説明

制御された自己着火燃焼方法および燃焼方法に関連する、残留ガスの貯留容積および専用の弁を有する4ストロ―クエンジン

【課題】 部分負荷時に4ストロークエンジンの自己着火を効果的に得る。
【解決手段】 本発明は、少なくとも第1の吸気手段2と少なくとも第1の排気手段3とを有する少なくとも1つのシリンダ1を含む4ストローク内燃エンジンにおける自己着火燃焼方法に関する。本発明によるこの方法は、部分負荷時に、特定のポートおよび特定の管路9によってシリンダ1に接続されている、シリンダ1から独立した外部の容積10を燃焼ガスで満たすことと、前記容積10内の前記燃焼ガスの流量および圧力の少なくとも一方を、弁8のような前記特定のポートを選択的に閉じることを可能にする手段と関連づけられたスロットル手段11によって制御することとにある。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、制御された自己着火の4ストローク内燃エンジンに関する。
【0002】
【従来の技術】制御された自己着火は、2ストロークエンジンにおいて良く知られている現象である。この燃焼方式は、排出ガスに関して、炭化水素および窒素酸化物の排出が著しく低下されるという利点を有する。さらに、サイクルの著しい規則性が自己着火燃焼中に達成される。
【0003】自己着火は、燃焼後に燃焼室に残っている残留既燃ガスによって燃焼を開始させることを可能にする現象である。
【0004】自己着火は、残留ガスの量を制御することと、残留ガスを(未燃焼の)新鮮なガスと混合することとにより達成される。残留ガス(高温既燃ガス)は、温度と活性種(ラジカル)の存在との組合せによって新鮮なガスの燃焼を開始する。
【0005】2ストロークエンジンでは、燃焼において残留ガスは「本質的」に存在する。実際、エンジンの負荷が減少すると、新鮮なガスの量は減少し、これは残留ガス(前の行程、すなわちシリンダがまだ掃気されていない行程からの既燃ガス)の量が増加することにつながる。このように、2ストロークエンジンは、部分負荷時の既燃ガスの内部再循環(すなわち内部排気ガス再循環(EGR))によって作動する。しかしながら、この内部EGRの存在は、所望の自己着火作動を得るためには十分でない。また、研究報告により、内部EGRと新鮮なガスとの間の調和が制御されかつ制限されなくてはならないことが示されている。
【0006】4ストロークエンジンに適用された、制御された自己着火技術は、非常に稀薄な混合気を用いて、非常に低い燃料/空気比でかつ極めて低い窒素酸化物の排出でエンジンを運転させることを可能にするため、特に興味深い。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この技術は、制御された自己着火を4ストロークエンジンにおいて得るために、エンジンの圧縮比をかなり増加させること(高負荷でのノッキングの問題を伴う)、収容された新鮮なガスをかなり熱すること(数百℃)、またはこれらの2つの現象を組み合わせることが必要である限りにおいて、かなりの技術的な困難に直面する。
【0008】4ストロークエンジンの圧力および温度レベルの必要条件を低下させることを可能にする解決策は、好適な添加剤を燃料に加えることによって部分的にもたらされうる。仏国特許出願第2,738,594号は、このタイプの解決策を例示している。
【0009】4ストロークエンジン用に、部分負荷時のポンプ損失を低減するために可変分布調節装置を吸気におけるノンリターンシステムと組み合わせることが、例えば国際特許出願第93/16,276号によりよく知られている。そして、この解決策は、吸気スロットルが可能な限り広く開く動作を可能にする。
【0010】本出願人による仏国特許出願第97/02,822号は、4ストロークエンジンにおいて自己着火を制御する他の方法を記載している。より詳細には、この文献は、部分負荷時に、燃焼室内に閉じこめられる新鮮なガスと既燃ガスとの混合を、排気の終了を可能な限り遅らせることにより最小化することを推奨している。これは、燃焼室内においてガスを成層化させることを可能にする「内部」再循環である。
【0011】本出願人による仏国特許出願第97/11,279号もまた、自己着火燃焼を制御しかつ容易にするために、部分負荷時に、燃焼室内に含まれる新鮮なガスと既燃ガスとの混合を最小化することを目的としている。しかしながら、この先行技術は、再循環された既燃ガスを、燃焼室のちょうど上流にある空気供給管路に開口している特定の管路の開口部を介して移送することを提案している。新鮮な空気と燃料との各供給物が、別々にかつ遅れて第2の管路を介して導入される。これらの供給物の連続する供給は、このようにしてなされる。しかしながら、この解決策は、燃焼室に入る前に空気による既燃ガスの実質的な稀釈を引き起こす。
【0012】本発明は、部分負荷時に4ストロークエンジンにおける自己着火を効果的に達成するためのより簡便な方法を提示する。
【0013】さらに、本発明は、より良好な既燃ガス供給の確信と、新鮮なガスによる既燃ガスのより少ない稀釈とによって、より高い信頼性を与える。
【0014】したがって、本発明の目的は、少なくとも1つの第1の吸気手段と少なくとも1つの排気手段を有する少なくとも1つのシリンダを含む4ストローク内燃エンジンにおける自己着火燃焼方法にある。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、前記の方法は、部分負荷時に、特定のポートおよび特定の管路を介してシリンダに接続されている、シリンダから独立した外部容積を既燃ガスで満たすことと、前記の燃焼室内において既燃ガスと新鮮なガスとの成層を達成するために、前記容積内の前記既燃ガスの流量および圧力の少なくとも一方を、弁のような、特定のポートを選択的に閉じることを可能にする手段と関連づけられたスロットル手段によって制御することとにある。
【0016】本発明によれば、特定の弁の持ち上がりの規則が、特定の弁が吸気工程の終点付近に開くようなものである。
【0017】さらに、前記の容積と特定の管路とは断熱されている。
【0018】本発明の1つの実施態様によれば、容積には前記のシリンダからのみ入る既燃ガスが供給される。
【0019】本発明の他の実施態様によれば、容積には、排気管路が前記の容積に接続された補助エンジンによって既燃ガスが供給される。
【0020】本発明のこの実施態様によれば、特定の弁の持ち上がりの規則が、前記の容積を既燃ガスで満たすことを可能にするために特定の弁が膨張行程中に開くようなものである。
【0021】より詳細には、前記の方法は共通の排気マニホールドを有する多気筒エンジンにおいて用いることができる。
【0022】本発明は、また、制御された自己着火原理で作動し、かつ、少なくとも第1の吸気手段と少なくとも第1の排気手段とを有する少なくとも1つのシリンダを含む4ストローク内燃エンジンに関する。
【0023】前記のシリンダは、具体的には、特定のポートとシリンダの外部にありかつ部分負荷時に既燃ガスで満たされるようにされた容積に接続された特定の管路とを含む。また、前記の燃焼室内における既燃ガスと新鮮なガスとの成層を達成するために、前記の容積内のガスの流量および圧力の少なくとも一方を制御するスロットル手段も備えられている。
【0024】本発明によるエンジンは、また、特定の管路および既燃ガスで満たされる容積の断熱および加熱の少なくとも一方のための手段を含むことができる。
【0025】本発明の範囲から逸脱せずに、エンジンは、排気管路が既燃ガスで満たされる前記の容積に接続された補助エンジンをさらに含むことができる。これにより、共通の排気マニホールドを有するいくつかのシリンダが提供される。
【0026】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0027】図1は、4ストロークエンジンの燃焼室1の上部の概略断面図である。
【0028】燃焼室1は、吸気手段2と排気手段3とを従来と同様に有している。用語「吸気手段2」は、吸気ポート自体と、吸気ポートを断続的に閉じる関連する弁を指す。
【0029】同様に、用語「排気手段3」は、排気ポートと、関連する弁とを指す。
【0030】もちろん、吸気パイプ4は、吸気手段2を介して吸気パイプ4が内部に開口している燃焼室1内に供給物が導入されることを可能にする。
【0031】排気パイプ5は、既燃ガスが燃焼室1から排出されることを可能にする。
【0032】第1のスロットル手段6は、ガス流量を制御するために、吸気手段2に近接して吸気パイプ4内に配置することができ、同様に、第2のスロットル手段7は排気パイプ5内に配置することができる。
【0033】本発明によれば、特定のポート8が、シリンダ内またはシリンダヘッド内に設けられている。ポート8は、特定の弁(参照番号なし)と関連し、かつその他端において容積10の内部に開口している管路9の第1の端部を構成している。
【0034】管路9は、スロットル手段11を備えることができる。
【0035】本発明は以下のように動作する。最初に、特定の弁が膨張行程中に開き、これにより容積10を既燃ガスで満たすことを可能にする。次に、弁は、所望の量のガスが容積10に閉じこめられると閉じる。
【0036】その後、吸気または圧縮行程中に、シリンダ内の圧力が容積10内の圧力よりも低いときに特定の弁が再び開く。これは、既燃ガスが容積10からシリンダ1に移送されることを可能にする。
【0037】図2は、種々の弁の持ち上がりの規則を示す。曲線Eは排気弁3の持ち上がりであり、曲線Aは吸気弁2の持ち上がりであり、一方、曲線Sは上述したように2つの連続した持ち上がりS1およびS2を示す。
【0038】既燃ガスは、新鮮なガスとの混合を制限するために、サイクル中において燃焼室1内に可能な限り遅く再導入されることが好ましい。実際、このような成層は、燃焼方法を容易にするため常に要求される。
【0039】同様に、カム(または特定の弁の運動を制御する他の何らかの手段)が、容積10内に閉じこめられた既燃ガスを最良に制御するために、(振幅、長さ、位相において)可変の分布を有していなければならない。
【0040】このため、弁の持ち上がりの規則がこのような流量調節を可能にしない場合には、スロットル羽根部11のようなスロットル手段が管路9内に配置されている。
【0041】高負荷時には、特定の弁は開かない。
【0042】さらに、容積10および管路9の少なくとも一方は、新鮮な供給物の自己着火のための既燃ガスの初期の温度を利用するために、手段12によって断熱されている。同様に、例えば巻き抵抗器のような加熱装置を、管路9および容積10の少なくとも一方の付近に配置することができる。しかしながら、加熱装置による解決策はエネルギー消費量が多いため、その解決策は時折にのみしか実行されないであろう。
【0043】上記の本発明の実施形態は単気筒エンジンに関するが、本実施態様は、各シリンダが容積10と協働する特定の弁8を有する多気筒エンジンにおいても実施されることができる。
【0044】図3は、むしろ多気筒エンジンに適用可能な一実施形態に関する。この実施形態は、容積10がいくつかのシリンダ1A,1Bに「共通」であるという点で、先に述べた実施形態と異なる。実際に、いくつかの管路9aおよび9bが、共通の容積10で終わっている。
【0045】さらに、容積10は補助エンジン13の出口に接続されており、それにより容積10に既燃ガスが供給される。
【0046】また、種々のシリンダを迂回する追加の管路15を備えることができる。管路15は、第1の端部によって容積10に開口し、第2の端部によって例えば全てのシリンダ1A,1B,...に共通の排気マニホールド16に開口している。
【0047】スロットル手段14は、容積10内の圧力、したがって特に圧縮サイクルにおいて、各特定の弁8a,8b,...が開いている間、主エンジンのシリンダに導入される既燃ガスの量を制御するために、管路15の第1の端部の付近に配置されていることが好ましい。
【0048】先の実施形態と同様に、各々の弁8a,8bは、流量および圧力をより良好に制御するために、可変の(持ち上がり,位相)分布装置を備えていることが好ましい。高負荷時に、既燃ガスの導入が必要でないときには、既燃ガス専用の弁は開いていてはならない。
【0049】図4は、種々の弁の持ち上がりの規則を示す。排気弁は曲線Eを辿り、すなわち排気弁は従来と同じく下死点(BDC)と上死点(TDC)との間で開き、一方、吸気弁は上死点と下死点との間で開く。特定の弁に関して、弁は、吸気行程の終点付近に、下死点が過ぎた後に開く。
【0050】断熱および/または加熱手段12を、また、容積10、管路20、および特定の管路9a,9bの周りに備えることができる。
【0051】補助エンジン13によって与えられる機械動力は、補助機械、コンプレッサを運転するために用いるのが有利であろうし、かつ/または主エンジンに再伝達されることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の概略断面図である。
【図2】図1のエンジンの弁の持ち上がりの規則に関する図である。
【図3】本発明の他の実施形態の簡略化された概略図である。
【図4】図3のエンジンの弁の持ち上がりの規則に関する図である。
【符号の説明】
1,1A,1B 燃焼室
2 吸気手段
3 排気手段
4 吸気パイプ
5 排気パイプ
6,7,11,14 スロットル手段
8,8a,8b 弁
9,9a,9b,15,20 管路
10 容積
11 スロットル羽根部
12 断熱および/または加熱手段
13 補助エンジン
16 排気マニホールド

【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも第1の吸気手段(2)と少なくとも第1の排気手段(3)とを有する少なくとも1つのシリンダ(1)を含む4ストローク内燃エンジンにおける自己着火燃焼方法において、部分負荷時に、特定のポートおよび特定の管路(9)を介してシリンダ(1)に接続されている、シリンダ(1)から独立した外部の容積(10)を既燃ガスで満たすことと、前記燃焼室内において前記既燃ガスと新鮮なガスとの成層を達成するために、前記容積(10)内の前記既燃ガスの流量および圧力の少なくとも一方を、弁(8)のような、前記特定のポートを選択的に閉じることを可能にする手段に関連づけられたスロットル手段(11;14)によって制御することとを特徴とする自己着火燃焼方法。
【請求項2】 特定の弁(8)の持ち上がりの規則が、前記特定の弁が前記吸気行程の終点付近に開くようなものである請求項1に記載の燃焼方法。
【請求項3】 前記容積(10)と特定の管路(9)とが断熱されている請求項1または2に記載の燃焼方法。
【請求項4】 前記容積(10)に、前記シリンダからのみ入る既燃ガスが供給される請求項1から3のいずれか1項に記載の燃焼方法。
【請求項5】 前記容積(10)に、排気管路(20)が前記容積(10)に接続された補助エンジン(13)によって既燃ガスが供給される請求項1から3のいずれか1項に記載の燃焼方法。
【請求項6】 特定の弁(8)の持ち上がりの規則が、前記容積(10)を既燃ガスで満たすことを可能にするために前記特定の弁が膨張行程中に開くようなものである請求項5に記載の燃焼方法。
【請求項7】 共通の排気マニホールド(16)を有する多気筒エンジンにおいて用いられる請求項1から3,5,6のいずれか1項に記載の燃焼方法。
【請求項8】 制御された自己着火で作動し、かつ、少なくとも第1の吸気手段(2)と少なくとも第1の排気手段(3)とを有する少なくとも1つのシリンダ(1)を含む4ストローク内燃エンジンにおいて、前記シリンダ(s)が、特定のポートとシリンダ(1)の外部にありかつ部分負荷時に既燃ガスで満たされるようにされた容積(10)に接続された特定の管路とを有し、前記燃焼室内における前記既燃ガスと新鮮なガスとの成層を達成するために、前記容積(10)内の前記ガスの流量および圧力の少なくとも一方を制御するスロットル手段(11)もまた設けられていることを特徴とする4ストローク内燃エンジン。
【請求項9】 特定の管路(9)および既燃ガスで満たされた前記容積の、断熱および加熱の少なくとも一方のための手段(12)をさらに有する請求項8に記載の内燃エンジン。
【請求項10】 排気管路(20)が既燃ガスで満たされた前記容積(10)に接続された補助エンジン(13)をさらに有する請求項8または9に記載の内燃エンジン。
【請求項11】 共通の排気マニホールド(16)を有するいくつかのシリンダを含む請求項8から10のいずれか1項に記載の内燃エンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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