説明

制御された組織圧迫システムおよび方法

【課題】制御された組織圧迫のためのシステムおよび方法を提供すること。
【解決手段】外科手術デバイスであって、該外科手術デバイスは、組織をクランプ、ステープルまたは切断するように構成されているエンドエフェクタと、該エンドエフェクタを駆動させるように構成されているモーターと、制御システムであって、該制御システムは少なくとも1つの組織特質に関する情報を受け取ることと、該少なくとも1つの組織特質に基づいて組織管理モードを選択することと、該モーターを該選択された組織管理モードに基づいて制御することとを行うように構成されている制御システムとを含む、外科手術デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2011年2月23日に出願された米国仮特許出願第61/445,700号の利益および優先権を主張する。その全内容は、本明細書において参照することによって援用される。
【0002】
(背景)
(1.技術分野)
本開示は、一般的に医療デバイスに関する。より具体的には、本開示は、一般的に、制御された組織圧迫のためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(2.関連技術の背景)
いくつかの外科手術処置は、患者の組織の圧迫(例えば、クランプすること)を要求する。そのような処置は、例えば、組織の吻合、ステープリングおよび切除を含み得る。例えば、癌性組織が患者の胃腸管において確認された場合、癌性組織は、外科手術によって取り除かれる必要があり得る。例えば、癌性組織が結腸に発見され、外科手術器具類によってアクセス可能である場合、外科医は、患者の腹に切開を作り得ることによって、腸へのアクセスを可能にする。次いで、外科医は、取り除かれる癌性部分の両側において、結腸組織を切断し、ステープリングするために、線形切断しステープリングデバイスを用い得る。該線形切断するステープリングデバイスは、2008年9月22日に出願された米国特許出願第12/235,362号(特許文献1)(その内容は、本明細書において参照することによって、全体が明確に援用される)において記載されている。この処置において、結腸は、組織を圧迫するために(例えば、対向するジョーの間において)外部からクランプされる。組織が圧迫されている間、切断器およびステープラーが作動され、線形切断を作り、切断に隣接する領域において、一般的には2つの線形列のステープルを適用する。したがって、ステープリングは、取り除かれる腸の部分の開いた端部の両方を閉じ、腸の2つの切断された端部の一時的な閉鎖を提供する。この閉鎖は、腸の内側に対する周囲組織の露出を制限し、したがって、感染のリスクを制限する。切断およびステープリング処置の後、組織の癌性部分は、患者の身体から取り除かれ得る。
【0004】
癌性組織の切除の後、外科医は、2004年2月24日に出願された米国特許出願第10/785,682号(特許文献2)(これは、本明細書において参照することによって全体が明確に援用される)において記載されるような、例えば、円形ステープラー/切断器のような吻合しステープリングデバイスを採用し得る。この処置の間、ヘッド部分は、切断された端部のうちの1つに隣接する結腸内に位置決めされ、ベースまたはシャフト部分は、他の切断された端部に隣接する結腸内に位置決めされる。ヘッド部分およびベース部分は、1つの切断された端部から他の端部の中へ延在するシャフトおよび/またはケーブルを介して連結され得る。この連結を介して、外科医は、吻合およびステープリングデバイスを作動させる能力を有し、ヘッド部分とベース部分とを引き合わせ、結腸の2つの切断された端部が互いに接触した後、結腸の2つの部分が接触の環状領域で一緒にクランプされるように、作動は続く。クランプされている間、吻合およびステープリングデバイスは、さらに作動され得、ステープルの環状リングを圧迫された組織の中へ適用する。デバイスは、また、結腸内に配置された余分な組織を切断し得る。次いで、ヘッド部分とベース部分とが離れるように動かされ、吻合およびステープリングデバイスは、患者から取り除かれる。
【0005】
上の処置において、効果的なステープリングを達成するために、組織は、ツールの面の間に十分に小さな組織ギャップ(例えば、1ミリメートル)ができる程度に圧迫されなければならない。器具のクランプ構造が過剰な力に晒された場合、ステープリングされる組織の長さにわたる均一な目標組織ギャップの維持は、難しくなり得るか、または不可能でさえあり得る。
【0006】
さらに、圧迫を実行する場合、一定閉鎖率(例えば、線形ステープラーのジョーの間、または円形ステープラー/切断器のヘッド部分とベース部分との間の閉鎖率)は、クランプされた組織に対して高いレベルの圧力を及し得る。この高いレベルの圧力は、結果として、過剰な組織外傷となり得る。したがって、この外傷を、例えば、組織に適用される圧力を効果的に制御することによって制限することが望ましい。
【0007】
さらに、どのようにクランプされる組織が圧迫に応答するかを決定し、この情報を、クランプ圧力を決定するために処理することが望ましい。2000年2月22日に出願された米国特許出願第09/510,927号(現在は、特許文献3)(この内容は、本明細書において参照することによって全体が明確に援用される)は、外科手術ステープラーの動作を制御するために組織センサーを用いる装置および方法を記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0101692号明細書
【特許文献2】米国特許第7,342,983号明細書
【特許文献3】米国特許第6,716,233号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(概要)
本開示の実施形態において、外科手術デバイスが提供される。外科手術デバイスは、組織をクランプすること、ステープルすることか、または切断することを行うように構成されているエンドエフェクタと、エンドエフェクタを駆動するように構成されているモーターと、制御システムとを含む。制御システムは、少なくとも1つの組織特質に関する情報を受け取り、少なくとも1つの組織特質に基づいて組織管理モードを選択する。制御システムは、選択された組織管理モードに基づいてモーターを制御する。
【0010】
外科手術デバイスは、また、臨床医にエンドエフェクタの組織ギャップ範囲の状態を提供するインジケーターと、少なくとも1つの組織特質を検知するように構成されているセンサーアレイとを含み得る。センサーアレイは、モーターに対する引き込み電流またはエンドエフェクタにおけるドウェル効果を測定することによって、少なくとも1つの組織特質を検知し得る。センサーアレイは、また、パルスオキシメトリ、組織酸素飽和度または組織インピーダンスのような測定値をとることによって、組織特質を評定し得る。ドウェル効果は、ジョーが静圧のまま一定期間あり、流体が組織細胞から流出し、組織が弛緩することを可能にする場合に生じる。
【0011】
外科手術デバイスによって選択され得る組織管理モードは、一定トルクプロファイル、変調トルクプロファイル、最大トルクプロファイルまたは手動オーバーライドモードを含む。制御システムは、一定信号をモーターに一定トルクプロファイルで適用するか、または周期信号をモーターに変調トルクプロファイルで適用する。最大トルクプロファイルにおいて、電力外科手術器具は、一定トルクプロファイル、変調トルクプロファイルまたは手動オーバーライドモードにおける発射のスピードよりも速いスピードで発射する。手動オーバーライドモードにおいて、ユーザーは、モーターを手動で制御する。一般的に、組織クランプ中の圧力は、モータートルクの関数である。
【0012】
本開示の別の実施形態において、ステープルを電力外科手術器具によって適用する方法が提供される。方法は、モーターによって電力供給されるエンドエフェクタを有する外科手術器具を提供する工程と、組織タイプおよび/または病気タイプを入力し、初期クランプまたは組織管理モードを決定する工程と、モーターによって駆動されるエンドエフェクタを用いて組織をクランプする工程と、クランプされた組織の少なくとも1つの組織特質を検知する工程と、所望の組織ギャップ範囲がエンドエフェクタによって達成されたか否かを決定する工程と、必要に応じて、さらなるクランプモードを選択し、所望の組織ギャップを達成するために反復的にクランプを調節する工程と、所望の組織ギャップが達成された場合、電力外科手術器具を発射してステープルをクランプされた組織に適用する工程とを含む。
【0013】
方法は、また、組織ギャップ範囲の状態を提供する工程を含み得る。組織特質は、モーターに対する引き込み電流を測定すること、または、エンドエフェクタにおけるドウェル効果を測定することによって検知され得る。
【0014】
クランプまたは組織管理モードを選択することは、検知されたクランプされた組織の組織特質に基づき得るか、臨床医によって実行され得る。外科手術デバイスによって選択され得る組織管理モードは、一定トルクプロファイル、変調トルクプロファイルまたは最大トルクプロファイルを含む。手動オーバーライドモードは、ユーザーが組織管理モードを選択することを可能にし得る。
【0015】
例えば、本発明は、以下の項目を提供する。
(項目1)
外科手術デバイスであって、
該外科手術デバイスは、
組織をクランプし、ステープルし、または切断するように構成されているエンドエフェクタと、
該エンドエフェクタを駆動させるように構成されているモーターと、
制御システムとを含み、該制御システムは、
少なくとも1つの組織特質に関する情報を受け取ることと、
該少なくとも1つの組織特質に基づいて組織管理モードを選択することと、
該モーターを該選択された組織管理モードに基づいて制御することと
を行うように構成されている、外科手術デバイス。
(項目2)
前記制御システムは、臨床医に前記エンドエフェクタの組織ギャップ範囲の状態を提供するインジケーターをさらに含む、上記項目に記載の外科手術デバイス。
(項目3)
前記制御システムは、少なくとも1つの組織特質を検知するように構成されているセンサーアレイをさらに含む、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術デバイス。
(項目4)
前記センサーアレイは、前記モーターに対する引き込み電流を測定することによって、組織特質を検知する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術デバイス。
(項目5)
前記センサーアレイは、前記エンドエフェクタにおけるドウェル効果を測定することによって、組織特質を検知する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術デバイス。
(項目6)
前記組織管理モードは、一定トルクプロファイル、変調トルクプロファイル、最大トルクプロファイルまたは手動オーバーライドモードである、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術デバイス。
(項目7)
前記制御システムは、一定信号を前記モーターに前記一定トルクプロファイルで適用する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術デバイス。
(項目8)
前記制御システムは、周期信号を前記モーターに前記変調トルクプロファイルで適用する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術デバイス。
(項目9)
前記電力外科手術器具は、該電力外科手術器具が前記最大トルクプロファイルを用いた場合、前記一定トルクプロファイル、前記変調トルクプロファイルまたは前記手動オーバーライドモードにおける発射スピードより速いスピードで発射する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術デバイス。
(項目10)
ユーザーは、前記モーターを前記手動オーバーライドモードにおいて手動で制御する、上記項目のうちのいずれかに記載の外科手術デバイス。
(項目11)
ステープルを適用する電力外科手術器具であって、
該器具は、
モーターによって電力供給されるエンドエフェクタであって、該エンドエフェクタは、該モーターによって駆動され、組織をクランプする、エンドエフェクタと、
組織タイプおよび/または病気タイプを入力する手段と、
クランプされた組織の少なくとも1つの組織特質を検知する手段と、
所望の組織ギャップ範囲が該エンドエフェクタによって達成されたか否かを決定する手段と、
所望の組織ギャップを達成するために、組織をクランプする組織管理モードを選択する手段と、
ステープルを該クランプされた組織に適用するために、該電力外科手術器具を該選択された組織管理モードで発射する手段と
を含む、器具。
(項目12)
組織ギャップ範囲の状態の指示を提供する手段をさらに含む、上記項目に記載の器具。
(項目13)
前記少なくとも1つの組織特質を検知する手段は、前記モーターに対する引き込み電流を測定する手段をさらに含む、上記項目のうちのいずれかに記載の器具。
(項目14)
前記少なくとも1つの組織特質を検知する手段は、前記エンドエフェクタにおけるドウェル効果を測定する手段をさらに含む、上記項目のうちのいずれかに記載の器具。
(項目15)
前記組織管理モードを選択する手段は、検知されたクランプされた組織の前記少なくとも1つの組織特質に基づく、上記項目のうちのいずれかに記載の器具。
(項目16)
前記組織管理モードを選択する手段は、臨床医によって用いられる、上記項目のうちのいずれかに記載の器具。
(項目17)
前記組織管理モードは、一定トルクプロファイル、変調トルクプロファイル、最大トルクプロファイルまたは手動オーバーライドモードである、上記項目のうちのいずれかに記載の器具。
(項目18)
前記エンドエフェクタに対する前記所望の組織ギャップ範囲が達成されない場合、異なる再装填を示唆する手段をさらに含む、上記項目のうちのいずれかに記載の器具。
(項目11−A)
ステープルを電力外科手術器具によって適用する方法であって、
該方法は、
モーターによって電力供給されるエンドエフェクタを有する外科手術器具を提供する工程と、
組織タイプおよび/または病気タイプを入力する工程と、
該モーターによって駆動される該エンドエフェクタを用いて組織をクランプする工程と、
クランプされた組織の少なくとも1つの組織特質を検知する工程と、
所望の組織ギャップ範囲が該エンドエフェクタによって達成されたか否かを決定する工程と、
所望の組織ギャップを達成するために、組織をクランプする組織管理モードを選択する工程と、
ステープルを該クランプされた組織に適用するために、該電力外科手術器具を該選択された組織管理モードで発射する工程と
を含む、方法。
(項目12−A)
組織ギャップ範囲の状態を提供する工程をさらに含む、上記項目に記載の方法。
(項目13−A)
前記少なくとも1つの組織特質を検知する工程は、前記モーターに対する引き込み電流を測定することをさらに含む、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目14−A)
前記少なくとも1つの組織特質を検知する工程は、前記エンドエフェクタにおけるドウェル効果を測定することをさらに含む、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目15−A)
前記組織管理モードを選択する工程は、前記検知されたクランプされた組織の前記少なくとも1つの組織特質に基づく、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目16−A)
前記組織管理モードを選択する工程は、臨床医によって実行される、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目17−A)
前記組織管理モードは、一定トルクプロファイル、変調トルクプロファイル、最大トルクプロファイルまたは手動オーバーライドモードである、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目18−A)
前記エンドエフェクタに対する前記所望の組織ギャップ範囲が達成されなかった場合、前記電力外科手術器具が異なる再装填を示唆する工程をさらに含む、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0016】
(摘要)
外科手術器具が提供され、組織をクランプすることと、ステープリングすることと、または切断することとを行うように構成されているエンドエフェクタと、エンドエフェクタを駆動するように構成されているモーターと、制御システムとを含む。制御システムは、少なくとも1つの組織特質に関する情報を受け取ることと、組織管理モードを少なくとも1つの組織特質に基づいて選択することとを行うように構成されている。制御システムは、選択された組織管理モードに基づいて、モーターを制御する。
【0017】
本開示の上および他の局面、特徴および利点は、添付の図面に関してみた場合、以下の詳細な説明に照らすと、より明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本開示の実施形態に従う電力外科手術器具の透視図である。
【図2】図2は、本開示の実施形態に従う電力外科手術器具のシステムブロック図である。
【図3】図3は、本開示の実施形態に従う電力外科手術器具の動作を描写するフローチャートである。
【図4】図4は、本開示の実施形態に従うインジケーターシステムを描写するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(詳細な説明)
本開示の特定の実施形態が、下で添付の図面を参照して説明される。しかし、開示される実施形態は、開示の例示に過ぎず、さまざまな形態で具現化され得ることが理解されるべきである。周知の機能または構造は、詳細には説明されず、不必要な詳細によって本開示を不鮮明にすることを避ける。そのため、本明細書において開示される特定の構造的および機能的詳細は、限定的と解釈されるべきではなく、特許請求の範囲に対しての基礎であり、当業者が本開示を実質的に任意の適切に詳細な構造においてさまざまに採用するように教示するための代表的基礎であるに過ぎないと解釈されるべきである。
【0020】
類似の参照数字は、類似または同一要素を図の説明を通して指し得る。図面において示され、以下の説明を通して説明され、外科手術器具上の相対的な位置決めを指す場合に伝統であるが、用語「近位」は、ユーザーにより近い装置の端部を指し、用語「遠位」は、ユーザーからより遠く離れた装置の端部を指す。用語「臨床医」は、本明細書において説明される実施形態の使用に関する医療処置を実行する任意の医療専門家(例えば、医者、外科医、看護士など)を指す。
【0021】
本開示に従う電力外科手術器具(例えば、外科手術ステープラー)は、図において、参照数字100として指される。電力外科手術器具100は、本明細書において説明される本開示の実施形態を利用する外科手術器具の例に過ぎず、そのため、本開示を外科手術器具の、この1つの特定の実施形態に限定することは意図されない。
【0022】
まず、図1を参照すると、電力外科手術器具100は、ハウジングまたはハンドル110、内視鏡部分140、およびエンドエフェクタ160を含む。内視鏡部分140は、内視鏡部分140を通り延在する長手方向軸A−Aを規定する。エンドエフェクタ160は、エンドエフェクタ160を通り延在する長手方向軸B−B(図1において、実質的に軸A−Aと一列に並べられて例示される)を規定する。内視鏡部分140は、ハウジング110から遠位方向に延在し、クランプ機構またはエンドエフェクタ160は、内視鏡部分140の遠位部分142に隣接して配置される。エンドエフェクタ160は、エンドエフェクタ160の間に配置された組織をクランプ、ステープリングおよび/または切断するために用いられる。
【0023】
電力外科手術器具100は、図2において全体が200として指定される制御システムを含み得る。制御システム200は、電力外科手術器具100のハウジング110に統合され得るか、または構成要素の一部がスタンドアローンユニットに提供され得る。制御システム200は、プロセッサ202、入力デバイス204、ディスプレイ206、メモリ208、インジケーター210、モーター212およびセンサーアレイ214を含む。
【0024】
プロセッサ202は、集積回路であり得るか、またはアナログおよび/または論理回路を含み得る。アナログおよび/または論理回路は、入力デバイス204またはセンサーアレイ214によって提供される入力に従う命令を実行することか、メモリ208において提供されるプログラムに従う命令を実行することか、および/または、モーター212を制御することによって、エンドエフェクタ160を制御し、エンドエフェクタ160の間の組織をクランプすることと、ステープリングすることとおよび/または切断することとを行うために用いられ得る。
【0025】
入力デバイス204は、キーボード、タッチスクリーン入力デバイス、スイッチおよび/またはボタンを含み得、電力外科手術器具100の動作を制御する。入力デバイス204は、組織管理モード間を選択することと、エンドエフェクタ160を制御することと、ステープルまたはクランプを適用することと、組織タイプおよび/または病気のような組織特質を入力することとを行うために用いられ得る。
【0026】
ディスプレイ206は、液晶ディスプレイ、発光ダイオードディスプレイなどを含み得る。ディスプレイ206は、電力外科手術器具の状態、測定された組織特質、適用されたステープル/クリップの数などを出力し得る。
【0027】
制御システム200は、また、少なくとも1つの発光ダイオード(LED)を含み得るインジケーター210を含み得、エンドエフェクタ160のジョーの間の組織ギャップ範囲の要求が満たされたか否かを示す。インジケーター210は、単一の多色LEDまたは赤、黄および緑に対する別個のLEDを含み得る。赤いLEDは、機能不全を示し得、黄色のLEDは、組織ギャップ範囲の要求が満たされていないことを示し得、緑のLEDは、組織ギャップ範囲の要求が満たされたことを示し得る。さらに、LEDは、パルス化され得ることによって、さらなる情報を示す。例えば、パルスを発する黄色のLEDは、さらなるクランプサイクルが実行されていることを示し得る。
【0028】
センサーアレイ214は、モーター212における引き込み電流またはエンドエフェクター160におけるドウェル効果を検知することによって組織特質を決定する。検知された組織特質は、クランプまたは組織管理モード、組織ギャップ範囲、発射パラメータ、モーターのスピード、モーターの変調/パルス、ステープルの配備などを決定するために用いられる。組織特質は、組織管理モードに対するクランプ圧力および継続時間の反復の調節への入力として用いられる。
【0029】
メモリ208は、電力外科手術器具100の動作に対する命令のプログラムまたはセットを格納する揮発タイプメモリ(例えば、RAM)および/または不揮発タイプメモリ(例えば、フラッシュメディア、ディスクメディアなど)であり得る。
【0030】
そのようなプログラムは、多数の組織管理モードを含み、組織管理モードは、ステープルまたはクリップをエンドエフェクタ160によって把持された組織に適用するため、組織をクランプするために用いられ得る。組織管理モードは、組織の圧迫を変えることによって無外傷応力または歪を組織に適用するように選択される。組織管理モードは、一定トルクプロファイル、変調トルクプロファイル、最大トルクプロファイルおよび手動オーバーライドモードを含む。組織管理モードは、検知された組織パラメータおよび/または臨床医によって入力された組織タイプおよび病気タイプに基づいて自動で選択され得るか、または組織管理モードは、臨床医によって選択され得る。
【0031】
一定トルクプロファイルが選択された場合、電力外科手術器具100は、一定信号をプロセッサ202からモーター212へ適用することによって、制御された組織圧迫を用いて、クランプ、ドウェルおよび発射工程中に一定率の歪を組織に適用し、組織ギャップおよびステープル形成を最適化する。一定トルクプロファイルにおけるモーター212および/またはエンドエフェクタ160を制御するために用いられるパラメータは、外科手術器具100の発射の所望のスピードまたはエンドエフェクタ160によって把持された組織のタイプに基づき得る。
【0032】
変調トルクプロファイルは、周期的信号をモーター212に適用することによって、脈動する歪エネルギーまたは周期的歪エネルギーを組織に適用する。より具体的には、プロセッサ202は、パルス幅変調信号(PWM)または任意の他の周期的信号をモーターに適用し、最適化された圧迫プロファイル(つまり、最小組織外傷(最小応力)を有する最小組織ギャップ(最大歪))を達成する。最適化された圧迫プロファイルは、異なる組織タイプおよび/または病気タイプに対して変わり得る。プロセッサ202からの信号は、予め決定およびメモリに格納され得る。あるいは、プロセッサ202によって出力される信号は、モーターから検知される電流、初期組織厚さT、初期クランプ組織厚さT、および全歪/エネルギーに対して電流勾配分析を実行することによって決定され得る。
【0033】
組織管理モードが最大トルクプロファイルにおける動作に対して設定された場合、外科手術器具100は、他のモードの動作よりも比較的速く発射する。最大トルクプロファイルにある間、外科手術器具100は、デバイス応力が比較的低いストロークの最初および最後に比較的速く発射する。組織管理モードが手動オーバーライドモードで動作するように設定された場合、臨床医は、外科手術器具100のモーターを手動で制御し得、エンドエフェクタ100の所望の組織ギャップを達成し、外科手術器具100を手動で発射させる。
【0034】
メモリ208は、また、組織タイプおよび病気タイプを必要な組織ギャップ範囲および発射パラメータに相関させる相関表を格納し得る。必要な組織ギャップ範囲および発射パラメータは、ステープルまたはクリップを組織に適用し、成功するために達成される必要がある。
【0035】
図3は、電力外科手術器具100の制御システム200の動作を説明するフローチャートを描写する。図3において示されるように、臨床医は、電力外科手術器具100を工程300において「始動」または「起動」させる。臨床医は、組織タイプおよび/または病気タイプを工程305において入力デバイス204を用いて入力する。次いで、臨床医は、エンドエフェクタ160を所望の組織上に位置決めし、初期クランプ(組織管理)モードが決定される。次いで、工程315において、エンドエフェクタ160が所望の組織をクランプし、初期厚さ、密度、初期クランプ厚さなどのような組織特質を工程320において決定する。次いで、プロセッサ202は、工程325において、組織ギャップ範囲が特定の組織タイプに対して満足か否かを決定する。ギャップ範囲の要求が満たされた場合、制御システム200は工程370に進む。
【0036】
工程325において、ギャップ範囲の要求が満たされない場合、組織ギャップおよび組織特質がプロセッサ202によって評価され、さらなるクランプが有益か否かを決定する。有益な場合、ギャップ範囲および組織特質は、工程327において新たなクランプモードを決定するために用いられる。反復的なクランプおよび評価工程は、次いで工程315に戻り、最適なギャップ範囲が満たされるまでか、または組織が選択された範囲に対して不適切(この場合、異なる再装填または(異なるサイズのステープルが装填された)エンドエフェクタが用いられるべき場合、電力外科手術器具100が臨床医に示唆し、促す)であると決定されるまで続く。臨床医が異なる再装填またはエンドエフェクタを選択した場合、電力外科手術器具100は、工程340において再装填され、工程315へ進み、組織をクランプする。
【0037】
臨床医が異なる再装填またはエンドエフェクタを選択しない場合、臨床医は工程345において手動オーバーライドモードを選択し得る。ユーザーが手動オーバーライドモードを選択した場合、電力外科手術器具100は、工程350において手動オーバーライドモードに設定される。
【0038】
あるいは、処理が工程355に進み、組織管理モードを選択する。組織管理モードは、プロセッサ202によって、入力された組織タイプ、病気タイプおよび/または組織特質に基づいて自動的に選択され得るか、もしくは臨床医によって選択され得る。組織管理モードの選択に基づいて、電力外科手術器具100は、工程362の一定トルクプロファイル、工程364の変調トルクプロファイルまたは工程366の最大トルクプロファイルを入力し得る。次いで、制御システム200は工程370に進み、ステープルが適用されるべきか否かが決定される。この決定は、プロセッサ202または臨床医によってなされ得る。ステープルが適用されるべき場合、工程375において、制御システム200は、電力外科手術器具100を制御してステープルを適用する。ステープルが適用されない場合、制御システム200は、処置を終了させる(工程380)か、または続くステープルを適用するために再開始する(工程300)。
【0039】
図4は、電力外科手術器具100のインジケーターシステムの動作を説明するフローチャートを描写する。電力外科手術器具100は、工程400において開始され、組織タイプおよび/または病気が工程405において入力される。次いで、プロセッサ202は、メモリ208に格納された相関表のうちの1つを用いて、赤―黄―緑インジケーター210に対して組織ギャップ範囲を決定する。組織ギャップ範囲は、工程415において測定される。エラーが決定されるか、または組織ギャップ範囲が上限を超えた場合、処理は工程430に進み、赤インジケーターが光る。エラーがないか、または組織ギャップ範囲が上限を超えなかった場合、処理は工程435に進む。組織ギャップ範囲が許容可能範囲になかったが、上限は超えていない場合、黄インジケーターが工程440において光る。組織ギャップ範囲の要求が満たされた場合、処理は工程445に緑インジケーターが光る。
【0040】
前述の説明は、本開示の例示に過ぎないことが理解されるべきである。さまざまな代替案および改変例が当業者によって、開示から逸脱せずにアドバイスされ得る。そのため、本開示は、そのような代替案、改変例および変化例のような全てを包含することが意図される。添付の図面を参照して説明した実施形態は、開示のある例を明示するのみのために示された。上で説明されたか、および/または添付の特許請求の範囲で説明される要素、工程、方法および技術とわずかに異なる他の要素、工程、方法および技術も開示の範囲内であることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科手術デバイスであって、
該外科手術デバイスは、
組織をクランプし、ステープルし、または切断するように構成されているエンドエフェクタと、
該エンドエフェクタを駆動させるように構成されているモーターと、
制御システムとを含み、該制御システムは、
少なくとも1つの組織特質に関する情報を受け取ることと、
該少なくとも1つの組織特質に基づいて組織管理モードを選択することと、
該モーターを該選択された組織管理モードに基づいて制御することと
を行うように構成されている、外科手術デバイス。
【請求項2】
前記制御システムは、臨床医に前記エンドエフェクタの組織ギャップ範囲の状態を提供するインジケーターをさらに含む、請求項1に記載の外科手術デバイス。
【請求項3】
前記制御システムは、少なくとも1つの組織特質を検知するように構成されているセンサーアレイをさらに含む、請求項1に記載の外科手術デバイス。
【請求項4】
前記センサーアレイは、前記モーターに対する引き込み電流を測定することによって、組織特質を検知する、請求項3に記載の外科手術デバイス。
【請求項5】
前記センサーアレイは、前記エンドエフェクタにおけるドウェル効果を測定することによって、組織特質を検知する、請求項3に記載の外科手術デバイス。
【請求項6】
前記組織管理モードは、一定トルクプロファイル、変調トルクプロファイル、最大トルクプロファイルまたは手動オーバーライドモードである、請求項1に記載の外科手術デバイス。
【請求項7】
前記制御システムは、一定信号を前記モーターに前記一定トルクプロファイルで適用する、請求項6に記載の外科手術デバイス。
【請求項8】
前記制御システムは、周期信号を前記モーターに前記変調トルクプロファイルで適用する、請求項6に記載の外科手術デバイス。
【請求項9】
前記電力外科手術器具は、該電力外科手術器具が前記最大トルクプロファイルを用いた場合に、前記一定トルクプロファイル、前記変調トルクプロファイルまたは前記手動オーバーライドモードにおける発射スピードより速いスピードで発射する、請求項6に記載の外科手術デバイス。
【請求項10】
ユーザーは、前記モーターを前記手動オーバーライドモードにおいて手動で制御する、請求項6に記載の外科手術デバイス。
【請求項11】
ステープルを適用する電力外科手術器具であって、
該器具は、
モーターによって電力供給されるエンドエフェクタであって、該エンドエフェクタは、該モーターによって駆動され、組織をクランプする、エンドエフェクタと、
組織タイプおよび/または病気タイプを入力する手段と、
クランプされた組織の少なくとも1つの組織特質を検知する手段と、
所望の組織ギャップ範囲が該エンドエフェクタによって達成されたか否かを決定する手段と、
所望の組織ギャップを達成するために、組織をクランプする組織管理モードを選択する手段と、
ステープルを該クランプされた組織に適用するために、該電力外科手術器具を該選択された組織管理モードで発射する手段と
を含む、器具。
【請求項12】
組織ギャップ範囲の状態の指示を提供する手段をさらに含む、請求項11に記載の器具。
【請求項13】
前記少なくとも1つの組織特質を検知する手段は、前記モーターに対する引き込み電流を測定する手段をさらに含む、請求項11に記載の器具。
【請求項14】
前記少なくとも1つの組織特質を検知する手段は、前記エンドエフェクタにおけるドウェル効果を測定する手段をさらに含む、請求項11に記載の器具。
【請求項15】
前記組織管理モードを選択する手段は、検知されたクランプされた組織の前記少なくとも1つの組織特質に基づく、請求項11に記載の器具。
【請求項16】
前記組織管理モードを選択する手段は、臨床医によって用いられる、請求項11に記載の器具。
【請求項17】
前記組織管理モードは、一定トルクプロファイル、変調トルクプロファイル、最大トルクプロファイルまたは手動オーバーライドモードである、請求項11に記載の器具。
【請求項18】
前記エンドエフェクタに対する前記所望の組織ギャップ範囲が達成されない場合、異なる再装填を示唆する手段をさらに含む、請求項11に記載の器具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−170820(P2012−170820A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−22856(P2012−22856)
【出願日】平成24年2月6日(2012.2.6)
【出願人】(501289751)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (320)
【Fターム(参考)】