説明

制御された先端部材負荷用蒸着を含む大面積均質アレイの製作方法

先端部材のアレイに材料を負荷し、次にこの材料を先端部材から基板へ沈着させるための改良された方法を開示する。先端部材の負荷は制御された蒸着によって行うことができ、これにより、基板上への材料の非特異的な沈着の量が低減される。改良されたナノスケールおよびマイクロスケールの設計およびリソグラフィを実現することができる。用途としては、幹細胞研究および幹細胞分化制御をはじめとする、より優れた細胞研究が含まれる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年1月26日に出願された米国特許仮出願第61/147,448号の優先権を主張するものである。同仮出願は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
背景
ミクロ構造およびナノ構造を含む、大面積構造を製作するための既存の手順および装置の改良が必要とされている。例えば、1つの重要な技術分野は、先端部材(tip)または先端部材のアレイから材料を基板に移す能力である。例えば、直接描画パターニングまたはリソグラフィ法であるこの方法によって、ドットおよび線を形成することができる。ナノスケール先端部材を使用して、ナノスケール構造を形成することができる。このような構造の1つの用途としては、例えば、幹細胞をはじめとする、より優れた細胞工学が含まれる。
【発明の概要】
【0003】
概要
本明細書に記載される態様は、例えば、物品、装置、機器、ソフトウェア、製造方法、および使用方法を含む。
【0004】
例えば、一態様は、先端部材を含むカンチレバーの少なくとも1つのアレイを含む物品を提供し、先端部材を含むカンチレバーは当該先端部材から基板上への材料の沈着(deposition)に適合されており、アレイの先端部材密度が少なくとも1,000/平方インチであり、アレイが、材料の基板上への非特異的な沈着を実質的に防止するように制限された量の材料で均質に被覆されている。
【0005】
カンチレバーのアレイはカンチレバーの二次元アレイであってもよい。先端部材を含むカンチレバーのアレイはカンチレバーの二次元アレイであってもよく、x方向において、先端部材のカンチレバー間隔がx方向において5〜100nmであり、y方向において50ミクロン〜150ミクロンである。カンチレバーのアレイはカンチレバーの二次元直交アレイであってもよい。
【0006】
先端部材はナノスコピック先端部材であってもよい。先端部材は走査型プローブ顕微鏡先端部材であってもよい。先端部材は原子間力顕微鏡先端部材であってもよい。先端部材は中空先端部材であってもよい。先端部材は中実先端部材であってもよい。
【0007】
アレイの先端部材密度は、少なくとも10,000/平方インチ、または少なくとも40,000/平方インチ、または少なくとも70,000/平方インチであってもよい。
【0008】
材料は少なくとも1種類の有機材料を含んでいてもよい。材料は少なくとも1種類の硫黄化合物を含んでいてもよい。材料は少なくとも1種類のチオール化合物を含んでいてもよい。材料は少なくとも1種類の官能化されたまたは官能化されていないアルカンチオール化合物を含んでいてもよい。材料は溶媒を実質的に含まなくてもよい。
【0009】
基板は、材料に共有結合するかまたは化学吸着するように適合していてもよい。
【0010】
均質な被覆により、材料の基板上への沈着に関するスポットサイズが実質的に同じになり得る。さらに、非特異的な沈着の実質的な防止が、基板の少なくとも1平方cmにわたって観察され得る。
【0011】
別の態様は、先端部材を含むカンチレバーのアレイ上に少なくとも1種類の材料を蒸気コーティングする工程であって、先端部材を含むカンチレバーが、先端部材から基板上への材料の沈着に適合した、工程を含む方法であって、アレイの先端部材密度が少なくとも1,000/平方インチであり、蒸気コーティングされる材料の量が、基板上への材料の非特異的な沈着を実質的に防止するように制限されている、方法を提供する。
【0012】
蒸気コーティングは、1気圧未満の圧力および25℃を超える温度で行われてもよい。蒸気コーティングは、500ミリトル未満の圧力および50℃〜120℃の温度で行われてもよい。蒸気コーティングは、プログラム可能な真空炉を用いた少なくとも2つの蒸気コーティングサイクルを含むプロセスにおいて行われてもよい。蒸気コーティングは、第1の排気工程、続く第1の加熱工程、続く第1の冷却工程、そして次に、少なくとも第2の排気工程、続く第2の加熱工程、および第2の冷却工程によって行われてもよい。材料はチオールを含んでいてもよい。
【0013】
別の態様は、少なくとも1種類の材料を先端部材のアレイ上に蒸気コーティングする工程であって、先端部材が材料の先端部材から基板への沈着に適合した、工程を含む方法であって、アレイの先端部材密度が少なくとも1,000/平方インチであり、蒸気コーティングされる材料の量が、基板上への材料の非特異的な沈着を実質的に防止するように制限されている、方法を提供する。先端部材はカンチレバーの端部に配置することができる。あるいは、先端部材はカンチレバーの端部に配置することができない。高分子スタンプをはじめとする、先端部材を含むスタンプを使用することができる。例えば、高分子ペンリソグラフィ(polymer pen lithography)の使用を参照されたい。
【0014】
1つの用途は、幹細胞をはじめとする細胞を成育するための使用を含む。しかしながら、他の用途を見いだすことができる。
【0015】
少なくとも1つの利点を1つ以上の態様において見いだすことができる。例えば、一態様では、改良は、均質な沈着および二次元ペンアレイ(2Dナノプリントアレイ(2D nano PrintArray)(商標))の基板に対するレベリングの向上に基づき得る。2Dペンアレイが基板表面に対して適切にレベリングされていないと、一部のペン先端部材が他の先端部材よりも先に表面に接触し、一部のペン先端部材が基板表面に全く接触せず、かつ/またはこれら先端部材により基板表面に作用する負荷が異なる場合があり、パターニングが非均質で一貫性のないものとなり得る。少なくとも1つの改良の利点は、2Dペンアレイの全ての先端部材がほぼ同じ作用力で表面にわずかに接触する時点を確実に判定することであり得る。分化研究および製品化をはじめとする幹細胞研究および製品化などの細胞研究および製品化の結果の改良において1つまたはそれ以上の利点を実現することができる。他の利点は以下に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本特許または特許出願のファイルには、カラーで作成した図面が少なくとも1つ含まれる。このカラー図面を伴う特許または特許出願公告の写しは、必要な手数料の納付とともに請求することにより、特許商標庁から提供されるであろう。
【0017】
【図1】カンチレバーの背面反射を用いた2Dペンアレイ手法である。
【図2】第1の最初の先端部材-表面接触点を越えて表面内部に先端部材を打ち込む(drive)際の、2Dペンアレイを使用して製作されたアレイである。(A)スキュー(skew)した矩形アレイの光学画像である。(B)2Dペンアレイの1つの先端部材のSEM画像である。
【図3】ドットではなく線状のネガティブ形状(feature)の形成を示す。
【図4】先端部材品質を示す。(A)先端部材の欠損によってアレイが欠損したことを示す。(B)先端部材が面外にあるときに、ポジティブパターンおよびネガティブパターンが並んで存在することを示す。(C)面外先端部材のSEM画像である。
【図5】2Dチップの蒸気コーティングを示す。(A)基板全体にわたる接近(approach)ドットの光学画像である。(B)チップの過剰被覆によるチオール分子の非特異的な沈着を示す。
【図6】3つのz軸モーター上にあるスキャナに取り付けられた2Dナノペンアレイを示す。
【図7】ビューポートを通して見たカンチレバーを示す。
【図8】「アリゲーターの眼(Alligator Eye)」手順を用いた精密レベリング手法を示す。
【図9】アリゲーターの眼レベリング手順を用いてパターニングされた5平方mm基板の四隅の光学画像を示す。
【図10】上記高精度レベリング手順を用いて製作されたアレイの高分解能光学画像を示す。
【図11】製作されたアレイの高分解能光学画像および構造的(topographical)AFM画像を示す。
【図12】DPN製作に使用することができる第1世代冷却システムを示す。
【図13】異なる温度にて製作されたアレイの構造的プロファイルおよび高さプロファイルを示す。(A)25℃、(B)18℃である。
【図14】第2世代冷却システムを示す。
【図15】様々な基板温度で生成された16-メルカプトヘキサデカンチオールドットの構造的AFM画像および輪郭プロットを示す。
【図16】4秒および0.4秒(それぞれ、シリーズ1および2)の2つの異なる滞留時間(dwell time)についての16-メルカプトヘキサデカンチオールのドット直径および温度のプロットを示す。
【図17】0.4秒の滞留時間での、1-オクタデカンチオールの構造的AFM画像、および温度に対するドット直径輪郭プロットを示す。
【図18】実質的な熱変動を生じさせることなく少なくとも数十時間温度を一定に保つヒートシンク用のより優れた材料および設計が組み込まれたペルチェモジュールに基づく第3世代の加熱・冷却ステージを示す。
【図19】第3世代加熱・冷却ステージを用いて製作されたアレイの光学画像を示す。
【図20】異なる温度および湿度にて生成されたAUTナノドットの摩擦AFM画像を示す。
【図21】1D先端部材アレイと、60℃および65%RHの加熱ステージを用いて製作されたアレイを示す。
【図22】加熱モードにおいて第3世代ステージシステムを用いるAUT被覆2Dペンアレイのアレイを用いた均質なアレイパターンのエッジからエッジまでの生成を示す。
【図23】DAPI(青)、ヌクレオステミン(緑)、アクチン(赤)およびSTRO-1(紫)で染色されたODT基板の1x1mmの部分を示す。
【図24】DAPI(青)、ヌクレオステミン(緑)、アクチン(赤)およびSTRO-1(紫)で染色されたODT基板を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
詳細な説明
序論
本明細書において言及したすべての参考文献は、全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0019】
2009年1月26日に出願された優先権米国特許仮出願第61/147,448号が参照により全体として本明細書に組み入れられる。さらに、2009年1月26日に出願された米国特許仮出願第61/147,449号が参照により全体として本明細書に組み入れられる。2009年1月26日に出願された米国特許仮出願第61/147,451号が参照により全体として本明細書に組み入れられる。2009年1月26日に出願された米国特許仮出願第61/147,452号が参照により全体として本明細書に組み入れられる。
【0020】
例えば、レベリングおよび基板温度制御の態様をはじめとする、本明細書に記載される態様は、製作および画像化の両方、ならびに他の用途に使用することが可能である。
【0021】
1つの好ましい態様は、先端部材または先端部材のアレイから基板へ材料が移される各工程の制御を改良するためのこれらの方法および物品の使用である。1つの好ましい態様は、ナノスコピック先端部材の高密度アレイとの併用である。別の好ましい態様は、幹細胞の研究および商用利用をはじめとする細胞の研究および商用利用のための、製作されたアレイの使用である。
【0022】
一態様において、ディップペン・ナノリソグラフィ(Dip Pen Nanolithography)(登録商標)(DPN(登録商標))プロセスを用いた幹細胞分化のためのcm2領域のテンプレート化された(templated)金表面の製造は、いくつかの課題を伴う。これらには、例えば、ペン先端部材のインク被覆、非特異的な沈着、および基板表面に対する2Dペンアレイのレベリングが含まれる。2Dペンアレイのレベリングが適切に行われないこと、パターンの変形、アレイ内およびアレイ間の非均質な構造、スキューイング、ならびにネガティブ形状が生じ得る。これらの問題に加え、製作された構造は、場合によっては、幹細胞分化を開始するために100nm未満である必要がある。結論として、エッジからエッジまでパターニングされた均質な大型基板の製作のための信頼できる商用手順が必要である。これらの問題を解消するためには、2Dパターニングプロセス、そして、特に2Dレベリングを、一貫した均質なパターンを製造するためのペン先端部材蒸気コーティングとともにより良く理解する必要がある。
【0023】
1つの用途において、これらの側面は幹細胞の分化に直接影響し得る。ここで、均質なパターニングはより優れた分化につながり得る。
【0024】
基板に対してアレイをレベリングするためには、以前に確立された手順を、例えば、NanoInkによって最近開発されたレベリングソフトウェアを用いて行うことができる。2008年2月5日に出願された米国特許仮出願第61/026,196号(および、2009年8月13日に公開された国際公開公報第2009/099,619号)を参照されたい。このプロセスの際、人間の介入および判断が必要となる場合があり、場合によっては、先端部材が表面にいつ、そしてどれだけの負荷で接触しているかを判断するのは困難であり、これにより、例えば、非均質なパターニングを含む技術的問題が生じ得る。
【0025】
手順を試験するためには、2Dペンアレイをオクタデカンチオール(ODT)で蒸気コーティングすることができる。レベリングは、カンチレバーの背面からの反射をモニタリングすることにより、カンチレバーがレベリングされているか否かを判定するための光学系を用いて行う。手順は、先端部材が表面に対して押さえつけられている距離および量に依存し、これにより、図1Aおよび1Bに示すように、カンチレバーの背面からの光の反射に変化が生じる。この画像は、カンチレバーの背面からの2つの異なる反射をオレンジ色から赤みがかった色として示している。
【0026】
この例においては、作用した負荷は不明であるものの変化は明らかであるが、場合によっては、カンチレバーの背面からの反射の変化はそれほど明らかではないため、これらの先端部材が表面にいつ接触したのかを知ることは非常に難しい。また、場合によっては、異なるシステムを用いて同じ手順を繰り返し、同じ結果に至ることは困難であり得る。偏向の変化は鮮明であり得るが、感度はあまり高くないことがあり、Z-圧電センサを100nmまたは数ミクロン作動させたとき、2つの反射間にはカットオフ点または鮮明な遷移は存在しない。
【0027】
より大きい力をかけることにおける1つの問題は、図2Aに示すようなスキューイング作用であり得る。明るいドットが第1の先端部材-表面接点(接触点「a」)の接近ドットであり、矩形ドットアレイ(18x40μm2)である設計および実行されたパターンは、直径1μmの4μm離間したドットを含む。この光学画像において、アレイは、前半ではスキューしており、後半では、負荷の低減または接触点「a-xミクロン」からのカンチレバー屈曲の増加により適応を開始する(つまり、パターンの半分が実行された後、先端部材の表面内部への打ち込みが減少する)。このような挙動が観察されるのは、先端部材を最初の接触点を越えて表面内部に打ち込むことによるものである。これら先端部材は、レバー平面から一定の移動自由度(FOT)で屈曲するように設計することができる。図28に示すように、FOTは、先端部材のスタイラス(stylus)とチップ架台との間の距離差である。この典型的な2Dチップの場合、FOTは16.8μmであり、この数はチップごとに異なる。
【0028】
表面に大きい負荷をかけることまたは先端部材を最初の接触点を越えて表面内部に打ち込むことに起因するさらなる問題は、変形、およびドット状ではなく線状のネガティブ形状の形成である。この作用は、図3に示すように、先端部材が表面にどれだけ打ち込まれるかおよび矩形アレイがスキューされ得るか否かに依存する。図3Aは、各アレイの始まりにおける明るい接近ドットに類似した明るいポジティブドットではなくネガティブ線がアレイ内に形成されていることを示す。同様に、図3Bは、各アレイの始まりにおける明るい接近ドットに類似した明るいポジティブドットではなくネガティブ線が矩形アレイ内に形成されていることを示す。先端部材が接触点を越えて表面内部に打ち込まれているがスキューイング作用の閾値は超えていないため、これらのアレイはスキューしていない。
【0029】
2Dペンアレイの品質は、大面積製作が所望される場合に重要な役割を果たす。チップ上の先端部材のいかなる欠損または破損、先端部材の平面性、および面外先端部材の存在は、非均質な基板の製作につながることになる。図4は、欠損した先端部材および面外先端部材を含む、2Dペンアレイを使用して製作された基板を示す。図4Aにおいて、赤い矢印で示す欠損したいくつかのアレイが存在する。これらの欠損アレイは、先端部材製造によって、または出荷および組立時の破損によって欠損した先端部材に直接関係する。先端部材の製造中、いつくかの面外先端部材が多少の屈曲を有している場合があり、これにより、先端部材と表面との接点が異なることによりポジティブパターンおよびネガティブパターンが並んで生成された図4Bの光学画像に示すように、異なるパターンが製作されることになり得る。図4Cにおいて面外先端部材が赤い矢印で示されている。
【0030】
先端部材の被覆および被覆制御は、2009年2月12日に公開された国際公開公報第2009/020658号(Northwestern University)に記載されている。同PCT出願はインクジェット印刷について記載しており、本明細書において提供される一態様は、インクジェット印刷を除外することである。同PCT出願はまた、インク材料が配置され得る場所を制御するためのカンチレバーの制御された表面処理も記載しており、本明細書において提供される一態様は、インク材料が配置され得る場所の制御においてカンチレバーの制御された表面処理を除外することである。
【0031】
機器構成
本明細書に記載される態様の実施に使用され得る機器構成には、NSCRIPTOR、DPN5000、およびNLP2000、ならびにこれらの機器に関連するインク、基板、ソフトウェアなどの構成要素を含むNanoInk社製の機器が含まれる。機器は、ナノリソグラフィを含む直接描画リソグラフィを可能にすることができる。パターニング用の機器が、例えば、2009年1月22日に公開されたRozhokらへの米国特許公報第2009/0023607号に記載されている。
【0032】
大規模並列二次元アレイが、例えば、2008年5月8日に公開されたMirkin、Fraga/aらへの米国特許公報第2008/0105042号に記載されている。
【0033】
ビューポートを含む改良されたアレイが、例えば、2008年3月11日に出願されたHaaheimらへの米国特許出願第12/073,909号(公開、2008/0309688)に記載されている。
【0034】
高分子ペンリソグラフィおよび先端部材アレイが、2009年10月29日に公開された国際公開公報第2009/132,321号(Northwestern University)に記載されている。
【0035】
先端部材および沈着材料(チオールおよび他の硫黄化合物を含む)を用いた直接描画ナノリソグラフィが、例えば、Mirkinらへの米国特許第6,635,311号および6,827,979号に記載されている。並列プローブアレイが、例えば、Liuらへの米国特許第6,867,443号に記載されている。
【0036】
(1) 「Applications of dip-pen nanolithography」 Salaita et al., Nature Nanotechnology, vol. 2, March 2007,145-155, (2) 「Dip Pen Nanolithography: A Desktop Nanofab Approach Using High Throughput Flexible Nanopatterning, Haaheim, Scanning, 2008, 30, 137-150, (3) 「The Evolution of Dip-Pen Nanolithography」 Ginger, Angewandte Chemie, 2004, 43, 30-45も参照されたい。
【0037】
パターニングされた表面のエッチングが、例えば、Mirkinらへの米国特許第7,291,284号に記載されている。
【0038】
走査型プローブ接触印刷が、例えば、米国特許第7,344,756号に記載されている。
【0039】
ナノリソグラフィ機器構成およびプロセスを制御するためのソフトウェアが、例えば、Cruchon-Dupeyratへの米国特許第7,060,977号およびNelsonらへの第7,279,046に記載されている。
【0040】
アライメント方法が、例えば、2007年8月30日に出願された米国特許出願第11/848,211号に記載されており、同出願は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0041】
カンチレバーおよびカンチレバーのアレイ
カンチレバーは当技術分野において公知であり、例えば、AFMカンチレバーであり得る。カンチレバーは、例えば、中実先端部材、中空先端部材、ナノスコピック先端部材、走査型プローブ顕微鏡先端部材、およびAFM先端部材などの先端部材をその上に含むことができる。例えば、窒化ケイ素およびシリコンなどの公知の材料を使用することができる。カンチレバーおよび先端部材は、高密度アレイに適合されてもよい。例えば、カンチレバーは屈曲させることができ、先端部材は伸長させることができる。
【0042】
一態様は、(i)複数のカンチレバーの二次元アレイであって、アレイが複数のベース列を含み、各ベース列が当該ベース列から延びる複数のカンチレバーを含み、各カンチレバーが、ベース列から離れたカンチレバー端部に先端部材を含み、アレイが、先端部材が実質的に平面の表面と接触するときに、アレイの非先端部材構成要素が実質的に接触することを防止するように適合したアレイと、(ii)当該アレイのための支持体とを含む物品である。
【0043】
一態様はまた、(i)複数のカンチレバーの二次元アレイであって、アレイが複数のベース列を含み、各ベース列が複数のカンチレバーを含み、各カンチレバーがベースから離れたカンチレバーの端部に先端部材を含み、カンチレバーの数が250個より多く、先端部材のカンチレバーに対する頂点高さが、例えば、少なくとも4ミクロンであるアレイと、(ii)当該アレイのための支持体とを含む、物品を提供する。
【0044】
別の態様は、複数のカンチレバーの二次元アレイであって、アレイが複数のベース列を含み、各ベース列が複数のカンチレバーを含み、各カンチレバーがベースから離れたカンチレバーの端部に先端部材を含み、カンチレバーの数が250個より多く、先端部材が、カンチレバーの先端部材側において金属で被覆され、カンチレバーが、例えば、少なくとも10°の角度でそのベースから屈曲している、物品を提供する。
【0045】
カンチレバーの二次元アレイは、当技術分野において公知である。例えば、二次元アレイは、好ましくは互いに実質的に垂直な長さおよび幅を与える、一連の行列であり得る。アレイは、第1の次元および第2の次元を含み得る。二次元アレイは、第2の次元を作るように互いに隣接して配置される一次元アレイの連なりであり得る。2つの次元は直交し得る。カンチレバーは、自由端および結合端を含むことができる。カンチレバーは、結合端の遠位である自由端またはその近傍に先端部材を含み得る。一つの列のカンチレバーは、次の列のカンチレバーと同じ方向を向いていてもよい。または、一つの列のカンチレバーは、次の列のカンチレバーと反対の方向を向いていてもよい。
【0046】
二次元アレイは、2つの部分を組み合わせることによって製作することができ、これら部分のそれぞれは、2つの次元においてパターニングされた表面であって、これら2つの次元において互いに噛み合うように適合した表面を有している。
【0047】
一つの重要な変数は、意図される目的のために実際に機能することができる、アレイにおけるカンチレバーの割合すなわちパーセンテージである。場合によっては、一部のカンチレバーが不完全に形成されたり、そうでなければ形成後に破損したりすることがある。カンチレバー歩留まりは、使用可能なカンチレバーのこのパーセンテージを反映する。好ましくは、アレイは、少なくとも75%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または、より好ましくは、少なくとも約98%、またはより好ましくは少なくとも99%のカンチレバー歩留まりによって特徴付けられる。カンチレバー歩留まりを特徴付ける場合、内部のカンチレバーに比べてエッジの処理によって破損している、列の端部にあるカンチレバーを無視してもよい。例えば、中央の75%を測定するようにしてもよい。ウェーハ製作においてはエッジ効果が公知であるため、多くの場合、エッジではなく中心において、製作がよりうまく実施されると考えられる。欠損密度は、ある場合には、中心からエッジへと移動するにつれて増加し得る。
【0048】
先端部材が実質的に平面の表面と接触するときにアレイの非先端部材構成要素の実質的な接触を防止するように、アレイを適合させることができる。例えば、カンチレバーアームは、表面と接触しないのがよく、このため、例えば、屈曲させることによって適合させてもよい。先端部材もこのために適合させることが可能であり、例えば長い先端部材を含みうる。この結果を達成するために有用であり得る要因には、長い先端部材を使用すること、カンチレバーアームを屈曲させること、先端部材をレベリングすること、列をレベリングすること、および全ての次元においてカンチレバーをレベリングすることが含まれる。一つまたは複数の要因の組み合わせを使用してもよい。
【0049】
カンチレバー先端部材は、当技術分野において通常用いられているものよりも長くてもよい。例えば、カンチレバーに対する先端部材の頂点高さは、平均して少なくとも4ミクロンであってもよく、また、必要に応じて、カンチレバーに対する先端部材の頂点高さは、平均して少なくとも7ミクロンであってもよい。さらに、先端部材の頂点高さは、少なくとも10ミクロンであってもよく、または少なくとも15ミクロンであってもよく、または少なくとも20ミクロンであってもよい。特定の上限は存在せず、当技術分野において公知の技術および改良を使用することができる。このように長い長さは、先端部材のみが表面と接触することを確実にするために役立ち得る。頂点高さを、多くの先端部材の頂点高さの平均であると見なすことができ、一般的に、頂点高さは、先端部材によって実質的に異ならないように設計される。実施例において示される方法を含む、当技術分野において公知の方法を使用することによって、先端部材の頂点高さを測定することができる。
【0050】
アレイに関するパラメータを測定する際には、平均測定値を使用することができる。平均測定値は、例えば代表画像または顕微鏡写真の検討などの当技術分野において公知の方法によって得ることができる。アレイの全体を測定することは実用的でない場合があるため、その必要はない。
【0051】
態様によっては、先端部材無しカンチレバーを使用することが可能であるが、これは好ましい態様ではない。例えば、一態様は、(i)複数のカンチレバーの二次元アレイであって、アレイが複数のベース列を含み、各ベース列が当該ベース列から延びる複数のカンチレバーを含み、各カンチレバーが先端部材無しカンチレバーであり、カンチレバーがそのベースからある角度で屈曲しているアレイを含む、物品を提供する。
【0052】
さらに、カンチレバーを屈曲させることが可能であり、この屈曲には、パターニングされるべき表面に向かって屈曲させることが含まれる。当技術分野において公知の方法を使用することによって、屈曲を引き起こすことができる。ベースおよび支持体から離れる角度で、カンチレバーを屈曲させることができる。カンチレバーは、カンチレバーを屈曲させるように適合した複数の層を含み得る。例えば、示差熱膨脹またはカンチレバーバイモルフを使用して、カンチレバーを屈曲させることができる。カンチレバー屈曲は、少なくとも2種類の異なる材料を使用することによって引き起こすことができる。あるいは、同じ材料を使用することも可能であるが、この場合、異なる応力を用いてカンチレバー屈曲を生じさせる。別の方法は、一つの材料を含むカンチレバー上に、同じ材料からなるが固有の応力勾配を有する第2の層を沈着させることである。あるいは、カンチレバーの表面を酸化させてもよい。カンチレバーを、例えば、それらのベースから少なくとも5°の角度で、またはそれらのベースから少なくとも10°の角度で、またはそれらのベースから少なくとも15°の角度で屈曲させることができる。実施例に示されている方法を含む、当技術分野において公知の方法を使用することによって、これを測定することが可能である。角度の平均値を使用することも可能である。カンチレバーを、平均して約10ミクロン〜約50ミクロン、または約15ミクロン〜約40ミクロン屈曲させることができる。この屈曲の距離は、実施例に示される方法を含む当技術分野において公知の方法によって測定することが可能である。平均距離を使用することができる。屈曲によって、基板の粗さおよび形態ならびにアレイ内における先端部材のずれに対するより大きな許容範囲をもたらすことが可能であり、したがって、例えば、約±20ミクロン以下または約±10ミクロン以下のずれを補償することができる。
【0053】
屈曲を容易にするために、カンチレバーは、2つの主要層および任意の接着層などの多数の層を含むことが可能であり、例えばバイモルフカンチレバーであり得る。カンチレバーは、カンチレバーの先端部材側において、金属または金属酸化物で被覆することができる。金属は、金属または金属酸化物がカンチレバーを熱で屈曲させることを助けるために有用である限り、特に限定されない。例えば、金属は、金などの貴金属であってもよい。
【0054】
好ましい態様では、カンチレバーが表面へ向かって曲がるように、かつ、画像化のためだけに使用される先端部材と比べて通常よりも長い先端部材も含むように、アレイを適合させることができる。
【0055】
先端部材は、製作および使用の前に鋭利化することが可能であり、先端部材は、例えば100nm未満の平均曲率半径を有することができる。平均曲率半径は、例えば、10nm〜100nm、または20nm〜100nm、または30nm〜90nmであり得る。先端部材の形態は変化させることが可能であり、例えば、ピラミッド型、円錐型、楔型、および箱型とすることができる。先端部材は、中空先端部材であってもよいし、開口を包含していてもよく、先端部材の端部へと延びるマイクロ流体チャンネルが微細加工によって形成された、中空先端部材および開口先端部材であってもよい。流体材料は、先端部材の端部に蓄積が可能であり、または先端部材を通過して流れることができる。
【0056】
先端部材の幾何形状を変えることが可能であり、例えば、中実先端部材または中空先端部材とすることも可能である。Hendersonらへの国際公開公報第2005/115630号(PCT/US2005/014899)は、本明細書において使用することの可能な、表面上に材料を沈着させるための先端部材幾何形状について記載している。
【0057】
二次元アレイは、2つの次元(例えば、長さ次元および幅次元)のそれぞれにおける先端部材間隔によって特徴付けることができる。先端部材間隔は、例えば、先端部材アレイの製造方法によって得ることができ、または、製造されたアレイから直接に観察することができる。先端部材およびカンチレバーの密度を高くするように、先端部材間隔を設計することもできる。例えば、先端部材密度は少なくとも1,000/平方インチ、または少なくとも10,000/平方インチ、または少なくとも40,000/平方インチ、または少なくとも70,000/平方インチであり得る。アレイを、二次元アレイの第1の次元における300ミクロン未満の先端部材間隔および二次元アレイの第2の次元における300ミクロン未満の先端部材間隔によって、特徴付けることができる。より高い密度を得るために、先端部材間隔を、例えば一つの次元において約200ミクロン未満にするとともに、別の次元において約100ミクロン未満、または約50ミクロン未満にすることができる。あるいは、先端部材間隔を、例えば一つの次元において100ミクロン未満にするとともに、第2の方向において25ミクロン未満にすることもできる。アレイを、二次元アレイにおける少なくとも1つの次元における100ミクロン以下の先端部材間隔によって特徴付けることができる。一態様では、先端部材間隔を一つの次元において約70ミクロン〜約110ミクロンにすることが可能であるとともに、第2の次元において約5ミクロン〜約35ミクロンにすることができる。時とともに、製造方法が、より高い密度の先端部材間隔を可能にするであろうことから、先端部材間隔に関して特定の下限値は存在しない。下限値の例には、1ミクロン、または5ミクロン、または10ミクロンが含まれる。したがって、例えば、先端部材間隔を1ミクロン〜300ミクロン、または1ミクロン〜100ミクロンにすることができる。
【0058】
二次元アレイ上のカンチレバーの数は、特に限定されないが、少なくとも約3個、少なくとも約5個、少なくとも約250個、または少なくとも約1,000個、または少なくとも約10,000個、または少なくとも約50,000個、または少なくとも約55,000個、または少なくとも約100,000個、または約25,000〜約75,000個とすることが可能である。数は、特定の機器およびパターニングの空間的な制約に対して許容される数量まで増大させることができる。例えば、製作の容易さ、品質、および特定の密度の必要性などの要因を考慮して、特定の用途に関して適切なバランスを得ることが可能である。
【0059】
先端部材を、一貫して表面と触れるよう一貫した間隔を有するように設計することが可能である。例えば、各先端部材を、先端部材端部から支持体に至る距離Dによって特徴付けることができ、先端部材アレイを、先端部材端部から支持体までの平均距離D’によって特徴付け、先端部材の少なくとも90%において、DはD’の50ミクロン以内である。別の態様では、先端部材の少なくとも90%において、DはD’の10ミクロン以内である。先端部材端部と支持体との間の距離は、例えば約10ミクロン〜約50ミクロンであり得る。この距離は、例えば、ベース列の高さ、曲がりの距離、および先端部材の高さの加法的な組み合わせを含み得る。
【0060】
ベース列の長さは、特に限定されない。例えば、ベース列は、少なくとも約1mmの平均の長さを有することが可能である。ベース列の平均の長さは、例えば、約0.1mm〜約30mm、または約0.1mm〜約15mm、または約0.1mm〜約5mm、または約0.5mm〜約3mmであり得る。
【0061】
ベース列は、少なくとも約5ミクロンの支持体に対する高さを有することができる。高さは、特に限定されないが、適切なカンチレバー屈曲とともに使用するように、適合させることが可能である。
【0062】
カンチレバー力定数は、特に限定されない。例えば、カンチレバーは、約0.001N/m〜約10N/mの平均力定数、または約0.05N/m〜約1N/mの平均力定数、または約0.1N/m〜約1N/mの平均力定数、または約0.1N/m〜約0.6N/mの平均力定数を有することが可能である。
【0063】
カンチレバーをベースに接合するために様々な方法を用いることができ、方法は特に限定されない。接合方法は、例えば、Madou, Fundamentals of Microfabrication, 2nd Ed., 484-494頁に記載されており、例えば、陽極接合、静電接合、またはマロリープロセスとしても公知の電解支援型熱接合が記載されている。低い処理温度を与える方法を使用できる。例えば、カンチレバーを非接着接合によってベースに結合することができる。接合例としては、静電接合、電解支援型熱接合、シリコン溶融接合、中間層を伴う熱接合、共晶接合、金拡散接合、金熱圧着接合、接着接合、およびガラスフリット接合が含まれる。
【0064】
カンチレバーは、それらが力フィードバックを含むフィードバックに適合されないように設計することができる。あるいは、少なくとも1つのカンチレバーを力フィードバックを含むフィードバックに適合させることができる。または実質的に全てのカンチレバーを力フィードバックを含むフィードバックに適合させることができる。例えば、90%より多い、または95%より多い、または99%より多いカンチレバーを力フィードバックを含むフィードバックに適合させることができる。
【0065】
カンチレバーは、静電結合によってベースに結合することができる。
【0066】
カンチレバーは、例えば、シリコン、多結晶シリコン、窒化ケイ素、またはシリコンリッチな窒化物などのAFMプローブにおいて使用される材料から形成することが可能である。カンチレバーは、長さ、幅、および高さまたは厚さを有することができる。長さは、例えば、約10ミクロン〜約80ミクロン、または約25ミクロン〜約65ミクロンであってもよい。幅は、例えば、5ミクロン〜約25ミクロン、または約10ミクロン〜約20ミクロンであってもよい。厚さは、例えば、100nm〜約700nm、または約250nm〜約550nmであってもよい。アレイ、アレイの形成方法、およびアレイの使用方法において、先端部材無しカンチレバーを使用することが可能である。
【0067】
ベース列上においてカンチレバーを支持することが可能であり、アレイのためのより大きい支持体上にベース列を支持することができる。ベース列は、アレイのためのより大きな支持体から延びていてもよい。アレイ支持体を約2平方cm以下、あるいは約0.5平方cm〜約1.5平方cmの表面積によって特徴付けることができる。サイズについては、機器との連結のために、必要に応じて調整することが可能である。
【0068】
アレイをパッシブペンまたはアクティブペン用途に適合させることができる。例えば、圧電作動、容量性作動、または熱電作動によって、各先端部材の制御を行うことが可能である。
【0069】
一態様では、隣接する先端部材間の距離は、例えば、x方向において5〜100nm、y方向において50ミクロン〜150ミクロンであってもよい。例えば、以下の実施例では、明るいドットが、x方向において20nm離間して見られ、これは、2つの隣接する先端部材間の距離と同じである。これらのドットは、y方向において90μm離間しており、これは、カンチレバーの全長である。
【0070】
一態様は、カンチレバーを使用しない先端部材のアレイを提供する。
【0071】
インク
先端部材は、パターニング化合物またはインク材料で被覆することができる。被覆は特に限定されず、パターニング化合物またはインク材料を先端部材端部に配置することができる。パターニング化合物および材料は、ナノリソグラフィプリンティングの技術分野において公知であり、有機化合物および無機材料、化学品、生体材料、非反応性材料および反応性材料、分子化合物および粒子、ナノ粒子、自己組織化単分子膜を形成する材料、可溶性化合物、高分子、セラミック、金属、磁性材料、金属酸化物、主族元素、化合物混合物および材料混合物、導電性高分子、核酸材料、RNA、DNA、PNA、タンパク質、およびペプチドなどの生体分子、抗体、酵素、脂質、炭水化物、ならびに更にはウイルスなどの有機体を含む。米国特許第6,827,979号を含む、本出願に記載の参考文献は、使用可能な多くのパターニング化合物について記載している。チオールおよび硫化物を含む硫黄含有化合物を使用できる。
【0072】
沈着させる材料、またはインクは、当技術分野において公知であり、例えば、官能化されたチオールなどの官能化された有機化合物であってもよい。例えば、インクは、X-R-Yとして表わすことができ、式中、Yは、基板表面と相互作用するように適合した官能基、Rは、アルキレン基などのスペーサ基、Xは、アミノ、カルボン酸、ヒドロキシル、アミノ、またはアルキルなどの基である。
【0073】
蒸着
蒸着は当技術分野において公知である。例えば、Mirkinらへの米国特許第6,827,979号を参照されたい。先端部材を含むカンチレバーのアレイを、先端部材上への材料の蒸着に適合させることができる。
【0074】
先端部材上にインクを沈着させることは、例えば、米国特許第7,034,854号および2008年8月8日に出願されたMirkinらへの米国特許出願第12/222,464号にも記載されている。
【0075】
先端部材上への材料の沈着は、先端部材から基板への材料の沈着を向上させる均質な沈着であり得る。例えば、非特異的な沈着の量を最小限にするかまたは実質的に無くすことができる。二次元高密度アレイを含む高密度先端部材アレイを使用することができる。
【0076】
先端部材は、ナノスコピック先端部材、走査型プローブ顕微鏡先端部材、原子間力顕微鏡先端部材、中空先端部材、または中実先端部材であってもよい。
【0077】
蒸着は、1気圧未満の圧力で実行することができる。圧力は、例えば、300ミリトル以下であってもよいが、所望の圧力が先端部材を均一に被覆するために使用される化合物の融点を下げることができる限り、760トル未満の任意の圧力であってもよい。
【0078】
蒸着のさらなる例は、実施例に示す。
【0079】
レベリング
2008年2月5日に出願されたHaaheimらへの米国仮出願第61/026,196号は、レベリング方法およびソフトウェアならびに機器構成を種々の態様において記載しており、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0080】
レベリングの一態様は、先端部材をその上に含み、観察された際に少なくとも1つの比較的明るいスポットを先端部材付近に含むカンチレバーの少なくとも1つのアレイを提供する工程と、基板を提供する工程と、アレイおよび基板を互いに対してレベリングする工程とを含み、先端部材付近の比較的明るいスポットを観察して、先端部材と基板との接触を判定する、方法を提供する。
【0081】
レベリングの別の態様は、先端部材をその上に含み、ビューポートを通して観察された際に少なくとも2つの比較的明るいスポットを先端部材付近に含むカンチレバーの少なくとも1つのアレイを提供する工程と、基板を提供する工程と、アレイおよび/または基板を互いに対してより近くに移動させる工程とを含み、先端部材付近の比較的明るいスポットを観察して、先端部材と基板との接触を判定する、方法を提供する。
【0082】
レベリングの別の態様は、先端部材をその上に含み、アレイにおいて、ビューポートを通して観察された際に少なくとも1つのマーカーを先端部材付近に含むカンチレバーの少なくとも1つのアレイを提供する工程と、基板を提供する工程と、アレイおよび/または基板を互いに対してより近くに移動させる工程とを含み、先端部材付近のマーカーの明るさを観察して、先端部材と基板との接触を判定する、方法を提供する。
【0083】
少なくとも1つの先端部材を一方の端部に含むカンチレバーを提供することができ、カンチレバーは、観察された際に、少なくとも1つの比較的明るいスポット、またはマーカーを先端部材付近に含む。カンチレバーは、カンチレバーのアレイの一部であり得る。カンチレバーおよび先端部材は、例えば、AFMカンチレバーまたはAFM先端部材であり得る。
【0084】
カンチレバーおよび基板は、互いにより近くに移動させることができる。
【0085】
先端部材が基板表面に接触すると、比較的明るいスポットが観察でき、先端部材と基板との接触が分かる。比較的明るいスポットは、先端部材が基板に打ち込まれるにつれて、より暗くなり得、ある時点で完全に消滅する。
【0086】
マーカー、または比較的明るいスポットは、少なくとも2つの比較的明るい赤色のスポットを含む、2つの比較的明るいスポットであり得る。
【0087】
明るさの変化は、基板への約1ミクロン〜約10ミクロン、または約3ミクロン〜約5ミクロンの移動を表し得る。
【0088】
アレイは、二次元アレイの一部であってよく、また、アレイは、マーカーおよび明るいスポットを観察するための、少なくとも1つのビューポート、または少なくとも6つのビューポートを含むことができる。
【0089】
レベリング工程は、少なくとも1つのマクロスコピックなレベリング工程および少なくとも1つのミクロスコピックなレベリング工程を含むより大きいプロセスの一部であり得る。
【0090】
温度制御基板
基板の温度を制御するために、別の態様は、その上に少なくとも1つの先端部材を含む少なくとも1つのカンチレバーと、先端部材上に沈着させた材料とを提供する工程と、材料が先端部材から基板上に沈着して材料沈着物が形成されるようにカンチレバーを基板に接触させる工程とを含み、基板の温度が、材料沈着物のサイズを制御するように適合される、方法を提供する。
【0091】
別の態様は、少なくとも1つのヒートシンクと、少なくとも1つの加熱または冷却ステージと、少なくとも1つの真空システムとを含む装置であって、材料の沈着に供される基板とともに機能し、かつ、沈着の際、基板温度を実質的に一定に保持するように適合した、装置を提供する。
【0092】
別の態様は、先端部材から基板への材料の沈着速度を、基板に直接取り付けられた装置を用いて基板の温度を制御することによって制御する工程を含む、方法を提供する。
【0093】
基板の温度は、材料沈着物のサイズを制御するように適合することができる。例えば、基板の温度は、25℃未満または25℃を超えるように適合することができる。温度を低くすると、材料沈着物のサイズが減少するかあるいは小さくなり得る。特に、沈着が25℃で行われる場合に、上記サイズに関してサイズを小さくすることができる。例えば、直径または幅を減少させることができる。基板温度は、例えば、20℃未満、または15℃未満、または10℃未満に低下させることができる。温度範囲は、例えば、5℃〜25℃であってもよい。
【0094】
さらに、一定の温度レベルを実現することができる。例えば、基板の温度は、少なくとも30分間、または少なくとも1時間、または少なくとも5時間、または少なくとも10時間、または少なくとも20時間、または少なくとも48時間、実質的に一定の温度を与えるように適合することができる。
【0095】
基板の温度を制御するために装置を用いることができる。例えば、装置は、少なくとも1つのヒートシンク、少なくとも1つの加熱ステージまたは少なくとも1つの冷却ステージ、少なくとも1つの真空システムを含むことができる。真空システムは、基板を保持するために用いることができる。装置は、基板に直接接触することができる。ヒートシンクは、例えば、アルミニウム、銅、または他の金属などの熱伝導性が高い金属を含み得る。ヒートシンクは、積み重ねられたまたは離間した金属ブロックを含むことができ、また、フィンを含むことができる。熱電冷却器または加熱器を使用することができる。ペルチェ素子は当技術分野において公知である。例えば、米国特許第5,171,992号(Claber)および第7,238,294(Koops)を参照されたい。上記装置は、例えば、基板用の環境チャンバとの併用を含むナノリソグラフィ機器との併用に適合させることができる。
【0096】
温度制御をもたらす電圧および電流は、パルス電流または実質的に一定の電流として用いることができる。
【0097】
基板の温度は、沈着させた材料が約500nm以下または約100nm以下の横方向寸法を有し得るように適合させることができる。範囲は、例えば、約15nm〜約5ミクロン、または約50nm〜約1ミクロンであってもよい。沈着させた材料はドットまたは線であってもよく、横方向寸法はドット直径または線幅であってもよい。
【0098】
温度制御を含む試料ステージは、例えば、より小さい金属キャップを上部に有する銅の機械加工片であってもよく、それらの間にTEC(熱電冷却器)がある。上部片は、例えば、内部に埋め込まれたRTDと、真空を用いて試料を定位置に保持することを可能にする上部中央の穴部(whole)とを有している。これらの金属部品は、熱特性が類似した任意の材料で形成することができる。
【0099】
フィンを用いて周囲の空気に対して大きな表面積を提供することによって、冷却モードにおいて試料ステージの下部の熱拡散率を増加させることができる。上部プレートの利用可能表面量は最小となっている。このことにより、高温モードにおいて熱が放射されることおよび冷却モードにおいて冷気が雰囲気温度を吸収することが防止される。このような設計は、エッジおよび試料のすぐ外側の領域を断熱材で覆うことによって利益を得うるであろう。エアロゲルを用いることができる。
【0100】
制御ボックスは、既成のWatlow PID制御器と、RTD温度センサと、12V直流電源と、増幅回路とで構成することができる。2つのNPNトランジスタを用いて増幅器を設計することができる。Watlow制御器の出力は、このような2トランジスタ増幅器を駆動することができる。増幅器は、TEC(熱電冷却器)をほぼ一定の電流で駆動することができ、ノイズの低いステージが提供される。
【0101】
上記ステージは、加熱および冷却の両方に使用することができる。TECは、加熱のためには高温側を上にして配置し、冷却のためには低温側を上にして配置することができる。
【0102】
用途
用途としては、エレクトロニクス、半導体、微細加工、フォトニクス、および生物学的用途が含まれ得る。細胞の生育は、1つの用途である。
【0103】
細胞工学
生体細胞および細胞生物学は当技術分野において一般に公知である。例えば、Cell Biology, 2nd Ed., Pollard & Earnshaw, 2008を参照されたい。細胞は、原核細胞または真核細胞であり得る。細胞は、体細胞であり得る。細胞は、全能性細胞、多能性(pluripotent)細胞、多能性(multipotent)細胞、単能性細胞、自己再生可能な細胞、および/または分化可能な細胞であり得る。細胞は、前駆細胞、高分化型(terminally differentiated)細胞などであり得る。本明細書に記載される方法および装置を用いることにより、様々な細胞を調べ、商業利用することができる。
【0104】
さらに、幹細胞および幹細胞生物学は当技術分野において一般に公知である。例えば、Essentials of Stem Cell Biology, ed. R. Lanza, 2006; Ferreira et al., Cell Stem Cell 3, August 7, 2008, 136-146を参照されたい。幹細胞の例としては、成体幹細胞および胚性幹細胞;ヒト幹細胞;哺乳類幹細胞;マウス幹細胞;造血幹細胞、神経幹細胞、筋幹細胞;間葉幹細胞;皮膚幹細胞;および胚性幹細胞が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。幹細胞は、例えば、肝臓および膵臓を含む異なる器官から採取することができる。一態様では、ヒト胚性幹細胞は、使用可能な幹細胞から除外される。
【0105】
細胞系統としては、骨形成系統、軟骨形成系統、神経系統、脂肪生成系統、および筋原性系統が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0106】
幹細胞の増殖および分化を制御するためのインビトロ条件は、当技術分野において公知である。
【0107】
組織工学は当技術分野において一般に公知である。例えば、Principles of Tissue Engineering, 2nd Ed., ed. Lanza et al. 2000; Burdick, Tissue Engineering, Vol 14, 00, 2008,1-15を参照されたい。細胞は、二次元環境および三次元環境で成育することができる。
【0108】
パターニングおよび幹細胞分化は、例えば、2008年7月12日に出願された英国仮特許出願第08127899.6号、および2008年9月22日に出願されたCurranらへの米国仮特許出願第61/099,182号に記載されている(2009年7月10日に出願されたPCT/IB2009/006521、および2010年1月14日に出願された米国仮特許出願第61/295,133号も参照されたい)。異なる細胞および幹細胞の例がそれらに記載されている。
【0109】
例えば、細胞(例えば幹細胞を含む)などの他のものとの接点において基板が均質であるような、エッジからエッジまでのパターニングが望ましい。細胞の接着、増殖、および分化は、当技術分野において公知である。例えば、Kong et al., PNAS, March 22,2005, vol. 102, no. 12, 4300-4305; Lee et al., Nano Letters, 2004, 4, 8, 1501-1506を参照されたい。
【0110】
微細環境における幹細胞は、例えば、Saha et al., Current Opinion in Chemical Biology, 2007, 11, 381-387に記載されている。
【0111】
細胞の接着および成育は、例えば、Arnold et al., ChemPhysChem 2004, 5, 383-388に記載されている。
【0112】
細胞形態、およびナノパターンによって誘発される変化が、例えば、Vim et al., Biomaterials, 2005, 26, 5405-5413に記載されている。
【実施例】
【0113】
実施例
単1D先端部材を用いて様々なインクを金にパターニングするために、DPNパラメータが開発され、制御されてきた。これらの先端部材のための公知のインキングプロセスは、浸漬コーティングである。均質な先端部材コーティングは、均質な構造の製作のためのDPNにおける重要なパラメータである。しかし、先端部材上にチオール結晶が任意に形成されるため、これを浸漬コーティングによって商業的に実現するのは困難であり得る。高スループットおよび大面積製作のため、ペン先端部材の均質なインクコーティングは、2Dペンアレイを用いて実現することができる。先端部材およびシリコン支持体の全体にわたるチオール結晶の架橋、ならびに浸漬および乾燥時に溶媒によって先端部材に生じ得る破損のため、2Dチップは、溶液浸漬コーティングによって被覆することができない。
【0114】
実施例1:蒸気コーティング
これらの先端部材を均質に被覆するために、蒸気コーティングに基づく新規な手順がいくつかのチオールインクのために開発された。これらの手順は、固体であればその融点、液体であれば沸点に依存する。真空炉を用いて2Dペンアレイを蒸気コーティングした。先端部材を真空下にて蒸気コーティングすると、チオールインクの融点が所望の作業温度に低下することになる。これは、これらの分子の気相への蒸発を容易にし、これらチオール分子をペン先端部材上に再び凝縮させるために行われた。密閉容器中で、ペンアレイを固体インク材料の真上に配置した。コーティングは、760トルでのチオール化合物の融点に応じて、50〜90℃で行った。コーティングに使用した圧力は300ミリトル未満であった。コーティングプロセスは、プログラム可能な炉を用いた少なくとも2つまたは3つのサイクルを含んでいた。第1のサイクルは、アルミニウム箔で覆われたブリキ容器にチップおよびチオール化合物を装填することを含んでいた。炉室を-300ミリトル以下の圧力に達する(1時間で達し得る)まで排気した。次いで、所望の設定点まで温度を徐々に上昇させた。温度を設定点にて3時間維持した後、6時間かけて徐々に25℃まで冷却した。システムを一晩室温にて放置した。ペン先端部材の均質な被覆を確実にするため全過程を3回繰返した。
【0115】
真空下でのサイクリングの他に、必要最低量の所望のチオール化合物を秤量した。この所望の量は、試験を数回行い、チップを被覆するたびに使用量を変えて、2Dペンアレイを均一に被覆するのに必要な平均量を求めることによって決定した。これは、非特異的な沈着を引き起こす過剰な被覆を避けるために行った。上記手順を用いて被覆した二次元ペンアレイの例を図5Aに示す。明るいドットが、x方向において20nm離間してみられ、これは、2つの隣接する先端部材間の距離と同じである。これらのドットは、y方向において90ミクロン離間しており、これは、カンチレバーの全長である。この光学画像に示されるように、ドットは1cm2基板全体にわたって均質に見える。同画像では、基板の一部のみが撮像されている(1100x670平方ミクロンの領域)。
【0116】
図5Bに示されるように、非均質なドットは非均質なコーティングとなる。光学画像図5Bに示されるように、異なるスポットサイズに加えて、非均質なコーティングならびに先端部材上およびチップ背面における余剰のチオール分子に起因する非特異的な沈着が試料全体にわたって観察される。
【0117】
実施例2:レベリング
均質かつ高品質なパターニングを実現するためには、上述の問題を解決しなければならない。上記新規な改良された手順は、2Dナノプリントアレイを基板表面に対していかにしてレベリングするかということ、および全ての先端部材がほぼ同じ負荷で、均等にではあるがほんのわずかだけ表面と接触することをいかにして確実にするかということについて対処するものである。レベリングは、NanoInkのNSCRIPTOR(登録商標)を2D-レベリングユーザインターフェース(同じくNanoInkが開発)と併用して行った。レベリングは2段階で(1つの段階をマクロスケールにて、1つの段階をより精密な光偏向を用いたミクロスケールにて)行った。まず、図6のスキャナのz軸モータを用いて基板に対する2Dチップの平行性を視認することにより、マクロスケールレベリングを行った。この時点では、2Dチップはまだ、表面の数百ミクロン上方にある。第2に、ペンカンチレバーを表面の方へ曲げ、機器の光学系を用いて焦点合わせを行った。この時、レベリングは、レベリングプロトコルと併用した精密な光偏向を用いて行う。カンチレバーの変化をビューポート(図6の挿入図に示すA1-3およびB1-3)を通してモニタリングし、これらの変化をz-モータおよびz-ピエゾによって制御した。
【0118】
以下の工程を用いて、パターニングされる表面に対して2Dチップをレベリングした。
【0119】
1)シリコン支持構造を通して下にあるカンチレバーを見ることができるビューポート上に光学系の焦点を合わせ、機器上の光学システムを用いて、カンチレバーがレベリングされているか否かを判定する。
【0120】
2)図7のビューポートを通して見えるカンチレバーのアームは緑がかって見え、逆ピラミッド型の先端部材は、2つの赤色ドットをベース上に有している。
【0121】
3)z-モータを用いて先端部材を表面の数十ミクロン程度上方まで表面に接近させ、光学系を用いて6つのビューポートのいずれかをモニタリングすると、カンチレバーのアームの色に移行(shift)も変化もみられない。
【0122】
4)接触前後におけるカンチレバーの外観の変化を図8に示す。先端部材の外観は、図8A、8B、および8Cにそれぞれ示すように、表面上方で異なる状態を経て移動する際、基板表面と最初に接触するとき、およびz-ピエゾが表面との最初の接点を越えて数ミクロン打ち込まれるときに変化する。観察された変化は、カンチレバー端部の2つの赤色のドットにある。カンチレバーが表面の上方にあるときは、2つの明るいドットが見られる(図8A)が、先端部材が表面に接触すると、2つの明るいドットは暗くなり始める(図8B)。この時点で、先端部材は表面にまさに触れ始めている。最終的に、先端部材を表面にさらに深く打ち込むと、2つの赤色のドットは完全に消える。最初の接触から赤色ドットの完全な減光までの位置は、3〜5ミクロンであるが、正確な量はチップによって異なる。この新規なレベリング手順は、「アリゲーターの眼レベリング手法」と呼ぶことができる。理論に限定されるものではないが、2つの赤色ドットは、カンチレバーおよび先端部材の設計ならびに自然光(例えば、レーザ光ではなく)から現れたと思われる。
【0123】
5)表面と接触する際の各ビューポートにおけるカンチレバーの相対的な眼の減光(eyes-dimming)特性を観察および注目した後、アレイ全体のz全体の位置(z-all position)に着目する。各ビューポートについて、先端部材が表面と接触し、赤色ドットが暗くなったときのz-プローブ値(z-ピエゾの位置から読み取られる)に注目する。これら2つの値を加算し、レベリングソフトウェアに入力する。このプロセスを3つのビューポートについて繰り返す。
【0124】
6)これらのパラメータをレベリングソフトウェアに入力した後、「レベリング実行」を押し、個々のz軸モーターは、入力されたzプローブ値に基づいてその位置を補正する。この手順を、3つのビューポート間のz-位置における差が1ミクロン未満になるまで繰り返す。
【0125】
7)任意に選択したビューポートを使用して、アレイをz全体の位置で表面に接触させ、カンチレバーが表面に触れるまで1ミクロン未満の増分で最後の接近を行う。全てのビューポートの眼の減光における変化が同じになるまでピエゾを完全に伸長させ、z全体を1ミクロン程後退させる。この時点で、システムはレベリングされ、全ての先端部材が表面に均一に触れており、設計されたリソグラフィアレイを実施することができる。
【0126】
8)この手法を用いて、最初の接触後の100nm〜数ミクロンの範囲の最初のz位置から完全な眼の減光により、優れたリソグラフィを均一な接触および均質な製作とともにもたらすことができる。しかし、接触前に眼が完全に赤色であると、2Dペンアレイはドットを全くパターニングできない場合がある。眼が完全に減光して赤色ドットが消え、先端部材がさらに基板中に押し込まれると、図1に示すようにカンチレバーの背面に偏向が生じ始め、これが歪んだパターニングにつながることになる。
【0127】
9)レベリングの後、設計されたパターンが実施され、先端部材はどのビューポートから見ても表面に出入りする際に点滅し始める(赤色の眼は接触無し、薄暗い眼は接触中)。
【0128】
10)レベリングの他に、試料保持器上に試料を載置する際に十分な注意を払わなければならない。試料の背面には、システムのレベリングを困難にするであろういかなるごみも微小な異物も存在してはならない。これは、試料保持器および基板の背面をアセトンなどの有機溶媒で拭いた後、空気乾燥または窒素乾燥を行うことで実現することができる。
【0129】
11)基板は、ビューポート2および3に対して中心に位置決めされる必要がある。
【0130】
12)チオールインクの異なる種類ごとに異なるDPN環境条件を用いなければならない。
【0131】
13)2Dペンアレイがシステム上でレベリングされると、若干の試料間のレベリングを行うことで、異なる試料を同時に製作することができる。
【0132】
このレベリング技術は、基板に対して2Dチップをレベリングするための高速かつ正確な方法を提供し、これにより、カンチレバーと表面との間の均一な接触がもたらされ、大型基板全体に再現可能で、正確かつ均質なパターニングが実現されるであろう。
【0133】
図9は、5mm2の試料のエッジからエッジまでのパターニングの例を示し、この光学顕微鏡画像(製作後のエッチングされた5mm2金基板を示す)に示される領域全体にわたって均質なドットが製作され、領域全体にわたる均一かつおよび均質な4x6ドットアレイとなる。製作された基板の四隅の構造の均質性を示す部分である。
【0134】
図10は、4行および12列のドットからなるアレイの高分解能光学画像を示し、赤色の枠で囲んだ領域において、上部から下部へと向かって3列ごとに、異なる滞留時間(それぞれ、10秒、5秒、1秒、0.1秒)で製作されたドットからなる。図示されるように、これらのドットは、同じ列および行にわたって、またアレイ間で均質である。各アレイの始まりにおいて、第1の接触点に関連する1つのドットが存在する。これらの光学画像に示されるように、変形、スキューイング、非特異的な沈着、およびネガティブ形状は存在せず、全てのアレイがはっきりと確定され、まっすぐで、鮮明である。
【0135】
1Dプローブアレイパターニングと同様に、ドットのピッチおよびサイズは、2Dペンアレイを用いて制御することができる。図11は、アリゲーターの眼レベリング後に得られたパターニングの例を示す。図11Aの光学画像(50倍)は、1μm離間したナノドットからなる矩形アレイを示し、このスケールでは、形状は顕微鏡の分解能未満であるため、これら形状を解像することができなかった。図11Bおよび図11Cは、平均ドット直径が90nmである製作されたドットアレイの構造的AFM画像および線プロファイルを示す。この高精度レベリング技術は、2Dペンアレイを基板に対してレベリングするための高速、正確、かつ再現可能なプロトコルを提供し、その結果、高品質かつ均質なパターニングが大型基板全体にわたって得られた。
【0136】
実施例4:温度制御によるDPN印刷を用いた金基板上のチオール分子の拡散率制御
幹細胞分化のためのDPNおよび2Dペンアレイを用いて金基板上にチオール化した分子ナノ構造の製作を成功させるためには、いくつかの問題に対処する必要がある。基板全体にわたる均質なスポット直径、スポット直径を100nm未満に再現すること、再現可能なプロトコル、チオール化した分子の拡散の制御(拡散の減速または高速化)、および非特異的な沈着を最小限にすること、といった重要なパラメータは、均質な幹細胞分化を実現するために対処する必要がある非常に重要な問題である。これらの問題は、チオール化した被覆先端部材および基板システムの加熱または冷却を可能にする加熱・冷却ステージを用いることにより対処することができる。
【0137】
第1世代:
従来、時折問題になっていたのは、限定されるわけではないが、ODT(1オクタデカンチオール)、HDT(1-ヘキサデカンチオール)、およびMUD(11-メルカプト-1-ウンデカノール)といった多くの低融点チオール分子が被覆2Dペンアレイから高速に拡散するということであった。これら分子は、室温で高速拡散し、これにより、被覆先端部材と金基板との間の接触点を必要最小限に(滞留時間0.01秒)にしても100nmより大きいナノ構造が製作される場合が多かった。この問題を回避するため、本発明者らは、基板を冷却する冷却ステージを設計した。冷却システムは、電源と、熱電冷却器または加熱器とも呼ばれるペルチェモジュールを伴うステージとしてのアルミニウムの固体ブロックと、回路基板と、デジタル加熱制御器とで構成される。パルス的に電圧を印加することにより、アルミニウム製ステージおよび基板を10℃未満に冷却することができる。図12は、この設計の構成要素を示す。
【0138】
第1世代冷却システムは、生成されたパターンのドット直径形状を減少させることができたものの、いくつかの問題を有していた。ステージの冷却が連続的または可変制御的にではなくパルスモードで行われていたため、パターン製作の際にノイズが生じた。さらに、温度が数分しか16℃未満に維持されず、製作および画像化の際にドリフティングが起こった。興味深いことに、雰囲気温度未満の温度である約18℃では、先端部材から基板表面へのチオール分子の拡散率は遅くなり、図2に示されるように、生成されたドットの直径は小さくなっていた。25℃および18℃における滞留時間5秒での構造的AFM(TAFM)画像のスポット直径は、それぞれ、460nmおよび256nmである。ODT被覆先端部材を用いてこれらのアレイを金薄膜上に製作し、製作された基板を金エッチング剤を用いてエッチングした後、AFM画像化を行った。さらに、図13Aおよび13Bに示されるように、両アレイは、図13Aでは右、13Bでは左に歪んでいるが、これは、冷却システムが所望の温度を維持することができないためである。
【0139】
第2世代:
第1世代冷却ステージに付随する固有の問題のため、第2世代が開発された。連続電流フローを用いる第2世代は、第1の設計と比較して大幅な改善であった。なぜなら、より長時間(約40分)一定の温度を保持することができたからである。この新たに設計されたステージは、図14に示されるような、積み重ねられ、各ブロックが5mm離間したアルミニウムブロックであった。ブロックにおける間隔により、空気が入り込んで熱伝達を起こすことが可能となる。
【0140】
第1世代冷却ステージによる結果と同様に、この新たな設計は、システムを冷却し、生成されるドットの直径を減少させることが可能であった。構造的AFM画像および輪郭プロットは、温度の減少に伴ってドット直径形状の減少が観察されることを示している(図15)。滞留時間を4秒にすると、ドット直径は、28℃で製作されたときの610nmから10℃で82nmに減少し、これは慣例的に(routinely)製作が可能である。第1世代冷却システムを用いてこのサイズを実現するのは困難であった。さらに、より早い滞留時間(0.4秒)にすると、慣例的に直径形状を35nmにさらに減少することができる。興味深いことに、滞留時間および温度の両方についてほぼ直線的な関係が観察される(図16)。(2つの異なるOTである4秒および0.4秒でのMHAのR2は、それぞれ、0.948および0.971である)。
【0141】
生成されるドット直径形状に対する温度の影響が他のチオール化した分子にも適用可能であるか否かを確認するため、1-オクタデカンチオールをインクとして使用し、描画温度を16-メルカプトヘキサデカンチオールのものと同様に変化させた。描画温度20.9℃および16℃について、158nmから40nmまでのドット直径形状の減少が観察された。温度に対してドット直径形状をプロットしたところ、0.9998のR2値が得られた。
【0142】
第3世代:
1mm2以上の範囲の大規模パターニングを行う際、滞留時間を最小限とすることが2つの理由から重要である。1つには、最大スループットを得るために、エッジからエッジまでの描画時間を高速化すること、および製作時間(望ましくは2時間未満)にわたって非特異的な沈着を回避することであり、熱ドリフトが起こることなく第2世代を用いて達成することができた最大描画時間は40分であり、これは、ドット間のピッチが280nm以下である高密度アレイを製作するには不十分である。そのため、新規なステージ設計および材料により、ドリフティングを起こすことなく温度を数十時間一定に保持する冷却・加熱ステージとして第3世代が設計された。図18は、加熱・冷却システムを示す。熱放散のために銅が使用され、ヒートシンクは多数のフィンおよび大きい表面積を有している。真空システムが基板を保持する。
【0143】
ODT被覆2Dペンアレイおよび新規な冷却システムを用いて製作された滞留時間の異なるドットのアレイの例が図19に示されている。
【0144】
融点がより高いチオール分子は、低融点チオール分子ほど容易には先端部材から基板表面へ拡散しないため、必要最小限の滞留時間で拡散率を増加させる異なる構成が必要である。一例として、アミン官能基を有するチオール分子(1-アミノウンデカンチオール(AUT))を用い、温度を増加させることによって拡散率が増加するか否かを検査した。図20は、1つの先端部材を使用して、異なる温度で様々な滞留時間を用いて製作されたAUTナノ構造の摩擦AFM画像を示す。これらの画像に示されるように、温度を増加させると、生成されるスポット直径が増加する。さらに、図20Cおよび20Dに示すように、スポット直径は湿度の増加とともに増加した。
【0145】
同一アレイでの先端部材ごとの、生成されたスポットのアレイ均質性を検査するため、本発明者らは、真空下での蒸気コーティングを用いてAUTで被覆した52個の先端部材からなる10ペンアレイを使用した。図21に示されるように、光学暗視野顕微鏡検査およびAFM摩擦画像は、同一のアレイおよび滞留時間が同じアレイ間においてスポット直径の変化を示さなかった。これらのアレイは、60℃および相対湿度65%にて製作された。さらに、滞留時間を減少させると、10秒から0.1秒について、それぞれ、460nmから74nmに減少した。カーソルプロファイルは、ドット直径の減少を示している。
【0146】
スループットをより高めるため、真空下にて2DペンアレイをAUTで蒸気コーティングした。図22に示すように、エッジからエッジまでの均質なアレイを60℃にて5mm2基板上に生成した。沈着の制御を向上させ、レベリング中またはパターン実施前の第1の接触点を無くすため、ステージを低温で作動させて所望のチオールの拡散を著しく減速させた。これにより、本発明者らは、パターニングの前に沈着を一切起こすことなくあるいは最小限の沈着でレベリングおよび接近を行うことが可能になり、最初の接近ドットを無くし得る。場合によっては、熱変化によってステージが拡張または縮小し、金属の拡張によって元のz-高さ(先端部材と表面との接点)に差が生じ得る。このような変化は、z-ピエゾに作用する電圧を所望のパターンを得るために増加または減少させることによって補償することができる。
【0147】
実施例5:間葉幹細胞応答に対する均質表面の効果
ディップペン・ナノリソグラフィを使用し、ナノメートルスケールで沈着させたメチル基を有するチオール化したインク(ODT)を用いて5mm2の均質なナノパターンを金の表面に2Dナノプリントアレイで作製した。ナノパターンは、280nmの固定距離(ピッチ、dα)および固定直径(dβ約65〜70nm)だけ離間した一連の並行ドットで構成されていた。Lonza社から入手した細胞を4つの経路に通し、24ウェルプレート中で、1mLの基本培地(Lonza社、間充織細胞成育培地)を用いて1つのウェルにつき50,000個の細胞の濃度でODT基板に接触させた状態で培養した。
【0148】
試料を、間葉幹細胞マーカーである、STRO-1およびヌクレオステミン、ならびに核(DAPI)およびアクチン繊維に対して染色した。試料をODT基板上に配置し、蛍光安定化封入剤であるVectashieldで封入した。試料をZeiss社の機種であるAxio imager顕微鏡で分析した。図23および図24を参照されたい。
【0149】
TissueGnostic(商標)分析は、各細胞が、間葉幹細胞マーカーであるSTRO-1およびヌクレオステミンの両方を発現したことを示した。細胞形態および間葉幹細胞マーカーの発現から、これらの結果は、応答がODT基板全体にわたって均質であったことを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部材(tip)を含むカンチレバーの少なくとも1つのアレイを含む物品であって、先端部材を含む該カンチレバーが、該先端部材から基板上への材料の沈着に適合しており、
前記アレイの先端部材密度が少なくとも1,000/平方インチであり、かつ
前記アレイが、前記材料の前記基板上への非特異的な沈着を実質的に防止するように制限された量の前記材料で均質に被覆されている、物品。
【請求項2】
カンチレバーのアレイがカンチレバーの二次元アレイである、請求項1記載の物品。
【請求項3】
先端部材を含むカンチレバーのアレイがカンチレバーの二次元アレイであり、x方向において、前記先端部材のカンチレバー間隔がx方向において5〜100nmであり、y方向において50ミクロン〜150ミクロンである、請求項1記載の物品。
【請求項4】
カンチレバーのアレイがカンチレバーの二次元直交アレイである、請求項1記載の物品。
【請求項5】
先端部材がナノスコピック先端部材である、請求項1記載の物品。
【請求項6】
先端部材が走査型プローブ顕微鏡先端部材である、請求項1記載の物品。
【請求項7】
先端部材が原子間力顕微鏡先端部材である、請求項1記載の物品。
【請求項8】
先端部材が中空先端部材である、請求項1記載の物品。
【請求項9】
先端部材が中実先端部材である、請求項1記載の物品。
【請求項10】
アレイの先端部材密度が少なくとも10,000/平方インチである、請求項1記載の物品。
【請求項11】
アレイの先端部材密度が少なくとも40,000/平方インチである、請求項1記載の物品。
【請求項12】
アレイの先端部材密度が少なくとも70,000/平方インチである、請求項1記載の物品。
【請求項13】
前記材料が少なくとも1種類の有機材料を含む、請求項1記載の物品。
【請求項14】
前記材料が少なくとも1種類の硫黄化合物を含む、請求項1記載の物品。
【請求項15】
前記材料が少なくとも1種類のチオール化合物を含む、請求項1記載の物品。
【請求項16】
前記材料が、少なくとも1種類の官能化されたまたは官能化されていないアルカンチオール化合物を含む、請求項1記載の物品。
【請求項17】
前記材料が溶媒を実質的に含まない、請求項1記載の物品。
【請求項18】
前記基板が、前記材料に共有結合するかまたは化学吸着するように適合した、請求項1記載の物品。
【請求項19】
前記均質な被覆により、材料の前記基板上への沈着に関するスポットサイズが実質的に同じになる、請求項1記載の物品。
【請求項20】
前記非特異的な沈着の実質的な防止が、基板の少なくとも1平方cmにわたって観察される、請求項1記載の物品。
【請求項21】
先端部材を含むカンチレバーのアレイ上に少なくとも1種類の材料を蒸気コーティングする工程であって、先端部材を含む該カンチレバーが、前記先端部材から基板上への前記材料の沈着に適合した、工程を含み、
前記アレイの先端部材密度が少なくとも1,000/平方インチであり、かつ
蒸気コーティングされる材料の量が、前記基板上への前記材料の非特異的な沈着を実質的に防止するように制限されている、
方法。
【請求項22】
蒸気コーティングが、1気圧未満の圧力および25℃を超える温度で行われる、請求項21記載の方法。
【請求項23】
蒸気コーティングが、500ミリトル未満の圧力および50℃〜120℃の温度で行われる、請求項21記載の方法。
【請求項24】
蒸気コーティングが、プログラム可能な真空炉を用いた少なくとも2つの蒸気コーティングサイクルを含むプロセスにおいて行われる、請求項21記載の方法。
【請求項25】
蒸気コーティングが、第1の排気工程、続く第1の加熱工程、続く第1の冷却工程、そして次に、少なくとも第2の排気工程、続く第2の加熱工程、および第2の冷却工程によって行われる、請求項21記載の方法。
【請求項26】
前記材料がチオールを含む、請求項21記載の方法。
【請求項27】
少なくとも1種類の材料を先端部材のアレイ上に蒸気コーティングする工程であって、前記先端部材が、前記先端部材から基板への前記材料の沈着に適合した、工程を含み、
前記アレイの先端部材密度が少なくとも1,000/平方インチであり、かつ
蒸気コーティングされる材料の量が、前記基板上への前記材料の非特異的な沈着を実質的に防止するように制限されている、
方法。
【請求項28】
前記先端部材がカンチレバーの端部に配置されている、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記先端部材がカンチレバーの端部に配置されていない、請求項27記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公表番号】特表2012−515559(P2012−515559A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548193(P2011−548193)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【国際出願番号】PCT/US2010/022013
【国際公開番号】WO2010/085767
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(508311352)ナノインク インコーポレーティッド (16)
【Fターム(参考)】