説明

制御可能なピペット

本発明は、モータによってシリンダ内で駆動されるピストンと、いくつかのステップからなる所定のピペット機能の下で、ピストンを移動させることができる制御システムと、所望のピペット機能を選択するための設定キー(7,8)と、押圧されると、機能ステップを作動させるスイッチ(1)と、ディスプレイ(3)とを含む、電子制御可能なピペットに関する。前記制御システムは、動作途中で選択された機能に変更できる変更ファンクションを含む。前記変更ファンクションが操作されると、これがディスプレイ上に表示され、さらに、所定の設定キーを押すことにより、変更動作が実行される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の適量投与に使用するために、モータ駆動のピストン、制御システム、及びこの制御システムに関連するユーザーインターフェースを含む電子式ピペットに関する。本発明は、特に、制御システム及びユーザーインターフェースの作動に関する。
【背景技術】
【0002】
液体投与のために用いられるピペットは、シリンダ内で移動可能なピストンを有し、液体を、選択された適量分配機能に従って取り入れ、そしてシリンダセットに結合された先端部から液体を分配するのに役立つ。液体の容量は、通常調整可能である。また、電子式ピペットは、電気モータ及びこれに関連する制御システムによってピストンを作動させる。電子式ピペットは、制御システムとこれに関連する、設定用のユーザーインターフェースを有し、この設定は、容量及び他の必要なピペット機能及び動作を実行するための命令を与えるためである。ユーザーインターフェースは、このために必要な重要なキーとなる。ユーザーインターフェースは、1つのディスプレイであり、これにより、容量及び他の必要なデータを表示することができる。ディスプレイは、複数のキーによって設定用ファンクション及び入力の選択を可能にするメニューを表示する。所望のファンクションが選択され、そして、容量及び他の設定が入力されると、動作スイッチが自動的に押されて、全体の機能が完了するまで、次のファンクションのステップが実行される。
【0003】
ピペット動作のファンクションは、ダイレクト、リバース、ステップ、及び混合の各動作からなる。ダイレクトピペット機能は、ピペットへの所望量の吸引と、その適量の排出を含む。リバースピペット機能は、所望量が分配された後に、ピペットに所望より多い容量を吸引することを含む。ステップピペット機能は、ある容量をピペットに吸引するもので、この容量を複数の小さい部分に分配する。混合ピペット機能は、ある液体を有する受入れ容器に所定量の液体を排出するもので、ピペット先端部が液体表面下に位置し、ピストンを往復運動させて、液体の排出時に、受入れ容器内の液体と混合させる。
【0004】
このようなピペットとしては、たとえば、サーモ エレクトロン オイが製造業者である、フィンピペット(finnpipette) バイオコントロール(登録商標「BioControl」)がある。
【0005】
いくつかのピペットは、ステップ機能を中止させるための個別のボタンを有する。このボタンは、投与中、押圧され、ピペット内の全体の液量は、1つのシングルパス内に分配される(即ち、ステップピペット機能として小さいな部分ではない。)。いくつかのピペットにおいて、ステップ機能は、動作スイッチを十分長く押すことによって中断することができる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
独立請求項に定義付けされた制御可能な電子式ピペット及びその制御システムが、今回発明された。他の請求項には、本発明のいくつかの実施形態が開示されている。
【0007】
本発明によれば、少なくともいくつかのピペット機能が、そのピペット動作中に、特定の設定キーを押すことによって変更できる。このキーによって発生した機能は、ピペット機能中に変更される。ある機能が変更されると、変更オプションは、ディスプレイ上に示される。テキスト制御によって、この機能を中断することができる。
【0008】
ピペット機能の変更は、たとえば、キャンセル動作、別の機能への切換動作、または補助機能の追加動作を含むことが可能である。
【0009】
本発明によれば、単純で簡単なテキスト制御が、より用途が広いピペット機能を可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
添付の図面は、本発明の以下の記載に関連し、本発明のいくつかの実施形態に関係する。
【0011】
本発明の電子式ピペットにおいて、ピストンは、モータによって作動する。このピペットのための制御システムは、設定用キーを有するユーザーインターフェース、動作スイッチ、及びディスプレイを含む。
【0012】
ディスプレイは、たとえば、容量及び他の必要なデータを示す。このディスプレイは、また設定用キーによって制御システムにデータ入力を与えるメニューを示す。このデータは、たとえば、所望のピペット動作及びこのために用いる設定を選択する。
【0013】
各ピペット機能は、与えられた手順を形成する連続的なステップからなる。ステップの最終では、命令によって、通常動作スイッチを押すことにより、その機能を停止させかつ再開させる。種々の機能は、たとえば、以下のものを含む。
【0014】
−ダイレクトピペット動作 次に続く分配すべき所望の容量の吸引を含む。
−リバースピペット動作 所望の容量より多い容量の吸引及び所望容量の分配を含む。
−ステップピペット動作 吸引された容量を、複数の所望サイズの小さい部分に分配することを含む。
−希釈機能 いくつかの液体をピペット内に吸引することを含む。
−ダイレクトピペット動作及び混合機能 ピペットの先端部が、液体表面下に保持され、液体が分配され、そしていくつかの連続的な吸引と分配の動作がピストンを用いて実行される。
−ダイレクトピペット動作と計算機能 ピペット動作の計算が行われることを含む。
−吸引機能 いくつかの連続した容量をピペット内に吸引することを可能にする。
−マニュアル機能 制御ボタンが押されている限り、ピペット内に液体が吸引されることを含む。この機能は、たとえば、容量を測定するために用いることができる。
【0015】
所望容量が選択され、かつこの容量と他の設定値が入力されたとき、動作スイッチを押すことによって、機能が開始される。
【0016】
本発明によれば、与えられた設定キーを押すことによって、選択された機能を動作中に中断することができる。その機能が変更されるとき、ディスプレイは、変更オプションを示し、キーによってその変更が成される。この変更は、テキスト制御の下で実行される。この指示は、特定の設定キーにおいてテキストとして示されることが望ましい。言い換えれば、設定キーに関係した機能は、動作の工程中に変更される。
【0017】
機能の変更は、たとえば、キャンセル動作、別の機能への切換動作、または補助機能の追加動作を含むことが可能である。
【0018】
他の面において、ピペット構造及び制御システムは、たとえば、フィンランド特許第96007号(対応するヨーロッパ特許第576967号第)に開示されているように、同一の原理で作動させることができる。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態が、以下で説明される。
図1は、電気モータで駆動されるピペットを示す。この制御システムのユーザーインターフェースは、動作スイッチ1、設定用キーボード2、及びディスプレイ3を含んでいる。
【0020】
動作スイッチ1は、本体に対して回転可能なホイール4に配置されている。これにより、使用者は、動作スイッチ1の位置を調整することができる。チップ取外しスリーブ5の押しボタン6は、ピペット本体内の、スイッチの反対側に設けられる。チップは、手動操作により取外される。チップは、レバー機構によって解放することが望ましい。このレバー機構は、たとえば、フィンランド特許第92374号(対応するヨーロッパ特許第566939号)に記載のように、ピペット本体に対してホイールを回転させることにより、チップリムーバーを動かす。
【0021】
ディスプレイ3は、ピペットの頂部に配置されており、この位置は、突出部の上部表面上に設けたチップ取外しスリーブの押しボタンから上方斜めに離れた位置にある。電源は、突出部内に設けられている。設定用キーボード2は、本体の側面の端部にあって、突出部の上部表面上に配置される。ディスプレイは、たとえば、ピペットの容量及び使用時の機能、更に現在の機能ステップ等の使用される各時間の間、設定に関する必要な情報を示す。また、ディスプレイは、設定を変更できるように、各状況において、異なるメニューを示す。
【0022】
ピペットの設定は、設定用キーボード2によって変更することができる。この設定キーは、右手選択キー7、左手選択キー8及びバイファンクション的なスキャンキー(アローキー)9である。電流は、いずれかのキーを押すことにより切換えられる。設定ステップに従って、選択キーは、使用者が、メニュー階層の前後いずれかの階層への移動、または選択された機能の使用を開始することを可能にする。設定ステップに従って、スキャンキーは、使用者が、ディスプレイ上の選択、またはディスプレイ上のキャラクタ(番号又は書き込み等)の変更を可能にする。この選択機能により、使用者は、メニュー内の所望位置に移動でき、かつ複数の選択キーによってその位置を確認することができる。変更機能は、キャラクタ文字列を走査し、その文字列の所望キャラクタが選択される。複数のキャラクタにより、機能(たとえば、容量、ピストンストローク速度)の設定を行うことができ、即ち、キャラクタは、与える情報に限定される。
【0023】
図2は、ピペット機能の概略図である。制御システムのコア部は、メモリ11に連結された中央処理ユニット(CPU)10である。このCPUは、ファンクションキー、即ち、作動スイッチ1と設定用キーボード2によって作動する。CPUは、ピストンセンサ12によってピストン位置の情報を受け入れる。CPUは、ピストンを作動させるために必要な命令をドライバー13に与え、ドライバーは、ステップモータ14を制御する。複数のファンクションは、ディスプレイ3(液晶ディスプレイLCD)上に表示される。いくつかのファンクションは、ブザー15によって音響信号で示される。更に、CPUは、シリアルインターフェース16に接続されており、このインターフェースは、CPUに対するデータの入出力を可能にする。充電可能な3.7Vのリチウムイオン電池17が電圧源として作動する。この電池は、電圧制御および再生回路18を含む。電池は、スタンド21内のチャージャー20を用いる端子19で充電される。また、この充電は、CPUによって制御される。
【0024】
図3は、動作中に、基本的なピペット動作に混合動作をどのように組み込むかを説明している。使用者は、PIPETファンクション(ダイレクト機能)を選択し、容量(図中では、500マイクロリットル)を選択キー7,8及びスキャンキー9を用いることにより主メニュー内のMENUを介して設定する。包含させるかを例示する。ピストンのストローク速度(この場合、5)は、SPEEDメニューを介して設定され、この速度は、ディスプレイ3の左上側コーナー部に表示される。この左上側コーナー部には、ピストンが、次のステップで上昇及び下降するかどうかを示す方向の矢印がある。図面の右側には、ピストン位置を示すバーがある。液体の吸引は、位置Bで開始され、そして、ピストンは、所望の容量V(最大容量Vmax)にまで上方に移動する。ダイレクトピペット動作では、ピストンは、液体排出中、基本位置の下方から位置Aまで駆動される。リバースピペット動作では、液体は、位置Aから吸引が開始される。混合ファンクションでは、液体は、位置Bと位置Vとの間で往復運動を実行しながら、分配される。
【0025】
図3の第1段階では、ピストンは、基本位置Bにあり、動作スイッチ1(P)が押されると、ピストンは、位置Vに移動する。選択キーの動作は、一次的に変化する。左手キーがターンオフされ、そしてテキストMIXが右側キーに現れる。右側選択キーが押されると、混合ファンクションは、液体排出動作に付加的に結合することができる。混合ファンクションが作動すると、次のステップ、即ち、液体排出が動作スイッチによって開始され、ピストンは、スイッチが押される限り、撹拌運動を実行する。
【0026】
図4の第1ステップでは、使用者は、メニュー内の選択キー7,8及びスキャンキー9を用いて、ファンクションSTEPPER(ステップ機能)を選択し、次に、各々51マイクロリットルの投与量3になるようにSTEPPERファンクションを設定する。初期の位置では、ピストンは、最下側位置Aにある。液体分配中、ピストンは、位置Vまで移動し、その距離BVは、投与すべき全体の容量に等しい。
【0027】
このファンクションは、動作スイッチ1(P)を押すことによって作動し、ピストンを位置Vまで移動する。同時に、ディスプレイ3は、左側選択キー8で現れるテキストCANCELに変化する。使用者がこのキーを押すと、ステップファンクションは、中断され、そして、使用者が動作スイッチを押すと、ピストンは、移動して位置Aに戻り、液体の全量が分配される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のピペットを示す図である。
【図2】ピペットの動作をチャート図として示す図である。
【図3】どのようにして混合が動作中に、基本的なピペット動作と結合されるかを示す図である。
【図4】動作中に、どのようにステップ機能を中断することができるかを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータによってシリンダ内で駆動されるピストンと、いくつかのステップからなる所定のピペット機能の下で、ピストンを移動させることができる制御システムと、所望のピペット機能及びこれに関係した設定を選択するための設定キー(7,8,9)と、押圧されると、機能ステップを作動させるスイッチ(1)と、ディスプレイ(3)と、を含む電子制御可能なピペットであって、
前記制御システムが、動作途中で選択された機能に変更できる変更ファンクションを含み、
前記変更ファンクションが操作されると、所定の設定キーの動作が変更し、
この設定キーの変更した動作がディスプレイ上に表示され、そして、この変更動作が、前記設定キーを押すことにより実行されることを特徴とするピペット。
【請求項2】
前記変更ファンクションは、選択されたピペット機能をキャンセルし、前記選択されたピペット機能を別の機能に切換え、または、前記選択されたピペット機能に付加的な機能を結合することを含んでいる請求項1記載のピペット。
【請求項3】
前記設定キーは、少なくとも1つの選択キー(7,8)を含み、この選択キーの押圧により、ディスプレイ上に示された、ピペット機能または設定が、使用のために選択されることを可能にし、そして、選択キーの押圧が、前記変更ファンクションを作動可能にすることを特徴とする請求項1または請求項2記載のピペット。
【請求項4】
電子式ピペットを制御するための制御システムであって、
前記ピペットが、
モータによってシリンダ内で駆動され、いくつかのステップからなる所定のピペット機能に従って、前記制御システムによって移動可能なピストンと、
所望のピペット機能及びこれに関係した設定を選択するための設定キー(7,8,9)と、
押圧されると、機能ステップを作動させるスイッチ(1)と、
ディスプレイ(3)と、を含み、
前記制御システムが、
動作途中で選択された機能に変更できる変更ファンクションを含み、
前記変更ファンクションが操作されると、所定の設定キーの動作が変更し、
この設定キーの変更した動作がディスプレイ上に表示され、そして、この変更動作が、前記設定キーを押すことにより実行されることを特徴とする制御システム。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−525320(P2007−525320A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−500235(P2007−500235)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【国際出願番号】PCT/FI2005/000115
【国際公開番号】WO2005/079987
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(501286093)サーモ エレクトロン オイ (13)
【Fターム(参考)】