説明

制御回路付きモータ

【課題】ブラシから発生する摩耗粉が回路基板に実装された制御部品等に付着することを抑制しつつ、ケースを出力軸の軸方向に小型化する。
【解決手段】制御回路付きモータ10によれば、ケース12内は、回路基板47及びブラシホルダカバー50によって、ブラシホルダ22及び回転子20が配置されるモータ室52と、回路基板47に実装された制御部品45,46が配置される制御室53とに区画されている。従って、ブラシ40から摩耗粉が発生した場合でも、この摩耗粉が回路基板47に実装された制御部品45,46等に付着することを抑制することができる。しかも、このブラシホルダカバー50は、出力軸26に対するブラシホルダ22側(矢印A側)に配置されている。従って、ブラシホルダカバー50が出力軸26及び制御回路30と出力軸26の軸方向に重ならないので、ギアケース16及び基板ケース18を出力軸26の軸方向に小型化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御回路付きモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、制御回路付きモータとしては、次のものがある(例えば、特許文献1参照)。すなわち、特許文献1に記載のコントローラ付き電動モータユニットは、歯車と、この歯車を回転駆動させる電動モータと、この電動モータの駆動制御を行うコントローラとを備えている。コントローラは、コントローラケースに収容されており、このコントローラケースの内部は、基板ベース部材によって歯車室と基板室とに区画されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2004−068679号公報(図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のコントローラ付き電動モータユニットでは、基板ベース部材が電動モータの軸方向に沿って延在されて配線基板及び出力軸と出力軸の軸方向に重ねられている。このため、出力軸の軸方向におけるコントローラケース及び歯車ケースの寸法が大きい。
【0005】
また、電動モータがブラシ付きである場合には、このブラシから発生する摩耗粉が配線基板に実装された制御部品等に付着することを抑制できることが望ましい。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、ブラシから発生する摩耗粉が回路基板に実装された制御部品やこの回路基板に形成された回路パターン等に付着することを抑制しつつ、ケースを出力軸の軸方向に小型化することができる制御回路付きモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の制御回路付きモータは、回転軸と、前記回転軸に一体回転可能に設けられたコアと、前記コアに巻回された巻線と、前記回転軸に一体回転可能に設けられると共に前記巻線と接続された整流子とを有する回転子と、前記整流子と摺接されるブラシを保持するブラシホルダと、前記回転軸における前記整流子に対する先端側に設けられたウォームと、前記ウォームと噛合されたウォームホイールとを有する減速機構と、前記ウォームホイールに同軸状に設けられた出力軸と、前記ブラシへ供給される電力を制御するための制御部品と、前記制御部品が実装された回路基板とを有し、前記減速機構と前記出力軸の軸方向に並んで配置された制御回路と、前記回転子、前記ブラシホルダ、前記減速機構、前記制御回路を収容するケースと、前記出力軸に対する前記ブラシホルダ側に配置されて前記ブラシホルダを覆うと共に、前記回路基板とで前記ケース内を前記ブラシホルダ及び前記回転子が配置されるモータ室と、前記制御部品が配置される制御室とに区画するブラシホルダカバーと、を備えている。
【0008】
この制御回路付きモータによれば、ケース内は、回路基板及びブラシホルダカバーによって、ブラシホルダ及び回転子が配置されるモータ室と、回路基板に実装された制御部品が配置される制御室とに区画されている。従って、ブラシから摩耗粉が発生した場合でも、この摩耗粉が回路基板に実装された制御部品や、この回路基板の部品実装面に形成された回路パターン等に付着することを抑制することができる。
【0009】
しかも、このブラシホルダカバーは、出力軸に対するブラシホルダ側に配置されている。従って、ブラシホルダカバーが出力軸とこの出力軸の軸方向に重ならないので、従来の構成(例えば、特許文献1に記載の構成)に比して、ケースを出力軸の軸方向に小型化することができる。
【0010】
請求項2に記載の制御回路付きモータは、請求項1に記載の制御回路付きモータにおいて、前記ブラシホルダカバーが前記制御回路に設けられた構成とされている。
【0011】
この制御回路付きモータによれば、ブラシホルダカバーを制御回路に設けた状態で、このブラシホルダカバー及び制御回路を同時にケースに組み付けることができる。
【0012】
請求項3に記載の制御回路付きモータは、請求項2に記載の制御回路付きモータにおいて、前記回路基板に前記ブラシと前記制御部品とを電気的に接続する給電部材が設けられ、前記ブラシホルダカバーが前記給電部材に一体に形成された構成とされている。
【0013】
この制御回路付きモータによれば、ブラシホルダカバーが給電部材に一体に形成されているので、部品点数の増加を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る制御回路付きモータの分解斜視図である。
【図2】図1に示される制御回路付きモータの一部断面を含む側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づき、本発明の一実施形態について説明する。
【0016】
本発明の一実施形態に係る制御回路付きモータ10は、ケース12と、回転子20と、ブラシホルダ22と、減速機構24と、出力軸26と、カバー28と、制御回路30とを主要な構成として備えている。
【0017】
ケース12は、モータケース14と、ギアケース16と、基板ケース18とによって構成されている。モータケース14は、有底筒状に形成されており、このモータケース14の内側には、マグネット19が設けられている。ギアケース16及び基板ケース18は、このモータケース14の開口14A側に配置されている。このギアケース16及び基板ケース18は、後述する出力軸26の軸方向に互いに対向されており、箱体を構成している。また、ギアケース16は、モータケース14に一体に形成されており、基板ケース18は、ギアケース16と結合されている。
【0018】
回転子20は、モータケース14の内部に回転可能に収容されている。この回転子20は、回転軸32と、回転軸32に一体回転可能に設けられたコア34と、コア34に巻回された巻線36と、回転軸32に一体回転可能に設けられると共に巻線36と接続された整流子38とを有して構成されている。
【0019】
ブラシホルダ22は、略円板状に形成されており、整流子38と摺接される一対のブラシ40を保持している。このブラシホルダ22は、ギアケース16におけるモータケース14側に固定されている。
【0020】
減速機構24は、回転軸32における整流子38に対する先端側に設けられたウォーム42と、ウォーム42と噛合されたウォームホイール44とを有して構成されている。ウォームホイール44は、ギアケース16に回転可能に支持されている。
【0021】
出力軸26は、ウォームホイール44と同軸状に配置されると共に、このウォームホイール44に一体回転可能に設けられている。この出力軸26は、ギアケース16に回転可能に支持されている。
【0022】
カバー28は、ウォーム42及びウォームホイール44から発生する摩耗粉が制御回路30に向けて飛散することを抑制するためのものであり、ウォームホイール44と制御回路30との間に配置され、ギアケース16に固定されている。
【0023】
制御回路30は、減速機構24と出力軸26の軸方向に並んで配置されており、回路基板47を有している。この回路基板47における減速機構24と反対側の面は、部品実装面47Aとされており、この部品実装面47Aには、ブラシ40へ供給される電力を制御するためのパワー素子やコンデンサ等の制御部品45,46が実装されている。また、この部品実装面47Aには、この制御部品45,46を電気的に接続するための回路パターン(不図示)等が形成されている。
【0024】
この制御回路30、及び、上述のブラシホルダ22、減速機構24、カバー28は、ギアケース16及び基板ケース18の内部に収容されている。
【0025】
また、この制御回路30には、ブラシ40と制御部品45,46とを電気的に接続する給電部材48が設けられており、この給電部材48には、ブラシホルダカバー50が一体に形成されている。
【0026】
ブラシホルダカバー50は、出力軸26に対するブラシホルダ22側(矢印A側)に配置されて、このブラシホルダ22を覆っている。そして、ケース12内は、ブラシホルダカバー50と回路基板47とで、ブラシホルダ22、回転子20、マグネット19、及び、減速機構24が配置されるモータ室52と、回路基板47に実装された制御部品45,46が配置される制御室53とに区画されている。
【0027】
なお、モータ室52は、ブラシホルダ22、回転子20、及び、マグネット19が配置されたモータ本体室52Aと、減速機構24が配置されたギア室52Bによって構成されている。
【0028】
次に、本発明の一実施形態の作用及び効果について説明する。
【0029】
この制御回路付きモータ10によれば、ケース12内は、回路基板47及びブラシホルダカバー50によって、ブラシホルダ22、回転子20、マグネット19、及び、減速機構24が配置されるモータ室52と、回路基板47に実装された制御部品45,46が配置される制御室53とに区画されている。従って、ブラシ40から摩耗粉が発生した場合でも、この摩耗粉が制御部品45,46や、回路基板47の部品実装面47Aに形成された回路パターン(不図示)等に付着することを抑制することができる。
【0030】
しかも、このブラシホルダカバー50は、出力軸26に対するブラシホルダ22側(矢印A側)に配置されている。従って、ブラシホルダカバー50が出力軸26とこの出力軸26の軸方向に重ならないので、従来の構成(例えば、特許文献1に記載の構成)に比して、ギアケース16及び基板ケース18を出力軸26の軸方向に小型化することができる。
【0031】
また、この制御回路付きモータ10によれば、ブラシホルダカバー50を制御回路30に設けた状態で、このブラシホルダカバー50及び制御回路30を基板ケース18に同時に組み付け、その後、このブラシホルダカバー50、制御回路30、基板ケース18をギアケース16に同時に組み付けることができる。従って、組付作業が容易である。
【0032】
さらに、この制御回路付きモータ10によれば、ブラシホルダカバー50が給電部材48に一体に形成されているので、部品点数の増加を防止することができる。
【0033】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【0034】
例えば、上記実施形態において、ブラシホルダカバー50は、より好ましい例として、給電部材48に一体に形成されていたが、給電部材48と別体に形成されていても良い。
【0035】
また、上記実施形態において、ブラシホルダカバー50は、より好ましい例として、制御回路30に設けられていたが、その他の部材に設けられていても良い。
【符号の説明】
【0036】
10・・・モータ、12・・・ケース、14・・・モータケース、16・・・ギアケース、18・・・基板ケース、19・・・マグネット、20・・・回転子、22・・・ブラシホルダ、24・・・減速機構、26・・・出力軸、28・・・カバー、30・・・制御回路、32・・・回転軸、34・・・コア、36・・・巻線、38・・・整流子、40・・・ブラシ、42・・・ウォーム、44・・・ウォームホイール、45,46・・・制御部品、47・・・回路基板、48・・・給電部材、50・・・ブラシホルダカバー、52・・・モータ室、52A・・・モータ本体室、52B・・・ギア室、53・・・制御室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、前記回転軸に一体回転可能に設けられたコアと、前記コアに巻回された巻線と、前記回転軸に一体回転可能に設けられると共に前記巻線と接続された整流子とを有する回転子と、
前記整流子と摺接されるブラシを保持するブラシホルダと、
前記回転軸における前記整流子に対する先端側に設けられたウォームと、前記ウォームと噛合されたウォームホイールとを有する減速機構と、
前記ウォームホイールに同軸状に設けられた出力軸と、
前記ブラシへ供給される電力を制御するための制御部品と、前記制御部品が実装された回路基板とを有し、前記減速機構と前記出力軸の軸方向に並んで配置された制御回路と、
前記回転子、前記ブラシホルダ、前記減速機構、前記制御回路を収容するケースと、
前記出力軸に対する前記ブラシホルダ側に配置されて前記ブラシホルダを覆うと共に、前記回路基板とで前記ケース内を前記ブラシホルダ及び前記回転子が配置されるモータ室と、前記制御部品が配置される制御室とに区画するブラシホルダカバーと、
を備えた制御回路付きモータ。
【請求項2】
前記ブラシホルダカバーは、前記制御回路に設けられている、
請求項1に記載の制御回路付きモータ。
【請求項3】
前記回路基板には、前記ブラシと前記制御部品とを電気的に接続する給電部材が設けられ、
前記ブラシホルダカバーは、前記給電部材に一体に形成されている、
請求項2に記載の制御回路付きモータ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−252600(P2010−252600A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−101925(P2009−101925)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】