説明

制御された活性物質放出のための触媒核酸の温度依存的活性化の方法

本発明は、2つの化合物を含む活性物質放出システムに関する。第一の化合物は、触媒活性をもつ核酸とハイブリダイズしているオリゴヌクレオチドインヒビター鎖と結合した、ナノ粒子を含む。第二の化合物は、治療的活性物質に連結している基質分子と結合した、担体を含む。外部刺激により、該第一の化合物の該触媒活性をもつ核酸が放出され、かつ該第二の化合物の該基質分子に特異的に結合する。これにより該基質分子の切断が起こり、それによって、該基質分子に結合している該活性物質が放出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒活性をもつ核酸により機能する活性物質放出システムに関する。第一段階において、触媒活性をもつ核酸が、ナノ粒子に結合しているオリゴヌクレオチドインヒビター鎖からの外部刺激により放出される。放出された活性核酸は、第二段階において、その基質、ナノ粒子-活性物質結合体に結合して、共有結合的に、静電気的に、配位的に、もしくはイオン的に結合している物質、または挿入された活性物質の放出を引き起こす。
【背景技術】
【0002】
特許出願WO2006/108405(特許文献1)は、最も近い先行技術であると考えられ、治療的活性物質がナノ粒子に結合しており、かつ治療的活性物質のナノ粒子からの放出が交流磁場によって引き起こされるかまたは開始される、ナノ粒子に関する。しかし、ナノ粒子からの活性物質の直接的な熱による放出は多くの場合、例えば腫瘍細胞内において、わずかな比較的小さい温度の上昇によって、放出された活性物質の治療的有効濃度を得るには、十分に有効ではないことが明らかにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2006/108405
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、温度のわずかな上昇のみで活性物質の定量的放出の達成を可能にし、したがってWO2006/108405に開示される方法に比べて有効性をさらに増大させる方法、および本方法において用いるための、活性物質が連結された適切な化合物を提供することである。
【0005】
本発明は、化合物1および化合物2を含む活性物質放出系を提供することによってこの目的を達成し、該化合物1が、触媒活性をもつ核酸の温度誘導性放出により活性化され、かつ該触媒活性をもつ核酸が次いで、第二の化合物から活性物質を触媒的に放出させる。実施例に示すとおり、これは、例えば、触媒活性をもつ核酸としてL-RNAを用いることにより実施され、触媒活性をもつ核酸を生理的条件下でインヒビターの形態のL-DNAとハイブリダイズさせる。この複合体は、安定性試験において、ヒト血清中で安定であることが明らかにされている。L-核酸を用いることにより、標的生物において見出される天然(例えば、内因性)ヌクレアーゼとの相互作用も除去することができる。オリゴヌクレオチドインヒビター鎖の塩基配列および長さを改変することにより、粒子に結合している結合体の融点を、生理的条件(本発明において、38℃として、すなわち正常な体温よりもわずかに高い温度として示される)下で脱ハイブリダイゼーションが起こらないように調節する。体温において、二本鎖は触媒核酸を完全に阻害するのに十分に安定している。しかし、例えば、交流磁場における磁気誘導によって、粒子が加熱された場合、インヒビターDNAの触媒核酸は脱ハイブリダイゼーションを起こし、これは二本鎖の放出を引き起こして、触媒活性をもつ核酸が放出される。これらは、触媒核酸の基質としてはたらく分子を介して治療的活性物質に結合している担体を含む、第二の化合物により酵素的に切断することができる。活性物質は、この切断によって放出され、したがってその作用を発揮することができる。
【0006】
したがって、第一の態様において、本発明は、オリゴヌクレオチドインヒビター鎖に結合している少なくとも1つのナノ粒子を含む化合物1、および少なくとも1つの基質分子に結合している担体を含む化合物2を含む、活性物質放出システムに関し、該オリゴヌクレオチドインヒビター鎖が触媒活性をもつ核酸とハイブリダイズし、該基質分子が少なくとも1つの治療的活性物質に結合し、該治療的活性物質が該基質分子の切断により放出されることができ、かつ該触媒活性をもつ核酸により該基質分子の切断が起こる。
【0007】
したがって、本発明は具体的には、オリゴヌクレオチドインヒビター鎖に結合しているナノ粒子、および基質オリゴヌクレオチドに結合しているさらなるナノ粒子を含む、活性物質放出システムに関し、該オリゴヌクレオチドインヒビター鎖が触媒活性をもつ核酸とハイブリダイズし、該基質オリゴヌクレオチドが、該触媒活性をもつ核酸による該基質オリゴヌクレオチドの切断で放出され得る治療的活性物質に結合している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】任意の所望の活性物質のためのモデル物質として役立つ蛍光色素Alexa-647の、本発明による活性物質放出システムによる切断を示す図である。真ん中の曲線(-●-)は、触媒活性をもつRNA配列の49℃での脱ハイブリダイゼーションによる活性化後にナノ粒子-活性物質結合体から放出される遊離Alexa-647による、反応上清中の蛍光の増大を示す。下から2番目の曲線(-▲-)は、上清中の蛍光強度の増大を検出することができないため、37℃で脱ハイブリダイゼーションは起こらないことを示す。下の曲線(-■-)は、触媒核酸非存在下での陰性対照を示す。上の曲線(-◆-)は、ナノ粒子-活性物質結合体を、阻害されていない触媒活性をもつRNA一本鎖と共にインキュベートした、陽性対照を示す。
【図2】触媒活性をもつ核酸および活性物質により切断される基質オリゴヌクレオチドが2つの異なるナノ粒子に結合している、本発明による活性物質放出システムの一態様を示す図である。それぞれの場合に、二酸化ケイ素でコーティングしたナノ粒子を左側のボールで示す。リンカーを介して、オリゴヌクレオチドインヒビター鎖がナノ粒子に結合しており、触媒活性をもつ核酸がオリゴヌクレオチドインヒビター鎖とハイブリダイズしている。真ん中において、基質オリゴヌクレオチドがリンカーを介して結合しているナノ粒子を見ることができ、このナノ粒子はその他端で活性物質(星で示す)に結合している。この後、放出された触媒活性をもつ核酸の基質オリゴヌクレオチドへの蓄積が示され、最後に、活性物質を放出し切断された基質オリゴヌクレオチドを示す。
【図3】活性物質放出システムの概略図である。システムは化合物1および2からなり、加熱によりオリゴヌクレオチドインヒビター鎖の脱ハイブリダイゼーションおよび核酸の触媒活性化が起こり、これが放出されてその基質分子を酵素的に切断することができる。次いで、この切断により化合物2の治療的活性物質が放出され、したがってこれを活性化する。
【図4】緩衝液中、ナノ粒子/(L)-オリゴヌクレオチドインヒビター鎖/リボザイム結合体存在下での、ナノ粒子/(L)-基質オリゴヌクレオチド結合体による基質オリゴヌクレオチドに連結した蛍光色素A-647の温度依存的放出を示す図である。上清中のRFUを37℃および/または49℃で1、2、3、および4時間インキュベートした後に測定した。遊離L-リボザイムを伴う陽性対照ナノ粒子/(L)-基質オリゴヌクレオチド結合体として用い、ナノ粒子/(L)-基質オリゴヌクレオチド結合体のみを反応緩衝液と共に陰性対照として用いた。
【図5】ヒト血清中、ナノ粒子/(L)-オリゴヌクレオチドインヒビター鎖/リボザイム結合体存在下での、ナノ粒子/(L)-基質オリゴヌクレオチド結合体による基質オリゴヌクレオチドに連結した蛍光色素A-647の温度依存的放出を示す図である。上清中のRFUを37℃および/または49℃で1、2、3、および4時間インキュベートした後に測定した。遊離L-リボザイムを伴うナノ粒子/(L)-基質オリゴヌクレオチド結合体を陽性対照として用い、ナノ粒子/(L)-基質オリゴヌクレオチド結合体のみを反応緩衝液と共に陰性対照として用いた。
【図6】血清中のL-リボザイムおよびR-リボザイムの安定性を示す図である。長さ19bpの各リボザイムの一定量30pmolを、ヒト血清中、37℃で指定の時間インキュベートした後の分解について分析した。19bpのRNAの分解を、15%変性ポリアクリルアミドゲルにおいて、EtBrで染色した後、UV光線下で可視化した。パートAはL-リボザイムについて0〜48時間以内の分解を示し、パートBはR-リボザイムについて0〜180秒以内の分解を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
定義:
「特異的に」という用語は、触媒活性をもつ核酸が好ましくは、基質オリゴヌクレオチド上でのみ作用し、かつそれを切断し、他のオリゴヌクレオチドに対しては活性を示さないことを意味すると理解されるべきである。
【0010】
「生理的条件」という用語は、標的体内の、好ましくはヒト体内の問題の標的組織において細胞内または細胞外にある物理化学的条件を意味すると理解されるべきである。
【0011】
「本質的に活性物質の切断がない」という用語は、少量で放出された活性物質が標的組織において有害反応を引き起こさないことを意味すると理解されるべきである。これは特に、4時間(h)の間に、例えば、実施例3Aなどの放出実験で用いた活性物質の10%未満、より好ましくは1%未満、特に0.5%未満が放出されることを意味する。
【0012】
「触媒核酸」または「触媒活性をもつ核酸」という用語は、タンパク質成分の関与なしに特定の化学反応を触媒しうる、「DNAザイム」、リボザイム、修飾核酸、ならびに核酸類似体などの核酸分子を意味すると理解されるべきである。この方法のために、天然に存在する触媒核酸だけでなく、進化した方法(例えば、SELEX)により生成された核酸を用いてもよい。さらに、触媒核酸を自動固相合成によって生成することもできる。
【0013】
「交流磁場によって引き起こされるかまたは開始される」という用語は、交流磁場および/もしくはパルスが放出および/もしくは解離を直接引き起こすこと、または放出および/もしくは解離が間接的に、例えば、酵素の活性化もしくは熱生成を介して引き起こされることのいずれかを意味すると理解されるべきである。
【0014】
「完全にハイブリダイズしている」という用語は、用いる触媒活性をもつ核酸のすべての分子がハイブリダイズしている状態にあることを意味すると理解される。本発明において特許請求されるとおり、好ましくは過剰な数のインヒビター鎖を用いるべきであるため、オリゴヌクレオチドインヒビター鎖は完全なハイブリダイゼーション後に遊離形態で存在することもある。
【0015】
「約」という用語は、±5%、特に±1%の偏差を意味すると理解される。
【0016】
本発明は特に、オリゴヌクレオチドインヒビター鎖が、より特には架橋剤(リンカー1)を介して、ナノ粒子に共有結合している、活性物質放出システムに関する。
【0017】
リンカー1、ならびに続いて組み込まれたリンカー2およびリンカー3は、ナノ粒子(または担体)とオリゴヌクレオチドとの間の2つの官能基から共有結合により直接形成されうる。これは、好ましくはペプチド結合、トリアゾール環、もしくはジチオール橋からなるべきであるか、または他の二量体化、縮合、アルキル化、もしくはクリック反応により作製されるべきである。これらは、オリゴヌクレオチドの官能基とナノ粒子(または担体)の官能基または反応性表面との間に挿入されているホモまたはヘテロ二官能性架橋剤からなっていてもよい。このために、オリゴヌクレオチド合成において修飾ヌクレオチドを用いることにより、オリゴヌクレオチドの連結に用いる必要な官能基を提供することが必要でありうる。この修飾ヌクレオチドは、好ましくはオリゴヌクレオチドの末端に組み込まれるべきである。
【0018】
用いる架橋剤は生理的条件下で切断されることができない。
【0019】
本発明によるリンカー1、リンカー2、およびリンカー3について、それらが担持する反応性基に応じて、架橋剤の異なる基を区別してもよい。ヘテロ二官能性架橋剤は2つの異なる反応性末端を有し、これにより結合を逐次行い、したがって望ましくない分子内副反応を防止することが可能となる。ヘテロ二官能性架橋剤の群に属する化合物の例には、スルホ-SMCC(スクシンイミジル-4-(N-マレイミド-メチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート(Succinimidyl-4-(N-maleimido-methyl)cyclohexane-1-carboxylate)、スルホ-NHS(-ヒドロキシスルホスクシンイミド)、EDC(1-エチル-3-[3-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩)、またはスルホ-LC-SPDP(N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)-プロピオナート)が含まれる。

【0020】
特に、ナノ粒子表面上の架橋剤スルホ-SMCCまたはスルホ-GMBSを用いて、アミノシラン修飾により組み込まれたアミノ基をインヒビターオリゴヌクレオチドの5'末端のSH基と反応させる。
【0021】
本発明による活性物質放出システムにおいて、化合物1は、触媒活性をもつ核酸、および、例えば、スルホ-SMCCなどの二官能性架橋剤を用いて共有結合により、粒子表面に結合している、オリゴヌクレオチドインヒビター鎖を含む。触媒核酸およびインヒビター鎖の塩基配列は生理的条件下で完全にハイブリダイズしており、これは、ほとんど相補的な塩基配列から完全に相補的な塩基配列までを用いて達成される。
【0022】
この場合、触媒活性をもつ核酸および/またはオリゴヌクレオチドインヒビター鎖は、RNA、DNA、L-RNA、L-DNA、および修飾核酸の群より選択される。修飾核酸の例には、同等の天然に存在する核酸よりも低いヌクレアーゼ感受性を有する核酸が含まれる。修飾核酸の例には、LNA、PNA、モルフォリノ(Karkare and Bhatnagar, 2006)、またはGNA(Zhang and Chaput, 2010)が含まれる。L-リボザイムの例は、例えば、Seelig et al. (2000)、米国特許第2,003,219,422号、およびDE 10 2009 007929に記載されている。前述のとおり、さらに、修飾核酸を用いて、オリゴヌクレオチドに結合するために官能基を導入してもよく、この基は好ましくは末端に組み込まれている。特に、SH修飾ヌクレオチドを用いる。これは、好ましくは、合成中に、末端に、特にオリゴヌクレオチドの5'末端に導入する。次いで、これを、例えば、架橋剤スルホ-SMCCまたはスルホ-GMBSの1つを用いて、アミノシラン修飾ナノ粒子のアミノ基に連結することができる。
【0023】
特に、本発明は、リンカー1が、架橋剤およびSH修飾ヌクレオチドのSH基とアミノ基との反応により、オリゴヌクレオチドインヒビター鎖の5'末端に形成され、該アミノ基がアミノシラン修飾によりナノ粒子表面に導入され、かつ架橋剤が好ましくはスルホ-SMCCまたはスルホ-GMBSである、活性物質放出システムに関する。
【0024】
触媒活性をもつ核酸は、好ましくは10〜100ヌクレオチドの長さ、より好ましくは12〜60ヌクレオチドの長さを有する。適切な触媒核酸は当技術分野において公知である。必要があれば、適切なハイブリダイゼーション温度を設定するために、または修飾核酸を組み込むために、これらを5'末端または3'末端でさらに伸長させる。
【0025】
RNAまたはDNAを好ましくは触媒活性をもつ核酸として用いるべきである。天然においては、触媒活性をもつ核酸分子は配列特異性を有する。この配列特異性は、触媒核酸と基質オリゴヌクレオチドとの間の切断部位近辺に形成される特定の塩基対に起因する。理論的には、触媒活性をもつ核酸は、任意のヌクレオチド配列が種特異的様式で切断されうるような様式で構築することができる。
【0026】
ハンマーヘッド、ヘアピン、リボヌクレアーゼP、およびデルタ肝炎ウイルスリボザイムなどの天然に存在する触媒核酸に加えて、一連の合成RNA分子が開発されており、近年その触媒活性はインビトロ選択技術の発達の結果、劇的に高まっている(Carmi et al., 1998)。これに関連して、「DNAザイム」はバイオテクノロジーの発達の最近の成果である。この方法において、触媒活性を有するDNA分子はもっぱらインビトロ選択法によって得られる。これらはDNAおよびRNAの両方を切断することができる。RNアーゼ活性を有するそのような分子の例は10-23 DNAザイムである(Santoro et al., 1997)。
【0027】
さらなる態様において、本発明は、触媒活性をもつ核酸がRNA、DNA、L-RNA、L-DNA、および修飾核酸からなる群より選択され、かつ該触媒活性をもつ核酸が好ましくはSH修飾ヌクレオチドを含み、該触媒活性をもつ核酸が、好ましくは10〜100ヌクレオチドの長さ、より好ましくは12〜60ヌクレオチドの長さを有し、かつ該触媒活性をもつ核酸が、好ましくはRNA、特にリボザイム、特にハンマーヘッドリボザイムであり、特に配列5'-GGC UCG ACU GAU GAG GCG C-3'(SEQ ID NO: 1)を含む、活性物質放出システムに関する。
【0028】
本発明による触媒核酸には、ハンマーヘッド、ヘアピン、リボヌクレアーゼP、およびデルタ肝炎ウイルスリボザイムだけでなく、それらから誘導されるリボザイム類似体ならびにその他の合成リボザイムおよび「DNAザイム」が含まれる。この場合、ハンマーヘッド酵素が本発明の特に好ましい態様である。
【0029】
例えば、植物ウイルス由来の天然に存在するハンマーヘッドリボザイムは、典型的には、個別の自己切断RNA分子からなる。この場合、配列は、保存配列の短いリンカーによって互いに結合している最低3つの二重らせんからなる。保存ウリジンターンがらせん1をらせん2に結合させる。らせん2およびらせん3は配列GAAAによって互いに結合している。加えて、ハンマーヘッドリボザイムは少なくとも1つのループを含む。
【0030】
特に好ましい態様において、触媒活性をもつ核酸はL-RNA、L-DNA、および/または修飾核酸である。例えば、修飾核酸は低いヌクレアーゼ感受性を有するものであると理解される。修飾核酸は、適切な連結基をオリゴヌクレオチドに組み込むために用いることもできる。
【0031】
特に好ましいのはリボザイム、特にハンマーヘッドリボザイムである。特に好ましい触媒核酸は配列

を含む。
【0032】
オリゴヌクレオチドインヒビター鎖は、当技術分野における一般的な技術的知識により、触媒活性をもつ核酸に対応する様式で構築する。したがって、活性物質放出システムのオリゴヌクレオチドインヒビター鎖はまた、RNAまたはDNA、特にL-RNA、L-DNA、および/または低いヌクレアーゼ感受性を有する修飾核酸でもある。
【0033】
活性核酸に対応して、インヒビター鎖は、好ましくは10〜100ヌクレオチドの長さ、より好ましくは10〜60ヌクレオチドの長さを有し、特に配列

を含む。
【0034】
10〜100ヌクレオチドの長さ、好ましくは10〜60ヌクレオチドの長さを有する核酸を、好ましくはオリゴヌクレオチドインヒビター鎖として用いる。ハイブリダイゼーションの安定性のために、>10ヌクレオチドの選択した長さが選択され、長いオリゴヌクレオチドの合成による生成はコストが高いため、<100ヌクレオチドの長さが指定される。概して、これらの核酸は、触媒核酸と塩基対形成するため生理的条件下で完全にハイブリダイズするような様式で選択され、したがって触媒核酸とほとんど相補的である。特に好ましい核酸は、配列

を含む。
【0035】
したがって、好ましい態様において、本発明は、オリゴヌクレオチドインヒビター鎖が、RNA、DNA、L-RNA、L-DNA、および修飾核酸からなる群より選択され、特にSH修飾ヌクレオチドを含み、好ましくは10〜100ヌクレオチドの長さを有し、特に10〜60ヌクレオチドの長さを有し、かつ特に配列

を含む、活性物質放出システムに関する。
【0036】
オリゴヌクレオチドインヒビター鎖の触媒活性をもつ核酸に対するモル比は、触媒核酸の完全なハイブリダイゼーションを確実にするために、好ましくは≧1であり、かつ特に1から2である。配列SEQ ID NO: 2を含むオリゴヌクレオチドインヒビター鎖、および配列SEQ ID NO: 1を含む触媒活性をもつ核酸による実際的な例において、ゲル電気泳動を用いたインビトロ実験により、1.0から1.3、特に約1.1の最適な比、およびT<43℃における十分な安定性が示された。
【0037】
したがって、好ましい態様において、本発明は、化合物1において、触媒活性をもつ核酸に対するオリゴヌクレオチドインヒビター鎖の比が≧1であり、かつ特に1から2である、活性物質放出システムに関する。
【0038】
別の好ましい態様において、本発明は、化合物1において、配列

を有する触媒活性をもつ核酸に対する配列5'-G CCT CAT CAG TCG AGC C-3'(SEQ ID NO: 2)を有するオリゴヌクレオチドインヒビター鎖の比が、1.0から1.3であり、かつ特に約1.1である、活性物質放出システムに関する。
【0039】
本発明による活性物質放出システムにおいて、触媒活性をもつ核酸は、生理的条件下では、特に43℃未満の体温まで、オリゴヌクレオチドインヒビター鎖と完全にハイブリダイズしているべきである。43℃および43℃超の温度では、触媒活性をもつ核酸の全含有量の好ましくは少なくとも5%、より好ましくは10%、特に20%が脱ハイブリダイズと考えられる。少なくとも1つの触媒核酸の放出を、実施例3に記載の放出アッセイ法において緩衝液中で測定することができる。蛍光色素の顕著な放出により、少なくとも1つの触媒核酸の脱ハイブリダイゼーションが示される。この様式で、例えば、磁場におけるナノ粒子の加熱による高温でのみ、活性物質が化合物2から放出されることを保証することができる。
【0040】
したがって、具合的には、本発明は、触媒活性をもつ核酸がオリゴヌクレオチド鎖と生理的条件下で完全にハイブリダイズしており、かつ43℃では、少なくとも1つの触媒活性をもつ核酸、好ましくは結合している該触媒活性をもつ核酸の5%、より好ましくは結合している該触媒活性をもつ核酸の10%、特に結合している該触媒活性をもつ核酸の20%が脱ハイブリダイズする、活性物質放出システムに関する。
【0041】
化合物1のナノ粒子は好ましくは、常磁性酸化鉄または超常磁性酸化鉄を含むコアを含む。適切なナノ粒子は先行技術において記載されている。特に、WO97/38058、WO98/58673、およびWO2009/086824(すべて参照により本明細書に組み入れられる)に記載のナノ粒子が、本発明によるシステムに適している。
【0042】
さらなる態様において、本発明は、ナノ粒子が、少なくとも1つの常磁性酸化鉄または超常磁性酸化鉄を含むコアを有する、活性物質放出システムに関する。
【0043】
これらのナノ粒子は、好ましくは、磁性材料から、好ましくは強磁性、反強磁性、フェリ磁性、反フェリ磁性、または超常磁性の材料から、より好ましくは酸化鉄、特に超常磁性酸化鉄または酸化物層と共に提供される純粋な鉄からなる。これらの鉄を基にする材料は、特にそれらの低い毒性ゆえに選択されるが、他の金属酸化物も概して適切である。好ましい酸化鉄は磁鉄鉱(Fe3O4)、磁赤鉄鉱(γ-Fe2O3)、またはこれら2つの酸化物の混合物である。概して、好ましいナノ粒子は式FeOXで表すことができ、ここでXは1または2の数である。
【0044】
Xが1.0から2.0の範囲の数である式FeOXの磁性材料に加えて、M=Co、Ni、Mn、Zn、Cd、またはBaである一般式MFe2O4を有する材料または他のフェライトを用いることもできる。さらに、本明細書において明示される磁性材料などの磁性材料が挿入されたおよび/または結合しているシリカまたはポリマー粒子も適切である。
【0045】
本発明のさらなる好ましい態様は、常磁性または超常磁性のナノ粒子を交流磁場で加熱する、活性物質放出システムに関する。
【0046】
一般に、好ましい態様において、本発明のために必要な熱を、好ましくは、主にヒステリシス熱の放出を引き起こす超常磁性ナノ粒子を励起する体外交流磁場により生成する。適切な装置は、例えば、WO2001/10501、WO2001/10500、およびWO2009/118091に記載されている。体外から適用した交流磁場は内部で強化することができる(WO2009/118091)。または、交流磁場は内部で誘導することもできる(WO2009/118091)。この熱放出は、触媒活性をもつ核酸を放出するために必要とされる高温をもたらす。
【0047】
交流磁場において常磁性または超常磁性のナノ粒子を加熱するために、10〜500kHzの範囲の特定の周波数および0.5〜50kA/mの磁場強度、特に50〜200kHzおよび0.5〜20kA/mの磁場強度を用いる。これらの範囲はヒトの治療において特によく許容され、すでに臨床的に試験されている。ナノ粒子を含む組織を、粒子の比吸収率、および標的組織中のそれらの濃度とは無関係に、80℃を超えるまで、特に43℃から55℃の間の温度まで加熱することが可能である。
【0048】
活性物質およびコーティングがないが、ナノ粒子の作製は、米国特許第6,048,515号に大規模に記載されている。ナノ粒子の表面の官能基付与は、当技術分野において公知であるため、公知の方法を用いてナノ粒子の表面上にヒドロキシ基、カルボキシル基、チオール基、エポキシド基、またはカルボニル基を作製することができる。
【0049】
ナノ粒子は、好ましくは、1つまたは複数のコロイド被覆中またはコーティング中に封入された磁性第一鉄コアに基づく。この場合、コアは好ましくは磁鉄鉱または磁赤鉄鉱からなる。被覆の主要な機能は、水性媒質中でコロイド分散を達成し、ナノ粒子を凝塊形成から保護することである。WO98/58673に記載のものなどの、複数の層で被覆された粒子は概して、そのような粒子の生物学的挙動はポリマーコーティングによって調節しうるため、ナノ粒子結合体の基礎として適切である。
【0050】
例の本発明による活性物質放出システムにおいて、反応性シラン被覆と共に、より正確にはアミノシラン被覆と共に提供された、直径15nmの酸化鉄コア(TEM)を選択した。
【0051】
表面上の連結の有効性を改善し、かつ酸化鉄表面の活性を低減するために、化合物1の本発明によるナノ粒子は少なくとも1つの被覆、好ましくはシラン被覆またはSiO2被覆およびシラン被覆を含むべきである。これらの粒子は超常磁性であり、不活性表面の純粋な鉄粒子よりも利点を有する。これは酸化鉄コアを生理的媒質中の反応から保護し;SiO2表面も、反応性シランの利用可能なSiOHへの縮合によりその官能基密度が純粋な酸化鉄に比べて増加しているという点で、有利である。官能性シラン被覆を適用する前に、ナノ粒子を厚さ1〜20nm、特に5nmのSiO2層でコーティングすることが好ましい。
【0052】
具体的には、本発明は、ナノ粒子が少なくとも1つの被覆、好ましくはシラン被覆またはSiO2およびシラン被覆を有する、活性物質放出システムに関する。
【0053】
しかし、二酸化ケイ素(SiO2)(下記参照)または金(Au)などの非磁性材料で作成されたナノ粒子を用いることも可能である。非磁性材料で作成されたナノ粒子を用いる場合、刺激および熱生成は、一連のナノ粒子において、交流磁場ではなく、例えば、赤外線照射によって実施する。
【0054】
ナノ粒子は500nm未満の直径を有するべきである。好ましくは、ナノ粒子は15nmの平均直径を有するか、または1〜100nmのサイズ範囲内、より好ましくは10〜20nmの範囲内である。
【0055】
基質分子は、活性物質が担体基質分子-活性物質結合体から放出されて、その作用を発揮しうるように、触媒活性をもつ核酸によって切断可能でなければならない。概して、基質分子はオリゴヌクレオチドであるが、触媒活性をもつ核酸に適した切断可能なペプチドまたは他の分子でもありうる。
【0056】
具体的には、本発明は、基質分子がオリゴヌクレオチドである、活性物質放出システムに関する。
【0057】
化合物2の担体は、ポリマー(例えば、ポリ乳酸グリコール酸)、特にバイオポリマー、SiO2粒子、または金粒子もしくは酸化物粒子などの金属粒子でありうる。適切なバイオポリマーには、糖、デキストラン、キトサン、またはデンプンが含まれる。この場合、小さい表面修飾酸化鉄粒子も好ましい。担体は、ゲル、微小粒子、ミクロスフェア、またはナノ粒子の形態であってもよい。特に好ましい態様に従い、化合物2は、化合物1について前述した、小さい表面修飾酸化物粒子の形態でもある。この場合、化合物1のものと同じナノ粒子であることもできる。WO2009/100716に記載のものなどの、ナノ粒子含有医用製品も好ましい(参照により本明細書に組み入れられる)。一つの態様において、触媒活性をもつ核酸とハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドインヒビター鎖、および基質分子-活性物質結合体を、同じナノ粒子に結合することもできる。
【0058】
したがって、本発明のさらに好ましい態様は、担体が、ポリマー、特にバイオポリマー、SiO2粒子、または金属粒子、特に金粒子もしくは酸化物粒子、好ましくは小さい表面修飾酸化鉄粒子であり、ゲルの形態で、微小粒子の形態で、ミクロスフェアの形態で、または、特に酸化物ナノ粒子としてのナノ粒子の形態で存在する、活性物質放出システムに関する。
【0059】
本発明による活性物質放出システムは、一つの態様において、2つの型のナノ粒子、すなわち、一方では、基質オリゴヌクレオチドおよび任意にリンカーを介して磁性ナノ粒子に結合している活性物質を含むナノ粒子、および他方では、オリゴヌクレオチドインヒビター鎖とハイブリダイズした触媒活性をもつ核酸を含むナノ粒子を含む。両方の部分(触媒活性をもつ核酸および基質)が1つの粒子に結合している、単一成分システムを用いることもできる。
【0060】
したがって、本発明は、オリゴヌクレオチドインヒビター鎖に結合しているナノ粒子であって、該鎖が、基質オリゴヌクレオチドを切断することができる触媒活性をもつ核酸とハイブリダイズしており、該基質オリゴヌクレオチドが別のナノ粒子および治療的活性物質に結合している、ナノ粒子に関する。
【0061】
本発明は、治療的活性物質および基質オリゴヌクレオチドに結合しているナノ粒子であって、該基質オリゴヌクレオチドが触媒活性をもつ核酸によって切断可能である、ナノ粒子にも関する。
【0062】
本発明による活性物質放出システムの機能原理は下記のとおりである。触媒活性をもつ核酸は、オリゴヌクレオチドインヒビター鎖とハイブリダイズしており、高温、すなわち38℃よりも高温、好ましくは40℃よりも高温でのみ放出される。これにより、生理的条件下かつ38℃までの温度では、触媒活性をもつ核酸の放出は起こらないことが保証される。
【0063】
触媒活性をもつ核酸とハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドインヒビター鎖を、次いで、磁性ナノ粒子、好ましくは超常磁性ナノ粒子に結合する。
【0064】
放出される活性物質は、好ましくは抗癌剤であり、これを、基質オリゴヌクレオチド、および任意にリンカーを介して、別のナノ粒子に結合するが、触媒活性をもつ核酸とハイブリダイズしているオリゴヌクレオチドインヒビター鎖と同じナノ粒子に結合することもできる。
【0065】
担体-活性物質結合体および/または粒子-活性物質結合体は、腫瘍細胞または細菌細胞中で濃縮するという利点も提供し、例えば、MRT(磁気共鳴断層撮影)を用いる場合、小さいサイズの腫瘍だけでなく、個々の腫瘍細胞さえも検出することができる。例えば、この非常に感度の高い検出法により、転移の発生およびサイズを判定することが可能となる。本発明によるナノ粒子および本発明による活性物質放出システムを、この検出法において用いることができる。
【0066】
活性物質は、非常に強く、かつ、好ましくは共有結合により、基質オリゴヌクレオチドに結合しているため、生理的条件下では本質的に活性物質の切断が起こらない。基質オリゴヌクレオチドが任意にリンカーを介して結合しているナノ粒子もまた、好ましくは磁性粒子、より特にはnmからμmサイズの範囲の超常磁性粒子である。
【0067】
したがって、特定の外部交流磁場を適用することにより、一連のナノ粒子の温度を、ハイブリダイズした触媒活性をもつ核酸が放出されるような程度まで高めることができる。次いで、触媒活性をもつ核酸は、基質オリゴヌクレオチドに結合してこれを切断し、ナノ粒子から活性物質を放出して、その効果を発揮させる。
【0068】
放出されなければならないのは、概してわずかな温度変化では定量的に起きない活性物質自体ではなく、触媒量の触媒活性をもつ核酸だけであり、かつ、基質オリゴヌクレオチドを切断するには触媒量だけで十分であるため、これらは定量的に放出される必要がないということを、生成された熱が意味するため、ほとんど定量的な切断および活性物質の放出により、WO2006/108405に記載の方法に比べて有効性の増大が起こる。したがって、触媒が非定量的様式で放出され、この触媒は活性物質を定量的に放出させることができる。これにより、生成された熱により活性物質が直接放出されるWO2006/108405の方法に比べて、ほぼ100%の有効性の増大をきたす。
【0069】
図2は、本発明による活性物質放出システムの実施例を示す。
【0070】
ナノ粒子-活性物質結合体は、ナノ粒子(例えば、酸化鉄、金、SiO2、または様々な、好ましくは超常磁性材料で作成されたコア-シェル粒子)、任意の架橋剤、および基質オリゴヌクレオチド(DNA、RNA、修飾核酸、および核酸類似体)からなり、これらは活性物質を担持し、対応する触媒核酸によって特異的に切断されうる。第一の成分からの触媒核酸は、熱による放出後に、基質オリゴヌクレオチド鎖を切断するための切断ツールとして役立つ。次いで、図2において星記号で示す活性物質が放出される。
【0071】
本発明による活性物質放出システムの利点は、核酸の触媒活性、およびナノ粒子-活性物質結合体からの活性物質の酵素的放出における結果として生じる有効性の増大である。触媒活性をもつ核酸の酵素的性質ゆえに、ナノ粒子-活性物質結合体から治療的に有効な濃度の活性物質を放出させるために、この触媒核酸の低い濃度だけが必要とされる。
【0072】
ナノ粒子-活性物質結合体の活性物質は熱的ではなく酵素的に放出されるため、活性物質の熱による放出における最適とは言えない有効性の問題は解決される。この様式で、腫瘍細胞における大量の活性物質の酵素的放出を達成するために、非常に少量の触媒核酸の熱による放出で十分である。
【0073】
活性物質放出システムのさらなる利点は、その高い変動性および様々な状況への適応性にある。触媒核酸の温度依存的活性化は、望まれる場合には、例えば、インヒビター配列の長さ、またはインヒビターと触媒核酸との間のハイブリダイゼーション比によって、改変することができる。活性物質放出の速度および/または放出された活性物質の量は、局所的温度および/または成分の濃度に依存し、したがって正常細胞における活性物質の予想される副作用を選択的に最小限にすることができる。
【0074】
本発明による活性物質放出システムにおいて、基質分子は、好ましくはリンカー2を介して、担体に共有結合している。リンカー2は、担体および/または基質分子の利用可能な反応性基に基づき、当技術分野における一般的知識に従って選択される。必要があれば、修飾核酸、特に末端修飾核酸を用いて、例えば、基質オリゴヌクレオチド側で利用可能であるアミノ基を作成する。概して、リンカー1について前述したものと同じ架橋剤を用いることができる。好ましいリンカーはスルホ-SMCCおよびスルホ-GMBSである。
【0075】
別の好ましい態様において、本発明は、基質分子が、特にリンカー2を介して、担体に共有結合しており、かつリンカーが好ましくはスルホ-SMCCまたはスルホ-GMBSである、活性物質放出システムに関する。
【0076】
基質オリゴヌクレオチドは好ましくは、DNA、RNA、L-DNA、L-RNA、および修飾核酸からなる群より選択される。天然に存在するヌクレアーゼの活性による自然放出を阻害および/または防止するために、修飾核酸は好ましくは、低いヌクレアーゼ感受性を有するものである。加えて、追加の反応性基、すなわち連結のための官能基を有する修飾核酸を組み込むこともできる。これらの基は好ましくは末端に組み込まれる。具体的な好ましい官能基には、アミノ官能基、チオール官能基、カルボキシル官能基、アルキン官能基、またはアジド官能基が含まれる。
【0077】
具体的には、本発明は、基質オリゴヌクレオチドがDNA、RNA、L-DNA、L-RNA、および修飾核酸からなる群より選択され、修飾核酸は好ましくは、末端官能基、特にアミノ官能基、チオール官能基、カルボキシル官能基、アルキン官能基、またはアジド官能基を有する、活性物質放出システムに関する。
【0078】
概して、化合物1に対して選択された触媒活性をもつ核酸によって切断されうる任意の分子を基質分子として用いることができる。この切断は好ましくは特異的であるべきである。触媒核酸とそれらの基質との対応する対は、先行技術分野において十分に周知である。基質オリゴヌクレオチドは好ましくは10〜100ヌクレオチド、より好ましくは15〜60ヌクレオチド、特に20〜30ヌクレオチドの長さを有する。他方、100ヌクレオチドよりも大きいオリゴヌクレオチドは一般には高価すぎる。基質の認識配列は概して少なくとも10ヌクレオチドの長さである。実施例において用いられる触媒活性をもつ核酸によれば、配列

を含む基質オリゴヌクレオチドが好ましい。
【0079】
したがって、本発明のさらなる態様は、基質オリゴヌクレオチドが10〜100ヌクレオチドの長さ、好ましくは15〜60ヌクレオチドの長さ、さらにより好ましくは20〜30ヌクレオチドの長さを有し、かつ特に配列

を含む、活性物質放出システムに関する。
【0080】
本発明による活性物質放出システムは、核酸、siRNA、アンチセンスRNA、アミノ酸、アプタマー、ペプチド、タンパク質、糖タンパク質、炭水化物、グリカン、脂質、リポタンパク質、および低分子量活性物質を含む群より選択される、少なくとも1つの治療的活性物質を含む。低分子量活性物質が特に好ましい。
【0081】
これらは好ましくは抗増殖、細胞増殖抑制、抗遊走、抗血管形成、抗血栓、抗炎症、消炎、抗凝固、抗菌、抗ウイルスおよび/または抗真菌の活性物質、特に細胞増殖抑制または細胞毒性の作用を有する物質であり、抗増殖、抗遊走、抗血管形成、細胞増殖抑制および/または細胞毒性の活性物質、ならびに抗増殖、抗遊走、抗血管形成、抗血栓、抗炎症、消炎、細胞増殖抑制、細胞毒性、抗凝固、抗菌、抗ウイルスおよび/または抗真菌の特性を有する、特に阻害核酸(例えば、siRNA)を含む核酸、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、炭水化物、脂質、糖タンパク質、グリカンまたはリポタンパク質が好ましい。加えて、これらの物質はまた、放射線増感剤、増感剤、もしくは併用療法を含む他の通常の癌治療法の増強剤であることができるか、またはこれらはそのような増感剤を含んでいてもよい。
【0082】
具体的には、本発明は、治療的活性物質が核酸、siRNA、アンチセンスRNA、アミノ酸、アプタマー、ペプチド、タンパク質、糖タンパク質、炭水化物、グリカン、脂質、リポタンパク質、および低分子量活性物質を含む群より選択され、該治療的活性物質は特に低分子量活性物質、好ましくは抗増殖、細胞増殖抑制、細胞毒性、抗遊走、抗血管形成、抗血栓、抗炎症、消炎、抗凝固、抗菌、抗ウイルスおよび/または抗真菌の作用、特に細胞増殖抑制または細胞毒性の作用を有する物質であり、該治療的活性物質のドキソルビシンまたはメトトレキセートが好ましい、活性物質放出システムに関する。
【0083】
細胞毒性および/または細胞増殖抑制の化合物、すなわち細胞毒性および/または細胞増殖抑制の特性を有する化合物として用いることができる物質には、アルキル化剤、細胞増殖抑制特性を有する抗生物質、代謝拮抗物質、微小管阻害剤およびトポイソメラーゼ阻害剤、白金含有化合物、ならびにアスパラギナーゼ、トレチノイン、アルカロイド、ポドフィロトキシン、タキサンおよびミルテホシン(登録商標)、ホルモン、免疫調節剤、モノクローナル抗体、シグナル伝達物質(シグナル伝達分子)およびサイトカインなどの他の細胞増殖抑制剤が含まれる。
【0084】
アルキル化剤の例には、クロレタミン、シクロホスファミド、トロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、クロランブシル、ブスルファン、チオテパ、カルムスチン、ロムスチン、ダカルバジン、プロカルバジン、テモゾロミド、トレオスルファン、エストラムスチン、およびニムスチンが含まれる。
【0085】
細胞増殖抑制特性を有する抗生物質には、ダウノルビシン、ならびにリポソーム化ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ダクチノマイシン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、エピルビシン(4-エピ-アドリアマイシン)、イダルビシン、ダクチノマイシン、ミトキサントロン、アムサクリン、およびアクチノマイシンDが含まれる。
【0086】
メトトレキセート、5-フルオロウラシル、6-チオグアニン、6-メルカプトプリン、フルダラビン、クラドリビン、ペントスタチン、ゲムシタビン、シタラビン、アザチオプリン、ラルチトレキセド、カペシタビン、シトシンアラビノシド、チオグアニン、およびメルカプトプリンを代謝拮抗物質(抗代謝活性物質)の例として挙げることができる。
【0087】
アルカロイドおよびポドフィロトキシンのクラスの例には、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、エトポシド、およびテニポシドが含まれる。加えて、白金含有化合物を本発明において用いてもよい。白金含有化合物の例には、シスプラチン、カルボプラチン、およびオキサリプラチンが含まれる。微小管阻害剤の例には、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン)などのアルカロイドおよびパクリタキセル(タキソール(登録商標))、ならびにパクリタキセルの誘導体が含まれる。トポイソメラーゼ阻害剤の例には、エトポシド、テニポシド、カンプトテシン、トポテカン、およびイリノテカンが含まれる。
【0088】
パクリタキセルおよびドセタキセルは、タキサンの化合物クラスの例であり、他の細胞増殖抑制活性物質(他の細胞増殖抑制剤)の例には、ヒドロキシカルバミド(ヒドロキシ尿素)、イマチニブ、ミルテホシン(登録商標)、アムサクリン、トポテカン(トポイソメラーゼ-I阻害剤)、ペントスタチン、ベキサロテン、トレチノイン、およびアスパラギナーゼが含まれる。モノクローナル抗体の化合物クラスの典型には、トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標))、アレムツズマブ(マブキャンパス(登録商標))、およびリツキシマブ(マブセラ(登録商標))が含まれる。
【0089】
グルココルチコイド(プレドニゾン)、エストロゲン(ホスフェストロール、エストラムスチン)、LHRH(ブセレリン、ゴセレリン、ロイプロレリン、トリプトレリン)、フルタミド、酢酸シプロテロン、タモキシフェン、トレミフェン、アミノグルテチミド、ホルメスタン、エキセメスタン、レトロゾール、およびアナストロゾールなどのホルモンを用いてもよい。免疫調節物質、サイトカイン、抗体、およびシグナル伝達物質のクラスからの化合物の例には、インターロイキン-2、インターフェロン-α、エリスロポエチン、G-CSF、トラスツズマブ、リツキシマブ、エフィチニブ(イレッサ(登録商標))、イブリツモマブ(ゼヴァリン(登録商標))、レバミゾール、およびレチノイドが含まれる。
【0090】
放出される活性物質は、オピオイドアゴニスト、非オピオイド鎮痛薬、非ステロイド性抗炎症(NSAID)活性物質、抗片頭痛活性物質、cox-II阻害剤、β-アドレナリン作動遮断薬、抗痙攣薬、抗うつ薬、Ca2+チャネル遮断薬、またはパーキンソン病、不安、てんかん、卒中、精神病、認知障害、もしくはうつなどの神経疾患もしくは神経変性疾患の治療用の活性物質であってもよい。
【0091】
本発明による活性物質放出システムおよび薬学的化合物を疾患の治療および予防の両方のために用い、治療的に適切な濃度でかつ標的組織の細胞内において制御された様式で活性物質を放出させるために制御された活性物質放出の特性を利用することができる。
【0092】
本発明のさらに重要な利点は、一方では、磁性粒子の場合には外部交流磁場を適用することによる、または非磁性粒子の場合には赤外光の照射による、粒子に結合している活性物質の制御された時間依存的放出の可能性である。これにより、障害、疼痛、または他の疾患を治療するために、特定の時間に、例えば、片頭痛発作中または重度の疼痛発生後に、標的指向性でかつ時間制御された様式において、活性物質を放出することが可能になる。
【0093】
その結果、活性物質放出システムおよびその中に含まれる薬学的化合物は、疼痛、神経変性疾患、および心血管疾患の予防および治療用でもある。
【0094】
以下は有用なオピオイドアゴニストの例である:アルフェンタニル、アリルプロジン、アルファプロジン、アニレリジン、ベンジルモルフィン、ベジトラミド、ブプレノルフィン、ブトルファノール、クロニタゼン、コデイン、デソモルフィン、デキストロモラミド、デゾシン、ジアンプロミド、ジアモルフィン、ジヒドロコデイン、ジヒドロモルフィン、ジメノキサドール、ジメフェプタノール、ジメチルチアンブテン、エチルモルフィン、エトニタゼンフェンタニル、ヘロイン、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、ヒドロキシペチジン、イソメタドン、ケトベミドン、レボルファノール、レボフェナシルモルファン、ロフェンタニル、メペリジン、メプタジノール、メタゾシン、メタドン、メトポン、モルフィン、ミロフィン、ナルブフィン、ナルセイン、ニコモルフィン、ノルレボルファノール、ノルメタドン、ナロルフィン、ノルモルフィン、ノルピパノン、アヘン、オキシコドン、オキシモルフォン、パパベレタム、ペンタゾシン、フェナドキソン、フェノモルファン、フェナゾシン、フェノペリジン、ピミノジン、ピリトラミド、プロヘプタジン、プロメドール、プロペリジン、プロピラム、プロポキシフェン、スフェンタニル、チリジン、トラマドール、ならびにその薬学的に許容される塩および混合物。
【0095】
以下は非ステロイド性抗炎症(NSAID)活性物質を含む、有用な非オピオイド鎮痛薬の例である:アスピリン、イブプロフェン、ジクロフェナク、ナプロキセン、ベノキサプロフェン、フルルビプロフェン、フェノプロフェン、フルブフェン、ケトプロフェン、インドプロフェン、ピロプロフェン、カルプロフェン、オキサプロジン、プラモプロフェン、ムロプロフェン、トリオキサプロフェン、スプロフェン、アミノプロフェン、チアプロフェン酸、フルプロフェン、ブクロキシ酸、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、ゾメピラク、チオピナク、ジドメタシン、アセメタシン、フェンチアザク、クリダナク、オキシピナク、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、ニフルム酸、トルフェナム酸、ジフルリサル、フルフェニサル、ピロキシカム、スドキシカム、イソキシカムならびにその薬学的に許容される塩および混合物。
【0096】
さらなる非オピオイド鎮痛薬は以下の化学的クラスの鎮痛薬、解熱薬、および非ステロイド性抗炎症(NSAID)活性物質を含む:アスピリン、サリチル酸ナトリウム、コリン-マグネシウム-トリサリチル酸、サルサレート、ジフルニサル、サリチルサリチル酸、スルファサラジンおよびオルサラジンを含むサリチル酸誘導体;アセトアミノフェンおよびフェナセチンを含むパラアミノフェノール誘導体;インドメタシン、スリンダク、およびエトドラクを含むインドール酢酸およびインデン酢酸;トルメチン、ジクロフェナクおよびケトロラクを含むヘテロアリール酢酸;メフェナミン酸およびメクロフェナミン酸を含むアントラニル酸(フェナメート);オキシカム(ピロキシカム、テノキシカム)およびピラゾリジンジオン(フェニルブタゾン、オキシフェンタルタゾン)を含むエノール酸;ならびにナブメトンを含むアルカノン。
【0097】
以下は有用なcox-ii阻害剤および5-リポキシゲナーゼ阻害剤の例である:セレコキシブ、エトリコキシブ、ロフェコキシブ、パレコキシブ、およびバルデコキシブ。
【0098】
以下は有用な抗片頭痛活性物質の例である:アルピロプリド、ブロモクリプチン、ジヒドロエルゴタミン、ドラセトロン、エルゴコルニン、エルゴコルニン、エルゴクリプチン、エルゴノビン、エルゴット、エルゴタミン、酢酸フルメドロキソン、フォナジン、ケタンセリン、リスリド、ロメリジン、メチルエルゴノビン、メチセルギド、メトプロロール、ナラトリプタン、オキセトロン、ピゾチリン、プロプラノロール、リスペリドン、リザトリプタン、スマトリプタン、チモロール、トラゾドン、ゾルミトリプタンおよびその混合物。
【0099】
以下は有用なβ-アドレナリン作動遮断薬の例である:アセブトロール、アルプレノロール、アモスラロール、アロチノロール、アテノロール、ベフノロール、ベタキソロール、ベバントロール、ビソプロロール、ボピンドロール、ブクモロール、ブフェトロール、ブフラロール、ブニトロロール、ブプラノロール、塩酸ブチドリン、ブトフィロロール、カラゾロール、カルテオロール、カルベジロール、セリプロロール、セタモロール、クロラノロール、ジレバロール、エパノロール、エスモロール、インデノロール、ラベタロール、レボブノロール、メピンドロール、メチプラノロール、メトプロロール、モプロロール、ナドロール、ナドキソロール、ネビボロール、ニフェナロール、ニプラジロール、オクスプレノロール、ペンブトロール、ピンドロール、プラクトロール、プロネタロール、プロプラノロール、ソタロール、スルフィナロール、タリノロール、テルタトロール、チリソロール、チモロール、トリプロロール、およびキシベノロール。
【0100】
以下は有用な抗痙攣薬の例である:アセチルフェネツリド、アルブトイン、アロキシドン、アミノグルテチミド、4-アミノ-3-ヒドロキシ酪酸、アトロラクタミド、ベクラミド、ブラメート、臭化カルシウム、カルバマゼピン、シンロミド、クロメチアゾール、クロナゼパム、デシメミド、ジエタジオン、ジメタジオン、ドキセニトロイン、エテロバルブ、エタジオン、エトスクシミド、エトトイン、フェルバメート、フルオレキソン、ガバペンチン、5-ヒドロキシトリプトファン、ラモトリジン、臭化マグネシウム、硫酸マグネシウム、メフェニトイン、メホバルビタール、メタルビタール、メテトイン、メトスクシミド、5-メチル-5-(3-フェナントリル)-ヒダントイン、3-メチル-5-フェニルヒダントイン、ナルコバルビタール、ニメタゼパム、ニトラゼパム、オキシカルバゼピン、パラメタジオン、フェナセミド、フェネタルビタール、フェネツリド、フェノバルビタール、フェンスクシミド、フェニルメチルバルビツール酸、フェニトイン、フェテニレートナトリウム、臭化カリウム、プレガバリン、プリミドン、プロガビド、臭化ナトリウム、ソラナム、臭化ストロンチウム、スクロフェニド、スルチアム、テトラントイン、チアガビン、トピラメート、トリメタジオン、バルプロ酸、バルプロミド、ビガバトリン、およびゾニサミド。
【0101】
以下は有用な抗うつ薬の例である:ビネダリン、カロキサゾン、シタロプラム、(S)-シタロプラム、ジメタザン、フェンカミン、インダルピン、塩酸インデロキサジン、ネホパム、ノミフェンシン、オキシトリプタン、オキシペルチン、パロキセチン、セトラリン、チアゼシム、トラゾドン、ベンモキシン、イプロクロジド、イプロニアジド、イソカルボキサジド、ニアラミド、オクタモキシン、フェネルジン、コチニン、ロリシプリン、ロリプラム、マプロチリン、メトラリンドール、ミアンセリン、ミルタザピン、アジナゾラム、アミトリプチリン、アミトリプチリンオキシド、アモキサピン、ブトリプチリン、クロミプラミン、デメキシプチリン、デシプラミン、ジベンゼピン、ジメタクリン、ドチエピン、ドキセピン、フルアシジン、イミプラミン、イミプラミンn−オキシド、イプリンドール、ロフェプラミン、メリトラセン、メタプラミン、ノルトリプチリン、ノキシプチリン、オピプラモール、ピゾチリン、プロピゼピン、プロトリプチリン、キヌプラミン、チアネプチン、トリミプラミン、アドラフィニル、ベナクチジン、ブプロピオン、ブタセチン、ジオキサドロール、デュロキセチン、エトペリドン、フェバルバメート、フェモキセチン、フェンペンタジオール、フルオキセチン、フルボキサミン、ヘマトポルフィリン、ハイペリシン、レボファセトペラン、メジフォキサミン、ミルナシプリン、ミナプリン、モクロベミド、ネファゾドン、オキサフロザン、ピベラリン、プロリンタン、ピリスクシデアノル、リタンセリン、ロキシンドール、塩化ルビジウム、スルピリド、タンドスピロン、トザリノン、トフェナシン、トロキサトン、トラニルシプロミン、l-トリプトファン、ベンラファキシン、ビロキサジン、およびジメルジン。
【0102】
以下は有用なCa2+-チャネル遮断薬の例である:ベプリジル、クレンチアゼム、ジチアゼム、フェンジリン、ガロパミル、ミベフラジル、プレニルアミン、セモチアジル、テルジリン、ベラパミル、アムロジピン、アラニジピン、バルニジピン、ベニジピン、シルニジピン、エホニジピン、エルゴジピン、フェロジピン、イスラジピン、ラシジピン、レルカニジピン、マニジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニルバジピン、ニモジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン、シナリジン、フルナリジン、リドフラジン、ロメリジン、ベンシクラン、エタフェノン、ファントファロンおよびペルヘキシリン。
【0103】
以下はパーキンソン病、不安、てんかん、卒中、精神病、認知障害、または認知障害、またはうつなどの神経疾患または神経変性疾患の治療用の有用な活性物質の例である:L-ドーパ、抗コリン作用薬、COMT阻害剤、セロトニン再取り込み阻害剤、ブスピロン、三環系抗うつ薬、モノアミンオキシダーゼ阻害剤、バルプロ酸、カルバマゼピン、選択的セロトニン再取り込み阻害剤、セロトニン-ノルアドレナリン再取り込み阻害剤、ノルアドレナリン-セロトニン-選択的抗うつ薬およびトリミプラミン。
【0104】
パーキンソン病の治療用または予防用:カルビドパ/レボドパ、ペルゴリド、ブロモクリプチン、ロピニロール、プラミペキソール、エンタカポン、トルカポン、セレギリン、アマンタジン、および塩酸トリヘキシフェニジル。
【0105】
不安の治療用または予防用:アルプラゾラム、ブロチゾラム、クロルジアゼポキシド、クロバザム、クロラゼペート、デモキセパム、ジアゼパム、エスタゾラム、フルマゼニル、フルラゼパム、ハラゼパム、ロラゼパム、ミダゾラム、ニトラゼパム、ノルダゼパム、オキサゼパム、プラゼパム、クアゼパム、テマゼパムおよびトリアゾラムなどのベンゾジアゼピン;ブスピロン、ゲピロン、イプサピロン、チオスピロン、ゾルピコン、ゾルピデムおよびザレプロンなどの非ベンゾジアゼピン活性物質;アモバルビタール、アプロバルビタール、ブタバルビタール、メホバルビタール、メトヘキシタール、ペントバルビタール、フェノバルビタール、セコバルビタールおよびチオペンタールなどのバルビツール酸塩群からの鎮静剤;ならびにメプロバメート、およびチバメートなどのプロパンジオールカルバメート。
【0106】
てんかんの治療用または予防用:カルバマゼピン、エトスクシミド、ガバペンチン、ラモトリジン、フェノバルビタール、フェニトイン、プリミドン、バルプロ酸、トリメタジオン、ベンゾジアゼピン、γ-ビニルGABA、アセタゾラミド、およびフェルバメート。
【0107】
卒中の治療用または予防用:ヘパリンなどの抗凝固活性物質、ならびにストレプトキナーゼまたは組織特異的プラスミノーゲン活性化因子などの血餅を溶解しうる活性物質、およびマンニトール、コルチコステロイドまたはアセチルサリチル酸などの腫脹を軽減する活性物質。
【0108】
精神病の治療用または予防用:塩酸クロルプロマジン、ベシル酸メソリダジンおよび塩酸チオリダジンなどのフェノチアジン;クロルプロチキセンおよび塩酸チオチキセンなどのチオキサンテン、クロザピン、リスペリドン、オランザピン、クエチアピン、フマル酸クエチアピン、ハロペリドール、デカン酸ハロペリドール、コハク酸ロキサピン、塩酸モリンドン、プリモジド、ならびにジプラシドン。
【0109】
認知障害の治療用または予防用:タクリンなどの痴呆治療用の活性物質;ドネペジル、イブプロフェンならびにチオリダジンおよびハロペリドールなどの抗精神病活性物質。
【0110】
うつの治療用または予防用:アミトリプチリン、アモキサピン、ブプロピオン、クロミプラミン、デシプラミン、ドキセピン、イミプラミン、マプロチリン、ネファゾドン、ノルトリプチリン、プロトリプチリン、トラゾドン、トリミプラミン、ベンラファキシン、シタロプラム、(S)-シタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン、イソカルボキサジド、パルギリン、フェネルジン、トラニルシプロミン、デクストロアンフェタミン、およびメチルフェニデート。
【0111】
前述の活性物質は好ましくは、基質オリゴヌクレオチドに共有結合している。活性物質の結合は、それぞれの活性物質が担持する官能基に応じて、例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボニル基、チオール基またはカルボキシル基を介して行うことができる。
【0112】
ヒドロキシ基は、好ましくはエステル、アセタール、またはケタールとして結合しており、チオ基は、好ましくはチオエステル、チオアセタール、またはチオケタールとして、アミノ基は、好ましくはアミドおよびいくつかの場合にはイミン(シッフ塩基)として、カルボキシル基は、好ましくはエステルまたはアミドとして、ならびにカルボニル基は、好ましくはケタールとして結合している。
【0113】
一つの態様に従い、活性物質のドキソルビシンおよびメトトレキセートが特に好ましい。メトトレキセートは、メトトレキセートカルボキシ基を介して、好ましくは基質オリゴヌクレオチドの末端に組み込まれたアミノ基を介するペプチド結合により共有結合しうる。ドキソルビシンは、例えば、アルブミン-ドキソルビシン結合体について先行技術において記載されている(Abu Ajaj et al., 2009, Boga et al., 2009, Calderon et al., 2009, Kratz et al., 2008)、リンカーおよびアミノ官能基を介して、プロドラッグとして連結されうる。
【0114】
少なくとも1つの治療的活性物質の基質オリゴヌクレオチドへの結合、すなわち少なくとも1つの治療的活性物質クラスの分子または特定の活性物質の結合は、好ましくは共有結合的に、あるいは主に共有結合により、および/または十分に強いイオン結合、挿入結合、錯体結合もしくは挿入により起こり、したがって治療的活性物質の非制御の放出がほとんど排除される。非制御の放出とは、健常組織における治療的活性物質の放出、特に第一の成分の触媒核酸による切断がない基質オリゴヌクレオチドの脱離を意味する。
【0115】
そのような非制御の放出は、治療的活性物質が、それらが治療効果ではなく有害な副作用を引き起こす部位で、例えば、発癌組織および/または腫瘍細胞の外側で放出される原因となる。
【0116】
第一段階において、触媒核酸をそのオリゴヌクレオチドインヒビター鎖から、例えば、交流磁場、特に外部もしくは外から適用した交流(パルス)磁場により、または金ナノ粒子に関してはIR照射により分離する。次いで、遊離した触媒核酸は、ナノ粒子-活性物質結合体の基質オリゴヌクレオチドに結合し、活性物質を、結合したオリゴヌクレオチドと共に、基質の切断によって放出させる。一本鎖オリゴヌクレオチドは、細胞内部で速やかに分解され、活性物質を完全に放出させる。
【0117】
活性物質放出システムの一つの態様に従い、治療的活性物質が、特にリンカー3を介して、基質オリゴヌクレオチドに共有結合している。これは、リンカー1および2について前述したとおり、直接結合、特に活性物質と基質分子との間のペプチド結合の形成によるが、ホモまたはヘテロ二官能性架橋剤を介しても、起こりうる。
【0118】
好ましい態様に従い、本発明はしたがって、治療的活性物質が、特にリンカー3を介して、基質分子に共有結合している、活性物質放出システムに関する。
【0119】
本発明による活性物質放出システムの一つの態様に従い、リンカー3はペプチド結合またはヒドラゾンであり、後者の物質は、リソソームおよび/または腫瘍の酸性環境において、基質残基から、すなわち切断後に活性物質上に依然として存在する部分から切断し得、したがって活性物質の元の構造が回復されることを可能にするという利点を有する。メトトレキセートは、メトトレキセートカルボキシ基を介して、好ましくは基質オリゴヌクレオチドの末端に組み込まれたアミノ基を介するペプチド結合により共有結合しうる。ドキソルビシンはアミノ基を介して、プロドラッグとして連結されうる(Abu Ajaj et al., 2009, Boga et al., 2009, Calderon et al., 2009, Kratz et al., 2008)。
【0120】
さらなる態様において、本発明は、リンカー3がアミノ基およびヒドラゾンからなる群より選択され、特にメトトレキセートがメトトレキセートカルボキシ基を介して、アミノ基の間のペプチド結合により結合している、活性物質放出システムに関する。
【0121】
一つの態様において、治療的活性物質は、それが基質分子および/またはリンカー3に結合している限り不活性である。基質分子の切断による、またはその後の細胞による取り込み後の、基質オリゴヌクレオチドおよび/またはリンカー3からの放出によって、活性物質が活性化される。一つの態様において、切断された活性物質は依然として、今しがた切断された基質分子、ならびにリンカー3の一部を含んでいてもよく、したがって非活性化されている。この場合、細胞内でもしくは特異的酵素切断により切断しうる架橋剤、または酸に不安定な架橋剤、特にヒドラゾンを用いてもよく、該架橋剤は、リソソーム内への侵入後に切断され、したがって活性物質を放出する。
【0122】
したがって、さらなる態様において、本発明は、治療的活性物質が基質分子および/またはリンカー3に結合している限り、該治療的活性物質が不活性であり、かつ該治療的活性物質が該基質分子から放出された場合に、および/もしくはリンカー3が放出された場合に、またはその後の細胞への取り込み後に、該治療的活性物質が活性化される、活性物質放出システムに関する。
【0123】
短いヌクレオチド鎖は切断後に活性物質に残ってもよいが、これは生理的条件下で分解されることになり、活性物質の有効性に影響または実質的影響はない。
【0124】
活性物質の基質オリゴヌクレオチドへの弱い結合しかない場合、例えば、非共有、イオン、吸着、親油性および/もしくはファンデルワールス結合ならびに/または水素結合の場合、保護被覆またはバリアコーティングが治療的活性物質の放出を、ナノ粒子がそれらの意図される目的地に到達するまで、防止することができる。この保護被覆もしくはバリアコーティングの代わりに、または該保護被覆上もしくは該バリアコーティング上の追加の層として、細胞特異的官能基を有する外部層を適用することもできる。
【0125】
この細胞特異的コーティングは、ナノ粒子の特定の細胞、例えば、特定の細菌細胞または特定の腫瘍細胞に対する親和性を高め、したがって、細胞の識別にとって有用である。そのような細胞特異的ナノ粒子は、そのような細胞において濃縮される傾向があり、それらは、細胞に対してそれらの表面官能基ゆえに高い親和性を有し、したがって腫瘍特異的である。この技術により、例えば、腫瘍特異的ナノ粒子を特定の種類の癌のために開発することができる。
【0126】
さらに、ナノ粒子をコロイド状保護被覆により安定化することもでき、この被覆はナノ粒子を凝集から保護する。そのような保護被覆またはコーティングは、好ましくはアミノ基またはカルボキシ基を含むべきである。生体ポリマー、合成ポリマー、または半合成ポリマーを保護被覆および/またはコーティングのために用いることができる。バリアコーティングを生成するために、好ましくは生体安定ポリマー、すなわち生物学的分解に対してほとんど抵抗性のものを用いるべきである。細胞特異的被覆および/またはコーティングの生成のために、好ましくは生体分解性ポリマーを用いるべきである。
【0127】
以下を生体安定ポリマーとして用いることができる:ポリアクリル酸およびポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチルなどのポリアクリル酸エステル、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリエーテルアミド、ポリエチレンアミン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリカーボウレタン、ポリビニルケトン、ポリハロゲン化ビニル、ポリハロゲン化ビニリデン、ポリビニルエーテル、ポリイソブチレン、ポリビニル芳香族化合物、ポリビニルエステル、ポリビニルピロリドン、ポリオキシメチレン、ポリテトラメチレンオキシド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリエーテルウレタンシリコーン-ポリエーテルウレタン、シリコン-ポリウレタン、シリコーン-ポリカーボネート-ウレタン、ポリオレフィン-エラストマー、ポリイソブチレン、EPDM-ラバー、フルオロシリコーン、カルボキシメチルキトサン、ポリアリールエーテルエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ吉草酸エステル、カルボキシメチルセルロース、セルロース、レーヨン、レーヨントリアセテート、硝酸セルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸エチルビニルコポリマー、ポリスルホン、エポキシ樹脂、ABS樹脂、EPDMラバー、ポリシロキサン、ポリジメチルシロキサンなどのシリコーン、ポリビニルハロゲンおよびコポリマー、セルロースエーテル、ならびにセルローストリアセテート。キトサンおよびコポリマーならびに/またはこれらの物質の混合物。
【0128】
以下を生体分解性ポリマーとして用いることができる:ポリバレロラクトン、ポリ-ε-デカラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリラクチドおよびポリグリコリドのコポリマー、ポリ-ε-カプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシ酪酸エステル、ポリヒドロキシ吉草酸エステル、ポリヒドロキシ酪酸エステル吉草酸エステル、ポリ(1,4-ジオキサン-2,3-ジオン)、ポリ(1,3-ジオキサン-2-オン)、ポリ-パラジオキサノン、ポリマレイン酸無水物などのポリ無水物、ポリヒドロキシメタクリレート、フィブリン、ポリシアノアクリレート、ポリカプロラクトンジメチルアクリレート、ポリ-β-マレイン酸、ポリカプロラクトンブチルアクリレート、オリゴカプロラクトンジオールおよびオリゴジオキサノンジオールのポリマーなどのマルチブロックポリマー、PEGおよびポリ(ブチレンテレフタレート)などのポリエーテルエステルマルチブロックポリマー、ポリピボトラクトン、ポリグリコール酸トリメチルカーボネート、ポリカプロラクトングリコリド、ポリ(□-エチルグルタメート)、ポリ(DTH-イミノカーボネート)、ポリ(DTE-コ-DT-カーボネート)、ポリ(ビスフェノールA-イミノカーボネート)、ポリオルトエステル、ポリグリコール酸トリメチルカーボネート、ポリトリメチルカーボネート、ポリイミノカーボネート、ポリ(N-ビニル)-ピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエステルアミド、グリコシル化ポリエステル、ポリリン酸エステル、ポリホスファゼン、ポリ[(p-カルボキシフェノキシ)プロパン]ポリヒドロキシペンタン酸、ポリ無水物、ポリエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ソフトポリウレタン、骨格にアミノ酸残基を有するポリウレタン、ポリエチレンオキシドなどのポリエーテルエステル、シュウ酸ポリアルケン、ポリオルトエステル、ならびにそれらのコポリマー、脂質、カラゲナン、フィブリノゲン、デンプン、コラーゲン、タンパク質を基にするポリマー、ポリアミノ酸、合成ポリアミノ酸、ゼイン、修飾ゼイン、ポリヒドロキシアルカン酸エステル、ペクチン酸、酢酸、修飾および非修飾のフィブリンおよびカゼイン、硫酸カルボキシメチル、アルブミン、ヒアルロン酸、キトサンおよびその誘導体、硫酸ヘパリンおよびその誘導体、ヘパリン、硫酸コンドロイチン、デキストラン、β-シクロデキストリン、アルギン酸エステル、グリコサミノグリカン、糖質、多糖、プロテオグリカン、糖タンパク質、PEGおよびポリプロピレングリコールのコポリマー、グリコール、アラビアゴム、グアール、ゼラチン、コラーゲン、コラーゲン-N-ヒドロキシスクシンイミド、脂質、リン脂質、前述の物質の改変物およびコポリマーならびに/または混合物。
【0129】
特定の細胞に関する親和性をさらに高めるために、モノクローナル抗体および/またはアプタマーをナノ粒子の表面および/またはナノ粒子の外層もしくは被覆に連結させることができる。モノクローナル抗体およびアプタマーは、それらが、例えば、腫瘍細胞などの特定の細胞を認識し、ナノ粒子の細胞識別能力をさらに高めるような高次構造のものである。
【0130】
本発明による活性物質放出システムにおいて、触媒活性をもつ核酸がオリゴヌクレオチドインヒビター鎖から解離されているという条件で、基質分子を切断することができる。触媒活性をもつ核酸による基質分子の切断反応において、基質分子の濃度は≧KMであり、ここでkcatは好ましくは≧0.05/分、より好ましくは≧0.5/分、さらにより好ましくは≧1/分であり、かつ特に≧5/分である。
【0131】
この場合の化合物2に対する化合物1の比は≦2であり、特に≦1である。
【0132】
これは、阻害と基質切断の競合反応に起因する。治療的観点から、基質切断の速度定数は可能な限り高くあるべきであり、これは好ましくは少量の触媒活性をもつ核酸を伴うべきである。
【0133】
本発明による活性物質放出システムの具体的態様において、オリゴヌクレオチドインヒビター鎖、触媒活性をもつ核酸、および基質オリゴヌクレオチドはすべて鏡像核酸である。オリゴヌクレオチドインヒビター鎖は、好ましくはL-DNAであるべきであり、特に配列

を含み、触媒活性をもつ核酸は、L-RNAであるべきであり、特に配列

を含み、基質オリゴヌクレオチドは、L-RNAであるべきであり、特に配列

を含む。この化合物を用いて、実施例に従い、特定の適切な活性物質放出システムを作製することが可能であった。
【0134】
本発明のさらなる目的は、本発明の枠組みにおいて定義される化合物1である。
【0135】
化合物1は、例えば、以前に化合物2の移植を例えば以前の手術中に受けた患者のために、個々の製品として販売することができた。そのような場合、化合物1の別途投与により、そのような移植片に連結された活性物質を切断し、したがって後の時点で活性化することができた。これに関連して、移植片内に(例えば、スポンジ様ポリマーの場合)、移植片に対して(輸入(血)管、もしくは近辺の局所領域内に)、または全身的(例えば、静脈内)に、特に化合物1が標的指向メカニズムによって標的組織に集中する場合、化合物を投与することができる。
【0136】
したがって、本発明のさらなる目的は、本発明の枠組みにおいて定義される化合物2である。
【0137】
前述のとおり、連結された活性物質を後に局所的に放出するために、これらの化合物を、早い時点で、例えば手術中に、体内の特定の部位に移植することができる。
【0138】
本発明は、本発明による活性物質放出システムもしくは本発明による化合物1もしくは2の1つを含む薬学的化合物および/または薬剤、ならびにそのような薬学的化合物を製造するための本発明による活性物質放出システムの使用にも関する。具体的には、これらの薬学的化合物は注入溶液または注射溶液である。例えば、生理食塩水中のナノ粒子のそのような溶液は、間質内投与および/または腫瘍内投与に適している。さらに、動脈内適用または静脈内適用は、非固形腫瘍時間および/または転移腫瘍時間に対する体全体のための全身治療様式を提供する。薬学的化合物および/または薬剤は、当業者には公知の方法を用いて投与のために製剤化され、すなわち適切な緩衝液および賦形剤を必要に応じて加えるべきである。
【0139】
さらなる態様において、本発明は、本発明の枠組みにおいて定義される活性物質放出システムを含む医薬に関する。
【0140】
本発明による活性物質放出システムおよび薬学的化合物を、変性細胞種または外来細胞によって特徴付けられる疾患の治療および予防の両方のために用い、治療的に適切な濃度でかつ標的組織の細胞においてのみ制御された様式で活性物質を放出するために、制御された活性物質放出の特性を利用することができる。変性細胞には、特定の癌細胞および/または異常な増殖を示す細胞、ならびに狭窄または残留狭窄を示す組織が含まれると考えられる。細菌は外来細胞の具体例であると言うことができる。
【0141】
したがって、活性物質放出システムおよびそれを含む薬学的化合物または薬剤を、増殖性疾患、腫瘍、癌腫、癌、炎症性疾患、特に自己免疫疾患、および細菌感染症の予防および/または治療のために用いる。
【0142】
好ましい態様において、本発明は、増殖性疾患、癌、炎症性疾患、特に自己免疫疾患、および細菌感染症の治療および/または予防のための、活性物質放出システムを含む医薬に関する。
【0143】
本発明によるナノ粒子を用いることができる癌および腫瘍型の例は以下のとおりである:腺癌、脈絡膜黒色腫、急性白血病、聴神経鞘腫、膨大部癌、肛門癌、星状腫、基礎細胞腫、膵癌、結合組織腫瘍、膀胱癌、気管支癌、非小細胞気管支癌、乳房癌、バーキットリンパ腫、体癌、CUP症候群、大腸癌、小腸癌、小腸腫瘍、卵巣癌、子宮内膜癌、上衣腫、上皮癌、ユーイング腫瘍、胃腸腫瘍、胆嚢癌、胆管癌、子宮癌、子宮頸癌、膠芽腫、婦人科腫瘍、耳鼻咽喉科腫瘍、血液学的新形成、ヘアリーセル白血病、尿道癌、皮膚癌、脳腫瘍(神経膠腫)、脳転移、睾丸癌、下垂体腫瘍、カルチノイド、カポジ肉腫、喉頭癌、胚細胞腫瘍、骨癌、結腸直腸癌、頭頸部腫瘍(耳鼻咽喉科領域の腫瘍)、結腸癌、頭蓋咽頭腫、口腔領域および唇の癌、肝癌、肝転移、白血病、眼瞼腫瘍、肺癌、リンパ節癌(ホジキン/非ホジキンリンパ腫)、リンパ腫、胃癌、悪性黒色腫、悪性新形成、胃腸管の悪性腫瘍、乳癌、直腸癌、髄芽腫、黒色腫、髄膜腫、ホジキン病、菌状息肉腫、鼻腔癌、神経鞘腫、神経芽腫、腎臓癌、腎細胞癌、非ホジキンリンパ腫、乏突起膠腫、食道癌、骨溶解性癌および骨形成性癌、骨癌、卵巣癌、膵臓癌、陰茎癌、形質細胞腫、頭頚部の扁平上皮癌、前立腺癌、咽頭癌、直腸癌、網膜芽腫、膣癌、甲状腺癌、シュネーベルガー疾患、食道癌、棘細胞癌、t細胞リンパ腫(菌状息肉腫)、胸腺腫、卵管癌、眼腫瘍、尿道癌、泌尿器腫瘍、尿路上皮癌、外陰癌、いぼ状態、軟部組織腫瘍、軟部組織肉腫、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、ならびに舌癌。
【0144】
固形腫瘍が好ましい。さらに、前立腺癌、脳腫瘍、肉腫、子宮頸癌、卵巣癌、乳癌、気管支癌、黒色腫、頭頸部腫瘍、食道癌、直腸癌、膵癌、膀胱癌、および腎臓癌、ならびに肝臓、脳、およびリンパ節の転移も好ましい。
【0145】
活性物質放出システムを、通常の温熱療法、放射線療法、および/または通常の併用化学療法と共に投与および使用することが特に好ましい。
【0146】
本発明による活性物質放出システムの態様において用いる2つの成分は、同時注射または逐次注射によって投与することができた。
【0147】
本発明の好ましい態様は、化合物1および2が患者に同時または逐次に投与される医薬に関する。
【0148】
本発明による医薬は、化合物1および2を同時または逐次に、すなわち、別々の製品としてキットの形態で包装して投与し、患者に、特に腫瘍内注射、間質内注射、または腹腔内注射により移植するよう構成することができる。概して、いずれの投与計画も可能である。1つの可能性は、活性物質を含む化合物2を早い時点で投与し、次いで化合物1を後に注射した後、加熱して(前述のとおり)物質を切断し、したがって活性化することである。しかし、反対に、まず化合物1のデポー剤を患者に移植し、次いで後に化合物2を活性物質と共に、必要があれば複数回投与で投与することができ、その後、物質を前述の加熱により特異的に放出することもできる。これは、化合物1のナノ粒子が体内の1つの位置に何年も残留することができ、したがって少量の触媒核酸の繰り返し切断によって活性物質を数年の期間にわたり繰り返し活性化することができるので可能である。
【0149】
腫瘍学的使用のために、化合物1および/または化合物2を含む本発明による医薬は、好ましくは腫瘍を除去した場合の腫瘍床および/または切除窩に配置されるべきである。
【0150】
したがって、さらなる態様において、本発明は、腫瘍を切除した場合の腫瘍床に化合物1および2が配置される医薬に関する。
【0151】
本発明のさらなる目的は、以下の段階を含む、前述の化合物2からの活性物質の放出のための方法に関する。
(i)放出された触媒活性をもつ核酸の基質オリゴヌクレオチドへの拡散に加えてその切断を可能にする条件下で、前述の化合物1を化合物2の近傍に配置する段階、および
(ii)該触媒活性をもつ核酸が放出されるように、前述の化合物1を能動的または受動的に加熱する段階。
【実施例】
【0152】
実施例1:触媒核酸による蛍光色素Alexa-647の温度依存的切断
実施例1は、前述のシステムによる蛍光色素Alexa-647(任意の所望の活性物質に対するモデル物質として役立つ)の温度依存的切断を示す。触媒核酸は、5'末端のヌクレオチドがSH基を担持する配列

を有するインヒビターにハイブリダイズした、配列

を有するリボザイムである。二本鎖RNAは、SH基およびスルホ-SMCC架橋剤を介して、酸化鉄コアとSiO2被覆とDIAMO表面官能基とを有する酸化鉄-ナノ粒子のアミノ基に結合している。
【0153】
ナノ粒子-活性物質結合体は、5'末端のヌクレオチドがSH基を担持し、SH基およびスルホ-SMCC架橋剤を介して、酸化鉄コアとSiO2被覆とDIAMO表面官能基とを有する酸化鉄ナノ粒子のアミノ基に結合している、配列

を有する基質オリゴヌクレオチドおよび共有結合したAlexa-647(モデル物質、会社IBA、Gottingenから入手)からなる。
【0154】
実験中の加熱時間は図1にバーで示す。真ん中の曲線(-●-)は、触媒活性をもつRNA配列の49℃での脱ハイブリダイゼーションによる活性化後にナノ粒子-活性物質結合体から放出される遊離Alexa-647による、反応上清中の蛍光の増大を示す。37℃では(下から2番目の曲線:-▲-)、脱ハイブリダイゼーションは起こらず、リボザイムは阻害されたままであるため、上清中で蛍光強度の増大は検出されない。触媒核酸非存在下でのナノ粒子-活性物質結合体(NP-架橋剤-基質鎖およびAlexa-647)を陰性対照として用いた(下の曲線:-■-)。陽性対照として、ナノ粒子-活性物質結合体を阻害されていない触媒活性をもつRNA一本鎖と共にインキュベートした(上の曲線:-◆-)。
【0155】
実施例2:スルホ-SMCCによるナノ粒子-核酸連結
実施例1と同じ方法を用い、L型の5'末端-チオール基修飾オリゴヌクレオチドと酸化鉄ナノ粒子との間の連結のためのリンカーとしてスルホ-SMCCを用いた。これを、連結の前にPBS(pH6.7)中1.1:1のモル比でハイブリダイズさせた、基質オリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドインヒビター鎖/リボザイム-二本鎖に対して実施した。
【0156】
(表1)L型で用いたヌクレオチド

↓は基質オリゴヌクレオチド境界面である(Ruffner and Uhlenbeck, 1990)。
【0157】
15nmの酸化鉄ナノ粒子は粒子1個あたり約550個のアミノ基を含む。オリゴヌクレオチドをまず1mM TCEP(Sigma)で還元した。スルホ-SMCC(Sigma)による連結のために、酸化鉄ナノ粒子をまずインキュベーション用のサーモミキサー(Thermomixer)内でPBS(pH7.4)中2.2mMの濃度のスルホ-SMCCと、室温、1000rpm(毎分回転数)で1時間反応させた。過剰のリンカーを遠心沈降により分離した。次いで、ナノ粒子を蒸留水で2回洗浄した。ここで、還元したオリゴヌクレオチドを、オリゴヌクレオチド:ナノ粒子=65:1のモル比で加え、PBS(pH6.7)中、4℃で終夜、回転式インキュベーションに供した。結合していないオリゴヌクレオチドを遠心沈降により分離した。
【0158】
実施例3:リボザイム-ナノ粒子-活性物質放出システムによる放出実験
ナノ粒子/(L)-基質オリゴヌクレオチド*結合体およびナノ粒子/(L)-オリゴヌクレオチドインヒビター鎖/リボザイム結合体を実施例2に記載のとおりに作製した。放出実験を反応緩衝液中およびヒト血清中で実施した。
【0159】
A. 反応緩衝液中において:
実施例2で作製した結合体を反応緩衝液(Tris-HCl 50mM、pH7.5、および10mM MgCl2)に再懸濁し、1.5mlの反応容器中、1:1の比で混合した(37℃および49℃のための2バッチ)。陽性対照として、表1に示すものと同じ配列の、0.625μM遊離L-リボザイムを伴うナノ粒子/(L)-基質オリゴヌクレオチド結合体を反応緩衝液中で調製した。対応するナノ粒子/(L)-基質オリゴヌクレオチド結合体を反応緩衝液と混合し、陰性対照として用いた。4つの反応バッチすべて、ナノ粒子/(L)-基質オリゴヌクレオチド結合体の最終濃度が同じであった。
【0160】
結合体の1つのバッチを37℃において、かつ他のバッチを49℃においてサーモミキサー内で1〜4時間インキュベートした。対照はいずれも37℃よび49℃の両方でインキュベートし、有意な差は見られなかった。各バッチの一定量を1、2、3および4時間後に取り、ただちに遠心沈降した。上清を新しい反応容器に注意深く加えた。上清のRFU(相対蛍光単位)強度をNanoDrop 3300蛍光分光計(Thermo Scientific)で測定した。
【0161】
49℃での蛍光シグナルは蛍光色素の明白な時間依存的放出を示し、インキュベーション時間の増大に伴い、ほとんど陽性対照レベルまで達した。これとは対照的に、陰性対照または37℃では、4時間後でも実質的に放出は見られなかった(図4参照)。
【0162】
B. ヒト血清中において:
Aに記載の実験を、37℃および/または49℃、湿度94.5%、および5%CO2のインキュベーター内で、反応緩衝液の代わりにヒト血清中で繰り返した。
【0163】
ヒト血清中でも、蛍光色素の明らかな時間依存的放出が49℃で観察され、この場合、結合したインヒビター鎖存在下でのリボザイムによる放出は、陽性対照(インヒビター鎖非存在下)で見られたものの約半分の強度でしかなかった(図5参照)。さらに、陰性対照および37℃バッチにおける色素の放出は、緩衝液中の対応するバッチに対して増大した(図5を図4と比較されたい)。
【0164】
実施例4:R-リボザイムおよび/またはL-リボザイムの血清安定性アッセイ法
安定性アッセイ法を、von Klussmann (1996)が記載したものと基本的に同じ方法により実施した。ヒト血清S7023をSigma(USA)から入手した。L-リボザイム(表1参照)およびその対応するR型(両方とも19bp)を、37℃、湿度94.5%、および5%CO2のインキュベーター内で、90%ヒト血清中10μMの濃度でインキュベートした(L-リボザイムについては0〜6時間、R-リボザイムについては0〜180秒)。一定量を1:1の比で停止溶液(8M尿素、50mM EDTA、2%SDS)と混合し、液体窒素中でただちに凍結した。試料をMicrocon YM-30(Millipore)フィルターを通してろ過し、各30pmolのRNAを15%変性ポリアクリルアミドゲル(7M尿素)でサイズに応じて分離した。ゲルをEtBr溶液(1μg/ml)中で15分間染色し、UV光線(302nm)下で撮影した。
【0165】
L-リボザイムは48時間のインキュベーションでも分解を示さない(図6のパートA)が、R-リボザイムはEtBr染色ゲル中120秒後にすでに検出不可能である(図6のパートB)。
【0166】
参照文献



【0167】
好ましい態様は以下である。
1. 触媒活性をもつ核酸とハイブリダイズしているオリゴヌクレオチドインヒビター鎖に結合しているナノ粒子、および該触媒活性をもつ核酸による基質オリゴヌクレオチドの切断により放出され得る治療的活性物質に結合している該基質オリゴヌクレオチドに結合している、さらなるナノ粒子を含む、活性物質放出システム。
2. 前記オリゴヌクレオチドインヒビター鎖が架橋剤を介して前記ナノ粒子に結合している、1記載の活性物質放出システム。
3. 前記基質オリゴヌクレオチドが架橋剤を介して前記ナノ粒子に結合している、1または2記載の活性物質放出システム。
4. 少なくとも1つの治療的活性物質が、抗増殖、抗遊走、抗血管形成、抗血栓、抗炎症、消炎、細胞増殖抑制、細胞毒性、抗凝固、抗菌、抗ウイルスおよび/または抗真菌の活性物質、オピオイドアゴニスト、非オピオイド鎮痛薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、抗片頭痛薬、cox-II阻害剤、β-アドレナリン作動遮断薬、抗痙攣薬、抗うつ薬、Ca2+チャネル遮断薬、または神経疾患もしくは神経変性疾患の治療用の活性物質を含む群より選択される、1から3記載の活性物質放出システム。
5. 少なくとも1つの治療的活性物質が、アクチノマイシンD、アミノグルテチミド、アムサクリン、アナストロゾール、プリンおよびピリミジン塩基アンタゴニスト、アンスラサイクリン、アロマターゼ阻害剤、アスパラギナーゼ、抗エストロゲン、ベキサロテン、ブレオマイシン、ブセレリン、ブスルファン、カンプトテシン誘導体、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロランブシル、シスプラチン、クラドリビン、シクロホスファミド、シタラビン、シトシンアラビノシド、アルキル化細胞増殖抑制剤、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ドキソルビシンリポ、エピルビシン、エストラムスチン、エトポシド、エキセメスタン、フルダラビン、フルオロウラシル、葉酸アンタゴニスト、ホルメスタン、ゲムシタビン、グルココルチコイド、ゴセレリン、ホルモンおよびホルモンアンタゴニスト、ハイカムチン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、イリノテカン、レトロゾール、ロイプロレリン、ロムスチン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキセート、ミルテホシン、マイトマイシン、有糸分裂阻害剤、ミトキサントロン、ニムスチン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペントスタチン、プロカルバジン、タモキシフェン、テモゾロミド、テニポシド、テストラクトン、チオテパ、チオグアニン、トポイソメラーゼ阻害剤、トポテカン、トレオスルファン、トレチノイン、トリプトレリン、トロホスファミド、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、および細胞増殖抑制活性抗生物質を含む群より選択される、4記載の活性物質放出システム。
6. 少なくとも1つの治療的活性物質が、核酸、siRNA、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、炭水化物、脂質、糖タンパク質、グリカン、またはリポタンパク質を含む群より選択され、該物質が、抗増殖、抗遊走、抗血管形成、抗血栓、抗炎症、消炎、細胞増殖抑制、細胞毒性、抗凝固、抗菌、抗ウイルスおよび/または抗真菌の特性を有する、4記載の活性物質放出システム。
7. 増殖性疾患、癌および細菌感染症の治療用および/または予防用の薬学的化合物の作製のための、1から6記載の活性物質放出システムの使用。
8. さらなるナノ粒子および治療的活性物質に結合している基質オリゴヌクレオチドを切断可能である触媒活性をもつ核酸とハイブリダイズしているオリゴヌクレオチドインヒビター鎖に結合している、ナノ粒子。
9. 治療的活性物質および基質オリゴヌクレオチドに結合しているナノ粒子であって、触媒活性をもつ核酸により該基質オリゴヌクレオチドを切断することができるナノ粒子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)オリゴヌクレオチドインヒビター鎖に結合している少なくとも1つのナノ粒子を含む化合物1であって、触媒活性をもつ核酸と該オリゴヌクレオチドインヒビター鎖がハイブリダイズしている、化合物1、および
(ii)少なくとも1つの基質分子に結合している担体を含む化合物2であって、該基質分子が少なくとも1つの治療的活性物質に結合している化合物2
を含む活性物質放出システムであって、
該治療的活性物質が該基質分子の切断により放出されることができ、該触媒活性をもつ核酸により該基質分子が切断される、活性物質放出システム。
【請求項2】
前記オリゴヌクレオチドインヒビター鎖が、特にリンカー1を介して、前記ナノ粒子に共有結合している、請求項1記載の活性物質放出システム。
【請求項3】
前記触媒活性をもつ核酸が、RNA、DNA、L-RNA、L-DNA、および修飾核酸からなる群より選択され、特にSH修飾ヌクレオチドを含み、好ましくは10〜100ヌクレオチドの長さを有し、かつ特に12〜60ヌクレオチドの長さを有し、該触媒活性をもつ核酸が、好ましくはRNA、特にリボザイム、特にハンマーヘッドリボザイムであり、かつ特に配列

を含む、請求項1または2記載の活性物質放出システム。
【請求項4】
リンカー1が、架橋剤およびSH修飾ヌクレオチドのSH基とアミノ基との反応により、前記オリゴヌクレオチドインヒビター鎖の5'末端に形成され、該アミノ基がアミノシラン修飾によりナノ粒子表面に導入され、かつ該架橋剤が好ましくはスルホ-SMCCまたはスルホ-GMBSである、請求項3記載の活性物質放出システム。
【請求項5】
前記オリゴヌクレオチドインヒビター鎖が、RNA、DNA、L-RNA、L-DNA、および修飾核酸からなる群より選択され、特にSH修飾ヌクレオチドを含み、好ましくは10〜100ヌクレオチドの長さを有し、特に10〜60ヌクレオチドの長さを有し、かつ特に配列

を含む、請求項1から4のいずれか一項記載の活性物質放出システム。
【請求項6】
化合物1において、前記触媒活性をもつ核酸に対する前記オリゴヌクレオチドインヒビター鎖の比が≧1であり、かつ特に1から2である、請求項1から5のいずれか一項記載の活性物質放出システム。
【請求項7】
化合物1において、配列

を有する前記触媒活性をもつ核酸に対する配列

を有する前記オリゴヌクレオチドインヒビター鎖の比が1.0から1.3であり、かつ特に約1.1である、請求項1から6のいずれか一項記載の活性物質放出システム。
【請求項8】
前記触媒活性をもつ核酸が、前記オリゴヌクレオチドインヒビター鎖と生理的条件下で完全にハイブリダイズしており、かつ43℃では、少なくとも1つの触媒活性をもつ核酸、好ましくは結合している該触媒活性をもつ核酸の5%、より好ましくは結合している該触媒活性をもつ核酸の10%、特に結合している該触媒活性をもつ核酸の20%が、脱ハイブリダイズする、請求項1から7のいずれか一項記載の活性物質放出システム。
【請求項9】
前記ナノ粒子が、少なくとも1つの常磁性酸化鉄または超常磁性酸化鉄を含むコアを保有する、請求項1から8のいずれか一項記載の活性物質放出システム。
【請求項10】
常磁性または超常磁性の前記ナノ粒子を交流磁場で加熱する、請求項9記載の活性物質放出システム。
【請求項11】
前記ナノ粒子が、少なくとも1つの被覆、好ましくはシラン被覆またはSiO2およびシラン被覆を有する、請求項1から10のいずれか一項記載の活性物質放出システム。
【請求項12】
前記基質分子がオリゴヌクレオチドである、請求項1から11のいずれか一項記載の活性物質放出システム。
【請求項13】
前記担体が、ポリマー、特にバイオポリマー、SiO2粒子、または金属粒子、特に金粒子もしくは酸化物粒子、好ましくは小さい表面修飾酸化鉄粒子であり、ゲルの形態で、微小粒子の形態で、ミクロスフェアの形態で、または、ナノ粒子の形態で、特に酸化物ナノ粒子として存在する、請求項1から12のいずれか一項記載の活性物質放出システム。
【請求項14】
前記基質分子が、特にリンカー2を介して、前記担体に共有結合しており、かつ該リンカーが好ましくはスルホ-SMCCまたはスルホ-GMBSである、請求項1から13のいずれか一項記載の活性物質放出システム。
【請求項15】
前記基質オリゴヌクレオチドが、DNA、RNA、L-DNA、L-RNA、および修飾核酸からなる群より選択され、かつ該修飾核酸が好ましくは、アミノ官能基、チオール官能基、カルボキシル官能基、アルキン官能基、またはアジド官能基などの、特に末端連結のための官能基を有する、請求項12から14のいずれか一項記載の活性物質放出システム。
【請求項16】
前記基質オリゴヌクレオチドが、10〜100ヌクレオチドの長さ、好ましくは15〜60ヌクレオチドの長さ、さらにより好ましくは20〜30ヌクレオチドの長さを有し、かつ特に配列

を含む、請求項15記載の活性物質放出システム。
【請求項17】
前記治療的活性物質が、核酸、siRNA、アンチセンスRNA、アミノ酸、アプタマー、ペプチド、タンパク質、糖タンパク質、炭水化物、グリカン、脂質、リポタンパク質、および低分子量活性物質を含む群より選択され、該治療的活性物質が、特に低分子量活性物質であり、かつ好ましくは抗増殖、細胞増殖抑制、細胞毒性、抗遊走、抗血管形成、抗血栓、抗炎症、消炎、抗凝固、抗菌、抗ウイルスおよび/または抗真菌の作用、特に細胞増殖抑制または細胞毒性の作用を有する物質であり、該治療的活性物質のドキソルビシンまたはメトトレキセートが好ましい、請求項1から16のいずれか一項記載の活性物質放出システム。
【請求項18】
前記治療的活性物質が、特にリンカー3を介して、前記基質分子に共有結合している、請求項1から17のいずれか一項記載の活性物質放出システム。
【請求項19】
リンカー3が、アミノ基およびヒドラゾンからなる群より選択され、特にメトトレキセートが、メトトレキセートカルボキシ基を介して、該アミノ基の間のペプチド結合により結合している、請求項18記載の活性物質放出システム。
【請求項20】
前記治療的活性物質が前記基質分子および/またはリンカー3に結合している限り、該治療的活性物質が不活性であり、かつ該治療的活性物質が該基質分子から放出された場合に、および/もしくはリンカー3が放出された場合に、またはその後の細胞への取り込み後に、該治療的活性物質が活性化される、請求項1から19のいずれか一項記載の活性物質放出システム。
【請求項21】
前記触媒活性をもつ核酸が前記オリゴヌクレオチドインヒビター鎖から解離されているという条件で、該触媒活性をもつ核酸が、前記基質分子を切断することができ、
該触媒活性をもつ核酸による該基質分子の切断反応において、該基質分子の濃度が≧KMであることが適用され、
かつkcatが、好ましくは≧0.05/分、より好ましくは≧0.5/分、さらにより好ましくは≧1/分、かつ特に≧5/分である、
請求項1から20のいずれか一項記載の活性物質放出システム。
【請求項22】
化合物2に対する化合物1の比が≦2であり、かつ好ましくは≦1である、請求項1から21のいずれか一項記載の活性物質放出システム。
【請求項23】
前記オリゴヌクレオチドインヒビター鎖、前記触媒活性をもつ核酸、および前記基質オリゴヌクレオチドがすべて鏡像核酸であり、該オリゴヌクレオチドインヒビター鎖が、好ましくはL-DNAであるべきであり、特に配列

を含み、該触媒活性をもつ核酸が、L-RNAであるべきであり、特に配列

を含み、かつ該基質オリゴヌクレオチドが、L-RNAであるべきであり、特に配列

を含む、請求項12から21のいずれか一項記載の活性物質放出システム。
【請求項24】
請求項1から11のいずれか一項においてより詳細に定義された、化合物1。
【請求項25】
請求項1または12から20のいずれか一項においてより詳細に定義された、化合物2。
【請求項26】
請求項1から26のいずれか一項に記載の活性物質放出システムを含む、薬剤。
【請求項27】
増殖性疾患、癌、炎症性疾患、特に自己免疫疾患、および細菌感染症の治療用および/または予防用の、請求項1から26のいずれか一項に記載の活性物質放出システムを含む薬剤。
【請求項28】
化合物1および2が患者に同時または逐次に投与される、請求項27記載の薬剤。
【請求項29】
腫瘍を切除した場合の腫瘍床に化合物1および2が配置される、請求項27記載の薬剤。
【請求項30】
以下の段階を含む、請求項1または12から20のいずれか一項記載の化合物2からの活性物質の放出のための方法:
(i)放出された触媒活性をもつ核酸の基質オリゴヌクレオチドへの拡散に加えてその切断を可能にする条件下で、請求項1から11のいずれか一項記載の化合物1を化合物2の近傍に配置する段階、および(ii)該触媒活性をもつ核酸が放出されるように、前記化合物1を能動的または受動的に加熱する段階。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2013−514289(P2013−514289A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543525(P2012−543525)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際出願番号】PCT/EP2010/007702
【国際公開番号】WO2011/082796
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(512157911)マグフォース アーゲー (1)
【Fターム(参考)】