説明

制御性T細胞の活性化方法

本発明は、ヒトまたは動物の体の制御性T細胞(Treg細胞)の活性化方法に関し、該方法は、制御性T細胞(Treg細胞)の抑制効果の誘導によって、該制御性T細胞(Treg細胞)を、適切な液体培地中で1つまたは複数のアラニルアミノペプチダーゼ(アミノペプチダーゼN;APN)阻害剤および/または同一の基質特異性を備える1つまたは複数のペプチダーゼの阻害剤と接触させる工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御性T細胞(Treg cells;CD4CD25細胞)を活性化するための方法に関する。特に、本発明は、アラニルアミノペプチダーゼ(アミノペプチダーゼN;APN;CD13;EC3.4.11.2)の阻害剤を用いるか、または類似の酵素効果を有する酵素の阻害剤を用いる制御性T細胞のエクスサイチュー(ex−situ)活性化のための方法に関する。本発明はまた、制御性T細胞を活性化するための、アラニルアミノペプチダーゼの阻害剤および/または類似の酵素効果を有する酵素の阻害剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
I型糖尿病または多発性硬化症のような自己免疫病原を有する疾患は、例えば、自己反応性免疫細胞(すなわち、自身の体の抗原に対する免疫細胞)、特に自己反応性Tリンパ球の活性化および増殖に基づくこと、または、そのような免疫細胞の活性化および増殖はこの疾患のプロセスを示すことが、既に知られている。
【0003】
同様のメカニズムが、臓器移植後の拒絶エピソードの出現において重要である。ただし、ここでは、致命的な拒絶反応の出現の原因は、主に「自己抗原」ではなくドナーの臓器からの「外来抗原」である。
【0004】
両方の場合において(すなわち、自己免疫疾患の場合および拒絶反応の場合のどちらも)、自身の体の抗原または移植片由来の抗原に対して、免疫システムの「寛容(tolerance)」の望ましくない破壊が生じる。同じことが、アレルギーの場合における過剰免疫反応にも当てはまる。
【0005】
近年の知見は、この「寛容」が、自己反応性Tリンパ球の機能および増殖が積極的に抑制されることによって、健常生物内で積極的に維持されることを示す。これは、特別な抑制的T細胞集団(いわゆる内在性制御性T細胞(Treg、CD4CD25細胞))によって達成される。Treg細胞は胸腺で発生し(Kawahata K.ら、J. Immunol.、2002年、168巻、4399-4405頁)、そして末梢血内のT細胞の5から10%の割合を占める。Treg細胞は、直接的な細胞接触を介して同一の抗原特異性を有するCD4T細胞に対する阻害的効果を有する。この阻害的効果はTreg内/Treg上のTGF−β1の強力な発現によって達成される。TGF−β1は、このように、Tregの表面上に提示され、そして自己反応性T細胞上のTFG−β1レセプターに結合し、この強力な免疫抑制サイトカインの作用の完全に新しいメカニズムを構成する(Nakamuraら、J. Exp. Med.、2001年、194巻、629-644頁)。
【0006】
Treg細胞は、「外来」抗原への免疫応答よりも効果的に、自己免疫を阻害する(Romagnoli, P.ら、J. Immunol.、168巻、1644-1648頁)。したがって、Treg細胞の機能の制限または損失が、自己免疫疾患の発生において、特定の病原的意義を有する。Treg細胞の数/機能と自己免疫疾患の発現との直接的な関連性が、I型糖尿病について(Boudalay, S.ら、Eur. Cytokine Netw.、2002年、13巻、29-37頁;Gregori, S.ら、Diabetes、2002年、51巻、1367-1374頁)、自己免疫脳脊髄炎(多発性硬化症の動物モデル)について(Furtado, G.C.ら、Immunol. Rev.、2001年、182巻、122-134頁;Muhallab, S.ら、Scand. J. Immunol.、2002年、55巻、264-273頁;Hamilton, N.H.ら、Scand. J. Immunol.、2002年、55巻、171-177頁)、自己免疫卵巣疾患(AOD)について(Tung, K.S.ら、Immunol. Rev.、2001年、182巻135-148頁)、そしてまた、クローン病(Neurath, M.F.ら、J. Exp. Med.、2002年、195巻、1129-1143頁)について、示された。
【0007】
さらに、Treg細胞は、腸または肺の炎症の抑制にもまた関与する(Singh, Bら、Immunol. Rev.、2001年、182巻、190-200頁;Hori, S.ら、Eur. J. Immunol.、2002年、32巻、1282-1291頁)。同種異系(外来)の臓器移植後の拒絶エピソードの抑制におけるTreg細胞の役割もまた明確に証明された(Kingsley, Clら、J. Immunol.、2002年、168巻、1080-1086頁;Taylor, P.A.ら、Blood、2002年、99巻、3493-3499頁;Chiffoleau, Eら、J. Immunol.、2002年、169巻、5058-5069頁)。Treg細胞のこれら全ての免疫抑制機能に共通なのは、高い抗原特異性(すなわち、各Treg細胞クローンが特別な抗原に対して指向され、通常の生理的条件下で、同一の抗原特異性を有する自己反応性T細胞を阻害する)によって区別されることである。自己免疫疾患の場合、Treg細胞のこの機能が失われ、自己反応性T細胞のクローン(I型糖尿病の場合は、膵臓β細胞のタンパク質に対して指向される)が、自己免疫疾患の発症を引き起こす。
【0008】
しかし、この抗原特異性は、インビボ(in vivo)またはエクスビボ(ex vivo)におけるこれらの細胞の「抗原特異的」活性化により、Treg細胞(またはこれらの細胞によって活性化される樹状細胞)の数/機能を増加しまたは再形成することによって治療的に用いられ得る。「抗原」の経口投与もまたこの目的に適している(Zhangら、J. Immunol.、2001年、167巻、4245-4253頁)。しかし、このような抗原の生成は、技術的に時間や費用が非常にかかり、抗原特異的T細胞クローンに制限される。
【0009】
免疫学的過敏症の制御についてのTGF−β1の特別な役割は、遺伝子操作によって引き起こされたCD4細胞におけるTGF−β1の過剰生成が病理学的プロセスを抑制できるということを示す2つの最近の刊行物によって強調される。喘息の場合、Th2細胞が病原の決定的因子であるため、病原性Th2細胞クローンの機能は、TGF−β1のトランスジェニック過剰生成によって効果的に阻害され得る(Hansen, G.ら、J. Clin. Invest.、2000年、105巻、61-70頁;Thorbecke, G.J.ら、Cytokine Growth Factor Rev.、2000年、11巻、89-96頁)。CD4またはTreg細胞におけるTGF−β1の生成を誘導するためのこれらの方法の不利点は、これらが遺伝子操作を必要とすることであり、これは、一方では非常に高価であり、そして他方ではヒトまたは動物への薬理学的適用に不適当である。
【0010】
刊行物DE−A 102 30 381は、1つのまたは複数のアラニルペプチダーゼ阻害剤および/または同一の基質特異性を備える酵素の1つ以上の阻害剤の、Treg細胞内および/またはTreg細胞上でTGF−β1の生成およびTGF−β1の発現を誘導するための使用、ならびに、自己免疫疾患、アレルギー、動脈硬化の予防および/または治療のためのおよび移植による拒絶の抑制のための使用に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、制御性T細胞(Treg cells;CD4CD25細胞)を活性化ための方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
驚くべきことに、Treg細胞の抑制活性およびこれらのTreg細胞によるTGF−β1の発現の促進が、1つ以上のアラニルペプチダーゼ阻害剤および/または同一の基質特異性を備えるペプチダーゼの1つ以上の阻害剤のTreg細胞に対する活性化作用に起因することが見出された。特に、驚くべきことに、1つ以上のアラニルペプチダーゼ阻害剤および/または同一の基質特異性を備えるペプチダーゼの1つ以上の阻害剤によってヒトまたは動物の体外(エクスビボ)でTreg細胞を活性化させること、および、活性化Treg細胞によってヒトまたは動物の体内で同種抗原および自己抗原に対する寛容を生じさせ、または体内の過剰免疫応答を克服さえすることが可能であることが見出された。
【0013】
したがって、本発明は、ヒトまたは動物の体の制御性T細胞(Treg細胞)を活性化するための方法に関し、該方法は、制御性T細胞(Treg細胞)の抑制効果を誘導することによって、該制御性T細胞(Treg細胞)を、適切な液体培地中で1つ以上のアラニルアミノペプチダーゼ(アミノペプチダーゼN;APN)阻害剤および/または同一の基質特異性を備えるペプチダーゼの1つ以上の阻害剤と接触させる工程を含む。
【0014】
特に、本発明は、ヒトまたは動物の体の制御性T細胞(Treg細胞)のエクスビボ活性化のための方法に関し、該方法は、
(a)少なくとも1つのヒトまたは動物の体から、Treg細胞を含む少なくとも1つの体液を回収する工程;
(b)このように得られたヒトまたは動物の体液から該制御性T細胞(Treg細胞)を単離する工程;
(c)このように単離および精製された制御性T細胞を、活性化するのに適した期間、適切な流体または半流体培地中で1つ以上のアラニルアミノペプチダーゼ(アミノペプチダーゼN;APN)阻害剤および/または同一の基質特異性を備えるペプチダーゼの1つ以上の阻害剤と接触させる工程;および
(d)このように処理された制御性T細胞(Treg細胞)を適切な培地中で少なくとも1つのヒトまたは動物の体に戻す工程
を含む。
【0015】
この方法の好ましい実施態様は、従属請求項3から16において請求される。
【0016】
本発明はまた、以下に詳細に記載される方法を用いて得られ得る活性化制御性T細胞(Treg細胞)に関する。
【0017】
本発明はさらに、通常の支持体(supports)、補助物質(auxiliary substances)および/またはアジュバントを共に含み得る活性化制御性T細胞(Treg細胞)(例えば本発明の方法を用いて製造される)を含む調製物に関する。
【0018】
本発明はさらに、移植による拒絶反応、自己免疫疾患、アレルギー、気管支喘息およびCOPD、慢性炎症発生の疾患(動脈硬化を含む)、神経疾患および脳損傷、皮膚病(好ましくは乾癬、ざ瘡またはケロイド、および他の過剰増殖状態)、線維症、腫瘍性疾患および敗血症の予防、緩和または治療のための、以下の詳細な記載に従った活性化制御性T細胞(Treg細胞)の使用、および/またはそのような制御性T細胞(Treg細胞)を含む調製物の使用に関する。
【0019】
好ましい使用は、従属請求項27から38において請求される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】アミノペプチダーゼN阻害剤であるアクチノニンの存在下におけるヒト制御性T細胞の活性化を定量的に示すグラフである。
【図2】細胞質アミノペプチダーゼ(cAAP)阻害剤であるPAQ22の存在下におけるヒト制御性T細胞の活性化を定量的に示すグラフである。
【図3】アラニルアミノペプチダーゼ(APN)およびジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)の二重阻害剤であるIP10.C8の存在下におけるヒト制御性T細胞の活性化を定量的に示すグラフである。
【図4】アラニルアミノペプチダーゼ(APN)の阻害剤であるフェベスチン(phebestin)の存在下におけるマウス制御性T細胞の活性化を定量的に示すグラフである。
【図5】マウスの大腸炎モデルにおけるAPN阻害剤(フェベスチン)を用いてエクスサイチューで活性化された制御性T細胞(Treg細胞)の効果を定量的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を、図を参照して以下にさらに詳細に説明する。
【0022】
本発明を、好ましい実施態様および実施例を参照してより詳細に説明する。実施例には、好ましい実施態様の実際の適用を記載する。しかしながら、本発明は単に例示的な説明のために明記された好ましい実施態様に制限されないことが理解されるべきである。
【0023】
本発明は、制御性T細胞(Treg細胞;CD4CD25細胞)を活性化するための方法に関する。本明細書および特許請求の範囲において、「制御性T細胞」は、病原的T細胞反応を調節する能力を有するTリンパ球であると理解される。Treg細胞は、胸腺で分化し、その後体の末梢へと輸送される。ヒトまたは動物生体内のTreg細胞の主な役割は、自己反応性成熟T細胞のエフェクター機能をブロックすることである(Sakaguchi, S.ら、J. Immunol.、1995年、155巻、1151-1164頁;Roncarolo, M.G.ら、J. Exp. Med.、193:F5-F9)。
【0024】
Treg細胞は、本発明の方法によって活性化される。本発明および特許請求の範囲において、「活性化」とは、Treg細胞の抑制効果が誘導されること(これは、トランスフォーミング増殖因子β1(TGF−β1)および転写因子FoxP3の強力な発現において発現される)を意味することが理解される。本発明によれば、用語「活性化」とは、Treg細胞の再活性化もまた意味する。これは、例えば、炎症性状態のTreg細胞の不活性化後(例えば、炎症性サイトカインの長期作用の結果として)、インビトロ(in vitro)およびインビボの両方で生じ得る。
【0025】
本明細書および特許請求の範囲において、用語「阻害剤」とは、制御効果、特に酵素または酵素群に対する抑制効果を有する、天然起源、合成起源、または合成修飾された天然起源の化合物を意味することが理解される。制御効果は、用語「阻害剤」の上記の幅広い定義からなるように制限されることなく、広範な種々の作用に基づき得る。本発明の好ましい阻害剤は、酵素(さらに好ましくは特異的な酵素群)に対する抑制効果を備える阻害剤であり、例えば、アラニルアミノペプチダーゼN(APN)およびアラニルアミノペプチダーゼNと同一の基質特異性を備えるペプチダーゼに対する抑制効果を備える阻害剤、またはジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)およびジペプチジルペプチダーゼIVと同一の基質特異性を備えるペプチダーゼに対する抑制効果を備える阻害剤である。
【0026】
制御性T細胞(Treg細胞)を、1つ以上のアラニルアミノペプチダーゼ阻害剤および/または同一の基質特異性を備えるペプチダーゼの1つ以上の阻害剤と接触させる工程では、1つの阻害剤が用いられ得る。あるいは、複数の阻害剤が用いられ得る。本発明によれば、1つの阻害剤の使用が特に好ましい。本発明の方法で用いられる阻害剤は、1つ以上のアラニルアミノペプチダーゼ阻害剤であり得る。あるいは、本発明の方法で用いられる阻害剤は、アラニルアミノペプチダーゼと同一の基質特異性を備えるペプチダーゼの1つ以上の阻害剤であり得る。さらに別に、用いられる阻害剤は、アラニルアミノペプチダーゼおよび同一の基質特異性を備えるペプチダーゼの両方の1つ以上の阻害剤であり得る。本発明の方法のさらなる別の実施態様では、複数の阻害剤(アラニルアミノペプチダーゼの阻害剤群に由来する1つ以上の阻害剤、およびアラニルアミノペプチダーゼと同一の基質特異性を備えるペプチダーゼの阻害剤群に由来する1つ以上のさらなる阻害剤)が用いられ得る。
【0027】
用いられる1つの阻害剤、または(複数の阻害剤が用いられるのであれば)用いられる複数の阻害剤は、アラニルアミノペプチダーゼ(アミノペプチダーゼN;APN;CD13;EC3.4.11.2)の阻害剤(好ましい実施態様で以下により詳細に述べる)であり得、または、阻害剤は、アラニルアミノペプチダーゼと同一の基質特異性を備えるペプチダーゼの阻害剤であり得る。
【0028】
本明細書および特許請求の範囲において用いられる用語「アラニルアミノペプチダーゼ(APN)阻害剤」とは、APNおよび同一の基質特性を備える他のペプチダーゼの酵素活性を特異的に阻害し得る物質をいう。周知のように、これらの阻害剤は、異なる構造型に属し得る。APN阻害剤の共通の特性は、APNおよび同一の基質特異性を備えるペプチダーゼの活性部位へのそれらの親和性である。これは、Zn2+イオン、配列HEXXH−(X18)−Eを備える亜鉛結合モチーフおよびエキソペプチダーゼモチーフGXMENによって特徴付けられる。APNの活性部位のすべての公知のAPN阻害剤の結合に関与する必須アミノ酸残基としては、E355、H388、E389、H392、E411およびY477が挙げられる。
【0029】
APN阻害剤と、アラニルアミノペプチダーゼおよび同一の基質特異性のペプチダーゼとの特異的な相互作用のこれらの分子的基礎が、確立された阻害剤の結果に由来するAPNおよび同一の基質特異性を備える酵素の阻害剤の効果および生物学的役割に関して、阻害剤の特別な構造にかかわらず、普遍的に使用できることの説明となる[Xu, W.ら、Curr. Med. Chem. - Anti-Cancer Agents、2005年、5巻、285-301頁;Bouvois, B.ら、Med. Res. Reviews、2006年、26巻、88-130頁]。
【0030】
本明細書および特許請求の範囲において用いられる用語「(アラニルアミノペプチダーゼと)同一の基質特異性を備えるペプチダーゼの阻害剤」とは、阻害剤に関する前述の意味において、高保存性(highly-preserved)の亜鉛結合モチーフおよびエキソペプチダーゼモチーフの包含によってその効果が定義され得るぺプチダーゼに関する。そのようなぺプチダーゼの例は、細胞質アミノペプチダーゼ(cAAP;EC3.4.11.14)、アミノペプチダーゼA(APA;EC3.4.11.7)、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン分解エクト酵素(TRH−DE;EC3.4.19.6)、脂肪細胞由来ロイシンアミノペプチダーゼ(A−LAP;EC3.4.11.x)、インスリン制御アミノペプチダーゼ(IRAP;EC3.4.11.3)、アミノペプチダーゼB(APB;EC3.4.11.6)、ロイコトリエンA4ヒドラーゼ(LTA4H;EC3.3.2.6)および白血球由来アルギニンアミノペプチダーゼ(LRAP;EC3.4.11.x)であるが、これらの例に制限されない[Albiston, A.L.ら、Protein and Peptide Letters、2004年、XI巻、5号、491-500頁]。
【0031】
本発明によれば、アラニルアミノペプチダーゼ(アミノペプチダーゼN;APN;CD13;EC3.4.11.2)阻害剤の使用が特に好ましい。
【0032】
予想外の活性化の結果に基づく本発明の特に好ましい制御性T細胞(Treg細胞)活性化方法において、活性化工程は、エクスビボで行われる。本明細書の枠組み内および特許請求の範囲において、これは、本発明の好ましい方法が、(生きている)ヒトまたは動物の生体に関して行われる方法ではないことを意味することが理解される。むしろ、活性化工程は、生きているヒトまたは動物の体から取り出された物質を用いてインビトロで行われ、そして本発明によって処理された物質は、その後、適切な形態でヒトまたは動物の体に再び戻される。以下に説明する特に好ましい実施態様に基づいた例から見られるように、これにより、当業者が予想しないTreg細胞の活性化の結果に至る。
【0033】
本発明のヒトまたは動物の体の制御性T細胞(Treg細胞)の活性化のための好ましいエクスビボ方法の第1工程において、Treg細胞を回収するために用いられ得る(すなわち、Treg細胞を含む)少なくとも1つの体液が、少なくとも1つの(好ましくはちょうど1つの)ヒトまたは動物の体から回収される。Treg細胞を含む1つの体液が、ヒトまたは動物の体から回収され得、または、Treg細胞を含む複数の体液が、ヒトまたは動物の体から回収され得る。これは、それ自体が当業者に実質的に公知であるように、生きているヒトまたは動物の体に対してまたは生きているヒトまたは動物の体から行われ得、そして、回収方法は、当該体液に依存する。1つ以上の体液を回収する適切な方法は、ヒトまたは動物の体からの体液の分泌による(例えば、滲出液の場合)、または専門家によって行われる体液の採取による(例えば、血液の場合)ものであり得る。
【0034】
本方法の特に好ましい、しかし本発明を制限しない実施態様において、血液、血液画分、リンパ、滲出液または局所区画から選択される1つ以上の体液が、ヒトまたは動物の体から回収される。実践的には、上述の体液から選択される1つの体液が回収される。ヒトまたは動物の体から血液を単離する場合、好ましくは末梢血、さらに好ましくは静脈血が選択される。好ましくは、局所区画として例えば胸膜または腹膜が単離され得る。ヒトまたは動物の体から末梢血、特に好都合には静脈血が回収されることが、特に好ましい。Treg細胞は、実践的であるように下記工程で単離が生じるのを容易にする濃度で、静脈または末梢血に自然に存在する。
【0035】
制御性T細胞(Treg細胞)は、本発明の方法の第1工程で回収された体液から、すなわち、好ましくは上述の体液のうち1つから、特にヒトまたは動物の体から回収された上述の体液のうち1つから、さらに好ましくは血液から、そして特に好都合には末梢血から、例えば、静脈血から、下記の方法の工程で単離される。これは、当業者に公知の、Treg細胞を単離するために考えられるいかなる手段を用いても行うことができ、この点においては、本発明にいかなる制限も加えられない。特に、Treg細胞を単離するための分離キットが市販されており、これにより、上述の体液のうちの1つからTreg細胞を確実に単離できる。
【0036】
体液から、または方法の第1の工程で回収された特定の体液から、例えば末梢血からまたは静脈血から取り組んで、制御性T細胞(Treg細胞)もまた含む細胞画分が、適切な分離法を用いて分離される。例えば、それ自体が公知であるように、単核細胞およびTreg細胞を含むそれら由来の富化T細胞が、当業者に一般に知られている種々のプロセスを用いて密度勾配遠心分離法によって、ドナーの末梢血から得られる。このようにして得られた細胞画分から、Treg細胞の特性を考慮した(例えば、(制限されないが)磁気粒子に連結した細胞特異的抗体を用いた)分離プロセスを用いて、制御性T細胞(Treg細胞)が得られ得る。本発明によれば、2段階磁気分離が好都合であることが判明した。本発明によれば、その第1プロセス工程において、前のプロセス工程で得られた細胞集団から、CD4細胞を残存させながらCD4細胞を枯渇させ得る。これは、例えば、市販の分離キット(例えば、Miltenyi Biotech、Bergisch-Gladbach、Germanyから市販されているようなCD4分離キット)を用いて達成され得る。これは、CD4T細胞を>95%の純度で得ることを可能にする。次いで、第2磁気カラム分離工程において、残っている細胞集団が、抗CD24MicroBeads(Miltenyi Biotech、Bergisch-Gladbach、Germany)で処理され、CD25マーキングを用いて、磁気カラム分離によってCD4CD25T細胞(制御性T細胞;Treg細胞)が得られる。このようにして、高純度の制御性T細胞(Treg細胞)を単離し得る。言い換えると、Treg細胞の単離工程は、Treg細胞の精製(すなわち、その後のTreg細胞の活性化を遮り、遅らせ、阻止さえし得る他の細胞、細胞成分または他の材料の除去)を伴う。しかしながら、本発明は、単に一例として与えられる、Treg細胞を単離および精製するこの方法に制限されない。
【0037】
方法の次の工程において、このように得られそして精製された制御性T細胞を、適切な流体培地中で、活性化するのに適した期間、1つ以上のアラニルアミノペプチダーゼ(アミノペプチダーゼN;APN)阻害剤および/または同一の基質特異性を備えるペプチダーゼの1つ以上の阻害剤と接触させる。これは、当業者に公知のよく知られたどうにも望ましいように行うことができ、この点において、本発明はいかなる制限も加えられない。
【0038】
本発明の方法の好ましい実施態様では、Treg細胞と1つ以上の阻害剤との接触は、以下の、阻害剤に関する具体的な説明にしたがって、適切な流体培地中で行われる。
【0039】
本明細書および特許請求の範囲において、「流体培地」とは、主に、例えばアルブミンおよび血清成分を有する場合および有さない場合に種々の形態で市販されているものなどの液体細胞培養培地を意味することが理解される。しかしながら、これは本発明を制限するものではなく、本質的な実施可能性への集中でしかない。当然のことながら、生理学的に受容可能であるべき通常の特質(すなわち、Treg細胞が後にヒトまたは動物の体に再び注入されるのを可能にするという実施上の理由だけでなく、活性化プロセスの自然経過をインビボで存在する条件にできるだけ近くなるような条件下とする点に関しても)を有する水性培地が好ましい。したがって、使用に特に好ましい培地は、生理学的に受容可能な溶液、細胞培養培地および栄養培地から選択される。これらの培地が、生理学的に受容可能な水溶液、水性細胞培養培地および水性栄養培地からなる群より選択されることが、さらにもっと好ましい。本発明の方法の特に好ましい実施態様では、無血清AIMV培地が、活性化プロセスのための培地として選択される。上記培地は、個々に、またはそれらの2つ以上の組み合わせで選択され得る。主に水を含むか、または実質的に水からなる培地の使用が、特に好ましい。
【0040】
さらに、本発明によれば、活性化プロセスのために与えられた流体培地に添加物(細胞培養および/または細胞治療において通常用いられ、そして当業者の知識に基づいて、当業者に公知である)を添加することが好ましい。これらの例は、抗生物質、アミノ酸補助剤、ビタミン剤、微量元素補助剤であり、活性化プロセスのために培地または複数の培地中に、特定の物質群を個々にまたは2つ以上の組み合わせで与えられる。
【0041】
上述のように単離(および精製)された制御性T細胞(Treg細胞)を、活性化するのに適した期間、1つ以上の阻害剤(上で詳述されたものなど)と接触させる。適用され得る場合、培養培地へのインターロイキン−2(好ましくは20〜100U/ml)の添加が便利であり、および/またはPHAまたはPWMなどのマイトジェンを用いるおよび/または抗CD3抗体を用いる刺激が便利である。培養期間は、特定のシステムにつき実験を定義する範囲内で、当業者によって容易に決定され得る。経験から、これは24〜48時間の範囲にあるが、この範囲に制限されない。
【0042】
本発明によれば、上述のように単離された制御性T細胞を、1つ以上のアラニルアミノペプチダーゼ(アミノペプチダーゼN;APN)阻害剤および/または同一の基質特異性を備えるペプチダーゼの1つ以上の阻害剤と接触させる。Treg細胞を活性化するために、本発明の方法において、1つの阻害剤が用いられ得、または、複数の阻害剤が用いられ得る。1つの阻害剤は、アラニルアミノペプチダーゼ阻害剤であり得、または、1つの阻害剤は、同一の基質特異性を備えるペプチダーゼの阻害剤であり得る。複数の阻害剤を用いる場合、2つのまたはより多くの阻害剤が組み合わせて用いられ得る。これらの2つ以上の阻害剤は、すべてアラニルアミノペプチダーゼ阻害剤であり得、またはすべて同一の基質特異性を備えるペプチダーゼの阻害剤であり得る。または、2つ以上の阻害剤は、一部はアラニルアミノペプチダーゼ阻害剤群由来および一部は同一の基質特異性を備えるペプチダーゼの阻害剤群由来の阻害剤であり得る。または、これらは、アラニルアミノペプチダーゼ阻害剤であり、そして同時にアラニルアミノペプチダーゼと同一の基質特異性を備える(1つ以上の)ペプチダーゼの阻害剤でもある。2つの上述の群のうち1つの個々の阻害剤が用いられることが特に好ましく、アラニルアミノペプチダーゼ阻害剤の使用が最も特に好ましい。
【0043】
本発明の方法の好ましい実施態様では、少なくとも1つのアラニルアミノペプチダーゼ阻害剤としておよび/または同一の基質特異性を備えるペプチダーゼの少なくとも1つの阻害剤として、アクチノニン(actinonin)、ロイヒスチン(leuhistin)、フェベスチン(phebestin)、アマスタチン(amastatin)、ベスタチン(bestatin)、プロベスチン(probestin)、アルファメニンA(arphamenin A)、アルファメニンB(arphamenin B)、MR387A、MR387B、β−アミノチオール、α−アミノホスフィン酸ならびにそれらのエステルおよび塩、α−アミノホスホネート、α−アミノホウ酸、α−アミノアルデヒド、α−アミノ酸のヒドロオキサメート、N−フェニルフタルイミド、N−フェニルホモフタルイミド、α−ケトアミド、サリドマイドおよびそれらの誘導体の群より選択される1つ以上の公知の阻害剤が用いられる。上記名称は、本発明の活性化方法で阻害剤として用いられ得る阻害剤または物質群の、当業者によく知られた一般的な普通の名称を表す。
【0044】
「MR387A」の名称は、以下の物質を表すことが知られ、
【0045】
【化1】

【0046】
組織名はC(2S,3R)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニルブタノ−イル−L−バリル−L−プロリル−L−ロイシンである。そして、「MR387B」の名称は、以下の物質を表すことが知られ、
【0047】
【化2】

【0048】
組織名はC(2S,3R)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニルブタノ−イル−L−バリル−L−プロリル−(R)−ヒドロキシ−L−プロリンである。
【0049】
単に一例として与えられるものであり、本発明をこれらに制限するものではないが、以下の化合物(Treg細胞の活性化のために単独でまたはそれらを複数組み合わせて用い得る)が、適切なアラニルアミノペプチダーゼ阻害剤として示され得る。
【0050】
【化3】

【0051】
【化4】

【0052】
【化5】

【0053】
【化6】

【0054】
【化7】

【0055】
【化8】

【0056】
【化9】

【0057】
【化10】

【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
【表3】

【0061】
【表4】

【0062】
【表5】

【0063】
【表6】

【0064】
【表7】

【0065】
【表8】

【0066】
これらの化合物は、刊行物「Xu, W.ら、Curr. Med. Chem. Anti-Cancer Agents、2005年、5巻、281-301頁」で詳細に与えられ、そしてそれらのアラニルアミノペプチダーゼに対する阻害的作用について記載されている。この刊行物の内容は、参照によって本願明細書に援用される。
【0067】
本発明の制御性T細胞(Treg細胞)活性化方法において、少なくとも1つのアラニルアミノペプチダーゼ阻害剤としておよび/または同一の基質特異性を備えるペプチダーゼの少なくとも1つの阻害剤として、α−ケトアミド、α−アミノホスフィン酸、N−フェニルホモフタルイミドおよびα−アミノホスホネートからなる群より選択される1つ以上の公知の阻害剤を用いることがより好ましい。α−ケドアミドが用いられる場合、3−アミノ−2−オキソ−4−フェニル酪酸アミドからなる群より選択される化合物が好ましく用いられ得る。α−アミノホスフィン酸が用いられる場合、D−Phe−y[PO(OH)−CH]−Phe−Pheを用いることが特に好ましい。N−フェニルホモフタルイミドが用いられる場合、PAQ−22を用いることが特に好ましい。α−アミノホスホネートが用いられる場合、RB3014および/またはフェベスチンを用いることが特に好ましい。記載された好ましい化合物のうち、少なくとも1つのアラニルアミノペプチダーゼ阻害剤としておよび/または同一の基質特異性を備えるペプチダーゼの少なくとも1つの阻害剤として、PAQ−22、RB3014および/またはフェベスチンを用いることが最も特に好ましい。少なくとも1つのアラニルアミノペプチダーゼ阻害剤としておよび/または同一の基質特異性を備えるペプチダーゼの少なくとも1つの阻害剤として、PAQ−22またはPAQ−22を含む複数の公知の阻害剤(すなわち、そのうちの1つがPAQ−22である)が好ましく用いられ得、Treg細胞が活性化される非常に良好な活性化の結果を維持しつつという格別な利点を有する。この場合、略称RB3014は、以下の物質を表し、
【0068】
【化11】

【0069】
組織名は2−{3[(1−アミノエチル−)ヒドロキシホスフィノイル]−2−ベンジル−プロピオニルアミノ−}3−フェニルプロピオン酸である。PAQ22は、以下の物質を表し、
【0070】
【化12】

【0071】
組織名は3−(2,6−ジエチルフェニル−)キナゾリン−2,4(1H3H)−ジオンである。
【0072】
本発明の同様に好ましいさらなる実施態様において、少なくとも1つのアラニルアミノペプチダーゼ阻害剤としておよび/または同一の基質特異性を備えるペプチダーゼの少なくとも1つの阻害剤として、一般式(1)および(2)の化合物:
A−B−D−B’−A’ (1)および
A−B−D−E (2)、
(ここで、AおよびA’は同一または異なり得、以下の基を表し、
【0073】
【化13】

【0074】
ここで、XはS、O、CH、CHCH、CHOまたはCHNHを表し、YはHまたはCNを表し、は好ましくはS−またはL−配置のキラル炭素原子を表し;
BおよびB’は同一または異なり得、O、N、またはSを含むかまたは含まない非置換または置換された非分岐または分岐のアルキレン基、シクロアルキレン基、アラルキレン基、ヘテロシクロアルキレン基、ヘテロアリールアルキレン基、アリールアミドアルキレン基、ヘテロアリールアミドアルキレン基、1つ以上の5、6または7員環を有する非置換または一置換または多置換のアリーレン基またはヘテロアリーレン基を表し;
Dは−S−S−または−Se−Se−を表し;そして
Eは−CH−CH(NH)−Rまたは−CHCH(NH)−Rの基を表し、ここで、RはO、N、またはSを含むかまたは含まない非置換または置換された非分岐または分岐のアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロアリールアルキル基、アリールアミドアルキル基、ヘテロアリールアミドアルキル基、1つ以上の5、6または7員環を有する非置換または一置換または多置換のアリール基またはヘテロアリール基を表し、は好ましくはS−またはL−配置のキラル炭素原子を表す)
または、それらの有機または無機酸の酸付加塩からなる群より選択される、アラニルアミノペプチダーゼまたは同一の基質特異性を備えるペプチダーゼとジペプチジルペプチダーゼ(IV)または同一の基質特異性を備えるペプチダーゼとの二重阻害剤からなる群より選択される1つ以上の公知の阻害剤が用いられる。
【0075】
本明細書および特許請求の範囲において、用語「二重阻害剤」とは、アラニルアミノペプチダーゼの阻害剤および/または同一の基質特異性を備えるペプチダーゼの阻害剤(上記に定義する)であり、ならびにジペプチジルペプチダーゼIV(DP IV; CD26; EC 3.4.14.5)の阻害剤および/または同一の基質特異性を備えるペプチダーゼの阻害剤でもある阻害剤を意味することが理解される。
【0076】
本明細書および特許請求の範囲において、用語「ジペプチジルペプチダーゼIV(DP IV)阻害剤」とは、DP IVおよび同一基質特異性を備える他のペプチダーゼの酵素活性を特異的に阻害し得る物質を意味することが理解される。この場合、これらのDP IV阻害剤は種々の構造型に属し得る。これらの阻害剤の共通の特性は、DP IVおよび同一の基質特異性を備えるペプチダーゼの活性部位へのそれらの親和性である。DP IVのおよび同一の基質特異性を備える他のペプチダーゼのこの分子領域は、アミノ酸残基S630、D708、H740(「触媒三残基(catalytic triads)」)、E205、E206およびY547によって特徴付けられる。さらに、残基Y666、F357およびR358は、阻害剤結合アミノ酸残基に属する。
【0077】
DP IV阻害剤および同一の基質特異性のペプチダーゼの阻害剤の特異的な相互作用のこれらの分子的基礎(molecular bases)、確立された阻害剤の結合の結果に由来するこれらの阻害剤の効果および生物学的役割に関して、阻害剤の特別な構造にかかわらず、普遍的に使用できることの説明となる[Sedo, A.ら、Biochimica et Biophysica Acta、2001年、1550巻、107-116頁]。
【0078】
上記刊行物はまた、(上記に既に定義したAPNと同一の基質特異性を備えるペプチダーゼと同様の意味で)ジペプチジルペプチダーゼIVと同一の基質特異性を備えるペプチダーゼの多数の例を示す。これらには、例えば、線維芽細胞活性化タンパク質α、ジペプチジルペプチダーゼIVβ、ジペプチジルアミノペプチダーゼ様タンパク質(DPPX)、NAALADase(N−アセチル化α−結合酸性ジペプチダーゼ)、QPP(静止細胞プロリンジペプチダーゼ)、ジペプチジルペプチダーゼII(DP II)、アトラクチン(マホガニータンパク質)、ジペプチジルペプチダーゼ8(DP 8)、ジペプチジルペプチダーゼ9(DP 9)が(制限されることなく)挙げられる。
【0079】
上記定義の意味における二重阻害剤である上記一般式(1)および(2)の化合物では、AおよびA’(同一または異なり得る)が以下の基を表し、
【0080】
【化14】

【0081】
ここで、XがS、O、CH、CHCH、CHOまたはCHNHを表し、YがHまたはCNを表し、がキラル炭素原子を表す。本発明によれば、AおよびA’が同じである一般式(1)の化合物、ならびにAで表される上記の基において、XがS、CHまたはCHCHを表し、および/またはYがHまたはCNを表す一般式(1)および(2)の化合物が、特に好ましい。
【0082】
本発明のさらに好ましい実施態様では、そのような一般式(1)および(2)の化合物は、Treg細胞の活性化において特に有効な阻害剤のプロドラッグを表し、によって示されるキラル炭素原子はS−またはL−配置を有する。
【0083】
本明細書および特許請求の範囲において、用語「プロドラッグ」とは、天然に存在するかまたは合成物であるかまたは天然に存在するが合成的に改変された化合物であって、これらの化合物から他の化合物が化学的に誘導され得る、または一定の条件下、好ましくは生理学的もしくは病理学的条件下または所望の化学反応(例えば、Treg細胞の活性化など)の条件下、誘導体化され得るものをいうことが理解される。ここで、これらの他の化合物は、開始物質(「プロドラッグ」)と質的におよび/または量的に異なる化学的または薬理学的効果を生じる。したがって、阻害剤プロドラッグは、好ましくは生理学的もしくは病理学的条件下または所望の化学反応の条件下、意図的に反応し、阻害効果を備える新たな物質を形成し得る、天然または合成起源の化合物か、または天然であるが合成的に改変された化合物であることが理解される。これは、特定の薬理学的(例えば、阻害)効果を備える薬剤への変換前に既に薬理学的効力(例えば、上述の2つの酵素のうち1つを阻害する)を生じているような、これらのプロドラッグの能力を除外しない。哺乳動物または特にヒト用の薬剤へのプロドラッグの変換のための条件は、哺乳動物(例えば、ヒト)の生理学的環境中、または哺乳動物(例えば、ヒト)の体内で制御的に生じるようなものであり得る。あるいは、そのような生理学的条件は、例えば、ヒトなどの哺乳動物における特定の条件(例えば、臨床像を決定する条件などの特定の生理学的状態)下に単に存在し得るか、またはそれらは、哺乳動物の生体(例えば、ヒトの生体など)に対する外部作用(例えば、(制限されることなく)薬剤の作用)によって、または特定の化学反応条件を作出することによって誘導または適応され得る。
【0084】
上記一般式(1)および(2)の化合物において、BおよびB’は同一または異なり得、O、N、またはSを含むかまたは含まない非置換または置換された非分岐または分岐のアルキレン基、シクロアルキレン基、アラルキレン基、ヘテロシクロアルキレン基、ヘテロアリールアルキレン基、アリールアミドアルキレン基、ヘテロアリールアミドアルキレン基、1つ以上の5、6または7員環を有する非置換または一置換または多置換のアリーレン基またはヘテロアリーレン基を表す。
【0085】
本明細書および特許請求の範囲において、用語「アルキル基」とは、単結合を介して相互に結合した炭素原子を、該炭素原子に結合した水素原子とともに含む一価の直鎖(非分岐)または分岐の基をいうことが理解される。したがって、本発明の意味において、アルキル基は飽和一価炭化水素残基である。一般式(1)および(2)の化合物中のアルキル基は、好ましくは1から18個の炭素原子を含み、したがって、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、ならびに、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、およびオクタデシル基の多数の種々の直鎖および分岐の異性体より選択される。1から12個の炭素原子を有する直鎖および分岐のアルキル基が特に好ましく、1から6個の炭素原子を有する直鎖および分岐のアルキル基がなおさらに好ましい。メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基およびtert−ブチル基が最も好ましい。
【0086】
したがって、本明細書および特許請求の範囲において、用語「アルケニル基」および「アルキニル基」とは、単結合を介して相互に結合した炭素原子、および、分子内の所望の、しかし所定の位置への少なくとも1つの二重結合または三重結合を、少なくとも2つの炭素原子および最大18個の炭素原子を有する炭素原子の残りの結合に結合した水素原子と共に含む一価の直鎖(非分岐)または分岐の基をいうことが理解される。。ビニル基またはアリル基が、そのような基の好ましい例である。しかしながら、多重炭素−炭素結合を有する基は、上記2つの基に制限されない。
【0087】
本明細書および特許請求の範囲において、用語「アルキレン基」とは、単結合を介して相互に結合した炭素原子を、該炭素原子に結合した水素原子とともに含む二価の直鎖(非分岐)または分岐の基をいうことが理解される。したがって、本発明の意味において、アルキレン基は飽和二価炭化水素残基である。一般式(1)および(2)の化合物中のアルキレン基は、好ましくは1から18個の炭素原子を含み、したがって、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、2,2−プロピレン基、1,2−プロピレン基、ならびに、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、およびオクタデシレン基の多数の種々の直鎖および分岐の異性体より選択される。1から12個の炭素原子を有する直鎖および分岐のアルキレン基が特に好ましく、1から6個の炭素原子を有する直鎖および分岐のアルキレン基がなおさらに好ましい。メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、2,2−プロピレン基、1,2−プロピレン基および多数の種々のブチレン位置の異性体がもっとも好ましい。
【0088】
アルキル基および/またはアルキレン基(本発明の一般式(1)および(2)の化合物の一部であり得る)において、炭素原子を含む鎖は、−O−原子、−N−原子または−S−原子によって遮断され得る。したがって、1つ以上の−CH−基の代わりに、−O−、−HN−および−S−からなる群から選択される1つ以上の基が鎖の間に位置し得、ここで、通常、−O−、−HN−および/または−S−基のうち2つは、鎖内で互いに続かない。この場合、1つ以上の−O−、−HN−または−S−基は、分子内の所望の位置に挿入され得る。そのようなヘテロ基が存在する場合、そのような基は、好ましくは分子内に含まれる。
【0089】
本発明のさらなる実施態様において、一般式(1)および(2)の化合物内の直鎖および分岐のアルキルまたはアルキレン基は、どちらも1つ以上の置換基、好ましくは1つの置換基で、置換され得る。置換基は、炭素原子から形成された骨格の所望の位置にあり得、そして(本発明をそれに制限することなく)、好ましくはフッ素、塩素、臭素およびヨウ素(特に好ましくは塩素および臭素)などのハロゲン原子、1から6個の炭素原子を有するアルキル基(特に好ましくは1から4個の炭素原子を有するアルキル基)、アルキル基内に1から5個の炭素原子(好ましくはアルキル基内に1から3個の炭素原子)を有するアルコキシ基、非置換または1から6個の炭素原子(好ましくは1から3個の炭素原子)を有するそれぞれ相互に独立した1つまたは2つのアルキル基で置換されたアミノ基、カルボニル基およびカルボキシル基からなる群より選択され得る。後者は、アルキル基内に1から6個の炭素原子を有するアルコールを有する塩またはエステルの形でも存在し得る。したがって、用語「カルボキシル基」は、基礎構造−COO(Mは、一価の金属原子(例えばアルカリ金属原子など)、または対応する当量の多価の金属原子(例えば2分の1当量の二価の金属原子(例えばアルカリ土類金属原子など))である)または基礎構造−COOR(Rは、1から6個の炭素原子を有するアルキル基である)を有する基を含む。置換されたアルキル基は、上記に詳細に定義されたアルキル基から選択され、それらがメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基またはtert−ブチル基であることが最も特に好ましい。アルコキシ基は、上記に定義された意味において、炭素原子から形成された骨格に−O−原子架橋を介して結合されているアルキル基である。それらは、好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、sec−ブトキシ基およびtert−ブトキシ基からなる群より選択される。アミノ基は、基礎構造−NRを有する基であり、ここで、基RおよびRは相互に独立して、水素または1から6個の炭素原子(特に好ましくは1から3個の炭素原子)を有するアルキル基(上記定義に従って)を表し得、基RおよびRは相互に同一または異なり得る。置換基として特に好ましいアミノ基は、−NH基、−NH(CH)基、−N(CH基、−NH(C)基および−N(C基である。用語「アミノ基」はまた、四級化アンモニウムイオンとして存在する上記に定義された構造の基も含み、これは、有機酸または無機酸による塩形成(すなわち、構造Rの基であって、R、RおよびRは同一または異なり得、好ましくは同一であり、RおよびRについて上記に定義された意味を有し得、基の少なくとも1つは有機または無機酸による四級化からの水素であり、Qは有機または無機酸の酸残基を表す)、あるいは、当業者に公知の適切な四級化試薬(例えば、ハロゲン化アルキルなど(これに制限されない))による塩形成のいずれからも生じる。
【0090】
本明細書および特許請求の範囲において、用語「シクロアルキル」とは、閉環を形成するように接続された−CH−基を含む非置換または置換の一価の基を表す。本発明によれば、これらの基は、好ましくは環内に3から8個の原子を含み得、炭素原子のみで構成され得るか、または1つ以上のヘテロ原子(−O−、−S−およびNRから選択され、ここで、Rは、水素または1から6個の炭素原子を有するアルキル基(上記に定義する)を表す)を含み得る。ヘテロ原子が環内に結合されている場合には、これら(複数のヘテロ原子が存在する)は同一または異なり得る。ヘテロ原子が存在する場合には、好ましくは1つのヘテロ原子が環内に結合されている。純粋な炭素環のうち特に好ましい基は、シクロペンチル基、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、シクロヘキサジエニル基、シクロヘプチル基、シクロヘプテニル基、シクロヘプタジエニル基およびシクロヘプタトリエニル基である。本発明のさらなる実施態様では、ヘテロ原子を含むシクロアルキル基(ヘテロシクロアルキル基ともいう)の例は、テトラヒドロフラニル基、ピロリジニル基、ピラゾリジニル基、イミダゾリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基およびモルホリニル基である。
【0091】
これらの炭素環式または複素環式シクロアルキル基における可能性のある置換基は、好ましくは直鎖アルキル基のための上記置換基群より選択され得る(本発明をそれに制限しない)。シクロアルキル基のための特に好ましい置換基は、−Cl基、−Br基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基またはtert−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基;n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、sec−ブトキシ基およびtert−ブトキシ基、−NH基、−NH(CH)基、−N(CH基、−NH(C)基および−N(C基、カルボニル基およびカルボキシル基である。
【0092】
本明細書および特許請求の範囲において、用語「シクロアルキレン」とは、閉環を形成するように接続された−CH−基を含む非置換または置換の二価の基を表す。本発明によれば、これらの基は、好ましくは環内に3から8個の原子を含み得、炭素原子のみで構成され得るか、または1つ以上のヘテロ原子(−O−、−S−およびNRから選択され、ここで、Rは、水素または1から6個の炭素原子を有するアルキル基(上記に定義する)を表す)を含み得る。純粋な炭素環のうち特に好ましい基は、シクロペンチレン基、シクロペンテニレン基、シクロペンタジエニレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘキセニレン基、シクロヘキサジエニレン基、シクロヘプチレン基、シクロヘプテニレン基、シクロヘプタジエニレン基およびシクロヘプタトリエニレン基である。シクロアルキル基の場合に上記に定義した複素環基は、「B」基として一般式(1)および(2)の化合物中の二価基としても存在し得、−O−または−NR−基が環内に結合されているそれらの環状二価基が、特に好ましい。これらの場合、両原子価とも、環内の所望の炭素原子で局在している。1つのヘテロ原子または2つのヘテロ原子が環内に結合されていることが好ましく、特に好ましい実施態様では、それらの基は、テトラヒドロフラン、ピロリジン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、ピペリジン、ピペラジンおよびモルホリンに由来する二価基である。
【0093】
これらの炭素環式または複素環式シクロアルキレン基における可能性のある置換基は、好ましくは直鎖アルキル基のための上記置換基群より選択され得る(本発明をそれに制限しない)。シクロアルキレン基のための特に好ましい置換基は、−Cl基、−Br基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基またはtert−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基;n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、sec−ブトキシ基およびtert−ブトキシ基、−NH基、−NH(CH)基、−N(CH基、−NH(C)基および−N(C基、カルボニル基およびカルボキシル基である。
【0094】
本明細書の枠組み内および特許請求の範囲において、「アリール基」とは、芳香族性((4n+2)個のπ電子が環軌道内で非局在化されている)の環状分子に由来する、非置換または置換され得る一価の炭化水素残基を意味することが理解される。そのようなアリール基の環構造は、1つの環または相互に結合した(アヌレン形成した(annellated))2つ以上の環から形成される構造を有する5、6または7員環構造であり得、ここで、アヌレン形成した環は、同一または異なる環員数(特に炭素原子数)を有し得る。相互にアヌレン形成した複数の環で構成された系の場合、ベンゾ縮合環が好ましい(すなわち、環のうち少なくとも1つが、炭素原子のみで構成された芳香族六員環(フェニル環)である環系)。アリール基の代表的であるが制限されない例は、シクロペンタジエニル基(C)(5員環)、フェニル基(6員環)、シクロヘプタトリエニル基(C)(7員環)、ナフチル基(アヌレン形成された2つの6員環を含む環系)、およびさらに、アントラセンおよびフェナントレン(アヌレン形成された3つの6員環)に由来する一価の基である。本発明のもっとも好ましいアリール基は、フェニル基およびナフチル基である。
【0095】
これらの炭素環式アリール基における可能性のある置換基は、好ましくは直鎖アルキル基のための上記置換基群より選択され得る(本発明をそれらの置換基に制限しない)。アリール基のための特に好ましい置換基は、−Cl基、−Br基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基またはtert−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基;n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、−NH基、−NH(CH)基、−N(CH基、−NH(C)基および−N(C基、カルボニル基およびカルボキシル基である。本発明によれば、1つ以上のこのような置換基(同一または異なり得る)が、アリール基に結合され得る。アリール環(系)上の置換基の位置は、望み通りに選択され得る。
【0096】
アリール基の場合のものに相当する定義が、本明細書の枠組み内および特許請求の範囲において、用語「アリーレン基」に当てはまる。これは、環の任意の2つの炭素原子に結合され得る二価の基であることを除いて、基礎の構造および選択ならびに置換基が上記の「アリール基」の定義の詳細に相当する二価の基をいうことが理解される。
【0097】
本明細書の枠組み内および特許請求の範囲において、「ヘテロアリール基」とは、環構造内に1つのヘテロ原子または複数のヘテロ原子(好ましくはO、NまたはS基由来)がそれによって分子の芳香族性が失われることなく含まれるアリール基を(上記定義の意味において)いうことが理解される。本発明のヘテロアリール基は、非置換であるかまたは置換され得る。そのようなヘテロアリール基の環構造は、1つの環または相互に結合した(アヌレン形成した)2つ以上の環から形成される構造を有する5、6または7員環構造であり得、ここで、アヌレン形成した環は、同一または異なる環員数を有し得る。ヘテロ原子は、環系の環の1つに単独でまたはいくつかにも存在し得る。ヘテロアリール基は、好ましくは1つまたは2つの環を含む。相互にアヌレン形成した複数の環で構成された系の場合、ベンゾ縮合環が特に好ましい(すなわち、環のうち少なくとも1つが、芳香族炭素環式(すなわち、炭素原子のみで構成された)六員環である環系)。特に好ましいヘテロアリール基は、フラニル、チオフェニル、ピリジル、インドリル、クマロニル、チオナフテニル、キノリニル(ベンゾピリジル)、キナゾリニル(ベンゾピリミジニル)、およびキノキシリニル(ベンゾピラジニル)より選択される。
【0098】
これらのヘテロアリール基における可能性のある置換基は、好ましくは直鎖アルキル基のための上記置換基群より選択され得る(本発明をそれらの置換基に制限しない)。ヘテロアリール基のための特に好ましい置換基は、−Cl基、−Br基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基またはtert−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基;n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、−NH基、−NH(CH)基、−N(CH基、−NH(C)基および−N(C基、カルボニル基およびカルボキシル基である。本発明によれば、1つ以上のこのような置換基(同一または異なり得る)が、ヘテロアリール基に結合され得る。ヘテロアリール環(系)上の置換基の位置は、望み通りに選択され得る。
【0099】
ヘテロアリール基の場合のものに相当する定義が、本明細書の枠組み内および特許請求の範囲において、用語「ヘテロアリーレン基」に当てはまる。これは、環または環系の任意の2つの炭素原子に結合され得るかまたは窒素原子にもまた結合され得る二価の基であることを除いて、基礎の構造および選択ならびに置換基が上記の「ヘテロアリール基」の定義の詳細に相当する二価の基をいうことが理解される。
【0100】
本明細書の枠組み内および特許請求の範囲において用いられる以下の用語:「アラルキル基」、「ヘテロアリールアルキル基」、「ヘテロシクロアルキル基」、「アリールアミドアルキル基」および「ヘテロアリールアミドアルキル基」は、上記の一般的な特定の定義の意味におけるアルキル基(または、より正確には、アルキレン基)であって、それらの結合のうち1つが、アリール基(上記の一般的な特定の定義に従う)、ヘテロアリール基(上記の一般的な特定の定義に従う)、ヘテロシクリル基(ヘテロ原子で置換されたシクロアルキル基の上記の一般的な特定の定義に従う)、アリールアミド基(上記の一般的な特定の定義に従う)またはヘテロアリールアミド基(上記の一般的な特定の定義に従う)で置換されているものを意味する。これらの基は、非置換であるかまたは置換され得る。
【0101】
本発明の好ましい実施態様では、アラルキル基は、アリール基がフェニル基、置換されたフェニル基、ナフチル基、または置換されたナフチル基であり、そしてアルキル(アルキレン)基が、直鎖または分岐であり、かつ1から6個の炭素原子を有する基である。アラルキル基として、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基およびナフチルエチル基が特に好都合に用いられ得、それらのうちベンジル基が最も特に好ましい。
【0102】
アラルキル基のアリール基における可能性のある置換基は、好ましくは直鎖アルキル基のための上記置換基群より選択され得る(本発明をそれらの置換基に制限しない)。アラルキル基のアリール基のための特に好ましい置換基は、−Cl基、−Br基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基またはtert−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基;n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、−NH基、−NH(CH)基、−N(CH基、−NH(C)基および−N(C基、カルボニル基およびカルボキシル基である。本発明によれば、1つ以上のこのような置換基(同一または異なり得る)が、アラルキル基のアリール基に結合され得る。アリール環(系)上の置換基の位置は、望み通りに選択され得る。
【0103】
本発明の好ましい実施態様では、ヘテロアリールアルキル基は、ヘテロアリールアルキル基のヘテロアリール基が本発明に従って置換され、そしてアルキレン基が、直鎖または分岐であり、かつ1から6個の炭素原子を有する基である。そのようなヘテロアリール基の環構造は、1つの環または相互に結合した(アヌレン形成した)2つ以上の環から形成される構造を有する5、6または7員環構造であり得、ここで、アヌレン形成した環は、同一または異なる環員数を有し得る。ヘテロ原子は、環系の環の1つに単独でまたはいくつかにも存在し得る。ヘテロアリールアルキル基のヘテロアリール基は、好ましくは1つまたは2つの環を含む。相互にアヌレン形成した複数の環で構成されたヘテロアリールアルキル系の場合、ベンゾ縮合環が特に好ましい(すなわち、環のうち少なくとも1つが、芳香族炭素環式六員環である環系)。特に好ましいヘテロアリールアルキル基は、フラニルメチルおよびフラニルエチル、チオフェニルメチルおよびチオフェニルエチル、ピリジルメチルおよびピリジルエチル、インドリルメチルインドリルおよびエチル、クマロニルメチルおよびクマロニルエチル、チオナフテニルメチルおよびチオナフテニルエチル、キノリニル(ベンゾピリジル)メチルおよびキノリニル(ベンゾピリジル)エチル、キナゾリニル(ベンゾピリミジニル)メチルおよびキナゾリニル(ベンゾピリミジニル)エチルおよびキノキシリニル(ベンゾピラジニル)メチルおよびキノキシリニル(ベンゾピラジニル)エチルより選択される。
【0104】
これらのヘテロアリールアルキル基のヘテロアリール基における可能性のある置換基は、好ましくは直鎖アルキル基のための上記置換基群より選択され得る(本発明をそれらの置換基に制限しない)。ヘテロアリール基のための特に好ましい置換基は、−Cl基、−Br基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基またはtert−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基;n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、−NH基、−NH(CH)基、−N(CH基、−NH(C)基および−N(C基、カルボニル基およびカルボキシル基である。本発明によれば、1つ以上のこのような置換基(同一または異なり得る)が、ヘテロアリールアルキル基に結合され得る。ヘテロアリール環(系)上の置換基の位置は、望み通りに選択され得る。
【0105】
本発明の好ましい実施態様では、ヘテロシクロアルキル基は、上記の一般的な特定の定義に従ったシクロアルキル基であって、1つ以上のヘテロ原子(−O−、−S−およびNRからなる群から選択され、ここで、Rは、水素または1から6個の炭素原子を有するアルキル基(上記に定義する)を表す)を含む基であり、そしてヘテロシクロアルキル基のアルキル(アルキレン)基は、直鎖または分岐であり、かつ1から6個の炭素原子を有する。いくつかのヘテロ原子が環内に結合されている場合には、これらは同一または異なり得る。好ましくは1つのヘテロ原子が環内に結合されている。本発明のさらなる実施態様では、ヘテロ原子を含むシクロアルキル基(ヘテロシクロアルキル基ともいう)の好ましい例は、テトラヒドロフラニル基、ピロリジニル基、ピラゾリジニル基、イミダゾリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基およびモルホリニル基である。
【0106】
これらのヘテロシクロアルキル基における可能性のある置換基は、好ましくは直鎖アルキル基のための上記置換基群より選択され得る(本発明をそれらの置換基に制限しない)。ヘテロアリール基のための特に好ましい置換基は、−Cl基、−Br基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基またはtert−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基;n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、−NH基、−NH(CH)基、−N(CH基、−NH(C)基および−N(C基、カルボニル基およびカルボキシル基である。本発明によれば、1つ以上のこのような置換基(同一または異なり得る)が、ヘテロシクロアルキル基に結合され得る。ヘテロシクロアルキル環(系)上の置換基の位置は、望み通りに選択され得る。
【0107】
本明細書および特許請求の範囲において、用語「アリールアミドアルキル基」および「ヘテロアリールアミドアルキル基」は、上記の一般的な特定の定義の意味におけるアルキル基(または、より正確にはアルキレン基)であって、それらの結合のうち1つが一般式Ar−NR−C(=O)−または一般式Ar−C(=O)−NR−(ここで、Rは水素または1から6個の炭素原子を有するアルキル基を表し、そしてArは上記の一般的な特定の定義に従った所望のアリール基またはヘテロアリール基を意味する)を有するアリールアミド基またはヘテロアリールアミド基で置換された基を意味する。これらのアリールまたはヘテロアリール基は、非置換であるかまたは置換され得る。アリールアミドアルキル基の好ましい例(これについて本発明を制限しない)は、2−、3−または4−安息香酸アミド−n−ブチル基または2−ニトロ−3−、−4−、−5−または−6−安息香酸アミド−n−ブチル基であり、ヘテロアリールアミドアルキル基の好ましいが制限されない例は、2−、4−、5−または6−ピリジン−3−カルボン酸−アミド−n−ブチル基である。
【0108】
これらのアリールアミドアルキル基およびヘテロアリールアミドアルキル基における可能性のある置換基は、好ましくは直鎖アルキル基のための上記置換基群より選択され得る(本発明をそれらの置換基に制限しない)。アリールアミドアルキル基およびヘテロアリールアミドアルキル基のアリール基またはヘテロアリール基のための特に好ましい置換基は、−Cl基、−Br基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基またはtert−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基;n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、−NH基、−NH(CH)基、−N(CH基、−NH(C)基および−N(C基、カルボニル基およびカルボキシル基である。本発明によれば、1つ以上のこのような置換基(同一または異なり得る)が、アリールアミドアルキル基およびヘテロアリールアミドアルキル基のアリール基またはヘテロアリール基に結合され得る。芳香環(系)上の置換基の位置は、望み通りに選択され得る。
【0109】
アラルキル基、ヘテロアリールアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリールアミドアルキル基およびヘテロアリールアミドアルキル基の場合のものに相当する定義が、本明細書の枠組み内および特許請求の範囲において、用語「アラルキレン基」、「ヘテロアリールアルキレン基」、「ヘテロシクロアルキレン基」、「アリールアミドアルキレン基」および「ヘテロアリールアミドアルキル基」の定義に当てはまる。これらはそれぞれ、環または環系またはアルキレン基の任意の2つの炭素原子に、あるいはヘテロアリールまたはヘテロシクリル環系の窒素原子にもまた結合され得る二価の基であることを除いて、基礎の構造および選択ならびに置換基が上記の「アラルキル基」、「ヘテロアリールアルキル基」、「ヘテロシクロアルキル基」、「アリールアミドアルキル基」および「ヘテロアリールアミドアルキル基」の定義の詳細に相当する二価の基をいうことが理解される。
【0110】
一般式(1)および(2)において、基Dは−S−S−または−Se−Se−を表す。これらの2つのSまたはSe原子は、一般式(1)および(2)の化合物の分子の2つの部分の間に架橋を形成する。この架橋は、自然条件下、特に還元条件下で分裂され得る。この場合、2つの分子部分が解離され得、ジペプチジルペプチダーゼIV(DP IV)および類似の酵素効果を有するペプチダーゼに対して、ならびにアラニルアミノペプチダーゼN(APN)および類似の酵素効果を有するペプチダーゼに対して阻害効果を生じる。
【0111】
上記一般式(2)において、Eは、−CH−CH(NH)−Rの基を表し、ここで、Rは、O、N、またはSを含むかまたは含まない非置換または置換された非分岐または分岐のアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロアリールアルキル基、アリールアミドアルキル基、ヘテロアリールアミドアルキル基、1つ以上の5、6または7員環を有する非置換または一置換または多置換のアリール基またはヘテロアリール基を表す。アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロアリールアルキル基、アリールアミドアルキル基、ヘテロアリールアミドアルキル基、1つ以上の5、6または7員環を有する非置換または一置換または多置換のアリール基またはヘテロアリール基ならびにそれらの基のための考えられる好ましい置換基について、本発明の好ましいまたは有用な例に関しては、対応する基の上記の定義およびそれらの好ましい実施態様を参照し得る。これらの定義はまた、Eが表す一般式(2)の基にも同様に適用できる。
【0112】
上記E式において、はアミノ基で置換された炭素原子上のキラル炭素原子を表す。本発明のさらなる好ましい実施態様では、一般式(2)のそのような化合物は、特に効果的な阻害剤のプロドラッグを表し、によって示されるキラル炭素原子はS−またはL−配置を有する。
【0113】
本発明によれば、Eが、置換された2−アミノアルキレン基(例えば2−アミノ−3−フェニルプロピル基)、または非置換のまたは−S−、−S(=O)−、−N−または−O−などのヘテロ原子によって置換された2−アミノアルキレン基(例えば、2−アミノ−4−メチルペンチル基、2−アミノ−4−メチルチオブチル基または2−アミノ−4−メチル−スルホキシブチル基)を表すことが特に好ましい。
【0114】
本発明のさらなる実施態様において、一般式(1)および(2)のB基および/またはB’基はR基を表し、これは、1から6個の炭素原子を有する直鎖または分岐のアルキレン基を表す。一般式(1)および(2)の特に好ましい化合物は、−CH−(メチレン)、−CH−CH−(エチレン)または(HC)−C<(2,2−プロピレン)より選択される基の1つ以上の形態のB基および/またはB’基を含む。
【0115】
他の同様のさらなる好ましい実施態様では、Bおよび/またはB’は−(CH−R−R−R−基を表し、ここで、nは1から5までの整数を表し;RがO=C<または−SO−を表す場合、Rは−NH−または−NH−C(=NH)−NH−を表し、またはRが−NH−を表す場合、RはO=C<を表し;Rは、O、N、またはSを含むかまたは含まない非置換または置換された非分岐または分岐のアルキレン基、シクロアルキレン基、アラルキレン基、ヘテロシクロアルキレン基、ヘテロアリールアルキレン基、1つ以上の5、6または7員環を有する非置換または一置換または多置換のアリーレン基またはヘテロアリーレン基を表す。nが1から5を表し、そのため、上記の基の好ましい例は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基およびペンチレン基を含み;好ましくはRとRとが一緒になってアミド基−C(=O)−NH−または−NH−C(=O)−を形成することがさらに好ましい。一般式(1)および(2)のこれらの化合物は、Bが上記式を表し、Rがアミノ置換されたアルキレン基(例えば、アミノエチレン基)、または非置換または置換(例えばニトロ基で)のフェニレン基、または非置換または置換のピリジル−2,5−エン基を表すB基および/またはB’基を有することがさらに好ましい。
【0116】
他の同様のさらなる好ましい実施態様では、Bおよび/またはB’は式−R−R−基を表し、ここで、Rは一置換または多置換のベンジレン基を表し、Rは単結合またはO、N、またはSを含むかまたは含まない非置換または置換された非分岐または分岐のアルキレン基、シクロアルキレン基、アラルキレン基、ヘテロシクロアルキレン基またはヘテロアリールアルキレン基(好ましくは、官能基として1つ以上のアミノ基、カルボニル基またはカルボキシル基を有し得る)、1つ以上の5、6または7員環を有する非置換または一置換または多置換のアリーレン基またはヘテロアリーレン基を表す。本発明の上記の基およびそれらの考えられる置換基の定義に関しては、それぞれの基および置換基の上記の一般的な特定の定義を参照し得る。
【0117】
本発明によれば、BおよびB’が同一または異なり得そして−(CH−R−R−R−基を表す、一般式(1)および(2)の化合物がさらに好ましく、ここで、RがO=C<または−SO−を表す場合、Rは−NH−または−NH−C(=NH)−NH−を表し、またはRが−NH−を表す場合、RはO=C<を表し;Rは、
−CH(COOH)−R(ここで、Rは、RがO=C<を表しRが−NH−を表す場合に上記の意味を有する);または
【0118】
【化15】

【0119】
(ここで、Rは、RがO=C<を表しRが−NH−を表す場合に上記の意味を有する);または
−CH(NHR)−R−(Rが−NH−または−NH−C(=NH)−NH−を表しRがO=C<を表す場合、ここで、RはHまたはアシル基、好ましくはベンジルオキシカルボニル基、フルオレン−9−イルメトキシカルボニル基、tert−ブチルオキシカルボニル基またはベンゾイル基を表す);または
【0120】
【化16】

【0121】
(ここで、Rはフェニレンを表し、RがO=C<または−SO−を表す場合、Rは−NH−または−NH−C(=NH)−NH−を表し、またはRが−NH−を表す場合、RはO=C<を表す);または
【0122】
【化17】

【0123】
(ここで、RはHまたはアシル基、好ましくはベンジルオキシカルボニル基、フルオレン−9−イルメトキシカルボニル基またはベンゾイル基を表し、RがO=C<または−SO−を表す場合、Rは−NH−または−NH−C(=NH)−NH−を表し、またはRが−NH−を表す場合、RはO=C<を表す);または
【0124】
【化18】

【0125】
(ここで、アルキレンは1から6個の炭素原子を有する非分岐または分岐のアルキレン基を表し、RがO=C<または−SO−を表す場合、Rは−NH−または−NH−C(=NH)−NH−を表し、またはRが−NH−を表す場合、RはO=C<を表す);または
【0126】
【化19】

【0127】
(ここで、アルキレンは1から6個の炭素原子を有する非分岐または分岐のアルキレン基を表し、RがO=C<または−SO−を表す場合、Rは−NH−または−NH−C(=NH)−NH−を表し、またはRが−NH−を表す場合、RはO=C<を表す);または
【0128】
【化20】

【0129】
(ここで、RがO=C<または−SO−を表す場合、Rは−NH−または−NH−C(=NH)−NH−を表し、またはRが−NH−を表す場合、RはO=C<を表す);または
【0130】
【化21】

【0131】
(ここで、RはH、NO、CN,ハロゲンまたはアシル基を表し、RがO=C<または−SO−を表す場合、Rは−NH−または−NH−C(=NH)−NH−を表し、またはRが−NH−を表す場合、RはO=C<を表す);または
【0132】
【化22】

【0133】
(ここで、RはH、NO、CN,ハロゲンまたはアシル基を表し、RがO=C<または−SO−を表す場合、Rは−NH−または−NH−C(=NH)−NH−を表し、またはRが−NH−を表す場合、RはO=C<を表す);または
【0134】
【化23】

【0135】
(ここで、RはH、NO、CN,ハロゲンまたはアシル基を表し、RがO=C<または−SO−を表す場合、Rは−NH−または−NH−C(=NH)−NH−を表し、またはRが−NH−を表す場合、RはO=C<を表す);または
【0136】
【化24】

【0137】
(ここで、RがO=C<または−SO−を表す場合、Rは−NH−または−NH−C(=NH)−NH−を表し、またはRが−NH−を表す場合、RはO=C<を表す)を表す。
【0138】
あるいは、本発明の一般式(1)および(2)のさらなる好ましい化合物は、BおよびB’が同一または異なり得、そして−R−R−基を表し、ここで、RおよびRが組み合わさって、
【0139】
【化25】

【0140】
基(RはR以外の上記の基を表し、Rの位置はRの位置に依存する)を表し、ここで、RおよびRが上記の意味を有し、すなわち、RがH、NO、CN,ハロゲンまたはアシル基を表し、Rが単結合またはO、N、またはSを含むかまたは含まない非置換または置換された非分岐または分岐のアルキレン基、シクロアルキレン基、アラルキレン基、ヘテロシクロアルキレン基またはヘテロアリールアルキレン基(好ましくは、官能基として1つ以上のアミノ基、カルボニル基またはカルボキシル基を有し得る)、1つ以上の5、6または7員環を有する非置換または一置換または多置換のアリーレン基またはヘテロアリーレン基を表す、化合物である。
【0141】
一般式(1)および(2)のなおさらに好ましい化合物は、BおよびB’が同一または異なりそして相互に独立して、−R−R−基を表し、ここで、Rが上記式(R以外)の一置換または多置換のベンジレン基を表し、Rが、
−C(=O)−CからCアルキレン−または
−C(=O)−アリーレン−または
−SO−CからCアルキレン−または
−SO−アリーレン−または
【0142】
【化26】

【0143】
(2、3または4位置換)または
−C(=O)−CH(NHR)−R(ここで、RおよびRは上記の意味を有する)
と組み合わせたNH−または−CからCアルキレン−NH−;または
−NH−C−からC−アルキレン−または
−NH−アリーレン−または
−NH−CH(COOH)−R−(ここで、Rは上記の意味を有する)
と組み合わせたO=C<;または
−O−CからCアルキレン−または
−O−アリーレン−または
−O−CからCアルキレン−NH−C(=O)−CH(NH)−R−(ここで、Rは上記の意味を有する)または
−O−CからCアルキレン−C(=O)−NH−CH(COOH)−R−(ここで、Rは上記の意味を有する)
を表す、化合物である。
【0144】
本発明によれば、一般式(1)および/または(2)の化合物は、中性分子の形態で存在し、そのようなものがTreg細胞の活性化において本発明に従う用途を有する。あるいは、一般式(1)および/または(2)の化合物は、それらの無機または有機酸の酸付加塩の形態でもまた存在し得る。そのような酸付加塩は、1つ以上の分子のH−酸化合物(ブレンステッド酸)(好ましくは1分子のH−酸化合物)の結合による分子内の塩基性部位(大部分は塩基性窒素原子)の存在によって形成され、そして、例えば、水などの極性溶媒中における分子の溶解度の改善を確保する。最後に述べた性質は、これらの化合物が薬理効果を生じるのに特に重要である。
【0145】
本発明の特に好ましい実施態様では、酸付加塩は、薬学的に受容可能な酸であり、一般式(1)および(2)の化合物の塩酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、蟻酸および/またはクエン酸塩からなる群より好都合に選択される(しかし本発明を制限しない)。
【0146】
特に好ましくそして好都合に使用され得る、一般式(1)の化合物は、一般式(1a)
【0147】
【化27】

【0148】
(ここで、X、YおよびBは上記の意味を有する)によって特徴付けられる。一般式(1a)の化合物の酸付加塩、好ましくはそれらの薬学的に受容可能な無機酸および/または有機酸(特に上記の群由来の酸)の酸付加塩、最も特に好ましくは一般式(1a)の化合物の塩酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、蟻酸塩および/またはクエン酸塩が、本発明の方法で特に好都合に用いられ得る。
【0149】
一般式(1a)の最も特に好ましい化合物を以下の表1に示す(本発明はこれらの化合物に制限されない)。
【0150】
【表9】

【0151】
そして、それらの酸付加塩、好ましくはそれらの薬学的に受容可能な無機酸および/または有機酸(好ましくは上記の群由来の薬学的に受容可能な酸)の酸付加塩、最も特に好ましくは一般式(1a)の化合物の塩酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、蟻酸塩および/またはクエン酸塩である。
【0152】
特に好ましくそして好都合に使用され得る一般式(2)の化合物は、一般式(2a)
【0153】
【化28】

【0154】
(ここで、X、Y、RおよびBは上記の意味を有する)によって特徴付けられ、そして、それらの酸付加塩、好ましくはそれらの薬学的に受容可能な無機酸および/または有機酸(好ましくは上記の群由来の薬学的に受容可能な酸)の酸付加塩、特に好ましくは一般式(2a)の化合物の塩酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、蟻酸塩および/またはクエン酸塩である。
【0155】
一般式(2a)の最も特に好ましい化合物を以下の表2に示す(本発明はこれらの化合物に制限されない)。
【0156】
【表10】

【0157】
そして、それらの酸付加塩、好ましくはそれらの薬学的に受容可能な無機酸および/または有機酸の酸付加塩、特に好ましくは一般式(2a)の化合物の塩酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、蟻酸塩および/またはクエン酸塩である。
【0158】
阻害剤は、IC50阻害値に対応する濃度またはこれより高い濃度で用いられる。この阻害剤濃度は、ナノ分子からマイクロ分子の範囲にあり、当業者によって、いくつかの容易に行われる標準的な実験で何の苦もなく測定され得る。例えば、上記詳細な記載の1つまたは複数の阻害剤を用いるTreg細胞の培養は、好ましくは37℃、より好ましくはCO含量が5%の蒸気飽和空気の雰囲気中で行われる。Treg細胞の濃度は、全容量に対して適用され、特に好ましくは1mlあたり100万から500万細胞である。
【0159】
本発明の方法のさらなる同様の好ましい実施態様では、1つまたは複数のアラニルアミノペプチダーゼ(アミノペプチダーゼN;APN)阻害剤に加えておよび/または同一の基質特異性を備えるペプチダーゼの1つまたは複数の阻害剤に加えて、病原性自己抗原または合成類縁体のペプチドフラグメント、および/または病原性微生物の特異的抗原成分が用いられる。1つの型のペプチドフラグメントが用いられ得るか、またはいくつかの型のペプチドフラグメントが用いられ得る。さらに、1つの型の病原性微生物の特異的抗原成分を用いるか、またはいくつかの型の病原性微生物の特異的抗原成分を用いることができる。本発明によれば、1つ以上の上記成分の組み合わせもまた用いられ得る。驚くべきことに、阻害剤とさらなる成分のこの組み合わせにより、制御性T細胞(Treg細胞)の特に良好な活性化が達成され得る。
【0160】
本発明の方法のさらなる好ましい実施態様では、MBP(ミエリン塩基性タンパク質)、MOG(ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質)、MAG(ミエリン関連糖タンパク質)および/またはPLP(プロテオリピドタンパク質)が用いられる。本方法の他の同様のさらなる好ましい実施態様によれば、病原性微生物の特異的抗原成分としてコートタンパク質または膜糖脂質複合体が用いられる。特別な成分の組み合わせもまた用いられ得る。
【0161】
本発明によれば、制御性T細胞(Treg細胞)を、当業者に公知のようにして、上記で詳述した培地と接触させる。単に一例として(そして本発明にいかなる制限もなく)、制御性T細胞(Treg細胞)を1つ以上のアラニルアミノペプチダーゼ(アミノペプチダーゼN;APN)阻害剤および/または同一の基質特異性を備えるペプチダーゼの1つ以上の阻害剤と接触させるまたはともに培養する工程は、通常用いられる、好ましくは静止した、または水平に動かされた、または垂直に動かされた、または回転して動かされた細胞培養容器中で行われることを記載する。より好ましくは、これらは、培養皿、培養プレート、細胞培養リアクター、細胞培養フラスコ、細胞培養バッグ、細胞培養に適切なデュアルまたはマルチチャンバーシステム、中空繊維(hollow fiber)リアクター、または細胞培養に一般に用いられる当業者に公知の任意の他の容器であり得る。培養が、培養に向けられるそれらの表面の一部または全体に反応を促進し得る表面コーティングおよび/またはマトリクス代替物を有する細胞培養容器内で行われることが、特に好ましい。細胞培養は、好ましくは37℃の蒸気飽和空気内で5%のCO存在下で行われる。
【0162】
本発明の方法の最後の工程において、上記のようにして活性化された制御性T細胞(Treg細胞)は、適切な培地中で少なくとも1つのヒトまたは動物の体に戻される。Treg細胞は、免疫問題を制御するためにこれらの活性化Treg細胞を必要とするヒトまたは動物の体に通常通りに運ばれる。どのような場合にも、培地はレシピエントにとって薬学的に受容可能な培地であり、本発明のさらに好ましい実施態様では、好ましくは流体、さらに好ましくは生理学的に受容可能な溶液、特に好ましくは、必要に応じて、企図された使用目的のためのさらなる有用なまたはより好都合な成分を含み得る水溶液からなる群から選択される液体培地から選択され得る。
【0163】
特に好ましくは、活性化されたTreg細胞が、Treg細胞が単離された体液の(ヒトまたは動物の)ドナーの生体に運ばれる。戻しは、所望の目的(すなわち、活性化Treg細胞をレシピエントの生体(ヒトかまたは動物)へと再び運ぶ)を充足する当業者が考え得るいかなる様式でも行われ得る。特に好ましい戻し方法は、静脈内投与、動脈内投与、腔内投与、クモ膜下投与および皮内投与からなる群より選択される投与形態である。その目的が活性化Treg細胞をレシピエントに再び注入することである場合には、特に有利には、静脈内投与が好ましく用いられる。これは、Treg細胞の末梢系への、およびしたがって血液循環への直接の注入を可能にし、また、そこでTreg細胞が自然に機能するためである。
【0164】
T細胞(Treg細胞)の注入量は、戻し注入のために用いられる培地中のそれらの濃度、レシピエント(ヒトまたは動物)の体格、臨床像または免疫状態、および当業者に公知であるかまたは当業者によって容易に決定される他の要因に大きく依存する。
【0165】
本発明はまた、1つ以上のアラニルアミノペプチダーゼ阻害剤および/または1つ以上の同一の基質特異性を備えるペプチダーゼの阻害剤による上記に詳細に記載された方法を用いて得られ得るもののような活性化制御性T細胞(Treg細胞)に関する。そのような活性化Treg細胞はこれまで知られておらず、従来のようにして活性化されたTreg細胞と比較して驚くほど高い抑制効果を有する。特に、本発明の方法を用いて活性化された制御性T細胞(Treg細胞)は、それらが驚くほど高い程度で体の免疫応答を抑制するので、ヒトおよび動物の体内の自己抗原(生体内で産生される抗原)および同種抗原(外部要因によって導入される抗原)に対する寛容を生じさせ、ヒトおよび動物の体内の過剰免疫応答を克服するために用いられ得る。
【0166】
本発明はまた、1つ以上のアラニルアミノペプチダーゼ阻害剤および/または同一の基質特異性を備えるペプチダーゼの1つ以上の阻害剤による上記に詳細に記載された方法を用いて活性化され得る活性化制御性T細胞(Treg細胞)からなるかまたは含む任意の型の調製物に関する。活性化制御性T細胞および投与に適した支持培地または溶媒の他に、そのような調製物は、必要に応じて、1つ以上の支持体、補助物質および/またはアジュバントをさらに含み得る。これらは、当業者に公知のように、単独でまたは組み合わせて用いられる支持体、補助物質および/またはアジュバントとして当業者に公知の1つ以上の成分を含み得る。
【0167】
本発明はさらに、ヒトまたは動物の体のアンバランスな免疫反応に関連したまたは伴う多くの疾患または状態の予防、緩和または治療のための活性化制御性T細胞(Treg細胞)の使用または活性化制御性T細胞(Treg細胞)を含む調製物の使用に関する。本発明の使用において、Treg細胞の活性化にどのような阻害剤が使用されたかは、重要ではない。
【0168】
活性化制御性T細胞(Treg細胞)ならびにそれらを含む調製物は、移植による拒絶の予防、緩和または治療に特に有用であることがわかった。
【0169】
本発明は、過剰免疫応答および炎症発生を伴う疾患(動脈硬化を含む)、神経疾患、脳損傷、皮膚病(例えば、乾癬、ざ瘡、ケロイド、および他の過剰増殖状態)ならびに敗血症およびII型糖尿病の予防、緩和または治療のための活性化制御性T細胞(Treg細胞)の使用または活性化制御性T細胞(Treg細胞)を含む調製物の使用にもまた関する。
【0170】
本発明は、過剰免疫応答および炎症発生を伴う疾患(動脈硬化を含む)、神経疾患、脳損傷、皮膚病(例えば、乾癬、ざ瘡、ケロイド、および他の過剰増殖状態)、線維症、腫瘍性疾患、ウイルス関連疾患ならびに敗血症およびII型糖尿病の予防、緩和または治療のための医薬品または化粧料調製物の製造のための活性化制御性T細胞(Treg細胞)の使用または活性化制御性T細胞(Treg細胞)を含む調製物の使用にもまた関する。
【0171】
本発明の好ましい実施態様では、活性化制御性T細胞(Treg細胞)またはそれらを含む調製物は、以下のような疾患の予防および治療のために用いられる:例えば、多発性硬化症、クローン病、潰瘍性大腸炎、およびその他の自己免疫疾患、ならびに炎症性疾患、気管支喘息およびその他のアレルギー性疾患、皮膚病および粘膜症、例えば乾癬、ざ瘡、および線維芽細胞の過剰増殖および変異分化状態に伴う皮膚病、良性の線維性および硬化性の皮膚病、および悪性の線維芽細胞過剰増殖状態、急性神経疾患、例えば虚血性または出血性脳卒中、頭蓋大脳外傷、心停止、心筋梗塞の後の、または心臓手術に起因する、虚血関連の脳損傷状態、慢性神経疾患、例えばアルツハイマー病、ピック病、進行性核上麻痺、大脳皮質基底核変性症、前頭側頭型痴呆、パーキンソン病、特に第17染色体に連鎖したパーキンソニズム、ハンチントン病、プリオン関連疾患状態および筋萎縮性側索硬化症、アテローム性動脈硬化症、動脈の炎症、ステント再狭窄、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、腫瘍、転移形成、前立腺ガン、重症急性呼吸器症候群(SARS)、敗血症および敗血症様の状態、ならびにII型糖尿病。
【0172】
本発明のさらなる好ましい実施態様では、活性化制御性T細胞(Treg細胞)またはそれらを含む調製物は、移植された組織および細胞の拒絶の予防および治療のために用いられる。このような適用の例は、例えば、腎臓、心臓、肝臓、膵臓、皮膚、または幹細胞の移植、ならびに移植片対宿主反応におけるような同種または異種の移植された器官、組織、および細胞における活性化制御性T細胞(Treg細胞)の使用またはTreg細胞を含む調製物の使用であり得る。
【0173】
本発明のさらなる好ましい実施態様では、活性化制御性T細胞(Treg細胞)またはそれらを含む調製物は、生体内に植え込まれた医療デバイスでの拒絶または炎症反応、または生体内への医療デバイスの植え込みの結果としての拒絶または炎症反応の予防および治療のために用いられる。これらは、例えば、ステント、関節インプラント(膝関節インプラント、股関節インプラント)、骨インプラント、ペースメーカー、またはその他のインプラントであり得る。
【0174】
本発明のさらなる好ましい実施態様では、活性化制御性T細胞(Treg細胞)またはそれらを含む調製物は、Treg細胞またはそれらを含む組成物がコーティングまたは湿潤層の形態でデバイスに付与されるか、または少なくとも制御性T細胞(Treg細胞)またはそれらを含む組成物がデバイスの材料と一体的に混合されるように用いられる。もちろん、この場合、本発明の方法を用いて製造された活性化Treg細胞またはそれらを含む組成物を、必要に応じて間隔をおいてまたは並行して、局所または全身投与することも可能である。
【0175】
上記と同様にして、そして同様の目的のために、あるいは上に例として挙げた疾患および状態の予防および治療のために(しかし、制限なく)、一般に、制御性T細胞(Treg細胞)およびそれらを含む薬学的および化粧料組成物が単独でまたはいくつか組み合わされて、上記の疾患または状態の治療のための医薬品の製造のために用いられ得る。これらは、活性化制御性T細胞(Treg細胞)を下記で例として挙げる量で、必要に応じて既知の支持体、補助物質、および/または添加物とともに、含み得る。
【0176】
本発明を、実施例によって以下により詳細に説明する。しかし、上記の詳細な記載に関して、本発明が以下の実施例に制限されないことが理解される。以下の実施例は、現時点でもっとも好ましい実施態様を表す。
【実施例】
【0177】
実施例1
アミノペプチダーゼN阻害剤であるアクチノニン(actinonin)の存在下におけるヒト制御性T細胞の活性化
【0178】
健康なドナーの末梢血から、密度勾配遠心分離によって単核細胞を得た。制御性T細胞の単離は、2段階磁気分離によって行った。
【0179】
第1の工程で、CD4T細胞を、すべてのCD4陰性細胞の枯渇によって回収した[CD4分離キット、Miltenyi Biotech、Bergisch-Gladbach、Germany]。達成された純度は、通常>95%CD4T細胞に達した。
【0180】
第2の工程では、CD4CD25制御性T細胞を、CD25マーキング[抗CD25MicroBeads、Miltenyi Biotech]を用いた磁気カラム分離によって、この集団から次いで単離した。
【0181】
CD4CD25画分を、エフェクター細胞コントロールとして用いた。
【0182】
制御性T細胞の機能的能力を、特別な共培養で試験した。このために、合計20000個のエフェクター細胞(CD4CD25)および制御性T細胞(CD4CD25)を、相互に対して種々の量比で、マイクロテストプレート内で120時間にわたってそれぞれ培養した。T細胞刺激の活性剤として、固相に結合した抗CD3抗体[UCHT1、0.25μg/ウエル]を用いた。
【0183】
培養細胞の増殖の程度は、24時間にわたるトリチウムチミジンの取り込みによるDNA合成速度に基づいて分析した[n=5]。
【0184】
グラフ(図1)は、APN阻害剤(アクチノニン)の存在下および不在下における、50%(実験的関連)、20%(実験的関連)および10%(生理学的関連)Treg成分の量的関係での、制御性T細胞(Treg細胞)の抑制性表現型の誘導を示す。
【0185】
エフェクター細胞とTreg細胞との比率1:1では、Treg細胞の強い抑制能のために阻害剤の確実な効果が明白でなかったのに対し、特に10:1の生理学的関連量的範囲で、Treg細胞の抑制能の著しい増大が明らかになった(P<0.05)。
【0186】
実施例2
細胞質アミノペプチダーゼ(cAAP)阻害剤であるPAQ22の存在下におけるヒト制御性T細胞の活性化
【0187】
健康なドナーの末梢血から、密度勾配遠心分離によって単核細胞を得た。制御性T細胞の単離は、2段階磁気分離によって行った。
【0188】
第1の工程で、CD4T細胞を、すべてのCD4陰性細胞の枯渇によって回収した[CD4分離キット、Miltenyi Biotech、Bergisch-Gladbach、Germany]。達成された純度は、通常>95%CD4T細胞に達した。
【0189】
第2の工程では、CD4CD25制御性T細胞を、CD25マーキング[抗CD25MicroBeads、Miltenyi Biotech]を用いた磁気カラム分離によって、この集団から次いで単離した。
【0190】
CD4CD25画分を、エフェクター細胞コントロールとして用いた。
【0191】
制御性T細胞の機能的能力を、特別な共培養で試験した。このために、合計20000個のエフェクター細胞(CD4CD25)および制御性T細胞(CD4CD25)を、相互に対して種々の量比で、マイクロテストプレート内で120時間にわたってそれぞれ培養した。T細胞刺激の活性剤として、固相に結合した抗CD3抗体[UCHT1、0.25μg/ウエル]を用いた。
【0192】
培養細胞の増殖の程度は、24時間にわたるトリチウムチミジンの取り込みによるDNA合成速度に基づいて分析した[n=3]。
【0193】
グラフ(図2)は、細胞質アミノペプチダーゼ(cAAP)の選択的阻害剤PAQ22の存在下および不在下における、10%および5%のTreg細胞成分の生理的に関連する量的関係での、制御性T細胞(Treg細胞)の抑制性表現型の誘導を示す。
【0194】
PAQ22は、5日間の共培養後、制御性T細胞の抑制能を濃度に依存して誘導した。
【0195】
実施例3
アラニルアミノペプチダーゼ(APN)およびジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)の二重阻害剤であるIP10.C8の存在下におけるヒト制御性T細胞の活性化
【0196】
健康なドナーの末梢血から、密度勾配遠心分離によって単核細胞を得た。T細胞分離は、ナイロンパッド付着を用いて行った。
【0197】
制御性T細胞の単離は、2段階磁気分離によって行った。
【0198】
第1の工程で、CD4T細胞を、すべてのCD4陰性細胞の枯渇によって回収した[CD4分離キット、Miltenyi Biotech、Bergisch-Gladbach、Germany]。達成された純度は、通常>95%CD4T細胞に達した。
【0199】
第2の工程では、CD4CD25制御性T細胞を、CD25マーキング[抗CD25MicroBeads、Miltenyi Biotech]を用いた磁気カラム分離によって、この集団から次いで単離した。
【0200】
CD4CD25画分を、エフェクター細胞コントロールとして用いた。
【0201】
制御性T細胞の機能的能力を、特別な共培養で試験した。このために、合計20000個のエフェクター細胞(CD4CD25)および制御性T細胞(CD4CD25)を、相互に対して種々の量比で、マイクロテストプレート内で120時間にわたってそれぞれ培養した。T細胞刺激の活性剤として、固相に結合した抗CD3抗体[UCHT1、0.25μg/ウエル]を用いた。
【0202】
培養細胞の増殖の程度は、24時間にわたるトリチウムチミジンの取り込みによるDNA合成速度に基づいて分析した[n=10]。
【0203】
グラフ(図3)は、アミノペプチダーゼNおよびジペプチジルペプチダーゼIVの二重阻害剤(IP10.C8)の存在下および不在下における、50%(実験的関連)、20%(実験的関連)および10%(生理学的関連)のTreg細胞成分の量的関係での、制御性T細胞(Treg細胞)の抑制性表現型の誘導を示す。
【0204】
エフェクター細胞とTreg細胞との比率1:1では、Treg細胞の強い抑制能のために阻害剤の確実な効果が明白でなかったのに対し、特に10:1の生理学的関連量的範囲で、Treg細胞の抑制能の著しい増大が明らかになった(P<0.01)。
【0205】
実施例4
アラニルアミノペプチダーゼ(APN)の阻害剤であるフェベスチン(phebestin)の存在下におけるマウス制御性T細胞の活性化
【0206】
健康なマウスの末梢血から、密度勾配遠心分離によって単核細胞(MNC)を得た。制御性T細胞の単離は、CD25マーキング[抗CD25MicroBeads、Miltenyi Biotech]を用いて行った。CD25MNC画分を、エフェクター細胞コントロールとして用いた。
【0207】
制御性T細胞の機能的能力を、特別な共培養で試験した。このために、合計20000個のエフェクター細胞(MNC−CD25)および制御性T細胞(CD4CD25)を、相互に対して種々の量比で、マイクロテストプレート内で120時間にわたってそれぞれ培養した。T細胞刺激は、抗CD3/抗CD28[1μg/ml]を添加することによって行った。
【0208】
培養細胞の増殖の程度は、24時間にわたるトリチウムチミジンの取り込みによるDNA合成速度に基づいて分析した[n=4]。
【0209】
グラフ(図4)は、APN阻害剤(フェベスチン)の存在下および不在下における、制御性T細胞(Treg細胞)の抑制性表現型の誘導を示す。
【0210】
5日間の共培養後、フェベスチン[1.0μM]は、制御性T細胞の抑制能をかなりの程度まで誘導した(p<0.01、p<0.05)。
【0211】
実施例5
マウスの大腸炎モデルにおけるAPN阻害剤(フェベスチン)を用いてエクスサイチューで活性化された制御性T細胞(Treg細胞)の効果
【0212】
大腸炎は、Balb−cマウスに3%のデキストラン硫酸ナトリウム溶液(DSS)を経口投与することにより誘発した。病気の重症度は、疾患活動指数(DAI)に基づいて確立した。これは、体重減少、便の硬さ、直腸出血、食物および水摂取量の毎日の記録で構成され、刊行物「Bank, U.、Heimburg, A.、Helmuth, M.、Stefin, S.、Lendeckel, U.、Reinhold, D.、Faust, J.、Fuchs, P.、Sens, B.、Neubert, K.、Tager, M.、Ansorge, S.、Triggering endogenous immunosuppressive mechanisms by combined targeting of dipeptidyl peptidase IV (DPIV/CD26) and aminopeptidase N (APN/CD13) - A novel approach for the treatment of inflammatory bowel disease、International Immunopharmacology 6、2006年、1925-1934頁」で定義されている。
【0213】
並行して、末梢静脈血由来の制御性T細胞を、密度勾配遠心分離およびCD25MicroBeadsを用いた磁気分離によって回収した。
【0214】
3日目に、アミノペプチダーゼN阻害剤フェベスチン(0.5mg/kgKG))、未処理のCD4CD25Treg細胞(100万細胞/動物)または活性化CD4CD25Treg細胞(100万細胞/動物)のいずれかを一度静脈内に投与した。
【0215】
Treg細胞の活性化は、フェベスチン[500μg/ml]の存在下で45分間、Treg細胞を培養することによって、本発明の方法を用いて、エクスサイチューで行った。
【0216】
未処理の制御性T細胞またはフェベスチンの静脈内への単回投与は、疾患の活動に効果がなかった(疾患活動指数を用いて測定)が、アラニルアミノペプチダーゼ阻害剤による活性化によって活性化されたTreg細胞の単回投与は、投与後48時間まで、病気の臨床症状を著しく減少させた(p<0.05)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトまたは動物の体の制御性T細胞(Treg細胞)を活性化するための方法であって、該制御性T細胞(Treg細胞)の抑制効果の誘導によって、該制御性T細胞(Treg細胞)を、適切な液体培地中で1つ以上のアラニルアミノペプチダーゼ(アミノペプチダーゼN;APN)阻害剤および/または同一の基質特異性を備えるペプチダーゼの1つ以上の阻害剤と接触させる工程を含む、方法。
【請求項2】
ヒトまたは動物の体の制御性T細胞(Treg細胞)のエクスビボ活性化のための方法であって、
(a)少なくとも1つのヒトまたは動物の体から、Treg細胞を含む少なくとも1つの体液を回収する工程;
(b)このように得られたヒトまたは動物の体液から該制御性T細胞(Treg細胞)を単離する工程;
(c)このように単離および精製された制御性T細胞を、活性化するのに適した期間、適切な流体培地中で1つ以上のアラニルアミノペプチダーゼ(アミノペプチダーゼN;APN)阻害剤および/または同一の基質特異性を備えるペプチダーゼの1つ以上の阻害剤と接触させる工程;および
(d)このように処理された制御性T細胞(Treg細胞)を適切な培地中で少なくとも1つのヒトまたは動物の体に戻す工程
を含む、方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、少なくとも1つのアラニルアミノペプチダーゼ阻害剤としておよび/または同一の基質特異性を備えるペプチダーゼの少なくとも1つの阻害剤として、アクチノニン(actinonin)、ロイヒスチン(leuhistin)、フェベスチン(phebestin)、アマスタチン(amastatin)、ベスタチン(bestatin)、プロベスチン(probestin)、アルファメニンA(arphamenin A)、アルファメニンB(arphamenin B)、MR387A、MR387B、β−アミノチオール、α−アミノホスフィン酸ならびにそれらのエステルおよび塩、α−アミノホスホネート、α−アミノホウ酸、α−アミノアルデヒド、α−アミノ酸のヒドロオキサメート、N−フェニルフタルイミド、N−フェニルホモフタルイミド、α−ケトアミド、サリドマイドおよびそれらの誘導体の群より選択される1つ以上の公知の阻害剤が用いられる、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、少なくとも1つのアラニルアミノペプチダーゼ阻害剤としておよび/または同一の基質特異性を備えるペプチダーゼの少なくとも1つの阻害剤として、α−ケトアミド(好ましくは、3−アミノ−2−オキソ−4−フェニル酪酸アミド)、α−アミノホスフィン酸(好ましくは、D−Phe−y[PO(OH)−CH]−Phe−Phe)、N−フェニルホモフタルイミド(好ましくは、PAQ−22)、α−アミノホスホネート(好ましくは、RB3014および/またはフェベスチン、特に好ましくは、PAQ−22、RB3014および/またはフェベスチン)の群より選択される1つ以上の公知の阻害剤が用いられ、最も特に好ましくは、少なくとも1つのアラニルアミノペプチダーゼ阻害剤としておよび/または同一の基質特異性を備えるペプチダーゼの少なくとも1つの阻害剤として、PAQ−22が用いられるか、またはPAQ−22を含む複数の公知の阻害剤が用いられる、方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の方法であって、少なくとも1つのアラニルアミノペプチダーゼ阻害剤としておよび/または同一の基質特異性を備えるペプチダーゼの少なくとも1つの阻害剤として、一般式(1)および(2)の化合物:
A−B−D−B’−A’ (1)および
A−B−D−E (2)、
(ここで、AおよびA’は同一または異なり得、以下の基を表し、
【化1】

ここで、XはS、O、CH、CHCH、CHOまたはCHNHを表し、YはHまたはCNを表し、は好ましくはS−またはL−配置のキラル炭素原子を表し;
BおよびB’は同一または異なり得、O、N、またはSを含むかまたは含まない非置換または置換された非分岐または分岐のアルキレン基、シクロアルキレン基、アラルキレン基、ヘテロシクロアルキレン基、ヘテロアリールアルキレン基、アリールアミドアルキレン基、ヘテロアリールアミドアルキレン基、1つ以上の5、6または7員環を有する非置換または一置換または多置換のアリーレン基またはヘテロアリーレン基を表し;
Dは−S−S−または−Se−Se−を表し;そして
Eは−CH−CH(NH)−Rまたは−CHCH(NH)−Rの基を表し、ここで、RはO、N、またはSを含むかまたは含まない非置換または置換された非分岐または分岐のアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロアリールアルキル基、アリールアミドアルキル基、ヘテロアリールアミドアルキル基、1つ以上の5、6または7員環を有する非置換または一置換または多置換のアリール基またはヘテロアリール基を表し、は好ましくはS−またはL−配置のキラル炭素原子を表す)
または、それらの有機および/または無機酸の酸付加塩からなる群より選択される、アラニルアミノペプチダーゼまたは同一の基質特異性を備えるペプチダーゼとジペプチジルペプチダーゼ(IV)または同一の基質特異性を備えるペプチダーゼとの二重阻害剤からなる群より選択される1つ以上の公知の阻害剤が用いられる、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、少なくとも1つのアラニルアミノペプチダーゼ阻害剤として、および/または同一の基質特異性を備えるペプチダーゼの少なくとも1つの阻害剤として、薬学的に受容可能な酸の酸付加塩からなる群より選択される、一般式(1)または(2)の化合物の1つ以上の酸付加塩が用いられ、ここで、酸付加塩として塩酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、ギ酸塩(formiate)および/またはクエン酸塩が好ましく用いられる、方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の方法であって、少なくとも1つのアラニルアミノペプチダーゼ阻害剤としておよび/または同一の基質特異性を備えるペプチダーゼの少なくとも1つの阻害剤として、一般式(1a)
【化2】

(ここで、X、YおよびBは上記の意味を有する)の1つ以上の化合物、および/またはそれらの酸付加塩、好ましくはそれらの薬学的に受容可能な無機および/または有機酸の酸付加塩、より好ましくはそれらの塩酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、ギ酸塩および/またはクエン酸塩が用いられる、方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、少なくとも1つのアラニルアミノペプチダーゼ阻害剤としておよび/または同一の基質特異性を備えるペプチダーゼの少なくとも1つの阻害剤として、一般式(1a)(ここで、X、YおよびBは下記の意味を有する)の1以上の化合物:
【表1】

および/またはそれらの酸付加塩、好ましくはそれらの薬学的に受容可能な無機および/または有機酸の酸付加塩、より好ましくはそれらの塩酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、ギ酸塩および/またはクエン酸塩が用いられる、方法。
【請求項9】
請求項5または6に記載の方法であって、少なくとも1つのアラニルアミノペプチダーゼ阻害剤としておよび/または同一の基質特異性を備えるペプチダーゼの少なくとも1つの阻害剤として、一般式(2a)
【化3】

(ここで、X、Y、RおよびBは上記の意味を有する)の1つ以上の化合物、および/またはそれらの酸付加塩、好ましくはそれらの薬学的に受容可能な無機および/または有機酸の酸付加塩、より好ましくはそれらの塩酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、ギ酸塩および/またはクエン酸塩が用いられる、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、少なくとも1つのアラニルアミノペプチダーゼ阻害剤としておよび/または同一の基質特異性を備えるペプチダーゼの少なくとも1つの阻害剤として、一般式(1a)(ここで、X、Y、RおよびBは下記の意味を有する)の1つ以上の化合物:
【表2】

および/またはそれらの酸付加塩、好ましくはそれらの薬学的に受容可能な無機および/または有機酸の酸付加塩、より好ましくはそれらの塩酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、ギ酸塩および/またはクエン酸塩が用いられる、方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の方法であって、病原性自己抗原または合成類縁体由来のペプチドフラグメント、および/または病原性微生物の特定の抗原成分がさらに用いられる、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、病原性自己抗原由来のペプチドフラグメントとしてMBP(ミエリン塩基性タンパク質)、MOG(ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質)、MAG(ミエリン関連糖タンパク質)および/またはPLP(プロテオリピドタンパク質)が用いられ、および/または病原性微生物の特定の抗原成分としてコートタンパク質または膜糖脂質複合体が用いられる、方法。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかに記載の方法であって、前記制御性T細胞(Treg細胞)が、血液(好ましくは末梢血、さらに好ましくは静脈血)、それらの画分、リンパ、滲出液または局所区画(好ましくは胸膜または腹膜)からなる群より選択される体液の1つ以上から単離される、方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれかに記載の方法であって、前記単離された制御性T細胞を、生理学的に受容可能な溶液、細胞培養培地および栄養培地から選択され、好ましくは生理学的に受容可能な水溶液、水性細胞培養培地および水性栄養培地からなる群より選択され、さらに好ましくは細胞培養および細胞治療において通常用いられる抗生物質、アミノ酸補助剤、ビタミン剤、微量元素補助剤がさらに存在する液体中で、1つ以上のアラニルアミノペプチダーゼ阻害剤および/または同一の基質特異性を備えるペプチダーゼの1つ以上の阻害剤と接触させる、方法。
【請求項15】
請求項1から14のいずれかに記載の方法であって、前記制御性T細胞(Treg細胞)が、制御性T細胞(Treg細胞)があらかじめ単離された少なくとも1つのヒトまたは動物の体(好ましくは体液のドナーの体)に、静脈内投与、動脈内投与、腔内投与、クモ膜下投与および皮内投与からなる群より選択される投与形態によって、好ましくは静脈内投与によって戻される、方法。
【請求項16】
請求項1から15のいずれかに記載の方法であって、制御性T細胞(Treg細胞)を培養する工程が、1つ以上のアラニルアミノペプチダーゼ(アミノペプチダーゼN;APN)阻害剤および/または同一の基質特異性を備えるペプチダーゼの1つ以上の阻害剤とともに、通常用いられる、好ましくは静止した、または水平に動かされた、または垂直に動かされた、または回転して動かされた細胞培養容器中で、好ましくは培養皿中で、培養プレート上で、細胞培養リアクター中で、細胞培養フラスコ中で、細胞培養バッグ中で、細胞培養に適したデュアルまたはマルチチャンバーシステム中で、中空繊維リアクター内で、特に好ましくは、培養に向けられるそれらの表面の一部または全体に反応を促進し得る表面コーティングおよび/またはマトリクス代替物を有する細胞培養容器内で行われる、方法。
【請求項17】
請求項1から16のいずれかに記載の方法によって得られ得る、活性化制御性T細胞(Treg細胞)。
【請求項18】
通常の溶媒、支持体、補助物質および/またはアジュバントを共に含み得る、請求項17に記載の活性化制御性T細胞(Treg細胞)を含む調製物。
【請求項19】
請求項17に記載の活性化制御性T細胞(Treg細胞)の使用、および/または請求項18に記載の調製物の使用であって、移植による拒絶反応の予防、緩和または治療のための、使用。
【請求項20】
請求項17に記載の活性化制御性T細胞(Treg細胞)の使用、および/または請求項18に記載の調製物の使用であって、自己免疫疾患の予防、緩和または治療のための、使用。
【請求項21】
請求項17に記載の活性化制御性T細胞(Treg細胞)の使用、および/または請求項18に記載の調製物の使用であって、アレルギー、気管支喘息および慢性閉塞性肺疾患(COPD)の予防、緩和または治療のための、使用。
【請求項22】
請求項17に記載の活性化制御性T細胞(Treg細胞)の使用、および/または請求項18に記載の調製物の使用であって、慢性炎症発生の疾患の予防、緩和または治療のための、好ましくは動脈硬化の予防、緩和または治療のための、使用。
【請求項23】
請求項17に記載の活性化制御性T細胞(Treg細胞)の使用、および/または請求項18に記載の調製物の使用であって、神経疾患および脳損傷の予防、緩和または治療のための、使用。
【請求項24】
請求項17に記載の活性化制御性T細胞(Treg細胞)の使用、および/または請求項18に記載の調製物の使用であって、皮膚病、好ましくは乾癬、ざ瘡またはケロイド、および他の過剰増殖状態の予防、緩和または治療のための、使用。
【請求項25】
請求項17に記載の活性化制御性T細胞(Treg細胞)の使用、および/または請求項18に記載の調製物の使用であって、線維症の予防、緩和または治療のための、使用。
【請求項26】
請求項17に記載の活性化制御性T細胞(Treg細胞)の使用、および/または請求項18に記載の調製物の使用であって、腫瘍性疾患および敗血症の予防、緩和または治療のための、使用。
【請求項27】
請求項17に記載の活性化制御性T細胞(Treg細胞)の使用、および/または請求項18に記載の調製物の使用であって、多発性硬化症、クローン病、潰瘍性大腸炎、および他の自己免疫疾患の予防、緩和または治療のための、使用。
【請求項28】
請求項17に記載の活性化制御性T細胞(Treg細胞)の使用、および/または請求項18に記載の調製物の使用であって、炎症性疾患の予防、緩和または治療のための、使用。
【請求項29】
請求項17に記載の活性化制御性T細胞(Treg細胞)の使用、および/または請求項18に記載の調製物の使用であって、気管支喘息および他のアレルギー性疾患の予防、緩和または治療のための、使用。
【請求項30】
請求項17に記載の活性化制御性T細胞(Treg細胞)の使用、および/または請求項18に記載の調製物の使用であって、皮膚病および粘膜症、好ましくは乾癬、ざ瘡ならびに線維芽細胞の過剰増殖および変異分化状態による皮膚病(良性の線維性および硬化性皮膚病、および悪性の線維芽細胞過剰増殖状態)の予防、緩和または治療のための、使用。
【請求項31】
請求項17に記載の活性化制御性T細胞(Treg細胞)の使用、および/または請求項18に記載の調製物の使用であって、急性神経疾患、例えば、虚血性または出血性脳卒中、頭蓋大脳外傷、心停止、心筋梗塞の後の、または心臓手術の後遺症の、虚血関連の脳損傷状態などの予防、緩和または治療のための、使用。
【請求項32】
請求項17に記載の活性化制御性T細胞(Treg細胞)の使用、および/または請求項18に記載の調製物の使用であって、慢性神経疾患、好ましくはアルツハイマー病、ピック病、進行性核上麻痺、大脳皮質基底核変性症、前頭側頭型痴呆、パーキンソン病、さらに好ましくは第17染色体に連鎖したパーキンソニズム、ハンチントン病の予防、緩和または治療のための、使用。
【請求項33】
請求項17に記載の活性化制御性T細胞(Treg細胞)の使用、および/または請求項18に記載の調製物の使用であって、プリオン関連疾患状態および筋萎縮性側索硬化症の予防、緩和または治療のための、使用。
【請求項34】
請求項17に記載の活性化制御性T細胞(Treg細胞)の使用、および/または請求項18に記載の調製物の使用であって、アテローム性動脈硬化症、動脈の炎症、ステント再狭窄の予防、緩和または治療のための、使用。
【請求項35】
請求項17に記載の活性化制御性T細胞(Treg細胞)の使用、および/または請求項18に記載の調製物の使用であって、腫瘍、転移形成、前立腺ガンの予防、緩和または治療のための、使用。
【請求項36】
請求項17に記載の活性化制御性T細胞(Treg細胞)の使用、および/または請求項18に記載の調製物の使用であって、重症急性呼吸器症候群(SARS)の予防、緩和または治療のための、使用。
【請求項37】
請求項17に記載の活性化制御性T細胞(Treg細胞)の使用、および/または請求項18に記載の調製物の使用であって、敗血症および敗血症様状態の予防、緩和または治療のための、使用。
【請求項38】
請求項17に記載の活性化制御性T細胞(Treg細胞)の使用、および/または請求項18に記載の調製物の使用であって、II型糖尿病の予防、緩和または治療のための、使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2010−536815(P2010−536815A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521362(P2010−521362)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際出願番号】PCT/EP2008/006895
【国際公開番号】WO2009/024348
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(505008187)イーエムテーエム ゲーエムベーハー (8)
【Fターム(参考)】