説明

制御・監視信号リモート伝送システム

【課題】制御部に接続された親局と、複数の被制御装置に対応する複数の子局とを備え、有線の共通データ信号線を使用することなく伝送クロックを利用した信号伝送を可能とする制御・監視信号リモート伝送システムを提供する。
【解決手段】制御部に接続された親局と、被制御装置に接続された複数の子局と、親局側発信手段と、子局側発信手段と、親局側受信手段と、子局側受信手段とを備える。親局側発信手段は、親局から出力される伝送クロックの情報と制御データを含む第一無線信号を発する。子局側受信手段は、第一無線信号が対応する一連のパルス状信号の期間に相応する子局側パルス信号に基づいて制御データを含む擬似伝送クロック信号を生成する。子局は、擬似伝送クロック信号の制御下で制御データの値を抽出し、監視データ信号を擬似伝送クロック信号に重畳する。子局側発信手段は、監視データを含む第二無線信号を発する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御部に接続された親局と、複数の被制御装置に対応する複数の子局とを備え、有線でなく無線の共通データ信号線を使用して信号伝送を行なう制御・監視信号リモート伝送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
制御部と複数の被制御装置(制御部の指示に応じて動作する被制御部と制御部に情報を送信するセンサ部とで構成されるもの)を備える制御システムにおいて、配線の数を減らすことは、配線スペースの低減、配線工数の低減、装置製作工期の低減、或いは設備の小型化に繋がり、これによって、設備の信頼性向上、コスト低減などを図ることができる。
【0003】
そこで、上記のような制御システムにおいて配線の数を減らす試みがなされている。具体的には、電源を含むクロック信号の線路に、各クロックに対応する1つ(1ビット)の制御信号やセンサ信号(被制御装置からの入力信号)を重畳する信号伝送方式を採用することで、制御部と被制御装置の間の省配線が実現されている。
【0004】
また、この信号伝送方式において、制御部と被制御装置との間における信号伝送速度を高めるための手法が特開2002−271878号公報に開示されている。ここで開示されている制御・監視信号伝送システムは、制御部及び共通のデータ信号線に親局が接続され、複数の被制御装置に対応する複数の子局が、共通のデータ信号線及び対応する被制御装置に接続される構成となる。そして、制御部から被制御部への制御信号を所定のデューティ比の2値(電源電圧のレベルとこれ以外のレベル)信号とするとともに、センサ部から制御部への監視信号を電流信号の有無として電源電圧のレベルの立ち上がり時に検出する。これにより、電源を含むクロック信号に、制御部から被制御部への制御信号に加えて、センサ部から制御部への監視信号をも重畳することができる。従って、制御部と被制御部およびセンサ部間の双方向の高速な信号伝送を実現することができると共に、制御信号と監視信号とを共通のデータ信号線に出力し、かつ、これらを同時に双方向に伝送することができる。この結果、共通のデータ信号線において制御信号又は監視信号を伝送する期間を別々に設ける必要をなくすことができ、信号伝送の速度(レート)を従来の2倍に高速化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−271878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記制御・監視信号伝送システムで採用されている伝送方式において、各子局は、スタート信号の終了を起点とする伝送クロックを、アドレスデータとして順次カウントすることにより自局に対する制御信号を抽出するとともに、自局からの監視信号を重畳すべきタイミングを把握するものとなっている。そのため、親局と子局との間で、データ送受信の確認等のコマンドを授受する必要が無く、省配線下における信号伝送速度の高速化が可能となっている。
【0007】
つまり、伝送クロックは上記伝送方式の実現に必要不可欠な基本的要素となっている。ところが、システムが導入される施設の事情によっては、伝送クロックを伝送するための共通のデータ信号線でさえ敷設することが困難な場合がある。そして、そのように、共通のデータ信号線を敷設できない施設には、上記伝送方式を採用するシステムを導入することができなかった。
【0008】
そこで本発明は、制御部に接続された親局と、複数の被制御装置に対応する複数の子局とを備え、有線の共通データ信号線を使用することなく伝送クロックを利用した信号伝送を可能とする制御・監視信号リモート伝送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る制御・監視信号リモート伝送システムは、制御部に接続された親局と、被制御装置に接続された複数の子局と、親局側発信手段と、子局側発信手段と、親局側受信手段と、子局側受信手段とを備える。前記被制御装置は、前記制御部の出力指示に応じて動作する被制御部および/または前記制御部へ入力情報を伝えるセンサ部を有する。
前記親局は、所定の周期の伝送クロックに同期した所定のタイミング信号を発生するためのタイミング発生手段を有し、前記タイミング信号の制御下で、前記制御部からの制御データの値に応じて、制御データ信号として一連のパルス状信号を出力すると共に、前記タイミング信号の制御下で、前記伝送クロックの1周期毎に、前記一連のパルス状信号に重畳された監視データ信号のデータ値を抽出し、これを前記制御部に引き渡す。
前記親局側発信手段は、前記一連のパルス状信号の所定電位レベルが維持される期間に対応し、前記伝送クロックの情報と前記制御データを含む第一無線信号を前記子局側受信手段に向けて発する。
前記子局側受信手段は、前記第一無線信号が対応する前記一連のパルス状信号の前記期間に相応する子局側パルス信号を生成し、前記子局側パルス信号に基づいて、前記制御データを含む擬似伝送クロック信号を生成する。
前記子局の各々は、前記擬似伝送クロック信号の制御下で、前記擬似伝送クロック信号の1周期毎に、前記制御データの値を抽出して、自局に対応するデータを対応する前記被制御部に引き渡し、および/または、前記擬似伝送クロック信号の制御下で、前記擬似伝送クロック信号の1周期毎に、対応する前記センサ部の監視データの値に応じて、監視データ信号を前記擬似伝送クロック信号に重畳する。
前記子局側発信手段は、前記擬似伝送クロック信号の制御下で、前記擬似伝送クロック信号の所定電位レベルが維持される期間に対応し、前記センサ部の前期監視データを含む第二無線信号を前記親局側受信手段に向けて発する。
前記親局側受信手段は、前記第二無線信号に基づいて前記監視データを抽出し前記伝送クロック信号に重畳する。
【0010】
前記親局と、前記親局側送信手段と、前記親局側受信手段が第一共通データ信号線に接続され、前記子局と、前記子局側送信手段と、前記子局側受信手段が第二共通データ信号線に接続されていてもよい。
【0011】
前記第一無線信号及び前記第二無線信号が、光信号であってもよく、或は、電磁波信号であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る制御・監視信号リモート伝送システムでは、伝送クロックの情報と制御データを含む第一無線信号を子局側受信手段に向けて発するとともに、子局側受信手段で、第一無線信号が対応する一連のパルス状信号の所定電位レベルが維持される期間に相応する子局側パルス信号を生成し、この子局側パルス信号に基づいて、制御データを含む擬似伝送クロック信号を生成するため、親局側の伝送クロックの情報が、擬似伝送クロック信号として子局側に伝送されることになる。従って、有線の共通データ信号線を使用することなく、親局側の伝送クロックの情報を、子局側に伝送することが可能となる。
【0013】
一方、子局側からの監視データは、擬似伝送クロック信号に重畳されたうえで、擬似伝送クロック信号の所定電位レベルが維持される期間に対応する第二無線信号に含めた形で、親局側受信手段に向けて発せられる。そして、親局側受信手段は、第二無線信号に基づいて監視データを抽出するため、有線の共通データ信号線を使用することなく、親局側へ伝送することが可能となる。
【0014】
従って、制御部に接続された親局と、複数の被制御装置に対応する複数の子局とを備えながら、有線の共通データ信号線を使用することなく伝送クロックを利用した信号伝送が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る制御・監視信号リモート伝送システムの実施例における親局側変換器及び子局側変換器を示すブロック図である。
【図2】同システムにおいて授受される信号のタイムチャート図である。
【図3】同システムのシステム構成図である。
【図4】制御部および親局のブロック図である。
【図5】子局出力部と子局入力部および被制御装置の機能ブロック図である。
【図6】伝送クロック信号の基本信号を模式的に示すタイムチャートである。
【図7】信号データが重量された伝送クロック信号を模式的に示すタイムチャートである。
【図8】本発明に係る制御・監視信号リモート伝送システムの他の実施例における親局側変換器及び子局側変換器を示すブロック図である。
【図9】同システムにおいて授受される信号のタイムチャート図である。
【図10】本発明に係る制御・監視信号リモート伝送システムの更に他の実施例におけるシステム構成図である。
【図11】本発明に係る制御・監視信号リモート伝送システムの更に他の実施例におけるシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1〜7を参照しながら、本発明に係る制御・監視信号リモート伝送システムの実施例を説明する。
図3に示すように、この制御・監視信号リモート伝送システムは、制御部側システムとリモート側システムとで構成され、制御部1と複数の被制御装置4を備える。
【0017】
制御部1は、例えばプログラマブルコントローラ、コンピュータ等であり、制御部側システムに包含される。被制御装置4に対する制御データ13を送出する出力ユニット11と、被制御装置4からの監視(センサ信号)データ14を受け取る入力ユニット12を有し、これら出力ユニット11と入力ユニット12には親局2が接続されている。
【0018】
親局2は、図4に示すように、出力データ部22、タイミング発生部23、親局出力部24、親局入力部25、および入力データ部26を備える。そして、第一共通データ信号線DP、DNに接続され、制御部1の出力ユニット11から制御データ13として受けた並列(パラレル)データを制御信号として第一共通データ信号線DP、DNに送出するとともに、被制御装置4側から送出された入力データ信号を並列データに変換し、監視信号データ14として制御部1の入力ユニット12へ送出する。ここで、第一共通データ信号線DP、DNに送出される制御信号は、本発明における、一連のパルス状信号に相当するものであるが、以下、第一共通データ信号線DP、DNを流れる制御信号を伝送クロック信号というものとする。
【0019】
出力データ部22は、制御部1の出力ユニット12から制御データ13として受けた並列データをシリアルデータとして親局出力部24へ引き渡す。この制御データ13は、被制御装置4の被制御部41への動作指示を行うものである。
【0020】
タイミング発生部23は、発振回路(OSC)31、親局アドレス設定手段32、タイミング発生手段33からなり、OSC31を基にタイミング発生手段33が、このシステムのタイミングクロックを生成し親局出力部24に引き渡す。
【0021】
親局出力部24は、制御データ発生手段34とラインドライバ35からなり、出力データ部22から受けたデータと、タイミング発生部23から受けたタイミングクロックに基づき、ラインドライバ35を介して第一共通データ信号線DP、DNに一連のパルス状信号として伝送クロック信号を送出する。
【0022】
親局出力部24から第一共通データ信号線DP、DNに送出される伝送クロック信号のデータ値(制御データ)は、伝送クロック信号の1周期における電圧レベルの高い期間のパルス幅により表現される。伝送クロック信号は、図6に示すように、1周期の後半が高電位レベル(この実施例では+24V)と、前半が低電位レベル(この実施例では0Vまたは+12V)とされる。そして、高電位レベルの幅は、制御部1から入力される制御データ信号13の各データの値に応じて拡張され、この実施例では図6の破線で示す幅まで、すなわち、伝送クロック信号の1周期をt0とした時に(3/4)t0まで拡張される。ただし、その幅に制限はなく、伝送条件等により適宜調整すればよい。また、伝送クロック信号の1周期毎にはアドレスが割り当てられ、後述する子局5は、このアドレスをカウントする方式により、自局が受信すべき制御データを取り込む。そして、アドレスのカウントを行うための最初及び最後を決定するために、伝送クロック信号の最初と最後にはスタート信号(StartBit)及びエンド信号(図示は省略されている)が形成される。スタート信号は、伝送クロック信号の高電位レベルと同じ電位レベルであって、伝送クロック信号の1周期より長い信号とされる。一方、エンド信号は、伝送クロック信号の低電位レベルと同じレベルであって、伝送クロック信号の1周期より長くスタート信号より短い信号とされる。このエンド信号は、親局アドレス設定手段32に保持されている親局2に割り当てられたアドレスと一致した時点で形成される。
【0023】
図6は伝送クロック信号の基本信号を示すものであるが、データが重畳された場合の伝送クロック信号の一例を図7に示す。この実施例において、アドレス1番地(ADR1)、2番地(ADR2)、3番地(ADR3)及び4番地(ADR4)のそれぞれにおける伝送クロック信号のデータ値(制御データ)はそれぞれ“0”、“0”、“1”、“1”を表すものとなっている。
【0024】
親局入力部25は監視信号検出手段36と監視データ抽出手段37で構成され、入力データ部26へ入力データ信号を送出する。監視信号検出手段36は、第一共通データ信号線DP、DNを経由して後述の子局5から送出された監視信号を検出する。子局5から送出される監視信号のデータ値は、伝送クロック信号における1周期の前半(低電位レベルの期間)の電圧レベルで表わされており、スタート信号が送信された後、子局5の各々から順次受け取るものとなっている。監視信号のデータ(監視データ)は、タイミング発生手段33の信号に同期して監視データ抽出手段37で抽出され、直列の入力データ信号として入力データ部26に送出される。入力データ部26は、親局入力部25から受け取った直列の入力データ信号を並列(パラレル)データに変換し、監視信号データ14として制御部1の入力ユニット12へ送出する。
【0025】
被制御装置4は、リモート側システムに包含され、各々が、被制御部41と、この被制御部41を監視するセンサ部42とを有している。被制御部41は、被制御装置4を構成する種々の部品、例えば、アクチュエータ、(ステッピング)モータ、ソレノイド、電磁弁、リレー、サイリスタ、ランプ等からなる。一方、センサ部42は、対応する被制御部に応じて選択され、例えば、リードスイッチ、マイクロスイッチ、押釦スイッチ、光センサ等からなり、オン、オフの状態(2値信号)を出力する。
【0026】
被制御装置4の各々には、また、子局5が接続されており、この子局5を介して、第二共通データ信号線DPm、DNmに接続されている。なお、第一共通データ信号線DP、DNと第二共通データ信号線DPm、DNmは、図3に示すように、有線接続されておらず、各信号線には親局側変換器7と子局側変換器8が設けられている。
【0027】
子局5は、子局出力部50と子局入力部60を備え、第二共通データ信号線DPm、DNmに接続され、センサ部42から受けた信号を監視信号として第二共通データ信号線DPm、DNmに送出するとともに、第二共通データ信号線DPm、DNm上で伝送される擬似伝送クロック信号から必要な情報を抽出し被制御部41へ送出する。
【0028】
なお、擬似伝送クロック信号は、親局側の伝送クロック信号と同じ伝送クロックの情報と制御データを含み、図6および図7に示す伝送クロック信号と同じ構成をなす信号である。そのため、以下において擬似伝送クロック信号を説明する場合、図6および図7は、擬似伝送クロック信号を示すものとしてそのまま参照するものとする。擬似伝送クロック信号の生成手順は後述する。
【0029】
子局出力部50は、図5に示すように、ラインレシーバ52、制御データ信号抽出手段53、子局アドレス設定手段54、アドレス抽出手段55、出力データ部56を備える。
【0030】
入力回路であるラインレシーバ52は、第二共通データ信号線DPm、DNmの上の擬似伝送クロック信号を取り込んで制御データ信号抽出手段53に出力する。制御データ信号抽出手段53は、擬似伝送クロック信号のデータ(制御データ)を抽出して、アドレス抽出手段55および出力データ部56に出力する。アドレス抽出手段55は、子局アドレス設定手段54に保持された自局アドレスと一致するアドレスを抽出し、出力データ部56に出力する。出力データ部56は、アドレス抽出手段55からアドレスが入力されると、第二共通データ信号線DPm、DNm上の擬似伝送クロック信号におけるその時点の制御データを、並列の信号として対応する被制御部41に出力する。すなわち、出力データ部56は、擬似伝送クロック信号についての直列/並列変換を行う。
【0031】
一方、子局入力部60は、図5に示すように、ラインレシーバ62、制御データ信号抽出手段63、子局アドレス設定手段64、アドレス抽出手段65、入力データ部66、監視データ信号発生手段67、ラインドライバ68を備える。
【0032】
ラインレシーバ62、制御データ信号抽出63、アドレス設定手段64、およびアドレス抽出手段65は、子局出力部50のラインレシーバ52、制御データ信号抽出53、アドレス設定手段54、およびアドレス抽出手段55とほぼ同一の構成であり、ほぼ同一の動作をするため、その説明は省略する。
【0033】
入力データ部66は、対応するセンサ部42から入力されたデータを保持し、アドレス抽出手段64からアドレスが入力されると、保持しているデータを、予め定められた順に直列の信号として監視データ信号発生手段67に出力する。即ち、入力データ部66は、監視信号についての並列/直列変換を行う。
【0034】
監視データ信号発生手段67は、入力データ部66からのデータの値に応じて、監視データ信号を出力する。監視データ信号発生手段67の出力する監視データ信号は、出力回路であるラインドライバ68により、第二共通データ信号線DPm、DNmの上に出力される。すなわち、擬似伝送クロック信号の制御下で、対応するセンサ部42の値に応じて、監視データ信号を形成し、これを監視信号のデータの値として、擬似伝送クロック信号である直列のパルス状電圧信号における所定の位置に重畳する。
【0035】
このとき監視データ信号のデータ値は、伝送信号の1周期の前半(低電位レベルの期間)における電圧レベルとして表現される。この実施例では、監視データ信号のデータ値が「1」の場合には電圧が0Vとされ、「0」の場合には擬似伝送クロック信号の高電位レベルの半分(この実施例では+12V)とされている。従って、例えば、図7に示す信号のアドレス1番地(ADR1)、2番地(ADR2)、3番地(ADR3)及び4番地(ADR4)のそれぞれにおける監視信号のデータ値(監視データ)はそれぞれ“0”、“1”、“0”、“1”を表すことになる。
【0036】
このように、監視データ信号は、第二共通データ信号線DPm、DNm上の擬似伝送クロック信号の自局に対応する位置に重畳される。すなわち、制御信号のデータ値と、擬似伝送クロック信号におけるアドレスが同一となる監視信号のデータの値が重畳されることになる。
【0037】
親局側変換器7と子局側変換機8は、図1に示すように、それぞれ、親局側送受信回路79と子局側送受信回路89を備え、親局側送受信回路79と子局側送受信回路89は、それぞれ、送信回路70と受信回路80とで構成される。親局側送受信回路79の送信回路70と受信回路80が、本発明の親局側送信手段と親局側受信手段に相当する。また、子局側送受信回路89の送信回路70と受信回路80が、本発明の子局側送信手段と子局側受信手段に相当する。
【0038】
送信回路70は、伝送クロック信号または擬似伝送クロック信号のクロック周波数よりも高い周波数発振を行う発振回路(OSC)71、アンドゲート回路72、アンプ73、および発光素子75を有する。そして、送信回路70への入力は、アンドゲート回路72に入力され、アンドゲート回路72には、また、OSC71の出力が入力される。なお、親局側送受信回路79において、送信回路70への入力は、後述する受信回路80のアンプ82にも入力される。
【0039】
送信回路70に対する入力は、親局側送受信回路79では、第一共通データ信号線DP、DNの間の電位差を分割抵抗R1、R2で分割して得られた分割信号となっている。この分割信号が所定値以上、すなわち、伝送クロック信号の高電位期間であれば、OSC71からの入力を受けたタイミングでアンドゲート回路72からの出力が得られる。アンドゲート回路72の出力はアンプ73に入力され、増幅され、変調信号が出力される。この変調信号の出力Ftは、例えば、第一共通データ信号線DP、DN上を伝送される伝送クロック信号が、図2の最上段に示すものである場合(以下、送信回路70と受信回路80の各部出力信号の説明において同じ)、図2のFt段に示すように、伝送クロック信号の高電位レベル期間にのみ、0Vと+24Vの間の電圧領域で動作するものとなる。出力Ftは、発光素子75に入力され、伝送クロック信号の高電位期間に対応した、伝送クロック信号の周波数よりも高い周波数の第一光変調信号(本発明の第一無線信号に相当)が出力されることになる。
【0040】
一方、子局側送受信回路89の送信回路70に対する入力は、第二共通データ信号線DPm、DNm上に伝送される擬似伝送クロック信号の前半(低電位レベルの期間)が所定電位となる場合に、その期間に対応する信号となっている。すなわち、監視信号抽出手段86の出力Smである。より具体的には、擬似伝送クロック信号における低電位レベルの期間の電圧レベルが0V(監視信号のデータ値が”1”)であれば、OSC71からの入力を受けたタイミングでアンドゲート回路72からの出力が得られる。アンドゲート回路72の出力Smはアンプ73に入力され、増幅され、変調信号が出力される。この変調信号Stは、図2のSt段に示すように、擬似伝送クロック信号の0Vレベル期間に0Vと+24Vの間の電圧領域で動作するものとなり、発光素子75に入力される。そして、擬似伝送クロック信号の低電位レベルの期間に対応した、擬似伝送クロック信号の周波数よりも高い周波数の第二光変調信号(本発明の第二無線信号に相当)が出力されることになる。
【0041】
なお、OSC1の発振周波数は、親局側送受信回路79と子局側送受信回路89とで異なるものとされている。そのため、アンプ73からの出力は、親局側送受信回路79の変調信号Ftと子局側送受信回路89の変調信号Stとで異なるものとなり、従って、第一光変調信号と第二光変調信号の周波数も異なるものとなる。
【0042】
受信回路80は、受光素子81、アンプ82、整流回路83、比較器84、およびフィルタ87を備える。送信回路70から発信された光変調信号は、受光素子81を介して電気信号に変換され、フィルタ87を介して所望の周波数の変調信号のみがアンプ82に入力され、増幅される。具体的には、子局側送受信回路89のアンプ82に、第一光変調信号に相応する変調信号が入力され、図2のFr2段に示すように、出力Ftと同じレベルまで増幅される。また、親局側送受信回路79の(スリーステート)アンプ82に、第二光変調信号に相応する変調信号が入力され、図2のSr2段に示すように、出力Stと同じレベルまで増幅される。なお、この実施例では、第一光変調信号の周波数が、第二光変調信号の周波数よりも低いものとされているため、親局側送受信回路79のフィルタ87にはハイパスフィルタが、子局側送受信回路89のフィルタ87にはローパスフィルタが採用されている。
【0043】
アンプ82の出力Fr2、Sr2は、整流回路83に入力される。整流回路83では、増幅された変調信号から直流パルス信号が生成される。具体的には、子局側送受信回路89の整流回路83からの出力Fr3は、図2のFr3段に示すように、伝送クロック信号の高電位レベル期間に高電位レベルとなる直流パルス信号が生成される。また、親局側送受信回路79の整流回路83からの出力Sr3は、図2のSr3段に示すように、伝送クロック信号の0Vレベル期間に高電位レベルをとる直流パルス信号となる。
【0044】
整流回路83の出力Fr3、Sr3は、比較器84に入力され、所定電圧側のみが出力される。すなわち、親局側送受信回路79では、伝送クロック信号において監視データを表す期間に相応するパルス信号Ts(図2のTs段参照)が、一方、子局側送受信回路89では、伝送クロック信号において制御データを表す期間に相応するパルス信号Pm(本発明の子局側パルス信号に相当、図2のPm段参照)が出力されることになる。
【0045】
子局側送受信回路89の比較器84の出力Pmは、ラインドライバ85を介し、擬似伝送クロック信号として、第二共通データ信号線DPm、DNmに送出される。このラインドライバ85は、前記ラインドライバ35と同様に機能するものである。擬似伝送クロック信号は、第二共通データ信号線DPm、DNmに接続された子局5における伝送制御の基となる。
【0046】
一方、親局側送受信回路79の比較器84の出力Tsは、トランジスタTRのベースに入力される。そして、監視信号のデータ値が”1”の場合に、トランジスタTRがONとなり、電流が流れることで電圧が降下し、電圧レベルが0Vとなり、その信号が第一共通データ信号線DP、DN上に伝送される。すなわち、図2に示すように、第二共通データ信号線DPm、DNm上に伝送される監視信号と同じ監視信号が、第一共通データ信号線DP、DN上に伝送されることになる。
【0047】
第一光変調信号及び第二光変調信号は、そのどちらか或は双方を直流パルス信号とすることも可能である。図8および図9に、第一光変調信号を直流パルス信号とした場合の実施例を示す。なお、図1〜7に示す実施例(以下、第一実施例という)と実質的に同じ部分には同符号を付し、その説明を省略する。
【0048】
この実施例は、第一実施例における親局側送受信回路79および子局側送受信回路89の送信回路70および受信回路80を変更したものであるが、その他のシステム構成は同じものとなっている。
【0049】
親局側送受信回路79の送信回路70aは、バッファ回路76と発光素子75とで構成されている。バッファ回路76に対し、第一共通データ信号線DP、DNの間の電位差を分割抵抗R1、R2で分割して得られた分割信号が入力され、その出力が発光素子75の入力となっている。発光素子75の入力信号Ftは、図8のFt段に示すように、伝送クロック信号の高電位レベルが維持される期間に途切れることの無い信号、すなわち直流パルス信号であり、発光素子75から発せられる光信号も同様のものとなる。以下、この実施例において、親局側送受信回路79の送信回路70aから発せられる光信号を第一光直流信号(本発明の第一無線信号に相当)とする。
【0050】
一方、子局側送受信回路89の送信回路70bは、擬似伝送クロック信号のクロック周波数よりも高い周波数発振を行う発振回路(OSC)71、アンドゲート回路72、および発光素子75で構成されている。アンドゲート回路72には、監視信号抽出手段86の出力Smと、発振回路71の出力fmが入力される。従って、子局側パルス信号或は擬似伝送クロック信号の低電位レベルの期間であって監視信号抽出手段86の出力がある場合に、図8のSt段に示す変調信号が、アンドゲート回路72から出力される。アンドゲート回路72からの出力Stは、発光素子75に入力され、第一実施例と同様の第二光変調信号が発せられる。
【0051】
子局側送受信回路89の受信回路80bは、アンプ82、比較器84、受光素子81、およびオンディレイタイマ88で構成される。送信回路70aから送信された第一光直流信号は、受光素子81を介して電気信号に変換され、アンプ82に入力され、増幅される。アンプ82の出力は、比較器84に入力され所定電圧側のみの出力とされ、更にオンディレイタイマ88に入力される。オンディレイタイマ88では、立上りのタイミングが所定時間だけ遅延されるため、この遅延時間を第二光変調信号の周期よりも長くすることで、発信回路70bから回り込んで入力した第二光変調信号が子局側パルス信号Pmに、すなわち擬似伝送クロック信号に影響を及ぼすことを防ぐことができる。
【0052】
親局側送受信回路79の受信回路80aは、第一実施例における受信回路80からフィルタ87を取り除いたものである。(スリーステート)アンプ82では、伝送クロック信号の低電位レベル期間にイネーブルとなるため、伝送クロック信号の低電位レベル期間の変調信号のみが増幅される。その他の動作は、第一実施例における親局側送受信回路79の受信回路80と同じであるため、説明を省略する。
【0053】
なお、上記第一実施例、および図8〜9に示す実施例(以下第二実施例という)では、被制御装置4の全てがリモート側システムに包含されているが、制御部側システムにも被制御装置4を接続することは可能である。この場合、図10に示すように、制御部側システムの被制御装置4は、第一共通データ信号線DP、DNに子局5を介して接続し、第一共通データ信号線DP、DN上の伝送クロック信号に基づいて制御すればよい。
【0054】
また、上記第一実施例、第二実施例、および図10に示す実施例では、親局2および子局5は第一共通データ信号線DP、DN、或は第二共通データ信号線DPm、DNmに接続されているが、これらデータ信号線DP、DN、DPm、DNmを省略することも可能である。その場合、図11に示すように、親局2、および各子局5に対し、親局側変換器7および子局側変換器8を直接接続、または搭載させればよい。
【0055】
更に、上記いずれの実施例においても、第一無線信号および第二無線信号として、光信号が採用されているが、これを電磁波信号としてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 制御部
2 親局
4 被制御装置
5 子局
7 親局側変換器
8 子局側変換器
11 出力ユニット
12 入力ユニット
13 制御信号データ
14 監視信号データ
22 出力データ部
23 タイミング発生部
24 親局出力部
25 親局入力部
26 入力データ部
31 発振回路
32 親局アドレス設定手段
33 タイミング発生手段
34 制御データ発生手段
35、68、85 ラインドライバ
36 監視信号検出手段
37 監視データ抽出手段
41 被制御部
42 センサ部
50 子局出力部
52、62 ラインレシーバ
53、63 制御データ信号抽出手段
54、64 子局アドレス設定手段
55、65 アドレス抽出手段
60 子局入力部
66 入力データ部
67 監視データ信号発生手段
70、70a、70b 送信回路
71 発振回路
72 アンドゲート回路
73、82 アンプ
76 バッファ回路
75 発光素子
79 親局側送受信回路
80、80a、80b 受信回路
81 受光素子
83 整流回路
84 比較器
86 監視信号抽出手段
87 フィルター
89 子局側送受信回路
DP、DN 第一共通データ信号線
DPm、DNm 第二共通データ信号線
R1、R2、R3 抵抗


【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部に接続された親局と、被制御装置に接続された複数の子局と、親局側送信手段と、子局側送信手段と、親局側受信手段と、子局側受信手段とを備え、
前記被制御装置は、前記制御部の出力指示に応じて動作する被制御部および/または前記制御部へ入力情報を伝えるセンサ部を有し、
前記親局は、所定の周期の伝送クロックに同期した所定のタイミング信号を発生するためのタイミング発生手段を有し、前記タイミング信号の制御下で、前記制御部からの制御データの値に応じて、制御データ信号として一連のパルス状信号を出力すると共に、前記タイミング信号の制御下で、前記伝送クロックの1周期毎に、前記一連のパルス状信号に重畳された監視データ信号のデータ値を抽出し、これを前記制御部に引き渡し、
前記親局側送信手段は、前記一連のパルス状信号の所定電位レベルが維持される期間に対応し、前記伝送クロックの情報と前記制御データを含む第一無線信号を前記子局側受信手段に向けて発し、
前記子局側受信手段は、前記第一無線信号が対応する前記一連のパルス状信号の前記期間に相応する子局側パルス信号を生成し、前記子局側パルス信号に基づいて、前記制御データを含む擬似伝送クロック信号を生成し、
前記子局の各々は、前記擬似伝送クロック信号の制御下で、前記擬似伝送クロック信号の1周期毎に、前記制御データの値を抽出して、自局に対応するデータを対応する前記被制御部に引き渡し、および/または、前記擬似伝送クロック信号の制御下で、前記擬似伝送クロック信号の1周期毎に、対応する前記センサ部の監視データの値に応じて、監視データ信号を前記擬似伝送クロック信号に重畳し、
前記子局側送信手段は、前記擬似伝送クロック信号の制御下で、前記擬似伝送クロック信号の所定電位レベルが維持される期間に対応し、前記センサ部の前記監視データを含む第二無線信号を前記親局側受信手段に向けて発し、
前記親局側送信手段は、前記第二無線信号に基づいて前記監視データを抽出し前記伝送クロック信号に重畳することを特徴とする制御・監視信号リモート伝送システム。
【請求項2】
前記親局と、前記親局側送信手段と、前記親局側受信手段が第一共通データ信号線に接続され、前記子局と、前記子局側送信手段と、前記子局側受信手段が第二共通データ信号線に接続されている請求項1に記載の制御・監視信号リモート伝送システム。
【請求項3】
前記第一無線信号及び前記第二無線信号が光信号である請求項1または2に記載の制御・監視信号リモート伝送システム。
【請求項4】
前記第一無線信号及び前記第二無線信号が電磁波信号である請求項1または2に記載の制御・監視信号リモート伝送システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−4624(P2012−4624A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134900(P2010−134900)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(501194514)株式会社 エニイワイヤ (37)
【Fターム(参考)】