説明

制御システム

【課題】エンジン始動時における車両の各部の状態を示すデータを確実に保持出来る制御システムを提供する。
【解決手段】制御部1は、始動開始信号STに基づいて、駆動制御装置3,6へのクランキング信号CRの出力、電源装置16の制御による車両200の各部への電力供給、計時装置31による計時開始を行う。駆動制御装置3,6は、電力供給に基づいて、周辺装置21,24の制御を開始し、検出部23,26にて、始動開始装置11のON操作時における各周辺装置の状態を検出する。そして、検出結果であるデータを、一時記憶部4,7に記憶した後、クランキング信号CRに基づいて、各一時記憶部に記憶されたデータを、記憶部5,8内の所定の記憶領域に記憶する。計時装置31による計時時間が、予め設定された所定時間を超えると、制御部1は、始動制御装置2へクランキング信号CRを出力し、原動装置12が作動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の各部の状態を示すデータを記憶し、当該データに基づいて車両の各部を制御する制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、車両の高機能化に伴い、車両の各部の初期情報および/または搭乗者等によって予め設定された設定情報等に基づいて、エンジン始動時における車両の各部の状態を検証し、当該検証結果に基づいて、車両の各部を制御する制御システムの需要が増している。
【0003】
上述の制御システムにおいて、例えば、座席を制御するECU(Electronic Control Unit)は、当該座席の基準位置や背もたれの基準角度等から構成される初期情報や、搭乗者等によって予め設定された座席毎の座席位置や背もたれ角度等から構成される設定情報を含むデータを、EEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)等の不揮発性記憶媒体から成る記憶部に記憶している。また、エンジン始動時における座席の状態(座席位置や背もたれ角度等)を示すデータを、RAM(Random Access Memory)等の揮発性記憶媒体から成る一時記憶部に記憶する。
【0004】
そして、例えば、記憶部に記憶されているデータと一時記憶部に記憶されているデータとに差異がある場合、つまり、エンジン始動時における座席位置や背もたれ角度が、予め設定された座席位置や背もたれ角度と異なる場合、ECUは、記憶部に記憶されているデータに基づいて、予め設定された位置や角度まで、座席を移動させ、背もたれを傾ける。尚、上述した座席の移動や背もたれを傾ける動作が行われる場合としては、操作スイッチが搭乗者により操作されたことをECUが認識して行う場合や、エンジン始動後等にECUが自動的に行う場合がある。
【0005】
同様に、例えば、窓を制御するECUは、当該窓の全開および全閉位置等から構成される初期情報を含むデータを、EEPROM等の不揮発性記憶媒体から成る記憶部に記憶しており、また、エンジン始動時における窓の状態(窓の上下方向(垂直方向)の位置等)を示すデータを、RAM等の揮発性記憶媒体から成る一時記憶部に記憶する。
【0006】
そして、例えば、エンジン始動後に、搭乗者が窓の全開または全閉の操作を行った場合、ECUは、記憶部に記憶されているデータと、一時記憶部に記憶されているデータとに基づいて、全開または全閉位置まで窓を移動させる。
【0007】
ここで、上述したように、車両の各部の初期情報や設定情報等を含むデータは、当該データの重要性から、通常、データの保持に電力を要しない不揮発性の記憶部に保持される。また、エンジン始動時における車両の各部の状態を示すデータは、当該データの容量やコスト面等から、通常、データの保持に常時電力を要する揮発性の記憶部に保持される。
【0008】
また、エンジンは、通常、エンジン始動のための始動モータと、始動後に生じた動力(例えば、ピストンの往復運動によって生じた動力)を回転する力に変換するクランクシャフトを備えており、エンジン始動時においては、始動モータが始動を開始し、これにより、クランクシャフトが回転し始める。このエンジン始動時の動作を、以下においては、「クランキング」と称する。
【0009】
しかしながら、エンジン始動時のクランキングにより、電源装置(バッテリ)から始動モータへの供給電圧が上昇するため、電源装置から座席や窓等を制御するECUへの供給電圧が、当該ECUの動作に要する最小電圧よりも低い電圧値まで、一時的(例えば、1000分の1秒単位の時間)に低下する場合がある。このため、当該電圧低下により、電源装置から電力を供給しているECUが動作不能となる場合があり、これにより、ECUから一時記憶部への電力供給も停止してしまうため、当該一時記憶部は、記憶しているデータを保持することが出来ない。つまり、一時記憶部に記憶されているデータは消失してしまう。
【0010】
このように、エンジン始動時における車両の各部の状態を示すデータが正常に得られない(消失した)場合、ECUが、不揮発性の記憶部に記憶されているデータと、揮発性の記憶部に記憶されているデータとに基づいて、当該車両の各部を制御することが出来ない。このため、例えば、座席を所定の位置(搭乗者等によって予め設定された位置)まで正確に移動することが出来ないといった問題や、窓の全開または全閉の操作が行われた場合に、正確な全開または全閉の位置に窓を停止することが出来ない等の問題が生じる。
【0011】
よって、このような制御システムにおいて、エンジン始動時における車両の各部の状態を示すデータの消失を防止するために、特許文献1では、集積回路の電源電圧が、揮発性記憶部の記憶保持電圧以上である時に、その旨を検出して蓄電部に蓄電された指示電圧を所定の第1の状態に保持する一方、集積回路の電源電圧が、例えば、エンジン始動時のクランキングにより、揮発性記憶部の記憶保持電圧未満まで低下した際に、その旨を検出して蓄電部に蓄電された指示電圧を所定の第2の状態にまで放電することで、揮発性記憶部に記憶されているデータを保持している。
【0012】
また、特許文献2では、主電圧レギュレータにより、主入力電圧に応じて主制限出力電圧を生成して、メイン・プロセッサー・ボードに電力を供給し、二次電圧レギュレータにより、二次入力電圧に応じて二次制限出力電圧を生成して、少なくともエンジンの始動中に揮発性RAMに電力を供給する電力管理システムにおいて、主電圧レギュレータは、主入力電圧が主電圧範囲内にあるとき、主制限出力電圧を供給し、二次電圧レギュレータは、二次入力電圧が主電圧幅よりも低い電圧値を含む二次電圧幅内にあるとき、二次制限出力電圧を供給し、メイン・プロセッサー・ボードが、エンジン始動時のクランキングに係る信号を検知した場合は、このメイン・プロセッサー・ボードにより制御される所定の機器をシャット・ダウンするとともに、所定機器の最新状態を揮発性RAM中に記憶している。
【0013】
【特許文献1】特開平11−219238号公報
【特許文献2】特開2001−158310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述した特許文献1のように、揮発性記憶部の記憶保持電圧未満まで低下した際に、その旨を検出して蓄電部に蓄電された指示電圧を所定の第2の状態にまで放電する方法では、当該電圧低下は、周知の通り、1000分の1秒単位の非常に短い時間内に起こるため、放電が間に合わない場合があるとともに、記憶保持電圧未満まで低下したことを検出して放電するため、当該揮発性記憶部の記憶保持電圧を維持出来ない恐れがある。また、揮発性記憶部に記憶されているデータを、データの保持に電力を要しない不揮発性の記憶部に書き換える等の手段も講じられないため、揮発性記憶部に記憶されているデータを保持出来ない場合がある。つまり、当該データを消失する恐れがある。
【0015】
また、特許文献2のように、メイン・プロセッサー・ボードが、エンジン始動時のクランキングに係る信号を検知した場合に、このメイン・プロセッサー・ボードにより制御される所定の機器をシャット・ダウンするとともに、所定機器の最新状態を揮発性RAM中に記憶する方法では、クランキングに係る信号の生成時からエンジンのクランキング開始時までの間、つまり、一般的に、1000分の1秒単位の時間と言われている非常に短い時間に、所定機器の最新状態を揮発性RAM中に記憶しなければならないため、当該記憶処理が正しく終了出来ない場合がある。つまり、データが不十分な状態で記憶される恐れがある。
【0016】
よって、上述した特許文献1,2のような方法では、エンジン始動時における車両の各部の状態を示すデータを確実に保持出来ない、または、正確に他の記憶媒体に記憶出来ない恐れがある。この様な場合、ECUは、車両の各部を正確に制御することが出来ないため、例えば、座席の位置変更に係る操作が行われた場合に、搭乗者等によって予め設定された位置まで、当該座席を正確に移動することが出来ないといった問題や、窓の全開または全閉に係る操作が行われた場合に、全開または全閉の位置で、当該窓を停止させることが出来ないといった問題が生じる。これにより、搭乗者が不便さを感じたり、車両の各部に対する過剰制御等に起因した部品劣化や故障等の問題も起こりうる。
【0017】
本発明は、上述した問題点に鑑み、エンジン始動時における車両の各部の状態を示すデータを確実に保持出来る制御システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係る制御システムは、車両を始動させる操作に基づいて、当該車両の始動開始のための始動開始信号を生成して出力する始動開始装置と、車両の各部に電力を供給する電源装置と、車両を駆動する原動装置に対し、始動開始信号に基づいて、当該原動装置を始動させるための始動指令信号を生成して出力する中央制御部と、始動指令信号に基づいて原動装置の始動制御を行う始動制御部と、車両を構成する周辺装置の駆動制御を行う駆動制御部と、周辺装置の初期情報および/または予め設定された設定情報を含む第1データが記憶される記憶部と、を備えており、更に、車両を始動させる操作が行われた場合に、当該操作時における周辺装置の状態を示す第2データを、記憶部内の所定の記憶領域に記憶した後に、始動制御部により原動装置の始動制御を行うデータ記憶制御手段を設けている。
【0019】
このようにすることで、車両を始動させる操作が行われた場合に、エンジン始動時のクランキングに起因した電源装置の極端な電圧低下が生じる前に、当該操作時における周辺装置の状態を示す第2データを、記憶部内の所定の記憶領域に記憶することが出来るため、エンジン始動時における車両の各部の状態を示すデータを確実に保持出来る。つまり、当該データの消失を防止することが出来る。
【0020】
本発明の制御システムにおいて、データ記憶制御手段は、中央制御部から駆動制御部に始動指令信号が出力されると同時に計時を開始する計時手段を有していてもよい。この場合は、車両を始動させる操作に基づいて始動開始装置にて生成された始動開始信号が、中央制御部に入力されると、当該中央制御部から駆動制御部に始動指令信号を出力するとともに、当該中央制御部により電源装置を制御して車両の各部に電力を供給する。駆動制御部は、電源装置からの電力供給を受けて、周辺装置を駆動させて第2データを取得するとともに、中央制御部から入力された始動指令信号に基づいて、第2データを記憶部内の所定の記憶領域に記憶する。そして、計時手段による計時時間が、予め設定された所定時間を超えた場合は、中央制御部から始動制御部に始動指令信号を出力し、当該始動指令信号に基づいて始動制御部が原動装置を作動させる。
【0021】
このようにすることで、予め設定される所定時間を、第2データの記憶に要する時間より十分に長い時間とすることにより、始動制御部が原動装置を作動させるまでの間に、車両を始動させる操作が行われた時の周辺装置の状態を示す第2データを、記憶部内の所定の記憶領域に記憶することが出来るため、エンジン始動時における電圧低下の影響を受けることなく、車両の各部の状態を示すデータを確実に保持出来る。つまり、当該データの消失を防止することが出来る。
【0022】
本発明の制御システムにおいて、データ記憶制御手段は、車両を始動させる操作に基づいて始動開始装置にて生成された始動開始信号が、中央制御部に入力された場合は、当該中央制御部から駆動制御部に始動指令信号を出力するとともに、当該中央制御部により電源装置を制御して車両の各部に電力を供給し、駆動制御部は、電源装置からの電力供給を受けて、周辺装置を駆動させて第2データを取得するとともに、中央制御部から入力された始動指令信号に基づいて、第2データを記憶部内の所定の記憶領域に記憶した後、当該第2データの記憶が完了したことを示す記憶完了信号を中央制御部に出力してもよい。この場合は、記憶完了信号が出力されると、中央制御部から始動制御部に始動指令信号を出力し、当該始動指令信号に基づいて始動制御部が、原動装置を作動させる。
【0023】
このようにすることで、記憶完了信号の出力を以って、第2データが記憶部内の所定の記憶領域に記憶されたことを確認して、中央制御部が、始動制御部に始動指令信号を出力するため、始動制御部が原動装置を作動させる前に、車両を始動させる操作が行われた時の周辺装置の状態を示す第2データを、記憶部内の所定の記憶領域に記憶することが出来る。このため、エンジン始動時における電圧低下の影響を受けることなく、車両の各部の状態を示すデータをより確実に保持でき、以って、当該データの消失を防止することが出来る。
【0024】
本発明の制御システムにおいて、駆動制御部に、第2データを一時的に記憶するための一時記憶部を更に設けてもよい。そして、データ記憶制御手段は、第2データを一時記憶部に記憶した後に、記憶部内の所定の記憶領域に対して、当該一時記憶部に記憶されている第2データを記憶してもよい。
【0025】
このようにすることで、第1データと第2データとに差異が無い場合は、当該第2データを記憶部内の所定の記憶領域に対して記憶しなくてもよく、これにより、当該所定の記憶領域に対する記憶(書き込み)回数を削減することが出来るため、当該記憶部の第2データの記憶処理に係る負担を軽減することが出来る。
【0026】
本発明の制御システムにおいて、中央制御部は、第1データと記憶部内の所定の記憶領域に記憶されている第2データとの差異を検証し、当該検証の結果、第1データと第2データとに差異がある場合は、駆動制御部の制御の下、周辺装置を駆動させて、当該周辺装置の状態を第1データに基づく状態まで変更してもよい。
【0027】
このようにすることで、搭乗者等によって周辺装置の状態を逐次変更する必要がなくなるため、当該搭乗者の手間を省くことができ、以って、搭乗者の利便性を向上させることが出来る。
【0028】
本発明の制御システムにおいて、周辺装置を駆動させて、当該周辺装置の状態を第1データに基づく状態まで変更する場合は、当該第1データにおいて、予め設定された周辺装置の設定情報が、周辺装置の初期情報よりも優先して適用してもよい。
【0029】
このようにすることで、搭乗者毎に予め設定された周辺装置の設定情報に従って、各周辺装置の状態を変更することが出来るため、画一的な変更とは異なり、搭乗者の利便性を向上させることが出来る。
【0030】
本発明の制御システムにおいて、記憶部は、不揮発性の記憶媒体から構成してもよい。
【0031】
このようにすることで、電源装置から所定の電力が得られない場合においても、第1データを保持することが出来る。
【0032】
本発明の制御システムにおいて、一時記憶部は、揮発性の記憶媒体から構成してもよい。
【0033】
このようにすることで、電源装置から所定の電力が得られない場合は、第2データが消失してしまうため、当該第2データの消去に係る処理を省くことが出来る。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、車両を始動させる操作が行われた場合に、エンジン始動時のクランキングに起因した電源装置の極端な電圧低下が生じる前に、当該操作時における周辺装置の状態を示す第2データを、記憶部内の所定の記憶領域に記憶するため、エンジン始動時における車両の各部の状態を示すデータを確実に保持でき、当該データの消失を防止することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態につき、図1〜図4を参照しながら説明する。
【0036】
図1は、本発明の実施形態である制御システム100および当該制御システム100を搭載した車両200の第1実施例を示したブロック図である。
【0037】
図1に示す通り、車両200は、制御システム100、原動装置12、発電装置15、電源装置16、周辺装置21,24、計時装置31を有している。
【0038】
詳しくは、原動装置12は、例えば、エンジンから成り、車両200を駆動させる。また、原動装置12は、始動のための始動モータ13と、始動後に生じた動力(例えば、図示しないピストンの往復運動によって生じた動力)を回転する力に変換するクランクシャフト14を備えている。
【0039】
発電装置15は、例えば、オルタネータ等から成り、原動装置12を動力源として発電を行う。計時装置31は、例えば、時計やタイマ等から成り、現在時刻や経過時間等を計時する。尚、計時装置31は、後述する制御部1とともに、本発明における計時手段の一実施形態である。
【0040】
周辺装置21,24は、車両200に内装または外装された車両部品の一つであり、本実施形態において、周辺装置21は、車両200に乗降する搭乗者が着座するための座席(図示省略)であり、周辺装置24は、搭乗者が乗降するためのドア(図示省略)に設けられた窓(図示省略)である。
【0041】
また、周辺装置21は、座席の水平方向の位置や当該座席の背もたれの傾きを変更するための駆動部22と、座席の水平方向の位置や当該座席の背もたれの傾きを検出するための検出部23を有している。尚、駆動部22は、例えば、モータから成り、検出部23は、例えば、位置センサや角度センサ等から成る。
【0042】
周辺装置24は、窓を上下方向(垂直方向)に開閉するための駆動部25と、当該窓の上下方向の位置や開閉速度等を検出するための検出部26を有している。尚、駆動部25は、例えば、モータから成り、検出部26は、例えば、位置センサや速度センサ等から成る。
【0043】
図中の一点鎖線で囲まれる制御システム100は、始動開始装置11、制御部1、始動制御装置2、電源装置16、駆動制御装置3,6、記憶部5,8により構成されている。
【0044】
ここで、制御部1は、本発明における中央制御部の一実施形態である。また、制御部1は、前述した計時装置31とともに、本発明における計時手段の一実施形態である。始動制御装置2は、本発明における始動制御部の一実施形態であり、
駆動制御装置3は、本発明における駆動制御部の一実施形態である。
【0045】
更に、制御部1、始動開始装置11、始動制御装置2、駆動制御装置3,6、一時記憶部4,7、記憶部5,8は、本発明におけるデータ記憶制御手段の一実施形態である。
【0046】
詳しくは、始動開始装置11は、例えば、プッシュ式のエンジンスイッチから成り、当該始動開始装置11において、電力供給操作が行われることにより、車両200の各部に対する電力供給が開始または停止し、また、車両200の始動に係る操作が行われることにより、車両200の始動が開始または停止する。
【0047】
尚、車両200の各部に対する電力供給の停止、および、車両200の始動の停止については、本発明に関係が無いため、以下において説明を省略する。また、車両200の各部に対する電力供給の開始に係る操作を、以下においては、「PS操作」と記載し、車両200の始動の開始に係る操作を、以下においては、「ON操作」と記載する。各操作の詳細については、後述する。
【0048】
制御部1は、例えば、CPU(Central Processing Unit)や電源用のECU(Electronic Control Unit)等から成り、車両200の各部を制御する。始動制御装置2は、例えば、エンジン用ECUから成り、原動装置12の始動を制御する。
【0049】
電源装置16は、例えば、バッテリから成り、発電装置15により発電された電力を蓄電するとともに、図中の破線で示される供給回路Lを通じて、車両200の各部に電力を供給する。
【0050】
駆動制御装置3は、例えば、座席用のECUから成り、周辺装置21の駆動制御を行う。また、駆動制御装置3は、例えば、RAM(Random Access Memory)等の揮発性記憶媒体から成る一時記憶部4を有している。この、一時記憶部4には、車両200の各部に対する電力供給開始時や車両200の始動開始時、つまり、始動開始装置11のPS操作時やON操作時における周辺装置21の状態(例えば、座席の位置や、当該座席の背もたれの角度等)を示すデータ(以下、「データA」と記載)が記憶される。
【0051】
記憶部5は、例えば、EEPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)等の不揮発性記憶媒体から成り、例えば、周辺装置21の初期情報および/または各座席の搭乗者等によって設定された設定情報(各搭乗者に適した座席の位置や背もたれの角度等)を含むデータ(以下、「データB」と記載)が記憶されている。また、記憶部5は、駆動制御装置3と接続されている。
【0052】
駆動制御装置6は、例えば、窓用のECUから成り、周辺装置24の駆動制御を行う。また、駆動制御装置6は、例えば、RAM等の揮発性記憶媒体から成る一時記憶部7を有している。この、一時記憶部7には、車両200の各部に対する電力供給開始時や車両200の始動開始時、つまり、始動開始装置11のPS操作時やON操作時における周辺装置24の状態(例えば、窓の上下方向(垂直方向)の位置等)を示すデータ(以下、「データC」と記載)が記憶される。
【0053】
記憶部8は、例えば、EEPROM等の不揮発性記憶媒体から成り、例えば、周辺装置24の初期情報(例えば、各窓の全開および全閉位置等)を含むデータ(以下、「データD」と記載)が記憶されている。また、記憶部8は、駆動制御装置6と接続されている。
【0054】
尚、データB,Dは、本発明における第1データの一実施例であり、データA,Cは、本発明における第2データの一実施例である。
【0055】
ここで、周知の通り、車両200には、その他種々の周辺装置(アクセルやブレーキ、ステアリングやタイヤ等)も含まれるが、本発明には関係がないため、図示および説明を省略する。
【0056】
同様に、制御システム100には、SRS(Supplemental Restraint System)等の種々の制御システムも含まれるが、本発明と関係がないため、図示および説明を省略する。
【0057】
上記構成の車両200において、始動開始装置11がPS操作(車両200の各部に対する電力供給を開始するための操作)された場合、電力供給信号ELが、始動開始装置11から制御部1に出力される。また、始動開始装置11がON操作(車両200の始動を開始するための操作)された場合、始動開始信号STが、始動開始装置11から制御部1に出力される。
【0058】
制御部1は、入力された電力供給信号ELまたは始動開始信号STに基づいて、電源装置16を制御し、当該電源装置16から供給回路Lを通じて、車両200の各部に電力が供給される。また、制御部1は、当該始動開始信号STに基づいて、原動装置12に備えられたクランクシャフト14を回転させるためのクランキング信号CRを、始動制御装置2や駆動制御装置3,6に出力する。尚、クランキング信号CRは、本発明における始動指令信号の一実施例である。
【0059】
始動制御装置2は、制御部1から入力されたクランキング信号CRに基づいて、原動装置12の始動モータ13を始動させ、クランクシャフト14を回転させる。これにより、原動装置12において動力が発生し、当該動力により、車両200が駆動する。
【0060】
駆動制御装置3は、電源装置16から供給回路Lを通じて電力が供給された場合、周辺装置21を制御して、当該周辺装置21が有する検出部23により、始動開始装置11のPS操作時やON操作時における周辺装置21の状態(ここでは、座席位置や背もたれ角度)を検出する。そして、検出部23での検出結果であるデータAは、駆動制御装置3が有する一時記憶部4に記憶される。
【0061】
また、駆動制御装置3は、一時記憶部4に記憶されたデータA(検出値)と、当該駆動制御装置3と接続されている記憶部5に予め記憶されているデータB(設定値)とに差異があるか否かを検証する。
【0062】
そして、当該検証の結果、データAとデータBとに差異がある場合は、駆動制御装置3の制御の下、周辺装置21の駆動部22が駆動され、データBに基づいて、周辺装置21の状態が最適化される。最適化の一例として、例えば、記憶部5に記憶されている位置まで座席(周辺装置21)が移動し、同記憶部5に記憶されている角度まで当該座席の背もたれが傾く。尚、この場合、データBに、周辺装置21の初期情報と、搭乗者等により予め設定された設定情報とが含まれている場合は、当該設定情報が初期情報よりも優先して適用される。つまり、設定情報に基づいて、周辺装置21の状態が最適化される。
【0063】
上述と同様に、駆動制御装置6は、電源装置16から供給回路Lを通じて電力が供給された場合、周辺装置24を制御して、当該周辺装置24が有する検出部26により、始動開始装置11のPS操作時やON操作時における周辺装置24の状態(ここでは、窓の上下方向の位置)を検出する。そして、検出部26での検出結果であるデータCは、駆動制御装置6が有する一時記憶部7に記憶される。
【0064】
また、駆動制御装置6は、一時記憶部7に記憶されたデータC(検出値)と、当該駆動制御装置6と接続されている記憶部8に予め記憶されているデータD(設定値)とに差異があるか否かを検証する。
【0065】
そして、当該検証の結果、データCとデータDとに差異がある場合は、駆動制御装置6の制御の下、周辺装置24の駆動部25が駆動され、データDに基づいて、周辺装置24の状態が最適化される。最適化の一例として、例えば、記憶部8に記憶されている全閉位置まで窓(周辺装置24)が移動する。尚、この場合、データDに、周辺装置24の初期情報と、搭乗者等により予め設定された設定情報とが含まれている場合は、当該設定情報が初期情報よりも優先して適用される。つまり、設定情報に基づいて、周辺装置24の状態が最適化される。
【0066】
ここで、周知の通り、原動装置12におけるクランキング時、つまり、始動モータ13によるクランクシャフト14の回転開始時は、当該原動装置12における消費電力が大きくなるため、電源装置16から原動装置12への供給電圧が上昇する。これにより、電源装置16から各ECU(始動制御装置2、駆動制御装置3,6)への供給電圧が、一時的(例えば、1000分の1秒単位の時間)に低下する場合がある。
【0067】
そして、当該電圧低下により、電源装置16の電圧値が、各ECU(始動制御装置2、駆動制御装置3,6)の動作に要する最小電圧よりも低い電圧値となった場合、当該ECUは動作不能となる。特に、これらのECUの内、駆動制御装置3,6では、内蔵する一時記憶部4,7が揮発性記憶媒体から構成されているため、当該一時記憶部4,7にそれぞれ記憶中または記憶されているデータA,Cは、電力不足により消失する。
【0068】
このため、従来においては、揮発性の記憶媒体に記憶されているデータを、不揮発性の記憶媒体に記憶し直す、つまり、本実施形態における一時記憶部4,7に記憶されているデータA,Cを、記憶部5,8に記憶し直すことにより、当該データの保持を図っていたが、このデータの移行の際に、上述の電圧低下が生じた場合は、当該データが完全な状態で移行されない場合がある。
【0069】
また、始動開始装置11のPS操作中、つまり、車両200の各部に対して電力供給のみが行われている状態から、当該始動開始装置11のON操作を行うことが出来ないため、一旦、電力供給を停止するため操作を行わなければならない。これにより、始動開始装置11のPS操作後に一時記憶部4,7にそれぞれ記憶されたデータA,Cは消失する。
【0070】
よって、始動開始装置11のON操作時におけるデータA,Cを保持すべく、つまり、当該データA,Cの消失を防止すべく、図1に示す制御システム100では、後述する所定の制御動作を行う。この制御動作に関し、図2に示すフローチャートを用いて説明する。
【0071】
図2に示されるフローチャートのステップS1において、始動開始装置11がON操作(車両200を始動するための操作)された場合(ステップS1:YES)は、ステップS2へ進み、ON操作されていない場合(ステップS1:NO)は、次回に備えて本フローチャートを終了させる。
【0072】
ステップS2では、ステップS1でON操作された始動開始装置11から制御部1へ始動開始信号STが出力され、当該始動開始信号STに基づいて、制御部1が駆動制御装置3,6のみにクランキング信号CRを出力する。また、制御部1は、入力された始動開始信号STに基づいて、電源装置16を制御し、当該電源装置16から供給回路Lを通じて、車両200の各部に電力が供給される。
【0073】
ステップS3では、制御部1の制御の下、計時装置31による計時が開始され、ステップS4では、前述したデータA,Cに対するデータ記憶制御処理が開始される。
【0074】
ステップS4において、詳しくは、まず、ステップS2での電力供給開始に基づいて、駆動制御装置3,6は、周辺装置21(座席),周辺装置24(窓)の制御を開始する。
【0075】
続いて、各駆動制御装置3,6の制御の下、周辺装置21,24は、それぞれが有する検出部23,26により、始動開始装置11のON操作時における周辺装置21,24の状態を検出する。そして、検出部23,26による検出結果であるデータA,Cは、駆動制御装置3,6の制御の下、当該駆動制御装置3,6がそれぞれ有する一時記憶部4,7に記憶される。
【0076】
また、駆動制御装置3,6は、ステップS2において制御部1から出力されたクランキング信号CRに基づいて、一時記憶部4,7に記憶されたデータA,Cを、当該駆動制御装置3,6にそれぞれ接続されている記憶部5,8内の所定の記憶領域に記憶する。
【0077】
尚、この場合、一時記憶部4,7に記憶されているデータA,Cを複製して、当該複製されたデータA,Cを記憶部5,8内の所定の記憶領域に記憶してもよく、また、データA,Cを、一時記憶部4,7から記憶部5,8内の所定の記憶領域に移動させて記憶してもよい。さらに、駆動制御装置3,6により、データAとデータB、データCとデータDとにそれぞれ差異があるか否かを検証する場合は、データA,Cが記憶部5,8の所定の記憶領域に記憶された後に検証を行う。
【0078】
ステップS5では、計時装置31による計時時間が、予め設定された所定時間を超えたか否かが制御部1により検証され、当該検証の結果、所定時間を超えた場合(ステップS5:YES)は、ステップS6へ進み、所定時間を超えていない場合(ステップS5:NO)は、当該検証を再度行うべく、ステップS5の直前に戻る。
【0079】
尚、ステップS4にて行われるデータ記憶制御処理の平均所要時間は、事前の検証により算出されており、本実施例においては、上述の所定時間を、このデータ記憶制御処理の平均所要時間より十分に長い時間としている。
【0080】
ステップS6では、ステップS5での結果を受けて、制御部1が、始動制御装置2へクランキング信号CRを出力し、当該クランキング信号CRに基づいて、始動制御装置2の制御の下、原動装置12が作動し、本フローチャートが終了する。
【0081】
このように、上述した第1実施例においては、始動開始装置11がON操作された場合、当該始動開始装置11から始動開始信号STを出力し、当該始動開始信号STに基づいて、制御部1が、まず、駆動制御装置3,6のみにクランキング信号CRを出力するとともに、電源装置16を制御し、当該電源装置16から供給回路Lを通じて、車両200の各部に電力を供給する。また、計時装置31による計時も開始する。各駆動制御装置3,6は、電源装置16からの電力供給により、周辺装置21,24の制御を開始し、各周辺装置が有する検出部23,26により、始動開始装置11のON操作時における周辺装置21,24の状態を検出する。そして、検出結果であるデータA,Cは、駆動制御装置3,6がそれぞれ有する一時記憶部4,7に記憶される。また、駆動制御装置3,6は、制御部1から出力されたクランキング信号CRに基づいて、一時記憶部4,7に記憶されたデータA,Cを、当該駆動制御装置3,6にそれぞれ接続されている記憶部5,8内の所定の記憶領域に記憶する。尚、この場合、記憶部5,8内の所定の記憶領域に記憶されていたデータA,Cの旧データは、新データにより更新される。そして、計時装置31による計時時間が、予め設定された所定時間を超えることにより、制御部1が、始動制御装置2へクランキング信号CRを出力する。
【0082】
ここで、上述したように、本実施例においては、ステップS5での所定時間を、ステップS4でのデータ記憶制御処理の平均所要時間より十分に長い時間としているため、ステップS6で始動制御装置2によって原動装置12が駆動する前に、揮発性記憶媒体から成る一時記憶部4,7に記憶されたデータA,Cを、不揮発性記憶媒体から成る記憶部5,8に記憶することが出来る。このため、始動開始装置11のON操作時にECUの電圧が低下することに起因して、周辺装置21,24の状態を示すデータA,Cが消失するのを防止することが出来る。これにより、データA,C(検出値)とデータB,D(設定値)に基づく正確な制御動作が可能となる。
【0083】
図3は、本発明の実施形態である制御システム100および当該制御システム100を搭載した車両200の第2実施例を示したブロック図である。尚、図3において、図1と同一部分または対応する部分には、同一符号を付してある。
【0084】
図3では、図1における計時装置31が設けられていない。また、駆動制御装置3,6から制御部1へ、後述する記憶完了信号REが出力されるようになっている。その他の構成は、図1と同じである。
【0085】
図4は、図3に示す制御システム100による制御動作を示したフローチャートである。
【0086】
図4に示されるフローチャートのステップS11において、始動開始装置11がON操作された場合(ステップS11:YES)は、ステップS12へ進み、ON操作されていない場合(ステップS11:NO)は、次回に備えて本フローチャートを終了させる。
【0087】
ステップS12では、ステップS11でON操作された始動開始装置11から制御部1へ始動開始信号STが出力され、当該始動開始信号STに基づいて、制御部1が駆動制御装置3,6のみにクランキング信号CRを出力する。また、制御部1は、入力された始動開始信号STに基づいて、電源装置16を制御し、当該電源装置16から供給回路Lを通じて、車両200の各部に電力が供給される。
【0088】
ステップS13では、前述したデータA,Cに対するデータ記憶制御処理が開始される。
【0089】
ステップS13において、詳しくは、まず、ステップS12での電力供給開始に基づいて、駆動制御装置3,6は、周辺装置21,24の制御を開始する。
【0090】
続いて、各駆動制御装置3,6の制御の下、周辺装置21,24は、それぞれが有する検出部23,26により、始動開始装置11のON操作時における周辺装置21,24の状態を検出する。そして、検出部23,26による検出結果であるデータA,Cは、駆動制御装置3,6の制御の下、当該駆動制御装置3,6がそれぞれ有する一時記憶部4,7に記憶される。
【0091】
また、駆動制御装置3,6は、ステップS2において制御部1から出力されたクランキング信号CRに基づいて、一時記憶部4,7に記憶されたデータA,Cを、当該駆動制御装置3,6にそれぞれ接続されている記憶部5,8内の所定の記憶領域に記憶する。
【0092】
尚、この場合、一時記憶部4,7に記憶されているデータA,Cを複製して、当該複製されたデータA,Cを記憶部5,8内の所定の記憶領域に記憶してもよく、また、データA,Cを、一時記憶部4,7から記憶部5,8内の所定の記憶領域に移動させて記憶してもよい。さらに、駆動制御装置3,6により、データAとデータB、データCとデータDとにそれぞれ差異があるか否かを検証する場合は、データA,Cが記憶部5,8の所定の記憶領域に記憶された後に検証を行う。
【0093】
ステップS14では、ステップS13におけるデータ記憶制御処理が終了したか否かが検証され、当該検証の結果、データ記憶制御処理が終了している場合(ステップS14:YES)は、ステップS15へ進み、データ記憶制御処理が終了していない場合(ステップS14:NO)は、当該検証を再度行うべく、ステップS14の直前に戻る。
【0094】
詳しくは、データA,Cが、記憶部5,8内の所定の記憶領域に記憶されたか否かが、駆動制御装置3,6によりそれぞれ検証される。
【0095】
ステップS15では、ステップS14での検証結果を受けて、駆動制御装置3,6のそれぞれにおいて、記憶完了信号REが生成され、当該記憶完了信号REは、制御部1へ出力される。
【0096】
ステップS16では、駆動制御装置3,6のそれぞれから出力された記憶完了信号REが、制御部1に全て入力されたか否か、つまり、制御部1が当該記憶完了信号REを全受信したか否かが、当該制御部1により検証され、当該検証の結果、記憶完了信号REが全受信されている場合(ステップS16:YES)は、ステップS17へ進み、記憶完了信号REが全受信されていない場合(ステップS16:NO)は、当該検証を再度行うべく、ステップS16の直前に戻る。
【0097】
ステップS17では、ステップS16での検証結果を受けて、制御部1が、始動制御装置2へクランキング信号CRを出力し、当該クランキング信号CRに基づいて、始動制御装置2の制御の下、原動装置12が作動し、本フローチャートが終了する。
【0098】
このように、上述した第2実施例においては、始動開始装置11がON操作された場合、当該始動開始装置11から始動開始信号STを出力し、当該始動開始信号STに基づいて、制御部1が、まず、駆動制御装置3,6のみにクランキング信号CRを出力するとともに、電源装置16を制御し、当該電源装置16から供給回路Lを通じて、車両200の各部に電力を供給する。各駆動制御装置3,6は、電源装置16からの電力供給により、周辺装置21,24の制御を開始し、各周辺装置が有する検出部23,26により、始動開始装置11のON操作時における周辺装置21,24の状態を検出する。そして、検出結果であるデータA,Cは、駆動制御装置3,6がそれぞれ有する一時記憶部4,7に記憶される。また、駆動制御装置3,6は、制御部1から出力されたクランキング信号CRに基づいて、一時記憶部4,7に記憶されたデータA,Cを、当該駆動制御装置3,6にそれぞれ接続されている記憶部5,8内の所定の記憶領域に記憶する。尚、この場合、記憶部5,8内の所定の記憶領域に記憶されていたデータA,Cの旧データは、新データにより更新される。そして、データA,Cが、記憶部5,8内の所定の記憶領域に記憶されることにより、駆動制御装置3,6のそれぞれから制御部1へ、記憶完了信号REが出力され、当該記憶完了信号REに基づいて、制御部1が、始動制御装置2へクランキング信号CRを出力する。
【0099】
このため、始動制御装置2によって原動装置12が駆動する前に、揮発性記憶媒体から成る一時記憶部4,7に記憶されたデータA,Cを、不揮発性記憶媒体から成る記憶部5,8に記憶することが出来るため、始動開始装置11のON操作時にECUの電圧が低下することに起因して、周辺装置21,24の状態を示すデータA,Cが消失するのを防止することが出来る。また、データA,Cが、記憶部5,8内の所定記憶領域に記憶されたことを記憶完了信号REを以って確認したうえで、制御部1が、始動制御装置2へクランキング信号CRを出力するため、データA,Cの消失をより確実に防止することが出来る。これにより、データA,C(検出値)とデータB,D(設定値)に基づく正確な制御動作が可能となる。
【0100】
本発明では、以上述べた以外にも種々の実施形態を採用することができる。例えば、上記実施形態では、第1実施例におけるステップS4および第2実施例におけるステップS13にて、データA,Cを、駆動制御装置3,6の制御の下、一時記憶部4,7に記憶した後、記憶部5,8内の所定の記憶領域に記憶したが、これに限られず、各駆動制御装置3,6による検証の結果、データAとデータB、データCとデータDとにそれぞれ差異が無い場合は、データA,Cを、記憶部5,8内の所定の記憶領域に記憶しなくてもよい。
【0101】
また、上記実施形態では、記憶部5,8内の所定の記憶領域に記憶されたデータA,Cは、原動装置12におけるクランキング開始に起因して生じた電源装置16の電圧低下後も、同所定の記憶領域に記憶されたままであるが、これに限られず、制御部1により、当該電圧低下の終了を示す信号を生成し、この電圧低下終了信号を駆動制御装置3,6に出力してもよい。そして、駆動制御装置3,6は、入力された電圧低下終了信号に基づいて、記憶部5内の所定の記憶領域に記憶されたデータAとデータB、記憶部8内の所定の記憶領域に記憶されたデータCとデータDとにそれぞれ差異があるか否かを検証し、当該検証の結果、差異が無い場合は、データA,Cを、記憶部5,8内の所定の記憶領域から消去してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の実施形態である制御システムおよび当該制御システムを搭載した車両の第1実施例を示したブロック図である。
【図2】第1実施例の制御システムによる制御動作を示したフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態である制御システムおよび当該制御システムを搭載した車両の第2実施例を示したブロック図である。
【図4】第2実施例の制御システムによる制御動作を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0103】
1 制御部
2 始動制御装置
3,6 駆動制御装置
4,7 一時記憶部
5,8 記憶部
11 始動開始装置
16 電源装置
31 計時装置
100 制御システム
200 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を始動させる操作に基づいて、当該車両の始動開始のための始動開始信号を生成して出力する始動開始装置と、
前記車両の各部に電力を供給する電源装置と、
前記車両を駆動する原動装置に対し、前記始動開始信号に基づいて、当該原動装置を始動させるための始動指令信号を生成して出力する中央制御部と、
前記始動指令信号に基づいて前記原動装置の始動制御を行う始動制御部と、
前記車両を構成する周辺装置の駆動制御を行う駆動制御部と、
前記周辺装置の初期情報および/または予め設定された設定情報を含む第1データが記憶される記憶部と、
を備えた制御システムにおいて、
前記車両を始動させる操作が行われた場合に、当該操作時における前記周辺装置の状態を示す第2データを、前記記憶部内の所定の記憶領域に記憶した後に、前記始動制御部により前記原動装置の始動制御を行うデータ記憶制御手段を設けたことを特徴とする制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の制御システムにおいて、
前記データ記憶制御手段は、前記中央制御部から前記駆動制御部に前記始動指令信号が出力されると同時に計時を開始する計時手段を有し、
前記車両を始動させる操作に基づいて前記始動開始装置にて生成された前記始動開始信号が、前記中央制御部に入力された場合は、当該中央制御部から前記駆動制御部に前記始動指令信号を出力するとともに、当該中央制御部により前記電源装置を制御して前記車両の各部に電力を供給し、前記駆動制御部は、前記電源装置からの電力供給を受けて、前記周辺装置を駆動させて前記第2データを取得するとともに、前記中央制御部から入力された前記始動指令信号に基づいて、前記第2データを前記記憶部内の所定の記憶領域に記憶し、前記計時手段による計時時間が、予め設定された所定時間を超えた場合は、前記中央制御部から前記始動制御部に前記始動指令信号を出力し、当該始動指令信号に基づいて前記始動制御部が、前記原動装置を作動させることを特徴とする制御システム。
【請求項3】
請求項1に記載の制御システムにおいて、
前記データ記憶制御手段は、前記車両を始動させる操作に基づいて前記始動開始装置にて生成された前記始動開始信号が、前記中央制御部に入力された場合は、当該中央制御部から前記駆動制御部に前記始動指令信号を出力するとともに、当該中央制御部により前記電源装置を制御して前記車両の各部に電力を供給し、前記駆動制御部は、前記電源装置からの電力供給を受けて、前記周辺装置を駆動させて前記第2データを取得するとともに、前記中央制御部から入力された前記始動指令信号に基づいて、前記第2データを前記記憶部内の所定の記憶領域に記憶した後、当該第2データの記憶が完了したことを示す記憶完了信号を前記中央制御部に出力し、前記記憶完了信号が出力された場合は、前記中央制御部から前記始動制御部に前記始動指令信号を出力し、当該始動指令信号に基づいて前記始動制御部が、前記原動装置を作動させることを特徴とする制御システム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の制御システムにおいて、
前記駆動制御部に、前記第2データを一時的に記憶するための一時記憶部を更に設け、
前記データ記憶制御手段は、前記第2データを前記一時記憶部に記憶した後に、前記記憶部内の所定の記憶領域に対して、当該一時記憶部に記憶されている前記第2データを記憶することを特徴とする制御システム。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の制御システムにおいて、
前記中央制御部は、前記第1データと前記記憶部内の所定の記憶領域に記憶されている前記第2データとの差異を検証し、当該検証の結果、前記第1データと前記第2データとに差異がある場合は、前記駆動制御部の制御の下、前記周辺装置を駆動させて、当該周辺装置の状態を前記第1データに基づく状態まで変更することを特徴とする制御システム。
【請求項6】
請求項5に記載の制御システムにおいて、
前記周辺装置を駆動させて、当該周辺装置の状態を前記第1データに基づく状態まで変更する場合は、当該第1データにおいて、予め設定された前記周辺装置の設定情報が、前記周辺装置の初期情報よりも優先して適用されることを特徴とする制御システム。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の制御システムにおいて、
前記記憶部は、不揮発性の記憶媒体から構成されていることを特徴とする制御システム。
【請求項8】
請求項4ないし6のいずれかに記載の制御システムにおいて、
前記一時記憶部は、揮発性の記憶媒体から構成されていることを特徴とする制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−111218(P2010−111218A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−284678(P2008−284678)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】