRPは一般に、非反応性末端基を有する一部の非官能性ポリマーを含む材料を与える。その結果、ATRPによって製造された典型的なポリマーは、鎖末端の10−15%の領域において終点を含み、より望ましくない機械的および材料性質ならびに特性を有する材料を与える可能性がある。生成物の分子量および多分散性指数は共に、ポリマー末端の早期の停止反応によって理論上数値から離れる。この結果としてレオロジー制御は劣り、および様々な応用および用途で不適合になることが多い。すなわち、ATRP方法では制御ができないので、構造上の欠陥、さらに望ましくない特徴および予測がより難しい特性を有するポリマー生成物が得られことになる。加えて、Cu(I)塩は空気中で不安定であり、取り扱いの注意が必要である。
【0003】
反応を推進するのに高い濃度の触媒を必要とするので、この方法は触媒を除去するのに広範で困難な精製が要求されることが多い。予側可能性および再現性を高めるために、ATRPは典型的には小さなスケールの反応で実施される。従って、当該技術分野で、効率的で効果的なラジカル重合方法、かつ望ましい性質、特性、および特徴を有する制御されたポリマー生成物を正確に、さらには大きなスケールレベルで
製造することができるラジカル重合方法に対する要求がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様は、制御されたラジカル重合を実施する方法を提供する。この方法は、(a)少なくとも1種のモノマー;前記モノマーのための少なくとも1種の溶媒;金属に配位することができる少なくとも1種の化合物;および少なくとも1種の開始剤;の混合物を反応容器に充填するステップ、(b)前記反応混合物をある流量で、前記反応容器に対して外部にある室の内に含まれた固体触媒表面上に誘導するステップであって、前記触媒表面は少なくとも2つの酸化状態を取ることができる金属または金属化合物を含み、(c)前記反応容器の温度を選択された温度範囲でモニターするステップ、(d)前記温度が前記選択された温度範囲外である場合、前記流量を調節するステップ、および(e)所望の転化率レベルに到達するまで前記重合を進行させるステップを含む。
【0005】
本発明の第2の態様は、制御されたラジカル重合を実施する方法を提供し、この方法は、(a)少なくとも1種のモノマー;前記モノマーのための少なくとも1種の溶媒;金属に配位することができる少なくとも1種の化合物;および少なくとも1種の開始剤;の混合物を反応容器に充填するステップ、(b)前記反応混合物をある流量で、前記混合物に対して外部にあり、熱交換器ユニットで分離された少なくとも1つの触媒コンバータ室または一連の触媒コンバータ室を通して、および触媒コンバータ表面上に誘導するステップであって、前記触媒コンバータ表面は少なくとも2つの酸化状態をとることができる金属または金属化合物を含み、(c)前記反応容器の温度を選択された温度範囲でモニターするステップ、(d)前記温度が前記選択された温度範囲外である場合、前記触媒室および熱交換器ユニットを通す前記流量を調節することによって前記反応混合物の温度を維持するステップを含む。
【0006】
本発明の第3の態様は、制御されたラジカル重合を実施する方法を提供し、この方法は、(a)少なくとも1種のモノマー;触媒の不均化を容易にするための少なくとも1種の溶媒;および少なくとも1種の配位子;の内の少なくとも2種の混合物を反応容器に充填するステップ、(b)前記反応混合物をある流量で、前記混合物に対して外部の触媒コンバータ表面上に誘導するステップであって、前記触媒コンバータ表面は少なくとも2つの酸化状態をとることができる金属または金属化合物を含み、(c)所望の濃度の触媒が前記反応混合物に可溶化された時を決定し、その後、少なくとも1種の開始剤を前記反応混合物中に包含するステップ、(d)前記反応容器の温度を選択された温度範囲でモニターするステップ、(e)前記温度が前記選択された温度範囲外である場合、前記流量を調節するステップ、および(f)所望の転化率レベルに到達するまで前記重合を進行させるステップを含む。
【0007】
本発明の第4の態様は、単峰性のポリマー分子量分布を得る方法を提供し、この方法は、金属または金属化合物を不均化することができる反応組成物を提供するステップであって、前記組成物は、少なくとも1種のモノマー;前記モノマーのための少なくとも1種の溶媒;少なくとも1種の配位子;および少なくとも1種の開始剤を含み、前記不均化を可能にするために、前記組成物をある流量で、前記組成物に対して外部の触媒コンバータ表面上に誘導するステップ、(c)前記反応容器の温度を選択された温度範囲内でモニターするステップ、(d)前記温度が前記選択された温度範囲外である場合、前記流量を調節するステップ、および(e)所望の転化率レベルに到達するまで前記重合を進行させるステップを含む。
【0008】
本発明の第5の実施形態は、制御されたリビングラジカル重合のための装置を提供し、この装置は:反応容器であって、この容器は材料を収納するように構成され、容器入口および容器出口を有し;少なくとも1つの触媒コンバータであって、このコンバータは反応容器に対して外部に配置され、コンバータ入口およびコンバータ出口を有し、このコンバータは固体金属触媒を収納し、前記材料が前記触媒と接触するための表面領域を提供するように構成され、前記触媒は前記反応容器と連通し;前記コンバータ中に供給して前記触媒と接触させる前記材料の流量を制御するためのポンプ;および、少なくとも1つの熱交換器であって、ここで前記熱交換器は、前記コンバータ出口と前記反応容器入口との間に配置されている、を含む。
【0009】
本発明のこれらおよび他の特徴は、下記の詳細な説明および添付する図によってさらに理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の装置フローチャートの実施形態を示す。
【図2】図2は、制御されたラジカル重合を実施する方法の実施形態を示す。
【図3】図3は、制御されたラジカル重合を実施する方法の他の実施形態を示す。
【図4】図4は、制御されたラジカル重合を実施する方法のさらに他の実施形態を示す。
【図5】図5は、単峰性のポリマー分子量分布を得る方法の実施形態を示す。
【図6】図6は、本発明の装置のブロック線図表示による反応混合物の提案された経路のフローチャートを示す。
【図7】図7は、単電子移動機構のための提案された機構を示す。
【図8】図8は、原子移動ラジカル重合機構のために提案された機構を示す。
【図9】図9は、異なった基官能性を有する最終ポリマー生成物を得る段階的フローチャートを示す。
【図10】図10は、ポリマー官能基化置換反応のための例示的な機構を示す。
【図11】図11は、ポリマー官能基化末端キャッピング反応のための例示的な機構を示す。
【図12】図12は、SET−LRP反応を実施するために反応器装置の概略図を示す。
【図13】図13は、外部の触媒室を用い、制御して断続的にポンプで供給しながらメチルアクリレートを重合する時間−温度および転化率プロファイルを示す。
【図14】図14は、ATRPおよびSET−LRPによって合成されたポリマーのSECクロマトグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(発明の詳細な説明)
本発明の実施形態は、当該技術分野において、望ましい性質、特性、および特徴を有し、正確に制御されたポリマー生成物を製造することができる効率的、効果的なラジカル重合の方法に対する要求を満たす。さらに、本発明の方法は、小さい、大きい、または商業スケールであっても、実施可能性およびその結果の予測可能性について同等に実施されうる。
【0012】
ポリマー化学において、新規の重合方法および新規のポリマーを開発するための努力が続いている。単電子移動リビングラジカル重合(以下、SET−LRPと呼ばれる)は、それ自体、ATRPの代替手段として発展してきた。これらの方法は共に、ポリマーのラジカル重合方法を意味するが、SET−LRPおよびATRPは、それらの使用、さらには得られる最終生成物の性質および特性において対照的な違いを生じさせるいくつかの特質を有する。本発明の方法によって、2つの方法のいずれかまたは両方を共に実施することができ、より速い転化速度、より効率的な工程、ならびにより高い予測可能性および価値を有する生成物など、さらによい結果を生み出すことができる。
【0013】
制御された重合方法、換言すればリビング重合方法は、ポリマー成長反応と比較して連鎖移動および停止反応が実質的に存在しない重合方法である。これらの開発は、精密で定量的な官能価を示すポリマーの製造、および特異的な化学反応性を有する官能性ポリマーの開発を可能にした。本発明の方法は、ポリマーを加工する際、ならびに後の材料形成反応(例えば、共重合、鎖延長および架橋反応)および基体との相互作用(分散固体を含めて)における組立てブロックとして、またはそれらのための組立て成分としてポリマーを利用する際に、材料技術者が利用可能な制御のレベルを高めている。本発明は、反応媒体から容易に分離され、およびその工程に渡って充分に制御される制御された重合のための触媒系に対する要求を満たす。
【0014】
できる限り環境に優しく、官能性材料を調製するためのできる限り安価な工程による、制御されたラジカル重合を作り出す努力が続いている。そのような方法の設計および実行にあたっては、例えば、ポリマー分子量、分子量分布、組成、構造、および官能価の制御のような要素は重要な検討事項である。本発明の方法は、最終ポリマー生成物の高度な制御を可能にし、それによって所望の鎖長、多分散性、分子量、および官能価が容易に最終生成物中に具現化される。すなわち本発明は、分子量分布に関する制御の低さ、官能価の低さ、ポリマーレオロジーの制御の低さ、および望ましくない多分散性といった問題点を克服する。また、この方法は非常に予測可能であるので、高い予測可能性でもって大きなスケールで容易に実施され、および/または最終ポリマー生成物の性質を新たな段階に調整するために使用され、生成物はこれらの性質を基にして設計されうる。さらに、停止反応がより少ないので、ポリマーの構造および組成はより正確であり、この末端生成物は、さらに優れた生成物を作りだすためのより望ましい性質および特性を有する。さらに、反応を進めるのに必要とされる触媒の量が非常に少ないので、最終生成物の精製は容易になるか、時には不必要である。さらに、モノマー(共)重合反応をもっとより正確に制御するために、本システムの構成要素は最適化することができる。
【0015】
本発明の生成物は、最終の結合組成物に影響を及ぼすことなく、長いタック保持期間を有する接触接着剤として有用な硬化性樹脂組成物を提供するために使用することができる。また、本方法のポリマーは、良好な耐油性、耐熱性、接着力および柔軟性を示す。さらに、本発明の方法に包含された生成物は、プラスチック、エラストマー、接着剤、乳化剤、熱可塑性エラストマーなどとして広範に使用することができる。
【0016】
本方法によって作成された望ましいポリマーは確かな性質および特性を有する。例えば、最終ポリマー生成物は、様々な用途および技術分野で使用されるためには高度の耐熱性を有していなければならない。ポリマー末端に関して高い官能価、低い多分散性、および理論分子量に近い分子量を有する最終ポリマー生成物は、望ましく予測通り製造することができる。これらの特徴の数値と測定は本明細書の実施例の欄に提供されているが、これら各々の性質の簡単な考察は以下に続く。
【0017】
重合度は、供給したすべてのモノマーの重量平均分子量で割った数平均分子量であるが、これは制御された重合においてモノマー転化率との一次関数で表される。制御されたラジカル重合(以下、「CRP」と呼ばれる)は、下記の2つの条件:開始は充分に速くなければならず、それによって、ほとんどすべての鎖が同時に成長を始めること、および全鎖数を増加させる鎖連鎖移動はほとんどかまたは全く起きないこと、を満たす。ポリマーの多分散性指数が広い場合、このポリマーが実質的にポリマーの数平均分子量よりも小さいおよび大きい分子量セグメントを有するポリマー状セグメントを含む、ということことは、ポリマー技術分野の当業者に周知である。低分子量セグメントは、引張り強度、伸びおよび曲げ弾性率のようなポリマーの物理的性質に悪影響を及ぼすこと場合がある一方で、他方では、非常に大きい分子量セグメントは、ポリマーの加工性に限界を生じさせる可能性のある高いポリマー融解粘度という結果になる場合がある。すなわち、最終ポリマーが明確に定められた狭い多分散性指数を有する場合、明白な利点がある。このことは、物性的な見地から予測可能なポリマーを生成し、上記欠点を最小限にすることを可能にしている。
【0018】
本発明は、より予測可能な末端基官能価を提供する。すなわち、所望しないポリマー鎖の切断や官能性末端基の欠如、もしくは最終生成物の分子量が予測不可能であるといったことを、もしかすると起こしてしまう可能性がある未熟な停止反応が実質的により少ない場合、所望の官能化末端基をより高い効率で達成される。反応性ハロゲン官能性末端基は、再開始およびさらに重合を起こしてブロックコポリマーを生成でき、またはさらに求核置換、脱離または末端キャッピング反応により官能基化されうる。本発明によって、最終ポリマー生成物において効率的で予測可能な末端基官能性にすることができる。
【0019】
最終ポリマー生成物において、狭い分子量分布、すなわち多分散性指数を有することは望ましい。本発明では鎖長、末端基官能価、およびポリマー濃度は実質的に一定であるので、本発明に従って狭い分子量分布は制御された重合から達成されうる。狭い分子量分布を達成する過程で、いくつかの要素が促進されうる。狭い分子量分布に寄与する一部の要素としては、(1)成長速度と競争的である開始速度(すべてのポリマー鎖の同時成長を可能にする)、(2)成長よりも速い、反応性の異なった種間での交換(均一な成長のために、すべての活性鎖末端はモノマーとの反応性が等しいことを保証して)、(3)少ないかまたは全くない連鎖移動または停止、(4)失活速度に対する活性化速度、および(5)混合が充分に速い均一系(すべての活性中心は、重合の開始時に導入される)が挙げられる。これらの要素を満足する重合は、ポアソン分布の理論値1+1/DPに近い多分散性を有することができる。例えば、本方法のポリマー生成物のDPは1.4DPより小さくてよく、より具体的には1.2DP未満、ある場合には1.1未満であってよい。
【0020】
最終生成物の他の特性は長寿命ポリマー鎖である。これはモノマーが完全に消費された後に、すべての鎖がそれらの活性中心を保持していることを意味する。従って、成長は追加のモノマーを添加すると再開する。この要素は逐次モノマー付加によってブロックコポリマーの調製を可能にする。
【0021】
制御された重合は、組成、官能価および分子レベルでのトポロジーにおける多数の変動の様々な態様を選択および制御することによって、バルクの性質を制御するために、最高の機会を提供する。最終ポリマー生成物において多分散性、分子量、官能価、および長寿命鎖長が確実に推進されるために、本発明の方法でもって先に考察された多くの特性および要素を制御することができる。例えば、多分散性は、失活速度を確実に初期の成長速度(活性化)と同じかまたは速くすることを確かなものにすることによって本発明で制御されうる。
【0022】
本発明のある実施形態は、ポリマーおよびコポリマーのミクロ構造を制御するための重合方法に関する。本発明のある実施形態は、有機ハライド開始剤を使用するハロゲン含有およびアクリルモノマーのリビングラジカル重合、ならびにそこからのポリマー形成に関する。様々な実施形態の方法は、狭い分子量分布を有する最終ポリマー生成物を提供し、これらは高く効率的な転化率および迅速または超高速の重合反応によって得られる。従って、本方法により得られる最終ポリマー生成物は、予測可能な分子量、低い多分散性指数、および高い官能価を有する。
【0023】
図1は、本発明の装置10のフローチャート形態で示された実施形態を提供する。制御されたリビングラジカル重合のための装置10は、反応容器20、触媒コンバータ30、ポンプ40、および熱交換器50を含む。反応容器20は、材料12を収納するように構成されうる。材料12としては、様々な反応剤、成分、中間体、生成物などを挙げることができる。反応容器20は、少なくとも1つの容器入口22および容器出口24で構成されてよい。反応容器20は、要望されうるように様々な機能および用途のために複数の入口および出口を含むように構成されうると理解することができる。
【0024】
触媒コンバータ30は、反応容器20から分離されてよいが、しかしそれに取り付けられてもよい。図1において、様々な構成部品を結合するラインによって説明されているように、様々な構成部品を互いに結合するのに様々な管およびラインを用いることができる。触媒コンバータ30は、反応容器に対して外部に配置されてよく、それによって反応容器20中の材料12は、反応容器20から触媒コンバータ30の中に誘導されうる。従って、触媒コンバータ30は、コンバータ入口32およびコンバータ出口34を有することができる。触媒コンバータ30は固体金属触媒16を収納する。固体金属触媒は後で考察されるように多くの形態のうちの1つであってよい。固体金属触媒はスクリーンであることが好ましい。触媒コンバータは、材料12をコンバータ入口32より供給して触媒16と接触させることが可能な大きさ、形状、および構造であってよい。接触時間および表面積は要望通り最適化されうる。材料12が触媒コンバータ中で触媒と接触した後に触媒コンバータ30を出るために、この材料はコンバータ出口34より搬出されてよい。
【0025】
装置10は、さらにポンプ40を含む。ポンプ40は、材料12が反応容器20から触媒コンバータ30にポンプで送られるときの流量を制御するために使用されてよい。従って、ポンプ40は、材料12が触媒16の表面と接触する速度を制御することができる。ポンプ40は、機械的、電気的、および電気機械的な部品の組合せであってよく、とりわけ、重力を利用することができる(触媒コンバータ30から反応容器に戻す出口ライン34に示すように)。
【0026】
図1を継続して参照すると、本装置10は少なくとも1つの熱交換器50を含んでいてよい。熱交換器50は、コンバータ出口34と反応容器入口22との間に配置されてよい。それ自体、熱交換器50は、材料12へまたは材料12からの熱を交換するために使用されてよく、材料12およびそれによって反応容器20も所望の温度または温度範囲に維持することができる。1つより多い熱交換器50が存在してよく、例えば、反応容器20上に、ポンプ40と共にインラインに、または触媒コンバータ30のためにコンバータ入口32の前に配置されてよい。同様に、一連の反応を通して所望の温度を確実に維持するため、装置10に沿った様々な所または混合物12内部もしくは触媒表面16の温度を1つ以上の温度計で測定することができ、そうすることが望ましい。
【0027】
装置10は、分析機器70を含んでいてよい。分析機器70は、インライン分析機器であってよい。分析機器70は、第2の入口26を介して反応容器20に構成されてよい。また、試料は、装置10から分離することができる分析機器70に通すために、反応容器20から取り出されうる。分析機器70は以下に開示および考察されるように、核磁気共鳴分光学、分光光度法、高圧浸透クロマトグラフィーなどの1つ以上であってよい。分析機器70は、例えば、反応速度、転化率レベル、相対収率、副反応の存在、不純物、中間体の特性などを決定するためにインラインで使用されてよい。
【0028】
また、装置10は、反応容器内に配置することができる攪拌器28を含んでいてよい。撹拌器は、ポンプ輸送に対する抵抗力または弾力を有する材料の高い表面張力に逆らうために、反応容器20中の材料12を攪拌することができる。さらに、攪拌器28は確実に反応剤をブレンドし、表面領域との接触を最大にして反応を促進することができる。例えば、攪拌器28は、インペラ、機械的撹拌棒、または反応容器20の下に対応する調節可能なRPM撹拌器を有する磁気撹拌棒であってよい。
【0029】
装置10は空気、特に大気中の酸素が遮断される環境を有することができる。すなわち、さらに装置10は、ガス入口82、およびガス出口84を有するガス供給源80を含んでいてよい。ガス入口82およびガス出口84は、反応容器20および触媒コンバータ30をガス14でパージできるようにするため、反応容器20に構成されていてよい。装置10で使用できるガスとしては非反応性ガスが挙げられる。そのようなガスの例としては、アルゴンおよび窒素を挙げることができる。さらに、ガス出口84から出るガス14を乾燥剤により、またはガス14から材料12を除去するための他の成分により望ましくはろ過することができ、そのことによってそれは適切に廃棄されうる。
【0030】
さらに装置10は凝縮器60を含んでいてよい。凝縮器60は、反応容器20とガス供給源80のガス出口84との間にインラインで挿入されるように構成されてよい。ガスが凝縮物からガス出口84を通って抜け出るとき、材料12がガス14と共に反応容器20から逃げるのを防ぐために、凝縮器60は冷水またはドライアイス(冷却空気)によるジャケットであってよい。本発明の実施形態で使用される触媒16、材料12、およびガス14を含めて様々な化学成分は、本発明の方法に関連して非常に詳細に考察されている。本発明の方法は、図1の例示的な装置中、または当該技術分野において公知であるその同等物中で実施することができる。
【0031】
図2は、制御されたラジカル重合を実施するためにフローチャートで示された、本発明の方法の実施形態を提供する。方法100は、以下のステップ:(a)反応容器20を、少なくとも1種のモノマー;モノマーのための少なくとも1種の溶媒;金属に配位ができる少なくとも1種の化合物;および少なくとも1種の開始剤;の混合物で充填する110ステップ、(b)前記反応混合物をある流量で、反応容器20に対して外部の室30に含まれた固体触媒表面16上に誘導する120ステップであって、前記触媒表面16は、少なくとも2つの酸化状態を取ることができる金属または金属化合物を含み、(c)前記反応容器20の温度を選択された温度範囲内でモニターする130ステップ、(d)前記温度が選択された温度範囲外にある場合、前記流量を調節する140ステップ、および(e)所望の転化率レベルに達するまで前記重合を進行させる150ステップを含む。図2に示されるように、方法100のステップは反復されてよい。例えば、ステップ(b)から(d)は、所望の転化率レベルに達するまで反復160されてよい。
【0032】
本発明の他の実施形態は、図3に示されるように制御されたラジカル重合を実施する方法200を提供する。方法200は、以下のステップ:(a)反応容器20を少なくとも1種のモノマー;モノマーのための少なくとも1種の溶媒;金属に配位ができる少なくとも1種の化合物;および少なくとも1種の開始剤;の混合物で充填する210ステップ、(b)前記反応混合物をある流量で、前記混合物に対して外部、望ましくは前記反応容器に対して外部の少なくとも1つの触媒コンバータ室または一連の触媒コンバータ室を通して、および触媒コンバータ表面上に誘導する220ステップであって、前記触媒コンバータ表面は、少なくとも2つの酸化状態を取ることができる金属または金属化合物を含み、(c)反応容器20の温度を選択された温度範囲内でモニターする230ステップ、(d)前記温度が前記選択された温度範囲外にある場合、触媒室30および熱交換器50を通す前記流量を調節することによって前記反応混合の温度を維持する240ステップを含む。同様に、前記ステップの1つ以上は、望まれるように反復または繰り返されてよい。
【0033】
方法200、さらには他の実施形態は、複数の熱交換器50を使用して実施されてよく、これらは大きなスケールの反応の発熱を制限するために使用されうる。1つ以上の熱交換器50ユニットは、直列、1つ以上の触媒コンバータ室30と並列または他の配列で設置されてよく、例えば、熱交換50ユニットは触媒コンバータ30と交互に直列に設置されてよい。また、複数の熱交換器50ユニットは2つの触媒コンバータ室30の間に設置されてよい。また、複数の触媒コンバータ室30が使用されてよい。触媒コンバータ30は、直列、並列、または代替手段で設置されてよい。例えば、1つの触媒コンバータ30の表面が使い果たされた後、流れの方向を変えるために別の手段が採用されうる。
【0034】
本発明のさらなる実施形態は、図4に示されるように制御されたラジカル重合を実施する方法300を含む。方法300は、以下のステップ:(a)反応容器20を、少なくとも1種のモノマー;触媒の不均化を容易にするための少なくとも1種の溶媒;および少なくとも1種の配位子;の内の少なくとも2つの混合物で充填する310ステップ、(b)前記反応混合物をある流量で、前記混合物に対して外部、望ましくは前記反応容器に対して外部の触媒コンバータ表面上に誘導する320ステップであって、前記触媒コンバータ表面は、少なくとも2つの酸化状態を取ることができる金属または金属化合物を含み、(c)触媒が前記反応混合物に所望の濃度で可溶化されたときを決定し330、続いて前記反応混合物に少なくとも1種の開始剤を組み込むステップ、(d)反応容器20の温度を選択された温度範囲内でモニターする340ステップ、(e)前記温度が前記選択された温度範囲外にある場合、前記流量350を調節するステップ、および(f)所望の転化率レベルに達するまで前記重合を進行させる360ステップを含む。
【0035】
本発明のなおも別の実施形態は、図5に示されるように単峰性のポリマー分子量分布を得る方法400を提供する。方法400は:金属または金属化合物を不均化できる反応組成物を提供するステップ410であって、組成物が少なくとも1種のモノマー;前記モノマーのための少なくとも1種の溶媒;少なくとも1種の配位子;および少なくとも1種の開始剤を含み、(b)前記不均化を可能にするために、前記組成物をある流量で、前記混合物に対して外部、望ましくは反応容器20の外側の触媒コンバータ表面上に誘導する420ステップ、(c)反応容器20の前記温度を選択された温度範囲内でモニターする430ステップ、(d)前記温度が前記選択された温度範囲外にある場合、前記流量を調節する440ステップ、および(e)所望の転化率レベルに達するまで前記重合を進行させる450ステップを含む。
【0036】
言及された方法100、200、300、400の1つ以上は、さらに、分析機器を使って反応混合物の転化率レベルを測定するステップを含んでいてよい。分析機器70は、様々な化合物および混合物の特性を同定して測定するために、当該技術分野で周知で使用される1種以上のものであってよい。望ましくは、この分析方法は、工程が進行する時間の関数として転化速度を測定するためにインラインで制御されてよい。あるいは、一定量または試料を混合物から取り出し、転化率をオフラインで測定することができる。
【0037】
有用な分析機器70および方法の非限定的な例は、分光法デバイス、クロマトグラフィー機器、核磁気共鳴機器、質量分光分析機器、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー技術、およびこれらの装置または技術の組合せから選択することができる。先に説明されたように、分析機器70は、インラインのものかまたは反応容器20から取り出された試料を使用する装置10から分離さたもののいずれかであってよい。
【0038】
転化率レベルは分光分析によって測定されうる。例えば、最終生成物の分析およびキャラクタリゼーションは赤外線分光法によって完結されうる。これには、UV−VIS、IR分光光度法、FTIR分析、さらには他の分光技術が含まれてよい。例えば1つの有用な分析機器70は、反応が進むにつれて反応混合物の転化率レベルを定期的に測定するために、反応容器中にプローブとともに構成されたフーリエ変換赤外分光光度計であってよい。
【0039】
あるいは、反応混合物の相対粘度の増加はトルク分析器が取り付けられた攪拌器によって決定され、独立の較正によりモノマー転化率に関連付けされることができる。また、注目すべきは、試料は定期的に反応器から抜き出され、NMR、GPC、屈折率、光吸収、比色定量などの技術によって外部で分析が可能なことである。
【0040】
さらに、転化の程度は分析的に測定されてよいが、また理論的に測定されてもよい。このことは、例えば、触媒コンバータ30へのインプットを測定し、どれ程の触媒16が反応に使用されたかを決定するために、使用された触媒16の酸化を計算して実施することができる。
【0041】
特に、方法100、200、300、400の1つ以上は、単電子移動リビングラジカル重合(SET−LRP)反応を含んでいてよい。いかなる特定の機構にも縛られることなく、本方法に対する提案された機構は図7に示される。図7に示される提案された機構の考察は、例えば、Percec,Vらの「SET介在の25℃、金属触媒リビングラジカル重合によるアクリレート、メタクリレート、および塩化ビニル超高質量ポリマーの超高速合成(Ultrafast Synthesis of Ultrahigh Molar Mass Polymers by Meatl−Catalyzed Living Polymerization of Acrylates,Methacrylate,and Vinyl Chloride Mediated by SET at 25℃)」(J.AM.CHEM.SOC.,2006,128,14156−14165)に見いだされることができ、これはその全部を参照して本明細書に組みこまれる。SET−LRPはより低い活性化エネルギーで実施され、すなわちより低い温度で実施されてよい。図7を参照して、元素金属、例えば銅などは、Cu(0)およびCu(II)を与える不均化を促進するある種の溶媒と共に使用されうる。従って、Cu(II)は失活ステップで直ちに利用可能であり、これによって末端停止生成物の量は低下する(狭い分子量分布および多分散を生み出す)。また、この触媒金属、例えば銅は、それ自体を再生し、すなわちこの重合方法はリビングである。反応混合物の溶媒濃度を増加すると重合はより速くなるが、分子量および分子量分布に関する制御は良好に維持される。
【0042】
SET−LRP反応は、Cu(0)種とハロゲン含有基質(開始剤またはハロゲン末端停止ポリマー鎖末端)との間のSET反応から始まる。あらゆる極性溶媒は、ラジカル−アニオン対からのアニオン(X−)と求電子性ラジカル(R¥)との間の相互作用の低下を容易にする。ラジカル−アニオンクラスターおよびCu/L+対カチオンはごく接近して、いわゆるケージイオン対でなければならず、従って、さらにラジカルアニオンを求電子性ラジカルとアニオン(X−)とに分解するのを容易にする。極性媒体中のラジカルと失活剤CuX2/配位子との間の反応はさらに複雑な工程である。1つの可能な機構では、失活剤から成長している高分子ラジカルR¥へのハライドアニオンXの移動が含まれてもよく、ラジカル−アニオン[R−・・X]¥−およびCuX/L+対カチオンから構成される同様のイオンケージに導いている。SET−LRPでは、「Cu(I)X」が触媒作用し、アルキルハライド、スルホニルハライド、およびN−ハライドで開始されるLRPの加速があり、この加速は、H2O、アルコール、エチレングリコール、DMSO、DMF、および例えばポリメタクリレートのような高分子質量材料などのイオン性液体中で認められる。
【0043】
この重合はCu(0)種が電子供与体として作用し、ドーマント開始剤および成長R−X種が電子受容体として作用する外圏SET機構によって進行する。望まないラジカル二量化反応によって過剰のCu(II)X2種が生み出されるATRPを含めて、金属が触媒作用する他のLRPとは対照的に、本発明では、ラジカルの可逆的失活に関与するCu(II)X2種がCu(I)Xの不均化によって形成される。本新規の重合に含まれる外圏SET方法は非常に低い活性化エネルギーを有する。従って、SET−LRPは、室温で非常に速い活性化および失活ステップならびに無視できるほどの2分子停止を含む。
【0044】
原子移動ラジカル重合(ATRP)として、方法100、200、300、400から一つ以上の方法を代わりに実施することができる。いかなる特定の機構にも縛られることなく、本方法に対する提案された機構が図8に示される。図8に示される提案された機構の考察は、例えば、K.Matyjaszewski,Kらの「原子移動ラジカル重合における競争平衡(Competitive Equilibria in Atom Transfer Radical Polymerization)」(Macromol.Symp.,2007,248,60−70)、(DOI:10.1002/masy.200750207)に見いだされることができ、これはその全部を参照して本明細書に組みこまれる。原子移動ラジカル重合(ATRP)を含めて、非極性溶媒中で実施される金属が触媒作用する有機ラジカル反応およびリビングラジカル重合は、高い活性化エネルギーを必要とする内圏電子移動機構によって進行する。ATRPは、低酸化状態の金属錯体が触媒として作用する内圏電子移動機構によって進行し、ラジカルとそれらのドーマントアルキルハライド種との間の高速交換を媒介すると考えられる。活性種とドーマント種との間の平衡は、重合の初期段階の間にわずかな程度の2分子ラジカル二量化で生成された過剰の高酸化状態の触媒によって、ドーマント種側にシフトする。この概念は、高速反応の内部抑制または持続性ラジカル効果(PRE)として公知である。また、内圏ラジカル方法は、原子移動ラジカル付加としても公知であり、従って、対応するラジカル重合は原子移動ラジカル重合(ATRP)と名付けられた。さらに、ATRPとSET−LRP提案機構との間の比較検討は、例えば、Percec,Vらの「ビニルモノマーのATRPおよびSET−LRPの活性化ステップに関与する均一および不均一結合解離エネルギーのコンピュータによる比較研究(A Comparative Computational Study of the Homolytic and Heterolytic Bond Dissociation Energies Involved in the Activation Step of ATRP and SET−LRP of Vinyl Monomers)」(Journal of Polymer Science,DOI 10.1002/pola)(Wiley InterScienceのオンラインで公表され、http://www.interscience.wiley.comで入手可能である)に見いだされることができ、これはその全部を参照して本明細書に組みこまれる。
【0045】
任意に、本発明の方法100、200、300、400の1つ以上は、単電子移動ラジカルリビング重合と原子移動ラジカル重合の組合せを含んでいてよい。すなわち、本方法は、ハイブリッドATRP/SET−LRP反応シークエンスとして実施されてよい。それで、本方法は、元素金属および(少なくとも)+1の酸化状態の金属の添加を含んでいてよい。2つの形態の触媒を使用することによって本重合反応は加速されうる。ATRPおよびSET−LRP機構の組合せで、結果は付加的、相乗的であってよく、または他の利益を提供でき、例えば安価な反応剤を使用することができ、またはより優れた特性の最終生成物を得ることができる。
【0046】
様々な実施形態において言及され、方法100、200、300、400において説明された流量ステップの調節としては、例えば、反応シークエンスに渡って実施される流量の増加、流量の低下、流量の停止、逆流、およびこれらの組合せを挙げることができる。これは、ポンプ速度の変更、重力添加装置10の調節、または他の場合、触媒表面16への反応混合物の接触を増加、低下、開始、停止、または逆方向にすることによって実施されうる。
【0047】
100、200、300、および400のような方法の一般的な反応は、類似の反応装置および反応剤を用いて完了されうる。図9に関して、方法100、200、300、および400の内の1つ以上を実施するためのステップが提供される。図6は、装置10を介する反応混合物の流路に言及し、ここでは、例えば、ポンプ40を通る流量を制御するため、および分析機器70からのデータを集め処理するためにコンピューターを使用することができる。図1は、本発明の方法100、200、300、および400の内の1つ以上を実施または完了するために使用できる例示的な反応装置のブロック線図を提供する。図11は、先に検討されたように本方法の1つ以上を実施するために装置の実施形態の図解を示す。先に開示されたように、図および方法100、200、300、および400の内の1つ以上に関しては、反応成分および反応剤は後に詳細に検討される。
【0048】
本発明の方法100、200、300、400に包含される反応は反応容器20中で起きる。反応容器20は、所望の任意の制御容積であってよく、当該技術分野において公知である任意のサイズ、任意の形状、または任意の次元であってよい。反応容器20は、機械的に反応混合物を攪拌するために攪拌器(例えば、攪拌器28)、時間とともに混合物に1種以上の成分または反応剤を添加するために1つ以上の添加漏斗、加熱/冷却ジャケット/要素、およびガス14のための反応容器20からの流入入口および流入出口を含むように構成されてよい。さらに、反応容器20は、例えば、反応混合物の試料をインラインまたはイン・サイチューで得るために、分析機器70を反応容器に取り付けるることができるように構成されてよい。
【0049】
反応装置10の外部コンバータは反応容器20に結合され、取り付けられ、または一体化されていてよく、それによって反応混合物は、反応容器20から外部コンバータ30に輸送または他の方法で操作されうる。また、外部コンバータ30は反応容器20と閉鎖系であってよく、それによって2つの構成要素は同じ雰囲気条件を共有することができる。また、外部コンバータ30は互換的に、例えば触媒コンバータまたは外部触媒コンバータと見なされてよい。外部コンバータ30は、例えば、反応混合物が外部コンバータ30を通って流れることができる流量を制御するために反応容器20からは分離されていてよい。
【0050】
外部コンバータ30は、本発明の様々な方法100、200、300、および400の内の1つ以上において反応剤として使用される固体触媒16を収納することができる。大きな表面領域での反応混合物と触媒16との接触を容易にし、効果的、効率的、および予測通りに、高い収率、純度および他の望ましい特性で反応を完了する方向に推進するために、触媒16は1つ以上のサイズ、形状、および関連する特性を望まれるように呈することができる。外部触媒コンバータ30は、混合物を触媒16と接触させる速度を制御して本方法を制御することができる。すなわち、反応混合物が外部触媒コンバータ30中に供給される速度を制御することにより、反応容器20内の発熱反応の速度および全体の反応条件は制御されうる。対照的に、そのような制御が無い場合、反応容器20の発熱はあまりにも高温になる可能性があり、それによってモノマーまたは溶媒が蒸発で失われうる。溶媒の損失は、次に触媒の不均化が減少するという結果になる一方で、1種以上のモノマー種の損失は、モノマーブレンド中の構成成分の濃度が不明になる可能性がある。これらの要素は、分子量範囲の予測可能性が低く、重合はより遅く、および/または転化率はより低くなる原因である。
【0051】
装置10に結合された、またはそうでない場合、本発明の反応容器20に結合された外部触媒コンバータ30が一つ以上存在してよい。複数の外部触媒コンバータに対しては、これらのコンバータは互いに、直列、並列、または交互に配置されていてよく、ある外部触媒コンバータは接続されていてよいが、しかし必要になるまでは使用されなくてよい。例えば、大きなスケールでの製造中に1つのコンバータ30の性能が、利用できる触媒16の表面領域において低下した場合、反応混合物の流れを次のコンバータに迂回および延長することができる。コンバータの各々は不活性ガス14で別々にパージされてよく、反応を推進し、より好ましくない副反応を低下するために反応容器20と調和する反応条件を作っていくことができる。好ましくは、本発明の方法100、200、300、400は、副反応を低下し、高い収率および予測可能な結果を図るために不活性雰囲気中で実施されてもよい。従って、反応容器20、外部コンバータ30、およびそれらに取り付けられた任意の構成要素は、本発明の実施形態に従った1つ以上の反応を開始する前に、非反応性ガス14、すなわち不活性ガスで充分にパージされてもよい。従って、方法100、200、300、400は好ましくは実質的に酸素の非存在下で実施されてよい。すなわち、反応容器20および外部触媒コンバータ30は、反応剤の添加および重合工程の開始の前に非反応性および/または不活性ガス14でパージされてよい。そのようなガスとしては、例えばアルゴンまたは窒素を挙げることができる。また、反応容器は、本発明の方法100、200、300、400が実施される間、非反応性ガスで連続してパージされてよい。同様に、反応は実質的に真空下、正圧下、またはそうでない場合、酸素に対して不浸透性である閉鎖された制御容積下で実施されてよい。
【0052】
一般的に温度が高いほど本発明の反応は速度が速い。しかしながら、当該技術分野での最近の欠点として、反応混合物の温度が高い場合、反応を通じた制御がより劣るということが挙げられる。従って、例えば、外部触媒コンバータ30および1つ以上の熱交換器50を含めて本発明の様々な実施形態は、反応混合物の温度に関して充分に制御することが容易である。本発明の方法は制御されたより低い温度で常に正確に行なわれることができる。従って、本発明の最終ポリマー生成物は、温度が制御されることで発熱の制御、副反応速度の低下、および予測可能な/高い収率での大きなスケール反応が促進されるので最近の欠点を解決する。反応混合物の温度は任意の望ましい範囲に維持されうる。好ましくは、温度は40℃付近またはそれ未満に保たれてよい。特に、本発明は約6−7℃まで低い温度で実施されてよい。方法100、200、300、および400の最適な温度は、例えばモノマー、溶媒、触媒、およびポリマー生成物の仮想の分子量によって決まりうる。
【0053】
外部コンバータ30は反応の制御を大変容易にするので、熱交換器50も本方法および装置と共に包含されてよい。例えば、熱交換器50は外部コンバータ30に結合されてよい。熱交換器50は発熱を低下するための主たる接触面であってよく、外部コンバータ30は熱交換器50に取り付けられ、またはそうでない場合、熱交換器が装備されていてよい。同様に、反応容器20は熱交換器50が装備されていてよい。方法100、200、300、および400の内の1つ以上は、反応装置10内の1つ以上の熱交換器50を用いて実施されてよい。これは、反応剤および反応混合物からの効率的な発熱除去を促進することができ、そうでなければ、熱的に不安定な反応体の劣化、沸点の低い溶媒、モノマー、または反応剤の沸騰、または溶媒および/または反応剤がガラス器、凝縮器60、および/またはガス入口/出口82/84内で沸騰する暴走反応を生じる可能性がある。熱交換器50は反応混合物を選択された温度範囲内に維持するのに役立つことができる。温度を選択された温度範囲内に維持することは、反応容器20中の反応剤の比を一定に維持しながら転化への反応を容易にする。1つ以上の熱交換器50は、外部コンバータ30、反応容器20、およびこれらの組合せと併用されてよい。それ自体、反応混合物の温度は反応シークエンス全体を通して所望の境界範囲内で制御されうる。
【0054】
方法100、200、300、および400で使用される触媒16は、原子移動平衡の位置、ドーマントと活性種との間の交換についての動力学を決定するのに寄与できる。従って、使用される触媒16は好ましくは優れた電子供与体でなければならない。触媒16は当該技術分野において公知である、例えば、Cu(0)、Cu2S、Cu2Te、Cu2Se、Mn、Ni、Pt、Fe、Ru、Vおよびこれらの組合せなどであってよい。同様に、他の触媒、例えば、Au、Ag、Hg、Rh、Co、Ir、Os、Re、Mn、Cr、Mo、W、Nb、Ta、Zn、およびこれらの1種以上を含む化合物などは本方法で使用されてよい。1つの特に有効な触媒は、元素銅金属およびその誘導体である。
【0055】
触媒16は1つ以上の形態を取ってよい。例えば、触媒16は、 線、メッシュ、スクリーン、削りくず、粉末、管組織、ペレット、結晶、または別の固体形態であってよい。触媒表面は先に開示された1種以上の金属、または金属合金であってよい。より具体的には、触媒16は、銅線、銅メッシュ、銅スクリーン、銅削りくず、銅粉末、銅網、銅焼結体、銅フィルター、銅スライバー、銅管、銅結晶、銅ペレット、非反応性材料への元素銅のコーティング、およびこれらの組合せの形態であってよい。
【0056】
本方法の反応の開始(活性化)ステップは、元素触媒電子供与体(または他の供与体種)から電子受容体開始剤への単電子移動に介在されうる。重合条件下では、触媒16誘導体は不均化し、従って、触媒反応におけるそれらの役割は、それらの不均化速度と単電子移動による直接の活性化との間の比によって決定されうる。触媒16は外部触媒コンバータ30中に固体形態で保持され、従って何度も繰り返して使用されうる。
【0057】
触媒16は、双極性非プロトン溶媒中で溶解性および不均化が良好な優れた還元剤であることが望ましい。触媒16は固体形態であり、最も望ましくは、触媒16は外部触媒コンバータ30内に保たれているので、本方法の反応は、さらに他の反応で使用して最終生成物を製造するために行う精製がより容易で、より効率的である。また、固体の外部触媒を用い、例えば流量、露出時間、および触媒の表面積を制御することで、反応混合物と触媒との接触のための表面領域を最大化し、およびこの表面領域の制御を可能にする。従って、反応混合物はより効率的におよび容易に触媒(良好な分散)と相互作用することができ、同時に理想的な反応条件(発熱の低下)を推進することができる。触媒濃度が低いので、触媒残留物を除去するためのさらなる精製を必要とせずにポリマーを使用することができる。
【0058】
また、方法100、200、300、および400には、金属触媒をより高い酸化状態で利用可能になるようにその触媒を可溶化できるまで抽出する助けになりうる配位子、例えば窒素含有配位子が存在することができる。従って、分子レベルで本反応混合物の様々な成分の混合を促進するのに役立つ可能性があるという意味で、配位子は重合反応を推進することが望ましい。広範囲の様々な窒素含有配位子は本発明で使用するのに適している。これらの化合物としては、第1級、第2級、および第3級アルキルまたは芳香族アミン、さらには直鎖、分岐鎖、または樹枝状ポリアミンであってよいポリアミンおよびポリアミドが挙げられる。本発明で使用するのに適した配位子としては、1つ以上の窒素、酸素、リンおよび/または硫黄原子を有してシグマ結合により遷移金属に配位できる配位子、2つ以上の炭素原子を含有してパイ結合により遷移金属に配位できる配位子が挙げられる。例えば適した配位子としては、トリス(2−ジメチルアミノエチル)アミン(Me6−TREN)、トリス(2−アミノエチル)アミン(TREN)、2,2−ビピリジン(bpy)、N,N,N,N,N−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)、および多くの他のN−配位子を挙げることができる。
【0059】
配位子は、好ましくは遷移金属のレドックス共役物、すなわち、遷移金属のより高い酸化状態にあるものと可溶性錯体を形成することができ、成長ラジカル鎖の失活において活性な錯体を形成して、この失活はポリマー生成物の狭い分子量分布に寄与できる。
【0060】
本方法の開始剤はフリーラジカル反応を開始することができ、従って、反応容器20中における成長ポリマー鎖の数に対する寄与因子と考えられてよい。適した開始剤としては、例えばハロゲン含有化合物が挙げられる。開始剤の例としては、クロロホルム、ブロモホルム、ヨードホルム、四塩化炭素、四臭化炭素、ヘキサハロゲン化エタン、モノ、ジ、およびトリハロアセテート、アセトフェノン、ハロゲン化アミド、およびナイロンのようなポリアミド、ハロゲン化ウレタンおよびポリウレタン、それらのブロックコポリマー(RO)など、ハロゲン化イミド、アセトン、およびATRPおよびSET−LRPなど金属が触媒作用する従来のリビングラジカル重合で機能することが示されている任意の他の開始剤が挙げられる。広く様々な開始剤が本発明で使用するのに適している。ハロゲン化化合物は特に本発明で使用するのに適合している。これらの開始剤としては式:R−X(ここで、Xはハロゲンであり、RはC1−C6アルキルである)で表される化合物が挙げられる。例えば開始剤としては、ジエチルメソ−2,5−ジブロモアジペート;ジメチル2,6−ジブロモヘプタンジオエート、エチレングリコールビス(2−ブロモプロピオネート);エチレングリコールモノ−2−ブロモプロピオネート;トリメチロールプロパントリス(2−ブロモプロピオネート);ペンタエリスリトールテトラキス(2−ブロモプロピオネート);2,2−ジクロアセトフェノン;メチル2−ブロモプロピオネート;メチル2−クロロプロピオネート;N−クロロ−2−ピロリジノン;N−ブロモサクシンイミド;ポリエチレングリコールビス(2−ブロモプロピオネート);ポリエチレングリコールモノ(2−ブロモプロピオネート);2−ブロモプロピオニトリル;ジブロモクロロメタン;2,2−ジブロモ−2−シアノアセタミド;α,α’−ジブロモ−オルト−キシレン;α,α’−ジブロモ−メタ−キシレン;α,α’−ジブロモ−パラ−キシレン;α,α’−ジクロロ−パラ−キシレン;2−ブロモプロピオン酸;メチルトリクロロアセテート;パラ−トルエンスルホニルクロリド;ビフェニル−4,4’−ジスルホニルクロリド;ジフェニルエーテル−4,4’−ジスルホニルクロリド;ブロモホルム;ヨードホルム;四塩化炭素;およびこれらの組合せを挙げることができる。ある実施形態では、開始剤はアルキル、スルホニル、または窒素ハライドであってよい。また、この窒素ハライドはハロゲン化ナイロン、ペプチド、またはタンパク質であってよい。あるいは、活性ハライド基を含有するポリマー、例えばポリ塩化ビニル、クロロメチル基を含有するポリマーおよびコポリマー、また例えばポリクロロメチルスチレンは開始剤として使用されうる。
【0061】
溶媒は、例えば、反応混合物の粘度を低下し、配位子の転化率を増加し、および触媒の高速不均化を促進して超高速重合を容易にするために本発明で導入されてよい。さらに、溶媒は連鎖移動、副反応、または触媒の被毒を防ぐために非反応性でなければならない。本方法の好ましい溶媒としては、双極性、プロトン性、または非プロトン性溶媒が挙げられる。一部の好ましい溶媒としては、水、アルコール、天然または合成ポリマー状アルコール、双極性非プロトン性溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、イオン性液体、またはこれらの混合物が挙げられる。例えば、そのような溶媒としては、H2O、MeOH、EtOH、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、テトラエチレングリコール、グリセリン、HEMA、フェノール、DMSO、DMF、DMAc、NMPなど、イオン性液体、エチレンカーボネート、およびプロピレンカーボネートを挙げることができる。適したアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、および第3級ブタノール、グリセリン、ならびにOH基を有する他の天然および合成ポリマーが挙げられる。溶媒または選択された溶媒ブレンドは、反応中にポリマー生成物を沈殿させないことが望ましい。
【0062】
方法100、200、300、および400で使用されるモノマーは、最終ポリマー生成物の構成ブロックとして役割を果たしてもよい。適したアルケンモノマーとしては、アクリレート、ハロゲン化アクリレート、メタクリレート、ハロゲンで置換されたアルケン、アクリルアミン、メタクリルアミド、ビニルスルホン、ビニルケトン、ビニルスルホキシド、ビニルアルデヒド、ビニルニトリル、スチレン、ならびに電子吸引性置換基を含有する任意の他の活性化および非活性化モノマーが挙げられる。これらのモノマーは置換されていてよい。ある実施形態では、モノマーは任意に別の酸化状態へ金属触媒が不均化するのを支援する官能基を含む。官能基としてはアミド、スルホキシド、カルバメート、またはオニウムを挙げることができるが、これらに限定されない。ハロゲンで置換されたアルケンとしては、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、トリフルオロクロロエチレン、またはテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびフッ素化ビニルエステルが挙げられる。これらのモノマー組合せを使用することができる。モノマーのブレンドは本発明の実施形態を用いて重合されてよい。モノマーは反応容器中でブレンドされてよい。例として、ある種のアクリレートが類似の反応性を示すのでアクリレートモノマーのブレンドが本発明の方法で使用されてよく、従って、末端生成物は優れた予測可能性を有することができる。2種のコポリマーブレンド、2種のホモポリマーブレンド、および少なくとも1種のコポリマーおよび少なくとも1種のホモポリマーの組合せのような最終ポリマー生成物のブレンドは、望まれるようにブレンドされてよい。さらに、ブレンドされたポリマーを最終生成物として製造することができる。ブレンドされたコポリマーはガスケット装備具で優れた耐油性を提供および推進できるので、ブレンドされたポリマー生成物はブレンドされていないものより好ましい可能性がある。具体的には、モノマーとしては例えば、アルキル(メタ)アクリレート;アルコキシアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロニトリル;塩化ビニリデン;スチレン系モノマー;アルキルおよびアルコキシアルキルフマル酸エステルおよびマレイン酸エステルならびにそれらの半エステル;ケイ皮酸エステル;およびアクリルアミド;N−アルキルおよびアリールマレイミド(メタ)アクリル酸;フマル酸;マレイン酸;桂皮酸;およびこれらの組合せの1種以上であってよい。より具体的には、本発明の実施形態でポリマーを作製するために使用されるモノマーとしては、特定の種には限定されないが様々なモノマー、例えば(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、第3級ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、トルイル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−アミノエチル(メタ)アクリレート、−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸−エチレンオキシド付加物、トリフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、2−トリフルオロメチルエチル(メタ)アクリレート、2−ペルフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、2−ペルフルオロエチル−2−ペルフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、2−ペルフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペルフルオロメチル(メタ)アクリレート、ジペルフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、2−ペルフルオロメチル−2−ペルフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、2−ペルフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、2−ペルフルオロデシルエチル(メタ)アクリレートおよび2−ペルフルオロヘキサデシルエチル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸モノマー;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、スチレンスルホン酸およびこれらの塩のようなスチレン系モノマー;ペルフルオロエチレン、ペルフルオロプロピレンおよびフッ化ビニリデンのようなフッ素含有ビニルモノマー;ビニルトリメトキシシランおよびビニルトリエトキシシランのようなシリコン含有ビニルモノマー;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステルおよびジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸モノアルキルエステルおよびジアルキルエステル;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミドおよびシクロヘキシルマレイミドのようなマレイミドモノマー;アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルのようなニトリル含有ビニルモノマー;アクリルアミドおよびメタクリルアミドのようなアミド含有ビニルモノマー;ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルピバレート、ビニルベンゾエートおよびビニルシンナメートのようなビニルエステル;エチレンおよびプロピレンのようなアルケン;ブタジエンおよびイソプレンのような共役ジエン;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコールなどが挙げられる。上記モノマーは、単独で、連続的に、または組合せで使用されてよい。生成物の物理的特性の望ましさからは、好ましくは1種以上のモノマー類であってよい。
【0063】
図9、10、および11に関して、本方法100、200、300、および400の中間体ジハロ生成物は官能基化され、鎖長の成長のために再開始され、またはブロック−コポリマーのための構成ブロックとして使用されてよい。図9は、反応シークエンスのステップに関して一般の段階的な指針を提供する。図9は、本明細書で検討のための一般的な参照手段を提供できるが、それはまた、最終ポリマー生成物をさらに反応させるために追随でき、この後の実施例の欄に関して使用可能な様々な経路を図によって示す。重合が完結した時点で、本方法は、ポリマー上に少なくとも1つの官能性末端基を形成するために得られたポリマーをさらに反応させることを含んでいてよい。中間体生成物の官能基は、1種以上の最終生成物に転化されうる多重用途の末端生成物を作製する。次いで、最終生成物は望まれるように様々な市販生成物または手段に組み込まれてよい。反応を止めたり、工程を停止させるために強力な求核試薬が反応混合物に添加されてよい。そのような求核試薬としては、例えばチオレート、アミン、アジド、カルボキシレート、アルコキシド、およびナトリウムカルボキシレートが挙げられる。鎖の安定性および品質を維持しながら反応を停止させるために、望まれるように1つまたは組合せの求核試薬を使用することができる。ポリマー上に官能性基末端を、例えば末端キャピング反応または置換反応のいずれかを実施することによって作製することができる。
【0064】
図11に示されるように、末端キャッピング反応520によって最終生成物ポリマーを官能基化するために、初期反応の終了時、完了の前に必要なステップを応容器中、イン・サイチューで実施することができる。少なくとも1つのポリマー末端に対して末端キャッピング官能基化を実施するために、以下のステップ:最終ポリマー生成物を提供する510ステップ、キャッピング剤を容器に添加する522ステップ、反応を停止する514ステップ、およびキャップされたポリマー生成物を精製する516ステップを含む。
【0065】
キャッピング剤としては、鎖の安定性および品質を維持しながら所望の官能性末端基で最終生成物の末端基をキャップするために、望まれるような化合物の1つまたはその組合せを挙げることができる。例えばキャッピング剤としては、2アリルアルキルエタノール、アリルアルコール、アリルグリシジルエーテル、1−6ヘプタジエン、シクロオクチルジエン、ノルボルナジエン、およびSET−LRP条件下ではホモポリマーを形成しないという公知の傾向を有する他のオレフィンを挙げることができる。
【0066】
停止ステップとしては、例えば酸素、または末端停止剤を用いた反応停止を挙げることができる。
【0067】
得られたキャップ化したポリマー生成物の精製ステップとしては、最終ポリマー生成物からの触媒除去を挙げることができる。精製は、最終生成物を含む反応混合物をアルミナカラム、シリカカラム、活性炭、銅捕捉基を有する架橋ポリマーに通すこと、または銅キレート基を有する材料で反応混合物を処理することにより実施されうる。
【0068】
図10に示されるように、最終生成物を置換反応によって官能基化するために以下のステップ:最終ポリマー生成物を提供する510ステップ、反応を停止する514ステップ、反応混合物を精製する516ステップ、ポリマー中間体のハロゲン原子を求核試薬で置換する518ステップ、および置換されたポリマー生成物を精製する516ステップを含んでいてよい。
【0069】
停止ステップとしては、例えば反応を酸素、または末端停止剤で停止することを挙げることができる。
【0070】
反応混合物の精製ステップとしては、最終ポリマー生成物からの触媒除去を挙げることができる。精製は、最終生成物を含む反応混合物をアルミナカラム、シリカカラム、活性炭、銅捕捉基を有する架橋ポリマーに通すこと、または銅キレート基を有する材料で反応混合物を処理することにより実施されうる。
【0071】
ハロゲン原子の置換のための求核試薬としては、例えばホスフィン、チオレート、アミン、アジド、カルボキシレート、アルコキシド、およびナトリウムカルボキシレートを挙げることができる。
【0072】
最終精製ステップとしては、最終生成物を含む反応混合物をアルミナカラムに通すことを挙げることができる。また、本方法は、コポリマーおよび/またはブロックコポリマーの形成を含む。従って、本方法は、容器に最初に充填されたモノマーとは異なるモノマーを逐次的に添加するステップ、および所望の転化率レベルに達するまで(b)から(d)のステップを繰り返すステップを含む。反応容器中で第1の反応が所望の転化率レベルにまで進行した後、異なったモノマーが反応容器に添加されてよい。この反応は異なったモノマーブロックの構成を進める。代案として反応が所望の転化率レベルに達した後、反応は停止および精製されてよい。次いで新たな配位子および触媒を備えた装置10に、ジハロポリマー生成物が第2のモノマーと共に使用されてよく、このジハロポリマー生成物は逐次重合のためのマクロ開始剤としての役割を果たすことができる。得られたポリマーは1種以上の様々な形態を取るブロックコポリマーであってよい。これらの形態としては、例えばテレケリックポリマー(官能基化末端基を有するポリマー)および/またはブロックコポリマーを挙げることができる。
【0073】
本発明の方法の最終生成物としては、例えばブロック、ランダム、統計上周期的な、勾配星型、グラフト、くし型、(超)分岐鎖または樹枝状ポリマーといった形状を取りうるホモポリマーおよび/または(コ)ポリマーが挙げられる。従来の用語の括弧でくくられた接頭語「(コ)」は選択肢であり、すなわち(コ)ポリマーはコポリマーまたはホモポリマーを含むポリマーを意味する。同様に本明細書で用いる場合、「(超)」は、低度の分岐に比べてコポリマー骨格に沿った比較的高度の樹枝状様の分岐を意味する。
【0074】
本発明は、周期的または交互コポリマーを調製するために使用されてよい。本発明の方法は、特に、モノマーの1つが1つまたは2つの嵩高い置換基を有する交互コポリマーを製造するのに役立つことができ、立体上の理由が存在するために前記モノマーからホモポリマーを製造するのが難しい可能性がある。電子供与性および電子受容性のモノマーの共重合は、大部分が交互モノマー構造を有する生成物を形成することになる。
【0075】
いわゆる「交互」コポリマーは、本発明の方法100、200、300、および400を用いて製造されうる。「交互」コポリマーは、電子供与性を有する1種以上のモノマーと電子受容型の性質を有する1種以上のモノマー(アクリレート、メタクリレート、不飽和ニトリル、不飽和ケトンなど)との共重合によって製造される。また、本発明のランダムまたは交互コポリマーは、任意の発明のブロック、星型、グラフト、くし型または超分岐コポリマーにおけるブロックとしても役割を果たすことができる。
【0076】
末端生成物は、分子量、多分散、単峰性の分子量分布などの1つ以上によって特徴付けられてよい。本発明の方法の1つ以上は、分子量2,000から20,000,000g/モルのポリマー生成物を与えることができる。また、ポリマー生成物は単峰性のポリマー分子量分布を有する。さらに、またポリマー生成物は約1.01から約2の多分散性を有してよい。ある実施形態では、本明細書に記載された方法によって製造されたポリマーは少なくとも約500の数平均分子量を有する。さらに別の実施形態では、ポリマーは少なくとも1,000,000の数平均分子量を有する。
【0077】
本発明は、好ましい実施形態と関連付けながら説明されてきたが、当業者であれば添付の請求項で定義される本発明の基本的な性質および範囲から逸脱することなく、様々な変更が行なわれてよいことを理解できると考えられる。本明細書で開示されたあらゆる実施形態は、他の特徴と組合せて使用されてよい。
【実施例】
【0078】
重合反応器の説明
図12に模式的に示されている反応器の装置は、機械的攪拌器(A)、サーモカップル(B)、アルゴンパージおよび真空破壊ライン(C)、IR光学的導光によって遠隔FTIR分光光度計に接続されたATR赤外検出器プローブ(D)、およびドライアイス凝縮器(E)が取り付けられた2重壁の3リットルのガラス反応器を含む。重合混合物は内部の容器に含まれる一方、反応発熱の制御を補助するために循環冷却液(F)がポンプで外部の室を通して送られた。反応器は、触媒上で重合反応を開始してモノマーおよび重合混合物をこの触媒を通してポンプ(I)で送って重合反応を持続することができるように、固体(例えば、銅)触媒(H)を含む外部のスチール室(G)に接続された。また、反応器には真空/排気ライン(J)に接続されたドライアイス凝縮器が取り付けられた。図12は、SET−LRP反応のための反応器の装置の概略図を示し、図1および6ならびにこれらの説明と相互参照することができる。
【0079】
本実験装置では、発熱重合反応中に混合物を外部の触媒室に通すポンプ速度を変えることによって、反応温度を便利に正確に制御することが可能であった。流量を低下させることによって重合速度は遅くなり、温度は低くなった。完全に流れを止めて重合反応を一時的に停止することができる。対照的に、触媒表面上の流れを増加すると重合速度が増加し、温度が上がる。得られるポリマーの構造または組成、または重合方法のリビング性に悪影響を与えずに要望通り工程の間に流量を変化させ、任意の回数止めることができる。赤外線プローブは、アクリレート二重結合の消失による1637cm−1での吸光度変化をモニターすることによって、平均モノマー消費量をリアルタイムに測定することを可能にした。
【0080】
実施例1.(DG 320205−W)
DMSO中の9Kジブロモ末端停止ポリ(メチルアクリレート)の合成
【0081】
【化1】
【0082】
外部の触媒室(実施例1に記載するように取り付けた)を有する3Lの重合反応器に、メチルアクリレート(959.90g;11.15モル)、DMSO(277.8g)およびトリス(2−メチルアミノエチル)アミン(0.638g;11.11ミリモル)を添加した。次いで、この反応混合物を攪拌し、3℃に冷却し、30トールで45分間、アルゴン流通パージ下で排気した(またはアセトンおよびドライアイスの混合物を含む、塔頂部のドライアイス・コールドフィンガーで反応がわずかに還流するまで)。真空をアルゴンで破壊し、大気に対してわずかにアルゴンの正圧下で、ジエチルメソ−2,5−ジブロモアジペート(40.00g;0.11モル)を添加した。得られた混合物を攪拌し、30トールで20分間、アルゴン流通パージ下で排気し、この段階ではアジペートは完全に溶解した。真空をアルゴンで破壊した。次いで、攪拌混合物をポンプで400mL/分の速度で、40.6×8.9×0.03cm3の寸法を有する30×30メッシュ銅スクリーンのロールを含有する外部の触媒室に通した。
【0083】
誘導期間0.6時間の後、反応温度およびモノマー転化率は急激に上昇し始めた(図13)。ポンプを1.2時間動かした後、反応温度およびモノマー転化率は、それぞれ26℃および20%に増加した。この時、触媒ポンプを止め、ほとんどすぐに反応発熱は低下し、モノマーの消費は止まった。さらに0.3時間後、攪拌混合物の温度は9℃に下がり、ポンプを再び動かした。重合反応はすぐに再開した。ポンプをさらに0.5時間動かした後(200ml/分)、反応温度およびモノマー転化率は、それぞれ41℃および36%であった。触媒ポンプを再度止め、再びほとんどすぐに反応発熱は低下し、モノマー消費は止まった。触媒ポンプの始動および停止を3回および4回行なったとき(400ml/分)、反応発熱およびモノマー転化が再開始し、そしてそれに応じて最終モノマー転化率98%を達成するまで発熱および転化は減少した。結果を図13にグラフで示し、開始剤の添加を0時間(t=0)で示す。
【0084】
一定分量の粗反応混合物(100g)をジクロロメタン(208g)に溶解し、圧力下に、ステンレススチールの圧力フィルターに含まれている中性アルミナのベッドによりろ過した。ろ液を水で洗浄(3×100mL)し、無水硫酸マグネシウム(20g)上で乾燥し、ろ過して減圧下(11トール、50℃)で溶媒を除去し、ジブロモ末端停止ポリマーを粘性の液体(30.86g;収率40%)として得た。
【0085】
ポリマーの構造をクロマトグラフ分析および分光分析によって確認した。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC:THF;1mL/分;RI検出器;PMMA較正)は、11,900の数平均分子量(Mn)および1.11の多分散性を示した。これらの値は、8,900の理論Mnおよび約1.01のポアソン分布に密接に対応する。1H−NMRスペクトル(300MHz;CDCl3)は、ジブロモ末端停止ポリマーに特有の3つのシグナル:(a)δ4.23、t、[−CH(COOR)Br];(b)δ4.12、q、(−OCH2−Me);および(c)δ3.64、s、[−C(O)−OCH3]を示す。これらのシグナルの積分は、末端基/開始剤フラグメント比[(b)/(a)]が2および平均重合度、DPave、[2/3(c)/(a)]が111であることを示す。この値は、相関関係:
DPave=[M]/[I](fconv)+重合開始剤のMW
(ここで[M]/[I]は重合開始剤に対するモノマーのモル比であり、fconvはモノマー転化率を表す)から予測される対応する理論値の103に非常に近い。この結果は、実験誤差の限界内でポリマーが完全に2官能性であることを示す。図13は、外部の触媒室を使用した、制御された断続的なポンプ操作によるメチルアクリレート重合の時間−温度および転化率プロファイルを示す。
【0086】
この実験は、重合するモノマーを外部の触媒室を通して断続的にポンプ操作することで、本重合方法のリビング性に悪影響を及ぼすことなく反応発熱を制御できることを明確に証明する。反応はほとんどすべて、外部の室中に含まれた固体触媒表面、または表面近辺で起き、触媒から離れた反応媒体中では比較的起きない。本方法によって、揮発性モノマー、メチルアクリレートの迅速な重合を低い温度および高い転化率で達成した。さらに、多分散性が低くおよび理論値と実験値の分子量がほとんど同じであることは、本方法がリビングであることを支持している。
【0087】
実施例2.(DG 311370−2)
17Kジブロモ末端停止5/3/2 EA/MEA/BAターポリマーの合成
【0088】
【化2】
【0089】
上記の3L重合反応器にエチルアクリレート(854.4g;8.58モル)、2−メトキシエチルアクリレート(666.3g;5.12モル)、n−ブチルアクリレート(437.5g;3.41モル)、ジメチルスルホキシド(DMSO;541.5g;6.93モル)およびトリス(2−メチルアミノエチル)アミン(1.356g;5.89ミリモル)(Me6−TREN;M.CiampoliniによってInorg.Chem.1966,5(1),41に記載されたように製造した)を添加した。反応混合物を攪拌し、10℃に冷却し、20トールで45分間、アルゴン流通パージ下で排気した。真空をアルゴンで破壊し、大気に比べてわずかにアルゴンの正圧下、ジエチルメソ−2,5−ジブロモアジペート(42.38g;0.118モル)を添加した。得られた混合物を攪拌し、20トールで30分間、アルゴン流通パージ下で排気し、この段階ではアジペートは完全に溶解した。次いで、攪拌混合物をポンプで400mL/分の速度で、43.7×7.6×0.03cm3の寸法を有する30×30メッシュ銅スクリーンのロールを含有する外部の触媒室に通した。2時間後、ポンプ流量を200mL/分に低下し、反応溶液は緑色を発現した。次の1.5時間で反応温度は40℃に増加し、重合反応が起きるにつれてアクリレートの二重結合に基づく〜1637cm−1でのIR吸光度が減衰するのを観察した。触媒ポンプを停止し、反応はただちに劇的に遅くなり、〜1637cm−1でのIR吸光度が示すように20分以内に停止した(転化率:75.4%)。15.2×2.5×0.03cm3の寸法を有する30×30メッシュ銅スクリーンを反応に入れた。反応混合物を23℃に冷却し、その温度でさらに13時間維持し、>99%のモノマー消費を観察した(IRスペクトルにおける1635cm−1での吸光バンドの消失)。粗ポリマー混合物を5リッター容器に移し、ジクロロメタン(2.5L)で希釈し、圧力下、ステンレススチール圧力フィルターに含まれる中性アルミナベッド(1kg)に通した。ジクロロメタンおよび一部のDMSOを減圧下(11トール、50℃)で除去し、粗ジブロモ末端停止ターポリマーを粘性の液体(1.876g;83重量%のジブロモ末端停止ポリマーおよび17重量%のDMSO;73%の推定ポリマー収率)として得た。生成物の構造および組成を、以下の説明の赤外線および1H−NMR分光法ならびにサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で確認した。
【0090】
IR(ATRモード):IRでアクリレート二重結合に関係する@〜1661cm−1および〜1637cm−1のピークが消失したことを確認する。
【0091】
1H−NMR(300MHz;CDCl3):δ4.28、t、δ3.90−4.30ピークの肩[−CH(COOR)Br];δ3.90−4.30、350H(−OCH2);δ3.53、m、103H(−CH2OMe);δ3.32、s、148H(−OCH3);δ2.29、幅広m、178H{主鎖α−メチン[−CH(COOR)CH2]n};δ1.26−1.97、m、{主鎖β−メチレン[−CH(COOR)CH2]n、ブチルおよびアジペートの−CH2CH2−};δ1.21、t、(エチルの−CH3);δ0.90、t、92H。
【0092】
SEC(THF;1mL/分;RI検出器):平均Mn(PMMA較正)=19,800;多分散性=1.24(単峰性の分布);Mn(理論)=17,100。
【0093】
実施例3.(RC 316919)
アクリレート末端官能基化17Kポリアクリレートターポリマーの合成
【0094】
【化3】
【0095】
機械的攪拌器および2重タービン翼、サーモカップル、還流凝縮器ならびに加熱マントルを取り付けた5Lのガラス反応器に、4−メトキシフェノール(0.32g;0.026モル)、実施例1のジブロモ末端停止アクリレートターポリマー(1,546.00g)およびDMSO(2,319g)を添加した。混合物を攪拌し、45℃で約1時間加熱してポリマーを溶解し、その後、粉砕ナトリウムアクリレート(73.45g;0.78モル)を添加した。加熱および攪拌をさらに144時間続けた。セライト(45g)を添加し、混合物を25分間攪拌し、圧力下でろ過した。ろ液を蒸留フラスコに移し、回転エバポレーターで772gのDMSOを除去(70℃、〜20トール)して濃縮した。濃縮溶液を機械的攪拌器が取り付けられた12Lフラスコに移し、3.3Lのジクロロメタンで希釈し、3×3.3Lで水洗した。ジクロロメタン溶液を30分間、2,000rpmで遠心分離機にかけ、残余の水を分離した。硫酸マグネシウム(150g)を添加し、混合物を圧力下でろ過し、溶媒を減圧下で除去して、鎖末端で置換されたアクリレート基を有するわずかに濁った液体ポリマーを得た(1,202g;収率78%)。ポリマーの構造および組成を、以下の説明の赤外線および1H−NMR分光法ならびにサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で確認した。ポリマー鎖当たりの末端アクリレート基の平均個数をNMRスペクトルから1.9であると推定した。
【0096】
IR(ATRモード):1727cm−1のポリアクリレートのエステルカルボニル
【0097】
1H−NMR(300MHz;CDCl3):δ6.45、d、2H(C1末端アルケン;シソイド);δ6.15、m、1H(C2末端アルケン);δ5.90、d、2H(C1末端アルケン;トランソイド);δ5.00、m、2H(C4メチン、α−エステル);δ3.90−4.30、m、309H(−OCH2−)(NMRスペクトルからの推定平均Mn=18,200)。
【0098】
SEC(THF;1mL/分;RI検出器):平均Mn(PMMA較正)=20,600;多分散性=1.30(単峰性の分布)。
【0099】
実施例4.(DG 311388)
30Kジブロモ末端停止5/3/2 EA/MEA/BAターポリマーの合成
上記の3L重合反応器に、エチルアクリレート(431.3g;4.31モル)、2−メトキシエチルアクリレート(336.6g;2.58モル)、n−ブチルアクリレート(220.8g;1.72モル)、ジメチルスルホキシド(DMSO;273.4g;3.50モル)およびトリス(2−メチルアミノエチル)アミン(0.428g;1.86ミリモル)を添加した。反応混合物を攪拌し、10℃に冷却し、20トールで45分間、アルゴン流通パージ下で排気した。真空をアルゴンで破壊し、大気に比べてわずかにアルゴンの正圧下、ジエチルメソ−2,5−ジブロモアジペート(13.36g;0.0371モル)を添加した。得られた混合物を攪拌し、20トールで30分間、アルゴン流通パージ下で排気し、この段階ではアジペートは完全に溶解した。次いで、攪拌混合物をポンプで500mL/分の速度で、38.6×17.8×0.03cm3の寸法を有する30×30メッシュ銅スクリーンのロールを含有する外部の触媒室に通した。反応は徐々に28.8℃に発熱し、次いで、11.7時間で徐々に25℃に冷え、この時点で、反応は転化率92.7%に達した(重合反応が起きるにつれてアクリレートの二重結合に基づく〜1637および1621cm−1でのIR吸光度が減衰するのを観察した)。ポンプを止め、次いで、一夜、低い濃度のCu(0)を連続して反応に供給するために、2.54×15.24×0.03cm3の寸法を有する30×30メッシュ銅スクリーンからなる触媒を反応器に入れた。さらに12.1時間後、IRが示すように反応は98.6%の転化率に達した(アクリレートの二重結合に関係する〜1637および1621cm−1のIR吸光度の消失)。
【0100】
実施例1に記載した粗ジブロモターポリマーを単離した(〜15%のDMSOを含む822グラムの粗ポリマー、82%のブロモ末端停止ポリアクリレートの収率)。SEC分析は、ターポリマーが30,200の数平均分子量(Mn)および1.13の多分散性(単峰性)を有することを示した。ポリマーの誘導結合プラズマ発光分光法(ICP−AES)による分析は、残留する銅濃度が1ppm未満であることを示した(この方法の検出限界以下)。
【0101】
実施例5.(RC 316928)
アクリレート末端官能基化30Kポリアクリレートターポリマーの合成
機械的攪拌器および2重タービン翼、サーモカップル、還流凝縮器を取り付けた0.5Lのガラスジャッケト付き反応器に、実施例4からのジブロモ末端停止アクリレートターポリマー(156.40g)、DMSO(242.6g)および4−メトキシフェノール(0.051g)を添加した。混合物を攪拌し、45℃で約1時間加熱してポリマーを溶解し、その後、粉砕ナトリウムアクリレート(4.87g;0.052モル)を添加した。加熱および攪拌をさらに96時間続け、この時点で反応混合物を23℃に冷却し、ジクロロメタン(1,620g)で希釈し、セライトのベッドによりろ過して不溶の塩を除去した。ろ液を3×1.0Lで水洗したが、毎回水洗後に有機相と水相の分離を加速するために遠心分離機を使用した。有機フラクションを硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過し、溶媒を減圧下で除去して、必要なアクリレート末端停止ターポリマーを黄色の粘性の液体として得た(102.54g;67%)。ポリマーの構造および組成を以下に説明する1H−NMRおよびSEC分析によって確認した。ポリマー鎖当たりの末端アクリレート基の平均個数をNMRスペクトルから1.8であると推定した。
【0102】
1H−NMR(300MHz;CDCl3):δ6.45、d、2H(C1末端アルケン;シソイド);δ6.15、m、1H(C2末端アルケン);δ5.90、d、2H(C1末端アルケン;トランソイド);δ5.00、m、2H(C4メチン、α−エステル);δ3.90−4.30、m、534H(−OCH2−)(NMRスペクトルからの推定平均Mn=30,900)。
【0103】
SEC(THF;1mL/分;RI検出器):平均Mn(PMMA較正)=30,200;多分散性=1.15(単峰性の分布)。
【0104】
実施例6.(RC 316930)
メタクリレート末端官能基化30Kポリアクリレートターポリマーの合成
【0105】
【化4】
【0106】
機械的攪拌器および2重タービン翼、サーモカップル、還流凝縮器を取り付けた0.5Lのガラスジャッケト付き反応器に、実施例4からのジブロモ末端停止アクリレートターポリマー(156.40g)、DMSO(349.6g)および4−メトキシフェノール(0.051g)を添加した。混合物を攪拌し、45℃で約1時間加熱してポリマーを溶解し、その後、粉砕ナトリウムメタクリレート(5.60g;0.052モル)を添加した。加熱および攪拌をさらに96時間続け、この時点で反応混合物を23℃に冷却し、ジクロロメタン(750g)で希釈し、ろ過して不溶性固体を除去した。ろ液を3×1.0Lで水洗したが、毎回水洗後に有機相と水相の分離を加速するために遠心分離機を使用した。有機フラクションを硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過し、溶媒を減圧下で除去して、必要なメタクリレート末端停止ターポリマーを黄色の粘性の液体として得た(88.21g;59%)。ポリマーの構造および組成を以下に説明する1H−NMRおよびSEC分析によって確認した。ポリマー鎖当たりの末端メタクリレート基の平均個数をNMRスペクトルから1.7であると推定した。
【0107】
1H−NMR(300MHz;CDCl3):δ6.15、s、2H(C1末端アルケン);δ5.60、s、2H(C1末端アルケン);δ5.00、m、2H(C4メチン、α−エステル);δ3.90−4.30、m、554H(−OCH2−)(NMRスペクトルから推定された平均Mn=32,000)
【0108】
SEC(THF;1mL/分;RI検出器):平均Mn(PMMA較正)=29,900;多分散性=1.13
【0109】
実施例7.(DG 320212−W)
メタノール中での9Kジブロモ末端停止ポリ(メチルアクリレート)の合成
【0110】
【化5】
【0111】
外部の触媒室を有する(実施例1に記載したように取り付けた)3L重合反応器に、メチルアクリレート(959.90g;11.15モル)、メタノール(386.3g)およびトリス(2−メチルアミノエチル)アミン(2.56g;11.11ミリモル)を添加した。次いで、反応混合物を攪拌し、3℃に冷却し、50トールで45分間、アルゴン流通パージ下で排気した(またはアセトンおよびドライアイスの混合物を含む、塔頂部のドライアイス・コールドフィンガーで反応がわずかに還流するまで)。真空をアルゴンで破壊し、大気に比べてわずかにアルゴンの正圧下、ジエチルメソ−2,5−ジブロモアジペート(40.00g;0.11モル)を添加した。得られた混合物を攪拌し、45トールで20分間、アルゴン流通パージ下で排気し、この段階ではアジペートは完全に溶解した。真空をアルゴンで破壊した。次いで、攪拌混合物をポンプで400mL/分の速度で、40.6×8.9×0.03cm3の寸法を有する30×30メッシュ銅スクリーンのロールを含有する外部の触媒室に通した。1.2時間後、ジャケット温度を20℃に上げ、定常的な重合反応が約2時間に渡って起きた。この間、反応発熱は43℃がピークであり、赤外線スペクトルの1637および1621cm−1での吸光度ピークは、モノマー転化率85%に合わせて減少した。ジャケット温度を25℃に維持した。モノマー転化率が次の1.5時間で88%に増加した。一部の反応混合物(80.85g)を取り出し、この混合物に追加量のトリス(2−エチルアミノエチル)アミン(0.697g;3.03ミリモル)を添加した。反応をさらに4時間継続し、この時点でモノマー消費は>98%(粗ポリマー溶液)であった。
【0112】
一定分量のポリマー溶液(96g)を取り出し、溶媒を減圧下(11トール、50℃)で留去して粗ポリマー(69.9g)を単離した。ポリマー試料をジクロロメタン(208グラム)に溶解し、圧力下に、ステンレススチールの圧力フィルターに含まれている中性アルミナベッド(100グラム)によりろ過した。ろ過溶液を水で洗浄(3×100mL)し、無水硫酸マグネシウム(20g)上で乾燥し、ろ過して減圧下(11トール、50℃)で溶媒を除去し、ジブロモ末端停止ポリマーを非常に粘性の液体/準固体として得た(53.1g;76%の推定収率)。ポリマーの構造をNMRおよびIRスペクトル分析によって確認した。
【0113】
SEC(THF;1mL/分;RI検出器):平均Mn(PMMA較正)=11,883;多分散性=1.11。
【0114】
実施例8.(DG 320212)
ヒドロキシ末端官能性9Kポリ(メチルアクリレート)の合成
【0115】
【化6】
【0116】
実施例6の残りの粗ポリマー溶液に、追加量のトリス(2−メチルアミノエチル)アミン(0.62g;2.7ミリモル)および2−アリルオキシエタノール(95.8g;0.94モル)を添加し、さらに混合物を12時間、ポンプで外部の触媒室に通した。反応混合物をTHF(3L)で希釈し、中性アルミナベッド(1kg)により2回ろ過した。アルミナベッドを追加のTHF(1L)で洗浄し、合わせたろ液を減圧下で蒸発させて溶媒および残留する未反応2−アリルオキシエタノールを除去し、必要なジヒドロキシル末端停止ポリ(メチルアクリレート)を非常に粘性の液体(700g;63%の収率)として単離した。
【0117】
比較例1.
ATRPによるアクリレート末端官能基化20Kポリアクリレートターポリマーの合成
実施例2の記載と同じ割合のエチル、2−メトキシエチルおよびブチルアクリレートのアクリレート末端停止ターポリマーを、臭化第1銅を触媒として使用するCA特許第2,540,698号公報に記載の方法に従った原子移動ラジカル重合(ATRP)方法によって合成した。IRおよび1H−NMRは、この方法によって得られたポリマーが実施例3で得た生成物に構造上類似していることを示した。しかしながら、SEC分析は、2峰性の分子量分布、理論的に予測した値の20,000に近い低分子量成分(Mn=20,900)およびさらに高分子量成分(Mn=39,800)を約10/1の比で示した。この結果は、実施例3の結果とは対照的であり、SET−LRPによって製造された対応するポリマーは、Mn=20,600であり期待される値に近く、単一の分布を有することが判明した(図14)。この結果は、臭化第1銅触媒を使用するATRP法では、活性ラジカルの2分子カップリングにより少量だが顕著な量の不活性ポリマーが生成することを示している。この望ましくない副生物は、実施例3のSET−LRPによって製造された対応するポリマー中には存在しない。図14は、CA特許第2,540,689号公報に記載のATRPおよび実施例3のSET−LRPによって合成されたアクリレートターポリマーの対照的なSECクロマトグラム(THF;1mL/分)を示す。
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、制御されたモノマーラジカル重合の方法に関する。より具体的には、本発明は、とりわけ、ポリマー生成物の転化率が増加し、多分散性が低く、末端官能性が高く、および分子量分布が単峰性であるモノマーのリビングラジカル重合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の簡単な説明)
ポリマーを製造するのに経済的で効率的な方法が常に要求されている。原子移動ラジカル重合(以下、ATRPとも呼ぶ)は、ポリマーを形成するための方法を提供する。しかしながら、この方法は利用に当たって限界があり、この方法およびこの方法によって得られた最終生成物は共に欠点を有する。ATRPは、狭い範囲の開始剤を使った狭い範囲のモノマーに関して実施されることができる。また、ATRPは、典型的には例えば、Cu(I)塩触媒のような+1(またはM+1)、または他の低酸化状態金属による触媒作用を受ける。この重合工程は遅いので、この反応を推進するために長時間高い温度を維持すると共に、高い触媒濃度を必要とする。最終生成物ポリマーとしては官能性末端が望ましいが、ATRP触媒は不安定であることが可能であり、非官能性末端基の形成を伴う停止反応を促進することができる。従って、ATRPは一般に、非反応性末端基を有する一部の非官能性ポリマーを含む材料を与える。その結果、ATRPによって製造された典型的なポリマーは、鎖末端の10−15%の領域において終点を含み、より望ましくない機械的および材料性質ならびに特性を有する材料を与える可能性がある。生成物の分子量および多分散性指数は共に、ポリマー末端の早期の停止反応によって理論上数値から離れる。この結果としてレオロジー制御は劣り、および様々な応用および用途で不適合になることが多い。すなわち、ATRP方法では制御ができないので、構造上の欠陥、さらに望ましくない特徴および予測がより難しい特性を有するポリマー生成物が得られことになる。加えて、Cu(I)塩は空気中で不安定であり、取り扱いの注意が必要である。
【0003】
反応を推進するのに高い濃度の触媒を必要とするので、この方法は触媒を除去するのに広範で困難な精製が要求されることが多い。予側可能性および再現性を高めるために、ATRPは典型的には小さなスケールの反応で実施される。従って、当該技術分野で、効率的で効果的なラジカル重合方法、かつ望ましい性質、特性、および特徴を有する制御されたポリマー生成物を正確に、さらには大きなスケールレベルで
製造することができるラジカル重合方法に対する要求がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様は、制御されたラジカル重合を実施する方法を提供する。この方法は、(a)少なくとも1種のモノマー;前記モノマーのための少なくとも1種の溶媒;金属に配位することができる少なくとも1種の化合物;および少なくとも1種の開始剤;の混合物を反応容器に充填するステップ、(b)前記反応混合物をある流量で、前記反応容器に対して外部にある室の内に含まれた固体触媒表面上に誘導するステップであって、前記触媒表面は少なくとも2つの酸化状態を取ることができる金属または金属化合物を含み、(c)前記反応容器の温度を選択された温度範囲でモニターするステップ、(d)前記温度が前記選択された温度範囲外である場合、前記流量を調節するステップ、および(e)所望の転化率レベルに到達するまで前記重合を進行させるステップを含む。
【0005】
本発明の第2の態様は、制御されたラジカル重合を実施する方法を提供し、この方法は、(a)少なくとも1種のモノマー;前記モノマーのための少なくとも1種の溶媒;金属に配位することができる少なくとも1種の化合物;および少なくとも1種の開始剤;の混合物を反応容器に充填するステップ、(b)前記反応混合物をある流量で、前記混合物に対して外部にあり、熱交換器ユニットで分離された少なくとも1つの触媒コンバータ室または一連の触媒コンバータ室を通して、および触媒コンバータ表面上に誘導するステップであって、前記触媒コンバータ表面は少なくとも2つの酸化状態をとることができる金属または金属化合物を含み、(c)前記反応容器の温度を選択された温度範囲でモニターするステップ、(d)前記温度が前記選択された温度範囲外である場合、前記触媒室および熱交換器ユニットを通す前記流量を調節することによって前記反応混合物の温度を維持するステップを含む。
【0006】
本発明の第3の態様は、制御されたラジカル重合を実施する方法を提供し、この方法は、(a)少なくとも1種のモノマー;触媒の不均化を容易にするための少なくとも1種の溶媒;および少なくとも1種の配位子;の内の少なくとも2種の混合物を反応容器に充填するステップ、(b)前記反応混合物をある流量で、前記混合物に対して外部の触媒コンバータ表面上に誘導するステップであって、前記触媒コンバータ表面は少なくとも2つの酸化状態をとることができる金属または金属化合物を含み、(c)所望の濃度の触媒が前記反応混合物に可溶化された時を決定し、その後、少なくとも1種の開始剤を前記反応混合物中に包含するステップ、(d)前記反応容器の温度を選択された温度範囲でモニターするステップ、(e)前記温度が前記選択された温度範囲外である場合、前記流量を調節するステップ、および(f)所望の転化率レベルに到達するまで前記重合を進行させるステップを含む。
【0007】
本発明の第4の態様は、単峰性のポリマー分子量分布を得る方法を提供し、この方法は、金属または金属化合物を不均化することができる反応組成物を提供するステップであって、前記組成物は、少なくとも1種のモノマー;前記モノマーのための少なくとも1種の溶媒;少なくとも1種の配位子;および少なくとも1種の開始剤を含み、前記不均化を可能にするために、前記組成物をある流量で、前記組成物に対して外部の触媒コンバータ表面上に誘導するステップ、(c)前記反応容器の温度を選択された温度範囲内でモニターするステップ、(d)前記温度が前記選択された温度範囲外である場合、前記流量を調節するステップ、および(e)所望の転化率レベルに到達するまで前記重合を進行させるステップを含む。
【0008】
本発明の第5の実施形態は、制御されたリビングラジカル重合のための装置を提供し、この装置は:反応容器であって、この容器は材料を収納するように構成され、容器入口および容器出口を有し;少なくとも1つの触媒コンバータであって、このコンバータは反応容器に対して外部に配置され、コンバータ入口およびコンバータ出口を有し、このコンバータは固体金属触媒を収納し、前記材料が前記触媒と接触するための表面領域を提供するように構成され、前記触媒は前記反応容器と連通し;前記コンバータ中に供給して前記触媒と接触させる前記材料の流量を制御するためのポンプ;および、少なくとも1つの熱交換器であって、ここで前記熱交換器は、前記コンバータ出口と前記反応容器入口との間に配置されている、を含む。
【0009】
本発明のこれらおよび他の特徴は、下記の詳細な説明および添付する図によってさらに理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の装置フローチャートの実施形態を示す。
【図2】図2は、制御されたラジカル重合を実施する方法の実施形態を示す。
【図3】図3は、制御されたラジカル重合を実施する方法の他の実施形態を示す。
【図4】図4は、制御されたラジカル重合を実施する方法のさらに他の実施形態を示す。
【図5】図5は、単峰性のポリマー分子量分布を得る方法の実施形態を示す。
【図6】図6は、本発明の装置のブロック線図表示による反応混合物の提案された経路のフローチャートを示す。
【図7】図7は、単電子移動機構のための提案された機構を示す。
【図8】図8は、原子移動ラジカル重合機構のために提案された機構を示す。
【図9】図9は、異なった基官能性を有する最終ポリマー生成物を得る段階的フローチャートを示す。
【図10】図10は、ポリマー官能基化置換反応のための例示的な機構を示す。
【図11】図11は、ポリマー官能基化末端キャッピング反応のための例示的な機構を示す。
【図12】図12は、SET−LRP反応を実施するために反応器装置の概略図を示す。
【図13】図13は、外部の触媒室を用い、制御して断続的にポンプで供給しながらメチルアクリレートを重合する時間−温度および転化率プロファイルを示す。
【図14】図14は、ATRPおよびSET−LRPによって合成されたポリマーのSECクロマトグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(発明の詳細な説明)
本発明の実施形態は、当該技術分野において、望ましい性質、特性、および特徴を有し、正確に制御されたポリマー生成物を製造することができる効率的、効果的なラジカル重合の方法に対する要求を満たす。さらに、本発明の方法は、小さい、大きい、または商業スケールであっても、実施可能性およびその結果の予測可能性について同等に実施されうる。
【0012】
ポリマー化学において、新規の重合方法および新規のポリマーを開発するための努力が続いている。単電子移動リビングラジカル重合(以下、SET−LRPと呼ばれる)は、それ自体、ATRPの代替手段として発展してきた。これらの方法は共に、ポリマーのラジカル重合方法を意味するが、SET−LRPおよびATRPは、それらの使用、さらには得られる最終生成物の性質および特性において対照的な違いを生じさせるいくつかの特質を有する。本発明の方法によって、2つの方法のいずれかまたは両方を共に実施することができ、より速い転化速度、より効率的な工程、ならびにより高い予測可能性および価値を有する生成物など、さらによい結果を生み出すことができる。
【0013】
制御された重合方法、換言すればリビング重合方法は、ポリマー成長反応と比較して連鎖移動および停止反応が実質的に存在しない重合方法である。これらの開発は、精密で定量的な官能価を示すポリマーの製造、および特異的な化学反応性を有する官能性ポリマーの開発を可能にした。本発明の方法は、ポリマーを加工する際、ならびに後の材料形成反応(例えば、共重合、鎖延長および架橋反応)および基体との相互作用(分散固体を含めて)における組立てブロックとして、またはそれらのための組立て成分としてポリマーを利用する際に、材料技術者が利用可能な制御のレベルを高めている。本発明は、反応媒体から容易に分離され、およびその工程に渡って充分に制御される制御された重合のための触媒系に対する要求を満たす。
【0014】
できる限り環境に優しく、官能性材料を調製するためのできる限り安価な工程による、制御されたラジカル重合を作り出す努力が続いている。そのような方法の設計および実行にあたっては、例えば、ポリマー分子量、分子量分布、組成、構造、および官能価の制御のような要素は重要な検討事項である。本発明の方法は、最終ポリマー生成物の高度な制御を可能にし、それによって所望の鎖長、多分散性、分子量、および官能価が容易に最終生成物中に具現化される。すなわち本発明は、分子量分布に関する制御の低さ、官能価の低さ、ポリマーレオロジーの制御の低さ、および望ましくない多分散性といった問題点を克服する。また、この方法は非常に予測可能であるので、高い予測可能性でもって大きなスケールで容易に実施され、および/または最終ポリマー生成物の性質を新たな段階に調整するために使用され、生成物はこれらの性質を基にして設計されうる。さらに、停止反応がより少ないので、ポリマーの構造および組成はより正確であり、この末端生成物は、さらに優れた生成物を作りだすためのより望ましい性質および特性を有する。さらに、反応を進めるのに必要とされる触媒の量が非常に少ないので、最終生成物の精製は容易になるか、時には不必要である。さらに、モノマー(共)重合反応をもっとより正確に制御するために、本システムの構成要素は最適化することができる。
【0015】
本発明の生成物は、最終の結合組成物に影響を及ぼすことなく、長いタック保持期間を有する接触接着剤として有用な硬化性樹脂組成物を提供するために使用することができる。また、本方法のポリマーは、良好な耐油性、耐熱性、接着力および柔軟性を示す。さらに、本発明の方法に包含された生成物は、プラスチック、エラストマー、接着剤、乳化剤、熱可塑性エラストマーなどとして広範に使用することができる。
【0016】
本方法によって作成された望ましいポリマーは確かな性質および特性を有する。例えば、最終ポリマー生成物は、様々な用途および技術分野で使用されるためには高度の耐熱性を有していなければならない。ポリマー末端に関して高い官能価、低い多分散性、および理論分子量に近い分子量を有する最終ポリマー生成物は、望ましく予測通り製造することができる。これらの特徴の数値と測定は本明細書の実施例の欄に提供されているが、これら各々の性質の簡単な考察は以下に続く。
【0017】
重合度は、供給したすべてのモノマーの重量平均分子量で割った数平均分子量であるが、これは制御された重合においてモノマー転化率との一次関数で表される。制御されたラジカル重合(以下、「CRP」と呼ばれる)は、下記の2つの条件:開始は充分に速くなければならず、それによって、ほとんどすべての鎖が同時に成長を始めること、および全鎖数を増加させる鎖連鎖移動はほとんどかまたは全く起きないこと、を満たす。ポリマーの多分散性指数が広い場合、このポリマーが実質的にポリマーの数平均分子量よりも小さいおよび大きい分子量セグメントを有するポリマー状セグメントを含む、ということことは、ポリマー技術分野の当業者に周知である。低分子量セグメントは、引張り強度、伸びおよび曲げ弾性率のようなポリマーの物理的性質に悪影響を及ぼすこと場合がある一方で、他方では、非常に大きい分子量セグメントは、ポリマーの加工性に限界を生じさせる可能性のある高いポリマー融解粘度という結果になる場合がある。すなわち、最終ポリマーが明確に定められた狭い多分散性指数を有する場合、明白な利点がある。このことは、物性的な見地から予測可能なポリマーを生成し、上記欠点を最小限にすることを可能にしている。
【0018】
本発明は、より予測可能な末端基官能価を提供する。すなわち、所望しないポリマー鎖の切断や官能性末端基の欠如、もしくは最終生成物の分子量が予測不可能であるといったことを、もしかすると起こしてしまう可能性がある未熟な停止反応が実質的により少ない場合、所望の官能化末端基をより高い効率で達成される。反応性ハロゲン官能性末端基は、再開始およびさらに重合を起こしてブロックコポリマーを生成でき、またはさらに求核置換、脱離または末端キャッピング反応により官能基化されうる。本発明によって、最終ポリマー生成物において効率的で予測可能な末端基官能性にすることができる。
【0019】
最終ポリマー生成物において、狭い分子量分布、すなわち多分散性指数を有することは望ましい。本発明では鎖長、末端基官能価、およびポリマー濃度は実質的に一定であるので、本発明に従って狭い分子量分布は制御された重合から達成されうる。狭い分子量分布を達成する過程で、いくつかの要素が促進されうる。狭い分子量分布に寄与する一部の要素としては、(1)成長速度と競争的である開始速度(すべてのポリマー鎖の同時成長を可能にする)、(2)成長よりも速い、反応性の異なった種間での交換(均一な成長のために、すべての活性鎖末端はモノマーとの反応性が等しいことを保証して)、(3)少ないかまたは全くない連鎖移動または停止、(4)失活速度に対する活性化速度、および(5)混合が充分に速い均一系(すべての活性中心は、重合の開始時に導入される)が挙げられる。これらの要素を満足する重合は、ポアソン分布の理論値1+1/DPに近い多分散性を有することができる。例えば、本方法のポリマー生成物のDPは1.4DPより小さくてよく、より具体的には1.2DP未満、ある場合には1.1未満であってよい。
【0020】
最終生成物の他の特性は長寿命ポリマー鎖である。これはモノマーが完全に消費された後に、すべての鎖がそれらの活性中心を保持していることを意味する。従って、成長は追加のモノマーを添加すると再開する。この要素は逐次モノマー付加によってブロックコポリマーの調製を可能にする。
【0021】
制御された重合は、組成、官能価および分子レベルでのトポロジーにおける多数の変動の様々な態様を選択および制御することによって、バルクの性質を制御するために、最高の機会を提供する。最終ポリマー生成物において多分散性、分子量、官能価、および長寿命鎖長が確実に推進されるために、本発明の方法でもって先に考察された多くの特性および要素を制御することができる。例えば、多分散性は、失活速度を確実に初期の成長速度(活性化)と同じかまたは速くすることを確かなものにすることによって本発明で制御されうる。
【0022】
本発明のある実施形態は、ポリマーおよびコポリマーのミクロ構造を制御するための重合方法に関する。本発明のある実施形態は、有機ハライド開始剤を使用するハロゲン含有およびアクリルモノマーのリビングラジカル重合、ならびにそこからのポリマー形成に関する。様々な実施形態の方法は、狭い分子量分布を有する最終ポリマー生成物を提供し、これらは高く効率的な転化率および迅速または超高速の重合反応によって得られる。従って、本方法により得られる最終ポリマー生成物は、予測可能な分子量、低い多分散性指数、および高い官能価を有する。
【0023】
図1は、本発明の装置10のフローチャート形態で示された実施形態を提供する。制御されたリビングラジカル重合のための装置10は、反応容器20、触媒コンバータ30、ポンプ40、および熱交換器50を含む。反応容器20は、材料12を収納するように構成されうる。材料12としては、様々な反応剤、成分、中間体、生成物などを挙げることができる。反応容器20は、少なくとも1つの容器入口22および容器出口24で構成されてよい。反応容器20は、要望されうるように様々な機能および用途のために複数の入口および出口を含むように構成されうると理解することができる。
【0024】
触媒コンバータ30は、反応容器20から分離されてよいが、しかしそれに取り付けられてもよい。図1において、様々な構成部品を結合するラインによって説明されているように、様々な構成部品を互いに結合するのに様々な管およびラインを用いることができる。触媒コンバータ30は、反応容器に対して外部に配置されてよく、それによって反応容器20中の材料12は、反応容器20から触媒コンバータ30の中に誘導されうる。従って、触媒コンバータ30は、コンバータ入口32およびコンバータ出口34を有することができる。触媒コンバータ30は固体金属触媒16を収納する。固体金属触媒は後で考察されるように多くの形態のうちの1つであってよい。固体金属触媒はスクリーンであることが好ましい。触媒コンバータは、材料12をコンバータ入口32より供給して触媒16と接触させることが可能な大きさ、形状、および構造であってよい。接触時間および表面積は要望通り最適化されうる。材料12が触媒コンバータ中で触媒と接触した後に触媒コンバータ30を出るために、この材料はコンバータ出口34より搬出されてよい。
【0025】
装置10は、さらにポンプ40を含む。ポンプ40は、材料12が反応容器20から触媒コンバータ30にポンプで送られるときの流量を制御するために使用されてよい。従って、ポンプ40は、材料12が触媒16の表面と接触する速度を制御することができる。ポンプ40は、機械的、電気的、および電気機械的な部品の組合せであってよく、とりわけ、重力を利用することができる(触媒コンバータ30から反応容器に戻す出口ライン34に示すように)。
【0026】
図1を継続して参照すると、本装置10は少なくとも1つの熱交換器50を含んでいてよい。熱交換器50は、コンバータ出口34と反応容器入口22との間に配置されてよい。それ自体、熱交換器50は、材料12へまたは材料12からの熱を交換するために使用されてよく、材料12およびそれによって反応容器20も所望の温度または温度範囲に維持することができる。1つより多い熱交換器50が存在してよく、例えば、反応容器20上に、ポンプ40と共にインラインに、または触媒コンバータ30のためにコンバータ入口32の前に配置されてよい。同様に、一連の反応を通して所望の温度を確実に維持するため、装置10に沿った様々な所または混合物12内部もしくは触媒表面16の温度を1つ以上の温度計で測定することができ、そうすることが望ましい。
【0027】
装置10は、分析機器70を含んでいてよい。分析機器70は、インライン分析機器であってよい。分析機器70は、第2の入口26を介して反応容器20に構成されてよい。また、試料は、装置10から分離することができる分析機器70に通すために、反応容器20から取り出されうる。分析機器70は以下に開示および考察されるように、核磁気共鳴分光学、分光光度法、高圧浸透クロマトグラフィーなどの1つ以上であってよい。分析機器70は、例えば、反応速度、転化率レベル、相対収率、副反応の存在、不純物、中間体の特性などを決定するためにインラインで使用されてよい。
【0028】
また、装置10は、反応容器内に配置することができる攪拌器28を含んでいてよい。撹拌器は、ポンプ輸送に対する抵抗力または弾力を有する材料の高い表面張力に逆らうために、反応容器20中の材料12を攪拌することができる。さらに、攪拌器28は確実に反応剤をブレンドし、表面領域との接触を最大にして反応を促進することができる。例えば、攪拌器28は、インペラ、機械的撹拌棒、または反応容器20の下に対応する調節可能なRPM撹拌器を有する磁気撹拌棒であってよい。
【0029】
装置10は空気、特に大気中の酸素が遮断される環境を有することができる。すなわち、さらに装置10は、ガス入口82、およびガス出口84を有するガス供給源80を含んでいてよい。ガス入口82およびガス出口84は、反応容器20および触媒コンバータ30をガス14でパージできるようにするため、反応容器20に構成されていてよい。装置10で使用できるガスとしては非反応性ガスが挙げられる。そのようなガスの例としては、アルゴンおよび窒素を挙げることができる。さらに、ガス出口84から出るガス14を乾燥剤により、またはガス14から材料12を除去するための他の成分により望ましくはろ過することができ、そのことによってそれは適切に廃棄されうる。
【0030】
さらに装置10は凝縮器60を含んでいてよい。凝縮器60は、反応容器20とガス供給源80のガス出口84との間にインラインで挿入されるように構成されてよい。ガスが凝縮物からガス出口84を通って抜け出るとき、材料12がガス14と共に反応容器20から逃げるのを防ぐために、凝縮器60は冷水またはドライアイス(冷却空気)によるジャケットであってよい。本発明の実施形態で使用される触媒16、材料12、およびガス14を含めて様々な化学成分は、本発明の方法に関連して非常に詳細に考察されている。本発明の方法は、図1の例示的な装置中、または当該技術分野において公知であるその同等物中で実施することができる。
【0031】
図2は、制御されたラジカル重合を実施するためにフローチャートで示された、本発明の方法の実施形態を提供する。方法100は、以下のステップ:(a)反応容器20を、少なくとも1種のモノマー;モノマーのための少なくとも1種の溶媒;金属に配位ができる少なくとも1種の化合物;および少なくとも1種の開始剤;の混合物で充填する110ステップ、(b)前記反応混合物をある流量で、反応容器20に対して外部の室30に含まれた固体触媒表面16上に誘導する120ステップであって、前記触媒表面16は、少なくとも2つの酸化状態を取ることができる金属または金属化合物を含み、(c)前記反応容器20の温度を選択された温度範囲内でモニターする130ステップ、(d)前記温度が選択された温度範囲外にある場合、前記流量を調節する140ステップ、および(e)所望の転化率レベルに達するまで前記重合を進行させる150ステップを含む。図2に示されるように、方法100のステップは反復されてよい。例えば、ステップ(b)から(d)は、所望の転化率レベルに達するまで反復160されてよい。
【0032】
本発明の他の実施形態は、図3に示されるように制御されたラジカル重合を実施する方法200を提供する。方法200は、以下のステップ:(a)反応容器20を少なくとも1種のモノマー;モノマーのための少なくとも1種の溶媒;金属に配位ができる少なくとも1種の化合物;および少なくとも1種の開始剤;の混合物で充填する210ステップ、(b)前記反応混合物をある流量で、前記混合物に対して外部、望ましくは前記反応容器に対して外部の少なくとも1つの触媒コンバータ室または一連の触媒コンバータ室を通して、および触媒コンバータ表面上に誘導する220ステップであって、前記触媒コンバータ表面は、少なくとも2つの酸化状態を取ることができる金属または金属化合物を含み、(c)反応容器20の温度を選択された温度範囲内でモニターする230ステップ、(d)前記温度が前記選択された温度範囲外にある場合、触媒室30および熱交換器50を通す前記流量を調節することによって前記反応混合の温度を維持する240ステップを含む。同様に、前記ステップの1つ以上は、望まれるように反復または繰り返されてよい。
【0033】
方法200、さらには他の実施形態は、複数の熱交換器50を使用して実施されてよく、これらは大きなスケールの反応の発熱を制限するために使用されうる。1つ以上の熱交換器50ユニットは、直列、1つ以上の触媒コンバータ室30と並列または他の配列で設置されてよく、例えば、熱交換50ユニットは触媒コンバータ30と交互に直列に設置されてよい。また、複数の熱交換器50ユニットは2つの触媒コンバータ室30の間に設置されてよい。また、複数の触媒コンバータ室30が使用されてよい。触媒コンバータ30は、直列、並列、または代替手段で設置されてよい。例えば、1つの触媒コンバータ30の表面が使い果たされた後、流れの方向を変えるために別の手段が採用されうる。
【0034】
本発明のさらなる実施形態は、図4に示されるように制御されたラジカル重合を実施する方法300を含む。方法300は、以下のステップ:(a)反応容器20を、少なくとも1種のモノマー;触媒の不均化を容易にするための少なくとも1種の溶媒;および少なくとも1種の配位子;の内の少なくとも2つの混合物で充填する310ステップ、(b)前記反応混合物をある流量で、前記混合物に対して外部、望ましくは前記反応容器に対して外部の触媒コンバータ表面上に誘導する320ステップであって、前記触媒コンバータ表面は、少なくとも2つの酸化状態を取ることができる金属または金属化合物を含み、(c)触媒が前記反応混合物に所望の濃度で可溶化されたときを決定し330、続いて前記反応混合物に少なくとも1種の開始剤を組み込むステップ、(d)反応容器20の温度を選択された温度範囲内でモニターする340ステップ、(e)前記温度が前記選択された温度範囲外にある場合、前記流量350を調節するステップ、および(f)所望の転化率レベルに達するまで前記重合を進行させる360ステップを含む。
【0035】
本発明のなおも別の実施形態は、図5に示されるように単峰性のポリマー分子量分布を得る方法400を提供する。方法400は:金属または金属化合物を不均化できる反応組成物を提供するステップ410であって、組成物が少なくとも1種のモノマー;前記モノマーのための少なくとも1種の溶媒;少なくとも1種の配位子;および少なくとも1種の開始剤を含み、(b)前記不均化を可能にするために、前記組成物をある流量で、前記混合物に対して外部、望ましくは反応容器20の外側の触媒コンバータ表面上に誘導する420ステップ、(c)反応容器20の前記温度を選択された温度範囲内でモニターする430ステップ、(d)前記温度が前記選択された温度範囲外にある場合、前記流量を調節する440ステップ、および(e)所望の転化率レベルに達するまで前記重合を進行させる450ステップを含む。
【0036】
言及された方法100、200、300、400の1つ以上は、さらに、分析機器を使って反応混合物の転化率レベルを測定するステップを含んでいてよい。分析機器70は、様々な化合物および混合物の特性を同定して測定するために、当該技術分野で周知で使用される1種以上のものであってよい。望ましくは、この分析方法は、工程が進行する時間の関数として転化速度を測定するためにインラインで制御されてよい。あるいは、一定量または試料を混合物から取り出し、転化率をオフラインで測定することができる。
【0037】
有用な分析機器70および方法の非限定的な例は、分光法デバイス、クロマトグラフィー機器、核磁気共鳴機器、質量分光分析機器、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー技術、およびこれらの装置または技術の組合せから選択することができる。先に説明されたように、分析機器70は、インラインのものかまたは反応容器20から取り出された試料を使用する装置10から分離さたもののいずれかであってよい。
【0038】
転化率レベルは分光分析によって測定されうる。例えば、最終生成物の分析およびキャラクタリゼーションは赤外線分光法によって完結されうる。これには、UV−VIS、IR分光光度法、FTIR分析、さらには他の分光技術が含まれてよい。例えば1つの有用な分析機器70は、反応が進むにつれて反応混合物の転化率レベルを定期的に測定するために、反応容器中にプローブとともに構成されたフーリエ変換赤外分光光度計であってよい。
【0039】
あるいは、反応混合物の相対粘度の増加はトルク分析器が取り付けられた攪拌器によって決定され、独立の較正によりモノマー転化率に関連付けされることができる。また、注目すべきは、試料は定期的に反応器から抜き出され、NMR、GPC、屈折率、光吸収、比色定量などの技術によって外部で分析が可能なことである。
【0040】
さらに、転化の程度は分析的に測定されてよいが、また理論的に測定されてもよい。このことは、例えば、触媒コンバータ30へのインプットを測定し、どれ程の触媒16が反応に使用されたかを決定するために、使用された触媒16の酸化を計算して実施することができる。
【0041】
特に、方法100、200、300、400の1つ以上は、単電子移動リビングラジカル重合(SET−LRP)反応を含んでいてよい。いかなる特定の機構にも縛られることなく、本方法に対する提案された機構は図7に示される。図7に示される提案された機構の考察は、例えば、Percec,Vらの「SET介在の25℃、金属触媒リビングラジカル重合によるアクリレート、メタクリレート、および塩化ビニル超高質量ポリマーの超高速合成(Ultrafast Synthesis of Ultrahigh Molar Mass Polymers by Meatl−Catalyzed Living Polymerization of Acrylates,Methacrylate,and Vinyl Chloride Mediated by SET at 25℃)」(J.AM.CHEM.SOC.,2006,128,14156−14165)に見いだされることができ、これはその全部を参照して本明細書に組みこまれる。SET−LRPはより低い活性化エネルギーで実施され、すなわちより低い温度で実施されてよい。図7を参照して、元素金属、例えば銅などは、Cu(0)およびCu(II)を与える不均化を促進するある種の溶媒と共に使用されうる。従って、Cu(II)は失活ステップで直ちに利用可能であり、これによって末端停止生成物の量は低下する(狭い分子量分布および多分散を生み出す)。また、この触媒金属、例えば銅は、それ自体を再生し、すなわちこの重合方法はリビングである。反応混合物の溶媒濃度を増加すると重合はより速くなるが、分子量および分子量分布に関する制御は良好に維持される。
【0042】
SET−LRP反応は、Cu(0)種とハロゲン含有基質(開始剤またはハロゲン末端停止ポリマー鎖末端)との間のSET反応から始まる。あらゆる極性溶媒は、ラジカル−アニオン対からのアニオン(X−)と求電子性ラジカル(R¥)との間の相互作用の低下を容易にする。ラジカル−アニオンクラスターおよびCu/L+対カチオンはごく接近して、いわゆるケージイオン対でなければならず、従って、さらにラジカルアニオンを求電子性ラジカルとアニオン(X−)とに分解するのを容易にする。極性媒体中のラジカルと失活剤CuX2/配位子との間の反応はさらに複雑な工程である。1つの可能な機構では、失活剤から成長している高分子ラジカルR¥へのハライドアニオンXの移動が含まれてもよく、ラジカル−アニオン[R−・・X]¥−およびCuX/L+対カチオンから構成される同様のイオンケージに導いている。SET−LRPでは、「Cu(I)X」が触媒作用し、アルキルハライド、スルホニルハライド、およびN−ハライドで開始されるLRPの加速があり、この加速は、H2O、アルコール、エチレングリコール、DMSO、DMF、および例えばポリメタクリレートのような高分子質量材料などのイオン性液体中で認められる。
【0043】
この重合はCu(0)種が電子供与体として作用し、ドーマント開始剤および成長R−X種が電子受容体として作用する外圏SET機構によって進行する。望まないラジカル二量化反応によって過剰のCu(II)X2種が生み出されるATRPを含めて、金属が触媒作用する他のLRPとは対照的に、本発明では、ラジカルの可逆的失活に関与するCu(II)X2種がCu(I)Xの不均化によって形成される。本新規の重合に含まれる外圏SET方法は非常に低い活性化エネルギーを有する。従って、SET−LRPは、室温で非常に速い活性化および失活ステップならびに無視できるほどの2分子停止を含む。
【0044】
原子移動ラジカル重合(ATRP)として、方法100、200、300、400から一つ以上の方法を代わりに実施することができる。いかなる特定の機構にも縛られることなく、本方法に対する提案された機構が図8に示される。図8に示される提案された機構の考察は、例えば、K.Matyjaszewski,Kらの「原子移動ラジカル重合における競争平衡(Competitive Equilibria in Atom Transfer Radical Polymerization)」(Macromol.Symp.,2007,248,60−70)、(DOI:10.1002/masy.200750207)に見いだされることができ、これはその全部を参照して本明細書に組みこまれる。原子移動ラジカル重合(ATRP)を含めて、非極性溶媒中で実施される金属が触媒作用する有機ラジカル反応およびリビングラジカル重合は、高い活性化エネルギーを必要とする内圏電子移動機構によって進行する。ATRPは、低酸化状態の金属錯体が触媒として作用する内圏電子移動機構によって進行し、ラジカルとそれらのドーマントアルキルハライド種との間の高速交換を媒介すると考えられる。活性種とドーマント種との間の平衡は、重合の初期段階の間にわずかな程度の2分子ラジカル二量化で生成された過剰の高酸化状態の触媒によって、ドーマント種側にシフトする。この概念は、高速反応の内部抑制または持続性ラジカル効果(PRE)として公知である。また、内圏ラジカル方法は、原子移動ラジカル付加としても公知であり、従って、対応するラジカル重合は原子移動ラジカル重合(ATRP)と名付けられた。さらに、ATRPとSET−LRP提案機構との間の比較検討は、例えば、Percec,Vらの「ビニルモノマーのATRPおよびSET−LRPの活性化ステップに関与する均一および不均一結合解離エネルギーのコンピュータによる比較研究(A Comparative Computational Study of the Homolytic and Heterolytic Bond Dissociation Energies Involved in the Activation Step of ATRP and SET−LRP of Vinyl Monomers)」(Journal of Polymer Science,DOI 10.1002/pola)(Wiley InterScienceのオンラインで公表され、http://www.interscience.wiley.comで入手可能である)に見いだされることができ、これはその全部を参照して本明細書に組みこまれる。
【0045】
任意に、本発明の方法100、200、300、400の1つ以上は、単電子移動ラジカルリビング重合と原子移動ラジカル重合の組合せを含んでいてよい。すなわち、本方法は、ハイブリッドATRP/SET−LRP反応シークエンスとして実施されてよい。それで、本方法は、元素金属および(少なくとも)+1の酸化状態の金属の添加を含んでいてよい。2つの形態の触媒を使用することによって本重合反応は加速されうる。ATRPおよびSET−LRP機構の組合せで、結果は付加的、相乗的であってよく、または他の利益を提供でき、例えば安価な反応剤を使用することができ、またはより優れた特性の最終生成物を得ることができる。
【0046】
様々な実施形態において言及され、方法100、200、300、400において説明された流量ステップの調節としては、例えば、反応シークエンスに渡って実施される流量の増加、流量の低下、流量の停止、逆流、およびこれらの組合せを挙げることができる。これは、ポンプ速度の変更、重力添加装置10の調節、または他の場合、触媒表面16への反応混合物の接触を増加、低下、開始、停止、または逆方向にすることによって実施されうる。
【0047】
100、200、300、および400のような方法の一般的な反応は、類似の反応装置および反応剤を用いて完了されうる。図9に関して、方法100、200、300、および400の内の1つ以上を実施するためのステップが提供される。図6は、装置10を介する反応混合物の流路に言及し、ここでは、例えば、ポンプ40を通る流量を制御するため、および分析機器70からのデータを集め処理するためにコンピューターを使用することができる。図1は、本発明の方法100、200、300、および400の内の1つ以上を実施または完了するために使用できる例示的な反応装置のブロック線図を提供する。図11は、先に検討されたように本方法の1つ以上を実施するために装置の実施形態の図解を示す。先に開示されたように、図および方法100、200、300、および400の内の1つ以上に関しては、反応成分および反応剤は後に詳細に検討される。
【0048】
本発明の方法100、200、300、400に包含される反応は反応容器20中で起きる。反応容器20は、所望の任意の制御容積であってよく、当該技術分野において公知である任意のサイズ、任意の形状、または任意の次元であってよい。反応容器20は、機械的に反応混合物を攪拌するために攪拌器(例えば、攪拌器28)、時間とともに混合物に1種以上の成分または反応剤を添加するために1つ以上の添加漏斗、加熱/冷却ジャケット/要素、およびガス14のための反応容器20からの流入入口および流入出口を含むように構成されてよい。さらに、反応容器20は、例えば、反応混合物の試料をインラインまたはイン・サイチューで得るために、分析機器70を反応容器に取り付けるることができるように構成されてよい。
【0049】
反応装置10の外部コンバータは反応容器20に結合され、取り付けられ、または一体化されていてよく、それによって反応混合物は、反応容器20から外部コンバータ30に輸送または他の方法で操作されうる。また、外部コンバータ30は反応容器20と閉鎖系であってよく、それによって2つの構成要素は同じ雰囲気条件を共有することができる。また、外部コンバータ30は互換的に、例えば触媒コンバータまたは外部触媒コンバータと見なされてよい。外部コンバータ30は、例えば、反応混合物が外部コンバータ30を通って流れることができる流量を制御するために反応容器20からは分離されていてよい。
【0050】
外部コンバータ30は、本発明の様々な方法100、200、300、および400の内の1つ以上において反応剤として使用される固体触媒16を収納することができる。大きな表面領域での反応混合物と触媒16との接触を容易にし、効果的、効率的、および予測通りに、高い収率、純度および他の望ましい特性で反応を完了する方向に推進するために、触媒16は1つ以上のサイズ、形状、および関連する特性を望まれるように呈することができる。外部触媒コンバータ30は、混合物を触媒16と接触させる速度を制御して本方法を制御することができる。すなわち、反応混合物が外部触媒コンバータ30中に供給される速度を制御することにより、反応容器20内の発熱反応の速度および全体の反応条件は制御されうる。対照的に、そのような制御が無い場合、反応容器20の発熱はあまりにも高温になる可能性があり、それによってモノマーまたは溶媒が蒸発で失われうる。溶媒の損失は、次に触媒の不均化が減少するという結果になる一方で、1種以上のモノマー種の損失は、モノマーブレンド中の構成成分の濃度が不明になる可能性がある。これらの要素は、分子量範囲の予測可能性が低く、重合はより遅く、および/または転化率はより低くなる原因である。
【0051】
装置10に結合された、またはそうでない場合、本発明の反応容器20に結合された外部触媒コンバータ30が一つ以上存在してよい。複数の外部触媒コンバータに対しては、これらのコンバータは互いに、直列、並列、または交互に配置されていてよく、ある外部触媒コンバータは接続されていてよいが、しかし必要になるまでは使用されなくてよい。例えば、大きなスケールでの製造中に1つのコンバータ30の性能が、利用できる触媒16の表面領域において低下した場合、反応混合物の流れを次のコンバータに迂回および延長することができる。コンバータの各々は不活性ガス14で別々にパージされてよく、反応を推進し、より好ましくない副反応を低下するために反応容器20と調和する反応条件を作っていくことができる。好ましくは、本発明の方法100、200、300、400は、副反応を低下し、高い収率および予測可能な結果を図るために不活性雰囲気中で実施されてもよい。従って、反応容器20、外部コンバータ30、およびそれらに取り付けられた任意の構成要素は、本発明の実施形態に従った1つ以上の反応を開始する前に、非反応性ガス14、すなわち不活性ガスで充分にパージされてもよい。従って、方法100、200、300、400は好ましくは実質的に酸素の非存在下で実施されてよい。すなわち、反応容器20および外部触媒コンバータ30は、反応剤の添加および重合工程の開始の前に非反応性および/または不活性ガス14でパージされてよい。そのようなガスとしては、例えばアルゴンまたは窒素を挙げることができる。また、反応容器は、本発明の方法100、200、300、400が実施される間、非反応性ガスで連続してパージされてよい。同様に、反応は実質的に真空下、正圧下、またはそうでない場合、酸素に対して不浸透性である閉鎖された制御容積下で実施されてよい。
【0052】
一般的に温度が高いほど本発明の反応は速度が速い。しかしながら、当該技術分野での最近の欠点として、反応混合物の温度が高い場合、反応を通じた制御がより劣るということが挙げられる。従って、例えば、外部触媒コンバータ30および1つ以上の熱交換器50を含めて本発明の様々な実施形態は、反応混合物の温度に関して充分に制御することが容易である。本発明の方法は制御されたより低い温度で常に正確に行なわれることができる。従って、本発明の最終ポリマー生成物は、温度が制御されることで発熱の制御、副反応速度の低下、および予測可能な/高い収率での大きなスケール反応が促進されるので最近の欠点を解決する。反応混合物の温度は任意の望ましい範囲に維持されうる。好ましくは、温度は40℃付近またはそれ未満に保たれてよい。特に、本発明は約6−7℃まで低い温度で実施されてよい。方法100、200、300、および400の最適な温度は、例えばモノマー、溶媒、触媒、およびポリマー生成物の仮想の分子量によって決まりうる。
【0053】
外部コンバータ30は反応の制御を大変容易にするので、熱交換器50も本方法および装置と共に包含されてよい。例えば、熱交換器50は外部コンバータ30に結合されてよい。熱交換器50は発熱を低下するための主たる接触面であってよく、外部コンバータ30は熱交換器50に取り付けられ、またはそうでない場合、熱交換器が装備されていてよい。同様に、反応容器20は熱交換器50が装備されていてよい。方法100、200、300、および400の内の1つ以上は、反応装置10内の1つ以上の熱交換器50を用いて実施されてよい。これは、反応剤および反応混合物からの効率的な発熱除去を促進することができ、そうでなければ、熱的に不安定な反応体の劣化、沸点の低い溶媒、モノマー、または反応剤の沸騰、または溶媒および/または反応剤がガラス器、凝縮器60、および/またはガス入口/出口82/84内で沸騰する暴走反応を生じる可能性がある。熱交換器50は反応混合物を選択された温度範囲内に維持するのに役立つことができる。温度を選択された温度範囲内に維持することは、反応容器20中の反応剤の比を一定に維持しながら転化への反応を容易にする。1つ以上の熱交換器50は、外部コンバータ30、反応容器20、およびこれらの組合せと併用されてよい。それ自体、反応混合物の温度は反応シークエンス全体を通して所望の境界範囲内で制御されうる。
【0054】
方法100、200、300、および400で使用される触媒16は、原子移動平衡の位置、ドーマントと活性種との間の交換についての動力学を決定するのに寄与できる。従って、使用される触媒16は好ましくは優れた電子供与体でなければならない。触媒16は当該技術分野において公知である、例えば、Cu(0)、Cu2S、Cu2Te、Cu2Se、Mn、Ni、Pt、Fe、Ru、Vおよびこれらの組合せなどであってよい。同様に、他の触媒、例えば、Au、Ag、Hg、Rh、Co、Ir、Os、Re、Mn、Cr、Mo、W、Nb、Ta、Zn、およびこれらの1種以上を含む化合物などは本方法で使用されてよい。1つの特に有効な触媒は、元素銅金属およびその誘導体である。
【0055】
触媒16は1つ以上の形態を取ってよい。例えば、触媒16は、 線、メッシュ、スクリーン、削りくず、粉末、管組織、ペレット、結晶、または別の固体形態であってよい。触媒表面は先に開示された1種以上の金属、または金属合金であってよい。より具体的には、触媒16は、銅線、銅メッシュ、銅スクリーン、銅削りくず、銅粉末、銅網、銅焼結体、銅フィルター、銅スライバー、銅管、銅結晶、銅ペレット、非反応性材料への元素銅のコーティング、およびこれらの組合せの形態であってよい。
【0056】
本方法の反応の開始(活性化)ステップは、元素触媒電子供与体(または他の供与体種)から電子受容体開始剤への単電子移動に介在されうる。重合条件下では、触媒16誘導体は不均化し、従って、触媒反応におけるそれらの役割は、それらの不均化速度と単電子移動による直接の活性化との間の比によって決定されうる。触媒16は外部触媒コンバータ30中に固体形態で保持され、従って何度も繰り返して使用されうる。
【0057】
触媒16は、双極性非プロトン溶媒中で溶解性および不均化が良好な優れた還元剤であることが望ましい。触媒16は固体形態であり、最も望ましくは、触媒16は外部触媒コンバータ30内に保たれているので、本方法の反応は、さらに他の反応で使用して最終生成物を製造するために行う精製がより容易で、より効率的である。また、固体の外部触媒を用い、例えば流量、露出時間、および触媒の表面積を制御することで、反応混合物と触媒との接触のための表面領域を最大化し、およびこの表面領域の制御を可能にする。従って、反応混合物はより効率的におよび容易に触媒(良好な分散)と相互作用することができ、同時に理想的な反応条件(発熱の低下)を推進することができる。触媒濃度が低いので、触媒残留物を除去するためのさらなる精製を必要とせずにポリマーを使用することができる。
【0058】
また、方法100、200、300、および400には、金属触媒をより高い酸化状態で利用可能になるようにその触媒を可溶化できるまで抽出する助けになりうる配位子、例えば窒素含有配位子が存在することができる。従って、分子レベルで本反応混合物の様々な成分の混合を促進するのに役立つ可能性があるという意味で、配位子は重合反応を推進することが望ましい。広範囲の様々な窒素含有配位子は本発明で使用するのに適している。これらの化合物としては、第1級、第2級、および第3級アルキルまたは芳香族アミン、さらには直鎖、分岐鎖、または樹枝状ポリアミンであってよいポリアミンおよびポリアミドが挙げられる。本発明で使用するのに適した配位子としては、1つ以上の窒素、酸素、リンおよび/または硫黄原子を有してシグマ結合により遷移金属に配位できる配位子、2つ以上の炭素原子を含有してパイ結合により遷移金属に配位できる配位子が挙げられる。例えば適した配位子としては、トリス(2−ジメチルアミノエチル)アミン(Me6−TREN)、トリス(2−アミノエチル)アミン(TREN)、2,2−ビピリジン(bpy)、N,N,N,N,N−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)、および多くの他のN−配位子を挙げることができる。
【0059】
配位子は、好ましくは遷移金属のレドックス共役物、すなわち、遷移金属のより高い酸化状態にあるものと可溶性錯体を形成することができ、成長ラジカル鎖の失活において活性な錯体を形成して、この失活はポリマー生成物の狭い分子量分布に寄与できる。
【0060】
本方法の開始剤はフリーラジカル反応を開始することができ、従って、反応容器20中における成長ポリマー鎖の数に対する寄与因子と考えられてよい。適した開始剤としては、例えばハロゲン含有化合物が挙げられる。開始剤の例としては、クロロホルム、ブロモホルム、ヨードホルム、四塩化炭素、四臭化炭素、ヘキサハロゲン化エタン、モノ、ジ、およびトリハロアセテート、アセトフェノン、ハロゲン化アミド、およびナイロンのようなポリアミド、ハロゲン化ウレタンおよびポリウレタン、それらのブロックコポリマー(RO)など、ハロゲン化イミド、アセトン、およびATRPおよびSET−LRPなど金属が触媒作用する従来のリビングラジカル重合で機能することが示されている任意の他の開始剤が挙げられる。広く様々な開始剤が本発明で使用するのに適している。ハロゲン化化合物は特に本発明で使用するのに適合している。これらの開始剤としては式:R−X(ここで、Xはハロゲンであり、RはC1−C6アルキルである)で表される化合物が挙げられる。例えば開始剤としては、ジエチルメソ−2,5−ジブロモアジペート;ジメチル2,6−ジブロモヘプタンジオエート、エチレングリコールビス(2−ブロモプロピオネート);エチレングリコールモノ−2−ブロモプロピオネート;トリメチロールプロパントリス(2−ブロモプロピオネート);ペンタエリスリトールテトラキス(2−ブロモプロピオネート);2,2−ジクロアセトフェノン;メチル2−ブロモプロピオネート;メチル2−クロロプロピオネート;N−クロロ−2−ピロリジノン;N−ブロモサクシンイミド;ポリエチレングリコールビス(2−ブロモプロピオネート);ポリエチレングリコールモノ(2−ブロモプロピオネート);2−ブロモプロピオニトリル;ジブロモクロロメタン;2,2−ジブロモ−2−シアノアセタミド;α,α’−ジブロモ−オルト−キシレン;α,α’−ジブロモ−メタ−キシレン;α,α’−ジブロモ−パラ−キシレン;α,α’−ジクロロ−パラ−キシレン;2−ブロモプロピオン酸;メチルトリクロロアセテート;パラ−トルエンスルホニルクロリド;ビフェニル−4,4’−ジスルホニルクロリド;ジフェニルエーテル−4,4’−ジスルホニルクロリド;ブロモホルム;ヨードホルム;四塩化炭素;およびこれらの組合せを挙げることができる。ある実施形態では、開始剤はアルキル、スルホニル、または窒素ハライドであってよい。また、この窒素ハライドはハロゲン化ナイロン、ペプチド、またはタンパク質であってよい。あるいは、活性ハライド基を含有するポリマー、例えばポリ塩化ビニル、クロロメチル基を含有するポリマーおよびコポリマー、また例えばポリクロロメチルスチレンは開始剤として使用されうる。
【0061】
溶媒は、例えば、反応混合物の粘度を低下し、配位子の転化率を増加し、および触媒の高速不均化を促進して超高速重合を容易にするために本発明で導入されてよい。さらに、溶媒は連鎖移動、副反応、または触媒の被毒を防ぐために非反応性でなければならない。本方法の好ましい溶媒としては、双極性、プロトン性、または非プロトン性溶媒が挙げられる。一部の好ましい溶媒としては、水、アルコール、天然または合成ポリマー状アルコール、双極性非プロトン性溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、イオン性液体、またはこれらの混合物が挙げられる。例えば、そのような溶媒としては、H2O、MeOH、EtOH、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、テトラエチレングリコール、グリセリン、HEMA、フェノール、DMSO、DMF、DMAc、NMPなど、イオン性液体、エチレンカーボネート、およびプロピレンカーボネートを挙げることができる。適したアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、および第3級ブタノール、グリセリン、ならびにOH基を有する他の天然および合成ポリマーが挙げられる。溶媒または選択された溶媒ブレンドは、反応中にポリマー生成物を沈殿させないことが望ましい。
【0062】
方法100、200、300、および400で使用されるモノマーは、最終ポリマー生成物の構成ブロックとして役割を果たしてもよい。適したアルケンモノマーとしては、アクリレート、ハロゲン化アクリレート、メタクリレート、ハロゲンで置換されたアルケン、アクリルアミン、メタクリルアミド、ビニルスルホン、ビニルケトン、ビニルスルホキシド、ビニルアルデヒド、ビニルニトリル、スチレン、ならびに電子吸引性置換基を含有する任意の他の活性化および非活性化モノマーが挙げられる。これらのモノマーは置換されていてよい。ある実施形態では、モノマーは任意に別の酸化状態へ金属触媒が不均化するのを支援する官能基を含む。官能基としてはアミド、スルホキシド、カルバメート、またはオニウムを挙げることができるが、これらに限定されない。ハロゲンで置換されたアルケンとしては、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、トリフルオロクロロエチレン、またはテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびフッ素化ビニルエステルが挙げられる。これらのモノマー組合せを使用することができる。モノマーのブレンドは本発明の実施形態を用いて重合されてよい。モノマーは反応容器中でブレンドされてよい。例として、ある種のアクリレートが類似の反応性を示すのでアクリレートモノマーのブレンドが本発明の方法で使用されてよく、従って、末端生成物は優れた予測可能性を有することができる。2種のコポリマーブレンド、2種のホモポリマーブレンド、および少なくとも1種のコポリマーおよび少なくとも1種のホモポリマーの組合せのような最終ポリマー生成物のブレンドは、望まれるようにブレンドされてよい。さらに、ブレンドされたポリマーを最終生成物として製造することができる。ブレンドされたコポリマーはガスケット装備具で優れた耐油性を提供および推進できるので、ブレンドされたポリマー生成物はブレンドされていないものより好ましい可能性がある。具体的には、モノマーとしては例えば、アルキル(メタ)アクリレート;アルコキシアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロニトリル;塩化ビニリデン;スチレン系モノマー;アルキルおよびアルコキシアルキルフマル酸エステルおよびマレイン酸エステルならびにそれらの半エステル;ケイ皮酸エステル;およびアクリルアミド;N−アルキルおよびアリールマレイミド(メタ)アクリル酸;フマル酸;マレイン酸;桂皮酸;およびこれらの組合せの1種以上であってよい。より具体的には、本発明の実施形態でポリマーを作製するために使用されるモノマーとしては、特定の種には限定されないが様々なモノマー、例えば(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、第3級ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、トルイル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−アミノエチル(メタ)アクリレート、−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸−エチレンオキシド付加物、トリフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、2−トリフルオロメチルエチル(メタ)アクリレート、2−ペルフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、2−ペルフルオロエチル−2−ペルフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、2−ペルフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペルフルオロメチル(メタ)アクリレート、ジペルフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、2−ペルフルオロメチル−2−ペルフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、2−ペルフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、2−ペルフルオロデシルエチル(メタ)アクリレートおよび2−ペルフルオロヘキサデシルエチル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸モノマー;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、スチレンスルホン酸およびこれらの塩のようなスチレン系モノマー;ペルフルオロエチレン、ペルフルオロプロピレンおよびフッ化ビニリデンのようなフッ素含有ビニルモノマー;ビニルトリメトキシシランおよびビニルトリエトキシシランのようなシリコン含有ビニルモノマー;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステルおよびジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸モノアルキルエステルおよびジアルキルエステル;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミドおよびシクロヘキシルマレイミドのようなマレイミドモノマー;アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルのようなニトリル含有ビニルモノマー;アクリルアミドおよびメタクリルアミドのようなアミド含有ビニルモノマー;ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルピバレート、ビニルベンゾエートおよびビニルシンナメートのようなビニルエステル;エチレンおよびプロピレンのようなアルケン;ブタジエンおよびイソプレンのような共役ジエン;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコールなどが挙げられる。上記モノマーは、単独で、連続的に、または組合せで使用されてよい。生成物の物理的特性の望ましさからは、好ましくは1種以上のモノマー類であってよい。
【0063】
図9、10、および11に関して、本方法100、200、300、および400の中間体ジハロ生成物は官能基化され、鎖長の成長のために再開始され、またはブロック−コポリマーのための構成ブロックとして使用されてよい。図9は、反応シークエンスのステップに関して一般の段階的な指針を提供する。図9は、本明細書で検討のための一般的な参照手段を提供できるが、それはまた、最終ポリマー生成物をさらに反応させるために追随でき、この後の実施例の欄に関して使用可能な様々な経路を図によって示す。重合が完結した時点で、本方法は、ポリマー上に少なくとも1つの官能性末端基を形成するために得られたポリマーをさらに反応させることを含んでいてよい。中間体生成物の官能基は、1種以上の最終生成物に転化されうる多重用途の末端生成物を作製する。次いで、最終生成物は望まれるように様々な市販生成物または手段に組み込まれてよい。反応を止めたり、工程を停止させるために強力な求核試薬が反応混合物に添加されてよい。そのような求核試薬としては、例えばチオレート、アミン、アジド、カルボキシレート、アルコキシド、およびナトリウムカルボキシレートが挙げられる。鎖の安定性および品質を維持しながら反応を停止させるために、望まれるように1つまたは組合せの求核試薬を使用することができる。ポリマー上に官能性基末端を、例えば末端キャピング反応または置換反応のいずれかを実施することによって作製することができる。
【0064】
図11に示されるように、末端キャッピング反応520によって最終生成物ポリマーを官能基化するために、初期反応の終了時、完了の前に必要なステップを応容器中、イン・サイチューで実施することができる。少なくとも1つのポリマー末端に対して末端キャッピング官能基化を実施するために、以下のステップ:最終ポリマー生成物を提供する510ステップ、キャッピング剤を容器に添加する522ステップ、反応を停止する514ステップ、およびキャップされたポリマー生成物を精製する516ステップを含む。
【0065】
キャッピング剤としては、鎖の安定性および品質を維持しながら所望の官能性末端基で最終生成物の末端基をキャップするために、望まれるような化合物の1つまたはその組合せを挙げることができる。例えばキャッピング剤としては、2アリルアルキルエタノール、アリルアルコール、アリルグリシジルエーテル、1−6ヘプタジエン、シクロオクチルジエン、ノルボルナジエン、およびSET−LRP条件下ではホモポリマーを形成しないという公知の傾向を有する他のオレフィンを挙げることができる。
【0066】
停止ステップとしては、例えば酸素、または末端停止剤を用いた反応停止を挙げることができる。
【0067】
得られたキャップ化したポリマー生成物の精製ステップとしては、最終ポリマー生成物からの触媒除去を挙げることができる。精製は、最終生成物を含む反応混合物をアルミナカラム、シリカカラム、活性炭、銅捕捉基を有する架橋ポリマーに通すこと、または銅キレート基を有する材料で反応混合物を処理することにより実施されうる。
【0068】
図10に示されるように、最終生成物を置換反応によって官能基化するために以下のステップ:最終ポリマー生成物を提供する510ステップ、反応を停止する514ステップ、反応混合物を精製する516ステップ、ポリマー中間体のハロゲン原子を求核試薬で置換する518ステップ、および置換されたポリマー生成物を精製する516ステップを含んでいてよい。
【0069】
停止ステップとしては、例えば反応を酸素、または末端停止剤で停止することを挙げることができる。
【0070】
反応混合物の精製ステップとしては、最終ポリマー生成物からの触媒除去を挙げることができる。精製は、最終生成物を含む反応混合物をアルミナカラム、シリカカラム、活性炭、銅捕捉基を有する架橋ポリマーに通すこと、または銅キレート基を有する材料で反応混合物を処理することにより実施されうる。
【0071】
ハロゲン原子の置換のための求核試薬としては、例えばホスフィン、チオレート、アミン、アジド、カルボキシレート、アルコキシド、およびナトリウムカルボキシレートを挙げることができる。
【0072】
最終精製ステップとしては、最終生成物を含む反応混合物をアルミナカラムに通すことを挙げることができる。また、本方法は、コポリマーおよび/またはブロックコポリマーの形成を含む。従って、本方法は、容器に最初に充填されたモノマーとは異なるモノマーを逐次的に添加するステップ、および所望の転化率レベルに達するまで(b)から(d)のステップを繰り返すステップを含む。反応容器中で第1の反応が所望の転化率レベルにまで進行した後、異なったモノマーが反応容器に添加されてよい。この反応は異なったモノマーブロックの構成を進める。代案として反応が所望の転化率レベルに達した後、反応は停止および精製されてよい。次いで新たな配位子および触媒を備えた装置10に、ジハロポリマー生成物が第2のモノマーと共に使用されてよく、このジハロポリマー生成物は逐次重合のためのマクロ開始剤としての役割を果たすことができる。得られたポリマーは1種以上の様々な形態を取るブロックコポリマーであってよい。これらの形態としては、例えばテレケリックポリマー(官能基化末端基を有するポリマー)および/またはブロックコポリマーを挙げることができる。
【0073】
本発明の方法の最終生成物としては、例えばブロック、ランダム、統計上周期的な、勾配星型、グラフト、くし型、(超)分岐鎖または樹枝状ポリマーといった形状を取りうるホモポリマーおよび/または(コ)ポリマーが挙げられる。従来の用語の括弧でくくられた接頭語「(コ)」は選択肢であり、すなわち(コ)ポリマーはコポリマーまたはホモポリマーを含むポリマーを意味する。同様に本明細書で用いる場合、「(超)」は、低度の分岐に比べてコポリマー骨格に沿った比較的高度の樹枝状様の分岐を意味する。
【0074】
本発明は、周期的または交互コポリマーを調製するために使用されてよい。本発明の方法は、特に、モノマーの1つが1つまたは2つの嵩高い置換基を有する交互コポリマーを製造するのに役立つことができ、立体上の理由が存在するために前記モノマーからホモポリマーを製造するのが難しい可能性がある。電子供与性および電子受容性のモノマーの共重合は、大部分が交互モノマー構造を有する生成物を形成することになる。
【0075】
いわゆる「交互」コポリマーは、本発明の方法100、200、300、および400を用いて製造されうる。「交互」コポリマーは、電子供与性を有する1種以上のモノマーと電子受容型の性質を有する1種以上のモノマー(アクリレート、メタクリレート、不飽和ニトリル、不飽和ケトンなど)との共重合によって製造される。また、本発明のランダムまたは交互コポリマーは、任意の発明のブロック、星型、グラフト、くし型または超分岐コポリマーにおけるブロックとしても役割を果たすことができる。
【0076】
末端生成物は、分子量、多分散、単峰性の分子量分布などの1つ以上によって特徴付けられてよい。本発明の方法の1つ以上は、分子量2,000から20,000,000g/モルのポリマー生成物を与えることができる。また、ポリマー生成物は単峰性のポリマー分子量分布を有する。さらに、またポリマー生成物は約1.01から約2の多分散性を有してよい。ある実施形態では、本明細書に記載された方法によって製造されたポリマーは少なくとも約500の数平均分子量を有する。さらに別の実施形態では、ポリマーは少なくとも1,000,000の数平均分子量を有する。
【0077】
本発明は、好ましい実施形態と関連付けながら説明されてきたが、当業者であれば添付の請求項で定義される本発明の基本的な性質および範囲から逸脱することなく、様々な変更が行なわれてよいことを理解できると考えられる。本明細書で開示されたあらゆる実施形態は、他の特徴と組合せて使用されてよい。
【実施例】
【0078】
重合反応器の説明
図12に模式的に示されている反応器の装置は、機械的攪拌器(A)、サーモカップル(B)、アルゴンパージおよび真空破壊ライン(C)、IR光学的導光によって遠隔FTIR分光光度計に接続されたATR赤外検出器プローブ(D)、およびドライアイス凝縮器(E)が取り付けられた2重壁の3リットルのガラス反応器を含む。重合混合物は内部の容器に含まれる一方、反応発熱の制御を補助するために循環冷却液(F)がポンプで外部の室を通して送られた。反応器は、触媒上で重合反応を開始してモノマーおよび重合混合物をこの触媒を通してポンプ(I)で送って重合反応を持続することができるように、固体(例えば、銅)触媒(H)を含む外部のスチール室(G)に接続された。また、反応器には真空/排気ライン(J)に接続されたドライアイス凝縮器が取り付けられた。図12は、SET−LRP反応のための反応器の装置の概略図を示し、図1および6ならびにこれらの説明と相互参照することができる。
【0079】
本実験装置では、発熱重合反応中に混合物を外部の触媒室に通すポンプ速度を変えることによって、反応温度を便利に正確に制御することが可能であった。流量を低下させることによって重合速度は遅くなり、温度は低くなった。完全に流れを止めて重合反応を一時的に停止することができる。対照的に、触媒表面上の流れを増加すると重合速度が増加し、温度が上がる。得られるポリマーの構造または組成、または重合方法のリビング性に悪影響を与えずに要望通り工程の間に流量を変化させ、任意の回数止めることができる。赤外線プローブは、アクリレート二重結合の消失による1637cm−1での吸光度変化をモニターすることによって、平均モノマー消費量をリアルタイムに測定することを可能にした。
【0080】
実施例1.(DG 320205−W)
DMSO中の9Kジブロモ末端停止ポリ(メチルアクリレート)の合成
【0081】
【化1】
【0082】
外部の触媒室(実施例1に記載するように取り付けた)を有する3Lの重合反応器に、メチルアクリレート(959.90g;11.15モル)、DMSO(277.8g)およびトリス(2−メチルアミノエチル)アミン(0.638g;11.11ミリモル)を添加した。次いで、この反応混合物を攪拌し、3℃に冷却し、30トールで45分間、アルゴン流通パージ下で排気した(またはアセトンおよびドライアイスの混合物を含む、塔頂部のドライアイス・コールドフィンガーで反応がわずかに還流するまで)。真空をアルゴンで破壊し、大気に対してわずかにアルゴンの正圧下で、ジエチルメソ−2,5−ジブロモアジペート(40.00g;0.11モル)を添加した。得られた混合物を攪拌し、30トールで20分間、アルゴン流通パージ下で排気し、この段階ではアジペートは完全に溶解した。真空をアルゴンで破壊した。次いで、攪拌混合物をポンプで400mL/分の速度で、40.6×8.9×0.03cm3の寸法を有する30×30メッシュ銅スクリーンのロールを含有する外部の触媒室に通した。
【0083】
誘導期間0.6時間の後、反応温度およびモノマー転化率は急激に上昇し始めた(図13)。ポンプを1.2時間動かした後、反応温度およびモノマー転化率は、それぞれ26℃および20%に増加した。この時、触媒ポンプを止め、ほとんどすぐに反応発熱は低下し、モノマーの消費は止まった。さらに0.3時間後、攪拌混合物の温度は9℃に下がり、ポンプを再び動かした。重合反応はすぐに再開した。ポンプをさらに0.5時間動かした後(200ml/分)、反応温度およびモノマー転化率は、それぞれ41℃および36%であった。触媒ポンプを再度止め、再びほとんどすぐに反応発熱は低下し、モノマー消費は止まった。触媒ポンプの始動および停止を3回および4回行なったとき(400ml/分)、反応発熱およびモノマー転化が再開始し、そしてそれに応じて最終モノマー転化率98%を達成するまで発熱および転化は減少した。結果を図13にグラフで示し、開始剤の添加を0時間(t=0)で示す。
【0084】
一定分量の粗反応混合物(100g)をジクロロメタン(208g)に溶解し、圧力下に、ステンレススチールの圧力フィルターに含まれている中性アルミナのベッドによりろ過した。ろ液を水で洗浄(3×100mL)し、無水硫酸マグネシウム(20g)上で乾燥し、ろ過して減圧下(11トール、50℃)で溶媒を除去し、ジブロモ末端停止ポリマーを粘性の液体(30.86g;収率40%)として得た。
【0085】
ポリマーの構造をクロマトグラフ分析および分光分析によって確認した。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC:THF;1mL/分;RI検出器;PMMA較正)は、11,900の数平均分子量(Mn)および1.11の多分散性を示した。これらの値は、8,900の理論Mnおよび約1.01のポアソン分布に密接に対応する。1H−NMRスペクトル(300MHz;CDCl3)は、ジブロモ末端停止ポリマーに特有の3つのシグナル:(a)δ4.23、t、[−CH(COOR)Br];(b)δ4.12、q、(−OCH2−Me);および(c)δ3.64、s、[−C(O)−OCH3]を示す。これらのシグナルの積分は、末端基/開始剤フラグメント比[(b)/(a)]が2および平均重合度、DPave、[2/3(c)/(a)]が111であることを示す。この値は、相関関係:
DPave=[M]/[I](fconv)+重合開始剤のMW
(ここで[M]/[I]は重合開始剤に対するモノマーのモル比であり、fconvはモノマー転化率を表す)から予測される対応する理論値の103に非常に近い。この結果は、実験誤差の限界内でポリマーが完全に2官能性であることを示す。図13は、外部の触媒室を使用した、制御された断続的なポンプ操作によるメチルアクリレート重合の時間−温度および転化率プロファイルを示す。
【0086】
この実験は、重合するモノマーを外部の触媒室を通して断続的にポンプ操作することで、本重合方法のリビング性に悪影響を及ぼすことなく反応発熱を制御できることを明確に証明する。反応はほとんどすべて、外部の室中に含まれた固体触媒表面、または表面近辺で起き、触媒から離れた反応媒体中では比較的起きない。本方法によって、揮発性モノマー、メチルアクリレートの迅速な重合を低い温度および高い転化率で達成した。さらに、多分散性が低くおよび理論値と実験値の分子量がほとんど同じであることは、本方法がリビングであることを支持している。
【0087】
実施例2.(DG 311370−2)
17Kジブロモ末端停止5/3/2 EA/MEA/BAターポリマーの合成
【0088】
【化2】
【0089】
上記の3L重合反応器にエチルアクリレート(854.4g;8.58モル)、2−メトキシエチルアクリレート(666.3g;5.12モル)、n−ブチルアクリレート(437.5g;3.41モル)、ジメチルスルホキシド(DMSO;541.5g;6.93モル)およびトリス(2−メチルアミノエチル)アミン(1.356g;5.89ミリモル)(Me6−TREN;M.CiampoliniによってInorg.Chem.1966,5(1),41に記載されたように製造した)を添加した。反応混合物を攪拌し、10℃に冷却し、20トールで45分間、アルゴン流通パージ下で排気した。真空をアルゴンで破壊し、大気に比べてわずかにアルゴンの正圧下、ジエチルメソ−2,5−ジブロモアジペート(42.38g;0.118モル)を添加した。得られた混合物を攪拌し、20トールで30分間、アルゴン流通パージ下で排気し、この段階ではアジペートは完全に溶解した。次いで、攪拌混合物をポンプで400mL/分の速度で、43.7×7.6×0.03cm3の寸法を有する30×30メッシュ銅スクリーンのロールを含有する外部の触媒室に通した。2時間後、ポンプ流量を200mL/分に低下し、反応溶液は緑色を発現した。次の1.5時間で反応温度は40℃に増加し、重合反応が起きるにつれてアクリレートの二重結合に基づく〜1637cm−1でのIR吸光度が減衰するのを観察した。触媒ポンプを停止し、反応はただちに劇的に遅くなり、〜1637cm−1でのIR吸光度が示すように20分以内に停止した(転化率:75.4%)。15.2×2.5×0.03cm3の寸法を有する30×30メッシュ銅スクリーンを反応に入れた。反応混合物を23℃に冷却し、その温度でさらに13時間維持し、>99%のモノマー消費を観察した(IRスペクトルにおける1635cm−1での吸光バンドの消失)。粗ポリマー混合物を5リッター容器に移し、ジクロロメタン(2.5L)で希釈し、圧力下、ステンレススチール圧力フィルターに含まれる中性アルミナベッド(1kg)に通した。ジクロロメタンおよび一部のDMSOを減圧下(11トール、50℃)で除去し、粗ジブロモ末端停止ターポリマーを粘性の液体(1.876g;83重量%のジブロモ末端停止ポリマーおよび17重量%のDMSO;73%の推定ポリマー収率)として得た。生成物の構造および組成を、以下の説明の赤外線および1H−NMR分光法ならびにサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で確認した。
【0090】
IR(ATRモード):IRでアクリレート二重結合に関係する@〜1661cm−1および〜1637cm−1のピークが消失したことを確認する。
【0091】
1H−NMR(300MHz;CDCl3):δ4.28、t、δ3.90−4.30ピークの肩[−CH(COOR)Br];δ3.90−4.30、350H(−OCH2);δ3.53、m、103H(−CH2OMe);δ3.32、s、148H(−OCH3);δ2.29、幅広m、178H{主鎖α−メチン[−CH(COOR)CH2]n};δ1.26−1.97、m、{主鎖β−メチレン[−CH(COOR)CH2]n、ブチルおよびアジペートの−CH2CH2−};δ1.21、t、(エチルの−CH3);δ0.90、t、92H。
【0092】
SEC(THF;1mL/分;RI検出器):平均Mn(PMMA較正)=19,800;多分散性=1.24(単峰性の分布);Mn(理論)=17,100。
【0093】
実施例3.(RC 316919)
アクリレート末端官能基化17Kポリアクリレートターポリマーの合成
【0094】
【化3】
【0095】
機械的攪拌器および2重タービン翼、サーモカップル、還流凝縮器ならびに加熱マントルを取り付けた5Lのガラス反応器に、4−メトキシフェノール(0.32g;0.026モル)、実施例1のジブロモ末端停止アクリレートターポリマー(1,546.00g)およびDMSO(2,319g)を添加した。混合物を攪拌し、45℃で約1時間加熱してポリマーを溶解し、その後、粉砕ナトリウムアクリレート(73.45g;0.78モル)を添加した。加熱および攪拌をさらに144時間続けた。セライト(45g)を添加し、混合物を25分間攪拌し、圧力下でろ過した。ろ液を蒸留フラスコに移し、回転エバポレーターで772gのDMSOを除去(70℃、〜20トール)して濃縮した。濃縮溶液を機械的攪拌器が取り付けられた12Lフラスコに移し、3.3Lのジクロロメタンで希釈し、3×3.3Lで水洗した。ジクロロメタン溶液を30分間、2,000rpmで遠心分離機にかけ、残余の水を分離した。硫酸マグネシウム(150g)を添加し、混合物を圧力下でろ過し、溶媒を減圧下で除去して、鎖末端で置換されたアクリレート基を有するわずかに濁った液体ポリマーを得た(1,202g;収率78%)。ポリマーの構造および組成を、以下の説明の赤外線および1H−NMR分光法ならびにサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で確認した。ポリマー鎖当たりの末端アクリレート基の平均個数をNMRスペクトルから1.9であると推定した。
【0096】
IR(ATRモード):1727cm−1のポリアクリレートのエステルカルボニル
【0097】
1H−NMR(300MHz;CDCl3):δ6.45、d、2H(C1末端アルケン;シソイド);δ6.15、m、1H(C2末端アルケン);δ5.90、d、2H(C1末端アルケン;トランソイド);δ5.00、m、2H(C4メチン、α−エステル);δ3.90−4.30、m、309H(−OCH2−)(NMRスペクトルからの推定平均Mn=18,200)。
【0098】
SEC(THF;1mL/分;RI検出器):平均Mn(PMMA較正)=20,600;多分散性=1.30(単峰性の分布)。
【0099】
実施例4.(DG 311388)
30Kジブロモ末端停止5/3/2 EA/MEA/BAターポリマーの合成
上記の3L重合反応器に、エチルアクリレート(431.3g;4.31モル)、2−メトキシエチルアクリレート(336.6g;2.58モル)、n−ブチルアクリレート(220.8g;1.72モル)、ジメチルスルホキシド(DMSO;273.4g;3.50モル)およびトリス(2−メチルアミノエチル)アミン(0.428g;1.86ミリモル)を添加した。反応混合物を攪拌し、10℃に冷却し、20トールで45分間、アルゴン流通パージ下で排気した。真空をアルゴンで破壊し、大気に比べてわずかにアルゴンの正圧下、ジエチルメソ−2,5−ジブロモアジペート(13.36g;0.0371モル)を添加した。得られた混合物を攪拌し、20トールで30分間、アルゴン流通パージ下で排気し、この段階ではアジペートは完全に溶解した。次いで、攪拌混合物をポンプで500mL/分の速度で、38.6×17.8×0.03cm3の寸法を有する30×30メッシュ銅スクリーンのロールを含有する外部の触媒室に通した。反応は徐々に28.8℃に発熱し、次いで、11.7時間で徐々に25℃に冷え、この時点で、反応は転化率92.7%に達した(重合反応が起きるにつれてアクリレートの二重結合に基づく〜1637および1621cm−1でのIR吸光度が減衰するのを観察した)。ポンプを止め、次いで、一夜、低い濃度のCu(0)を連続して反応に供給するために、2.54×15.24×0.03cm3の寸法を有する30×30メッシュ銅スクリーンからなる触媒を反応器に入れた。さらに12.1時間後、IRが示すように反応は98.6%の転化率に達した(アクリレートの二重結合に関係する〜1637および1621cm−1のIR吸光度の消失)。
【0100】
実施例1に記載した粗ジブロモターポリマーを単離した(〜15%のDMSOを含む822グラムの粗ポリマー、82%のブロモ末端停止ポリアクリレートの収率)。SEC分析は、ターポリマーが30,200の数平均分子量(Mn)および1.13の多分散性(単峰性)を有することを示した。ポリマーの誘導結合プラズマ発光分光法(ICP−AES)による分析は、残留する銅濃度が1ppm未満であることを示した(この方法の検出限界以下)。
【0101】
実施例5.(RC 316928)
アクリレート末端官能基化30Kポリアクリレートターポリマーの合成
機械的攪拌器および2重タービン翼、サーモカップル、還流凝縮器を取り付けた0.5Lのガラスジャッケト付き反応器に、実施例4からのジブロモ末端停止アクリレートターポリマー(156.40g)、DMSO(242.6g)および4−メトキシフェノール(0.051g)を添加した。混合物を攪拌し、45℃で約1時間加熱してポリマーを溶解し、その後、粉砕ナトリウムアクリレート(4.87g;0.052モル)を添加した。加熱および攪拌をさらに96時間続け、この時点で反応混合物を23℃に冷却し、ジクロロメタン(1,620g)で希釈し、セライトのベッドによりろ過して不溶の塩を除去した。ろ液を3×1.0Lで水洗したが、毎回水洗後に有機相と水相の分離を加速するために遠心分離機を使用した。有機フラクションを硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過し、溶媒を減圧下で除去して、必要なアクリレート末端停止ターポリマーを黄色の粘性の液体として得た(102.54g;67%)。ポリマーの構造および組成を以下に説明する1H−NMRおよびSEC分析によって確認した。ポリマー鎖当たりの末端アクリレート基の平均個数をNMRスペクトルから1.8であると推定した。
【0102】
1H−NMR(300MHz;CDCl3):δ6.45、d、2H(C1末端アルケン;シソイド);δ6.15、m、1H(C2末端アルケン);δ5.90、d、2H(C1末端アルケン;トランソイド);δ5.00、m、2H(C4メチン、α−エステル);δ3.90−4.30、m、534H(−OCH2−)(NMRスペクトルからの推定平均Mn=30,900)。
【0103】
SEC(THF;1mL/分;RI検出器):平均Mn(PMMA較正)=30,200;多分散性=1.15(単峰性の分布)。
【0104】
実施例6.(RC 316930)
メタクリレート末端官能基化30Kポリアクリレートターポリマーの合成
【0105】
【化4】
【0106】
機械的攪拌器および2重タービン翼、サーモカップル、還流凝縮器を取り付けた0.5Lのガラスジャッケト付き反応器に、実施例4からのジブロモ末端停止アクリレートターポリマー(156.40g)、DMSO(349.6g)および4−メトキシフェノール(0.051g)を添加した。混合物を攪拌し、45℃で約1時間加熱してポリマーを溶解し、その後、粉砕ナトリウムメタクリレート(5.60g;0.052モル)を添加した。加熱および攪拌をさらに96時間続け、この時点で反応混合物を23℃に冷却し、ジクロロメタン(750g)で希釈し、ろ過して不溶性固体を除去した。ろ液を3×1.0Lで水洗したが、毎回水洗後に有機相と水相の分離を加速するために遠心分離機を使用した。有機フラクションを硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過し、溶媒を減圧下で除去して、必要なメタクリレート末端停止ターポリマーを黄色の粘性の液体として得た(88.21g;59%)。ポリマーの構造および組成を以下に説明する1H−NMRおよびSEC分析によって確認した。ポリマー鎖当たりの末端メタクリレート基の平均個数をNMRスペクトルから1.7であると推定した。
【0107】
1H−NMR(300MHz;CDCl3):δ6.15、s、2H(C1末端アルケン);δ5.60、s、2H(C1末端アルケン);δ5.00、m、2H(C4メチン、α−エステル);δ3.90−4.30、m、554H(−OCH2−)(NMRスペクトルから推定された平均Mn=32,000)
【0108】
SEC(THF;1mL/分;RI検出器):平均Mn(PMMA較正)=29,900;多分散性=1.13
【0109】
実施例7.(DG 320212−W)
メタノール中での9Kジブロモ末端停止ポリ(メチルアクリレート)の合成
【0110】
【化5】
【0111】
外部の触媒室を有する(実施例1に記載したように取り付けた)3L重合反応器に、メチルアクリレート(959.90g;11.15モル)、メタノール(386.3g)およびトリス(2−メチルアミノエチル)アミン(2.56g;11.11ミリモル)を添加した。次いで、反応混合物を攪拌し、3℃に冷却し、50トールで45分間、アルゴン流通パージ下で排気した(またはアセトンおよびドライアイスの混合物を含む、塔頂部のドライアイス・コールドフィンガーで反応がわずかに還流するまで)。真空をアルゴンで破壊し、大気に比べてわずかにアルゴンの正圧下、ジエチルメソ−2,5−ジブロモアジペート(40.00g;0.11モル)を添加した。得られた混合物を攪拌し、45トールで20分間、アルゴン流通パージ下で排気し、この段階ではアジペートは完全に溶解した。真空をアルゴンで破壊した。次いで、攪拌混合物をポンプで400mL/分の速度で、40.6×8.9×0.03cm3の寸法を有する30×30メッシュ銅スクリーンのロールを含有する外部の触媒室に通した。1.2時間後、ジャケット温度を20℃に上げ、定常的な重合反応が約2時間に渡って起きた。この間、反応発熱は43℃がピークであり、赤外線スペクトルの1637および1621cm−1での吸光度ピークは、モノマー転化率85%に合わせて減少した。ジャケット温度を25℃に維持した。モノマー転化率が次の1.5時間で88%に増加した。一部の反応混合物(80.85g)を取り出し、この混合物に追加量のトリス(2−エチルアミノエチル)アミン(0.697g;3.03ミリモル)を添加した。反応をさらに4時間継続し、この時点でモノマー消費は>98%(粗ポリマー溶液)であった。
【0112】
一定分量のポリマー溶液(96g)を取り出し、溶媒を減圧下(11トール、50℃)で留去して粗ポリマー(69.9g)を単離した。ポリマー試料をジクロロメタン(208グラム)に溶解し、圧力下に、ステンレススチールの圧力フィルターに含まれている中性アルミナベッド(100グラム)によりろ過した。ろ過溶液を水で洗浄(3×100mL)し、無水硫酸マグネシウム(20g)上で乾燥し、ろ過して減圧下(11トール、50℃)で溶媒を除去し、ジブロモ末端停止ポリマーを非常に粘性の液体/準固体として得た(53.1g;76%の推定収率)。ポリマーの構造をNMRおよびIRスペクトル分析によって確認した。
【0113】
SEC(THF;1mL/分;RI検出器):平均Mn(PMMA較正)=11,883;多分散性=1.11。
【0114】
実施例8.(DG 320212)
ヒドロキシ末端官能性9Kポリ(メチルアクリレート)の合成
【0115】
【化6】
【0116】
実施例6の残りの粗ポリマー溶液に、追加量のトリス(2−メチルアミノエチル)アミン(0.62g;2.7ミリモル)および2−アリルオキシエタノール(95.8g;0.94モル)を添加し、さらに混合物を12時間、ポンプで外部の触媒室に通した。反応混合物をTHF(3L)で希釈し、中性アルミナベッド(1kg)により2回ろ過した。アルミナベッドを追加のTHF(1L)で洗浄し、合わせたろ液を減圧下で蒸発させて溶媒および残留する未反応2−アリルオキシエタノールを除去し、必要なジヒドロキシル末端停止ポリ(メチルアクリレート)を非常に粘性の液体(700g;63%の収率)として単離した。
【0117】
比較例1.
ATRPによるアクリレート末端官能基化20Kポリアクリレートターポリマーの合成
実施例2の記載と同じ割合のエチル、2−メトキシエチルおよびブチルアクリレートのアクリレート末端停止ターポリマーを、臭化第1銅を触媒として使用するCA特許第2,540,698号公報に記載の方法に従った原子移動ラジカル重合(ATRP)方法によって合成した。IRおよび1H−NMRは、この方法によって得られたポリマーが実施例3で得た生成物に構造上類似していることを示した。しかしながら、SEC分析は、2峰性の分子量分布、理論的に予測した値の20,000に近い低分子量成分(Mn=20,900)およびさらに高分子量成分(Mn=39,800)を約10/1の比で示した。この結果は、実施例3の結果とは対照的であり、SET−LRPによって製造された対応するポリマーは、Mn=20,600であり期待される値に近く、単一の分布を有することが判明した(図14)。この結果は、臭化第1銅触媒を使用するATRP法では、活性ラジカルの2分子カップリングにより少量だが顕著な量の不活性ポリマーが生成することを示している。この望ましくない副生物は、実施例3のSET−LRPによって製造された対応するポリマー中には存在しない。図14は、CA特許第2,540,689号公報に記載のATRPおよび実施例3のSET−LRPによって合成されたアクリレートターポリマーの対照的なSECクロマトグラム(THF;1mL/分)を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御されたラジカル重合を実施する方法であって、以下のステップ:
(a)少なくとも1種のモノマー、
前記モノマーのための少なくとも1種の溶媒、
金属に配位することができる少なくとも1種の化合物、および
少なくとも1種の開始剤、
の混合物を反応容器に充填するステップ、
(b)前記反応混合物をある流量で、前記反応容器に対して外部の触媒室に含まれた前記触媒固体表面上に誘導するステップであって、前記触媒表面は少なくとも2つの酸化状態をとることができる金属または金属化合物を含み、
(c)前記反応容器の温度を選択された温度範囲でモニターするステップ、
(d)前記温度が前記選択された温度範囲外である場合、前記流量を調節するステップ、および
(e)所望の転化率レベルに到達するまで前記重合を進行させるステップ、
を含む、方法。
【請求項2】
さらに、前記所望の転化率レベルに達するまでステップ(b)から(d)を繰り返すことを含む、請求項1の方法。
【請求項3】
さらに、前記反応混合物の転化率レベルを分析機器で測定することを含む、請求項1の方法。
【請求項4】
さらに、前記触媒が、Cu(0)、Cu2S、Cu2Te、Cu2Se、Mn、Ni、Pt、Fe、Ru、Vおよびこれらの組合せからなる群より選択される1つを含む、請求項1の方法。
【請求項5】
さらに、前記重合を加速するために、少なくとも1種の銅(I)化合物を添加することを含む、請求項1の方法。
【請求項6】
前記触媒表面がさらに銅金属または銅金属合金を含む、請求項1の方法。
【請求項7】
さらに、前記触媒が、線、メッシュ、スクリーン、削りくず、粉末、ガーゼ、焼結体、スライバー、管、結晶、またはこれらの組合せの形態の1つである、請求項1の方法。
【請求項8】
前記方法がさらに、単電子移動リビングラジカル重合を含む、請求項1の方法。
【請求項9】
前記方法がさらに、原子移動ラジカル重合を含む、請求項1の方法。
【請求項10】
前記方法がさらに、単電子移動ラジカル重合および原子移動ラジカル重合の組合せを含む、請求項1の方法。
【請求項11】
さらに前記転化率レベルが、分光分析で測定される、請求項1の方法。
【請求項12】
さらに前記分光分析が、赤外線分光法で完結される、請求項11の方法。
【請求項13】
前記調節ステップが、流量の増加、流量の低下、流量の停止、およびこれらの組合せの少なくとも1つから選択される、請求項1の方法。
【請求項14】
さらに、前記方法が実質的に酸素の存在しない中で実施される、請求項1の方法。
【請求項15】
さらに、前記反応容器を非反応性ガスで継続してパージすることを含む、請求項14の方法。
【請求項16】
さらに、前記反応混合物を前記選択された温度範囲に維持するのに役立つために、前記触媒室に近接する熱交換器を含む、請求項1の方法。
【請求項17】
さらに、前記ポリマー上に少なくとも1つの官能性末端基を形成するために、前記得られたポリマーを反応させることを含む、請求項1の方法。
【請求項18】
さらに、前記さらに反応させることが、末端キャッピング反応または置換反応を含む、請求項17の方法。
【請求項19】
前記末端キャッピング反応が、
前記容器にキャッピング剤を添加するステップ、
前記反応を停止するステップ、および
キャップされたポリマー生成物を精製するステップ、
を含む、請求項18の方法。
【請求項20】
前記置換反応が、
前記反応を停止するステップ、
前記反応混合物を精製するステップ、
ポリマー中間体の前記ハロゲン原子を求核試薬で置換するステップ、および
置換されたポリマー生成物を精製するステップ、
を含む、請求項18の方法。
【請求項21】
前記開始剤が、ジエチルメソ−2,5−ジブロモアジペート;ジメチル2,6−ジブロモヘプタンジオエート、エチレングリコールビス(2−ブロモプロピオネート);エチレングリコールモノ−2−ブロモプロピオネート;トリメチロールプロパントリス(2−ブロモプロピオネート);ペンタエリスリトールテトラキス(2−ブロモプロピオネート);2,2−ジクロアセトフェノン;メチル2−ブロモプロピオネート;メチル2−クロロプロピオネート;N−クロロ−2−ピロリジノン;N−ブロモサクシンイミド;ポリエチレングリコールビス(2−ブロモプロピオネート);ポリエチレングリコールモノ(2−ブロモプロピオネート);2−ブロモプロピオニトリル;ジブロモクロロメタン;2,2−ジブロモ−2−シアノアセタミド;α,α’−ジブロモ−オルト−キシレン;α,α’−ジブロモ−メタ−キシレン;α,α’−ジブロモ−パラ−キシレン;α,α’−ジクロロ−パラ−キシレン;2−ブロモプロピオン酸;メチルトリクロロアセテート;パラ−トルエンスルホニルクロリド;ビフェニル−4,4’−ジスルホニルクロリド;ジフェニルエーテル−4,4’−ジスルホニルクロリド;ブロモホルム;ヨードホルム;四塩化炭素;およびこれらの組合せからなる群より選択される1つを含む、請求項1の方法。
【請求項22】
前記少なくとも1種のモノマーが、アルキル(メタ)アクリレート;アルコキシアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロニトリル;塩化ビニリデン;スチレン系モノマー;アルキルフマレート;アルコキシアルキルフマレート;およびアルキルマレエート;アルコキシアルキルマレエート;シンナメート;アクリルアミド;N−アルキルおよびアリールマレイミド(メタ)アクリル酸;フマル酸、マレイン酸、桂皮酸;およびこれらの組合せからなる群より選択される、請求項1の方法。
【請求項23】
少なくとも1種のモノマーが、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、第3級ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、トルイル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−アミノエチル(メタ)アクリレート、(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸−エチレンオキシド付加物、トリフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、2−トリフルオロメチルエチル(メタ)アクリレート、2−ペルフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、2−ペルフルオロエチル−2−ペルフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、2−ペルフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペルフルオロメチル(メタ)アクリレート、ジペルフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、2−ペルフルオロメチル−2−ペルフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、2−ペルフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、2−ペルフルオロデシルエチル(メタ)アクリレートおよび2−ペルフルオロヘキサデシルエチル(メタ)アクリレート;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、スチレンスルホン酸およびこれらの塩、ペルフルオロエチレン、ペルフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸モノアルキルエステル、フマル酸ジアルキルエステル、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、ニトリル含有ビニルモノマー、アミド含有ビニルモノマー;ビニルエステル;アルケン;共役ジエン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール、およびこれらの組合せからなる群より選択される、請求項22の方法。
【請求項24】
さらに、最初に充填されたモノマーとは異なる逐次モノマーを添加するステップ、および所望の転化率レベルに達するまで、ステップ(b)から(d)を繰り返すステップ、
を含む、請求項1の方法。
【請求項25】
さらに、ブロックコポリマーを形成するステップを含む、請求項24の方法。
【請求項26】
さらに、2,000から20,000,000g/モルの分子量を有するポリマー生成物を形成するステップを含む、請求項1の方法。
【請求項27】
さらに、単峰性のポリマー分子量分布を有するポリマー生成物を形成するステップを含む、請求項1の方法。
【請求項28】
さらに、約1.01から約2の多分散度を有するポリマー生成物を形成するステップを含む、請求項1の方法。
【請求項29】
制御されたラジカル重合を実施するための方法であって、以下のステップ:
(a)少なくとも1種のモノマー、
前記モノマーのための少なくとも1種の溶媒、
金属に配位することができる少なくとも1種の化合物、および
少なくとも1種の開始剤、
の混合物を反応容器に充填するステップ、
(b)前記反応混合物をある流量で、前記混合物に対して外部の少なくとも1つの触媒コンバータ室を通して触媒コンバータ表面上に誘導するステップであって、前記触媒コンバータ室は少なくとも1つの熱交換器ユニットで前記混合物から分離され、前記触媒コンバータ表面は少なくとも2つの酸化状態をとることができる金属または金属化合物を含み、
(c)前記反応容器の温度を選択された温度範囲でモニターするステップ、および
(d)前記温度が前記選択された温度範囲外である場合、前記触媒室および熱交換器ユニットを通す前記流量を調節することによって前記反応混合物の温度を維持するステップ、
を含む、方法。
【請求項30】
さらに、前記反応混合物を前記反応容器に対して外部の一連の触媒コンバータ室を通して誘導するステップを含む、請求項29の方法。
【請求項31】
さらに、前記反応混合物を2つ以上の触媒コンバータの間に配置された複数の熱交換器ユニットを通して誘導するステップを含む、請求項30の方法。
【請求項32】
さらに、前記反応混合物を一連の交互にある熱交換器ユニットと触媒コンバータ室を通して誘導するステップを含む、請求項30の方法。
【請求項33】
さらに、転化率レベルを分析機器で測定するステップを含む、請求項29の方法。
【請求項34】
前記測定するステップがインラインで実施される、請求項33の方法。
【請求項35】
さらに、前記分析装置が、分光法デバイス、クロマトグラフィー機器、核磁気共鳴機器、質量分光分析機器、およびこれらの組合せからなる群より選択される、請求項33の方法。
【請求項36】
前記分析機器がフーリエ変換赤外分光計である、請求項33の方法。
【請求項37】
前記反応混合物の温度を維持するステップが、60℃より低い温度を維持することを含む、請求項29の方法。
【請求項38】
制御されたラジカル重合を実施する方法であって、以下のステップ:
(a)少なくとも1種のモノマー、
触媒の不均化を容易にするための少なくとも1種の溶媒、および
少なくとも1種の配位子、
の内の少なくとも2つの混合物を反応容器に充填するステップ、
(b)前記反応混合物をある流量で、前記混合物に対して外部の触媒コンバータ表面上に誘導するステップであって、前記触媒コンバータ表面は少なくとも2つの酸化状態をとることができる金属または金属化合物を含み、
(c)触媒が前記反応混合物に所望の濃度で可溶化するときを確定し、その後、少なくとも1種の開始剤を前記反応混合物中に含ませるステップ、
(d)前記反応容器の温度を選択された温度範囲でモニターするステップ、
(e)前記温度が前記選択された温度範囲外である場合、前記流量を調節するステップ、および
(f)所望の転化率レベルに到達するまで前記重合を進行させるステップ、
を含む、方法。
【請求項39】
単峰性のポリマー分子量分布を得るための方法であって、以下のステップ:
金属または金属化合物を不均化することができる反応組成物を提供するステップであって、前記組成物が、少なくとも1種のモノマー、前記モノマーのための少なくとも1種の溶媒、少なくとも1種の配位子、および少なくとも1種の開始剤を含むステップ、
前記不均化を可能にするために、
前記組成物をある流量で、前記組成物に対して外部の触媒コンバータ表面上に誘導するステップ、
(c)前記反応容器の温度を選択された温度範囲内でモニターするステップ、
(d)前記温度が前記選択された温度範囲外である場合、前記流量を調節するステップ、および
(e)所望の転化率レベルに到達するまで前記重合を進行させるステップ、
を含む、方法。
【請求項40】
制御されたリビングラジカル重合のための装置であって、以下:
反応容器であって、前記容器は材料を収納するように構成され、前記容器は容器入口および容器出口を有し、
少なくとも1つの触媒コンバータであって、前記コンバータは前記反応容器に対して外部に配置され、コンバータ入口およびコンバータ出口を有し、前記コンバータは固体金属触媒を収納し、前記材料が前記触媒と接触するための表面領域を提供するように構成され、前記触媒は前記反応容器と連通しており、
前記材料を前記コンバータ中にポンプで通し、前記触媒と接触させる前記流量を制御するためのポンプ、
少なくとも1つの熱交換器であって、ここで前記熱交換器は前記コンバータ出口と前記反応容器入口の間に配置される、
を含む、装置。
【請求項41】
さらに、前記反応容器中の第2の入口に対して構成されているインライン分析機器を含む、請求項40の装置。
【請求項42】
さらに、攪拌器を含み、前記攪拌器は前記反応容器内にその内の前記材料を攪拌するために配置されている、請求項40の装置。
【請求項43】
さらに、ガス入口およびガス出口を有するガス供給源を含み、前記ガス入口およびガス出口は、前記反応容器および前記触媒コンバータをガスでパージできるように前記反応容器に対して構成されている、請求項40の装置。
【請求項44】
さらに、材料が前記反応容器から逃げるのを防ぐために、前記反応容器と前記ガス出口の間に入るように構成された凝縮器を含む、請求項40の装置。
【請求項1】
制御されたラジカル重合を実施する方法であって、以下のステップ:
(a)少なくとも1種のモノマー、
前記モノマーのための少なくとも1種の溶媒、
金属に配位することができる少なくとも1種の化合物、および
少なくとも1種の開始剤、
の混合物を反応容器に充填するステップ、
(b)前記反応混合物をある流量で、前記反応容器に対して外部の触媒室に含まれた前記触媒固体表面上に誘導するステップであって、前記触媒表面は少なくとも2つの酸化状態をとることができる金属または金属化合物を含み、
(c)前記反応容器の温度を選択された温度範囲でモニターするステップ、
(d)前記温度が前記選択された温度範囲外である場合、前記流量を調節するステップ、および
(e)所望の転化率レベルに到達するまで前記重合を進行させるステップ、
を含む、方法。
【請求項2】
さらに、前記所望の転化率レベルに達するまでステップ(b)から(d)を繰り返すことを含む、請求項1の方法。
【請求項3】
さらに、前記反応混合物の転化率レベルを分析機器で測定することを含む、請求項1の方法。
【請求項4】
さらに、前記触媒が、Cu(0)、Cu2S、Cu2Te、Cu2Se、Mn、Ni、Pt、Fe、Ru、Vおよびこれらの組合せからなる群より選択される1つを含む、請求項1の方法。
【請求項5】
さらに、前記重合を加速するために、少なくとも1種の銅(I)化合物を添加することを含む、請求項1の方法。
【請求項6】
前記触媒表面がさらに銅金属または銅金属合金を含む、請求項1の方法。
【請求項7】
さらに、前記触媒が、線、メッシュ、スクリーン、削りくず、粉末、ガーゼ、焼結体、スライバー、管、結晶、またはこれらの組合せの形態の1つである、請求項1の方法。
【請求項8】
前記方法がさらに、単電子移動リビングラジカル重合を含む、請求項1の方法。
【請求項9】
前記方法がさらに、原子移動ラジカル重合を含む、請求項1の方法。
【請求項10】
前記方法がさらに、単電子移動ラジカル重合および原子移動ラジカル重合の組合せを含む、請求項1の方法。
【請求項11】
さらに前記転化率レベルが、分光分析で測定される、請求項1の方法。
【請求項12】
さらに前記分光分析が、赤外線分光法で完結される、請求項11の方法。
【請求項13】
前記調節ステップが、流量の増加、流量の低下、流量の停止、およびこれらの組合せの少なくとも1つから選択される、請求項1の方法。
【請求項14】
さらに、前記方法が実質的に酸素の存在しない中で実施される、請求項1の方法。
【請求項15】
さらに、前記反応容器を非反応性ガスで継続してパージすることを含む、請求項14の方法。
【請求項16】
さらに、前記反応混合物を前記選択された温度範囲に維持するのに役立つために、前記触媒室に近接する熱交換器を含む、請求項1の方法。
【請求項17】
さらに、前記ポリマー上に少なくとも1つの官能性末端基を形成するために、前記得られたポリマーを反応させることを含む、請求項1の方法。
【請求項18】
さらに、前記さらに反応させることが、末端キャッピング反応または置換反応を含む、請求項17の方法。
【請求項19】
前記末端キャッピング反応が、
前記容器にキャッピング剤を添加するステップ、
前記反応を停止するステップ、および
キャップされたポリマー生成物を精製するステップ、
を含む、請求項18の方法。
【請求項20】
前記置換反応が、
前記反応を停止するステップ、
前記反応混合物を精製するステップ、
ポリマー中間体の前記ハロゲン原子を求核試薬で置換するステップ、および
置換されたポリマー生成物を精製するステップ、
を含む、請求項18の方法。
【請求項21】
前記開始剤が、ジエチルメソ−2,5−ジブロモアジペート;ジメチル2,6−ジブロモヘプタンジオエート、エチレングリコールビス(2−ブロモプロピオネート);エチレングリコールモノ−2−ブロモプロピオネート;トリメチロールプロパントリス(2−ブロモプロピオネート);ペンタエリスリトールテトラキス(2−ブロモプロピオネート);2,2−ジクロアセトフェノン;メチル2−ブロモプロピオネート;メチル2−クロロプロピオネート;N−クロロ−2−ピロリジノン;N−ブロモサクシンイミド;ポリエチレングリコールビス(2−ブロモプロピオネート);ポリエチレングリコールモノ(2−ブロモプロピオネート);2−ブロモプロピオニトリル;ジブロモクロロメタン;2,2−ジブロモ−2−シアノアセタミド;α,α’−ジブロモ−オルト−キシレン;α,α’−ジブロモ−メタ−キシレン;α,α’−ジブロモ−パラ−キシレン;α,α’−ジクロロ−パラ−キシレン;2−ブロモプロピオン酸;メチルトリクロロアセテート;パラ−トルエンスルホニルクロリド;ビフェニル−4,4’−ジスルホニルクロリド;ジフェニルエーテル−4,4’−ジスルホニルクロリド;ブロモホルム;ヨードホルム;四塩化炭素;およびこれらの組合せからなる群より選択される1つを含む、請求項1の方法。
【請求項22】
前記少なくとも1種のモノマーが、アルキル(メタ)アクリレート;アルコキシアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロニトリル;塩化ビニリデン;スチレン系モノマー;アルキルフマレート;アルコキシアルキルフマレート;およびアルキルマレエート;アルコキシアルキルマレエート;シンナメート;アクリルアミド;N−アルキルおよびアリールマレイミド(メタ)アクリル酸;フマル酸、マレイン酸、桂皮酸;およびこれらの組合せからなる群より選択される、請求項1の方法。
【請求項23】
少なくとも1種のモノマーが、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、第3級ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、トルイル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−アミノエチル(メタ)アクリレート、(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸−エチレンオキシド付加物、トリフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、2−トリフルオロメチルエチル(メタ)アクリレート、2−ペルフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、2−ペルフルオロエチル−2−ペルフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、2−ペルフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペルフルオロメチル(メタ)アクリレート、ジペルフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、2−ペルフルオロメチル−2−ペルフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、2−ペルフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、2−ペルフルオロデシルエチル(メタ)アクリレートおよび2−ペルフルオロヘキサデシルエチル(メタ)アクリレート;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、スチレンスルホン酸およびこれらの塩、ペルフルオロエチレン、ペルフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸モノアルキルエステル、フマル酸ジアルキルエステル、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、ニトリル含有ビニルモノマー、アミド含有ビニルモノマー;ビニルエステル;アルケン;共役ジエン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール、およびこれらの組合せからなる群より選択される、請求項22の方法。
【請求項24】
さらに、最初に充填されたモノマーとは異なる逐次モノマーを添加するステップ、および所望の転化率レベルに達するまで、ステップ(b)から(d)を繰り返すステップ、
を含む、請求項1の方法。
【請求項25】
さらに、ブロックコポリマーを形成するステップを含む、請求項24の方法。
【請求項26】
さらに、2,000から20,000,000g/モルの分子量を有するポリマー生成物を形成するステップを含む、請求項1の方法。
【請求項27】
さらに、単峰性のポリマー分子量分布を有するポリマー生成物を形成するステップを含む、請求項1の方法。
【請求項28】
さらに、約1.01から約2の多分散度を有するポリマー生成物を形成するステップを含む、請求項1の方法。
【請求項29】
制御されたラジカル重合を実施するための方法であって、以下のステップ:
(a)少なくとも1種のモノマー、
前記モノマーのための少なくとも1種の溶媒、
金属に配位することができる少なくとも1種の化合物、および
少なくとも1種の開始剤、
の混合物を反応容器に充填するステップ、
(b)前記反応混合物をある流量で、前記混合物に対して外部の少なくとも1つの触媒コンバータ室を通して触媒コンバータ表面上に誘導するステップであって、前記触媒コンバータ室は少なくとも1つの熱交換器ユニットで前記混合物から分離され、前記触媒コンバータ表面は少なくとも2つの酸化状態をとることができる金属または金属化合物を含み、
(c)前記反応容器の温度を選択された温度範囲でモニターするステップ、および
(d)前記温度が前記選択された温度範囲外である場合、前記触媒室および熱交換器ユニットを通す前記流量を調節することによって前記反応混合物の温度を維持するステップ、
を含む、方法。
【請求項30】
さらに、前記反応混合物を前記反応容器に対して外部の一連の触媒コンバータ室を通して誘導するステップを含む、請求項29の方法。
【請求項31】
さらに、前記反応混合物を2つ以上の触媒コンバータの間に配置された複数の熱交換器ユニットを通して誘導するステップを含む、請求項30の方法。
【請求項32】
さらに、前記反応混合物を一連の交互にある熱交換器ユニットと触媒コンバータ室を通して誘導するステップを含む、請求項30の方法。
【請求項33】
さらに、転化率レベルを分析機器で測定するステップを含む、請求項29の方法。
【請求項34】
前記測定するステップがインラインで実施される、請求項33の方法。
【請求項35】
さらに、前記分析装置が、分光法デバイス、クロマトグラフィー機器、核磁気共鳴機器、質量分光分析機器、およびこれらの組合せからなる群より選択される、請求項33の方法。
【請求項36】
前記分析機器がフーリエ変換赤外分光計である、請求項33の方法。
【請求項37】
前記反応混合物の温度を維持するステップが、60℃より低い温度を維持することを含む、請求項29の方法。
【請求項38】
制御されたラジカル重合を実施する方法であって、以下のステップ:
(a)少なくとも1種のモノマー、
触媒の不均化を容易にするための少なくとも1種の溶媒、および
少なくとも1種の配位子、
の内の少なくとも2つの混合物を反応容器に充填するステップ、
(b)前記反応混合物をある流量で、前記混合物に対して外部の触媒コンバータ表面上に誘導するステップであって、前記触媒コンバータ表面は少なくとも2つの酸化状態をとることができる金属または金属化合物を含み、
(c)触媒が前記反応混合物に所望の濃度で可溶化するときを確定し、その後、少なくとも1種の開始剤を前記反応混合物中に含ませるステップ、
(d)前記反応容器の温度を選択された温度範囲でモニターするステップ、
(e)前記温度が前記選択された温度範囲外である場合、前記流量を調節するステップ、および
(f)所望の転化率レベルに到達するまで前記重合を進行させるステップ、
を含む、方法。
【請求項39】
単峰性のポリマー分子量分布を得るための方法であって、以下のステップ:
金属または金属化合物を不均化することができる反応組成物を提供するステップであって、前記組成物が、少なくとも1種のモノマー、前記モノマーのための少なくとも1種の溶媒、少なくとも1種の配位子、および少なくとも1種の開始剤を含むステップ、
前記不均化を可能にするために、
前記組成物をある流量で、前記組成物に対して外部の触媒コンバータ表面上に誘導するステップ、
(c)前記反応容器の温度を選択された温度範囲内でモニターするステップ、
(d)前記温度が前記選択された温度範囲外である場合、前記流量を調節するステップ、および
(e)所望の転化率レベルに到達するまで前記重合を進行させるステップ、
を含む、方法。
【請求項40】
制御されたリビングラジカル重合のための装置であって、以下:
反応容器であって、前記容器は材料を収納するように構成され、前記容器は容器入口および容器出口を有し、
少なくとも1つの触媒コンバータであって、前記コンバータは前記反応容器に対して外部に配置され、コンバータ入口およびコンバータ出口を有し、前記コンバータは固体金属触媒を収納し、前記材料が前記触媒と接触するための表面領域を提供するように構成され、前記触媒は前記反応容器と連通しており、
前記材料を前記コンバータ中にポンプで通し、前記触媒と接触させる前記流量を制御するためのポンプ、
少なくとも1つの熱交換器であって、ここで前記熱交換器は前記コンバータ出口と前記反応容器入口の間に配置される、
を含む、装置。
【請求項41】
さらに、前記反応容器中の第2の入口に対して構成されているインライン分析機器を含む、請求項40の装置。
【請求項42】
さらに、攪拌器を含み、前記攪拌器は前記反応容器内にその内の前記材料を攪拌するために配置されている、請求項40の装置。
【請求項43】
さらに、ガス入口およびガス出口を有するガス供給源を含み、前記ガス入口およびガス出口は、前記反応容器および前記触媒コンバータをガスでパージできるように前記反応容器に対して構成されている、請求項40の装置。
【請求項44】
さらに、材料が前記反応容器から逃げるのを防ぐために、前記反応容器と前記ガス出口の間に入るように構成された凝縮器を含む、請求項40の装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2011−524942(P2011−524942A)
【公表日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−514766(P2011−514766)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【国際出願番号】PCT/US2009/047579
【国際公開番号】WO2009/155303
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(500538520)ヘンケル コーポレイション (99)
【氏名又は名称原語表記】HENKEL CORPORATION
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【国際出願番号】PCT/US2009/047579
【国際公開番号】WO2009/155303
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(500538520)ヘンケル コーポレイション (99)
【氏名又は名称原語表記】HENKEL CORPORATION
【Fターム(参考)】
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